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1 International Exchange Center, Nara Womens University Sep. 2009 Vol. 16 本学の短期交換留学制度を利用し、海外留学をした本学学生に体験報告を書いていただきました。交換留学に興味のある方は、国 際課留学生係までお問い合わせください。 理学部 生物科学科 4 回生 石川珠美 留学先: レスター大学(英国) 2008 年 7 月~2009 年 6 月 1 年間の交換留学は刺激溢れる貴重な体験でした。留学はず っと昔からの夢で、2 回生の時に 1 ヶ月の語学留学をした際に、 英語を学ぶ目的を自問するようになりました。はっきりした目的 のない1、2回生の時は交換留学というものがハードル高く見え、 勇気もなく挑戦できずにいました。しかし 3 回生になって、大学 院に進学するか就職するか真剣に考え出した時「私には、まだ やっていない事がある」と目覚めました。専門である生物、さら に医学や薬学を外国の教育で学んでみたいと思うようになり、 そこからは留学に対して全エネルギーが注ぎ込まれました。今 回は、理系で留学した少し珍しい私の体験記を、そこで感じた思 いを交えながら紹介させて下さい。 レスターというこれから 1 年間通う大学のある町はロンドンか ら北へ電車で 1 時間。イギリスに着いた翌日からは大学へ行き、 それから 2 ヶ月間はひたすら英語の勉強というハードスケジュ ールから始まりました。留学生ばかりの教室で英語を学ぶ日々。 寮では親切な台湾人に囲まれ、毎日学校が終わったら一緒に夕 飯を作り、おしゃべりをしたり DVD を見たりして心地よい生活を 送りました。ホームシックになる暇もなく語学コースは過ぎてい きました。そして、10 月。ここから、私の本当の留学が始まったと 言えます。語学コースの時と違って、周りはネイティブ。容赦なく 課されるエッセイや実験レポートに悪戦苦闘でした。お手上げ寸 前にいろいろな方に悩みを相談しました。ここで一番心に残っ ている言葉は日本人の研究者の方の「やり方は一つじゃない。 課題だったら、最後に完成していれば良いのだから。」というも のでした。英語で学ぶ事にこだわり、“生物学”の理解があいま いになっていた私にとってはっとさせられる言葉でした。目的 意識を強く持つと、自然とどうすべきかがはっきりしてくること に気づきました。やる事に優先順位がつくと時間管理もできる し、気持ちに余裕がでました。前期はこのようにして終わり、後 期ではもっと生物の授業についていけるようになりました。興 味のあったアートのクラスをとったことも面白かったです。好き なアーティストの作品からイメージし、自分なりの作品を創作し ていく授業は、コーヒー片手に和気あいあいとおしゃべりしな がら過ぎていく楽しいひと時でした。最後のプレゼンテーション では自分の考えを堂々と表現でき、一年間で私にも度胸がつい たと感じました。学期中は土日も課題や予習に時間を費やし、ク リスマスやイースターの休みには思いっきり遊びました。仲良く なったトルコ人やフランス人の友人宅に遊びに行きました。地元 人ならではの目線で案内してもらい、その土地に住んでいるよ うな気分になった素敵なステイでした。 この一年で、初めていろいろな血の混ざったいろいろな人種 の方と一緒に過ごし、違いを個性としてお互い認め合って生き ていく大切さを学びました。また、専門として学んだ生物学や 薬学に関しては、学部生でも必ず科学論文を読む事が必須だっ たり、大手製薬会社の方が授業に来て下さったりと、国際色溢 れる刺激的な学生生活を送ることができました。(これから、他 国のラボで研究したいと考えている理系の学生さんには、ぜひ 交換留学をおススメしたいです!)これからも「世界を舞台に働 く!」という夢をかなえるごとく、この留学経験を胸に邁進して いきたいと思います。今回、国際留学センターや教授、家族や友 人の励ましや支えがあって留学する事ができ、心から有難く思 っています。何か胸に秘めるものがあったなら、それを信じて突 っ走ってみて下さい!そして自分にしかできない留学方法で、 自分なりの留学体験をつかんできて下さい☆ 1.短期交換留学より帰国した学生による報告

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International Exchange Center, Nara Women’s University

