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はじめての AWS移行 プロジェクト ~ 移行対象とするシステムの選定方法とは? ~

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Page 1: はじめての AWS移行 プロジェクト€¦ · 低予算な個別プロジェクトのシステム、利用者が限定される社内システム awsへの移行を検討する最初のフェーズ「準備と計画」では、どのようなシステムをawsに

はじめてのAWS移行プロジェクト

~ 移行対象とするシステムの選定方法とは? ~

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現在「クラウドシフト」が本格化してきており、その移行先のクラウドサービスとして

挙げられる1 つにアマゾン ウェブ サービス(AWS)があります。

そこで、AWS へのクラウドシフトを成功に導くためのステップやパートナーの選び方、

クラウドファースト企業へと変わるためのポイントについて解説します。

AWSを活用する企業は、既に国内で10 万、海外では数百万を超えています。オンプレミスから

クラウドへ移行する際、企業はどのような手順を踏めばクラウドへのシフトを成功させることが

できるのでしょうか?

それらの理解に役立つのが「クラウドジャーニー」という考え方です。クラウドジャーニーは、その

名の通りオンプレミスからクラウド移行における「ジャーニー(旅路)」を表していて、大きく4 つ

の旅程(フェーズ)から成り立っています。

クラウド活用のステージ

個別プロジェクト1

ハイブリッド化2

大規模移行3

クラウド最適化4

1 クラウド活用を加速させる『クラウドジャーニー』

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個別プロジェクトとハイブリッド化のフェーズでは、POC(Proof of Concept:実証実験)などによる「スモール」スタートのアプローチがポイントとなります。

企業で初めてAWSを使うのであれば、クラウドジャーニーの最初のフェーズ「個別プロジェクト」

から始めるのが成功の秘訣と言えるでしょう。いきなり大きなプロジェクトから始めてしまうと、

もしも途中で問題が生じたときには障壁もまた大きくなってしまう恐れがあります。そこでま

ずは、個別の小さなプロジェクトからクラウドを試行的に使い始めてみて、AWSとはどのような

ものかを実感し理解することが重要です。

個別プロジェクトから始める1

個別プロジェクトの成果が見えてきたら、今度は2 つ目の「ハイブリッド化」のフェーズへと歩を進め

ます。ここではオンプレミスのシステムとAWS 上のシステムを専用線でつなぐなどによって連携

させながら、AWS の利用を加速していきます。

ハイブリッド化2

ハイブリッド化がうまくいったらいよいよ3 番目の「大規模移行」のフェーズになります。このフェーズ

では、既存の基幹系システムやデータベースなど、大規模なシステムやミッションクリティカルなシス

テムも含めた業務システムなどを AWSに移行していきます。

大規模移行3

そして大規模移行が完了する頃には、最後のフェーズ「クラウド最適化」を実現する地盤が整って

いることでしょう。このように「着実にクラウド化を拡大・加速させながらクラウド最適化へと至る

のが、理 想的な「クラウドジャーニー」だと言えます。

クラウド最適化4

How to

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Businessビジネス

ビジネスニーズに対応する為、アーキテクチャ的なアプローチを用いて、ビジネス影響を定義し、伝達し、測定する。

People人

AWSクラウド環境を導入し管理するために必要な組織、スキル、コンピテンシーを定義する。

Governanceガバナンス

期待するビジネス結果を予算内期限内に実現するためにポートフォリオとプログラム、プロジェクトを管理する。

Platformプラットフォーム

AWSクラウドのテクノロジーサービスそのものを最適なかたちで実装するための定型パターン、ガイダンス、ツールを提供する。

Securityセキュリティ

求められるレベルのセキュリティ、ガバナンス、リスク管理の要求レベル定義し実装する。

Operations運用

クラウド環境を管理するために必要な仕組みと最適な運用サービス管理のためのプロセスやガイダンス、ツールを提供する。

「クラウドジャーニー」の旅程(フェーズ)は見えてきましたが、クラウドへのシフトを成功に導く

ためには準備が必要です。これは、ビジネス全体をクラウドへスムーズに移行し、クラウドジャー

ニーの最終フェーズ「クラウド最適化」のために必要となるものです。

2 クラウドジャーニーを始める準備

クラウドジャーニーを成功させるための要素

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新しくクラウドを利活用するためには、会社全体として合意形成を行い、利用するルールなどを

