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WTO 加盟に伴うロシアの関税・制度変更のポイント 2012 8 日本貿易振興機構(ジェトロ) 海外調査部欧州ロシア CIS

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WTO 加盟に伴うロシアの関税・制度変更のポイント

2012 年 8 月

日本貿易振興機構(ジェトロ)

海外調査部欧州ロシア CIS 課

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本報告書に関するお問い合わせ先

日本貿易振興機構(ジェトロ)

海外調査部欧州ロシア CIS 課

〒107-6006 東京都港区赤坂 1-12-32

TEL:03-3582-1890

E メール:[email protected]

【免責条項】

本報告書で提供している情報は、ご利用される方のご判断・責任においてご使用ください。ジェトロでは、できるだけ

正確な情報の提供を心掛けておりますが、本報告書で提供した内容に関連して、ご利用される方が不利益等を被る事態

が生じたとしても、ジェトロは一切の責任を負いかねますので、ご了承ください。

本報告書の全部、あるいは一部の無断転載を禁じます。

Copyright (c) 2012 JETRO. All rights researved.

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アンケート返送先 FAX:03-3587-2485

e-mail:[email protected]

日本貿易振興機構 海外調査部 欧州ロシア CIS 課宛

● ジェトロアンケート ●

調査報告書タイトル:「ロシアの WTO 加盟に伴う関税・制度変更のポイント」

ジェトロでは、ロシアの WTO 加盟に伴う制度変更の把握を目的に本調査を実施いたしまし

た。報告書をお読みいただいた後、是非アンケートにご協力をお願い致します。今後の調

査テーマ選定などの参考にさせていただきます。

■ 質問1:今回、本報告書で提供させていただきました「ロシアの WTO 加盟に伴う関税・

制度変更のポイント」について、どのように思われましたでしょうか?(○をひとつ)

4:役に立った 3:まあ役に立った 2:あまり役に立たなかった 1:役に立たなかった

■ 質問2:①使用用途、②上記のように判断された理由、③その他、本報告書に関するご

感想をご記入下さい。

■ 質問3:今後のジェトロの調査テーマについてご希望等がございましたら、ご記入願い

ます。

■お客様の会社名等をご記入ください。(任意記入)

ご所属

□企業・団体

□個人

会社・団体名

部署名

お名前

※ご提供頂いたお客様の個人情報については、ジェトロ個人情報保護方針(http://www.jetro.go.jp/privacy/)に基づき、適正に管理運用させて

いただきます。また、上記のアンケートにご記載いただいた内容については、ジェトロの事業活動の評価及び業務改善、事業フォローアップのた

めに利用いたします。

~ご協力有難うございました~

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はじめに

1993 年 6 月にロシア政府が GATT 加盟申請から 19 年越しの WTO 正式加盟に至った。

2011 年 12 月 16 日にジュネーブで開催された WTO 閣僚会議において正式に承認され、ロ

シア政府は国内議会での加盟議定書批准手続きに移った。ロシア政府は 7 月 23 日、WTO

事務局に対し、WTO 加盟の批准手続きが完了したと正式に通知、8 月 22 日にロシアは 156

番目の WTO 加盟国となった。

本報告書では、WTO 加盟に伴う関税率や国内制度の変更点の概要を取りまとめた。

2012 年 8 月

日本貿易振興機構(ジェトロ)

海外調査部欧州ロシア CIS 課

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目次

1 最後の大国としての WTO 加盟 ........................................................................................ 3

2 加盟に伴う制度変更内容 .................................................................................................. 3

2-1 関税率 ....................................................................................................................... 4

2-2 サービス市場の開放 ................................................................................................. 9

2-2-1 通信業 ..................................................................................................... 9

2-2-2 保険業 ..................................................................................................... 9

2-2-3 銀行・証券業 .......................................................................................... 9

2-2-4 流通業 ..................................................................................................... 9

2-3 規制緩和 ................................................................................................................... 9

2-3-1 輸入免許 ................................................................................................. 9

2-3-2 政府調達 ................................................................................................. 9

2-3-3 関税優遇措置 .......................................................................................... 9

2-3-4 知的財産権分野 ..................................................................................... 10

2-3-5 情報公開 ............................................................................................... 11

3 WTO 加盟を巡る自動車産業での動き ............................................................................. 11

3-1 業界関係者の見方:低価格車生産に影響の恐れ .................................................... 11

3-2 自動車リサイクル税の導入 .................................................................................... 13

4 ロシアの貿易・投資統計 ................................................................................................ 16

4-1 ロシアの貿易統計 ................................................................................................... 16

4-2 ロシアの直接投資統計............................................................................................ 17

4-3 日本の対ロシア貿易統計 ........................................................................................ 18

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1 最後の大国としての WTO 加盟

ロシアは人口が世界 9 位の 1 億 4,306 万人(2012 年 1 月 1 日現在)、GDP は世界 11 位

の 1 兆 4,873 億ドル(2010 年、IMF)という、WTO にとっては未加盟であった「最後の

大国」といわれてきた。大国ロシアを WTO ルールという世界共通のテーブルに乗せた意義

は大きい。今後はルールに反する措置については、WTO の紛争解決手続きに付託すること

が可能となるほか、WTO の分野別の委員会においても問題として取り上げることができる。

他方、ドーハラウンド交渉が中国、インドなどの発言力の高まりとともに難航を極めてい

る中、ロシアの加盟は WTO における意思決定をさらに複雑にするという面も否めない。

貿易自由化の面では、輸入関税の譲許(上限の設定)やサービス規制の緩和だけでなく、

WTO では規制のない輸出税の上限を 700 以上の品目に設定するなど、ロシアの加盟約束は

現行の WTO ルール以上の約束内容も含んでいる。ロシアは加盟後に IT 関連品目の関税を

撤廃する情報技術協定(ITA)にも加入すること、さらに加盟後 4 年以内に WTO 政府調達

協定への加盟申請を行うことも約束している。

ただし、政府調達協定への正式加盟には相当な時間がかかることが予想される。2001 年

に WTO に加盟した中国(加盟後 2 年以内に政府調達協定への加盟申請を行うことを約束)