Sep. 2009 Vol. 16

本学の短期交換留学制度を利用し、海外留学をした本学学生に体験報告を書いていただきました。交換留学に興味のある方は、国

際課留学生係までお問い合わせください。

理学部 生物科学科 4回生 石川珠美

留学先: レスター大学(英国) 2008 年 7月~2009 年 6月

1 年間の交換留学は刺激溢れる貴重な体験でした。留学はず

っと昔からの夢で、2 回生の時に 1 ヶ月の語学留学をした際に、

英語を学ぶ目的を自問するようになりました。はっきりした目的

のない1、2回生の時は交換留学というものがハードル高く見え、

勇気もなく挑戦できずにいました。しかし 3 回生になって、大学

院に進学するか就職するか真剣に考え出した時「私には、まだ

やっていない事がある」と目覚めました。専門である生物、さら

に医学や薬学を外国の教育で学んでみたいと思うようになり、

そこからは留学に対して全エネルギーが注ぎ込まれました。今

回は、理系で留学した少し珍しい私の体験記を、そこで感じた思

いを交えながら紹介させて下さい。

レスターというこれから 1 年間通う大学のある町はロンドンか

ら北へ電車で 1 時間。イギリスに着いた翌日からは大学へ行き、

それから 2 ヶ月間はひたすら英語の勉強というハードスケジュ

ールから始まりました。留学生ばかりの教室で英語を学ぶ日々。

寮では親切な台湾人に囲まれ、毎日学校が終わったら一緒に夕

飯を作り、おしゃべりをしたり DVD を見たりして心地よい生活を

送りました。ホームシックになる暇もなく語学コースは過ぎてい

きました。そして、10 月。ここから、私の本当の留学が始まったと

言えます。語学コースの時と違って、周りはネイティブ。容赦なく

課されるエッセイや実験レポートに悪戦苦闘でした。お手上げ寸

前にいろいろな方に悩みを相談しました。ここで一番心に残っ

ている言葉は日本人の研究者の方の「やり方は一つじゃない。

課題だったら、最後に完成していれば良いのだから。」というも

のでした。英語で学ぶ事にこだわり、“生物学”の理解があいま

いになっていた私にとってはっとさせられる言葉でした。目的

意識を強く持つと、自然とどうすべきかがはっきりしてくること

に気づきました。やる事に優先順位がつくと時間管理もできる

し、気持ちに余裕がでました。前期はこのようにして終わり、後

期ではもっと生物の授業についていけるようになりました。興

味のあったアートのクラスをとったことも面白かったです。好き

なアーティストの作品からイメージし、自分なりの作品を創作し

ていく授業は、コーヒー片手に和気あいあいとおしゃべりしな

がら過ぎていく楽しいひと時でした。最後のプレゼンテーション

では自分の考えを堂々と表現でき、一年間で私にも度胸がつい

たと感じました。学期中は土日も課題や予習に時間を費やし、ク

リスマスやイースターの休みには思いっきり遊びました。仲良く

なったトルコ人やフランス人の友人宅に遊びに行きました。地元

人ならではの目線で案内してもらい、その土地に住んでいるよ

うな気分になった素敵なステイでした。

この一年で、初めていろいろな血の混ざったいろいろな人種

の方と一緒に過ごし、違いを個性としてお互い認め合って生き

ていく大切さを学びました。また、専門として学んだ生物学や

薬学に関しては、学部生でも必ず科学論文を読む事が必須だっ

たり、大手製薬会社の方が授業に来て下さったりと、国際色溢

れる刺激的な学生生活を送ることができました。(これから、他

国のラボで研究したいと考えている理系の学生さんには、ぜひ

交換留学をおススメしたいです!)これからも「世界を舞台に働

く!」という夢をかなえるごとく、この留学経験を胸に邁進して

いきたいと思います。今回、国際留学センターや教授、家族や友

人の励ましや支えがあって留学する事ができ、心から有難く思

っています。何か胸に秘めるものがあったなら、それを信じて突

っ走ってみて下さい!そして自分にしかできない留学方法で、

自分なりの留学体験をつかんできて下さい☆

1.短期交換留学より帰国した学生による報告

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人間文化研究科 博士後期課程 社会生活環境学専攻 3回生 野村理恵

