〈数学〉...

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沖縄県立総合教育センター 前期長期研修員 第50集 研究集録 2011年9月 〈数学〉 数学的な思考力・表現力を育む指導の工夫 -問題解決的な学習における評価活動の工夫や身近な資料の活用を通して(第1学年)- 石垣市立石垣中学校教諭 テーマ設定の理由 文部科学省は2009年にOECD(経済協力開発機構)が実施したPISA調査の結果より明らかにな った課題の1つに「関係性を理解して解釈したり,自らの知識や経験と結び付けたりすることがやや苦手 である」と挙げ,今後の取組として, 新学習指導要領の着実な実施」「知識・技能の習得と思考力・判 断力・表現力等の育成のバランスを重視」を示した。平成20年に改訂された学習指導要領の中学校数学で は,反復(スパイラル)による指導の充実,「資料の活用」を新設し,統計に関する指導を充実する,数 学的活動を指導内容として規定する,などが改訂のポイントであり,学校教育には子ども達の思考力・判 断力・表現力の育成が求められている。 本校生徒の学力を平成21年度に行われた全国学力・学習状況調査から,数学A,数学Bともに全国や県 と比較すると,基礎・基本的な知識・技能の習得ができていない,粘り強く取り組むことができないなど の課題があるといえる。正答数の分布の形状から,学力が中間層から下位層の生徒がかなりおり,また, 数学Bに関しては,特に証明や説明する記述式の問いの無答が多いことから,学習意欲や数学的な思考力 ・表現力を高める必要性を強く感じる。 自らの授業を振り返ると,数学的活動の時間を設定しても,生徒が意欲的に取り組むような指導や支援 の工夫が上手くできずに,問題解決力を生徒に身に付けさせることができていない。また,授業の中で「な ぜ」「理由を考えてごらん」と質問するが,解決に悩んでいる生徒個々に手立てをすることができず,授 業を進めるためにその場を流してしまい,生徒が真剣に思考・判断する機会を作れない,教師主導の一斉 授業となってしまっている。 本研究では,「資料の活用」領域において,数学的な考え方を観点とした評価基準表を作成し,生徒が 評価基準を持って学習過程や表現の仕方,ワークシートやポスターを自己評価・相互評価することで,よ り根拠を明らかにし,筋道を立てて説明できるようになると考える。また,学習資料に,生徒に身近な4 項目について本校生徒のデータを活用したり,資料から生徒自身の生活面・学習面の改善点を探させるこ とで,探究心を高め,意欲・関心を持たせる。このような評価活動の工夫や身近な資料を用いた問題解決 的な学習を通して,生徒の論理的に考察する能力,コミュニケーション能力を養うことで,数学的な思考 力・表現力を育むことができると考え,本テーマを設定した。 〈研究仮説〉 「資料の活用」領域の問題解決的な学習において,評価基準を持って自己評価・相互評価に取り組み, また生徒に身近な資料の活用を通して,生徒の主体的に問題解決する態度を育て,論理的に考察する能 力,コミュニケーション能力を養い,数学的な思考力,表現力を育むことができるであろう。 研究内容 数学的な思考力・表現力とは 数学的な思考力とは「根拠を明らかにし筋道を立てて体系的に考えること」であり,片桐重男(20 04)が述べている数学的な考え方の内容とほぼ重なることから,数学的な思考力を数学的な考え方と して捉えることにする。数学的な考え方について,片桐は「問題に遭遇したとき,その解決に当たっ て,どういう構えをするか,どういう心的な構えをするかということである。」とし,「数学的な態度」 「数学の方法に関係した数学的な考え方」「数学の内容に関係した数学的な考え方」の3つのカテゴ リーに分類している。この分類を用いて,「資料の活用」の単元で育成される数学的な考え方の内容 を表1に示した。そこで,本研究で育成したい数学的な思考力を,「仮説を立てる力」「図や表などか ら帰納的に仮説の根拠を捉える力」とする。 また,小島宏(2009)は数学的な表現力は,「言葉や数,式,図,表,グラフなどを用いて,問題 解決過程における考え方や処理の仕方や結果を分かりやすく表したり,説明したりする能力」とし,

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Page 1: 〈数学〉 数学的な思考力・表現力を育む指導の工夫kyouka.edu-c.open.ed.jp/items/folder2810/20300601H... · 合理的,論理的に考えを進めること ができるようになることから,表現

