参 考 資 料...85 参 考 資 料 1 加齢に伴う食事に関する機能変化...

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85 参 考 資 料 1 加齢に伴う食事に関する機能変化 ・・・・・・ 87 2 加齢によってどんな変化が起こるの ・・・・・・ 89 介護予防は低栄養の予防が「かぎ」 ・・・・・・ 90 4 加齢による機能変化に伴う調理の工夫 ・・・・・・ 91 栄養・調理の豆知識 ・・・・・・ 94 別冊 高齢者のための簡単メニュー集

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85

参 考 資 料

1 加齢に伴う食事に関する機能変化 ・・・・・・ 87

2 加齢によってどんな変化が起こるの ・・・・・・ 89

3 介護予防は低栄養の予防が「かぎ」 ・・・・・・ 90

4 加齢による機能変化に伴う調理の工夫 ・・・・・・ 91

5 栄養・調理の豆知識 ・・・・・・ 94

別冊 高齢者のための簡単メニュー集

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1 加齢に伴う食事に関する機能変化

1 咀嚼力の低下

高齢者の噛む力は壮年期の3分の1から 10 分の1に低下するといわれ、特に前歯

の噛みきる力は弱くなる。

前歯のない人はものを噛みきることができなくなり、奥歯のない人は噛み砕けなく

なる。咀嚼が十分にできないため、次第にやわらかい料理を好むようになり便秘、

肥満などの誘因となる。

(1) 歯の欠損と咀嚼力の低下(健常者との比較)

項 目 噛 む 力

奥歯1本の減少 約65%に減少

ブリッジ装着 7~8割に減少

部分入れ歯 3~4割に減少

総入れ歯 1~2割に減少

(2) 咀嚼の生理的役割

・消化吸収を助ける。唾液の分泌を促す。

・食物から味覚誘引物質を引き出し、食欲増進を図る。

・頭・顎の骨・歯ぐきの健康を維持する。

・脳への刺激を与える。(血流の増加)

・筋肉の衰えを防止する。

・姿勢を整える。

・ストレスを解消する。

2 唾液量の減少 加齢にしたがって唾液腺が萎縮し、唾液の分泌量も少なくなり、粘調度が高くなっ

てくる。唾液量は壮年期の半分になるといわれている。

唾液の分泌量の低下は、口腔の浄化作用の低下から、味覚障害や食欲不振、口臭な

どの原因にもなる。

(1) 唾液の役割

・消化吸収を助ける。

・口腔の乾燥防止。

・殺菌作用により口腔を自浄する。

・入れ歯を安定させる。

・歯を修復させる。(再石灰化作用)

3 嚥下機能の低下 老化や脳卒中の後遺症などによる嚥下の運動がさまたげられがちとなる。

また、唾液も少なり飲み込みにくくなる。

(1) 嚥下障害の原因

・脳卒中後遺症や脳血管性痴呆

・食道がんなどによる食道狭窄

・ 強いストレスや欲求不満に起因する喉のつかえ感

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4 感覚機能の低下 (1) 味覚の閾値の変化

味覚をつかさどる味蕾が減少、萎縮する。甘味、塩味、酸味、苦味、旨味のな

かで塩味が最も衰える。

(2) 視力の減退

白内障などで視力が低下する。

(3) 嗅覚の低下

鼻腔内の上皮の嗅覚細胞が萎縮し、嗅覚が低下する。

5 食欲の減退 〔代表的な原因〕

・活動量の減少

・風邪や発熱

・便秘

・心配事や悩み、ストレス

・睡眠不足

・消化管の疾病

・薬の副作用

6 胃液分泌の減少 胃粘膜、胃腺の萎縮などが進行し、胃液の分泌が少なくなる。胃液分泌の低下は胃

における各栄養素の消化を遅らせ、食欲不振になることがある。

7 腸のぜん動運動の鈍化 腸のぜん動運動の低下で便秘がちになる。

〔原因〕

・加齢に伴うもの

・食事の量の減少

・消化のいいものばかりの食事

・水分不足

・運動不足

8 骨密度の減少 老化により骨の中のカルシウムが減少して骨粗鬆症となり、骨折をおこしやすい。

〔原因〕 ・カルシウム摂取量の減少

・女性においては、閉経後のエストロゲン分泌の低下

9 脱水症状の発現 のどのかわきなど自覚症状が乏しいため、水分の摂取が少なくなり、脱水症状を

起こすことがある。

〔脱水症状が引き起こすもの〕

・意欲の低下、不眠、痴呆症状などの精神症状

・血液が濃縮されるため、脳血栓を生じやすくなる

[参考}簡易必要水分量(ml)=35×体重(kg)=1ml×摂取エネルギー量(kcal)

