単純せん断機構に基づく土の応力〜ひずみ関係agriknowledge.affrc.go.jp/rn/2010600363.pdf的に進められてきた。この中で開発されたcam-clay...

21
単純せん断機構に基づく土の応力〜ひずみ関係 誌名 誌名 水産工学研究所研究報告 ISSN ISSN 03889718 著者 著者 大槇, 正紀 巻/号 巻/号 20号 掲載ページ 掲載ページ p. 1-20 発行年月 発行年月 1999年8月 農林水産省 農林水産技術会議事務局筑波産学連携支援センター Tsukuba Business-Academia Cooperation Support Center, Agriculture, Forestry and Fisheries Research Council Secretariat

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単純せん断機構に基づく土の応力〜ひずみ関係

誌名誌名 水産工学研究所研究報告

ISSNISSN 03889718

著者著者 大槇, 正紀

巻/号巻/号 20号

掲載ページ掲載ページ p. 1-20

発行年月発行年月 1999年8月

農林水産省 農林水産技術会議事務局筑波産学連携支援センターTsukuba Business-Academia Cooperation Support Center, Agriculture, Forestry and Fisheries Research CouncilSecretariat

Page 2: 単純せん断機構に基づく土の応力〜ひずみ関係agriknowledge.affrc.go.jp/RN/2010600363.pdf的に進められてきた。この中で開発されたCam-clay モデル1,2)

1

水工研研報 20, 1~20, 平成11

Bull. Nat. Res. Inst. Fish. Eng., 20, 1–20, 1999

単純せん断機構に基づく土の応力~ひずみ関係

大槇正紀*

A Stress-Strain Relationship of Soil Based on the Simple Shear Mechanism

Seiki OHMAKI

Abstract: A general stress-strain relationship of soil is shown in which friction and dilatancy properties are taken

into account as well as the nonlinear and elasto-plastic properties. In the formation, the finite deformation theory of

elasto-plasticity is used and the objective Green-Naghdi co-rotational stress rate and the stretching tensor are employed.

On the assumption that the simple shear deformation always occurred along the single slip surface, which is defined in

a specified direction in principal stress coordinate system, a stress-strain relationship is reduced and transformed to

the spatially fixed coordinate system. A stress-strain relationship of soil is obtained by considering both the

octahedral plane and the spatially mobilized plane as a simple shear plane.

Keywords : Stress-strain relationship, Finite deformation, Elasto-plasticity, Objective stress and strain rates, Single simple

shear

1999年4月12日受理 水産工学研究所業績A第366号* 水産土木工学部漁港施設研究室

1. はじめに

地盤上に建設される漁港構造物の安定と変形を把握するた

めには、構造物自身の安定と変形挙動を把握すると同時に、

この構造物とその下の基盤地盤の全体系としての安定と変形

挙動を精度よく把握することが必要である。このためには、

これらの地盤―構造物系の安定性、変形挙動などをあらかじ

め予測する必要がある。その際、これらの構造物の設計手法

としての計算方法の開発とともに、これらの構造物―地盤系

の挙動をより精細に把握できる数値シミュレーションによる

解析手法の開発が重要となる。このような数値シミュレーシ

ョンの実施に当たっては、その中で用いられる地盤または土

の変形、破壊挙動を表す、精度がよく、かつ、その土質パラ

メーターが比較的容易に決められる構成式を開発することが

必要である。

地盤の強度・変形特性を把握する際、地盤は土粒子から構

成されていることから来る摩擦特性、ダイレタンシー特性を

有する粒状材料であること、その応力~ひずみ関係は強い非

線形性、弾塑性的性質、履歴特性を有することなどを考慮す

ることが重要である。また、土はせん断破壊時や粘性土が圧

密するとき非常に大きな変形を示すことはよく知られてい

る。土の応力~ひずみ関係を求めるためにはこれらの特性を

考慮できるように定式化する必要がある。

土の応力~ひずみ関係に関する研究は1950年代頃から精力

的に進められてきた。この中で開発されたCam-clayモデル1,2)

は、土の応力~ひずみ関係を研究する上でのその後の基本と

なった。その後、土の異方圧密の影響を考慮した関口・太田

モデル3,4)やモール・クーロン型の変形挙動が表現できる松

岡・中井モデル5,6)が開発された。近年、有限変形理論の発達

にともない、これを土の応力~ひずみ関係に導入して土の材

料的非線形性とともに幾何学的非線形性を考慮した応力~ひ

ずみ関係の開発が行われてきた7)。

本文では、有限変形弾塑性理論を用いて、土の応力~ひず

み関係の定式化を行った。定式化に当たっては、客観性のあ

る応力速度、ひずみ速度を用いており、速度型の応力~ひず

み関係を得た。

2. 応力、応力速度、ひずみ速度の座標変換と客観性

2.1 座標変換テンソル

2.1.1 空間固定座標系、主応力座標系、すべり面座標系

ここでは、図1に示す①空間固定座標系、②主応力座標系、

③すべり面座標系の3種類の座標系を考える。ただし、これ

らの座標系はいずれも直交デカルト座標系とし、これらの座

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標系で定義される応力、ひずみ及びそれらの速度はいずれも

引張りを正とする。

表1に、これらの各座標系で用いられる各種の量の記号を

示す。以下にこれらの各種の量について説明する。1つの空

間固定座標系の基底ベクトルをei(i=1, 2, 3)とする。こ

の座標系で表されるCauchyの応力テンソルをT で表す。すな

わち、

ここに、TijはT の i,j 成分で、e

i⊗ e

jはe

iとe

jのテンソル積を

表す。また、同じ添字に対しては総和規約を適用する。応力テンソルT は実対称テンソルであるから、相異なる主応力が

存在するとき、各主応力方向は直交する。ここでは、図1(a)に示したように、最大、中間、最小主応力方向にとった右手系の基底ベクトルをp

1、p

2、p

3で表す。応力テンソルT をこ

の主応力座標系piに変換した応力テンソルをP で表す。すな

わち、

ここに、

i = jのとき、

i ≠ jのとき、

このとき、ei座標系からp

i座標系への座標変換テンソルをN

で表すと、これはつぎのようになる。

ここに、pi・e

jはp

iとe

jのスカラー積を表す。また、N は直

交テンソルであるから

N p e p e

p e e pj= ⊗ = ⋅

= =

P P i

P

ij i

ij

( , , )

(3)

= =

=

1 2 3

0

P p p= ⊗

T e e= ⊗

2 大槇

図1 3種類の座標系

3 coodinate systems

項目 空間固定座標系 主応力座標系 すべり面座標系

注) 上添字eは弾性成分を、pは塑性成分であることを示す。

表1 各座標系での記号

Notations of respective coodinate systems

基底ベクトル

応力

応力速度

ひずみ速度

体回転

剛性係数

変形係数

勾配成分

すべり面の

方向

座標変換

テンソル

e p s

T P S

E E E E E E

E E E

C C

D D D

i i i

ij i j ij i j ij i j

ij i j Pij i j Sij i j

p s

ijkl ijkle

Pijkl Pijkle

Sijkl Sijkle

ijklp

Pijklp

Sijkllp

ijkl

, , ,

P S

, , ,

,

T e e P p p S s s

e e s s

R R R

T T P P S S

D D p p D

= ⊗ = ⊗ = ⊗

⊗ ⊗ ⊗

• • •

= = =

o o o

ijklee e eC C C C

C C C

G F G F G F

N M

N M

Pijkl Pijkl Sijkll Sijkll

ijklp

Pijklp

Sijkllp

ij ij Pij Pij Sij Sij

ij i j ij i j

ij i j ij i j

, ,

, , ,

n m

N e M s

e s

p p

p p

= ⊗ = ⊗

= =• •

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ここに、上式の上添字Tは転置を、I は単位テンソルを、ま

た、δijはクロネッカーのデルタを表す。このとき、p

i、N

ijは

いずれも応力テンソルT の関数である。

また、PとT の間にはつぎの関係がある。

つぎに、図1(b)に示したように、pi座標系において任意の

外向き単位法線ベクトルmをもつ面ABCを考え、この面に外

向きに垂直に基底ベクトルs1をとり、この面に作用する応力

ベクトルの接線成分の方向に基底ベクトルs2をとる。また、

基底ベクトルs1、s

2、s

3が右手系直交座標系になるような基

底ベクトルs3をとり、この座標系をすべり面座標系と呼ぶこ

とにする。pi座標系からs

i座標系への座標変換テンソルをM 、

pi座標系で表した応力テンソルPをs

i座標系に変換した応力テ

ンソルをSで表す。このとき、つぎの関係がある。

また、

2.1.2 空間固定座標系と主応力座標系との間の座標変換

テンソル

応力テンソルT、P、S の第1次、第2次、第3次不変量I1、I

2、

I3はつぎのように表される

8).

