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修 士 論 文 プラスチック系材料の難燃性研究 吸熱構造相転移反応を示すトランス型シッフ塩基金属錯体の研究 平 成 25 年 度 2014年3月 東京理科大学大学院 国際火災科学研究科 火災科学専攻 青田 裕太郎

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修 士 論 文

プラスチック系材料の難燃性研究吸熱構造相転移反応を示すトランス型シッフ塩基金属錯体の研究

平 成 25 年 度2014年3月

東京理科大学大学院国際火災科学研究科 火災科学専攻

青田 裕太郎

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修 士 論 文

プラスチック系材料の難燃性研究

-吸熱構造相転移反応を示す

トランス型シッフ塩基金属錯体の研究-

平 成 25 年 度

2014年3月

東京理科大学大学院

国際火災科学研究科 火災科学専攻

青田 裕太郎

指導教員:森田 昌宏・理学博士

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Master’s Thesis

Studies on fire-retardant materials for plastics

- Studies on trans-Schiff base metal complexes indicating

endothermic structural phase transition -

March 2014

Yutaro Aota

Supervisor: Masahiro Morita, Dr. Sci.

Department of Fire Science and Technology

Graduate School of Global Fire Science and Technology

TOKYO UNIVERSITY OF SCIENCE

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Studies on fire-retardant materials for plastics

-Studies on trans-Schiff base metal complexes indicating

endothermic structural phase transition-

Yutaro Aota (K112601)

Keywords: fire retardant, metal complex, TG-DTA,

Introduction

Burning process of plastics is consisted of heating, decomposition, and ignition. Pyrolysis is a

thermochemical decomposition of organic materials by heating in the absence of oxygen. The

fire retardant in thermal decomposition and an ignition process play a role in stabilization of

active OH radicals in the gas with the aid of trapping. In addition, oxygen insulation by halogen

and endothermic effect by drying of fire retardants are also known.

Herein trans-form Schiff base metal complexes are employed in order to develop new fire

retardants indicating endothermic behavior accompanying with changes of molecular structure.

Although conventional fire retardants work at thermal decomposition or ignition process, few

fire retardants that effective in heating process are known. Required properties for fire retardants

for plastics may be preventing from degradation of materials during heating. A trans-form Schiff

base metal complex exhibited endoergic phase transition from planar conformation at room

temperature to tetrahedral conformation in connection with heating. This endothermic effect can

act to suppress increasing temperature of a plastic in a heating process. Thus a trans-form Schiff

base metal complex may be the most appropriate as a fire retardant because it prevents from

their disconnection and decomposition. Moreover, halogen atoms are introduced to realize good

performance to conventional fire retardant for a plastic.

Experimental

Eight new trans-form Schiff base copper (II) complexes were prepared by changing substituent

groups of amine and aldehyde moieties to test as fire retardants for PMMA, a typical plastic.

Each complexes were added up to 3% into PMMA films and measured raising decomposition

temperature by means of TG-DTA for comparing with pure PMMA.

Results and discussion

The halogen-containing trans-form Schiff base copper (II) complex was found to be the most

effective fire retardants for PMMA among the eight samples.

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プラスチック系材料の難燃性研究

-吸熱構造相転移反応を示す

トランス型シッフ塩基金属錯体の研究- Studies on fire-retardant materials for plastics -Studies on trans-Schiff base metal complexes

indicating endothermic structural phase transition-

青田 裕太郎(K112601)

Yutaro Aota (K112601)

1.はじめに

プラスチックは燃焼に至るまでに加熱、分解、

着火の過程を経て起こる。熱分解は有機化合物等

が酸素を存在せずに加熱することによって行わ

れる化学分解である。

現在、プラスチック系難燃材料に用いられてい

る難燃剤は、主に固相で水との結合による生成物

や、チャー及びチャーと断熱層の生成促進効果と

安定化効果を有するものや、発泡チャーの生成に

よる断熱効果と酸素を遮断する窒息効果を有す

るものとがある。これらはプラスチックの熱分解

及び着火の過程で効果を生じるものである。

一方、加熱過程においての難燃剤は見られな

い。そこで、物質の分子構造の変化による吸熱効

果を利用した難燃剤を考えた。

しかし、プラスチックの難燃材料(プラスチッ

クに難燃材を添加した材料)として必要不可欠な

性質としては、物質の温度上昇、及びそれに伴う

不可逆的な材料の劣化を阻止・緩和する機能でな

ければならない。

そこで、分子構造の変化による吸熱効果を示す

化合物として、トランス型シッフ塩基金属錯体が

ある。本研究は、これらの錯体を添加した難燃材

料の研究を行った。

トランス型シッフ塩基金属錯体は、常温時には

平面構造を示し、温度上昇に伴い四面体構造にな

る時に、吸熱効果を起こす物質である。

トランス型シッフ塩基金属錯体は吸熱構造相

転移の効果により、加熱時のプラスチックの温度

上昇を抑える働きがある。この錯体は加熱過程に

おいては錯体自身の脱離・分解等の劣化を防ぐた

め難燃材料として、もっとも適している。

一方、熱分解過程及び着火過程における難燃剤

は、気相でのラジカルトラップ効果による、活性

OH ラジカルの安定化、酸素遮断効果及び難燃剤

の脱水反応による吸熱効果と、発生する水蒸気に

よる燃焼成分の希釈の効果がある。

本研究では、加熱過程だけではなく従来の難燃

剤としての熱分解過程及び、着火過程において効

果を有するトランス型シッフ塩基金属錯体の置

換基として、ハロゲン系物質を用いたプラスチッ

ク難燃剤の開発を行った。8 種類の置換基(アミン

部位・アルデヒド部位)及び、金属に銅を用いた

トランス型シッフ塩基金属錯体を難燃剤として

合成した。プラスチックには PMMA を用い合成

したそれぞれの難燃剤を 3%添加し、TG-DTA 測

定により、PMMA 単体とこれらの難燃剤を添加

した PMMA を比較し検討した。

その結果、トランス型シッフ塩基金属錯体のア

ミン部位にハロゲン化合物を付加した難燃剤に

効果が見受けられた。

2.実験方法

プラスチック系難燃剤として働く金属錯体は、

様々な基本骨格を有する金属錯体があるが、これ

らの金属錯体では、いずれも主に金属イオンを有

すること、π 共役系有機配位子を有すること、ハ

ロゲン置換基を有することが難燃効果の機構と

して利用される。

これら金属錯体は、高分子が燃焼する際の高分

子の分解溶融温度及び、着火温度を上げる燃焼の

広がりを抑えるといった事を目的として設計さ

れている。

しかし、トランス型シッフ塩基金属錯体は、温

度上昇によって吸熱構造相転移反応を起こすた

め、プラスチック等に添加した際、着火温度をあ

げ、燃焼の広がりを抑えるといった従来の難燃機

能だけでなく、加熱時の難燃材料の温度上昇・高

分子脱離・分解等の劣化を防ぐ。

本研究ではまず、ChemDraw で分子力学法(MM

法)化学計算を行った。アミン部位での置換基効果

を調べた。

化学計算の結果を受けて、トランス型シッフ塩

基金属錯体を合成・同定した。合成物の同定に拡

散反射スペクトル及び IR を測定した。8 種類のトラ

ンス型シッフ塩基金属錯体を TG-DTA 装置による

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熱分析を行い、トランス型シッフ塩基金属錯体の温

度上昇に伴う、吸熱反応を調べた。吸熱構造相転移

反応を確認後、トランス型シッフ塩基金属錯体 8 種

類を、それぞれ PMMA 中に重量パーセント濃度 3%

になるように混ぜ込み、高分子中での難燃効果があ

るのかを TG-DTA 装置で調べた。

2.1.難燃剤の選定

本研究では、難燃剤としてトランス型シッフ塩

基金属錯体を選定した。トランス型シッフ塩基金

属錯体は従来の難燃剤の効果に加え、加熱過程に

おいても、吸熱構造相転移反応によって、難燃化

することができるためである。

2.1.分子設計

プラスチック系材料の難燃剤を設計するために新

しいアプローチを図 1 に示す。

本研究では、トランス型シッフ塩基金属錯体を使

用した。吸熱構造相転移反応により、構造が平面か

ら四面体へと変わる際に、吸熱反応を起こすため、

この効果によってポリマーの熱を下げる。

図 1 プラスチック用の難燃剤についての概念。

吸熱構造相転移反応を起こすトランス型シッフ塩

基金属錯体の分子設計を考えるために、シュミレー

ションによる化学計算を ChemDraw で分子力学法

(MM 法によって)行った。

この化学計算でどのような置換基(アミン部位)が

良いのかを検討した。

トランス型シッフ塩基錯体は加熱時に吸熱構造相

転移反応を示すことが知られている。本研究では、

分子力学法(MM 法)によってかさ高い構造の錯体が

より、大きな吸熱反応を示すことが、分かった。

一例として、HEJVIB と名のつけられた、図 2 の

ような錯体がある。このようなかさ高い錯体を加熱

すると、左の図から右の図のような構造相転移の際

に大きな吸熱反応を示す。

図 2 分子設計

実際に合成したトランス型シッフ塩基金属錯

体の構造を図 3 に、用いた配位子について表 1 に

示す。

図 3 トランス型シッフ塩基金属錯体の構造

表 1 配位子の構造

2.2.TG-DTA 測定

熱分析は、リガク TG8120 用いてを行った。熱温

度は、室温から完全燃焼に至るまでの範囲で、昇温

速度は 5℃/min で行った。測定には白金パンを用い

て、リファレンスにはアルミナを使用した。

試料は図 2 及び表 2 で示される 8 種類のトランス

型シッフ塩基金属錯体及び、トランス型シッフ塩基

金属錯体+PMMA を用いた。

PMMA 中に重量パーセント濃度 3%でトランス型

シッフ塩基金属錯体を混ぜ込み、キャスト薄膜法で

試料を作成して行った。約 10mg を試料として、熱

を測定した。

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3. 結果

3.1.熱重量分析

以下に錯体単体と各種錯体を PMMA に添加し

た場合についての熱測定結果を示す。

図 4 錯体 1,6 の熱重量分析

図 5 錯体 2-5 の熱重量分析

図 6 錯体 7,8 の熱重量分析

図 7 PMMA+難燃剤 1,3 の熱重量分析

図 8 PMMA+難燃剤 2,4,5 の熱重量分析

図 9 PMMA+難燃剤 6 の熱重量分析

図 10 PMMA+難燃剤 7,8 の熱重量分析

3.2.示差熱分析

表 2 示差熱分析

試料 相転移ピーク温度(°C)