留学先: 内蒙古大学・蒙古学学院(中国) 2008年 9月~2009年 7月

授業のない午後は大学近くのパン屋の二階でコーヒーを飲

みながら、窓から見える交差点を眺める。一日数百台の勢いで

増える自家用車の渋滞と、ジャージ姿で下校する中学生の群れ、

ロバが引く台車で果物を売るおじさん。内蒙古大学は、中国・内

モンゴル自治区のフフホト市にある。フフホトとはモンゴル語で

「青い都市」という意味で、その名のとおりいつも澄み切った青

空が晴れ渡っている。奈良よりもずっと都会で、人口は 250 万

人を超える。約 80%は漢族なので、一見して他の中国の都市と

異なるところと言えば、モンゴル語表記のある看板くらいかもし

れない。

両大学の交流協定締結から約半年での派遣となったこと、ビ

ザ申請等の手続きに手間取ったこと、日本で国際交流行事に参

加したことなどから、実際に落ち着いて留学生活をスタートでき

たのは、通常よりも2か月ほど遅れた11月からだった。急いで環

境を整えるため、最初の 2 週間程は積極的に動き回った。留学

生寮にたくさんいるモンゴル国からの留学生と話をしてみたり、

外国語学院日本語学科の学生が主催するレクリエーションに参

加してみたり、日本人講師の方に授業見学を申し込んだり。その

結果、私が自炊した夕飯を食べに来てくれる仲間と毎日楽しく

食卓を囲むことができるまでになった。春節には仲良くなった

現地学生の実家へ招待して頂くなど、貴重な体験をした。

研究の方面では、蒙古学学院の全面的なバックアップを頂き、

フィールドワークに必要なモンゴル語のマンツーマン授業を受講

した。前期は語学、資料収集に重きを置き、後期は草原での現地

調査を三度実施した。現地調査も最後には通訳なしで行えるよ

うになり、また調査地の方々との関係性や理解も深まったよう

に思う。フフホトでの公用語は漢語で、漢語学習にも当初の予定

以上に力を入れた。国際教育学院の授業を受講し、3ヶ月ほど経

った頃にはヒアリング・会話能力の向上が実感できた。

留学生活も終盤に近づいてきた頃、日本語学科の講師の方や

学生たちとフリーペーパーをつくろうという話が持ち上がった。

内モンゴルでの研究を始めてから 3 年、これまでの出会いやフ

フホト生活を一つの足跡として残したい。そんな想いから

「hohhot」という雑誌をつくった。初めての取材、初めての編集

作業、印刷会社との交渉・・・消耗もしたし、寝る時間も削った。そ

れでも楽しくて充実した期間であった。

私は短い留学生活において、研究、モンゴル語、漢語という三

本柱の他にも、フリーペーパーの作成など何足のわらじを履い

たか分からないが、決してすべてを満遍なくこなした訳ではな

い。限られた時間のなかで、また予想外の環境に遭遇したとし

ても、今できることは何か、今しかできないことは何か、その都

度重点を置くべきことを選んで実行に移すスピード感と判断力。

一方で、日本では忘れがちだった、ゆったりとした時間の流れと

規則正しい普通の生活。いつでも温かく迎えてくれる人がいる、

第二の故郷。これが、留学生活で得た大きな財産である。

最後になりましたが、今回の留学に際して、内蒙古大学との

交流協定締結に至る道筋となった共同研究(科学研究費補助金、

代表:今井範子教授)に参加させて頂いたこと、交流協定を積極

的に進めて頂いた中山先生と蒙古学学院長バヤモンド先生、国

際課を始め留学生活を支えて頂いたすべての皆様に感謝申し

上げます。

文学部 言語文化学科 4回生 本多彩乃

留学先: トリアー大学(ドイツ) 2008 年 9月~2009 年 7月

私は 2008 年 9 月から 2009 年 7 月までドイツのトリアー大学に交換留学生とし

て通わせていただきました。

大学での講義を通してドイツ語・ドイツ文化に興味を持った私は、2 回生の夏、短

期語学研修でドイツを訪れました。その経験から更にドイツに興味がわき、いつか

再び行きたいなと漠然と思っていた時に舞い込んできたのが、交換留学の話でし

た。

留学が決まってから渡航するまでの間は、ドイツ語力向上のため努力したり、興

味のあるドイツの祭事について調べたりしました。さらに、トリアー大学からの交換留学生と知り合うことができたので、留学先の大学

の寮や学食、大学周辺の様子などについても事前に詳しく彼女から教えてもらうことができました。それ故、留学直前には不安よりも

期待の方が大きかったような気がします。

留学先での授業は、ドイツ語の授業を週 6 時間必須で取らなければなりませんでしたが、それ以外は自分の興味のあるものを好き

に選ぶことができました。私は前期では語学力に自信がなく講義しか受けていませんでしたが、後期では2つの演習を取りました。そ

調査中に偶然、地域の方の61歳を祝う

盛大な祭りに参加させて頂いた

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の内の一つは、他のドイツ人の学生の前で発表もしなければなりませんでしたが、先生や他の学生の助けを借りて、何とかやり終える

事ができ、準備は大変でしたが、その分とても大きな達成感を得ることができました。

授業のほかには、ドイツ人だけではなく様々な国からの留学生と、お互いの国のことを話したり、郷土料理を作りあったりしました。

また日本語を学ぶ学生とは、私が日本語を教え、彼らからドイツ語を教えてもらうということもしていました。学校のない時でも、本

当に忙しくも楽しく充実した時間を過すことができました。

しかし、留学先ではもちろん思い通りにならない事も多々ありました。授業に関してはやはり語学力が十分でなく、理解に苦しむ事

が頻繁にありました。また、健康面でも風邪をひいたり、歯を悪くしたりと、薬・病院にお世話にもなりました。しかし、その度に助けてく

れたのが友達でした。特に、家族のいない遠い国で体調を崩したときは、やはり不安だったので、友達の看病などはとても心強かった

です。

正直、非常に悩んで決めた留学でしたが、今ではこの決断をして本当に良かったと心から思っています。この機会を与えてくださっ

た先生方、大学職員の皆様には本当に感謝しています。ありがとうございました。

国際交流センターは、大学院生の国際的な研究活動の促進を図るため、海外で開催される国際学会等で発表する際に必要となる

渡航費を支給する支援事業を行っています。この支援事業に応募し、中国の昆明市で開催された学会でポスター発表をされた野村

さんに報告を書いていただきました。

「昆明国際会議参加報告」 人間文化研究科 博士後期課程 社会生活環境学専攻 3回生 野村理恵

2009 年 7 月、中国雲南省昆明市で開催された、International

Congress of Anthropological and Ethnological Sciences(国際

人類学民族学会議)に参加した。この国際会議は5年に1度開催

されるもので、世界各国からの参加者が集まり、今回は165のセ

ッション(分科会)が設けられた。非常に規模の大きな国際会議

で、会場となった昆明市では、交通・ホテル・文化施設等あらゆ

る面で、市を挙げた協力が見受けられた。

今回、初めて参加する会議であった為、ポスター発表での参

加を申請した。使用言語は英語で、モンゴル族の居住形態の変

化に関する調査についての発表を写真や図面等を用いて目を

引くように工夫した。発表時には、内蒙古師範大学から参加して

いた方や、日本からの参加者、中国精華大学を経て北京で世界

遺産保護等に関わっているフランス人の方等から質問を受け、

英語・中国語を交えた議論ができた。また、その方の紹介で、併

設されていた中国民族建築研究会の学術発表会にも参加した。

中国各地の民族建築や民居の現状、保護への取り組みなどが

紹介されていた。そこでは、中国にどれだけ重要な民族建築が

存在しているか、またその保存・保護活動には行政の積極的な

取り組みが不可欠で、世界遺産級の建築物や集落も簡単に保

護指定を受けることができないという現状を知った。また、遊

牧社会の変容に関するセッションにも参加したが、ここでは、内

モンゴル自治区・新疆ウイグル自治区・チベット自治区・モンゴル

国・その他中央アジアの地域研究の事例を元に議論が展開され

ていた。現在、私は内モンゴル自治区での調査を実施している

が、今後は行政単位に縛られることなく、広い視野を持つこと

の必要性を実感した。

映像を用いたセッションもあり、各国のドキュメンタリー作品を

始めとする人類学・民族学に関する作品が発表された。言葉の

壁が少なからずある国際会議において、視覚的な効果は絶大

であり、理解も深まった。

エクスカーションでは、野外博物館となっている民族村、民族

博物館、麗江の文化遺産を訪問した。民族学博物館は展示内容・

方法・民族関連書籍も充実しており、もう少し時間をかけてまわ

りたいと思うほどであったが、民族村はテーマパーク化してお

り、建築物の復元もスケールが大きく異なっていること等が気

になった。更に、麗江の文化遺産も都市中心部はほぼ全ての建

物が商店であるという異様なまでの賑わいをみせる観光地に

なっていた。現地少数民族であるドライバーの方に伺うと、1990

年代の地震復興の際、建物は復元されたが、現地住民は大方が

郊外へ移動し、中心部には外部から来た人たちが住むようにな

ったとのこと。多くの少数民族との共存をうたう雲南省で会議

が開催されたことにより、近代化、観光産業化などと民族の独

自性をどのように保つのかといった、自分の研究にも繋がるテ

ーマについて考え直すよい機会となった。

また、この会議では英語を中心としながらも、中国語、その他

セッションごとに共通言語を指定できるシステムで、私が参加し

たセッションでは主に中国語、またモンゴル語での発表と議論が

2.学生の国際学会での発表

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活発に行われていた。会議参加の直前まで、本学との交流協定

