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繁栄を

はじめに

第一章 自動車と「軽」自動車1.1  自動車産業の現状1.2  世界の中の日本車1.3  軽自動車の躍進

第二章 軽自動車はなぜ売れるのか2.1  軽自動車誕生と繁栄の歩み2.2  「トールワゴン」の衝撃2.3  女性と軽自動車

第三章 海外ニッチ市場を開拓したスズキ3.1  2車種しかなかったインド車3.2  国民車「マルチ・スズキ」3.3  欧米メーカーの反撃

第四章 軽自動車ブームは続くのか4.1  いつまで続く税優遇4.2  利害で対立する軽自動車規格

終わりに

11281077妹尾俊樹

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第一章 自動車と「軽」自動車

1.1  自動車産業の現状 世界の自動車産業は先進国で成熟産業と捉えられ、今後大きな成長を見込めないとされてきた。2008 年にはアメリカを発端とした金融危機の影響により、それまで世界最大の自動車市場だったアメリカで自動車需要が急激に落ち、欧州や日本など先進諸国でも販売台数を減らした。世界自動車販売台数は2007 年の7,159 万台から、2009 年には6,560万台にまで減少した。 しかし金融危機後、先進国では燃料価格の下落、景気回復による自動車需要の拡大、途上国では人口増加と所得増大による旺盛な需要により、世界自動車販売台数は2010 年から再び増加し、2014 年には8,816 万台 ( 世界85 カ国計 ) に達し、過去最高を記録した。経済状況にもよるが、2018 年には1 億台を超えると予想されている。再び成長産業として成長を続ける自動車産業を見てみよう。 図1-1 は主要国の自動車販売台数で過去3 年間の推移を表している。2014 年度の販売台数1 位は中国で2349 万台、2 位アメリカ1684 万台、3 位日本556 万台、4 位349 万台、5 位ドイツ335 万台となっている。特に中国市場の販売台数の成長は著しく、2007年の879 万台から3 倍近くまで拡大した。アメリカ市場も好調で、中国とアメリカの2 大市場が世界販売の伸びを牽引している。 中国、アメリカに次ぐ第3 の市場である欧州 (EU 圏 ) は、金融危機後のユーロ債務危機の影響を大きく受けている。図1-1 を見ると、欧州主要国では販売台数の縮小が続いていることが分かる。欧州全体の販売台数は2007 年の1,730 万台から6 年連続で縮小した。特にスペインとイタリアでの販売台数の減少が著しく、2013 年度スペインでは金融危機前の4 割、イタリアでは5 割まで縮小した。 自動車メーカー各社は世界最大の自動車販売台数を誇る中国を主戦場として販売に力を入れてきたが、中国の生産年齢人口 (15 歳~59歳 ) の減少、また景気減速により、中国の自動車市場は今までのような急激な成長を期待することはできない。 一方で近年、新興国 ( 先進国以外 ) の存在感が強くなっている。2000 年には世界販売台数で20 %強だった新興国市場の比率は、金融危機後の2010 年には、50%を超えるに至った。2020 年には新興国のシェアが6 割に達するという予測もあり、先進国を抑えて新興国が中国、アメリカに次ぐ市場になると予想されている。 ASEAN諸国では人口増加、所得拡大に伴い自動車販売台数が増加しており、自動車メーカー各社はASEANでの販売を拡大しようとしている。2014 年度の販売台数では、フィリピンが前年比27.1%、ベトナムでは42.8%の増加を記録した。第3 の市場は欧州から、アジアへとシフトしようとしている。 次にメーカー別販売台数を見てみる。図1-2 は2014 年の主要メーカー別販売台数を表している。世界シェアトップはトヨタ自動車 ( 以下トヨタ ) だ。2007 年に世界自動車販売台数でそれまでトップだった米ゼネラル・モーターズ ( 以下GM)を抜き世界最大の自動車メーカーになった。トヨタは2014 年度に全世界販売台数で1023 万台を記録し、自動車メーカーとして世界で初めて1000 万台を突破、3 年連続世界販売台数のトップに立った。 2014 年の主要メーカー別販売台数は、トヨタ、独フォルクスワーゲン ( 以下VW)の両グループがともに1,000 万台を超え、それぞれ1 位1,023 万台、2 位1,014 万台となった。これに992 万台の米ゼネラル・モーターズ、847 万台のルノー・日産、771 万台の現代自動車と続く。日系メーカーでは8 位ホンダと10 位スズキとなっている。以下13 位マツダ、14 位三菱自動車、15 位富士重工業と続く。日系メーカーだけで世界自動車販売の3割以上のシェアを占めている。 世界的に自動車販売台数が増え、新興国など新たな市場が多く生まれた。その中で自動車メーカーは環境規制への対応、ニーズに合った車両の開発、生産する必要があり自動車業界を取り巻く環境は厳しくなっている。世界規模で生産・販売台数を増やすために、自

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動車メーカーの再編が加速している。 1998 年には独ダイムラーベンツと米クライスラーが合併した。しかし、期待された次世代車の共同開発はうまく行かず、またクライスラーは財務状態が悪く、対等な関係を維持できなかったことから2007 年に提携を解消した。金融危機で自動車販売台数が落ち込んだことでクライスラーは大幅な赤字となり、2009 年に経営破綻し、伊フィアットの完全子会社となった。かつてトヨタと共に日本の自動車産業を牽引してきた日産は1990 年代に経営不振に陥ったが、1999 年に仏ルノーと資本提携を結び、経営の立て直しに成功した。 金融危機後はアメリカビッグスリーであるGM とクライスラーの2 社が倒産に追い込まれた。フォードは倒産を免れたものの、傘下のボルボ、ジャガー、ランドローバーをインドや中国企業に売却した。自動車産業は電気自動車など次世代車の開発、自動運転など新たな技術が求められる厳しい環境にある。 世界の自動車メーカーが厳しい環境にさらされる中、日本は乗用車メーカー8 社、トラックメーカー4 社の12 社があり、これだけ多くの自動車メーカーが存在するのは日本だけだ。次章では、高い競争力を持つ日本メーカーに注目して考察していく。 

