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235 フィリピンの貧困はなぜらないのか ?: 労働市場からの接近にむけての予備的分析 Why Has Poverty Reduction been so Slow in the Philippines?: A Preliminary Approach through the Lens of Labor Market Nobuhiko Fuwa In the past few years, the rate of economic growth in the Philippines has been among the highest in Asia, surpassing that of China and India. In contrast with such a short-term picture, however, for the past few decades, the pace of both economic growth and poverty reduction was much slower in the Philip- pines than in other Asian countries. In addition, the level of income inequality in the Philippines remains among the highest in Asia, and there has been little change in the incidence of absolute poverty in the recent several years. Such longer-term tendencies cast serious doubt about the potential sustainability of the current economic performances and raise the question of why poverty reduction has been so slow in the Philippines compared to that in its Asian neighbors. is paper is intended as an initial step toward addressing the question by focusing on the labor market. Its descriptive analysis reveals that wage incomes declined mainly due to declining real wage ratesduring the period between 2003 and 2009 in most of the regions, despite the general increase in per-capita consumption expenditures used here as a proxy for per-capita income. e gap between the growing total income per-capita and the declining wage incomes has been filled by remittances from abroad. Since the poor typically depends almost exclusivelyon wage incomes, the declining trends in real wage rates imply that the poor are not likely to have benefitted from the recent growth episode. 1. 序説:課題設定 近年のフィリピン経済のパフォーマンスには見張るものがある1990 年代以降急成長てきたアジアの大国インドや中国経済成長にかげりがまた近隣のタイでは政治的混乱 断続的いているのとは対照的フィリピンは長年政治的混乱,経済停滞からようやくりつつあるかにみえる2013 年第 1 四半期にはアジア諸国経済成長率記録ているそもそもフィリピン経済1950 年頃まで日本所得水準教育水準るアジ アの最優等生であったしかしながらその後,特1980 年代以降成長目覚しいアジアの近隣諸国 とは対照的,経済成長および貧困削減のいずれにおいてもきく後塵,「Sick man of Asiaなどと揶揄されてきたDaily Inquirer, Jan. 23, 2013)。しかしながらリーマンショック世界経済 停滞する中,フィリピン経済ビジネスアウトソーシング3 次産業牽引されて相対的 良好なパフォーマンスをせておりインド・中国たなアジアの「新興国」として注目アジア太平洋討究』No. 23 June 2014早稲田大学大学院アジア太平洋研究科,Graduate School of Asia-Pacific Studies, Waseda University

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フィリピンの貧困はなぜ減らないのか?:労働市場からの接近にむけての予備的分析

フィリピンの貧困はなぜ減らないのか?: 労働市場からの接近にむけての予備的分析

不 破 信 彦†

Why Has Poverty Reduction been so Slow in the Philippines?: A Preliminary Approach through the Lens of Labor Market

Nobuhiko Fuwa

In the past few years, the rate of economic growth in the Philippines has been among the highest in Asia, surpassing that of China and India. In contrast with such a short-term picture, however, for the past few decades, the pace of both economic growth and poverty reduction was much slower in the Philip-pines than in other Asian countries. In addition, the level of income inequality in the Philippines remains among the highest in Asia, and there has been little change in the incidence of absolute poverty in the recent several years. Such longer-term tendencies cast serious doubt about the potential sustainability of the current economic performances and raise the question of why poverty reduction has been so slow in the Philippines compared to that in its Asian neighbors. �is paper is intended as an initial step toward addressing the question by focusing on the labor market. Its descriptive analysis reveals that wage incomes declined (mainly due to declining real wage rates) during the period between 2003 and 2009 in most of the regions, despite the general increase in per-capita consumption expenditures (used here as a proxy for per-capita income). �e gap between the growing total income per-capita and the declining wage incomes has been filled by remittances from abroad. Since the poor typically depends (almost exclusively) on wage incomes, the declining trends in real wage rates imply that the poor are not likely to have bene�tted from the recent growth episode.