締結校である内蒙古大学蒙古学学院へ留学し、モンゴル語、中

国語の学習を行っていたことは、今回の会議が大変有意義にな

った一つの大きな要因であった。各セッションの議論について理

解が深まり、また学会会場で知り合った四川芸術大学の研究者

の方々とも個人的に研究会を持つことができた。今後も言語と

いうツールをしっかりメンテナンスして、次回は口頭発表をした

いというモチベーションが高まった。

今回の国際会議参加に際して、ご支援いただいた国際交流

センターには厚く御礼申し上げます。

奈良女子大学は、本学教員を一定期間相手大学へ派遣し教育研究活動を行うという内容の覚書を平成18年3月に蘇州大学、南京

大学と交換しました。この覚書に基づき、平成18年度より毎年本学の教員を蘇州大学、南京大学へとそれぞれ派遣し、学生や若手教

員を対象に講義を行なう事業を実施しています。

「南京大学」 2009年度の南京大学での集中授業は、奈良女子大学、京都大学、武庫川女子

大学、東京大学の6名の教員が、オムニバス形式により次の点を主眼として実施し

ました。

奈良時代以前を対象として、

・ その時代の言語と文学について全体的に展望する。

・ 東アジア世界のなかで漢字によって読み書きすることが成り立たせた文学

世界としてみる。

・ 作品にふれることを主眼として講義する。

構成は、以下のとおりです。

内田賢徳「上代特殊仮名遣」と「空間語彙」、毛利正守「日本書紀における漢籍利用」、松尾良樹「唐代口語と上代日本文学」、坂本

信幸「万葉集―奈良朝の歌人」、斉藤希史「六朝詩文と上代日本文学」、徳盛誠「東歌・防人歌」。

本集中授業は、南京大学の修士課程専門科目として行われたものであり、毎回30名程の院生が出席しました。また、奈良女子大学

の院生3名も同行し、修士論文執筆の経験談などを披露しました。南大生からはたくさんの質問が出され、勉学面での有意義な交流

機会となりました。

「蘇州大学」 (文責: 文学部言語文化学科准教授 鈴木広光) 平成 21 年 9 月 14 日(月)から 23 日(水)の十日間、本学の教員派遣事業の一環として、蘇州大学を訪問し、講義と研究交流を行っ

た。講義は、16日(水)、17日(木)、21日(月)の午前9時40分から 12時(40分授業で、途中 10分ずつの休憩をはさむ)に、日本語学科

の主に修士 2 年の院生に対して、日本語の清濁のしくみとその歴史、またそれに付随するオノマトペの特徴などを話題に取り上げ講

義した。既に日本語教育の現場に立つ院生が多いので、教育の場で役に立ちそうな話題を取り上げるように意を払った。研究交流会

は、18日(金)と 22日(金)の午後2時~5時に開催され、大学院生と日本語学科の教員数名が参加。二回とも鈴木が最新の研究成果

をわかりやすく報告・解説し、それについて皆で討論するという形式が取られた。活発な意見交換が行われ、有意義な研究交流がで

きた。上記以外の時間では、食事や蘇州の世界遺産見学等の機会に数人の大学院生に案内してもらい、その間の話のなかで中国の

大学院生の暮らしや考えていることなどを知ることができたことも有意義であった。

9月4日、中国の国家重点大学(中国政府が、教育・研究の両面において特に優れ

た大学と定めている38大学)の一つである大連理工大学化工学院(School of

Chemical Engineering )、同大学精細化学国家重点研究拠点(State Key Laboratory

of Fine Chemicals)と、奈良女子大学大学院人間文化研究科及び生活環境学部の教

員による共同シンポジウムを大連理工大学にて開催しました。

本学からは、岩渕修一教授、飯田雅康教授(以上、大学院人間文化研究科)、原田

雅史准教授(生活環境学部)が、大連理工大学からは Jingli YUAN 教授、Jingyang

JIANG教授、Jieshan QIU 教授が研究発表を行いました(発表テーマは下記参照)。

3.南京大学、蘇州大学への教員派遣事業

4.奈良女子大学と大連理工大学が共同シンポジウムを開催

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5.センター及び国際課の活動(2009年7月~9月)

シンポジウムには、曲景平化工学院長始め、教員、研究者、院生が参集し、9時から16時まで発表と質疑応答を行い、今後の共同研

究の可能性も伺える大変有意義なシンポジウムとなりました。また、岩渕研究科長等は、理工大学国際合作與交流處陳副處長を訪問

し、両大学の国際交流事業の今後の展開についても協議しました。

化工学院には、奈良女子大学で学位を取得された賓月珍さんが、教授として現在勤務されております。また、4月からは、松生勝本

学名誉教授が、客員教授として、院生の研究指導にあたっておられます。今回のシンポジウム実施に当たり、両先生から、多大なるご

支援を賜りました。

発表タイトル:

Prof. Masayasu IIDA: “Formation and Properties of Silver(I) and Protic Ionic Liquids Composed of Alkylethylenediamines.” Prof. Jingli YUAN: “Functional Luminescent Lanthanide Complexes, Nanoparticles and Their Application to Bioassay.” Prof. Masafumi HARADA: “Photoreduction Synthesis of Metal Nanoparticles: Synthesis and Structural Characterization.” Prof. Jingyang JIANG: “Thermoregulated Ionic Liquids Biphasic System for Complex Catalysis.” Prof. Shuichi IWABUCHI: “Theory of Coulomb Blockade and Current-Voltage Characteristics in Mesoscopic Carbon Nanotube

Tunnel Junctions.” Prof. Jieshan QIU: “Synthesis of Functional Nano- and Micro-sized Carbon Materials and Their Applications.”