図1-1 主要国の自動車販売台数推移 (2013 年度 )

出典:日本自動車工業会 世界四輪車販売

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図1-2  世界85 ヶ国主要メーカー別販売台数 上位15 社 (2014 年度 )

トヨタ1023

VW1014

GM992

ルノー・日産847

現代771フォード

632

FCA461ホンダ 

435

プジョー・シトロエン

293

スズキ287

ダイムラー254

BMW211

マツダ138

三菱107

スバル89 その他

1362(万台 )

出典:マークラインズ自動車産業ポータル資料

1.2  世界の中の日本車 世界自動車販売台数8,816 万台のうち2,845 万台を日系自動車メーカーが占めている。世界で売られる自動車の実に32.2%が日本車だ。国内で1000 万台近くを生産しており、自動車関連就業人口 1 は550 万人で、全就業人口の8.7% を占めている。自動車1 台につき、2 万~3 万点の部品から構成されており、自動車部品を製造する会社は1 万社以上存在している。その為、裾野の広い産業といえる。また国内の自動車出荷額等 2 は全製造業出荷額の17.8 % を占めている (2013 年実績 ) 。いまや自動車産業は日本を代表する産業にまで成長した。 なぜ日本車は世界自動車市場で大きなシェアを獲得することができたのか。一般的に日本車は欧米メーカーよりも価格が安く、故障が少ない信頼性の高い車と言われている。一例を挙げると、中東の武装ゲリラがトヨタのピックアップトラックを改造し戦闘に使用していたことから、一部紛争では「トヨタ戦争」と呼ばれた。紛争地域の過酷な環境下での走行でも故障しにくく、また修理も簡単であり「頑丈で信頼性の高い自動車= 日本車」ということを象徴している。アメリカの雑誌「コンシューマー・リポート」が2015 年10月に発表したブランド信頼調査ランキングによると、1位はレクサス、2位はトヨタ、3位アウディ、4位マツダ、5位富士重工業と日本車が上位の多くを占めた。 また技術面でも世界をリードしている。中でも環境技術で、日本は先進的な取り組みをしている。1997 年の地球温暖化防止の京都会議の流れと合うように、同年トヨタがエンジンとモーターを組み合わせて走行する燃費の良い世界初のハイブリッド量販車「プリウス」を発売した。また、2014 年12 月にはトヨタが世界に先駆けて、水素を燃料とし水しか排出しない水素自動車を発売した。 他日系メーカーの特徴を見ると、日産はハイブリッド技術で出遅れたものの電気自動車「リーフ」を発売し、世界で走る電気自動車の5 割以上のシェアを獲得している。ホンダはF1 などモータースポーツで培った技術を市販車にフィードバックし、高い技術力を

1自動車製造をはじめ、販売・整備・運送などに従事する就業人口のこと2 製造品出荷額等とは、製造品出荷額、加工賃収入額、修理料収入額、製造工程から出たくずおよび廃物の出荷額及びその他の収入額の合計であり、消費税等内国消費税額を含んだ額

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誇っている。こうして日本車は日本のみならず、世界中で大きなシェアを握っている。スズキは小型車を強みとし、新興国に早くから進出し世界10 位の販売台数を誇っている。 富士重工業は利益率で見ると規模では劣るが、富士重工業は売上高営業利益率が14.4%とトヨタの10%や日産の5.1 %に比べると圧倒的に高い。四輪駆動や走行性能の高さからSUVやスポーツカーが強みで「スバリスト」というファンが付くほど根強い人気がある。マツダも規模は小さいものの利益率は6% と高い。エンジン技術で特徴があり、世界で唯一量産に成功したロータリーエンジンや環境性能の高いディーゼルエンジンといった技術に定評がある。こうして各社はブランドを確立し、根強いファンを獲得したことが利益率の高さを誇っているだろう。 世界各地で高いシェアを誇っている日本車だが、苦戦している地域がある。それが欧州だ。世界販売台数で世界首位争いをしているトヨタとVW を例に見てみる。両社とも世界自動車販売台数では差がほとんど無いが、地域別販売台数を見ると大きく異なる。まず北米の自動車販売台数ではトヨタ272 万台でシェア14%に対し、VW は89 万台でシェアは僅か4% に過ぎない。他日系メーカーを含むと北米では4 割以上のシェアを獲得している。ASEANではトヨタの117 万台に対しVW は21 万台だ。しかし、欧州や中国では圧倒的にVW が強く、欧州ではトヨタが86 万台に対し、429 万台、最大市場の中国ではトヨタの105 万台、VW が368 万台となっている。トヨタは北米や中国を除くアジアで強いことが分かる。これはトヨタ以外の日系メーカーと同じ傾向である。 欧州で日系メーカーが弱い理由として、欧州で主流のエンジンが日本と異なることがある。日本ではガソリン車が主流で、ディーゼル車は新車販売で1 割にも満たない。しかし欧州ではディーゼル車はガソリン車に比べ、CO2 排出量が少なく、エコカーとして認識されている。さらに税優遇され、ディーゼル燃料もガソリンに比べ安い為、ディーゼル車の販売比率は2013 年では53%となっている。特にフランスやベルギーでは新車販売の7 割以上がディーゼルエンジン車だ。 日本でも近年、クリーンディーゼル車が普及してきたが国内販売台数に占める割合は僅かであり、ガソリン車が主流であることに変わりはない。日本でエコカーと言えば、プリウスやリーフのようなハイブリッド車、電気自動車である。クリーンディーゼル車の国内販売台数に占める割合は僅かである。その為日本メーカーは、ハイブリッド技術では世界をリードしている一方、ディーゼルエンジンの開発では欧州メーカーに遅れをとっている。世界販売首位のトヨタは独BMW と提携し、同社が開発した中小型ディーゼルエンジンを提供してもらっている。日産も仏ルノーや独ダイムラーからディーゼルエンジンを提供されている。ディーゼルエンジンの分野において日本メーカーは、燃費面や性能面で欧州メーカーに対抗できず、欧州では販売シェアが低いと考えられる。