整備するなど様々なハードルを越えなければなりません。勢いで旅に出てしまったものの、成功

するための要素を把握していないと何度も出発地点まで戻ることになります。クラウドへスムーズ

に移行し、クラウドのメリットを享受するにはクラウドジャーニーを成功させる要素を理解した

上で以下のポイントを押さえることが重要です。

このうち7 つ目まで来れば、クラウドジャーニーの最終フェーズ「クラウド最適化」に踏み込んだ

と言えるでしょう。

1 経営幹部の賛同を得ること

2 クラウドを検証するITスタッフにいつまでとどこまでをやるべきかなど、しっかり役割と責任を設定しておくこと

3 小さくてもいいので早めに実績をつくること

4 豊富な実績を持ったパートナーと上手に連携してスムーズにプロジェクトを進め速やかに成果を出すこと

5 クラウドを上手に活用してビジネスを推進していくチームを設置すること

6 クラウドとオンプレミスの両方を使いながらハイブリッドアーキテクチャを構築すること

7 「なぜクラウドなのか」から「なぜクラウドではないのか」と意識変革を図ること

大規模移行に至る前の移行の初期である「個別プロジェクトから始める」段階で、

AWS に携わる自社の担当者への教育プランや、AWS の利用を推進するためのガイドラインの策定を支援するサービスを提供しているパートナーを見つけ活用することも有効です。

小さいプロジェクトで7 つのポイントを押さえてクラウド移行を成功させ、早めに

実績をつくっておくとよいでしょう。

How to

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準備と計画 移行 最適化

● プロジェクト管理● ポートフォリオ検出● 移行計画(やり方)● 運用モデル● セキュリティ

● 移行実施● 移行後の動作確認● 実運用

● アプリの最適化● プロセスの最適化● 運用の最適化● コストの最適化

これらのシステムに共通する性質は、既存の業務や他のシステムへの影響が低く、移行前の状態

に戻しやすいといった点であると言えます。AWS への移行を成功させる秘訣としては、まずは個別

で移行が容易であるシステムから順に移行計画することがポイントとなります。

そしてもう一つ「準備と計画」フェーズにおいて、AWS に移行する対象のシステムを検討する際に

欠かせないタスクで、以下の「6つの“R”」に基づくシステムの移行方針の仕分けがあります。

● ビジネスへの影響が低いシステム開発環境、バックアップ環境

● 既存システムから独立可能なシステムコーポレート Web サイト、データ分析基盤、データ遠隔地保管サイト

低予算な個別プロジェクトのシステム、利用者が限定される社内システム

AWS への移行を検討する最初のフェーズ「準備と計画」では、どのようなシステムを AWS に

移行するかを検討します。

移行の対象を決める1

では、具体的にどのように AWS への移行を実施していけばよいのでしょうか。AWS への移行を

成功させるには3つのステップを押さえる必要があります。

まずは移行の「準備と計画」、続いて「移行」の実施、そしてアプリやプロセス、運用、コストなどを

「最適化」する流れです。AWS 移行におけるポイントを改めて見直すと、まず移行プロジェクトの

「準備と計画」フェーズにおいて、見落としがちな移行後の運用やセキュリティについて検討

することが重要です。

3 AWSへの移行“3つのステップ”

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移行方式 説明 例

Rehost(ホスト変更)

OSやアプリケーションに変更を加えずそのまま移行

既存の仮想マシンをVM Importを利用してAmazon EC2に移行

Replatform(プラットフォーム変更)

OSまたはDBの変更やアップグレード

WindowsやOracleのアップグレードオンプレDBからAmazon RDSへの変更

Repurchase(アプリの買替え)

アプリケーションの買い替え

レガシーアプリをSaaS製品や商用の既製品などに置き換え

Refactor(リファクタリング)

移行時にクラウドネイティブなアプリ

ケーションへ書き換え

ステートレス化し、Auto Scalingを使用Amazon DynamoDB, AWS Lambda, Amazon Cognitoなどを活用したサーバレス化

Retire(リタイア)

