平成 25 年度原子力規制庁委託事業 平成 25 年度放...

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平成 25 年度原子力規制庁委託事業 平成 25 年度放射性物質測定調査委託費 (大気中拡散モデルを用いたシミュレーションによる放射性物質の挙動解明事 )業務に関する報告書 平成26年3月31日 東京大学大気海洋研究所

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平成 25 年度原子力規制庁委託事業

平成 25 年度放射性物質測定調査委託費 (大気中拡散モデルを用いたシミュレーションによる放射性物質の挙動解明事

業)業務に関する報告書

平成26年3月31日

東京大学大気海洋研究所

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目 次

1. 経緯と目的······························································1

2. 使用したデータ··························································3

2.1. データの提供機関······················································3

2.2. 対象地点と期間························································3

3. 放射性セシウム濃度の時空間分布の挙動と気象場等との関係解明··············8 3.1. 放射性物質の広域における事象の解析方法································8

3.2. 解析結果······························································8 3.3. 解析結果のまとめと今後の課題·········································27

4. 大気輸送モデルを用いたシミュレーションによるCs-134及びCs-137の時空間

マップの精密化·························································31 4.1. 方法·································································31 4.2. 観測大気中放射性セシウム濃度とモデル値の時系列の比較·················31 4.3. 観測大気中放射性セシウム濃度とモデル値の空間分布の比較···············34 4.4. グリーン関数法を用いた逆推計モデルに基づく放出量の推定···············44

4.5. モデリングに関するまとめ·············································49

5. 今後の課題·····························································51

補足資料··································································53

補足A1. WRF-CMAQモデル····················································53

補足A2. NICAM-SPRINTARSモデル·············································56

補足A3 Wモデルを利用したグリーン関数法を用いた逆推計モデルに基づく放出量の

推定·······························································58

補足A4 Wモデルによるシミュレーション結果と観測データとの比較の詳細·······64

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1

1.経緯と目的

東京電力福島第一原子力発電所 (これ以後、福島第一原発と記す )の事故直後に

放出された放射性物質の大気中濃度の時系列データは、土壌への沈着量に関する

数多くの観測データと比較して、福島県内ではわずかしか存在しておらず、また、

関東地方でも少ししか存在していない。そのような状況のなかで、放出率の推定、

初期内部被ばく量の評価、及び大気輸送モデルの検証と精緻化に関する研究がな

されてきたため、まだまだこれらの不確実性は大きい。

一方、日本の各自治体による大気環境常時測定網では、多数の地点で大気汚染

物 質 を 常 時 測 定 し て い る 。 そ の 一 環 と し て 、 大 気 中 の 浮 遊 粒 子 状 物 質 (SPM

(Suspended Particulate Matter):直径 10µm 以下の微粒子)が、β線吸収法 SPM

自動測定器により 1 時間毎にテープろ紙上に採取されて、その質量濃度が測定さ

れている。これらの中の多くの測定局では、事故直後も稼働していたので、事故

後に、その SPM 自動測定器のテープろ紙上に採取された SPM 中には、福島第一原

発から放出された粒子状の放射性物質も捕集されていた可能性がある。そこで、

テープろ紙に採取された SPM 中の放射性物質に関するテスト分析を、東京大学大

気海洋研究所と首都大学東京とが共同で実施した。その結果、このテープろ紙を

分析することにより、事故直後の放射性物質(具体的には Cs-134 と Cs-137)の

大気中での濃度を、1 時間毎に把握できることが明らかになった。

これらの成果をさらに発展させるため、環境省及び大気環境常時監視を実施し

ている自治体の協力のもと、SPM ろ紙の保存・収集を行い、首都大学東京が平

成 24 年度に環境省委託事業として、空間線量率や降下物などのモニタリングデ

ータから、事故により放出された放射性物質の影響が広域に及んだと考えられる

2011 年 3 月 15-16 日と 3 月 20-23 日の、東北地方南部と関東地方の SPM 測定地

点の一部を対象に、SPM 中の放射性物質の分析を実施した。その分析データを

用いて大気中の放射性セシウム濃度の時空間マップを作成し、大気質モデルを高

度化することを目的として、東京大学海洋研究所と首都大学東京及び国立環境研

究所は、共同で分析と解析及びモデルの高度化に取り組んできた。

このような背景のもとで、福島第一原発から大気中に放出された放射性物質の、事

故直後における東北地方南部と関東地方などでの大気中での挙動の解明に資すること

を目的として、平成25年度に原子力規制庁(以下、規制庁と記す)から委託を受け、調査

を実施した。本調査では、規制庁の別事業で行われた、首都大学東京の分析方法に準

拠して実施された、関東地方と東北地方南部の新たなSPM地点におけるSPM中の放射

性物質の分析によって得られた、事故直後の大気中の放射性セシウム濃度のデータの

提供を受け、放射性セシウムの時空間マップの作成と空間放射線量率(以下、空間線量

率と記す)や気象場などとの関係を解明するとともに、大気輸送モデルを用いたシミュ

レーションによる放射性物質の大気環境中での時空間分布の精密化を行った。

実施計画書による委託業務内容は、以下の通りである。

(1)放射性セシウム濃度の時空間分布と気象場等との関係

平成25年度の分析事業及びこれまでのSPMろ紙の分析から得られた放射性物質濃度

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2

(Cs-134及びCs-137)のデータからCs-134とCs-137の1時間毎の放射性物質濃度の時

空間分布を把握する。そして、これらのデータと、他のデータ(文部科学省及び自治

体等のモニタリングポスト及び大気中放射性物質(Cs-134及びCs-137)のモニタリン

グ結果など)を併せて解析し、放射性セシウムの濃度の時空間分布が、気象場(特に

地上風系)とどのような関係があるのかを明らかにする。

(2)大気輸送モデルを用いたシミュレーションによるCs-134及びCs-137の時空間マ

ップの精密化

分析事業と(1)から得られた結果を基に、大気輸送モデルシミューレションの条

件設定、計算結果の検証、及び沈着量データとグリーン関数法を用いた逆推計モデル

に基づく放出量の改訂を行い、モデルを改良した後に、Cs-134及びCs-137の大気濃度

の東日本スケール(東北地方、関東地方、及び中部地方の一部)における時空間マッ

プを作成する。使用する大気輸送モデルの条件を次に示す。

1) 空間分解能は5kmメッシュ程度とすること。

2) 福島第一原発事故を対象としたシミュレーション結果が、国際学術誌に掲載される

など国際的に認められた実績を有するモデル及び相当するモデルであること。

3) 複雑な地形影響を考慮した数値気象モデルの気象データを使用した数値型輸送モ

デルであること。

4) 粒径を反映した乾性沈着モデル、湿性沈着モデルを使用していること。

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2.使用

2.1 デ

本事業

(1)平成

“委託事

のこと)

(2)文部

分析した

(3)平成

これら

2.2 対象

2.2.1 対

過去

解析を行

により

補完す

東北地方

握するた

関東地

去の調査

5km であ

図 2.2.

とした。

なかった

図2.2.

用したデー

データの提供

業で用いた東

成24年度環境

事業報告書で

)。なお、事

部科学省科

たデータ

成25年度原子

のデータは

象地点と期

対象地点

に分析され

行った地点

、環境省委

る文科省科

方南部およ

ために、山

地方では、

査から放射

あることか

4 に示すよ

。しかし、

た地点もあ

1 テープ

SPM測定地

ータ

供機関

東日本にお

境省委託事

では33地点

事業終了後に

学研究費補

(テスト分析

子力規制庁

は、規制庁お

期間

れ、すでに解

点を、図 2.

委託事業で

科研費での分

よび関東地方

山形県 2 地点

図 2.2.3 に

射性プルーム

から、少なく

ように、約

SPM 地点が

あり、地域に

ろ紙を分析

地点

おける放射性

事業で首都大

点だが、その

に捕集時刻

補助金など

析7地点など

庁委託事業で

および首都大

解析された

2.1 と図 2.

の分析地点

分析地点は

方南部で、

点と新潟県

に示すよう

ムの巾が約

とも 5km の

10km の格子

がその付近に

によっては

析した 図

3

性セシウム

大学東京が

の後再分析

の見直しな

どで首都大学

どを含む19

で日本分析

大学東京を

たデータの

.2.2、図 2

点は黒丸、規

は灰色で示

さらに広域

県 1 地点を含

に、SPM 測

約 20km だっ

の格子点ご

子に区切っ

に存在しな

は不規則な地

図2.2.2 東

ム濃度のデー

が分析したデ

析した2地点

などによる

学東京と東

9地点)。

析センターが

を通して提供

ある地点を

.2.3 に示す

規制庁での

した。本事

域に放射性

含めた。

測定地点が非

ったことや、

とのデータ

て、格子点

なかったり、

地点の配置

東北地方南

SPM測定地

ータは、次

データ(31地

点は次の(2

訂正後のデ

東大大気海洋

が分析した

供していた

を含めて、本

す。なお、デ

の分析地点は

事業での解析

性物質が輸送

非常に密に

モデルの

タが望ましい

点に近い SP

テープろ紙

置となった。

南部および新

地点

次の3種類

地点:環境

2)に分類さ

データを使用

洋研究所が

たデータ(43

ただき、使用

本事業で総

データの提

は白丸、そ

析の重点地

送された状

存在してお

の水平分解能

いが、本事業

PM 測定地点

紙が保存さ

新潟県の解

である。

境省から

れる”と

用した。

が共同で

3地点)。

用した。

総合的に

提供機関

その間を

地域は、

状況を把

おり、過

能が 3~

業では、

点を対象

されてい

解析対象

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図2.2.3

2.2.2 対

解析対

ニタリ

2.2.3)

日を全地

と考え

ほとん

注:

3 関東地方

対象期間

対象期間は

ングデータ

に放射性物

地点の共通

られる期間

どの地点で

△は一部の地

方の解析対象

は、表2.2.1

タから、福

物質が広域

通期間とし

間(3月12-

でCs-137濃

表2

分析地点

都 県

宮城県(04-

山形県(06-

福島県(07-

茨城県(08-

埼玉県(11-

千葉県(12-

東京都(13-

神奈川県(1

新潟県(15-

地点だけ分析

象SPM測定地

1に示すよう

福島第一原

域に輸送され

た。さらに

14日と3月

度が低かっ

2.2.1 調査

採取

数 12-

-) 8

-) 2

-) 19

-) 9

-) 15

-) 21

-) 7

14-) 9

-) 1

析が行われた

4

地点 図2.

約1

は自

うに、その

発から東北

れたと考え

に、福島第

17-19日)

ったので、今

査地域と分

取日(2011 年 3

-14 日 15-16

△ ○

△ ○

ことを示す。

2.4 関東地

10km間隔の

自動車排ガ

の当時の空間

北地方南部

えられる、2

一原発から

も対象とし

今回は解析

分析対象採取

3 月)

日 17-19 日

詳細は表2.

地方南部の

格子。(赤

ガス局)

間線量率や

(図2.2.2)

011年3月15

ら主として北

した。なお、

析の対象とし

取日

20-23 日

2.2と表2.2.

