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皆さんが考える「良い授業」とはどのようなものでしょうか。

例えば、「生徒が笑顔になる授業」や、「生徒が新しい発見に出

会える授業」、「生徒が『もっと調べたい』と思う授業」など、そ

の表現は様々です。これらに共通するのは、「生徒」が主語である

ことです。そして、授業の中で生徒が活躍する場面をつくること

が、教員である皆さんの大事な役割です。

皆さんはこれから数多くの生徒たちと出会い、日々の教育活動

を通して彼らの成長を支援していくことになります。とりわけ教

科指導(授業)は学校における教育活動の根幹を成す部分です。

授業を通して生徒たちの「生きる力」を育むためには、教員自身

が向上心を持って自らの専門知識・技術を磨き続ける姿勢が大切

です。それに加えて、アンテナを高く伸ばして社会的なニーズ

(「SDGs(持続可能な開発目標)」の理念や「Society5.0」の実現

等)を捉え、それを授業づくりにいかそうという意識も必要にな

ります。

生徒の「生きる力」を育むために、新学習指導要領で示された

「主体的・対話的で深い学び」の視点を意識し、生徒が主語とな

る授業づくりを目指しましょう。

総合教育センターでは、皆さんの授業づくりをサポートしてい

くため、「授業づくりガイド」を作成しました。どうぞ、この冊子

を十分に活用し、よりよい授業づくりを目指してチャレンジして

ください。

はじめに

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1

1 「主体的・対話的で深い学び」 ・・・・・・・・ 5

2 育てたい生徒像を思い描く・・・・・・・・・・ 7

3 教員の思いを伝えよう・・・・・・・・・・・・ 9

3 教員の思いを伝えよう・・・・・・・・・・・・・ 9

4 生徒が考え気付く授業・・・・・・・・・・・・ 11

5 生徒のことが分かる場面・・・・・・・・・・・ 13

6 高校生の特性を知ろう・・・・・・・・・・・・ 15

7 一人ひとりの理解の仕方・・・・・・・・・・・ 17

生徒を理解する

5 学習活動を組み立てる・・・・・・・・・・・・ 37

6 学習目標にあった教材・・・・・・・・・・・・ 39

7 ポイントは授業構成・・・・・・・・・・・・・ 41

8 学習活動にはふさわしい学習形態がある・・・・ 43

9 言語活動の進め方・・・・・・・・・・・・・・ 45

いま求められている授業について 序 章

ビジョンを持つ

8 最適な学習環境をつくろう・・・・・・・・・・ 19

9 教室における教員の存在感・・・・・・・・・・ 21

10 授業のユニバーサルデザイン化・・・・・・・・ 23

11 インクルーシブ教育の推進・・・・・・・・・・ 25

環境を整える

授業づくりの前に

授業の計画にあたって

1 「生徒に身に付けさせたい力」は何だろう・・・ 29 年間指導計画を立てる

2 単元(題材)の目標の考え方・・・・・・・・・ 31

3 評価規準を設定する・・・・・・・・・・・・・ 33

4 「指導と評価の計画」を立てる・・・・・・・・ 35

指導と評価を計画する

授業をつくる

参考資料

1 一人ひとりの学習スタイルを把握しよう・・・・・・ 109

2 「指導と評価の計画」を立てよう・・・・・・・・・ 111

3 情報教育について・・・・・・・・・・・・・・・・ 113

4 授業づくりに役立つ資料を活用しよう・・・・・・・ 115

はじめに

学びを支援する

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1 学習評価とは・・・・・・・・・・・・・・・・・ 63

2 学習の様子を見取る・・・・・・・・・・・・・・ 65

1 発問や指示は的確に・・・・・・・・・・・・・・ 49

2 「聴く態度を」育てよう・・・・・・・・・・・・ 51

3 黒板の使い方・・・・・・・・・・・・・・・・・ 53

4 机間指導の仕方・・・・・・・・・・・・・・・・ 55

指導力を磨く

5 ワークシートの活用の仕方・・・・・・・・・・・ 57

6 ICTを活用しよう・・・・・・・・・・・・・・ 59

ツールを活用する

教員の指導を振り返る

7 課題や改善点を整理する・・・・・・・・・・・・ 75

8 授業実践を振り返る・・・・・・・・・・・・・・ 77

9 授業研究を活用する・・・・・・・・・・・・・・ 79

評価の基本的な考え方

生徒の学びを振り返る 3 「関心・意欲・態度」はこれを見る・・・・・・・ 67

4 提出課題やパフォーマンスから見取る・・・・・・ 69

5 テストで見取る・・・・・・・・・・・・・・・・ 71

6 生徒とともに振り返る・・・・・・・・・・・・・ 73

授業の実践にあたって

学習評価と授業の振り返り

各教科の授業

1 国語・・・・・・・・・・ 83 7 芸術・・・・・・・・・・・ 95

2 地理歴史・公民(1)・・ 85 8 外国語(英語)・・・・・・ 97

3 地理歴史・公民(2)・・ 87 9 家庭・・・・・・・・・・・ 99

4 数学・・・・・・・・・・ 89 10 情報・・・・・・・・・・・ 101

5 理科・・・・・・・・・・ 91 11 農業・工業・商業・水産・看護・福祉・ 103

6 保健体育・・・・・・・・ 93 12 総合的な探究の時間・・・・ 105

共通教科

専門教科

おわりに

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1

いま求められている授業について 序

学習指導要領は、各教科の学習内容を定めた法令文書です。ここには各教科・科目

の学習を通して育成を目指す資質・能力が明記されており、授業づくりをする際には

学習指導要領の内容(指導事項)を踏まえる必要があります。

平成 30 年に新しい学習指導要領が告示されました。新学習指導要領は令和4年度

より年次進行で実施されます。今年(令和2年)は新学習指導要領への「移行期間」

に当たっています。移行期間中も、原則は教科・科目の編成と学習内容、学習評価につ

いては現行の学習指導要領(平成 21 年告示)に則ります。一部教科の学習内容や特

別活動、授業づくりの視点(「主体的・対話的で深い学び」)等については、移行措置と

して先行実施しています。

キーワード2 育成を目指す資質・能力

新学習指導要領では、これからの社会を生きる生徒に必要な「資質・能力」につい

て、次に挙げる「三つの柱」で整理されています。

これらの「資質・能力」をバランス良く育むためには、生徒自身が考えを形成した

りよりよく表現したりする場面を設定するなど、授業の中で、生徒の学習の質を高め

る工夫が必要となります。

カリキュラム・マネジメントは、新学習指導要領における中核的なキーワード。学

校教育目標の実現に向け、教育課程の編成、実施、評価、改善のサイクル(PDCA

サイクル)を踏まえて、教育活動の質を高めようという営為を指した言葉です。

時代や社会の変化を踏まえて、学校で生徒たちにどんな資質・能力をどのように身

に付けさせるか。このことについて学校全体で考え、授業や学校行事をはじめとする

教育活動を「よりよくし続ける」ことが求められています。

キーワード3 カリキュラム・マネジメント

カリキュラム・マネジメントの実現に向け、新学習指導要領には「教育課程の編成,

実施,評価,改善を図って行く必要がある。」とあり、特に「主体的・対話的で深い学

びの視点」による授業改善を進めることが求められています。

神奈川県では、教育課程の改善に係る取組として「組織的な授業改善」を推進し、

各学校の指導方法の見直しといった授業改善を継続的に行っています。

授業研究・改善の流れを「RPDCA〔Research【調査】-Plan【計画】-Do【実

施】-Check【評価】-Action【改善】〕」のマネジメントサイクルで捉えるもので、学

校全体でテーマを設定し、教科全体で授業づくりや改善を図っています。

キーワード4 「組織的な授業改善」

キーワード1 学習指導要領

①生きて働く「知識・技能」の習得

②未知の状況にも対応できる「思考力・判断力・表現力等」の育成

③学びを人生や社会に生かそうとする「学びに向かう力・人間性等」の涵養

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2

評価規準を明確にして授業を実施するということは、自らの指導について振り返

ることにつながります。例えば、多くの生徒が評価規準を実現できない場合には、そ

の原因は生徒のみではなく、教員の指導にも課題があると考えられます。自身の指

導はどうだったのかと反省し、次の授業をより良いものにしていくことが、指導と

評価の一体化への第一歩です。

新学習指導要領には、実現したい生徒の姿として次のように書かれています。

生徒をこういった姿に導くためには、学習の質を高めるための取組が必要となりま

す。「主体的・対話的で深い学び」は、学習の質を向上させるための授業づくりの視点

として、新学習指導要領に示されているものです。

各教科の「学びの鍵」となる各教科等の特質に応じた「見方・考え方」を働かせ、

様々な活動を通して、生徒の学習の質を高めることが求められています。

「良い授業」を実現するためには、1 単位時間の授業のことだけ考えていたのでは

うまくいきません。そこで、「単元(題材)による授業構想」が必要となります。

「単元(題材)による授業構想」とは、学習指導要領にある各教科・科目の目標や

内容を実現するために、ある程度のまとまりを単元(題材)として授業を考えること

です。各教科・科目における目標の実現は、1 単位時間の授業で実現できるものでは

ありませんから、内容のまとまりを単元(題材)として、単元(題材)を通して力を

身に付けることができるように構想することが必要になるのです。

「単元(題材)による授業構想」において、生徒の学びを想定することで、効果的

な学習活動を位置付けることができます。

各教科・科目の目標を実現するために授業を実践します。目標の実現状況を判断す

るために、学習のねらいが実現された状態を事前に具体的に想定して、「評価規準」

を設定し、評価します。これを「目標に準拠した評価」といいます。その際、目標実

現のために、4 つの観点を決めて評価規準を考えます。これが観点別学習状況の評価

です。

なお、新学習指導要領における評価は、「知識・技能」「思考・判断・表現」「主体的

に学習に取り組む態度」の3つの観点に整理されます。

キーワード8 指導と評価の一体化

キーワード7 目標に準拠した評価

キーワード6 単元(題材)による授業構想

キーワード5 「主体的・対話的で深い学び」の実現

・学習内容を人生や社会の在り方と結び付けて深く理解する。

・これからの時代に求められる資質・能力を身に付ける。

・生涯にわたって能動的に学び続けることができるようにする。

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3

授業づくりガイドの構成

テーマについて、ポイン

トとなることを示してい

ます。

左ページの内容に関連し

て、具体的な事例等を説

明しています。

個別の支援が必要な生徒への

対応について、テーマに合わせ

たワンポイントアドバイスを

掲載しています。

ミニコラムとして、テーマに関連

するアイデアや授業づくりのヒ

ントとなること等を掲載してい

ます。

必要に応じて、本

文中の用語の解説

や内容の補足をし

ています。

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1

授業は、教員が一人でつくるものでは

なく、生徒とともにつくるものです。

そのために、どのようなことに気を付

ければよいでしょうか。

第1章では、授業づくりの前にしてお

くべきことについて説明します。

授業づくりの前に

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5

よりよい社会と幸福な人生

の創り手となる力を育む

ここがポイント 授業の計画にあたって

ビジョンを持つ 1

1 「主体的・対話的で深い学び」

社会全体が「Society5.0」に向かっていく中、未来を担っていく生徒は今、

どんな力を身に付ける必要があるのでしょうか。

新学習指導要領解説 総則編は、「予測困難な社会の変化に主体的に関わり,

感性を豊かに働かせながら,どのような未来を創っていくのか,どのように社

会や人生をよりよいものにしていくのかという目的を自ら考え,自らの可能性

を発揮し,よりよい社会と幸福な人生の創り手となる力」としています。

学校では、授業を通して上に示した力の育成を図っていくことが求められま

す。そのために必要となる視点が「主体的・対話的で深い学び」です。

個 別 支 援

が 必 要 な

生 徒 へ の

対 応 を 考

えよう

基礎的・基本的な知識・技能の確実な習得

生徒によっては、基礎的・基本的な知識・技能の習得に課題が見られる場

合があります。そのような場合、個別指導なども取り入れつつ確実な習得を

図ることが求められます。ねらいに応じて多様な学習活動を組み合わせて

授業を組み立てていくことが重要です。

【主体的な学び】 学ぶことに興味や関心を持ち、自己のキャリア形成の方向性と関連付けな

がら、見通しを持って粘り強く取り組み、自己の学習活動を振り返って次

につなげる「主体的な学び」が実現できているか。

【対話的な学び】 生徒同士の協働、教職員や地域の人との対話、先哲の考え方を手掛かりに

考えること等を通じ、自己の考えを広げ深める「対話的な学び」が実現で

きているか。

【深い学び】 習得・活用・探究という学びの過程の中で、各教科等の特質に応じた「見方・

考え方」を働かせながら、知識を相互に関連付けてより深く理解したり、情

報を精査して考えを形成したり、問題を見いだして解決策を考えたり、想い

や考えを基に創造したりすることに向かう「深い学び」が実現できているか。

☆ Society5.0

日本が提唱する未来社会

のコンセプトのこと。

狩猟社会(Society 1.0)、

農耕社会(Society 2.0)、

工業社会(Society 3.0)、

情報社会(Society 4.0)に

続くもので、IoTや AI等の

発達による新しい社会の姿

を想定している。

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6

「主体的・対話的で深い学び」に関する参考資料

○幼稚園、小学校、中学校、高等学校及び特別支援学校の学習指導要領等の改善及び必要な方策等に

ついて(答申) 平成 28 年 12 月 21 日 中央教育審議会

○高等学校学習指導要領解説 総則編 平成 30 年 7 月

○新しい時代の初等中等教育の在り方について(関係資料)

平成 31 年4月 17 日 中央教育審議会

深い学びの鍵となる「見方・考え方」

各教科等の特質に応じた「見方・考え方」は、「どのような視点で物事を捉

え、どのような考え方で思考していくのか」というその教科等ならではの物

事を捉える視点や考え方です。

「見方・考え方」は各教科等を学ぶ意義の中核をなすものであるとともに、

教科等の学習と社会をつなぐものでもあります。授業を通して、生徒が「見

方・考え方」を捉え、日々の学習や生活の中で「見方・考え方」を自在に働

かせられるようになるよう、授業展開や活動を工夫しましょう。

☆よくある誤解から

「どこまで取り組めば

深い学びになります

か」と疑問を持たれる

方がいます。“深い学

び”は、難易度(量)を

指すのではなく、深め

ていく方角に向かって

行くこと(質)なので、

「どこまで」というこ

とはありません。

学び方の例 ○ 主体的な学び ・身近な事例に接し、学ぶことに興味・関心を持つ

・自ら問いを見いだし、課題の追究・解決を行う

・キャリア形成に関連付ける

・ゴールのイメージや手順の理解等から、見通しを持って粘

り強く取り組む

○ 対話的な学び ・生徒同士互いの考えを伝え合いながら、集団としての考え

を形成し、協働して物事に取り組む

・教員や地域の人々の実践や考え方から多様性を理解する

・文献、楽譜、その他の資料から先哲の考え方に触れる

○ 深い学び ・その教科等の見方・考え方を働かせる

・次の学習や日常生活等における問題発見・解決に活用する

実践にあたり、留意すること

生徒の実際の状況を踏まえながら、資質・能力を育成するために多様な学

習活動を組み合わせて授業を組み立てていくことが重要です。

高度な社会課題の解決だけを目指したり、討論や対話のような学習活動を

行ったりすることのみが「主体的・対話的で深い学び」ではない点に留意し

ましょう。

☆陥りがちな「良く

ない授業」の例

・先生の「教える」時間

が大半を占め、生徒の

考える時間が無い授業

・ペアワークやグループ

協議等の活動そのもの

が目的になってしまっ

ている授業

・発問や説明が不十分

で、今何をすべきか生

徒に伝わっていない授

・ヒントが多すぎて、考

える余地が残されてい

ない授業

→「答申」及び学習指導要領のダウンロード

P115 へ

→「新しい……(関係資料)」のダウン

ロードは、右の 2 次元コードから

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7

授業づくりの前に

ビジョンを持つ

1

ここがポイント

2 育てたい生徒像を思い描く

個 別 支 援

が 必 要 な

生 徒 へ の

対 応 を 考

えよう

☆学校教育目標とは

学校教育目標は、学校の

特色や生徒、家庭、地域の

実態に則してその学校の

ミッションとして作られ

ています。これを中心に、

組織的かつ計画的に教育

活動の質の向上を図って

いくのが、カリキュラム・

マネジメントです。

学校教育目標を踏まえること 日々教室で生徒と向き合っている皆さんは、生徒をどのような姿

に導いていこうと考えていますか。理想とする生徒の姿=「育てたい

生徒像」のイメージを持つことにより、自身の教育活動に明確な方向

性が生まれ、生徒に対して一貫した指導ができるようになります。

学校には学校教育目標が設定されています。「育てたい生徒像」は、

多くの場合、各学校で学校教育目標に根ざしたものとして示されて

います。各学校の学校教育目標と「育てたい生徒像」を意識しなが

ら、日々の教育活動を行うことが求められます。

学校教育目標は、学校の大きな道標であり、その目標の実現に向け

て、全ての教職員が同じ方向に進むことが重要です。同僚と目標を共

有することで、互いの理解を深め合うことができるとともに、学校全

体で協力しながら、教育活動をよりよくし続けていくことができま

す。

目標設定にあたって

年度当初に、学校の教育目標や教科の目標、個人の目標について考

え、その目標の実現に向けて努力していることでしょう。私たちは常

に、「育てたい生徒像」という目標を明確に持って授業に臨む必要が

あります。

学校教育目標から、「育成したい資質・能力」がどのようなものか

捉え、自分が担当する教科・科目の目標と照らし合わせ、目標実現に

向けて、単元(題材)を構想することが大切です。

→ 2章-1~4

自立した社会参加に向けて

自分の意見を持ち、自分で選択し、判断や行動に責任を持つ機会を設ける等、

学びの過程で、自己肯定感が高まるよう工夫しましょう。

学校教育目標は

生徒を導く道標

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8

教科で育てたい生徒像 「どのように授業をすればよいか」という授業技術について考え

る前に、「どのような生徒を育てたいか」そして、そのために「どの

ような力を身に付けさせるか」ということについて考えましょう。

「育てたい生徒像」は学校教育目標に根ざしたもの。ここがはっき

りしていると、授業の組立てが明確になり、生徒に伝えたいことがは

っきりした分かりやすい授業となります。

「作品づくりだけが目標?」

美術・工芸の授業では作品を制作することだけが目標になっていませんか?

例えば、陶芸の授業を例にすると、「陶芸をさせよう」ではなく、「陶芸」という学習活動を通して身に付けさせたい力

を育むことを目標とします。例えば、「子どもが使いやすい器」といった題材により目的や機能などを考えた表現力の育

成を目標に設定したり、「自分の気持ちを表した造形(抽象彫刻)」といった題材により感じ取ったことや考えたことを基

にした表現力の育成を目標に設定したりすることなどが考えられます。

各教科の学習指導要領 ・教科の目標

・科目の目標

・指導事項(教科で育成を目指す資質・能力)

《例》「神奈川県立かもめ高等学校」の場合

○自分の考えを、臆することなく 発信できる人

○・・・・・・・・・・・・

○・・・・・・・・・

自分なりの 考えを持つ

失敗を恐れず挑戦する

相手意識を持ってよりよく伝える

授業での実践 ・単元(題材)の目標の設定

・言語活動を取り入れた授業展開

・「主体的・対話的で深い学び」の視点 etc…

学校教育目標を基に、

「育成したい資質・能力」

を具体的に捉えることが重

要です。

教育課程の基準である学

習指導要領に基づいて、

授業の計画・実施・改善

を図ることが大切です。

単元(題材)を構想する

際には、「育成したい資

質・能力」の育成を意識

することが何より大切で

す。

学校教育目標

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9

授業づくりの前に

ビジョンを持つ

1

伝えるべきことと

伝えたいことを整理する

3 教員の思いを伝えよう

ここがポイント

学習スタイルの違いに配慮しよう!

視覚、聴覚、運動感覚等、認知特性の違いから人によって学び方には、得意・不得意があり

ます。“熱い思い”は伝えても、教員自身のこれまでの学び方が、全ての生徒に合っているとは

限らないので押し付けにはならないようにしましょう。

→ 1章-7

個 別 支 援

が 必 要 な

生 徒 へ の

対 応 を 考

えよう

その思いを伝えよう

「育てたい生徒像」は、自分が担当する授業等で、生徒に折に触れ

て伝えることが大切です。

教員による授業とは、生徒がその教員を通して新たな世界に触れ

ることです。生徒は教員から知識を学ぶだけでなく、人間性をも学び

ます。「この先生はどんな人で、どんな思い・願いをもって授業を行

っているのか・・・」生徒が教員の思いを捉えて授業に参加できれば、

教育効果も一層高まるでしょう。

授業を通して伝える思いとは

授業は、教科・科目という形で整えられていますが、教科の内容を

教えるだけの時間ではなく、教科・科目の学びを通して「新しい時代

に求められる資質・能力」を育む時間です。

その教科・科目を学ぶ目的、その教科・科目を学校で学ぶことに、

どのような意味があるのか、学んだことがどのように役立つか等を

根拠に基づき、自身の言葉で語ることで、生徒は、教科・科目に親近

感を抱くはずです。

伝えておくべきこと

はじめの2~3回の授業は、1年間の生徒の取組に大きく影響し

ます。1年間の授業を通して、何を学ぶのか、大切にしたいことは何

か、はじめに生徒に話しましょう。生徒との課題の共有が授業の充実

につながります。

また、教員と生徒と互いの準備があってこそ良い授業が実践でき

ます。授業での約束事もしっかりと確認しましょう。

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10

☆「伝える」際の留意点《例》

□ 伝えたいことの要点が整理できているか □ 語り口(音量・強弱・言葉遣い等)は適切か

□ 伝える内容の優先順位が整理できているか □ 情報量(話す時間等)は適切か

□ 相手の感情・心理状態を把握できているか □ 相手に「自分事」として認識させられているか

□ 場面(タイミングや環境)は適切か □ 自分の感情を制御できているか

「伝え方」や「コミュニケーション」に関する研究や文献は数多くありますが、ここでは先生方

がこれまでの実践で大切にしてきたことを紹介します。それぞれ場面に応じて工夫しましょう。

○ 「言う」ではなく「話す」

相手意識を持たず発言することを「言う」、相手に伝える意図をもって発言することを「話す」

といいます。生徒に向かって話をするときは、それがたとえ大人数であっても、生徒に「話しか

ける」意識を持って伝えることが大切です。

○ 生徒の視線を集める

大きな声で一生懸命話しても、生徒に声が届いていないと感じたことはありませんか。例えば

「あえて黙る」「突然板書に切り替える」等、即座に生徒へのアプローチを変えて、生徒の目が

教員に向くように仕掛けることも有効な手立ての一つです。

○ 身振り手振り

例えば、「今から2つのことについてお話しします。」と言いながら指で「2」を示したり、

大きさや形をジェスチャーで表したりすることで、受け取り手がイメージしやすくなります。

○ インパクト&コンパクト

伝えたい内容を整理し、インパクトのある言葉を用いてコンパクトに伝え、印象に残るよう努

めましょう。

「伝えた量」より「伝わった量」

教員が伝えたいと考えている情報の量と、生徒に伝わる情報の量は必

ずしも一致しません。学習の効果は生徒に「伝わった」量で決まると言

って良いでしょう。適切に相手に「伝える」ためには伝え方の工夫と、

生徒の状況・状態の把握が必要になります。

下のコラム欄にある「『伝える』際の留意点《例》」をヒントに工夫

しましょう。

「伝え方」のポイント

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11

授業づくりの前に

生徒を理解する 1

4 生徒が考え気付く授業

学ぶ喜びが実感できる授業 「知る」が「分かる」になり、納得に至る。「なるほど!」と心に

ストンと落ちる(納得する)分かり方をしたときに、学ぶ喜びを感

じ、生徒の目は輝きます。

では、どのような授業で、生徒は学ぶ喜びを感じるのでしょうか。

分かりやすく丁寧に教えたとしても、それが一方的な教え込みだと

したら、生徒の内面に揺さぶりを掛け心を豊かにすることはできず、

生徒の心の中に落ちてはいきません。生徒自身が課題を見いだし、解

決し、学ぶ喜びを感じる授業を目指していきましょう。

生徒が考え気付く授業とは どのような力を身に付けるために学んでいるのかという、授業の

目的を生徒に伝えることが大切です。学習の目的を知ることで、意欲

が高まり、生徒は主体的に学ぼうとするでしょう。

また、主体的な学びを実現させるためには、生徒の実態を踏まえて

教材を用意することや、生徒が自ら考えるための時間を確保するこ

とが大切です。

「分からない」と言える授業 授業中に、生徒が「分からない」と言える授業を心掛けましょう。

誰にでも苦手な教科・科目があります。分からないことを共有し、生

徒同士の協働によって解決することで、一人の「分からない」が皆の

「分かった」になり生徒たちは目を輝かせることでしょう。

個 別 支 援

が 必 要 な

生 徒 へ の

対 応 を 考

えよう

学ぶ喜びが実感できる

ここがポイント

個に応じた指導を!

本人の努力ではカバーできない領域が

あることも押さえておく必要がありま

す。個に応じた課題など、主体的に学ん

でいけるカリキュラムの工夫が必要で

す。

目標はスモールステップで!

「ちょっとがんばったらできたよ。」そんな思い

や経験が大切です。達成感が次の意欲

へとつながります。

目標はスモールステップで考えて

いきましょう。

目標

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12

【課題づくり】

□ 生徒一人ひとりの理解度や意欲の把握をしているか。

□ 学ぶことの有用性や必然性が感じられる教材や課題となって

いるか。

□ 達成感が得られる、知的満足度の高い課題か。

【展開の工夫】

□ 生徒の興味・関心や知的好奇心を呼び起こすような仕掛けが

あるか。

□ 問題解決的な学習や発見的な学習活動を取り入れているか。

□ 生徒の考えを広めたり、深めたりする発問を準備しているか。

□ 生徒が考える時間を適切に確保しているか。

□ 生徒が自分の考えを表明し、振り返ることができる場面があ

るか。

□ 思わず「なるほど!」と感じられるヤマ場はあるか。

□ 生徒の良い面を引き出す場面があるか。

□ 学習につまずいている生徒に対して、適切な支援を行えてい

るか。

「生徒の実態に応じた授業づくり」チェックリスト

生徒の実態に応じた授業づくり 生徒が考え気付く授業をつくるために、生徒の実態に合った課題や

活動を組み立てることと、十分な活動の時間を確保することが必要で

す。

生徒の活動を想定して準備することが大切です。→ 2 章-7

動機付け

「楽しいからやってみたい」「おもしろいから学びたい」という好奇心や関心がもたらすモチベーションを、「内発

的動機付け」といいます。「やらないと叱られる」「テストで高得点を取りたい」など、義務や賞罰など学習以外の目

的がもたらすモチベーションを「外発的動機付け」といいます。

主体的な学習を進めるためには、動機付けが必要です。継続的な学習につなげるためには内発的動機付けの方が望

ましいといわれています。

→ 1章-7、4章-2

→ 2章-6

→ 3章-1

→ 1章-7~11

→ 2章-8、2章-9

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13

授業づくりの前に

生徒を理解する

1

5 生徒のことが分かる場面

生徒をよく見ること

ここがポイント

個 別 支 援

が 必 要 な

生 徒 へ の

対 応 を 考

えよう

生徒の行動から見えてくるもの

生徒の気になる行動について、いつ、どんな場面で起こるのかなど、観察を続け

てみましょう。行動ばかりに注目せず、背景に何があるのかを考えていくことが大

切です。判断がつきにくい場合は、他の教員や教育相談コーディネーター、スクー

ルカウンセラーに相談してみましょう。

授業の中で、生徒を知る 授業中、どのような場面で、生徒の様子が把握できるでしょうか。

例えば発問したときに、表情やしぐさを見て、「意味が伝わっていな

いかな」と思うことはありませんか。また、課題を提示したときに、

なかなか取り組めない生徒がいるとしたらどうでしょう。その生徒

にとって、難しくて回答が分からないのか、書くことをためらってい

るのか、取り組みたくないのか、生徒の立場に立って考え、生徒を知

ることに努めましょう。

生徒を知ると、授業が変わる 生徒の興味・関心や既習事項への理解度等を把握していると、授業

でどのような反応をするか、ある程度予想できます。生徒の実態に応

じた授業づくりができ、予想外の反応にも落ち着いて対応すること

ができます。

授業以外で、生徒を知る 生徒の様子は、授業以外の場面でも把握できます。例えば、生徒と

一緒に掃除をしながら、授業のことについてどんな感想を持ってい

るのか、知ることができます。また、部活動や委員会活動の指導を行

う中で、生徒の学習状況を知ることもできます。

このように、学校生活全般を通じて、授業に対する生徒の率直な感

想を聞いたり、生徒のことを理解したりする機会はあります。

生徒とコミュニケーションを取る場面を大切にしましょう。

☆インクルーシブ教育の視点も必要です。→1章-11

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14

クラスの雰囲気

生徒の表情を見ることで、授業の内容を理解したのか、納得した

のかなど、クラスの雰囲気を感じることができます。授業内容に納

得したときは、無意識にうなずくというジェスチャーが見られます。

アンケート

板書、声の出し方、説明の仕方などの授業技術や、授業の改善を

図ったことによる成果など、教員の知りたいことを焦点化して聞く

ことができます。

また、自由記述欄への記述では、生徒の率直な感想や教員が予想

していなかった反応を知ることができます。

発問

発問によって、理解の程度や思考過程などの生徒の認識を把握す

ることができます。しかし、正解だけを問う一問一答だけでは不十

分です。なぜそう考えたのか、どう思ったのかと発問することが必

要になります。また、理由を問うことで、生徒の思考力を育成する

ことにもつながります。→ 3章-1

生徒との語らい

授業が終わったとき、生徒にとって今日の授業はどうだったのか、

ちゃんと理解したのだろうかと気になります。そこで、「今日の授業

はどうだった?」と直接生徒に語りかけてみましょう。授業が終わ

り、ホッとして緊張が解けたとき、生徒は本音で授業のことを語っ

てくれます。

また、語りかける際には、「今日の授業分かった?」ではなく、「今

日の授業で分からなかったことは?」と聞いてみるとよいでしょう。

生徒の言葉を真摯に受け止めて、授業づくりにつなげてください。

生徒のことが分かる場面

プロフィールノート

生徒の性格や仲の良い友人、得意なことや苦手なこと、部活動や趣味など、様々な角度から生徒のことを把握できる

ように、「プロフィールノート」を作ってみてはどうでしょうか。一人1ページ位の分量が活用しやすいです。また、

その生徒との授業中の関わりをメモしておくと、指導にもつながります。

ただし、個人情報の取扱いには十分注意しましょう。

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15

授業づくりの前に

生徒を理解する 1

高校生の学校での悩み

不登校や長期欠席等について、早期発見・早期対応が求められています。例えば、生徒

の中には同年齢の生徒とのコミュニケーションの苦手さから「休み時間など、何を

していいか分からない時間が一番つらい」という生徒もいます。そのような生徒

に寄り添って、個別に対話をしていくことも大切です。

高校生は子どもから

大人への移行期です

ここがポイント

大人社会に進むための準備期 令和元年 12 月、文部科学省、初等中等教育分科会(第 124 回)

において、新しい時代を見据えた学校教育の姿のイメージは、「変化

を前向きに受け止め、豊かな創造性を備え持続可能な社会の創り手

として、予測不可能な未来社会を自立的に生き、社会の形成に参画す

るための資質・能力を一層確実に育成」することとしています。

ただ、高校生の時期は、自分と他人との違いを強く意識しながら、

ありのままの自分を受け入れられず混乱しがちなものです。誰一人

取り残されることなく、必要な資質・能力を身に付けていけるよう、

生徒たちの多様化に正面から向き合うことが重要となります。

成年年齢の引下げ 平成 30 年 6 月、民法改正に伴い、令和4年 4 月から成年年齢が

20 歳から 18 歳に引下げられます。このことにより、一人で有効な

契約をすることができる年齢や、親権に服することがなくなる年齢

が 20 歳から 18 歳に引下げられることになります。また、改正法よ

り、女性の婚姻開始年齢が 16 歳から 18 歳に引上げられ、婚姻開始

年齢が男女とも 18 歳に統一されます。

消費者教育の推進について

成年となった者は契約の主体となります。一方、現在 20 歳未満ま

で認められている、保護者の同意を得ずに締結した契約の取消につ

いても 18 歳未満までとなります。これを踏まえ、自主的かつ合理的

に社会の一員として行動する自立した消費者の育成のため、実践的

な消費者教育の実施を推進する必要があります。

☆かながわ教育ビジョ

ンでは

自分らしさを探求する

段階(青年期)として、高

校生を位置付けています。

確かな学力を身に付け

るとともに、様々な体験や

経験を通じて生き方や進

路を考え、自分らしさを探

求し、心身ともに健康で、

豊かな人間性や社会性を

培う時期なのです。

☆成年年齢の引下げ後

も、20歳にならないと

できないこと

・飲酒をする

・喫煙をする

・競馬、競輪、オートレース、

競艇の投票券(馬券など)

を買う

・養子を迎える

・大型・中型自動車運転免許

の取得

6 高校生の特性を知ろう

個 別 支 援

が 必 要 な

生 徒 へ の

対 応 を 考

えよう

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16

キャリア教育の参考資料

〇「高等学校キャリア教育の手引き」 平成 23 年 11 月 文部科学省

〇「キャリア教育」資料集 研究・報告書・手引編 平成 28 年度版(PDF)

平成 29 年5月 文部科学省・国立教育政策研究所

キャリア教育の視点で考えよう 高校生は社会に出たときの自分をどうイメージしているでしょう

か。生徒自身に、学習したことと自分の将来の生活とを結び付けて考

えさせることが大切です。

例えば、栄養士になりたい生徒が調理の技能や化学成分の知識の

大切さを意識して学習に取り組むことや、旅行会社に就職を希望し

ている生徒が外国語表現の大切さや日本の伝統文化・歴史の良さを

感じ取るといったことが挙げられます。

また、特定の職業とは直接関係なく、社会人として必要となる能力

を身に付けさせることを意識することも大切です。例えば、数学で学

習する「データの分析」では、新聞やテレビで使用される図表やグラ

フを理解するのに必要な「統計」に関する能力を養います。また、公

民の「経済社会や経済活動」の学習は、生徒自身に大きく関わる雇用

や社会保障に関する知識を身に付けさせることになります。

キャリア教育は、生徒一人ひとりの社会的・職業的自立を目指すも

のですが、授業や特別活動など全ての教育活動を通じて行っていく

べきものです。

シチズンシップ教育 平成 23 年度から、キャリア教育の取組において、社会や経済のし

くみの理解を推進するという視点から、キャリア教育の一環として

のシチズンシップ教育の取組をすべての県立高校で進めてきまし

た。本県では、これからの社会を担う自立した社会人を育成するた

め、「積極的に社会に参加するための能力と態度を育成する教育」を

「シチズンシップ教育」として位置付けました。

学校から社会への円滑な接続を意識しながら、豊かな人間性や社

会性をはぐくむため、様々な参加型・体験型の学習活動を重視して取

り組むことで、生徒一人ひとりに、実社会で役立つ豊富な知恵と経験

をしっかりと身に付けることをねらいとし、「政治参加教育」「司法参

加教育」「消費者教育」「道徳教育」の柱を立てています。

※参考:「<高等学校>かながわのシチズンシップ教育ガイドブック」

平成 23 年 総合教育センター →ダウンロードは P116 へ

☆キャリア教育とは

平成23年1月の中央教育審

議会答申では、「一人一人の社

会的・職業的自立に向け、必要

な基盤となる能力や態度を育

てることを通して、キャリア発

達を促す教育」としています。

文部科学省は、キャリア教育

で求められる能力を「基礎的・

汎用的能力」として、以下の4

つの能力を挙げています。

① 人間関係形成・社会形成能力

② 自己理解・自己管理能力

③ 課題対応能力

④ キャリアプランニング能力

→ダウンロードは

右の2次元コードから

→ダウンロードは

右の2次元コードから

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17

授業づくりの前に

生徒を理解する 1

学び方は一人ひとり

違っている

ここがポイント

7 一人ひとりの理解の仕方

個 別 支 援

が 必 要 な

生 徒 へ の

対 応 を 考

えよう

一人ひとりの正しい理解が大切!

