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平成 30 年度 千代田学研究成果報告書 WebGIS を用いた 千代田ヴァーチャル時空散歩アプリの構築 日本大学 田中ゆかり

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平成 30年度 千代田学研究成果報告書

WebGISを用いた

千代田ヴァーチャル時空散歩アプリの構築

日本大学 田中ゆかり

目次

1. プロジェクト概要 ........................................................................................................ 1

1.1. プロジェクトメンバー ............................................................................................. 1

1.2. プロジェクトの内容 ................................................................................................. 2

1.3. プロジェクトの活動 ................................................................................................. 2

2. 江戸・東京WebGISの増補 ........................................................................................ 3

3. 資料搭載のための実地調査 ......................................................................................... 5

4. プロトタイプアプリの開発 ......................................................................................... 8

5. 持ち運び地図ファイルの作成 .................................................................................... 12

6. 今後の課題 ................................................................................................................. 16

7. 謝辞 ............................................................................................................................ 16

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1. プロジェクト概要

本プロジェクトでは、千代田区と日本大学文理学部双方の情報資源を最大限に活用する

ことを目指し、基盤サイトの充実とそれに基づく「千代田ヴァーチャル時空散歩」ができ

るプロトタイプアプリの構築に取り組んだ。

千代田区は江戸・東京の中心地としての歴史を持つことから、区内に歴史・文化財が多

数存在する。例えば、標柱・説明板・碑といった名所・旧跡や、建造物、石碑といった千

代田区に関連する人物などである。このようなコンテンツを、Web 上の地図にマッピング

し、それを誰でも使えるように無料で公開すれば、一般の方々にも利用しやすい形で千代

田区の歴史・文化財の価値を共有することができるという考えに基づくものである。

コンテンツ類をWeb上の地図にマッピングするプラットフォームのひとつに、研究代表

者らによる「江戸・東京WebGIS」(2013年から公開中)がある。これは、Google Mapに

近世・近代期の古地図や文学テキスト・写真を配置し、近世・近代・現代を透かし見るこ

とで江戸・東京圏を再構築することを目指したものとなっている。この「江戸・東京WebGIS」

には、さらなる充実を望む声も寄せられていたため、本プロジェクトでは千代田区の豊富

な文化資源を「江戸・東京WebGIS」に搭載することとした。

2018 年度中に、当該サイトを基盤としたスマホで閲覧可能なプロトタイプアプリ「江戸

東京ものがたり」と、千代田区に焦点を絞りコンテンツ搭載箇所で立ち寄るとスタンプを

集めることのできる「御朱印帳」をイメージしたゲーム性をもつ「ちよダッシュ!」の完

成を目指した。

1.1. プロジェクトメンバー

本プロジェクトは、以下のメンバー・研究班で構成された。

研究代表者:田中ゆかり(日本大学文理学部国文学科教授・全体班)

研究協力者:古川隆久(日本大学文理学部史学科教授・資料班)

松重充浩(日本大学文理学部史学科教授・資料班)

谷聖一(日本大学文理学部情報科学科教授・情報班)

関根智子(日本大学文理学部地理学科教授・地理班)

竹下義人(日本大学文理学部国文学科教授・資料班)

山岸郁子(日本大学経済学部教授・資料班)

林直樹(日本大学経済学部専任講師・全体班)

アプリ開発:黒滝遥(日本大学文理学部情報科学科 4年・谷聖一研究室)

小柴宏規(日本大学文理学部情報科学科 4年・谷聖一研究室)

平出裕大(日本大学文理学部情報科学科 4年・谷聖一研究室)

池田怜未(日本大学文理学部情報科学科 4年・谷聖一研究室)

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1.2. プロジェクトの内容

本プロジェクトでは、大きく以下のことに取り組んだ。

1) 江戸・東京WebGISの増補(全体班・資料班)

2) 資料搭載のための実地調査(全体班・資料班)

3) プロトタイプアプリの開発(全体班・情報班)

4) 持ち運び地図ファイルの作成(全体班・地理班)

2章以降では、ここに掲げたプロジェクトの内容ごとに報告を行っていく。

1.3. プロジェクトの活動

本プロジェクトでは、次のスケジュールで対面打ち合わせを実施した。対面打ち合わせ

と並行し、ML等を活用し、随時打ち合わせと情報共有を行いながら、本プロジェクトを推

進した。

4月 26日(木) 全体会議(全体班・資料班・情報班・地理班)

5月 14日(月) アプリ制作にかんする打ち合わせ(全体班・情報班)

7月 19日(木) アプリ制作にかんする打ち合わせ(全体班・情報班)

11月 7日(水) アプリ制作にかんする打ち合わせ(全体班・情報班)

12月 17日(月) 発明届け提出にかんする打ち合わせ(全体班・情報班)

12月 20日(木) 全体会議(全体班・資料班・情報班・地理班)

12月 24日(月) アプリ公開のための情報登録・打ち合わせ(全体班・情報班)