1. 序説:課題の設定近年のフィリピン経済のパフォーマンスには目を見張るものがある。1990年代以降急成長を遂げ

てきたアジアの大国インドや中国の経済成長にかげりが見え始め,また近隣のタイでは政治的な混乱

が断続的に続いているのとは対照的に,フィリピンは長年の政治的混乱,経済停滞からようやく立ち

直りつつあるかにみえる。2013年第 1四半期には,アジア諸国の中で最も高い経済成長率を記録し

ている。そもそもフィリピン経済は,1950年頃まで日本に次ぐ所得水準と高い教育水準を誇るアジ

アの最優等生であった。しかしながらその後,特に 1980年代以降成長の目覚しいアジアの近隣諸国

とは対照的に,経済成長および貧困削減のいずれにおいても大きく後塵を排し,「Sick man of Asia」

などと揶揄されてきた(Daily Inquirer, Jan. 23, 2013)。しかしながらリーマンショック後の世界経済

が停滞する中,フィリピン経済は,ビジネス・アウトソーシング等の第 3次産業に牽引されて相対的

に良好なパフォーマンスを見せており,インド・中国に次ぐ新たなアジアの「新興国」として注目さ

『アジア太平洋討究』No. 23 (June 2014)

† 早稲田大学大学院アジア太平洋研究科,Graduate School of Asia-Paci�c Studies, Waseda University

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れつつある。

しかしながら同時に,フィリピンの所得分配の不平等度は依然アジアの最高水準を維持しており,

更に近年の高い経済成長にもかかわらず,絶対貧困率は 2006年以降ほぼ横ばいのままである等,急

速な経済成長の恩恵は貧困層に届いてはいない。次節にて再確認するように,長年アジアの発展途上

諸国の中でもフィリピンの貧困削減パフォーマンスの悪さは群を抜いている。本稿の出発点にある問

題意識は,フィリピンの貧困はなぜここまで頑固に減らないのか,という問いにある。筆者はこの問

いに対して従来よりいくつかの視点から接近を試みているが(Balisacan and Fuwa, 2004; Fuwa, Bali-

sacan and Bresciani, 2011),本稿では,賃金率の推移と所得に占める労働収入の割合に着目する。一

般に貧困層の収入源のほとんどすべては労働収入からなる。従って例えば,賃金率の低下および労働

収入の低下は,特に貧困層の生活水準が向上しない又は低下する可能性を強く示唆する。その様な問

題関心のもと,その一次接近として本稿では,2003年から 2009年にかけての全国データおよび地域

別データをもとに大雑把な傾向を叙述することにより,今後のより詳しい分析の端緒とすることを意

図している。

第 2節では,まず他のアジア諸国と比較した際に特に顕著なフィリピン(経済)の独自性を簡単に

再確認する。第 3節では,本稿で報告する予備的なデータ分析のモティベーションともなった,

Karabarbounis and Neiman (2014)の分析をとりあげ,グローバルなレベルで,労働収入の割合の低

下傾向が見出されることを確認する。第 4節では,遅々として絶対貧困が減らないフィリピン経済に

対する一つの視角として,労働収入の割合の低下傾向の有無を検討する。第 5節では,本稿における

発見の要約と暫定的な結論を述べる。

2. アジアの異端児フィリピン?:なぜ貧困が減らないのかフィリピンは,アジアの中でもいくつかの意味でユニークな位置を占めている 1。例えば,過去 20~30

年のタームで見ると,1人当たり国民所得の伸び率が近隣アジア諸国に比べて著しく低い 2。さらにより

重要なことは,(そもそもアジアではあまり高水準ではない)経済成長の速度に比べて,絶対貧困の減

り方が他の発展途上国に比較してもさらに遅い。例えば,フィリピンにおける「一人一日当たり 1ドル」

貧困線以下の生活水準で暮らす人々の比率で測った絶対貧困率は,1980年代半ばには 3割強であった

が,1990年代に 2割強に低下して以降,2000年代以降を通じて,あまり大きく変化していない 3。貧困

が経済成長に反応する程度を定量化することを目的とする「貧困削減の経済成長弾力性」(「growth

elasticity of poverty reduction」:一人当たり国民所得が 1%増えた際に,それに伴って絶対貧困率が

何%減少するかを示す)を比較すると,フィリピンの「貧困削減の経済成長弾力性」値は約 1.6である