認知の偏りや集中の難しさ、社会性の育ちにくさなど、困難な局面だけに注目し、できるよう

にと励ますだけでは、うまくいかないことがあります。

一人ひとりの生活や文化的背景、経験やつまずきを、対話等を通して理解し、

生徒の持っている力をいかせるように意欲を高め、継続的で一貫した支援を

していくことが必要です。

一人ひとりと向き合う 授業中、教員は教室内の多数の生徒と向き合っていますが、生徒は

多くの場合、一人の先生と向き合っています。ですから、教員は一人

ひとりの生徒と向き合っているという意識を持つことが大切です。

生徒一人ひとりと向き合い、個々の生徒を理解することは、「生徒の

実態に応じた授業」をつくることにつながります。

一人ひとりの学習観・学習スタイル 一人ひとりの「学習観」や「学習スタイル」は、高校に入学するま

での9年間の学習経験によって大きく異なります。

教員はもちろん、生徒自身も自らの学習観や学習スタイルの傾向

を知ることで個々に適した教え方・学び方を見つけることができま

す。

相手の立場に立って考える

授業には情報を伝え、理解を得る場面があります。

必要な情報を正しく伝えられたのか、伝えたいことを相手が理解

できたのかを振り返ったり、相手の立場に立って考えたりすること

が大切です。

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学習観の違い 生徒の持っている学習にとって大切なこと、効果的なことについての

考え方は、認知カウンセリングのような個別学習指導を通して類型化さ

れています。

例えば、「どういう風に取り組むか考えてから勉強するのは効果的だ」

と考える生徒もいれば、「ミスや失敗をしても後の学習にその反省をいか

していくことが大切だ」という生徒もいます。また、「意味を考えるより

もまず丸暗記してしまうことが重要だ」という生徒もいれば、「とにかく

多くの問題を解くことが最も大切だ」と考えたり、「どうしてこうなるの

かよりも、とにかく正答であれば良い」と考える生徒もいます。

一人ひとりの学習について抱いている信念(学習観)を把握して、学習

の仕方についての指導にいかしましょう。

生徒の持っている学習観と授業のねらいが合わないと、学習が成り立

たないこともあります。その際には、生徒の学習観を認めた上で、望まし

い学習観を示すとよいでしょう。

学習スタイルの違い 生徒の見え方や聞こえ方、感じ方、記憶や理解の仕方等の認知の特性に

よっても、個々の学習スタイルは異なってきます。

個々の学習スタイルを踏まえて指導にいかすことが大切です。

〇見て理解することが得意な生徒

・絵や写真、カードや映像、板書など視覚支援を活用する。

〇手順が明確でない活動を正確に行うことが難しい生徒

・板書やカードなどで活動の順序を示し、見通しをもたせる。

〇二つのことを同時にするのが苦手な生徒

・指示や提示は一つずつ行う。

〇じっとしていることが苦手な生徒

・音読や書字など体の一部分を動かす活動を取り入れる。

☆学習スタイルとは

学習スタイルとは、生

徒が学習に取り組むとき

に好んで用いる方法のこ

とです。

巻末の参考資料-1に

「教室のなかでの『困り』

チェックリスト」、「学習内

容についての『困り』チェ

ックリスト」がありますの

で、参考にしてください。

☆個々のニーズを捉える

生徒の実態を把握していくことは、生徒の学び方の理解につながります。個々のニーズから授業をどう作

り、どのように展開するか、授業でどのような力を身に付けさせるのかを考えていくことが求められます。

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19

授業づくりの前に

環境を整える

1

気持ち良い教室が

授業づくりの第一歩

ここがポイント

私物を片付けられない生徒には・・・

準備や片付けが苦手な生徒には、学校の物品だけで

はなく、個人の持ち物も「何を」、「どこに」しまうのか

を見て分かるようにしておきます。自分の物

をとりあえず1カ所にまとめるための「何

でも収納箱」を机の横に設置するのも一つ

の方法です。

8 最適な学習環境をつくろう

学習環境とは 学習環境とは、一人ひとりの生徒を取り囲んでいる全てのことと

いえます。教室内の明るさ、温度、耳に入ってくる音、机の上の状況、

周りの雰囲気、ほかの学習者の動きなどが挙げられます。教員は、生

徒が学習に集中できるように、学習環境を最適な状態に保たなけれ

ばなりません。

授業に集中できる教室 生徒が、注目すべき情報に注目し、落ち着いて活動に取り組めるよ

うにするには、座席の配置、授業に集中することの妨げになる場所に

掲示物を貼らないなど環境整備が必要です。「今は何をする時間なの

か」「次にすることは何なのか」が伝わりやすいように、教室環境を

整えましょう。

整備された環境が第一歩 清潔な教室、整理整頓されている教室は、とても気持ちが良く、居心

地の良さを感じます。こうした教室の中では、生徒は落ち着いて生活や

学習をすることができます。 教員は、生徒の声を聞いたり、生徒の状況を常に観察したりしなが

ら、適切な学習環境がつくられているかどうか、確認することが必要

です。

個 別 支 援

が 必 要 な

生 徒 へ の

対 応 を 考

えよう

勝手に発言する生徒には・・・

目に見えた物や、聞こえてくる音・声、教員

や級友の言葉が刺激となり、思いついたままに

言葉を口にする生徒もいます。発

言内容やその意欲を認めつつ、具

体的にルールを伝えていきます。

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20

☆持ち物「基本セット」

授業の際に、常に用意させ

たいものとして、例えば国語

科ならば、教科書、ノート、

辞書、文法書などが考えられ

ます。

持ち物を徹底させること

で、教員の授業に対する姿勢

が生徒に伝わります。

また、持ち物として生徒に

用意させたものは、必ず授業

で活用しましょう。

教員も環境の一部 説明や指示は、生徒に理解しやすかったか、適切な質問や発問ができ

ていたのか等は、授業の進行に大きく影響します。教員の適切な言動も

授業づくりの大切な要素であると言えます。

また、教員の言葉遣いや口癖、表情や態度、イメージや雰囲気からも、

生徒は様々な情報を学び取っており、価値観や社会的規範などの文化や

行動様式を、結果的に身に付けていると言われています。

授業の雰囲気づくり 授業を始めるとき、いつもと違う雰囲気を感じることがあります。前

の授業で嫌なことがあったり、休み時間などに友達とトラブルがあった

り、あるいは楽しいことがあって気持ちが高ぶっていたりと、様々な状

況が考えられます。その際には気持ちを切り替える工夫が必要です。

生徒の状況に合わせて、例えば、静かに語りかける、1分間目を閉じ

て気持ちを落ち着かせる、生徒の興味のある話をするなどしてみましょ

う。簡単な学習クイズも有効です。

居心地が良いとは・・・ 教室は生徒が1日のうちで最も長い時間を過ごす場所です。生活

の場としての教室は、居心地の良い場所でなければなりません。

生徒は、安心していられる場所、自分が認められる場所、自分の役割

を果たせる場所など、いろいろなときに居心地の良さを感じるでし

ょう。そのためには、学び合いを通して、互いを認め合える集団をつ

くることが必要です。生徒が自信を持って自分の考えを発表し合う

場面をつくってみましょう。

「チャイム着席」の徹底

始業のチャイムと同時に授業を始められるよう、学校全体で取り組んでいる学校があります。時間どおりに行動す

ることは大切です。休み時間と授業のけじめを付けるためにも、チャイムが鳴ったら遅刻せず、きちんと着席し授業

準備を整えることを徹底させたいものです。

生徒に指導するのですから、教員もチャイムと同時に授業を始めるよう、行動で示さなくてはなりません。

☆「授業規律」を大切に

最適な学習環境づくりに

は、「授業規律」や「生徒指

導」に関する視点が欠かせ

ません。学校や学年全体で

統一したルールを設けてい

る場合があります。その情

報把握をしましょう。

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21

授業づくりの前に

環境を整える

1

ポジティブな言葉を使おう!

禁止・否定の言葉に過度に反応する生徒や、

反語的な意味理解が難しい生徒には、望ましい

行動を具体的な短い言葉で伝えることが有効で

す。「×××をしてはいけない」ではなく「○○

○をしましょう」のように、常に「肯定的な表

現」で伝えましょう。

9 教室における教員の存在感

はじめて教室に入り、生徒と向き合ったときのことを思い出して

みましょう。生徒の期待や不安の混じった視線が自分に向いていた

はずです。そんなときに、暗い表情を見せたのでは生徒が不安になり

ます。一方で明るすぎても違和感を感じることと思います。

生徒にとっては、教員の一挙手一投足が教員の人物評価につなが

っています。教員がどのような姿勢で生徒に接していくか、日々の積

み重ねが教室とクラスの雰囲気をつくっていきます。

身近な手本となる 教員は、生徒にとって身近な大人の一人であり、大きな影響を与え

る存在でもあります。

教員が立場と責任にふさわしい態度で生徒と対応することは、生

徒の規範意識を育んでいくことにつながります。自身の言葉遣いや

行動が適切であるかを常に振り返る姿勢をもち続けることが大切で

す。

また、身だしなみには、仕事に取り組む心構えが表れます。清潔感

があり、TPO に合った服装や髪形で生徒と接することが求められま

す。

学び続けるといった姿勢も生徒に示しながら、手本となる存在に

なりましょう。

個 別 支 援

が 必 要 な

生 徒 へ の

対 応 を 考

えよう

適切な言動で生徒の

手本となろう

ここがポイント

アイコンタクトを上手に使おう!

言葉を掛けるだけではなく、「視線」、「うなず

き」、「表情」、「手振りサイン」等、言葉を使わな

い表現でも支持・承認を伝

えていくことで、生徒との信

頼関係(ラポール)は築いて

いけます。

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自分の姿を振り返ろう

自分が生徒からどのように見られているのか、ビデオカメラに

よって確認できます。カメラを設置する際、後方から撮影すると教

員の特徴が、前方から生徒に向かい合う形で設置すると、教員の働

き掛けに生徒がどのように応じているかが分かります。撮影後に

は、できれば複数で、教室での自分の姿や生徒との関係性を確認し

てみると、様々な発見があります。

《振り返りのポイント》

① 言葉遣いや話し方のくせ

・声の強弱、抑揚などを付けて話しましょう。

・「えー」などの発声も極端に多いと気になります。

・授業では意識して丁寧な言葉遣いを心掛けましょう。

・ポイントや結論を述べる際には、簡潔にゆっくり話しましょ

う。

② 体の動き

・表情豊かに、身振り手振りを取り入れて話してみましょう。

・黒板の前にずっと立っているのでなく、生徒の中に入りましょ

う。

③ 視線の送り方

・教員が自分を見てくれているという思いは、生徒の授業意欲や

先生との一体感を高めます。おとなしくて目立たない生徒に

こそ、視線や表情による応援メッセージを送りましょう。

・黒板ばかり見ていたり、特定の生徒ばかり見ていたりしないよ

うにしましょう。

S字移動 Y字移動 M字移動 円形移動

〈例〉 ビデオの活用

<視線の移動例>

☆意識して視線を送るの

が難しいならば

最初から意識して視線を

送るのが難しければ、教壇

に立って、右奥→左奥→左

手前→右手前と、四隅を見

るだけでも、教室全体が把

握できます。

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授業のユニバーサルデザイン化 ユニバーサルデザインについて、「障害者の権利に関する条約(第2条)」

では「調整や特別な設計を必要とせず、最大限可能な範囲で全ての人が使

用することのできる製品、環境、計画及びサービスの設計」と規定してい

ます。それを授業づくりに落とし込んだものが「授業のユニバーサルデザ

イン化」の視点です。

学校には様々な教育的ニーズのある生徒がいます。学校に在籍する全て

の生徒が、安心して学習に取り組める環境をつくるため、授業のユニバー

サルデザイン化が求められています。

〇導入や展開を工夫する

□ 学習に必要な準備物や準備の仕方を具体的に示す。

□ 授業の最初に学習のねらいや見通しを提示する。 □ タイマーなどを使い、活動時間を示す。

〇指示や発問を工夫する

□ 具体的な言葉を使う。(「ちゃんと」「きちんと」などは使わない)

□ 口頭での指示だけでなく、板書等の視覚支援をあわせて行う。 □ 座席の位置を配慮する。

〇見やすさに配慮する

□ 見やすい大きさの文字で書く。 □ 黒板を分割して使い、学習の流れを示す。

□ 色チョークを活用する。(多用は刺激過多になるため避ける)

□ ノートやプリントと板書が同じになるようにし、ノートなどの記入がしやすいようにする。

〇その他

□ 掲示物は必要最低限に。 □ 共有物は置き場所や置き方を決める。 □ クラスのルールを統一する。

「困った生徒」ではなく「困っている生徒」という視点を持とう!

「授業に集中できない」「何度も同じ質問を繰り返す」「他の生徒に関係の無いことを話かけてしま

う」…このような生徒は、教員から見れば「困った生徒」かもしれません。しかし、その言動の原因は

生徒自身が何かに「困っている」からではないでしょうか。

生徒の気になる言動の要因や原因を考えることで、指導の手立てが見つかります。そして、「なぜで

きないのか」だけでなく、「どうしたらできるのか」という見方をすることがとても大切です。「〇〇な

らできる」「〇〇もできる」は、生徒への適切な支援につながります。

全ての生徒が安心できる

授業づくりの視点

ここがポイント 授業づくりの前に

1

学びを支援する

10 授業のユニバーサルデザイン化

個 別 支 援

が 必 要 な

生 徒 へ の

対 応 を 考

えよう

「授業のユニバーサルデザイン化」のヒント

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24

すべての生徒にきめ細やかな学習支援をするために、ユニバーサルデザイン

の視点を踏まえた効果的な授業づくりに取り組んでいます。

教職員が取り組みやすいように「いつもの授業にちょっとの工夫とちょっと

の配慮」(授業のちょっと×2)を授業実践の柱としています。

【具体的な例】 チョーク・スライドの文字の色

具体的に はっきりと

繰り返して ゆっくりと話す 簡潔に

見通しの提示 ルビ 肯定的な表現

厚木清南高等学校の取組

さまざまな課題を抱える、さまざまな生徒たちのセーフティネットとして、

「すべての生徒を支援する発想」=『修悠館スタンダード』と位置づけ、学校全

体で取り組んでいます。

(発達障害等の生徒への)

(すべての生徒への)

・すべての生徒の困難さを取り除く試み

・生徒を困らせない取組

・全体で共有

【具体的な例】

校舎や教室の案内表示は、歩いた先や突き当たりに掲示

すべての教室に、同じ掲示物(スクーリングの注意事項等)

説明や板書の仕方、レポート作成の統一化 など。

横浜修悠館高等学校の取組

県立学校におけるユニバーサルデザイン化の取組例

「無いと困る支援」が、

「有ると便利な支援」になる

「ユニバーサルデザイン」と「バリアフリー」の違い

「ユニバーサルデザイン」と「バリアフリー」は、コンセプトが似通っているため混同されがちです。

バリアフリーは「高齢者や障害者が社会生活を営む上で存在する物理的・精神的障害を取り除くこと」を目指してお

り、ユニバーサルデザインは「障害の有無や性別や国籍の違い、年齢や能力の差などを問わず、誰にでも利用できるこ

と」を目指しています。ユニバーサルデザインのコンセプトは、神奈川の支援教育とも通じる部分があります。

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25

全ての生徒にとってわか

りやすい授業をつくる

ここがポイント 授業づくりの前に

1

学びを支援する

個別の支援(合理的配慮)とともに、基礎的環境整備の充実を!

各学校の様々な教育資源を活用した支援体制や、教育環境等の基礎的環境整備の充実等が重要

になります。教職員間の意識の向上や情報の共有が大切です。

・校内委員会や教育相談コーディネーターによるチーム体制の整備・充実

・情報保障として、拡大教科書や音声教材等の教材及び支援機器の整備・充実

・支援シートや個別の指導計画の作成・活用による指導

・個に応じた指導や学びの場の設定等による特別な指導(柔軟な教育課程の編成等) など

11 インクルーシブ教育の推進

神奈川県では、支援教育の理念のもと、共生社会の実現に向けて、

すべての子どもができるだけ同じ場で共に学び共に育つことを目指

すインクルーシブ教育を推進しています。

〇すべての子どもが

・できるだけ地域の学校で学ぶためのしくみづくり

・できるだけ通常の学級で学ぶためのしくみづくり

・できるだけ高校で学ぶためのしくみづくり

・地域で共に生きるしくみづくり

〇多様な教育ニーズに応じた教育の充実

・通常の学級 ・通級による指導

・特別支援学級 ・特別支援学校

合理的配慮 学校における合理的配慮は、障害のある生徒が「教育を受ける権

利」を享有・行使できるようにするために、過度な負担とならない範

囲で対応することです。配慮する内容は、本人・保護者と合意形成を

図った上で決定します。

例えば、移動に制限がある生徒に対し、保護者との協議を経て、そ

の生徒の移動の介助をする、廊下に障害となるものを置かない等の

配慮を行ったとします。これらは、保護者との合意形成を図り実施し

た「過度な負担とならない範囲での対応」、すなわち合理的配慮であ

るといえるでしょう。

個 別 支 援

が 必 要 な

生 徒 へ の

対 応 を 考

えよう

取組

☆共生社会とは

全ての人が相互に、人格と

個性を尊重し合い、支え合い、

生き生きと生活できる社会で

す。

☆通級による指導

高校に進学する生徒の多

様なニーズに対応するため、

発達障害等のある生徒が、通

常の学級でともに学びなが

ら、必要に応じて別の教室で

障害に応じた特別の指導(自

立活動)を受ける「通級によ

る指導」に取り組んでいま

す。

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26

インクルーシブ教育に関する資料

【インクルーシブ教育推進課】 〇かながわのインクルーシブ教育の推進

【総合教育センター刊行物】 〇支援を必要とする児童・生徒の教育のために

〇インクルーシブな学校づくり Ver.1.1、Ver.2.1、Ver.3.0

Aさん

のため

合理的

配慮

Bさん

のため

合理的

配慮

国、都道府県、市町村学校等による

環境整備

→「総合教育センター刊行物」のダウンロードは P116 へ

合理的配慮の提供 平成28年4月に「障害を理由とする差別の解消の推進に関する法

律」が施行され、公立学校では合理的配慮の提供が義務付けられまし

た。

合理的配慮は、障害のある生徒の能力を最大限に伸長させるととも

に、障害のない生徒と共に学ぶことができるようにするために必要な

支援です。その内容は、それぞれの生徒によって異なります。

学校においては、本人や保護者からの申し出がなくても、適切な配

慮を提案したり、そのための建設的な対話を働きかけるなど、自主的

な取組が求められます。

基礎的環境整備 合理的配慮の基礎となるものです。障害のある子どもに対する支援に

ついて、法令に基づき又は財政措置等により、国は全国規模で、都道府

県は各都道府県内で、市町村は各市町村内で、それぞれ行う環境整備で

す。

合理的配慮に当たる

部分

合理的配慮の基礎と

なる環境整備(基礎

的環境整備)に当た

る部分

設置者・学校が実施

合理的配慮と基礎的環境整備の関係

☆インクルーシブ教育実践推

進校

インクルーシブ教育の推進

は、本県の高校改革の重点目標

にもなっています。

下に挙げた14校は、「インクル

ーシブ教育実践推進校」として

県から指定されている学校で

す。知的障害のある生徒が高校

教育を受ける機会を広げるため

の取組を進めています。

実践推進校では、知的障害の

ある生徒とない生徒が共に学

び、相互理解を深めながら、学

校生活を過ごしています。

【インクルーシブ教育実践

推進校】

城郷高等学校

霧が丘高等学校

川崎北高等学校

上矢部高等学校

津久井浜高等学校

湘南台高等学校

茅ケ崎高等学校

二宮高等学校

伊勢原高等学校

足柄高等学校

厚木西高等学校

綾瀬高等学校

上鶴間高等学校

橋本高等学校

「インクルーシブな学校づくり Ver.1.1」総合教育センタ-を基に作成

→ダウンロードは

右の2次元コードから

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27

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いま求められている資質・能力を生徒

に身に付けさせるために、どのような授

業をすればよいのでしょうか。また、そ

のための計画は、どのように立てればよ

いのでしょうか。

第2章では、授業の計画について説明

します。

授業の計画にあたって

2

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29

学力の3要素から考える

ここがポイント 授業の計画にあたって

2

年間指導計画を立てる

1 「生徒に身に付けさせたい力」は何だろう

教科・科目の目標と内容を押さえる 授業を計画するとき、まず学習指導要領を確認します。授業は、学

習指導要領に書かれた、各教科・科目の「目標」と「内容」に基づか

なければなりません。それが「生徒に身に付けさせたい力」の基盤で

す。各教科・科目の「目標」「内容」は、「学力の3要素」を踏まえた

ものになっています。

学校の教育目標を押さえる 教員一人ひとりが生徒に対して「こうなってほしい」「こういう力

をつけてほしい」という願いを持つことは、とても重要なことです。

しかし、授業は、個人ではなく学校が行うものです。学校が定めてい

る「学校教育目標」や、それに基づく「育てたい生徒像」を確認し、

その実現のためには、教科・科目として、どのような力を身に付けさ

せればよいかを考えていくという視点も欠かせません。

1 章-2 に詳しい説明がありますので、確認しておきましょう。

生徒の実態を把握する

以上のような要素を基にして定めた目標に対し、今、目の前の生徒

がどのような状況にあるのかを分析していきましょう。何が足りな

いのか、何が得意で何が不得意なのか。目標と生徒の実態を重ね合わ

せることで、「生徒に身に付けさせたい力」の姿が、自ずと立ち現れ

てくるでしょう。

個 別 支 援

が 必 要 な

生 徒 へ の

対 応 を 考

えよう

生徒理解が出発点です!

「身に付けさせたい力」は、生徒一人ひとりの状況に合わせてはぐくんでいくものです。日頃

から、生徒の学習全般の傾向、理解・表現の特徴、感じ方などの情報を

蓄積するようにしましょう。さらに、既習事項の習得度、特性やつまず

きのポイントを把握することが、個に応じ適切に身に付けさせることに

つながります。

☆「学校教育目標」

「育てたい生徒像」

これについては、「組織的な授

業改善に向けて~高等学校にお

ける授業研究の取組~」(平成24

年3月)に詳しく説明されていま

す。神奈川県が目指す授業の基本

となる部分ですので、目を通して

おきましょう。

☆「学力の3要素」

○ 基礎的・基本的な知識・技能

○ 思考力・判断力・表現力等

○ 学習意欲

学校教育法第30条第2項(第62

条で高等学校にも準用)の中で示

されています。

→ダウンロードはP115へ

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30

教科・ 科目

学年 第 学年 教科書

副教材 単位数 単位

評価の観点 科目の評価の観点の趣旨

b

c

d

学期

内容のまとまり 単元(題材) 学習内容 評価の観点

単元(題材)の評価規準 評価方法 a b c d

○ ○ ○

前 期

(2)図形と計量

鋭角の三角比 三角比

a:鋭角の三角比や三角比の相互関係に関心をもち、

それらを直角三角形の計量に活用しようとしてい

る。

b:図形の相似の考え方を用いて直角三角形の辺の比

を角との関係で捉えたり、三角比の相互関係につい

て考察し表現したりすることができる。

c:直角三角形を用いて計量の問題を三角比の記号を

用いて表現し処理したり、三角比の相互関係を用い

て道の三角比の値を求めたりすることができる。

d:正弦、余弦及び正接の直角三角形の辺の比と角と

の関係としての理解や、三角比の相互関係について

の理解など、基礎的な知識を身に付けている。

・レポート

・確認テスト

・観察

・単元テスト 三角比の利用

○ ○

三角比の相互関係

○ ○ ○

単元(題材)の評価規準の基になるもの。国立教育政策研究所発行の資料に、主な科目

についての例示が掲載されている。例示にないものは、「教科の評価の観点及びその主旨」

と学習指導要領の「教科の目標」を参考に、各学校で設定する。

学習指導要領の各科目の目標を基に記載する。

「年間指導計画」の考え方

「年間指導計画」は教材の配列ではなく、年間を通して教科・科目の目標の実現を目指していく

ためのものです。学校の教育目標や生徒の発達段階や学習状況を考慮するとともに、季節や学校行

事等と教科との関連も見通して計画する必要があります。

評価規準

と対応す

るように

評価方法

を準備す

る。

参考:「学習評価の手引き」 平成 25 年1月 神奈川県教育委員会

具体的な記述の例は、参考資料-2を御覧ください。

教科ごとの「年間指導計画」の考え方については、以下の資料を参考にしてください。

〈例〉「年間指導計画」

評価規準の参考資料

「評価規準の作成,評価方法等の工夫改善のための参考資料(高等学校)」

平成 24 年7月、平成 25 年3月 国立教育政策研究所 教育課程研究センター

「学習評価の手引き」

平成 25 年1月 神奈川県教育委員会

学習指導のねらいが、生徒の学習状況として

実現されたときの姿を具体的に示したもの。

各学校において、観点の「おおむね満足でき

る」状況(B)を評価規準として設定する。

→ 2章-3

学習内容の

各項目にお

いて特に重

点的に評価

を行う観点

に〇を付け

ている。

当該科目の

全ての学習

内容におけ

るバランス

を考えて単

元(題材)を

設定する。

→参考資料のダウンロードは P115 へ

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31

単元(題材)を通して身

に付けさせたい力を考える

ここがポイント 授業の計画にあたって 2

指導と評価を計画する

2 単元(題材)目標の考え方

☆「単元(題材)」とは

単元とは、各教科の内容

をある程度のまとまりで捉

えたものです。学習指導要

領の内容から、まとまりを

考えるとよいでしょう。ま

た、教科・科目によっては

「単元」ではなく「題材」

として内容のまとまりを捉

えることもあります。

生徒に応じたステップアップを

生徒の学習の進度は、みんな一緒ではありません。目標に対してど

こまで実現することができるかは一人ひとり異なります。生徒を頭に

描いて、一人ひとりにあった無理のないステップアップを考えましょ

う。

単元(題材)の目標を設定する 前項で述べたとおり、年間指導計画は、「生徒に身に付けさせたい

力」をどのようなステップで身に付けさせていくかという計画です。

ですから、単元(題材)の目標は、年間の流れを意識した上で、当該

の単元(題材)で身に付けさせたい力を示すものです。

単元(題材)目標を立てる際に、教員の思いや願いのみをつづって

いませんか。それは大切にすべきことなのですが、まず、学習指導要

領を確認することが重要です。現在、定められている評価は「目標に

準拠した評価」ですので、その評価の大本となる目標を設定すること

が必須条件となります。そして、目標設定の基本は、まずは学習指導

要領の「指導内容」です。我々教員は、この内容を漏れなく指導する

必要があります。

単元(題材)の目標の重点化

単元(題材)の目標とは、その単元(題材)を通して生徒たちにど

のような力を身に付けさせたいかを示すものです。教員として生徒

に身に付けさせたい力は、たくさんあると思います。しかし、効果的

な指導のためには、思い切ってねらいを絞ることが大切です。

一つの単元(題材)にあれもこれも詰め込むのではなく、一つの単

元(題材)の目標は重点化し、それを1年間積み重ねることで、最終

的に教科・科目の目標を実現させるという視点を持ちましょう。

☆「目標に準拠した評価」

とは

学習指導要領に示す各教

科・科目の目標に基づき、

学校が地域や生徒の実態に

即して定めた当該教科・科

目の目標や内容に照らして

その実現状況を捉えるもの

です。

個 別 支 援

が 必 要 な

生 徒 へ の

対 応 を 考

えよう

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32

単元(題材)の目標の設定例 ※現行の学習指導要領に因る

参考:「評価規準の作成,評価方法等の工夫改善のための参考資料(高等学校)」

平成 24 年3月 国立教育政策研究所 教育課程研究センター

地理歴史(地理B)「(3)イ 現代世界の諸地域」

〈学習指導要領の内容〉

現代世界の諸地域を取り上げ、歴史的背景を踏まえて多面的・多角的に地域の変容や構造を考察し、それらの地域に

みられる地域的特色や地球的課題について理解させるとともに、地誌的に考察する方法を身に付けさせる。

単元名 「なぜ、中華人民共和国は急激な経済成長を遂げているのだろう」

単元の目標

① 中華人民共和国(以下、中国という)の地理的事象から課題を見いだし、それらを歴史的背景を踏まえて動態地誌的

に考察させるとともに、その過程や結果を適切に表現させる。

② 中国の地域的特色や地球的課題、他の事象と有機的に関連付けて地誌的に考察する方法を理解させるとともに、そ

の知識を身に付けさせる。

芸術(美術Ⅰ)「A 表現(1)絵画・彫刻」「B 鑑賞」

〈学習指導要領の内容〉

「A 表現(1)絵画・彫刻」

ア 感じ取ったことや考えたこと、夢や想像などから主題を生成すること。

イ 表現形式の特性を生かし、形体、色彩、構成などを工夫して創造的な表現の構想を練ること。

ウ 意図に応じて材料や用具の特性を生かすこと。

エ 表現方法を工夫し、主題を追求して表現すること。

「B 鑑賞」

ア 美術作品などのよさや美しさ、作者の心情や意図と表現の工夫などを感じ取り、理解を深めること。

題材名 「私と居場所」(絵画)