オンプレ環境でサーバやアプリケーションを

廃止する

使用状況の精査によって不要となったアプリやクラウド活用により不要となるサーバの廃止

Retain(保持)

オンプレ環境で引き続き運用する

ホストコンピュータやUNIXを使用する一部システムをオンプレで引き続き使用

AWSでは手軽にスケールアウトすることが可能なので、まずは「Rehost」でオンプレミス環境におけるリソースの制約から抜け出すことからはじめるのもよいでしょう。

How to

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一方、コスト増を招きかねない要因となるのが運用負荷の増大です。監視一つをとってもオンプ

レミス環境とクラウド環境では監視のポイントが異なります。オンプレミスでの運用をそのまま

引き継ぐことで、せっかくのクラウドのメリットを生かされないケースも多くみられます。また、

運用担当者のスキル不足も理由の一つです。既存のシステム担当者が AWS 上のシステムを運

用するためには、クラウド技術の習得だけでなく、AWS 環境の運用ルール作成や新しい管理方

式への対応が負担になることがあるためです。

AWS 移行における検討事項は数多く存在しますが、それらの中でもセキュリティや運用管理を

どう担保するかなどは特に留意する必要があると言えます。

ここでは移行プロジェクトの「準備と計画」フェーズについて記載しましたが、このフェーズを

きちんと実施することで次の「移行」、最適化のフェーズもスムーズに実施できるでしょう。

クラウドへの移行は、もはや止められない流れであり、クラウドジャーニーのフェーズを1 つ1 つ

着実に進めながらクラウドシフトを成功に導くことが求められます。そのためにも、AWS の認定

プログラムなどを参考にしながら信頼できる実績豊富なパートナーを選定し、そのパートナー

ともに「クラウドファースト」な組織へと変革を図っていくことが不可欠です。

もはやクラウドの活用は時代の必然とも言え、いかに早く着手するかが将来の競争力を決定

すると言っても過言ではありません。まずは、CTC も含め、AWS Partner Network(APN)

企業への相談を検討してみてはいかがでしょうか。

4 クラウド移行を成功に導くために不可欠なもの

「クラウドジャーニー」はなかなか長い道のりです。

セキュリティに関する知識や担当者のスキル不足など社内での対応に不安があ

る企業の方には、AWS の APN パートナーに相談してみることをおススメします。AWS が提供しているセキュリティ機能を活用するベストプラクティスや、AWS

の機能以外のセキュリティ対策においても十分な知識を持っています。

How to

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ECサイト基盤をプライベートクラウドからアマゾン ウェブ サービス(AWS)へ移行

課題

2000年にスタートした生協のECサイト利用率の向上に合わせて課題が浮き彫りに

 日本生活協同組合連合会(日本生協連)は、1951年に設立された生活協同組合(生協)の全国組織だ。2018年度現在、日本国内には消費生活協同組合法に基づく生協が568組織あり、生協組合員総数は約2,924万人、総事業高は約3.5兆円にも上る(日本生協連調べ)という。このうち319組織が日本生協連の会員として加盟し、全国の各地域で生活物資の共同購買事業や組合員の福利厚生を目的とした共済事業を展開している。そうし

日本生活協同組合連合会(日本生協連)は、生協に加入した組合員が利用するECサイトの基盤をリニューアルし、プライベートクラウドからAWSへ移行した。AWSクラウド上の新しいECサイト基盤を構築するにあたり、日本生協連はIT子会社のコープ情報システム、及び従来から開発・運用保守を担当してきた伊藤忠テクノソリューションズ(CTC)と共にプロジェクトを組織。設計開始からおよそ1年半の構築期間で移行を完了させ、サービス提供開始を迎えた。

●利用する組合員の増加に伴い、 機能面や拡張性の課題が発生

●AWSクラウドの採用により拡張性・ 可用性の向上を実現

●ECサイト基盤の構築・運用にかかる コスト削減も急務に

●データベース環境を一新し、 コスト削減という目標を達成

所 在 地 〒150-8913 東京都渋谷区渋谷3-29-8設  立 1951年会 員 数 319生協(2018年度末)職 員 数 1,454名(2018年度末)事業内容 会員生協への商品供給などに関わる事業、 会員生協への支援など