1月 10日(木) 地図ファイルについての打ち合わせ(全体班・地理班)

1月 16日(水) アプリ公開のための情報登録・打ち合わせ(全体班・情報班)

1月 30日(水) プロトタイプアプリの確認(全体班・情報班)

2月 3日(日) プロトタイプアプリのデモ用デバイスへの搭載(全体班・情報班)

2月 9日(土) ちよラボ!参加・発表(全体班)

3月 23日(土) 大妻女子大学さくらフェスタ参加・発表(全体班)

この他にも、日本大学文理学部開講科目「フィールドワーク入門 2」(担当教員:竹下義

人)、日本大学経済学部開講科目「教養研究」(担当教員:山岸郁子)において、実地調査

を授業の一環として実施した。

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2. 江戸・東京WebGIS の増補

本プロジェクトでは、千代田区の歴史・文化財を一元的に地図上に表示し、区内を周る

際に活用できるWebサイトの構築を目指した。

このWebサイトの構築にあたっては、日本大学文理学部で開発した「江戸・東京WebGIS」

(www.chs.nihon-u.ac.jp/jp_dpt/nichigo-nichibun/web-edo-tokyo/)を用いた。これは、

Google Mapに近世期・近代期の古地図や文学テキスト・写真を配置し、近世・近代・現代

を透かし見ることで江戸・東京圏を再構築することを目指したものである。現状、Webブ

ラウザやスマートフォンから使用することができる。スマートフォンを使用した場合、GPS

機能を駆使して現在地と同期させることが可能で、閲覧者の現在地最寄りの景物や関連の

翻刻済みの文書類を読み取ることができる。

「江戸・東京WebGIS」に搭載する千代田区の資料として、千代田区によって整備され

ている千代田区全域にある標柱データを使用した。これは、千代田区が「千代田区の文化

財」HP(http://edo-chiyoda.jp/bunkazai-sign.html)として公開しているで、「千代田区公

共サインデザインマニュアルに基づき区内の文化財や史跡、橋、坂、旧江戸城の城門など

に文化財サイン(標柱・説明板)を設置」されている。

なお、WebGISに搭載した標柱データは、千代田区文化振興課からデータの提供を受け

た。このデータに位置情報を付与し、「江戸・東京WebGIS」に搭載するための準備を行っ

た。データを展開したイメージは、以下のとおりである。

図 1:「江戸・東京WebGIS」での千代田区資料展開イメージ

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図 2:「江戸・東京WebGIS」QRコード

このように「江戸・東京WebGIS」に展開した地点は、計 175である。「千代田区の文化

財」HPに説明文が記載されている場合、当該URLのリンクを貼った。

図 3:「千代田区の文化財」HP例

「千代田区の文化財」HPは多言語対応が進められている。「江戸・東京WebGIS」もそ

れに対応すべく多言語化することが今後の目標となる。

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3. 資料搭載のための実地調査

先述の「江戸・東京WebGIS」に搭載する資料を追加するため、日本大学文理学部・経

済学部それぞれで調査を行った。日本大学文理学部では、研究協力者の竹下義人が担当す

る現地調査型授業「フィールドワーク入門 2」の中で、新井巌(2012)『番町麹町「幻の文

人町」を歩く』(言視舎)を参考にし、事前学習の上、千代田区番町~麹町界隈の文学・文

化にかんする現地調査を行い、写真撮影等を行い、事後に項目ごとの報告を作成した。

図 4:調査風景 1

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図 5:調査写真 1

日本大学経済学部では、研究協力者の山岸郁子ゼミナールの一環として、千代田区編

(2005)『千代田まち事典―江戸・東京の歴史をたずねて―』(千代田区区民生活部)に記

載されている千代田区内の名所・史跡を中心に、写真撮影とデータ化を行った。

これらの調査は、順次「江戸・東京WebGIS」に反映していく。また、今後は千代田区

内の地域特性を勘案し、アニメやマンガの舞台となったいわゆる「聖地」なども視野に入

れながら、追加実地調査も行っていく予定である。

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図 6:調査風景 2

図 7:調査風景 3

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4. プロトタイプアプリの開発

日本大学文理学部情報科学科の学生を中心として、「江戸・東京WebGIS」のプロトタイ

プアプリの作成と、将来の一般公開のための準備作業を行った。これまで、「江戸・東京

WebGIS」はスマートフォンでも閲覧することができていたものの、データ量が多く、十分

に動作が重いなどの問題があり、不便であった。そのため、スマートフォンでの使用に特

化したプロトタイプアプリ「江戸・東京ものがたり」を作成した。

さらに、「江戸・東京ものがたり」に御朱印帳機能を追加し、一般の方々に楽しんでもら

うためのゲーム性を追加した「ちよダッシュ!」も、プロトタイプアプリとして開発した。

いずれも、準備整い次第、昨日を拡充しながら、近い将来の一般公開を目指す。

図 8:「江戸・東京ものがたり」「ちよダッシュ!」アイコン

「江戸・東京ものがたり」・「ちよダッシュ!」の開発にはMonacaを使用した。データ