のに対し,アジアの近隣諸国のそれは,3から 3.5であった(Balisacan and Fuwa 2004; Cline 2004)。

また,絶対貧困率の相対的な高さに加え,所得分配の不平等度の水準においても,フィリピンは長

年にわたってアジアでも最高水準で停滞している。例えば,所得分配のジニ係数の推移を見ると,

1990年代の時点では,当時高成長を続けていた中国,タイなどのそれはフィリピンのそれを若干上

1 以下の内容は,拙稿(2013)の第 2, 3節の内容と重なる。 2 例えば,拙稿(不破,2013)図 1。 3 例えば,拙稿(不破,2013)図 2。

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回っていたが,1990年代後半以降は逆転している(不破 (2013);図 3)。従って,フィリピン経済は,

ごく最近の数年間を除くと国民所得全体が(他のアジア諸国に比べて)一貫して伸び悩んでいたこと

のみならず,その比較的小さめの「パイ」を分け合う配分のパタンにおいても格差が大きく,いわば

貧困層にとっては二重に不利な経済・社会構造を長年引きずって今日に至っているといえる。2007

年には,いわゆる「BRICs」4に次ぐ「NEXT 11」5のひとつに数えられるなど,後発(あるいは復活し

た ?)「新興国」とみなされつつあるフィリピンではあるが,しかしながら,中・長期的に必ずしも

楽観できない所以である。

なお,このような経済・社会的な「病理」のほかにも,フィリピンにはアジア諸国の中でいくつか

の特徴的なことがある。たとえば,古くから海外出稼ぎ労働者を世界中に送り出し,今日で言う「グ

ローバリゼーション」の動きを先取りしていたとも解釈できる 6。またフィリピンの特異性の肯定的な

一側面として,ジェンダー格差の不在も特筆できる。一般に東南アジアでは女性の相対的な地位が高

いと認識されているが(Atkinson and Errington, 1990),フィリピンはその中でも群を抜いている。

例えば,世界経済フォーラムの「Global Gender Gap Report」によると,フィリピンは,2012年の

gender gap index(ジェンダー・ギャップ指標)において,北欧の国々やニュージランドについで世

界で総合ランクは第 8位(135カ国中)であり,他のアジア諸国を大きく引き離している(Hausman

et al., 2012)。またフィリピン農村部における家計内の各種資源配分に関する定量分析結果からも,

総じて男女が平等に扱われていること,さらには女児が若干優遇される可能性すら伺われる(Qui-

sumbing et al., 2004; Fuwa, 2014)。

従って,経済面の特徴(所得水準,成長率,貧困,所得格差など)をもって,フィリピンを「アジ

アの劣等生」として単純に位置づけることは必ずしも妥当ではない。とは言うものの,本稿では,そ

の経済面の病理にフォーカスをし,特に「なぜフィリピンでは経済成長が絶対貧困の削減に寄与する

程度が著しく弱いのか」,という課題を念頭におきつつ,さらにより限定的に,その一つの側面への

予備的接近として,国民所得,賃金率,及び労働所得の近年の推移を叙述することを目的とする。

3. グローバルなトレンドとしての労働収入比率の低下傾向フィリピンにおける賃金率と労働所得水準の近年の動向を見る前に,本節では,既存文献に依拠し

つつ,グローバルな傾向を概観する。経済学者の間では,伝統的に(国民)所得に占める生産要素(主

に資本と労働から構成される)所得の割合は,長期に安定的なものとみなされていた。しかしながら,

最近になって生産要素所得の割合の中・長期的な変化の傾向を指摘する実証研究が台頭している。

(Harrison, 2002; Rodriguez and Jayadev, 2010; Karabarbounis and Neiman, 2014)。例えばHarrison

(2002)は,途上国における労働シェアの低下と先進国における労働シェアの増加を指摘した。それ

に対し,Karabarbounis and Neiman (2014)は,グローバルなトレンドとして労働シェアが低下して

4 2000年頃以降いわゆる「新興国」として認知されているブラジル,ロシア,インド,中国,を指す。 5 「BRICs」の次に急成長が見込まれる国々として,イラン,インドネシア,エジプト,韓国,トルコ,ナイジェリア,パキスタン,バングラデシュ,フィリピン,ベトナム,メキシコをさす。「BRICs」同様,投資銀行ゴールドマンサックスの投資レポートに由来するとされる。

