出光興産株式会社 主催 第 ... - engineering-eye.comp. 9 5.まとめ

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出光興産株式会社主催 第42回熱処理研究会 Copyright (c) 2019 ITOCHU Techno-Solutions Corporation P. 1 熱処理シミュレーションに必要なIoT要素技術 伊藤忠テクノソリューションズ株式会社 科学システム本部 CAEソリューション営業部 小椋 一秀、前島 剛 1.はじめに 大量のデータさえあれば最適解の導出が可能ではないかといった誤解や、ビックデータの解析 に注力しているにも関わらず決め手に欠ける結果が多いとの相談が持ち込まれる。メディアの影 響である事に間違いないが、個々の目的達成の為には、個々に適応した手法・アプローチが必要 で、「データを収集出来たから」、「新しい IT 技術を利用したから」と言って、容易に解決できるもの ではない。 まず、IoTに取り組み始めると、PLC 注 0) 、DCS、OPC、その(IoT)プラットフォーム、データベース の機能と構成、統計学、機械学習からディープランニングに至るまで、あらゆる技術仕様が羅列さ れ、本質的な最適解探索や解析への思考が発散させられる事から始まる。 技術者なら、多量のデータを前にすれば、統計解析に取り組む覚悟は出来ているが、既存デー タ(ダークデータ 注 1) )からのマイニングでは、必要とされるフィルタリング作業の壁に阻まれ、挫折 するケースが大半である。 一方、成功企業においては、永きにわたり、個々の計測手法・計測機材の研究開発と、課題・ 目的を明確にして必要なデータを蓄積し、最後に最新の IT 技術を駆使し、目覚ましい成果を出し つつある。 これら課題に留意し、熱処理シミュレーション分野での目的関数、最適化から機械学習まで、来 るべき破壊的イノベーションの波に対応できる要素技術の一部を紹介する。 2. IoTへの取り組み IoTの要素技術を述べる前に、これまで の取り組みを紹介しておきたい。弊社は、 情報通信事業を礎とするIT企業であるが、 当本部(科学システム本部)は、民間気象 事業として予報業務許可を受けた部門を 保有している。日本最初のお天気情報専 門サイト WeatherEye(図.1)をはじめ、各 種産業向けの気象情報サービス、CS、 CATV 向けの天気番組、Web のお天気関 連情報、モバイル向けの音声・テキスト・ 画像情報サービス、デジタルサイネージを、 平成 3 年(1991 年)から提供を始めている。 また、再生可能エネルギー分野において 図.1 お天気情報サイト WeatherEye 2019ⓒCTC 出光興産株式会社 主催 第42回 熱処理研究会

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出光興産株式会社主催 第42回熱処理研究会 Copyright (c) 2019 ITOCHU Techno-Solutions Corporation P. 1