URL https://jccu.coop/

所 在 地 〒169-0073 東京都新宿区百人町3-25-1設  立 1996年従業員数 124名(2019年4月現在)事業内容 日本生協連会向けシステムの開発・ 保守・監視・運用など

URL http://www.coopis.co.jp/

Interview

た会員生協の組織運営をサポートするのが、日本生協連の大きな役割だ。

 そのような日本生協連の取り組みの1つに、生協組合員が利用するECサイト基盤の構築・運営がある。最初のECサイト「eフレンズ」がサービスを開始したのは、2000年のこと。当初は、商品カタログの注文番号を入力するというシンプルなものであったが、PCや携帯電話の急速な普及と共に利用する組合員が急増。2007年にはECサイトを全面的に見直し、組合員がネット上でそのまま商品を選んで注文できるWeb上のECサイト基盤「CWS(Coop-Web-Standard)」に模様替えした。現在は会員生協のうち、コープ東北サンネット事業連合、コープ北陸事業連合、生活協同組合CO・OPとやま、生活協同組合ユーコープ、コープCSネット、生活協同組合連合会コープ九州事

日本生活協同組合連合会システム企画部企画グループ シニアシステム担当

大島 晋 氏

日本生活協同組合連合会事業支援本部 事業企画部インターネット企画グループ

岡本 光泰 氏

コープ情報システム株式会社事業システム1部 WebサービスGグループマネージャー

吉田 剛久 氏

日本生活協同組合連合会(日本生協連) コープ情報システム株式会社組 織 名 会 社 名

日本生活協同組合連合会/コープ情報システム株式会社Case Study

課題 効果

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業連合の6団体に所属する会員生協が、CWSを利用しているという。

 「生協におけるECサイトの利用率は年々向上しており、現在は約20%の組合員がECサイトを通じて商品を購入しています。ECサイトに対する組合員のニーズも時代を追うごとに変化しているため、日本生協連ではCWSをこれまでに2度リニューアルして機能強化に取り組んできました。そうした中、課題として上がってきたのが、コスト負担を削減することでした。」(日本生協連 大島晋氏)

経緯

老朽化を待たずコスト削減を目的にパブリッククラウドへの移行を決断

 CWSはこれまで、オンプレミス環境に構築されていた。2010年のリニューアルでは、日本最大規模のECサイトをプライベートクラウドの仮想基盤へと移行したが、組合員の利用率向上に伴うシステム基盤の拡張によってコストの負担が重くのしかかるようになっていった。この課題を解決するために、日本生協連はCWSをパブリッククラウドへ移行することを決断する。

 「これまでのリニューアルは、CWS稼働基盤の老朽化による更改のタイミングで実施してきました。しかし今回は老朽化を待たず、コスト削減を目的にオンプレミスのプライベートクラウドからパブリッククラウドへ移行することとし、2016年から3度目となるリニューアルの検討を始めました。」(大島氏)  日本生協連ではIT子会社のコープ情報システム、及び従来からCWSの開発・運用保守を担当してきたCTCと相談しながら、どのパブリッククラウドに移行すべきか、どんなサービスを採用するかといった検討を入念に行った。その結果、最もコスト削減効果が高く、将来を見越したECサイト基盤に最適だと判断できたのが、AWSクラウドだったという。

選択

採用実績からAWSクラウドを選定決め手はデータベース環境の移行可能性

 複数のパブリッククラウドについて、機能・性能・コストなどを総合的に比較した結果、日本生協連はAWSクラウドを採用することにした。採用の理由は、AWSの導入実績とCWSの開発・運用保守を担当するCTCにAWSクラウドのSI実績が豊富にあった点が挙げられる。

 「従来のCWSで特にコスト負担が大きかったのが、データベース管理システム(DBMS)でした。CWSでは処理の高速化を目的に、Oracleのインメモリ・データ・グリッド・ソリューションも採用していたため、同等のDBMSとインメモリデータベースをサポートしていることが必須条件でした。」(日本生協連 岡本光泰氏)