また、

のように置くとき、Tの主応力Pはつぎのように表される9)。

このとき、P1≧P

2≧P

3である。なお、式(13)のN

0、T

0は後に示

すように、正八面体面上の垂直応力及び最大せん断応力を表

している。

主応力座標系の基底ベクトルpiはつぎのように決定される。

i)T0= 0のとき、

このとき、式(13)より、

となり、等方応力状態となるので、3主応力は等しい。した

がって、pi座標系は任意にとれるから、e

i座標系に等しくと

るものとする。すなわち、

= = == = =

p e p δ

= = == = =

= + ( )= + −( ) = + +( )

≤ ≤( )

θ

θ π

θ π

θ π

=

= −( )= −( ) + −( ) + −( )

+ + +( )= −

= + −

θ

I

T

T

P

33 2 3

3 2 3

3 2 3

11 12 13

21 22 23

31 32 33

1 2 3

1

3

1

2

1

61

3

1

2

1

61

3

1

2

1

6

12

= − +

= − +

= − +

= =

tr tr tr (tr )

tr tr tr (tr )

tr tr tr (tr )

( )

T T T T

P P P P

S S S S

T T

T T T

T T

P P

= = = = = + +

= − − = − − = − − = + +

T P S

T T

P P

S S

M M I p p

MM I s s

S s s

S MPM P M SM

= = ⊗

= = ⊗

= ⊗

= =

δ

δ

M s p s p

s p p s

= ⊗ = ⋅

= =

P NTN T N PN= =

N N I e e

NN I p p

= = ⊗

= = ⊗

δ

δ

3単純せん断機構に基づく土の応力~ひずみ関係

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ここに、pijは基底ベクトルp

iのj成分である。

ii) T0≠0で、cosθ = 1(θ = 0)のとき、式(14)から、

このとき、p1は後述する相異なる3主応力の場合と同様に

して決定される。p2、p

3はp

1と直交して任意にとれるので、

これをつぎのように決定する。

ii-a) p1がe

i(i = 1, 2, 3)のいずれかと一致している場合、

p2、p

3は他のe

iと右手系座標系を構成するように一致させ

ればよい。すなわち、

ここに、(i, j, k)は、(1, 2, 3)、(2, 3, 1)、(3, 1, 2)のいず

れかの組み合わせをとる。

ii-b) p1がどのe

i(i = 1, 2, 3)とも一致しないとき、

図2に示したように、p2をp

1とe

1でつくる面に直行するよう

にとる。すなわち、

これより、

ここに、pijはp

iのj成分である。また、p

3はp

1、p

2、p

3が右手

系座標系になるようにとる。すなわち、

ここに、p1×p

2はp

1とp

2のベクトル積を表す。このとき、p

3

の成分はつぎのようになる。

iii) T0≠0で、cosθ = -1 (θ = π)のとき、式(14)より、主応力はつ

ぎのように表される。

このとき、p3は確定するが、p

1、p

2はp

3に直交するのみで、

確定しない。これをii)の場合と同様にして、つぎのように決

定する。

iii-a) p3がe

i(i = 1, 2, 3)のいずれかと一致するとき、

p1、p

2はe

iの残りの2つの基底ベクトルに右手系座標系になる

ように一致させる。すなわち、式(18)と同じように表される。

iii-b) p3がe

i(i = 1, 2, 3)のいずれとも一致しないとき、

図3に示したように、p2軸をe

3軸とp

3軸で作る面に垂直にな

るようにとると、ii-b)の場合と同様にして、p1、p

2はつぎの

ように表される。

iv) T0≠0、cosθ≠±1のとき、

このとき、3主応力は相異なる。いま、

とおくとき、

= = =

=( )= ± = ±

= ±

= −( ) −

= −( ) −

= −( ) −

= ( ) + ( ) + ( )

=+

= −+

=

= = −= −

= = +

= −

p

p

= −= − =

p p p= ×

= =+

= −+

p p e p⋅ = ⋅ =

p e p e p e= = =

= +

= = −

4 大槇

図2 P2=P

3のときのp

i座標の決定

Determination of basic unit vector pi

when

P2=P

3=P

2

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ただし、p3iの符号は式(21)に示したように、p

1、p

2、

p3が右手系座標系を構成するように決めるものとする。この

とき、p3の成分は次式から求めることもできる。

以上により、主応力座標系の基底ベクトルpiが求まったの

でei座標系からp

i座標系への座標変換テンソルN は、つぎの

ように表される。

T0≠0、cosθ≠±1の場合のN

ijを行列形式で表すと、つぎの

ようになる。

ここで、上式中の±の符号は、

の符号と同じにつけるものとする。

2.1.3 主応力座標系とすべり面座標系との間の座標変換テ

ンソル

いま、図4に示したように、pi座標系において、外向き単位

法線ベクトルがm(m1、m

2、m

3)となる面ABCに作用する応力

ベクトルをt、tの面ABCに垂直な成分と平行な成分をそれぞ

れtN、t

Sで表す。ここで、t

S≠0のとき、前述したように基底

ベクトルs1、s

2はそれぞれt

N、t

S方向にとられている。Cauchy

の公式により、

ここで、N 、T 、Xをつぎのように定義する。

以下においては、Pi<0(i = 1,2,3) (主応力が圧縮)の場合

のみを考えるので、上式よりN<0、T >0、X>0である。

このとき、すべり面座標系の基底ベクトルはつぎのように

表される。

=

= + +

= = ⋅ −

= −( ) + −( )

+ −( )

= −

t t t

t m P

t m m

t

= ⋅ =

= ( ) = ( )= −

,

( )

t m P

P m m

t t

i k ki

N j j kl k l

S N

t m 33

= = ±

( ) =

± ± ±

= ⋅ =p e

= −= −= −

5単純せん断機構に基づく土の応力~ひずみ関係

図3 P1=P

2のときのp

i座標の決定

Determination of basic unit vector pi

when

P1=P

2

図4 応力ベクトルtの分解

Resolution of stress vector t

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ここに、eijkは交代記号で、(i, j, k)が(1,2,3)の偶置換のとき

は1、奇置換のときは-1、それ以外は0である。これより、pi

座標系からsi座標系への座標変換テンソルM は、つぎのよう

に表される。

または、行列形式でつぎのように表される。

これを用いると、式(9)よりsi座標系での応力テンソルS

11、

S12成分はつぎのように表される。

これより、S11、S

12(=S

21)はいずれも座標変換に影響されな

い不変量である。なお、

のとき、式(34)より、P1 = P

2= P

3となり、等方応力状態とな

る。このとき、面ABCはつぎのようなmをもつ正八面体面と

仮定する。

2.2 応力速度、ひずみ速度などの座標変換

2.2.1 ひずみ速度とその座標変換

図5に示したように、t = 0で位置座標Xの点Pがt = tで位置

座標x (t)に移動したものとする。ここに、

このとき、変形勾配テンソルF、剛体回転テンソルR、右

ストレッチテンソルU はつぎのように表される。

これを極分解して、

ここに、R、U はei座標系で表されている。

また、L を速度勾配テンソルとすると、これはつぎのよう

に表される。

ここに、v は速度ベクトル、 は変形勾配テンソルの物

質時間微分である。ここで、L は対称でないから、L の対称

部分と反対称部分をそれぞれD、W で表すと、これはつぎの

ように表される。

ここに、D はひずみ速度テンソル(変形速度テンソル、ス

トレッチング)、W は回転速度テンソル(スピンテンソル)