沖縄県立総合教育センター 前期長期研修員 第50集 研究集録 2011年9月

〈数学〉

数学的な思考力・表現力を育む指導の工夫-問題解決的な学習における評価活動の工夫や身近な資料の活用を通して(第1学年)-

石垣市立石垣中学校教諭 幸 地 忍

Ⅰ テーマ設定の理由

文部科学省は2009年にOECD(経済協力開発機構)が実施したPISA調査の結果より明らかにな

った課題の1つに「関係性を理解して解釈したり,自らの知識や経験と結び付けたりすることがやや苦手

である」と挙げ,今後の取組として,「新学習指導要領の着実な実施」「知識・技能の習得と思考力・判

断力・表現力等の育成のバランスを重視」を示した。平成20年に改訂された学習指導要領の中学校数学で

は,反復(スパイラル)による指導の充実,「資料の活用」を新設し,統計に関する指導を充実する,数

学的活動を指導内容として規定する,などが改訂のポイントであり,学校教育には子ども達の思考力・判

断力・表現力の育成が求められている。

本校生徒の学力を平成21年度に行われた全国学力・学習状況調査から,数学A,数学Bともに全国や県

と比較すると,基礎・基本的な知識・技能の習得ができていない,粘り強く取り組むことができないなど

の課題があるといえる。正答数の分布の形状から,学力が中間層から下位層の生徒がかなりおり,また,

数学Bに関しては,特に証明や説明する記述式の問いの無答が多いことから,学習意欲や数学的な思考力

・表現力を高める必要性を強く感じる。

自らの授業を振り返ると,数学的活動の時間を設定しても,生徒が意欲的に取り組むような指導や支援

の工夫が上手くできずに,問題解決力を生徒に身に付けさせることができていない。また,授業の中で「な

ぜ」「理由を考えてごらん」と質問するが,解決に悩んでいる生徒個々に手立てをすることができず,授

業を進めるためにその場を流してしまい,生徒が真剣に思考・判断する機会を作れない,教師主導の一斉

授業となってしまっている。

本研究では,「資料の活用」領域において,数学的な考え方を観点とした評価基準表を作成し,生徒が

評価基準を持って学習過程や表現の仕方,ワークシートやポスターを自己評価・相互評価することで,よ

り根拠を明らかにし,筋道を立てて説明できるようになると考える。また,学習資料に,生徒に身近な4

項目について本校生徒のデータを活用したり,資料から生徒自身の生活面・学習面の改善点を探させるこ

とで,探究心を高め,意欲・関心を持たせる。このような評価活動の工夫や身近な資料を用いた問題解決

的な学習を通して,生徒の論理的に考察する能力,コミュニケーション能力を養うことで,数学的な思考

力・表現力を育むことができると考え,本テーマを設定した。

〈研究仮説〉

「資料の活用」領域の問題解決的な学習において,評価基準を持って自己評価・相互評価に取り組み,

また生徒に身近な資料の活用を通して,生徒の主体的に問題解決する態度を育て,論理的に考察する能

力,コミュニケーション能力を養い,数学的な思考力,表現力を育むことができるであろう。

Ⅱ 研究内容1 数学的な思考力・表現力とは

数学的な思考力とは「根拠を明らかにし筋道を立てて体系的に考えること」であり,片桐重男(20

04)が述べている数学的な考え方の内容とほぼ重なることから,数学的な思考力を数学的な考え方と

して捉えることにする。数学的な考え方について,片桐は「問題に遭遇したとき,その解決に当たっ

て,どういう構えをするか,どういう心的な構えをするかということである。」とし,「数学的な態度」

「数学の方法に関係した数学的な考え方」「数学の内容に関係した数学的な考え方」の3つのカテゴ

リーに分類している。この分類を用いて,「資料の活用」の単元で育成される数学的な考え方の内容

を表1に示した。そこで,本研究で育成したい数学的な思考力を,「仮説を立てる力」「図や表などか

ら帰納的に仮説の根拠を捉える力」とする。

また,小島宏(2009)は数学的な表現力は,「言葉や数,式,図,表,グラフなどを用いて,問題

解決過程における考え方や処理の仕方や結果を分かりやすく表したり,説明したりする能力」とし,

Page 2: 〈数学〉 数学的な思考力・表現力を育む指導の工夫kyouka.edu-c.open.ed.jp/items/folder2810/20300601H... · 合理的,論理的に考えを進めること ができるようになることから,表現