は、未だに政府調達協定への加盟交渉が難航している。ロシアが政府調達協定に加盟すれ

ば 500 億ドル程度(中国は 2,000 億ドル程度)の国際公共調達機会が創出されると推定さ

れ、早期の加盟が期待される。

日本にとってロシアは輸出で 15 位、輸入で 13 位の貿易相手国である。2011 年の日本か

らの輸出額は 118 億ドルで、6 割以上を自動車関係の輸出が占めるほか、機械、電気機器な

ども上位に位置し、ロシアの加盟による関税削減効果に期待が高まる。輸入額は 190 億ド

ルで、4 分の 3 程度を鉱物性燃料が占め、魚類、アルミなど資源物資、林産品などが上位に

ある。日本の輸入にとっては、原油、天然ガス、木材などに輸出税の上限が設定されるこ

とが、調達における透明性を高めるという点でメリットとなる。

2 加盟に伴う制度変更内容

WTO のロシア加盟に関する作業部会が公表した、ロシアの加盟に際してのコミットメン

ト要約(2011 年 11 月 10 日)、および WTO 閣僚会議で正式承認後に公表されたロシアの

WTO 加盟議定書(2011 年 11 月 17 日)、これらに基づく現時点での履行内容の概要は以下

のとおり。

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2-1 関税率

輸入関税率の上限となる譲許税率は現行の 10%から 7.8%へ、品目別の平均関税率は、

自動車が 15.5%から 12%へ、電子機器が 8.4%から 6.2%へ引き下げられる(表参照)。関

税分類品目のうち 3 分の 1 超は加盟日に合わせて譲許税率内に設定され、さらに 4 分の 1

を 3 年以内に引き下げる。最も長いもので豚肉の関税は加盟後 8 年かけて、自動車、ヘリ

コプター、民生用航空機については 7 年かけて引き下げられる。

綿花と情報技術製品の関税は無税となる(情報技術製品に適用されている現行の平均関

税率は 5.4%)。

ロシア、ベラルーシ、カザフスタンが加盟する関税同盟の対外共通関税率を決定する権

限を持つユーラシア経済委員会1は 7 月 23 日、ロシアの WTO 加盟後の新しい関税率表を公

表した。

ユーラシア経済委員会の理事会メンバー(通商担当)でロシア経済発展省のアンドレイ・

スレプニョフ次官は、7 月 20 日の同委員会での新関税率決定後に、「全体(約 1 万 1,000

品目)の約 90%の品目については現行の税率が維持される。一方、食品、衣類、鉄鋼製品、

輸送用機器の分野の約 1,000 品目については、税率の引き下げが行われる」と述べている

(ユーラシア経済委員会ウェブサイト 7 月 20 日)。

関税同盟とロシアの WTO 加盟の関係については、関税同盟 3 ヵ国が締結した 2011 年 5

1 ユーラシア経済委員会は、関税同盟が発展するかたちで、サービス・労働力・資本の域内

移動の自由化を目指す統一経済圏が発足(12 年 1 月 1 日)したことをきっかけに設立され

た超国家行政機関(2011 年 11 月 29 日記事参照)。所管事項には、加盟国共通の関税、非

関税規制、通関制度、技術規則、衛生・検疫制度から、マクロ経済政策、競争政策、為替

政策などがあり、域内における政策決定文書の発出を行う。2012 年 7 月 1 日には、従来の

関税同盟委員会の機能が全て移管され、関税同盟委員会は解散した。

WTO作業部会で承認された関税引き下げ内容

合意内容 現行 引き下げ幅平均譲許税率 7.8 % 10.0 % 2.2 農産品 10.8 % 13.2 % 2.4 工業製品 7.3 % 9.5 % 2.2品目別平均関税率 乳製品 14.9 % 19.8 % 4.9 穀物 10.0 % 15.1 % 5.1 油脂 7.1 % 9.0 % 1.9 化学品 5.2 % 6.5 % 1.3 自動車 12.0 % 15.5 % 3.5 電子機器 6.2 % 8.4 % 2.2 木材・紙 8.0 % 13.4 % 5.4(注)現行税率は2011年6月時点のもの(出所)WTO記者発表(2011年11月10日)

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月 19 日付条約「多角的貿易体制の枠組みにおける関税同盟の機能について」で、「関税同

盟で規定される制度は、WTO ルール、加盟に際してのコミットメントに準ずる」「関税同

盟の統一関税率は WTO 加盟でコミットした関税率を上回らない」と規定されているため、

今回決定された新しい統一関税率がベラルーシおよびカザフスタンでも適用される(一部

例外品目あり)。

日本の対ロシア主要輸入品目のWTO加盟前後の関税率およびWTO加盟議定書の記載さ

れている 2013 年以降の関税スケジュールは下記のとおり。

(1)乗用車新車加盟前 加盟時 2013年 2014年 2015年 2016年 2017年 2018年 2019年

新車

30%(1.45ユーロ/cc)

25%(1.1ユーロ)

- - -23%

(0.73ユーロ)20%

(0.37ユーロ)17% 15%

30%(1.5ユーロ/cc)

25%(1.25ユー

ロ)- - -

23%(0.83ユーロ)

20%(0.42ユーロ)

17% 15%

30%(2.15ユーロ/cc)

25%(1.8ユーロ)

- - -23%

(1.2ユーロ)20%

(0.6ユーロ)17% 15%

SUV以外 12.5%

SUV 15%

排気量 1,000~1,500cc

排気量 1,500~1,800cc

排気量 1,800~2,800cc

排気量 2,800~3,000cc

30%(2.15ユーロ/cc)

25%(1.8ユーロ)

- - -23%

(1.2ユーロ)20%

(0.6ユーロ)17%

(2)中古乗用車加盟前 加盟時 2013年 2014年 2015年 2016年 2017年 2018年 2019年

中古車

中古車 7年超 1.5ユーロ/cc

中古車 5~7年

中古車 その他35%

(1.45ユーロ/cc)

中古車 7年超 1.6ユーロ/cc中古車 5~7年

中古車 その他35%

(1.4ユーロ/cc)

