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オブジェクトと属性情報の 受動的視聴方式に関する研究 大学大学院

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Page 1: 年度 修士論文 オブジェクトと属性情報の 受動的視聴方式に関す … · によって情報を呈示する方法はユーザにとって容易にオブジェクトを受動的に閲覧

2000年度修士論文

3Dオブジェクトと属性情報の受動的視聴方式に関する研究

神戸大学大学院 自然科学研究科

情報知能工学専攻

矢部 武志

指導教官 田中 克己審査教官 主査 田中 克己

副査 上原 邦昭   草原 真知子

2001年2月14日

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2000年度

修 士 論 文

題目

3Dオブジェクトと属性情報の受動的視聴方式に関する研究

神戸大学大学院 自然科学研究科情報知能工学専攻

996T709N

矢部 武志

指導教官 田中 克己審査教官 主査 田中 克己

副査 上原 邦昭 草原 真知子

2001年2月 14日

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Passive Viewing of

Three-Dimensional Objectsand Their Attribute Information

Takeshi Yabe

Abstract

Conventionally, the way of acquiring object's attribute information in 3-dimensional

virtual spaces requires active operations such as walkthrough the virtual space and

clicking those objects. Those active operations cause a lot of burdens for beginner

users who have less knowledge about manipulating 3D objects. Presenting 3D ob-

jects and their attribute data by CG animation is very useful for beginner users to

obtain attribute information about 3D objects in virtual spaces. However, it usually

takes an expensive cost to make CG animations.

In this paper, we introduce a passive viewing system for 3D objects and their

attribute information in virtual spaces. The proposed system automatically gener-

ates CG animation with synthesized speech from 3D CG content and their attribute

data. Also, we introduce a text-driven animation generation system, which also en-

ables users to view the objects and their attribute information in a passive manner.

We describe own prototype system based on these concepts and its evaluation.

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3Dオブジェクトと属性情報の受動的視聴方式に関する研究

矢部 武志

要 旨

3次元仮想空間におけるオブジェクトから情報を得る手段としては,従来,ウォー

クスルーによるオブジェクトのブラウジングやクリックによる情報呈示等のユーザ

の能動的な操作が主体であった.しかし,3Dの操作に慣れていない人にとっては困

難な作業であり,情報獲得に多大な労力を要する.それに対して,アニメーション

によって情報を呈示する方法はユーザにとって容易にオブジェクトを受動的に閲覧

し情報を取得することができ有効であると考えられる.しかしながら,オブジェク

ト作成者はオブジェクトを作成するだけでなく,アニメーションをも作成しなけれ

ばならないので大きな負担となる.

そこで,本稿ではオブジェクトの属性情報を用意するだけで,アニメーションを

自動生成し音声読み上げによって情報呈示を行う受動的視聴方式を提案する.具体

的には,本稿では (1)3Dオブジェクトの動作に応じた受動的視聴と (2)文書を用いた

アニメーション生成による受動的視聴の 2つのアプローチについて提案する.さら

に,2つのアプローチによる試作システムの実装及びこれらの評価について述べる.

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目 次

1 序論 2

2 基本的事項および関連研究 4

2.1 Web上の 3次元CG技術 . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . 4

2.1.1 X3D . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . 4

2.1.2 Web3D . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . 4

2.2 XVL(eXtensible Virtual world description Language) . . . . . . . . . 5

2.2.1 XVLフォーマット . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . 6

2.2.2 XVLオブジェクトモデル . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . 6

2.2.3 ラティス格子による曲面生成 . . . . . . . . . . . . . . . . . . 6

2.3 関連研究 . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . 7

2.3.1 空間的情報呈示 . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . 7

2.3.2 Web情報の番組化 . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . 9

3 3Dオブジェクトの動作に応じた受動的視聴 11

3.1 基本概念 . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . 11

3.1.1 アニメーション自動生成による受動的視聴 . . . . . . . . . . . 11

3.1.2 属性情報記述モデル . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . 11

3.1.3 オブジェクトの回転 . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . 14

3.2 単体オブジェクトによる受動的視聴方式 . . . . . . . . . . . . . . . . 14

3.2.1 方向に基づく詳細度制御 . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . 15

3.2.2 詳細度に基づく距離制御 . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . 16

3.2.3 音声読み上げによる回転速度の制御 . . . . . . . . . . . . . . . 17

3.2.4 音声重複による制御 . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . 17

i

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3.3 差異情報による受動的視聴方式 . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . 19

3.3.1 属性情報の値による差異呈示 . . . . . . . . . . . . . . . . . . 19

3.3.2 属性情報の有無による差異呈示 . . . . . . . . . . . . . . . . . 19

3.3.3 差異呈示における音声呈示制御 . . . . . . . . . . . . . . . . . 20

4 文書を用いたアニメーション自動生成による受動的視聴 22

4.1 概要 . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . 22

4.2 文書とキーワードの記述 . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . 24

4.3 文書に基づく詳細度制御 . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . 25

5 試作システムについて 27

5.1 システムの構成 . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . 27

5.2 3Dオブジェクトモデル . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . 28

5.3 システムの機能 . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . 29

5.3.1 システムの入力 . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . 29

5.3.2 3Dオブジェクトのアニメーション . . . . . . . . . . . . . . . 30

5.3.3 視点移動におけるアニメーション . . . . . . . . . . . . . . . . 30

5.3.4 属性情報のアニメーション . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . 31

5.3.5 バックサウンドの制御 . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . 31

5.4 実行例 . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . 31

5.4.1 単体オブジェクトの受動的視聴 . . . . . . . . . . . . . . . . . 31

5.4.2 差異情報による受動的視聴 . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . 33

5.4.3 文書を用いたアニメーション生成 . . . . . . . . . . . . . . . . 34

6 結論 36

謝辞 36

参考文献 38

ii

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1

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第 1章 序論

近年,Web上で 3Dデータを扱う技術は飛躍的に進化し,Web3D[9]と呼ばれる,

データ量が少なく高品質な 3DオブジェクトがWebで扱える技術が開発されている.

Web3Dの用途は多岐に渡るが,最もニーズがある用途と考えられているのは,製品

紹介に使う 3Dカタログである.利用者はパソコン上で 3Dオブジェクトを回転させ

ることにより,あらゆる角度から 3Dオブジェクトを見ることができ,アニメーショ

ンを利用して,製品の機能を擬似体験することができる.しかし,3Dオブジェクト

を見ているだけでは製品モデルの色,形状などの外面的な情報だけであるので,利

用者の 3Dオブジェクトに対する理解は不十分であると考えられる.そこで,通常

見えない,オブジェクトの名称,種類などの属性情報もオブジェクト自身と同様に

視覚化または音声にてユーザに呈示する手法について考える.