1 209

2 210

3 199

4 209

5 203

6 80

7 181

8 166

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4.考察

まず錯体単体の効果について考察していく。

図 4 より、錯体 1,6 での比較では、錯体 6 の構造相

転移反応のよる吸熱効果が錯体6では80℃でおこる

ため、その効果によって錯体 1 よりも減少率が下が

ったと考えられる。

図 5 より錯体 2-5 の比較をする。まず錯体 2,3 の

比較では、第一段階の重量減少の差は、結合エネル

ギーが関係していると考えられる。Cl と Br では Cl

のほうが結合エネルギーが大きい。そのため、Br が

先に燃焼したため、Br の燃焼効果によって重量減少

が小さくなったと考えられる。同様に錯体 4,5 にお

いても、Br が先に燃焼することによって燃焼時に不

燃性ガスが発生しその効果によって、錯体 5 の重量

減少が小さくなったと考えられる。

図 6 より錯体 7,8 の比較をする。錯体 7,8 でも同

様に Cl の結合エネルギーが多いため、Br が先に燃

焼し、燃焼の効果によって、錯体 7 の減少率が下が

ったと考えられる。

これらのことから第一段階での、燃焼はアミン部

位の燃焼が起こったと考えられる。

第二段階の燃焼時にアルデヒド部位が燃焼したと

考えられる。

次にPMMAに錯体を添加した際の効果を考えてみ

る。図 7 及び図 9、10 より、錯体 1,3,錯体 2,4,5,錯体

6 をそれぞれ PMMA に添加した際の効果を考えてみ

る。

重量減少の第一段階目の燃焼においては構造相転

移による効果が大きな錯体 1 の効果が大きいと考え

られる。アルデヒド側にハロゲン元素が 2 つ付加し

ている錯体 4,5ものよりも 1つ付加している錯体 2,3

のほうが効果が高いことから、アルデヒド側には原

子を付加させない方の効果が高いと考えられる。

このことからPMMA中では構造相転移がアルデヒ

ド側に原子が付加している際には、起こしにくいと

考えられる。

また錯体 6では PMMAのガラス転移点よりも低温

で、吸熱構造相転移が起きるため効果が顕著に現れ

ている。図 11 より錯体 7,8 の比較していく。錯体

4,5や錯体7,8のようなハロゲンが付加しているもの

を比べると、アミン部位が第一段階目の反応でまず

燃焼し、その効果が現れていることが理解できる。

錯体 7,8 を PMMA に添加した際の比較では、効果は

錯体 8 の方が高い。これは Cl の方が結合エネルギー

が大きく結合が切れにくいが、付加している Br と

Cl の量を深くすると、錯体 8 の Cl の方が多い。この

ことからやはりアミン部位から燃焼が起きたこと

で、ハロゲンによる難燃化効果が起きたと考えられ

る。

次に反応速度論的解析を行った。

Kissinger の活性化エネルギーE を求める式を、差

分式に変換すると、

式 1 kissinger 式

ただし、Tm は試料の重量減少曲線におけるピー

ク温度(K)で、図 11 に示すピーク温度である。

図 11 構造相転移のピーク温度

また、ガラス転移の活性化エネルギー表 3 に示す。

表 3 ガラス転移の活性化エネルギー

試料 E(kJ/mol)

PMMA 796

1 780

2 778

3 697

4 760

5 799

6 722

7 775

8 746

5.まとめ

トランス型シッフ塩基金属錯体のアミン部位にハ

ロゲン化合物を付加した難燃剤にもっとも効果が見

受けられた。錯体の吸熱構造相転移反応に加えて、

ハロゲンによる酸素遮断効果との相乗効果が得られ

たと考えられる。

6.参考文献

[1] 日ゴム協誌, 47, pp803 (1974)

[2] H. E. Kissinger,Reaction Kinetics in

Differential Thermal Analysis, Anal. Chem. , 29

(11) , pp1702 1706 (1957)

[3] 神戸博太郎, 熱重量分析による高分子の耐熱性

の評価, プラスチックス, Vol.18 (11) , pp8 16

(1967)

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目次

1 はじめに 1

2 難燃剤の種類と特徴 1

2.1 ハロゲンの難燃化作用 . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . 2

2.2 燐の難燃化作用 . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . 2

3 難燃試料選定と実験方法 3

3.1 難燃剤の合成 . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . 4

3.2 TG-DTA測定 . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . 17

4 実験結果 17

4.1 難燃剤の難燃性状 . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . 18

4.2 難燃剤添加プラスチックの熱性状 . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . 23

5 反応速度論的考察 27

5.1 理論的考察 . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . 27

5.2 分子構造と耐熱性 . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . 31

5.3 結論・考察 . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . 32

6 Appendix 34

7 測定データー 36

7.1 難燃剤の TG測定 (昇温速度 5◦C/min) . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . 36

7.2 難燃剤の TG-DT測定 (昇温速度 5◦C/min) . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . 37

7.3 PMMA+難燃剤 (3%)の TG測定 (5◦C/min) . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . 38

7.4 PMMA+難燃剤 (3%)の TG-DT測定 (昇温速度 5◦C/min) . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . 40

7.5 難燃剤の TG測定 (昇温速度 10◦C/min) . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . 41

7.6 難燃剤の TG-DT測定 (昇温速度 10◦C/min) . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . 43

7.7 PMMA+難燃剤 (3%)の TG測定 (昇温速度 10◦C/min) . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . 44

7.8 PMMA+難燃剤 (3%)の TG-DT測定 (昇温速度 10◦C/min) . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . 46

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1 はじめに建材等に利用されているプラスチックは、分子骨格に炭素と水素をその主たる構成元素を持つ有機材料なので、一

般的には燃え易い物質である。我々の生活空間において、極めて広い範囲で利用されているプラスチックが燃え易いため、着火による火災等の災害になる危険性が高い。より燃えにくいプラスチックが、特に近年、安全・安心が重要視される中、非常に強い関心が持たれ難燃剤の研究がなされて来ている。「燃えにくいプラスチック」は『耐燃性プラスチック』とも呼ばれ、その分類として不燃性、難燃性、自己消火性、遅燃性などがある。難燃剤は添加型難燃剤と反応型難燃剤に大きく区分されており、現在では、添加型難燃剤が用いられている。添加

型難燃剤にはハロゲン系、燐系の物質が大部分を占めている。これらの難燃剤は、安全衛生、公害問題等のリスクを軽減するためその種類が限られている。現在でも多種多様の難燃剤の開発がなされ、使用量も年々増加している。難燃剤として要求される条件は、少量の添加で効果が大きいものはもちろんのこと、相溶性に富み、物性の劣化が

小さく、しかも加工工程時、安定でポリマー燃焼時に効果的に分解し難燃効果の高いことである。また、耐熱性、耐候性がよく、経時変化が小さく、毒性・腐触性が無く (少なく)、安定に供給出来しかも安価である。しかし、この様な難燃剤を開発することは難しく、各ポリマーに適合する難燃剤を選択することが大切である。化学反応は反応条件によって異なる生成物を与える。高温・長時間の反応条件下では最も安定な『熱力学的』な生

成物が多くなり、低温・短時間の反応条件下では最も容易に生成する『速度論的』な生成物が多くなる。特にプラスチックの燃焼性状はこの両者の観点から議論しなければならない。プラスチックが燃焼に至るまでに加熱、分解、着火の過程を経て起こる。熱分解は有機化合物等を酸素を存在せず

に加熱することによって行われる化学分解である。現在、プラスチック系難燃材料に用いられている難燃剤は、主に固相で水との結合による生成物や、チャー及び

チャーと断熱層の生成促進効果と安定化効果を有するものや、発泡チャーの生成による断熱効果と酸素を遮断する窒息効果を有するものとがある。これらはプラスチックの熱分解及び着火の過程で効果を生じるものである。一方、加熱過程においての難燃剤は遅燃性の効果がある物質であるが、現在では用いられていない。そこで、本研

究では、物質の分子構造の変化による吸熱効果を利用した難燃剤 (遅燃性材)の開発を提案した。しかし、プラスチックの難燃材料 (プラスチックに難燃材を添加した材料)として必要不可欠な性質としては、物質の温度上昇、及びそれに伴う不可逆的な材料の劣化を阻止・緩和する機能でなければならないことを重要視し、分子構造の変化による吸熱効果を示し、熱可逆化合物として、トランス型シッフ塩基金属錯体を導入した。本研究ではこの錯体を添加した難燃材料の研究を行った。さらに、加熱過程だけではなく従来の難燃剤としての熱分解過程及び着火過程において効果を有するトランス型

シッフ塩基金属錯体の置換基として、ハロゲン系物質を用いたプラスチック難燃剤の開発をも行った。8種類の置換基 (アミン部位・アルデヒド部位)及び、金属に銅を用いたトランス型シッフ塩基金属錯体を難燃剤として合成した。プラスチックには PMMAを用い合成したそれぞれの難燃剤を 3%(重量パーセント)添加し、TG-DTA測定により、PMMA単体とこれらの難燃剤を添加した PMMAを比較し検討した。また、『速度論的』考察から難燃剤の熱分解反応を議論した。

2 難燃剤の種類と特徴 トランス型シッフ塩基金属錯体は、常温時には平面構造を示し、温度上昇に伴い四面体構造 (立体構造)になる時に吸熱効果を起こす物質である。トランス型シッフ塩基金属錯体は吸熱構造相転移の効果により、加熱時のプラスチックの温度上昇を抑える働きがある。この錯体は加熱過程においては錯体自身の脱離・分解等の劣化を防ぐための難燃(遅燃)材料として、もっとも適している。一方、難燃剤は熱分解過程及び着火過程における難燃剤は気相でのラジカルトラップ効果による、活性 OHラジカ

ルの安定化、酸素遮断効果及び難燃剤の脱水反応による吸熱効果と、発生する水蒸気による燃焼成分の希釈の効果が

1

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ある。難燃剤は添加型と反応型に分類することができ、添加型難燃剤は配合剤と同じように添加し、混合分散することに

より使用される。一方、反応型難燃剤は化学反応によってポリマーと化学的に結合するものである。下記に添加型難燃剤と反応型難燃剤の種類を次の表 2.1に示した。

表 2.1 添加型難燃剤と反応型難燃剤

添加型難燃剤� 水酸化アルミニウム� 酸化アンチモン� ホウ素化合物� 臭素化合物� 塩素化パラフィン、環状脂肪酸� 非ハロゲン化リン酸エステル� ハロゲン化リン酸エステル

反応型難燃剤� エポキシ中間体� ポリカーボネート中間体� ポリエステル中間体� ウレタン中間体� スチレン中間体

 難燃剤を構成する元素としては、ハロゲン (主として Br、Cl)、リン、窒素が代表としてあげられている。これら元素の難燃化に寄与するハロゲン元素と鱗元素の難燃メカニズムは以下に示す。

2.1 ハロゲンの難燃化作用 ハロゲン元素はポリマーの燃焼反応を推進する役割をもつ OH• ラジカルの捕捉剤として働き, その効果はI>Br>Cl>Fの順で、消火効率は 16 : 10 : 2 : 1である。ハロゲン化水素が OH• ラジカルを捕捉し、水 H2Oを生成し、ハロゲンラジカル X• となる。さらにハロゲンラジカルが炭化水素 (R)と反応し、ハロゲン化水素となり、炭化水素ラジカル (R•)が生成され、ハロゲンか水素 (HX)が再生成される。この反応過程を触媒反応と呼ばれ、ハロゲン元素の難燃性能を特徴付けられている。

HO• + HX → H2O + X•

X• + RH → HX + R•

このラジカルトラップ効果は、HX の結合解離エネルギーの小さいもの順に分解しやすいためと考えられ、H-I は70kcal、H-Brは 86.7kcal、H-Clは 102kcal、そして H-Fは 135kcalであり、また、C-Clの解離エネルギーは 67kcal