と呼ばれる。

pi座標系、s

i座標系に変換したR 及びD をそれぞれR

P、R

S、

DP、D

Sで表すと、次式を得る。

2.2.2 応力速度とその座標変換

eiは空間固定座標系の基底ベクトルだから、

i=0と考え

られる。これを考慮すると、式(4)のpi、N の物質時間微分は

つぎのようになる。

e•

R NRN R N R N

R MR M R M R M

D NDN D N D N

D MD M D M D M

P

S

P

S

,

,( )

,

,( )

= =

= =

= =

= =

T T P

PT

PT

S

T TP

PT

PT

S

46

47

D L L e e

W L L e e

= +( ) = ⊗

= −( ) = ⊗

Tij i j

Tij i j

/

/( )

2

245

D

W

F•

Lvx

vX

Xx

= = =•

−∂∂

∂∂

∂∂

F RU U F F R FU= = ( ) = −

FxX

e e= = ⊗∂∂

∂∂

X e x e= =

= =( )

t = =

= = == =

= −( ) =

= − = −

( ) ( )M

m m m

N

T T

m

T

T

t

T

t

T

ij1 2 3

1kl k l 2kl k l 3kl k l

= − − −

1 2 3

1 2 3 37t m t Nm t N

e m t e m e m

= + −( ) +δ δ δ

s m p

s t p

s p

= =

= = −( )=

6 大槇

図5 物質点の運動

Motion of a material point

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上式を考慮すると、式(7)のsi、M の物質時間微分はつぎの

ようになる。

すなわち、座標変換テンソルの物質時間微分 、 は

いずれもゼロである。

この結果を用いると、式(6)、(9)より、応力の物質時間微

分はつぎのように表される。

ここに、 、 、 は、それぞれT、P、S の物質時間

微分であり、つぎのように表す。

とおくと、 、 はつぎのように表される。

同様に、剛体回転R、Rp、R

sの物質時間微分はつぎのよう

に表される。

ここに、

2.3 応力、応力速度、ひずみ速度などの客観性

つぎに、客観性のある応力速度テンソルとして、Green-

Naghdiの共回転応力速度10)(または、Dienes rate

11)とも呼ば

れる12))を考える。図6を参照して、時刻t = 0において位置座

標X の点がt = t、t + ∆tにおいて、x(t)、x(t + ∆t)の点Q、Rに移

動したとする。このとき、点P、Q、RにおけるCauchyの応

力テンソルをT(0)、T(t)、T(t + ∆t)、剛体回転をR(0) = I、R(t)、

R(t + ∆t)とする。時刻t、t + ∆tにおける点Q、Rでの応力状態

を剛体回転を除いた成分について比較するためには、それぞ

れの点をR(t)、R(t + ∆t)だけ逆回転した状態で比較する。す

なわち、このときの応力速度はつぎのようになる。

To

' lim

( )

T T

T

=+( ) +( ) +( ) − ( ) ( ) ( )

= ( )→

∆ ∆ ∆∆t

t t t t t t t t t

t0

57

R T R R T R

R TR

R R R N N R N N

R R R M M N N M

R M M N N M

Pij Pij Pmj mk ik Pin nk jk

Sij Sij Smj mn mk kl nl in

Sin nm nk kl ml jm

= + +

= + + ⋅

+ +

• • •

• • •

• •

( ) ( )56

R e e p p

R s s

• • •

= ⊗ = ⊗

= ⊗

R R R

R

ij i j P Pij i j

S Sij i j

,( )55

= + +

= +

+ +

• • •

• • •

• •

SijPij

T e e e e

P p p p p p p

p p

p p

S s s

•• •

•• • •

= ⊗ = ⊗

= ⊗ = ⊗ + ⊗

+ ⊗

= ⊗

= ⊗

( )

( )

( )

T T

P P P

P

P

S

ij i j ij i j

ij i j ij i j ij j j

ij i j

ij i j

ij i j

53

S•

P•

T•

P NTN NT N T N P N

S MPM M P M P M SM

••

• • •

••

• • •

= = =

= = =

M•

N•

s M M M

M M N N

M M N N M

M

M M M

M M M M

• • • •

• •

• •

• •

• • •

= ( ) = +

= +

= +

= ⊗( )= ⊗ + ⊗ + ⊗

= +

i ij ij j ij j

il ij jk lk l

il ij jk lk ml m

ij i j

ij i j ij i j ij i j

ij il ij il

p p p

p

s

M s p

s p s p s p

j

( )

(

50

••

• •

• •

+ + ⊗

= ⊗ + ⊗

=

)

( )

( ) M ( ) M

( )

M

N N N N M

ml m j

lj mj lj mj km k l

jl ml m j lm km k l

s p

s p

s p s pδ δ

0 51

N p e

p e p e

p e

p e

p e

• •

• •

• •

• •

= ⊗( )= ⊗ + ⊗

= +

= +

= ( ) ⊗ =

Nij i j

ij i j ij i j

ij il ij ik lk l j

ij ik ij ik l j

jk lk l j

N N

N N N N

N N N N N

N

δ

δ

lk

( )0 49

p e e pi ij j ij j ij kj k

• • • •= ( ) = =N N N N ( )48

7単純せん断機構に基づく土の応力~ひずみ関係

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これは、R(t)だけ逆回転した応力速度になっているから、

R(t)だけこの応力速度を順回転してもとの状態にもどしたも

のが、t= t における剛体回転に影響されない応力速度になる。

すなわち、

ここに、

ここに、 はCauchy応力のGreen-Naghdiの共回転応力速

度テンソルであり、またΩΩは物質スピンと呼ばれる。

とおくと、式(58)より、

また、ΩΩをpi座標系、s

i座標系へ変換したものをΩ

P、Ω

Sで表

すと、これらはつぎのように表される。

ここに、

であり、 、 は式(56)で示されている。これらを用い

ると、pi座標系、s

i座標系での応力テンソルP、S のGreen-

Naghdiの共回転応力速度はつぎのように表される。

このとき、式(52)、(53)の関係を用いると、

同様にして、

すなわち、Green-Naghdiの共回転応力速度 、 、 も、

T、P、Sと同様に変換されることが分かる。

つぎに、各種テンソルの客観性について考える。図7を参

照して、2つの基準枠(x、t)、(x*、t*)を考える。簡単のため、

t = t*とする。ここで、

とする。ここに、C(t)、Q(t)はそれぞれ基準枠(x,t)の基準枠、

(x*,t*) に対する並進ベクトル及び回転テンソルである。いま、

t = 0で両基準枠は一致しているものとすると、

これより、

FxX

QxX

Q F

R QR U U

**

* *

(t) (t)

,

( )= = =

= =

∂∂

∂∂ 69

x x X= =

x C Q x= +

So

Po

To

S M P Mo o

= T ( )66

NT N N T T T N

NT N NTN N N N N NTN

P P P P

o

o

= + −

= + −

= + − =

Ω Ω

Ω Ω

Ω Ω

P R R PR R P P P

S R R PR R S S S

o

o

= ( ) = + −

= ( ) = + −

• •

• •

P PT

P PT

S ST

S ST

( )Ω Ω

Ω Ω

P P

S S

64

RSijRPij

Ω ΩPij Pik Pjk Sij Sik Sjk= =R R R R, ( )63

Ω

Ω

P P Pij i j

Sij i j

= = ⊗

= = ⊗

R R

R R

PT

S S ST

( )Ω

Ω

p p

s s62

T T T To

ij ij ik kj ik kj= + −•

Ω Ω ( )61

T e eo o

= ⊗

To

Ω = = ⊗ =• •R R R RT , ( )Ω Ωij i j ij ik jke e 59

To

= ( ) = + −• •

R R TR R T T TT T ( )Ω Ω 58

8 大槇

図6 物質点の移動と回転

Movement and rotation of a material point

図7 2つの基準枠

2 reference frames

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ここに、R*、R は両基準枠での剛体回転を表すテンソル、