現在,3Dオブジェクトを呈示する方法は大きく分けて 2つある.1つ目は空間

内のウォークスルーに代表されるようにユーザのインタラクションによる能動的な

呈示方法である.2つ目はオブジェクト作成者がアニメーションを作成し,ユーザ

はそのアニメーションを見る受動的な呈示方法である.能動的な呈示方法はユーザ

がオブジェクトの回転や移動,ズーム等の操作を行わなければならなく,ユーザの

操作技能が要求される.また,オブジェクト作成者がここを詳細に呈示したい等の

作成者の意図が反映されないという欠点がある.それに対して,現在の受動的な呈

示方法は,オブジェクト作成者が事前にCGアニメーションを作成しユーザに呈示

するため,オブジェクト作成者の意図は反映される.また,ユーザはアニメーショ

ンを見るだけであるので,容易にオブジェクトを閲覧し情報を取得できることが可

能であるので受動的な呈示が有効であると考える.しかしながら,オブジェクト作

成者はオブジェクトを作成するだけでなく,アニメーションをも作成しなければな

らないので大きな負担となる.

そこで,我々はオブジェクト作成者が 3Dオブジェクトを作成すると共にそのオ

ブジェクトの説明等が記述された属性情報を用意するだけで,システムがその属性

情報を基にアニメーションを自動生成するシステムを提案する.属性情報を音声に

2

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て呈示しユーザは生成されたアニメーションを視聴するだけで,容易に 3Dオブジェ

クトの情報を取得できる「3Dオブジェクトと属性情報の受動的視聴方式」を提唱

する.

本稿では,属性情報の受動的視聴方式として下記 2つのアプローチを提案する.

� 3Dオブジェクトの動作に応じた受動的視聴

自動生成された 3Dオブジェクトのアニメーション (動作)に応じて属性情報の

呈示を行うアプローチである.

� 文書を用いたアニメーション自動生成による受動的視聴

3Dオブジェクトに対する属性情報を含めた,説明文 (文書)を音声読み上げに

より呈示し,その内容に合わせてオブジェクトを動かすアプローチである.

以下,第 2章では本稿における基本的事項および関連研究について述べ,第 3章

では 3Dオブジェクトの動作に応じた受動的視聴について,第 4章では文書を用い

たアニメーション自動生成による受動的視聴について述べる.第 5章では試作した

システムの説明を行い,最後に第 6章では結論を述べる.

3

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第 2章 基本的事項および関連研究

2.1 Web上の3次元CG技術

Web3DはWeb上で 3次元CGを表現するための技術である.ユーザはWebブラ

ウザを利用して,あるサイトにある 3次元モデルを見ることができる.専用のビュー

アを使用することによって,インタラクティブに 3次元モデルを回転,移動をさせた

り,視点を変えたりすることができる.こうしたWeb3D技術は,1994年のVRML

(Virtual Reality Modeling Language)[8]という 3次元空間記述言語の標準化から活

発になり,現在も新しい技術の研究,開発が行われている.

2.1.1 X3D

VRMLの登場は,Web上での 3次元 CG技術の標準化を目指す有望な技術とし

て大きな注目を集めていたが,ユーザ側の PCの処理能力や回線速度などの環境が

整っていなかったこと,VRMLの標準化にこだわりすぎたため,仕様が複雑になっ

てしまったことなどから次第に使われなくなった.1999年,Web3D Consortiumは

VRMLの次世代バージョン「X3D」[10]仕様の策定を開始した.X3Dはいくつかの

コンポーネントより構成され,それを使って非常に軽いアプリケーションがワーク

ステーションからセットトップボックスといった幅広いプラットフォーム上で動作す

るように作られる.X3Dが目指す技術には軽量の 3Dランタイムエンジン,プラッ

トフォームに依存しない 3Dファイルフォーマット,そしてXML[15]との統合が挙げ

られる.これらの技術はいずれも既存のVRML,MPEG-4,HTMLの上位互換性を

持つ予定である.将来,X3Dがエンターテインメント,電子商取引,企業でのデー

タビジュアライゼーションなどの分野で幅広く用いられることが期待されている.

2.1.2 Web3D

1999年後半ごろから,多くのベンダーによる活発な動きが始まり,新しいWeb

上の 3次元 CG技術が登場している.それらはクオリティー,圧縮,ノンプラグイ

4

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ンビューア,精度の高い曲面などの高度な技術,表現を持ちVRML時代の技術を大

きく超えている.高い表現力,ファイルの軽量化の向上により,Web3Dは EC,建

築,教育,エンターテインメント等の多彩な分野からも注目されている.技術進化

の内容はベンダーによって異なる.代表的なベンダーのWeb3D技術には,X3Dの

仕様提案に参加し軽量の Javaレンダリングエンジンを開発した ShoutInteractive 社

の「Shout3D」[11],環境マッピングによって高いクオリティーを表現するMetaCre-

ations社の「Metastream」[12],インタラクティブなイベント,アニメーションを付

加できるCycore社の「Cult3D」[13],NURBS曲面の表現や優れた圧縮技術を持つ

LatticeTechnology社の「XVL」[14]などが挙げられる.

2.2 XVL(eXtensible Virtual world description Lan-

guage)

XVLはWeb3Dベンダーの1つ,Lattice Technology社が開発を行っており,Lat-

tice Kernelと呼ばれるコア技術を基盤とした 3Dデータ記述とアニメーション記述

のためのテクノロジーの総称である.XVLは大きく分けると,データを記述するた

めのXVLファイルフォーマットとアニメーションを制御するためのXVLオブジェ

クトモデルから構成されている.

������

���� �

��� ����

������������������

Figure 2.1: XVL structure model

5

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2.2.1 XVLフォーマット

XVLは従来のVRMLに比較して桁違いに軽いデータサイズで形状を表現し,イ

ンターネット環境でデータをやりとりするためのフォーマットである.XVLは形状

データに加えて,リアルな形状表現に必須のテクスチャやマテリアルなどの情報も

記述できる.

XVLは次世代Web記述言語のXMLに準拠したファイルフォーマットであるの

で,Web 上のあらゆるデータとの親和性が高く,形状データとWebデータとを統

合する環境を提供できる.また,XMLの拡張性により,ユーザ独自の情報を追加定

義できる利便性を備えている.

XVLファイルにはラティスカーネルで扱える形状データ以外に,アニメーショ

ンのためのデータも記述できる.Web上の 3次元 CGの標準化を推進するWeb3D

Consortiumが策定中のX3D規格が確定した時点で,このXVL技術をX3Dの拡張

機能として対応することにより,X3Dとの統合も考えられている.

2.2.2 XVLオブジェクトモデル

XVLオブジェクトモデルはXVLファイルで記述したデータをWebで標準的に

使われている JavaScriptなどのスクリプト言語から扱うための仕様である.XVLオ

ブジェクトモデルはXVL用アニメーション・ソフトウェアであるXVL Playerを頂

点とするツリー構造のオブジェクトの集まりで表現される.各オブジェクトはメソッ

ドとプロパティを持っており,スクリプトからこれらにアクセスすることによって,

アニメーションを実現している.