で C-Br の解離エネルギーは 54kcal であるので、臭素化合物が火炎中で Br を解離しやすいためと考えられている[1]。現状では性能面とコスト面を考え Br系化合物、Cl系化合物が実用化されている。化学構造からは脂肪族系のほうが芳香族系より効果が大きく、1級、2級、3級炭素によってその効果が異なると考えられてる。

2.2 燐の難燃化作用 燐は、火炎の中では、燐酸→メタ燐酸→ポリメタリン酸と分解し、生成したリン酸層が不揮発性の保護層を形成して空気をしゃ断することによる効果がある。図 2.1にその反応式を記した。

2

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図 2.1 燐の反応

 もう一つの難燃効果は、生成したポリメタリン酸が強力な脱水作用によって有機物を炭化させ、炭化膜が空気をしゃ断する効果があると考えられる。セルロースの炭化作用は次式の反応式で示される

(C6H10O5)n → 6nC + 5nH2O

3 難燃試料選定と実験方法 プラスチック材料の難燃剤として必要不可欠な条件は、難燃材料の温度上昇、そしてそれに伴う不可逆的な材料の劣化を阻止・緩和する機能を伴う化合物でなければならなく、さらに、難燃剤はプラスチック材料等の高分子の熱安定剤として添加して用いられ、加熱により高分子の熱分解より先行して高分子から脱離し活性分解物の捕捉、金属の不活性化等の性質を必要とする物質、かつ高分子の熱分解後に引き起こされる分解反応の促進を食い止める必要性がなければならないことは既に述べた。そこで、高分子難燃剤として効果のある金属錯体には、様々な基本骨格を有するものがあるが、これらの金属錯体ではいずれも主に金属イオンを有すること、π 共役系有機配位子を有すること、ハロゲン置換基を有することが、難燃効果のメカニズムとして利用することが可能である。これらの金属錯体は、高分子が燃焼する際の高分子の分解溶融温度及び着火温度を上げ、さらに燃焼の広がりを抑えるといった効果を必要として選定しなければならない。また、塩化ビニルのようなプラスチック材料については、熱による塩化水素の脱離に対して、それを捕捉、無害化する熱安定剤が必要である、高級脂肪酸の亜鉛塩やバリウム塩などは熱安定剤の働きはいずれも不可逆反応であるが、材料の物理的変化は極めて小さい。しかし、材料の化学的な変化、長期的な不可逆反応の蓄積による変化は避けられない。またこれら、難燃剤、熱安定剤等添加剤は、複合して使うと拮抗作用を示すことが多く、単一物質で高機能を持つ、安全な添加剤が求められている。トランス型シッフ塩基金属錯体が起こす吸熱構造相転移の吸熱エンタルピーについて、加熱時の高分子 (プラス

チック)材料の温度上昇を柔軟に抑え、同時に起こる高分子脱離・分解等の劣化を防ぐことが可能である。これは、構造相転移が可逆であるためと考えられている。また人体や環境の影響という観点からも、低添加量で、高分子のリサイクル性も保ちつつ、ハロゲンの使用も抑える事ができると考えられる。このトランス型シッフ塩基金属錯体に分類される骨格構造を有するような構造を備えた難燃剤 (遅延燃焼剤)は今までには開発されていない。以上を考慮して、高分子材料のための難燃剤添加物を用いるために、トランス型シッフ塩基金属錯体を考案した。

この錯体はエンタルピーの吸収により、ポリマーの温度上昇を禁じる熱力学的に吸熱な試薬として予測し、本研究では、MM2*1による結晶構造間の生成熱の違いを計算した。MM2計算により、高分子材料の潜在的な難燃剤添加物としてトランス型シッフ塩基金属錯体の導入を提案した。現在まで、キラル配位子と同様に様々な金属イオンも含む従来のトランス型シッフ塩基金属錯体の合成および、

PMMAのような高分子膜で覆われるポリマー中の光機能性な有機化合物を備えた有機無機のハイブリッド材料の生成の特性についての研究がなされて来た。さらに、光学的性質に加えて、類似錯体は熱により引き起こされた構造相転移を示すことが知られている。

*1 分子動力学法 (molecular dynamics method)、物理現象や化学現象を、原子や分子が動く原子間力や分子間力をシミュレーションをし、仮想空間内に原子や分子を並べ、 それらの原子間力や分子間力を与え、仮想空間内の原子や分子の動きを計算する手法

3

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この類似したトランス型シッフ塩基金属錯体の合成物の熱力学に関して、高分子有機化合物の材料は低温で変形熱分解する欠点がある。これを補うために、適切な官能基を備えた高分子がMg、St、Br、Clおよび Pのような特定の無機製剤を含む化合物として難燃剤高分子の開発研究がなされてきた。ここで、この難燃剤高分子材料は環境上のエコロジーや人間の健康のリスクから考慮すると、熱分解・燃焼時等に有毒物質ガス等の放出はあってはならない。したがって、高分子材料用の吸熱的な難燃剤添加物を設計するために新しいアプローチを図 3.1に示した。ここで、難燃剤にトランス型シッフ塩基金属錯体を使用した。この錯体はエンタルピーの吸収によりポリマーの上げる温度を禁じる熱力学的に吸熱な試薬としての効果が予想される。

図 3.1 ポリマー用の吸熱な添加剤についての概念

ここで、トランス型シッフ塩基金属錯体のおおよその結晶構造と最適化された構造の間の生成熱の違いをMM2によって計算し、難燃剤の選定を行った。難燃剤に選定したトランス型シッフ塩基金属錯体を TG-DTAによる熱分析を行い吸熱相転移反応の解析を行った。そして、これら選定した金属錯体を高分子材料の 1つとして良く知られている PMMAに重量パーセント濃度 3%添加した試料を TG-DTAによる熱分析を行い、難燃効果を調べた。

3.1 難燃剤の合成 難燃剤としてのトランス型シッフ塩基金属錯体の合成するために、錯体の分子設計を行い置換基効果を調べたのち合成し、IR測定から合成物の同定を行なった。

3.1.1 分子設計

 分子設計のため、CCDC のデータベース*2により、数種のトランス型シッフ塩基金属錯体の結晶構造を決め、ChemDrawソフトウェア*3のオプションのMM2を使用し生成熱の値を評価した。金属錯体の構造の変化によって熱に大きく構造相転移をするようにモデル化し、最適な構造およびそれらの生成熱

を計算した。そして、生成熱の大きな変化を与える分子構造の特徴を調べ、トランス型シッフ塩基金属錯体中でよりよい吸熱する試料を選定した。図 3.2 ∼ 図 3.31にトランス型シッフ塩基金属錯体の構造を最適化した分子構造 (結晶構造)を描き、表 3.1に各合成物の生成熱を計算した結果を表した。

*2 Cambridge Crystallographic Data Centre (CCDC) : ケンブリッジ結晶構造データベース*3 分子構造式エディタソフトで化学構造から化合物名への相互変換、化学構造の自動調整等の機能を有する

4

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表 3.1 計算された生成熱 (結晶構造、最適化された構造および違い)の要約

CCDC Crystal optimized differences

codes [kcal/mol] [kcal/mol] [kcal/mol]

VIMPIR 1134.7 49.0 1085.7

FAYMOI 1012.1 36.1 976.0

ZOZGAW 741.7 53.1 688.6

PESSEM 1011.3 64.4 946.9

FETLEW01 2102.2 88.9 2013.3

KASJOE 953.4 70.3 883.1

MXSPCO 9087.2 199.9 8887.4

HIQWIO 709.8 71.3 638.5

TEJZOX 913.3 56.9 856.9

HEJVIB 10502.4 181. 10320.6

(1)VIMPIR

図 3.2 ∼ 図 3.4に示すように、C50H38N2P2Zn錯体には cisおよび trans錯体両方へのロジウムおよびパラジウム前駆体で反応するジホスフィン配位子がある。その結晶構造は、四面の亜鉛中心による組み合わせによって、広いかみ切った一片角度のジホスフィン配位子ヘ導く歪曲された四面体。

(2)FAYMOI

図 3.5 ∼ 図 3.7に示すように、C26H30Br2CuN2O2 錯体は Cuの原子がやや歪んだ四面体幾何学的形状の 2つのシッフ塩基配位子から 2個の N原子および 2個の O原子によって四配位している。

(3)ZOZGAW

図 3.8 ∼ 図 3.10に示すように、C26H18Br2CoN2O2 の Co 原子は二重軸上に位置し、金属中心の周りのジオメトリは、トランスコンホメーションの歪んだ四面体であり、Co-Oと Co-N結合の長さは 1.891 と 2.006 A

で、結合角は 96.75, 111.59◦ である。

(4)PESSEM

図 3.11 ∼ 図 3.13に示すように、C26H30Br2CoN2O2 錯体は、四面体幾何学的形状を形成する二つシッフ塩基配位子により 4配位である。結合角は 93.94から 112.49◦ への金属原子の範囲であり歪んだ四面体配を示す。

(5)FETLEW01

図 3.14 ∼ 図 3.16に示すように、C26H30Br2N2NiO2 錯体は歪んだ四面体幾何学的形状を形成する。ニッケル原子の位置で、その範囲内のなす角度は 93.83から 122.50◦。平均の結合の距離は Ni-Oで、1.918 A

◦∼ 2.020

A◦。

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(6)KASJOE

図 3.17 ∼ 図 3.19に示すように、C26H30CuN2O2 錯体は Cu原子は範囲 94.41から 122.87◦ の Co(II)原子に範囲が定められた角度でやや歪んだ四面体幾何学における 2シッフ塩基配位子から 2個の O原子により 4配位されている。Co原子を中心に結合の長さは 1.9092 A

◦∼ 2.0055 A

◦。

(7)MXSPCO

図 3.20 ∼ 図 3.22に示すように、C22H28CoN2O4 錯体は四面体をである。Co-O = 2.912 A◦と Co-N=1.975

A◦であり結合角は 95.9-114.4A

◦である。

(8)HIQWIO

図 3.23 ∼ 図 3.25に示すように、C22H24CoN2O4 錯体の Co(II)原子は、二重の回転軸上に位置する 。歪んだ四面体配位構造において、2つのイミンの Nとシッフ塩基配位子からフェノラートの O原子により 4配位されている。Co-O 結合距離は 1.8958 A

◦であり、結合角は 111.73-127.47◦ である。Co-N結合の距離は 2.0016

A◦、結合角は 95.48-116.57◦ である。

(9)TEJZOX

図 3.26 ∼ 図 3.28に示すように、C20H24CoN2O2 錯体は 2つの二座配位子は、それらの Nと O原子を介して Co(II) イオンに配位している。コバルトの周りの幾何学的形状は、多少、理想的な四面体から歪んでいる主にキレート配位子とのイソプロピル基の立体反発の制限された結果として。Co-Oの結合距離は 1.901 A

◦∼

1.910 A◦で Co-N 結合距離は、1.984 A

◦∼ 1.999 A

◦、結合角は 96.35, 96.43, 111.93, 112.72, 118.53, 122.6,

122.6◦ である。

(10)HEJVIB

図 3.29 ∼ 図 3.31に示すように、C22H28CoN2O2 はサリチルアルデヒドおよびアルキルアミンから誘導されたシッフ塩基は非ドナー溶媒中の溶液中の四面体構成を持つようになっている。

