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中国語 527 中  国  語 第1 高等学校教科担当教員の意見・評価 1 前     文 大学入試センター試験(以下「センター試験」という。)の「中国語」受験者は389名で、「外国 語」受験者全体の0. 07%であった。これは、「英語」の99. 85%を別にすれば、他の外国語の中で 占める割合は非常に高い。最近5年間では20年度の460名をピークとして、その後の2年間で約 50名ずつの減少傾向を示していたが、昨年度はやや増加し、今年度はほぼ横ばいの傾向を示して いる。 平成 24 年度センター試験を以下の3点をよりどころとして検討 ・ 評価に当たることにする。 ⑴ センター試験は「高等学校における基礎的な学習達成」の程度を判断することを主たる目的と する」試験であるという観点に立ち、高等学校学習指導要領「外国語」の目標を重視する。 ⑵ 高等学校教育現場からの「高等学校における学習の成果が総合的・客観的に判断できる出題」 となっているかについて、次の「四つの基本的要望」が尊重されているか。 ① 細かすぎる難解な語法を問うことはせず、基本的な文法力を問うこと。 ② 難解問題は分量の負担を少なくし、高校生になじみやすいテーマを選び、分かりやすい簡素 な文章を出題すること。 ③ ピンインを重視して出題すること。 ④ 論理的な説明が難しいような出題は避けること。 ⑶ 平成 23 年度の問題作成部会の見解「問題作成の原則」と「問題作成の方針」を参考とする。 2 試験問題の内容・範囲等 第1問 昨年と同じく発音の基礎を確認する問題で、出題された単語もほぼ高校生にとって難し いものはなく良問であった。 A 昨年と同じく、 1 4 の中から下線部の声母の違うものを一つずつ選ぶ問題である。 問1  1 校长(Xiàozhǎng)”以外は、 2 衬衫(chènshān)”以下、全て声母は(ch)で ある。“”は多音字で、(zhǎng)と(cháng)の二つの音があるが、基本的な設問であ り、良問である。 問2  3 辅导(fǔdǎo)”以外は、 1 呼吸(hūxī)”他、すべての声母は(h)である。高 等学校で学習する範囲の単語であるので良問である。 B これも昨年度と同じく下線部の韻母の異なるものを選ぶ問題で、発音の基礎を確認する問 である。出題された単語もほぼ高校生にとって難しいものはなく良問であった。 問1  4 拐弯(guǎiwān)”で迷った受験者もいた可能性はあるが、“往右拐”等の用法は 初級の会話文でもよく登場するので、難しいものではなかった。 問2 昨年度は見られなかった四字熟語での出題である。下線部に関しては基本的な語句で あるが、四字熟語で出題した意図が感じられない。

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Page 1: 中 国 語ある。“长”は多音字で、(zhǎng)と(cháng)の二つの音があるが、基本的な設問であ り、良問である。問2 3“辅导(fǔdǎo)”以外は、1“呼吸(hūxī)”他、すべての声母は(h)である。高