2.2.3 ラティス格子による曲面生成

XVLの特徴は複雑な曲面を持つ形状を非常に軽いファイルサイズで実現できる

ことである.XVLは曲面データを直接ファイル内部に収めているのではなく,XVL

が持つのはラティス (格子)構造と呼ばれる粗いポリゴン形状のデータとそのポリゴ

ンの各頂点に割り当てられている曲面生成に必要な重み付け情報である.XVLファ

イルをダウンロードすると,パソコン上のXVL専用ビューワがラティス構造を解釈

し,重み付け情報から曲面を生成するという仕組みになっている.これをFigure2.2

に示す.

6

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Lattice Structure Surface Creation

Figure 2.2: Surface shapes creation from lattice structure

2.3 関連研究

2.3.1 空間的情報呈示

小磯らの研究 [1, 2, 3]では,3次元仮想空間におけるオブジェクトの空間的情報

呈示システムとして InfoLOD(LOD of Information)を提案している.オブジェクト

の色,形状,テクスチャ等の視覚的な情報だけでなく,通常見えないオブジェクト

の名称,制作年代などのその他の属性情報もオブジェクト自身と同様に視覚化する

ことを目的としている.さらに,3次元オブジェクトに対して多方向からの情報記

述を許し,その視覚化の制御を視点とオブジェクトの間の距離,視点の方向,並び

に視野内に写っているオブジェクトの属性情報の差異に基づいて呈示情報量や詳細

度を制御するということを提案している.Figure2.3は,詳細度制御の概念を従来の

画像やCGに加え,属性情報にまで拡張することを示している.

Flash Pix etc.

��� ���

VRML LOD etc. InfoLOD

���� ���� ����

Two-Dimensional image Data

Three-DimensionalComputer Graphics Modeling Data

Attribute Data(texts, keywords, feature vectors)

����

���

� ���

Figure 2.3: Concept of InfoLOD

7

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InfoLOD制御の要因である距離,方向,差異の 3つについて述べる.

方向による情報表示詳細度制御

MBB(Minimum Bounding Box)法によりオブジェクトを近似し,多方向から属性

情報の記述を与えるための方向依存記述モデルを用いている.記述情報の呈示の際に

は,方向に依存して集約された情報を表示における詳細度に利用している.Figure2.4

で示した例のように文字の大きさを変化させてユーザに表示する.

SOUTH ELV. WEST ELV.

Office Office

Opera House

Boutique Opera HouseBoutique

Figure 2.4: Aggregated information from di�erent direction

距離による情報表示詳細度制御

ユーザとオブジェクトとの距離によって表示詳細度を変化させる.これはVRML

において LOD(Level of Detail)という機能によって実現されている.また,属性情

報に関してもオブジェクトの記述情報と同様に,LODの概念を用いて,呈示の大き

さ,加えて情報量の制御を行う.

Office

Theater

FAR

CLOSE

Shop

Figure 2.5: LOD control by distance

8

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差異による詳細度制御

視野内のオブジェクト間の共通点や差異を検出し情報呈示を行う.視点を変えつ

つ空間ブラウジングをする際に,視野内のオブジェクトが変わり,比較対照が変わ

る.それに応じて個々のオブジェクトの差異を強調する情報呈示を行うことが可能

となる.

RestaurantChineseCanton

RestaurantItalianPasta

RestaurantChinesePeking

Figure 2.6: LOD control by di�erentiation

本研究においても方向,距離,及び差異に基づいて属性情報の呈示制御を行う

InfoLODの概念を取り入れている.しかし,小磯らの研究ではユーザの空間ウォー

クスルーを前提としており,欲しい情報を取得できるかどうかはユーザの 3D操作技

能に依存する.本研究ではユーザが容易に情報を取得することを目的として,ユー

ザの能動的なインタラクションを必要としないアニメーションによって呈示を行う

ので,小磯らの研究とは異なる.

2.3.2 Web情報の番組化

灘本らの研究 [4, 5, 6, 7]では,膨大なWeb情報を容易に取得することを目的と

し,Watch and Listen 型インターフェイスとして,受動的視聴型番組呈示方式を提

唱している.

テキストや画像で表示されていたWebコンテンツを,音声やキャラクターアニ

メーションを用いて表現することで,これまでのWebブラウザと異なり,インタラ

クションを極力抑えた上で有効に情報を提供している.Figure2.7にWebコンテン

ツを番組化した例を示す.左側が既存のWeb ブラウザでのWebコンテンツの表示

であり,右側がそれを番組化した画面を示している.

本研究では,対象としているコンテンツは異なるが,操作の難しい 3Dオブジェ

クトにも番組化のように音声やアニメーションを用いて情報呈示を行うことは有効

9

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Web browser TV-Program metaphor

Figure 2.7: TV-Programmization of Web contents

な手段であると考えられる.また,我々の研究では 3Dオブジェクトが組み込まれ

たWebページの受動的視聴システムを想定している.灘本らの研究では,テキスト

や画像で構成されたWebページのみを対象としているが,Webページには 3Dオブ

ジェクトが組み込まれたWebページも存在している.「Web情報の番組化」を大き

な枠組みで捉えると我々の研究は,その 1つを担っているとも言える.

10

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第 3章 3Dオブジェクトの動作に応じた受動的視聴

3.1 基本概念

3.1.1 アニメーション自動生成による受動的視聴

3次元仮想空間におけるオブジェクトはあらゆる方向から見ることができ,オブ

ジェクトの色,形状などの視覚的な情報を取得できる.それと共に,通常見えない

オブジェクトの説明などを記述した属性情報を視覚化または音声にて呈示すること

は,オブジェクトに対する理解を深めることができ有効であると考える.また,属

性情報の呈示方法としてはユーザの 3D操作技能に依存しないアニメーションによる

受動的な呈示が望ましいと考える.加えて,3Dオブジェクト作成者のアニメーショ

ン作成における負担軽減を考慮して,アニメーション自動生成による受動的な呈示

を実現できるシステム機構について述べる.

オブジェクト作成者は属性情報を記述した 3Dオブジェクトを作成し,システム

により自動生成されたオブジェクトの動作に応じて属性情報を音声にて呈示を行う

受動的視聴方式について提案する.これにより,ユーザはアニメーションを視聴す

るだけなので容易に情報を取得できる.Figure3.1にイメージ図を示す.

3.1.2 属性情報記述モデル

3Dオブジェクトに対する属性情報の記述は面(ポリゴン)単位で行う.よって,

オブジェクトの複数の面に対して属性情報を記述することで,その面に応じた情報

を付加させることができる.我々は,オブジェクトの見られている方向によって得

られる情報が異なるという概念に基づき属性情報の呈示を制御する機構について考

えている.そこで,各面に付加情報を記述したオブジェクトは本研究の基礎となる

モデルとなる.属性情報が記述された面の法線ベクトルとユーザの視点の関係によ

り,属性情報呈示の制御を行う.これを Figure3.2に示す.