数学的な表現力の内容として,5つをあげている(表2)。本研究では数学的な表現力を「数学的な

表現を用いて論理的に順序立てて説明する力」と捉え,育成したい数学的な表現力を「論理的に筋道

を立てて考えをまとめる力」「数学

的に思考・判断した考えを順序よく

伝える力」とする。表現することで

合理的,論理的に考えを進めること

ができるようになることから,表現

力と思考力は補完の関係にあるとい

え,ワークシートの記述から生徒の

数学的な表現力,思考力ともに読み

取ることができると考える。

表2 数学的な表現力の内容

○ 自分の考え,仕方などを整理したり,まとめたりして,図,文,式などで表現できる。

○ 自分の考え,仕方などを根拠を挙げて,分かりやすく,説明できる。

○ 相手の表現や説明が理解できる。

○ 表現や説明の交流ができ,話し合い,協力して、高め合うことができる。

○ 「表現されたもの」を基にして理解したり考えたりできる。

2 効果的な評価活動について

(1) 自己評価について

自己評価は,客観的な目で自分を評価することにより,自己を改善するために行う評価である。

鹿毛雅治(1996)は図1に示した「思考プロセスと

しての自己評価」の把握・判断・活用・実践のサイ

クルを子ども自身が回していくことで行為の質が高

められるとし,「このサイクルを回していくためには,

心理的な原動力,すなわち学習意欲が必要となる。」

としている。ここで,「資料の活用」におけるサイク

ルの各場面を表3のように捉える。また鹿毛は,自

己評価の機能を「学習の遂行に関する評価情報を得

ることで,『できた』『わかった』というような有能

性を学習者が感じ,学習意欲が高まる機能である。」

としている。しかし鹿毛は「自己評価はただすれば

よいというものではなく,自己評価をする基準(た

とえば到達度基準)を子どもが認識することが前提

条件として重要であり,自己の達成について学習内

容との関連で考えをめぐらせる自己評価の過程こそ

が学習意欲を促進する。」とも述べている。確かに,

厳しい目または甘い目で自己を判断する生徒がお

り,それでは達成の度合いを正しく捉えることがで

きなくなる。そこで自己評価の評価基準を明確にすることで,自らの課題や目標を正しく把握する

ことができるようになる。本研究では資料を整理して傾向や特徴を読み取り,どのような関係があ

るか仮説を立て,検証していく。この問題解決の場面では図1に表した思考のサイクルを生徒が回

すことになり,自己評価を行い,自己の課題を捉えることで,よりよいものを求めようとする意欲

が生まれる。そこから,新たに見通しを持ち,仮説の根拠を見つけていくことで,筋道を立てて思考す

ることができる。このように「思考プロセスとしての自己評価」のサイクルが機能することによっ

て,学習意欲が生まれ,それが原動力となって数学的な思考力が育成されると考える。

(2) 問題解決的な学習の自己評価基準について

片桐は問題解決の学習過程を「問題把握・形成」「見通しを立てる」「解決の実行」「検討」「発展」

としている。本研究ではこの学習過程を用いて,図2のような学習計画とする。そこで,それぞれ

の場面で身に付けさせたい能力を観点とし,自己評価用の評価基準表を作成する(表4)。そこで,

教師がワークシートを見ながら自己評価の点検やコメントを記入することで,適正な評価ができる

数学的な態度数学の方法に関係した数学的な考え方

数学の内容に関係した数学的な考え方

・事象から数学的な問題を見つけようとする。・見通しを立てようとする。・問題や結果を簡潔明確に記録したり,伝えたりする。・自他の思考を評価し,洗練しようとする。

・帰納的な考え方幾つかのデータの間

に共通に見られるルールや性質を見出そうと努める。・図形化の考え方数的な事柄や関係

を,図形やその関係に置き換えようとする。

・考察の対象の集まりや,それに入らないものを明確にしたり,その集まりに入るかどうかの条件を明確にする。・ものや操作の方法をおおづかみにとらえたり,その結果を用いようとする。

表1 資料の活用において育成したい数学的な考え方の内容

図1 思考プロセスとしての自己評価(鹿毛)

表3 資料の活用の思考プロセス

目標 仮説が正しいことを確認したい

把握 課題や目標を把握する

判断 資料などを整理し,解決の見通しを立てる

活用 論理的に筋道を立てて思考をまとめる

実践 思考を書く,話すなど表現する

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と考える。また,思考は表現することにより見えてくるので,「検討」の場面の自己評価基準に相

互評価を取り入れ,表現と思考を往還させることで,生徒の思考が練り上げられ数学的な思考力・

表現力ともに育むことができると考える。

表4 自己評価の評価基準表

(3) 相互評価について

相互評価は生徒が表現した説明や作品を互いに評価する方法である。自分の考えを伝え合う場面

で相互評価を行い,級友から「良く分かった」と褒められたり,「なぜ,そうなるの」と質問され

たりすることで自己の考えを見つめ直したり,よりよくまとめようとする態度が育成される。そこ

で本研究では相互評価の観点を「根拠の確かさ」「説明の分かりやすさ」「作品のよさ」の3つとし

評価基準を作成する (表5)。学習過程の「検討」の場面にグループ同士で,また,ポスターセッ

図2 学習の流れと評価活動

学習課程 問題把握・形成 見通しを立てる 解決の実行 検討 発展

数学的な思考力

・事象から数学的な問題を見つけようとする。

・見通しを立てようとする。・図形化の考え方

・帰納的な考え方・集合の考え・概括的把握の考え

・問題や結果を簡潔明確に記録したり,伝えたりする。

・自他の思考を評価し,洗練しようとする。

観点①課題から仮説を立てる

②仮説を確かめる方法を考える

③図や表を用いて根拠を見つけ説明する

④自分の考えを相手に伝える

⑤改善点を見つけ,次時の課題と設定する

A(すばらしい)