中古車 7年超 2.2ユーロ/cc中古車 5~7年

中古車 その他35%

(2.15ユーロ/cc)

-22%

(0.5ユーロ)

20%(0.44ユー

ロ)

4ユーロ/cc25%

(0.55ユーロ)- - - -

- - - -22%

(0.41ユーロ)

20%(0.36ユー

ロ)

- - - -22%

(0.44ユーロ)20%

(0.4ユーロ)

排気量 1,000~1,500cc

2.7ユーロ/cc

25%(0.5ユーロ)

排気量 1,500~1,800cc

排気量 1,800~3,000cc

-

2.9ユーロ/cc

25%(0.45ユーロ)

-

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輸出関税率についても改定が行われた。政府は、WTO 加盟後の輸出関税率を公表した。

日本向け主要輸出品の丸太には関税割当が設けられた。割り当ての枠内であれば、現行税

率より引き下げられるが、割り当てを超える分には現行税率より高い税率が設定された。

冷凍のベニザケやカニの輸出税率に変更はないが、4 年以内に撤廃される予定だ。

新しい輸出関税は 2012 年 7 月 21 日付政府決定第 756 号「関税同盟に関する協定への参

加国以外に輸出される商品の輸出関税率の承認とロシア連邦政府のいくつかの法令の失効

について」に規定されている。

課税対象は、主に未加工の魚介類、一部の鉱石、鉱物性燃料、原皮、未加工木材、貴金

属、卑金属など。日本向け主要輸出品に対する輸出関税率は下表のとおり。

原油、石油製品の輸出関税については別途毎月政令で決められている(2012 年 8 月分は

2012 年 7 月 23 日付連邦政府決定第 758 号)。

(3)タイヤ、トラック加盟前 加盟時 2013年 2014年 2015年 2016年 2017年

乗用車用タイヤ20%

(6.9ユーロ/本)20%

(6.2ユーロ)18%

(5.27ユーロ)16%

(4.34ユーロ)14%

(3.41ユーロ)12%

(2.48ユーロ)10%

トラック(5トン以下)新車 25% 10%車齢5年超 2ユーロ/cc車齢5年以下 25%車齢7年超 1ユーロ/cc - - - - -車齢7年以下

排気量2,500cc以下 15% 14% 13% 12% 11% 10%排気量2,500cc超 10% - - - - -

トラック(5~20トン以下)新車 25% 15% - - - - -車齢5年超 4.4ユーロ/cc

車齢5年以下30%

(2.2ユーロ/cc)車齢7年超 1ユーロ/cc - - - - -車齢7年以下 10% - - - - -

(4)その他輸送用機器関連、家電など加盟前 加盟時 2013年 2014年 2015年

5%

0%(工業組み立てス

キームのもの)

5%

0%(工業組み立てスキームのもの)

- - -

ブルドーザー250馬力超 0% 0% 8.8% 7.5% 5%400馬力以上でマイナス50度以下で使用するもの

0% 0% - - -

0% 0% 3.3% 1.7% 0%

0% 0% 3.3% 1.7% 0%15% 15% 16% 12% 8%

(注)括弧内の数値は最低課税額。2013年以降の関税率はWTO加盟議定書にある譲許税率。従って、加盟時より高くとも、必ずしも上がるわけではない。(出所)ユーラシア経済委員会、WTO加盟議定書(2011年11月17日)

自動車部品類(HS 8708、一部のショックアブソーバー除く)

光学または感熱コピー機の部分品および附属品(一部除く)

デジタルカメラ薄型テレビ

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WTO加盟後の輸出関税率(抜粋)

現行 加盟後 引き下げ期間0303 11 000 0 冷凍したベニザケ 5% 5% 加盟後4年以内に撤廃

冷凍したカニ0306 14 100 0 タラバガニ、ズワイガニ、アオガニ 10% 10% 加盟後4年以内に撤廃0306 14 300 0 ヨーロッパイチョウガニ 10% 10% 加盟後4年以内に撤廃0306 14 900 0 その他のもの 10% 10% 加盟後4年以内に撤廃

オウシュウトウヒまたはオウシュウモミ丸太

直径15センチメートル以上で24センチメートル以下、全長1メートル以上のもの

25%(ただし、1立方メートル当たり15ユーロを下回らない)

80%(ただし、1立方メートル当たり55.2ユーロを下回らない)

うち、当局による承認を受けた関税割り当ての枠内のもの

- 13

直径24センチメートル超で、全長1メートル以上のもの

25%(ただし、1立方メートル当たり15ユーロを下回らない)

80%(ただし、1立方メートル当たり55.2ユーロを下回らない)

うち、当局による承認を受けた関税割り当ての枠内のもの

- 13

その他のもの木材(粗のものに限るものとし、皮又は辺材をはいであるかないかを問わない。粗く角にしてないもの)で、直径15センチメートル未満

25%(ただし、1立方メートル当たり15ユーロを下回らない)

80%(ただし、1立方メートル当たり55.2ユーロを下回らない)

うち、当局による承認を受けた関税割り当ての枠内のもの

- 13%

その他のもの25%(ただし、1立方メートル当たり15ユーロを下回らない)

80%(ただし、1立方メートル当たり55.2ユーロを下回らない)

うち、当局による承認を受けた関税割り当ての枠内のもの

- 13%

オウシュウアカマツ丸太

直径15センチメートル以上で24センチメートル以下、全長1メートル以上のもの

25%(ただし、1立方メートル当たり15ユーロを下回らない)

80%(ただし、1立方メートル当たり55.2ユーロを下回らない)

うち、当局による承認を受けた関税割り当ての枠内のもの

- 15%

直径24センチメートル超で、全長1メートル以上のもの

25%(ただし、1立方メートル当たり15ユーロを下回らない)

80%(ただし、1立方メートル当たり55.2ユーロを下回らない)

うち、当局による承認を受けた関税割り当ての枠内のもの

- 15%

その他のもの木材(粗のものに限るものとし、皮又は辺材をはいであるかないかを問わない。粗く角にしてないもの)で、直径15センチメートル未満

25%(ただし、1立方メートル当たり15ユーロを下回らない)