11

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��������

�������������������

User

3D object creator

Attributeinformation 3D object

Figure 3.1: Passive viewing by animation generation

����� ������

������ ����!��������

"display"

"cdrom"

"pccard"

Figure 3.2: Added attribute information in surface

12

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また,本研究では XML(eXtensible Markup Language)に準拠した 3Dオブジェ

クトを想定している.Web3DにおいてもVRML97の次世代バージョン「X3D」の

ように 3D のファイルフォーマットを XMLによって記述する動きが活発になって

きている.そこで,3Dオブジェクトに付加する属性情報もメタデータとして 3Dの

ファイル内部にXML で記述を行う.Figure3.3に XMLで記述された 3Dデータを

想定した属性情報の記述についての例を示す.

3D file format

������ ����!��������

"#����

Figure 3.3: 3D �le format by XML

3Dのファイル内部は 3Dデータと属性情報で構成される.Figure3.3 では,3D

データの集合を<Faces>タグで表し,属性情報の集合を<Attributes>タグで表し

ている.3Dオブジェクトが面で構成された集合体であるとし,例えば 1つの面デー

タを表現する<Face>タグを仮定すると 3Dデータは<Face>タグの集合として表

すことができる.面の Id属性の値は面の識別名として定義している.また,1つの

属性情報を<Attribute>タグで表し,Id属性の値は属性情報の識別名として定義す

る.この面と属性情報の Id 属性の値を対応させることで面に対する属性情報の付

加を実現させると考える.<Attribute>タグ内の記述については,3.2.2節で説明を

行う.

13

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3.1.3 オブジェクトの回転

3Dオブジェクトの全ての面を表示するにはオブジェクトの回転による表示が望

ましい.オブジェクトを回転させることにより,ユーザはあらゆる角度から 3Dオ

ブジェクトを見ることができる.よって,システムによりオブジェクトの回転動作

を行うアニメーションを生成することにより,オブジェクトの外面的な情報をユー

ザに呈示する.

3Dオブジェクトの回転を考えた場合,あらゆる回転軸が存在する.しかし,任

意の方向にオブジェクトが回転するとユーザは困惑し,空間的なオブジェクトの把

握が困難になる.回転軸や回転方向は極力一定の方が望ましいと考える.

そこで,オブジェクトの下に回転台となるものを想定し,それが一定方向に回転

することによりオブジェクトを回転させることを考える.しかし,それだけでは回

転台に垂直な方向に対する面は視点から見ることができないので,ある視点から得

られる情報がなくなると視点を自動的に上下に切り替えることによりオブジェクト

のあらゆる面を表示する.これを Figure3.4に示す.

�$�����!���%&����

�$�����!���%&����

��������

3D object

Figure 3.4: Change of viewpoint

3.2 単体オブジェクトによる受動的視聴方式

ここでは,単一のオブジェクトにおける属性情報の呈示制御,音声読み上げによ

るオブジェクトの回転制御に関する受動的視聴方式について述べる.

14

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3.2.1 方向に基づく詳細度制御

3Dオブジェクトの回転動作において視点から見える面は回転時間と共に変化し,

見える度合いも随時変わる.このような視覚的な情報の変化と共に呈示する属性情

報の詳細度も制御する機構について述べる.視点と属性情報が付加された面に対す

る法線ベクトルの関係に基づき属性情報の詳細度制御を行う.

オブジェクトに付加された 1つの属性情報を Aiとする.Figure3.3における Ai

は 1つの<Attribute>タグで囲まれた属性情報を表す.また,オブジェクトに付加

された属性情報の集合Attribute は以下のように表される.

Attribute = fA1; A2; � � � ; Ai; � � � ; Ang

nは属性情報の数を表す.オブジェクトが回転した時刻 tにおける視点から得られる

情報の集合を info(t)は以下のように表す.

info(t) = fwi(t)Aiji = 1; 2; � � � ; ng

wi(t)は時刻 tにおける属性情報Aiへの重みである.wi(t)は視点からその面がどれ

くらい見えているかで値が決定される.具体的には,オブジェクトの中心を始点と

して視点を終点としたベクトル uと時刻 tにおける面の法線ベクトル vi(t)のなす角

度を �i(t)とすると,wi(t)は以下のように表される.

cos�i(t) =u・vi(t)jujjvi(t)j

wi(t) =

(cos�i(t) (cos�i(t) � 0)

0 (cos�i(t) < 0)

wi(t) = 1の場合,視点方向に属性情報Aiの面が見えるということになる.

また,wi(t)の値によって,文字情報として詳細度を変化させながら呈示する場

合と音声で呈示する場合とで呈示方法が異なる.wi(t)がある閾値 Æ 以下なら文字情

報として呈示を行い,ある閾値 Æ以上なら音声にて呈示を行う.この条件を以下に

示す.

wi(t) < cos Æ (presentation by character)

wi(t) � cos Æ (presentation by voice) (3.1)

よって,音声呈示される属性情報の順序は条件 (3.1)を満たす属性情報から順次

行われることになるので,オブジェクトの回転方向に対する法線ベクトルの分布に

より決定される.

15

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視点と法線ベクトルの成す角度が小さければ,視点からより良くその面が見えて

いることを表す.それに伴い面に付加されている属性情報の詳細度を制御し文字情

報で呈示を行う.しかし,文字情報として呈示できる空間的なスペースには限りが

あるので,ある閾値以上に属性情報の重み付けが行われると文字情報から音声とし

て呈示を行うことで,より詳細な属性情報の表現が可能となる.

3.2.2 詳細度に基づく距離制御

オブジェクト作成者の意図として詳しい情報はオブジェクトの近くで見せたい,

またはユーザの立場においても詳細な情報は近くで見たいという意識があると考え

る.そこで,属性情報の詳細度に応じて視点とオブジェクト間の距離を変化させる

呈示方式について述べる.

本研究では属性情報をXMLで記述を行う.また,属性情報に階層構造を持たせ

て木構造の深さによって詳細度を表す.階層が深い情報は詳細度が高く,階層が浅

ければ詳細度が低いことを意味している.Figure 3.5にXMLで記述した属性情報の

例を示す.

Attribute data

����

���

���

����

Figure 3.5: Attribute data by XML

1つの属性情報は <Attribute>タグで表し,Idの値は属性情報の識別名となり

特定の面と対応づける名前でもある.属性情報の内容はその子要素 (以下,属性要素

と呼ぶ)として記述する.属性要素とは,Figure3.5では,<size>,<spec>,<type>

を指し,情報のカテゴリを表す名前としてタグ名を定義する.カテゴリの値は value

属性の値として記述する.value 属性の値は 3.3節の差異情報呈示の際に用いる.属

性要素のタグで囲まれた文字は音声読み上げにより呈示される.