6 例えば,世界中を航行する船舶の乗組員の最大の割合(約 2割)をフィリピン人が占めていることが知られている(Aguilar, 2003)。

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いることをデータをもとに示しており,興味深い。以下では Karabarbounis and Neiman (2014)に

よる主な発見事実を要約する。

Karabarbounis and Neiman (2014)は,基本的な発見として,1975~2010年の 35年間の間に,グ

ローバルに見た所得に占める労働所得の割合は,64%から 59%へと,約 5パーセンテージポイント

低下したことを見出している。さらに国別に見ても,分析対象となった 59カ国中 42カ国において労

働所得の割合が低下している 7。更に,先進国のみならず,この時期労働集約的な産業に比較優位を持

つとみなされていた発展途上国(中国,インド,メキシコ等)においても同様の傾向がみられる。従っ

て,単に,国際貿易を中心としたグローバリゼーションの進展によって,国際分業(例えば,途上国

がより労働集約的,先進国が資本集約な産業にそれぞれ特化する,と言った形で)が進んだ,という

単純な図式でもないようである。

さらに,国毎の単位のみならず,産業別にレベルを落として分析を行っても,ほぼ同様な結果が見

出されている。すなわち,詳細な分析を行った 10産業のうち 7産業(鉱業,運輸交通,製造業,ユー

ティリティ,流通,公共サービス,建設)において,やはり労働所得の割合が低下している 8。従って,

産業構造自体の変化に起因するものではないことが伺われる。また,アメリカの国内に於いても同様

なトレンドがみられ,全米のうち約 3分の 2の州で労働所得の割合の低下がみられる。

さらに興味深いことに,資本財の相対価格の低下が進んだ国や地域に於いて,労働収入の割合が低

下していることを指摘している。Karabarbounis and Neiman (2014)によると,そのような資本財の

相対価格の低下の傾向は,コンピュータや IT部門を中心とする技術革新の結果である。すなわち,

グローバルに見られる労働所得の割合の低下は,(広い意味での)資本財の相対価格の低下(消費財

の価格に対してグローバルなレベルで約 25%の低下)の結果,多くの産業内で,財またはサービス

の生産過程において労働力を資本で代替する動きが進んだことによる結果であるとみる。

Karabarbounis and Neiman (2014)の公刊論文から判断する限り,当該論文の分析においてフィリ

ピンは含まれてはいない。それは,少なくとも彼らが分析を行った時点では,他国のデータとの比較

に十分に耐えうるデータ系列が得られなかったからためと思われる。しかしながら,彼らが分析に先

だって収集したデータファイルがウェブ上で公開されており,その中にはフィリピンも含まれてい

る。そのデータによると,フィリピンに於いては,当該データの観察期間である 1992年から 2008

年の間に労働収入の割合の低下傾向は全く見られない。むしろ逆に労働収入の割合は若干の増加傾向

がみられるくらいである。また,資本財の相対価格の推移については,フィリピンにおいては,

Karabarbounis and Neiman (2014)が収集した 2種類のデータ系列のうち,一つに於いて約 1割の

低下傾向がみられるが,もう一方のデータ系列ではほとんど変化が無いか若干の上昇傾向がみられ

る。従って,いずれにせよ,1992~2008年の間の期間におけるフィリピンでは,Karabarbounis and

Neiman (2014)がグローバルに見出した傾向,即ち労働収入比率の低下と,その背後にある(はずの)

生産工程における資本による労働の代替という現象は見出されない。すなわち,この面に於いても,

7 ただし,これは,データ入手の可能性及びデータ処理の便宜上などの各種の(技術的)事情・制約により企業セクターの所得に限定される。その結果彼らの分析から除かれている主要なセクターは自営業および政府部門であるが,企業部門は総付加価値の約 6割を占めているので,大まかな傾向をとらえるという目的からに照らして,必ずしも決定的な問題とは言えないかもしれない。