・仮説の理由が2つ以上ある。・3つ以上の資料について仮説を立てている。

・4つ以上の階級についてヒストグラムや度数分布多角形を作図したり,代表値(平均値,中央値,最頻値)や相対度数で表し,仮説の根拠を見つけようとした。

・仮説,仮説の根拠,結論,改善する方法を順序立てて書いた。・データが仮説に当てはまる点やあてはまらない点について考え,仮説の根拠が2つ以上ある。

・伝えた相手から,よく分かった(A)と評価をもらった。・仮説,仮説の根拠,結論,改善する方法を順序立てて説明した。

・次は何について調べるか目標を持っている。・聞き手の意見を聞いて,修正点をみつけた。

B(良い)

・仮説の理由が1つある。・2つの資料について仮説を立てている。

・3つの階級についてヒストグラムや度数分布多角形を作図し,代表値(平均値,中央値,最頻値)や相対度数で表し,仮説の根拠を見つけようとした。

・仮説,仮説の根拠,結論を順序立てて書いた。・データが仮説に当てはまる点について考え,仮説の根拠が1つある。

・伝えた相手から,分かった(B)と評価をもらった。・仮説,仮説の根拠,結論を順序立てて説明した。

・次は何について調べるか目標を持っている。・聞き手の意見を聞いて,自分の考えを見直した。

C(もう一歩)

・仮説を立てることができない。・資料を読み取ることができない。・空白

・作図や代表値を求めることができない。・空白

・仮説の根拠を見つけることができない。・説明を書くことができない。・空白

・相手にうまく伝えられない。・ポスターにうまくまとめられない。・空白

・自分の考えをもっとよくしたいと思わない。・自分の考えの直す所は分かるが,どう直していいか分からない。・空白

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ションでは,作品のポスターを各グループで相互評価を付箋紙にまとめて伝えるようにする。3段

階の評価だけではなく,良い点や改善点の意見交換をさせることで,根拠への考察を深めるととも

に相手に伝わりやすくまとめる工夫を行うと考える。

表5 相互評価の評価基準表

観点 根拠の確かさ 説明の分かりやすさ 作品のよさ

A ・4階級以上の図や表,代表値の ・仮説,仮説の根拠,結論,改善する ・大切な所が分かるように工夫し

良 く 数値から考えて根拠としている。 方法を順序立てて書いたり,説明した ている。

分かる ・仮説を立てた理由が2つ以上あ りしている。 ・説明の文章がとても分かりやす

る。 ・仮説の根拠が2つ以上ある。 いように順序よくまとめられてい

る。

B ・3階級の図や表,代表値の数 ・仮説,仮説の根拠,結論を順序立て ・大切な所が分かる。

分かる 値から考えて根拠としている。 て書いたり,説明したりしている。 ・説明の文章を読んで,直した方

・仮説を立てた理由が1つだけあ ・仮説の根拠が1つだけある。 がいい所がある。

る。

C分 か Bに満たないもの Bに満たないもの Bに満たないもの

らない

3 身近な資料の活用について

学習課題を図3の内容とし,学習資料は定

期テストの点数や家庭学習時間など生徒に身

近な内容で,本校生徒の実際のデータを取り

扱い,資料の傾向を読み取る作業をさせるた

めに,度数分布表だけを提示する。学習資料

1の学級と学年の度数分布表(表6)の分布

の様子から,学級の学習面や生活面の傾向に

ついて読み取り学級の改善点を見つけ,改善

方法の仮説を立てる。学習資料2の各データ

の相関を表した度数分布表(表7)からは,

改善方法の根拠を読み取る。検証方法は,同

じ課題を問題解決の事前,事後に行い,図や表,相対度数などに整理して考えをまとめることがで

きるか,また考えを論理的に記述できるか確認する。また,生徒の自己評価から数学的な思考・表

現が生じてきたか確認する。

資料はあなたを含めた石垣中学校1年生の「睡眠時間」「中間テストの総合点数」「1日のテレビ視聴・ゲームの時間」「1日の家庭学習の時間」を度数分布表に表したものです。数学的に整理・判断し,あなたの学級と学年全体を比べて,あなたの学級の良い点,

直した方がいい点を考えてください。また,そう考えた理由と,どのように直した方がいいかポスターにまとめてください。

課題解決学習の注意点。

①数学的に表やグラフ,代表値に整理して考える。

②3階級以上について調べる。

③2つ以上の資料について調べる。

図3 学習課題

☆睡眠時間○組 学年全体

睡眠時間 度数 睡眠時間 度数5時間以下 1 5時間以下 45時間~5時間半 5 5時間~5時間半 165時間半~6時間 4 5時間半~6時間 96時間~6時間半 4 6時間~6時間半 146時間半~7時間 2 6時間半~7時間 187時間~7時間半 5 7時間~7時間半 287時間半~8時間 7 7時間半~8時間 508時間より多い 9 8時間より多い 47