中国語

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中  国  語

第1 高等学校教科担当教員の意見・評価

1 前     文

大学入試センター試験(以下「センター試験」という。)の「中国語」受験者は389名で、「外国

語」受験者全体の0. 07%であった。これは、「英語」の99. 85%を別にすれば、他の外国語の中で

占める割合は非常に高い。最近5年間では20年度の460名をピークとして、その後の2年間で約

50名ずつの減少傾向を示していたが、昨年度はやや増加し、今年度はほぼ横ばいの傾向を示して

いる。

平成24年度センター試験を以下の3点をよりどころとして検討・評価に当たることにする。

⑴ センター試験は「高等学校における基礎的な学習達成」の程度を判断することを主たる目的と

する」試験であるという観点に立ち、高等学校学習指導要領「外国語」の目標を重視する。

⑵ 高等学校教育現場からの「高等学校における学習の成果が総合的・客観的に判断できる出題」

となっているかについて、次の「四つの基本的要望」が尊重されているか。

① 細かすぎる難解な語法を問うことはせず、基本的な文法力を問うこと。

② 難解問題は分量の負担を少なくし、高校生になじみやすいテーマを選び、分かりやすい簡素

な文章を出題すること。

③ ピンインを重視して出題すること。

④ 論理的な説明が難しいような出題は避けること。

⑶ 平成23年度の問題作成部会の見解「問題作成の原則」と「問題作成の方針」を参考とする。

2 試験問題の内容・範囲等

第1問 昨年と同じく発音の基礎を確認する問題で、出題された単語もほぼ高校生にとって難し

いものはなく良問であった。

A 昨年と同じく、 1 ~ 4の中から下線部の声母の違うものを一つずつ選ぶ問題である。

問1  1 “校长(Xiàozhǎng)”以外は、 2“衬衫(chènshān)”以下、全て声母は(ch)で

ある。“长”は多音字で、(zhǎng)と(cháng)の二つの音があるが、基本的な設問であ

り、良問である。

問2  3“辅导(fǔdǎo)”以外は、 1 “呼吸(hūxī)”他、すべての声母は(h)である。高

等学校で学習する範囲の単語であるので良問である。

B これも昨年度と同じく下線部の韻母の異なるものを選ぶ問題で、発音の基礎を確認する問

である。出題された単語もほぼ高校生にとって難しいものはなく良問であった。

問1  4“拐弯(guǎiwān)”で迷った受験者もいた可能性はあるが、“往右拐”等の用法は

初級の会話文でもよく登場するので、難しいものではなかった。

問2 昨年度は見られなかった四字熟語での出題である。下線部に関しては基本的な語句で

あるが、四字熟語で出題した意図が感じられない。

Page 2: 中 国 語ある。“长”は多音字で、(zhǎng)と(cháng)の二つの音があるが、基本的な設問であ り、良問である。問2 3“辅导(fǔdǎo)”以外は、1“呼吸(hūxī)”他、すべての声母は(h)である。高

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C これも昨年度と同じ見出し語と同じ声調の組合せを選ぶ問題である。昨年度は問1・2が

二字熟語、問3が三字熟語だったが、今年度の問題では問1が二字熟語、問2が三字熟語、

問3が四字熟語となった。熟語からの出題で、正しい声調の理解を問う問題で、良問であ

る。

正解が「一つ」か、「なし」に偏っているため、選択肢が四つある中から選ばせる問いと

しては工夫が感じられない。受験者の側から考えれば、「これで正しいのか」と思い悩む者

もいると思われるため、改善していただきたい。

D 昨年同様、見出し語の下線部と同じ発音(声母・韻母・声調)を含むものが幾つあるかを

問う問題である。

問1 見出し語の“邀请(yāoqǐng)”と選択肢a“激动(jīdòng)”で迷った受験者はいた

と思われるが、選択肢は基本的な語彙であり、良問である。

問2 見出し語と選択肢は基本的な語彙であり、良問である。

問3 前鼻音<-n>と奥鼻音<-ng>を問う問題である。基本的な設問であり、良問である

が、正答率は意外と低かった。

第2問 昨年同様、Aはピンインを使い、会話文を完成する問題で、昨年度と比較して会話文が

長くなっているが、流れを的確につかむことができ、良問である。Bは簡体字で書かれた文の

空欄に類義語を補充する問題であり、正確な知識を問う良問である。Cは基本的にBと似てい

るが、「適当でないもの」を選ぶ問題であり難易度が高い。

A 昨年同様、会話文をピンインで出題し、ピンインを重視している意図が感じられた。文の

量も適切な文字数であった。

問1 日本の漫画を海外に紹介したいという学生の会話をテーマとした比較的容易な会話文

で流れも適切である。使用されている単語も高校生も高校学習するものであり、良問であ

る。

問2 電話の取り次ぎ場面を設定した会話文である。これも、使用されている単語や表現が

高校生として適当であり、良問である。

問3 会話文と選択肢の内容は適切であり良問である。昨年同様、各会話文が短いと正答率

が下がる傾向にあり、作題者の工夫が感じられる。

B 類義語から正答を導く問題である。中国語に精通する知識が求められ、高校生にとっては

やや難問であるが、外国語を学習する上で、避けて通れない設問であり、良問である。

問1  2“遭遇”の名詞用法(不遇・不運)を想起できれば解決できるが、高校生にはやや

難問の部類に入る。

問2 正答の 1 “允许”が「許す・承諾する」の意味であることが分かれば正答にたどり着

く。日本人にとっては“承认”は中国語では国家間の取り決め等に使われる語であること

を知識として持っている必要がある。

問3  1 “明白”は「疑問に思っていたことが分かる」、 2“懂得”は「語の後ろには動詞

句や主述句が来る」、 4“把握”は「抽象的物事を捉える」の意味であり、正答 3“了解”