1.3  軽自動車の躍進 先に述べた通り、国内自動車販売はピーク時の半分である500 万台前後を推移している。その低迷する日本市場で今、異変が起きている。2014 年に日本国内で保有される自動車のうち20%以上がハイブリッド車となった。ハイブリッド車やクリーンディーゼル車といった次世代車が台数を増やしており、従来のエンジン車は75%にまで減った。そして図1-3 のグラフは国内の種類別自動車販売台数を表している。 自動車は車体とエンジンの排気量の大きさにより「軽自動車」、「小型自動車」、「普通自動車」の3 つに分類される。「軽自動車」とは車体の大きさが全長3.4 メートル以下、全幅1.48メートル以下、全高2.0 メートル以下で、排気量が660cc 以内の自動車のことを指す。「小型自動車」は全長4.7 メートル、全幅1.7 メートル、全高2.0 メートル以下、排気量が2000cc 以下、「普通自動車」は小型自動車の基準を1つでも上回る車のことを指す。 図1-3 のグラフを見ると、軽自動車が急激にシェアを取っていることが分かる。2014年度の登録車販売台数が329 万台だったのに対し、軽自動車は227 万7,000 台だ。新車販売される40.9%は軽自動車ということになる。

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 図1-4 は軽自動車を含むメーカー別乗用車の販売台数を示している。1 位トヨタで151万台、2 位はホンダで85 万台、3 位スズキで79 万台、ダイハツ4 位で71 万台、5 位は日産で67 万台と続く。各社メーカーの販売台数に占める軽自動車の割合はホンダが47.0%、スズキが90.0%、ダイハツは99.7%、日産が36.0%となっている。日産は軽自動車を自社開発せず三菱自動車やスズキからOEM供給を受けていたが、2011 年に三菱自動車と日産の間で合弁会社が設立され、共同開発している。 軽自動車の保有台数を見ると、2014 年には1000 世帯当たり487 台と、2009 年に比べて65 台増、率にすると15.4%増えている。日本国内の軽自動車保有台数は2980 万台で、日本で保有される車の38.7%が軽自動車だ。 ちなみに1985 年から1990 年にかけて普通自動車が大きく増えている。これは1989年に税制度が変わったことが影響している。それまで小型車に課せられていた税金は普通車の半額程度だったが、普通車と同じ税負担になった。そのため小型車、普通車の垣根がなくなり、海外進出を進めたい日系自動車メーカーの都合もあり、大型化が進んだ。戦後から長い間、小型自動車が主流であったことから、昭和期に作られた道路や駐車場などの多くは小型車向けに作られた。その為、現在でも車幅や長さの短い小型車は運転しやすく、現在でも根強い人気がある。

図1-3 種類別国内自動車販売の内訳

1975 1980 1985 1990 1995 2000 2005 2010 20140%

10%20%30%40%50%60%70%80%90%

100%種類別国内自動車販売台数の内訳

軽自動車小型自動車普通自動車

出典:日本自動車工業会のデータ

図1-4  メーカー別国内販売シェア (2014 年度 )

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トヨタ ホンダ スズキ ダイハツ 日産 マツダ スバル 三菱0

200000

400000

600000

800000

1000000

1200000

1400000

1600000

1509149

848753 787361 708179 670315

224359 169552 125083

出典:マークラインズ自動車産業ポータル資料第二章 軽自動車はなぜ売れるのか

2.1  軽自動車誕生と繁栄の歩み 「軽自動車」という概念は1949 年に誕生した。戦後、移動手段としては二輪車が主流であった。自転車にエンジンを付けたようなものまで含めると、二輪車を製造する会社は1950 年代には100 社以上存在した。自動車は庶民にとって高嶺の花であり、当時、一番安い自動車であった日野・ルノー4CVは750cc で60 万円台、1000cc を超える自動車は100 万円を超えていた。自動車の需要は貨物が多く、乗 用車としての需要はバスやタクシー向けなどがほとんどで、個人が所有するというマイカーへの需要は少なかった。 こうした状況の中1950 年初頭、通産省は一般庶民でも自動車を所有できることを目指し、国民車構想を打ち出した。国が一定の基準をつくり、それに合致したメーカーを1 社選定して、国が補助をする内容だった。しかし、日本の自動車メーカーは、国が定めた基準が現実的でなかったことに反対し、この構想は実現されなかった。国民車構想に先駆けて、軽自動車のもととなる規格が1949 年に誕生した。制定当時の規格は全長2.8 メートル、幅1.0 メートル、高さ2.0 メートルで排気量は150cc 以下であり、二輪三輪四輪の区別はなかった。1951 年に規格が改定され、幅1.3 メートル、長さ3 メートル、エンジンは360cc にまで拡大された。 軽自動車規格に対応した自動車は、自動車修理を営んでいたような小さな町工場から、戦時中は飛行機を作っていたメーカーにまで幅広く開発された。いちはやくこの規格に対応した軽自動車を開発したのは、当時主に二輪車を製造していた鈴木式織機から社名を変更したばかりの鈴木自動車産業 ( 現スズキ ) だ。1955 年に鈴木自動車産業から軽自動車「スズライト」が42 万円で発売された。鈴木自動車産業はこれをきっかけに織機メーカーから二輪車・自動車メーカーへと変容した。同じく1955 年にはトヨタ自動車から日本初の本格的な乗用車クラウンが発売された。さらに、1958 年には中島飛行機が前身の富士自動車工業 ( 現富士重工業 ) から「スバル360 」が同じく42 万円で発売された。当時の大卒の国家公務員の初任給が 9200 円であったことから、現代の価値に換算すると800 万円相当ということになる。それでもなお高いが、40 万円台の軽自動車は一般的なサラリーマンも所有が現実味を帯びてくる価格だった。軽規格制定後の1950 年代は、スズキのような大手メーカー以外にも多くの中小メーカーが軽自動車を開発したが、どれも技術的に未熟な自動車が多く、最高速度をみても時速