熱処理シミュレーションに必要なIoT要素技術

伊藤忠テクノソリューションズ株式会社

科学システム本部 CAEソリューション営業部

小椋 一秀、前島 剛

1.はじめに

大量のデータさえあれば最適解の導出が可能ではないかといった誤解や、ビックデータの解析

に注力しているにも関わらず決め手に欠ける結果が多いとの相談が持ち込まれる。メディアの影

響である事に間違いないが、個々の目的達成の為には、個々に適応した手法・アプローチが必要

で、「データを収集出来たから」、「新しい IT 技術を利用したから」と言って、容易に解決できるもの

ではない。

まず、IoTに取り組み始めると、PLC 注 0)、DCS、OPC、その(IoT)プラットフォーム、データベース

の機能と構成、統計学、機械学習からディープランニングに至るまで、あらゆる技術仕様が羅列さ

れ、本質的な最適解探索や解析への思考が発散させられる事から始まる。

技術者なら、多量のデータを前にすれば、統計解析に取り組む覚悟は出来ているが、既存デー

タ(ダークデータ注 1))からのマイニングでは、必要とされるフィルタリング作業の壁に阻まれ、挫折

するケースが大半である。

一方、成功企業においては、永きにわたり、個々の計測手法・計測機材の研究開発と、課題・

目的を明確にして必要なデータを蓄積し、最後に最新の IT 技術を駆使し、目覚ましい成果を出し

つつある。

これら課題に留意し、熱処理シミュレーション分野での目的関数、最適化から機械学習まで、来

るべき破壊的イノベーションの波に対応できる要素技術の一部を紹介する。

2. IoTへの取り組み

IoTの要素技術を述べる前に、これまで

の取り組みを紹介しておきたい。弊社は、

情報通信事業を礎とするIT企業であるが、

当本部(科学システム本部)は、民間気象

事業として予報業務許可を受けた部門を

保有している。日本最初のお天気情報専

門サイト WeatherEye(図.1)をはじめ、各

種産業向けの気象情報サービス、CS、

CATV 向けの天気番組、Web のお天気関

連情報、モバイル向けの音声・テキスト・

画像情報サービス、デジタルサイネージを、

平成 3 年(1991 年)から提供を始めている。

また、再生可能エネルギー分野において 図.1 お天気情報サイト WeatherEye 2019ⓒCTC

出光興産株式会社 主催 第42回 熱処理研究会

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も、風力発電(1995 年~)・太陽光発電(1998 年~)に関するファーム(サイト)建設の支援サービ

スや、効率的な発電所運営のためのモニタリングシステムの開発、発電出力予測システムの開発

等のサービスを提供してきた。

このように、IoT が浮上する以前

からビッグデータをクラウドへシフト

し、「見える化から将来予測まで」を、

実装・運用してきた実績がある(図.

2)。これら予測技術は、30 年近い気

象データの蓄積が礎となっている事

や、ビックデータのマイニング力が

結果を導き出していると言っても過

言ではない。

現在、再生可能エネルギー分野で培ってき

た IoT 技術を、製造分野 CAE において、最適

化技術などとの融合を進めている(図.3)。こ

こでは、再生可能エネルギー分野の「IoT」、製

造分野の、「IIoT(Industory IoT)」と便宜上区

別しておきたい。

2.1 例えば、クラウド上の IoT システム

機能的なシステムは、分野に左右される事

なく、アーキテクチャーが効果的に積み上げら

れている。クラウドのプラットフォームなどを選択

する必要はあるが、要求性能が決まっていれば

比較的容易に構築する事が出来る。製造系モ

デルでは無いが、(図.4)に構成例を示す。下

層から IaaS/PaaS/SaaS で構成されており、

サービスとして E-PLSM(見える化)のシステム

が実装されている。

IaaS 注2):クラウドサービスのプラットフォームと

してプロバイダの選択がある(AWSやAzureな

ど)、このプラットフォームを基幹として運用す

る事になる。

PaaS:プラットフォーム上で稼働する OS や

IoT プラットフォーム。この上で IoT データが収集される。

SaaS:将来予測システムや、収集されたデータの見える化等が実装されるアプリケーション領域

になる。

図.2 「見える化システム E-PLSM」 2019ⓒCTC

図.3 製造分野(CAE ソリューション)への展開 2019ⓒCTC

図.4 E-PLSM 構成例 2019ⓒCTC

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3.製造業で用いられる IIoT 技術

ここで対象となる製造業は、シミュレ

ーションを多用する特定の分野(図.5)

を想定し、塑性加工から衝突破壊、材

料モデルの開発に至る範囲に絞ってお

く、本編では熱処理と最適化(カーブフ

ィッティングという合わせ込み)に限るが、

実験データを用いるシミュレーション全

般で IIoT は活用できると確信している。

また、FA 機器分野において、エッジ~

生産計画に至るプロセスで、IIoT や機械学習のニーズが拡大すると見込まれているが、詳細は別

の機会に述べたい注3)