16

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音声読み上げでの呈示の順序は前順走査で行う.Figure3.5 では”display”,”

14.1”,”tft”,”red”の順で行われる.その際に呈示する情報の詳細度が変化する

ので,それに応じてオブジェクトと視点間の距離制御を行う.詳細度が高ければオ

ブジェクトに近づき,詳細度が低くなればオブジェクトから遠のく視点の自動移動

を行うアニメーションを生成する.

このように,詳細度に応じて距離を変化させることにより,オブジェクト作成者

の意図を反映させると共に,ユーザに詳細度を意識させた情報呈示が行える.

3.2.3 音声読み上げによる回転速度の制御

3Dオブジェクトの回転に応じて条件 (3.1)を満たす属性情報を音声で呈示を行

う.同時に,音声で呈示される間は条件 (3.1)を満たしていなければならないという

制約がある.しかし,音声読み上げの長さは属性情報によって異なるので一定速度

の回転では途中で音声が切れてしまう場合がある.そこで,音声で呈示する文字数

を基に,ぞれぞれの属性情報に対して回転速度の制御を行うことを考える.

属性情報Ai(i 2 f1; 2; � � � ; ng)が条件 (3.1)を満たすオブジェクトの回転角の区間

を V oicei = [�si ; �ei ]とする.これはオブジェクトの回転において,�si から �ei までは

Aiを音声にて呈示可能であることを意味している.音声読み上げの文字数を Liと

すると,区間 V oicei内のオブジェクトの回転速度 Speedは以下のように表される.

�は文字数を時間に換算する係数である.

Speed(V oicei) =�ei � �si

�Li

このように属性情報を音声にて呈示する場合は音声の長さによって回転速度を変

化させる制御を行う.

3.2.4 音声重複による制御

3.2.3節では音声呈示による回転速度の制御について述べた.しかし,複数の属

性情報が存在する場合,音声読み上げにおける回転角の区間に重なりが生じ,音声

が重複する可能性がある.特に,面が異なっても法線ベクトルの方向が近接する場

合は音声の重複が起こりやすいと言える.音声に重なりが生じると聞き取りが非常

に困難になり,重要な情報を聞き逃す危険性がある.そこで,音声が重複する音声

呈示区間を再構成することにより,音声の重複を避ける.

属性情報Aiが条件(3.1)を満たすオブジェクトの回転角の区間をV oicei = [�si ; �mi ; �

ei ]

とする.�mi は区間 V oiceiの中点である.音声重複が起こる条件として以下のよう

17

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に表現することができる.

V oicei \ V oicej 6= � (i; j 2 f1; 2; � � � ; ng) (3.2)

また,�mi はオブジェクトの回転において最も視点方向に属性情報Aiの法線ベクト

ルが向けられる回転角であるので,�mi を基に音声呈示区間の決定を行う.(3.2)の

条件が成り立つとき �mi < �

mj とすると以下の式により V oicei; V oicejの区間を決定

する.

if�mi + �mj

2� �

ei then (3.3)

V oicei = [�si ; �ei ]

V oicej = [�ei ; �ej ]

if�mi + �mj

2< �

ei then (3.4)

V oicei = [�si ;�mi + �mj

2]

V oicej = [�mi + �mj

2; �

ej ]

(3.3),(3.4)式の場合分けによる V oicei; V oicejの区間決定を Figure3.6に示す.

��� ������������ Rotation angleof object

�����

�����

�����

�����

�����

�����

Figure 3.6: Rede�ned intervals

上記の操作により,オブジェクトの回転における属性情報の音声呈示区間が決定

し,その区間の長さに応じて回転速度も変化する.

18

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3.3 差異情報による受動的視聴方式

これまでは,単体オブジェクトの呈示方式について述べてきた.ここでは,2つ

のオブジェクトを比較しその属性情報の差異を呈示することを目的とする.オブジェ

クト間の違いを表現することは,新たな属性情報の在り方であり,ユーザはオブジェ

クトの識別情報として取得することができる.

オブジェクトの属性情報の違いを表す情報として,以下の 2点が考えられる.

� 属性情報の値による差異

� 属性情報の有無による差異

3.3.1 属性情報の値による差異呈示

差異情報については 2つのオブジェクトの属性情報を照合することで行う.具体

的には属性情報の識別名 (<Attribute>タグの Id属性の値)が同じである属性情報

間で照合を行い,属性要素間の照合はタグ名が同じ要素間で行い,value属性の値を

比較する.要素の value属性の値が異なれば,その要素を相違情報としてみなす.こ

れを Figure 3.7に示す.また,以下のことを考慮して相違情報の呈示を行う.

� 詳細度が高い要素での相違はその要素だけを呈示しても理解できない恐れがあ

るので,親要素が存在する場合はその情報についても呈示を行う.(Figure3.7

の (1)参照)

� 相違要素以下の子要素に関しては親要素が異なれば子要素も異なると考え,相

違要素以下の子要素については呈示を行わない.(Figure 3.7の (2)参照)

3.3.2 属性情報の有無による差異呈示

属性情報の有無による差異とは一方のオブジェクトには,ある属性情報が存在す

るが,もう一方のオブジェクトにはその属性情報がない場合である.つまり,差異

情報として照合を行う属性情報の識別名が一方のオブジェクトには存在しない場合

である.これによる呈示方法として,2つのオブジェクトの下にはそれぞれ回転台

となるものを想定し,それが回転することでオブジェクトを回転させていると考え

る.そこで,2つの回転台の下にそれらを乗せたもう 1つの回転台を想定する.こ

の回転台はオブジェクトを回転させるものではなく,2つのオブジェクトの位置関

19

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������ ���

������'

������ ���

������(

Common

Different

Presentation node

Figure 3.7: Presentation nodes by di�erentiation

係を変化させる回転台である.もし,ある属性情報について有無による差異が生じ

た場合,その属性情報が存在するオブジェクトを前に,無いオブジェクトを後ろに

大きい回転台を 90度回転させる.そうすることで,属性情報の有無による差異を表

現する.これを Figure3.8に示す.

Attribute Exist

Attribute Lack

Car Navigation

)��$$��������� ��* ����$��$�*�������� ��

Figure 3.8: Presentation by existence of attribute

3.3.3 差異呈示における音声呈示制御

属性情報の差異を呈示する場合,視界に 2つのオブジェクトが写るように並べ,

回転させながら呈示するのが望ましい.そうすることで,属性情報の差異だけでな

く,オブジェクトの色,形状等の視覚的な情報も比較しながら認識できると考える.

20

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しかし,2つのオブジェクトでは属性情報が付加されている位置や面が異なるので,

回転における音声呈示するタイミングが重要になる.呈示する場合は 2つのオブジェ

クトに付加されている属性情報の面が視野に写っている必要がある.また,2つの

オブジェクトが異なった回転を行うとユーザが困惑する恐れもある.よって以下の

条件に基づき音声呈示を行う.

� 2つのオブジェクトは同様の回転を行う.つまり,回転方向,並びに回転速度

も同一にする.