Break Time

留学生が書いた随筆です。

私が日本に来てから、もうすぐ二年が過ぎます。この長い二年間で、嬉しいことがあったり、悩んだことがあったり、本当に充実した

生活でした。

今年の四月から、奈良女子大学の大学院で勉強することになりました。それで、大阪から奈良に引っ越ししました。奈良は大阪とず

いぶん違います。大阪はとても賑やかで、生活のペースも速い。一方、奈良はのんびりして、静かな町です。最初は、ちょっとだけ慣れ

ない感じでしたが、どんどん奈良が好きになりました。

奈良の歴史は深く、日本の仏教文化もここから始まるそうです。今の奈良でも、お寺がたくさんあって、象徴的意義もあります。東

大寺はその中の代表であって、「奈良の大仏さん」で世界に知られ、若草山の麓の広いところを占めています。東大寺の見学活動に

一度参加したことがあり、その時、東大寺だけではなく、この町の歴史を強く感じました。この奈良に来て、本当によかったと思ってい

ます。

私が今所属している研究室の皆さんが、よく筑波、Spring-8 などの研究機構に行き、そこで実験を行います。そのおかけで、日本の

いろいろな風景も少しずつ見えるようになり、とてもありがたいと思います。高速道路の両側に、自然の風景たっぷりの田舎もあるし、

立派な都市もあります。美しくて静かな海も見えるし、みどりの山もいっぱい目に入り込みます。でも、一番驚いたものは富士山でし

た。以前、私はもう何回も富士山の写真を見たことがあったのに、本物の富士山が目に入った瞬間、天地万物がすべて止まったぐらい

の美しさと神秘を感じて、ことばでは言えないほど、清々しい気持ちになりました。もしチャンスがあれば、ぜひ一度富士山を登ってみ

たいと思います。

これは私から見た日本です。しかし、留学生として、外国の歴史、自然の風景などだけではなく、外国の生活、学業と社会に慣れる

こともすごく大変なことで、心身ともに疲れる時もあります。でも、それは梅雨のように、じめじめして嫌な感じだけれどもその中身

は一番大切な水なのではないかと思います。今の私はきっとそのような大切な物を持っていると思っています。

人間文化研究科 博士前期課程 生活健康・衣環境学専攻 1回生 ソウソウ (中国出身)

国際交流センター及び国際課では、様々な事業を企画・実施しています。その一部をここで紹介します。

◆ 国際交流センター及び国際課主催事業一覧

2009年7月1日「第9回茶道教室」

2009年7月3日「2009年夏期南京大学中国語短期研修第2回渡航説明会」

2009年7月18日・19日「日本留学フェア台湾」

2009年7月27日・9月8日「台湾国立清華大学教職員来訪」

2009年8月10日「2009年夏期南京大学中国語短期研修最終渡航説明会」

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2009年8月11日「学生交流体験旅行(留学生と日本人学生の交流会)」

2009年8月25日~9月18日「2009年夏期南京大学中国語短期研修」

2009年9月12日~14日「日本留学フェア韓国、梨花女子大学訪問」

2009年9月16日・17日「外国人留学生実地見学旅行」

2009年9月24日「派遣学生の帰国報告会(学長との懇談会)」

▼「第9回茶道教室」

7 月 1 日、第 9 回目の留学生のための「茶道教室」を行い、3 名の留学生が参加

しました。講師は、いつも指導していただいている茶道裏千家の中城朗子(宗朗)

先生と、今回初めて講師をお願いした同じく茶道裏千家の南本由香里先生です。

今回は全員初めて茶道を経験する留学生ばかりだったので、まずは先生のお

手前を見せていただき、お茶会の基本的な流れを知ることが主題でした。見た目

も美しい季節に合わせた和菓子と、美味しいお抹茶をいただきながら、先生方か

ら色々と為になるお話を聞くこともができ、参加者も茶道の世界に非常に興味を

持ったようでした。

▼「2009年夏期南京大学中国語短期研修第2回渡航説明会」

7月4日、第3回目の南京大学中国語研修に関する説明会を行ないました。近畿日本ツーリストの方に、海外傷害保険や研修

費用、航空運賃の振込みに関する説明等をしていただきました。

▼「日本留学フェア(台湾7/18・19、韓国9/12・13)」「梨花女子大学訪問」

海外から優秀な留学生を獲得することを目的に、今年も台湾及び韓国へ、留学フェアに出かけました。どの会場も、元留学生

が応援に来てくれ、本学を熱心にアピールしてくれました。

留学フェア韓国(ソウル)終了の翌日、佐久間副学長が、本学100周年記念でお越しいただいた Ahn Hong-Sik副学長への

謝辞を述べることを目的に梨花女子大学を訪問しました。始めに Zi Hongmin国際交流センター長から大学概要説明、キャンパ

スツアーの後、懇談会(昼食会)が行われ、和やかな雰囲気の中、両大学の交流を深めることが出来ました。

各会場でのブース来訪者は、次のとおりです。

台湾 高雄 37名 韓国 釜山 80名

台北 71名 ソウル 150名

▼「台湾国立清華大学教職員来訪(7/27・9/8)」

2007年8月に交流協定を締結した台湾国立清華大学から、今夏二度にわたり職員研修のため総勢38名が来訪されました。

両日とも約2時間半の滞在でしたが、佐久間副学長の歓迎の挨拶、野村文学部教授の大学紹介、学長表敬訪問の後、グループに

分かれ事前に送付された質問事項についての質疑応答に本学教職員が対応しました。いずれの質問も大学の管理運営の根幹に関

わる内容を含み、充実した意見交換が出来ました。

▼「2009年夏期南京大学中国語短期研修最終渡航説明会」

8月 10日、南京大学中国語研修の最終渡航説明会を行ないました。近畿日本ツーリストの方に、出発当日の空港での留意点

や現地で注意することなどの話をしていただいた他、センターより新型インフルエンザに関する留意点などをお話しました。

▼「学生交流体験旅行(留学生と日本人学生の交流会)」

昨年に引き続き日本人学生と留学生の交流を図るため、8月11日、泉州岡田浦

で地引網とバーベキューを体験しました。今年は、佐久間副学長と小山国際交流

センター長が学生の先頭に立って力一杯網を引き、たくさんの魚が獲れました。

水槽の魚と触れ合う学生の姿は、子ども時代に返ったような初々しさで、海鮮バ

ーベキューとおしゃべりで、真夏の一日を楽しく過ごせました。ビンゴゲームで

勝利した参加者には、お土産に獲れた魚(タイやひらめやすずきの大盤振る舞い)