図 3.2 VIMPIR : C50H38N2P2Zn錯体 図 3.3 VIMPIR : C50H38N2P2Zn錯体

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図 3.4 VIMPIR : C50H38N2P2Zn錯体

図 3.5 FAYMOI : C26H30Br2CuN2O2 錯体 図 3.6 FAYMOI : C26H30Br2CuN2O2 錯体

図 3.7 FAYMOI : C26H30Br2CuN2O2 錯体

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図 3.8 ZOZGAW : C26H18Br2CoN2O2 錯体図 3.9 ZOZGAW : C26H18Br2CoN2O2 錯体

図 3.10 ZOZGAW : C26H18Br2CoN2O2 錯体

図 3.11 PESSEM : C26H30Br2CoN2O2 錯体 図 3.12 PESSEM : C26H30Br2CoN2O2 錯体

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図 3.13 PESSEM : C26H30Br2CoN2O2 錯体

図 3.14 FETLEW01 : C26H30Br2N2NiO2 錯体 図 3.15 FETLEW01 : C26H30Br2N2NiO2 錯体

図 3.16 FETLEW01 : C26H30Br2N2NiO2 錯体

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図 3.17 KASJOE : C26H30CuN2O2 錯体

図 3.18 KASJOE : C26H30CuN2O2 錯体

図 3.19 KASJOE : C26H30CuN2O2 錯体

図 3.20 MXSPCO : C22H28CoN2O4 錯体 図 3.21 MXSPCO : C22H28CoN2O4 錯体

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図 3.22 MXSPCO : C22H28CoN2O4 錯体

図 3.23 HIQWIO : C22H24CoN2O4 錯体 図 3.24 HIQWIO : C22H24CoN2O4 錯体

図 3.25 HIQWIO : C22H24CoN2O4 錯体

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図 3.26 TEJZOX : C20H24CoN2O2 錯体 図 3.27 TEJZOX : C20H24CoN2O2 錯体

図 3.28 TEJZOX : C20H24CoN2O2 錯体

図 3.29 HEJVIB : C22H28CoN2O2 錯体 図 3.30 HEJVIB : C22H28CoN2O2 錯体

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図 3.31 HEJVIB : C22H28CoN2O2 錯体

 以上のシミュレーションより、図 3.32の錯体の構造を用い、金属に Cu 、アミン部位 (R)とアルデヒド部位 (X1

および X2)に表 3.2に示した試料を合成した。

図 3.32 錯体の分子構造

表 3.2 配位子の分子構造

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3.1.2 合成方法と同定  3.2に示した試料についての合成方法を下記に示した試料 (1)の合成メタノール (150 mL) に、サリチルアルデヒド (1.080 g,10 mmol) と 2-メチルシクロヘキシルアミン (1.134

g,10 mmol)を加え約 40 ℃で 2時間加熱・攪拌した。そこに酢酸銅 (II)一水和物 (0.999 g,5 mmol)を加え約40◦Cで 2時間加熱・攪拌した。濾過後、エバポレートして粉末結晶が得られた。収量 (収率):1.3722 g(54.2

%) ,IR(Nujol):1612 cm−1

試料 (2)の合成メタノール (150 mL) に 5-クロロサリチルアルデヒド (1.574 g,10 mmol) と 2-メチルシクロヘキシルアミン(1.253 g,10 mmol)を加え約 40 ℃で 2時間加熱・攪拌した。そこに酢酸銅 (II)一水和物 (1.132 g,5 mmol)を加え約 40◦Cで 2時間加熱・攪拌した。濾過後、エバポレートして粉末結晶が得られた。収量 (収率):0.3410 g

(12.1 %), IR(Nujol):1618 cm−1

試料 (3)の合成メタノール (150 mL)に、5-ブロモサリチルアルデヒド (2.010 g,10 mmol)と 2-メチルシクロヘキシルアミン(1.132 g,10 mmol) を加え約 40 ℃で 2時間加熱・攪拌した。そこに酢酸銅 (II)一水和物 (0.998 g,5 mmol)を加え約 40◦Cで 2時間加熱・攪拌した。濾過後、エバポレートして粉末結晶が得られた。収量 (収率):0.5832 g

(17.8 %),  IR(Nujol):1617 cm−1

試料 (4)の合成メタノール (150 mL) に、3,5-ジクロロサリチルアルデヒド (1.914 g,10 mmol) と 2-メチルシクロヘキシルアミン (1.283 g,10 mmol) を 加え約 40 ℃で 2 時間加熱・攪拌した。そこに酢酸銅 (II) 一水和物 (1.001 g,5

mmol) を加え約 40◦C で 2 時間加熱・攪拌した。濾過後、エバポレートして粉末結晶が得られた。収量 (収率):0.0733 g(2.4 %),IR(Nujol):1619 cm−1

試料 (5)の合成メタノール (150 mL) に、3,5-ジブロモサリチルアルデヒド (2.806 g,10 mmol) と 2-メチルシクロヘキシルアミン (1.274 g,10 mmol) を加え約 40 ℃で 2 時間加熱・攪拌した。そこに酢酸銅 (II) 一水和物 (0.999 g,5

mmol) を加え約 40◦C で 2 時間加熱・攪拌した。濾過後、エバポレートして粉末結晶が得られた。収量 (収率):3.3208 g(81.8 %),IR(Nujol):1618 cm−1

試料 (1) ∼ 試料 (5)までの合成過程の反応式 3.33を図に示した。アルデヒド部位の置換基の X1 及び X2 に水素、塩素と臭素のハロゲン元素を結合した試料を合成した。ハロゲン元素は難燃試薬として知られている。

試料 (6)の合成メタノール (150 mL)に、サリチルアルデヒド (1.2797 g,10 mmol)とヘキシルアミン (1.0638 g,10 mmol) を加え約 40 ℃で 2時間加熱・攪拌した。そこに酢酸銅 (II)一水和物 (1.0004 g,5 mmol) を加え約 ◦Cで 2時間加熱・攪拌した。濾過後、エバポレートして粉末結晶が得られた。収量 (収率):0.5686 g(12.0%),IR(Nujol):1621

cm−1

試料 (6) の合成過程の反応式 3.34を図に示した。

試料 (7)の合成

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メタノール (150 mL),サリチルアルデヒド (1.222 g,10 mmol)と 1-(4-ブロモフェニル)エチルアミン (2.0546

g,10 mmol)を加え約 40 ℃で 2時間加熱・攪拌した。そこに酢酸銅 (II)一水和物 (1.0020 g,5 mmol) を加え約40◦Cで 2時間加熱・攪拌した。濾過後、エバポレートして粉末結晶が得られた。収量 (収率):0.1822 g(2.72

%),IR(Nujol):1622 cm−1

試料 (7) の合成過程の反応式 3.35を図に示した。

試料 (8)の合成メタノール (150 mL)に、サリチルアルデヒド (1.2721 g,10 mmol)と 1-(2,4-ジクロロフェニル)エチルアミン(1.9361 g,10 mmol) を加え約 40◦Cで 2時間加熱・攪拌した。そこに酢酸銅 (II)一水和物 (1.0054 g,5 mmol)

を加え約 40◦Cで 2時間加熱・攪拌した。濾過後、エバポレートして粉末結晶が得られた。収量 (収率):0.2537

g(7.8 %),IR(Nujol):1616 cm−1

試料 (7) の合成過程の反応式 3.36を図に示した。

図 3.33 試料 (1) ∼ 試料 (5)の反応式

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図 3.34 試料 (6) 反応式

図 3.35 試料 (7) 反応式

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図 3.36 試料 (8) 反応式

3.1.3 物理的な測定  IR測定でヌジョールは 298 K.で 4000∼400cm−1 の範囲に JASCO FT-IR4200プラス分光光度計で赤外線(IR)スペクトルを記録し、金属錯体試料の同定を行なった。

3.2 TG-DTA測定熱分析は、リガク TG8120用いてを試料の測定を行った。加熱温度は、室温から完全燃焼に至るまでの範囲で、昇温速度は 5 ◦C/minで行った。また、金属錯体の構造相転移の活性化エネルギーを求めるために、10◦C/min の昇温速度で、400◦Cまで試料を測定した。試料パンは白金パンを用い、リファレンスにはアルミナを使用した。試料は、各錯体 (難燃剤) 単体と重量パーセント 3%の難燃剤を高分子プラスチックである PMMAに添加した試料 (PMMA+

試料)の TG-DTAの測定を行なった。試料は図 3.32及び表 3.2で示される各種難燃剤単体及び、難燃剤 +高分子 (PMMA)を用いた。溶媒をクロロホ

ルムとして、PMMAに難燃剤を重量 %濃度 3%に混ぜ込み、キャスト薄膜法で試料 (PMMA+難燃剤)を作成して行った。約 10mgを試料として、TG-DTAで熱分析測定をした。

4 実験結果 表 3.2 試料 1 ∼ 試料 8 のそれぞれ単体の TG-DTA の測定と、PMMA にこれらの試薬を重量パーセント 3%

添加しフィルム状にした試料の TG-DTA 測定結果から難燃性の効果を検討した。試薬の燃焼性状はそれぞれのTG(thermogravimetry)曲線と DTA(differential thermal analysis)曲線から、温度上昇過程において、最初は構造相転移による熱吸収が起こり、その後、金属錯体の熱分解過程、アミン部位 (図の R 基)の熱分解過程、そして、アルデヒド部位 (図の X1 および X2 基 を有する部分)の熱分解 (燃焼性状を含む)過程の性状に区分可能であると考え

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られる。同時に DTG(differential thermogravimetry)曲線による重量減少速度の変化から、熱分解過程との性状に区分可能であると言える。しかし、熱分解過程においては結合エネルギーの一番低い結合から切断されるため、アミン部位やアルデヒド部位に結合する元素によっては熱分解性状は必ずしもこの順序で熱分解するとは限らない。一方、一般にプラスチックの難燃剤にはハロゲン元素を添加し難燃効果を高めている。そのため、本研究ではアミ

ン部位の Rの位置とアルデヒド部位の X1 および X2 の位置にハロゲン元素を結合させた試料を提案した。そのためハロゲン元素の結合の有無で区別し結果を示した。以下にハロゲン元素の有無を記号で示す。ただし、試料合成の関係で下記の3分類に付いて TG-DTA測定をしその結果を述べる。

1. [R]無-[X]無:アミン部位およびアルデヒド部位にともにハロゲン元素を持たない試料2. [R]無-[X]有:アミン部位にはハロゲン元素を持たない、アルデヒド部位にはハロゲン元素を有している試料3. [R]有-[X]無:アミン部位にハロゲン元素を有し、アルデヒド部位にはハロゲン元素を持たない試料

4.1 難燃剤の難燃性状難燃剤単体の難燃性状は TG- DTA測定結果より考察した。

4.1.1 [R]無 - [X]無 試料 1 および試料 6 はアミン部位およびアルデヒド部位にともにハロゲン元素を持たない試料でアミン部位に六員環の 2-メチルシクロヘキシルアミンを結合した試料 1と鎖状型のヘキシルアミンを結合した試料 6 に対して、図 4.1