U*、U はそれぞれ右のストレッチテンソルである。このとき、

が成立する6)。ここに、V*、V はそれぞれの基準枠での左ス

トレッチテンソル、L*、L はそれぞれの速度勾配テンソル、

D*、D はそれぞれのひずみ速度テンソル、W*、W はそれぞ

れの回転速度テンソル、ΩΩ*、ΩΩはそれぞれの物質スピンである。また、

は基準枠のスピンである。式(69)、(70)より、V、D は客観性

がある、すなわち、基準枠の回転以外は影響を受けないテン

ソルである。F、R、U、L、W及びΩΩは客観性がないことが分かる。また、応力については次式が成立する

13)。

これより、T、 は客観性があるが、 は客観性がない

ことが分かる。

いま、2階のテンソルAが客観性を有するものとする。すな

わち、

このとき、A*、A、Q はei座標系で表されているものとし、

これらをpi座標系、s

i座標系に変換したものをA

P*、A

P、Q

P、

AS*、A

S、Q

Sで表す。すなわち、

このとき、

これより、AP、A

Sは客観性を有することになる。

すなわち、ei座標系で客観性を有するV、D、T、 はp

i座標

系、si座標系においても客観性を有することが分かる。

以下の土の応力~ひずみ関係の誘導は、客観性のあるテン

ソルD、T、 及びこれらのpi座標系、s

i座標系に変換した

テンソルDP、P、 、D

S、S、 を用いて行う。

3 単一の単純せん断機構に基づく土の応力

~ひずみ関係

3.1 等方弾性体の応力~ひずみ関係と座標変換

3.1.1 空間固定座標系での応力~ひずみ関係

いま、図8を参照して、t = 0及びt = tでの土の間隙比をそれ

ぞれe0、eとする。また、t = 0でdV を占めていた体積が t = t

でdvになったとする。両時刻での土粒子実質部分の体積は変

化しないから、次式が成立する。

すなわち、

ここに、J はヤコビアン、F は式(42)で示される変形勾配

テンソルである。両辺の物質時間微分をとって、

これより、体積ひずみ速度はつぎのように表される。

ここで、ひずみ速度テンソルDを弾性成分De

と塑性成分Dp

に分ける。すなわち、

ここで、等方弾性体の応力~ひずみ関係はつぎのように表

される。

T D I Do

= − +( / )(tr ) ( )e eK G G2 3 2 81

D D D= + = +e p e p, ( )D D Dij ij ij 80

D = =+

=+

• •

J•

= =+

Je

etr ( )D

178

0

Jdv

dV

e

e

x

Xi

j

= = ++

= =1

177

0

det ( )F∂∂

+=

+

So

Po

To

To

A NA N N(QAQ N

NQN NAN NQ N Q A Q

A MA M M QA Q M

MQM MA M MQ M Q A Q

P* * T T T

T T T TP P P

T

S*

PT

PT T

TP

T T TS S S

T

, )

( )( )

= =

= =

= =

= =

75

A NA N A NAN

A MA M A MA M

Q MQ M Q NQN

= =

= =

= =

A QAQ* T ( )= 73

T•

To

T QTQ T QT Q

T QTQ QT Q QT Q

* T * T

* T T T

,( )

= =

= + +

• • • •

o o

72

Ω =•

QQ T ( )71

V QVQ L QLQ

D QDQ W QWQ

Q Q

* T * T

* T * T

* T

,

, ( )

= = +

= = +

= +

Ω

Ω

Ω Ω Ω

70

9単純せん断機構に基づく土の応力~ひずみ関係

図8 土の間隙比の変化

Change of void ratio of soil

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ここに、 は式(58)で表されるCauchy応力のGreen-Naghdi

の共回転応力速度テンソル、K、G は体積弾性係数及びせん

断弾性係数で、応力の関数としてつぎのように表されるもの

とする7)。

ここに、κは膨潤指数(図9参照)、νはポアソン比である。式(81)は成分で表すと、つぎのようになる。

また、式(83)の逆関係はつぎのようになる。

このとき、つぎの逆関係が成立する。

3.1.2 主応力座標系、すべり面座標系での応力~ひずみ

関係

つぎに、これらの等方弾性体の応力~ひずみ関係をpi座標

系に変換する。弾性ひずみ速度テンソルDe

についても式(47)

の変換則が成立する。すなわち、

ここに、 、 はそれぞれpi座標系、s

i座標系でのひず

み速度テンソルの弾性成分である。これと式(65)、(66)の関

係を用いると、式(83)、(84)はつぎのように変換される。

とおくと、 はpi座標系での弾性係数であるが、つぎのよ

うに表される。

すなわち、 はクロネッカーのデルタより構成されてい

るので座標変換によりその形に影響を受けない。 の場合

も同様に考えることができるので、結局つぎの式を得る。

ここに、

同様にして、pi座標系、s

i座標系でのつぎの弾性応力~ひ

ずみ関係が得られる。

ここに、

なお、式(90)、(92)から 、 はいずれも添字iとj及びk

とlについて対称である。また、添字の組(i, j)と(k, l)について

も対称である。

3.2 弾塑性応力~ひずみ関係と座標変換

3.2.1 すべり面座標系での応力~ひずみ関係

いま、図9に示したように、処女圧縮時及び膨潤時のe~

1np関係の勾配をそれぞれλ、κとする。ここに、eは土の間隙

比、pは平均有効応力で圧縮を正とする。

また、λ及びκは圧縮指数及び膨潤指数である。このとき、

− = − =• • • •e p p e p pλ κ/ , / ( )e 93

CijkleEijkl

e

C

K G

K

ijkle

Pijkle

Sijkle

ik jl il jk ij kl- 2 /3

3

= =

= + −

C C

G

1

2

1

292( ) ( )δ δ δ δ δ δ

D C P

D C S

Pije

Pijkle

kl

Sije

Sijkle

kl

=

=

o

o( )91

E E E

K G G

ijkle

Pijkle

Sijkle

ij kl ik jl il jk

= =

= − + +( / ) ( ) ( )2 3 90δ δ δ δ δ δ

P E D

S E D

ij Pijkle

Pkle

ij Sijkle

Skle

o

o

=

=

( )89

Cijkle

Eijkle

E

K

E

Pijkle

mntue

im jn kt lu

ij kl ik jl il jk

ijkle

=

= − + + =

E N N N N

G G( / ) ( )

( )

2 3

88

δ δ δ δ δ δ

EPijkle

P N

E D

E D

ij ik jl klmne

mne

ik jl

klmne

ik jl tm un Ptue

Pijtue

Ptue

o o

= =

=

=

T N N E D N

N N N N

kl

( )87

DSeDP

e

D ND N D MD M= =

E Cijkle

klmne

im jn in jm= +( ) / ( )δ δ δ δ 2 85

=

= + −−

o

δ δ δ δ δ δ

o

=

= − + +

δ δ δ δ δ δ

Ke= − + = −

+1

3

3 1 2

2 182

κνν

κtr , ( )