3.1 CAE シミュレー

ションにおける IIoT の位

置づけ

これまで、ソリューショ

ン区分を 2 次元平面上

に、縦軸(プロセス)、横

軸(テーマ)などを設け、

プロセス別/テーマ別に

技術アプローチが進めら

れてきた。IIoT の位置づ

けに関しては、この 2 次

元平面上に、新たな軸を

設け、それぞれの分野・

テーマごとに IIoT 独自の、

アプローチを図ろうとして

いる(図.6)。

このように、計測機器

から取り込まれたデータ(境界条件であれ、材料物性であれ)は、解析データとしての活用が考え

られる。(図.7)は、熱処理解析プロセスの一例。効果は設計向けの応答局面作成としている。

右側:黒い波線は既知の領域で、左側:赤い波線が今後の取り組む領域となる。

図.5 製造系 CAE 分野の一例 2019ⓒCTC

図.6 IIoT を従来のソリューションに組み込む 2019ⓒCTC

図.7 新しい軸に加えた、熱処理解析のプロセス 2019ⓒCTC

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4.シミュレーション全体の俯瞰とその役割

製造プロセス・モデルを例に、全体を俯瞰しながらその機能を確認する(図.8)。①は工作機械

であったり、熱処理機器を想定する生産技術のセクション(生産品の流れ省略)で、時系列で設定

されたデータが取り込まれ、蓄積されてゆく。②は IIoT プラットフォーム。収集したデータを蓄積し

たり、上流の戦略セクションで実施する統計処理や、ERP 注 4)での利用に向けたフィルタ処理、体

系化処理を受け持つ。③は、主に生産技術で多用する CAE セクション、精度向上の合わせ込み

や、最適解の導出処理など。④は①②③で作成されたデータを元にプロセスシミュレーションを実

施するセクション。例えば、10,000 部品を 1 ヶ月で生産できるか?、出来るならERP,MES注 4)へ

進み、計画生産数に達しなければ、生産工程、生産能力①②③の見直しを図ることになる。

一般的にエンジニアには見えにくいフローではあるが、経営層はこのように逐次戦略修正しな

がら舵をとっている(さらに緻密に、MES、ERP は実行される)。IIoT がどのような位置づけになり、

エンジニアリングがどのように役立っているのかを意識づける機会にもなる。

このモデルを中心に各要素技術としての、①機械/深層学習システム、②IIoT プラットフォーム、

③CAE シミュレーション、④プロセスシミュレーション(今回は省略)を紹介してゆく。ただし、製品の

流れ(工場内外・物流)や、ERP、MES などの命令系統と操業情報系の記載が無いが、IIoT とシミ

ュレーションに軸をおいている事をご留意頂きたい。

図.8 IIoT 製造プロセス・モデル 2019ⓒCTC

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4.1 IIoTプラットフォームの要件(図.8 ②)

以下に、IIoTプラットフォームが具備すべき機能を記載する(図.9)。③工場内のあらゆる機器

に接続する為には、各種インターフェイスを具備する事と、OPC注 0)等の親和性が重要となる。実

際には②で設定されるが、データの参照・ハンドリングに自由度を持つことが重要。

②データを格納する機能で最も重要なのは、RDB(RelationalDatabase)ではなく、時系列 DB で

ある事。大容量の時系列データに複雑なレコード、テーブルは不要。アクセスに時間をきたす事に

なる。加えて、データの体系化とフィルタリングの容易さが重要な機能になる。

①での機能はユーザもしくはオペレータ自身が GUI を作成したりカスタマイズが容易にできる事。

開発不要の GUI システムが望ましい。他、上位の BI ツール注 4)や、機械学習、CAE で活用するデ

ータは、このフェーズで接続される。よって、他システムとの連携は必須になる。

4.2 機械/深層学習システムを CAE で利用するには(図.8 ①)

多くの熱処理炉や工作機械などは、運転状況を把握する為のセンサーシステムが実装されて

いる。このセンサー情報は、機器保全や、消耗品の情報提供を顧客に促すものが主であり、その

機器で製造される製品の品質・精度向上を意図して実装されているものではない。

AI の判断基準がブラックボックスであるとか、処理過程が複雑で根拠が不明瞭なら、結果が採

用されないとか、逆に人間自身の意思決定プロセスもブラックボックスではないか等、種々議論が

噴出しているが、本編では、適材適所に、利用出来るものは利用する方向で話を進めたい。

たとえば、ガスタービン(発電機)に数多くのセンサーを配置し、正常運転時の波形と、それ以外

の波形(たとえば故障時の波形:教師データ)をリアルタイムに比較するよう、システムを起動して

図.9 IIoT プラットフォーム例 2019ⓒCTC

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おけば、故障発生前に、なんらかの警告を発するような予知保全システムは、多くの実績と事例