に重量減少量 (1mg当たり)と時間との関係を図示した。また同時に、時間と温度の関係 (昇温速度)をも示した。そして、図 4.2 には試料 1 と 試料 6 の示差熱分析 (DTA(µV))と温度 (◦C)との関係を図示した。また、図 4.3 には試料 1 と 試料 6 の重量減少速度曲線 (DTG(mg/dt))と温度 (◦C)との関係を図示した。アミン部位にヘキシルアミンが結合している試料 6 は鎖状の直線構造をしており、また、アミン部位に 2-メチルシクロヘキシルアミンが結合している試料 1 は 六角形の平面構造をしている。アルデヒド部位も 六角形の平面構造を形成しているため、アミン部位とアルデヒド部位を対称に持つ平面構造している。そのため、金属を中心にトランス型構造に変化するとき、アミン基に結合しているの分子の平面短半径の小さい方が転移し易いし、構造相転移後の平面間の角度が大きいと考えられる。そのため、試料 6 の方が 試料 1 より低温時で構造相転移による吸熱が起こると考えられる。そのため、図 4.2

には DTAによる吸熱のピーク温度では試料 1は約 110◦Cに対して試料 6は約 80◦Cとピーク温度の差が大きく表れている。図 4.2の DTA曲線のピーク温度と、図 4.3の重量減少速度曲線のピーク温度位置は、構造相転移の重量減少速度

は見られないが、アミン部位およびアルデヒド部位の熱分解温度時のピークは DTGおよび DTAのピーク温度はアミン部位に付いてはそれぞれ 262◦Cと 258◦Cで、アルデヒド部位については 453◦Cと 458◦Cであった。アミン部位に付いては若干の差は見られたが、アルデヒド部位に付いては殆ど同じ温度と考えられる。同様に試料 6に対しては、299◦Cと 295◦Cおよび 579◦Cと 582◦Cであった。試料 1とほぼ同じ性状を示していることが分かった。しかし、DTA曲線も DTG曲線もほぼ同じ温度に 2つのピークが測定されているが、熱分解燃焼性状と考え 1つの分布曲線と見なした。図 4.1は、ほぼ同じような重量減少を示しているが、試料 6の方が試料 1に比べて若干重量減少が遅延している。

この効果は、低温で構造相転移が起こり吸熱しているため、試料内部の温度上昇が多少遅延していると考えられる。

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図 4.1 試料 1 と 6 の 重量減少 (TG)曲線 図 4.2 試料 1と 6 の示差熱 (DTA)曲線

図 4.3 試料 1 と 6 の DTG 曲線

4.1.2 [R]無 - [X]有試料 2、試料 3、試料 4 および試料 5 ではアミン部位にはハロゲン元素を持たないメチルシクロヘキシルアミンが結合しており、アルデヒド部位に試料 2には塩素と水素、試料 3にはは臭素と水素、試料 4には塩素が2原子、そして試料 5には臭素が2原子結合した物質である。図 4.4 には試料 2 ∼ 試料 5の重量減少量 (1mg当たり)と時間との関係を図示した。また同時に、時間と温度の関係をも示した。同様に、図 4.5 には試料 2 ∼ 試料 5の示差熱 DTA(µV)

と温度との関係を図示した。図 4.6 には試料 2 と 試料 3 の重量減少速度曲線 (mg/dt)と温度との関係を図示した。また、図 4.7 には試料 4 と 試料 5 の重量減少速度曲線 (mg/dt)と温度との関係を図示した。その結果、図 4.5では、試料 2 ∼ 試料 5の熱吸収が約 200◦C付近で起こっている事がわかる。アルデヒド部位に

結合している元素は水素 (H)、塩素 (Cl)そして臭素 (Br)の順に原子半径が大きくなるが、ほぼ同じ温度で吸収熱が表れているのは、構造相転移にアルデヒド部位の構造の大きさには殆ど変わらないと考えられる。アミン部位の熱分解のピーク温度は 試料 2では 285◦C、試料 4では 297◦C、および 5では 293◦Cとほぼ 300◦C度付近で起こっているのに対して、試料 3 については 250◦C付近で熱分解のピークが見られる。この現象は図 4.6と図 4.7の重量減少速度曲線図にも現れ、試料 3の重量減少速度のピーク温度が他の試料 2、試料 4および試料 5に比べて早い。この温度付近 250◦C∼ 300◦Cで配位結合が切れてアミン部位の熱分解が最大になっていると考えられる。続いてアルデヒド部位の熱分解が起こり、アルデヒド部位に結合しているハロゲン元素が離脱し気相でのラジカルトラップ効果を示していると思われる。その効果は、図 4.1に示す試料 1(アルデヒド部位に水素原子が 2つ結合している)の重量減少曲

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線ではアルデヒド部位の燃焼が終わる温度は約 500◦Cに対し、資料 2 ∼ 5では 600◦C以上となっていることで分かる。このことより、アルデヒド部位に結合しているハロゲン元素は高い難燃効果が現れていることが分かる。アルデヒド部位の炭素とハロゲン元素との結合等のエネルギー (イオン化エネルギー、電子親和力、解離エネル

ギー:表 4.1参照)は臭素より塩素が高いため、熱分解の時には臭素の脱離が塩素より早いことを示しているため、試料 3の難燃効果が試料 2より大きいと思われる。さらには、臭素の難燃効果は塩素よりほぼ 5倍大きいためと考えられる。同様に、試料 4 より試料 5 の方が難燃効果が大きい。試料 2 と試料 5 は殆ど同じ重量減少曲線を示しているが、アルデヒド部位が熱分解・燃焼すると 2個の臭素元素によるラジカルトラップ効果が現れていると考えられる。一方、アルデヒド部位に結合している 2個のハロゲン元素が熱分解するより1個のハロゲン元素が熱分解する方が

早いのは結合エネルギー等の相違と考えると、図 4.4の重量減少曲線の相違が分かる。

図 4.4 試料 2,3,4と 5 の TG 曲線 図 4.5 試料 2,3,4と 5 の DTA 曲線

図 4.6 試料 2,3 の DTG 曲線 図 4.7 試料 2,3,4と 5 の DTA 曲線

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表 4.1 ハロゲン元素の性質

フッ素 塩素 臭素 ヨウ素

9F 17Cl 35Br 53I

電子配置 2s22p5 3s23p5 3d104s24p5 4d105s25p5

第一イオン化エネルギー (kJ· mol−1) 1,681 1,251 1,140 1,008

解離エネルギー (X2,kJ· mol−1) 155 243 193 151

電子付加エンタルピー (kJ· mol−1) -328 -349 -325 -295

電子親和力 (kJ· mol−1) 340 365 342 303

イオン半径 (X− , pm) 133 282 195 216

共有結合半径 (r(X2)/2, pm) 72 99 114 133

van der Waals 半径 (pm) 147 175 185 198

4.1.3 [R]有 - [X]無次にアミン部位の難燃効果を調べるため、アルデヒド部位には 2個の水素を結合し、試料 7には臭素を含む 1-(4-ブロモフェニル)エチルアミンと (臭素を含む)、試料 8には塩素を含む 1-(2,4-ジクロロフェニル)エチルアミン (塩素を含む)を結合させた資料に対して、図 4.8 には重量減少量 (1 g当たり)と時間との関係を図示した。また同時に、時間と温度の関係をも示した。そして、図 4.9 には DTA(µV)と温度との関係を図示した。図 4.10 には試料 7 と 試料8 の重量減少速度曲線 (mg/dt)と温度との関係を図示した。図 4.9と図 4.10の DTA曲線のピーク温度と DTG曲線のピーク温度は、試料 7では 258◦Cと一致し、試料 8では

265◦Cと 269◦Cとほぼ一致していることがわかる。この一致は熱分解による発熱反応が起こっていることが言える。図 4.9では、アミン部位に塩素持つ試料 8の方が、臭素を持つ試料 7より低い温度で吸熱相転移を起こしている。

これは、ハロゲン元素と炭素との結合において、アミン部位の分子の平面構造の短半径の大きさ (イオン半径、共有結合半径やファンデルワールス半径等)に関係すると考えられ、短半径の平面構造の小さい試料 8の方が早く構造相転移が起こっている。構造相転移後錯体の熱分解が始まりアミン部位が最初に熱分解される。試料 7と試料 8はハロゲン元素をアミン部位に含んでいうため、アミン部位にハロゲン元素を持たない試料 1 ∼ 6の重量減少量に大きな差異が認められる。この差異はハロゲン元素によるラジカルトラップ効果が現れていることが示されている。試料 7と試料 8では図 4.8より明らかに違いが見られる。これは、試料 7に含有している臭素の難燃効果が試料 8に含有している塩素の難燃効果より約 5倍程度大きいためである。図 4.9および図 4.10の DTA曲線のピーク温度と DTG曲線のピーク温度に対して、試料 7と試料 8の差が熱分解

反応を遅らせていることは、試料 1と試料 6について述べたのと同じように考えられる。

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図 4.8 試料 7と 8 の TG 曲線 図 4.9 試料 7と 8 の DTA 曲線

図 4.10 試料 7と 8 の DTG 曲線

 表 4.2には試料 2 ∼ 試料 8の DTA測定による吸熱量 (µV·s/mg)と構造相転移ピーク温度 (◦C)を示した。構造相転移吸収熱による難燃性 (特に燃焼遅延性) の効果は、相転移ピーク温度が低いほどあるいは吸収熱の大きいほど効果があり、プラスチックの燃焼を遅延する効果が期待出来る。プラスチック材料の代表的な PMMA(Poly(methyl

2-methylpropenoate):アクリル樹脂として知られている)で、その特性は、非晶性熱変形温度 85-145◦C で融点*1は160◦Cで、沸点は 200◦Cである。プラスチック材料として PMMAにトランス型シッフ塩基金属錯体を難燃剤として添加して用いる時は、相転移温度*2が PMMAの融点に近い温度が望ましく、表 4.2から試料 6、試料 7及び試料 8

が適している。また、吸熱量の大きい程望ましい事から、試料 1が最も大きく、次に試料 7、試料 8の順で吸熱量が大きい。

*1 融点:結晶部分の分子鎖が自由に動ける温度*2 ガラス点移転:非晶部分の分子鎖が自由に動ける温度

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表 4.2 試料別の吸収熱と相転移ピーク温度

アミン部位 アルデヒド部位 吸熱量 相転移ピーク温度試料番号 R X1 X2 吸熱量 (µV·s/mg) 相転移ピーク温度 (◦C)

1 2-メチルシクロヘキシルアミン H H -242 209

2 2-メチルシクロヘキシルアミン Cl H -98 210

3 2-メチルシクロヘキシルアミン Br H -101 199

4 2-メチルシクロヘキシルアミン Cl Cl -47 209

5 2-メチルシクロヘキシルアミン Br Br -82 203

6 ヘキシルアミン H H -86 80

7 1-(4- ブロモフェニル)エチルアミン H H -131 166

8 1-(2,4-ジクロロフェニル)エチルアミン H H -122 181

4.2 難燃剤添加プラスチックの熱性状  PMMAの熱分解は 2段階の反応であると報告されている [6]。第 1段階の熱分解は主鎖切断によるアリル基の分解過程で 280◦C 付近から起こりピーク温度は約 300◦C[7]。第 2 段階の熱分解は 340◦C 付近から始まり燃焼しそのピーク温度は約 400◦Cであると考えられる。一方、窒素中での PMMAの熱分解でも 2段階の反応であると報告されている [11]。第 1段階の DTA曲線のピーク温度は 143◦Cで第 2段階では 319◦Cである。本研究では PMMAに試料を重量パーセントで 3%添加して作成した試料の TG-DTA測定をした。それぞれの試