( )( )T G

To

10 大槇

図9 土の間隙比と圧密圧力の関係

Relationship between void ratio of soil and

consolidation

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ここに、 は膨潤時の間隙比の速度であり、間隙比の速

度の弾性成分を表す。このとき、間隙比速度の塑性成分

はつぎのように表される。

すべり面座標系siにおいて、土の降伏関数がつぎのように

表されるものとする。

ここで、Mは土の強度特性を表す土質定数、Sijは応力テン

ソルS のi、j成分で引張りを正としている。一般には土は引

張りに抵抗できないから、S11<0である。また、-S

11xは降伏曲

面の大きさを表すパラメーターで、-S11x<0である。|S

11/S11x|<

1のとき、式(95)よりS12>0となる。

いま、図10に示すように、微小四角形OABCがs1軸とs

2軸

を含む面内でのみ単純せん断変形するとする。このとき、図

に示した速度成分v1、v

2が発生する(v

3= 0)。このとき、速度

勾配LSの塑性成分は 、 のみが発生するから、速度勾

配テンソルの塑性成分をつぎのように表せると仮定する。

ただし、Λは比例係数、fは式(95)で与えられる。このとき、

つぎのHSijを導入する。

ただし、Xは式(38)で表される応力比である。いま、式(94)

において、

とおくと、塑性体積ひずみ速度はつぎのように表される。

一方、速度勾配テンソルの塑性成分から塑性体積ひずみ速

度はつぎのように表される。

このとき、式(95)よりPragerの適合条件式はつぎのように

なる。

これより、

ここで、Λは土の構成式に用いるために式(101)に用いられている客観性のない応力速度 を客観性のある応力速度 の

成分 に置き換えている。これを式(96)に代入して、

これを成分で表すと、つぎのようになる。

ここで、式(97)に示したように、HSijは対称テンソルで

はないから、 も対称テンソルではない。いま、式(45)

で与えられるひずみ速度テンソルの塑性成分を で表す。

すなわち、

また、HSijの対称部分をG

Sijとおく。すなわち、

= +

DSij

p

LSij

p

その他の

Le

H S

Le M X

H S

L

Sp

Skl kl

S

p

Skl kl

Sij

p

1( )

11

21

1

1

0

104

= − −+

= −+ −

=

λ κ

λ κ

o

o

Le

MS

M XH H S

Sijp 11

Sji Skl kl ( )= − −+ −

λ κ1

103o

So

kl

So

S•

kl

Λ = − −+ −

λ κ1

102e

MS

M XH S11

Skl kl ( )o

• ••

= − = + +−

= + +−

=

λ κ

λ κΛ

L Le

e e

S

SSkkp

S11p x

x

= = −+

= − −+

• •p

( )1 1

10011

11

λ κ

−+

= −+

= −+

• • •e

e e

p

p e

S

S

p

( )1 1 1

9911

11

λ κ λ κ x

x

p = − = −• •

S p S11 11 98x x, ( )

Hf

S

MSM X

sijij

i1 j1 i1 j2

=

= − −

∂∂

δ δ δ δ197

11

( ) ( )

Lf

SS ( ) ( )ijp

ji

= >Λ Λ∂∂

0 96

LS21pLS11

p

fS

MS

S

S= − + =12

11

11

11

0 95ln ( )x

− = − − = −• • • •e e e p pp e( ) ( ) / ( )λ κ 94

e•

p

e•

e

11単純せん断機構に基づく土の応力~ひずみ関係

図10 すべり面座標系での土の単純せん断

Simple shear of soil in the shearing coodinate

system

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このとき、 は対称だから、

が成立し、これを考慮すると、式(103)から、 はつぎ

のように表される。

ここに、

式(107)を考慮すると、 の成分はつぎのようになる。

また、式(104)より、すべり面上での塑性速度勾配の比

はつぎのようになる。

いま、塑性速度勾配及び塑性ひずみ速度が発生する負荷条

件として、

Λ> 0

を考えると、式(102)、(107)よりつぎの2つの場合が考え

られる。

i) ひずみ硬化

このとき、S11< 0 を考慮すると、

となり、塑性体積圧縮を生じ、せん断・垂直応力比 X = -S12/S11は

限界状態の応力比Mより小さく、ひずみ硬化を生じる。

ii) ひずみ軟化

のとき、

これより、塑性体積膨張を生じ、X = -S12/S11はMより大きく、

ひずみ軟化を生じる。

つぎに、3.1で求めた弾性ひずみ速度と上で求めた塑性ひ

ずみ速度を考慮した弾塑性応力~ひずみ関係を求める。式

(80)、(89)、(96)より、

ここで、 はkと lに関して対称であるから、

を考慮すると、Prager の適合条件式(101)の中の に式

(116)の を代入して次式を得る。

これより、Λはつぎのように求まる。

ここに、

ΛΛ

=G E DSkl klmn

e

Smn ( )1

119

+ +−

= −( ) + +−

=

λ κ

λ κ

Λ

Λ Λ

So

ij

S•

ij

=

Eklmn

e

o

=

= −

= −( )Λ

> = >

> = >

o

< >

X = -S

SM, L D

L D D

1

11S11

p

S11

p

S21

p

S12

p

S21

p

0

,

2

0 0

< = <

> = >

o o

= >

= = − <

Λ > 0 112( )

= − −( )

De MS

M X S S

D De 2MS M X

M X S S

D

S11

p

11

S12

p

S21

p

11

Sij

p0

( )

= − −+

−( ) −

= = −+ −( )

⋅ −( ) −

=

λ κ

λ κ1

1

1

1

110

11 12

11 12

o o

o o

その他の

DSij

p

= − −+ −

λ κ

De

MS

M XG G S

C S

Sij

p 11Sij Skl kl

Sijkl

p

kl ( )

= − −+ −

=

λ κ1

108

o

o

DSij

p

G S H S

MSM X S S

Skl kl Skl kl

11

1( )

o o

o o

=

= −( ) −

11 12 107

So

ij

G H H

MSM X

Sij Sij Sji

11i1 j1 i1 j i j1

/ 2

1/ ( )

= +

= − − +

( )( ) ( ) δ δ δ δ δ δ2 2 2 106

12 大槇

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また、

とおくと、これを式(119)に代入して、

これを式(116)に代入すると、

とおくと、

同様に、式(80)、(91)、(108)から、つぎのように表さ

れる。

ここに、 、 はそれぞれ式(92)、(109)により与

えられる。

ここで、

であるが、

の関係を用いると、

が成立するから、式(85)を考慮すると式(126)より、

となり、ESijklとC

Sijklが逆関係にあることが分かる。すなわち、

式(123)は式(125)の逆の関係を与えている。

3.2.2 主応力座標系での応力~ひずみ関係

S11、S

12は式(38)により不変量N、Tで表されている。式

(125)で表された応力~ひずみ関係をpi座標系に変換するとつ

ぎのようになる。

ここに、

ここで、 はつぎのように求まる。

と表すと、GPij は式(38)、(106)を用いてはつぎのように書

ける。

(i , jについて総和をとらない)

同様に、式(123)をpi座標系に変換すると、つぎのように

なる。

G G M M

MNM X

X

P P

NXm m

Pij Skl ki lj

i ji j

1 1

2( )

=

= − − ++

133

C C M M M M

e

MN

M XG G

Pijkl

p

Smntu

p

mi nj tk ul

Pij Pkl ( )

=

= − −+ −

λ κ1

132

CPijkl

p

C C CPijkl ijkl

e

Pijkl

p( )= + 131

= =

=

=

o

o

o

= = +( )δ δ δ δ

− =

= − −+ −

=

= − −+ −

+ +−

λ κ

λ κ

λ κ

Λ

Λ

= −

⋅ +

= +

− −

CSijkl

pC

ijkl

e

=

= +

( )o

= −

=

Λ

o

= − =Λ

ΛΛ

= ( )F DSkl Skl

1

122

=

= −

− +δ

Λ1

2

2 2

1

4

3

1120

= − +−

= +

−( )( )

+( )

− +−

G E Ge

G

K GM X

MS

G

MS

e M X

MS

Skl klmn

e

Smn S11

11 11

11

( )

