微粒子合成化学・講義...(6) 31 ze ψkt
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微粒子合成化学・講義微粒子合成化学・講義
村松淳司村松淳司
http://www.tagen.tohoku.ac.jp/labo/muramatsu/MURA/main.htmlE-mail: [email protected]
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分散と凝集分散と凝集
3
コーヒー牛乳に塩を入れる
コーヒー牛乳だけ
乳脂肪が浮上している
1 mol/L KCl溶液
4
なぜ、乳脂肪は浮上したか?
乳脂肪は水よりも軽い
牛乳は乳脂肪が分散したもの
塩を入れることで「凝集」して浮上した
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分散と凝集 DLVO理論へ分散と凝集 DLVO理論へ
Derjaguin,Landau,Verway,OverbeekB.V.Derjaguin and L.Landau;Acta Physicochim.,URSS, 14, 633 (1941).
E.J.W.Verwey and J.Th G Overbeek; Theory of the Stability of Lyophobic Colloids, 193 (1948).
6
7
分散と凝集
分散とは何か溶媒中にコロイドが凝集せずにただよっている
凝集とは何かコロイドがより集まってくる
物質は本来凝集するもの分子間力→van der Waals力
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分散と凝集 (平衡論的考察)
凝集
van der Waals力による相互作用
分散
静電的反発力
粒子表面の電位による反発
分散
凝集
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分散と凝集
van der Waals力による相互作用
静電的反発力
Vtotal = VH + VelVH : van der Waals力による相互作用エネルギー
Vel : 静電的反発力による相互作用エネルギー
考え方
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分散と凝集
Vtotal = VH + VelVH : van der Waals力による相互作用エネルギー
Vel : 静電的反発力による相互作用エネルギー
Vtotalが正→粒子は分散
Vtotalが負→粒子は凝集
考え方
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静電的反発力静電的反発力
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静電的反発力
粒子表面は電荷を帯びている
証拠:電気泳動など
これが静電的反発力の源ではないか
ここからスタートする
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表面電荷
14
粒子表面の電荷
イオンの周りの電子雲と同じ
離れるほど電位は小さくなる
では、なぜ電荷を帯びるのか
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粒子が電荷を帯びる理由
酸化物の場合
-Si-O-H → -Si-O– + H+
プロトンが解離して負電荷
空気の場合
何らかのイオンが吸着
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17
18
19
電位は遠ざかると下がる
Helmholtz理論
Gouy-Chapman理論
Stern理論
20
0 距離
表
面
溶媒中 (バルク)
表面電位ψ0
ζ電位
Helmholtz理論
21
0 距離
表
面
溶媒中 (バルク)
表面電位ψ0
ζ電位
Gouy-Chapman理論拡散二重層
22
0 距離
表
面
溶媒中 (バルク)
表面電位ψ0
Stern電位
ζ電位
Stern理論直線で下がる
Stern面
Slip面
拡散二重層
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現実的にはどう考えるか
実測できるのはζ電位
ζ電位=Stern電位と置ける
それなら、ζ電位=Stern電位を表面電位と見なして考えよう
Stern理論ではなく、Gouy-Chapmanの拡散二重層理論を実社会では適用
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0 距離
表
面 溶媒中 (バルク)
表面電位ψ0=Stern電位ψdと考える
25
表面電荷
拡散層だけを考える
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1.拡散層中のイオンの濃度はボルツマン分布に従う
⎟⎠⎞
⎜⎝⎛ −= +
++ kTeznn ψexp0
⎟⎠⎞
⎜⎝⎛= −
−− kTeznn ψexp0
n: 拡散層中のイオンの個数濃度 n0: バルク溶液中のイオンの個数濃度 z: イオンの価数 k: ボルツマン定数 T: 温度 ψ: 問題にしている点における電位 +,-: 陽イオン、陰イオンを表す
(1)
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表面の電位: ψ0は電位決定イオンのバルク活量 cによって、
00 ln
cc
zFRT
=ψ
R: 気体定数 c0: c at ψ0 = 0
(2)
28
拡散層内における電位は、Poissonの式
02
2
2
2
2
2
) (grad divεερψψψψψrzyx