体内水分 10%喪失・・・機能障害

体内水分 20%喪失・・・生命維持不可能

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2 加齢によってどんな変化が起こるの

入れ歯のため、硬いも

のが食べづらくなる

かむ力が若い頃の

3分の1から4分

の1になる

飲み込む力が弱

くなる

むせやすくなる

胃の粘膜が萎縮

するため胃液の

分泌が低下する

腸の運動能力が低下

し、消化機能が衰え、

便秘がちになる

食欲が低下する

唾液の分泌が少

なくなる(2分の

1くらいに減る)

舌の味覚細胞が減るた

め、とくに塩味と甘味を

感じにくくなり、濃い味

付けを好むようになる

のどの渇きに鈍くな

る(そのため、脱水状

態になりやすい)

膵液の分泌が低下する

ため、特に脂肪の消

化・吸収力が落ちる

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3 介護予防は低栄養の予防が「かぎ」 ★ 栄養が不足すると 基礎体力が低下し、抵抗力が弱まり消化不良や感染症にかかりやすくなる。

不足する栄養素などを補うため、筋肉が減少し、動くのがおっくうとなり、転倒や

骨折を起こしやすくなったりする。

また、骨や関節、心肺機能、消化器機能が低下し、全身の機能がさらに衰える。や

がて介護が必要(要介護)な状態や病気になる。

★ 低栄養とは 低栄養とは「たんぱく質」「エネルギー」の摂取が不足している状態をいう。 血中のアルブミンの値が低くなり体重が減少する。

要介護状態となった原因を調べた調査(平成 22 年国

民生活基礎調査:厚生労働省)によると脳血管疾患、

高齢による衰弱、転倒・骨折、認知症、関節疾患など

が多く、このうち、高齢による衰弱、転倒、骨折など

は低栄養と深い関係がある。

閉じこもり

寝たきり

筋力が低下し

て病気になり

やすくなる

65歳以上の要介護の原因

脳血管障害21.5%

高齢による衰弱13.7%

転倒・骨折10.2%

認知症15.3%

関節疾患10.9%

その他28.4%

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1 調理等の工夫 加齢にともなう食事に関する機能変化に対応して、調理にも工夫が必要となる。