� ある属性情報に対する面が両方のオブジェクトについて視点から見ることがで

きれば音声呈示可能とする.つまり,条件 (3.1)式にある閾値を Æ = �とする.

これにより,一回転で全ての差異情報を呈示できる.

2つのオブジェクトの属性情報の集合をそれぞれAttribute1,Attribute2 とする

と,呈示する属性情報の集合Attributeは以下のように表される.

Attribute = Attribute1 [ Attribute2

= fA1; A2; � � � ; Aj; � � � ; Amg

属性情報Ajにおける 2つのオブジェクトの音声呈示可能区間をそれぞれV oice1j,

V oice2jとする.また,V oice1j = �または V oice2j = �の場合は属性情報Ajの有無

による差異情報を表す.Aj における差異を音声呈示できる区間 V oicej は 2つのオ

ブジェクトの面が視点から見えているという制約により,以下のように表される.

if V oice1j 6= �; V oice2j 6= � then

V oicej = V oice1j \ V oice2j

if V oice1j = � then

V oicej = V oice2j

if V oice2j = � then

V oicej = V oice1j

また,V oicej; j 2 (1; 2; � � � ; m)における音声呈示区間の重複については 3.2.4節

で述べた音声重複による制御により音声の重なりを避ける.

21

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第 4章 文書を用いたアニメーション自動生成による受動的視聴

4.1 概要

本稿では 3Dオブジェクトの受動的な情報呈示を目的としている.言い換えるな

ら 3Dオブジェクトのプレゼンテーションである.プレゼンテーションには,説明を

行うナレータと説明に使用する画像や図などの視覚的に認識できる素材が必要不可

欠となる.ここでは,ナレータはシステムの音声読み上げ機能で,素材は 3D オブ

ジェクトやオブジェクトを構成する各面に相当する.また,プレゼンテーションの

構成や内容は,1つ 1つの素材に対して説明を行う場合と説明に合わせて素材を選

出し呈示する場合がある.1つ 1つの素材に対して説明を行う場合は,3章で述べた

「3Dオブジェクトの動作に応じた受動的視聴」にあたり,説明に合わせて素材を選

出し呈示する場合は,本章で述べる「文書を用いたアニメーション自動生成による

受動的視聴」に相当する.ここでは 3Dオブジェクト作成者と文書作成者を想定し,

ナレーションの内容に応じてオブジェクトを動作させる受動的視聴方式について述

べる.

3Dオブジェクト作成者はオブジェクトの各面に対して属性情報を記述するので

はなく,キーワードを記述した 3Dオブジェクトを作成する.文書作成者は属性情

報を含めたオブジェクトに関する説明が記述されたテキストベースの文書を作成す

る.システムはオブジェクトと文書を入力として,文書の内容を音声読み上げによ

りユーザに呈示を行う.それと同時に文書中のキーワードを読み取ってオブジェク

トが動作する受動的視聴方式について提案する.これを Figure4.1に示す.

また,文書を用いたアニメーション自動生成による受動的視聴の利点と応用につ

いて以下に列挙する.

22

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��������

����� ������

+��%����

+��%���)

+��%����

Document

�������������������

3D object creatorDocument writer

Web page

,��&�������������

�������������������

Figure 4.1: Document-driven animation generation

ストーリ性のある情報呈示

3章で述べた受動的視聴方式においては音声呈示される属性情報の順序や内容は,

回転方向に対する法線ベクトルの分布により決定されるため,話題に繋がりがなく

ユーザにとって理解し易いとは言い難い.しかし,ナレーションに応じてオブジェ

クトを動作させるアプローチでは,本来話の流れに即して記述を行う説明文を基に

情報呈示を行うのでストーリ性のあるプレゼンテーションを行うことが可能である.

オブジェクトに依存しない属性情報の記述が可能

受動的視聴を担う作成者を 3Dオブジェクト作成者と文書作成者として区別して

いるのは,既存の 3Dオブジェクトに対して属性情報を付加することが可能である

ことを意味している.オブジェクトは文書中のキーワードに反応して動作するので,

オブジェクトの動作や面に対する記述を気にすることなく,自由にナレーションと

して呈示する文書を作成することができる.また,文書を複数用意すれば,オブジェ

クトの記述を変更することなく,ユーザによってナレーションの内容,オブジェク

トの動作を容易に変更することが可能である.

23

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Webページの受動的視聴への応用

本稿では,3Dオブジェクトが組み込まれたWebページの受動的視聴も視野に入

れている.文書と 3DオブジェクトからWebページを生成することも可能であり,

また,既存のWebページからアニメーションを自動生成することも考えられる.従

来の「読む」「スクロールする」「クリックする」等の能動的な操作を要求するWeb

ページを「見る」「聞く」という受動的な操作で視聴することができ,容易に情報を

取得することが可能である.

4.2 文書とキーワードの記述

音声読み上げで呈示する文書はXMLで記述する.XMLで定義するタグは文書

全体を囲む <Doc>タグとオブジェクトの指定を行う <Obj>タグの 2つだけであ

る.Idの値により指定されたオブジェクトが読み込まれ,タグで囲まれた文書を音

声にて呈示を行う.キーワードは属性情報同様,3Dオブジェクトに付加する.1つ

の面に付加するキーワードは<Keyword>タグで表し,Idの値は面と対応させるた

めの識別名である.wordの値はキーワードを表す.また,キーワードに階層構造を

持たせることにより,オブジェクトの距離制御を行う.文書とキーワードの記述例

を Figure4.2に示す.

Figure4.2の文書では「noteA」と「noteB」というオブジェクトに関する記述が

ある.オブジェクトは上から順に読み込まれ音声で呈示が行われる.まず,「noteA」

というオブジェクトが読み込まれ,noteAオブジェクト内に記述されているキーワー

ドが文書内に存在するかどうかチェックする.Figure 4.2では灰色で塗られた文字が

キーワードとして出現している.このキーワードが音声で呈示される時は,その面

が視点方向に合致するようにオブジェクトが回転動作を行うアニメーションを生成

する.また,深い階層にあるキーワードが文書内に出現する場合はオブジェクトに

近づき,浅い階層にあるキーワードの場合は遠のく視点自動移動のアニメーション

を生成する.

3Dオブジェクト作成者はこのキーワードが出現する場合はこの面を表示させた

い,またはオブジェクトの近くで見せたい等の意図により記述される.つまり,オ

ブジェクト作成者はキーワードに対するオブジェクトの動作を既定する役割を担っ

ている.また,ナレーションに沿って話が展開されるので,文書作成者はプレゼン

テーションとしての構成や内容を取り決める役割を担っていると言える.

24

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Keyword ( noteA object )

Document

noteA

Figure 4.2: Document and keyword

4.3 文書に基づく詳細度制御

3.2.2節での方向に基づく詳細度制御の応用として文書を音声読み上げで呈示され

ている地点から文書的に近いキーワードに対しては多くの情報を呈示し,遠いキー

ワードに対しては少なく情報を呈示する文書に基づく詳細度制御を行う.