80%(ただし、1立方メートル当たり55.2ユーロを下回らない)

うち、当局による承認を受けた関税割り当ての枠内のもの

- 15%

その他のもの25%(ただし、1立方メートル当たり15ユーロを下回らない)

80%(ただし、1立方メートル当たり55.2ユーロを下回らない)

うち、当局による承認を受けた関税割り当ての枠内のもの

- 15%

その他のもの丸太

4403 20 910 1

オウシュウトウヒを除くその他のトウヒ、またはオウシュウモミを除くその他のモミで、直径15センチメートル以上で24センチメートル以下、全長1メートル以上のもの

25%(ただし、1立方メートル当たり15ユーロを下回らない)

25%(ただし、1立方メートル当たり15ユーロを下回らない)

4403 20 910 2

オウシュウトウヒを除くその他のトウヒ、またはオウシュウモミを除くその他のモミで、直径15センチメートル以上、全長1メートル以上のもの

25%(ただし、1立方メートル当たり15ユーロを下回らない)

25%(ただし、1立方メートル当たり15ユーロを下回らない)

4403 20 910 3

オウシュウアカマツを除くその他のマツで、直径15センチメートル以上で24センチメートル以下、全長1メートル以上のもの

25%(ただし、1立方メートル当たり15ユーロを下回らない)

25%(ただし、1立方メートル当たり15ユーロを下回らない)

4403 20 390 1

4403 20 390 9

4403 20 110 1

4403 20 110 2

4403 20 190 1

4403 20 190 9

4403 20 310 1

4403 20 310 2

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日本向け主要輸出品である丸太など未加工木材のうち、オウシュウトウヒ、オウシュウ

モミ、オウシュウアカマツについては、WTO 加盟議定書に記載されたとおり、加盟に伴い

新たに関税割当が設けられた。関税割当は欧州向けとそれ以外で分けられており、割り当

ての枠内であれば、現行よりも低い輸出関税率が適用される。割当枠を超える分の輸出関

税率は WTO 加盟議定書には盛り込まれていなかったが、今回の連邦政府決定で 80%(最

低課税額:1 立方メートル当たり 55.2 ユーロ)という高税率が課されることになった。

また、8 月 8 日には関税割当数量が正式決定された(表参照)。EU 向けが別枠で設けら

れているが、日本が多く輸入するオウシュウアカマツについては、EU 向けよりも、その他

の国向けが多く割り当てられている。

その他の品種の丸太などについては現行どおりの輸出関税が課される。

魚介類のうち輸出の多い冷凍ベニザケや冷凍カニの輸出関税率は現行どおりの税率が適

用されるが、加盟後 4 年以内に輸出関税が撤廃されることとなっている。また、世界的に

産出量が多く、日本も輸入に依存しているパラジウムの輸出関税率も変更はなく、加盟後 4

4403 20 910 4オウシュウアカマツを除くその他のマツで、直径24センチメートル超、全長1メートル以上のもの

25%(ただし、1立方メートル当たり15ユーロを下回らない)

25%(ただし、1立方メートル当たり15ユーロを下回らない)

4403 20 910 9 その他のもの25%(ただし、1立方メートル当たり15ユーロを下回らない)

25%(ただし、1立方メートル当たり15ユーロを下回らない)

その他のもの

4403 20 990 1

木材(粗のものに限るものとし、皮又は辺材をはいであるかないかを問わない。粗く角にしてないもの)で、直径15センチメートル未満

25%(ただし、1立方メートル当たり15ユーロを下回らない)

25%(ただし、1立方メートル当たり15ユーロを下回らない)

4403 20 990 9 その他のもの25%(ただし、1立方メートル当たり15ユーロを下回らない)

25%(ただし、1立方メートル当たり15ユーロを下回らない)

パラジウム(加工していないもの、および粉状のもの)7110 21 000 1 インゴットの純度が999.5以上のもの 6.5% 6.5% 加盟後4年以内に撤廃7110 21 000 9 その他のもの 6.5% 6.5% 加盟後4年以内に撤廃(出所)2012年7月21日付連邦政府決定第756号、WTO加盟議定書(2011年11月17日)

丸太など未加工木材輸出の関税割当数量(単位:1,000立方メートル)

2012年2013年以降の

年間数量

関税割当数量 2,082.2 6,246.5うち

EU向け 1,986.9 5,960.6その他の国向け 95.3 285.9

関税割当数量 5,346.1 16,038.2うち

EU向け 1,215.3 3,645.9その他の国向け 4,130.8 12,392.3

(出所)2012年7月30日付連邦政府決定第779号

オウシュウトウヒまたはオウシュウモミ(HSコード 4403 20 110/4403 20 190)

オウシュウアカマツ(HSコード 4403 20 310/4403 20 390)

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年以内に撤廃される見込みだ。

2-2 サービス市場の開放

2-2-1 通信業

事業者における外国資本比率の上限は、現行 49%のところ、加盟後 4 年以内に撤廃。

2-2-2 保険業

加盟後 9 年以内に外国保険会社が支店を設けることを認める。保険業全体の外資制限

(25%)を 50%に引き上げ。

2-2-3 銀行・証券業

外国銀行による子会社設立を認める。個別銀行の外国資本規制は設けないが、業界全体

の外資比率は 50%を上限とする(民営化が予定されている銀行に対する外国投資は対象外)。

外国の銀行や証券会社による支店開設要件については、ロシアの OECD への加盟交渉や

WTO での多角的貿易交渉の次ラウンドで議論される。

2-2-4 流通業

加盟日に合わせ卸売り、小売り、フランチャイズ事業で、外国企業による独資事業を認

める。

2-3 規制緩和

2-3-1 輸入免許

加盟日からアルコール類、医薬品、暗号化機能付き製品(電子デジタル署名機器、個人

用スマートカード、無線通信機器など)の輸入に際して義務付けていた輸入免許制度を是

正する。

2-3-2 政府調達

WTO 政府調達協定のオブザーバー国となり、加盟後 4 年以内に加入交渉を開始する。ロ

シアの政府機関は WTO 加盟後、透明性をもって調達を行う。

2-3-3 関税優遇措置

自動車組み立てにおいて、現地調達率を引き上げるなどの条件で部品輸入関税を減免す

るスキーム(「工業組み立て」)は WTO 協定に抵触するため、18 年 6 月末で撤廃する。

このロシアの自動車産業投資優遇措置は WTO 協定上、撤廃しなくてはならない貿易関連

投資措置(TRIM)に該当するとして、EU が懸念を示していた。

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2011 年に成立した新しい規定に基づく自動車産業投資優遇措置は、年産 30 万台(既存

