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[ミャンマー バガンの寺] シェアリングエコノミー 営利目的プラットフォームの 労働、不平等、社会性 B-frontier研究所 高橋

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Page 1: シェアリングエコノミー 営利目的プラットフォームの労働、不平等、社会性

[ミャンマー バガンの寺]

シェアリングエコノミー 営利目的プラットフォームの

労働、不平等、社会性

B-frontier研究所 高橋 浩

Page 2: シェアリングエコノミー 営利目的プラットフォームの労働、不平等、社会性

問題意識

• 最近、シェアリングエコノミーに関するトラブルが増加している。

• “シェア”のレトリックで始まったシェアリングエコノミーの影の部分が露出してきた印象である。

• その結果、賛成派対反対派の対立も一層険しさを増している。

このような傾向が発生する背景は何だろうか?

これからどうなって行くのだろうか?

また、本来望ましい形態とは何だろうか?

• 今までの経緯と今後の可能性を探る。 2

Page 3: シェアリングエコノミー 営利目的プラットフォームの労働、不平等、社会性

目次

1.はじめに

2.賛成派 vs 反対派

3.現在までの経緯

4.これからの望ましい形態とは

5.より広い適応形態

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Page 4: シェアリングエコノミー 営利目的プラットフォームの労働、不平等、社会性

プラットフォーム P to Pファイル共有

P to P 商品取引

P to P

商品共有 P to Pサ ービス共有

交換の目的 物理的モノ 有形財 有形財 無形の出会い

タイミング要件

No 必ずしも必要無い

必ずしも必要無い

Yes

ミーティング要件

No No 必ずしも必要無い

Yes

事例 Napster eBay AirBnb Uber

例:Ridesharing (車の相乗り)

所有権移転無し

リアルな人間同士の対話

1.はじめに

資産を共有 労働力を共有 シェアリング・エコノミーの領域

Page 5: シェアリングエコノミー 営利目的プラットフォームの労働、不平等、社会性

シェアリングエコノミーとは・・

• シェアリングエコノミーのコアはピアツーピア(P2P)交換

• シェアリングエコノミーにおいては見知らぬ人との間でP2P交換が起きる

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不完全な情報の問題が発生! 潜在的な取引者のリスクが発生!

Page 6: シェアリングエコノミー 営利目的プラットフォームの労働、不平等、社会性

従来の取引では、ブランドの評判またはライセンスがリスク削減に貢献していた。

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シェアリングエコノミーではユーザーからの評価と評判データ形式での情報が信頼の基盤になる。

こんな感じなのかなと思っていたら・・

Page 7: シェアリングエコノミー 営利目的プラットフォームの労働、不平等、社会性

「Uber」が嫌われている理由より

• Uberに在籍していた元エンジニアの女性が2017年2月末、上司からセクシャルハラスメ

ントを受け、人事部に報告したにも関わらず無視されたと訴えた。退職しブログ公開 – 「管理職は、昇進を巡って同僚と争うか、直属の上司の揚げ足を取ることしか考えていなかった」

• 2014年頃、Uberを批判する記事を書いた

ジャーナリストに対して、同社のツールを使えば「プライベートな生活や家族のことなどすぐに分かる」と同社重役が発言した。

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事件1

事件2

このところ、多数のトラブルが報告されている

Page 8: シェアリングエコノミー 営利目的プラットフォームの労働、不平等、社会性

• トランプ大統領が難民に関する大統領令を発令した2017年1月末、ケネディー空港でタクシー運転手も参加したストライキが起きた(土曜日夕方)。

• その際、Uberは「Twitter」で「ケネディー国際空港付近では割増料金を停止する」と呼びかけ自社をアピールした。 – Uberは通常、需要の多い時間帯は割増料金を設定する。それを停止しUberを宣伝したことになる。

• 利己的儲け主義を露にしたことで、タクシー運転手のストを止めさせようとしたと批判された。

• この結果、Twitterで「#DeleteUber」(Uberアプリを消そう)という運動が起きた。 – 推定20万人がUberアプリをアンインストールした。 8