8 他方,農業と金融セクタにおいては,労働所得の割合は増加している。

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フィリピンはグローバルなトレンドとは一線を画した「異端児」である,という可能性が示唆される。

4. フィリピンにおける収入構成の変化:2003~2009年の予備的データ分析4.1 データ・ソース

Karabarbounis and Neiman (2014)の分析が依拠しているデータは,各国の国民所得会計をもとに

したものである。しかし,発展途上国において国民所得の成長や貧困度の基本統計として広く利用さ

れているいま一つのデータソースとして,家計消費支出調査がある。本稿では,フィリピンについて

後者のデータソースを用いて,Karabarbounis and Neiman (2014)と類似の分析を試みる 9。ただし,

現時点で筆者が入手したデータ系列は 2003年から 2009年の期間であり,Karabarbounis and

Neiman (2014)と同様の分析を行うには期間が短すぎるため,本節で報告する内容は,あくまで予

備的な作業と位置付けられる。

本稿では,フィリピン政府の国家統計局(National Statistical O�ce)が実施している「Family

Income and Expenditure Survey (FIES)」および「Labor Force Survey (LFS)」を用いる 10。FIESは,

3年毎に行われる全国規模の家計消費所得調査であり,フィリピンの生活水準,消費者物価,貧困統

計等のベースとして使われる基本的統計データソースの一つである。2000年センサスをベースに全

国で約 4万世帯の標本家計が無作為に選ばれるが,そこでの標本フレームは,17の地域(「region」)

についてそれぞれ代表的な標本を得られるべく設計されている。各標本家計に対しては,半年毎に二

回の聞き取り調査を行い,数百項目に及ぶ消費支出項目に関する家計消費支出調査(自家消費を含む)

および収入源別の所得(現金および現物を含む)調査を含んでいる。本稿では,予備的な接近として,

2003年,2006年,2009年の FIESの個票データを用いる。2003年,2006年,2009年のおおよその

家計標本数は,それぞれ,42,000,36,000,38,000である。なおペソ建ての金額はすべて消費者物価

指数でデフレートして 2009年価格による実質値として表されている。

さらに本稿では,賃金率の推移をあわせて検討するために,「Labor Force Survey (LFS)」データを

あわせて用いる。LFSは,FIESと同じ標本フレームにて無作為抽出された約 5万家計に対して,主

に過去 7日間の労働状況に関する情報を得ている。LFSは毎年 4回ずつ行われるが,本稿では FIES

の実施年にあわせた 3時点のデータポイントの個票データを用いる。

本稿の分析では,FIES,LFS両調査の標本フレームにあわせて,全国平均および各地域別の平均の

両方を用いる。

4.2 予備的分析結果全国平均:

本稿では,FIESデータをもとに,2003年から 2009年の間の所得水準および主要収入源の推移に

9 多くの国において,これら二つの異なるデータソースの間で,国民所得の水準やその成長率等に関して必ずしも整合的ではないことが,知られている。いずれのデータ系列が実態をより正確に反映しているか,については論争が続いている。この論争に対して,第 3のデータソースを利用することで,国民所得会計の優位性を主張する興味深い最近の論考として,Pinkovskiy and Sala-i-Martin (2014)がある。

10 本稿で使用している個票データの入手に当たっては,アジア開発銀行コンサルタントの Sharon Faye Piza氏の補助を得た。感謝を申し上げたい。

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ついて概観する。発展途上国における絶対貧困の水準や,生活(又は厚生)水準,所得格差等の指標

を推定するデータ・ベースとして,家計調査で得られた総所得ではなく,同調査で得られた総家計消

費支出を優先的に用いるのが一般的である 11。表 1は,一人当たり家計消費支出および一人当たり家

11 先進国とは対照的に,一般に途上国では所得水準よりも消費支出の方が聞き取り調査による補足が相対的にしやすく(従って測定誤差が少ない),かつ,所得に比べて消費の方が短期間の変動が少ないことから,厚生水準の代理変数としての「所得」概念により近い変数として広く認識されている。この点についての古典的な議論としては,例えば,Deaton (1997)。

表 1 フィリピンにおける平均家計所得,賃金率および労働所得の推移 2003~2009(全国平均)