題材の目標

私と居場所というテーマを基に、自己の内面を深く見つめ、主題を生成し、造形的な効果を生かし創造的に表現する

とともに、他の生徒の作品から作者の心情や意図と創造的な表現の工夫などを感じ取り味わう。

単元(題材)による授業構想

「単元(題材)による授業構想」とは、学習指導要領にある各教科・科目の目標や内容を実現するため

に、ある程度のまとまりを単元として授業を考えることです。各教科・科目における目標の実現は、1単

位時間の授業で達成できるものではありませんから、内容のまとまりを単元として、単元(題材)を通し

て力が付けられるように構想することが必要なのです。

授業づくりの道すじ:①単元目標の設定⇒②評価規準の設定⇒③プロセスの設定(1単位時間に②の評価

規準を配分)⇒④評価方法の設定⇒⑤学習活動の設定

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33

3 はじめに評価規準を押さえよう

評価規準とは 学習評価を適切に実施するためには、各教科・科目の目標だけでな

く、学習指導のねらいが明確になっていること、学習指導のねらいが

生徒の学習状況として実現された姿とはどのような状態をさすかを

具体的に想定することが必要です。このような状況を具体的に示し

たものを評価規準といいます。各学校において、観点ごとの「おおむ

ね満足できる」状況(B)を評価規準として設定します。次ページの

評価規準の例を参照してください。

また、ねらいがはっきりしていることは、教員だけでなく生徒にと

っても必要なことです。自分たちが行っている学習活動が、どのよう

な意味を持つのかを知ることで、授業への意欲は高まり、内容の理解

も深まると考えられます。

個 別 支 援

が 必 要 な

生 徒 へ の

対 応 を 考

えよう

評価規準に基づいた

授業づくり

ここがポイント

生徒の良さを引き出し、可能性を伸ばす評価

何のためにどのように活動をすればよいかが分かりやすく提示されていると、生徒自身も活

躍できそうな場面やチャレンジできる場面を意識することができます。

生徒の主体的・意欲的な参加を認めつつ、発達段階や認知特性に応じた

評価規準を段階的に設けることで、次の指導につなげていきましょう。

授業の計画にあたって

2

☆「学習評価」とは

→4章-1へ

☆「観点別学習評価」

生徒の学習状況に見取るにあ

たり、4つの観点を決めて評価

規準を考えます。これが観点別

学習状況の評価です。

下に示した4つの観点が「基

本の4観点」です。教科によっ

て観点の表記は異なります。

→ P34下段のコラムを参照

関心・意欲・態度(4章-3)

各教科が対象としている学習内容に関心を持ち、自ら課題に取り組もうとする意欲や態度を生徒が身に付けているか

どうかを評価します。これについても意図的・計画的な指導が必要です。例えば、学習の初期段階で診断的評価を行い、

指導を経てどのような変化があったのかをみるような工夫が必要です。

思考・判断・表現

各教科の内容等に即して思考・判断したことについて、その内容を言語活動(2章-9)を中心とする表現に係る活動

と一体的に評価します。思考・判断の結果だけではなく、その過程を含めて評価する工夫が必要です。

技能

各教科において習得すべき技能を生徒が身に付けているかどうかを評価します。「思考・判断・表現」と、従来の「技

能・表現」の「表現」の混同を避けるために「技能」と改められました。

知識・理解

各教科において習得すべき知識や重要な概念等を生徒が身に付けているかどうかを評価しますが、「知識・理解」が身

に付かなければ、「思考・判断・表現」のための活動ができないわけではありません。「思考・判断・表現」を評価するた

めの活動(言語活動)が、「知識・理解」の定着を助けることもあります。基本的には、この二つの観点は双方向に補完

すると考えましょう。

観点別評価のポイント ※現行の学習指導要領に因る

指導と評価を計画する

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34

評価規準は誰がどのように設定するのか 評価規準はどのように設定すればよいのでしょうか。基本となる

ものは、学習指導要領の「目標」「内容」です。高等学校では様々な

課程、教科・科目があり、学校ごとに評価規準を設定することになっ

ています。学校が掲げる「育てたい生徒像」の実現のために、教科と

して何をしなくてはならないのか、学習指導要領を踏まえ、さらに目

の前の生徒をよく見て、評価規準を設定しましょう。

また、評価規準の設定は個人ではなく、同じ教科・科目の教員同士

で内容をよく相談することが必要です。これは評価の妥当性と信頼

性を高めるとともに、教員一人ひとりの負担を軽減することにもつ

ながります。

例)コミュニケーション英語Ⅰ(観点:「外国語表現の能力」(思考・判断・表現))

ねらい 「環境問題についてのレポートを読み、自分の意見や感想を伝え合

うことができる」

A 自分の意見や感想を伝え合うことができている。また、理由や根拠も

明確にしており、話題を深化させている

B 自分の意見や感想を伝え合うことができている(評価規準)

C 「B」を満たしていない

指導と評価の一体化 評価規準を設定し授業を実施するということは、教員が自らの指

導について振り返ることにも役立ちます。もし、生徒の学習の実現状

況が良くない場合は、その原因を生徒のみに求めるのではなく、目標

の実現のためにふさわしい指導がなされたのかどうかを省みる必要

があります。

指導と評価とは別物でなく、評価の結果によって後の指導を改善

し、さらに新しい指導の成果を再度評価するという指導にいかす評

価を充実させます。それが「指導と評価の一体化」なのです。

評価とは、定期試験(ペーパーテスト)の得点や指導要録の評定付

けとイコールではありません。指導の工夫・改善を進めるきっかけと

しての視点をしっかりと持ちましょう。

教科によって評価の観点は異なる

「観点別学習評価」は、生徒の学習状況を分析的に捉えるためのもので、

総括的に捉える「評定」とは異なります。

各教科の観点は、「基本の4観点」を基に、各教科の特質にあった形に変

えられて運用されています。国語科のように、観点が5つになっている教科

もあります。まずは自分の担当教科における評価の観点を把握しましょう。

例:国語科の

観点 関心・意欲・態度

思考・判断・表現

技能

知識・理解

基本の4観点 国語科の観点

知識・理解

関心・意欲・態度

話す・聞く能力

書く能力

読む能力

観点別学習状況の評価規

準を表しています。

評価規準は、全ての生徒

が身に付けるべき資質・能

力を観点ごとに「おおむね

満足できる」状況(B)と

して設定するものです。

その他「努力を要する」

状況を(C)、「十分満足

できる」状況を(A)で表

しています。(C)と判断

した生徒には何らかの手立

てが必要になります。

評価規準の例

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35

多様な生徒の実態に応じた単元(題材)による授業構想

やる気を引き出す活動を展開するために、次のような内容を取り入れてみましょう。

①生活につながる内容

②経験や既習内容がいかせる内容

③探究心を引き出す内容

④驚き・発見・疑問が生まれる内容 など → 1章-4

単元(題材)全体を

見通して計画する

ここがポイント

4 「指導と評価の計画」を立てる

単元(題材)ごとの計画を考える

授業計画を立てるとき1単位時間ごとに考えていくのではなく、

単元(題材)というまとまりで考えた方がねらいを実現しやすくなり

ます。なぜならば、単元(題材)によって、そのねらい(身に付けさ

せたい力)は異なるからです。

評価規準を考える 始めに、各時間のねらいが実現されたと考えられる単元(題材)の

評価規準を観点別に設定します。次に、ねらいをどのように実現して

いくか、生徒が学習を積み重ねていくプロセスを考え、1単位時間ご

とに具体的な評価規準を設定し、単元(題材)の中に適切に配置する

ことが大切です。

学習活動を考える 設定した評価規準を実現するための学習活動を考えます。単元(題

材)全体の流れの中で、それぞれの授業がどのような位置付けにある

べきか、個々の授業のつながりを踏まえて考える必要があります。教

科や単元(題材)によっては評価規準と学習活動の配置を同時に考え

ていく場合もあります。

個 別 支 援

が 必 要 な

生 徒 へ の

対 応 を 考

えよう

授業の計画にあたって

指導と評価を計画する

2

☆様々な学習活動の評価に

ついて

言語活動、観察・実験、問

題解決的な学習などの学習活

動を評価する際、その活動が

できているかを表面的に評価

するのではなく、各教科等で

育成すべき能力等が身に付い

ているかどうかを評価しまし

ょう。間違えやすいので、特

に気を付けたい点です。

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36

単元(題材)の指導と評価の計画

具体的な記述の例は、参考資料-2(P112)をご覧ください。

参考:「『学習評価の充実』をとおした授業改善の推進に向けて」 平成 31 年 神奈川県教育委員会

単元(題材)の目標(ねらい)(身に付けさせたい力)

単元(題材)の評価規準

計画ができた時点で、「目標と評価規準のつながり」や「評価の方法と学習活動との整合性」

等について再度見直しておきましょう。

単元(題材)の中で「記録に残す評価」を実施する機会

「単元(題材)の指導と評価の計画」では、「記録に残す評価」(4 章-1)を実施する場面を「○」で示し

ます。「記録に残す評価」は、1単位時間の中に全ての観点を盛り込んで実施する必要はありません。授業の

展開によっては、「記録に残す評価」を行わない時間もあり得ます。単元(題材)を計画する際には、評価場

面は、1単元(題材)の中で、バランス良く(各観点につき必ず一回以上)設定しましょう。

→4章-1、4章-2、参考資料-2

単元(題材)による「指導と評価の計画」 単元(題材)による「指導と評価の計画」を立てるということは、

生徒の学びのプロセスをデザインすることであると言えます。

計画ができた時点で、「目標と評価規準のつながり」や「評価の方

法と学習活動との整合性」等について再度見直しておきましょう。

手順①

まずは単元の目標(ねらい)を定める。学習指導要領

に基づき、観点別に目標を設定しておくと、評価がし

やすい。

手順②

目標が実現できた状況を想定し、単元(題材)の具体

的な評価規準を設定する。

a:関心・意欲・態度 b:数学的な見方・考え方 c:数学的な技能 d:知識・理解

手順③

評価規準を実現するための学習活動を

決める。

*手順③④は、相互の整合性を意識し

て、一体的に計画する。

【評価方法】(知識・理解) ○○▼▼……

手順④

単元のどこでどの観点をどのよう

に評価するのかを計画する。

手順④

単元のどこで、どの観点を、どの

ように評価するのかを計画し、

「○」を記入する。

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37

5 学習活動を組み立てる

学習活動とは 学習活動とは学習目標を実現するために行う活動のことです。活

動をすること自体が授業の目標である場合と、その学習活動を通し

て考えることで授業の目標に到達していく場合とがあります。

授業の計画では、その区別を明確にしておくことが大切です。そし

て、限られた時間内で、最も効果的な学習活動を選び、組み立てるこ

とが重要です。

目標を実現させるための学習活動を選ぶ 各教科・科目の目標を実現するためには、適切で効果的な活動を選

ぶことが大切です。

そして、学習活動を組み立てる際には、クラス全体で行うのか、少

人数のグループで行うのか、個人で行うのかといった学習形態も合

わせて考えましょう。

言語活動の充実 学習指導要領では、思考力・判断力・表現力等の育成のため、各教

科・科目での言語活動の充実が求められています。

その活動には、生徒が自分の考えをまとめる活動、自分の考えを言

葉を使って表現する活動、考えを交流する活動、他人の意見を聞き自

分の考えを深める活動(記録・要約・説明・論述・討論・解説・創作・

批評・編集等)があります。

詳しくは2章-9に説明がありますので、確認しておきましょう。

個 別 支 援

が 必 要 な

生 徒 へ の

対 応 を 考

えよう

ねらいが実現できる学習活

動を計画する

ここがポイント

主体的な参加を促すために

教員が提示した課題に対して、生徒同士協議をしながら解決方法を

探るのです。分からないところも、生徒がグループをつくり相談して

解決します。生徒同士が交流することで、それぞれの生徒の知的好奇心

や探究心が刺激されます。

授業の計画にあたって

授業をつくる

2

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38

○国語 ○数学

○地理歴史 ○……

〇「公共」

(現行は「現代社会」)

〇「倫理」

公民科

〇特別活動

中核的な指導場面 各教科等

<学校教育活動全体>

校長のリーダーシップの下、

道徳教育推進教師を軸に全教員が実施する

高等学校では、教科としての道徳科は設置せず、学校教育活動全体

で道徳教育を行います。新学習指導要領解説総則編において、道徳教

育は「生徒がよりよく生きるための基盤となる道徳性を養うことを目

標としており,生徒一人一人が将来に対する夢や希望,自らの人生や

未来を拓いていく力を育む源となるものでなければならない」と述べ

られています。道徳性は「自己を見つめる活動」と「多角的・多面的

に考える活動」を、学習を通して日常的に繰り返し行うことで養われ

るとされています。

高等学校の道徳教育では、中核的な指導の場面として「特別活動」

と「公民科(「公共」「倫理」)」を充て、その他の教科・科目ではそれ

ぞれの内容や目標、「道徳教育に関する配慮事項」に基づいて設定し、

「道徳教育の全体計画」を作成します。校長がリーダーシップを取り、

道徳教育推進教師を中心として全教員がその計画を実施することが求

められます。

「道徳教育に関する配慮事項」については学習指導要領第1章「総

則」の第7款に、各教科の目標と道徳との関連については、具体的な

例が学習指導要領解説「総則編」の第 8 章に記されていますので参照

してください。

☆道徳的諸価値とは

「A 主として自分自身に関

すること」「B 主として人と

の関わりに関すること」「C

主として集団や社会との関わ

りに関すること」「D 主とし

て生命や自然、崇高なものと

の関わりに関すること」の4

つです。

小学校・中学校の「特別の教科

道徳」では生徒が主体的に道

徳性を養うことができるよ

う、22 の内容項目を上記の4

つの視点(道徳的諸価値)に分

類し、道徳科の学習を組み立

てます。

道徳教育の参考資料

〇「高等学校学習指導要領解説 総則編」 第8章 道徳教育推進上の配慮事項 平成 30 年 7 月 文部科学省

〇「中学校学習指導要領解説 特別の教科 道徳編」

平成 29 年 7 月 文部科学省

〇「道徳教育について」

平成 28 年 5 月 27 日 教育課程部会

考える道徳への転換に向けたワーキンググループ資料

コラム<道徳教育の実施>

→各種学習指導要領のダウンロードは

P115 へ

○部活動指導

○日頃のコミュニケーション

○……

○……

→ダウンロードは

右の2次元コードから

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39

学習目標に合った教材

の工夫

ここがポイント 授業の計画にあたって

授業をつくる

2

6 学習目標に合った教材

教材とは 教材とは、学習目標を実現させる材料、すなわち生徒に理解させた

い知識や概念、習得させたいスキルなど生徒に身に付けさせたい力

を実現化させるための具体的な材料のことです。身に付けさせたい

力が同じであったとしても、学習者が異なれば、学習者に合った方法

や題材、道具等の具体的な材料が異なる場合があります。

学習目標に合った教材を工夫することが必要です。

生徒の実態を把握する 生徒の予備知識や興味・関心の程度などのレディネスを把握して、

効果的な教材を考えましょう。また、生徒の学ぶ姿についても予測し

ておきましょう。

教材を評価する 工夫され、入念に計画された教材であっても、実際に授業を行う

と、教員の意図と生徒の感じ方が全く同じであるとは限りません。教

材の効果を必ず確認しましょう。

まずは、生徒に身に付けさせたい力が育成できたかどうかを評価

します。そして、そのための学習活動を充実させる教材であったかど

うかを評価します。

また、授業中の生徒からの質問内容、授業後に行うアンケートや、

生徒との会話からの感想の聞き取りなども評価の方法として用いる

ことが考えられます。

☆教材と教具の違い

教材とは、教える内容のこ

とをいいますが、教えるため

の題材や道具を含む場合があ

ります。

教具は教えるための道具と

いう意味合いが強いです。教

材の方がより広い範囲を指し

示していることが多いといえ

ます。

例えば、理科で電圧を計測

する実験をするときの電圧計

は、電圧を計測する方法を理

解させるための教材ですが、

計測するための道具として示

す電圧計は教具になります。

特に必要のない場合は区別

せず、教材・教具として表し

ています。

個 別 支 援

が 必 要 な

生 徒 へ の

対 応 を 考

えよう

認知の特性に応じた教材

生徒の認知の特性に合った教材を用意しましょう。視覚(文字、イラスト、写

真、映像)、聴覚(言葉)など、一人ひとりの生徒の認知の特性には違いがあります。

授業では、様々な伝達方法を工夫しましょう。個別の課題を用意する場合は、そ

の生徒の興味や関心に合わせた教材を取り入れましょう。まずは教材に対して、

興味を持って向き合えることが何よりも大切です。

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40

「見て、触って、感じられる」教材の活用も有効

教科書に代表されるような活字で書かれた教材以外に、写真や映像、実際の「物」等、「見たり」「触れたり」できる教

材を活用することで、生徒は授業内容をより具体的にとらえることができるでしょう。

例えば地理や地学の授業において、土地の形状や土地の利用状況をとらえるには衛星写真の利用が有効です。教員の説

明に因らず、写真を見て生徒が「何に気付いたか」、「何を感じるか」

という部分を、大切にしたいものです。

目標の確認

学習目標を十分に把握し確認することが、教材の有効性を判断

する基盤となります。

教材の選択

取り扱う教材が、生徒にとって学ぶ意義を感じさせるものか、

生徒の関心を高めるものか、時代の要請を受けているものかなど

の視点から選ぶことができます。

提示の方法

説明する対象を動画で提示すると、動きを含めて説明すること

ができますが、細部にわたりじっくり説明するためには写真の方

が良い場合があります。さらに、特徴を説明する際には不必要な

細部を省略したイラストが効果的である場合もあります。このよ

うに、何をどのように伝えるのかによって提示の方法が異なりま

す。

生徒の思考の流れ

例えば、アルカリ金属の一般的な性質について説明してから、

Li、Na、K 等の個々の性質を説明するのか、個々の元素の性質か

らアルカリ金属の一般的な性質を導き出すのか、授業の流れは何

通りか考えられます。Li、Na、K 等の個々の性質について予備知

識がなければ、アルカリ金属の一般的な性質を導き出すのは難し

いかもしれません。このように、生徒の思考の流れに沿った教材

を工夫する必要があります。

期待される効果

選択した題材が、生徒にとってどのような学習効果があるかを

予測しましょう。そして、授業を実践したら、どのくらい効果が

あったかを評価する必要があります。そこから、成果と課題を把

握し次の授業に反映させていくことが、授業力の向上につながり

ます。

☆コンピュータは万能か

現在の発達した情報通信

技術(ICT)では、様々な

方法で教材を提示すること

ができます。

しかし、コンピュータの画

面で提示するだけが全てと

は限りません。

場合によっては、板書や紙

に書いたものを提示するこ

とが良い方法の場合があり

ます。

→「ICTを活用しよう」

3章-6

教材の工夫の視点

☆教科書をどのように使

うか

よく「教科書で」教える

といいますが、それは「教科

書を」教えることが学習目

標ではないということで

す。

教科書は最も身近な教材

です。生徒の具体的な学習

活動を想定して、効果的な

使い方を工夫してみましょ

う。

→国立研究開発法人宇宙航空研究開発機構

陸域観測技術衛星「だいち」の

衛星写真ギャラリーホームページ

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41

2

学習集団にマッチした授業構成を!

話すことが苦手、聞くことが苦手、書くことが苦手、話し合いが苦手…どの学級にも特性を持っ

た生徒がいます。彼らの特性を把握し、各学級に合った授業構成を考えることが大切です。彼らも

授業に参加したい、理解できるようになりたいという気持ちを持っている生徒です。

単元指導計画や学習指導案の中に、「書くことが苦手な生徒には、机間指導の

中で書きたい内容に気付かせる」、「聞くことが苦手な生徒がいるので発問の内容

は板書する」など、生徒に応じた配慮事項を書き加えられたらさらに良いですね。

7 ポイントは授業構成

個 別 支 援

が 必 要 な

生 徒 へ の

対 応 を 考

えよう

1単位時間の流れをつくる

ここがポイント

単元(題材)の「導入・展開・まとめ」 毎時間の授業にも、開始から終了に至る流れはあります。しかし、

指導計画は単元(題材)全体を見通して立てるものです。「導入・展

開・まとめ」は、1単位時間の授業というより、学習活動のまとまり

ごとに設定するものと考えるとよいでしょう。

ただし、はじめにどのような活動をして意欲を喚起しようか、中心

となる学習活動は何か、次の時間にどうつなげるかといった1単位

時間の授業の構想は必要です。

1単位時間の構想 1単位時間の授業は、「指導と評価の計画」(2章-4)の中に位置

付けられたものです。目標の実現のために、観点別の評価規準を配置

して本時の学習の構想を練ります。

1単位時間の授業内容は、ほかの授業内容とつながっています。各

時間の授業の位置付けを確認し、どうしたら効果的に生徒が目標を

実現できるかを考えながら、それぞれの授業の構成を考える必要が

あります。

授業構想の4つのポイント 次の要点に沿って1単位時間の流れを構想しましょう。

★ 本時で身に付けさせたい力の確認

★ 評価の場面と方法を想定

★ 主体的な学びを促す工夫

★ 時間配分と山場づくり

授業の計画にあたって

授業をつくる

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42

時間 学習活動 指導上の留意点 評価(観点・方法等)

4分

10 分

20 分

13 分

3分

○導入

本時のねらいと活動の趣旨を捉える。

・〔なぜ日本人は「散る桜」をとりあげるのか〕

というテーマで寸評を書く。

○展開1〔個人作業〕

「散る桜」をモチーフにした作品群について、注釈

と解説プリントを参考にしながら内容を確認し、作

品ごとの「散る桜」の捉え方をワークシートに書く。

○展開2〔グループ活動〕

小グループを作り、各自の内容の把握を基に作品ご

との「散る桜」の捉え方や、作品同士の共通点・相違

点について検討・整理する。

○まとめ〔個人作業〕

グループ活動で共有した内容をもとに、自分の「散

る桜」の捉え方と重ねながら、ワークシートに「日

本人と散る桜」というタイトルの寸評を書く。

○次時の確認

・作業が進まない生徒につい

て生徒自身の経験とつき

あわせて考える等、考え方

のヒントを示す。

・テーマを再提示し、意識さ

せる。

・協議に参加しない生徒がい

る班について、班全体で取

り組むよう促す。

・生徒自身の感想ではなく、

日本人の季節感の寸評と

なるよう指導する。

《単元の目標》

・幅広く本や文章を読み,情報を得て用いたり,ものの見方,感じ方,考え方を豊かにしたりすること。

(指導事項「C 読むこと」オ)

《本時のねらい》(第3時)

・古典作品における「散る桜」と自分の「散る桜」の捉え方を比較して、ものの見方、感じ方、考え方を豊かにする。

《本時の流れ》(50 分授業)

〈例〉国語・国語総合 「和歌や随筆に表れた季節感を捉える」

50 分授業以外の授業構成 (例)90 分授業の場合

90 分間、生徒の興味や関心、集中力などを持続させるのは難しいものです。そこで、授業の構成の工夫が必要に

なります。例えば、「書く」、「話し合う」、「読む」といった活動を効果的に取り入れます。その際には、それぞれの活

動が生徒の学びの深まりにつながるものとなるよう心掛けましょう。ただ、気分転換のためだけに取り入れる活動は

望ましくありません。また、90 分という時間をいかし、じっくりと考えさせたり、十分協議させたりすることがで

きます。そのための資料の準備や展開の工夫などを考えることも大切です。なお、90 分以外の授業についても、

その特長を生かした授業構成が求められます。

〔評価の観点〕

読むこと

〔評価方法〕

ワークシートの記述の

分析(提出)

〔評価規準〕

・古典作品で描かれて

いる「散る桜」の理解

を基に、ものの見方、

感じ方、考え方を豊か

にしている。

・「単元の目標」や「本時の活動

のねらい」を明確にする。

→「何のために、何をするか」

を生徒に明示する。

・「展開」に当たる活動は、本時の

ゴール(まとめ)に繋がるよう

に設計する。

この例では、

展開1 「考え」を持つ

展開2 「考え」を広げ深める

まとめ 「考え」を整理する

という流れを意識して、授業が

計画されている。

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43

学習に取り組みやすい環境づくりを!

座席の位置を配慮することで、落ち着いて授業に参加できる生徒もいます。前を向く講義型の座席で

あれば、多動な生徒は、他の生徒の動きが目に入らない教室前方の座席を指定する

方が落ち着いて過ごせるといわれています。

後ろからの視線が不安で不登校気味だった生徒に対して、全ての教科で座席をで

きるだけ後方にする配慮をしたところ、少しずつ学校に登校できるようになったケ

ースもあります。 →1章-8,1章-11

8 学習活動にはふさわしい学習形態がある

目標に合った学習活動 一斉講義型の授業だけでは、「主体的・対話的で深い学び」の実践

にはなりません。しかし、様々な活動をさせることだけが目的になっ

てしまうと、「活動あって学びなし」・・・ということにもなりかねま

せん。学習目標に合った学習形態や学習活動を工夫して、生徒の深い

学びにつながる授業づくりを心掛けましょう。

学習活動に合った学習形態

学習活動を進めるときには、学習活動のねらいを実現するために

ふさわしい学習形態を考えることが大切です。

自分の考えをまとめる活動・・・個別学習

じっくりと資料を読んで調べたり、根気強く作業を進めたりしなが

ら、自分の考えをまとめる学習活動です。考えをまとめる際には、書く

活動を取り入れると、考えがより明確になりますし、後で振り返ったと

きに自分の考えの変化について気付くことにもつながります。

言葉を使って表現する活動・・・グループワーク

少人数のグループで個々の考えを交流し、グループごとの考えをま

とめて発表する活動です。グループの意見としてまとめる活動を通し

て、互いの考えを認め合い、自分の考えを深めることにつながります。

考えを交流する活動・・・ペア学習

話合いが苦手な生徒には、ペアでの学習が有効です。はじめに話合

いのテーマを確認し、自分の考えをまとめさせましょう。次に、話す時

間を決めて一人が話します。聞き手はじっくりと話を聞きます。そし

て、話し手と聞き手は教員の合図で交代します。

互いの考えを聞き合った後、考えを交流します。

☆目的に応じた学習の

手法

学習目標に合った学習

活動を行うためには、学習

形態だけでなく、学習の手

法も考えなければなりま

せん。

(例)

・ブレインストーミング

自分の考えやひらめ

き、アイデアを自由に

出し合い、そこから想

像と連想を働かせて多

くのアイデアを生み出

す発散思考の代表的な

手法です。グループで

行うと、協議しやすく

意見もまとまりやすい

ので効果的です。

・ロールプレイング

場面を設定して役割

を演じる体験活動を通

して、気付きを得る活

動です。友達の演技を

見て気付いたことや、

自分自身が役割を演じ

ながら気付いたことな

どから、自分の考えを

深めます。

個 別 支 援

が 必 要 な

生 徒 へ の

対 応 を 考

えよう

学習目標に合わせた

学習形態をとる

ここがポイント 授業の計画にあたって 2

授業をつくる

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44

立型グループ活動 模造紙やワークシートを壁

に貼って、机や椅子を使わず

に、立ったまま議論する。無駄

話が減り、スピーディーに話合

いが進んで、議論が深まるとい

う利点がある。

ポスターセッションのよう

に、聞きたいと思う発表者の所

へ聞き手が移動し、活発に意見

交換をするものもある。

・班員が知恵を出し合って、話し合うことができる。

・手元の教材を互いに見合いながら学習できる。

学習形態の違いによる学習の特徴

日常的に、次のような「コの字型」に机を配置して授業をしている

学校があります。そしてグループ活動を行う際には、授業中の短い時

間で机を移動し、「班型」の形態へ変形させます。

机の配置を工夫することで、全体での講義からグループでの意見

交流へ、そして全体での協議という学習活動が効果的に行われてい

ます。

クラス全体での学習活動 班内での学習活動

班 型 コの字型

「話合い活動を通した生徒同士の学び合い」の良さ

話合い活動を通して、新しい内容や考えが見つかる、思いもしなかった結論が出る、生徒たちの考えが変わる、

新しい疑問が出てくるなどの効果が考えられます。ただし、話合い活動を行う際には、何をねらいとするのか、

はじめに決めてから取り組みましょう。そうすることにより、話合い活動を通した生徒同士の学び合いは、生徒

にとって良い活動といえるでしょう。

・グループでの活動が苦手な生徒に有効。

・生徒全員が、話したり聞いたりする活動ができる。

・気軽に意見交流ができ、自分の考えの確認がしやすい。

ペア型

☆話合いの形態と人数

人数にきまりはありません

が、話合いの目的によってそ

れに適した人数規模がありま

す。その時間のねらいを明確

にした上で、適切な学習形態

を選ぶよう、構想しましょう。

(例)

2人

・スキルの練習

・テスト

・確認

・インタビュー

3人~4人

・意思決定

・課題解決

・実験

5人~6人

・情報交換

・アイデアの共有

・発表

コの字型

・生徒が互いの顔を見ながら学習することができる。

・教員は各生徒の座席近くで学習状況を把握できる。

班 型

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45

「話す」ための「書く」支援、「書く」ための「話す」支援

自分の考えや意見を述べたり作文に書いたりすることが苦手な生徒がいます。うまく言えない生

徒には、頭に浮かんだことをメモに取らせ、それを見て話させる。うまく書けない生徒には、指導

者が言いたいことを聞きとり整理するなど「話す」ために「書く」活動を支援し、「書く」ためには

「話す」活動の支援をすることがそれぞれ有効です。

9 言語活動の進め方

言語活動の充実が求められる背景 PISA調査(平成21年実施)の結果において、我が国の子ども

たちは、必要な情報を見つけ取り出すことは得意だが、思考力・判断

力・表現力等に関する問題に課題があるとの報告がありました。

このような中、一人ひとりの生きる力を育むことを目指し、基礎

的・基本的な知識及び技能を習得させ、これらを活用して課題を解決

するために必要な思考力、判断力、表現力等を育むために、言語活動

の充実を図ってきました。

新学習指導要領においても言語活動の充実が引き続き求められて

います。

各教科等における言語活動の充実 国語科においては、「話すこと・聞くこと」や「書くこと」、「読む

こと」に関する基本的な国語の力を定着させたり、言葉の美しさやリ

ズムを体感させたりするとともに、発達の段階に応じて、記録、要

約、説明、論述、討論といった言語活動を行う能力を身に付けます。

各教科等においては、国語科で身に付けた能力を基本に、それぞれ

の教科等の目標を実現する手立てとして、言語の役割を踏まえて、言

語活動を充実させる必要があります。

個 別 支 援

が 必 要 な

生 徒 へ の

対 応 を 考

えよう

目標に合った言語活動

を組み立てる

☆PISA調査とは

経済協力開発機構(O

ECD)による国際的な

生徒の学習到達度調査の

ことです。義務教育終了

段階にある15歳の生徒を

対象に、読解力、数学的リ

テラシー、科学的リテラ

シー、問題解決能力の4

分野にわたり主に記述式

で解答を求める問題によ

り調査が行われました。

ここがポイント 授業の計画にあたって

2

授業をつくる

国立教育政策研究所

OECD生徒の学習到達度調査(PISA)

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46

思考力・判断力・表現力等の育成と言語活動の充実

平成20年中央教育審議会答申においては、次のような学習活動が

重要であり、このような活動を各教科等において行うことが不可欠

であるとしています。

☆言語活動と情報活用能力の関係

情報教育が目指している情報活用

能力を育むことは、基礎的・基本的

な知識・技能の確実な定着ととも

に、発表、記録、要約、報告といっ

た、知識・技能を活用して行う言語

活動の基盤となるものです。

情報活用能力についての解説は、

参考資料-3に記載がありますの

で、確認しておきましょう。

①体験から感じ取ったことを表現する

(例)・日常生活や体験的な学習活動の中で感じ取ったことを言葉や歌, 絵, 身

体などを用いて表現する。

②事実を正確に理解し伝達する

(例)・身近な動植物の観察や地域の公共施設等の見学の結果を記述・報告する。

③概念・法則・意図などを解釈し, 説明したり活用したりする

(例)・需要, 供給などの概念で価格の変動をとらえて生産活動や消費活動にい

かす。

④情報を分析・評価し, 論述する

(例)・学習や生活上の課題について, 事柄を比較する, 分類する, 関連付ける

など考えるための技法を活用し, 課題を整理する。

・文章や資料を読んだ上で, 自分の知識や経験に照らし合わせて, 自分な

りの考えをまとめてA4・1枚(1000 字程度)といった所与の条件の

中で表現する。

⑤課題について, 構想を立て実践し, 評価・改善する

(例)・理科の調査研究において, 仮説を立てて, 観察・実験を行い, その結果

を整理し, 考察し, まとめ, 表現したり改善したりする。

⑥互いの考えを伝え合い, 自らの考えや集団の考えを発展させる

(例)・予想や仮説の検証方法を考察する場面で, 予想や仮説と検証方法を討

論しながら考えを深め合う。

☆言語活動の充実を図るための

視点

神奈川県立総合教育センター研究

成果物「<高等学校>言語活動の充

実を図る実践事例集」には、次の3つ

の視点が示されています。

(1)各教科・各単元の指導計画にお

いて、言語活動を明確に位置付け

(2)思考力・判断力・表現力等を育

成するための指導と学習活動の工

夫をする

(3)効果的な学習形態を工夫する

神奈川県立総合教育センター「<高等学校>言語活動の充実を図る実践事例集」より

思考力・判断力・表現等を育成するための指導と学習活動の工夫について、「考えをもつ」、「考えを広げる」及び「考えを深める」

の三つの視点で整理しました。

「考えをもつ」 ○根拠や理由を考えさせる・・・・「考えの根拠は何か」と問い、単なる感想でまとまった考えを持たせる。

○比較させる・・・・・・・・・・対象となるものを注意深く観察する必然性が生じ、共通点等を見いださせる。

○考えを記述させる・・・・・・・記述させることで考えを明確にさせる。

「考えを広げる」○説明させる場面を設ける・・・・他の生徒の考えを聞くことで、新しい見方や視点に気付かせる。

「考えを深める」○考えを振り返らせる・・・・・・自らの考えが深まったことを実感させる。新たな気付きを促す。

○計画的・継続的に取り組ませる・学習の意義や有用性を実感させ、より深く考える力を身に付けさせる。

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47

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どんなに素晴らしい計画を立てても、

実際の授業で生徒が力を身に付けられな

くては何もなりません。

「主体的・対話的で深い学び」の実現

のために、どのような工夫が必要でしょ

うか。

第3章では、授業の実践の際に心掛け

たいことについて説明します。

授業の実践にあたって

3

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49

生徒の思考の流れを

意識する

ここがポイント 授業の実践にあたって

3

指導力を磨く

発問・指示を、より分かりやすくするためには…

言語指示だけでは理解することが難しい生徒もいます。こうした生徒には聴覚だけでなく視覚

からも理解できるように工夫をしましょう。

例えば、 ・発問内容を書いた紙を黒板に掲示する

・教科書や問題集の使うページを板書する

・作業の工程を図やイラストで提示する

「発問・指示は端的に、分かりやすい言葉で」を常に心掛けましょう。

1 発問や指示は的確に

「質問」と「発問」の違いは? 文部科学省「補習授業校教師のためのワンポイントアドバイス集」

によると、両者の違いは次のようにまとめられています。

質問:子供が本文を見ればわかるもの

(質問例)Q 桃太郎は鬼ケ島へ鬼退治に行ったのですか?