料 1 ∼試料 8に対して、難燃性効果を示す指標として試料の TG曲線が、図 4.11に図示した PMMA単体の TG曲線を境に、右上の領域に位置しているときに効果があり、左下の領域に位置した場合は難燃性の効果は無くむしろ燃焼促進効果が現れていると判断した。また、ほぼ TG曲線と同じ結果を示した場合は、難燃性の効果が無いと判断することにした。

4.2.0 PMMA

 図 4.12には PMMA単体での DTA曲線 (ベースラインは補正をしていない)および重量減少速度曲線を温度に対して図示した。図 4.11の TG曲線とあわせて考えると、PMMAの熱分解、燃焼性状は、2段階の反応性状を示していると報告されているが、相転移 (ガラス転移)を一種の反応と考えれば、3段階の反応性状を示していると考えられる [8][10]。第 1段階目の熱分解は、100◦C付近から熱変形溶融し PMMA合成時に酸素によってMMAモノマーと反応し酸化物や水酸化物が生成され、この酸化物や水酸化物が熱分解し重量減少する過程 [9]。第 2段階目の反応性状は290◦C 付近から始まり約 320◦C付近に吸熱のピークが見られ、吸熱分解反応が盛んになり分解ガスが発生し酸化熱分解が起こっている。第 3段階目の反応性状は 360◦C 付近に吸熱熱のピークが見られるが、この段階では酸化熱分解反応が進み燃焼が起こっていると考えられる過程。(ただし、400◦Cで図 4.11中の重量曲線が 0つまり試料が燃え尽きているにもかかわらず図 4.12の示差熱曲線にピークが見られるのは、ベースラインは補正をしていないためでこのピークが示差熱曲線の 0に相当する。) 図 4.11の TG曲線では約 270◦C付近から急激な重量減少が起こるが、図4.12の DTA曲線では約 290◦C付近で吸熱反応が起こるため温度上昇が抑制され、重量減少速度も制御されるが熱分解反応が進み燃焼していると考えられる。360◦C付近からは発熱反応であるが PMMAの重量は殆ど燃焼して試料が無くなっていると考えられる。一方、DTA曲線および重量減少速度曲線では、ガラス転移点温度のピークは DTA曲線に見られず、重量減少速度曲線曲線に顕著にみられる。

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図 4.11 PMMAの TG曲線 図 4.12 PMMAの重量減少曲線と示唆熱曲線

4.2.1 [R]無 - [X]無 図 4.13には、PMMAと PMMAに試料 1および試料 6を 3%の重量パーセントを添加した TG曲線を図示した。同時に図 4.14には DTA曲線を図示した。その結果、試料 1と試料 6に第 1段階の反応過程で重量減少に効果が見られ、特に試料 6は顕著に効果が見られる。第 1段階の反応過程では難燃性効果は十分に見られた。しかし、第 2段階過程では、PMMAより低い温度で反応が進んでいるがその差は小さいため、難燃効果は無いと考えられる。試料6も多少 PMMAより低い温度で反応が進んでおり、難燃効果はないと判断出来る。第 3段階でも難燃効果は見られなかった。試料だけの DTA曲線では、試料 1は 360◦C 付近に、試料 6は 380◦C 付近にアミン部位の発熱反応が起こり、その結果 PMMAの燃焼が起こりその付近に図 4.14に発熱ピークが現れている。

図 4.13 PMMA+試料 1と 6 の TG 曲線 図 4.14 PMMA+試料 1と 6 の DTA 曲線

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図 4.15 PMMA+試料 1 と 6 の DTG 曲線

以上より、試料 1、および試料 6は相転移による熱分解温度を下げる効果がある。

4.2.2 [R]無 - [X]有図 4.16 には、PMMA と PMMA に試料 1 および試料 6 を 3% の重量パーセントを添加した TG 曲線を図示した。同時に図 4.17には DTA曲線を図示した。その結果、第 1段階においては試料 3には難燃効果が見られるが、試料2、試料 4および試料 5は難燃効果は見られない。第 2段階から以降での難燃性効果はハロゲン元素によるラジカルトラップ効果が現れているためと思われるが、試料 5については殆ど効果が見られない。図 4.17では 290◦C付近からでは PMMAは吸熱反応であるにもかかわらず発熱現象が見られる、これはアミン部位の燃焼みよるものと考えられる。発熱ピークが 5, 3, 4, 2の順で高温になっており、そして、アルデヒド部位の熱分解・燃焼が起こり、5が早く熱分解し、アルデヒド部位に結合していた臭素が熱分解により放出され、臭素のラジカルトラップ効果により、第 3

段階の課程で難燃効果が認められる。しかし、アルデヒド部位に結合している 2個の臭素は 1個に比べ、結合エネルギーが高いため発熱ピークが高温側へシフトされているため、臭素の放出が多少遅くなるためその効果は低下していると思われる。この測定結果では、試料 2および試料 3に多少効果が見られるが、試料 2 ∼ 5は難燃効果がないと考えられる。

図 4.16 PMMA+試料 2、3、4と 5 の TG 曲線 図 4.17 PMMA+試料 2、3、4と 5の DTA 曲線

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図 4.18 PMMA+試料 2,3 の DTG 曲線 図 4.19 PMMA+試料 ,4と 5 の DTG 曲線

4.2.3 [R]有 - [X]無  PMMA+試料 7と試料 8および PMMAの TG図を図 4.20に、DTA図を図 4.21に図示した。その結果、試料 7

および試料 8には難燃効果が現れていると言える。図 4.21において発熱のピークの温度は試料 7より試料 8の方が低い。そのため、臭素が塩素より低い温度で熱分解により脱離し、臭素のラジカルトラップ効果により難燃効果が現れ塩素より、より高い効果にが現れていると考えられる。

図 4.20 PMMA+試料 7と 8の TG 曲線 図 4.21 PMMA+試料 7と 8 の DTA 曲線

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図 4.22 PMMA+試料 試料 7と 8 の DTG 曲線

5 反応速度論的考察表 3.2 試料 1 ∼ 試料 8 の難燃試薬単体と PMMA+ 難燃試薬 (重量 3%) の TG-DTA 曲線から反応速度論的考察を行った。

5.1 理論的考察

プラスチックなど可燃物の燃焼性状を論ずる場合には、燃焼熱 Qとともに物質の (酸化)熱分解に要する活性化エネルギー E といわれる値は、特に熱分解の容易さと関連して一つの重要な物性値となる。燃焼現象は可燃物と主として酸素との化学反応であるので酸素との反応に対する敏感さは、可燃物物質の化学構造、つまり原子的・分子的性質に大きな関係があり、とくに発火の初期にあってはまさにそうであると考えられる。可燃物の活性化エネルギーの量が、燃焼のし易さに大きくかかわりを持っている。固体物質についてはその燃焼性の判定基準は燃焼速度や発火温度で判定されているが、燃焼性はある程度の不確定さを持っている。しかし、活性化エネルギーについては,一定条件下において物質に特有な一定値として得られ,特に測定の容易さもあり,個体物質の燃焼性ないしは熱分解性についての判定基準となっている。本研究では、示差熱分析でよく知られている吸熱的分解反応に関する Kissinger[2] の手法を用いて発熱的熱酸化分

解反応に適用して評価する。活性化エネルギーは、分子レベルで反応を開始するに必要なエネルギーとしてよいが、理論的には反応速度定数 k

を表わす Arrhenius の式 (5.1)で示される。

k = A exp(− E

RT

)(5.1)

ここで、Aはエントロピー項あるいは頻度因子、E は活性化エネルギー、Rは気体定数、T は絶対温度である。一方、反応速度とは化学反応の反応物あるいは生成物に関する各成分量の時間変化率を表す物理量で、反応速度を

表現する式は濃度のべき関数として表現されている。反応速度式は次式 (5.2)で表した。

−dW

d t= k Wn (5.2)

ここで、W は試料の重量、tは時間、nは反応次数、そして k は反応速度定数である。反応次数 nおよび反応速度定数 k を求めるために式 (5.2)を対数変換すると次式 (5.3)が得られる。

log(−dW

d t

)= log k + n log W (5.3)

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変換した式 (5.3)から縦軸に −d W/d t、横軸に log W に付いてプロットする。プロット点に付いて直線関係が得られたら、その直線の傾きが反応次数 nとして得られ、この直線が縦軸を横切る点の座標の値が反応速度定数 k として得られる。図 5.1には試料 1の −dW/d tと log W の関係を図示した。

図 5.1 PMMA+試料 7のログプロット

その結果、ほぼ直線関係が得られ、その直線の傾きがほぼ 1 が得られたため、PMMAの熱分解反応の反応次数が1次であると仮定出来る。PMMAの熱分解は 1次反応と仮定したので、1次反応の反応速度式 (5.2)は次式 (5.4)で表される。

−d W

d t= k W (5.4)

活性化エネルギー E を求める方法は 1次反応速度式 (5.4)に式 (5.2)の反応速度定数 k を代入することにより次式(5.5)が得られる。

−dW

d t= AW exp

(− E

R T

)(5.5)

酸化熱分解ならば熱の発生があり、熱容量の関係式で表すと、次式が得られる

∆H = cM ∆T (5.6)

ここで、∆H は発生熱量、cM は熱容量、そして ∆T は温度上昇である。試料の温度変化は反応速度に比例すると考えられるため、次式 (5.7)が成立する。

d W

d t≈ ∆H ≈ ∆T (5.7)

反応が最も激しかった点をピーク温度 Tm とすると、このピーク温度 Tm は条件さえ一定なら各物質に固有な値として再現性よく得られるので, この点は,ある物理的意味をもっていると思われる。この Tm を求めることは可能で、関数 dW/d t の接線の勾配が 0となる位置である。反応速度関数 dW/d tを時間微分すると次式 (5.8)が得られる

d

d t

(dW

d t

)≡ ∂

∂T

(dW

d t

)d T

d t+

∂W

(dW

d t

)d W

d t≡ 0 (5.8)

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この式 (5.8)に式 (5.5)を代入すると

d

d t

(dW

d t

)=

d

d t

{−AW exp

(− E

R T

)}=

∂T

{−A W exp

(− E

R T

)}d T

d t+

∂W

{−A W exp

(− E

R T

)}d W

d t

= −AW · exp(− E

R T

)· E

RT 2· d T

d t− A · exp

(− E

R T

)dW

d t= 0 (5.9)

ここで、d T/d tは TG-DTAの昇温速度 φであるので、

d

d t

(dW

d t

)=

d

d t

{−AW exp

(− E

R T

)}= −AW · exp

(− E

R T

)· E φ

RT 2− A · exp

(− E

R T

)dW

d t

=dW

d t· E φ

RT 2− A · exp

(− E

R T

)d W

d t

=dW

d t·{

E φ

RT 2− A · exp

(− E

R T

)}= 0 (5.10)

