目 的 結 果 - フレゼニウス メディカル ケア...

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第24回ハイパフォーマンス ・ メンブレン研究会 Ⅴ型ポリスルフォン膜ダイアライザー FX-S180の性能評価 対象および方法 慢性維持透析患者 6 名に FX-S と APS-E をクロスオー バーで使用し,クリアランス,除去率,クリアスペース およびアルブミン(Alb)の漏出量を測定した(表1).透析 条件はQ B =200mL/min,Q D =500mL/minとし,透析 時間は 4 時間とした.評価方法は日本透析医学会 - 血液 浄化器性能評価 - に準拠して行い,結果は mean±SD で 示した. 新たに開発されたフレゼニウス メディカル ケア社製 Ⅴ型ポリスルフォン膜ダイアライザー FX-S 180( 以下 FX-S)の,溶質除去性能および生体適合性について APS-18E(以下APS-E)と比較評価した. FX-S の 1 透析あたりの Alb 漏出量は,APS-Eに比べ 有意に高値を示したが,その漏出量は平均 2.9gであった. 生体適合性として残血スコアー分布を示した.両者間 ともクラスⅡ以下で残血性に差はなかった.また白血球 血小板の変動に関しても両者間に差は見られなかった. 今回評価した F X-S は A P S-E と比較して生体適合性に は遜色なく, 溶質除去性能についてもほぼ同等であった が、33,000D a のα1 -MGでは除去率 , クリアスペース共 に有意に高値を示した. また66,000DaのAlbでも漏出量 が有意に高値となったが , それでも3g未満であったこと から , Ⅴ型として安全に使用できるダイアライザーである ことが示唆された . ま と め FX-Sは低分子量蛋白領域の除去性能に期待が持てる ダイアライザーであると考えられた . 小分子量物質およびβ2 -MGに両者間で有意な差はな かった.β2 -MGは両者ともⅤ型ダイアライザーとして 満足できる高いクリアランスを示した. 小分子量物質およびβ2 -MGに有意差はなかったが, α1 -MGでは F X-S が 22.5% と APS-E に比べ有意に高値 を示した. β2 -MGは両者間に有意な差はなかったが,α1 -MGでは F X-S が 1.1L と APS-E に比べ有意に高値を示した. 図 1. 各溶質のクリアランス 図 2. 各溶質の除去率 図 3. 低分子量蛋白のクリアスペース 図 4. アルブミン漏出量 図 5. 生体適合性 表1 対象および測定項目 対象 性別 男性3名,女性3名 平均年齢 60.3±18.1 歳 平均透析歴 10.2±5.8 年 平均DW 51.6±7.8 kg 原疾患 慢性糸球体腎炎6名 測定項目 クリアランス UN,Cr,UA,iP,β 2 -MG 除去率 UN,Cr,UA,iP,β 2 -MG,α 1 -MG クリアスペース Alb漏出量 β 2 -MG,α 1 -MG UN:尿素窒素,Cr:クレアチニン,UA:尿酸,iP:リン

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Page 1: 目 的 結 果 - フレゼニウス メディカル ケア ジャパン«有意に高値を示した.また66,000DaのAlbでも漏出量 が有意に高値となったが,それでも3g未満であったこと

第24回ハイパフォーマンス ・ メンブレン研究会 Ⅴ型ポリスルフォン膜ダイアライザー FX-S180の性能評価

対象および方法

 慢性維持透析患者6名にFX-SとAPS-Eをクロスオー

バーで使用し,クリアランス,除去率,クリアスペース

およびアルブミン(Alb)の漏出量を測定した(表1).透析

条件はQB=200mL/min,QD=500mL/minとし,透析

時間は 4 時間とした.評価方法は日本透析医学会 - 血液

浄化器性能評価-に準拠して行い,結果は mean±SDで

示した.

目 的 

 新たに開発されたフレゼニウス メディカル ケア社製

Ⅴ型ポリスルフォン膜ダイアライザー FX-S 180( 以下

FX-S) の,溶質除去性能および生体適合性について

APS-18E(以下 APS-E)と比較評価した.

 FX-S の 1 透析あたりの Alb 漏出量は,APS-Eに比べ

有意に高値を示したが,その漏出量は平均 2.9gであった.

 生体適合性として残血スコアー分布を示した.両者間

ともクラスⅡ以下で残血性に差はなかった.また白血球

血小板の変動に関しても両者間に差は見られなかった.

考 察

 今回評価したFX-SはAPS-Eと比較して生体適合性に

は遜色なく, 溶質除去性能についてもほぼ同等であった

が、33,000Da のα1 -MGでは除去率 , クリアスペース共

に有意に高値を示した. また66,000DaのAlbでも漏出量

が有意に高値となったが , それでも3g未満であったこと

から,Ⅴ型として安全に使用できるダイアライザーである

ことが示唆された .

ま と め

 FX-Sは低分子量蛋白領域の除去性能に期待が持てる

ダイアライザーであると考えられた .

 小分子量物質およびβ2 -MGに両者間で有意な差はな

かった.β2 -MGは両者ともⅤ型ダイアライザーとして

満足できる高いクリアランスを示した.

 小分子量物質およびβ2 -MGに有意差はなかったが,

α1 -MGでは FX-S が 22.5% と APS-E に比べ有意に高値

を示した.

 β2 -MGは両者間に有意な差はなかったが,α1 -MGでは

FX-S が 1.1L と APS-E に比べ有意に高値を示した. 

結 果

図 1. 各溶質のクリアランス

図 2. 各溶質の除去率

図 3. 低分子量蛋白のクリアスペース

図 4. アルブミン漏出量

図 5. 生体適合性

表1 対象および測定項目

対象

性別 男性3名,女性3名

平均年齢 60.3±18.1 歳

平均透析歴 10.2±5.8 年

平均DW 51.6±7.8 kg

原疾患 慢性糸球体腎炎6名

測定項目

クリアランス UN,Cr,UA,iP,β2-MG

除去率 UN,Cr,UA,iP,β2-MG,α1-MG

クリアスペース

Alb漏出量

β2-MG,α1-MG

UN:尿素窒素,Cr:クレアチニン,UA:尿酸,iP:リン

Ⅴ型ポリスルフォン膜ダイアライザー FX-S180 の性能評価

岡山済生会総合病院 腎臓病センター 

高尾晃輔,上田喜美子,高橋雅人,岡田弘毅,角 幸奈,青木 豪,丸山啓輔,草野 仁,平松 信