63k430m00cds.nagaokaut.ac.jp/niigata_form/symposium2011_pdf/6/6...図-6 羽根川橋りょう...

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魚沼中条 十日町 土市 越後水沢 越後田沢 越後鹿渡 入間川 羽根川 信濃川 353 253 北越急行 飯山線 117 羽根川橋りょう 入間川橋りょう 田沢トンネル入口 -1 越後鹿渡~十日町駅間 被害箇所 津南 平成 23 7 月新潟・福島豪雨に伴う JR 飯山線災害応急工事報告 東日本旅客鉄道㈱ 正会員 諏訪 嵩人 東日本旅客鉄道㈱ 正会員 土井 浩永 東日本旅客鉄道㈱ 正会員 福田 克利 東日本旅客鉄道㈱ 正会員 谷野 良輔 1.はじめに 2011 7 26 日から 30 日にかけて新潟・福島県 を襲った,「平成 23 7 月新潟・福島豪雨」により, 当社の路線においても,上越線,飯山線,磐越西線, 只見線などを中心に,盛土の崩壊や線路への土砂流 入など, 150 箇所を超える被害を受けた.この災害を 受け,上信越工事事務所では,飯山線の越後鹿渡~ 十日町駅間の被害箇所の復旧を担当することになっ た.本稿では,飯山線越後鹿渡~十日町駅間の被害 の概要と,応急復旧の概要について報告する. 2.被害の概要 平成 23 7 月新潟・福島豪雨による飯山線の被害 のうち,越後鹿渡~越後田沢駅間の盛土崩壊 1 箇所, 土市~十日町駅間の盛土崩壊 1 箇所,及び橋りょう 流失 1 箇所,計 3 箇所の被害の復旧を担当した.位 置関係は-1 の通りである.各被害箇所について説 明する.なお,飯山線越後鹿渡~十日町駅間は,単 線・非電化区間である. 1)田沢トンネル入口付近 盛土崩壊 田沢トンネル入口付近は片切片盛構造の盛土であ るが,延長約 16m,高さ約 6m にわたり盛土が崩壊 し,線路左側の雪崩防護柵も両端を残し支持地盤が 失われた(-2,写真-1).トンネル内には線路両 側に側溝があり,側溝はトンネル入口で線路を横断 して合流し,線路右側のたて下水へ排水されている. 崩壊原因としては,豪雨により側溝への流入量が多 くなり,処理できなくなった雨水が盛土上に溢れ, 盛土を崩壊させたと推定される. R20.0 H鋼175x175 G Co 崩落地形 R20.0 H鋼175x175 G Co 崩落地形 -2 田沢トンネル入口付近 盛土崩壊断面図 写真-1 田沢トンネル入口付近 被害状況(線路右側より) -3 入間川橋りょう A1 橋台背面盛土崩壊断面図 写真-2 入間川橋りょう 被害状況(上流側より) 3.8m 6m 雪崩防護工 越後鹿渡 越後田沢 トンネル内側溝の排水 A1 橋台 土市 十日町 田沢トンネル入口

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Page 1: 63K430M00cds.nagaokaut.ac.jp/niigata_form/symposium2011_pdf/6/6...図-6 羽根川橋りょう 仮復旧断面図 図-7 羽根川橋りょう 仮復旧平面図 土市 十日町 橋台や流失した盛土の原形復旧には相当の時間が見

魚沼中条

十日町

土市

越後水沢

越後田沢

越後鹿渡

入間川

羽根川

信濃川

353

253

北越急行

飯山線 117

羽根川橋りょう

入間川橋りょう

田沢トンネル入口

図-1 越後鹿渡~十日町駅間 被害箇所

津南

平成 23年 7月新潟・福島豪雨に伴う JR 飯山線災害応急工事報告

東日本旅客鉄道㈱ 正会員 諏訪 嵩人

東日本旅客鉄道㈱ 正会員 土井 浩永

東日本旅客鉄道㈱ 正会員 福田 克利

東日本旅客鉄道㈱ 正会員 谷野 良輔

1.はじめに

2011 年 7 月 26 日から 30 日にかけて新潟・福島県

を襲った,「平成 23 年 7 月新潟・福島豪雨」により,

当社の路線においても,上越線,飯山線,磐越西線,

只見線などを中心に,盛土の崩壊や線路への土砂流

入など,150 箇所を超える被害を受けた.この災害を

受け,上信越工事事務所では,飯山線の越後鹿渡~

十日町駅間の被害箇所の復旧を担当することになっ

た.本稿では,飯山線越後鹿渡~十日町駅間の被害

の概要と,応急復旧の概要について報告する.

2.被害の概要

平成 23 年 7 月新潟・福島豪雨による飯山線の被害

のうち,越後鹿渡~越後田沢駅間の盛土崩壊1箇所,

土市~十日町駅間の盛土崩壊 1 箇所,及び橋りょう

流失 1 箇所,計 3 箇所の被害の復旧を担当した.位

置関係は図-1 の通りである.各被害箇所について説

明する.なお,飯山線越後鹿渡~十日町駅間は,単

線・非電化区間である.