事件3

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• 2015年、Uberはカーネギーメロン大学のロボット研究所の研究者40人を引き抜いて同研究所を骨抜き状態に陥れた。

– 40人というのは、全研究員のほぼ半分。しかも、Uberと共同研究が始まったほんの数カ月後のこ

と。頬を札束でたたくようにして研究者らを連れ去った。

• 最近、米Alphabet傘下のWaymoから訴訟が起こされた。

– Uberが買収したトラック自走技術開発スタートアップ企業Ottoの共同創業者の1人が、Google在籍中に大量のドキュメントを持ち出し、Waymoの知的財産権を侵害したというのが理由。

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事件4

Page 10: シェアリングエコノミー 営利目的プラットフォームの労働、不平等、社会性

• Uberの運転手と乗客になったUberのCEOカラ

ニックが報酬をめぐって口論している車載カメラの映像が公開された。(2月28日)

– Youtubeだけで300万回近く視聴された。

• 運転手は「あなたのせいで私は破産だ」と批判した。

– UberBLACKの報酬は引き下げられてきた。例:2012年に1マイルあたり4.90ドル⇒現在は3.75ドル(23%↓)

10 「わたしは根本的に変わらなくてはならない」UberのCEOの映像流出と謝罪より

事件5

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嫉妬・怨嗟か!?ケニアでウーバー(UBER)運転手の被害相次ぐ

• Uberに顧客を奪われたと、タクシー業界運転手たちが不満を募らせ、Uber運転手たちに対する犯罪が相次ぎ社会問題化した。 – 2016.3.23、タクシドライバー5人が、Uber運転手を路地に呼び出し暴行しようとした。Uber運転手が逃走。被疑者たちは車に火をつけ、現場から姿をくらました。

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2016.6.20投稿

事件6

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トラブルは違った分野で発生している・・ • 目立つのは、顧客との関係に関わるトラブルというよりは、プラットフォーマーと補完者間のトラブル。

• 背景に、プラットフォーマーがドミナントになるまではパートナーであった補完者を、ドミナントになりだした途端にいじめ出している状況があるのかも – 特に「労働力を共有」の分野

• また、プラットフォーマー間の競争が激しさを増しているのかも – 特にカーシェアリング分野

• プラットフォーマーがアグレッシブにならざるを得ないような状況があるらしい・・・

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大論争の図式

• 反対派は労働搾取、あらゆるものの商品化、非人間性などを主張

• 賛成派は可用性、利便性、低コストによる消費者の利益などを主張

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• 意見が真っ二つに割れ大論争中

2.賛成派 vs 反対派

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反対派の声(例)

• シェアリングエコノミーは余剰労働力のマッチングを提供することで「ショバ代」徴収のモデル

• 余剰労働力の市場である限り、労働の対価は最もコストが安い方へ収斂するのが自然!

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シェアリングエコノミーは中間搾取の王様に他ならない。

およそシェアリングエコノミーでシェアされるのは労働だけであり、利益は業者が取る。

シェアリング・エコノミーに中間搾取の観点から疑問を挟む声がより

FT、WSJといった普通ならイノべーティブな企業に好意的なメディアが「シェアリングエコノミー」に懐疑的な記事を載せ始めている。(2015.5)

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反対派

• 「余分なソファーや未使用の車を借りることは合理的な資本主義にすぎない」・・Ravenelle,2016

• 定義上の共有は金銭の交換を含むことができず、共有は(連続的に相互に贈り物を交換するような)商品交換とは正反対である。・・Belk

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Russell W. Belk Schulich School of Business教授

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賛成派 • 「充分に活用されていない」資産を効率的に使用し、人と人との経済を通じた社会的つながりと信頼を構築し、環境への負荷を減らし困難な時代に対処する術を提供する。

• 仲介者を回避し、直接プロバイダー、消費者間の交換を容易にすることで消費者により良い価値を提供する。

• 部屋賃貸、乗車、配達サービス、その他の仕事を提供するプロバイダーは「マイクロ起業家」であり、彼等自身がボスで、柔軟な時間労働、プラットフォームによって自分流に制御できる。