λ κ

λ κ

13単純せん断機構に基づく土の応力~ひずみ関係

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ここに、式(124)を用いて、

ここに、FPij 、Λ

1は式(36)、(38)、(121)を用いてつぎの

ように表される。

pi座標系での弾性係数 、 は式(90)、(92)で与え

られているから、以上によりpi座標系での応力~ひずみ関係

が求まったことになる。

一方、すべり面上での塑性速度勾配はつぎのように表される。

ここに、 は pi座標系での塑性速度勾配 L

p

のk、l成分

である。

ただし、上式の を を意味する。これを式(111)に

代入して、

また、塑性体積ひずみ速度は、式(110)よりつぎのよう

に表される。

ここに、

また、負荷条件はつぎのようになる。

これより、応力に関する負荷条件はつぎのようになる。

i) ひずみ硬化

のとき、 <0で、ひずみ硬化を生ずる。

ii) ひずみ軟化

のとき、 >0で、ひずみ軟化を生じる。

また、

は全ひずみに関する負荷条件となり、このとき塑性ひずみ速

度が生じる。

3.2.3 空間固定座標系での応力~ひずみ関係

主応力座標系で得られた応力~ひずみ関係を空間固定座標

系に変換する。応力~ひずみ関係の弾性部分については、す

でに 3.1.1 で示したのでここでは応力~ひずみ関係の塑性部

分について考える。すべり面座標系から主応力座標系に変換

した場合と同様に考えると、つぎのように書ける。

ただし、Cijkl、E

ijklはつぎのように表される。

ここで、

ここに、ni、q

iはそれぞれ p

i座標系で表した m

i、t

iをe

i座標

系に変換したものである。ただし、T、N はつぎのようにな

る。

つぎに、

N = S P m m T n n

T = S q q N

T T n n N

X = T/N

11 kl k l kl k l

1 k k

ki kj i j

( )

= =

= −

= −

22

2149

n m N

q t N n Ti k ki

i k ki k ki

( )== =

148

C C C

E E E

ijkl ijkl

e

ijkl

p

ijkl ijkl

e

ijkl

p( )

= +

= −

147

D C T

T E D

ij ijkl kl

ij ijkl kl

( )=

=

o

o146

Λ Λ= >F DPkl Pkl / ( )1 0 145

DPk k

p

G P M X MNPkl kl , / ( )o

< −( ) ( ) >0 0 144

DPk k

p

G P M X MNPkl kl , / ( )o

> −( ) ( ) <0 0 143

Λ

Λ

= − −+ −

= >

λ κ1

0 1421

e

MN

M XG P

F D

Pkl kl

Pkl Pkl / ( )

o

G PMN

M XX

P

NXm m PPkl kl

k l

kk l kl

1 1( )

o o

= − − + ⋅

Σ Σ 141

D = De

G PPkk

p

S

p

Pkl kl ( )11 1

140= − −+

λ κ o

TL m m

L P N m mM X

k l

Pkl

p

k l

Pkl

p

k k l

( )Σ Σ −( )

= − −( ) 139

=∑Σ

LPkl

p

= =

=

= −( )

Σ Σ

Cijkl

eE

ijkl

e

Λ1

2

2

4

1137

=

+

( )

− +−

K + GM X

MN

G

MN

e M X

MN

3

( )λ κ

F F M M

K - GM - X

MNGG

Pij Skl ki lj

ij Pij2

32 ( )

=

=

+

δ 136

E E M M M M

F F

Pijkl

p

Smntu

p

mi nj tk ul

Pij Pkl / ( )

=

= Λ1 135

= −

o o

= =

=

=

14 大槇

Page 16: 単純せん断機構に基づく土の応力〜ひずみ関係agriknowledge.affrc.go.jp/RN/2010600363.pdf的に進められてきた。この中で開発されたCam-clay モデル1,2)

とおくと、ei座標系での塑性係数 、 は次のように表

される。

また、Λ1は式(149)を式(137)に代入して計算される。

、 は式(90)、(92)に示されているので、以上に

よりei座標系での弾塑性応力~ひずみ関係が求まった。

また、式(139)より、空間固定座標系でのすべり面上の

塑性速度勾配比はつぎのように表される。

ここに、 はei座標系での塑性速度勾配テンソルL

p

のi、j

成分である。

同様に、塑性体積ひずみ速度はつぎのようになる。

このとき、式(142)より、

ここに、

このとき、負荷条件は Λ >0より、つぎの場合がある。i) ひずみ軟化

このとき、 <0でひずみ硬化する。

ii) ひずみ軟化

このとき、 >0でひずみ軟化する。

また、全ひずみに関しては次式が負荷条件となる。

3.2.4 等方応力状態での応力~ひずみ関係

等方応力状態では式(15)、(16)が成立する。このとき、

式(95)の降伏関数 f 及び HSij、G

Sijなどは、つぎのようにな

る。

すなわち、塑性ひずみ速度の各成分は、つぎのようになる。

負荷条件は式(159)より、

すなわち、S11が減少(圧縮方向に増加)することを示して

いる。このとき、式(160)より 、 <0となり、

圧縮ひずみ速度が発生し、ひずみ硬化する。また、

ここに、

このとき、全ひずみ速度で表したΛはつぎのようになる。

このとき、Λ>0 が負荷条件となる。つぎに、主応力座標系と空間固定座標系は一致しているの

で、両座標系での応力~ひずみ関係を求める。まず、両座標

系での各種量を求める。

ΛΛ

= −

+

1 22 164

1SK G D GD

11Skk 113

( )S

= −

+

= +

− +−

δ δ δ

λ κΛ

E F FSijkl

p

Sij Skl / ( )= Λ1 162

DS

p

11D

Skk

p

So

11 0 161< ( )

その他の

De

S

S

D

S11

p 11

11

Sij

p

( )= − −

+

=

λ κ1

0

160

o

=

= = =

= − −+

= =

= − −+

∂∂

δ δ

λ κ

λ κ

Λ

Λ

o

o

F Dkl kl / ( )Λ1 0 158>

Dkk

p

G T M X MNkl kl , / ( )o

< −( ) ( ) >0 0 157

Dkk

p

G T M X MNkl kl , / ( )o

> −( ) ( ) <0 0 156

G TMN

M XX

T

NXT T n n

kl kl kl

mk ml k l ( )

o o

o

= − −

+

1 1

1155

ΛΛ

= − −+ −

=λ κ1

1541e

MN

M XG T

F Dkl kl

kl kl ( )o

= − −+

λ κ o

Lij

p

TL n n

L n n T Nn nM Xkl k l

kl l m mk k l

( )

p

p−( )

= − −( ) 152

Cijkl

eE

ijkl

e

Ce

MN

M XG G

E F F

ijkl

p

ij kl

ijkl

p

ij kl /

( )= − −

+ −

=

λ κ1 151

Eijkl

pC

ijkl

p

G G N N

MNM - X -

X

T T

NXn n

F F N N

K - GM - X

MNGG

ij Pkl ki lj

ik jlik jl ik jl

k l

ij Pkl ki lj

ij ij

1 1

3

( )

=

= ++

=

= +

δ δδ δ

δ

2

22

150

15単純せん断機構に基づく土の応力~ひずみ関係

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このとき、 、 はそれぞれ式(159)、(162)からつ

ぎのように表される。

また、Λ は式(159)、(164)からつぎのようになる。

これより、Λ >0 が負荷条件となる。

3.2.5 応力~ひずみ関係のまとめ

以上で得られた結果をまとめると、つぎのようになる。

ここで、

i) T≠ 0 のとき、

(i, jについて総和をとらない)

すべり面上での塑性ひずみ速度比はつぎのようになる。

-(M-X)

ii) T = 0 (等方応力状態)のとき、

これらを用いると、応力~ひずみ関係はつぎのようになる。

Λ Σ Σ

Λ

= − −+( )