が発表されている注5)。また、研究・開発レベルの事例になるが、正常時データが少量の場合にも

シミュレータ自身がデータを生成し、運転データ注3)として適応するなど、取り組むテーマやその発

表は枚挙に暇がない。

一般に機械学習システムは、入力波形データを画像処理しながら、正常データと教師データ

(異常値データ)を最少区間単位で比較し、相違点(異常値)を検出するのはご存じの通りで、シミ

ュレーションにおいて、これらの優れた機能を部分的に利用する事を検討している。例えば、時系

列に存在する実験データ(図.10)において、機械学習システムは波形(連続値)を比較する際に、

一定区間の連続値(波形)を離

散値に変換し、区間データ単位

で正常データと教師データを比

較している。これらの特徴を利

用し、シミュレーションで利用し

たい離散値データを短時間に

抽出し、必要なパラメータ値を、

容易に取り込む事が可能にな

る。予知保全に至るリアルタイ

ムプロセスを利用した、統計処

理を伴わない、数値の抽出が

実現する。新しい技術の黎明期

においては、与えられた機能を

与えられたように利用するだけでなく、内部機能を有効に利用する事も重要になる。

4.3 CAE シミュレーションとデータの合わせ込み(図.8 ③)

熱処理シミュレーション生産活用システムの構想例(図.11)のように、すでに、実験データなど

を収集し、データ・マイニングから最適化パラメータを探索・活用してきた事例がある。今後 IIoT を

用いた生産活用システムを適応するにあたり、そのアプロ―チを検討し、要素技術を纏めたい。

図.10 連続値から離散値の抽出 2019ⓒCTC

図.11 IIoT 時代の熱処理シミュレーション生産活用システムの検討 2019ⓒCTC

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冒頭に述べたように、「個々の目的達成の為に

は、個々に適応した手法・アプローチが必要」であ

る。たとえば、熱処理炉から生成される製品から、

いかに必要なデータを取得するかが重要であり、単

に炉に備わったセンサーから取得出来るデータを

用いて精度向上が実現出来るのであれば、すでに

課題は解決しているはずである。

もし、精度向上を目的関数にするなら、独自の計

測技術とアプローチ手法を持って、設計変数が選

ばれる事になる。まず、目的関数注6)、設計変数、

制約条件を明確にし、設計変数に何を適用させる

かで、独自に取得すべき計測データが明確になっ

てくる(図.11.図 12)。

熱伝達係数の最適化例を紹介する(図.13)。上図は、解析条件とモデル図、下図は、左から、計

測データが蓄積され、統計解析と最適化(データマッチング:比較の対象となるデータと既知のデ

ータの合わせ込み)手法により、熱処理シミュレーションを通して、設計展開する応答局面が生成

されている。ここでは、実際にカーブフィッティングのデモを交えて処理のイメージを把握頂きたい。

<熱伝達係数の最適化例>

図.12 IIoT 部分にイメージを合成 2019ⓒCTC

図.13 熱伝達係数の合わせ込み例 2019ⓒCTC

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冷却端から 1mm の温度を実験値とシミュレーションで比較する。熱伝達係数は、適切な値を使

用(図.14①)。温度について、実験値とシミュレーションのカーブが一致するような熱伝達係数を

求めたいことから、カーブフィッティングを実施(図.14②③)。

カーブフィッティングは、入力データの編集、ソルバーの実行、出力のチェックを繰り返してカー

ブが一致する入力パラメータを探索すればよいので、手作業でも可能だが、手間がかかる事、手

作業によるデータの編集はミスを誘発しやすい、などのデメリットが多い事からツールを利用して、

作業を自動化することで効率的に合わせ込む事が出来る。(図.14④)は、当初利用した熱伝達

係数とデータマッチングで生成された熱伝達係数の比較を表す。

<カーブフィッティングのまとめ>

■データマッチングによる繰り返し計算回数:100 回(68 回にベスト解に到達)