表 2 フィリピンにおける平均家計所得,賃金率および労働所得の推移 2003~2009(地域別)

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フィリピンの貧困はなぜ減らないのか?:労働市場からの接近にむけての予備的分析

計所得,賃金率および労働所得,その他の主要な収入源ごとの家計所得等の 2003年から 2009年の

間の全国平均の推移を示している。また表 2は,それらの指標の地域別(17地域)に平均の推移を

より詳しく見たものである。図 1から図 4は,表 2の情報の一部を,視覚的に棒グラフで表してい

る。

厚生水準の基本指標としての一人当たり家計消費支出に着目すると,2003~2006年,2006~2009

年いずれの期間も増加している(表 1)。2003~2009年の間の伸び率は約 5%である。他方一人当た

り家計所得は,2003~2006年にやや減少したが,2006~2009年の期間には増加に転じている。

2003~2009年の間の伸び率は約 4%である。一人当たり家計消費支出よりも低い伸び率であるが,

上述のように,所得データよりも消費支出データのほうがより信頼性が高いとみなされる。一般的に

は,少なくとも途上国においては,所得の補足もれが少なくなく,とりわけより高所得層ほどその傾

向は顕著なものと思われるからである。

全国平均でみると 2003~2009年間にフィリピン国民の生活水準は約 5%程度向上したと見られる

が,その間の賃金率の推移を見ると,それとは対照的に一貫して低下傾向にあることがわかる。一人

当たり家計消費支出の傾向とは逆に,2003~2009年間に約 6%弱実質賃金率は下がっている(表 1)。

なおかつ,賃労働収入を得ている家計の割合には大きな変化は見られないため,家計の賃金収入も賃

金率の低下とともに減少し,2003~2009年間の減少率は約 2%である。

図 1  2003,2006, 2009年の三時点でのフィリピン 17地域別(及びフィリピン全国)の一人当たり実質家計消費支出水準の推移 (データソース:Family Income and Expenditure Surveyより筆者作成)

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一方で賃金水準と労働収入が低下しているにもかかわらず家計消費支出(総収入の代理変数)は増

加しているということは,労働収入以外の所得源からの収入が増えているということを意味するが,

主にこれは海外からの送金受け取りによってそのギャップが埋められていたことがわかる(表 1)。

これは海外に出稼ぎに出ている家計構成員からの送金が中心であると想像される。2003~2009年間

に海外からの送金額は 17%増加している。同時期の国内からの送金受け取りも更に高い伸び率

(27%)で増えているが,絶対額は海外からの送金受け取り額に比較すると少ない(約 3分の 1)。

結果的に,フィリピン経済の大きな特徴のひとつである海外出稼ぎへの依存度の高さが,労賃金収

入の低下を補っていることが伺える。また,家計所得を農業所得,非農業所得に区別してみると,そ

の相対的な比率はあまり大きく変化していないことが伺われる。

地域別:

今までの議論ではフィリピンの全国平均の推移を見てきたが,本節では,フィリピンの 17地域の

地域別にやや詳しく見てゆく。図 1は,地域別の一人当たり家計消費支出の推移(2003, 2006, 2009)

を示している。既に以前から指摘されているが(例えば,Balisacan and Fuwa, 2006等),地域間の平

均所得の格差は大きい。マニラ首都圏(NCR)のそれが特に突出しており,マニラ首都圏とそれ以

図 2  2003,2006,2009年の三時点でのフィリピン 17地域別(及びフィリピン全国)の一人当たり実質家計所得水準の推移 (データソース:Family Income and Expenditure Surveyより筆者作成)

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フィリピンの貧困はなぜ減らないのか?:労働市場からの接近にむけての予備的分析