計 37 計 186

☆1日のテレビ視聴・ゲームの時間

○組 学年全体時間 度数 時間 度数

30分以下 4 30分以下 1030分~1時間 2 30分~1時間 16

1時間~1時間半 7 1時間~1時間半 251時間半~2時間 6 1時間半~2時間 202時間~2時間半 0 2時間~2時間半 272時間半~3時間 4 2時間半~3時間 193時間~3時間半 5 3時間~3時間半 173時間半~4時間 4 3時間半~4時間 17

4時間以上 5 4時間以上 35

Q9 100~150 150~200 200~250 250~300 300~350 350~400 400~450 450~500

20分以下 2 0 0 0 0 1 0 020~40分以

下0 0 1 7 2 2 0 2

40分~1時間以下

4 2 4 2 1 6 12 6

1時間~1時間20分以下

0 0 3 2 5 13 9 2

1時間20分~1時間40分以下

0 0 0 3 6 7 9 6

1時間40分~2時間以

1 0 0 4 3 4 4 7

2時間~2時間20分以下

0 0 0 1 2 4 3 6

2時間20分~2時間40分以下

0 0 0 1 1 1 4 3

2時間40分~3時間以

1 0 0 0 1 2 1 1

3時間以上 0 1 0 0 0 1 2 2

一日の家庭学習時間

中間テストの総合点数

表6 学習資料1 表7 学習資料2

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Ⅲ 指導の実際1 単 元 名 資料の活用 1節 資料の活用

2 単元の目標

目的に応じて資料を収集し,ヒストグラムなどの表やグラフに整理し,代表値や資料の散らばりに

着目してその資料の傾向を読み取り説明することができるようにする。

3 評価規準

4 指導計画

5 本時の学習指導(4/9)

(1) 本時の目標

・資料(度数分布表)から仮説を立て,ヒストグラムや代表値に整理して,資料の傾向を読み取り,

仮説の根拠を見つけることができる。

(2) 本時の評価

時 学習活動 主な学習内容

1資料を整理するための表やグラフ,用語について知り,それらを用いて資料をまとめ,傾向を読み取る。

階級や度数などの用語を知り,度数分布表,ヒストグラム,度数分布多角形に資料を整理して傾向を読み取る。

2相対度数や代表値(平均値,中央値,最頻値)について知り,それらを用いて資料の傾向を読み取る。

資料の相対度数や代表値(平均値,中央値,最頻値)を求め,その数値から資料の傾向を読み取る。

3検証課題(事前)に取り組む。学習課題についてグループで話し合い,課題を決め,仮説を立てる。

検証課題(事前)に取り組む。学習課題について話し合い,仮説を立てる。

4

5

6

7

8

ポスターセッションを行い互いの発表を聞き,相互評価・自己評価をすることで,自分の考えの改善点や他者の色々な考えを知る。

・ポスターセッションを通して,自分の考えの改善点や他者の色々な考えを知る。

9検証課題(事後)に取り組む。気づいた今後の課題をグループで発表する。 検証課題から生活面や学習面の今後の課題に気づき,説明する。

資料を表やグラフにまとめる,相対度数や代表値から資料の傾向を読み取り,仮説が正しいことを考察する。自分の考えをポスターにまとめるとともに,ペアで検証する。自己評価・相互評価をする。

・資料から仮説を立てる。・資料を図や表にまとめる。・相対度数や代表値を求め,仮説を考察する。・自己評価・相互評価をし,考えを練り直す。・考えをポスターにまとめる。

数学への関心・意欲・態度 数学的な考え方や見方 数学的な技能 数量,図形などの知識・理解

①目的に応じて資料を収集しようとし,整理したり代表値を求めようとする。②読み取った資料の傾向をまとめたり説明しようとする。

①目的に応じて資料の傾向や特徴をヒストグラムや度数分布多角形,代表値,相対度数を用いて読み取ることができる。②読み取った資料の傾向や特徴から物事を判断し,説明することができる。

①目的に応じて資料をヒストグラムや度数分布多角形,代表値,相対度数に整理することができる。

①階級 ,度数,度数分布表,ヒストグラム,度数分布多角形,相対度数,代表値,平均値,中央値,最頻値の意味を理解している。②資料を収集,整理して傾向や特徴を読み取ることの必要性を理解している。

A:十分満足 B:おおむね満足C:努力を要する生徒への手立て

資料から仮説を立て,数学的に整理して読み取ったことを順序立ててポスターにまとめる。自己評価・相互評価を行い,学習を振り返る。

【数学的な考え方や見方】①目的に応じて資料の傾向や特徴をヒストグラムや度数分布多角形,代表値,相対度数を用いて読み取ることができる。②読み取った資料の傾向や特徴から物事を判断し,説明することができる。