しかし、熱分解している温度領域では重量減少が起こると考えられるので dW/d t 6= 0 となり、式 (5.10) より次式(5.11)が得られる。

E φ

RT 2m

= A · exp(− E

R Tm

)(5.11)

ここで、Tm はピーク温度つまり、d2 W/d t2 = 0 のときの温度とする。そして、式 (5.11)の両辺を自然対数をとる。

logE

R+ log

φ

T 2m

= log A − E

R

1Tm

(5.12)

そして、1/Tm で偏微分すると次式 (5.13)の関係が得られる。

(log

φ

T 2m

)∂

(1

Tm

) = −E

R(5.13)

この関係式 (5.13)によって、活性化エネルギー E を求めることが可能である。活性化エネルギー E を求めるには、昇温速度を一定にして DTAを測定し、発熱ピークの温度 Tm を求めればよい。 式 (5.13)は反応次数 n = 1としたが、n 6= 1のときに Appendixに活性化エネルギーを求める方法を記述したが、結果的に式 (5.13)に帰着される。 ここで、式 (5.13)を差分変換して、次の差分式 (5.14)で活性化エネルギーを算出した。

∆(

logφ

T 2m

)∆

(1

Tm

) = −E

R(5.14)

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5.1.1 試料 1 ∼ 試料 8の構造相転移の見かけの活性化エネルギー 図 7.27 ∼ 図 7.34から、表 5.1には試料 1 ∼試料 8の構造相転移のピーク温度、アミン部位の熱分解過程の重量減少速度 (DTG)曲線のピーク温度と示差熱 (DTA)曲線のピーク温度、そして、アルデヒド部位の酸化熱分解 (燃焼)

過程の重量減少速度曲線のピーク温度と示差熱曲線のピーク温度表を示した。

表 5.1 試料の DTGと DTAのピーク温度 (昇温速度 5◦C)

試料 構造 アミン部位 アルデヒド部位番号 相転移 DTG DTA DTG DTA

1 209 262 258 453 458

2 210 285 279 466 454

3 199 253 255 553 531

4 209 297 294 514 514

5 203 293 293 551 552

6 80 299 295 579 582

7 181 269 265 487 482

8 166 258 258 475 475

(単位 ◦C)

表 5.1より、DTG曲線のピーク温度と DTA曲線のピーク温度はほぼ同じと見なす事ができ、燃焼を伴う酸化熱分解による燃焼が重量減少と同時に瞬時に生じたことであると考えられる。同時に、昇温速度 (10◦C/min)での DTGデータ (図 7.27 ∼ 図 7.34 および図 7.61 ∼ 図 7.68)から、難燃剤の試料

1 ∼ 試料 8の 構造相転移の活性化エネルギー E を DTA曲線のピーク温度 Tm より求め、表 5.2に記した。

表 5.2 難燃剤試料の構造相転移活性化エネルギー

試料1 試料2 試料3 試料4 試料5 試料6 試料7 試料8E(kJ/mol) 1,007.7 949.8 941.0 944.7 934.8 713.9 915.0 888.9

ここで、ピーク温度 (Tm)は表 5.3に示すの測定値を用いた。

表 5.3 難燃剤試料の構造相転移点ピーク温度 (◦C)

昇温速度 試料1 試料2 試料3 試料4 試料5 試料6 試料7 試料85◦C/min 209 210 199 209 203 80 181 166

10◦C/min 234 194 196 190 186 87 177 188

5.1.2 PMMA+試料 1 ∼ PMMA+試料 8のガラス転移の見かけの活性化エネルギー 同様に、図 7.27 ∼ 図 7.34 から、表 5.4 には PMMA+ 試料 1 ∼ 試料 8 の相転移 (ガラス転移) のピーク温度、PMMAの第 1段階の熱分解過程の重量減少曲線のピーク温度と示差熱曲線のピーク温度、そして、第 2段階の酸化熱分解 (燃焼)過程の重量減少曲線のピーク温度と示差熱曲線のピーク温度表を示した。

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表 5.4 PMMA+試料の DTGと DTAのピーク温度 (昇温速度 5◦C)

試料 ガラス 第 1段階 第 2段階番号 転移 DTG DTA DTG DTA

PMMA 115 327 323 381 384

PMMA+1 99 - - 369 370

PMMA+2 115 - 292 363 360

PMMA+3 103 - - 359 361

PMMA+4 97 - 294 335 342

PMMA+5 94 265 265 352 353

PMMA+6 83 - 284 358 360

PMMA+7 111 - 244 359 365

PMMA+8 134 - 270 383 385

(単位 ◦C)

 ここで、- は (-dw/dt)の値のピークがど殆ど判別が出来なかった。また、PMMAのガラス転移の見かけの活性化エネルギー E を DTG曲線のピーク温度 Tm より求め表 5.5に記した。

表 5.5 PMMA+難燃剤試料の相転移 (ガラス転移)活性化エネルギー

PMMA 試料1 試料2 試料3 試料4 試料5 試料6 試料7 試料8E(kJ/mol) 795.7 780.4 778.5 697.2 760.1 799.1 722.0 775.0 745.8

ここで、ピーク温度 (Tm)は表 5.6に示す測定値を用いた。

表 5.6 PMMA+難燃剤試料のガラス相転移点ピーク温度 (◦C)

昇温速度 PMMA 試料1 試料2 試料3 試料4 試料5 試料6 試料7 試料85◦C/min 115 99 115 103 97 94 83 111 134

10◦C/min 135 137 118 51 118 163 93 118 70

5.2 分子構造と耐熱性オレフィン系プラスチックは酸素中での活性化エネルギー E は、炭素と結合している各級水素原子の効果によって決まる。炭素ー水素間の結合エネルギーは、 CH3 > CH2 > CH の順に低下することが知られている [5]。第 3 級炭素上の水素 (C-H)は、第 2 級、第 1 級水素に比べて引き抜かれやすく、酸化反応を受けやすいことを意味している。この性質をもとに、耐熱性高分子は、架橋型高分子にしたり、水素を主鎖に含まないようにした高分子にすることが重要である (例えば、グラファイト構造を持つ炭素繊維 (架橋構造でもあり主鎖に水素が存在しない)がある)。これは、熱分解に達するまでに、主鎖構造が分子間反応 (分子内反応)により変化し、その立体効果により活性化エネルギー E

の小さな水素原子は低温で引き抜かれるが、酸素との反応が妨げられる。しかしやがて高温となり酸化反応が始まる

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5.3 結論・考察 プラスチックなど高分子量材料のガラス転移領域では発熱・吸熱はほとんどなく、非結晶部に存在する低分子がこの温度域でガス化され重量減少が起こっていると考える。ガラス転移に要する活性化エネルギーの算出に TG-DTA

に基づく Kissingerの考え方を応用し、重量減少速度のピーク温度を用いることで適用可能であるとが言えた。トランス型シッフ塩基金属錯体のアミン部位にハロゲン化合物を付加した難燃剤にもっとも効果が見受けられた。

錯体の吸熱構造相転移反応に加えて、ハロゲンによる酸素遮断効果との相乗効果が得られたと考えられる。トランス型シッフ塩基金属錯体の金属として Cuを用いた。アミン部位およびアセチル部位にハロゲン元素が結合

しているとき、この錯体が熱分解して有機ハロゲン化合物が生成されると、反応式 (5.15)で示されるように、有機ハロゲン化物と金属とが直接反応する。難燃剤としてのハロゲン元素は触媒効果をもたらすが、ハロゲン化金属については、KBrはその効果があるが、トランス型シッフ塩基金属錯体に用いられている金属は Cu(II)であるのでハロゲン化第二銅 (CuBr2)が生成されたとしても難燃効果にはほとんど影響しないと判断できるが、還元剤等が含まれている場合は酸化第一銅が生成されるので、ハロゲンによる難燃効果の評価をしなければならない。一般的に、有機ハロゲン化物と金属との直接反応を次式 (5.15)で示した。

RX + 2M −→ R M + M X (5.15)

ここで、Mは金属で、Na、K、Cu(I)などがある。また、Xはハロゲン元素で F、Cl、Br、I である。また、ORやSRもハロゲンと同じ機能を持つことが知られている。ただし、Oは酸素で Sは硫黄、Rは有機化合物である。あるいは次式 (5.16)の有機ハロゲン化物と金属との直接反応もある。

RX + M’−→ RM’X (5.16)

ここで、M’は金属でMg、Ca、Ba、Znなどの2価の金属である。メトオキシルの電子誘起効果を示す反応式を図 5.2に示した

図 5.2 メトキシ基の誘起効果

本研究で提案した、トランス型シッフ塩基金属錯体を難燃剤とした試料、特に試料7および試料8は効果があり、実用化に大きく期待出来ると考えられる。

参考文献

[1] 日ゴム協誌, 47, pp803 (1974)

[2] H. E. Kissinger,Reaction Kinetics in Differential Thermal Analysis, Anal. Chem. , 29 (11) , pp1702-1706

(1957)

[3] 神戸博太郎, 熱重量分析による高分子の耐熱性の評価,プラスチックス, Vol.18 (11) , pp8-16 (1967)

[4] Svante Arrhenius, Recherches sur la conductivite galvanique des ?lectrolytes, Royal publishing house (1884)

[5] 高分子の熱酸化, 培風館, pp. 295-312 (1970)

[6] Rizwan HUSSAIN, Din MOHAMMAD, X-ray Diraction Study of the Changes Induced During the Thermal

Degradation of Poly (MethylMethacrylate) and Poly (Methacryloyl Chloride), Turk J Chem, Vol. 28, pp725-

729 (2004)

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[7] N. Grassie, Chemistry of High Polymer Degradation Processes, Butterworths, UK, p. 32,(1956)

[8] Ferriol M, Gentilhomme A, Cochez M, Oget N and Mieloszynski JL., Thermal degradation of poly(methyl

methacrylate) (PMMA): modelling of DTG and TG curves. Polym. Degrad. Stab. 2003; 79: 271?281.

[9] Holland BJ, Hay JN. The effect of polymerization conditions on the kinetics and mechanisms of thermal

degradation of PMMA. Polym. Degrad. Stab. 2002; 77: 435?439.

[10] Kashiwagi T, Inaba A, Brown JE, Hatada K, Kitayama T, Masuda E. Effects of weak linkages on the

thermal and oxidative degradation of poly(methyl methacrylates). Macromolecules 1986; 19: 2160?2168.