外の地域での格差が大きく開いていることがわかる。マニラ首都圏についで所得水準が高いのは,

CARABARZONおよび中部ルソンであるが,これらはいずれもマニラ首都圏に隣接する地域であり,

フィリピン経済の一極集中の構造がうかがわれる。他方平均所得が低い地域は ARMMやサンボアン

ガなど,ミンダナオ島およびそれ以南のイスラム圏で,以前より最も所得水準が低いことで知られる。

ただしこれらの所得水準の地域格差のパタンと,その背後にある地域的属性および歴史的背景などの

議論については別稿に譲るとして,本稿では大雑把なパタンを把握することに専念することとする。

地域間のレベルの格差に加え,2003年から 2009年の間の所得水準の増減のパタンにも地域のバラ

つきが少なくない。この間の一人当たり家計消費支出の変化率は,全国平均では(上述のように)5%

であるが,地域別の変化率は,マイナス 9%(ARMM)から 14%(サンボアンガ半島)と大きな開

きがある。これら最低及び最高の伸び率を示した地域は,いずれもフィリピンでも所得水準が最も低

い地域であり,各地域特有の事情に大きく左右される複雑なパタンがうかがわれる。他方マニラ首都

圏(NCR)は,その所得水準は極端に高いものの,この時期の所得の増加率は 4%と,全国平均に比

較的近い水準であった。地域ごとのバラつきが大きいものの,2003年から 2009年の間に一人当たり

家計消費支出が減少したのは 17地域中 4地域のみであり,全体としてみると多くの地域で生活水準

が向上したことがわかる。とはいうものの,成長率の地域間格差の存在ゆえ,4%の成長率という全

国平均から受ける印象程には楽観はできないとはいえよう。

図 3  2003,2006,2009年の三時点でのフィリピン 17地域別(及びフィリピン全国)の一人当たり実質賃金所得水準の推移 (データソース:Family Income and Expenditure Surveyより筆者作成)

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全国レベルの場合と同様に,一人当たり家計所得のデータからうかがわれる所得水準の変化のパタ

ンは,一人当たり消費支出データからうける印象よりはやや悲観的になる。例えば,17地域中半数

近い 8地域において,2003年から 2009年の間の所得の変化率はマイナスとなっている。ただし前述

のように,一般に家計所得の代理変数としては家計所得データよりも家計消費支出データが重視され

るので,この二つのデータ系列の間の乖離をいかに解釈するべきであるのかは,直ちには明らかでは

ない。

これら総所得の変化に対して,地域別の賃金率および労働所得の変化はどうか。図 4は,地域別の

実質賃金率の推移(2003, 2006, 2009)を示している。一人当たり所得に比べると地域間の水準の格

差は遥かに小さいことはさほど驚くに当たらないが,いくつか特筆すべきことがある。一つには,い

くつかの最も貧しい地域において,マニラ首都圏と同等またはそれをも超える高水準の平均賃金率が

見受けられることである。とりわけ意外なことに,前述のようにフィリピンでも最も貧しい地域であ

る ARMMの平均賃金率が,マニラ首都圏のそれをも上回っており,同様に貧しい地域であるサンボ

アンガの水準も相対的に高い。詳しいことは直ちには明らかではなく,データをより詳しく検討する

必要があるが,ARMM地域についてこのデータから分かることは,労働賃収入に依存する家計の割

合が極端に低いことである。家計収入のうち労働収入がゼロではない世帯は通常 7割程度またはそれ

以上であるが,ARMMのみ約 2割程度に過ぎない(表 2)。言うまでもなく,一般に賃金収入が得ら

れる職業は多岐にわたり,いわゆる土地なし農業労働者から,大都市の大企業の職員までその賃金率

と収入水準には大きな幅がある。これは現時点では仮説にすぎないが,何らかの理由により,

図 4  2003,2006,2009年の三時点でのフィリピン 17地域別(及びフィリピン全国)の実質賃金率の推移 (データソース:Labor Force Surveyより筆者作成)

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フィリピンの貧困はなぜ減らないのか?:労働市場からの接近にむけての予備的分析