を導くことができるが、難易度の高い問題である。

C 昨年と同じく、Bと同じ類義語を問うものだが、「適当でないものを」問う形になってい

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る。Bより難易度が上がっていると思われる。

問1 選択肢は全て重要語であり、適切である。選択肢 2“急忙”のみ、「慌てる」の意味

があるので、他の選択肢と比較すれば正答は導ける。

問2 正答は 1 “继续”だが、空欄の直後に“了”があることに着目する必要がある。

“继续”は直後に“了”を伴った場合、状況が良くない方向に向かうこと表すので、ここで

は不適である。

問3 「海を埋め立てて飛行場を建設することが最近では…」の「…」に入る語を選択する

問題である。 4“惊讶”だけが「いぶかしむ」意味を持っており、他と比べた場合、不適

な単語となる。“惊讶”は教科書では余り出てくる単語ではなかったためか、正答率は第

2問の中で最も低かった。

第3問 Aは例年通り八つの選択肢から五つを選び並び替え、指定の空欄に入る語を選択する問

題である。一見易しそうにも見えるが、日本語から中国語を導き出すのは高校生レベルでは難

度が高い問題だと言える。Bは与えられた日本語に相当する中国語(ピンイン)を選ぶ問題で

あり、Cは与えられた中国語(ピンイン)に相当する日本語を選ぶ問題である。

A 日常の会話であり、テキストに出てくるような問題で、良問である。

問1 使役の兼語文の理解を確認する良問である。

問2 “搬到家里”が分かれば、     の正答は導けるのが、全文を正しく中国に訳せた

かの確認はできないので、空欄の位置を考慮する必要がある。

問3 問題文「あと二三日」の「あと」を 1 “再”、 2“还”のどちらを選ぶかの問題であ

る。良問である。

問4  1 “得”、 3“地”と 5“向”、 8“对”の二者の選択で迷ったのか、問題文の「人に

厳しい」から 2“教训”、 6“要求”で迷ったのか、正答率は低かったが、よく考えれば

できる問題であり、良問である。

B 見出しの日本語に相当する中国語(ピンイン)を選ぶ問題である。日本語文がこなれてい

て難易度も高かった。

問1 反語表現の中国語訳が正確にできるかを問う問題である。 2“nǐ shuō shénme dōu

méiyou yòng.”、 4“nǐ shuō shénme zīgé shuō wǒ?”で迷うところだと考えられる。

問2 「やぶをつついて蛇を出す」の日本語の理解がどの程度かに掛かる問題である。

C 見出しの中国語(ピンイン)に相当する日本語を選ぶ問題である。

問1 見出し文の冒頭にある反語表現“Shéi shuō”をどう処理するかが重要だと思われる。

また、“shàng le niánjì de rén”の日本語訳を確認する問題である。正答率は低いが、良

問である。

問2 “shéme~shéme”二つの“shéme”の呼応関係を問う問題であり、良問である。

第4問 例年、表やグラフ等が使われ、作題者の創意工夫を感じるところである。

A 最初に日本を訪れる外国人旅行者の数の推移を述べ、次にその中でも割合の高いアジアの

新興国と言われる韓国と中国からの旅行者の推移を作図化して示したものである。また、日

本政府の外国人誘致への取組についても説明を加えている。内容もタイムリーなものであ

り、文章量も適切である。

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問1 表の2009年度上半期の47. 8万人に増加率47. 4%を加える問題で、計算を正確に行え