■総計算時間:1時間 9 分 28 秒

■データマッチングの準備に要した時間:約 1 時間

図.14 カーブフィッティング 2019ⓒCTC

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5.まとめ

熱処理シミュレーションにとって、境界条件は重要なパラメータである事に間違いない。炉内デ

ータを収集する事は至極困難な事でもあるが、その取得に注力する事は重要だと考えている。

しかし、工作機械を多用する切削分野では、電力量(正確には電流値)から工作機械(刃先)の

負荷を予測したり、本質的でない部分から本質的なデータにアプローチする手法を少なからず見

いだしつつある。IIoT は、CAE にとって本質的ではないが、間接的に解を見出せる機会ではない

かと考えている。是非、皆さんと共に叡智を絞り、新しいアプローチで、次の切り口を見出してゆき

たいと思う。

要素技術のまとめ

① 機械学習システム :予知保全で培われた技術の一部を、局所利用する試みをしている。

すでに、画像処理・マッチング手法は確立されたものがあり、その一部技術を CAE に適用さ

せてゆく事が狙い。もちろん、特定の材料と境界条件を与えれば、このような製品が生まれる

と予測する技術が本流である。

② IIoT のプラットフォーム :CAE にとって主戦場ではないが、生々しい境界条件取得に向けて

チャレンジするには絶好のプラットフォームである。取得したいデータを見極めて、計測技術

の確立も進めて頂きたい。

③ CAE シミュレーション :多量のデータは統計処理でフィルタリングすれば良いが、データが

纏まると、最適化技術を駆使したシミュレーションテクニックが求められる。品質工学やマハラ

ビノス・タグチ(MT 法)など高度な技術への第一歩となる、カーブフィッティングを紹介した。

④ プロセスシミュレーション :今回紹介出来なかったが、注3)をご覧いただき、事例の一助として

頂ければと思う。

引用文献

図.10 M. Narazaki, et. al, Porc. 5th International Conference on Quenching and Control of Distortion, Berlin,

German (2007) 111-117.

図.11 熱処理シミュレーション利用の現状と将来動向 パーカ熱処理工業(株) 渡邊陽一 SOKEIZAI Vol.55(2014) P.44

注釈

注 0)PLC(Programmable Logic Controller) :シーケンサーと言われる、各機器に設置される制御装置。

DCS(Distributed Control System) :PLC を束ねる分散型の制御システムなどを指す。

OPC (OLE for Process Control) :制御機器の各社方言を標準語に通訳する仕組み

注1)ダークデータ(Dark data) :データとして収集されたが、有効利用されずに蓄積されているデータ。

注2)IaaS(Infrastructure as a Service ) :クラウドのプラットフォーム、例えば AWS や Azure など、

PaaS(Platform as a Service) :OS や言語仕様、ここでは IoT のプラットフォームが主になる。

SaaS(Software as a Service) :一般的にサービスソフトウェアの領域。

注3)プロセスシミュレーションに関しての情報提供

AIとの連携事例 :http://www.engineering-eye.com/WITNESS/features.html#witness_ai

WITNESS を活用した AI 強化学習環境の実装:http://www.engineering-eye.com/WITNESS/userconference/

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注4)ERP :Enterprise Resources Planning 経営資源(人・モノ・お金・)の最適活用するシステム(ERP→MES 作業指示)

MES :Manufacturing Execution System 製造現場(人、設備、モノ)の最適活用するシステム(MES→ERP:操業報告)

BI Tool :Business Intelligence Tool データ解析ツール、見える化、経営指標(KPI)設定管理、統計解析まで。

注5)機械学習システム事例 :http://www.engineering-eye.com/Predict-It/

注6)最適化を検討する為の3条件。この3条件を整理するだけで最適解が見つかる?事もある。

目的関数 :最大、最少、閾値に近づけたいシミュレーションで適用する関数。

設計変数 :シミュレーションや、構想の中で変化させたいパラメータ

制約条件 :設計変数が取り得る範囲

<文中に記載したソフトウェアと開発元>

・機械/深層学習システム falkonry:開発元(米)Falkonry, Inc./SAS Viya:開発元(米)SAS Institute Inc.

・IIoT プラットフォーム PI System:開発元(米)OSIsoft、LLC

・CAE シミュレーション Isight:開発元(仏)Dassault Systèmes S.E./FINAS/STAR TPS Edition:開発元 CTC

・プロセスシミュレーション WITNESS:開発元(英)Lanner Group Ltd.

・図表には、ピクトアーツ社の画像(ロゴ・アイコン)を使用した。

本文に記載されている商標・製品名あるいは製品に付随する一切の権利はそれぞれの所有者に帰属する。