施設の活用の場合 35 万台)、エンジン・ギアボックスの生産、研究開発(R&D)センター

の設置、現地調達率 60%の達成を条件に、20 年までの 8 年間に通常 5~20%の自動車部品

の関税率を 0~5%に減免するというもの。これに対し、EU は欧州自動車メーカーと部品

メーカーのロシア向け輸出が減り、EU 域内の雇用が失われることを懸念していた。

欧州委の発表によると、この措置でロシア向けの自動車部品輸出が落ち込んだ場合に発

動される補償メカニズムを作ることで合意。ロシアの WTO 加盟が EU の全産業にもたらす

圧倒的な利益と機会を考えれば、EU の雇用に対する影響は最小化できるとした(通商専門

紙「インサイド・US・トレード」2011 年 10 月 18 日)。

2011 年に新規定で政府と協定を締結した自動車メーカーは 18 年 7 月以降関税を支払わ

なければならなくなる。メドベージェフ首相は 2012 年 6 月 7 日の閣議において、「政府は

自動車メーカーの業績を損なわないよう措置を講じるべきだ。18~20 年にメーカーが被る

負担に対して補助金を払うという案もある」と言及、関係閣僚に対して対策をとるよう促

した。

2-3-4 知的財産権分野

著作権、著作隣接権を侵害するコンテンツを頒布するウェブサイトに対する取り締まり

を継続する。WTO 加盟までに、文学的・美術的著作物の保護に関するベルヌ条約に定めら

れているすべての規則を法令に適用させる。

WTO 加盟に伴い、知財権関係料金も改定された。これまでの特許出願料を含む知的財産

権関係料金は、出願者が居住者と非居住者の場合で課金体系が分けられており、非居住者

向け料金の方が高く設定されている。政府は WTO 加盟を念頭に、加盟日を期にこれを是正

し、出願者が居住者、非居住者にかかわらず一律の料金に改めることを決定した。

これまでの知的財産権関係料金は居住者と非居住者で課金が異なり、ほとんどの場合、

非居住者向けの方が高かった。例えば、特許出願の基本料金は、非居住者向けが居住者向

けの 4.5 倍になっていた。

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WTO の「知的所有権の貿易関連の側面に関する協定(TRIPS 協定)」では、自国民に与

える待遇よりも不利でない待遇をほかの WTO 加盟国に与えるという内国民待遇が規定さ

れていることから、政府は施行日を WTO 加盟日として、特許出願料を含む知的財産権関係

料金の課金体系に設定されていた居住者、非居住者の区分を撤廃し、統一料金を設けた。

2-3-5 情報公開

商品・サービス貿易、知的財産権分野に関連する法令は迅速に公表し、ウェブサイトな

どを通じて定期的に最新情報を WTO 加盟国、個人や企業に公開する。特に、原則として、

これらの法令が採択される 30 日前には、意見聴取のため加盟国に対して法令を公開する。

関税同盟による法令も、同様の目的で採択までの適切な期間前に加盟国に公開する。

3 WTO 加盟を巡る自動車産業での動き

3-1 業界関係者の見方:低価格車生産に影響の恐れ

2012 年 2 月 16 日~17 日にサンクトペテルブルクで開催された自動車関連産業国際会議

「オートインベスト 2012」において、業界関係者によるロシアの WTO 加盟による自動車

産業への影響に関する議論が行われた。

<国内の自動車産業にはプラス効果>

工業商務省のアレクセイ・ジジャエフ自動車局次長は会議で、「政府はこれまで自動車産

業育成のためにさまざまな政策を導入してきた。『工業組み立て』スキームも、ロシアの自

動車産業を世界の中に統合させるためのものだった。WTO 加盟はロシア市場をより一層開

放し、自動車産業にとって肯定的な効果をもたらす」と述べた。

知的財産権関係料金(抜粋)

住居者 非住居者

特許登録出願・方式審査請求1,200ルーブル+(25を超える請求項の数)×180ルーブル

5,400ルーブル+(25を超える請求項の数)×810ルーブル

1,600ルーブル+(25を超える請求項の数)×250ルーブル

実用新案登録出願・方式審査請求600ルーブル+(25を超える請求項の数)×60ルーブル

2,700ルーブル+(25を超える請求項の数)×270ルーブル

850ルーブル+(25を超える請求項の数)×100ルーブル

意匠登録出願・方式審査請求600ルーブル+(25を超える請求項の数)×60ルーブル

2,700ルーブル+(25を超える請求項の数)×270ルーブル

850ルーブル+(1を超える請求項の数)×100ルーブル

商標・サービスマーク登録出願・方式審査請求

2,000ルーブル 2,000ルーブル 2,700ルーブル

特許、実用新案、意匠、実用新案証に関するライセンス(サブライセンスを含む)契約またはフランチャイズ(サブフランチャイズを含む)契約の登録

1,200ルーブル+(1を超える権利または実用新案証の数)×600ルーブル

5,400ルーブル+(1を超える権利または実用新案証の数)×2,700ルーブル

1,650ルーブル+(1を超える権利または実用新案証の数)×850ルーブル

WTO加盟前WTO加盟後

(出所)2008年12月10日付連邦政府決定第941号、2011年9月15日付連邦政府決定第781号

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ロシア自動車部品工業会(NAPAK)のミハイル・ブロヒン専務理事も「WTO 加盟は新