のSPM測定地

丸は一般局

や降下物な

)と関東地

5-16日と3月

北方に輸送

、3月22-23

しなかった

3を参照のこ

地点と

局、黒丸

などのモ

地方(図

月20-21

送された

3日は、

た。

と。

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5

また、分析により定量された放射性セシウムは、Cs-134とCs-137だったが、福島第

一原発からの放出時のCs-134濃度は、Cs-137濃度とほとんど同じだったので、本報告

書では、Cs-137だけを解析の対象とした。なお、放射性ヨウ素(I-131)は半減期が8日

と短いので、すべての試料で検出されなかった。

つぎに、分析地点の一覧表を、表2.2.2と表2.2.3に掲載した。

表2.2.2 首都大学東京による分析地点一覧

測定局 ID 都県名 経度(度) 緯度(度) 分析期間

○12-04 千葉 140.14 35.66 3月 15-16 日、3月 20-23 日

○12-09 千葉 140.18 35.63 3月 15-16 日、3月 20-23 日

○12-113 千葉 139.87 35.95 3月 15-16 日、3月 20-23 日

○12-70 千葉 139.96 35.90 3月 15-16 日、3月 20-23 日

○12-93 千葉 140.08 35.86 3月 15-16 日、3月 20-23 日

○12-94 千葉 140.02 35.79 3月 15-16 日、3月 20-23 日

12-117 千葉 140.25 35.85 3月 15-16 日、3月 20-23 日

12-118 千葉 140.42 35.85 3月 15-16 日、3月 20-23 日

○11-09 埼玉 139.39 36.16 3月 15-16 日、3月 20-23 日

○11-41 埼玉 139.52 36.07 3月 15-16 日、3月 20-23 日

○11-64 埼玉 139.88 35.84 3月 15-16 日、3月 20-23 日

○11-73 埼玉 139.13 36.19 3月 15-16 日、3月 20-23 日

13-25 東京 139.68 35.62 3月 15-16 日、3月 20-23 日

13-31 東京 139.59 35.65 3月 15-16 日、3月 20-23 日

08-09 茨城 140.19 36.07 3月 15-16 日、3月 20-23 日

08-10 茨城 140.17 36.04 3月 15-16 日、3月 20-23 日

○08-11 茨城 139.72 36.20 3月 15-16 日、3月 20-23 日

08-15 茨城 139.96 36.18 3月 15-16 日、3月 20-23 日

08-22 茨城 140.05 35.91 3月 15-16 日、3月 20-23 日

08-23 茨城 140.02 36.10 3月 15-16 日、3月 20-23 日

08-36 茨城 140.70 35.85 3月 15-16 日、3月 20-23 日

08-32 茨城 140.63 35.92 3月 15-16 日、3月 20-23 日

○08-41 茨城 139.98 35.95 3月 15-16 日、3月 20-23 日

07-01 福島 140.49 37.78 3月 15-16 日、3月 20-23 日

07-02 福島 140.46 37.74 3月 15-16 日、3月 20-23 日

○07-04 福島 140.47 37.75 3月 15-16 日、3月 20-23 日

07-03 福島 140.45 37.77 3月 15-16 日、3月 20-23 日

○07-05 福島 139.92 37.49 3月 15-16 日、3月 20-23 日

△07-06 福島 140.36 37.41 3月 15-23 日

○07-12 福島 140.34 37.39 3月 15-16 日、3月 20-23 日

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6

○07-19 福島 140.90 36.95 3月 22-23 日

○07-20 福島 140.89 36.96 3月 22-23 日

○07-30 福島 140.22 37.12 3月 15-16 日、3月 20-23 日

○07-32 福島 140.37 37.29 3月 15-16 日、3月 20-23 日

○07-33 福島 139.87 37.66 3月 15-16 日、3月 20-23 日

△07-34 福島 140.92 37.80 3月 12-23 日

○07-35 福島 140.46 37.59 3月 15-16 日、3月 20-23 日

○07-36 福島 139.78 37.20 3月 15-16 日、3月 20-23 日

○07-37 福島 140.34 37.20 3月 15-16 日、3月 20-23 日

○07-38 福島 140.38 37.02 3月 15-16 日、3月 20-23 日

△07-31 福島 140.95 37.64 3月 12-23 日

△07-43 福島 140.91 37.87 3月 12-23 日

○04-23 宮城 140.62 38.00 3月 15-16 日、3月 20-23 日

○04-25 宮城 140.89 38.17 3月 15-16 日、3月 20-23 日

○04-37 宮城 141.02 38.74 3月 15-16 日、3月 20-23 日

15-30 新潟 138.87 37.07 3月 15-16 日、3月 20-23 日

06-01 山形 140.34 38.25 3月 15-16 日、3月 20-23 日

06-05 山形 140.11 37.92 3月 15-16 日、3月 20-23 日

注:○と△(3月12-14日と3月17-19日は除く)の分析地点は、H24年度環境省委託事業で実施した。

なお、△の分析地点の3月12-14日と3月17-19日は、文科省科学研究補助金で実施した。

表2.2.3 日本分析センターによる分析地点一覧

測定局 ID 都県名 経度 緯度 分析期間

12-19 千葉 140.26 35.53 3月 15-16 日、3月 20-23 日

12-47 千葉 139.88 35.02 3月 15-16 日、3月 20-23 日

12-48 千葉 140.17 35.55 3月 15-16 日、3月 20-23 日

12-49 千葉 139.93 35.38 3月 15-16 日、3月 20-23 日

12-60 千葉 140.29 35.43 3月 15-16 日、3月 20-23 日

12-61 千葉 140.30 35.77 3月 15-16 日、3月 20-23 日

12-65 千葉 140.37 35.56 3月 15-16 日、3月 20-23 日

12-73 千葉 140.27 35.18 3月 15-16 日、3月 20-23 日

12-96 千葉 139.90 35.33 3月 15-16 日、3月 20-23 日

12-116 千葉 140.13 35.79 3月 15-16 日、3月 20-23 日

12-120 千葉 140.61 35.79 3月 15-16 日、3月 20-23 日

12-123 千葉 140.38 35.35 3月 15-16 日、3月 20-23 日

12-134 千葉 140.02 35.42 3月 15-16 日、3月 20-23 日

11-26 埼玉 139.52 35.80 3月 15-16 日、3月 20-23 日

11-37 埼玉 139.75 35.97 3月 15-16 日、3月 20-23 日

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7

11-42 埼玉 139.52 36.06 3月 15-16 日、3月 20-23 日

11-43 埼玉 139.28 36.19 3月 15-16 日、3月 20-23 日

11-57 埼玉 139.62 35.78 3月 15-16 日、3月 20-23 日

11-60 埼玉 139.66 36.06 3月 15-16 日、3月 20-23 日

11-71 埼玉 139.26 36.06 3月 15-16 日、3月 20-23 日

11-72 埼玉 139.19 36.01 3月 15-16 日、3月 20-23 日

11-75 埼玉 139.19 36.12 3月 15-16 日、3月 20-23 日

11-77 埼玉 139.56 36.08 3月 15-16 日、3月 20-23 日

11-80 埼玉 139.69 35.83 3月 15-16 日、3月 20-23 日

13-52 東京 139.87 35.79 3月 15-16 日、3月 20-23 日

13-58 東京 139.29 35.63 3月 15-16 日、3月 20-23 日

13-65 東京 139.28 35.79 3月 15-16 日、3月 20-23 日

13-69 東京 139.48 35.59 3月 15-16 日、3月 20-23 日

13-89 東京 139.28 35.70 3月 15-16 日、3月 20-23 日

14-08 神奈川 139.66 35.41 3月 15-16 日、3月 20-23 日

14-50 神奈川 139.71 35.23 3月 15-16 日、3月 20-23 日

14-60 神奈川 139.47 35.40 3月 15-16 日、3月 20-23 日

14-64 神奈川 139.15 35.26 3月 15-16 日、3月 20-23 日

14-65 神奈川 139.16 35.25 3月 15-16 日、3月 20-23 日

14-77 神奈川 139.62 35.14 3月 15-16 日、3月 20-23 日

14-78 神奈川 139.22 35.37 3月 15-16 日、3月 20-23 日

14-79 神奈川 139.23 35.37 3月 15-16 日、3月 20-23 日

14-85 神奈川 139.32 35.40 3月 15-16 日、3月 20-23 日

04-09 宮城 140.94 38.24 3月 17-23 日

04-11 宮城 140.83 38.22 3月 13-23 日

04-28 宮城 140.87 38.11 3月 14-23 日

04-32 宮城 141.07 38.39 3月 14-23 日

04-36 宮城 141.17 38.55 3月 15-23 日

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8

3.放射性セシウム濃度の時空間分布の挙動と気象場等との関係解明

3.1. 放射性物質の広域における事象の解析方法

本章ではまず、第2章で述べたように、提供された観測データをもとに、福島県を含

む東北地方南部と関東地方を対象地域として、これまでにもよく解析されている福島

第一原発事故に関わる3月15日と3月21日の事象だけでなく、3月16日と3月20日の事象

についても、SPM測定地点におけるCs-137濃度の時空間マップを作成した。なお本事

業では、大気中のCs-137濃度がおおよそ10 Bq m-3以上のものを比較的濃度の高いデー

タとした。つぎに、事故直後に放出された放射性物質(本報告書では大気中のCs-137)

が関東地方および福島県内にどのように大気中を輸送されたかを、その時空間マップ

と、気象データ及びこれまでに公表された、文部科学省や自治体のモニタリングポス

トなどの空間線量率などのデータとの関係についての解析結果から、明らかになった

ことをまとめて述べる。また、さらに広域に調べるために、宮城県と山形県および新

潟県のCs-137濃度の観測データも使用した。気象データは、気象庁による気象データ

を利用した。また、自治体など独自のモニタリングポストで測定された空間線量率の

データなども、利用した。そして本章では、第2章で述べたすべてのデータを用いて

行った、総合的な解析結果をまとめて各節の冒頭に簡潔に記載し、その後に詳しく説

明した。なお下線部は、今回の規制庁委託事業における解析結果である。

3.2 解析結果

3.2.1 3月15日の関東地方における状況

(1) 3月15日の午前中に放射性物質が関東地方東部から関東地方中部あたりに到達した。

(2) これらの放射性物質は、午後には、東京都、埼玉県及び神奈川県の西部の山麓地

帯まで運ばれた。

図3.2.1aに、3月15日9時から15時まで、3時間毎に得られる高度1000hPaでの風向風

速分布に合わせて、3時間毎のCs-137濃度の時空間分布を示した。関東地方は早朝から

北東風が吹いており、午前8時には茨城県西部でCs-137濃度が上昇し始めた。この風

上の茨城県東部沿岸地域のモニタリングポストでは、空間線量率が早朝に上昇してお

り、茨城県東海村でも早朝に大気中の放射性物質の濃度が急激に増加したことから、

これらの地点を通過した放射性物質が、その後関東地方に輸送されて、SPM測定地点で

測定されたと考えられる。

その後、風向が時計回りに変化するにつれて、放射性物質は、埼玉県西部と東京都

及び神奈川県などに運ばれ、図3.2.1aと図3.2.1bに示すように、午後には東京都と埼

玉県および神奈川県の西部山麓地帯まで運ばれた。

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9

9時

12時

15時

図3.2.1a 関東地方の3月15日の(左)Cs-137濃度の時空間分布。灰色は検出されなかっ

た地点で、Xはろ紙がなかった地点。(右)1000hPaでの風向風速の分布(図の下の数字は

矢印の長さの風速(m s-1)を示す)。(上段から下段へ)3月15日9時、12時、15時。

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10

図3.2.1b 埼玉県西部と神奈川県西部のSPM地点(S1:11-71、K1:14-78)でのCs-137濃度

の時間変化(3月15-16日)。なお検出下限値は両地点とも0.1 Bq m-3。

3.2.2 3月15日午後の新潟県南部での状況

(1) 新潟県南魚沼市のモニタリングポストで、空間線量率が最高となった3月15日の

18-20時の期間を含む3月15日の午後から夜にかけて、南魚沼市に一番近いSPM地点

でのSPM中のCs-137は、すべての試料で検出されなかった(検出下限値は0.05-0.09 Bq

m-3)。

図3.2.2に、3月15-16日における、新潟県南魚沼市と前橋市の空間線量率と、南魚沼

市に近いSPM測定地点(N1:15-30)でのCs-137濃度の時間変化を示した。

南魚沼市では、空間線量率が3月15日16時頃から急減に増加し、18-20時に最高

(0.506-0.527 µSv h-1)となった。南魚沼市に近いSPM測定地点(N1:15-30)でのSPM中の

Cs-137は、この期間を含む3月15-16日および3月20-23日ともに、すべて検出されな

かった(下限値は0.05-0.09 Bq m-3)。

なお、新潟県が独自に大気浮遊じんを採取して放射性物質を分析した結果によれば、

南魚沼市内で3月15日の16時43分から18時43分の間に採取された、大気浮遊じん中の

Cs-137濃度は0.031 Bq m-3でI-131濃度は0.33 Bq m-3だった。これは、SPM中の放射

性物質が検出されなかったという測定結果を裏付けるものである。

図 3.2.2 新潟県南魚沼市と前橋市の空間線量率と、南魚沼市の近隣の SPM 地点(N1:

15-30)での Cs-137 濃度(検出されず。なお検出下限値を図に示す)の時間変化(3 月

15-16 日)。Cs-137(南魚沼)は、南魚沼市で 16 時 43 分~18 時 43 分に採取された大気

中微粒子試料に含まれた Cs-137 濃度(0.031 Bq m-3, 新潟県防災局の資料による)。

0.0

0.2

0.4

0.6

0.8

1.0

0.01

0.1

1

10

100

0:00

2:00

4:00

6:00

8:00

10:00

12:00

14:00

16:00

18:00

20:00

22:00

0:00

2:00

4:00

6:00

8:00

10:00

12:00

14:00

16:00

18:00

20:00

22:00

0:00

空間

線量

率(µSv h

‐1)

Cs‐137 (Bq m

‐3)

時刻 (March 15‐16, 2011)

Cs‐137 (検出下限値)

Cs‐137 (南魚沼)

空間線量率 (南魚沼)

空間線量率 (前橋)

0.1

1

10

100

0:00

2:00

4:00

6:00

8:00

10:00

12:00

14:00

16:00

18:00

20:00

22:00

0:00

2:00

4:00

6:00

8:00

10:00

12:00

14:00

16:00

18:00

20:00

22:00

0:00

Cs‐137 (Bq m

‐3)

時刻 (March 15‐16, 2011)

Cs‐137 (S1)

Cs‐137 (K1)