ベース管理機能にはニフクラ mobile backend、APIは Google Maps APIを用いた。

以下、プロトタイプ版「ちよダッシュ!」の概要を簡単に説明する。

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図 9:「ちよダッシュ!」画面 1

上記が「ちよダッシュ!」起動画面である。下部に表示された選択肢の資料を選ぶと、

現在地に近い地点のピンがプロットされる。

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図 10:「ちよダッシュ!」画面 2

各ピンを選択すると、そのピンの資料情報が表示される。また、現在地を表示すると、

自身の現在地の 100m半径が表示される。この半径に何らかのピンが入るとスタンプを押

すことができ、半径内に含まれていないピンは押せないような仕組みとなっている。

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図 11:「ちよダッシュ!」画面 3

ピンを表示すると説明文最下部に「スタンプ」と表示される。現在地との距離計算をし、

許容範囲内であれば「スタンプ」を押すことでスタンプを取得できる。当該資料との距離

が離れている場合は、「スタンプ」を押すことができない。

このように、実際に自分自身で資料に近い地域に足を運び、スタンプを集めながら資料

についても学べるという機能を実装したのが「ちよダッシュ!」である。

今後は、一般公開に向けて、スタンプ機能やスタンプを押すことによって得られるなん

らかの特典を付与することを検討したい。

また、公開に際しては、Android, iOSどちらでも使用できるようになることが望ましい

と考え、両者で公開するための準備を進めている。

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5. 持ち運び地図ファイルの作成

これまで述べてきたWebサイト・アプリだけでなく、実際に持ち運びできる地図で時空

散歩を楽しんでもらうことも目指し、地図ファイルの作成を行った。

地図ファイルの作成にあたっては、ゼンリン(株)の「mati mati」シリーズを基にし、

千代田区界隈の名所をプロットしたファイルを作成した。

ファイル作成にあたっては、「江戸・東京WebGIS」に搭載されている資料を選定し、地

図上にプロットすることとした。プロットした資料は以下のとおりである。

神田駿河台

水道橋(神田上水懸樋)

飯田橋

日本大学開校の地

神田三崎町

三崎稲荷神社

日本大学経済学部

日本大学法学部

富士見

旗本屋敷跡

千代田

江戸城

九段北

大村益次郎の銅像

爼橋

九段南

中坂・九段坂

九段常灯明台(九段下灯台・高灯火籠)

一番町

サトウ公使植桜の地

滝廉太郎居住地跡

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図 12:持ち運び地図ファイルのファイル面

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図 13:持ち運び地図ファイルの中紙面(表)

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図 14:持ち運び地図ファイルの中紙面(裏)

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上記のファイルは、希望があれば、部数の限り千代田区役所・関係各所に配布可能であ

る。また、街歩きイベントでもこのファイルを活用していくことを予定している。

ファイルを希望する方は、次年度事業の一環として、[email protected]

に件名:「千代田ファイル希望」とし、名前・希望枚数・送付先をお送りいただけば、部数

の限り送付したい。

6. 今後の課題

最後に、今後の課題を簡潔に述べる。

まずは、「江戸・東京 WebGIS」やアプリへの搭載資料を充実させていくことを目指す。

これまでは史跡資料を主に搭載してきたが、千代田区には各種コンテンツに登場するいわ

ゆる「聖地」が多くあり、それらを搭載することにより、訪日外客などにとってもより有

益なサイト・アプリになると考えた。これは、千代田区内の地域特性の異なるエリアを複

数選定し、調査する予定である。

次に、「江戸・東京 WebGIS」や「ちよダッシュ!」、持ち運び地図ファイルを用いた街

歩きイベントの実施、ならびに授業での活用を目標とする。これにより、作成したサイト・

アプリが有益であることを国内外に広めていきたい。

「江戸・東京 WebGIS」や「ちよダッシュ!」の多言語化も視野に入れる。ただし、現

在搭載している資料はデータ量が多く、すべてを多言語化することは現実的ではないため、

どのような資料から多言語化するかなど、優先順位を付けた後に行っていきたい。

7. 謝辞

本プロジェクトの推進にあたっては、千代田区役所コミュニティ総務課の皆さま、なら

びに千代田区文化財推進課風間栄一氏に多大なるご協力をいただきました。記して感謝申

し上げます。

平成 30年度 千代田学研究成果報告書

WebGISを用いた千代田ヴァーチャル時空散歩アプリの構築

田中ゆかり編

〒156-8550 世田谷区桜上水 3-25-40 日本大学文理学部国文学科

03-5317-9706

https://dep.chs.nihon-u.ac.jp/japanese_lang/nichigo-nichibun/web-edo-tokyo/

2019年 3月発行