A はい。 (※ 子どもの考える余地がない。)

(質問例)Q 桃太郎はどこへ行ったのですか?

A 鬼ケ島へ。 (※ 一問一答で終わる。)

発問:子供の思考・認識過程を経るもの

(発問例)Q どんなお話ですか?

A 桃太郎が、犬と猿と雉と力を合わせて鬼ケ島の

鬼を退治した話。(※ 「力を合わせて」という内容

価値とともにあらすじも述べている。)

主要な発問と補助的な発問 発問には、授業のねらいを生徒が押さえられるような主要な発問

と、それを導いたり補ったりする補助的な発問があります。

発問のタイミングは、授業の目標に合わせて構成しましょう。

(例1)授業の最初に主要な発問を行う。

授業の後半でその確認や応用となる補助発問によって、

定着を図る。

(例2)ねらいに迫るための補助的な発問を通して思考を深める。

その後、主要な発問を行う。

☆分かりやすく伝えるために

生徒がノートを書いていると

きや、グループ活動のときなど、

聞くという姿勢がないときに、

発問・指示をしても生徒は理解

できません。「話合いを止めて、

前を見てください」と指示した

後に発問するなど、まずは生徒

の聞く姿勢をつくることが大切

です。

個 別 支 援

が 必 要 な

生 徒 へ の

対 応 を 考

えよう

文部科学省「補習授業校教師のための

ワンポイントアドバイス集」ページ

2次元コード→

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50

生徒のやる気を促す言葉掛け

「認めてもらいたい」、「向上(成長)したい」という願望は誰にでもあるものです。その願望を叶えるような建設

的な言葉がやる気を引き出します。例えば、「この問題は難しい・・」の後に「だからできないのね」という否定的

な言葉を続けるよりも、次のステップを示した「けれど、解く糸口を見付けられたら素晴らしいよ」と励ますことで

やる気を引き出すことができるでしょう。生徒の状況や個性・価値観などを尊重する言葉やあるがまま受容している

言葉を投げ掛け、前向き・肯定的な評価や助言をするように心掛けましょう。

発問の例から考える 次の発問の仕方には課題があります。改善点を考えてみましょう。

発問の中にたくさんの情報が提示されており、生徒が課題の内容

を正しく理解できないことも生じます。内容を段階的に整理して視

覚情報を効果的に活用して伝えるとよいでしょう。

○ 「保温ポットに水を200g入れます。」

○ 「これをクラス40名が順番に30回ずつ振ります。」

○ 「全員が振り終わったとき水の温度は何℃変化しているでしょうか。」

*実物・実演、ポイントを書いたカード、イラストなどの活用が効果的です。

話し方のポイント 授業の導入のトピックス

授業の最初に、生徒の気持ちを引き付けたいものです。そのた

めには、導入の話題がポイントになります。生徒の関心を高める

話題、授業の内容につながる話題等、生徒の実態に合わせて工夫

しましょう。

生徒の顔を見る

「このことを分かりやすく伝えたい」と思うとき、教科書や黒

板を見ながら伝えたのでは、生徒の心には何も響きません。

常に、生徒の顔を見て話すように心掛けましょう。一番後ろの

生徒に向かって話すときの声が教室中に響く声の大きさです。生

徒に向かって、生徒の表情を確かめて伝えます。

ポイントをおさえるとき

「これが大事なこと」と伝えるとき、話し方を変えてみましょ

う。わざと小さな声で話す、反対に大きな声で強調する、ゆっくり

と話すなどによって、注意を引くことができます。

また、言葉を繰り返したり、書き留めたりすることも効果的で

すし、教員が沈黙することで生徒の注目が集まることもあります。

「保温ポットに入れた 200gの水をクラス 40 名が 30 回ずつ振ったら

水の温度は何℃変化するでしょうか?」(理科・物理基礎・熱と温度)

改善例

☆生徒の疑問に対して

生徒が授業中、疑問に思っ

たことに教員が答えること

は、もちろんその生徒の理解

を助けることになります。そ

れだけではなく、クラス全体

で共有することにより、新た

な疑問がでてくる場合もあ

り、理解が深まることが期待

できます。

そのため、普段から話しか

けやすい雰囲気をつくること

が重要です。

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51

能動的に聴く態度を

育てる

ここがポイント 授業の実践にあたって

3

指導力を磨く

2 「聴く態度」を育てよう

「聴く」こと 学び合いの中で大切なことは「発言すること」よりもむしろ「聴く

こと」かもしれません。クラスの全員が自分の意見を一生懸命聴いて

くれているということが分かれば、分かりやすく話したい、丁寧に説

明したいと思うはずです。そのために、「能動的に聴く態度」を育て

ることが必要です。また「聴くこと」は、自らの思考を深めたり、広

げたりすること、判断材料を増やすという意味においても大切です。

このことをしっかりと生徒が意識できるようにしましょう。

教員が「聴く」 生徒が発表や発言をしている時、その言葉だけを聞いていません

か。生徒が言葉を発している時には、その内容や思いをきちんと受け

止めなくてはなりません。教員が聴く姿勢を示すことが、「聴く態度」

の育成の第一歩です。

また、その発表や発言を聴いている子どもたちの思いや、つぶやき

も聴くようにしましょう。生徒の考えをつなげることは、教員の大切

な役割の一つです。

やさしい聴き方 相手の話したいことに寄り添って聴く、相手を受け止める、相手に

分かるように話す、といったことを生徒が意識できるようにするた

めに、「やさしい聴き方をしよう」と普段から声かけをしていきまし

ょう。たとえ間違っている発言があったとしても、そこから正解を導

けば、間違えたことを失敗にしないというクラスの雰囲気ができ、学

び合いが深まります。

個 別 支 援

が 必 要 な

生 徒 へ の

対 応 を 考

えよう

聴き方のコツを伝えよう

自分の話は一方的にするけれど、人の話を聴くことが苦手な生徒がいます。

話を聴くときには、うなずく、相づちを打つ、いいと感じたことを伝えるな

ど、聴き方のルールやコツをメモにして渡しておくと、スムーズな話し合い

をすることができるようになります。

☆能動的に聴く態度とは

受け身になって聴くので

はなく、話を引き出すよう

に聴く態度のことです。

話を聴いて、うなずく、相

づちを打つ、意見を述べる

といった具合に、聞き手の

役割を表しています。

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52

「聴く態度」を育てる 「能動的に聴く態度」を育成するために、インタビュー形式での話

合い活動が有効です。

インタビューは、自分の知りたい情報を聴き出すものであり、その

ために適切な質問をしたり、相手の話を受け止めさらに質問を返し

たりといった活動です。

また、インタビューは、話すことが苦手な生徒にとっても、質問に

答えるという形式なので参加しやすい学習活動となります。

【ステップ1】 身近なテーマでインタビュー

・ペアをつくり、聴き手は質問を繰り返し相手の考えを聴き出

す。テーマは、「最近楽しかったこと」といった体験や、「好

きな食べ物」といった答えやすいものにする。

・3 分程度の時間を決めて、一つのテーマで話を続ける。

・インタビュー後に聴き手が、話し手の考えをまとめて発表す

る。

【ステップ2】 根拠を聴き出すインタビュー

・理由を聴くことを課題として、インタビューを展開する。

「なぜそう考えたのか、根拠は何か」について、納得できる

まで質問する。聴き手は相手の発言の後に「~ということで

すね」と確認して、関連する質問を促す。

【ステップ3】 発表者にインタビュー

・調べ学習の後の発表やスピーチの場面で行う。発表者に対

して、相手の考えを確認する質問、相手の考えを深める質

問、助言につなげる質問等を意識して行えるようにする。

(例)「それは○○○ということですね。それについてもう少し詳しい説明

を聴かせてください。」

「○○○について、私は△△△と思うのですが・・このことについて

どう考えますか。」

「○○○はどのように調べたのですか。それがはじめに説明されると

分かりやすい発表になると思います。」

〈例〉 「インタビュー活動による聴く態度の育成」

言葉遣いについて

授業は教員だけでも、生徒だけでも成立しません。教室の中の全員でつくり上げるものです。伝え合いも生徒間だ

けではなく、教員と生徒の間でも大切です。互いを尊重し、丁寧な言葉遣いで会話をするようにしましょう。

☆「聴く」と「聞く」

同じ「きく」という漢字

です。どちらも音や言葉を

「きく」という意味です

が、「聴く」は注意深く耳

を傾けてきくときに使う

漢字です。

話し手の声を傾聴して

ほしいとの思いを込めて、

授業で生徒に身に付けさ

せたいのは、「聴く態度」

であることを意識してお

くとよいでしょう。

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53

3 黒板の使い方

板書の意義 黒板を十分に活用していますか。黒板は重要な教具であり、黒板の

有効な活用は、生徒の学びを深めることにつながるのです。

板書の意義について考えてみましょう。

① 板書によって、学習内容を的確に伝えることができます。

② 書いて残すことで、1単位時間の流れが分かります。

③ 授業の記録として授業を振り返ることができます。

④ 生徒の考えを共有し、整理することで学びが深まります。

⑤ 書く作業によって、授業に程よい間が生まれます。

有効活用のために 板書の意義を踏まえ、黒板を有効活用するために、学習内容を整理

して1単位時間の流れが分かるように板書する必要があります。

そのために、課題の提示、意見の集約、整理等の方法について、事

前に計画を立てることが大切です。

また、文字の大きさ、色チョークや短冊カードの活用、書くタイミ

ングなども計画の際に考えておきましょう。

ノートへの転記 「板書を書き写す」ことだけが授業中の作業になっている生徒は

いませんか。もちろん、板書を書き写すことは必要なことですが、ノ

ートに転記する際に、自分の考えや友達の意見を書き添えたり、後で

資料を調べて書き加えたりすることができるのがノートの意義で

す。ノート指導も併せて行いましょう。

☆板書計画を立てよう

いくら授業内容が良くて

も、授業中に思いついたこと

をそのまま板書しているの

では、生徒の学習効果は上が

りません。

日常から授業の前に板書

計画を立てることが大切で

す。小学校や中学校の実践を

参考に、自分の板書を磨いて

いきましょう。

個別支援

が必要な

生徒への

対応を考

えよう

ねらいに合った

板書計画を立てる

ここがポイント

板書の構造化

板書の量が多いと、どの情報に注目してよいか混乱してしまいま

す。字の大きさや書く位置などを工夫しながら情報につながりをも

たせ、板書を構造化することも大切です。

授業の実践にあたって

3

指導力を磨く

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54

黒板の活用 目標の提示

板書は生徒と教員の共通のノートです。本時の目標を明確に位

置付けておきましょう。課題に取り組むことが目標ではなく「どの

ような力が身に付くのか」が分かるように提示します。

意見の集約

生徒の考えを整理しながら板書します。キーワードのような短

い言葉で整理すると分かりやすく書くことができます。

要点をまとめる

授業の要点をまとめて、分かりやすく示すために、図式化すると

良いでしょう。キーワードを構造的に置いて、線でつなぐなど工夫

しましょう。事前にマグネット付きのカードに書いておくと、時間

を省けますし、大事な点が視覚的に伝わります。

また、色チョークを活用するのも有効です。その際、色の約束を

生徒と確認しておくとよいでしょう。

〈例〉 「黒板の活用法」

賛成意見

(考え A)

反対意見

(考え B)

テーマ

考え B

考え A テーマ

*キーワードを書く場所を決めて、整理していく方法が有効です。

カラーユニバーサルデザイン

「カラーユニバーサルデザイン」とは、様々な人の色の見え方に配慮した視覚情報のデザインです。黒板では、

赤や青のチョークが見えにくい生徒がいます。また、ピンク系の赤チョークが、白や青と区別しにくいと感じる

生徒もいます。赤や青を使わずに、白や黄色を使うようにするとよいでしょう。

また、色の明度や彩度に差をつけて色の識別をしやすくした、ユニバーサルデザイン対応のチョークも市販さ

れていますので、利用するのもよいでしょう。→1章-10

黒板を四つに区切って活用

・左上段に目標、左下段に授業のアウトラ

イン、学習課題を右の上段に最初に書く。

目標、アウトライン、学習課題を明確に

しておくことがポイント。

目標 学習課題

アウトライン 授業内容

黒板を三つに区切って活用

・左は目標と授業のアウトライン、中央は

授業の内容、右は発展的な課題を書く。

アウトラインを示すことで見通しを持っ

た学習が展開できる。このほか、左に課題、

中央に解説、右にまとめといった活用もで

きる。

目標 授業内容 発展課題

アウトライン

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55

机間指導のねらい 机間指導は、何のためにするのでしょうか。

・生徒の学習状況が、学習のねらいを実現しているか観察するため。

・生徒一人ひとりの考えなどを理解し学習内容を評価し、個に応じ

た指導をするため。

・生徒の様子から、指示した内容や活動が適切であるか判断し、

授業の改善に役立てるため。

このような理由が考えられます。授業は生徒の学びを支援するもの

ですので、生徒の間に入って学びの様子を見取ることが大切です。

机間指導のポイント 限られた時間で実態を把握するために、あらかじめ「何を見取るの

か」観察の視点を決めておき、計画的に回ります。

また、具体的に働きかけ、言葉を交わしてこそ、生徒の考えを広げ、

深めることができ、生徒から新たな発見が得られます。

机間指導の活用 机間指導では、生徒一人ひとりの活動を見取ることにより、どんな

ところでつまずいているのかということが分かります。一人ひとりの

課題や、クラス全体の課題の傾向を知り、個に応じた指導を随時行う

ことができます。

また、一人ひとりの良い点を見ることもできます。良い取組を全員

の前で取り上げ、全体の指導に生かすことで、取り上げられた生徒は

認められたと実感できるでしょう。

見取るポイントを

決めて回る

ここがポイント 授業の実践にあたって

3

指導力を磨く

きちんと取り組んでいる生徒も認めましょう!

机間指導というと、学習につまずきがあったり、遅れがちだったりする生徒の所で足が止まっ

てしまうことが多いようです。

しかし、それだけでなく、発展的な課題を提示する、次の

学習の方向を助言するなど、学習が進んでいる生徒に対する

働き掛けも大切にしましょう。

4 机間指導の仕方

☆机間指導における留意点

生徒の質問を受けたり、生

徒へ働きかけたりする場合に

は、特定の生徒にかかりきり

にならず、クラス全体への目

配りを忘れてはいけません。

また、生徒の思考を妨げた

り、中断させたりするような

指導は避けるようにしましょ

う。

個 別 支 援

が 必 要 な

生 徒 へ の

対 応 を 考

えよう

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56

机間指導における関わり方 どのように生徒と関わればよいか、教員の役割をまとめます。

☆机間指導を効果的に

行うためには

生徒のノートやプリン

トの中に、思考過程が一目

で分かるような工夫をし

ておくとよいでしょう。

例えば、「問題に対する

試行錯誤のプロセスを残

しておくように促す」、「グ

ループ学習において、ほか

の意見を通して学んだこ

とや振り返りをまとめる

ように指示する」などが考

えられます。

ポイントづくり

「これは~という意味かな?

その考えは参考になるね」

周りに聞こえるように意識して

つぶやいたことが、生徒の気付

きにつながったり、話合いの視

点となったりします。

刺激

思考を促したり、情報共有を促

したりするきっかけとなります。

また、気付きや考え方を広げるこ

とにつながります。

指導・助言

つまずきがある場合、既習内

容に立ち返らせて、適切な指導・

助言を与えます。あらかじめつ

まずきを想定し、対処法を考え

ておくと効率的です。

ほめる

「この考えは素晴らしいよ」

などと声かけをすることで、先

生に認められて、自信が生まれ

ます。発言しない生徒も発言で

きるようになります。

寄り添う

思考の深まり

生徒個々の考えをいかしな

がら、関連付ける手立てを与

え、思考をつなげて深めます。

特にグループ学習では、教員の

ファシリテーターとしての役

割は重要となります。

コミュニケーション

主体は生徒です。生徒同士の

助け合い・話合いを促します。

結果的に互いの良さを生徒同

士で気付くことができます。

つなげる

評価

机間指導により、生徒の学習

活動を多面的に評価することが

できます。観点別評価、指導過

程の修正に役立てることができ

ます。

改善

観察・指導から、生徒の多様

な発想・考えを見つけるととも

に、課題に対する反応や理解度

の実態を把握し、授業の組立て

に役立てます。

いかす 広げる

学習活動に参加しようとしない生徒への対応

学習指導に参加していない生徒を発見したら、どうしますか。参加していない理由を見きわめて、参加できるよ

う助言するために、生徒の様子を見守る、生徒に声をかける、周囲の生徒に働きかけるなど、様々な方法がありま

す。また、グループ活動などでは、生徒自身が役割を自覚できるようにすることで、主体的な参加を促すことがで

きます。「あなたは、質問する役割で参加してみましょう」「意見を言う人のよいところを探してあげてね」など、

具体的な役割を机間指導でアドバイスするとよいでしょう。

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57

授業の実践にあたって

3

ツールを活用する

学習のねらいに

合うようにつくる

ここがポイント

5 ワークシートの活用の仕方

ワークシートとは・・・

ワークシートとは、学習内容を簡潔にまとめて生徒の学習を手助

けするだけでなく、思考・判断したことを表現させたり、振り返りを

行わせたりするための教材を指します。

「主体的・対話的で深い学び」とワークシート ワークシートは、ある一時間の授業の中で使用するものと、単元や

年間を通して長期的に使用するものがあります。長期的に使用する

ワークシートは、自己の学習活動を振り返って次につなげる「主体的

な学び」を実現するためにも有効です。

また、生徒にとって、ワークシートが解答を書き込むだけの作業

プリントになってしまうのでは、深い学びになりません。単元を通

して身に付けさせたい資質・能力を育成できるように、ワークシー

トを活用しましょう。

例えば、課題に対する自分の考えをまとめるために書く、資料を

読んで気付いたことを書く、発表のメモを書く、聞いたことをまと

める、分かったことを整理する、単元の学習を振り返り次の学習目

標を立てるなど、様々な学習活動に活用できます。

また、ワークシートの活用は、評価活動や生徒とのコミュニケー

ションにも役立ちます。

☆ワークシートの保存

せっかく書き上げたワーク

シートも、整理が行き届かな

いと紛失してしまったり、破

損したりします。

そこで、ワークシート類は

ファイルにとじたり、クリア

ファイルに保管したりするよ

うにします。

また、時々ファイルの状況

を点検するなどのフォローが

大切です。

ノートに貼る場合にも、的

確に指示をして、整理できる

ようにしましょう。

個 別 支 援

が 必 要 な

生 徒 へ の

対 応 を 考

えよう

特性に配慮したワークシートづくり

ワークシートの図の意味を一目見て理解することが困難であったり、簡単な

説明だけでは適切な答えが導けなかったりする生徒がいます。質問文の字の大

きさや書体などを工夫するほか、視覚的に理解しやすい図の工夫、簡潔で分か

りやすい質問内容など、生徒の特性に配慮したワークシートづくりを心掛けま

しょう。

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58

ワークシートの構成例

☆ワークシートを工夫する

ことによって期待できる

こと

まず、生徒の思考の流れを

整理することができます。

また、新単元の内容を含め

ることで、発展的な学習を可

能にしたり、活動のヒントや

参考資料を記載したりするこ

とで、苦手な生徒の理解を助

けることもできます。

生徒の実態に応じて作成す

ることや、生徒にとって適切

な分量と内容になるように留

意するのがポイントです。

①授業日、ワークシート No.

生徒が、授業後に整理・保管

しやすいよう授業日を記入でき

る欄やワークシート No.をつけ

るようにします。参照する教科

書や資料集のページを示してお

くことで、授業中や授業後の復

習時に役立ちます。

②本時のねらい

授業のねらいを記入す

る欄をつくったり、この

時間で目指すゴールをル

ーブリックの形で示した

りして、生徒とこの時間

のねらいを共有します。

③授業の展開

“何年にこうした出来事が起きた”と

いった個別の事実的な知識のみを扱う

のではなく、“その出来事はなぜ起こ

ったのか”“その出来事がどのような影

響を及ぼしたのか”といった、知識相

互がつながり、関連付けされていくよ

うな問いを設定し、まとめられるよう

にするなど、学習内容の深い理解につ

ながるように工夫します。

話合い活動を行う場合は、ワークシ

ートに自分の意見や考えをまとめて、

その後の対話を通して自己の考えを広

げ、深めていけるようにします。

④振り返り

本時のねらいを踏

まえて、この時間に

学んだことを要約し

たり、出来たことと

出来なかったことを

まとめたりできるよ

うにすることで、自

己の学習状況を客観

的に捉えられるよう

工夫します。

評価につなげるワークシートの工夫

学習評価においては、生徒の記述物の点検・確認・分析を行う場面が多いと思います。評価の見取りがしやすくな

るよう、ワークシートの形も工夫する必要があります。

例えば、「事実の整理」は『知識・技能』とつながりますが、箇条書きにできるよう、罫線を入れてはどうでしょう

か。「説明」では『思考・判断・表現』を見取ることが多いので、図を描けるように広く枠取りをする、理由や根拠の

欄を作るなど、学習活動と学習評価の両方を想定しながら作るとよいでしょう。

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59

ねらいに応じた

授業の幅を広げる

ここがポイント 授業の実践にあたって

3

ツールを活用する

6 ICTを活用しよう

☆ICTの特性

①時間や空間を問わずに、

音声・画像・データ等を蓄

積・送受信できる

②距離に関わりなく相互に

情報の発信・受信のやり

とりができる

③多様で大量の情報を収

集・編集・共有・分析・表

示することなどができ、

カスタマイズが容易であ

☆情報活用能力とは

学習活動において必要に

応じて情報手段を適切に用

いて情報を収集・整理・発

信・共有等を行うことので

きる力。情報手段の基本的

な操作の習得や、プログラ

ミング的思考、情報モラル、

情報セキュリティ、統計等

に関する資質・能力等も含

むものです。 詳しくは参

考資料-3を参考にしてく

ださい。

個 別 支 援

が 必 要 な

生 徒 へ の

対 応 を 考

えよう

特性に応じたICTの活用

読字や書字に困難を示す生徒には、視覚的に分かりやすく理解しやすい大画

面テレビによる教材提示やタブレット端末を活用した板書記録が有効です。ま

た、口頭でのコミュニケーションが苦手でも、メールや SNS 等を使えば自分

の考えを伝えられる生徒がいます。文書作成ソフトやプレゼンテーションソフ

トを活用して、自分の考えを表現する活動を取り入れましょう。

ICTを授業に取り入れる ICTとは、Information and Communication Technology の略

で、コンピュータやインターネット等の情報通信技術のことを指しま

す。ICTの特性や強みをいかして授業に取り入れていくことは、「主

体的・対話的で深い学び」の実現のために有効といえます。タブレッ

ト端末やプロジェクタなどの機器を積極的に活用して、より充実した

授業を目指しましょう。ただし、ICTを授業に取り入れることを目

的とせず、指導のねらいを達成するために、生徒に身に付けさせたい

力に応じた効果的なICTの活用方法を考えるとよいでしょう。

教員によるICT活用 映像や音声等の情報提示、資料の投影、課題の提示などの活用が考

えられます。教員による発問、指示や説明等とも関係が深く、全ての

教科指導の数多くの指導場面で活用できると考えられます。

生徒によるICT活用

資料収集、調査結果の整理(分析、グラフ化等)、協働学習、発表活

動(プレゼンテーション)、繰り返し学習による知識の定着や技能の習

熟を図る等での活用が考えられます。

ICTの活用によって、単に情報を収集・整理するだけでなく、情

報を主体的に扱い、受け手の状況を想像した情報発信ができる能力を

身に付けさせることができます。これらのICTを活用する能力を含

む「情報活用能力」を育成する学習活動は、各学校におけるカリキュ

ラム・マネジメントを通じて全ての教科で行うことが重要です。

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60

8 ICTを活用しよう

〇体験学習、実験・観察等を行う際、その情報を映像やデータ等で

記録する。

➡実体験とデジタルデータを合わせて理解を深めたり、思考

力を高めたりできる。

➡記録した映像を見直しながら話し合うことにより、新たな

気付きを得られるような授業を実践することができる。

〇実体験が困難な事象についてデジタル教材を活用して視覚化を

図る。

➡より理解が深まる。

〇情報端末や電子黒板などを用いて個人やグループの考えを即時

に整理・発表する。

➡多角的な見方や考え方に触れることができる。

〇他校の教室や社会教育施設、学校外の専門家、外国の学校など

とつなげて合同授業や合同活動、意見交換などを行う。

➡異なる考えや文化、専門的な内容にリアルタイムに触れる

ことができる。

授業での活用例

活用はアイデア次第

教科書や資料、ワークシート等、生徒全員が持っているものを提示することにも意味があります。教科書等の一部

を隠して提示することで、学習内容に注意を向けられるようにすることができます。また、「どこを見ればいいのか

分からない」と授業に対する関心が低下してしまう生徒に対して、授業に集中できるようにするための手立てとして

使うこともできます。

国語や英語などで長文を提示したり、数学などで解法を解説したりする際など、スクリーンを使わず黒板に投影す

る使い方も考えられます。生徒がコンピュータ等を使って作業する活動を取り入れ、学びを深めることもできます。

☆映像資料について

総合教育センターのウェ

ブページに、「教材作成に役

立つリンク集」のページを

用意しています。普段から

情報収集を行っておきまし

ょう。

☆情報モラル教育の推進

スマートフォンやSNS

(ソーシャルネットワーキ

ングサービス)などの急速な

普及により、情報モラル教育

の充実が求められています。

生徒が犯罪被害などの危

険を回避し、情報を正しく安

全に利用できるようにする

とともに、人権、知的財産権

など自他の権利を尊重し、情

報社会での行動に責任を持

てるようにすること等が大

切になってきます。

教員は、法令や問題が起き

た際の対処への知識等を持

つことが必要です。その上

で、どのような教材があるの

か、どのタイミングで、どん

な方法で指導することが効

果的であるかを考える必要

もあります。

→参考資料-3

①一斉学習での生徒の興味・関心を高める学び

②個別学習での生徒一人ひとりの能力や特性に応じた学び

③生徒同士が教え合い学び合う学び(協働学習)

④特別支援教育における障害の状態や特性等に応じた学習活動

ICTを活用した効果的な学びの場面

ICT機器を活用することで

個別学習の場面では、個の課題を解決したり、それぞれにあった進

度で学習したりすることが可能となり、より効果的に学習を進めるこ

とができるようになります。

協働学習の場面では、発表や交流を活性化することができ、思考力・

判断力・表現力等の効果的な育成を可能とします。

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61

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1

学習評価とは、学校における教育活動に

関し、生徒の学習状況を評価するもので

す。

生徒に力を身に付けさせることができ

たかどうかという学習の成果を的確に捉

え、教員が指導の改善を図るとともに、生

徒自身が自らの学習を振り返って次の学

習に向かうことができるようにするため

にも、学習評価はとても大切です。

第4章では、学習評価の在り方と、授業

の実践を振り返る具体的な方法及びその

活用について説明します。

学習評価と授業の振り返り

4

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63

生徒に「序列を付ける」

評価から、「支援」する

評価へ

ここがポイント 学習評価と授業の振り返り

4

評価の基本的な考え

小さな一歩を認めよう

生徒が自分の進度で努力し、学習している

ことを認めましょう。小さな一歩を認めるこ

とで、生徒は自信を持ち学習することが楽し

くなります。

1 学習評価とは

目標に準拠した評価 学習評価は、学習指導要領に示す目標に照らして設定した観点ご

とに学習状況を分析的に捉える「観点別学習状況の評価」と、総括的

に捉える「評定」とで行います。

計画的に評価する

生徒の学習状況を適切に評価するには、評価規準に合わせて評価

方法を決め、学習活動を構想することが必要です。

その単元(題材)で何を身に付けさせるのか、ねらいを明確にする

とともに、どうやって生徒の思考や発言・行動を見取るのか、学習活

動のどの場面で生徒の変容を見取るのか、「努力を要する」状況(C)

の生徒へはどのように支援するかを想定し、計画的に評価すること

を心掛けましょう。 → 2章-3、4

「指導に生かす評価」と「記録に残す評価」 学習評価には二つの側面があります。

「指導に生かす評価」は、生徒の学習状況を分析的に捉え、その結

果を教員が今後の指導に生かしていくために実施するものです。生

徒の様子を観察し、日々の授業の中で常に行います。

「記録に残す評価」は、生徒の学習状況を把握し、記録するために

実施するものです。単元(題材)等の区切りの中で適切に設定した時

期において、「おおむね満足できる」状況(B)にあるかどうかを評

価します。 → 4章-2

「指導と評価の一体化」に取り組み、生徒のためのよりよい授業を

考えていきましょう。 → 2章-3、4章-7

☆評価の「信頼性」と「妥

当性」

学習評価に当たっては、そ

の評価方法及び評価結果が、

目標の実現を測るという点

から妥当で信頼できるもの

になっているかということ

が重要です。

例えば、生徒やその保護者

に対して、単元(題材)の評

価規準や評価方法等の学習

評価の方針について予め周

知する等、信頼性と妥当性の

ある評価を目指していきま

しょう。

個 別 支 援

が 必 要 な

生 徒 へ の

対 応 を 考

えよう

目に見える評価

言葉で評価するだけでなく、生徒自身が目で見

える形で評価することも大切です。項目ごとにシ

ールやスタンプで印を付けることで

達成状況が明確になり、分かりや

すくなります。

☆新学習指導要領におけ

る学習評価

令和4年度から年次進行

で実施される、新しい学習指

導要領における学習評価に

ついても、右の基本的な考え

方が継続されます。

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64

評価の進め方 評価活動には、生徒の行動や発言の状況の見取り、ノートやワーク

シート、レポート等の記述や作品、自己評価等のポートフォリオ評

価、パフォーマンステストやペーパーテストなどの記述による評価

等があります。評価方法は評価規準と組み合わせて設定します。

観察・点検

行動の観察・・・・学習の中で、評価規準が求めている行動の「観察」を

します。

記述の点検・・・・学習の中で、机間指導などにより記述の内容を「点検」

します。

確認

行動の確認・・・・学習の中で、行動などの内容が、評価規準を満たして

いるかどうかを「確認」します。

記述の確認・・・・学習の中で記述された内容を、ノートや提出物などに

より「確認」します。

分析 行動の分析・・・・「行動の観察」や「行動の確認」を踏まえて、その内容

を「分析」的に評価します。

記述の分析・・・・「記述の点検」や「記述の確認」を踏まえて、ノートや

提出物などの記述の内容を「分析」的に評価します。

<「確かな学力を育てるために」学習評価を踏まえた授業づくりの道すじ

(平成 24 年 3 月 神奈川県教育委員会)から抜粋>

学習活動の中での評価 例えば、話合い活動のとき、どのような評価をすればよいのでしょ

うか。本時のねらいに合わせて考える必要があります。

一般的には、他人の話を聞いているとか発言をしているといった

話合いそのものの活動状況など量的なものを評価するのではなく、

話合いを通じてその活動のねらいを達成できているかといった質的

なものを評価します。ただし、国語の「話す・聞く能力」に係る「関

心・意欲・態度」や外国語の「コミュニケーションへの関心・意欲・

態度」をねらいとしている場合は、発言をしているといった活動状況

も評価の対象となるでしょう。

図 評価方法の決定

評価方法の段階

☆評価方法の例

ルーブリック

成功の度合いを示す数レベル程度

の尺度と、それぞれのレベルに対応

するパフォーマンスの特徴を示した

記述語(評価規準)からなる評価基

準表。→ 4章-4

ポートフォリオ評価

生徒の学習の過程や成果などの記

録や作品を計画的にファイル等に集

積。そのファイル等を活用して生徒

の学習状況を把握するとともに、生

徒や保護者等に対し、その成長の過

程や到達点、今後の課題等を示しま

す。

“新”学習指導要領に基づく授業も、“現行”学習指導要領に基づき評価する(評価の先行実施はない)

序章で示したとおり、今年度は令和 4 年度から年次進行で実施予定の新学習指導要領の移行期間にあたります。移行措置

として、特別活動や一部教科の内容について、新学習指導要領の内容が先行実施されます。

ここで押さえておきたいことは、新学習指導要領の内容を先行実施した部分の学習評価は現行の学習指導要領に基づいて

行う、ということです。「評価の先行実施はない」ということを覚えておくと良いでしょう。

「高等学校学習指導要領の改訂に伴う移行措置並びに移行期間中における学習指導等について(通知)」

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65

見取るポイントを

押さえる

ここがポイント 学習評価と授業の振り返り 4

評価の基本的な考え

2 学習の様子を見取る

評価は成績を付けることだけが目的ではなく、生徒一人ひとりの学習を

成立させ、質を向上させるために実施するものです。そのためには、生徒

の学習状況をつぶさに把握する必要があります。

「指導に生かす評価」の場面 「指導に生かす評価」(4 章-1)は、日々の授業の中で生徒の観察を通

して実施します。この観察(評価)を通して、生徒がよりよく授業に参加

できるような指導(「声かけ」「促し」等)に繋げます。毎時間実施するも

のですが、必ずしも生徒全員ではなく、特に気になる生徒を支援するため

に行う、というものです。

「記録に残す評価」の場面 「記録に残す評価」(4 章-1)は、観点別学習状況の評価として実施す

るものです。単元ごとの評価規準に従って、各観点とも単元で一回以上、

評価する場面を設定します。「記録に残す評価」は、最終的に評定(成績)

に繋がるものであり、生徒全員に対して実施します。

観点別学習状況の評価は、「おおむね満足できる」状況(B)を基準とし

て、「十分満足できる」状況(A)、(B)、「努力を要する」状況(C)の三段

階で行います。生徒全員が(B)以上となるよう、授業の中で指導を行いま

しょう。

「記録に残す評価」を実施する方法は多くあります。下の【例】を参考

に、「記録に残す評価」をする場面を設定しましょう。

【例】・小テスト ・定期テスト ・成果物(レポート、作品等)

・ワークシートの記述(個人的な気付き、授業後の振り返り等)

・実演(実技試験、発表、プレゼンテーション等) etc...