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6.センター図書情報

を持ち帰ることも出来ました。参加者のレポートから、頑張って調理しておいしくいただいた模様です。

今後は、参加学生からの意見を取り入れて、さらに交流を深められるイベントを検討してく予定です。

▼「2009年夏期南京大学中国語短期研修」

国際交流センターは、標記研修を、8月25日から9月18日の間、南京大学

海外教育学院にて6名の学生が参加し実施しました。

今年は募集時期が新型インフルエンザの国内発症時期と重なったこともあ

り、応募者は6名にとどまりました。

研修は、聞き取りと話すことの訓練を中心とする 8時から 12時(月~金)

までの授業受講、南京民族博物館、大虐殺博物館、博物院、中山陵などの見学、

太極拳や紙切の実習、南京大学日本語学科学生との4回もの交流等々、盛りだ

くさんの内容で提供することができました。

国際交流センタースタッフは、南京から帰国した学生が、明るく且つ自信に

満ちた様相で、帰国の挨拶に来てくれるのを楽しみにし、毎年、夏、この研修を実施しています。

▼「外国人留学生実地見学旅行」

9月16日~17日、日本の歴史・文化・自然等について理解を深め留学生相互の親睦を図ることを目的として、今年度は和歌

山方面への見学旅行を実施しました。一日目は伝統の蒔絵をお盆に描く体験をし、それぞれオリジナルのお盆を持ち帰りました。

宿泊は勝浦温泉で、日本食を堪能し、温泉好きの学生は朝昼合わせて3度も

お風呂に通っているようでした。二日目は、自然を満喫するメニューで和歌

山の山と海を見学しました。まず、那智の滝を真下から眺め、神聖な雰囲気

を味わい、次にくじら浜公園で、捕鯨の歴史を学ぶとともに、シャチやクジ

ラのショーを見学しました。すぐ近くでゴンドウクジラと接することができ、

貴重な体験でした。最後に串本海中公園を訪ね、海中観光船でサンゴ礁の海

と魚を自然のままの姿で観察することができました。帰路では、和歌山名産

の梅干しを試食し、美味しいとお土産にする留学生もたくさんいました。

この二日間は、伝統を守り、また自然を大切にし共生する日本の文化を学

ぶとてもよい機会でした。

▼「派遣学生の帰国報告会(学長との懇談会)」

学生交流協定に基づき留学していた学生が帰国したのを機に、野口学長と小山国際交

流センター長を囲んで懇談会形式の報告会を実施しました。

パリ第7大学から文学部の畑山いつ子さん、グラーツ大学から文学部の福田夏奈子さ

ん、トリアー大学から文学部の東郷直子さんと本田彩乃さん、レスター大学から理学部

の石川珠美さんの5名が参加し、各々の体験を報告してくれました。野口学長から、留

学先での異文化体験について意見を交えながらいろいろな質問があり、それぞれの国の

生活習慣や国民性をうかがわせるエピソードなどを披露してくれました。お茶をいただ

きながらさっくばらんな楽しい懇談会となり、予定時間を過ぎても席を立つことなく、

話題が尽きない参加者たちは、時間の許す限り、お互いの情報を交換し合いながらの有

意義な報告会になりました。

国際交流センターでは、奈良女子大学で学ぶ留学生・日本人学生・ボランティア活動に興味をお持ちの皆さん等に図書の貸し

出しを行っています。ぜひご利用ください。今回新しく入手した図書は以下の通りです。

センターにはこんな本があります 【語学教材】 新しい日本語学入門:ことばのしくみを考える / 初級を教える人のための日本語文法ハンドブック / 中上級を教える人のための日本語

文法ハンドブック / 日本語の教え方ABC:「どうやって教える?」にお答えします / 日本語教授法入門(新・はじめての日本語教育;2)

/ 基本用語事典(新・はじめての日本語教育) / 日本語教育の基礎知識(新・はじめての日本語教育;1) /

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7.お茶の水女子大学主催国際シンポジウムで本学学生が発表

7月に、国連大学ウ・タント国際会議場でお茶の水女子大学グローバル協力センター主催の国際シンポジウム「お母さんと子どもの

ために~私たちができること~」が開催されました。開発途上国の妊娠や出産、健康、教育等の現状を知り、日本の私たちにできるこ

とを考える、というテーマのシンポジウムで、秋篠宮妃殿下も臨席されました。主催の方から「発展途上国の女性や子どもに関わる活

動をしている学生を紹介して欲しい」という依頼を受け、国際交流センターは、ネパールの子どもたちに手作り仕掛け絵本を届ける活

動をしている理学部3回生の佐藤さんを紹介しました。佐藤さんは登壇者のひとりとして、自身のこれまでの活動や想いを発表しまし

た。佐藤さんより報告を書いていただいたので、以下に掲載します。

「国際シンポジウム『お母さんと子どものために~私たちができること~』に参加して」

理学部 物理科学科 3回生 佐藤恵依子

2009年7月4日に国連大学ビルのウ・タントホールで、国際シンポジウム「お母さんと子どものために~私たちができること~」が開

かれました。私は、小山先生にお声をかけていただき、そこに、パネリストとして、参加させていただくことができました。

シンポジウムでは、まず、秋篠宮妃殿下からお言葉をいただきました。秋篠宮妃殿下は、以前、「青年の船」に参加されたご経験も

あり、世界の人々の現状を踏まえ、私たちが世界各国の女性と子どもに関

する課題について考え、話し合い、そして行動を起こすことの必要性をお

話してくださいました。

次に、第1部は「世界の現場を知る」、第2部では「日本の現場:私たちがで

きること」というテーマで、モデレーターの進行のもと、パネリストたちが話

しました。第1部では、専門家が、それぞれの立場から、写真やデータを用い

て語るのに対し、第2部では、学生中心に、今、自分たちが考えていること

や行動していることをスピーチしました。私は、その第2部のパネリストとし

て、お茶の水女子大学、津田塾大学の学生と、東京女子大学の卒業生と共

に登壇しました。

そして、

『私は、大学2年の5月と3月に2回、ネパールを訪問しています。目的は、ネパールの識字率向上のために作った「絵本」を届ける

ことでした。「絵本」といっても、ただの絵本ではなく、ネパール語で書き、文字の読めない子どもでも楽しめるように工夫を凝らして

作ったポップアップ(仕掛け)絵本です。

ここで、「なぜ、絵本なの?」って思いませんか?