文書Dを上から順に音声呈示することを考えるとDは時系列に並んだ文章 siの

集合と考えられる.

D = s1; s2; � � � ; si; � � � ; sn

nは文章の数を表す.また,文章 siに含まれるキーワードを kijとすると以下のよう

に siを表現する.

si = fki1; ki2; � � � ; kij; � � � ; kimg

mは文書 si に含まれるキーワードの数を表す.音声で呈示されている文章を

sp 2 Dとすると視点から得られる情報の集合 info(p)は以下のように表される.

info(p) = fwi(p)siji = 1; 2; � � � ; ng

wi(p)si = fwi(p)kijjj = 1; 2; � � � ; mg

wi(p)は,文章 spが音声で呈示されている時の siに含まれるキーワード kijに対

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Page 32: 年度 修士論文 オブジェクトと属性情報の 受動的視聴方式に関す … · によって情報を呈示する方法はユーザにとって容易にオブジェクトを受動的に閲覧

する重みである.wi(p)は音声で呈示されている文章からどれくらい文書的に近くに

あるかで値が決定される.そこでwi(p)は以下のように表す.

wi(p) =

(1

i�p+1(i � p)

0 (i < p)

i = pの時は siを音声で呈示されていることになるので,wi(p) = 1となり最大値

をとる.kijを文字の大きさとして表現した文書に基づく表示詳細度制御をFigure4.3

に示す.

Document

,$��*�*���*&��-�

�)

Weight tocharacter

,$��*�*���*&��-)

)�

,$��*�*���*&��-�

�Visualization

System

Figure 4.3: LOD control by document

Figure4.3での文書ではA,B,Cの順でキーワードが存在し,この 3つのキーワー

ドは同一の文章には含まれていないとする.まず,キーワードAを含む文章を音声

呈示する場合はキーワードの重みの大きさだけで順序を付けるとA,B,Cの順で小さ

くなる.次に,キーワードBを含む文章が音声呈示される際は,Aは呈示された後

の情報であるので重みが 0になり文字としても表示されない.最後にキーワード C

が含む文章を音声呈示する時は,A,Bは過ぎた情報であるので重みが 0になり,C

が強調されて表示される.

文書に基づく詳細度制御により次に音声で呈示される話題が視覚的に認識できる

と考える.

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第 5章 試作システムについて

ここでは試作したシステムの構成やその機能について述べる.また,システムの

実行画面を示し,その呈示制御についても述べる.

5.1 システムの構成

試作システム実行における基本環境を説明する.今回は XVLで記述された 3D

オブジェクトを使用している.XVLは,Lattice Technology社で開発されている 3

次元処理のための記述言語である.データベースにはXVLファイルや文書が格納さ

れている.

まず,ユーザが受動的視聴を行いたいオブジェクトを選択するインターフェース

(3D Viewer System)が必要となる.ユーザインターフェースには,インターネット

環境での利用を想定しているので,WWWブラウザが必要となる.今回は Internet-

Explorer5.5を使用した.また,XVLで記述された 3Dオブジェクトとそのアニメー

ション機能を提供するXVL用アニメーション・プラグインソフトウェアであるXVL

Player1.2を用いた.

次にアニメーション生成部について説明する.受動的視聴の目的に応じてデー

タベースから引き出すデータは異なるが,すべてのデータがXMLで記述されてい

るのでそれらを解析するXMLパーサが必要である.試作システムではXerces Java

Parser1.2を用いてファイルを読み込み受動的視聴に必要なアニメーションデータを

付加したXVLファイルと音声読み上げを制御する JavaScriptファイルを出力する.

アニメーション生成プログラムには JDK1.3を使用した.

生成されたアニメーションを視聴するユーザインターフェース (Passive Viewing

System)もWWWブラウザを用いる.システムの音声読み上げ機能を実現させるソ

フトウェアでは,IBM ViaVoice98の音声合成エンジンとそれを外部から制御を行う

Java Speech APIを用いた.しかし,Javaから直接XVL Playerにアクセスするこ

とができないので,生成された JavaScriptを仲介として XVLのアニメーションと

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音声読み上げの同期制御を行う.

システムの全体構成を Figure5.1に示す.

��.+��%���/#�� ����

������ ��

"#����

������ ��

"#����

������ ��

"#����

��.������ ��/

+��%���

"#����

+��%���

"#����

+��%���

"#����

��.+��%���/ #�� ����

,,,���%*��(Internet Explorer5.5/

XVL Player1.2

0�������&�

0����&& ��.Java Speech API)

"#����

�������������

��!� �

0�������&�

3D Viewer System,,,���%*��(Internet Explorer5.5/

XVL Player1.2

0����&& ��

0�������&�

������������������(JDK1.3, Xerces Java Parser1.2/

Passive Viewing System

Figure 5.1: Implementation: overall

5.2 3Dオブジェクトモデル

試作システムにおける 3DオブジェクトとしてXVLを用いた.XVLを適用した

主な理由を以下に示す.

� XMLフォーマットであるので独自のタグ情報を追加定義できる.XVLファイ

ルに属性情報やキーワードを記述することが可能となる.

� 滑らかな曲面に対してもポリゴンとして属性情報やキーワードを付加でき,法

線ベクトルが計算可能となる.

� データサイズが小さいので軽量である.

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XVLファイルに対する属性情報の付加について述べる.XVLでは面を記述する

タグとして<Face>が定義されている.このタグに Idを指定し,我々が独自に追加

したタグ <Attribute>の Idと対応させることで面に対する属性情報の付加を実現

した.これをFigure5.2に示す.<Keyword>タグの付加についても同様である.

1������23��*& ��3Face data�4

������������ ���������

�������������� ����1������ ����23��*& ��34Attribute data15������ ��4

Figure 5.2: Added attribute data in surface

5.3 システムの機能

5.3.1 システムの入力

受動的視聴を行う 3Dオブジェクトや文書選択に用いる 3D Viewer Systemの画

面を Figure5.3に示す.

3D Viewer Systemを用いてユーザは選択したオブジェクトや文書を閲覧できる.

また,受動的視聴時にバックミュージックとして流したい音楽も選択できる.

受動的視聴の目的に応じてシステムに対する入力は異なる.以下に受動的視聴別

に入力となるファイルを示す.

� 単体オブジェクトの受動的視聴

属性情報を記述した 1つのXVLファイル

� 差異情報による受動的視聴

属性情報を記述した 2つのXVLファイル

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Figure 5.3: 3D Viewer System

� 文書を用いたアニメーション生成

入力は文書.また,文書によりキーワードを記述したXVLファイルが自動的

に読み込まれる.

上記のファイルをシステムの入力として,アニメーションデータが付加されたXVL

ファイルと音声読み上げの制御を行う JavaScriptを生成する.また,受動的視聴の

目的に応じて出力されるアニメーションの内容も異なる.