個 別 支 援

が 必 要 な

生 徒 へ の

対 応 を 考

えよう

評価(C)の生徒が多いなと感じたら

生徒がつまずきそうな場面を想定して

授業を組み立てていましたか?学習の様

子を見取りながら、具体的な手立て、ほ

かの資料、解答のヒントなどを提供しま

しょう。

見取りのヒント

評価(C)の生徒がどこでつまずい

ているかの視点で見取ることが大切で

す。生徒の読む・書く・話す・作業・集

中・学習用具の用意・情緒の安定・・・

などを考えてみましょう。

☆観点別学習状況の評価の

総括

観点ごとの評価の総括の場

面は次の3段階であることが

多いと考えられます。

①単元(題材)における総括

②学期末における総括

③学年末における総括

評定への総括の方法につい

ては各学校で共通理解を図る

ことが大切です。

【参考資料】

・「評価規準の作成、評価方法等

の工夫改善のための参考資

料」(国立教育政策研究所)

・「学習評価の手引き」(神奈川

県教育委員会)

→ダウンロードは、P115へ

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66

Q.1: 「小テスト」は全部成績に反映させるの?

知識の定着を図るため、毎時間授業の中で小テストを行っています。一年間を通して行うので膨大

な量になり、処理が大変です。この結果は全て記録に残す評価として評定に反映させるのですか。

A.1: 必ずしも「全てを」反映させなくてもよい。

もちろん、全ての結果を「知識・理解」の評価としても構いませんが、その処理に「時間と労力を

掛けすぎない」ようにすることも重要です。

例えば、日頃の単語テストを「指導に生かす評価」として活用し、単語に関する「知識・理解」の

総括的な評価は定期テストでまとめて実施する、という方法も考えられます。

Q.2: 「対話的活動」の評価はどうすればよいの?

「思考・判断・表現」の評価場面で、グループでの話し合いに参加しない生徒がいます。この生徒の

観点別学習評価はどうするのがよいのですか。

A.2: 生徒の取組状況は「指導に生かす評価」に活用する。

「よりよく話し合いをする」ということが単元の目標になっていない限り、質問のような「生徒の

取組状況」自体が観点別学習状況の評価の対象にはなりません。

例えば理科の授業で、実験レポートをよりよくするために、実験結果の考察をグループで共有する

活動を行ったとします。ここで評価の対象となるのは完成した実験レポート(成果物)であり、グル

ープでの話し合いの様子(取組状況)ではありません。

もちろん、実験レポートの内容を充実させるためには、グループでの話し合いの充実が必要です。

そのためには、活動に参加しない(できない)生徒に対し、参加する(できる)ように促す、助言す

るといった指導や支援(「指導に生かす評価」)が必要となります。

Q.3: 「関心・意欲・態度」は何を評価するの?

遅刻や欠席の多い生徒がいます。また、行動に課題があり、活動に参加しない生徒もいます。こう

いった生徒の「関心・意欲・態度」の評価を「C」にしようと思っていますが、問題はありませんか。

A.3: 学習を通して育まれた「教科の学習に即した関心・意欲・態度」を評価する。

よく、「関心・意欲・態度」を生徒の日頃の授業態度を評価するものと捉えている人がいますが、そ

れは大きな誤りです。「関心・意欲・態度」は、各教科の学習に即した関心や意欲、態度を対象として

おり、質問にあるような、生徒の性格や行動の傾向を評価するものではありません。

一般的に、単元の最後に行う振り返りで「何を学んだか」「学んだことをどう使うか」といったこ

とについてワークシートに記述し、各教科の関心や意欲の高まりを捉える、ということが行われてい

ます。なお、「関心・意欲・態度」については、4章-3に詳しく説明されています。

評価に関する Q&A

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67

関心・意欲・態度は

指導を通して育てる

ここがポイント 学習評価と授業の振り返り

4

生徒の学びを振り返る

「関心・意欲・態度」を評価するとき

生徒の「関心・意欲・態度」を評価するとき

は、単に「発言がないから」という減点法では

なく、発言がなくても「~しようとした」「~

した」「~できた」等の発言以外の参加の部分

からも評価しましょう。

時間の確保が大切

振り返りシートの記入時間は授業

内に確保しましょう。後で提出させる

と、内容を忘れてしまったり、提出を

忘れてしまったり、用紙を紛失したり

するなど提出しにくくなります。

3 「関心・意欲・態度」はこれを見る

「関心・意欲・態度」とは

「関心・意欲・態度」の観点では、生徒が各教科の学習内容に関心を持

ち、自ら課題に取り組もうとする意欲や態度を身に付けているか評価し

ます。「学力の 3 要素」のうちの「学習意欲」を評価する観点であり、

意図的・計画的な指導が必要です。

「関心・意欲・態度」は育てるもの 「関心・意欲・態度」は、生徒にはじめから備わっているものではあり

ません。教員が意識的に働き掛け育てる資質・能力です。

「関心・意欲・態度」を育てなければ、「分かるようになろう」「できる

ようになろう」という気持ちにはなりません。また、ものの感じ方、捉

え方、関わり方を支える意欲や価値観を育てなければ、獲得した知識や

技能が適切に使われないこともあるでしょう。

また、「関心・意欲・態度」は授業を通じて長期的に育てる資質・能力

ですから、単元(題材)や内容のまとまりごとに、長期的な視点で評価

しましょう。

「関心・意欲・態度」を評価するときは 「関心・意欲・態度」は、挙手の回数やノートの取り方、忘れ物の有無

等の、性格や行動面の傾向を評価するものではありません。各教科の観

点の趣旨に照らして、生徒が自らの学習状況を把握し、学習の進め方に

ついて試行錯誤するなど自らの学習を調整しながら学ぼうとしている

かどうかという、意思的な側面を捉えて評価するべきでしょう。

個 別 支 援

が 必 要 な

生 徒 へ の

対 応 を 考

えよう

☆新学習指導要領では

新学習指導要領において育

成すべき資質・能力の柱の 1

つである「学びに向かう力・

人間性」には、①「主体的に

学習に取り組む態度」として

観点別評価を通じて見取るこ

とのできる部分と、②観点別

評価や評定にはなじまず個人

内評価を通じて見取る部分が

ある、とされています。現行

の「関心・意欲・態度」の考

え方は、①「主体的に学習に

取り組む態度」と基本的には

同じです。

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68

☆「気付く」という言葉に

要注意

「気付く」という言葉が様々

な場面で使われますが、受け

止められ方も様々です。「関

心・意欲・態度」を評価しよ

うとして「気付いたことを書

きましょう」と投げ掛けた

ら、知識・理解的な記述(「○

○が分かった。」等)が返って

きたり、思考・判断・表現的

な記述(「○○と考えた。」

等)が返ってきたりすること

があります。「学習にどう取り

組みたいですか」「学んだこと

を、どう活用していきたいで

すか」等、「関心・意欲・態

度」を見取れるような発問の

工夫が必要です。

評価のポイント

体育の「関心・意欲・態度」

体育の「関心・意欲・態度」の評価には、学習内容に関心を持ち、自ら課題に取り組もうとする意欲や態度のほ

かに、公正や協力、責任や参画、健康や安全に関する事項の態度が生徒に身に付いているかどうかという点も含ま

れます。(新学習指導要領では、この他「共生」などもキーワードになります。)

「関心・意欲・態度」は「記録に残す評価」として行う

「関心・意欲・態度」は目標に準拠した評価の「基本の4観点」の一つで

す。あらかじめ評価の場面を設定し、全ての生徒に意図的・計画的な指導を

した上で、その達成状況を記録することが必要です。生徒のその場限りの

言動を場当たり的に評価するのではない点に注意しましょう。

記述内容から

ワークシートやレポート、ノートなどに記載された生徒の記述から「関

心・意欲・態度」を評価することができます。

例えば理科の場合、実験レポートにある力学現象について、「質量を2倍

にして実験するともっと分かりやすい結果が出るのではないか」といった

意欲的な記述が見られるかどうかを規準にして評価することができます。

ここで大切なことは、「関心・意欲・態度」の観点を確実に見取るため的

確な発問をすることです。例えば数学では、考察に学習内容を関連させた

り活用したりしているかを見取ることが必要なので、適切な発問としては

「学習を通して考えたことを、その内容に関連させて述べなさい」といっ

た例が考えられます。

グループ活動等の対話的活動では、「話し合いの様子」といった活動の取

組状況自体を評価するのではありません。対話的活動を通して、各個人が

何を学び、どんな考えを持ったのかをワークシート等に記述させること

で、学習内容への「関心・意欲・態度」を見取ることができるでしょう。

実技・実演から

授業中における生徒の行動を通して評価することもできます。単元の中

で実演や実技試験を評価の場面として設定し、「技能」とともに「関心・意

欲・態度」を見取ることも出来ます。

例えば、音楽や体育の実技試験で、与えられた課題を達成するために、

演奏や体の使い方について自分なりの工夫や努力が認められるとき、仮に

その工夫が成功していなくても、「関心・意欲・態度」の観点で評価すること

ができるでしょう。また日々の授業の中で見られる「授業の目標実現に向

けた創意工夫」等についても「関心・意欲・態度」の評価の材料となります。

評価に際しては、特に気になった生徒だけをピックアップするのではな

く、あらかじめ評価の場面を設定し、生徒全員を公平に見て評価し、そし

てその記録を残すことが大切です。

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69

生徒へのフィードバックが

やる気を育てる

学習評価と授業の振り返り

4

生徒の学びを振り返る

取り掛かりに時間が掛かるとき

何をしたらよいかが分からず課題に

取り掛かれない生徒には、作成のヒント

や材料、仕上げるための方法やコツを示

したり、ワークシート等にほめるコメン

トを入れたりすることが大切です。

期限を守るためには

期限までに出せない生徒については、課題

の内容は理解しているか、どこまでできてい

るか、提出の方法・締切は分かっているかを

途中で確認をしていくなどの支援があると

期限を守って提出しやすくなります。

4 提出課題やパフォーマンスから見取る

ねらい(観点)を持って見取ること 評価の方法の一つとして、提出課題や作品から学習状況を見取る

ことがあります。

提出課題から見取る際に大切なことは、目的を明確にしておくこ

とです。生徒にどのような力が身に付くのかを考え、評価規準を設定

した上で課題を出しましょう。またその評価規準を、生徒と教員が共

有することが非常に重要です。

どのように生徒に返すかを考える 提出された課題はそのままにしておいてはいけません。きちんと

評価し、生徒にその結果を分かりやすく伝えます。そして、どうして

その評価になったのかについて理由を伝え、次へつなげます。

そのために、生徒自身が今後の取組に向けて何を改善すればよい

のか、するべきことのポイントを絞って理解できるように返すこと

が大切です。

「ルーブリック」を使用して評価する

作品の評価や実技試験など、生徒のパフォーマンスを評価すると

きは、生徒の次の学びにつなげるための工夫をすることが大切です。

評価規準に基づいた評価の視点を整理し、チェックすべき要素を具

体的にレベル別に定めておくものが「ルーブリック」です。作品など

のパフォーマンスをトータルで評価するのは難しいので、「ルーブリ

ック」を使用して目標とするべき視点別に評価を行うことは、教員と

生徒双方にメリットがあります。

☆パフォーマンス評価

設定した評価規準の実現状

況を測るため、生徒に課題を

与え、その内容の分析をもっ

て評価を行うものを、「パフォ

ーマンス評価」といいます。

必ずしも実演や実技のみを評

価すると言うことではありま

せん。

☆パフォーマンス課題

生徒に様々な知識やスキル

を使いこなす(活用・応用・

統合する)ことを求める課題

を「パフォーマンス課題」と

いいます。

課題に取り組んだ結果の、

論説文・レポート等の成果物

や、スピーチ・プレゼンテーシ

ョン等の実演(狭義のパフォ

ーマンス)を評価します。

パフォーマンス課題は模範

解答が存在しないため、評価

をする際にはルーブリックを

活用するなど工夫が必要で

す。

個 別 支 援

が 必 要 な

生 徒 へ の

対 応 を 考

えよう

ここがポイント

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70

話し方 質疑応答

A(5 点) 聞き手が十分理解でき

る速度・ 声量で話し、

理解を促す/確認する

工夫をしている。

質問を理解し、文の形で

応答ができる。

B(3 点) 聞き手が十分理解でき

る速度・声量で話してい

る。

質問を理解し、簡単な応

答ができる。

C(1 点) 聞き手が十分理解でき

る速度・声量で話してい

ない。

質問が理解できない、ま

たは応答できない。

備考 「理解を促す/確認す

る工夫」は、強調や自然

なジェスチャー/アイ

コンタクトなどとする。

「簡単な応答」は単語、

フレーズレベルのもの

とする。

ルーブリック評価の良い点

○生徒側:何をどのように努力すべきか理解しやすい。

・事前に観点や基準を知らせておく。事後には診断的効果がある。

○教員側:何をどのように指導すべきか計画しやすい。

・評価の観点=授業での指導項目(目標との結びつきを意識する)。

ルーブリック評価の留意点

・作成に時間がかかる。(作成方法の例:まずはB基準を設定し、それを

満たさないものをCとする。Bの中で質的・量的に高まりがみられると

判断するものをAとする。<3 段階評価の場合>)

・複数の教員で使用する場合、段階別基準の共通理解が必要。(前年度の

例など、基準とできるものがあると良い)

☆評価(C)の生徒に対す

る手立て

評価(C)の生徒に対して

は、(C)のままにしないた

めの手立てが必要です。作

品などの場合は、再提出さ

せたものが目標に達する

ものであれば、評価(B)に

するのが良いでしょう。

しかし評価については、

一人で判断することなく、

同じ科目の担当者同士の

共通理解が必要です。評価

(C)の生徒に対する手立て

の方法や再評価の規準に

ついても担当者同士で相

談し、決定するようにしま

しょう。

スピーキング(スピーチ)評価のための「ルーブリック」の例

「○○について英語で話し、内容に関する質問に答える」

作品の評価

作品の制作を伴う教科・科目では、ともすると最終的に完成した作品だけで評価しがちです。しかし、作品の制

作の途中でも、作品の状況などから評価できる場面がたくさんあります。ただ、実技を伴う教科・科目では評価対

象人数も多く、効率的に途中段階での評価を行わなければいけません。デジタルカメラで途中経過を記録したり、

制作のプロセスを明確にした上で、そのプロセス上のポイントを評価したりするなど、工夫して行うとよいでしょ

う。

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71

目標に応じて

方法、形態を選択する

ここがポイント 学習評価と授業の振り返り 4

生徒の学びを振り返る

5 テストで見取る

学校におけるテストとは テストは、何のために行うのでしょうか。一般的には、「学習者の

学力・能力を知るためのもの」と思われていますが、学校におけるテ

ストの第一義は、「教員の教授活動の評価」のための資料収集です。

生徒たちに教えた様々な事柄を、どの程度まで生徒たち個々が習得

してくれたかを見て、次の指導にいかす。ペーパーテストや実技テス

トなど形態は様々ですが、これが学校におけるテストの第一義です。

そしてもちろん、生徒自身が自分たちの達成度を知ることも、テス

トの大きな目的の 1 つです。テストの結果を見ることによって、自

分が現在何ができて何ができていないのか知ることができ、次にど

のような学習努力をすれば目標が達成できるのかについて、指針が

与えられるものでなければなりません。

そのためには、それぞれの問題が「どのような知識・能力・技能を

テストしているのか」を、教員が意識して作問するはもちろんのこ

と、生徒自身がはっきり理解できるようなテストを作成することが

求められます。ペーパーテストの設問ごとに観点別のラベルを表示

するのは、そのためです。

目標の実現状況を測定するテスト

日々の授業は、目標(本時、単元、学期、年間の目標)を実現する

ために行います。そして、その目標がどのくらい実現できているのか

について測定するのがテストです。つまり、「目標」と「授業で何を

学習するのか」と「テストで何を測るのか」が、密接に結び付いてい

なければならないのです。

共通テストを行うにあたって

評価の妥当性・信頼性を高めるために、科目ごとに共通のテストを

実施することが求められています。それぞれ違う授業を行う複数の

教員が共通テストを行うためには、授業の実施前に、テストについて

の共通理解を持つことが必要です。試験範囲の確認に終わることな

く、重視するポイントや授業での扱い方について事前に担当者同士

で意見交換し、共通の目標を達成するための効果的なテストを実施

するようにしましょう。

☆テストづくりは授業づ

くりに通じる

テストは、生徒が学習活

動で身に付けた成果を見取

るものであり、言い換えれ

ば生徒はどのようにものの

見方や考え方を身に付けよ

うとしていたのかをたどる

ものです。

つまり、テストづくりは

授業づくりと密接な関係に

あり、今日求められる学力

観を踏まえた実践に基づい

て行うことが大切なので

す。

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72

実際にテストをどのように作成していけばよいのでしょうか。具体的な手順例を示します。

(勤務校のルールを確認してみましょう。)

○学習目標を確認し、問題作成仕様をまとめる

学習活動を通して生徒に身に付けさせたい力を柱に、大問の構成など問題作成仕様をまと

めます。このとき、観点が年間指導計画と一致しているか確認します。

○設問のバリエーションと生徒の「解答の流れ」の相関を考える

観点別評価に即して生徒の学習成果を測る設問の形態を考えるとともに、予想される解答

や記述を想定します。思考力・判断力・表現力等を見取る設問にするために、生徒が知識や

技能を活用でき、理解を引き出す工夫があるとよいでしょう。

○解答用紙の作成と、配点・解答所要時間を確認する

設問に見合った解答スペースを確保し、小計欄を付すなど、テスト分析と活用に資する集

計方法を工夫します。

○採点基準を作成し、出題のねらいや解説をまとめる

採点基準を明確化し、出題のねらいを踏まえながら、生徒がどのように考えれば解答にた

どり着くことができるかを確認します。

○問題用紙や解答用紙に誤りがないかどうか点検する

必ず複数体制で点検しましょう。

★(参考資料)不祥事ゼロをめざして

神奈川県教育委員会不祥事防止職員啓発・点検資料

Vol.99「定期試験・成績処理の事故防止」

発行:令和元年6月 制作:高校教育課、行政課

テスト作成の手順(例)

定期試験・成績処理の事故防止 定期試験や成績処理に関する業務は、学校の教育活動の根幹にかかわるも

のです。一度のミスであっても、これまでに築き上げてきた生徒や保護者の

学校に対する信頼を失わせることになりかねません。評定や観点別学習状況

の評価の誤り、出欠席の記録等の誤りといった成績処理に係るミスは、生徒

の進路に大きな影響を与えてしまうことも考えられます。適正な定期試験や

成績処理の実施に向け、学校ごとの点検表等を用いて、できていない項目が

ないか確認し、適切な対応を心がけ事故を防ぎましょう。

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73

生徒の振り返りが

学びを変える

ここがポイント 学習評価と授業の振り返り

4

生徒の学びを振り返る

☆「主体的・対話的で深い

学び」の実現に向けて

1回1回の授業で全ての学

びが実現されるものではなく、

単元や題材など内容や時間の

まとまりの中で、学習を見通し

振り返る場面をどこに設定す

るかが重要です。

効果的な振り返りの活用

授業カードを使い、「ねらい」、「分かったこと」、「難しかったこと」などを書き込めるよ

うにすると、生徒は授業の振り返りがしやすくなります。

また、生徒の努力したこと・がんばったことを教員が拾い集め、

それを生徒に返すことを考えましょう。

教員の評価だけでなく、友達によるプラスの評価が生徒本人に

伝わることも、更なる意欲につながります。

6 生徒とともに振り返る

学習活動としての振り返り 本時の学習の振り返りは、生徒が自分の理解したことを整理する

ために行う学習活動です。

生徒にとって、単元(題材)ごとの学びの中で、何が分かって何が

分からないのかを自分で把握することは大切です。

教員は、生徒の振り返りから、生徒一人ひとりの分かっているこ

と、分からなかったことを分析し、今後の授業の中での工夫につなげ

る必要があります。生徒の振り返りに寄り添い、適切な言葉掛けをす

ることによって、生徒の学習に対する意欲を育てるとともに、教員自

身も成長するチャンスとなります。

次時につなげるための振り返り 生徒にとっても、授業で理解したことを確認することが必要です。

分からなかったことがあれば、復習したり、調べたり、次の時間に確

認したりする必要があるでしょう。自分のことを自分で理解するこ

とはステップアップするチャンスなのです。また、活動の振り返りに

よって、「自分の考えを発言できた」、「次回は友だちの意見を聞きた

い」といった学習態度の育成にもつながります。

振り返りはいつさせる? 学習活動として、できれば授業時間の中に位置付けたいものです。

振り返りですから、終わりの数分間をあてることが多いでしょう。し

かし、単元(題材)の最後や家庭学習で振り返りをさせることもでき

ます。学習活動のねらいに合わせて、時間を確保しましょう。

個 別 支 援

が 必 要 な

生 徒 へ の

対 応 を 考

えよう

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74

「生徒による授業評価」

神奈川県では、生徒の確かな学力を育成するため、各学校における教員の指導力の向上や授業改善を図るととも

に、生徒自らが学習への取組を見つめ直す機会とすることを目的として「生徒による授業評価」を実施しています。

この活用を図ることによって学校の実態と課題を把握し、組織的な授業改善を継続的に実践していくことが求めら

れています。

振り返りシートを活用した振り返り

<振り返りシートのねらい>

・生徒が「見通し」を持って授業に取り組み、「振り返り」を

行って、次の授業につなげる。

<活用方法>

・時間の終わりに、振り返りを記述させ、記述内容や作業の進捗状

況を確認後、次の時間の始めに返却する。

・本時の作業や、やり直しの場合は理由等を確認させる。

・同一の作業段階の生徒を集めて、作業の確認や指導をする。

実技を伴う教科での振り返り 技能の習得には毎時間の積み重ねが必要です。できたこと、でき

なかったことを整理して次のステップへ進ませ、技能の向上や作品

を完成等へ導くことが大切です。振り返りを有効に活用して、良い

ものを目指す姿勢を常に追求してほしいものです。

☆できたことを互いに認め

喜び合える関係づくり

振り返りの中で、できなか

ったことばかり考えるのでは

なく、できるようになったこ

とを共有できる仲間づくり、

雰囲気づくりを考えましょ

う。皆で伸びていくことによ

って、より学びが深くなり、

自己肯定感を高め、学習する

喜びや意欲につながっていく

でしょう。

〈例〉 「家庭科 マイ枕の製作」(15 時間扱い)

時間 作業 予定 取り組んだ 日付

振り返り 先生から

1 製作工程の全体計画 6/3

2 デザイン画作成 6/3

3 型紙作成 6/10

4 裁断・印つけ 6/17

5 仮縫い

6 本縫い

14 仕上げ

15 発表会

感想

「マイ枕」製作記録カード

授業の終わりに授

業の振り返りを記入

させる。

毎時間、進捗の確認をして押印したり、生徒の振り返り

に対してコメントを記入したりする。毎時間の確認が難

しいようであれば、作業のまとまり毎にチェックをして

もよい。

時間のかかっている生徒については作品を確認し、次

回の作業についてアドバイスを記入する。

予定の日付で進捗を確認させる。

一つの工程に時間がかかったり、やり直したり

することがあるので日付欄は2列以上設ける。

☆指導に生かす評価として

生徒の振り返りも重要

振り返りにより、生徒の進

度やつまずき、疑問点、理解

度を把握し、次時の指導にい

かしていきます。

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75

生徒の様子にヒントがある

授業観察の際には、生徒の取り組んでいるあらゆる様子から、その意味を把握しようとする

ことが重要です。寝ている生徒、ボーッとしている生徒、その場にそぐわない

発言をする生徒、おしゃべりする生徒、このような生徒はやる気のない生徒

に見えます。しかし、何故そのような行動を取るのでしょうか。分からない

と言えないために静かにしている生徒に目を向けることも授業を分析する大

切な視点です。

7 課題や改善点を整理する

評価結果を受け止めよう 生徒の提出物を評価したとき、こちらが意図したものとは違う解

答ばかりで、求めているものとは異なることがあったとします。そ

のとき、皆さんはどのように感じますか?「どうして理解してくれ

ないのだろう?」と考えたことはありませんか。

そんなときは、生徒に提出を求めた課題について客観的に考える

必要があります。課題への取組状況は、教員が実践した授業の成果

を表わしています。自分の教え方に原因があったのではないか、設

定した目標が生徒の学習状況と一致していなかったのではないか、

と振り返ることが大切です。

そして、そのような結果になった原因を探り、次には生徒の学習

状況に合った課題を用意することで、より良い授業づくりにつなが

ります。

評価結果を分析しよう より良い授業づくりのために、前述の例で考えると、「提出物に書

かれたものは、なぜ、教員が意図したものと違う解答ばかりなのか」

について分析する必要があります。

その理由として、授業が分かりにくくて理解できなかった、適切

な発問がなされなかった、学習の内容が難しくて分からなかった、

書くための時間が不十分だった、書き方が分からなかった・・・な

ど、いくつか考えられます。

生徒の実態から、原因を追求し、課題や改善点を整理しましょう。

☆評価が持つ本来の機能

評価が持つ本来の機能と

して、「学習者である生徒が

学習の到達状況を把握する

もの」、「授業者である教員

が学習指導の見直しにつな

げるもの」という二つが挙

げられます。生徒自身が自

分の学習を振り返って、何

が身に付いているか、どこ

が不十分であるかが分か

り、学習の改善に資するも

のであるということだけで

なく、教員・学校が学習指導

や教育課程の在り方を問い

直す情報として活用するこ

とを意味しています。

個 別 支 援

が 必 要 な

生 徒 へ の

対 応 を 考

えよう

改善に向けて

問題点の原因を探る

ここがポイント 授業評価と授業の振り返り

4

教員の指導を振り返る

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76

自らの指導を振り返るチャンス

ワークシートに書かれた生徒の解答を見て、「生徒への指示が適切

だったか」、「事前の指導で理解させるべきことが徹底できていたか」

などと、自分の指導をもう一度、振り返ってみましょう。

化学の授業で、実験後、このようなシートを提示し活動をさせた

ところ、生徒は様々な解答を書いていました。

観察した生成物の色や反応の様子を記述したり、観察結果を化学

反応式で説明したりと、記述の仕方がバラバラだということは、指

示の仕方を反省する必要があるということです。ワークシートにも

課題があるかもしれません。

また、生徒 C が「よく分からない」と解答した理由も考えます。

実験の内容が分からないのか、うまく観察できなかったのか、ワー

クシートの書き方が分からないのか、時間がなくて分からないと書

いたのかなど、いくつかの理由が考えられます。

これらの反省点を授業づくりにいかすようにしましょう。

〈例〉 「理科・化学」

理科・化学ワークシート

「実験で観察した化学反応についてまとめなさい。」

希塩酸を加えたら、液体が白く濁り、

試験管の底に沈殿が生じた。

生徒 A

の場合

実験で見た化学反応は

「Ag++Cl-→AgCl↓」だと思う。 生徒 B

の場合

生徒 C

の場合 よく分からない。

RPDCAサイクル①

校内授業研究などは、「PDCAサイクル」に、事前の実態把握 R:Research(調査)を加えた「RPDCAサイ

クル」に沿って推進することが求められます。校内授業研究では、「学習状況調査」、「生徒による授業評価」などを

活用して学校の実態と課題を把握し(Research)、その課題の解決に向けて研究計画を立て(Plan)、組織による授

業づくりを行い(Do)、実践した授業や研究活動を評価し(Check)、その評価結果を分析して次の授業づくりへつ

なげたり、次年度へ向けた研究活動の改善を行ったりして(Action)、更なる課題の把握(Research)に発展させま

す。(4章-8に続く)

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77

ここがポイント

8 授業実践を振り返る

1単位時間の振り返り 単元(題材)全体の計画の有用性を見極めるには、1単位時間ごと

の授業や題材のまとまりごとに、その進捗状況、そのときの生徒の反

応などを把握しておくことが大切です。その際、早急に軌道修正すべ

き点があると判断した場合には、可能な範囲で迅速に次時以降の計

画を修正する等の調整が必要となるでしょう。

単元(題材)全体の振り返り 授業は、「単元(題材)全体を見通して構想を練る」ことが大切で

あり、その全体像に基づいて、1単位時間の授業をどのように展開す

るのか、具体的な内容や方法について計画を立てて実践します。

そして授業の実施後もまた、単元(題材)全体を見渡した振り返り

を行うことが重要です。もちろん1単位時間の授業における指導内

容を振り返ることも必要ですが、単元(題材)を通して、生徒に力が

身に付いたかどうか、計画内容を見直す視点を持ちましょう。

目標は実現できましたか? 授業は事前に設定した観点別の評価規準に表れている「生徒に身

に付けさせたい力」の実現のために行っています。そこで、その時間

の計画にあたって明らかにした目標が実現できたかどうか、生徒に

対する評価を通して振り返ります。

また、授業の流れを構想した際に考えた工夫は、目標の実現にとっ

て有効だったでしょうか。生徒の学びを深めることにつながったで

しょうか。この点についても振り返り、次時にいかしましょう。

個 別 支 援

が 必 要 な

生 徒 へ の

対 応 を 考

えよう

評価規準は実現できたか

ここがポイント

キーワードは達成感

それぞれの授業を振り返る中で、評価(C)の生徒の個別の手立てを考えましょう。キーワード

は達成感。短時間でも個別に学習を見たり、穴あきプリントで書き込み式のもの

を用意したり、同じプリントをもう一度やってみたりするなど生徒と相談し

て次の時間に向けてサポートしていくと良いでしょう。

☆振り返りの方法

次の授業づくりにつなげ

るために、授業者として気付

いたことや生徒の生の声な

どの記録を残すことを心掛

けましょう。記憶の新しいう

ちに残した記録は、振り返り

の際の大切な資料になりま

す。

また、生徒が取り組んだプ

リントや振り返りシートの

記入状況なども、次の指導に

いかしていきましょう。

このような記録や資料の

活用に継続して取り組める

方法を工夫してみましょう。

さらに、必要に応じてビデ

オ撮影したり、録音したりし

て振り返ることも有効です。

学習評価と授業の振り返り

4

教員の指導を振り返る

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78

単元(題材)全体の振り返り から 1 単位時間を考える

1 単位時間の振り返りから 単元(題材)全体を見渡す

Plan

Do 指導実践

Check

Action 指導の改善

単元(題材)全体の指導

Do 授業実践 Check

授業の振り返り

Action 改善

1単位時間の授業

Plan 授業計画

振り返りの視点

目標を立てて授業を行い、授業実践を振り返り、次にいかすという

「PDCA」サイクルの「Check」の段階であることを踏まえ、次の

「Action」にいかすことを意識して振り返りましょう。

1単位時間の授業の振り返りを積み重ね、単元(題材)全体を見渡

した振り返りを行い、計画を見直していくことが重要です。

振り返りのポイント 目標が実現できたかどうかを振り返り、評価方法、学習活動、教

材・教具など、生徒の実態に合っていたかを見直していきます。

RPDCAサイクル②

(4章-7から続き)振り返りは実践した授業や研究活動を評価する活動にあたり(Check)、身に付けさせたい

力が育成されたのかを判断します。生徒のワークシートや振り返り、作品等などを資料として結果の分析を行いま

す。そして、その評価結果を分析して次の授業づくりへつなげ、次年度へ向けた研究活動の改善を行います(Action)。

各学校における育てたい生徒像を再確認し、次の取組の視点を明らかにしていきましょう。

【生徒に身に付けさせたい力と目標設定について】

□ 目標の設定は、生徒の学力・学習状況と合っていますか。

□ 目標の実現はできましたか。

【評価規準の設定と評価方法について】

□ 評価方法は妥当性・信頼性があるものでしたか。

□ 評価(C)の生徒への支援の手立ては適切でしたか。

【学習活動について】

□ 主体的な学びを促す活動でしたか。

□ 活動の時間は十分でしたか。

□ 資質・能力の育成に適した活動でしたか。

□ 発問・指示は的確にできましたか。

□ 効果的な教材・教具の活用ができましたか。

□ 個々の生徒への配慮をしましたか。

□ 学習の展開は適切なものでしたか。

振り返りのポイント

☆授業観察の視点

他の先生の授業から学ぶこ

とは多いものです。授業観察

の視点について考えます。

○生徒を見る

・生徒の視線

・生徒の主体的な活動の様子

・生徒のつぶやき、行動

・生徒のワークシートへの記入状況

・生徒のグループ学習での発言

○授業者を見る

・生徒との関わり方

・生徒の活動状況の把握

・授業者の発話、振る舞い

・板書の仕方

○授業展開を見る

・授業の流れ(時間配分)