ば正答は導き出せるもので素直な良問である。

問2 “使得”の用法が正確に理解することと、第二・三段落の内容が理解出来ている必要

がある。

問3 問題文の読解力を問う設問である。選択肢の日本語も比較的素直であり良問だが、正

答率は低かった。

B 昨年度と異なり、会話文の出題となった。内容は“世界读书日”「世界本と著作権の日(世

界本の日)」をテーマとした二人の会話である。内容は高校生レベルでも取り組みやすいも

のである。  はすぐ後ろのAの会話“当天各家书店的图书都打八五折。”が読み取れれば

容易に正解に結び付く。  も前後のAの会話を読めば容易に正答を得られる。

会話文の内容や分量も適当であり、高校生に合った良問である。

C バレンタインデーに中国では男性が女性にバラの花を贈る習慣があることをテーマにした

会話文で、内容的にも比較的平易なものである。  では、仮に“七成”の表現に習熟して

いなくとも前後関係を読めばおおよその想像は付けられる。  も後ろの会話を読めば正答

にたどり着くことは比較的容易である。

第5問 随筆の抜粋を使った長文読解問題である。子供の頃、星空を眺めた印象と現代の印象の

違いを述べたもので、字数も560字程度で受験者にも適当である。文中に李白の詩「静夜思」

の一節“举头望明月 低头思故乡”が出ているが、これは高校1年で学習するものであり、適

切である。

問1 問題文のピンインを漢字に改め、そこから日本語訳を求める問題である。問題文中の使

役の“ràng(让)”や様態補語の“de(得)”、“bùdébù(不得不)”の用法を正確に理解出来

ている必要がある。出題形式も妥当なものであり、良問である。

問2 副詞、介詞、接続詞などの基本的な知識と、文章の正確な理解が求められる問題であ

り、基本的な良問である。

問3 筆者が幼かった頃見上げた夜空が、“如今不一样。”という一文を挟んで、  以降に来

る具体例の前に入る文を選ぶ問題である。選択肢の文も難解なものはなく、適当な良問であ

る。

問4 “不是~而是”、“尽管~但是”、“不但~而且”等の高校で学ぶ呼応パターンの理解度を

問うものである。問題文をよく読み前後関係を理解できれば正答できる問題である。

問5 指示語“它”の内容を問う問題である。“也许”によって導かれる四つの部分を正確に

理解出来れば、その主語を見つけることができる。

問6 前問  の主語に対する述部を問う問題である。この前にも“也许”によって導かれる

部分があるので、注意深く読み進めれば正答は得られる。

問7 万一、“悄悄地”の意味が分からなくても、その後の部分を読めば答えは導かれる。

“人生态度”の訳で悩んだ受験者も多かったのではないだろうか。

問8 本文の内容と一致するもの(日本語)を二つ選ぶ問題である。本文にはない選択肢を消

去することによって、正解を導き出せる。

第6問 評論に属する文章である。文字数も580文字程度で昨年とほぼ同じ分量である。以前は

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3738

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問題文だけで2ページに渡るものもあったが、最後の設問であることを考えれば、受験者には