[11] SURENDER KUMAR, VINOD KUMAR and SUBHASH MALIK,Synthesis and thermal characterization

of polymethyl methacrylate, Oriental Journal of Chemistry, Vol. 24(2), pp659-664 (2008)

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6 Appendix

I 活性化エネルギー可燃物が酸素と反応して CO2, H2Oその他の燃焼生成物に変化するとき、両者のエネルギーレベルの差が燃焼熱

∆H になる。しかし可燃物が酸素の共存下でもそのままでは燃えない。最初なんらかの形でエネルギーを与える必要がある。初め室温付近では基底状態にあったものが、温度の上昇とともに振動レベルが上方に遷移し、エネルギー障壁を越えて反応が進行する。このエネルギー障壁の高さが,すなわち活性化エネルギー E (正確には Enthalpy of

Reaction)といわれるものであって,もしこの値が小さければ反応しやすいし燃えやすい。逆にこの値が大きいと反対に燃えにくくなる.一方、物質の燃焼については、最小発火エネルギー量は分子レベルでなくマクロな物体の発火に要するエネルギーで、活性化エネルギーのほかに,燃焼熱・爆発限界,さらには拡散・比熱・熱伝導度など分子の集合状態における性質に関わる。活性化エネルギーとは,分子レベルで反応、を開始するに必要なエネルギーとしてよいが,理論的には反応速度定

数 k を表わす Arrheniusの式 [4](6.1)で表される。

k = A exp(− E

RT

)(6.1)

ここで、Aはエントロピー項あるいは頻度因子、E は活性化エネルギー、Rは気体定数、T は絶対温度である。一方、反応速度とは化学反応の反応物あるいは生成物に関する各成分量の時間変化率を表す物理量で、反応速度を

表現する式は濃度 (x)のべき関数として表現されている。反応速度式は次式 (6.2)で表した。

−d x

d t= A (1 − x)n exp− E

R T(6.2)

熱酸化分解ならば熱の発生がみられる.熱容量の関係式

∆H = cm ∆T (6.3)

ここに, cm: 熱容量, ∆H: 発生熱量,∆ T : 温度上昇において、次式 (6.4)が成り立っと考えられるから,試料の温度変化は反応速度に比例すると定義する。

d x

d t' ∆H ' ∆T (6.4)

物質を酸化性雰囲気中において、時間とともに次第に温度を上げながら可燃物試料の温度上昇を測定すると、低温領域では反応が起こらないため、試料周辺の温度分布は温度上昇させたまま推移する。やがてその物質に固有なある温度以上になると,表面で酸化が始まり,熱が発生してくる。周辺温度の上昇とともに反応速度は増し、それに応じて試料温度は上昇していく。そして温度がピーグに達っする。ついで物質が酸化熱分解され消費されるにつれて再び試料周辺の温度分布は温度上昇時の温度に戻る。したがって、反応が最も激しかった点 (ピーク点)はどこかを見つけることが重要である。このピーク温度 Tm は条件さえ一定なら各物質に固有な値なので、このピーク温度 Tm の点は物理的意味をもっている。ところで,この Tm は関数 dx/dt曲線の接線の勾配が 0となる温度である。その計算式が

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H. E. Kissinger[2] によって報告されており,次式 (6.5)のようになる。

P ≡ d

d t

(d x

d t

)≡ ∂

∂T

(d x

d t

)d T

d t+

∂x

(d x

d t

)d x

d t≡ 0

=∂

∂ T

[A(1 − x)n exp

(− E

R T

)]d T

d t+

∂ x

[A(1 − x)n exp

(− E

R T

)]d x

d t

=[A(1 − x)n exp

(− E

R T

)· E

R T 2

]d T

d t−

[An (1 − x)n−1 · exp

(− E

R T

)]d x

d t

=d x

d t· E

R T 2· φ −

[An (1 − x)n−1 · exp

(− E

R T

)]d x

d t

=d x

d t

{E φ

R T 2− An (1 − x)n−1 · exp

(− E

R T

)}(6.5)

ここで dT/dt は昇温速度 φとおいた。また、dx/dt 6= 0なので、P = 0となるときのピーク温度を Tm およびその時の濃度を xm とおくと

E φ

R T 2m

− An (1 − xm)n−1 · exp(− E

R Tm

)= 0 (6.6)

ところで、実験的に n (1 − xm)n−1 ' 1 [2] なので、結局次式 (6.7)で表される

E φ

R T 2m

= A exp(− E

R Tm

)(6.7)

両辺に logを作用させると

logE

R+ log

φ

T 2m

= log A − E

R· 1Tm

(6.8)

両辺を 1/Tm で偏微分する

(log

φ

T 2m

)∂

(1

Tm

) = −E

R(6.9)

活性化エネルギー E を求めるには、昇温速度を一定にして DTAを測定し、発熱ピークの温度 Tm を求めればよい。つまり、縦軸に log

T 2m

)の値、横軸に 1

Tmの値を取り、その傾きが −E

Rとなるので、その傾きに −R倍すれば活

性化エネルギー E が得られる

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7 測定データー

7.1 難燃剤の TG測定 (昇温速度 5◦C/min)

図 7.1 ∼ 図 7.8にはそれぞれの難燃剤の試料 1 ∼ 試料 8 の重量減少と温度との関係をそして昇温速度の関係 (温度と時間の関係)をそれぞれ図示した。

図 7.1 試料1の TG曲線 図 7.2 試料2の TG曲線

図 7.3 試料3の TG曲線 図 7.4 試料4の TG曲線

図 7.5 試料5の TG曲線 図 7.6 試料6の TG曲線

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図 7.7 試料7の TG曲線 図 7.8 試料8の TG曲線

7.2 難燃剤の TG-DT測定 (昇温速度 5◦C/min)

図 7.27 ∼ 図 7.34にはそれぞれの難燃剤の試料 1 ∼ 試料 8 の重量減少速度と温度との関係および示差熱と温度の関係をそれぞれ図示した。ただし、それぞれの図中の赤色線は重量減少速度曲線で青色線は示差熱曲線である。

図 7.9 試料1の DTGと DTA曲線 図 7.10 試料2の DTGと DTA曲線

図 7.11 試料3の DTGと DTA曲線 図 7.12 試料4の DTGと DTA曲線

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図 7.13 試料5の DTGと DTA曲線 図 7.14 試料6の DTGと DTA曲線

図 7.15 試料7の DTGと DTA曲線 図 7.16 試料8の DTGと DTA曲線

7.3 PMMA+難燃剤 (3%)の TG測定 (5◦C/min)

図 7.17には PMMAの重量減少と時間との関係を図示した。また、図 7.18 ∼ 図 7.25には、PMMAにそれぞれの難燃剤の試料 1 ∼ 試料 8 を添加したサンプルの重量減少と時間の関係をそして昇温速度の関係 (温度と時間の関係)をそれぞれ図示した。

図 7.17 PMMAの TG曲線 図 7.18 PMMA+試料1の TGA曲線

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図 7.19 PMMA+試料2の TG曲線 図 7.20 PMMA+試料3の DTGと DTA曲線

図 7.21 PMMA+試料4の TG曲線 図 7.22 PMMA+試料5の TG曲線

図 7.23 PMMA+試料6の TG曲線 図 7.24 PMMA+試料7の TG曲線

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図 7.25 PMMA+試料8の TG曲線

7.4 PMMA+難燃剤 (3%)の TG-DT測定 (昇温速度 5◦C/min)

図 7.26には PMMAの重量減少速度と温度との関係および示差熱と温度の関係を図示した。また、図 7.27 ∼ 図 7.34

には、PMMAにそれぞれの難燃剤の試料 1 ∼ 試料 8 を添加したサンプルの重量減少速度と温度との関係および示差熱と温度の関係をそれぞれ図示した。ただし、それぞれの図中の赤色線は重量減少速度曲線で、青色線は示差熱曲線である。

図 7.26 PMMAの DTGと DTA曲線 図 7.27 PMMA+試料1の DTGと DTA曲線

図 7.28 PMMA+試料2の DTGと DTA曲線 図 7.29 PMMA+試料3の DTGと DTA曲線

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図 7.30 PMMA+試料4の DTGと DTA曲線 図 7.31 PMMA+試料5の DTGと DTA曲線

図 7.32 PMMA+試料6の DTGと DTA曲線 図 7.33 PMMA+試料7の DTGと DTA曲線

図 7.34 PMMA+試料8の DTGと DTA曲線

7.5 難燃剤の TG測定 (昇温速度 10◦C/min)

図 7.35 ∼ 図 7.42にはそれぞれの難燃剤の試料 1 ∼ 試料 8 の重量減少と時間の関係をそして昇温速度の関係 (温度と時間の関係)をそれぞれ図示した。

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図 7.35 試料1の TG曲線 図 7.36 試料2の TG曲線

図 7.37 試料3の TGA曲線 図 7.38 試料4の TG曲線

図 7.39 試料5の TG曲線 図 7.40 試料6の TG曲線

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図 7.41 試料6の TG曲線 図 7.42 試料8の TG曲線

7.6 難燃剤の TG-DT測定 (昇温速度 10◦C/min)

図 7.61 ∼ 図 7.68にはそれぞれの難燃剤の試料 1 ∼ 試料 8 の重量減少速度と温度との関係および示差熱と温度の関係をそれぞれ図示した。ただし、それぞれの図中の青色線は重量減少速度曲線で赤色線は示差熱曲線である。

図 7.43 試料1の DTGと DTA曲線 図 7.44 試料2の DTGと DTA曲線

図 7.45 試料3の DTGと DTA曲線 図 7.46 試料4の DTGと DTA曲線

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図 7.47 試料5の DTGと DTA曲線 図 7.48 試料6の DTGと DTA曲線

図 7.49 試料7の DTGと DTA曲線 図 7.50 試料8の DTGと DTA曲線

7.7 PMMA+難燃剤 (3%)の TG測定 (昇温速度 10◦C/min)

図 7.51には PMMAの重量減少と時間との関係を図示した。また、図 7.52 ∼ 図 7.59には、PMMAにそれぞれの難燃剤の試料 1 ∼ 試料 8 を添加したサンプルの重量減少と時間との関係をそして昇温速度の関係 (温度と時間の関係)

をそれぞれ図示した。

図 7.51 PMMAの TG曲線 図 7.52 PMMA+試料1の TG曲線

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図 7.53 PMMA+試料2の TG曲線 図 7.54 PMMA+試料3の TG曲線

図 7.55 PMMA+試料4の TG曲線 図 7.56 PMMA+試料5の TG曲線

図 7.57 PMMA+試料6の TG曲線 図 7.58 PMMA+試料7の TG曲線

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図 7.59 PMMA+試料8の TG曲線

7.8 PMMA+難燃剤 (3%)の TG-DT測定 (昇温速度 10◦C/min)

図 7.60には PMMAの重量減少速度と温度との関係および示差熱と温度の関係を図示した。また、図 7.61 ∼ 図 7.68

には、PMMAにそれぞれの難燃剤の試料 1 ∼ 試料 8 を添加したサンプルの重量減少速度と温度との関係および示差熱と温度の関係をそれぞれ図示した。ただし、それぞれの図中の青色線は重量減少速度曲線で赤色線は示差熱曲線である。

図 7.60 PMMAの DTGと DTA曲線 図 7.61 PMMA+試料1の DTGと DTA曲線

図 7.62 PMMA+試料2の DTGと DTA曲線 図 7.63 PMMA+試料3の DTGと DTA曲線

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図 7.64 PMMA+試料4の DTGと DTA曲線 図 7.65 PMMA+試料5の DTGと DTA曲線

図 7.66 PMMA+試料6の DTGと DTA曲線 図 7.67 PMMA+試料7の DTGと DTA曲線

図 7.68 PMMA+試料8の DTGと DTA曲線

謝 辞研究指導および助言をして下さった森田昌宏教授、そして実験および研究指導・助言をして下さった理学部第二部科学科の秋津貴城准教授に深く感謝致します。また、秋津研究室の皆様方には常に支えて頂き、助言をして下さり、励まして下さったことを厚く感謝致します。

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