・3つ以上の資料について仮説を立てている。・4つ以上の階級について調べている。・仮説の根拠が2つ以上ある。

・2つの資料について仮説を立てている。・3つの階級について調べている。・仮説の根拠が1つある。

・資料の読み取り方を指導する。・ヒストグラムや代表値への表し方を指導する。・ワークシートと自己評価シートにコメントする。

自己評価シート

学習活動評価規準

【評価の観点】

評価基準評価資料

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(3) 本時の展開

過程 学習活動・内容 教師の支援,【評価基準・評価方法】

学習課題について説明を聞く 学習プリント,ワークシート,自己・相互評

学習課題 価表,自己評価シートの配布,課題内容の確

資料はあなたを含めた石垣中学校1年生の「睡眠 認

時間」「中間テストの総合点数」「1日のテレビ視 課題解決の注意点を確認する。

5分 聴・ゲームの時間」「1日の家庭学習の時間」を度 ①数学的に表やグラフ,代表値に整理して考

数分布表に表したものです。数学的に整理・判断 える。

し,あなたの学級と学年全体を比べて,あなたの ②3階級以上について調べる。

学級の良い点,直した方がいい点を考えてくださ ③2つ以上の資料について調べる。

い。また,そう考えた理由と,どのように直した ④ワークシートに考えを書いていき,ポスタ

方がいいかポスターにまとめてください。 ーにまとめをさせる。(次時)

資料から,学級と学年全体を比較して,学級の課題

をグループで話し合う。

資料1(表6)から,グループで仮説を設定し,表 机間巡視して,資料の読み取り方を指導する。

展 やグラフ,代表値に整理する。解決方法が分からな ワークシートに計算や考えを記入するするよ

い生徒は,グループ内 う指導する。

で相談する。(写真1)

(1階級ごとに相対度数を求め,資料の読み

取りができない生徒が多く,階級をまとめて

調べるよう,一斉指導した。)

資料間の相関関係(表

開 7)から,仮説の根拠 3階級以上に注目して調べるよう指導する。

を見つける。

35分 見つけた仮説の根拠をもとに,仮説の確かさやどの ワークシートにまとめていき,次時からポス

ように直した方がいいか,ワークシートにまとめる。ターにまとめるよう指示する。

グループ同士で考えを伝え

ま 合い,相互評価する。(写真2) 相互評価基準や自己評価基準を確認しながら

と 学習を振り返り自己評価し, 相互評価・自己評価させる。

め 次時の課題や修正点,授業の 【数学的な考え方や見方,自己評価シート】

10分 感想を自己評価シートに記入

する。

6 仮説の検証

研究仮説に基づく授業実践を通して,資料の活用の単元で,資料を数学的に整理・判断して,資料

の傾向を読み取り問題を解決する際に,自己評価・相

互評価活動や身近な資料を活用することで,数学的な

思考力・表現力を育むことができたかどうかについて,

検証授業におけるワークシートや自己評価シート,事

前事後の課題とアンケート調査などから検証する。

(1) 自己評価活動における,数学的な思考力・表現力

の育成について

本研究では,数学的な思考・表現について自己評

価活動を実践し,学習の振り返りを行った (図4)。

教師の支援として,毎時間自己評価シートとワーク

シートを回収しコメントを書くことで,学習の方向

性を指示した。自己評価シートの感想や授業中の生

徒の発言に「4階級以上をまとめて調べることがで

写真1

写真2

図4 自己評価シート

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きた」「平均値を求めて調べることができた」などのコメントがあり,自己評価基準表から学習目