この程度の分量が適当であると思われる。

問1 “是…的”の用法を問う問題である。ここの“是…的”は話し手の見方、見解や態度な

どを表現するものである。このことが理解できていれば、正答にたどり着くことができる。

設問として、過去には余り見られなかったものであり、よく吟味された問題で、良問であ

る。

問2 与えられた選択肢を順番通りに並べて、  に最適な文を組み立てる問題である。選択

肢オの“如果”が導ける条件を考えていき、それぞれの程度等を考慮すれば正答を導ける。

程度の高い部類の設問と思われるが、正答率はかなり高かった。読解力を問う問題として良

問である。

問3 下線部50“热衷”と意味として最適なものを四字の語から選ぶ問題である。

問4   に入れるのに最も適当な中国語で書かれた文を選ぶ問題である。この空欄の前の表

現が抽象性が高いもので、文も長くなっていることから正答率が低くなったものと思われ

る。とは言え、問題文の主題を理解するためには大切な問題であり、良問である。

問5 中国語で書かれた文の日本語訳を問う問題である。“只要一交谈、就…”で“只要…、

就…”の用法に気付けば正答は導ける。

問6 ピンインで書かれた中国語の日本語訳を問う問題である。“bù néng bù”と“qǐtú”が

理解出来ていることや、この下線部の前の文章の内容が理解できていれば、正答は得られる

と思われる。

問7 本文の内容と一致する日本語文を八つの選択二つ選ぶ問題である。問題文自体が抽象性

の比較的高いものであり、表現にも難しいものがあることから、高い読解力を求められる。

選択肢も非常によく練られた良問である。

3 分 量・程 度

⑴ 分   量

80分の試験時間内で解答するにはやや難しい分量であった。昨年通り大問6題で55問の設問

が出題され、長文読解の文字数も第5問は460字程度、第6問も630字程度であり、この二題の

長文読解問題は昨年度までお願いしていた600字程度という意見が生かされた形になっていた。

⑵ 程   度

今回は各大問ごとの程度と得点率の低かったものについて、考察を加えたい。

第1問 出題形式を変えて、発音、ピンイン、声調を単語レベルで問うものである。出題されて

いる単語もとりわけ難解なものもなく、全体の得点率も高かったが、程度は妥当である。中で

やや低かったものは  である。

第2問 Aは単なる知識を見る問題ではなく、会話文の中で運用能力と思考力を測るもので、そ

の程度も難しすぎず適切である。B・Cは類義語の理解を見る問題である。程度の高い問題で

あるが、今回の出題は高校生の学習範囲にある。

C 問3   の得点率が低かった。類義語の中から適当でないものを選ぶ問題であるため難

易度が増している。問題文の意味は理解できたと思うが、選択肢の単語の理解不足で、特に

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51

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“惊讶”が難しかったと思われる。

第3問 Aは日本語文を与えられた語句を使い、並び替えて中国に訳す問題であり、日常会話の

理解の程度を見る良問である。Bは例年日本語がこなれすぎている傾向あったが、慣用表現も

今年度の程度にとどめていただきたい。

A   -  の得点率が極端に低かった。「私たちに」の中国語訳として“对我们”の“对”

を“向”に間違えたのか、「厳しくしないでください。」で、様態補語“要求得太严格”を導

け出せなかったかであるが、単語も文法も難解なものではなく程度も妥当である。

B 問2   日本語文の訳をピンイン文の選択肢から選ぶ問題で、「薮をつついて蛇を出す」

という慣用句の解釈も理解できたようで、得点率は平均を割ってはいるが、昨年の問題の改

善点が現れていて程度も妥当である。

C 問1   が極端に得点率が低い。ピンイン文から日本語に訳す問題は、日本語がこなれ

ているため、受験者にとってはやや難しいと思われる。特に反語“谁说<shéishuō>不”“上

了年纪”の訳で迷ったのかもしれない。

第4問 内容・文字数・表ともに妥当な程度である。

  は文の流れとグラフの読み取りを問う問題で、得点率が低かった。文章全体の内容理解

は受験者にとって難解になる傾向がある。

第5問 内容・文字数・問題の形式ともに妥当なレベルである。

  、  は選択肢の日本語が、問題作成部会の先生方が吟味されたところだと思われる

が、受験者は微妙な問題でつまずいたと思われるので、今後御考慮いただきたい。

第6問 例年抽象的な文章である。問題作成の先生方が、昨年の問題点を踏まえ、内容を吟味さ

れ、文字数も600字をこえず、抽象性も高くない点で、今後ともこのような程度の文章をお願

いしたい。

  -  は、選択肢の内容が、本文に即して作られているので、例年よりも受験者の理解

が高まり、全体の中でやや得点率の低い段階にとどまった。

4 表 現・形 式

第1問 発音を問う問題で、昨年と同じく10問であった。発音を重視した良い傾向である。例

年と同じ出題の形式である。ただし、Bの問2は例年2文字の熟語であったのが、本年度は4

字熟語での出題になっている。また、Cでは3字と4字の熟語が出題されているのが、大きな

変化になっている。

第2問 Aはピンインを用いた会話文の補充問題で、選択肢四つで例年と変化は見られない。

B・Cは中国語を用いた空欄補充問題で、選択肢の数も例年と変化はない。Cは空欄に入る

文字数に変化を持たせている。

第3問 Aは並び替え問題で、八つの選択肢から五つの選択肢(三つは不要)を選ぶという形式

は例年どおりである。Bは与えられた日本語から選択肢のピンインを選ぶもので変化はない。

Cはピンインで与えられた中国語から、選択肢の日本語を選ぶもので変化はない。

第4問 Aは今年度も昨年度同様、グラフと文字である。グラフと文章をじっくり読み解く必要

があるが、全体としては事実を客観的に述べたものである。

26 27

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30

34

40 42

54 55

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Bは昨年度は、二つのグラフと一つの表を見て会話文の空欄を補充する問題であり、難易度