−=∂∂
+∂∂
+∂∂
==Δ
を基礎にして求められる。 εr: 溶液の比誘電率 ε0: 真空の誘電率 ρ: 電荷密度
(3)
29
ρ: 電荷密度 は、対称型電解質( nnnzzz ==== −+−+ 00 , )に対して、
⎟⎠⎞
⎜⎝⎛−=
⎭⎬⎫
⎩⎨⎧
⎟⎠⎞
⎜⎝⎛−⎟
⎠⎞
⎜⎝⎛−=
−= −+
kTzenze
kTze
kTzenze
nnze
ψ
ψψ
ρ
sinh2
expexp
)(
(4)
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従って、 平板電気二重層に対する、Poisson-Boltzmann式は、(3),(4)式から x方向だけを考えて
kTzenze
dxd
r
ψεε
ψ sinh2
02
2
=
(5)式を積分して、
)exp(4
tanh4
tanh 0 xkT
zekT
ze κψψ−⎟
⎠⎞
⎜⎝⎛=
(5)
(6)
31
1<<kTzeψ なら、(5)式は、
ψκψ 22
2
=dxd
ただし、kTenz
r 0
222 2
εεκ =
25℃水溶液では特に cz9103.3 ×=κ
(7)式を解くと、
)exp(0 xκψψ −= (10)
(9)
(8)
(7)
このκは、Debye-Huckelパラメータと呼ばれる。
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次に平板電気二重層間の相互作用を考える
平板間の相互作用をまず考えよう
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溶液中の2枚の平行平板(板間距離: h)に 作用する力 Pは
OE PPP += 静電気成分 + 浸透圧成分 (電気力線により内側に引かれる力)+ (対イオンの浸透圧により外側へ押される力)
nkTkTnnPdxdP
O
rE
2)(2
20
−+=
⎟⎠⎞
⎜⎝⎛−=
−+
ψεε
(15)
(16)
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POは常に PEよりも大きく、板は反発力を受ける 板の接近過程で表面の電位ψ0が変化しなければ、 PEの寄与を無視して、(1)と(16)の POの式から、 板の受ける反発力 PR(h)は単位面積あたり (このときの考え方は、2つの平板の丁度中間の 面と無限遠の面を考え、中間の面上では、対称性 から電場は零、無限遠の平面でも電場は零である から、浸透圧成分のみを考えればよい、というこ とになる)
⎭⎬⎫
⎩⎨⎧ −= 1cosh2)( 2/
kTzenkThP h
Rψ
(17)ψ2/h: 板間の中央における電位
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相互作用が弱ければ、ψh/2は単独の電気二重層の 電位ψs(h/2)の2倍と考えて、
kTzekTzekTze 4/)4/tanh( then14/ ψψψ ≅<< より、(6)式から、 (この近似は、後述するように、
ψ<20 mVのとき成立する)
⎟⎠⎞
⎜⎝⎛−=
2exp8
)2/(h
zekT
h κγψ
⎟⎠⎞
⎜⎝⎛=
kTze4
tanh 0ψγ
(18)
(19)
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(17)式で 2
2/2/ }/{)( then1/ kTzenkThPkTze hRh ψψ ≅<< より、これに(18)式を代入して、 (この近似は、κh>1、つまり、hが電気二重層の厚さ よりも長いところで成り立つ 近似には cosh y ≅ 1 + y2 を使用した)
すると、 )exp(64)( 2 hnkThPR κγ −= (20)
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従って、平板間の電気二重層の相互作用エネルギーは
)exp(64)()( 2 hnkTdhhPhVh
RR κγκ
−=−= ∫∞ (21)
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次に球形粒子間の相互作用を考える
次に球形粒子間の相互作用を考えよう
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Derjaguin近似から球形粒子の相互作用力へ
Derjaguin近似: 半径 a1と a2の球形粒子の最近接距離 Hのとき (H<<a1,a2)
)(2)(21
21 HVaa
aaHP RR ⎟⎟⎠
⎞⎜⎜⎝
⎛+
= π
(21)と(22)より a1=a2=aのとき、
)exp(64)( 2 hankTHPR κγκπ
−=
(22)
(23)
40
従って、半径 aの球形粒子の相互作用エネルギーは
)exp(64
)()(
22 hankT
dHHPHVH
RR
κγκπ
−=
−= ∫∞(24)
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いま、 kTzekTzekTze 4/)4/tanh( then14/ 000 ψψψ ≅<<
のとき、(23),(24)式は (zeψ0=4kTは、1:1電解質で 25℃で、
ψ0=103 mVのとき成立、 ψ0=20 mV以上では、zeψ0/4kTと tanh{ zeψ0/4kT}に、
1%以上のずれが生じる ので、20mV以下でこの近似は成り立つとしてよい)
)exp(2)( 200 haHP rR κκψεεπ −=
)exp(2)( 2
00 haHV rR κψεεπ −=
(13)式を使うと、
(25)
(26)
42
)exp(2)( 200 haHP rR κκψεεπ −=
)exp(2)( 200 haHV rR κψεεπ −=