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11

前述したように、関東西部に輸送された放射性物質は、午後に群馬県北部に輸送さ

れ、前橋で14時に空間線量率が最高 (0.562 µSv h-1)となった(図3.2.2.)。その後、さら

に北方に運ばれて上越山脈を越えて、南魚沼市にまで到達したと推定される。

なお、今回のテープろ紙の分析時間は、放射性物質のプルームの検出を主目的とし

たので、1時間であった。したがって、SPM中の放射性物質濃度は検出下限値未満とな

ったが、低い濃度の試料を分析するには、1時間よりも長い分析時間が必要である。

3.2.3. 3月15-16日の東北地方南部の状況

(1) 福島県中通りでは、15日午後から夜にかけて、放射性物質が運ばれ、そのピーク

時間は南部ほど早く北部では夜になってからと、遅くなった。一方ピーク時の濃度は、

北に行くにつれて低くなった。

(2) 宮城県南部から仙台市にかけて、3月15日の夜は、ほとんどのSPM測定地点で

Cs-137濃度は検出されなかったが、1地点だけ検出下限値よりも少し大きかったので、

南寄りの風で宮城県南部にも放射性物質が運ばれたと考えられる。

(3) 一方、山形県のSPM測定地点では、3月15日の夜に空間線量率がわずかに増加した

時期も含めて3月15-16日の期間中、Cs-137は検出されなかった。

図3.2.3aに、3月15日12時から21時まで3時間毎に、Cs-137濃度の時空間分布と高度

1000hPaの風向風速分布および降水分布を示した。

福島県中通りでの大気中のCs-137濃度は、南部のSPM測定地点では12-13時に最高

となり、その後、SPM測定地点での最高濃度は次第に北側の地点に移り、中部では15

時に最高濃度となり、北部の福島盆地内では、18時から増加し始めて21時に最高濃度

となった。これは、福島第一原発からの地上風が午前中は北東~東からの風で阿武隈

高地の南部を通過して中通りに輸送されたが、午後には南東風が吹き始めて、阿武隈

高地の北部を通過して、夕方には福島盆地に輸送されたためと考えられる。

図3.2.3bに、宮城県が測定した、宮城県南部の3地点と仙台市での空間線量率の経日

変化を示した(なお、各地点とも1日に最大数回の測定だった)。これによれば、各地

点とも、3月16日に最高となったが、南部ほどその値は大きく、最南部の山元町で最

高だった。福島県浜通り北部では、南寄りの風が吹いており、Cs-137濃度はSPM地点

で16時から増加し始めた。さらに図3.2.3cに示すように、仙台市のすぐ南側のSPM地

点(M2: 04-28)で18-20時に、Cs-137濃度が検出下限値より高くなった (0.13-0.44 Bq

m-3)。この放射性物質は、南東からの風により、浜通り北部から宮城県南部に運ばれた

と推測される。また、AMeDASデータによれば、宮城県南部の亘理では、3月15日18

時から16日4時まで0-2.5 mmh-1の降水があり、仙台市では3月15日の15時から16日

の2時まで、1-3 mm h-1の降水が観測された。仙台市内の空間線量率は、16時ごろから

増加しはじめ、20時から3月16日0時頃まで最高 (約0.45 µSv h-1)となった。これらか

ら、仙台市内では、3月15日の夜間に浜通り北部方面を通過した放射性物質が到達し、

その一部が、降水によって地上に沈着された、と推測された。なお、宮城県北部でも

夜間に降水が継続して観測されたが、この地域は強い南東風が吹き続けており、SPM

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12

地点 (M8: 04-37) では放射性物質は検出されなかった。

12時

15時

18時

21時

図3.2.3a 東北地方南部の3月15日の(左)Cs-137濃度の時空間分布、(中)1000hPaでの

風向風速分布、(右)降水分布。(上段から下段へ) 3月15日12時、15時、18時、21時。

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13

図3.2.3b 宮城県南部4地点での空間線量率の経日変化(2011年3月14日~3月31日)

図3.2.3c 宮城県のSPM地点(M2:04-28)でのCs-137濃度、仙台市内(東北大学病院)での

空間線量率および仙台市のAMeDAS地点での降水量の時間変化(3月15-16日)。

図3.2.3dに、山形県の2地点での空間線量率とその近隣のSPM測定地点でのCs-137

濃度の経時変化を示した。山形市の空間線量率は、3月15日の18時頃から増加し始め、

16日の4時に最高 (0.114 µSv h-1)となった。しかし、その近隣のSPM測定地点 (Y1:

06-05)の大気中のCs-137濃度は、その期間中も含めて、すべて検出されなかった(検出

下限値は0.2 Bq m-3。空間線量率の測定が3月16日17時から開始されている米沢市では、

測定開始時点ですでに0.14 µSv h-1であったが、その近隣のSPM測定地点(Y2: 06-01)

では、3月15-16日の期間中、Cs-137濃度は、すべて検出されなかった(検出下限値は

0.2 Bq m-3)。この空間線量率を高めた放射性物質は、福島県北部の午後に吹いた南東

風により、3月15日の夜に、福島盆地付近を通過して山形県南部に運ばれたと推測さ

れ、その一部が雨あるいは雪に取り込まれて地上に降下して空間線量率に影響を与え

たと思われるが、モニタリングポストでの降下物はまだ測定されてなかったので、そ

の詳細は現時点では不明である。

0.0

0.5

1.0

1.5

2.0

14‐M

ar

15‐M

ar

16‐M

ar

17‐M

ar

18‐M

ar

19‐M

ar

20‐M

ar

21‐M

ar

22‐M

ar

23‐M

ar

24‐M

ar

25‐M

ar

26‐M

ar

27‐M

ar

28‐M

ar

29‐M

ar

30‐M

ar

31‐M

ar

空間

線量

率(µSv h

‐1)

月日 (March 14‐31, 2011)

仙台市

岩沼市

白石市

山元町

空間線量率

宮城県 南部(2011年3月14~31日)

0.0

0.2

0.4

0.6

0.8

1.0

0.01

0.1

1

10

100

0:00

2:00

4:00

6:00

8:00

10:00

12:00

14:00

16:00

18:00

20:00

22:00

0:00

2:00

4:00

6:00

8:00

10:00

12:00

14:00

16:00

18:00

20:00

22:00

0:00

空間

線量

率(µSv h

‐1)

降水

量x0.1 (mm h

‐1)

Cs‐137 (Bq m

‐3)

時刻 (March 15‐16, 2011)

降水量

Cs‐137 (M2)

Cs‐137 (検出下限値)

空間線量率(東北大学病院)

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14

図3.2.3d 山形県の空間線量率(米沢市、山形市)とCs-137濃度(SPM測定地点:Y1, Y2)

の時間変化(3月15-16日)。両地点ともCs-137濃度は検出されなかった。

3.2.4 3月16日午前中の関東地方の状況

(1) 茨城県南東部沿岸地域と千葉県北東部沿岸地域で、北寄りの風が吹いていた午前中

の数時間、Cs-137濃度が上昇した。この事象は、これまでほとんど報告されていなか

った。

図3.2.4aに、3月16日の6時、9時、12時のCs-137濃度の時空間分布と1000hPaの風

向風速の水平分布を示した。茨城県南東部沿岸地域で、7時にCs-137が増加し始め、9

時と10時に茨城県南東部沿岸地域と千葉県北東部沿岸地域で最高濃度を示し、その後、

さらに南方の房総半島東部沿岸域でもCs-137は比較的高い濃度となったが、午後には

すべての地域で低濃度となった。また、この放射性物質濃度が高くなった地域は東部

沿岸地域だけなく、9-10時頃には、さらに西側の茨城県南西部と千葉県西部にまで及

んでいた。

0.0

0.1

0.2

0.3

0.4

0.5

0.1

1

10

100

0:00

2:00

4:00

6:00

8:00

10:00

12:00

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16:00

18:00

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0:00

2:00

4:00

6:00

8:00

10:00

12:00

14:00

16:00

18:00

20:00

22:00

0:00

空間

線量

率(µSv h

‐1)

Cs‐137 (Bq m

‐3)

時刻 (March 15‐16, 2011)

Cs‐137 (検出下限値)

空間線量率 (米沢)

空間線量率 (山形)

雨/雪

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15

6時

9時

12時

図3.2.4a 関東地方の3月16日の(左) Cs-137濃度の時空間分布、(右)高度1000hPaでの

風向風速分布。(上段から下段に向けて)3月16日の6時、9時、12時。

なお、この事象はこれまでほとんど解析されてなかったが、Cs-137のこの時間帯の

最高濃度は前述した3月15日と同程度だった。この関東地方東部沿岸地域で観測された

放射性物質が、どこから輸送されたのかについて、福島県と茨城県の東部沿岸地域の

空間線量率などのデータを用いて、さらに考察した(図3.2.4b~d)。

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図3.2.4

ニタリ

山)及び

3月1

では風

島第一

3.2.4cの

し始めで

が急上昇

ったの

の北寄

の最南地

地点(I

3.2.4dの

なお、

度上昇

南側の高

うに、福

プルー

4b 福島第

ング地点の

びSPM測定地

6日0時過ぎ

が東から北

原発から放

のP4時期の

で5時10分

昇して6時

で、放射性

りの風でさ

地点の鉾田

I1, 08-32)

の二つの矢

、福島第二

し(図3.2.4c

高萩や常陸

福島県や茨

ムが関東東

第二原発 (FD

の位置。北か

地点(I1:0

ぎに、東京

北北西に変化

放出された

の事象)。そ

に最高とな

に最高とな

性物質は、福

さらに南側

田では、空間

では、2時

矢印)。

二原発から山

cのP4’)、前

陸那珂では、

茨城県で西

東部沿岸地域

D2NPP)か

から、山田

08-32)。

電力福島第

化して、福

た放射性物

して、茨城

なった。さ

なった。6時

福島第一原

に輸送され

間線量率が

時間遅れて

山田丘、い

前述した放射

、上昇しな

寄りの風が

域に到達し

16

から鉾田まで

田岡、いわき

第二原子力

福島第二原発

物質は南側に

城県北茨城市

らにその南

時の地上風

原発から茨城

れたと推測

7時に最高

9時に、大

わき、北茨

射性物質(P

なかった。

が吹き始め

しなかったた

での沿岸地

き、北茨城

発電所(以

発で空間線

に輸送され

市での空間

南の常陸那珂

は、茨城県

城県東部沿

された。茨

高となり、さ

大気中のCs

茨城での空

P4)の時より

これは、12

たので風の

ためと考え

地域における

城、高萩、常

以下、福島第

線量率が高

れ始めたと

線量率は、

珂では5時

県東部沿岸地

沿岸地域に到

茨城県のモニ

さらに約30

s-137濃度が

間線量率は

りも高かっ

2時の地上風

の場が変化

えられる。

る空間線量

常陸那珂、

第二原発と

くなったの

考えられ

3時半過ぎ

頃から空間

地域では北

到達して、

ニタリング

0km南のSP

が最高とな

は10-12時の

たが、北茨

風系で見ら

して、この

量率のモ

鉾田(樅

と記す)

ので、福

る。 (図

ぎに上昇

間線量率

北北東だ

その後

グポスト

PM測定

った(図

の間に再

茨城より

られるよ

の放射性

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17

図3.2.4c 福島県と茨城県の東部沿岸地域の6地点における空間線量率の時間変化

(3月14-16日)

図3.2.4d 鉾田(樅山)の空間線量率と、その南側のSPM測定地点(I1:08-32)のCs-137

濃度の時間変化(3月14-16日)。二つの矢印は、空間線量率とCs-137濃度が最高となっ

た時間で、SPM測定地点は空間線量率の観測地点より30km南に存在していたので、北

寄りの風のため、最高となった時間が2時間遅くなったと考えられる。

0.0

0.5

1.0

1.5

2.0

2.5

3.0

0.01

0.1

1

10

100

1000

18:00

20:00

22:00

0:00

2:00

4:00

6:00

8:00

10:00

12:00

14:00

16:00

18:00

20:00

22:00

0:00

2:00

4:00

6:00

8:00

10:00

12:00

14:00

16:00

18:00

20:00

22:00

0:00

空間

線量

率(µSv h

‐1)

Cs‐137 (Bq m

‐3)

時刻 (March 15‐16, 2011)

Cs‐137

Cs‐137 (検出下限値)

空間線量率

0.01

0.1

1

10

100

1000

18:00

20:00

22:00

0:00

2:00

4:00

6:00

8:00

10:00

12:00

14:00

16:00

18:00

20:00

22:00

0:00

2:00

4:00

6:00

8:00

10:00

12:00

14:00

16:00

18:00

20:00

22:00

0:00

空間

線量

率(µSv h

‐1)

時刻 (March 14‐16, 2011)

FD2NPP(MP1) 山田岡

いわき 北茨城

高萩 常陸那珂

P4            P4'