しい話ではない。物事にはすべて肯定的な面と否定的な面がある」として、加盟までの 20

年近くの年月は準備期間としては十分で、自動車部品を含むロシアの産業界も十分適応で

きる体制になっている、との自信を示した。

その上で同専務理事は「ロシアの自動車産業の保護と発展のため、2000 年代に入ってか

ら中古車の輸入関税率の引き上げや、外国自動車メーカーの誘致などが行われてきた。こ

の流れの中で世界の大手自動車メーカーがロシアに進出した。しかし、それに続くサプラ

イヤーの進出には至っていない」として、WTO 加盟で部品メーカーの進出に一層の弾みが

つくことへの期待をにじませた。

これに対して、アーンスト・アンド・ヤング CIS 自動車企業担当グループ長のイワン・

ボンチェフ氏は「ロシアは技術とノウハウの導入が必要で、仮に外国企業が企業を買収、

または合弁企業を設立しても、すぐには使いものにならないだろう」と語り、外国企業に

よる自動車部品分野への投資が急増するとの見方に疑問を呈した。

<中古車など低価格輸入車の増加に懸念も>

他方、地場自動車業界には、中古車など低価格輸入車との競争が激化すると懸念する声

もある。ロシア自動車工業会(OAR)のイーゴリ・コロフキン会長は「WTO 加盟によって

自動車の輸入関税率が低下する。中古車など半分近くにまで下がる品目もある」と指摘し

た。同会長はまた、「輸入車の増加により国内生産の比率は、12 年の 65%から 15 年には

40~45%にまで低下するだろう」と、国内の自動車部品産業に悪影響を与えるとの懸念を

示した。

ロシアの自動車専門調査会社アフトスタトのセルゲイ・ウダロフ副社長は「ロシアの自

動車市場は代替需要も含めて年間 300 万台程度。そのうち 35~45%が低価格の普及価格帯

モデルだ。これは輸入中古車と完全に競合する」として、コロフキン会長の見方を支持し

た。

<通関実務の混乱の懸念も>

アーンスト・アンド・ヤング CIS のドミトリー・マイヨロフ上級マネジャーは、WTO 加

盟前にもかかわらず、ロシアの自動車産業に既に影響が出始めていると指摘した。例えば

「工業組み立て」スキームの新規受け付けの停止、有効期限短縮のほか、通関実務面での

罰則規定の変更などだ。

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またロシアの税関のリスク・マネジメント・システム2が、今後どのように運用されるか

も注目される。マイヨロフ上級マネジャーは「現在は 100 コンテナごとに 1 コンテナ検査

しているが、このままでは WTO 加盟による輸入貨物量増加に対処できなくなる」と述べ、

税関検査を緩和していくべきだとの見方を示した。

3-2 自動車リサイクル税の導入

プーチン大統領は 7 月 28 日、自動車リサイクル税導入に関する連邦法案に署名した。発

効する 9 月 1 日から、一部の例外を除き、輸入あるいは国内で製造される輸送用機器につ

いて、新車、中古車ごとに定められた税額の課税が始まる予定で、工業商務省のウェブサ

イトにリサイクル税に関する政府決定案が公表された。

リサイクル税の導入は、WTO 加盟後の自動車の輸入関税引き下げに関連があるとの見方

が出ている。プーチン首相(当時)は 4 月 5 日、「カザフスタン、ベラルーシ両国政府が、

統一経済圏内に輸入される自動車に対してリサイクル税を導入する提案に賛同した」と述

べ、統一経済圏内でリサイクル税の導入を実行するため、経済発展省に両国の所管省庁と

省レベルでの実務交渉を行うよう指示していた。

<中古車の税額は割高な設定>

WTO 加盟による自動車の輸入関税率の引き下げを前に、国内自動車産業の保護策の 1 つ

として検討されてきた自動車リサイクル税の導入が決定した。7 月 28 日、プーチン大統領

が同税導入に関連する連邦法第 128-FZ 号「連邦法『製造と消費によるスクラップについて』

およびロシア連邦予算基本法第 51 条の修正について」に署名し、7 月 30 日に公示、同法

の発効は 9 月 1 日となっている。

同法が発効する 9 月 1 日から、輸入あるいは国内で製造される輸送用機器についてリサ

イクル税が課税される見通しだ。納税するのは、輸入者または国内の製造者だが、対象と

なる輸送機器や支払い手続き、税率など詳細は、別途連邦政府決定によって規定される。

工業商務省のウェブサイトに公表されたリサイクル税に関する連邦政府決定案によると、

対象となる輸送機器は、4 輪以上で乗客輸送目的の輸送用機器(乗用車、バス、トロリーバ

スなど)および貨物輸送目的の輸送用機器(トラックなど)で、税額は基礎税額×係数に

基づき算出する(詳細は添付資料参照)。乗用車の課税額は使用年数および排気量に応じて

変わり、新車は 2 万 6,800~11 万ルーブル(1 ルーブル=約 2.4 円)、中古車は 2 万 6,800

2 税関内のデータベースと貨物検査を連動させるシステム。特定の HS コードの商品、輸出

国、輸入業者の場合、全品検査になる。また税関が保有する価格リストよりも低い価格で

申告があった場合も、同様に全品検査になる場合がある。

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~70 万 200 ルーブルになる。トラックの課税額は使用年数および総重量に応じて、新車は