5.3.2 3Dオブジェクトのアニメーション

生成される 3Dオブジェクトのアニメーションは回転とその速度変化に関する機

能を実現する.オブジェクトの回転は,回転台を回すように一定方向に回旋動作を

行うアニメーションである.また,属性情報が音声で呈示される場合は,音声呈示

区間内で説明が終了するように回転速度を変化させる制御を行う.

5.3.3 視点移動におけるアニメーション

3Dオブジェクトは一定方向にしか回転を行わない.しかし,回転台に垂直とな

る方向に対しては視点から見ることが出来ないので,ある視点から得られる情報が

30

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なくなると視点を上下に自動移動することにより,オブジェクトのあらゆる面が表

示され,それに伴い属性情報も取得することが可能となる.

また,属性情報を音声で呈示する場合は,詳細度に応じて視点をオブジェクトの

方向に移動したり,反対に遠のく距離制御を行う機能も提供する.

5.3.4 属性情報のアニメーション

オブジェクトの持つ属性情報を空間内でユーザに呈示する機能を提供する.呈示

の際には,方向,文書に基づく属性情報の詳細度により,文字情報の視覚化,大き

さの制御を行う.また,音声読み上げにより属性情報が呈示される場合,どの面に

付加された属性情報について説明されているかが分からない.そこで,文字情報を

上下にジャンプさせることで音声呈示されている属性情報をユーザに指し示す.

5.3.5 バックサウンドの制御

3D Viewer Systemにより選択された音楽は受動的視聴時にバックミュージック

として流れる.これは,より見栄えを良くするための 1つの演出であり,プレゼン

テーションには欠かすことができない要素である.

しかし,音楽再生のために属性情報の音声読み上げが聞き取りにくいと意味がな

いので,音声読み上げにより属性情報が呈示される場合はバックサウンドの音量を

低く,呈示が終わると音量を上げる制御を自動的に行う.音量制御には生成される

JavaScriptにその機能を組み込むことで実現した.

5.4 実行例

ここでは,受動的視聴別にシステムの実行画面を示す.

5.4.1 単体オブジェクトの受動的視聴

単体オブジェクトの受動的視聴における実行画面を示す.実行画面のオブジェク

トはミツバチを表している.XVLの機能により,こういった曲面を持ったオブジェ

クトに対しても本システムの受動的視聴が適用可能となる.

Figure5.4は方向に基づく詳細度制御を表す.オブジェクトの回転動作により,視

点から見える面やその度合いが変化するので,それに伴い属性情報の文字の大きさ

を変化させている.

31

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Figure 5.4: LOD control by orientation

Figure5.5は属性情報の詳細度に応じて視点とオブジェクト間の距離を変化させ

ていることを表す.詳細な情報はオブジェクトに接近し,階層が浅い情報について

はオブジェクトから離れる視点の自動移動を表す.

Figure 5.5: Change of distance

Figure5.6は,ある視点から得られる情報がなくなると視点を上下に移動してオ

ブジェクトのあらゆる面や属性情報を呈示することを表す.

32

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Figure 5.6: Change of viewpoint

5.4.2 差異情報による受動的視聴

差異情報による受動的視聴の実行画面を示す.2つのオブジェクトを選択し,そ

れらの属性情報の違いをオブジェクトを回転させらがら呈示を行う.Figure5.7は,

属性情報の値による相違情報の呈示を表している.

Figure 5.7: Presentation by di�erentiation

Figure5.8は,属性情報の有無による差異を表している.属性情報が存在するオ

ブジェクトが前に,存在しないオブジェクトが後ろになるように位置関係を変化さ

せている.前のオブジェクトにより後ろに回ったオブジェクトは見えにくくなる.

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Figure 5.8: Presentation by existence of attribute

5.4.3 文書を用いたアニメーション生成

XMLで記述したオブジェクトの説明文 (文書)を入力として,3Dオブジェクト

のアニメーション生成による受動的視聴の実行画面を示す.

Figure5.9では,文書内に 2つのオブジェクトの記述 (<obj> タグが 2つ存在す

る)があるので,順次オブジェクトが読み込まれ音声読み上げにより呈示が行われ

る.また,文書に基づく詳細度制御により音声で呈示されている文章から文書的に

近いキーワードについては文字を大きくし,遠いキーワードについては小さく表示

を行っている.

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Document by XML

Figure 5.9: Document-driven passive viewing

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第 6章 結論

本稿では 3Dオブジェクトのアニメーション機能を使って,受動的にオブジェク

トの属性情報を視聴できる手法について提案した.また,ユーザが容易に理解でき

るように,オブジェクトの回転や属性情報の呈示方法,音声重複等の問題を十分考

慮してシステム構築を行った.Web3Dに代表される 3D技術が急速に進化する中,

将来的には TVや携帯電話による 3D表示が可能となる時代が到来するかもしれな

い.そのようなインタラクションが制限された端末においては,受動的な呈示方法

は必要となる要素であると考える.

また,本稿では (1)3Dオブジェクトの動作に応じた属性情報の呈示と (2)文書を

用いたアニメーション生成の 2つの受動的視聴方式の提案を行った.(1)はオブジェ

クト作成者が属性情報を記述する場合の手法であり,(2)は既存のオブジェクトを基

にナレーションとして説明を加えたい場合に有効であると考える.また,3Dオブ

ジェクトに属性情報とキーワードの両方の記述を行えば,(1)と (2)の両方の受動的

視聴を行うことも可能であり,属性情報や文書の記述を組み合わせて呈示を行うこ

とも考えられる.2つのアプローチは実際のプレゼンテーションにも通ずる考え方

であり,用途やオブジェクトによって使い分け,組み合わせができれば,作成者側,

ユーザ側の双方において有益な呈示方式であると考える.

今後の課題としては,(2)のアプローチの応用として 3Dオブジェクトが組み込

まれたWeb文書において自動変換を行いアニメーションを視聴できるシステムが挙

げられる.これにより,本稿の動機となったWeb3Dに対する受動的視聴システムと

しての実用性が格段に増すであろうと思われる.

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謝辞

最初に,研究全般にわたって御指導賜りました田中克己教授,草原真知子助教

授,田島敬史助手に厚く御礼申し上げます.

また,日頃より様々なご協力をいただきました大学院自然科学研究科情報知能工

学専攻の諸先生方に感謝の意を表します.

また,システム実装に際し,3次元プログラムXVLを提供して下さったLattice

Technology社の野原氏に深く感謝の意を表します.

さらに,御自身もお忙しい中御助言,御助力を頂いた博士後期課程の灘本明代

氏,本研究に対して多大な助力を頂いた博士前期課程の近藤宏行氏,服部多栄子氏,

学部四回生の四方正輝氏,並びに本研究に限らずあらゆる分野にわたってご協力し

て下さった情報知能工学科田中研究室の皆様に深く感謝の意を表します.

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参考文献

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