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18

3.2.5. 3月20日午後の関東地方の状況

(1) 3月20日の12時頃に、茨城県の鹿島灘から東寄りの風により放射性物質が沿岸地域

に運ばれ、その後、関東中部から埼玉県北西部に運ばれ、夜には山麓地帯に滞留した。

ただし最高濃度は前述した3月15日より低かった。この事象も、これまでほとんど報告

されていなかった。

図3.2.5aに、3月20日の12時、15時、18時のCs-137濃度の時空間分布と1000hPaの

風向風速の水平分布を示した。図3.2.5aに示すように、3月20日の12時に茨城県南東

部沿岸地域でCs-137が増加し始め、その後、15時には茨城県南部と千葉県北部で増加

し、さらに18時には埼玉県北西部で高くなった。このように、放射性物質が東から西

に輸送されたと考えられるが、3月15日や次に述べる3月21日の事象と比較して、濃

度レベルは低かった。

12時の地上風系は、茨城・千葉県東部沿岸域で東寄りの風で、その後、次第に茨城

県南部および埼玉県で東寄りの風に変わったので、この東寄りの風とともに放射性物

質が輸送されたと推測される。また、東京都や千葉県西部ではCs-137濃度が上昇しな

かったが、これらの地域は南よりの風に覆われたためであり、放射性物質が東寄りの

風に覆われた地域に限られていたことと一致した。

茨城県環境放射能監視センターによるモニタリングポストでは、11-12時に広範な地

点で空間線量率が増加し始めており (図3.2.5b)、その最南端の鉾田より南側30kmの

SPM地点で13時にCs-137濃度が最高となった(図3.2.5cの矢印)。この放射性物質が、

福島第一原発からどのような経路で茨城県東部沿岸地域に輸送されたのか、モデルの

結果も併せてさらに解析する必要がある。

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19

12時

15時

18時

図3.2.5a 関東地方の3月20日の(左)Cs-137濃度の時空間分布、(右)1000hPaでの風向風

速の分布。(上段から下段へ)3月20日12時、15時、18時。

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図3.2.5

量率の分

タが欠測

図3.2.5

の時間変

時間(図

0

0

1

10

Cs‐137 (Bq m

‐3)

5b 茨城県

分布。円で

測の地点。

5c 鉾田(樅

変化(3月2

図中の矢印

.01

0.1

1

10

100

000

0:00

2:00

4:00

県東部モニタ

で囲んだ地域

山)の空間線

20-21日)。

印)は、ほ

6:00

8:00

10:00

12:00

Cs‐137

Cs‐137 (検

空間線量

タリングポ

域は11時と

線量率とそ

3月20日午

とんど同じ

14:00

16:00

18:00

20:00

22:00

時刻 (Mar

検出下限値)

量率

20

ストの3月

と12時に空

その南側のS

午後に、空間

じだった。

22:00

0:00

2:00

4:00

6:00

rch 20‐21, 20

)

20日10時、

間線量率が

SPM測定地

間線量率と

6:00

8:00

10:00

12:00

14:00

011)

、11時と12

が増加した地

地点(I1:08

Cs-137濃度

16:00

18:00

20:00

22:00

000

時における

地域。x印

-32)のCs-1

度が最高と

0.0

0.5

1.0

1.5

2.0

2.5

3.00:00

空間

線量

率(µSv h

‐1)

る空間線

印はデー

137濃度

となった

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21

3.2.6. 3月20-21日の東北南部の状況

(1) 福島県中通り北部では、3月20日の午後から放射性物質が到達しはじめ、その後、

夜から3月21日早朝にかけて、放射性物質濃度が最高となる時間は次第に南に移り、中

通り南部で最高となった時間は一番遅かった。また、浜通り北部では、夜に放射性物

質が通過した。

(2) 3月20日夜に、宮城県南部でCs-137濃度が検出下限値より高くなり、福島県北部か

ら運ばれたと推測されたが、さらに北側の宮城県北部では検出されなかった。また、3

月21日の午前中、宮城県中部から南部にかけて、Cs-137濃度が高くなった。

(3) 一方、山形県内では3月20日18時頃から3月21日早朝まで、放射性物質が検出さ

れた。これは、南東風により福島県北部や宮城県南部から放射性物質が運ばれたため

である。なお、この期間に降水があったので、空間線量率が増加した原因は、この放

射性物質の一部が地表面に沈着したためと考えられる。

図3.2.6aに、3月20日の15時、18時、21時、21日0時のCs-137濃度の時空間分布と

1000hPaの風向風速の水平分布、および降水分布を示した。

この期間は、前述した3月15日とは異なり、福島第一原発付近では、3月20日の午前

中から南東風が吹いており、宮城県南部では13時からCs-137濃度が増加し始め、15時

に最高となった。そして、福島市内でも15時に最高濃度を示し、21日の6時まで継続

して高かった。浜通り北部では、17時から21時にかけて放射性物質が測定された。

一方、中通りでは、北部から南に行くにつれて、最高濃度を示した時間は遅くなり、

中部では23時、そして南部では21日3時だった。この時間は、風が北寄りに変わった

ときだった。

なお、図3.2.6bに示すように、宮城県南部のSPM地点(M4: 04-11)では、3月20日の

20-22時にCs-137濃度が検出下限値(約0.1 Bq m-3)より高くなった。この時間帯は、風

が南寄りから北寄りに変化した直後だった。また、宮城県中部から南部にかけて、3月

21日の午前中は、北寄りの風だったがCs-137濃度がやや高くなった (M2:04-28,

M4:04-11. M5:04-09, M6:04-32, M7:04-37)。これらの放射性物質が、どこから運ばれ

たか、モデルを用いたシミュレーションの結果も含めて、さらに解析する必要がある。

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22

20日

15時

18時

21時

21日

0時

図3.2.6a 東北地方南部の3月20-21日の(左)Cs-137濃度の時空間分布(中)1000hPaで

の風向風速の水平分布。(右)降水分布。(上段から下段へ)3月20日15時、18時、21時、

3月21日0時。

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23

図3.2.6b 宮城県中部と南部のSPM地点 (M2-M7)でのCs-137濃度と仙台市内 (東北大

学病院)での空間線量率の時間変化(3月20-21日)。仙台のAMeDAS地点では、3月20日

18時から21日0時まで、0 mm h-1の非常に弱い降水があった。

図3.2.6cに、山形県の2地点(米沢市と山形市)での空間線量率とその近隣のSPM測定

地点(Y1:06-05, Y2:06-01)でのCs-137濃度の経時変化を示した。米沢市と山形市では、

それぞれ3月20日の18時と19時から空間線量率が数時間増加し、その後次第に減少し

た(図3.2.6b)。それに対応して、山形県内の大気中のCs-137濃度が上昇し、3月21日0

時に最高となった。この期間、AMeDASや現地のモニタリングポストのデータによる

と、Cs-137濃度の上昇とともに雨が降り始めたが、AMeDAS地点での降水量は、山形

では18-24時まで0 mm h-1で、米沢では17時に1mm h-1の降水が観測されただけで、両

地点とも非常に弱い雨だったことが特徴である。そして、両地点での空間線量率はそ

の後ゆるやかに減少したので、降水により土壌に沈着したため、と推測される。なお、

山形市の降下物データによれば、3月20-21日、22-23日(および25-26日)に放射性物質

の降下物が観測されているので、この大気中の放射性物質は、3月20日の午後早くに

南東風で、福島第一原発から福島市や宮城県南部に到達した後に、さらに米沢盆地と

山形盆地に運ばれたと推定される。なお、3月22-23日の大気中のCs-137は検出されな

かった。

図3.2.6c 山形県の空間線量率(米沢市、山形市)とCs-137濃度(SPM測定地点:Y1, Y2)

の時間変化(3月20-21日)。

0.0

0.1

0.2

0.3

0.4

0.5

0.1

1

10

100

0:00

2:00

4:00

6:00

8:00

10:00

12:00

14:00

16:00

18:00

20:00

22:00

0:00

2:00

4:00

6:00

8:00

10:00

12:00

14:00

16:00

18:00

20:00

22:00

0:00

空間

線量

率(µSv h

‐1)

Cs‐137 (Bq m

‐3)

時刻 (March 20‐21, 2011)

Cs‐137 (Y1)

Cs‐137 (Y2)

Cs‐137 (検出下限値)

空間線量率 (山形)

空間線量率 (米沢)

0.0

0.2

0.4

0.6

0.8

1.0

0.01

0.1

1

10

100

0:00

2:00

4:00

6:00

8:00

10:00

12:00

14:00

16:00

18:00

20:00

22:00

0:00

2:00

4:00

6:00

8:00

10:00

12:00

14:00

16:00

18:00

20:00

22:00

0:00

空間

線量

率(µSv h

‐1)

Cs‐137 (Bq m

‐3)

時刻 (March 20‐21, 2011)

Cs‐137 (M7)

Cs‐137 (M6)

Cs‐137 (M5)

Cs‐137 (M4)

Cs‐137 (M2)

空間線量率(東北大学病院)

雨(仙台)

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24

3.2.7. 3月21日の関東地方の状況

(1) 3月21日の午前中、北東風により、放射性物質が関東中部を通過した。この放射

性物質が到達したときに雨が降り始めたので、その一部は地上に沈着した。

(2) この放射性物質は、その後、吹き続けた北東風により東京湾を南下して相模湾上に

運ばれたと考えられる。

図3.2.7aに、3月21日の6時、9時、12時のCs-137濃度の時空間分布と1000hPaの風

向風速の水平分布および降水分布を示した。関東地方でのCs-137濃度は、図3.2.7aに

示すように、6時まではすべての地点で一様に濃度が低かったが、7時に茨城県南部と

千葉県北東部で、Cs-137濃度が急に上昇し、8時から9時には、茨城県南西部と千葉県

東葛地域で最高となった。その後、一定の北東風で放射性物質は風下側に輸送され、

11-12時には、さらに風下側の東京湾北部沿岸地域から東京湾南部の西部及び東部沿岸

地域で濃度が上昇したが、13時にはすべての地点で低くなった。

関東地方では、早朝から北東寄りの風が吹いており、茨城県東部沿岸地域での空間

線量率は、4-5時から増加し始めて、5-6時に最高となった (図3.2.7b)。この放射性物

質が、その後茨城県南部や千葉県東葛地域に輸送されたと推測される。

3月21日の気象状況は、3月15日の午前中と異なり、6時の風向風速分布で明らかな

ように、関東南部に東西に前線が存在しており、その北側で北東風が長時間継続した

ので、放射性物質が輸送された地域と時間は限定されていたと考えられる。

なお、放射性物質が到達した頃から、関東南部では、前述した前線の北側で7-8時頃

から広範囲に雨が降り始め、強度1-5 mm h-1の降水が、数時間続いた。この降水によ

り、大気中を運ばれた放射性物質の一部は、土壌や河川に沈着したと考えられる。

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25

6時

9時

12時

図3.2.7a関東地方の3月21日の(左)Cs-137濃度の時空間分布、(中) 1000hPaでの風向風

速、(右)降水分布。(上段から下段へ) 3月21日6時、9時、12時。

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図3.2.7

3.2.8.

福島県

性物質が

3月1

浜通

なった時

3月18

ある。

時に観測

推測され

時に、C

空間線量

7b 茨城県

(3月21日

3月12-14

県浜通り北

が観測され

3日の夜に

り北部での

時に、ほぼ

-19日、3月

なお、これ

測されたの

れる。宮城

Cs-137濃度

量率も増加

県東部沿岸地

日4時、5時

北部では、

れた。

宮城県南部

のSPM地点

ぼ同時に高く

月20-21日

れらの時間帯

ので、福島第

県南部のS

度が検出限

加したので、

地域のモニ

、6時)

3月15日以

部のSPM地

におけるC

くなった (図

であり、最

帯は、相馬

第一原発か

SPM地点(M

界値よりす

、今後、さ

26

タリングポ

以前にも、S

地点でCs-13

Cs-137濃度

図3.2.8a)。

最後の期間に

馬のAMeDA

から放出され

M4)では、図

すこし高く

さらに詳細な

ポストでの

SPM測定地

37濃度が検

は、南相馬

それらは、

については

ASデータに

れた放射性

図3.2.8bに示

なった。こ

な解析が必

空間線量率

地点で比較的

検出下限値よ

馬市での空

3月12-1

は、3.2.6節

によれば、

性物質が短時

示すように

この時間帯

必要である。

率の水平分布

的高い濃度

より高くな

間線量率が

3日、3月15

で述べたと

主に南より

時間で到達

、3月13日

に、仙台市

度の放射

った。

が最高と

5日夜、

とおりで

りの風の

達したと

の17-23

市内での

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27

図3.2.8a 浜通り北部のSPM地点におけるCs-137濃度と南相馬市での空間線量率の時

間変化(3月12-24日)

図3.2.8b 宮城県のSPM地点 (M4)でのCs-137濃度と仙台市内 (東北大学病院 )での空間

線量率の時間変化(3月12-14日)。

3.3. 解析結果のまとめと今後の課題

3.3.1 解析結果のまとめ

(1) 大気環境常時測定網の浮遊粒子状物質(SPM)測定地点での使用済みテープろ紙の

SPMに含まれている放射性セシウムの分析データから、これまでわからなかった東京

電力福島第1原子力発電所の事故直後における大気中Cs-137濃度の1時間毎の詳細な

時空間分布を得ることできた。

(2) 福島県を含む東北地方南部と関東地方の大量のデータ解析により、放射性物質が広

範囲に輸送された3月15-16日、3月20-21日について、その放射性物質が時間ととも

にどのように水平方向に移動していくかが示された。

(3) 福島県中通りでは、放射性物質濃度が最高となった時間が、3月15日の午後は南

部から北部へ移動したが、3月20日の夜から3月21日早朝にかけては、逆に北部から南

部に移動した。

(4) 関東地方では、午前中に北東寄りの風により放射性物質が輸送された3月15日と

3月21日の時空間分布の違いが、示された。3月15日は、午後には関東中西部に運ば

れ、関東西部山麓にまで到達した。一方、3月21日は、巾のせまい放射性プルームが

関東東部から東京湾北東の沿岸地域に運ばれ、その後、東京湾付近を南下して、相模

0.0

0.2

0.4

0.6

0.8

1.0

0.01

0.1

1

10

100

0:00

2:00

4:00

6:00

8:00

10:00

12:00

14:00

16:00

18:00

20:00

22:00

0:00

2:00

4:00

6:00

8:00

10:00

12:00

14:00

16:00

18:00

20:00

22:00

0:00

2:00

4:00

6:00

8:00

10:00

12:00

14:00

16:00

18:00

20:00

22:00

0:00

空間

線量

率(µSv h

‐1)