 コープ情報システムがCTCの支援のもとにPoC(概念実証)を実施して検証したところ、既存のCWSのデータベース環境はAWSのDBMS「Amazon Aurora」、インメモリデータベース「Amazon ElastiCache」へ移行できることがわかり、これが採用の決め手になったという。

効果

性能とサービスレベルを維持しながらECサイトのコスト削減という目的を達成

 こうしてAWSクラウドに移行することにした日本生協連では、2017年

10月に移行プロジェクトを始動させた。最大の懸案事項だったデータベースの移行については改めて設計・サイジングを行い、コストを削減しながらパフォーマンスとサービスレベルを維持することに成功した。

 「アプリケーション機能は既存のビジネスロジックをそのまま移行することにしました。ただしアプリケーションの構成は、ECサイトの運用に必要な機能を『基本パッケージ』、会員生協が選択可能な追加サービスを『オプション』に分けることにしました。会員生協が個別に運用している外部サービスとの親和性を高めるために『基本パッケージ』の機能をAPIとして提供することにしました。」(コープ情報システム 吉田剛久氏)  プロジェクトは順調に進み、2018年10月に一部の会員生協向けにサービス提供を開始。2019年4月には、新しいAWSクラウドによるECサイト基盤への移行を完了させた。

 「AWSクラウド上に構築したECサイトは、キャンペーンによりアクセスが集中しても即座にスケールを変更できます。またシステム障害が発生しても局所化できるなど、拡張性と可用性を大きく高めるという効果が得られたと実感しています。性能とサービスレベルを維持し、コストを削減するという当初の目的も達成することができました。」(吉田氏)

今後の展望

CTCの協力のもとに機能改善に取り組むECサイトを発展させる新しい提案も期待

 こうして4代目となるCWSをAWSクラウド上に稼働させた日本生協連だが、今後もECサイト基盤を管理するコープ情報システム、運用保守を担当するCTCと協力しながら機能改善に取り組んでいく予定にしている。

 「現在は、例えば商品の価格やスペックをすぐに変更したいというニーズに応えるために、会員生協が使用するECサイト管理機能をより分かりやすく、使いやすいものに作り直す取り組みを進めています。更に会員生協にとって利便性の高い追加サービスを開発し、オプション機能を拡充していきたいと考えています。」(岡本氏)

 こうした取り組みを進める上で、CTCにも高い期待を寄せている。

 「CTCには、最初のCWSを構築した時から開発・運用保守を委託しており、私たちの業務を深く理解した上で安定したサポートを提供してもらっています。今回のAWSクラウドへの移行も、CTCの協力なくしては実現することは難しかったでしょう。これからもCTCには、ECサイト基盤を発展させるような新しい機能、新しいサービスの提案を期待しています。」(大島氏)

伊藤忠テクノソリューションズ株式会社 〒100-6080 東京都千代田区霞が関3-2-5 霞が関ビル 問い合わせ先E-mail [email protected]掲載内容は、インタビュー当時の情報です。最新情報と異なる場合がありますのでご了承ください。本文中に記載されている会社名、商品名は伊藤忠テクノソリューションズ株式会社の商標または登録商標です。内容は予告なく変更する場合がございます。アマゾン ウェブ サービス、AWS、およびかかる資料で使用されるその他のAWS商標は、米国その他の諸国における、Amazon.com,inc、またはその関連会社の商標です。

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コールセンターのアウトソーシング事業を展開するベルシステム24新しいクラウドコンタクトセンターシステム基盤にAmazon EC2を採用

課題

プライベートクラウドに代わる新しいシステムの構築に着手

 ベルシステム24は、国内で初めて本格的なコールセンターのアウトソーシング受託サービスを提供する企業として1982年に設立された。創業当初は

ベルシステム24は、2020年5月からサービス提供を開始した新しいクラウド型コンタクトセンターシステム「BellCloud+(ベルクラウドプラス)」の基盤として、アマゾン ウェブ サービス(AWS)の仮想サーバー「Amazon Elastic Compute Cloud(Amazon EC2)」を採用した。AWSクラウド上のインフラ構築は、伊藤忠テクノソリューションズ(CTC)が担当。クラウドPBXベンダーと協力しながら、東日本・西日本の両リージョンで冗長化させた堅牢なコールセンターシステム基盤を完成させた。