= + + +( )

λ κ3 1

1 4

3167

112 23 31

eT

NKD G D D D

k l

o

kl

kk ( bis)

G G N

F F

NK G G

K + G/

N

e

N

ij Pij

ij Pij

ij

2

/

2

3

4

( bis)

= = ( )=

= −

+

= − +−

1 3

1 2

3

3 1 1

165

1

δ

λ κΛ

=−( )

TL m m

L P N m m

Pkl

p

k l

k l Pkl

p

k k l

( bis)Σ Σ

139

= G TMN

M XX

T

NXT T n n

kl kl kl

mk ml k l ( bis)

o o

o

= − −

+

1 1

1155

G PMN

M XX

P

NX

m m P

k lPkl kl

k

k l kl

1 1

( bis)

o

o

= − − +

Σ Σ

141

Λ1

2

2

4

1

=

+

( )

− +−

K + GM X

MN

G

MN

e M X

MN

3

(137bis)λ κ

ΛΛ

Λ

= − −+ −

=

= − −+ −

=

λ κ

λ κ1

142

1154

1

1

e

MN

M XG P

F D

e

MN

M XG T

F D

Pkl klPkl Pkl

kl klkl kl

( bis)

( bis)

o

o

F K GM X

MNGG

GMN

M XX

NXT n n

F K GM X

MNGG

Pij ij Pij

ij ik jl

ik jl ik jl k l

ij ij ij

( bis)

2(

= −

− +

= − −

+ +( )

= −

− +

2

32 136

1 1

1

2

32

150

δ

δ δ

δ δ

δ

T bis)bis)

GMN

M XX

P P

NXm mPij

i ji j

1

2( bis)= − − +

+

⋅1133

t m P

n m N

q t N n T

N S = Pm P m P m

T n n

T S T T n n N

P P m m P P m m

P P

2

i i ki

i k ki

i k ki k ki

kl k l

ki kj i j

( bis)

( bis)

=

== =

= + +=

= = −

= −( ) + −( )+ −

33

148

11 1 12

2 22

3 32

12

1 22

12

22

2 32

22

32

3 112

32

12

1 2

34

( ) = −

m m

X T N

/

/

( bis)

Λ Σ Σ

Λ

= − −+( )

= + + +( )

λ κ3 1

1 4

3167

112 23 31

eT

NKD G D D D

k lkl

( )

o

kk

C C

eNG G

E E F F

ijkl

p

Pijkl

p

ij kl

ijklp

Pijklp

ij kl

( )

/

=

= − −+

= =

λ κ1

166

Eijkl

pC

ijkl

p

G G G M M N

F F F M M

NK G G

K + G/

N

e

N

ij Pij Skl ki lj

ij Pij Skl ki lj

ij

2

/

2

3

4

( )

= = = ( )= =

= −

+

= − +−

1 3

1 2

3

3 1 1

165

1

δ

λ κΛ

16 大槇

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、 の式において、等方応力状態には、X = 0 とお

くものとする。

塑性体積ひずみ速度はつぎのようになる。

また、負荷条件は Λ >0 であるが、T≠ 0 のとき、

i) ひずみ硬化

ii) ひずみ軟化

T = 0 のときの負荷条件は式(167)より、つぎのようになる。

また、全ひずみ速度に関する負荷条件はいずれの場合もつ

ぎのようになる。

4 特定すべり面上の単純せん断機構に基づく応力~ひずみ

関係

4.1 正八面体面上の単純せん断機構に基づく応力

~ひずみ関係

4.1.1 主応力座標系での応力~ひずみ関係

(1)一般の場合

このとき、主応力座標系 piでのすべり面の外向き単位法線

ベクトルの成分は式(40)で表される。このときのすべり面

上の垂直応力 N = N0 、せん断応力 T = T

0 、応力比 X = X

0 は式

(13)に示されている。式(34)に式(40)を代入すると、

N0、T

0 は P

iでつぎのように表される。

また、弾性係数 、 は式(90)、(92)が用いられ

る。塑性成分に関する係数 、 は、つぎのようであ

る。

ただし、式(133)に式(40)を代入して、

ここに、I1 は応力の第1次不変量である。また、すべり面上

の塑性速度勾配は式(138)よりつぎのように表される。

L L

LI X

L PI

k l

k l

S11

p

P k1

p

S 1

p

1 0Pklp

k1

( )

=

= −

1

3

1

3

172

2

Σ Σ

Σ Σ

GMI

M XX I X

P P

F K GM X

MIGG

Pij1

00 1 0

i j

Pij0

1ij Pij

1 1 3

2( )

= − −

+ +( )

= −

−( ) +

2

3

32

171

δ

= Λ

Ce

MN

M XG G

Pijkl

p

Pij Pkl ( 2 bis)= − −+ −

λ κ1

13

EPijklpC

Pijklp

CijkleE

ijkle

N P P P

T P P P P P P

X T N

0 1 2 3

0 1 22

2 32

3 12 1 2

0 0 0

3

3 170

= + +( )= −( ) + −( ) + −( ) = −

/

/

/

( )/

ΛΛ Λ

= = >F D F DPkl Pkl kl kl ( , bis)1 1

0 145 158

Σ Σk l

To

kl ( bis)< 0 168

G P G TM X

MNPkl kl kl kl , ( , bis)o o

= < − >0 0 144 157

G P G TM X

MNPkl kl kl kl , ( , bis)o o

= > − <0 0 143 156

= − −+

λ κ o

D =e

G PPkk

p

Pkl kl ( bis)− −+

λ κ1

140o

Cijkl

pC

Pijk

p

Ce

MN

M XG G

E F F

ijkl

p

ij kl

ijkl

p

ij kl /

( bis)= − −

+ −

=

λ κ1 151

= Λ

Ce

MN

M XG G

Pijkl

p

Pij Pkl ( 2 bis)= − −+ −

λ κ1

13

E K G Gijkle ( / ) ( ) ( bis)= − + +2 3 90δ δ δ δ δ δij kl ik jl il jk

CG

ijkle

ik jl il jk ij kl

- 2 /3

3= + −

1

2

1

292( ) ( bis)δ δ δ δ δ δ

K G

K

C C C

E E E

ijkl ijkl

e

ijkl

p

ijkl ijkl

e

ijkl

p( bis)

= +

= −

147

D C T

T E D

ij ijkl kl

ij ijkl kl

( bis)=

=

o

o146

C C C

E E E

Pijkl ijkl

e

Pijkl

p

Pijkl ijkl

e

Pijkl

p

( bis)

( bis)

= +

= −

131

134

P E Do

ij Pijkl Pkl ( bis)= 134

D C PPij Pijkl kl ( bis)=o

130

17単純せん断機構に基づく土の応力~ひずみ関係

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これを式(111)に代入して、

また、塑性体積ひずみ速度は式(140)で表されたが、こ

のときのGPkl

は、式(141)よりつぎのようになる。

(2) 応力、ひずみ及びそれらの速度の主方向がいずれも

主応力方向に一致する場合

このとき、応力、応力速度、ひずみ速度はいずれも垂直成

分のみである。いま、ひずみ速度をDPi、応力速度 (i =

1, 2, 3)で表す。ここで、弾性ひずみ速度DPi

e

はつぎのように

なる。

ここに、(i, j, k)は(1, 2, 3)、(2, 3, 1)、(3, 1, 2)のいずれ

かの組み合わせをとる。

また、塑性ひずみ速度 はつぎのようになる。

ここに、 は、式(174)において、 を に置

き換えて計算するものとする。また、このときのすべり面上

の塑性速度勾配は、式(172)よりつぎのようになる。

(3) 三軸圧縮条件の場合

(2)の条件に加えて、さらにつぎの条件が加味された場合

を考える。

いま、

とおく。このとき、

ここで、

を考慮すると、

式(180)、(182)を式(111)に代入して整理すると、

ここに、

式(183)は微小ひずみの場合は、Cam-clayモデルの応力

比と塑性ひずみ速度比の関係と同じである1, 2)。

4.1.2 空間固定座標系での応力~ひずみ関係

すべり面の垂直単位法線ベクトルがm で与えられる一般の

場合については既に3.2.3で示した。すべり面が正八面体面で

与えられる場合のm は式(40)で示される。これを式(148)