発展途上国では、「お金がない→生活するためにひたすら稼ぐ→学校に行けない→教育が受けられない→よい職業に就けない→

お金がない」の負のスパイラルが存在すると考えています。この負のスパイラルをプラスのスパイラルに変える、その第一歩を目標

に、自分に何ができるか考えました。すると、私は絵を描くのが好きだと思い浮かびました。そして、子どもの頃、お母さんに読んでも

【一般図書】 日台関係史:1945-2008 / 中国に生きた外国人:不思議ホテル北京友誼賓館 / ぼくが歩いた東南アジア:島と海と森と /

1Q84(ichi-kew-hachi-yon):a novel book1-2 / 日本人の知らない日本語:なるほど~×爆笑!の日本語“再発見”コミックエッ

セイ / アフリカの人間開発:実践と文化人類学 / アフリカのいまを知ろう / アフリカ:苦悩する大陸 / 国際的潮流と日本の

援助(途上国における基礎教育支援;上) / 国際的なアプローチと実践(途上国における基礎教育支援;下) / 国際緊急人道支

援 / 貧困の終焉:2025年までに世界を変える / 最底辺の10億人:最も貧しい国々のために本当になすべきことは何か? / 留

学生アドバイザーという仕事:国際教育交流のプロフェッショナルとして / アフリカと政治:紛争と貧困とジェンダー:わたした

ちがアフリカを学ぶ理由 / なぜ貧困はなくならないのか:開発経済学入門 / 留学生アドバイジング:学習・生活・心理をいかに

支援するか / 留学生受け入れの手引き / 国際教育協力論 /

【漫画】 殺手1-2 / この世界の片隅に 上・中・下 / エマ9-10 / パティスリーMon 9-10 / 犬夜叉55-56 / One piece=ワンピース52-54

/ 鋼の錬金術師21-22 / Nana=ナナ21 / 銀魂(ぎんたま)1-28 /

【雑誌】 岩波ブックレットNo.761-764 /

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らった絵本が、文字を覚えることにつながったという経験から、ネパールにも絵本があれば識字率も上がるだろうと思い、絵本をネ