(台)

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40km~60km 程度で2 人乗りと実用に耐えうるものではなかった。スズキやスバルが開発する軽自動車は限られた規格の中で、最高時速80km を超えることができる十分なパワー、そして大人4名がゆとりを持って乗車することを可能とした。そして当時日本に多く残る未舗装路を走破することができる完成度の高い自動車であった。1960 年代に入ると、東洋工業 ( 現マツダ ) やホンダ、新三菱重工業 ( 現三菱自動車 ) も相次いで軽自動車製造に参入し、競争激化により価格は下落していった。1960 年には30 万円という低価格でマツダからR360 が発売された。 高度経済成長期には日本経済の成長とともに、自動車の販売台数は急速に増加した。大卒の国家公務員の初任給でみると、1959 年には1万円を超え、1965 年には2 万2,000円にまで倍増した。所得の拡大により乗用車需要は拡大し国内の自動車保有台数は、1965 年の630 万台、1967 年には1,000 万台を突破し、全国いたるところで自動車が走るようになった。表2-1 は車種別乗用車生産台数を表している。自動車の普及に軽自動車は大きく貢献した。軽自動車は普通車と比べると4 つの点で大きく優遇されていた。①軽免許 (2輪免許 ) で乗れる②車検が不要③税金や保険が割安④車庫証明が不要。これら4 点だ。1965 年には軽自動車に課せられていた速度規制が撤廃され小型・普通車と同等となった。こうした優遇により、軽自動車は一般庶民でも手軽に乗れるようになった。 しかし高度経済成長が終盤を迎えた1970 年代になると売れ行きが鈍り始める。1970年に75 万台だった軽自動車の生産台数が、1975 年には58 万台までに落ち込んだ。理由としては、小型車のラインナップの充実と価格低下が考えられる。1964 年には日産から小型車サニーが468,000 円、1966 年にはトヨタからカローラが498,000 円、東洋工業やホンダ、いすゞなど各社から小型車が発売された。当時軽自動車の排気量は360cc だったが、サニーは1000cc 、カローラは1100cc とエンジンが大きくまた車体も軽自動車より大型である一方、一般庶民もなんとか手の届く価格だった。当時の日本では所得の拡大により日本人の生活は豊かになり、自動車はステータス・シンボルとしてより大きな自動車が求められた背景もあり、小型車が販売シェアを増やした。 また1975 年、1978 年と段階的に改正された排気ガス規制に対応のためのコストがかかり、車両価格の上昇により小型車と価格差が少なくなっていた。軽自動車の魅力であったはずの経済性が失われた。このためホンダは1973 年に、東洋工業は1977 年に軽自動車製造を休止し、軽自動車ブームは終焉を迎える。1980 年代半ばまで、新車販売に占める軽自動車の割合は5% にも満たなかったが、1990 年にかけて急激に販売台数を増やしている。軽自動車が再び売れるようになった理由を次節で考察していく。

表2-1  車種別乗用車生産台数普通車 小型車 軽自動車 合計

1955 年 - 20,220 48 20,2681960 年 - 128,984 36,110 165,0941965 年 3,139 599,030 94,007 696,1761966 年 5,301 752,494 119,861 877,6561967 年 12,652 1,080,567 282,536 1,375,7551968 年 23,606 1,550,459 481,756 2,055,8211969 年 24,967 2,026,899 559,633 2,611,4991970 年 51,619 2,377,639 749,450 3,178,708

出典:日本自動車工業会 (1988)「日本自動車産業史」

2.2  規格改訂と共に進化した軽自動車 図1-3 を見ると1990 年以降、国内自動車販売における軽自動車の比率は増え続け、2014 年は新車販売の40%が軽自動車である。なぜこれほど爆発的に軽自動車が増えたの