●お客様が求める新たな機能に追従していく必要があり、またお客様のご利用に応じた従量課金を実現させるためにも、柔軟性と拡張性を備えた新たな基盤が必要だった。

●AWSクラウドの採用によりシステム基盤は拡張性・柔軟性を確保

●セキュアな環境を廉価に提供している

●冗長化構成にして堅牢・セキュアなコンタクトセンターシステムが完成

所 在 地  〒104-6113 東京都中央区晴海1-8-11設  立  2014年(創業1982年)社 員 数  7,906名(2019年10月現在) 事業内容  CRMソリューションに関するアウトソーシングサービス、 テクノロジーサービス、コンサルティングサービス、 人材派遣事業、有料職業紹介、およびCRO事業

URL https://www.bell24.co.jp/

Interview

コールセンター代行事業が中心だったが、徐々にビジネス領域を拡大。近年は企業のCRM(顧客関係管理)戦略に関するあらゆる課題を解決するアウトソーシングサービスソリューションの企画・設計・構築・運用をトータルに提供し、日本のコンタクトセンター業界をリードする立場にある。2014年には持株会社体制に移行してベルシステム24ホールディングスへ商号変更。同時に事業会社として、現在のベルシステム24が設立された。また同年に伊藤忠商事と資本業務提携を結び、伊藤忠グループの一員となっている。 同社のビジネスの大きな特徴に、コールセンターの運営を効率化するITソリューションを積極的に開発していることが挙げられる。その代表と言えるのが、2011年に構築したクラウド型コンタクトセンターシステム

「BellCloud(ベルクラウド)」だ。同システムはもともと自社のシステム基盤をクラウド化したものだったが、その後に顧客企業向けにもサービス提供を開始。クラウドPBX(電話交換機)機能だけでなく音声認識やテキストマイニング、AIを活用した各種サービスなどの先進機能を次 と々追加し、現在は多くの企業のコールセンターに採用されている。 「BellCloudは、当社データセンターのプライベートクラウド環境にシステム基盤を用意しています。しかし、プライベートクラウドは提供開始からすでに10年近くが経過しており、さらなる拡張性・柔軟性を確保するために新たな基盤が必要でした。そこでパブリッククラウドを利用したクラウド型コンタクトセンターシステムを新しく構築することにし、2018年頃から検討し始めました」

(ベルシステム24 ソリューションテクノロジー部 大工栄人氏)

株式会社ベルシステム24

株式会社ベルシステム24Case Study

課題 効果

株式会社ベルシステム24ソリューション推進本部ソリューションテクノロジー部ソリューションエンジニア

大工 栄人 氏

株式会社ベルシステム24ソリューション推進本部ソリューションテクノロジー部ソリューションスペシャリスト

笹川 和義 氏

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経緯

新しいクラウドPBXにアバイアの導入を決定

 ベルシステム24が最初に取り組んだのは、新しいクラウド型コンタクトセンターシステムで稼働するクラウドPBXを選定することだった。同社は、パブリッククラウド上での稼働実績や利用状況を考慮し、日本アバイアが提供するソリューションの導入を決定したという。 「アバイアのコンタクトセンターソリューションは国内PBX市場でトップシェアを誇っており、当社の既存顧客の中にもアバイアを採用している企業は少なくありません。その機能の先進性はコンタクトセンター業界でも高く評価されており、欧米ではパブリッククラウドでの稼働実績もあります。これらを総合的に判断し、アバイアのソリューションを採用することにしました」(ベルシステム24 ソリューションテクノロジー部 笹川和義氏) 新しいクラウド型コンタクトセンターシステムにアバイアのソリューションの導入を決めたベルシステム24は、日本アバイアとクラウドサービスパートナー契約を締結。続いてアバイアを稼働させるシステム基盤となるパブリッククラウドを選定することにし、RFP(提案依頼書)を作成してベンダー数社へ打診した。回答のあったベンダーの提案内容を比較検討した結果、同社はシステム構築ベンダーとしてCTCを選定した。

