栃木県のがんの状況 地域がん登録、院内がん登録の紹介
栃木県立がんセンター
疫学研究室
大木いずみ
栃木県立がんセンター第7回
市民公開講座
2010年11月13日とちぎ健康の森
プレゼンター
プレゼンテーションのノート
今までの大腸癌や頭頸部癌は最新の医療のお話でたいへん興味深いものでした。 ここからは、少し見方を変えて、「がんの状況」のお話をさせていただきます。 簡単にいうとどういう人ががんになりやすいとかどこのがんが多いとか増えているか減っているかなどです。 栃木県立がんセンターでは院内がん登録や地域がん登録を通していろいろなデータを整理して分析しています。
臨床と公衆衛生
臨床医学
診断
→
治療
公衆衛生
がんの状況を把握
→
対策
→
評価
プレゼンター
プレゼンテーションのノート
医学=臨床と公衆衛生 患者さん一人ひとりの診断+治療を行う(臨床医学)に対して地域全体として(栃木県全体の)がんの状況を把握して、がん対策を行ってがんによる死亡をどう減らすかを考えます。たとえばある人が検診をうけていなくてがんで死亡した場合は、検診を受けなかったことがどのぐらい影響したかわかりませんが、検診をうけた人のグループと受けなかった人のグループでがんで死亡した大きさを比較すれば、検診がどのぐらい影響をあたえたかがわかります。こういった研究からがんになったり死亡したりする危険性の高いもの、反対にそれを防ぐものを見出して予防していきます。そうすれば、結果的にグループ全体地域全体でがんの死亡が減ることにつながるのです。 このように、一人ひとりの恩恵は少ないのですが、結果的に地域全体でがんの死亡が減るようにする証拠固め、お手伝いをしています。 栃木県全体のがん患者さんの死亡を減らすかが目標です。
がんは身近な問題です
栃木県の平成21年における、がんによる死亡 数は5257人で死亡原因としての割合は
28.0%です。
悪性新生物(がん)
脳血管疾患心疾患
その他
栃木県死亡原因の割合(平成21年)
資料:人口動態統計
プレゼンター
プレゼンテーションのノート
まずは、がんの死亡について紹介します。栃木県は人口200万人で、17000人生まれて、18500人死亡します。平成21年のがんの死亡者数は、栃木県で5257人でこれは全体の死亡の3割を占めています(18777人)。 図に示すように1位はがん、2位が心疾患、3位が脳血管疾患です。死亡全体のだいたい6割をこういった疾患が占めています。 男女ともおおよそ2人に一人が一生のうちにがんと診断される。男性ではおおよそ4人に1人、女性では6人に1人ががんで死亡します。だれにでもおこる病気です。
ますます増えています 栃木県における三大死因別死亡率の年次推移
死亡率(人口10万対)
平成
資料:人口動態統計
心疾患
悪性新生物
脳血管疾患
プレゼンター
プレゼンテーションのノート
栃木県は、脳卒中死亡が全国と比較して高いことで知られていますが、やはりがん(悪性新生物)による死亡率は1位で年々上昇しています。
がん登録
死亡統計だけでは不十分。
がんの罹患率(1年間にどのくらい新たにがん に罹るか)、生存率(診断から一定期間に生
存している確率)を求めます。
プレゼンター
プレゼンテーションのノート
このように、栃木県全体の胃癌の死亡者数を抑えるためには、死亡だけの統計では不十分です。 そこで、がん登録という仕組みをつかって、計画を策定する材料にしています。 がん登録は、がんにかかったことを数えるしくみです。また、かかってから一定の期間(5年後)などにどのくらいの確率で生存しているかを求めます。 がん登録は、現在38道府県で実施されていて全国的に行われる計画が進んでいます。これからはがんにかかる人数をきちんと同じルールで数えて、対策に生かすよう全国で急速に整備が進んでいます。
65歳以上の割合は男で約7割、女で約6割 働き盛りの40-64歳の年齢層も約3割
75歳以上
14歳以下
40~64歳
65~74歳
15~39歳 15~39歳
40~64歳
65~74歳
75歳以上
報告書:栃木県のがん2005より
年齢別にみたがんの罹患
プレゼンター
プレゼンテーションのノート
65歳以上の割合は男で約7割、女で約6割を占める。 一方働き盛りの40-64歳の年齢層も約3割を占めている。 女性で15~39歳、40~64歳の割合が男性より多いのは乳がん、子宮がんの影響である。
年齢が高くなるにつれてがんになりやすい 年齢階級別罹患率:人口10万対
報告書:栃木県のがん2005より
がん対策
1.予防対策(がんにかからないようにするため の対策)
2.検診対策(早期発見・早期治療)
3.がん医療の対策
プレゼンター
プレゼンテーションのノート
予防対策には1次予防、2次予防、3次予防とあります。 1.胃癌の場合、胃癌にかかりやすくする要因の一つに塩分があります。それを防ぐことによって、かかりにくくして、結果的に死亡数を減らすことができます。 2.早期発見・早期治療には検診が必要です。目標にあるように多くの人に検診をうけてもらう必要があるでしょう。 3.がん医療はもちろんですが、がんになって治療中、治療が終了した人がもとの生活に戻れるよう、リハビリ・社会復帰などがあります。どうやって生活の質を保つかなどが大きな課題です。
がん登録
地域がん登録
院内がん登録
臓器がん登録
プレゼンター
プレゼンテーションのノート
今までのお話は主に地域がん登録のお話でした。栃木県では平成5年から医師会にお願いして事業を進めてきました。平成20年からは県が直接実施することになり、栃木県立がんセンターで私や保健師、スタッフで実務を行っています。 がん登録にはその他に、院内がん登録、臓器がん登録という仕組みがありそれぞれ目的と方法が少し異なっています。 栃木県立がんセンターには、院内がん登録、全国大腸がん登録事務局もあり、それぞれ行っています。 簡単に3つの登録について説明します。
院内がん登録の活動
①がん患者の受療状況の把握②院内がん患者の生存率の計測③病院の対がん医療活動の企画、評価のため
の資料提供④診療活動の支援、研修、教育のための資料
提供⑤臨床疫学研究の支援⑥院内がん患者の継続受診支援⑦地域がん登録への届出
臓器がん登録
大学と主要な医療施設が参加し、学会・研 究会が中心となって、臓器別に全国規模
で実施されているがん登録のこと。がんの 臨床病理学的特徴と進行度の正確な把
握に基づく適切な治療指針の確立、進行 度分類のあり方などを検討することを目的
としています。
プレゼンター
プレゼンテーションのノート
大学と主要な医療施設が参加し、学会・研究会が中心となって、臓器別に全国規模で実施されているがん登録のこと。がんの臨床病理学的特徴と進行度の正確な把握に基づく適切な治療指針の確立、進行度分類のあり方などを検討することを目的としています。
健康政策計画サイクル The health care planning cycle
現状把握(がん登録)
がん対策
評価
ホームページ (資料)
• http://www.pref.tochigi.lg.jp/welfare/kenkouduk uri/kenkoudukuri/1275522365034.html
(地域がん登録報告書:栃木県のがん2005)
• http://www.fpcr.or.jp/publication/statistics.html
(がんの統計2009年版)
• http://ganjoho.jp/proffesional/statistics/statistics .html
(国民生活基礎調査)