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だろうか。理由には「軽自動車の規格改訂と進化」により、小型車と遜色のない性能と室内空間を実現したことがある。本節ではどのようにして、軽自動車規格の歴史と革新的な軽自動車の進化を考察していく。表2−2は軽自動車規格の変遷を表している。1949 年に軽自動車の元となる規格が制定されて以来、規格改訂が行われてきた。規格制定当初はエンジン構造の違いにより排気量の上限が異なっていたが、1954 年には統一された。また、高速道路網の拡張、カーエアコン普及による馬力荷重による馬力不足を解消するため、排気量は段階的に引き上げられた。 1970 年にはアメリカで成立した大気浄化法改正法、いわゆるマスキー法と呼ばれる自動車排出ガス規制が強化された。自動車が排気する有害物質 ( 一酸化炭素、炭化水素、窒素酸化物 ) を10 分の1 以下にするという厳しい規制だった。自動車メーカーの都合は一切考慮せずに制定された。日本でもマスキー法にならい、同等の厳しい排気ガス規制が1975 年に制定され、段階的に排出基準が厳しくなった。しかし軽自動車規格の360cc という低排気量で排ガス規制に対応させると馬力が低下するため、それを避けるために550cc まで排気量は引き上げられた。排気量のほか、車体寸法でも衝突安全性の確保を目的として、1976 年に全幅・全長が大きく拡大された。車体の大型化、車両重量の増加に伴い排気量は1990 年に660cc まで引き上げられ、高速道路で課せられていた軽自動車の80km/h 制限は2000 年に廃止された。排気量の上限引き上げ、車体サイズはいずれも少しずつ拡大され、軽自動車は小型・普通車に迫る大きさになった。しかし、全幅や全長が100mm や200mm 拡大されても簡単に室内空間を広くすることはできない。では軽自動車は限られたサイズの中で、いかにして車内空間を広げることができたのか。 それには軽自動車の形状の多様化が大きく関係している。1990 年以前は大きく分けて2 つのタイプの軽自動車が存在していた。1 つはセダン型 ( ボンネットバンを含む ) の軽自動車、2 つ目は車高が高いワンボックスタイプで、前者は主に乗用車、後者は商用車として使われていた。軽乗用車はセダン型が主流で、全高は1400mm程度であり全幅や全長が短い軽自動車では車内が狭く我慢を強いられる車だった。1990 年以前はスズキ・アルトやダイハツ・ミラなどボンネットバンの軽商用車が主流であったことは、税制度が大きく影響している。 1989 年に消費税が導入されるまで自動車には物品税が課せられていた。物品税とは贅沢品に課税される税金のことだ。自動車は嗜好性の高いものとされ、1946 年には100%の物品税が課されていた。1950 年には普通車が30%、そして小型車、軽自動車共に20%が課せられた。普通車は小型・軽自動車より嗜好性が高いと考えられ、高い税率だった。 1981 年には物品税小型車18.5%、軽自動車が15.5%となった。しかし軽商用車 3 には物品税が課せられていなかった。そこでスズキは「節税対策車」として、定員は4 人だが実質2 人乗りという商用車規格の軽自動車アルトを1979 年に発売した。新車販売価格47 万円という低価格は商用車として分類されたことで実現した。荷室が広いボンネットバン型軽乗用車がブームとなり、ダイハツ・ミラなど他メーカーも追随して発売した。 商用車規格の乗用車が多く発売されたことで、1981 年それまで課されていなかった物品税が軽商用車に対しても税率5% 課されるようになった。1981 年には小型車の税率が17.5%に引き上げられたが、軽自動車は15%のままだった。1984 年には小型車の税率は18.5%に引き上げられたが、軽乗用車は15.5%、そして軽商用車は5.5% と小型乗用車よりも引き上げ幅は小さかった。しかし1989 年、消費税が導入されたことで物品税は廃止され、商用車と乗用車の税格差は少なくなった。そうして商用車ベースのボンネットバン型乗用車の軽自動車の人気は下火となった。そこから軽自動車は安さだけでなく、空間の広さを求められるようになった。こうした背景からボンネットバン型の軽商用車が1989年以前は主流だった。 しかし、それまでの常識を覆すような軽自動車「ミニカ・トッポ」1990 年に三菱自動

3貨物用など商用目的の自動車を指すリアシートより荷室を大きくしなければならない為、リアシートにはヘッドレストなどがなく快適性は低い

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車から発売された。ボンネットバン・セダン型であったミニカをベースに、全高を200mm 上げ1600mm以上と高くし、室内空間の広さを確保した。この軽自動車は現在主流のハイトワゴンという新たなジャンルを確立し、翌年にスズキは同じくハイトワゴンのアルト・ハッスルを発売した。これらの軽自動車はセダン型の自動車をベースに、全高を高くしただけのものであった。 1993 年に「軽自動車は狭い」という従来の常識を覆す革新的な軽自動車が発売された。それがスズキから発売された「ワゴンR 」だ。この軽自動車はハイトワゴン用に新たに設計されており、単純に全高を高くするだけでなく、席も高くすることで足元の空間を広くし、同時に広い視界を得ることを可能にした。この革新的な構造により人気を博し、ダイハツはハイトワゴンのムーヴを発売し、ホンダ、三菱自動車、富士重工業からも追随して発売された。 2003 年にはダイハツからハイトワゴンより全高を高くし、極限まで室内空間を広くしたタントが発売された。ハイトワゴンを超える高さのスーパーハイトワゴンというジャンルが確立され、スズキからスペーシア、ホンダからはN-BOXが発売された。2013 年度の軽自動車実態調査によるボディタイプ別販売シェアでは、トールワゴンを含むハイトワゴンタイプが62%を占めており、室内空間の広い軽自動車が求められていることが分かる。これは一般的な小型車よりも室内空間が広い。 表2-3 は各社の主要な普通・小型車と軽自動車の大きさを比較している。車体寸法では圧倒的に大きいクラウンだが、車内空間の広さで見ると軽自動車のN-BOXの方が大きいことが分かる。スズキ・アルトは昔から存在するボンネットバン型で室内容量は少ない代わり、の車内空間は広い一方、全幅、全長共に普通・小型車に比べ短いため、日本に多く存在する道路幅の狭い道でも難なく運転できる。軽自動車ユーザーの6割を占める女性は、運転に苦手意識を持っている人が多く、軽自動車は運転のしやすさで評価されている。全長、全幅が短い反面、全高を上げたことで普通・小型車並の室内空間、積載を可能にした。 軽自動車ユーザーの中で、普通・小型車からダウンサイジングした人は26%を占めており、年々普通・小型車から乗り換えるユーザーは増えている。軽自動車のこうした進化により軽自動車がシェアを拡大していったと考えられる。