13 万 5,000~53 万 1,000 ルーブル、中古は 17 万 2,500~177 万ルーブル。バスの課税額は

使用年数および全長に応じて、新車の場合 17 万 7,000~63 万 7,500 ルーブル、中古の場合

41 万 8,500~124 万 6,500 ルーブルになる。

また、課税対象は一部例外規定が設けられ、a. 個人によって個人資産として輸入される

場合、b. 大使館をはじめ外交機関や国際機関などによって輸入される場合、c. 30 年以上を

経過した輸送機器で、商業輸送(乗客および貨物)目的ではない場合、d. スクラップの安

全な取り扱いを保証する義務を負う機関によって製造される場合、e. 関税同盟加盟国内で

製造されたもので、関税同盟加盟国から輸入される場合、f.2016 年 4 月 1 日までの期間で、

2006年 1月 10日付連邦法 16-FZ 号「カリーニングラード州における特別経済地域およびロ

シア連邦法令の修正について」の第 12 条第 1 項に規定されている場合については対象外と

なる。

このうち、d. に該当する条件として、同政府決定案の中では、(1)ロシア連邦で登録さ

れた法人であること、(2)車体あるいは車台上などに車両識別番号の記入を行っているこ

と、(3) 工業組み立て措置の枠組み(カテゴリーごとに詳細要件あり)で輸送機器の製造を

行っていることの 3 条件について規定されている。

<中古車市場に大きな影響>

リサイクル税導入の影響について、7 月 17 日にロシア自動車販売業者協会のアンドレ

イ・ペトレンコ会長に聞いた。概要は以下のとおり。

問:WTO 加盟後の自動車関税引き下げとリサイクル税の関係について。

答:リサイクル税の導入は、市場調整手段としての非関税措置の 1 つだ。関税率の引き下

げによる国内自動車産業への影響を最小限にするため、特に輸入中古車の流入を防止した

いと考えるのはどの国でもあること。逆に、リサイクル税によって、ロシアの自動車のリ

サイクルインフラが整備されることを強調したい。特に、中古車のスクラップ問題は喫緊

の課題だからだ。

問:リサイクル税は国内の自動車製造業者、輸入業者および消費者にどのような影響を与

えるか。

答:環境税やリサイクル税を導入している多くの国の経験に基づいてロシアも導入し、こ

れによる産業面および社会面での大きな変更はない。新しい税が車両価格に含まれること

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になる。中古車輸入、特に、バス、トラックは不利になる。逆に、トラックおよびバスの

国内製造者に対してはリサイクル税の導入は将来的にはメリットがあるはずだ。

乗用車で大排気量の高級車については、課税分の値上げがある場合、需要も一時的に落

ちる可能性はある。一般的な消費者(大衆車の購入者)に対しては大きな影響が出ないと

考えている。WTO 加盟後の輸入関税の引き下げとリサイクル税が相殺するので、車両価格

に大きな変化はないのではないか。一方、エンジン容量の大きい高級車は価格が高くなる

可能性があるが、こうした車を購入する消費者にとって値上げは大きな問題にはならない

と思われる。

問:リサイクル税が国内中古車市場に与える影響について。

答:リサイクル税が導入されれば、中古車がロシア市場に入ってくることは不可能に近く

なる。中古車に対する税率は新車の税率に較べると、何倍も高くなる。政府は、市場に出

回っている車(一定年数を経過したもの)の買い替えを奨励することを政策に掲げている。

2010 年に実施された「スクラップ・インセンティブ」プログラムが実行された結果、自動

車の買い替えが進んだことは記憶に新しい。このプログラムがロシア製車両の販売を刺激

し、中古車を減らした実績がある。現在、工業商務省では商用車の使用期間を制限するプ

ログラムについても、実施を検討している。

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4 ロシアの貿易・投資統計

4-1 ロシアの貿易統計

(単位:100万ドル,%)2010年

金額 金額 構成比 伸び率

輸出総額(FOB) 397,067.5 516,480.9 100.0 30.1

オランダ 53,974.2 62,639.1 12.1 16.1

中国 20,326.4 35,241.0 6.8 73.4

ドイツ 25,662.5 34,177.2 6.6 33.2

イタリア 27,475.7 32,657.5 6.3 18.9

ウクライナ 23,148.1 30,519.8 5.9 31.8

トルコ 20,317.4 25,409.2 4.9 25.1

ベラルーシ 18,080.6 24,922.6 4.8 37.8

ポーランド 14,935.5 21,368.0 4.1 43.1

米国 12,319.9 16,510.8 3.2 34.0

フランス 12,419.9 14,857.7 2.9 19.6

日本 12,828.5 14,681.4 2.8 14.4

インド 6,392.3 6,091.7 1.2 △ 4.7

ブラジル 1,798.3 2,124.9 0.4 18.2

輸入総額(CIF) 228,911.6 305,604.5 100.0 33.5

中国 38,964.4 48,262.2 15.8 23.9

ドイツ 26,698.8 37,677.8 12.3 41.1

ウクライナ 14,047.4 20,121.9 6.6 43.2

日本 10,259.9 15,006.6 4.9 46.3

米国 11,096.7 14,602.8 4.8 31.6

ベラルーシ 9,953.6 13,685.0 4.5 37.5

イタリア 10,042.8 13,401.9 4.4 33.4

フランス 10,042.9 13,277.5 4.3 32.2

韓国 7,287.3 11,595.8 3.8 59.1

英国 4,576.0 7,180.4 2.3 56.9

ブラジル 4,067.2 4,389.0 1.4 7.9

インド 2,143.4 2,786.4 0.9 30.0

(出所)連邦税関局

2011年

ロシアの主要国別輸出入<通関ベース>

ロシアの品目別輸出入<通関ベース>(単位:100万ドル,%)

2010年金額 金額 構成比 伸び率

373,561.5 478,210.5 100.0 28.0261,343.9 346,332.5 72.4 32.5

燃料・エネルギー製品 258,192.1 340,933.0 71.3 32.039,345.0 43,219.6 9.0 9.822,917.9 29,224.0 6.1 27.519,540.8 21,030.5 4.4 7.68,070.1 11,337.4 2.4 40.58,597.6 11,119.4 2.3 29.39,228.8 10,391.9 2.2 12.6

217,172.8 284,773.0 100.0 31.1

98,482.7 141,273.4 49.6 43.435,898.9 44,037.0 15.5 22.733,708.0 39,236.3 13.8 16.415,469.7 19,846.8 7.0 28.313,228.2 15,566.0 5.5 17.75,636.6 6,418.4 2.3 13.95,070.0 6,036.8 2.1 19.1