1)田沢トンネル入口付近 盛土崩壊

田沢トンネル入口付近は片切片盛構造の盛土であ

るが,延長約 16m,高さ約 6m にわたり盛土が崩壊

し,線路左側の雪崩防護柵も両端を残し支持地盤が

失われた(図-2,写真-1).トンネル内には線路両

側に側溝があり,側溝はトンネル入口で線路を横断

して合流し,線路右側のたて下水へ排水されている.

崩壊原因としては,豪雨により側溝への流入量が多

くなり,処理できなくなった雨水が盛土上に溢れ,

盛土を崩壊させたと推定される.

約 6m

FH=

GH=185.58

63K430M00

R20.0

L22.0

H鋼175x175

RL=189.99

G

Co

地山

崩落地形

崩落(堆積土)

FH=

GH=185.58

63K430M00

R20.0

L22.0

H鋼175x175

RL=189.99

G

Co

地山

崩落地形

崩落(堆積土)

図-2 田沢トンネル入口付近 盛土崩壊断面図

写真-1 田沢トンネル入口付近

被害状況(線路右側より)

図-3 入間川橋りょう A1橋台背面盛土崩壊断面図

写真-2 入間川橋りょう 被害状況(上流側より)

約 3.8m

約 6m

雪崩防護工

越後鹿渡

越後田沢

トンネル内側溝の排水

A1橋台

土市

十日町

田沢トンネル入口

Page 2: 63K430M00cds.nagaokaut.ac.jp/niigata_form/symposium2011_pdf/6/6...図-6 羽根川橋りょう 仮復旧断面図 図-7 羽根川橋りょう 仮復旧平面図 土市 十日町 橋台や流失した盛土の原形復旧には相当の時間が見

2)入間川橋りょう 起点方 A1橋台背面盛土崩壊

入間川橋りょうは 4 径間上路プレートガーダーの

橋りょうであるが,起点方の石積翼壁が流失し,A1

橋台背面の盛土が延長約 6m,高さ約 3.8m にわたり

崩壊した(図-3,写真-2).

3)羽根川橋りょう 橋りょう流失

羽根川橋りょうは 1 径間上路プレートガーダーの

単純桁であり,A1・A2 橋台は直接基礎形式であった

(写真-3).豪雨により A1 橋台が倒壊し,橋桁が流

失,A1 橋台背面盛土約 27m 及び A2 橋台背面盛土約

5m が崩壊した(写真-4,5).羽根川橋りょうの上

流及び下流は河川改修により河川幅が拡幅されてお

り,橋りょう部分は河川幅が狭まる状態となってお

り,ボトルネックとなっていた.豪雨により水位が

上昇したことが原因と推定される.

3.復旧の概要

8 月 5 日より現地の調査及び設計,河川管理者との

協議を踏まえ,早期の列車運転再開を目指し,復旧

工事を進めた.各被害箇所の復旧について説明する.

1)田沢トンネル入口付近 盛土復旧

田沢トンネル入口付近は陸路での資機材の搬入路

の確保が難しく,軌陸車を利用した運搬が基本とな

った.このため,土量が少なく短期間の施工が可能

な盛土補強土壁(RRR 工法)による復旧とした(図

-4,写真-6).また盛土崩壊の要因と推定される雨

水対策として,トンネル内の側溝から溢れた水を線

路起点方の土側溝に逃がす側溝を設けた.路盤排水

に関しては,地山と補強盛土間に排水ブランケット

層を設け盛土内に滞水しないようにした.盛土補強

土壁の壁コンクリートがない状態でも,列車運行に

は支障しないように復旧し,列車運行再開後に構築

することで工期短縮を図った.施工は昼夜 24 時間体

制で進め,工期(崩壊面の防護,崩壊土砂の撤去,

RRR 盛土の構築,路盤工及び軌道工)は約 14 日であ

った.

2)入間川橋りょう 起点方 A1橋台背面盛土復旧

石積翼壁の復旧は困難であるため,盛土補強土壁

(RRR 工法)による復旧とした(図-5,写真-7).

崩壊箇所は橋台背面にあたるため,盛土の沈下を抑

えるために盛土材料はセメント改良礫土とした.施

工は昼夜24時間体制で進め,工期(残留基礎の撤去,

写真-3 羽根川橋りょう (災害前,上流側より)

写真-4 羽根川橋りょう 被害状況(上空,上流側より)

写真-5 羽根川橋りょう 被害状況(十日町方より)

基本敷設長

1 776

盛土材(C-40)

1:1.50

補強土(RRR)

※壁面は後施工として 仮設利用として扱う

1 500

フィルター材

(不織布)

排水ブランケット層

(単粒4号)

2 664

300

G

Co

崩落地形

560

R.L

F.L

3.0%

2 840

2 600 2 600

(施工基面幅)

(軌道中心より表層路肩まで)

5 500

土羽土

300

植生工(種子散布工)

東電水路管

(HPφ300原形復旧)

よう壁土台コンクリート

(中央部L=1.5m)

排水側溝

層厚管理材盛土補強材

山側側溝

面状補強材

面状補強材

設計基準強度 24N/mm2

段切 600

500

(190.05)