表2-2 軽自動車規格の変遷施行日 排気量 寸法 (mm)

( 全長x 全幅x 全高 )1949 年7 月8 日 4 サイクル 150cc 以下

2 サイクル 100cc 以下2800x1000x2000

1950 年7 月26 日 4 サイクル 300cc 以下2 サイクル 200cc 以下

3000x1300x2000

1951 年8 月 4 サイクル 360cc 以下2 サイクル 240cc 以下

3000x1300x2000

1954 年10 月 360cc 以下に統一 改定なし1976 年1 月1 日 550cc 以下 3200x1400x20001990 年1 月1 日 660cc 以下 3300x1400x20001998 年10 月 660cc 以下 3400x1480x2000

出典:軽自動車検査協会資料

表2-3  主な軽自動車と普通・小型車の車内寸法の比較種別

メーカー・車種

車体寸法 (mm)( 全長x 全幅x 全

高 )

車内寸法 (mm)( 全長x 全幅x

全高 )

室内容積( リットル )

価格燃費

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普 通 車

ト ヨ タ ・ ク ラ

ウ ン

4895x1800x1450 1975x1510x1190 3548 リットル

388 万円~13.4km/L

小 型 車

日 産 ・ ノ ー ト

4100x1695x1525 2065x1390x1255 3602 リットル

147 万円~26.2km/L

小 型 車

ホ ン ダ ・

フ ィ ッ ト

3995x1695x1525 1825x1415x1290 3331 リットル

129 万円~21.8km/L

軽 自 動 車

ダ イ ハ ツ ・ タ

ン ト

3395x1475x1750 2160x1350x1355 3951 リットル

122 万円~28.0km/L

軽 自 動 車

ホ ン ダ ・ N-BOX3395x1475x1780 2180x1350x1400 4120 リット

ル119 万円~25.6km/L

軽 自 動 車

ス ズ キ ・ ア ル

3395x1475x1500 2040x1255x1215 3110 リットル

84 万円~37.0km/L

出典:各社自動車メーカー仕様表

2.3  女性と軽自動車 前節では軽自動車の規格改訂と進化について考察したが、軽自動車が販売シェアを増やしたもう1 つの大きな理由に女性ユーザーの増加がある。軽自動車は男性ユーザー4 割に対して、女性ユーザー6 割だ。軽自動車新車購入の3 人に2 人が女性であり、本節では軽自動車には女性ユーザーが多いという点について考察していく。 図2-1 は運転免許保有者の男女別構成比を表している。この表からは女性の免許保有者が増えていることが分かる。1985 年に男性免許保有者は3427 万人に対し、女性免許保有者は1807 万人だった。それが2014 年には男性免許保有者が4543 万人で増加率は175% 、女性免許保有者は3664 万人と増加率は203% だった。過去30 年間で女性の免許保有者は2 倍に増加しており、女性の伸びが大きく、自動車を運転することができる女性が大きく増えたことが分かる。 では女性は自動車をどのように使用しているのか。図2-2 は自動車の利用用途を表している。男性は日帰り旅行や一泊旅行など長距離の移動手段として自動車を使っている割合が高い。一方、女性は男性に比べると旅行などで自動車を使用せず、食品・日用品などの買い物、郵便局や銀行、役所などへの足、病院や介護・福祉施設への通院などに多く使用されている。この図からは女性は男性ユーザーに比べて、自動車を近所など近距離の移動手段として使っていることが分かる。また女性軽自動車ユーザーは普通自動車を使う女性に比べてほぼ毎日使う割合が多く、自動車がなかった場合の困窮度も男性ユーザーや女性普通自動車ユーザーに比べて高い。自動車は移動手段として重要なポジションを担っていることが考えられる。 図2−3は軽自動車の満足ポイントを表している。男性、女性ともに運転のしやすさを最も評価している。女性は男性に比べて運転に苦手意識を持つ人が多く、小型で小回りがき

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き運転しやすい軽自動車に満足している。女性はその他にスタイル・外観、車体色など軽自動車の車体を評価している。しかし男性ユーザーは女性とは異なり税金の経費、保険の諸経費、車両価格など経済的な部分を評価する傾向がある。女性からの評価が高かった軽自動車のスタイル・外観、車体色について詳しく見てみる。 2015 年の新車販売ランキング1 位~10位 4 の自動車のカラーバリエーション ( ツートンカラー含む ) の数では、小型・普通車は平均12 色、軽自動車は平均12.3色と若干だが軽自動車が多いもののそれほど差はなかった。近年では小型・普通車でもカラーバリエーションが増えている傾向にある。小型車であるホンダ・フィットやトヨタ・ヴィッツは単色だけで17 色展開しており、軽自動車のホンダ・N-BOXの単色11 色より多い。カラーバリエーションの多さが軽自動車の魅力であるとは一概に言うことはできない。しかし、軽自動車を主力とするスズキやダイハツは女性の取り込みに力を注いでいる。女性をターゲットとした丸みを帯びた可愛らしい軽自動車である、スズキ・ラパンやダイハツ・ミラココアなどを発売している ( 図2-4)。スズキの発表によるとラパンの前モデルでは購入者の9 割が女性だという。スズキは売れ筋の車種でも子育てにかかせない箱ティッシュペーパーを助手席や天井に収納することができる女性目線の軽自動車開発が進んでいる 女性ユーザーへのアプローチを強めるために、「スズキは国内営業推進部に「女子改」と呼ばれる組織を設置した。営業強化に向けて販売店の店舗の内装などについて改善点を提案する。」 5 とある。子供が遊べるスペースや授乳室を設置するなどして、女性客の取り込みに力を入れている。ダイハツでは販売店をカフェのように改装し、女性客に気軽に立ち寄ってもらえる販売店を目指す「カフェプロジェクト」が進んでいる。ホンダは軽自動車に特化した販売店「スモールストア」を展開しており、窓を大きくすることで外から中が見えるようにして、女性客が入りやすい店舗を増やしている。軽自動車の一番の特徴である「運転のしやすさ」に加えて、メーカーによる女性目線の軽自動車設計、そして女性が入りやすい販売店の増加により、今後ますます軽自動車を選ぶ女性は増えると考えられる。