燃料・エネルギー製品 3,380.6 4,716.6 1.7 39.5

(出所)連邦税関局

食料品・農産品(繊維を除く)金属および同製品繊維・同製品・靴木材・パルプ製品鉱物製品

(注)ベラルーシおよび2011年7月以降のカザフスタンとの取引を含まないため,表「ロシアの主要国別輸出入」の輸出入総額とは一致しない

食料品・農産品(繊維を除く)貴石・貴金属および同製品木材・パルプ製品

輸入総額(CIF)機械・設備・輸送用機器化学品・ゴム

2011年

輸出総額(FOB)鉱物製品

金属および同製品化学品・ゴム機械・設備・輸送用機器

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4-2 ロシアの直接投資統計

ロシアの国・地域別対内直接投資残高<届け出ベース>(単位:100万ドル,%)

2010年末金額 金額 構成比 伸び率

キプロス 44,737 55,729 40.0 24.6オランダ 22,401 23,668 17.0 5.7ドイツ 9,254 11,361 8.2 22.8英領バージン諸島 4,103 8,643 6.2 110.7英国 3,501 3,567 2.6 1.9フランス 2,922 2,691 1.9 △ 7.9中国 942 1,389 1.0 47.5日本 824 1,135 0.8 37.7ルクセンブルク 661 945 0.7 43.0アイルランド 568 623 0.4 9.7合計(その他含む) 116,199 139,150 100.0 19.8(出所)連邦国家統計局

2011年末

(単位:100万ドル,%)2010年金額 金額 構成比 伸び率

モスクワ市 3,794 3,998 21.7 5.4モスクワ州 2,202 2,594 14.1 17.8サハリン州 798 2,228 12.1 179.2サンクトペテルブルク市 538 1,074 5.8 99.6チュメニ州 68 971 5.3 1324.1カルーガ州 1,055 814 4.4 △ 22.9ヤマロ・ネネツ自治管区 33 708 3.8 2045.1ニジェゴロド州 396 702 3.8 77.1レニングラード州 381 567 3.1 48.8アルハンゲリスク州 425 566 3.1 33.2合計(その他含む) 13,810 18,415 100.0 33.3(出所)連邦国家統計局

2011年

ロシアの主要連邦構成体別対内直接投資<届け出ベース,グロス,フロー>

ロシアの業種別対内直接投資<届け出ベース,グロス,フロー>(単位:100万ドル,%)

2010年金額 金額 構成比 伸び率

4,650 4,686 25.4 0.8化学 453 832 4.5 83.7食品加工 602 827 4.5 37.4輸送用機器 932 696 3.8 △ 25.3電気・電子・光学機器 499 555 3.0 11.2製紙・セルロース・出版・印刷 310 380 2.1 22.6非金属鉱物加工 357 329 1.8 △ 7.8金属・同製品 351 311 1.7 △ 11.4機械・設備 716 301 1.6 △ 58.0木材加工 150 230 1.2 53.3ゴム・プラスチック製品 199 123 0.7 △ 38.2

2,035 4,627 25.1 127.4資源エネルギー採掘 1,755 3,897 21.2 122.1非資源エネルギー採掘 280 730 4.0 160.7

2,853 3,245 17.6 13.71,912 1,818 9.9 △ 4.9

卸売り 1,286 1,408 7.6 9.5自動車販売・サービス・修理 365 230 1.2 △ 37.0小売り 261 180 1.0 △ 31.0

426 1,627 8.8 281.9777 1,100 6.0 41.6416 443 2.4 6.5

通信 110 118 0.6 7.3パイプライン輸送 27 31 0.2 14.8

360 417 2.3 15.8125 259 1.4 107.2205 29 0.2 △ 85.9

13,810 18,415 100.0 33.3(出所)連邦国家統計局

金融業輸送・通信

農林畜産業電力・ガス・水道ホテル・レストラン合計(その他含む)

2011年

製造業

鉱業

不動産取引小売り・卸売り・自動車修理

建設

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4-3 日本の対ロシア貿易統計

ロシアの主要国別対外直接投資残高<届け出ベース>(単位:100万ドル,%)

2010年末金額 金額 構成比 伸び率

オランダ 19,447 25,376 36.2 30.5キプロス 14,982 15,448 22.1 3.1米国 6,483 6,701 9.6 3.4ベラルーシ 2,687 5,194 7.4 93.3スイス 2,497 2,901 4.1 16.2英国 2,340 2,563 3.7 9.5ルクセンブルク 445 2,194 3.1 393.0英領バージン諸島 1,816 2,030 2.9 11.8オーストリア 463 465 0.7 0.4合計(その他含む) 56,762 70,010 100.0 23.3(出所)連邦国家統計局

2011年末

日本の対ロシア主要品目別輸出入(通関ベース)(単位:100万ドル,%)

2010年 2011年 構成比 伸び率輸送用機器 5,183 7,730 65.5 49.1  自動車 4,940 7,390 62.6 49.6    乗用車 4,739 7,067 59.9 49.1    バス・トラック 196 312 2.6 59.1一般機械 1,074 1,816 15.4 69.1  建設用・鉱山用機械 347 723 6.1 108.5  荷役機械 189 408 3.5 116.0  原動機 180 200 1.7 11.4原料別製品 834 1,114 9.4 33.6  ゴム製品 328 444 3.8 35.6  鉄鋼 332 430 3.6 29.6電気機器 454 595 5.0 31.1  映像機器 184 203 1.7 10.2総額(その他含む) 8,027 11,801 100.0 47.0

2010年 2011年 構成比 伸び率鉱物性燃料 12,198 14,219 74.9 16.6  原油および粗油 7,262 6,194 32.7 △ 14.7  液化天然ガス 2,633 4,740 25.0 80.0  石炭 1,355 1,920 10.1 41.6  石油製品 900 1,321 7.0 46.8    揮発油 868 1,196 6.3 37.8原料別製品 2,029 2,380 12.5 17.3  非鉄金属 1,679 1,999 10.5 19.1  鉄鋼 314 340 1.8 8.0食料品 1,195 1,460 7.7 22.2  魚介類 1,170 1,429 7.5 22.1原料品 538 769 4.1 42.8  木材 418 540 2.8 29.0総額(その他含む) 16,097 18,971 100.0 17.9(出所)日本財務省「貿易統計」をもとにドル換算

輸出(FOB)

輸入(CIF)