路盤

(C-40)

2 240 2 240

(施工基面幅)

2 840 300

3.0%

1:0.50

1:0.50

1:0.30

図-4 田沢トンネル入口付近 盛土復旧断面図

写真-6 田沢トンネル入口付近

盛土復旧状況(線路右側より)

土市 十日町

土市

十日町

旧橋桁

旧 A1橋台

旧 A2橋台

上流

下流

川の流れ

土市

上流 下流

Page 3: 63K430M00cds.nagaokaut.ac.jp/niigata_form/symposium2011_pdf/6/6...図-6 羽根川橋りょう 仮復旧断面図 図-7 羽根川橋りょう 仮復旧平面図 土市 十日町 橋台や流失した盛土の原形復旧には相当の時間が見

RRR 盛土の構築,路盤工及び軌道工)は約 10 日間で

あった.なお盛土補強土壁の壁コンクリートは,田

沢トンネル入口付近と同様に列車運行再開後の施工

とした.また,P1~3 橋脚については洗掘による影

響が懸念されたため,衝撃振動試験を実施し,健全

であることを確認した.

3)羽根川橋りょう 仮復旧

流失した桁の再利用は不可能であり,倒壊した A1

図-5 入間川橋りょう 盛土復旧断面図 写真-7 入間川橋りょう 盛土復旧状況(土市方より)

図-6 羽根川橋りょう 仮復旧断面図

図-7 羽根川橋りょう 仮復旧平面図

土市 十日町

Page 4: 63K430M00cds.nagaokaut.ac.jp/niigata_form/symposium2011_pdf/6/6...図-6 羽根川橋りょう 仮復旧断面図 図-7 羽根川橋りょう 仮復旧平面図 土市 十日町 橋台や流失した盛土の原形復旧には相当の時間が見

橋台や流失した盛土の原形復旧には相当の時間が見

込まれたが,早期の列車運転再開のため,仮橋台・

仮橋脚を構築の上,当社で保有していた工事桁を使

用し仮復旧することとした.橋りょう付近の河川改

修の計画が未定であったため,河川の法線や幅,河

床高さを河川管理者と協議して暫定的に設定し,将

来の本復旧時の橋台・橋脚の位置を想定した上で,

本復旧時に支障のないように,仮橋台・仮橋脚の位

置を決定した(図-6,7).

支持地盤は玉石混じりの砂礫であり直接基礎も可

能であったが,早期の復旧や,仮設としての供用期

間が長期にわたり,河川の増水により再び仮橋台・

橋脚が洗掘される可能性を考慮し,H 鋼杭による杭

基礎構造とした.杭の設計では,本復旧の橋台施工

時に杭周辺が掘削されることを考慮し,杭上部の土

圧を除いた上で,先端支持力及び周面摩擦力を計算

した.

杭の打設方法は,施工箇所が河川に近接している

ため,大きな玉石が混じる砂礫層の掘削となること

を考慮し,仮 A1 橋台及び仮 P1 橋脚は 3 点式杭打機

によるロックオーガー先行掘削工法により掘削,鋼

管を圧入後,H 鋼杭を建込み,モルタルで根固めを

行った.仮 A2 橋台は盛土上での施工であり,3 点式

杭打機の設置が不可能であったため,リーダレス型

杭打機を用いダウンザホールハンマ工法により掘削

後,パワージャッキにて鋼管の圧入を行い,H 鋼杭

を建込み後モルタルで根固めを行った.また仮 P1 橋

脚の一部の杭は,大きな玉石の影響でロックオーガ

ーでは掘削不能となったため,全周回転式オールケ

ーシング工法により玉石を除去し,再度掘削を行っ

た.

桁は支間 22m 及び 36.4m の工事桁を使用し,22m

の工事桁は 450t クレーンによる架設,36.4m の工事

桁は 450t と 650t クレーンの相吊りにより架設した

(写真-8,9).施工は昼夜 24 時間体制で進め,羽

根川橋りょうの仮復旧の工期は約 5 週間であった.

4.おわりに

本稿では,2011 年 7 月 26~30 日の豪雨被害を受け

た飯山線の越後鹿渡~十日町駅間の復旧について報

告した.飯山線は 8 月 5 日より復旧を進め,9 月 16

日に運転再開した(写真-10).列車運転再開後は工

事桁の変状の有無やRRR盛土の沈下状況の確認を続

けているが,大きな変状や変位は確認されておらず,

引き続き列車運行に影響のない箇所の工事を進めて

いる.また羽根川橋りょうは仮復旧状態であるため,

河川管理者との協議の上,早期の本復旧に取り組む

予定である.最後に,本工事の計画及び施工にあた

り,ご指導いただいた関係各位にこの場を借りてお

礼申し上げる.

写真-8 羽根川橋りょう 工事桁(36.4m)

架設状況①(上流側より)

写真-9 羽根川橋りょう 工事桁(36.4m)

架設状況②(十日町方より)

写真-10 羽根川橋りょう 復旧状況(2011年 9月 16日初列車通過時)

土市 十日町

十日町

土市