(13)式を使うと、
)exp(2)(0
2
HaHPr
R κεκεσπ
−=
)exp(2)(0
2
2
HaHVr
R κεεκσπ
−=
(25)
(26)
(27)
(28)
000 κψεεσ r= (13)
43
van der Waals相互作用
van der Waals力の近似式
212)(
HaAHPA −=
HaAHVA 12
)( −=
Aは Hamaker定数
(29)
(30)
凝集の源
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全相互作用エネルギーは
20
2
12)exp(2)(
HaAHaHP
rT −−= κ
εκεσπ
HaAHaHV
rT 12
)exp(2)(0
2
2
−−= κεεκσπ
が得られる。 あるいは、
HaAhaHV rT 12
)exp(2)( 200 −−= κψεεπ
(31)
(32)
(33)
45
式の意味を考える式の意味を考える
溶液条件によってどう変わるのか溶液条件によってどう変わるのか
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だけはとすると、変化するの
は粒子サイズ
は定数
κ
ψεε
κψεεπ
aA
HaAHaHV
r
rT
,,,12
)exp(2)(
00
200 −−=
47 絶対温度
イオンの価数
イオン個数濃度
はボルツマン定数
は誘電率、は電気素量、
Tznke
kTenz
r
r
0
0
222 2
εεεε
κ =
48
増加
減少 絶対温度
増加 イオンの価数
増加 イオン濃度
κ↓
→
→
→
Tzn
49
HaAHaHV rT 12
)exp(2)( 200 −−= κψεεπ
これを図に書いてみる
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電気二重層による反発力
van der Waals引力
トータル
51
52
電気二重層による反発力
van der Waals引力
トータル
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54
55
温泉中のコロイド温泉中のコロイド
湯ノ花だけがコロイドか?湯ノ花だけがコロイドか?
身の回りのコロイド
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別府・地獄めぐり
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別府・海地獄=いちのいで会館
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青い熱湯 ~海地獄
1.温泉水 20 mlを遠心分離機にかける
遠心分離 10,000 r.p.m. 30 min
この条件で、コロイドはすべて沈んだ
(この条件でシリカなら、20 nm程度のものまで沈む)
2.上澄み液(固相のない)を保存
3.沈んだ固体(白色)に2段蒸留水 20 mlを入れる
4.超音波分散
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海地獄遠心分離後の上澄み
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青色の正体は何か?
遠心分離により、透明になった色がつく原因のものは固相になった。
可能性1: シリカコロイドによる着色
可能性2: シリカコロイドに色の原因のイオンが吸着
可能性2は、遠心分離で得た固相の色が白色だったことから可能性が薄い。
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海地獄遠心分離後の上澄み
再分散後
写真では見えにくいが、右はほぼ元の青白い色を呈している。
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青色の正体=シリカコロイド
このシリカコロイドは小さいためにまるで溶液のように見えたわけ。
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そのシリカコロイドの電子顕微鏡写真
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シリカ微粒子
形は球形で、アモルファス(非晶質)であることがX線などの解析によってわかった。
なお、FT-IRで分析したところ、シリカ組成であることがわかった。
球形シリカ粒子は、高いアルカリ領域で加水分解により合成されるので、地下深部で高アルカリ、高温で生成したものと推測される。
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シリカ=化学分析
20.0℃で pH 8.438
ICP
Si濃度: 2.706 mmol/L
これを H2SiO3(分子量=78.09958)の標記に変えると
211.3 mg/L
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なぜ、青いのか?
Rayleigh散乱の概念で説明可能
粒径が小さくなると短い波長、つまり青色は散乱しやすい。
数十nm程度以下のシリカによって青色を散乱→懸濁液は青くなる
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UV分析結果
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シリカコロイドの凝集・沈殿
左側が、温泉水。右側は、温泉水に、混ぜて、
集体となって沈殿した。右側の底にこずんでいるのが、そのシリカコロイド凝集体。
KCl(塩化カリウム)を1 mol/l KCl溶液としたもの。2~3時間で完全に凝