ARMMでは農業労働者をはじめとする低所得の労働者が少なく(農業部門は零細な農家がほとんど

を占めていると思われる),他方で賃金労働者は比較的条件の良い役所の仕事等に限られているのか

もしれない。他方マニラ首都圏では,極端に給与水準の高いごく少数の労働者(大企業の職員等)も

いるものの,大多数は都市の貧しい労働者であるために平均賃金は ARMMのそれよりも低くなって

いる,ということなのかもしれない。またコルデリエラ(CAR)地域も賃金率が高いが,これは植

民地の時代からエリート層の避暑地として名高い都市であるバギオ市(ルソン島北部の山間の地域に

ある)が含まれていることによると思われる。

図 4から言える二つ目に特筆すべき点は,2003年から 2009年にかけて,ほとんどの地域で実質賃

金率が大幅に低下していることである。その結果,全国平均でも賃金率がこの時期に一貫して低下し

ている。ただし,その唯一の例外がマニラ首都圏であり,一貫して実質賃金率は上昇している。その

原因は直ちに明らかではないが,このマニラ首都圏とそれ以外の地域との間での二極分化は何に起因

しているのか,今後検討の必要がある。

全国平均について先にみたように,賃金率の低下(マニラ首都圏を除き)に伴って,家計所得のう

ちの労働賃金収入についても,2003年から 2009年にかけて 17地域中 11地域で低下している(表

2)。比較的少数の,しかし高水準の賃金労働というやや特異なパタンが目立つ ARMMにおいては,

賃金率の大幅な低下に伴って,労働収入が最も大きく落ち込んだ(28%)地域となった。また唯一賃

金率が上昇したマニラ首都圏においても,労働収入額は平均して低下していることはやや意外であ

る。労働供給が減少した可能性が考えられるが,現時点ではその理由を含めて詳細は不明である。

先に全国レベルでも見たように,多くの地域おいて一人当たり家計消費支出の伸びと労働収入の減

少との間のギャップを埋めているのが,海外又は国内(しかし主には,圧倒的に金額の大きい前者)

の送金受け取りである。ダバオを除くすべての地域(17地域中 16地域)において,2003年から

2009年の間に海外からの送金収入は増加している(表 2)。とりわけ外国からの送金収入の伸び率が

高かった地域が,ビサヤ,サンボアンガ,カラガ,ARMM等,最も貧しい地域に集中していること

が興味深い。ただし,原因は直ちに明らかではない。国内からの送金収入についても,ある程度似た

傾向がみられる。

以上みてきたように,2003年から 2009年にかけての時期のフィリピンに於いては,(国民の生活

水準の標準的な代理変数である)一人当たり家計消費支出は(4地域を除いて)多くの地域で上昇す

る一方で,賃金率は,これもほとんどの地域で(マニラ首都圏等ごく一部を除いて)低下し,それに

伴い,労働収入も減少した。その両者のかい離を埋めたのが,海外出稼ぎ労働者からの送金収入で

あった。

5. 結論にかえて以上を簡単にまとめると,以下の通りである。本稿の出発点は,フィリピンの貧困削減のパフォー

マンスはなぜ他の(特にアジアの)発展途上国に比べて見劣りがするのか,という問題意識である。

そのことについては従来から様々な分析がなされてきているが,本稿では,2003年から 2009年にか

けての時期について,賃金率及び労働収入の推移に主に焦点を当て,ある程度の予備的なデータの叙

述を行った。一般に,貧困層ほど賃金労働収入に依存する割合が高い。従って,賃金率の低下および

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不 破 信 彦

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労働収入の低下は,特に貧困層の生活水準が向上しない又は低下した可能性を強く示唆する。従っ

て,このような労働市場の状況は,フィリピンに於いて長年貧困削減が進まないことと密接に関連し

ている可能性が高い。

さらにまた,フィリピンに於いて見出された近年のそのような賃金率及び労働収入の低下傾向は,

最近になってグローバルな傾向として Karabarbounis and Neiman (2014)によって明らかにされた

国民所得に占める労働収入の割合の低下傾向とも整合的であるとも解釈できる。ただし,そのような

トレンドの要因として Karabarbounis and Neiman (2014)で指摘されたこと,即ち,IT分野の技術

革新の進展等に伴う生産技術の労働から資本への代替という現象が,フィリピンに於いても主要な原

因と言えるのか否かは,現時点では定かではない。本稿の叙述はあくまで予備的なものであり,より

長い時系列データによる傾向の把握,より詳しい地域ごとの傾向の把握,それぞれの地域の特性に基

づいた原因の分析,さらには,平均賃金率低下をもたらしている労働市場における要因の分析,等が

必要となる。これらについては,今後の研究課題としたい。

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