に代入すると、空間固定座標系でのすべり面の外向き単位法

線ベクトルnの成分はつぎのように求まる。

これより、3.2.3 に示した式により応力~ひずみ関係が得

られる。

4.2 空間滑動面上の単純せん断機構に基づく応力~ひずみ

関係

4.2.1 主応力座標系での応力~ひずみ関係

(1)一般の場合

このとき、主応力座標系piでのすべり面の外向き単位法線

ベクトルmの成分はつぎのように表される7,8)。

ここに、Piはi番目の主応力、I

2、I

3は応力の第2次、第3次

不変量である。各主応力は引張りを正としているので、

Pi< 0 のとき、I

2> 0 、I

3< 0 、m

i> 0 であり、

mI

PIii

( )= 3

2

186

n Nk

i ki ( )= 1

3185Σ

M MCAM / ( )= 3 2 184

vM

q

p

• = −γ

CAM ( )183

L L - LS21

p

P

p

P3

p( )=

=

•2

3

1

21821 γ

= − = −−( )

= −( ) −( )

Σ

L LS11

p

Pk

p( )= = −

•1

3

1

3180Σ v

v L L L

p = P P q = P P

k

• •= − = −

− +( ) −

Σ Pk

p

P1

p

P

p,

1,

( )γ 2

3

32

1793

1 3 1 3

P P D D L L1 2 22 22 178= = =, , ( )P11

p

P

p

P11

p

P

p

=

= − −

Σ

Σ

Po

kPo

klG PPkl kl

o

De M X

M X

X

P

I XG P

Pip

00

0

i

0Pkl kl

3

( )

= − −+ −( ) −(

− +

λ κ1

1

1 3176

1

o

DPip

DGK

K +G

P

K G/ P P

Pi

e

i

j k

3

3 ( )

=

− −( ) +

1

62

2 175

o

o o

Po

i

o o

= − − +

Σ Σ

Po

kl

−−( )

= − −( )I X L

L P IM Xk l

k l

1 Pkl

p

Pkl

p

k 1 /( )

Σ Σ

Σ Σ3 3173

18 大槇

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すべり面上の垂直応力N、せん断応力T 及び応力比X をそ

れぞれ NS、T

S及びX

Sで表す。これらはつぎのようになる。

GPij、F

Pij は式(133)、(136)より、

(添字i、jには総和規約を適用しない )

式(189)、(190)を式(132)、(135)に代入することによ

り、 , が求まるので、式(130)、(134)により、応

力~ひずみ関係が求まる。

塑性速度勾配比は、つぎのようになる。

また、塑性体積ひずみ速度は、式(140)で表されるが、

式中の はつぎのようになる。

また、負荷条件は式(142)~(145)に、式(189)、(190)、

(192)を代入することにより得られる。

(2) 応力、ひずみ及びそれらの速度の主方向が主応力方

向に一致する場合

弾性ひずみ速度は式(175)に示した。

塑性ひずみ速度は、つぎのようになる。

ここに、式(192)から、

塑性速度勾配比は、式(191)よりつぎのようになる。

塑性体積ひずみ速度は、式(140)に式(194)を代入する

ことにより表される。

4.2.2 空間固定座標系での応力~ひずみ関係

式(186)で示される空間滑動面の外向き単位法線ベクト

ルm を式(148)に代入すると、空間固定座標系での空間滑

動面の外向き単位法線ベクトルn が求まる。これより、3.2.3

に示した式に従って応力~ひずみ関係が計算される。

式(148)、(186)より、

5 結論

応力状態から導かれるひとつのすべり面上で常に単純せん断

変形が発生していると仮定することにより、そのすべり面座標

系での土の応力~ひずみ関係を導き、これを主応力座標系及び

もとの座標系である空間固定座標系に変換することにより、一

般的な土の応力~ひずみ関係を得た。この応力~ひずみ関係の

導出に当たっては有限変形弾塑性理論を用い、客観性のある応

力速度及びひずみ速度を用いて定式化を行っており、得られた

関係式は速度形の応力~ひずみ関係式となっている。関係式の

誘導で用いた単純せん断変形が発生するすべり面として、主応

力座標系でみたときの正八面体面の場合と空間滑動面の場合に

ついて、上で導いた一般的な関係を適用してこれらの特定の面

での土の応力~ひずみ関係も導いている。

n NI

P Ii kik

( )= 3

2

196

−−( )

= − −( )33

1953

3

I X

LP

L I P I

P

M Xk

k

S

Pk

p

k

Pk

p

2 k

k

S ( )Σ

Σ

G PM

M XX

P

P

I

MI XP

k

k

Pklp

kl SS

k

k

Sk ( )

oo

o

= − −

+

1

3

1

91942

3

Σ

Σ

De

I

I M X PM X

X

I P

I XG P

Pi

p

S iS

S

i

SPkl kl ( )

= − −+ −( ) −(

− +

λ κ1

1

3193

3

2

2

3

o

G PM P P

M XX

I P

I XP

k lPklp

klk l

SS

k

Skl ( )

o

o

= − − −

+

1

3

1 1

31922

3

Σ Σ

G PPkl kl

o

−−( ) = − −( )3

31913

2 3

I X

L

P P

L I P I

P P

M Xk l

k l

S

Pklp

k l

Pklp

k

k l

S ( )

Σ Σ

Σ Σ

EPijklpCPijkl

p

F K GM X I

MIGGPij

Sij Pij3

( )= −

−( ) +2

32 1902

3

δ

GM PP

M XX

I

I XP + P

Piji j

SS

Si j ( )

= − − −

+ ( )

1

3

1

61892

3

NI

IT

I

IX

XT

N

I I I

I

S S S

SS

S

,

( )

= = −

= − = −

33

9

9188

3

2

3

2

1 2 3

3

m mI

I PPi ji j

( )= − 3

2

1187

19単純せん断機構に基づく土の応力~ひずみ関係

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以上により、つぎの結論が得られた。

1) 空間固定座標系、主応力座標系、すべり面座標系を応

力状態から設定し、これらの座標系の間の座標変換テンソル

を求めた。

2) 空間固定座標系から主応力座標系への座標変換テンソ

ル及び主応力座標系からすべり面座標系への座標変換テンソ

ルの物質時間微分はいずれもゼロになることを示した。この

性質を用いることにより、応力速度、ひずみ速度などの座標

変換が容易に行えることを示した。

3)主応力座標系で定義されるある面に沿って常に単純せん

断変形が発生すると仮定して、この面に沿って定義されたす

べり面座標系での一般的な弾塑性応力~ひずみ関係を求めた。

4)すべり面座標系で得られた弾塑性応力~ひずみ関係を

主応力座標系、空間固定座標系に変換することにより、各座

標系での一般的な弾塑性応力~ひずみ関係を示した。また、

主応力座標系で得られた応力~ひずみ関係に対して、応力及

びひずみの速度の主方向が主応力の方向と一致する場合の応

力~ひずみ関係も示した。

5)単純せん断変形が常に発生すると仮定したすべり面を

主応力座標系での正八面体面、及び空間滑動面としたときの

弾塑性応力~ひずみ関係を導いた。特にこの中で、正八面体

面に対して求めた応力~ひずみ関係の中で、すべり面上での

塑性速度勾配の垂直成分とせん断成分の比は微小ひずみの場

合は、代表的な土の応力~ひずみ関係であるCam-clayモデル

のそれに一致することを示した。

参考文献

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