Cs‐137 (Bq m

‐3)

時刻 (March 12‐14, 2011)

Cs‐137 (M4)

Cs‐137 (検出下限値)

空間線量率(東北大学病院)

0.1

1

10

0.1

1

10

100

1000

0:00

12:00

0:00

12:00

0:00

12:00

0:00

12:00

0:00

12:00

0:00

12:00

0:00

12:00

0:00

12:00

0:00

12:00

0:00

12:00

0:00

12:00

0:00

12:00

0:00

12:00

0:00

空間

線量

率(µSv h

‐1)

Cs‐137

 (Bq m

‐3)

時刻 (2011年3月12‐24日)

Cs‐137

空間線量率

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28

湾上に運ばれたと考えられる。

(5) 3月16日の午前中、関東南東部沿岸地域で、放射性プルームが、北よりの強い風

により北から南に運ばれたと考えられる。

(6) 3月20日の午後に、関東東部沿岸地域から東よりの風により、放射性物質が運ば

れ、その後さらに関東中部へ運ばれ、夕方から西部山麓地帯に滞留した。ただし、3

月15日や16日より、Cs-137濃度は低かった。

(7) 宮城県南部では3月15日と3月20日の夜に、山形県では3月20日の夜に、SPM測

定地点でCs-137濃度が高くなり、放射性物質が運ばれた。

(8) これらの大気中放射性物質の時空間分布は、大気輸送モデルの検証と精緻化を進め

るのに必要不可欠な情報を提供できたと考えられる。

3.3.2 今後の課題

(1) 図 2.2.3 で示したように、今回の SPM に含まれる放射性セシウムのデータは、関

東地方では 10km 間隔でもまだ多くの地点のデータが抜けており、また、大気輸送モ

デルの 3-5km の水平格子地点を含む、全 SPM 地点の大気中 Cs-137 濃度のデータが、

必要である。

(2) 放射性物質の広域輸送現象を明らかにするには、今回の分析地点数では非常に少な

いので、さらに広域の多くの SPM 地点で、分析時間を長くしてより低濃度まで測定す

る必要がある。

(3) 事故直後に、いくつかの研究機関などが独自に大気中の放射性物質の測定を実施し

たので、それらのデータと、今回の観測データを併せて、総合的に解析する必要があ

る。

(4) 放射性物質が輸送されたときに、しばしば、弱い雨が降っていた。大気中を運ばれ

た放射性物質の沈着過程を把握する上でも、今回の分析データは非常に有用なので、

今後、気象場との関連で詳細な解析が必要である。

(5) 空間線量率が高くても Cs-137 濃度が高くない場合もしばしば観測された。これか

ら、Cs-137 だけでなく、I-131 やガス状の Xe-133 なども空間線量率に大きな影響を与

えていたと考えられる。

参考資料1:気象データ

1. 気象庁:メソ客観解析、2011 年3月(DVD-ROM)

2. 気象庁:レーダーアメダス解析雨量(DVD-ROM)

3. 気象庁:アメダスおよび高層気象データ(気象庁の HP より)。

参考資料2:自治体や研究機関などのモニタリングポストにおける空間線量率および

その関連資料

1. 宮城県環境生活部原子力安全対策室:福島第一原子力発電所事故対応に係るモニタ

リング結果について、平成 23 年3月 15 日~3月 31 日(空間放射線線量率測定結

果、平成 23 年3月 14 日)

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2. 山形県広域支援対策本部:原発事故に伴う空間放射線調査等に関する中間評価(山

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3. 山形県:山形県放射線安全情報、空間放射線・降下物(雨・雪・ちり)

http://www.pref.yamagata.jp/houshasen/air.html

4. 新潟県防災局:南魚沼地域振興局で採取した大気浮遊じんから放射性物質を検出しま

した、報道資料、平成 23 年3月 16 日

5. 新潟県:福島第一原子力発電所事故に伴う新潟県内の放射線等の監視結果(Ver.1)、

平成23年6月7日

6. 大野峻史・鈴木直樹・土田智宏・春日俊信・黒崎裕人・霜鳥達雄・丸田文之・山﨑興樹:

福島第一原子力発電所事故の影響により新潟県において検出された人工放射性核種に

ついて、新潟県放射線監視センター年報、9、19-29 (2011)

7. 米沢仲四郎・山本洋一:核実験監視用放射性核種観測網による大気中の人工放射性

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9. 福島県:県内7方部環境放射能測定結果(暫定値)平成23年3月11日~3月31日(平

成23年5月9日更新)

http://www.pref.fukushima.lg.jp/sec_file/monitoring/m-1/7houbu0311-0331.pdf

10. 福島県:原子力発電所の環境放射能測定結果、平成23年3月11日~3月31日(東

日本大震災発生以降)(2012年9月21日)

11. 茨 城 県 環 境 放 射 能 監 視 セ ン タ ー : 茨 城 県 の 放 射 線 量 の 状 況 に つ い て

http://www.houshasen-pref-ibaraki.jp/earthquake/doserate_2011.html

12. 茨城県災害対策本部:茨城県の放射線量の状況について(北茨城市,高萩市,大

子 町 に お け る 可 搬 型 モ ニ タ リ ン グ ポ ス ト に よ る 測 定 結 果 ) 、

http://www.pref.ibaraki.jp/20110311eq/data/radiation/0315am.pdfなど

13. 阿部養悦:東日本大震災及び福島第一原子力発電所事故時の状況と対応、Isotope

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Japan Earthquake and Tsunami (WHO Press, 2012).

WHO. Health risk assessment from the nuclear accident after 2011 Great East Japan

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鶴田治雄・荒井俊昭・司馬 薫・山田裕子・草間優子・中島映至(2013a):福島第1原

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と 137Cs の動態、Proceedings of the 14th Workshop on Environmental Radiochemistry, KEK,

Tsukuba, Japan, February 26-28, 2013, 90-98.

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4. 大気輸送モデルを用いたシミュレーションによるCs-134及びCs-137の時空間マッ

プの精密化

4.1. 方法 本事業によって得られる放射性セシウムの1時間ごとの大気中濃度の多

点測定データは、航空機観測等による地表面からの空間線量率の測定データでは分解

できない事故当時の詳細な放射性物質の気流に関する有用な情報を含んでいる。従っ

て、これら2つのデータを十二分に利用することによって、原子炉からの放射性物質

の排出量時系列と放射性物質の輸送過程の推定精度を向上することができる。

そのために本事業では、放射性物質の輸送拡散モデルを用いた次の2つのモデルと

の比較調査によって、放射性セシウムの大気中濃度の時空間分布を検討する。

(1) 観測大気濃度とモデル値の比較

先行研究によって得られた放出シナリオ(Terada et al., 2012)を仮定して、2つの

モデル(NICAM-SPRINTARSおよびWRF-CMAQモデル、補足A1, A2)を用いた放射

性セシウムの大気輸送過程のシミュレーションを行う。得られたシミュレーション結

果を観測された放射性セシウムの大気中濃度と比較することにより、それぞれのモデ

ル固有の計算誤差を把握する。それによって、当時、実際に起こった放射性セシウム

のプルームの時空間変化を推定する。この過程では、モデル内パラメータの調整を行

うことによって、モデルの再現精度を向上させる。

(2) データ同化・逆推計解析

WRF-CMAQモデルを用いてデータ同化・逆推定を行う。すなわち、様々な放出シナ

リオに基づいたモデル計算を多数繰り返して、観測された放射性セシウムの大気中濃

度と計算値が最も一致するような最適放出シナリオを推定する。このようにして得ら

れた最適放出シナリオに基づいて放射性セシウムの大気中濃度の最適時空間分布も計

算する。このようなデータ同化・逆推定で推定される最適解は、モデルに含まれる誤

差に大きく依存するので、時空間分布の把握には、調査(1)と(2)を並行して実

施する必要がある。

4.2. 観測大気中放射性セシウム濃度とモデル値の時系列の比較

本調査によって得られた放射性セシウムの大気中濃度と比較するために、2つのモ

デルを用いてシミュレーションを行った。使用したモデルは、国立環境研究所によっ

て開発されたWRF−CMAQ領域化学輸送モデルをベースにした放射性物質の大気輸

送・沈着モデル(以下、Wモデル)及び、東京大学で開発されたNICAM-SPRINTARS

化学輸送モデルをベースのモデル(以下、Nモデル)である。放出シナリオはTerada et

al. (2012)を用い、気象場のデータは気象庁の気象庁メソ客観解析データを用いた。

これらの説明の詳細は補足1から3に示した。

図4.2.1a〜cに2つのモデルの計算結果を観測値のCs-137の時系列を比較した。モデ

ルはCs-137とCs-134の値の差は小さいので同じとした。図によると、3月15日から16

日の顕著な大気中濃度が観測されたイベントでは、WモデルとNモデルの両者とも観測

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値を良く再現している。一方、20日から22日のイベントでは、2つのモデルとも観測

結果を過小評価する時間帯が存在している。詳細に見ると前半はNモデルの方が再現性

がよく、後半はWモデルの方が再現性が良いことがわかる。この事は、モデルの再現

性の良否は、気象場によってモデルごとに異なることを示している。

図4.2.1a 各地点での大気中Cs-137濃度(Bq m-3)の時系列(3月15日~3月23日)。

黒丸:観測値、赤の実線:Wモデルの計算結果、緑の実線:Nモデルの計算結果。

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図4.2.1b 図4.2.1aと同じ。ただし、異なる観測点での時系列。

(11-77地点の3月17日以降の観測値は欠測)

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図4.2.1c 図4.2.1aと同じ。ただし、異なる観測点での時系列。

4.3. 観測大気中放射性セシウム濃度とモデル値の空間分布の比較

前節でみたような N モデルと Wモデルによる再現性の良否がなぜ発生するかを調べ

るために、本節では、大気中 Cs-137 濃度の空間分布を、第 3 章で記載された SPM 等

の観測から得られた時空間分布と比較して、二つのモデルがどの程度実測を反映して

いるかを示す。対象時期は、比較的高い濃度の放射性物質が観測された 3 月 15 日(関

東と東北南部)、16 日(関東)、20 日(関東)、20-21 日(東北南部と関東)であり、現象の

発現時期順に述べる。

(1) 3 月 15 日の比較

図 4.3.1a~e に 3 月 15 日の 9 時、12 時、15 時、18 時と 21 時の水平分布を示した。

観測データによれば、3 月 15 日は、午前から午後にかけて関東地方の広域に放射性物

質が輸送された。午前中に放射性物質が関東地方に輸送された現象を、2つのモデル

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はよく再現している。また、午後に観測された関東西部山麓地帯での濃度上昇現象も、

2つのモデルともよく再現していた。しかし、N モデルでは午前中の関東域の濃度を

過小評価、W モデルでは午後の濃度を過大評価している。

つぎに、観測データによれば、午後から夜にかけては福島県を含む東北南部に輸送さ

れたが、N モデルと W モデルともに、この現象を良く再現している。しかし、W モデ

ルの空間的広がりは若干大きすぎる。

図 4.3.1a Cs-137 の大気中濃度の空間分布(Bq m-3)。観測値(左)、N モデルによる計

算値(中央)、W モデルによる計算値(右)。2011 年 3 月 15 日 9:00 の事例。図中の○印

は SPM からの大気中濃度を示す。カラーコードは計算値のものと同じである。ただし、

N-model については検出下限値以下のデータは青色の△で表示、W-model は紫色の○

で表示している点に注意。

図 4.3.1b 2011 年 3 月 15 日 12:00 の事例。

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図 4.3.1c 2011 年 3 月 15 日 15:00 の事例。

図 4.3.1d 2011 年 3 月 15 日 18:00 の事例。

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図 4.3.1e 2011 年 3 月 15 日 21:00 の事例。

(2) 3 月 16 日午前中の関東地方の比較

図 4.3.2.a~c に、3月 16 日6時、9時と 12 時の水平分布を示した。観測もモデルも

低濃度であり整合的であった。しかし詳細に見ると、観測データによれば、午前中に

北寄りの風で茨城県と千葉県の東部沿岸地域に放射性物質が運ばれたが、N モデルと

W モデルともに Cs-137 は沖合に流されてしまい、濃度上昇現象を再現できなかった。

一方、関東域に残留した低い濃度分布を N モデルは良く再現した。

図 4.3.2a 2011 年 3 月 16 日 6:00 の事例。

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図 4.3.2b 2011 年 3 月 16 日 9:00 の事例。