・目標と学習活動の関連

・目標の実現状況

○学習環境を見る

・掲示物の工夫

・学習に集中させる工夫

・教材・教具の工夫

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79

ビデオカメラを用いた授業研究

教室の前方から、ビデオカメラを用いて生徒の学習の取組を録画しておき、授業研究として

ビデオを見合うことは大変効果的です。

表情や手の動きから、生徒の学びを見取ることができます。首をかしげたとき、何か言葉を

発したとき、それが何を意味するのかを検討することで、生徒にとっての授業の意味が明確に

なります。

授業研究のねらい 学習指導案を作成し授業を参観し合い、事後等に研究会を開催す

る一連の取組が授業研究です。学習指導に対する意見等を参観者か

ら得られる研究授業は、授業づくりに関する課題等を明らかにして、

その後の指導改善に役立てることができる貴重な機会です。常日頃

から指導の振り返りを行いながら授業改善に努めますが、「研究授

業」という形を取ることよって、教員同士で協力しながら客観的に問

題点の原因を探ったり、相互に改善方法の提案を試みたりすること

が可能となります。

研究授業の準備 研究授業を行う際には、授業づくりの課題を明確にすることが必

要です。そして、課題解決のためにどのような手立てを取るのか、ど

のような工夫をするのかを考えます。学習指導案を作成したり、教

材・教具を工夫したりといった様々な教材研究をすることと思いま

すが、その全てが授業研究につながり、自身の力になります。

研究授業の留意点 研究授業では、授業のポイントを参観者にあらかじめ伝えておく

ことが必要です。授業のねらい、単元(題材)目標や単元(題材)構

想、授業づくりの課題と解決に向けた工夫点等を明確に示すことで、

適切な助言がもらえます。また、記録メモの作成やビデオ撮影等によ

って、自分の授業を客観的に振り返ることができ、授業改善につなが

ります。

9 授業研究を活用する

☆教材の工夫がしたい

「研究授業のために、教

材を工夫して作成したい

けれど、学校ではつくれる

のだろうか…」

そんな声にお応えして、

総合教育センターのカリ

キュラム開発センターに

は、「教材工房」がありま

す。

ここには、教材作成に役

立つ機器(大判プリンタ、

高速カラープリンタ等)が

そろっています。

所員が教材づくりの相

談に乗ることもできます。

個 別 支 援

が 必 要 な

生 徒 へ の

対 応 を 考

えよう

ここがポイント

研究授業は授業の腕を

磨くチャンス

4

教員の指導を振り返る

授業評価と授業の振り返り

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80

校内授業研究の進め方(例)

授業テーマを明確にする

□ 育てたい生徒像は何かを明確にする。

□ 勤務校の研究主題や自己課題をふまえたより具体

的なテーマを設定する。

単元(題材)の構想を確認する

□ 生徒に身に付けさせたい力は何かを確認する。

□ 評価規準を決める。

□ 目標実現につながる学習活動を組み立てる。

学習指導案を作成する

□ 授業の展開の仕方を確認する。

□ 観点の評価規準を確認する。

□ 単元(題材)の流れを構想する。

□ 1単位時間の学習活動を明確にする。

□ 研究とのかかわりが見えるように工夫する。

参観のポイントを確認する

□ 学習活動の工夫点を示す。

□ 課題や助言が欲しい点を示す。

□ 研究授業までに、検討してほしいことや助言してほ

しいこと等を伝えておく。

授業の記録をとる 研究授業の実施

□ 発問が課題ならば発問をメモしてもらう。

□ 立つ位置や生徒とのコミュニケーションに課題が

あれば、教室全体を撮影して動きを確認する。

□ 生徒の学びの様子がつかめなければ生徒の表情を

撮影する。

研究協議会を実施する

□ 授業研究のねらいを確認する。

□ 研究授業の記録を参考に検討する。

□ 目的に応じた手法を用いて研究協議会を実施する。

授業研究をまとめる

□ 研究協議会の内容を各自の日常実践にどういかす

かということについて記録する。

勤務校の学校目標を確認します。

教員個人でなく教科や同一科目

担当者で組織的に授業づくりを

行うことにつながります。

☆研究協議会の方法☆

授業の振り返りを問題解

決型であるワークショップ

形式にするとよいでしょ

う。

ワークショップとは、参

加者が自ら参加・体験し、グ

ループの相互作用の中で討

議したり創作したりする学

びや創造のスタイルです。

参加者一人一人が互いの意

見を出し、全員で改善の方

向を導き出すので、学校に

「同僚性」を築くことがで

きます。

で 実

【参考資料】

総合教育センター刊行物

・「実感につなげよう!

今、求められる授業改善

Ver.1、Ver.2」(2019、

2020)

・「カリキュラム・マネジメ

ントを促進する協議の工

夫」(2020)

→総合教育センター刊行物の

ダウンロードは、P116へ

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5

各教科の授業

高等学校には様々な教科があり、その教

科ごとに、生徒に身に付けさせたい力が違

います。

第5章では、各教科でいま求められてい

る授業のポイントを紹介し、理解を深めて

いきます。

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83

1 国語

国語で的確に理解し、効果的に

表現する資質・能力を育成する。

ここがポイント

「言葉」にこだわる授業 言葉は、人が人として暮らすための大切な基盤の一つです。「言語

に関する能力」を高めることは、あらゆる意味で人生を豊かにする

ことにつながります。

学校教育の中で「言語に関する能力」の育成を目指し、直接かつ

計画的に指導を行うのは国語科です。その役割と責任は極めて大き

いと言えるでしょう。国語科の授業では「言葉」にこだわり、生徒

が言葉への自覚を高められるようにすることが大切です。

「そうか!分かった!」が促される授業 難解な評論文や古典・漢文を扱う授業は内容の解説に陥りがち。

教員の過度な解説は、生徒自身が「読み解く」場面を無くし、生徒

の「言語に関する能力」を育む機会を奪うことになってしまいます。

生徒がよりよく資質・能力を身に付けるためには、授業を通して

生徒自身が「考え気付く」場を提供して、生徒の「そうか!わかっ

た!」を促す工夫が必要です。例えば、生徒が自分自身で感じたり、

考えたり、表現したり、創造したりする活動を、授業に取り入れて

いくことが大切です。

「古典を学ぶ意義」に気付ける授業 文語文法の習得への偏重などによって、これまで多くの「古典嫌

い」が生まれてきました。文語文法は、あくまで古典に親しみ、古

典作品を読み味わうためのツールです。文語文法の習得が古典の学

習の目的とならないように注意が必要となります。

変化の激しい現代にあって、あえて古典教材を学ぶ意義とは何で

しょう。この意義について、生徒自身が「考え」、そして「気付く」

ことができるように促すことが重要です。そのためには、

・原文を題材とした文章(解説や評論等)を副教材として扱う。

・先人のものの見方・考え方に触れ、生徒自身の経験や考えと比

較しながら広げたり、深めたりする。

といった視点を取り入れながら授業づくりをすることが大切です。

各教科の授業 5

共通教科

☆国語科の課題

平成 28 年 12 月の中央教育

審議会答申では、国語科の課題

として次の2点が指摘されて

います。

・話合いや論述などの「話すこ

と・聞くこと」、「書くこと」の

領域の学習が十分に行われて

いない。

・古典の学習について、日本人と

して大切にしてきた言語文化

を積極的に享受して社会や自

分との関わりの中でそれらを

生かしていくという観点が弱

く、学習意欲が高まらない。

☆言葉による見方・考え方

新学習指導要領解説 国語

編では、「言葉による見方・考え

方」について次のように書かれ

ています。

・生徒が学習の中で,対象と言

葉,言葉と言葉との関係を,言

葉の意味,働き,使い方等に着

目して捉えたり問い直したり

して,言葉への自覚を高めるこ

とであると考えられる。

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84

「教科書『を』学ぶ」ではなく「教科書『で』学ぶ」 指導事項(身に付けさせたい力)が異なれば、同じ教材であっても授業の展開は変わります。大切なの

は、教科書(教材)の内容を学ぶのではなく、教科書(教材)で資質・能力の育成を図るという視点。核

となる目標を精選し、「一つの単元に一つの指導事項」を基本として授業を組み立てていきましょう。生

徒の資質・能力をよりよく育成するために最適な学習活動を考えることが授業づくりの第一歩です。

ここでは国語総合「読むこと」の指導事項イ、ウ、エを取り上げ、『羅生門』を例に学習活動例を紹介

します。

【学習活動例】『羅生門』の内容を整理し相手に伝わるように工夫をし、ネットニュースの原

稿(タイトル 20 字以内、本文 210 字以内)の体裁でまとめ直す。

作品を「要約する」活動。伝える対象を決めてその対象に適した他の媒体(新聞社説やコ

ラム、SNS 等)を選択することで、「必要に応じ」た要約方法の学習にもつながります。

イ:文章の内容を叙述に即して的確に読み取ったり,必要に応じて要約や詳述をしたり

すること。

ウ:文章に描かれた人物,情景,心情などを表現に即して読み味わうこと。

【学習活動例】『羅生門』の続きを、本文における登場人物の描かれ方に応じて書く。

作品をモチーフにして「翻案を作成する」活動。この活動のためには『羅生門』本文の表

現に即して人物像や心情を読み取ることが不可欠です。単元の初めに「よりよい続きを書く

ために、まず下人がどのような人間か考えよう」という課題を投げ掛けることで、生徒も何

を目的とした学習活動なのかが分かります。

【学習活動例】『羅生門』を本文の構成や展開、場面設定に留意しながら紙芝居にする。

作品をモチーフにして「リライトする」活動。紙芝居は、どこで場面を切り分けるかを

考える活動が中心となりますので、構成や展開を学ぶことに効果を上げます。

エ:文章の構成や展開を確かめ,内容や表現の仕方について評価したり,書き手の意図

をとらえたりすること。

※注意事項:ここで紹介した例はすべて「書く」活動ですが、「読む」力の育成を目的にしています。

この場合の学習評価は、「書くこと」ではなく「読むこと」で実施します。

<例>『羅生門』を「読むこと」の教材とする際の学習活動

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85

目標の達成に向けた

言語活動の充実を図る

ここがポイント 各教科の授業

5

共通教科

2 地理歴史・公民(1)

地理歴史科の目標 現行の学習指導要領(平成 21 年告示)における地理歴史科の目標

は次の通りです。

国際的な相互依存が進むグローバル化の流れの中で、「自ら」が国

際社会の形成者であること、平和で民主的な国家・社会を維持・発展

させることについての「日本国民」として必要な自覚と資質を養うこ

とが高等学校の地理歴史科には求められています。

資料・情報の活用と作業的・体験的学習 現行の学習指導要領では、情報の活用と作業的、体験的な学習が、

自ら考え正しく判断出来る力を育成するという観点から求められて

います。日本史・世界史では「年表、地図その他の資料」の活用や

「(地域の)文化遺産、博物館や資料館の調査、見学」が、地理では

「地図の読図や作図など(地理 A)」、「地球儀や地図の活用、観察や

調査、統計、画像、文献などの地理情報の収集、選択、処理、諸資料

の地理情報化や地図化(地理 B)」等が示されています。

言語活動の充実 現行の学習指導要領では、言語に関する能力を高めていくことが

求められています。地理歴史科においても教科の特質に応じて言語

活動の充実を図りましょう。

例えば、世界史や日本史では、生徒に主題を設定させ、資料を活用

して探求し、その成果を論述したりするなどの学習活動を積極的に

取り入れましょう。また、地理では、地図を活用して事象を説明した

り、論述したり、討論したりするなどの活動を考えていきましょう。

★資料・情報活用も言語活動の充実も、年間や単元指導計画の中で意図的・

計画的に組み込む事が重要となります。「主体的・対話的で深い学び」の実

現のため、ねらいを明確にした授業を心掛けて下さい。

☆社会的事象の地理的な見

方・考え方

新学習指導要領解説 地理歴

史編では、地理領域科目の見

方・考え方として、「社会的事象

を、位置や空間的な広がりに着

目して捉え、地域の環境条件や

地域間の結び付きなどの地域

という枠組みの中で、人間の営

みと関連付けること。」として

います。

我が国及び世界の形成の歴史的過程と生活・文化の地域的特

色についての理解と認識を深め、国際社会に主体的に生き平和

で民主的な国家・社会を形成する日本国民として必要な自覚と

資質を養う。

☆社会的事象の歴史的な見

方・考え方

新学習指導要領解説 地理歴

史編では、歴史領域科目の見

方・考え方として、「社会的事象

を、時期や推移などに着目して

捉え、類似や差異などを明確に

したり、事象同士を因果関係な

どで関連付けたりすること。」

としています。

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86

平成 30 年の学習指導要領の改訂で、公民科の必履修科目として「公共」が設定されます。「公

共」は三つの大項目から構成されていますが、二つ目の大項目は、「自立した主体としてよりよ

い社会の形成に参画する私たち」となっており、「法」「政治」「経済」に関わる事項から 13 の主

題が示されました。

ここでは幸福、正義、公正に着目し、他者と協働しながら主題を追究したり解決したりする学

習活動が求められています。その際、主題から生徒の学習意欲を高める具体的な「問い」を立て

ることも求められています。また、選挙権年齢の引き下げや、2022 年度に実施される成年年齢

の 18 歳への引き下げを念頭に「多様な契約及び消費者の権利と責任」「政治参加と公正な世論の

形成,地方自治」等の学習活動を展開することが求められます。

公民科の目標 公民科の目標は、「広い視野に立って、現代の社会について主体的

に考察させ、理解を深めさせるとともに、人間としての在り方生き方

についての自覚を育て、平和で民主的な国家・社会の有為な形成者と

して必要な公民としての資質を養う」です。

「公民としての資質」とは、教育基本法第 1 条にある「平和で民

主的な国家及び社会の形成者として必要な資質」であり、国民として

備えるべき資質です。このように、公民科の目標は、「教育の目的」

(教育基本法第 1 条)を実現することなのですから、公民科の教員

として、重要な責務があることを、改めて自覚しましょう。

道徳教育と公民科 新学習指導要領解説 総則編には「道徳教育は、豊かな心をもち、

人間としての在り方生き方の自覚を促し、道徳性を育成することを

ねらいとする教育活動」とあります。「現代社会」及び「倫理」の目

標には「人間としての在り方生き方」を掲げており、公民科は道徳教

育の中核的な指導の場面として重視されています。

生きる主体としての自己を確立し、自らの人生観や世界観・価値観

を形成し主体性をもって生きる人間としての在り方生き方について

の自覚を深めるための指導が必要となります。

他教科・科目や中学校との関連について 公民科の中でも特に現代社会は、他教科・科目との関連の重要性に

留意してください。地理歴史科とは言うまでもありませんが、例え

ば、家庭科とは消費活動や生涯設計について、情報科とは情報社会に

おける法と個人の責任について、などが挙げられます。

さらに、中学校社会科との関連については、内容項目だけではなく

課題解決学習や作業的、体験的学習の成果を生かすことを意識しま

しょう。

☆教育基本法第 1条

「教育は、人格の完成を目指し、

平和で民主的な国家及び社会の

形成者として必要な資質を備え

た心身ともに健康な国民の育成

を期して行われなければならな

い。」

☆人間と社会の在り方につい

ての見方・考え方

新学習指導要領解説 公民編で

は、「公共」の見方・考え方として、

「社会的事象等を、倫理、政治、

法、経済などに関わる多様な視点

(概念や理論など)に着目して捉

え、よりよい社会の構築や人間と

しての在り方生き方についての

自覚を深めることに向けて、課題

解決のための選択・判断に資する

概念や理論などと関連付けるこ

と。」としています。

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87

「基軸となる問い」

を立ててみよう

ここがポイント

神奈川県高等学校教育課程研究会研究推進委員会の地理歴史及び公民部門では、「基軸となる

問い」を意識した授業研究を行っています。「基軸となる問い」とは、①事象の理解を促す学習内

容を持つ、鍵となる概念を持つ「問い」②深い思考や新しい理解を促し考察が持続する、学ぶ価

値のある「問い」③特定の単元を超えた比較や関連付けが可能である、転移を促す「問い」と位

置づけ、単元全体を貫く「問い」を意味します。単元を貫く「問い」とあわせて、本時の「問い」

や、授業内の「問い」も構想していきます。

「問い」は重層的な役割を持ち、単一の「問い」で完結するものではなく、いくつかの小さな

「問い」を考察して、順次深める事が出来るような階層構造を持ちます。当然ですが、「問い」を

構想する作業とともに学習過程や評価規準を検討していくことになります。

「問い」に関しては、新学習指導要領解説地理歴史編には「生徒や学校の実態を踏まえて適切

な『主題』とそれに応じた『問い』を立て」とあり、新学習指導要領解説公民編「公共」には「現

代の諸課題を取り上げ,主題や問いを設け,考察,構想する」とあります。「問い」の具体例も新学

習指導要領解説に例示されています。

ここでは歴史総合の課題(問い)設定例と地理 B の「授業のシナリオ」を例示します。

3 地理歴史・公民(2)

【歴史総合】B 近代化と私たち (2)結び付く世界と日本の開国

イ(イ)産業革命の影響,中国の開港と日本の開国の背景とその影響

主題の設定:学習上の課題(小項目全体に関わる問い)として設定

☞「イギリスに始まる産業革命は,世界各地の社会や経済をどのように変えたのだろうか。

また,その変化は,アジア諸国と欧米諸国の関係をどのように変えたのだろうか」

☟工業化と世界市場の形成を理解する学習

・中国の開港と日本の開国について「問い」を設定

推移や展開を考察するための「問い」

☞「欧米は,なぜ中国の開港,日本の開国を求めたのだろうか」

☞「中国や日本は,その後,貿易の拡大にそれぞれどう対応したのだろうか」 ☟資料活用等を通じて欧米諸国のアジア進出のねらいや背景を読み取り、

中国や日本の対応や開港・開国の影響を考察し、理解する学習

事象を比較し関連付けて考察するための「問い」

☞「あなたは、中国の開港と日本の開国が国際社会に与えた影響のうち,注目すべき点は何だ

と考えるか,それはなぜか」 ☟アジアと欧米諸国との貿易や、アジア各地域間の貿易の

変化や課題を多面的・多角的に考察し、表現する学習

(引用:高等学校学習指導要領解説 地理歴史編 平成 30 年 7 月(一部編集))

「基軸となる問い」からの授業改善

5

各教科の授業

共通教科

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88

授業のシナリオ(地理 B)

(参考:平成 26年度高等学校教育課程研究集録【地理歴史】神奈川県教育委員会)

単元名:東南アジアの生活・文化

ねらい

基軸となる「問い」

「問い」が持つ意味

学習過程

1時間目

2時間目

3時間目

東南アジアの成長を、東南アジア産業(農業・工業・観光)・自然環境・文化(宗教・

言語・民族)・歴史的背景を地図(分布図等も含む)、写真、グラフなどの資料を活用

して考察させる。

「今、東南アジアの成長が世界から注目されているのはなぜか?」

→時代の流れを活かした成長が続いている。

【鍵となる概念】「ASEAN」「植民地」「中国の影響」

【学ぶ価値がある】「国際協調」「国際理解」「エスニシティ」

【転移を促す】「東南アジアと日本の関係性」「他地域との比較」

「本時の問い:東南アジアの地理的特徴は何だろうか」

・地図を利用して東南アジアの半島部と島嶼部の自然環境を気候・植生と関連させ

てそれぞれ理解する。

・東南アジア諸国の位置関係を地図で確認をし、民族構成の分布を統計資料で整理

する。

・地図とグラフを利用して各宗教の地理的分布を自然環境と歴史的背景を関連させ

て理解する。

・「華人」「華僑」と東南アジアの関係を代表的な事例を用いて理解する。

(例:マレーシアのブミプトラ政策)

【半島部と島嶼部で自然環境が異なり、また多種多様な民族が共生している。】

「本時の問い:プランテーション農業が東南アジアに与えた影響は何だろうか」

・伝統的農業として自給的稲作や焼畑が中心であることを写真資料で理解する。

・植民地時代に定着したプランテーション農業による農業の変化(栽培作物・生産

量)を整理する。

・近年における農業の変化を代表的な事例を用いて理解する。

(例:ベトナムのコーヒー生産)

【自給的農業しか行っていなかった地域が植民地政策のプランテーションで変化

し、独立後にはプランテーション農業を基盤として世界的ニーズに合わせた商品作

物の生産に発展している。】

「本時の問い:東南アジアの工業はなぜ急成長を遂げたのか」

・ASEAN結成以後の輸出品の変化を近隣諸国の需給と関連させて整理する。

・東南アジア諸国における工業の発展と、それに伴う経済格差を理解する。

・東南アジア諸国の経済的な結び付きを歴史的背景を踏まえて理解する。

【急成長の原因が、自国の努力以外に新しいフロンティアを求めた先進国による資

本や技術を取り入れなど「グローバル化」の流れが関係している。】

【研究推進委員による「基軸となる問い」に関する成果と課題】

①教員が単元全体を常に意識して授業をするだけでなく、生徒も単元全体を常に意識して学習できることから、

「基軸となる問い」は、「教員にとって指導の軸、生徒にとって学習の軸」になり得ること。

②該当単元のスタンダード化が促される効果があること。また、「基軸となる問い」の作成を通して、

内容の精選(考察するための基礎知識の精選)が図られるということ。

③「基軸となる問い」は、教科の専門家による吟味を経なければ立てるのは困難であるということ。

また、答えを意識して問いを立てる方が、より実用的な問いになること。

★学び続ける教員であるため、そして何より生徒の学びのため、「問い」を磨き続け、力量向上に努めましょう。

→ダウンロードは、P115 へ

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89

習得と活用のバランス

を意識した授業を

ここがポイント 各教科の授業

5

共通教科

☆高等学校数学の目標

「数学的活動を通して、数学

における基本的な概念や原理・

法則の体系的な理解を深め、事

象を数学的に考察し表現する

能力を高め、創造性の基礎を培

うとともに、数学のよさを認識

し、それらを積極的に活用して

数学的論拠に基づいて判断す

る態度を育てる。」

☆数学的活動

事象を数理的に捉え、数学の

問題を見いだし、問題を自立

的、協働的に解決する過程を遂

行することです。これは、「数学

学習に関わる目的意識をもっ

た主体的活動」であるとする従

来の意味をより明確にしたも

のです。

☆数学的な見方・考え方

数学的に考える資質・能力を

支え、方向付けるものであり、

数学の学習が創造的に行われ

るために欠かせないものです。

「事象を、数量や図形及びそれ

らの関係などに着目して捉え、

論理的、統合的・発展的、体系

的に考えること」として整理す

ることができます。

4 数学

どのような力を生徒に育成するのか 数学教育では、自ら学び自ら考える力などの「生きる力」の礎となる

ために、「学力の 3 要素」に対応した

① 数学に関する基礎的・基本的な概念・原理・法則の理解と技能

② 数学的に考察し、表現する能力

③ 数学のよさを認識し、数学を活用して考え、判断する態度

を、日々の授業において育成することが特に大切です。

これらの力を育成するためには、数学科の目標にある「数学的活動」

をより一層充実させることが求められます。

数学的活動とは 数学の学習では、数学的に問題発見・解決する過程を学習過程に反映

させることが重要です。「数学的な見方・考え方」を働かせながら、知識

及び技能を習得したり、それらを活用して探究したりすることにより、

複雑な事象の問題を解決するための思考力、判断力、表現力等や、自ら

の学びを振り返って次の学びに向かおうとする力などが育成されます。

数学的活動は、主として二つの過程を考えることができます。一つは、

日常生活や社会の事象などを数理的に捉え、数学的に表現・処理し、問

題を解決し、解決過程を振り返り得られた結果の意味を考察する過程で

あり、もう一つは、数学の事象から問題を見いだし、数学的な推論など

によって問題を解決し、解決の過程や結果を振り返って統合的・発展的、

体系的に考察する過程です。

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90

数学的活動の充実 ~目標達成の姿を生み出す活動へ~

○ 一斉授業において

「整数 n の平方が3の倍数ならば、nは3の倍数であることを証明せよ。」という数学的に表現された問題

を、日常生活に関連させ、予想させる問いかけに変えました。予想することで、興味がかき立てられ、理由

を考えようとします。なぜ?という気持ちから課題意識が高まり、それが主体的な活動につながります。

〈授業づくりの工夫〉

「問題の解答を板書させ、どのように考えて解いたかを説明させたり、どのようにすればよりよい表現に

なるかを考えさせたりする活動」や「生徒の誤りや疑問を積極的に取り上げ、それを解決することを通して

理解を深める活動」は、思考力や表現力を高め、学びを深める指導として有効です。

また、なるべく多くの生徒に発言させたいときには、黒板に考えだけを書かせておき、あえて板書した生

徒には説明させず、他の生徒に説明させます。「友達の考えを読み取る」活動で、話合いを豊かにするために

も有効な方法です。

○ グループ学習において

身の周りの課題について、条件(お好み焼きの値段と販売個数の関係)を設定

しながら考察し解決する過程を通して、二次関数の有用性を認識することができ

ます。また、下の問題のように、解決の過程を振り返ってよりよい解決の方法を

考えたり,更に課題を発展させたりすることは、内容の理解を深め、思考力や表現力を高めることにつながります。

〈授業づくりの工夫〉

問題 正方形の床に正方形のタイルを敷きつめたところ、使ったタイルの枚数は 3の倍数でした。このとき、床の一辺のタイルの枚数は、何の倍数になるか 予想してみましょう。

事象を命題として表現し、考察

することができる。

目標達成の姿

① 個人で考える活動 思考力を高めるには、一方的に説明を聞くだけではなく、自ら考える活動が大切で

す。まずは、自分の考えや意見をしっかりと持たせます。

② 個人で考えたことを書く活動

表現力を高めるには、思考したことを整理しまとめる(書く)という表現活動が大切です。あとで、「ここまで考えることができた」と振り返ることができるように、考えたことも記録させます。

③ 多様に考える活動

(グループ活動)

思考力や表現力に関わる態度を育てるには、多様な解法が考えられる問題を与え、「別の解法はないか?」「条件を変えてみたらどうか?」といった投げ掛けを、最初は教員が意図的に行うことが大切です。生徒自身が推論する活動を行い、自らに問い掛けるようになれば、「多様に考える態度」が育まれたといえます。 ※ 推論する活動・・・帰納的・類推的・演繹的に推論しながら問題を解く活動を取

り入れて、数学的な考え方を高めることはとても大切です。

思考力と表現力には密接な関係があります。自分の考えを他の人に分かりやすく説明したり、他の人の考えを評価したりする活動は、自分の考えを深めます。

また、他の人と考えを伝え合う活動は、新しい考えに出会う機会となり、自らの考えにいかすことで、自分の考えや集団の考えを発展させます。

自己の成長を実感させるためには、数学的活動を振り返らせることが大切です。どの考えが役立ち、自分の数学的な見方や考え方がどのように変わってきたのか自己評価させることで、自分の理解度が明確になり、学習の定着にもつながります。

④ 振り返り

二次関数を用いて数量の変化

を表現することの有用性を認

識し、それらを具体的な事象の

考察に活用しようと、自ら課題

意識を持って取り組んでいる。

問題 文化祭でお好み焼きの模擬店を開き、利益を寄付することになりました。 利益が最大となるように販売する値段を決定したいと思います。どのよう に値段を決定すればよいか考えてみましょう。

問題 お好み焼きの値段と販売個数の関係について、どのように設定するとより現実的になるでしょうか。 グループで考えてみましょう。 (例)材料費や光熱費といった必要経費を考慮する など。

目標達成の姿

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91

「なぜ?」をいかして

考えさせる授業を

各教科の授業

5

共通教科

ここがポイント

5 理科

☆理数探究

各学科に共通する教科「理

数」では、探究すること(プロ

セス)を重視しており、失敗し

てもその原因について考えた

り、再チャレンジしたりする

資質・能力の育成を重視して

います。「新学習指導要領解説

各学科に共通する教科 理数

編」(38~43ページ)の「探究

的な学習の指導のポイント」

は理科の授業や総合的な探究

の時間の指導にも生かせる内

容となっています。

「探究の過程」を意識する 科学は、自然の事物・現象に対する気付きから仮説を設定し、観

察・実験により仮説の妥当性を検証することを繰り返して体系化さ

れてきた学問です。授業の学習過程でも、課題の把握(発見)、課題

の探究(追究)、課題の解決という「探究の過程」を意識した学習活

動を行い、生徒が主体的に全体像の追求を遂行できるようになるこ

とを目指しましょう。その際、授業においては、次の例のように、「探

究の過程」の一部を取り扱うことも可能です。

例1)プラスチックの種類を決定するための実験を計画する

「科学と人間生活」において、プラスチックの種類についての知識

を学んだあとで、種類の分からないプラスチック片について、どの

ような実験を行えば種類が特定できるかを考える。

例2)DNAが遺伝子の本体であることを実験結果から説明する

「生物基礎」において、実験方法とその結果をまとめた資料をもと

に、結果を分析・解釈し、他者に説明する。

理科の「見方」 理科における「見方」については、理科を構成する領域ごとに特徴

的な視点があります。

領域 特徴的な見方(高等学校)

エ ネ ル

ギー

自然の事物・現象を「見える(可視)~見えない(不可

視)レベル」において、主として量的・関係的な視点で

捉えるとともに、より包括的・高次的に捉える。

粒子 自然の事物・現象を「物質レベル」において、主として

質的・実体的な視点で捉えるとともに、より包括的・高

次的に捉える。

生命 生命に関する自然の事物・現象を「分子~細胞~個体~

生態系レベル」において、主として多様性と共通性の視

点で捉える。

地球 地球や宇宙に関する自然の事物・現象を「身のまわり(見

える)~地球(地球周辺)~宇宙レベル」において、主

として時間的・空間的な視点で捉える。

※特徴的な視点は領域固有のものではなく、これら以外にも、定性と

定量、全体と部分、構造とはたらきなどもあることに注意する。

☆小学校・中学校理科と高

等学校理科との対応

小学校・中学校理科と高等

学校理科の内容の対応は、

「エネルギー」と「物理」、

「粒子」と「化学」、「生命」

と「生物」、「地球」と「地

学」となっています。「新学

習指導要領解説 理科編 理

数編」(15~18ページ)に記

載されている、内容の構成表

を参考にしてください。

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92

分野ごとの授業づくりのアドバイス

物理、化学、生物、地学、各分野別の授業づくりのワンポイントア

ドバイスは次のとおりです。

朝永 振一郎の言葉

(物理学者。1965 年にノーベル物

理学賞を受賞。)

「ふしぎだと思うこと

これが科学の芽です。

よく観察してたしかめ

そして考えること

これが科学の茎です。

そうして最後になぞがとける

これが科学の花です。」

☆理科を学ぶことの意義付け

平成30年に実施した全国学力・

学習状況調査(中学3年生対象)に

おいて、「理科の授業で学習したこ

とは,将来,社会に出たときに役に

立つと思いますか」の問いに肯定

的な回答が56.1%、「将来,理科や

科学技術に関係する職業に就きた

いと思いますか」の問いに肯定的

な回答が22.8%という結果になっ

ています。理科の授業の中におい

て、理科を学ぶことの有用性及び

実社会・実生活との関連を意識す

ることが求められています。

物理分野

物理の学習で大切なことは、まず現象を詳しく観察し、よく

似た現象はないか、どのような原理・法則が働いているのかを

考えさせます。次に現象を単純化したモデルを構成させ、図で

表せるようにします。その後で現象を方程式で表し、それを数

学的に解きます。「実際には解かないで解の性質を知る方法が

あるとき私は方程式の意味を理解する。」(ディラック)