標を捉え,解決方法に気付くことができたと考える。

5クラス168人の自己評価シートからA評価の変化を図5に示し,C評価の変化を図6に示した。

1時間目と4時間目を比較

すると,課題把握ではA評

価が1%から58%の57ポイ

ント増加し,C評価は37%

から8%の29ポイント減少

している。C評価が8%と

いうことから,9割以上の

生徒が課題をしっかり把握

できたと考える。解決への

見通しについてはA評価が

6%から52%の46ポイント

増加し,C評価が40%から

8%の32ポイント減少して

おり,相対度数やヒストグ

ラムなどに整理して,見通

しを立てることができるよ

うになったと考える。解決

の実行についてはA評価が

5%から57%の52ポイント

増加し,C評価が29%から

9%の20ポイント減少しており,ほとんどの生徒が資料の傾向を読み取り,学級の改善方法を考え

ることができたと考える。検討,発展については1時間目は取り組むことができなかったので,2

時間目と4時間目の違いを比較する。検討のA評価は40%から60%の20ポイント増加し,C評価は

23%から6%の17ポイント減少していることから,相手に考えを伝える力が育ってきたと考える。

また,検討場面の相互評価に対して,自己評価

シートの感想の中に「今日はBだったから,明

日はAをもらえるように頑張る」「Aをもらえ

てうれしい」などの記述が多く見られことから,

自分の考えを発表することに関心を持たせるこ

とができたと考える。発展についてはA評価が

30%から58%の28ポイント増加し,C評価が22

%から4%の18ポイント減少しており,本時の

修正点や次時の課題などを適切に把握すること

ができるようになったと考える。すべての評価

過程において,4時間目のC評価は1割を下回

っており,ほとんどの生徒が解決方法を理解し,

実践することができたと考える。

また,検証授業後のアンケートで「自己評

価活動が学習に役に立ちましたか」という問

いのアンケート結果を図7に示す。とても役

に立ったが16%,やや役に立ったが57%と学

年全体の73%が役に立ったと回答している。

検証授業の事前・事後に同じ検証課題を行

い,表8に示した評価基準で教師が評価した

結果を図8にまとめた。事前課題では,「でき

ていない」が60%,「不十分」が30%と約9割

が課題の解決ができていない状況から,事後

自己評価(A)

0

10

20

30

40

50

60

把握 見通し 解決 検討 発展

1回目

2回目

3回目

4回目

図5 自己評価の変化(A評価)

1%

5 8%

6%

5 2%

5%

5 7 %

4 0%

6 0 %

3 0 %

5 8%

N=168

自己評価(C )

0

10

20

30

40

50

60

把握 見通し 解決 検討 発展

1回目

2回目

3回目

4回目

図6 自己評価の変化(C評価)