図 4.3.2c 2011 年 3 月 16 日 12:00 の事例。

(3) 3 月 20 日午後の関東地方での比較

図 4.3.3a〜c に、3 月 20 日 12 時、15 時、18 時の Cs-137 濃度の水平分布を示した。3

月 20 日の午後に、東風により鹿島灘から関東中部に広域に放射性物質が運ばれた現象

について、N モデルはだいたい再現できたが、W モデルでは再現されなかった。詳細

に見ると、N モデルによるプルームの南端が若干、北東に位置したために、南西の観

測点では濃度の過小評価が起こった。

(4) 3 月 20 日午後から 3 月 21 日早朝の東北南部における比較

図 4.3.3b~e に、3 月 20 日の 15 時、18 時、21 時、3 月 21 日 3 時の Cs-137 濃度の水

平分布を示した。3 月 20 日の午後早くから福島県中通り北部と宮城県南部での濃度上

昇現象と、その後の浜通り北部での濃度上昇現象を、どちらのモデルも再現していた。

夜遅くから翌日 3 月 21 日朝までの、中通りでの濃度上昇現象は W モデルでは再現さ

れなかったが、N モデルでは妥当に再現できた。

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図 4.3.3a 2011 年 3 月 20 日 12:00 の事例。

図 4.3.3b 2011 年 3 月 20 日 15:00 の事例。

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40

図 4.3.3c 2011 年 3 月 20 日 18:00 の事例。

図 4.3.3d 2011 年 3 月 20 日 21:00 の事例。

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図 4.3.3e 2011 年 3 月 21 日 3:00 の事例。

(5) 3 月 21 日の午前中の関東地方における比較

図 4.3.4a~c に、3 月 21 日 6 時、9 時、12 時の Cs-137 濃度の水平分布を示した。3

月 21 日の午前中に茨城県東部沿岸域から関東南部で観測された Cs-137 の濃度上昇現

象は、N モデルはだいたい再現できたが、W モデルでは再現されなかった。

図 4.3.4a 2011 年 3 月 21 日 6:00 の事例。

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図 4.3.4b 2011 年 3 月 21 日 9:00 の事例。

図 4.3.4c 2011 年 3 月 21 日 12:00 の事例。

(6) これらの比較から明らかになったこと

① 3 月 15 日から 3 月 21 日までの 5 回の濃度上昇現象について、モデル間の比較を

行った。その結果、W モデルと N モデルとも 3 月 15 日の再現性はよかった。一方、3

月 20 日午後と 3 月 21 日午前中の東北南部の現象については、N モデルと W モデルと

もに再現性はだいたい良かった。しかし、3 月 16 日の午前中の関東東部沿岸域、およ

び 3 月 20 日の夜中から 3 月 21 日早朝における中通りの濃度上昇現象は、モデルによ

っては再現できなかった。このように、モデルによって良い再現性が得られる時期が

異なっていた。

② その原因として、次の要因があげられる。

・鉛直輸送の問題:3 月 20 日の午後の分布が二つのモデルで微妙に異なるのは、それ

ぞれのモデルで、放射性物質の上層への輸送の早さが異なることによると考えられ

る。大気物質の鉛直混合モデリングの改良を進める必要がある。

・湿性沈着の問題:W モデルが 3 月 21 日の濃度上昇現象を再現できなかった原因と

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して、湿性沈着率が大き過ぎたために、大気中の Cs-137 が降水で過剰に除去され

たと推測された。

・福島第一原子力発電所での放射性物質の放出強度:3 月 16 日の午前中の濃度上昇現

象は、N モデルと W モデルともに低濃度であり、福島第一原発での放出強度が現状

の数値よりもっと大きいと推測された。

・気象場の再現性:弱い降水などがモデルで再現できているか、さらに検討する必要

がある。モデルの風系の違いに関しては、W モデルでは気象庁メソ客観解析データ

を境界条件に利用しているが、N モデルは境界条件と同時に、領域内部でナッジン

グによる拘束にも利用している違いがあり、その影響も今後調査する必要がある。

以上のように、この委託事業ではじめて実施された、モデルによるシミュレーショ

ン結果と実測データとの比較により、モデル間での再現性の違いが明らかになり、今

後さらに検討すべき課題である。

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44

4.4 グリーン関数法を用いた逆推計モデルに基づく放出量の推定

Wモデルを利用して、気象研究所が開発したグリーン関数法に基づいた逆推計法に

よって、Cs-137の地上沈着量マップのデータ同化を行った(補足A3)。その結果得ら

れた放出シナリオを用いて、本調査で得られた放射性セシウムの大気中濃度データを

最適に再現する放出量時系列と放射性物質の分布を調査した。

(1) SPM データによる検証

逆推計放出量による Cs-137 の東日本スケール大気濃度の精緻化を確認するために、

SPM 捕集ろ紙から得られる放射性セシウムの濃度データ(以下、地上観測データと表記

する)を用いたモデルシミュレーション結果の比較・検証を行った。図 4.4.1 に、Cs-137

プルームが福島から北関東にかけて輸送された 3 月 15 日における逆推計前後の放出量

を用いたモデルシミュレーション濃度と地上観測データ(共に日平均値)の比較を示

す。この日は、Cs-137 プルームが福島から北関東にかけて輸送された日である。c)の

図は逆推計前後の差で、赤色で示した領域は逆推計によって地上濃度が増加した地域

を、青色は逆に減少した地域を表す。逆推計放出量を用いたモデルシミュレーション

は地上観測データから得られた空間濃度分布を良く再現している b)。逆推計前後の差

と合わせてみてみると、逆推計によって福島県の阿武隈高地・中通り・栃木県にかけ

て地上濃度が増加しており、中通りの地上観測データとの間に見られた過小評価が改

善している。一方、福島県浜通りから太平洋沿岸を経て関東地方に至る領域では逆推

計によって地上濃度が減少しており、北関東地方の観測地点で見られたモデルシミュ

レーション濃度の過大評価が、逆推計によって改善した。

(2) 逆推計による補正結果

図 4.4.2 に 3 月 15、20、21 日における、逆推計前後の放出量を用いたモデルシミュ

レーションの結果と地上観測データの比較を散布図で示す。表 4.4.1 には各種統計量

の比較も示す。3 月 15 日の事例(赤丸)を見てみると、モデルシミュレーションの結

果の地上観測データに対する一致度が、同化前の結果(図 4.4.2)に比べて改善してい

ることがわかる。逆推計前後を比較すると、逆推計によって平均二乗誤差(9.0 kBq/m3

から 4.5kBq/m3)、相関係数(0.39 から 0.56)ともに大きく改善した。この時、総放出

量は 8.12 PBq と推定された(A3.3 参照)。次に放射性物質が東日本に拡散した 3 月 20

日(青三角)は、観測された Cs-137 濃度を再現出来た観測地点もあるが(モデルシミ

ュレーション濃度が 2–20 Bq/m3 の地点で主に福島県・宮城県に分布)、関東地方の地点

を中心にモデルシミュレーションの過小評価が目立った(図 4.4.2 の左上に位置する

地点)。翌 3 月 21 日(緑十字)も過小評価のサイトが多く見られた。1 対 10 および 10

対1の直線の内側に位置する地点(茨城や埼玉の北部など北関東の地点)もあったが、

それ以外(主に東京・神奈川・千葉など南よりの地点)ではモデルシミュレーション

は観測値を過小評価した。3 月 20、21 両日の事例では、排出量逆推計によって一部モ

デルシミュレーションの精度が向上した地点も見られたが(図略)、概ね過小評価が目

立ち、統計的に見ても目立った改善は見られなかった。

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(3) 大気中濃度の時間変化

Cs-137 地上濃度の時間変化を詳しく調べるため、各観測地点での時系列の比較を示

す(図 4.4.3)。シンボルは観測値を、赤実線は逆推計で得られた放出量で駆動したモ

デルシミュレーションの結果である。モデルシミュレーションの結果は、3 月 15 日に

各地に拡散した Cs-137 を非常によく再現している。一方で、3 月 20 日に観測された

Cs-137 をモデルシミュレーションは東北の2点(04-23、07-34)を除き、捉えること

が出来ず、逆推計でも放射性プルームを再現することは出来なかった。続く 3 月 21 日

は関東地方(例えば、12-93)では Cs-137 の拡散がモデルで再現されたものの、東北

地方のサイト(04-23、07-34)ではうまく再現することが出来なかった。関東地方の

サイトでは逆推計によって観測値との差が縮小(過大評価が改善)したが、東北地方

のサイトでは改善は見られなかった。

Cs-137 の放出量逆推計によって、地表への沈着量のシミュレーションが精緻化され、

沈着量・分布ともに大きな改善が見られた。地上観測データとの比較から、放出量逆

推計は 3 月 15 日の Cs-137 の拡散イベントにおけるモデルシミュレーションの精度を

大きく改善したことを確認した。一方で、3 月 20、21 日は改善の見られないケース(地

域、観測サイト)も見られた。この原因として、第一に、Cs-137 の再飛散の問題があ

る。再飛散とは一度沈着した Cs-137 が風などで再び大気中に舞い上がることで、現在

のモデルシミュレーションにはその仕組が組み込まれていない(一度地上に沈降した

ものは舞い上がらない設定となっている)。3 月 15 日以降は地上観測データに比べて、

モデルシミュレーションは過小評価する傾向があるが、3 月 15 日に一度地上に沈着し

た Cs-137 が再飛散で舞い上がり、地上観測データに影響を与えている可能性がある。

第二に、逆推計の拘束条件に用いた沈着量データの特性がある。沈着量は原発事故以

降、陸上に沈着した Cs-137 の総量であり、いつ沈着したかという時間情報は含まれて

いない。そのため、東日本の Cs-137 沈着に大きな影響を与えた(大きな割合を占めた)

3 月 15 日のイベントにおいては大きな改善が見られたが、3 月 15 日に比べ地上沈着量

の少なかった 3 月 20、21 日のイベントは逆推計による影響が小さくなった可能性が考

えられる。

(4) 結果と課題

グリーン関数法を応用した逆推計モデルを放射性物質放出量の逆推計に適用した。

大気輸送モデルに組み込み、航空機による地上沈着量マップを拘束条件とすることに

よって、福島第一原子力発電所事故で放出された放射性物質(Cs-137)放出量の最適

化を行った。逆推計によって得られた放出量は細かな時間変動を表し、大気輸送モデ

ルを用いたシミュレーションは Cs-137沈着量マップの再現性を大きく向上させた。SPM

捕集ろ紙から得られた地上 Cs-137濃度の観測データを用いた比較・検証を行った結果、

最も大規模だった 3 月 15 日のイベントをモデルはよく再現し、逆推計によって福島県

に見られた過小評価、関東地方で見られた過大評価を改善した。一方、続く 3 月 20、

21 日のイベントにおいて、モデルシミュレーションはその傾向を捉えていたが、全体

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的に過小評価であり、逆推計による改善も限定的であった。その原因として、Cs-137

の再飛散、逆推計に用いた沈着量データの特性(時間情報に欠ける)が挙げられる。

事故によって放出された放射性物質の挙動(4次元分布)再現のさらなる精緻化のた

めには、今回の地上観測データとの詳細な比較で得られた情報を参考にしたモデルの

物理(再飛散など)の改良や、地上観測データから得られた濃度の時間情報(沈着量

データから得られない)を利用した逆推計モデルの開発が考えられる。課題を次のよ

うにまとめる。

・ 3 月 20、21 日のイベントではモデルはその傾向を捉えていたが全体的に過小評価で

あり、逆推計による改善も限定的であった。

・ 時間積算量である沈着量に加え、濃度の時間変化を捉えた観測データを利用した逆

推計モデルを開発する必要がある。

表 4.4.1 Cs-137 日平均濃度のモデルシミュレーションと地上観測データの比較(統

計量)

平均二乗誤差 相関係数 データ地点数

逆推計前 逆推計後 逆推計前 逆推計後

3 月 15 日 9.0 4.5 0.39 0.56 51

3 月 20 日 14.8 15.8 0.52 0.51 37

3 月 21 日 1.7 1.7 0.12 0.14 46

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47

図 4.4.1 Cs-137 の地上濃度マップ(3 月 15 日)。a) は逆推計前、b)は逆推計放出量を

用いたシミュレーションによる地上 Cs-137 濃度と地上観測データの比較(◯シンボ

ル)。どちらも日平均濃度で、地上観測データは一日のうち 18 個の時間(75%以上)