パールに届ける活動をしています。

このように自分の興味のあることから視野を広げて、自分のできる支援を

見つけて活動していけばいいと考えています。』

このようにお話をさせていただきました。

言い換えると、「自分の好きなことから、世界各国の課題解決のためにでき

ることを探して、行動に移してほしい」という思いを込めて、380人を超える

参加者の前で話しました。

人が多く、緊張もしましたが、自分の考えを自分なりに、自分の言葉で伝え

られて、うれしかったです。また、他の大学の学生のスピーチも刺激的でした。

特に、インドのムンバイで出会ったセックスワーカーから受けたという言葉、

「私たちがつらい思いをして、セックスワーカーとして働いているから、あな

たたちは高い教育を受け、平和に暮らせているのよ。」から、彼女たちの大変

さや現実が伝わり、私たちが解決のために行動を起こさなくてはと痛切に感じました。さらに、青年の船に乗り、見てきた世界から、今、

取り組んでいる数々の活動を聞き、同じ学生なのに、自分との行動の差に驚きや焦りを隠せずにはいられませんでした。

今回のシンポジウムでは、世界各国の情報や他大学の学生からの刺激を受け、とても充実した時間であったとともに、色々なこと

に挑戦し、たくさんの経験を持つことやその経験を伝えることの大切さを学びました。これから、自分の経験値を積み、それだけでは

なく、伝えることが大切だということを忘れずに、残された大学生活を密なものにしていきたいです。

国際交流センターは、今年も(財)日航財団の依頼を受け、JAL スカラシッププログラム/アジアフォーラムへの参加者 2 名を募り、

面接により永井さんと川北さんを選抜しました。本学の学生は過去2年は石川県金沢市で行われたプログラムに参加してきましたが、

今年は6月30日~7月3日の4日間、東京で開催されたプログラムへの参加となりました。参加レポートを永井さんと川北さんに書い

ていただきました。

「JAL スカラシッププログラムを経験して」

文学部 人間行動科学科 教育文化情報学専攻 3回生 永井茜

私は今回このJALスカラシッププログラムに参加させていただいて、たった

4 日間という短い間でしたが非常に密度の濃い、貴重な時間を過ごせたと確信

しています。初日は皆結構緊張していましたが2日目には打ち解け合って、東京

観光ということで、グループに別れて各々浅草やお台場などに行きました。私

の班は秋葉原に行って、激安をうたう有名な量販店に行ったり、ラーメンを食べ

たりと現代の日本文化を皆で満喫しました。夜はメンバー25 名くらいで新宿に行きましたが、様々な国籍の若者たちがその雑踏の中

を縫うようにぞろぞろと集団で歩いている、そしてその中に自分も含まれているということが、なんとも不思議で面白い体験に感じ

ました。3日目は一日中集中講義のような感じで各業界の専門家の先生方が講義を開いてくださいました。

また、最終日に行ったグループディスカッションにおいてメンバーで意見を出し合い国際協力について熱く議論したことが何よりも

印象的でした。メンバーたちは国の代表のような感じで、まるで各国の代表としてアジア・オセアニア、世界の未来を考えているよう

な、そんな大きな熱意が感じられました。そこでもうひとつ感じたことは、日本人である私一人が何かを考えて発言したことがインド

ネシアや、フィリピンのメンバーも聞いている―つまり、インドネシアやフィリピンにも「私」の意見が伝わったと考えられるのではない

か、これは世界での知識の共有ではないか―と思い、あのディスカッションにおいて皆で発表したことが世界のどこかに影響を及ぼ

すような、世界を動かすような考えに発展するかもしれないという可能性を秘めているような気がして、なんともグローバルな世界

に私は居合わせることができたのだなと感慨深い気持ちになりました。

今年のプログラムのテーマは「国際協力」ということでした。私は外国の方と交流をもったことはありましたが、実際にメンバーと共

同生活を送ると、日本文化に対する誤解や特異な部分などがくっきりと浮き上がってきました。例えば、日本人は毎日寿司ロールを食

べたりおにぎりを食べたりしているのかという質問に驚かされました。また、彼らは裸でお風呂に入るという習慣がないので、銭湯形

式の浴室に大きな抵抗を示していました。

私がこのプログラムを通して国際協力について思ったのは、まず異文化を知り、理解することが肝心だということです。私が助け

8.JAL スカラシッププログラム/アジアフォーラムに参加

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だと思ってやったことが相手文化では迷惑かも知れないのです。仲良くなるにはまずは相手をよく知り、そのバックグラウンドを受け

入れることが国際協力の第一歩かもしれないと感じました。今回アジアの様々な国から同年代のメンバーたちと出会えたことはとて

も刺激的な出来事でした。アジアという同じグループに居ながらも、それぞれの宗教、食文化、価値観などはやはり国々によって様々

であり、私は改めてアジアの中の日本の文化、日本人としての役割を再認識させられました。

講義の中で出てきた“Try to find out something”という言葉が今回私には非常に心に残りました。常に探求心を持って、アジアの

ため、世界のためと何かできることはないかと積極的な姿勢で挑み続けることが何よりも大切だと実感しました。4 日間はあっとい

う間でしたがそこで得た仲間たち、知識、経験はこれからの私の人生に大きな役割を果たしてくれることは間違いないでしょう。本当

に貴重な経験を与えてくださり、ありがとうございました。

「JAL Scholarship Program について」 文学部 言語文化学科 ヨーロッパ・アメリカ言語文化学専攻 4回生 川北奈都美

私は 6月 30日~7月3日の3泊4日で、東京で行われたJAL 主催のプログラ

ムに参加した。どんな 4 日間になるのだろうと期待に胸を膨らませながら参加し

た今回のプログラム。結果を先に言ってしまうと、自分が想像していた以上に実り

の多い充実した日々を送ることが出来た。

このプログラムには日本人を除いてアジア・太平洋 12 カ国 26 名の学生たちが

参加しており、共に国際問題について、それぞれの分野でトップを走る日本人講師

を招いて講義を受け、それについてともに考えるというものであった。各国多数の応募者の中から選び抜かれた 26 名のスカラーの

専門分野は多種多様で、国際関係のことをやっている人もいれば理工学的な勉強をしている人もいた。ただ共通しているのが「世

界」という視点を持ち、それについての関心があり、意見を持っているということであった。講義の後で必ず設けられるディスカッショ

ンを通じて、様々な分野で私の知らなかったことを熱弁している姿を見るのはとても刺激的で、彼らの向上心の高さ、学ぶことへの

貪欲さ、溢れる好奇心には私も負けてられないなと思った。その分野の最先端をいっている方々の話を聞けたことはもちろんのこと、

その話に対して、バックグラウンドは異なるが自分と同じ年頃のスカラー達の考え方を知るのが非常に興味深かった。そして自分も普

段はあまり考えなかったようなことに脳のエネルギーを使い、受身になりがちな日々の大学の授業とは異なり、本質的な「学びの面

白み」を感じることができた。

また机を並べて共に知識を共有し考えるというだけではなく、4 日間ずっと一緒に生活をしていたので、衣食住に関する国々の違

いを知ることができたのも面白かった。私がその中で最も驚いたのは、同じアジアの国であれども「お風呂に他人と一緒に入って裸

の付き合いをする」というのを当然と認識できるのは私達日本人だけであるということだ。ベトナム人のルームメートがざっと体を

洗ったあと、すぐに浴室から消え去り、そうかと思うと、また服を着て現れ、服を身

につけたまま苦労しながら髪を洗っているシーンを目撃した際にはそれほどまで

に嫌なのか、と驚いてしまった。

このように考え方の多様性、文化の違いを知ることの面白さをフルに感じた 4

日間で、これからの私の人生を考える上でもこのような恵まれた環境に属してい

たいし、常に世界への視点を持ち、このような環境をどんどん作り出していきたい

と思っている。実は今回、私達が東京セッションに参加することができたのも、奈

良女子大学の先輩方が毎年このプログラムで献身的に活躍してくれていたから

こそであるというのを聞いた。日航財団の方から「君たちの先輩には本当によくし

てもらったよ」というお言葉を頂いたときには自分のことのように誇らしくもあり、

大変嬉しく思った。このプログラムが続く限り、私達奈良女子大学の学生が参加し、そして少しでも国際問題について関心を持ち続け

ることができるだろうことを願っている。最後ではあるが、国際交流センターの方皆様に心からのお礼を申し上げたい。またとない貴

重な体験をさせていただき、本当にありがとうございました。

編集後記 本News Letterは毎号様々な方に文章を寄せてい

ただくことで成り立っています。今号も多くの方に

執筆をしていただきました。ご協力くださった皆様

お忙しい中ありがとうございました。中にはスペー

スの関係で載せられなかった記事もあります。次

号には必ず掲載したいと思います・・・!

国際交流センターNews Letter vol.16 にご意見ご

感想がありましたら、右記連絡先までお寄せくだ

さい。 (編集者:早川絢子)

奈良女子大学国際交流センターNews Letter vol.16 2009年 9月発行 奈良女子大学国際交流センター 〒630-8506 奈良市北魚屋東町

TEL: 0742-20-3736

E-mail: iec@cc.nara‐wu.ac.jp

http://www.nara-wu.ac.jp/iec/index/index.htm