選択

技術力に優れたCTCを選定実績とコストからAWSを採用

 ベルシステム24によると、システム構築ベンダーにCTCを選定した理由はいくつもあるという。 「CTCにはBellCloudをはじめとするシステムインフラの構築・運用監視を委託しており、当社との間に豊富な取引実績があります。同じ伊藤忠グループという関係性があるだけでなく、エンジニアのスキルが高く信頼感も持てることから、CTCにお願いすることにしました」(大工氏) CTCはベルシステム24に対し、オンプレミス(プライベートクラウド)環境への導入やCTCが提供するパブリッククラウドへの導入など複数の提案を行ったが、最終的に同社が選んだのはAWSクラウドだった。 「当社には、BellCloudのビッグデータ分析などいくつかのシステム基盤にAWSを採用している実績があります。またアバイアが稼働するパブリッククラウドにAWSが使われているケースが最も多く、短期間のうちに構築できるという期待を持てます。さらにコスト面の折り合いがついたこともあり、システム基盤としてAWSを採用することにしました」(笹川氏) こうしてアバイアが稼働するAWSクラウドを新しいクラウド型コンタクトセンターシステム基盤にすることが正式に決定。2019年9月にプロジェクトがスタートした。

効果

AWSクラウドに冗長構成で構築望む形のシステム基盤が完成

 プロジェクトは、アバイアが稼働するシステムインフラをAWSの仮想サーバー「Amazon EC2」に構築し、その上にアバイアを実装することを基本に

進められた。一見すると単純な基本構成のようだが、実際には試行錯誤を繰り返しだったという。 「クラウド型コンタクトセンターシステム基盤は、利用する顧客企業に高いミッションクリティカル性が要求されるものです。そのためにAWSの東日本・西日本リージョンの両方にシステム基盤を構築して冗長構成にすることにしました。こうした構成は当社にとってこれまでに経験がなく、何よりもアバイアをAWSクラウド上に乗せるのはアジア太平洋地域で初めての試みだったこともあり苦労の連続でした。しかし、そのつどCTCの力を借りて構築技術など手厚い支援が受けられたため、プロジェクトを予定通りに進めることができました」(大工氏) ネットワークの構築もCTCと相談しながら仕様を決めていった。顧客企業のコールセンターとの接続は音声品質や信頼性を考慮して専用線を使い、AWSクラウドへのセキュアなアクセスを実現するためにVPN、IP制限、ファイアウォールなどの機能も取り入れた。 こうして新しいクラウド型コンタクトセンターシステムは2020年3月に完成。

「BellCloud+」という名前が付けられ、5月以降のサービス開始に向けたテストが行われている(2020年4月の取材時点)。 「BellCloud+は最終的に、当社の望む形に構築することができました。お客様には、業務のしやすいコールセンターを、安価に時間をかけずに導入できることを実感していただきたいと思います」(笹川氏)

今後の展望

AIやビッグデータ分析などの新機能を取り込んでいく計画

 BellCloud+はサービス開始前より顧客企業からの引き合いが多いという。今後は既存のBellCloudで提供されているような、AIによる音声認識やチャットボット、ビッグデータ分析といった機能を取り込んでいく予定だという。 オンプレミス環境でコールセンターを運営している企業の中には、コスト面の課題からそうした先進機能を導入できずにいるところもある。だが、AWSクラウド上にあるBellCloud+ならば、そうした先進機能であってもコストを抑えながら導入できるようになることだろう。拡張性・柔軟性に優れたBellCloud+のこれからの発展が楽しみだ。

伊藤忠テクノソリューションズ株式会社 〒100-6080 東京都千代田区霞が関3-2-5 霞が関ビル 問い合わせ先E-mail [email protected]掲載内容は、インタビュー当時の情報です。最新情報と異なる場合がありますのでご了承ください。本文中に記載されている会社名、商品名は伊藤忠テクノソリューションズ株式会社の商標または登録商標です。内容は予告なく変更する場合がございます。アマゾン ウェブ サービス、AWS、およびかかる資料で使用されるその他のAWS商標は、米国その他の諸国における、Amazon.com,inc、またはその関連会社の商標です。

図 BellCloud+システム基本構成概要