のデータがある地点。c) は逆推計前後の Cs-137 濃度の差で、赤色の領域は逆推計の

結果、地上濃度が増加した領域を、青色は逆に減少した領域を示す。

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48

図 4.4.2 Cs-137 日平均濃度のモデルシミュレーションと地上観測データの比較(散布

図)。赤丸、青三角、緑十字のシンボルはそれぞれ 3 月 15、20、21 日。左は逆推計前、

右は逆推計後の放出量を使用したモデルシミュレーション。日平均濃度で、地上観測

データは一日のうち 18 時点(75%以上)のデータがある地点。実線は1対1を、破線

はそれぞれ 1 対 10、10 対1を表す。モデルシミュレーション濃度が 10 Bq/m3 以下の

観測点で、3 月 15 日の事例については逆推計による改善が見られる。

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49

図 4.4.3 Cs-137 濃度の時系列の比較。黒のシンボルは SPM 捕集ろ紙から得られた

Cs-137 濃度、赤の実線は逆推計で得られた放出量を元にモデルシミュレーションを行

った結果。濃度が 0.1 Bq/m3 を超えたデータを表示する。

4.5.モデリングに関するまとめ

本研究において得られたベータ線吸収法 SPM 自動採集装置から得られた Cs137 大

気中濃度(以下、解析濃度)を2つの放射性物質輸送モデルによるシミュレーション

結果と比較した。モデルは、国立環境研究所の WRF-CMAQ をベースに福島第一原発

事故のために改修されたモデルと、東京大学の NICAM-SPRINTARS をベースに改修

されたモデルである。2つのモデルは与えられた放出シナリオと気象データに基づい

た標準実験を3月の期間中について行った。WRF-CMAQ については、気象研究所の

グリーン関数法による逆推計モデルによって、与えられた放出シナリオを調整して解

析濃度の時系列に最適に一致した、最適放出シナリオの導出と、それに基づいた最適

シミュレーション値を得た。以下が結果のまとめである。

・水平濃度分布:2つのモデルによるシミュレーションの水平分布は、特徴的な沈着

パターンを形成した 15 日から 16 日にかけてのイベントと 20 日から 21 日にイベント

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50

(以下、期間 A と期間 B)について、解析濃度の分布の特徴を良く表している。逆推

計を行うと期間 A に関して相関係数が 0.39 から 0.56 に増加して、一致度がさらに高

くなった。期間 B については相関の向上は見られなかった。これは、シミュレーショ

ン値が解析濃度を良く表現できていた事もあるが、これは後者の方が主要なプルーム

が沿岸域にかかっていたために、比較すべき観測点に偏りが出た可能性も考えられる。

・濃度時系列:WRF-CMAQ と NICAM-SPRINTARS ともに、期間 A と期間 B につい

て解析濃度の時間変化をおおむね表していた。しかし、期間 B についてはそれぞれの

モデルで再現性の悪い時間帯が存在した。

・積算沈着量分布:WRF-CMAQ は概ね期間中の積算沈着量の地域分布を再現してい

る。NICAM-SPRINTARS は中通地方の沈着が再現されていない。これは、15 日午後

にかけて中通地方を中心に降っていたことが観測されている弱い雨による放射性物質

の沈着過程が NICAM-SPRINTARS では的確にモデル化できていないことを示す。学

術会議によるモデル比較によると WRF-CMAQ は沈着パターンが良く表現されるモデ

ルであり、他の多くのモデルが NICAM-SPRINTARS と同様の問題を抱えている。逆

推計では、原発北西の高沈着量地域では、北側で値が増加し、南側で小さくなるよう

に調整が行われた。また猪苗代湖周辺での沈着を増加させている。

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51

5. 今後の課題

以上にまとめたように本事業によって、大気環境常時測定網の SPM 測定器の使用済

みテープろ紙の分析から得られる1時間毎の Cs-137 および Cs-134 濃度データと大気

輸送モデルを連携して利用すると、これまでにない高い時空間分解能で、事故当時の

Cs-137 および Cs-134 の大気輸送の状況が把握できることが明らかになった。また、事

故直後の Cs-134 および Cs-137 の大気濃度に対するモデル計算結果を検証し、その不

確実性を定量的に把握するとともに、個々のモデルの改良、複数モデルの平均処理(モ

デルアンサンブル)、モデルと実測データ(濃度と沈着量)を使用した放出量の逆推

計等によってモデルの確実性を低減できる見通しがたった。今後、多数の観測データ

を使用してモデルの不確実性を更に低減するとともに、I-131/Cs-137 濃度比や I-131

沈着量などの実測データを使用することによって、事故直後の線量再構築に資する大

気モデリングが可能になると考えられる。そのためには、さらに次の点を早急に実施

する必要がある。

(1) これまでに分析・解析された Cs-134 と Cs-137 のデータは、現存するテープろ紙の

ごく一部であり、その全地点のテームろ紙の分析と解析が早急に必要である。それ

によってさらに詳細な大気濃度の時空間マップの作成ができ、精度の高い放射性物

質の大気輸送過程が復元できる。

(2) このような多点での連続した1時間観測データから放射性物質の大気輸送過程の

全容を把握するためには、モデルシミュレーションが有効であることが明らかにな

った。今回初めて、詳細な観測データと複数のモデルシミュレーションとの連携が

できたが、問題点を検討した上でさらに両者の連携を強化する必要がある。そのた

めには、今後、詳細な観測データによって検証しつつ、それぞれのモデルシミュレ

ーションの一層の改善を図る必要がある。

(3) 本調査によって、WRF-CMAQ も NICAM-SPRINTARS も 2011 年 3 月 15 日-16

日の SPM 計による放射性セシウムの大気中濃度の観測値を良く再現でき、逆に 3 月

20 日-21 日の場合は異なった時間帯でモデルによって再現できない場合があった。

従って、このような性能の異なる2つのモデルを最適に組み合わせたマルチモデ

ル・アンサンブル手法を適用すれば、SPM 計データのモデルシミュレーションが画

期的に向上する見通しが立った。今後はその実施を行う計画である。また、大気中

濃度を拘束条件に使った逆推計を試みる必要がある。

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52

謝辞

SPM計で使用済みテープろ紙を環境省を通じて首都大学東京へ提供してくださったす

べての自治体に、深く感謝申し上げます。分析データを利用させていただいた、首都

大学東京と日本分析センターに、感謝致します。

担当者氏名

東京大学大気海洋研究所

中島映至 教授

鶴田治雄 特任研究員

研究協力者名

独立行政法人国立環境研究所

大原利眞 地域環境研究センター長

森野 悠 主任研究員

国土交通省気象庁気象研究所

眞木貴史 環境・応用気象研究部第 1 研究室長

弓本桂也 環境・応用気象研究部第1研究室研究官

首都大学東京

海老原充 大学院理工学研究科分子物質化学専攻 教授

大浦泰嗣 大学院理工学研究科分子物質化学専攻 准教授

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53

補足資料

補足A1. WRF-CMAQモデル

A1.1. モデルとシミュレーション条件

今回の大気シミュレーションでは、米国環境保護庁で開発された三次元化学輸送モ

デル CMAQ(Byun et al., 2006)を利用した。このモデルは、光化学スモッグや酸性沈着

などの大気汚染現象の汚染予測や動態把握を目的としたモデルであり、放射性物質を

計算するために改変して利用した(Morino et al., 2011)。今回の大気シミュレーショ

ンに利用したシステムの概要を図 A1.1 に示した。このモデルシステムは、気象モデル

(WRF)と化学輸送モデル(CMAQ)で構成されている。化学輸送モデルでは、放射性物

質の放出・風の流れや空気の乱れによる物質輸送(それぞれ移流と拡散と呼ぶ)・物質

の地表面への直接沈着(乾性沈着)・降水による沈着(湿性沈着)・放射性壊変の過程を

計算する。また、化学輸送モデルは、気象モデルで計算された気象場(風系や降水量な

ど)と、Terada et al.(2012)によって推計された放出量データ(図 A1.2)を入力条件

としている。放射性物質のガス・粒子比や粒子直径などは、沈着速度を決める重要な

要素であるが、今回の計算では、チェルノブイリ原発事故時に行われたシミュレーシ

ョンの設定(Sportisse et al., 2007)や、つくばでの測定結果(Doi et al, 2013)を参

考に、I-131 はガス・粒子比 8:2、Cs-137 は全て粒子、粒子直径は 1µm と設定した。計

算期間は 2011 年 3 月 11 日から 30 日、計算領域は福島第一原発を中心とした 711 x 711

km2 の範囲(図 A1.1、水平格子間隔 3 km)とした。詳細は、Morino et al.(2013)を参照

されたい。なお、Cs-134 と Cs-137 の放出量はほぼ同一であることから、Cs-134 濃度

は Cs-137 濃度と同じとした。また、I-131 については解析対象外とした。

なお、本節で使用された大気シミュレーションのモデルと条件(放射性物質大気輸送シミュレ

ーションシステム)は、4.4 節におけるグリーン関数法に基づく放出量の再構築のタグ付きシミュ

レーション(大気中に放出された物質に放出期間別の標識(タグ)をつけて計算する方法)にお

いて使用された(4.4 節参照)。

参考文献

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図 A1.2

2011 年

2 排出口高

年 3 月 12 日

図 A1

高さの時間変

日から 3 月

1.1 大気シミ

変化(赤実線

16 日まで

55

ミュレーシ

線)、137Cs の

の拡大図。

ションの概略

の発生量の

略図.

時間変化(青

青実線)。下

下段図は

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56

補足A2. NICAM-SPRINTARSモデル

JAMSTECと東京大学が開発したNICAMは準一様計算格子、ある特定点を中心に格

子を集中させるストレッチ格子を装備する全球および領域計算に対応できる正20面体

格子非静力学モデルである(Tomita and Satoh, 2004; Satoh et al., 2008)。このモデ

ルに東京大学と九州大学が開発したエアロゾル輸送・放射モデル SPRINTARS

(Takemura et al., 2000; 2005)を組み込んだモデルを利用して放射性物質のシミュ

レーションを行う。MIROC気候モデル(Numaguti et al., 1995)に組み込まれた

SPRINTARSを使った全球数値シミュレーション例(Takemura et al., 2011)がある

が、ここでは、ダイアモンド格子を使ったNICAMの領域版(以下、Diamond-NICAM

と呼ぶ)を利用した日本付近のシミュレーションを行った。空間格子分解能は福島周

辺で5km程度である。表A2.1に実験条件をまとめる。図A2.1には2011年3月24日まで

に行ったCs-137の積算沈着量の分布を示す。

表A2.1. NICAM+SPRINTARSモデルによる実験条件

-------------------------------------------------------------------------------

水平分解能 ~5km (G-level 8 + Stretch)

鉛直分解能 40層 (最下層20m)

初期値 NCEP-FNL (1°x1°)

境界+ナッジング 気象庁メソ客観解析(0.125°x 0.1°)

開始時刻 2011/3/10 12:00 (UTC)

放出シナリオ Terada et al. (2012)

-------------------------------------------------------------------------------

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補足A3 Wモデルを利用したグリーン関数法を用いた逆推計モデルに基づく放出量の推

A3.1 モデルシミュレーションの条件

東京電力福島第一原子力発電所の事故によって大気中に放出された放射性物質の時

空間分布の把握には、大気輸送モデルを用いたモデルシミュレーションが大変有効で

ある。大気輸送モデルは、拡散・沈着といった物理過程、気象場(風系・降水)など

の入力データから放射性物質の挙動を再現するが、原子力発電所から放出された放射

性物質の放出量(時系列)もモデルシミュレーション結果の精度を大きく左右する重

要な入力値である。

事故による放射性物質の放出量の推計は、日本原子力研究開発機構(Japan Atomic

Energy Agency: JAEA)、フランス放射線防護・原子力安全研究所(Institut de

Radioprotection et de Sûreté Nucléaire: IRSN)をはじめ、様々な機関で、様々な

方法を用い行われている。図 A3.1 中段に Cs-137 放出量推計値時系列の比較を、表 A3.1

に総排出量の比較を示す。発電所からの点発生源にもかかわらず、見積もり間に大き

なばらつきがあることが判る。この原因は、放出量の見積に用いた観測データ、大気

輸送モデル、手法の違いによると考えられ、未だに放射性物質の放出量の推計に大き

な不確実性が含まれていることを示している。本研究では、W モデル(Morino, et al.,

2013)を用い、グリーン関数法を基礎とする逆推計モデルを組み込むことで Cs-137 放

出量を最適化し(Yumimoto, et al., paper in preparation, 2014)、地上観測データ

との比較・検証を行った。逆推計モデルの拘束データには航空機で観測された地上沈

着量マップ(MEXT, 2011)を用いた。

A3.2. モデルの再現性

グリーン関数による逆推計モデルについて概要を述べる。詳細は(Yumimoto and Uno,

2012)を参照されたい。グリーン関数ではモデルシミュレーション値と観測値の差の

二乗和を評価関数として定義し、その値が最小となるように Cs-137 の排出量を最適化

する。本研究では評価関数計算のための観測値に Cs-137 の地上沈着量マップを用いる

が、発電所から放出後、大気中を輸送され広域に渡り地面に降り積もった沈着量と放

出量そのものを直接結びつけることはできない。そこで、数値モデルを使って求めた

感度の情報を用いる。具体的には、タグ付きシミュレーションを行い、排出量の増減

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59

がどのくらい沈着量に変化を与えるか(ソース―レセプター感度)を計算する。タグ

付きシミュレーションとは大気中に放出された物質に放出期間別の標識(タグ)をつ

け、その時間に放出された Cs-137 が沈着量に対してどの程度寄与するかを定量的に計

算することである。本研究では、3 月 11 日から 4 月 2 日まで 23 日の期間で、時間分解

能1時間の排出量の逆推計(計 552 個)を行った。

A3.3 逆推計による最適化

図 A3.1 に本研究で得られた Cs-137 の放出量の時系列を示す。地上沈着量マップを

拘束条件に用いたので、放射性物質が地上側へと輸送された 3 月 15 日、21 日前後に感

度があり、逆推計によって放出量に細かい時間変動が生じている。この2つの放出期

間に対応した放射性物質濃度のピークは、本事業で解析した地上観測データにも見ら

れ、地上の放射性物質の濃度・沈着量に大きな影響を与えたものと推察できる。放出

量逆推計によって、これらのイベントのモデルシミュレーションの精度向上が大きく

期待できる。また、3 月 31 日には他の推計値には見られない放出量のピークが見られ

た。これは、与えた先験情報(Terada, et al., 2012)に起因するものと考えられる。

3 月 11 日から 4 月 2 日までの総放出量(3 月 11 日から 4 月 2 日まで)は 8.12 PBq と

見積もられた(表 A3.1)。

図 A3.2 に航空機観測で得られた Cs-137 の地上沈着量マップと逆推計モデルによっ

て得られた放出量を入力条件に大気輸送モデルを用いて計算した沈着量の空間分布を

示す。逆推計モデルを使った放出量の最適化によって、福島第一原子力発電所から北

西に伸びる地域、福島県浜通り地区で沈着量が増加し、観測データに近い分布となっ

た。一方、発電所の西の高地、発電所から南の福島県・茨城県の沿岸では沈着量が減

少し、逆推計前のシミュレーションに見られていた過大評価が改善された。また、3

月 15–16 日に輸送された関東北部の沈着量が抑制され、観測データにより近い値とな

った。また、逆推計によって相関係数は 0.79 から 0.82 に、平均二乗誤差は 74.6 kBq/m2

から 69.1 kBq/m2 に改善した。

参考文献

Morino, Y.; Ohara, T.; Nishizawa, M., Atmospheric behavior, deposition, and budget

of radioactive materials from the Fukushima Daiichi nuclear power plant in March

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the source term, atmospheric dispersion, and deposition. Atmospheric Chemistry