の高いものであったが、今年度は会話文だけになったので、適切な問題になった。空欄補充の

問いが3問から2問に減った。

Cは会話補充問題で、日常会話である。問いの数も選択肢の長さもほぼ同じである。

第5問 随筆からの出題である。私が幼い頃、夏の夜空に輝く星を見て想像力を培った経験か

ら、現代の北京の様子を比較し、想像力の対象も変わり、私たちの生き方まで変わったことを

嘆く内容である。

問1はピンイン文を日本語訳する問題であり、昨年同様である。

問2は複数の空欄部に中国語文を選ぶものから、昨年、補語など1字の語を補充する問題で

変わり、本年度も同じ形式が踏襲されている。

問3は下線部の日本語訳を問う問題から、中国語の文を選び補う問題に変わった。

問4は4カ所の空欄を補充する問題に変わった。

第6問 例年の通り、評論に相当する内容の出題である。人間関係の構築をテーマとした内容。

字数も昨年並みである。抽象的な表現も多く、最後の問題としては受験者に荷が重い内容だっ

たと思う。各設問の形式は、空欄補充も昨年度は単語だったものが、文になっていたり、選択

肢の日本語がより抽象性の高いものとなっている。

5 要     約

⑴ 全体について

平成24年度センター試験は、設問形式やその内容において、また単語の選択肢も高校生レベ

ルの出題が多く、出題者の工夫が感じられ、良問が多かったが、全体として今年のレベルを保っ

ていただきたい。

平均点は、平成20年度から昨年度までの平均点はおおむね70点(100点満点で)を前後で推

移しており、「英語」を除く外国語の中では比較的低い平均だったが、今年度は77. 0点と大きく

上昇して、「英語」以外の外国語の中で最高の得点となった。また、得点分布からは、ここ数年

日本人の受験者が増加していることが推し量れるのはよい傾向だと思われる。

これは上記のように問題文が例年より長くなったこと、選択肢が増えたこと等が大きな変化

だったと思われる。また、昨年同様日本人受験者の増加も一因であると思われるが、上記のよう

に問題文や選択肢の日本語がより高度な言語力を要求されるものとなったのも大きな原因と考え

られる。

⑵ 受験者数と得点の分布について

受験者は389名で昨年より3名減少しているが、平成22年度に前年比で11%下がり、昨年度

若干持ち直したことを考えれば、中国語受験者の減少を憂慮する幅ではないと思われる。

昨年度と比較すると、次のようなことが言える。1.昨年は満点を取った者は皆無だったが、

今年度は3名出ている。2.100点未満の受験者が昨年より減少している。3.高得点者を示す

グラフの山も160~180点のところにある。

⑶ 要望・提案

全体として、昨年度より比較的易しくなったが、平均点も上昇した。しかし、高等学校から中

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国語を学び始めた受験者には、このレベルが適当だと思われる。

① 前述のごとく、全体としてはやや易しくなったが、以下の点については御考慮いただきた

い。

・全体として、中国語文の日本語訳を問う問題で、選択肢の日本語が練られすぎ、微妙な表現も

多く、ある面で国語力を問う問題となっているように感じる部分もあり、今後出題に当たって

十分にご配慮願いたい。

・第5問は文字数は今年度程並で、今回の問題文のようにできるだけ日常の事柄で、高校生にも

納得できる内容からの出題にしていただきたい。

・第6問の本文の文字数は600字を超えないものにしていただきたい。また、内容に関しても、

日本語として読んでも抽象性の高いような内容は可能な限り避けていただきたい。

② 本年度の問題では、全体として昨年度よりやや易しくなったが、高校生が時間内で解くのに

適当であったと思われる。単語レベルでは問題作成委員の創意と御苦労が感じられた。

高等学校で中国語教育に携わっている者として、「高等学校における学習の成果が総合的・

客観的に判断できる問題とする」を大前提として、今後とも中国語を高校3年間で学んだ受験

者を念頭に問題作成に当たっていただくことを要望したい。