化学分野 理科の観察・実験は、安全に配慮して行ってください。化学

実験で扱う器具の操作方法、薬品の取り扱い方については、必

ず予備実験を行って確認し、生徒の動きを想定して準備をす

ることが大切です。日頃から安全への意識を高めるような指

導を心掛けましょう。また、物質やその変化の内容を扱うとき

は生徒にとって身近な例を挙げるなどして日常生活との関連

を図るとよいでしょう。

生物分野 生徒の自然体験は一人ひとり大きく異なり、最近は生き物に

触れたことの少ない生徒が多くなっています。授業で扱う生き

物は実物、映像、写真等を用いたり、身近にいる生物の紹介を

したりするなど生徒が実感できるようにしましょう。また、授

業で取り扱う内容は単元ごとに別々に途切れているわけでは

なく、それぞれ互いに密接な関係を持っています。全ての内容

が互いに結び付くような授業の展開を心掛けましょう。

地学分野 地学で扱う題材は、時間経過や空間の広がりが、我々の人生

から比べると雄大なものが多いです。地学的な事象を実感す

るためには、現実に起きている気象、地震・火山・天体現象を

扱ったり、コンピューターシミュレーション等を行うとよい

でしょう。

また、岩石などは実物に触れるようにすると、理解が深まり

ます。ただし、屋外での実習を行う前には、現場の安全性を十

分確認しましょう。

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93

「知識と技能」

を関連させて学習させる

ここがポイント 各教科の授業

5

共通教科

6 保健体育

(1) 運動の合理的、計画的な実践を通して、運動の楽しさや喜び

を深く味わい、生涯にわたって運動を豊かに継続することができ

るようにするため、運動の多様性や体力の必要性について理解す

るとともに、それらの技能を身に付けるようにする。

(2) 生涯にわたって運動を豊かに継続するための課題を発見し、

合理的、計画的な解決に向けて思考し判断するとともに、自己や

仲間の考えたことを他者に伝える力を養う。

(3) 運動における競争や協働の経験を通して、公正に取り組む、

互いに協力する、自己の責任を果たす、参画する、一人一人の違

いを大切にしようとするなどの意欲を育てるとともに、健康・安

全を確保して、生涯にわたって継続して運動に親しむ態度を養

う。

保健の目標

(1) 個人及び社会生活における健康・安全について理解を深める

とともに、技能を身に付けるようにする。

(2) 健康についての自他や社会の課題を発見し、合理的、計画的

な解決に向けて思考し判断するとともに、目的や状況に応じて他

者に伝える力を養う。

(3) 生涯を通じて自他の健康の保持増進やそれを支える環境づく

りを目指し、明るく豊かで活力ある生活を営む態度を養う。

「生涯を通じて自らの健康や環境を適切に管理し、改善していくための資質・能力の育成」

高等学校では、体育の見方・考え方を働かせ、課題を発見し、合理的、

計画的な解決に向けた学習過程を通して、心と体を一体として捉え、生

涯にわたって豊かなスポーツライフを継続するとともに、自己の状況に

応じて体力の向上を図るための資質・能力を次のとおり育成することを

目指す。

☆保健体育科の目標とは

保健体育科の目標は、体育

や保健の見方・考え方を働か

せ、課題を発見し、合理的、計

画的な解決に向けた学習過程

を通して、心と体を一体とし

て捉え、生涯にわたって心身

の健康を保持増進し豊かなス

ポーツライフを継続するため

の資質・能力を次のとおり育

成することを目指す。

(1)各種の運動の特性に応

じた技能等及び社会生活にお

ける健康・安全について理解

するとともに、技能を身に付

けるようにする。

(2)運動や健康についての

自他や社会の課題を発見し、

合理的、計画的な解決に向け

て思考し判断するとともに、

他者に伝える力を養う。

(3)生涯にわたって継続し

て運動に親しむとともに健康

の保持増進と体力の向上を目

指し、明るく豊かで活力ある

生活を営む態度を養う。

体育の目標 「生涯にわたる豊かなスポーツライフの継続」「体力の向上を図るための資質・能力の育成」

高等学校では、保健の見方・考え方を働かせ、合理的、計画的な解

決に向けた学習過程を通して、生涯を通じて人々が自らの健康や環境

を適切に管理し、改善していくための資質・能力を次のとおり育成す

る。

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94

1 授業の構想

まず、学習指導要領解説で、指導内容・例示を確認し、生徒の実態を踏まえ単元の学習内容を決定します。

そして、より具体的な学習内容や学習活動を構想します。

2 学習内容(生徒に身に付けさせたい力)の例

3 授業展開例

学習活動1 発問による生徒との応答(生徒の気付きを促す活動)

発問「右図のような守備のケースでは、レシーバー(後衛)の2人は、どこをカバーすればよいでしょうか?」

ボールが飛んでくる可能性が高い(低い)コースを理解する。

※ アタックの位置を変えて発問する。

学習活動2 学習活動1で学んだ知識を生かしたチームでの練習

ブロック アタック

レシーバー

の2人

体育の授業を構想する!~「知識及び技能」の例~ ここでは、入学年次の球技(ネット型バレーボール)の「知識及び技能」に

ついて、ボールを持たないときの動きである「空いている場所のカバー」に着

目した授業構想について紹介します。

「わかってできる」授業づくりを目指しましょう。

「知識及び技能」、「思考力、判断力、表現力等」や「学びに向かう力、人間性等」を各領域で学ぶことができるように指導内容を学習指導要領解説で確認しましょう。

体育学習ハンドブック(平成 25 年 3 月体育センター)、保健学習ハンドブック〈改訂版〉(平成 24 年 3 月体育センター)も

参考にしてください。

【知識】(解説例示)

球技の各型の各種目において用いられる技術や戦術、作戦には名称があり、それらを身に付けるため

のポイントがあること。

→(具体的内容)ラリーの中では、味方の動きに合わせてコート上の空いている場所をカバーするこ

とが必要であることを理解し、相手のスパイクに対し前衛がブロックに跳んだ場合、ボールの飛ん

でくる可能性が高い(低い)場所を理解すること。

【技能】(解説例示)

ラリーの中で、味方の動きに合わせてコート上の空いている場所をカバーすること。

→(具体的内容)相手のスパイクに対し前衛がブロックに跳んだら、残りのメンバー(後衛)で、ボ

ールの飛んでくる可能性が高い場所を優先的にカバーすること。

※ 関連させて指導する内容

(解説例示)ネット付近でボールの侵入を防いだり、打ち返したりすること。・・・ブロック

学習課題 「空いている場所のカバー」

ブロック アタック

・このケースでは、ブロッカーの後ろ(扇形)には、ボールが飛

んでくる可能性が低いと考え、それ以外の場所を2人でカバー

する練習を行う。

・<教員>「ブロックの横からボールが見える位置で守ろう!」

・コーチ役の生徒は、空いている場所をカバーできているかチェ

ックし、その都度フィードバックする。

・アタックの場所を変えて練習をする。

・アタックが難しい場合、投げてもよい。

コーチ役

カバーすべき場所が わかる

空いている場所をカバー できる

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95

☆高等学校芸術科の

「見方・考え方」 新学習指導要領解説 芸術編より

音楽的な見方・考え方(音楽)

感性を働かせ,音や音楽を、

音楽を形づくっている要素と

その働きの視点で捉え,自己

のイメージや感情,芸術とし

ての音楽の文化的・歴史的背

景などと関連付けること。

造形的な見方・考え方(美術・工芸)

感性や美的感覚,想像力を働

かせ,対象や事象を,造形的な

視点で捉え,自分としての意

味や価値をつくりだすこと。

書に関する見方・考え方(書道)

感性を働かせ,書を,書を構

成する要素やそれらが相互に

関連する働きの視点で捉え,

書かれた言葉,歴史的背景,

生活や社会,諸文化などとの

関わりから,意味や価値を見

いだすこと。

芸術の本質に迫る

授業づくりを目指して

ここがポイント

7 芸術

あなたにとっての芸術とは 好きな(影響を受けた)作家(作曲家、画家、書家等)は誰ですか?

心を揺さぶられた作品(芸術的体験)はどのようなものですか?

生徒にとって芸術科の教員は、最も身近な芸術家であるとともに、味わ

い方の伝道者でもあります。日常的に、芸術を愛好し芸術文化を尊重して

いる教員の姿から、生徒たちは何かを感じています。

生徒には、どのような姿に育ってほしいですか?

A さん:「ここに『f』と書いてあります。『フォルテは強く』

だから、ここは強く演奏します。」

B さん:「何か書いてあると、いつも雰囲気が変わるなぁ。

この『f』の意味は何だろう?」どのような音色、

大きさ、形になるように歌おうか…」

芸術科が大切にしたいこと 高等学校芸術科では、芸術文化に対する理解を深め、愛着を持つととも

に、一人ひとりがそれぞれの興味・関心や個性をいかし、感性を高め、芸術

と幅広く、かつ、多様な観点から主体的に関わっていくことが重要です。

学校を卒業した後も、社会とのつながりの中で芸術を愛好し、生涯にわた

り豊かな情操を持ち、芸術文化を尊重する態度の育成を目指していくこ

とが大切です。

「見方・考え方」と「感性」

芸術科における「見方・考え方」の重要な点は、知性と感性を相互に働か

せて対象や事象を捉えることです。

知性だけでは捉えられないことを、身体を通して、知性と感性を融合させ

ながら捉えていくこと、客観的事実と感情とを往還させて考えることは、他

教科等以上に芸術科が担っている学びです。また、多様性の包容、柔軟な発

想や他者との協働、自己表現とともに自己を形成していくことなども含ま

れており、そこにも、芸術を学ぶ意義や必要性があります。

また、特に重要な「感性」の働きは、感じるという受動的な面だけではあ

りません。感じ取って自己を形成していくこと、新しい意味や価値を創造し

ていくことなども含めて「感性」の働きです。また、「感性」は知性と一体

化して創造性の根幹をなすものです。芸術科は、子どもたちの創造性を育む

上で大切な役割を担っているのです。

保健学習ハンドブック(平成 25 年 3 月)神奈川県立体育センター 各教科の授業

5

共通教科

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96

美術科の授業例 美術Ⅰ「A表現(1)絵画・彫刻」、「B鑑賞」の授業例 〈題材名〉 心の形(石彫)

〈題材の目標〉

「心の形」というテーマを基に、自己の内面を深く見つめ、主題を生成し、造形的な効果をいかし創造的

に表現するとともに、他の生徒の作品から作者の心情や意図と創造的な表現の工夫などを感じ取り味わう。

自分が表したい主題を明確にもち、イメージを具現化することを重視して表現します。また、他者から承

認される鑑賞の活動を行うことにより、自己肯定感を高めます。

表現と鑑賞の活動を通して、美しいものやより良いものを求めていこうとする豊かな情操を養います。

美術・工芸の授業のコツ

①教材研究は必須 事前に自身で制作や鑑賞をする

ことで指導のポイントを確認で

き、ワークシートやプリント等も

作りやすくなります。

②安全指導は確実に 美術・工芸の道具や材料には危

険なものが沢山あります。使い方、

特性をきちんと伝えて事故や怪我

を防ぎましょう。

③作品を展示する 美しく飾られた作品を見ると生

徒は達成感を得ることができ、

自己肯定感が育まれます。

①教材研究は必須 試奏や聴き比べから、特徴や扱

う要素を整理しておくだけでな

く、楽譜のある楽曲は音符にとど

まらず、“楽譜”を読みましょう。

②安全指導は確実に 楽器等の正しい持ち方・構え方

の指導や、生徒の動線も意識した

座席等の配置の工夫、配線を伝え

る等、事故や怪我を防ぎましょう。

③拍手される機会を設ける 記憶に残る音楽体験の機会を計

画し、他者を尊重しながら自己肯

定感が高まるよう努めましょう。

【関心・意欲・態度】 主体的に学習に取り組む態度

自己の内面を見つめて、主体的に表現活動や鑑賞の創造活動に取り組めるよう、授

業の導入や展開を工夫しましょう。

【発想や構想の能力】 思考力・判断力・表現力 アイデアスケッチや言葉により、思いや考えを整理させ、自分が表したい主題を生成

させることが重要です。また、石の特性の理解、単純化や強調など、主題を表現するた

めの構想を練るよう、指導しましょう。

【創造的な技能】 知識及び技能

「心のこもっていない、何を表現したいのか分からない作品」には感動が伴いませ

ん。自分が表したいイメージを具現化させるために、本当にこの形で良いのかと主題を

追求させましょう。道具の特性の理解も大切です。

【鑑賞の能力】 思考力・判断力・表現力 知識及び技能 鑑賞も創造活動です。作品に対して、自分としての意味や価値をつくりだすよう指導

しましょう。また、根拠を持って互いに批評し合う活動を通して、自他の特性や個性に

ついて理解を深めさせるよう配慮しましょう。

石 材

ヤスリで成形

完 成

音 楽 の授業のコツ 書 道 の授業のコツ

①教材研究は必須 書道は「伝統と進取」の科目。

古典書跡・書風への正しい理解と

いう「土台」があって、はじめて

生徒の創造性は育まれます。

②安全指導は確実に 篆刻をする際には印刀や鑿(の

み)、彫刻刀など刃物を使います。

使い方や片付け方の指導は徹底

し、事故を未然に防ぎましょう。

③「書」を活用する 掲示物等、校内で実用可能な作

品の制作によって、学習への主体

性と自己肯定感が育まれます。

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97

5

共通教科

各教科の授業

授業を「実際のコミュニケー

ションの場」にする

ここがポイント

8 外国語(英語)

コミュニケーションを図る資質・能力の育成 新学習指導要領では外国語科の目標を、「外国語による聞くこと、読む

こと、話すこと、書くことの言語活動及びこれらを結び付けた統合的な言

語活動を通して、情報や考えなどを的確に理解したり適切に表現したり

伝え合ったりするコミュニケーションを図る資質・能力を育成すること」

としています。語彙や文法などの知識を、目的や場面、状況などに応じて

適切に活用できる技能を身に付け(知識及び技能)、聞いたり読んだりし

たことを的確に理解したり、それを活用して適切に表現したり伝え合っ

たりすることができる力を養うことで(思考力、判断力、表現力等)、相

手に配慮しながら、主体的・自律的にコミュニケーションを図ろうとする

態度(学びに向かう力、人間性等)を養うことを目指します。

英語を使って言語活動を 英語を「読む」とはどういうことでしょうか。単に英語を日本語に置き

換えるだけでは、必ずしも「英語を読んでいる」とは言えません。同様に、

英語を「話す/書く」とは、単に英語を書いたり英語が口から出てくるこ

とではなく、「英語を使ってメッセージを伝える」ことです。言語形式だ

けに目を向けるのではなく、適切な支援を行った上で、英語を使って内容

を理解したりメッセージを伝え合ったりする活動ができているか(右ペ

ージに「授業中の活動の例」があります)、また、生徒の思考・判断・表

現を促す場面を授業の中で設定できているか、常に意識するようにしま

しょう。

発信力の強化のために 適切なコミュニケーションのためには、「聞いたことや読んだことを理

解する力」と、「考えや気持ちを適切に話したり書いたりする力」の両方

が必要です。その育成のためには、それぞれに指導すべき事項があること

に留意しましょう。特に「話すこと」、「書くこと」の指導に当たっては、

使用する語句や文、具体例を十分に示した上で、生徒がそれらを参考にし

ながら自分で表現できるようにするなど、生徒の実態に応じた適切な支

援を行うことが求められます。

☆文法はコミュニケーショ

ンを支えるもの

文法を指導する際には、用

法などの説明や形式的な問題

演習に終始することなく、使

用場面をイメージした言語活

動の機会を設定し、実際のコ

ミュニケーションにおいて活

用できるようにすることを目

指しましょう。

☆複数の領域を結び付けて

新学習指導要領においては、

国際的な基準である CEFR を参

考に、五つの領域(聞くこと、

読むこと、話すこと[やり取

り]、話すこと[発表]、書くこ

と)別に目標が設定されていま

す。また、それぞれの領域にお

いて、他の複数の領域と結び付

けた統合的な言語活動例(聞き

取った内容を話したり書いた

りして伝え合う、など)が示さ

れているのも大きな特徴です。

☆中学校との接続を

中学校の学習指導要領を踏

まえ、言語活動を行う際は、

既習の語句や文構造、文法事

項などの学習内容を必要に応

じて振り返り、定着を図るこ

とが必要です。

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98

*<参考資料> Paul Nation (2013) What Should Every EFL Teacher Know? Compass Publishing

Speaking

(やり取り)

思考力・判断力・表現力等を育む授業づくり

○それぞれの活動が、目標(年間、単元)とつながっているかを意識する。

○指導と評価(筆記テスト、パフォーマンステスト、評定など)の一体化について、教科で共通理解を持つ。

○「意味」にフォーカスしたインプットとアウトプット(meaning-focused input[MFI]/output[MFO]*)を

行う。※英語を使って内容を理解したり、メッセージを伝え合ったりする活動【「授業中の活動の例」参照】

○「教科書の世界」と「生徒の世界」を結び付けた活動を取り入れる。

Picture Description [MFO]

会話フレームを使って、教科書の写真を見て読み取れる情報をペア

で伝え合う

New Vocabulary

新出語句の確認をペアで行う

Key Words [MFO]

提示されたキーワードを参考に、会話フレームを使ってペアで本時の内

容について推測し、話す

Listening Comprehension [MFI/MFO]

1回目はトピック(主題)など、あらかじめ提示された概要を聞き取る

2回目は聞き取れた情報をメモし、グループで情報を共有し内容を伝え合う

3回目を聞いた後、True or False Question に取り組む

Reading in Detail

ワークシートを利用して本文の詳細、文法事項を理解する

Retell [MFO]

キーワードを参考にしながら、ペアで本文の内容を自分の言葉で伝え合う

Think and Share [MFO]

本文の内容に対しての自分の意見を簡潔に書いてから、

会話フレームを使ってグループの中で発表する

グループ内の代表者が、クラス全体に発表する

Reading Aloud

ペアで Cloze reading、Shadowing などの音読活動を行う

Homework [MFO]

授業で自分が発表した内容(Retell)について、表現を吟味しながら書く

Speaking

(やり取り)

Speaking

(やり取り)

Listening

Reading

Speaking

(やり取り)

Writing

Speaking

(発表)

Writing

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99

学習したことを

生活にいかす力を育てる

ここがポイント 5

共通教科

各教科の授業

9 家庭

学習指導要領における家庭科の目標 現行の学習指導要領の目標は、「人間の生涯にわたる発達と生活の

営みを総合的にとらえ,家族・家庭の意義,家族・家庭と社会とのか

かわりについて理解させるとともに,生活に必要な知識と技術を習

得させ,男女が協力して主体的に家庭や地域の生活を創造する能力

と実践的な態度を育てる」です。生徒たちは、授業を通して生活をよ

り良くするための知識や技術を学び、学習したことを、自分自身の生

活で活用できるようになることが教科としての大事なねらいです。

ねらいを実現するためにも、いま話題になっている社会の問題な

どを取り入れた授業内容を工夫していくとよいでしょう。

また、新学習指導要領の目標は「生活の営みに係る見方・考え方を

働かせ,実践的・体験的な学習活動を通して,様々な人々と協働し,

よりよい社会の構築に向けて,男女が協力して主体的に家庭や地域

の生活を創造する資質・能力を次のとおり育成することを目指す。」

です。続いて(1)として「知識及び技能」を、(2)として「思考

力,判断力,表現力等」を、(3)として「学びに向かう力,人間性

等」が示されているので、確認しておきましょう。

家庭科における「見方・考え方」 生活の営みに係る見方・考え方とは、「家族や家庭,衣食住,消費

や環境などに係る生活事象を,協力・協働,健康・快適・安全,生活

文化の継承・創造,持続可能な社会の構築等の視点で捉え,よりよい

生活を営むために工夫すること。」としています。

新学習指導要領にある「見方・考え方」を働かせ、「主体的・対話

的で深い学び」の授業改善を心がけていきましょう。

☆「空間軸」と「時間軸」

高等学校家庭科の学習指導要

領における教科目標から読み取

れるキーワードです。個人から

地域・社会へと視野を拡げてい

くという「空間軸」の捉え方に

より、社会から求められる課題

への対応が可能となります。ま

た、過去から未来という「時間

軸」の捉え方で次世代を担う役

割を自覚し、生涯を見通したキ

ャリア教育にも通じる考え方が

可能となります。

☆新学習指導要領への移行

措置について

新学習指導要領の契約の重要性

及び消費者保護の仕組みに関する

規定の事項を、平成 30年度以降に

高等学校に入学した生徒に限り平

成 31 年度から適用することとな

りました。ただし、家庭に関する

科目が 1学年(年次)(中等教育学

校においては 4 年次)にのみ設置

されている場合には、平成 30年度

から特例を準用して実施となりま

す。成年年齢引下げを見据え、指

導していくことが大切です。

→ 1章-6

→ダウンロードは、P115 へ

参考 評価規準作成、評価方法等の工夫改善のための参考資料

(高等学校 普通教科「家庭」) 平成 24 年 7 月 国立教育政策研究所

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100

☆他教科とのつながり

家庭科の学習内容は生活全般

にわたるので、他の教科と関連

する内容も多くあります。他教

科と連携すると「内容が深ま

る」、「より理解しやすくなる」と

感じたこともあるのではないで

しょうか。他教科と授業内容に

ついて情報交換し、より良い授

業を考えてみましょう。

☆地域とのつながり

乳幼児施設として保育所・子

育て支援センター、児童関連施

設として放課後児童クラブ、高

齢者施設として特別養護老人ホ

ーム・デイサービスセンター等

があります。実習を行う際は、生

徒の安全はもとより、乳幼児や

高齢者のプライバシーを含む相

手に対する配慮や安全の確保に

配慮し、生徒が自覚と責任をも

って行動し、目的が効果的に達

成できるよう留意しましょう。

【参考資料】

神奈川県健康医療局

「健康・未病学習教材」

→ダウンロードは右

の2次元コードから

くらし安全防災局くらし安全部

消費生活課 「Jump up」等

→紹介ページは

右の2次元コー

ドから

学習指導要領改訂のポイント 小・中・高等学校の系統性を踏まえ,内容構成をA「家族・家庭及び福

祉」,B「衣食住」,C「消費生活・環境」にD「ホームプロジェクトと学

校家庭クラブ活動」を加えた四つに整理した。

「生涯の生活設計」について

まとめとしてではなく、科目の導入として位置付け、A~Cの内容と

関連付けることで、生活課題に対応した意思決定の重要性についての理

解や生涯を見通した生活設計の工夫ができるようにする。

少子化の進展に対応して

「家庭基礎」…子育て支援、乳幼児と関わるための基礎的技能

「家庭総合」…子供の遊びと文化、子育て支援、子供の発達に応じた適

切な関わり方の工夫をする。

高齢化の進展に対応して

高齢者の尊厳と介護(認知症を含む)に関する内容を充実を図る。

「家庭基礎」…高齢者の生活支援に関する基礎的な技能

「家庭総合」…高齢者の心身の状況に応じた生活支援に関する技能

衣食住について

日本の伝統的な生活文化の継承・創造に関わる内容の充実を図る。

→和食・和服・和室を扱う

「家庭基礎」…自立した生活を営むために必要な基礎的・基本的な内容

「家庭総合」…生涯を見通したライフステージごとの生活を科学的に理

解させることを重視

消費生活・環境について

成年年齢の引下げを踏まえ、契約の重要性や消費者保護の仕組みに関

する内容を充実するなど、消費者被害の未然防止に資する内容の充実を

図る。

ホームプロジェクトと学校家庭クラブ活動について

家庭や地域及び社会における生活の中から課題を見いだして解決策を

構想し、実践を評価・改善して、新たな課題の解決に向かう過程を重視

した学習の充実を図った。家庭科の授業の一環として、年間指導計画に

位置付けなければならない。

生活の科学的な理解を深め、生活の自立に向けて主体的に活用できる

技能の習得を図るために、実践的・体験的な学習活動を重視し、問題解

決的な学習を充実していかなくてはなりません。

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101

(1) 情報社会の問題解決

科目の導入として位置付け,(2)から(4)までの内容に結び付けられるように

するとともに,情報と情報技術を用いて,生徒が情報社会の問題を主体的に発見

し,明確化し,解決策を考えられるようにする。

(2) コミュニケーションと情報デザイン

情報のデジタル化や,コミュニケーションとメディアの関係を理解し,情報の

構造と関係性を適切に表現したデザインについて作成,評価,改善を繰り返す

ことで,情報伝達やコミュニケーションにおける問題を解決できるようになる。

(3) コンピュータとプログラミング

自然現象や社会現象の問題点を発見し,コンピュータやプログラミングを活用し

解決策を考えられるようにする。

(4) 情報通信ネットワークとデータの活用

情報通信ネットワークの管理,運用ができ,データベースや Web 上のテキスト

データ,オープンデータ等を可視化,分析する力を育成する。

これからの社会で

求められる能力を育てる

ここがポイント 5

共通教科

各教科の授業

10 情報

共通教科「情報」とはどのような教科か? 新学習指導要領において、「情報に関する科学的な見方・考え方を重

視するとともに,問題の発見・解決に向けて情報と情報技術を適切かつ

効果的に活用するための知識及び技能を身に付け,実際に活用する力を

養うとともに,情報社会に主体的に参画する態度を養うことを目指して

いる。」としています。

情報科における「見方・考え方」

新学習指導要領において、共通教科情報科における「情報に関する科

学的な見方・考え方」は、「事象を,情報とその結び付きとして捉え,

情報技術の適切かつ効果的な活用(プログラミング,モデル化とシミュ

レーションを行ったり情報デザインを適用したりすること等)により,

新たな情報に再構成すること」であると整理しています。

この「情報に関する科学的な見方・考え方」を働かせ、成長させる授

業の実現が、主体的・対話的で深い学びにつながるのです。

新学習指導要領実施に向けて準備をしよう 新学習指導要領では、共通必履修科目として「情報Ⅰ」、選択科目と

して「情報Ⅱ」が設けられました。「情報Ⅰ」の構成は次の通りです。

☆共通教科情報科の位置

付け

新学習指導要領解説 情

報編には、次のように書か

れています。「共通教科情報

科は,小・中・高等学校の

各教科等の指導を通じて行

われる情報教育の中核とし

て位置付けられる。」

小・中・高等学校を通して体

系的・系統的に行われる情報

教育の目標について正しく

理解する必要があります。

☆プログラミング教育

小学校段階におけるプロ

グラミング教育の在り方に

ついて(議論の取りまと

め)では、「自分が意図する

一連の活動を実現するため

に、どのような動きの組合

せが必要であり、一つ一つ

の動きに対応した記号を、

どのように組み合わせたら

いいのか、記号の組合せを

どのように改善していけ

ば、より意図した活動に近

づくのか、といったことを

論理的に考えていく力」で

ある、プログラミング的思

考などを育成するもの、と

しています。

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102

☆「情報Ⅰ」実施に向けて

新設された共通必修科目

「情報Ⅰ」を教える準備を進

めるための教員研修用教材が

文部科学省より公開されてい

ます。具体的な演習例が紹介

されており、実際の授業等で

も活用できる内容になってい

ます。詳細は以下を参考にし

てください。

☆情報活用能力

情報活用能力の定義と解

説は「教育の情報化に関する

手引」(令和元年文部科学省)

や「新学習指導要領解説 総

則編」「新学習指導要領解説

情報編」に詳細があります。

原典と併せて巻末の参考資

料も確認してください。

高等学校情報科「情報Ⅰ」 教員研修用教材 →ダウンロード下の 2次元 コードから

高等学校

他教科との関係

高等学校段階における情報教育の実施を、共通教科情報科だけが担う

ように極めて限定的に捉えてはいけません。

新学習指導要領において、情報活用能力は、言語能力などと同様に、教

科等を越えた全ての学習の基盤として育まれ活用される資質・能力とし

ています。義務教育段階と同様、高等学校段階においても、教科等の特質

に応じて教科等横断的に情報活用能力を身につけさせる教育のより一層

の充実が求められています。特に、統計の指導に当たっては数学科と、情

報モラルなどの指導に当たっては公民科との関連を図ることが大切で

す。

また、共通教科情報科の学びによって身につけた能力や態度を他の教

科・科目等の学習において積極的に活用していくことが重要です。

学校全体での情報教育を考えるときには,共通教科情報科と他教科等

の学習内容や学習活動との関連をよく検討してカリキュラム・マネジメ

ントを行い,効果的な指導計画を立てることが大切です。

「情報Ⅰ」と「情報Ⅱ」の項目の対応関係は次の通りです。

小・中学校との学習内容の接続

小学校

例:プログラミング教育

情報科 数学科、公民科など

各教科

小学校段階におけるプログラミ

ング教育や、中学校技術・家庭科

(技術分野)の学習内容など前段

階での学びを踏まえ、学習内容の

適切な接続・連携により学習に広

がりや深まりが生まれるよう留

意する必要があります。

中学校 例:技術・家庭科(技術分野)

各学習指導要領解説 →ダウンロードは P115へ

教育の情報化に関する手引 →ダウンロードは下の2次元コードから

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103

社会で生きて働く知識や

技能を育成する

11 農業・工業・商業・水産・看護・福祉

各教科における見方・考え方

☆専門高校の現状

高等学校における職業教育

は、農業、工業、商業、水産、家

庭、看護、情報、福祉など職業に

関する教育を行う専門高校を中

心に行われています。

平成30年5月現在、専門高校

の生徒数は、約59万人であり、

高等学校の生徒数全体の18.3%

を占めています。

専門高校は、有為な職業人を

多数育成するとともに、望まし

い勤労観・職業観の育成や豊か

な感性や創造性を養う総合的な

人間教育の場としても大きな役

割を果たしています。

☆専門教科に求められるもの

「県立高校改革実施計画(全

体)平成28年1月」では、「将来

のスペシャリストの育成」、「将

来の地域産業を担う人材の育

成」、「人間性豊かな職業人の育

成」という3つの人材育成の視

点に基づき、生徒の多様な進路

希望に対応した教育課程とな

るように、より一層の改善に取

り組みます。また、社会、経済、

産業の動向、グローバル化・情

報化の急速な進展や少子高齢・

人口減少への対応なども踏ま

えて取り組むことが、専門教科

に求められています。

農業や農業関連産業に関する事象を,安定的な食料生産と

環境保全及び資源活用等の視点で捉え,持続可能で創造的な

農業や地域振興と関連付けること。

ものづくりを,工業生産,生産工程の情報化,持続可能

な社会の構築などに着目して捉え,新たな時代を切り拓く

安全で安心な付加価値の高い創造的な製品や構造物などと

関連付けること。

工業

企業活動に関する事象を,企業の社会的責任に着目して

捉え,ビジネスの適切な展開と関連付けること。

商業

水産や海洋に関連する事象を,漁業生産や船舶運航,海

洋工学,情報通信,資源増殖,水産食品の製造や流通,海

洋の環境保全や活用などの視点で捉え,地域や社会の健全

で持続的な発展と関連付けること。

水産

健康に関する事象を,当事者の考えや状況,疾病や障害

とその治療等が生活に与える影響に着目して捉え,当事者

による自己管理を目指して,適切かつ効果的な看護と関連

付けること。

看護

生活に関する事象を,当事者の考えや状況,環境の継続

性に着目して捉え,人間としての尊厳の保持と自立を目指

して,適切かつ効果的な社会福祉と関連付けること。

福祉

農業

5

各教科の授業

専門教科

ここがポイント

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104

専門教科の教科指導で意識するポイント

教科指導の座学、実習等の場面で意識しましょう。

専門高校に求められる役割 「県立高校改革実施計画に係る専門高校のあり方 報告」(神奈川県産業

教育審議会 平成30年7月)では神奈川の専門高校に求められる役割が次

のように示されています。

平成28年12月の中央教育審議会がまとめた「幼稚園、小学校、中学校、

高等学校及び特別支援学校の学習指導要領等の改善及び必要な方策等につ

いて(答申)」では、専門学科においては、我が国の産業経済の発展を担う

人材又はその他の特定の分野における専門的な人材を育成することが求め

られています。

☆課程・学科等の改善

参考:「県立高校改革実施計画

(全体)平成28年1月」

農業 神奈川の農業の特性をい

かすとともに、6次産業化の進展

への対応や先進的な農業技術の

習得などを図るため、農業にかか

る教育機関や企業などとの連携

を一層推進する。

工業 科学技術の進歩とともに

高度化する工業技術の習得や実

践的なものづくり教育を進める

ため、企業や大学、職業技術校な

どとの連携を一層推進する。

商業 急速に進展する経済社会

のグローバル化に対応するとと

もに、他の産業分野との連携、協

働による生産から加工、流通、販

売までの総合的で実践的な教育

を進めるため、地域の企業や商工

業団体、大学などとの連携を一層

推進する。

水産 水産業及び海洋関連産業

の担い手となる人材を育成する

ため、地元の漁業協同組合や企

業、行政機関、さらに、大学や

研究機関などとの連携を一層推

進する。

看護 人間の健康の保持増進に

寄与する専門的な知識や技能を

養うとともに、看護に関する能力

や態度を育成するため、医療技術

の進歩などにより、高度化する看

護や保健、医療、福祉の進展を見

据えながら、今後の看護教育の実

践の中で不断の検証を図る。

福祉 社会福祉に対する地域や

行政等のニーズが高まる中で、介

護福祉や手話言語などについて

の専門的な知識・技能の習得や、

社会福祉にかかわる人材を育成

するため、社会福祉施設をはじめ

社会福祉協議会や行政機関、大学

や専門学校などとの連携を一層

推進する。

・実験・実習や他教科等との関連性に留意し、指導計画を立てる。

・実際の製品等を用いて、生徒がイメージできるように工夫を図る。

・自分自身の技術・技能の向上を図る。

・授業の開始時に、服装、機器や機械等の点検・確認などの安全教育を確実に行

い、生徒の安全を確保し、事故防止に努める。

・作品等の完成度や技術・技能のレベルのみでの評価にならないようにする。

・専門分野への興味・関心が高く、専門性の深化を目指す生徒にとって、重要な

学びの場である教科に関係する部活動(農業クラブ、ロボット、簿記会計等)