図2-1 運転免許保有者 男女別構成比

1970 1975 1980 1985 1990 1995 2000 2005 2010 20140%

10%

20%

30%

40%

50%

60%

70%

80%

90%

100%

女性男性

出典:警視庁 運転免許統計 平成26 年版

4 アクア、N-BOX、タント、デイズ、プリウス、ムーヴ、フィット、アルト、カローラ、ワゴンRの小型・普通車 4車種と軽自動車6車種5 「軽自動車販売、女性に照準 スズキ・ダイハツ・ホンダ」日本経済新聞 2013年 3 月 19日電子版 http://www.nikkei.com/article/DGXNZO53000500Z10C13A3TJ3000/

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図2-2 自動車の利用用途

出典:「軽自動車の使用調査報告書」 日本自動車工業会(2013 年9 月23 日~2013年9 月30 日の期間にWEB 調査実施 )

図2-3 軽自動車の満足ポイント

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出典:「軽自動車使用実態調査」日本自動車工業会 55 ページより引用

図2−4 女性をターゲットとした軽自動車

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出典:ダイハツ・ミラココア、スズキ・ラパン 車両HP より引用

第三章 海外ニッチ市場を開拓したスズキ3.1  2 社しかなかったインド自動車市場 「軽自動車」は日本国内でしか通用しない独自規格であることから、国内で独自の進化を遂げた携帯電話「ガラパゴス携帯」になぞらえ、「ガラ軽」と揶揄されることもある。軽自動車は本当に国内でしか通用しないガラパゴスカーなのだろうか。実は既に軽自動車が海外進出に成功した例がある。それが1982 年にインドへ進出したスズキだ。スズキはインドで販売シェアの40%以上を獲得している。インドでスズキはどのようにして成功したのか本節ではインドの自動車産業の歴史を考察していく。 インドでは日本と同様に古くから自動車産業が発展しており、1930 年代には米GM やフォードが進出し、年間10 万台程度の生産能力があった。また1940 年代に入ると、現地財閥企業が自動車製造に参入しヒンドゥスタン・モーターズ、プレミア・オートモービルズが相次いで設立された。中国初の自動車メーカーである第一汽車は1953 年に設立されているので、インドではいかに早くから自動車産業が発展していたか分かる。 インドは長らく植民地支配されていたが1947 年に独立し、政府は社会主義的な国内産業保護の政策をとった。多くの産業では政府による許認可制度がとられ、政府から受けた製造免許に従い生産しなければならなかった。製造免許の内容は生産台数に限らず、製品の詳細な仕様にまで言及されており、それらを変更するためには政府の承認が必要だった。会社側からすると非常に煩雑な手続きが必要であり、それがインドの工業発展を妨げた原因の1 つである。この許認可制度は自動車産業も例外ではなかった。外資メーカーに対しても国は厳しい政策をとり、1953 年には自動車の部品国産化を推進した。部品の国産化を推進できない会社に対し、政府は閉鎖勧告という厳しい姿勢をとり、これに対応できなかった米GM と米フォードは1954 年にインドから撤退した。自動車の輸入も禁止され、インド自動車メーカー2 社による独占が1980 年代まで続くことになる。 競争のない産業となったインド自動車産業は散々なものであった。自動車のラインナップは非常に乏しく、1954 年に発売された自動車が2014 年まで販売され続けるというような状況だった。自動車の販売価格は国によって統制される上に、法人税は非常に高く利益はほとんど出なかった。技術革新は生まれず、生産台数も限られていたため販売する努力はほとんどされておらず、自動車メーカー側の売り手市場だった。こうした状況で、マルチが設立される1981 年以前の数年は年間販売台数平均4 万台程度だった。 インド政府はこうした状況を打破するために国民車構想を打ち出した。こうした経緯か

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ら1981 年に国営企業としてマルチ・ウドヨグ社 ( 以下マルチ ) が設立された。設立にあたり年間10 万台の自動車生産と国内で製造した部品を使用することが義務付けられた。設立当初、パートナー企業の第一候補は仏ルノーであった。しかしマルチが行った市場調査でインド国民が求めている自動車は小柄な車体の自動車、低燃費で低価格であることが求められていると分かった。国民車としてルノーはふさわしくないと判明し、マルチ・ウドヨグの調査団は世界の自動車メーカーを視察した。日本を訪問したときインドに適した小型車を強みとしていた鈴木自動車工業 ( 現スズキ ) が国民車として適切であると考えられた。また当時社長であった鈴木修 ( 現代表取締役会長 ) の積極的な対応によりパートナー企業として選ばれ、1982 年に合弁会社を設立した。 日本で発売されていたスズキ「アルト」をベースとしてインド向けに改良を加え、1983 年には排気量を800cc にまで上げた「マルチ800 」をインドで発売した。低燃費と低価格を実現し、予約だけで10 万台を超える大人気を博した。それ以来インドでは自動車販売台数は右肩上がり、1991 年にインド政府が行ってきた輸入代替工業化を転換し、経済改革が行われた。それにより外資自動車メーカーが多く参入し、より一層自動車販売台数は増えていった。図3-1 は2014 年度インドにおける自動車販売のシェアを表している。インドにおける2014 年度のマルチ・スズキの自動車販売台数は117 万台で世界全体の4 割を超えている。マルチ・スズキが2 位の現代自動車を圧倒的に上回る45%のシェアを獲得している。次節ではスズキの軽自動車がどのようにして、インド国民の心を掴んだのか考察していく。