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• デジタルネットワークと関連技術により、参加の資本コストを削減することでオンライン共有がより効率的になった。・・・ Benkler、2006

「 The Wealth of Networks -How Social Production Transforms Markets

and Freedom-」

• 弱くつながった多数の人々の間で社会的共有が行われている。彼らは集団的練習に参加しており、通常、共通の良い成果を含む複数の動機を持っている。・・ Benkler

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Yochai Benkler Harvard Law School教授

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• プラットフォームは個人対個人間の経済におけるかなりの取引コストを削減し、高価なブランドではなく、格付けや評判システムを通じて知らない者同士の交換に伴うリスクを軽減するので、価格が安くなる。

・・・Sundararajan、2016

「 The Sharing Economy: the end of employment and the rise of crowd-based capitalism」

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Arun Sundararajan New York University’s (NYU) Stern School of

Business教授

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19 PiperJaffray, 2015. Sharing Economy: An In-depth Look at its Evolution and Trajectory across Industries <http://collaborativeeconomy.com/wp/wpcontent/uploads/2015/04/Sharing-Economy-An-In-Depth-Look-At-Its-Evolution-and-Trajectory-Across-Industries-.pdf>.

シェアリングエコノミーの事例と経緯 3.現在までの経緯

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例1:Airbnb

• 個人(ゲスト)が個人(貸主:ホスト)の部屋を借りる宿泊施設

• ホストの収益を上げる機会を幅広く提供

• 共同創業者は2015年に億万長者に

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Data Science Belongs Everywhere

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従業員がフォーカスしている分野

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例2:Relay Rides

• 使用されていない車をオーナーからスマホ・アプリで借りられるサービス

• 米国内の2100以上の都市、および300以上の空港で利用可能

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Relay Ridesの創業者 Shelby Thomas Clark

Page 23: シェアリングエコノミー 営利目的プラットフォームの労働、不平等、社会性

P2Pカーシェアリングとは

• 会員が自分の車を登録し貸出時期や貸出価格を設定する。

• 車を持たない人が必要なときに借りる。

–車所有者がGMのオンスター・サービスに登録すれば、ロックの解除も携帯電話でできる。

• カーシェアリング会社は通常、貸し主とその車を審査し、契約成立をサポートするプラットフォームを提供する。

• 借り主に対しては支払いを促し保険を提供する。

–問題の1つが、保険の補償範囲 23

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例3:TaskRabbit

• 消費者が家の掃除、配達サービス、手作業の仕事、ペットのしつけ、家具の移動や組み立てなどのタスクを実行するために、"Rabbits"を雇う労働交換

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You can be a TaskRabbit like Chris M. TaskRabbitの創始者Leah Brusque

November 15, 1979 生まれ(age 37)

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支配的な動機は金銭 • 3プラットフォームは全て、プロバイダーにとっての支配的動機は金銭であった。