3 7%

8%

4 0%

8%

2 9%

9%

2 3 %

6%

2 2%

4%

N=168

あまり役に立たなかった

20%

全然役に立たなかった

7%

とても役に立った

16%

やや役に立った

57%

図7 自己評価活動について

表8 検証課題の評価基準

す ば らしい ・ ・ ・ 数 学 的 に 整 理 し,適 切 に 判 断 してまとめ てい る。

で き て い る ・ ・ ・ 代 表 値 や 表 な ど に 整 理 し て 考 察 し て い る 。

不十分・・・数値で考察していてる。代表値に整理したが,考察できていない。

で き て い な い ・ ・ ・ 白 紙 ま た は ほ と ん ど か け て い な い 。

N=189

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課題では「できていない」

が31%,「不十分」が22%

と減少している。「できて

いない」の中で,白紙の生

徒は16人から15人と1人だ

け減少したが,ほぼ同じ生

徒がかけていないことか

ら,今後じっくりと指導す

る必要があると考える。ま

た,「できている」が5%

から35%,「すばらしい」が

4%から12%に増加し,半数近くの生徒が資料を数学的に相対度数やヒストグラムなどに整理して

資料の傾向を読み取る帰納的な思考力が育ち,考えを論理的に筋道立ててまとめることができるよ

うになった。図9と図10は生徒A,図11と図12は生徒Bの事前課題と事後課題である。事前課題で

は改善の根拠をかくことができてないが,事後課題で生徒Aはヒストグラムと相対度数を用いて,

学年の中で自分はテストの点が低い,家庭学習の時間が少ないことに着目し,改善点をかいている。

生徒Bは,相対度数を用いて学級では,テレビの時間が自分より少ない人がたくさんいることやテ

ストの点数が自分より高い人の割合が0.37で自分より低い人の割合が0.34で差がないことから,自

分は中間ぐらいと捉え考えを述べている。これらのことから,問題解決的な学習において評価基準

を設定して評価活動を行うことは,学習の目標や課題をしっかり捉え解決を実行し,論理的に筋道

立ててまとめ発表する力である数学的な思考力や表現力を育むのに有効であったと考える。

0% 50% 100%

事後

事前

できていない

不十分

できている

すばらしい

できていない

できていない

図8 検証課題の解答の変化

6 0 %

3 0%

3 1%

2 2 %

5%

3 5 %

4%

1 2% 事前 N=183

事後 N=179

図9 生徒Aの事前検証課題 図10 生徒Aの事後検証課題

図11 生徒Bの事前検証課題 図12 生徒Bの事後検証課題

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(2) 相互評価活動の工夫について

問題解決4時間中の3時間に各授業のまとめの過程

で,その1時間で調べたことをグループ間で発表を行

い,相互評価に取り組んだ(写真3)。発表の方法とし

て,相手グループの所へ全員で行き,発表者1名以外

のワークシートを渡して,調べたことを伝えるように

した。その結果,ほとんどの生徒がワークシートに考

えを記述するようになった。また,1時間目はほぼ白

紙だった生徒達がグループの仲間に教えてもらい,ワ

ークシートにまとめるようになった。例として生徒C

の1時間目と3時間目のワークシートを図13に示す。

1時間目は文章だけでまとめているが,3時間目では式やグラフなどに整理して,考察した結果も

かけている。このように,考察したことを論理的に筋道立ててまとめ,記述することができるよう

になり,この相互評価活動の工夫は数学的な思考力・表現力を身に付けさせることに効果的だった

と考える。また,写真4は,ヒストグラムも作成して発表している様子である。付箋紙を活用して

グループの感想や意見を交流し,「ヒストグラムがあったので,よかった。」「図をかいたほうが分

かりやすい」などの数学的ななアドバイスや感想が見られた(表9)。短時間で多くの意見を得る

ことができるという点で,意見交換の場面で付箋紙の活用は有効であると考える。

○ヒストグラムがあったので,よかった。

○図とかが分かりやすかった。

○「こうだから,こうした方がいい」という発表がよかった。

○平均点をわかりやすくだしているのでよかった

・ヒストグラムがあるとよかった。

・図などをかいたほうが分かりやすい

(3) 身近な資料の活用の有効性について

本検証授業では,1日の睡眠時間,中間テストの総合点,1日のテレビ・ゲームの時間,1日の

家庭学習時間の4つのデータについて,本校生徒の実際のアンケートを資料として取り扱い,問題

解決授業を展開した。学習資料1(表6)から,始めは解決の見通しがなく,1階級ごとの相対度

数を計算する生徒が多くいた。この方法では解決できないと確認し,前時までに学習した睡眠時間

6時間半以上や家庭学習2時間以上のように幾つかの階級をまとめて整理する考え方を思い出させ

ると,すべてのグループが調べることができ,家庭学習時間が少ない,テレビ・ゲームの時間が多

いなどの改善点を見いだすことができた。また,学習資料2(表7)から,睡眠時間6時間半以上

でテストの点が300点以上の相対度数が最も高いことから睡眠時間が多い方がテストの点数が良

い,などと読み取り,睡眠時間を増やした方が良いなどを改善方法の根拠として考えることができ

た。生徒達が自己評価シートに記入した感想を調べてみると,「調べるのは楽しい」「解決まででき

写真3 発表の様子

1時間目3時間目

図13 ワークシートの変容の例表9 ポスターセッッションの感想

写真4 ポスターセッションの様子

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てよかった」などの意欲的なコメント(図13)が168人中の144人の86%もいた。また,ワークシー

トや授業の話し合いの中でヒストグラムや階級,相対度数などの用語を用いて説明する様子が見ら

れ,学習に必要な知識を習得させることができたと考えられる。これらのことから,身近な資料を

活用することは学習意欲を育み,基礎的・基本的な知識を身に付けさせることに有効だと考える。

Ⅳ 成果と今後の課題本研究では「資料の活用の学習指導において,評価基準を持って評価活動に取り組み, また生徒に身

近な資料の活用を通して,生徒の主体的に問題解決する態度を育て,論理的に考察する能力,コミュニケ

ーション能力を養い,数学的な思考力,表現力を育むことができるであろう。」との仮説を立て,検証を

進めてきた。以下にその成果と課題をまとめる。

1 成果

(1) 身近な資料を活用したことで,生徒の興味・関心を高め,意欲的に問題解決に取り組ませるこ

とができた。

(2) 問題解決学習に自己評価活動を取り入れることで,自己評価基準から生徒に学習の目標を捉え

させ,学習の振り返りや反省をさせることができた。また,相互評価活動を取り入れることで,

より伝わりやすいように,調べたことを論理的にまとめるようになり,評価方法の工夫を通して,

数学的な思考力・表現力を育むことができた。

(3) ポスターセッションを設定し,級友の考えや意見を得る機会をつくることで,伝えることの難

しさや大切さを生徒に感じさせることができた。

2 課題

(1) 数学的な思考力・表現力がまだ身に付いていない生徒がいるので,今後も各単元や各領域で問

題解決学習を取り入れ評価活動を実践し継続指導して,考える力・伝える力を育む必要がある。

(2) 自己評価基準の評価項目が多く,説明や評価させるのに時間が取られた。評価活動を用いた学

習指導を継続していく上で,評価基準について更に研究するなどの工夫が必要である。

〈主な参考文献〉

小島宏 2009 『学力を高める算数科の指導づくり』 教育出版

北尾倫彦監修 2007 『生きる力を支える学習意欲の育て方A~Z』 図書文化

片桐重男 2004 『数学的な考え方の具体化と指導』 明治図書

表10 ワークシートの感想

・全部調べたので,うれしかったです。よくできました。

・表を理解できた。理解できたらつかいやすい。

・4つも調べれて,よかったなと思います。今日が一番楽しかったです。

・ちがうグループの調べ方をさんこうにしてやってみたら,分かりやすかった。

・仮説から結論まで,しっかりできた。次もしっかり目標をもって,結論まで出せるようにしたい。

・今日はいつもより自分の力で考えることができたのでよかったです。

・1回まとめてみたら,1番いい解決法が見えてきたし,調べてみての疑問もでてきた。

・上からの4階級,下からの4階級を調べられた。