 図3-1 2014年度インド国内販売シェア

45%

16%

9%

7%

6%

5%

3%

2%2%2%2% 1%

マルチ・スズキ現代マヒンドラ&マヒンドラホンダタタトヨタキルロスカフォードGM日産ルノーVWその他

出典:インド自動車工業会資料を基に作成

3.2  インドの国民車「マルチ・スズキ」 1983 年に「マルチ800 」が発売されて以来、現在まで日本で発売した小型車をベース

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に排気量800cc~1000cc の小型車を中心に低価格で販売している。現在の最人気車種「アルト800 」は30 万ルピーで日本円に換算すると55 万円程度である。中国の最人気車種であるフォードの小型車は130 万円程度、インドネシアの人気車種は150 万円といかにインドの自動車が安いかが分かる。2008 年にマルチ・ウドヨグ社を完全子会社とした。スズキはインド市場で小型車で他メーカーを寄せ付けない地位を確立し、スズキのインド事業はいまや経営を支える屋台骨だ。 1982 年に合弁会社を設立していらい、マルチは経済成長を続けるインドの自動車販売台数は日本やブラジルに続く世界5 位だ。とりわけ日韓メーカーが販売を伸ばしている。インドの2014 年度の新車販売台数は2013 年度から3 %増となり、321 万台だった。新車販売台数が増える中で、人気が高まりつつあるセダンなどでヒット車を生み出した現代やホンダなどがシェアを高めている。2014 年度の人口は2014 年時点で13 億1000 万人、2022 年には中国を超え人口世界一位になるという予想 6 もある。2005 年には5 %程度だった中間所得層の人口構成比は、2015 年に20%、2025 年には40%に拡大すると予測され、旺盛な消費を見込まれグローバル企業はインドへの投資を加速している。しかし、インドの1 人当たりのGDPは1608 ドル (2012年度 ) で、日本の36222ドルには遠く及ばず、中国の7572 ドル、タイの5896 ドルにも及ばない。インドの自動車市場は50~100 万円以下を中心とする小型自動車が全体の販売の8 割を占めている。3.3  欧米メーカーの反撃

第四章 軽自動車ブームは続くのか4.1  いつまで続く税優遇 日本自動車工業会による2013 年度軽自動車使用実態調査報告書によると、消費者が軽自動車を購入する理由は「車使用面」に比べて、「経済性面」を重視する比率が72%であり高いことが分かる。また購入者の85%は「税金の安さ」から軽自動車を選んでいる。軽自動車を保有している世帯年収を見ると400 万円以下が39 %と最も多くなっている。経済的な余裕がないため、税金が安く、小型・普通車と比べて燃費の良い軽自動車が選ばれていると考えられる。また、原油高などを背景に燃費の良さが好まれて小型・普通車からの買い換えも増えており、新車購入ユーザーで小型・普通車からの乗り換えは26%を占めている。 日本では自動車の購入、維持するのに消費税の他、主に3 つの税金がかかる仕組みになっている。その3 つとは①自動車取得税、②自動車重量税、③自動車税・軽自動車税だ。 ①の自動車取得税とは自動車を買うときに課される税金だ。普通車は購入額の3 %、軽自動車は2 %の自動車取得税がかかる。②の自動車重量税は、新車購入時と車検時に普通車は0.5 トンあたり年4,100 円、軽自動車は1台3,300 円というように車両重量によって課税される。③の自動車税・軽自動車税は買った翌年度からは毎年課税される。普通・小型車は排気量によって課される自動車税、軽自動車には軽自動車税を課される。自動車税は国税で、軽自動車税は都道府県税になる。 自動車の購入、維持のためにはこれら3つの税金がかかる。軽自動車は排気量と車体の大きさを制限される代わりに、税金は安く設定されている。小型車の場合、自動車税は34,500 円だが軽は10,800 円と3 分の1以下である。また、自動車購入時と車検時にかかる車両重量税でも車両重量が1トン以下の軽自動車と小型・普通車の間では約3 倍の開きがある。 軽自動車と小型・普通車との税金の差を比較してみる。軽自動車と排気量が1000cc 以下の小型車として代表的なトヨタ「ヴィッツ」、日産「マーチ」ではどれほどの負担差が生まれるか。660cc 以上1000cc 未満の自動車の場合は29,500 円であり、一年間だけで10,000 円以上の差が生まれる。軽自動車と小型車ではほとんど同等の燃費と馬力だが、軽自動車の方が課される税金は格段に低い。

6 2015年 7 月 29日国連が発表した「世界人口予測」17

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 こうした税優遇により、軽自動車は維持費が安く、国内自動車販売シェアを伸ばしてきたと考えれる。

4.2  利害で対立する軽自動車規格

参考文献

・軽自動車販売、女性に 照準 ス ズ キ ・ダ イ ハ ツ ・ホ ン ダ

2013/3/19 日本経済新聞

・「日経ス ペ シ ャ ル ガ イ ア の 夜明け 」人気沸騰!軽自動車

ウ ォ ーズ 2013/05/28( 火)

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