• 3つとも、2008年から2009年の経済危機後に現れ、クラッシュ時に雇用や収入を失った人々、就職することができなかった大学卒業者の選択肢になった。

• 学生ローン借金がAirbnbホスティングに拍車をかけた例もあった。

• 彼らにとって、プラットフォームの魅力は、フルタイムの収入に加えてお金を稼ぐことであった。

• お金を稼ぐという欲求が支配的動機である一方、プロバイダーの経済状態は大きく異なっていた。

25 Juliet B. Schor , The Sharing Economy: Reports from Stage Oneより

3つを通した分析

Page 26: シェアリングエコノミー 営利目的プラットフォームの労働、不平等、社会性

Airbnbは最良の機会を提供 • 1つの不動産を貸して年間30,000

ドル以上を稼ぐ人もいた。

• Airbnbでアパート全体を貸すと通常の賃貸収入の3倍から4倍の収入を得た。

• 豪華マンションに1泊約350ドルの料金を請求し、年に34,000ドル稼いだ人もいた。

• 一方、Relay Ridesでは、収益ははるかに低かった。わずか2人のオーナーだけが総収入で1000ドル以上を報告した。

26 Juliet B. Schor , The Sharing Economy: Reports from Stage Oneより

Juliet B. Schor

Boston Collegeの 社会学の教授

3つを通した分析

Page 27: シェアリングエコノミー 営利目的プラットフォームの労働、不平等、社会性

TaskRabbitsでの収入は少ない • 2013年、Rabbitsの10%がフルタイムにプラットフォームを使用していた。

• プラットフォームによって提供される柔軟性は期待できる最大のものであった。

• 一般的スキル(掃除、運転、イケアの家具組立て、製品テストなど)しかなかった人でも、少なくとも最低賃金の2倍の支払いを受けていた。

• 多くは1時間当たり20-25ドルあるいはそれ以上だった。

• しかし、有意義なお金を作るのに十分な時間を費やしていた人はほとんどいなかった。

• わずかに2人の報告の収益が1万ドルあるいはそれ以上で、ほとんどは5000ドル未満であった。 27

3つを通した分析

Page 28: シェアリングエコノミー 営利目的プラットフォームの労働、不平等、社会性

デジタル技術とプラットフォームが仕事の構造と経験を変化させている

• シェアリングエコノミー参加者は、物理リスク、法的リスク、プラットフォームリスクの少なくとも3つの面で脆弱である。

• プラットフォームの労働者は、安全に関する基本的懸念を持ちながらも、オープン性に対する要望とのバランスも取らされている。

• 標準的な雇用保護と労働組合が存在しないため、現状ではプラットフォーム力が強い例が目立つ。 – 2014年TaskRabbitは、プラットフォームの運用方法を変更した。多くのプロバイダを非常に不幸にする仕事の割り当てが行われた。

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3つを通した分析

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フルタイムの仕事との収入比較

• Airbnb –ほぼ60%がフルタイムの仕事より多かった。

–約3分の1がフルタイムの仕事より少なかった。

– 10%未満が同等

• Relay Rides – 30%のみがフルタイムの仕事より多かった。

– 60%はフルタイムの仕事より少なかった。

• TaskRabbit –わずか20%がフルタイムの仕事より多かった。

–ほぼ半分はフルタイムの仕事より少なかった。

– 3分の1は同等 29

3つを通した分析

(あるいは、フルタイムの仕事をしていない場合は、他の関連する有給の雇用)

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労働条件は悪化しているか?

• 一つの傾向は、プロバイダがプラットフォームを離れたこと(5人の再インタビュー者のうち活発に活動を続けていたのは1人だけ)

• 経験の評価は急激に低下(一ケースでは8⇒3、他ケースでは10/9⇒6.5)【10が満点】

• 時間の経過とともに満足度が低下

–プラットフォーマーはもはや「我々の背中を支えていない」という見解

–プラットフォーマーは個々のRabbitsを気にしていたが、もはやそれはないと説明

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2013年のTaskRabbitインタビューの再インタビュー(2015年)状況

Page 31: シェアリングエコノミー 営利目的プラットフォームの労働、不平等、社会性

労働者は搾取されているか?

• シェアリングエコノミーは労働の交渉力を弱めさせ、希少なマイクロワークを巡って労働者を互いに競争させる労働慣行を蔓延させる。

• P2Pネットワークの構造やその状況はアルゴリズム的に決定されブラックボックス化されているので、労働者、消費者、監督当局はプラットフォームがどのように動作するのかを理解し、結果に責任を持たせることが困難になっている。

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Page 32: シェアリングエコノミー 営利目的プラットフォームの労働、不平等、社会性

所得格差は拡大しているか?