の指導者としての資質を身に付ける。

・資格取得へ向けての指導に積極的に取り組む。

○本県の専門高校に求められる役割 ・科学技術の発展、グローバル化、産業構造の変化を踏まえた、高度かつ専門的な

知識・技術の習得

・専門的な知識・技術の定着を図るとともに、多様な課題に対応できる課題解決能

力を育成

・地域や産業界との連携のもと、産業現場等における長期間の実習等、実践的な教

育活動のより一層の充実

見方・考え方を意識して授業をつくる 見方・考え方は、「各教科等を学ぶ本質的な意義の中核をなすもの」です。

商業科を例に「見方・考え方」の重要性について考えてみましょう。

商業の見方・考え方は「企業活動に関する事象を(中略)ビジネスの適切

な展開と関連付ける」とされ、様々な事象を企業の側から捉えることが求

められています。

例えば、「電子決済」について学ぶ単元で、ある生徒の授業後の振り返り

の記述が次のようなものであったとします。

・電子マネーのいいところや問題点がわかった。今使っている電子マネ

ー以外も試しに使ってみたい。

この生徒は「消費者」として授業内容を捉えており、教科を学ぶ本質で

ある「商業の見方・考え方」(企業の側から捉える)から離れています。「何

のために商業を学ぶか」が把握できていなければ、この単元の目標はもと

より、教科・科目の目標の達成も難しいでしょう。

生徒が教科・科目を学ぶ「本質的な意義」の部分を踏み外すことが無いよ

う、各教科の「見方・考え方」を意識した授業づくりを心がけましょう。

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105

自分と向き合う学びを

させよう

ここがポイント 5

各教科の授業

共通教科

12 総合的な探究の時間

「総合的な探究の時間」の活用 移行措置が始まる高校の新学習指導要領では、各教科等で育成する資

質・能力を相互に関連付け、実社会・実生活での活用や、各教科等を越え

た学習の基盤となる資質・能力の育成を重要視しています。これまでの総

合的な学習の時間は「総合的な探究の時間」として令和元年度から先行実

施されています。「総合的な探究の時間」は教科の学びを教科内だけにと

どめず、生徒自身がこれまでの学びを総動員しながら、主体的に課題に向

き合い、解決していく資質・能力を育成するための教科横断的なカリキュ

ラム・マネジメントの軸とされています。

探究的な学習

探究的な学習とは、問題解決的な活動が発展的に繰り返されていく一連の

学習活動で、次の流れに沿ってスパイラルに進みます。

探究が自律的に行われるために

自己課題:学校が探究課題を設定するに当たっては、生徒の多様な課題に

対する意識をいかすことが求められています。したがって、一人ひとりの多

様な学びを把握すること、活動を支える学習環境を整えること、他者と交流

する場を設けることの配慮が必要です。

運用:課題解決のために見通しを持って、自ら計画を立てて、自分の力で進

められることが求められています。そのために他者と協働することは、個人

ではつくりだすことができない価値を生み出し、解決の糸口もつかみやすく

なります。

社会参画:探究に主体的・協働的に取り組む中で、新たな価値を創造し、よ

りよい社会を実現しようとする態度を養うことが重要です。そのために探究

の意義を自覚したり、自分のよさや可能性に気付いたり、学んだことを自信

につなげたりする内省的な視点をふまえて内容を設定しましょう。

☆神奈川県の「総合的な探究

の時間」に係る研究

県立高校改革で教育課程研

究開発校に指定された高校で

は、自ら課題を発見し解決す

る探究の学びについての研究

に取り組みます。いくつかの

指定校ではSDGs(持続可能な

開発目標)をテーマとした研

究に取り組みます。

SDGsとは、「 Sustainabule

Development Goals」の略称で、

2015年9月の国連サミットで

採択されました。

みなさんも理解を深めてい

くことが大切です。

☆探究課題

テーマを決めて、調べ学習

するだけの授業になっていま

せんか。生徒に身近な学習対

象(ひと・もの・こと)の中か

ら自分にとって意味や価値の

ある探究課題を設定させるこ

とが大切です。日常生活や社

会に見られる事象は複合的な

要素から成り立っているの

で、各教科・科目等で学習した

知識だけでは解決できないこ

ともあります。そうしたこと

を課題として、探究させても

よいでしょう。

課題の設定

情報の収集

整理・分析

まとめ・表現

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106

探究的な学習における学習指導例

(その他の活動事例)

・体験活動の対比 ・シミュレーション

・資料の比較 ・グラフの解読

・ブレインストーミング ・ウェビングマップ

・KJ法 など

(その他の活動事例)

・アンケート調査 ・インタビュー

・電話、電子メール ・図書館

・インターネット ・講演会、セミナー

・実験、観察、実習 ・フィールドワーク など

(その他の活動事例)

・時系列表 ・KJ法

・ベン図 ・メリット、デメリット

・ビフォー、アフター ・マトリックス

・二次元表 ・Yチャート

・ロジックツリー ・グラフ

・統計的手法 ・フィッシュボーン など

(その他の活動事例)

・レポート、論文 ・新聞

・プレゼンテーション ・ウェブページ

・制作、ものづくり ・パネルディスカッション

・地域社会に向けた報告会 など

探究課題:災害について ~自分(たち)の住んでいる地域における災害~

~~

ランキングで課題を設定する

災害の種類について、カードに書き出し、社会的影響

の大きい順に並べ換えてみる。

課題の設定

地図を使って整理・分析する

収集した情報を地域の地図に落とし込み、写真や数値な

どを使って整理・分析を行い、災害について考える。

整理・分析

☆効果的な思考ツールを選択するこ

とで、新たな気付きが生まれます。

教員自身が思考ツールの引き出し

を多く持つことが大切です。

学習の対象や領域は、特

定の教科・科目等に留ま

らず、横断的・総合的に

考えましょう。

自分の地域ではどのような災害が起きるのか調べる

地形、地質を実地調査したり、地域の文献やインタ

ビュー、インターネットなどで調べる。

ネット

情報の収集

ポスターとしてまとめ・表現する

整理・分析に使用した地図をポスターにまとめ、写真や

図表を用いながら、災害への気付きや防災についての考

えを述べ、聞き手とディスカッションする。

まとめ・表現

☆まずは、実際に体験したり、聞い

たりすることで、情報を収集させ

ましょう。また、生徒が安易に情

報メディアに頼らないように、適

切に指導することも必要です。

複数の教科・科目等にお

ける見方・考え方を総合

的・統合的に働かせて探

究しましょう。

解決の道筋が明らかに

ならない課題や、唯一の

正解が存在しない課題

に対して、最適解や納得

解を見いだすことを重

視しましょう。

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◇・・・関連するコンテンツ

参考資料

1 一人ひとりの学習スタイルを把握しよう

◇「1章-7 一人ひとりの理解の仕方」

2 「指導と評価の計画」を立てよう

◇「2章-1 『生徒に身に付けさせたい力』は何だろう」

◇「2章-4 『指導と評価の計画』を立てる」

3 情報教育について

◇「3章-6 ICTを活用しよう」

◇「5章-10 情報」

4 授業づくりに役立つ資料を活用しよう

◇全章

いま求められている授業づくりを進めるにあたっ

ては、様々な資料を活用しながら、序章のキーワー

ドや各章で示されたポイントについて理解を深めて

いくことが大切です。

ここでは、今後の授業づくりに役立つ情報や参考

資料等を紹介しています。

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教室のなかでの「困り」チェックリスト

( 5とてもそう思う 4そう思う 3どちらでもない 2そう思わない 1全くそう思わない )

質 問 ○をつけよう

黒板・ノート

黒板の字が見えづらい 5…4…3…2…1

黒板のどこを書き写せばいいか分からない 5…4…3…2…1

ノートに書き終わらないうちに黒板が消されてしまう 5…4…3…2…1

ノートにどのように書き写してよいか分からない 5…4…3…2…1

ノートの字が汚くて、後で読もうとしても分からない 5…4…3…2…1

先生の声

先生がこちらを向いていないと、声が聞き取りづらい 5…4…3…2…1

まわりの生徒がうるさくて、声が聞き取りづらい 5…4…3…2…1

先生の言葉より、他の音が気になってしまう 5…4…3…2…1

単語や短い言葉は理解できるが、長い話は理解しきれない 5…4…3…2…1

全体に向けて話す言葉を理解しきれない 5…4…3…2…1

自分だけに向けて話す言葉でも理解しきれない 5…4…3…2…1

教科書

授業時に机に出すのを忘れる 5…4…3…2…1

自分で読んでいるとき、どこを読んでいるのか分からなくなる 5…4…3…2…1

誰かが教科書を読んでいるとき、どこを読んでいるのか分からない 5…4…3…2…1

教室環境

授業に集中できる座席の位置はどこのあたり?

だいたいの位置でもOK

教卓

□ □ □ □ □ □

□ □ □ □ □ □

窓□ □ □ □ □ □廊

側□ □ □ □ □ □下

□ □ □ □ □ □側

□ □ □ □ □ □

授業中、教室の中の掲示物に目が行ってしまう 5…4…3…2…1

授業中、そばの友達と話してしまう/友達の行動が気になる 5…4…3…2…1

授業中、廊下や外から聞こえる音が気になってしまう 5…4…3…2…1

忘れ物

持ち物や宿題の連絡は、メモを取らずに、忘れてしまう 5…4…3…2…1

メモを取っても、そのメモを後で見ないで、忘れてしまう 5…4…3…2…1

メモを取って、そのメモも確認するが、持ってくるのを忘れてしまう 5…4…3…2…1

授業内容

どんな授業が苦手?

( 5とても苦手 4苦手 3どちらでもない 2得意 1とても得意 )

黒板を黙々と書き写す授業 5…4…3…2…1

黒板・教科書・資料など、いろいろなものを見ながら進める授業 5…4…3…2…1

手元のプリントをやり続ける授業 5…4…3…2…1

自分で物を作ったり、実験したりする授業(理科・美術など) 5…4…3…2…1

身体全体を動かす授業(体育など) 5…4…3…2…1

一人で作業する授業 5…4…3…2…1

グループで作業したり行動したりする授業 5…4…3…2…1

1 一人ひとりの学習スタイルを把握しよう

授業のはじめに、生徒自身が学習上の「困り」を点検することは、生徒が自分の学習スタイルを把握することにつながります。さらに教師が点検結果を整理しておくと、一人ひとりの学習スタイルが把握でき、個に応じた学習支援をすることができます。

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110

学習内容についての「困り」チェックリスト

( 5とても苦手 4苦手 3どちらでもない 2得意 1とても得意 )

苦手なこと ○をつけよう

学習内容

暗記したものを書く(漢字や英単語など) 5…4…3…2…1

暗記したものを話す 5…4…3…2…1

文章を読む(音読など) 5…4…3…2…1

文章を読んで、文中の情報を取り出す(「主語は?」) 5…4…3…2…1

文章を読んで、考えて答える(「要点をまとめる」) 5…4…3…2…1

文章を読んで、登場人物の気持ちを答える 5…4…3…2…1

計算式を見て、計算をする 5…4…3…2…1

文章題を読んで、計算をする 5…4…3…2…1

文章を読んで、自分の意見を書く 5…4…3…2…1

文章を読んで、自分の意見を話す 5…4…3…2…1

相手の話を聞いて、それについての意見を書く 5…4…3…2…1

相手の話を聞いて、それについての意見を話す 5…4…3…2…1

相手の動きを見て、そのマネをする(体育など) 5…4…3…2…1

“自由に”自分の考えを書く(作文など) 5…4…3…2…1

“自由に”作る(美術・技術など) 5…4…3…2…1

暗記方法

書いて覚える 5…4…3…2…1

目で見て覚える 5…4…3…2…1

口に出して覚える 5…4…3…2…1

耳で聞いて覚える 5…4…3…2…1

同じことを何度も繰り返して覚える 5…4…3…2…1

書く・読む・聞く

字をきれいに書く(誰かが読みなおせる程度) 5…4…3…2…1

書き間違いなく字を正しく書く(間違っていなければ雑でもOK) 5…4…3…2…1

文章をつかえずに読む 5…4…3…2…1

読み間違いなく、文章を読み上げる 5…4…3…2…1

話を聞く(話の内容をある程度理解できる) 5…4…3…2…1

聞き間違いなく、相手の話を聞きとる 5…4…3…2…1

『あれ・これ・それ・どれ』などのあいまいな言葉を理解する 5…4…3…2…1

時間

時間制限がないことに取り組む(なかなか終わらせられない) 5…4…3…2…1

時間制限があることに取り組む(焦ってしまう) 5…4…3…2…1

授業時間内に集中を持続する(途中で寝たり、手遊びをしない) 5…4…3…2…1

対処方法

勉強で分からないことを先生に聞く 5…4…3…2…1

勉強で分からないことを友達に聞く 5…4…3…2…1

勉強で分からないことを家族に聞く 5…4…3…2…1

勉強で分からないことを自分で教科書や資料などで調べる 5…4…3…2…1

生徒はそれぞれ、読む・聞く・書く・話す・計算する・覚えるといった認知的な能力に得意・不得意があるものです。その場合、不得意な能力を訓練してできるようにするよりも、得意な能力をいかして不得意な部分をカバーする方が、自己肯定感が高まり、有効であると言われています。

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111

「学習評価の手引き」より抜粋(一部改編)

*表の説明は2章-1を参照してください。

教科・科目

数学・数学Ⅰ 学年 第1学年 教科書 ××堂「改新編 数学Ⅰ」

副教材 ××出版「問題精査 数学Ⅰ」 ××書店「反復演習 数学Ⅰ」

単位数 4単位

数と式、図形と計量、二次関数及びデータの分析についての基礎的な知識や技能を習得します。また、事象を数学的に考察する能力を養い、

数学のよさを認識できるようにします。さらに、それらを活用する態度を身に付けることを目標とします。

○ 授業における課題に対して自ら考え、また、周りの生徒と共同で考える活動を行います。

○ 授業においては数学専用の演習ノートを利用します。

○ 家庭学習における課題を定期的に提出してもらいます。最後まであきらめずに取り組みましょう。

評価の観点 科目の評価の観点の趣旨

a 関心・意欲・態度 数と式、図形と計量、二次関数及びデータの分析の考え方に関心を持つとともに、数学のよさを認識し、

それらを事象の考察に活用しようとする。

b 数学的な見方や

考え方

事象を数学的に考察し表現したり、思考の過程を振り返り多面的・発展的に考えたりすることなどを通し

て、数と式、図形と計量、二次関数及びデータの分析における数学的な見方や考え方を身に付けている。

c 数学的な技能 数と式、図形と計量、二次関数及びデータの分析において、事象を数学的に表現・処理する仕方や推論の

方法などの技能を身に付けている。

d 知識・理解 数と式、図形と計量、二次関数及びデータの分析における基本的な概念、原理・法則などを理解し、知識

を身に付けている。

※定期テストに関しては、上記四つの観点それぞれについて学習内容に応じて適切に配分しています。 学期

内容のまとまり 単元(題材) 学習内容 評価の観点

単元(題材)の評価規準 評価方法 a b c d

期 (1)数と式

実数 実数 ○ ○

a:数の体系を拡張する過程や数の四則計算に関心を

持ち、それらを数の考察に活用しようとしている。

b:数を拡張してきた過程や四則計算の可能性につい

て考察することができる。

c:簡単な無理数についての四則計算ができる。

d:数を実数まで拡張することの意義や実数が直線上

の点と1対1に対応していることを理解している。

・レポート

・確認テスト

・観察

・単元テスト 絶対値

○ ○

根号を含む式の計算 ○

集合 集合 ○ ○

a:集合の包含関係と命題を関連付けて捉え、それら

を命題の考察に活用しようとしている。

b:ベン図などを用いて事象を整理しそれらを多面

的・統合的に見たり、事象を命題として表現し考察

したりすることができる。

c:集合の共通部分や和集合、補集合などを求めたり、

命題の逆・裏・対偶について真偽を証明したりする

ことができる。

d:集合に関する基本的な用語・記号や命題と集合と

の関係付けを理解している。

・レポート

・確認テスト

・観察

・ワークシー

・単元テスト

命題と条件 ○

逆・対偶・裏 ○ ○

命題と論証 ○ ○ ○

期 (2)図形と計量

鋭角の三角比 三角比

a:鋭角の三角比や三角比の相互関係に関心をもち、

それらを直角三角形の計量に活用しようとしてい

る。

b:図形の相似の考え方を用いて直角三角形の辺の比

を角との関係で捉えたり、三角比の相互関係につい

て考察し表現したりすることができる。

c:直角三角形を用いて計量の問題を三角比の記号を

用いて表現し処理したり、三角比の相互関係を用い

て道の三角比の値を求めたりすることができる。

d:正弦、余弦及び正接の直角三角形の辺の比と角と

の関係としての理解や、三角比の相互関係について

の理解など、基礎的な知識を身に付けている。

・レポート

・確認テスト

・観察

・単元テスト 三角比の利用

○ ○

三角比の相互関係

○ ○ ○

2 「指導と評価の計画」を立てよう

〈例〉 数学・数学Ⅰ 「年間指導計画」

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次 時 学習活動 a b c 指導上の留意点

1 1

・ 3

・全文を網羅的に逐語訳するのではなく、

ポイントを絞り、その箇所については辞書を引かせるなどして、生徒自身の言葉で口語訳を行うよう、ワークシートを工夫する。

・ 5

・目標(評価規準)は『大和物語』との比

べ読みを通して、『伊勢物語』の文章の内容や表現の仕方について考えることであることを認識させる。

4 6

・古典の面白さ、味わい方の一つとして、現代の伝承と古典との違いを認識することを感じさせたい。

単元名:複数のテキストを比較しながら読む。

単元の目標:

・文章の構成や展開を確かめ、内容や表現の仕方について評価したり、書き手の意図をとらえたりしようと

する。(関心・意欲・態度)

・文章の構成や展開を確かめ、内容や表現の仕方について評価したり、書き手の意図をとらえたりする。(読

む能力)【指導事項 ウ】

・文語の決まりや語句の意味、用法などを理解し、語彙を豊かにする。(知識・理解)

単元の評価規準:

関心・意欲・態度 読むこと 知識・理解

「伊勢物語」と「大和物語」の比較を通し、文章の構成や展開を確かめ、内容や表現の仕方について評価しようとしている。

「伊勢物語」と「大和物語」の比較を通し、文章の構成や展開を確かめ、内容や表現の仕方について評価している。

文語の決まりや語句の意味、用法などを理解し、語彙を豊かにしている。

a:関心・意欲・態度 b:読むこと c:知識・理解

*表の体裁は教科ごとに若干異なります。表の説明は、2章-4をご覧ください。

「『学習評価の充実』をとおした授業改善の推進に向けて」を基に作成

〈例〉 国語・国語総合 「指導と評価の計画」

必ずしも、毎時間評価しなくても

よい。「記録に残す評価なし」と

いう時間もあり得る。

【評価方法】(知識・理解)

小テスト及び定期テスト

【評価方法】(読む能力)

ワークシートの分析

【評価方法】(関心・意欲・態度)

振り返りシートの分析

「振り返り」は、活動の振り返りでは

なく、単元の学習を通してどのような

ことができるようになったかを振り返

る。それによって「関心」の高まりを

自己分析させるものとする。

記録に残す評価を行う場合、その観

点に○を付ける。

単元の指導と評価の計画

○学習の見通しを立てる。 ・単元の目標について確認する。 ・学習活動の流れを理解する。

○物語の概略を理解する。 ・全文を通読し、現代語訳を適宜利用しながら物語

の概略を理解する。 ・重要古語をチェックし、その意味や用法をクラス

全体で共有する。

○「筒井筒」後半部分(いわゆる「高安の女」)と『大和物語』「沖つ白波」を比較する。

・現代語訳付の『大和物語』「沖津白波」を配付し、

概略を説明する。 ・比較表(ワークシート)を完成させ、『伊勢物語』

「筒井筒」の特徴をまとめる。

○昔話を例にして、原典と相違を調べ、 内容を評価する。

・昔話「浦島太郎」などを例示して、グループ等で『御伽草子』所収の浦島伝説などを比較する。

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113

★急速に情報化が進展する社会の中で、情報や情報手段を主体的に選択し活用していくために必要な情報

活用能力を、各学校段階・各教科等の学習活動を通じて教師が体系的に育成することの重要性が、ます

ます高まっています。

そのような状況を踏まえ、新学習指導要領において、情報活用能力(情報モラル、プログラミング的思考

や ICT を活用する力を含む)は、言語能力や問題発見・解決能力と並ぶ学習の基盤となる資質・能力とし

て位置付けられました。教科等横断的な視点から教育課程の編成を図り、各学校のカリキュラム・マネジ

メントの実現を通じて育成することが求められます。

情報活用能力とは 「教育の情報化に関する手引」では、情報教育で育成すべき「情報活用能力」を、「情報活用の実践力」

「情報の科学的な理解」「情報社会に参画する態度」の3つの観点に整理し、定義の文言から8つの要素に

分類して、情報活用能力を身に付けさせる各教科の学習活動について解説してきました。

【情報活用能力の 3 観点 8 要素】

情報活用の実践力

課題や目的に応じて情報手段を適切に活用することを含めて,必要な情報を

主体的に収集・判断・表現・処理・創造・表現し,受け手の状況などを踏まえ

て発信・伝達できる能力

※情報手段には、インターネットの他に、書籍や言語等も含まれています。「情

報活用の実践力」とは、情報機器が操作できるといった「使うことのできる」

力だけではないことに留意する必要があります。

情報の科学的な理解

情報活用の基礎となる情報手段の特性の理解と,情報を適切に扱ったり,自

らの情報活用を評価・改善するための基礎的な理論や方法の理解

※単に情報手段の種類、仕組や特性を理解するだけでなく、情報や情報手段

を、適切に活用するために必要な基礎的な理論や、より良く活用するために

問題解決の手順・結果の評価及び情報の表現技法などの基礎的な理論を理

解し、実践につなげることまで含まれています。

情報社会に参画する態度

社会生活の中で情報や情報技術が果たしている役割や及ぼしている影響を

理解し,情報モラルの必要性や情報に対する責任について考え,望ましい情報

社会の創造に参画しようとする態度

※生徒が情報社会に参画する上で重要な、いわゆる情報化の「光」と「影」の

部分が人間や社会に与える影響について理解することや、それらに適切に

対処していく方法などの習得までが含まれています。

令和元年 12 月 教育の情報化に関する手引

新学習指導要領解説 総則編では、「情報活用能力をより具体的に捉えれば,学習活動において必要に応

じてコンピュータ等の情報手段を適切に用いて情報を得たり,情報を整理・比較したり,得られた情報をわ

かりやすく発信・伝達したり,必要に応じて保存・共有したりといったことができる力であり,更に,この

ような学習活動を遂行する上で必要となる情報手段の基本的な操作の習得や,プログラミング的思考,情報

モラル,情報セキュリティ,統計等に関する資質・能力等も含むものである」と具体的に示しています。

3 情報教育について

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さらに、「情報活用能力は,各教科等の学びを支える基盤であり,これを確実に育んでいくためには,各

教科等の特質に応じて適切な学習場面で育成を図ることが重要であるとともに,そうして育まれた情報活

用能力を発揮させることにより,各教科等における主体的・対話的で深い学びへとつながっていくことが一

層期待されるものである」としています。

今回の改訂において、情報活用能力をこれまでの3つの観点と共に、教育課程を通して育成を目指す資

質・能力として三つの柱「知識・技能」「思考力・判断力・表現力等」「学びに向かう力・人間性等」に沿っ

て整理しています。「全ての教科等においてそれぞれの特質に応じ,情報技術を適切に活用した学習活動の

充実を図ることが必要である」とも明記しています。

【参考:情報活用能力を構成する資質・能力】

知識・技能

情報と情報技術を活用した問題の発見・解決等の方法や,情報化の進展

が社会の中で果たす役割や影響,情報に関する法・制度やマナー,個人が果

たす役割や責任等について,情報の科学的な理解に裏打ちされた形で理解

し,情報と情報技術を適切に活用するために必要な技能を身に付けている

こと。

思考力・判断力・表現力等

様々な事象を情報とその結びつきの視点から捉え,複数の情報を結びつ

けて新たな意味を見出す力や,問題の発見・解決等に向けて情報技術を適

切かつ効果的に活用する力を身に付けていること。

学びに向かう力

・人間性等

情報や情報技術を適切かつ効果的に活用して情報社会に主体的に参画

し,その発展に寄与しようとする態度等を身に付けていること。

平成 28 年 12 月 中央教育審議会答申 別紙3-1

プログラミング教育 新学習指導要領では、小学校から「プログラミングを体験しながら,論理的思考力を身に付ける」ための、

プログラミング教育(プログラミング的思考の育成)が必修になりました。情報活用能力に含まれるプログ

ラミング的思考の育成は、高等学校においても全ての教科等において求められるものです。

プログラミング的思考の育成のための新たな学習活動を組み立てるのではなく、従来も行われてきた学

習活動の中で、プログラミング的思考の育成場面を意識することが大切です。問題解決のために必要な情報

を集め、その情報を整理・分析し、解決への筋道を立てて実践することも、プログラミング的思考を育成す

る学習活動となります。

情報モラル教育 新学習指導要領解説 総則編では、「情報活用能力に情報モラルが含まれていることを特に示している。

携帯電話・スマートフォンや SNS が子供たちにも急速に普及するなかで,インターネット上での誹謗中傷

やいじめ、インターネット上の犯罪や違法・有害情報の問題の深刻化,インターネット利用の長時間化等を

踏まえ、情報モラルについて指導することが一層重要」としています。

情報モラルとは、「情報社会で適正な活動を行うための基になる考え方と態度」であり、「情報モラルに関

する指導は,情報科や公民科,特別活動のみで実施するものではなく,各教科等との連携や,更に生徒指導

との連携も図りながら実施することが重要」になります。

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★授業づくりをする上で押さえておくべき資料や、総合教育センターで作成した資料を挙げておきます。

積極的に活用して、より良い授業づくりを目指しましょう。

≪文部科学省・国立教育政策研究所・県教育委員会≫

・文部科学省、中央教育審議会

高等学校学習指導要領 2009、2018 ・ 高等学校学習指導要領解説 2009、2018

言語活動の充実に関する指導事例集~思考力,判断力,表現力等の育成に向けて~【高等学校版】2014

幼稚園、小学校、中学校、高等学校及び特別支援学校の学習指導要領等の改善及び必要な方策等について(答申)

・国立教育政策研究所 2016

評価規準の作成,評価方法等の工夫改善のための参考資料(高等学校) 2012、2013

学習評価の在り方ハンドブック 2019

・神奈川県教育委員会

「学習評価の充実」をとおした授業改善の推進に向けて 2019

学習評価の手引き 2013

組織的な授業改善に向けて~高等学校における授業研究の取組~ 2012

高等学校教育課程研究集録

≪総合教育センター作成資料① ガイドブック、成果物等≫

カリキュラム・マネジメントを促進する協議の

工夫(2020)

カリキュラム・マネジメントの実現に向けて、「組織的な授業改善」をより効果

的なものとするための協議の視点、工夫をまとめました。

支援を必要とする児童・生徒の教育のために

(2020)

支援を必要とする子どもたちの教育についての基本的な考え方や基礎的な

事項をまとめました。

はじめよう!プログラミング教育(2020) 小中高におけるプログラミング教育の活動例などを紹介しています。

実感につなげよう! 今、求められる授業改善

Ver.1(2019)、Ver.2(2020)

授業改善の組織的な取組を推進し、実感につなげるための視点や実践事例に

ついてまとめました。

インクルーシブな学校づくり

Ver.1.1、Ver.2.1(2019)Ver.3.0(2020)

インクルーシブな学校づくりのために有効な手立てや考え方、対話を軸とした

インクルーシブな学校づくりの事例とキーワードを紹介しています。

育成すべき資質・能力を育む学びの在り方に

関する研究 授業実践事例集(2018) 「深い学び」に着目した高等学校における6事例の授業実践をまとめました。

教育の情報化の推進状況に関する調査研究

~高等学校等におけるICT利活用授業推進

のために~(2017)

授業におけるICTの活用事例などを紹介しています。

高等学校における組織的な授業改善「協働する

授業づくり」ガイドブック(2016) 校内授業研究の推進に向けた取組が実践モデルとともに紹介されています。

明日から使える支援のヒント(2010) ユニバーサルデザインの視点から生徒の学びを支援するヒントが分かります。

4 授業づくりに役立つ資料を活用しよう

国立教育政策研究所

言語活動の充実に

関する指導事例集

学習評価の手引き

文部科学省

神奈川県教育委員会

組織的な授業改善 指導資料・事例集

※各種資料 DL ページ

※上記資料2次元コード

学習指導要領

各種 DL ページ

平成 29 年度 高等学校

教育課程研究集録

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≪総合教育センター作成資料② 授業研究ライブラリー≫

総合教育センターでは、県内の特色ある授業を撮影・編集した「授業研究ライブラリー」を制作※し、当センター内のカリキュラム開発センターで視聴できます。また、一部については、DVDの貸出しやインターネット配信※※をしています。

「授業研究ライブラリー」(一部)

≪総合教育センターウェブサイト≫

■ 利用時間はいずれも 9:00~17:00(月曜日から金曜日)です。

■ 上記の図書・教育資料は「図書検索システム(図書室のウェブページ)」で調べることができます。

■ 教育図書室・カリキュラム開発センターに複写の設備はありません。

■ 令和3年 4 月供用開始の新庁舎への移転準備のため、閲覧室や資料の利用に制限を設けます。

詳しくはお問い合わせください。

校種等 撮影校・授業担当者(校名と職名は撮影時のもの) 撮影年

高等学校 情報(社会と情報) 神奈川県立茅ケ崎西浜高等学校 教諭 鎌田高徳 平成 29 年

高等学校 外国語(コミュニケーション英語 I) 神奈川県立大磯高等学校 総括教諭 島信哉 平成 28 年

中等教育学校 数学 神奈川県立平塚中等教育学校 教諭 宮洋二 平成 27 年

高等学校 地歴公民 神奈川県立上溝高等学校 教諭 野嵜菜緒 平成 26 年

高等学校 音楽Ⅱ 神奈川県立伊勢原高等学校 総括教諭 相川真由美 平成 25 年

高等学校 理科総合A 神奈川県立愛川高等学校 総括教諭 村上聡 平成 24 年

高等学校 海洋科学 神奈川県立海洋科学高等学校 教諭 秦道弘 平成 24 年

高等学校 工業・実習(総合技術科) 神奈川県立川崎工科高等学校 教諭 小林光康 平成 24 年

≪カリキュラム開発センター≫ 教育に関する様々な情報や資料(現在使用中の教科

書、県内の学校の研究紀要、学校要覧、教育映像資

料等)を収集し、各学校の組織的な授業改善やカリ

キュラム開発の支援を行っています。教材工房に

は、教材作成の支援のため、大判プリンタや高速カ

ラープリンタ、高速スキャナ、ラミネータ等の機器

を設置しています。

善行庁舎

≪教育図書室≫ 教育全般に関する図書・雑誌や県内外の教育関係機

関が発行した資料(学校・教育委員会・研究機関の

研究紀要等)のほか、昭和 20 年代からの古い教科

書を所蔵しています。亀井野庁舎の分室では特別支

援教育関連の図書・雑誌等を収蔵しています。資料

の貸出しは1人1回5冊まで、貸出しの日を含めて

3週間以内です。

亀井野庁舎 善行庁舎

(画面は令和2年2月現在のものです。)

教育図書室

図書検索システム

利用案内 はこちら

授業研究ライブラリー

リスト・視聴 はこちら

ガイドブック、成果物等

ダウンロード はこちら

カリキュラム開発センター

利用案内 はこちら

※ 制作は平成 29 年度に終了しました。

※※動画の視聴に必要なユーザ名とパスワードは、学校長宛てに連絡しています。

総合教育センター

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授業を行った後で振り返ってみて、生徒の様子はいかがでし

たか。効果的な授業実践を積み重ねていくことで、生徒は学習

に対して意欲的になったり、以前はできなかったことが次第に

できるようになったりします。生徒たちの成長を見ることは、

教員としての喜びを感じる瞬間ではないでしょうか。自分が行

う授業を通して、生徒がどんなふうに成長してくれるだろうと

想像しながら授業づくりをすることは、教員にとっての楽しみ

です。

とはいえ、授業づくりはいつも順風満帆とは限りません。苦

労して授業の計画をしても、予定通りにいかないことはよくあ

ります。そのようなときには、同じ教科や同じ学年の先生に相

談してみてください。そこで得られる貴重な助言や情報を活用

しながら、指導力を磨いていけばよいのです。自力で試行錯誤

を重ねていくことも大切ですが、教員間でコミュニケーション

をとり、チームとして取り組むことも、教員の成長にとって必

要なことです。

皆さんの教員生活は、まだまだ始まったばかりです。教員は

責任の重い仕事ですが、ここにはその責任に見合う大きなやり

がいと、皆さん自身の成長の機会とがあります。よりよい学び

を目指して試行錯誤する皆さんの姿は、きっと生徒たちに刺激

を与え、授業への前向きさを生むことでしょう。皆さんの成長

が生徒の成長をより一層促すのです。

この冊子を手にした全ての皆さんの授業実践が充実したもの

となるよう、心より願っています。

おわりに

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