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Winiarek, V.; Bocquet, M.; Saunier, O.; Mathieu, A., Estimation of errors in the

inverse modeling of accidental release of atmospheric pollutant: Application to the

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61

表 A3.1 Cs-137 総放出量の比較。

研究

セシウム 137 放出量

(PBq) 期間

本研究による逆推

計 8.12

3 月 11 日 0 時 UTC〜4 月 2 日 0 時 UTC

逆推計前* 8.68 3 月 11 日 0 時 UTC〜4 月 2 日 0 時 UTC

Stohl et al. (2012) 23.5–50.1 3 月 10 日 12 時 UTC〜4 月 20 日 0 時

UTC

Saunier et al.

(2013) 15.5

3 月 11 日 0 時 UTC〜3 月 27 日 6 時

UTC

Mathieu et al.

(2012) 20.6

3 月 11 日 0 時 UTC〜3 月 27 日 6 時

UTC

Winiarek et al.

(2012) 12–19

3 月 11 日 0 時 UTC〜3 月 26 日 0 時

UTC

TEPCO (2012) 10 3 月 11 日 15 時 UTC〜3 月 31 日 15 時

UTC

* Terada et al. (2012)

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62

図 A3.1 福島第一原子力発電所から放出された Cs-137 放出量の時系列変化。グレーは

逆推計前、赤線は逆推計後を表す。中段は様々な研究による Cs-137 放出量の比較。

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63

図 A3.2 Cs-137 の地上沈着量マップ。a) 航空機による観測を、b) は逆推計結果を用

いたモデルシミュレーション結果、c) 逆推計前後の沈着量の差(赤色の領域は逆推計

の結果、沈着量が増加した領域を、青色は逆に減少した領域を示す)。

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64

補足A4 Wモデルによるシミュレーション結果と観測データとの比較の詳細

W モデルによって計算された放射性物質の大気濃度と観測結果との比較結果を以下に示す。

図 4.1.1 Cs-134 と Cs-137 の大気濃度のモデルと実測の比較(千葉県、埼玉県)

(●:Cs モデル計算濃度; ●:Cs-137 実測濃度; □:Cs-134 実測濃度)

10-3

10

-1

10

1

10

3

(Bq

/m3

)

3/15 3/17 3/19 3/21 3/23

Local time (year of 2011)

12-19 Obs Cs137 Obs Cs134 Model

10-3

10

-1

10

1

10

3

(Bq

/m3

)

3/15 3/17 3/19 3/21 3/23

Local time (year of 2011)

12-47

10-3

10

-1

10

1

10

3

(Bq

/m3

)

3/15 3/17 3/19 3/21 3/23

Local time (year of 2011)

12-48

10-3

10

-1

10

1

10

3

(Bq/

m3)

3/15 3/17 3/19 3/21 3/23

Local time (year of 2011)

12-49

10-3

10

-1

10

1

10

3

(B

q/m

3)

3/15 3/17 3/19 3/21 3/23

Local time (year of 2011)

12-60

10-3

10

-1

10

1

10

3

(Bq/

m3)

3/15 3/17 3/19 3/21 3/23

Local time (year of 2011)

12-61

10-3

10

-1

10

1

10

3

(Bq/

m3)

3/15 3/17 3/19 3/21 3/23

Local time (year of 2011)

12-65

10-3

10

-1

10

1

10

3

(Bq/

m3)

3/15 3/17 3/19 3/21 3/23

Local time (year of 2011)

12-73

10-3

10

-1

10

1

10

3

(Bq/

m3)

3/15 3/17 3/19 3/21 3/23

Local time (year of 2011)

12-96

10-3

10

-1

10

1

10

3

(Bq/

m3)

3/15 3/17 3/19 3/21 3/23

Local time (year of 2011)

12-116

10-3

10

-1

10

1

10

3

(Bq/

m3)

3/15 3/17 3/19 3/21 3/23

Local time (year of 2011)

12-120

10-3

10

-1

10

1

10

3

(Bq/

m3)

3/15 3/17 3/19 3/21 3/23

Local time (year of 2011)

12-123

10-3

10

-1

10

1

10

3

(Bq/

m3)

3/15 3/17 3/19 3/21 3/23

Local time (year of 2011)

12-134

10-3

10

-1

10

1

10

3

(Bq/

m3)

3/15 3/17 3/19 3/21 3/23

Local time (year of 2011)

11-26

10-3

10

-1

10

1

10

3

(Bq/

m3)

3/15 3/17 3/19 3/21 3/23

Local time (year of 2011)

11-37

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65

図 4.1.2 Cs-134 と Cs-137 の大気濃度のモデルと実測の比較(埼玉県、東京都、神奈川県)

(●:Cs モデル計算濃度; ●:Cs-137 実測濃度; □:Cs-134 実測濃度)

(11-77地点の3月17日以降の観測値は欠測)

10-3

10

-1

10

1

10

3

(B

q/m

3)

3/15 3/17 3/19 3/21 3/23

Local time (year of 2011)

11-42

10-3

10

-1

10

1

10

3

(Bq/

m3

)

3/15 3/17 3/19 3/21 3/23

Local time (year of 2011)

11-43

10-3

10

-1

10

1

10

3

(Bq/

m3

)

3/15 3/17 3/19 3/21 3/23

Local time (year of 2011)

11-57

10-3

10

-1

10

1

10

3

(Bq/

m3)

3/15 3/17 3/19 3/21 3/23

Local time (year of 2011)

11-60

10-3

10

-1

10

1

10

3

(Bq/

m3)

3/15 3/17 3/19 3/21 3/23

Local time (year of 2011)

11-71

10-3

10

-1

10

1

10

3

(Bq/

m3)

3/15 3/17 3/19 3/21 3/23

Local time (year of 2011)

11-72

10-3

10

-1

10

1

10

3

(Bq/

m3)

3/15 3/17 3/19 3/21 3/23

Local time (year of 2011)

11-75

10-3

10

-1

10

1

10

3

(Bq/

m3)

3/15 3/17 3/19 3/21 3/23

Local time (year of 2011)

11-77

10-3

10

-1

10

1

10

3

(Bq/

m3)

3/15 3/17 3/19 3/21 3/23

Local time (year of 2011)

11-80

10-3

10

-1

10

1

10

3

(Bq/

m3)

3/15 3/17 3/19 3/21 3/23

Local time (year of 2011)

13-52

10-3

10

-1

10

1

10

3

(Bq/

m3)

3/15 3/17 3/19 3/21 3/23

Local time (year of 2011)

13-58

10-3

10

-1

10

1

10

3

(Bq/

m3)

3/15 3/17 3/19 3/21 3/23

Local time (year of 2011)

13-65

10-3

10

-1

10

1

10

3

(Bq

/m3

)

3/15 3/17 3/19 3/21 3/23

Local time (year of 2011)

13-69

10-3

10

-1

10

1

10

3

(Bq

/m3

)

3/15 3/17 3/19 3/21 3/23

Local time (year of 2011)

13-89

10-3

10

-1

10

1

10

3

(Bq

/m3

)

3/15 3/17 3/19 3/21 3/23

Local time (year of 2011)

14-08

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66

図 4.1.3 Cs-134 と Cs-137 の大気濃度のモデルと実測の比較(神奈川県、宮城県)

(●:Cs モデル計算濃度; ●:Cs-137 実測濃度; □:Cs-134 実測濃度)

10-3

10

-1

10

1

10

3

(B

q/m

3)

3/15 3/17 3/19 3/21 3/23

Local time (year of 2011)

14-50

10-3

10

-1

10

1

10

3

(Bq/

m3

)

3/15 3/17 3/19 3/21 3/23

Local time (year of 2011)

14-60

10-3

10

-1

10

1

10

3

(Bq/

m3

)

3/15 3/17 3/19 3/21 3/23

Local time (year of 2011)

14-64

10-3

10

-1

10

1

10

3

(Bq/

m3)

3/15 3/17 3/19 3/21 3/23

Local time (year of 2011)

14-65

10-3

10

-1

10

1

10

3

(Bq/

m3)

3/15 3/17 3/19 3/21 3/23

Local time (year of 2011)

14-77

10-3

10

-1

10

1

10

3

(Bq/

m3)

3/15 3/17 3/19 3/21 3/23

Local time (year of 2011)

14-78

10-3

10

-1

10

1

10

3

(Bq/

m3)

3/15 3/17 3/19 3/21 3/23

Local time (year of 2011)

14-79

10-3

10

-1

10

1

10

3

(Bq/

m3)

3/15 3/17 3/19 3/21 3/23

Local time (year of 2011)

14-85

10-3

10

-1

10

1

10

3

(Bq/

m3)

3/15 3/17 3/19 3/21 3/23

Local time (year of 2011)

04-09

10-3

10

-1

10

1

10

3

(Bq/

m3)

3/15 3/17 3/19 3/21 3/23

Local time (year of 2011)

04-11

10-3

10

-1

10

1

10

3

(Bq/

m3)

3/15 3/17 3/19 3/21 3/23

Local time (year of 2011)

04-28

10-3

10

-1

10

1

10

3

(Bq/

m3)

3/15 3/17 3/19 3/21 3/23

Local time (year of 2011)

04-32

10-3

10

-1

10

1

10

3

(Bq

/m3

)

3/15 3/17 3/19 3/21 3/23

Local time (year of 2011)

04-36

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67

図 4.2.1 Cs-137 地上濃度の地域分布(2011 年 3 月 15 日午前) (〇印:実測; カラー:モデル)

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68

図 4.2.2 Cs-137 地上濃度の地域分布(2011 年 3 月 15 日午後)(〇印:実測; カラー:モデル)

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69

図 4.2.3 Cs-137 地上濃度の地域分布(2011 年 3 月 16 日午前)(〇印:実測; カラー:モデル)

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70

図 4.2.4 Cs-137 地上濃度の地域分布(2011 年 3 月 16 日午後)(〇印:実測; カラー:モデル)

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71

図 4.2.5 Cs-137 地上濃度の地域分布(2011 年 3 月 20 日午前)(〇印:実測; カラー:モデル)

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72

図 4.2.6 Cs-137 地上濃度の地域分布(2011 年 3 月 20 日午後)(〇印:実測; カラー:モデル)

Page 75: 平成 25 年度原子力規制庁委託事業 平成 25 年度放 …radioactivity.nsr.go.jp/ja/contents/10000/9770/24/h25fy...平成25 年度原子力規制庁委託事業 平成25

73

図 4.2.7 Cs-137 地上濃度の地域分布(2011 年 3 月 21 日午前)(〇印:実測; カラー:モデル)

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74

図 4.2.8 Cs-137 地上濃度の地域分布(2011 年 3 月 21 日午後)(〇印:実測; カラー:モデル)

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75

図 4.2.9 Cs-137 地上濃度の地域分布(2011 年 3 月 22 日午前)(〇印:実測; カラー:モデル)

Page 78: 平成 25 年度原子力規制庁委託事業 平成 25 年度放 …radioactivity.nsr.go.jp/ja/contents/10000/9770/24/h25fy...平成25 年度原子力規制庁委託事業 平成25

76

図 4.2.10 Cs-137 地上濃度の地域分布(2011 年 3 月 22 日午後)(〇印:実測; カラー:モデル)

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77

図 4.2.11 Cs-137 地上濃度の地域分布(2011 年 3 月 23 日午前)(〇印:実測; カラー:モデル)

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78

図 4.2.12 Cs-137 地上濃度の地域分布(2011 年 3 月 23 日午後)(〇印:実測; カラー:モデル)