• 下記理由から所得分配下位80%の所得格差は拡大している。・・Schor、2017

理由1:多くのプロバイダーは常勤職があり、プラットフォーム登場以前には利用できなかった収入増加の方法を利用している。

–取り組んでいる仕事は新しいものであり、他の所得獲得の機会の代替ではない。

理由2:ほとんどのプロバイダーは高等教育を受けており、そして彼らは、清掃、運転、手作業の仕事など伝統的に低学歴労働者によって行われてきた作業に取り組んでいる。 32

Page 33: シェアリングエコノミー 営利目的プラットフォームの労働、不平等、社会性

人種差別問題も( Airbnbの例)

研究1:価格調査研究では、黒人ホストが非黒人ホストより12%低い夜間料金を受け入れていた。

研究2:典型的なアフリカ系アメリカ人の名前を持つゲストは、ホストから拒否される可能性が16%高かった。

• 研究調査公表後、Airbnb社はこの問題に公に答えなければならなかった。

• しかし、人が自分の家を貸し出しすときに人種差別を防止する法律は存在しない。

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Page 34: シェアリングエコノミー 営利目的プラットフォームの労働、不平等、社会性

プロバイダーの分類も論争に・・ • ほぼ全てのプラットフォームが、恩恵を欠き、標準の従業員に保証されている権利と保護も欠くプロバイダーを独立請負業者としている。

• この背景には2005年~2015年頃までの経済における大きな傾向(景気後退期での労働力の弱さ)が、高価な雇用を避け、上記条件でも高品質の労働者を引き付けた可能性がある。

• 同時期には非標準であって、オンライン仲介業者が全労働者の半分を「雇用」していることがあった。・・・Katz&Krueger,2016:7

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Lawrence Katz Harvard

University Elisabeth Allison 経済学教授

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現在までの10年程度の研究では

1.労働条件がプロバイダにとって不利になりつつある。

2.激しいプラットフォーム間競争、価格競争、取引量増加に対する圧力が、賃金の下落と労働条件の腐敗をもたらしている。 ・・・Calvey、2016

3. シェアリングエコノミーの形式的オープン性にもかかわらず、資産やスキルに応じて、労働者を階層化する障壁がある。

4. 教育水準、人種、社会階級が所得や労働条件に伴い変化することがある。

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Page 36: シェアリングエコノミー 営利目的プラットフォームの労働、不平等、社会性

暫定的結論は・・ プラットフォームは労働市場の圧力に対応して、規制や労働者の圧力も変化するので、労働条件は進化し、また進化し続けるだろう。

–現在までに、プロバイダの供給が増え、お金を増やすという圧力が高まるにつれて、状況の悪化が見られる。

全体としてプラットフォーム経済について考えるのはミスリーディングになる。

–一部の政策はプラットフォームを跨いで共通(例:従業員を独立した請負業者として扱うなど)だが、セクター全体では賃金、収益、条件などは大きく異なっている。

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営利目的のプラットフォームの特徴

1. プラットフォームまたはアプリを介してトランザクションを構成するITが中心的役割を担っている。

2. リスクを減らしてユーザーの信頼を高めるため、ユーザーの評価と評判データに依存している。

3. 企業が「共有」される資産を保有しているにもかかわらず、(企業対個人ではなく)ピアツーピアまたは個人対個人の構造をしている。

4. プロバイダーを独立請負業者としている。

5. プラットフォーマーが決定したスケジュール、作業を行うためのツールと材料を提供するプロバイダー責任が含まれる。

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4.これからの望ましい形態とは

“シェア”の レトリック

問題の原因はこの辺りか?

Page 38: シェアリングエコノミー 営利目的プラットフォームの労働、不平等、社会性

シェアリングエコノミーの漸進的可能性?

• 当初、多くの参加者は、グローバル企業経済に反抗して、パーソナライズされた、より人道的な市場創出の試みと見做して、価値共有を表明していたが・・Fitzmaurice et al. (2016)

• シェアリングエコノミーの理念維持はますます困難になってきているようだ。

• 労働者の条件は悪化しているようだ。

• プラットホーム資本主義が準標準的な仕事を提供し、底辺80%内の格差を拡大させている。 –奴隷制度にも似た新自由主義的ディストピアを指摘する向きもある。・・・Hill、2015 38

Page 39: シェアリングエコノミー 営利目的プラットフォームの労働、不平等、社会性

• 進歩的勢力が企業所有者よりも

むしろユーザーに利益をもたらす民主主義的に所有され支配されたプラットフォームを創出しようと反動を起こしている。

・・・Scholz、2016

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反動が起きている

TREBOR SCHOLZ 准教授 for Culture & Media at The New School in New York City.

Uberworked and

Underpaid

Page 40: シェアリングエコノミー 営利目的プラットフォームの労働、不平等、社会性

• 運転手はいくつかの場所で組織化を試みており、他のプロバイダはソーシャルメディアや他のチャンネルを介してコミュニケーションや組織化を行っている。

• ポータブルなメリットがあり、移動が容易で、パートタイム、よりカジュアル化された労働力に適し、その他の機能も持って、労働における安全保障増大が可能な第3の雇用分野への挑戦が求められている。

・・Harris&Krueger、2015; Warren、2016

–労働者がプラットフォームを所有し運営するプラットフォーム協同主義と呼ばれるもの

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Page 41: シェアリングエコノミー 営利目的プラットフォームの労働、不平等、社会性

「シェアリングエコノミー」の民主化

• あらゆる人、組織、がシェアリングエコノミーを始めよう。

– 「みんなの利益のための新世代の市場」

– 「政府の機能を民間が肩代わり」

• 細分化された資本主義の世界のイメージ

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“真の”のシェアリングエコノミー勃興とは といった意見も・・

“新しいタイプの労働市場” by Wingham Rowan

新たな市場

Page 42: シェアリングエコノミー 営利目的プラットフォームの労働、不平等、社会性

今後の進め方の例

1.既存のプラットフォームを変換する。

2.新しいプラットフォームを作る。

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• 一部を除いて既存プラットフォームはまだ比較的脆弱である。

• 多額の手数料を徴収している既存プラットフォームはユーザー所有のプラットフォームに移行の可能性もあるかもしれない。

• 様々なサービスを提供するプラットフォームを自治体(公共)が提供する案もあっても良い。

Page 43: シェアリングエコノミー 営利目的プラットフォームの労働、不平等、社会性

社会性についても(Airbnbの例)・・

• Airbnbは、ゲストが宿泊地に到着前に財務面を決定する。

• そのことが社会的交流を促進させ、

• お金のやりとりに関わる強い社会性の期待を下げ、

• それによってよりカジュアルな交流が促進されることを示唆している。

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5.より広い適応形態

Page 44: シェアリングエコノミー 営利目的プラットフォームの労働、不平等、社会性

• ホストの半分以上の人にとって、相互作用は重要な動機であり、その実践の一部であった。

• 彼らはゲストと交際し、食べ、連れ出し、いくつかのケースでは友達になった。

– しかし、フォローアップ調査では、近しい関係を形成するプラットフォームの能力は、2003年の開始以来減少していた。・・・Parigi&State、2014

–初期の適応者は社会的なつながりにより開放的であったが、経済的理由からより多くの人々がプラットフォームに参加するのに連れて、社会的相互作用は減少しているのかもしれない。

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社会性について(Airbnbの例)(続)

Page 45: シェアリングエコノミー 営利目的プラットフォームの労働、不平等、社会性

これからの可能性(案)と暫定まとめ

• 民主的ガバナンスの要請やプラットフォーム・ユーザーの所有権の要求も大きくなっている。・・・Chase、2015; Schneider、2014他

• ユーザーの組織化と民主主義的な公共政策なども必要なのかもしれない。

運営の視点から

エージェントが多額の手数料を徴収している在宅医療などの分野では、ユーザー所有のプラットフォームの可能性が考えられる。

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Page 46: シェアリングエコノミー 営利目的プラットフォームの労働、不平等、社会性

仕組みの視点から

プラットフォームに依存しない評判システムは、ユーザが自分の情報を制御する可能性が考えられる。

時間軸の視点から

プラットフォーム経済は、時間とともにプラットフォームの貢献度が低下する可能性があるので、ユーザー制御を優先する可能性が考えられる。

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