咀嚼力の低下による噛む機能を補うために、食材を選択したり、下処理により食べや

すく工夫することが必要である。また、唾液量の減少や嚥下機能の低下により、むせ

たり誤嚥しやすくなるため、それらを予防するためにも、食材や調理方法に工夫が必

要である。

(1) 素材の工夫

【米類】・水分量を多めにし、柔らかく炊く。 1カップ=200ml

区 分 米の量 : 水の量 状 態

ご飯

軟飯

全かゆ

七分かゆ

五分かゆ

三分かゆ

1 : 1.2

1 : 3

1 : 5

1 : 7

1 : 10

1 : 20

普通の飯

柔らかめの飯

こってりした硬めの粥

軟らかめの粥

重湯と米粒が半分ずつ

重湯に米粒が1/3入る

【パン類・麺類・魚類・肉類・野菜】

区 分 内 容

パン類

・ パンはパサつきがちなので、パン粥や、フレンチトースト等にするな

ど、水分を加えてしっとりさせると食べやすい。

・ ステック状にしたパンにホワイトソース等をつけたり、パンを粗く切

ってグラタン等にすると口の中でまとまりやすい。

麺 類

・ 太麺より細麺を選び、麺の長さは短くする。乾麺はあらかじめ 4 分の

1程度に折って使うとよい。

煮込みにしてやわらかくしたり、ゼラチン寄せや小田巻き蒸しにして

麺をまとめると食べやすい。

魚 類

・ 噛み切りにくいえび、たこ、いかなどは、フードプロセッサーにかけ、

つなぎを加えてペーストやミンチにする。

・ 脂の多い魚は、なめらかな口当たりなので使いやすい。

・ 噛み切りにくい皮は取り除く。

・ 小骨の多いあじやいわしなどは、すり身にしたり、包丁でたた

いたり、薄切りにして用いる。

肉 類

・ 薄切りの肉を利用する。

・ 水分や脂身が少ない場合は、野菜ソースやおろしソース等をかける。

・ 焼く前に繊維を包丁でたたいたり、パイナップルジュースに漬け込む

等してやわらかくする。

・ 唐揚げにする場合は、食べやすい大きさに切り、下味をつけて揚げる

前に余分な衣をはたく。

野菜類

・ 1食あたりでは約120gを目安にする。

(加熱野菜なら片手山盛り1杯、生野菜なら両手に山盛り1杯)

・ 噛み切りにくい皮は、ピーラーなどでとる。トマトなどは湯むきした

り、表面を焼いて皮をとる。

・ 根菜類は、繊維に直角に切る、薄く切る、隠し包丁を入れる。噛み切

りやすくする。また、下茹でをしたり、すりおろししてから調理する。

・ 葉菜類は葉と軸を切り分け、葉の部分を繊維に直角に切って調理する。

4 加齢による機能変化に伴う調理の工夫

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(2)作り方の工夫

区 分 内 容

煮 物

・ 材料は一口大に切って食べやすくする。

・ 材料に火が通りやすくするために切り込みをいれる。

・ 下ごしらえに電子レンジを用いたり、保温調理鍋や圧力鍋を使用する

と、時間を短縮して、軟らかく煮込むことができる。

蒸し物

・ 蒸すことで食材が軟らかくなると共に、水分が増すため食材がパサつか

ず食べやすい。

・ 茶碗蒸しや小田巻き蒸しなどは、卵で食材にまとまりを作ることができ

るので、飲み込みやすくなる。

・ 肉や魚と野菜やきのこを組み合わせてホイル蒸し等にすると、短時間で

多くの食材を使った蒸し物ができる。

炒め物

・ 油やバターなどを使うことで風味が増す。

・ 軟らかくなるまでよく炒める。

・ 炒め煮のように水分が多い場合は、片栗粉などでとろみをつけてまとま

りをよくすると食べやすい。

焼き物

・ なすやピーマンのように野菜を焼いてから皮を取り除くと、素材が軟ら

かくなり、風味も増す。

・ 魚を焼くと水分が失われ硬さが増すため、照り焼きや味噌漬けのように

あらかじめ調味料に漬け込んでおくとよい。

揚げ物

・ 厚みのある肉や魚を揚げると、硬さが増すので、薄く切ったり、つくね

やミンチボールにして用いる。

・ 衣は薄力粉を使い、卵や牛乳を加えると軟らかくなる。

・ 薄切り肉で野菜などの食材を包んだり、魚に切り目に野菜を挟み込んで

揚げ物にすると水分が加わり、軟らかく食べることができる。

・ フライは生パン粉を用いると軟らかく揚がる。また、パン粉をフードプ

ロセッサーにかけてさらに細かくして用いると衣が薄くなって食べや

すい。

・ 揚げ物は、揚げ浸し、南蛮漬け、あんかけなど水分を加えると食べやす

い。

汁 物

・ さらっとした汁はむせやすいので、じゃがいもをすりおろしたり、片栗

粉や市販のとろみ剤、介護用寒天でとろみをつけたりする。

・ さつまいもやかぼちゃ、クリームコーンのように食材のでんぷん質を利

用したポタージュなどは、とろみがついて飲み込みやすくなる。

(3)バランスよく食べるための買い物の工夫

冷凍食品、缶詰、乾物等、買い置きできるものを常備しておく。

市販惣菜なども上手に取り入れる。

区 分 内 容

冷凍食品

・ 肉、魚、野菜、芋、果物、など多くの素材が市販されている。

・ 野菜は、下ゆでや、皮むきなど、使いやすく処理されているものも

ある。里芋のように、丸い形のものは、のどにつめることがないよ

う平たく食べやすい形に切って用いる。

缶 詰 ・ まぐろなどの油漬けや、さばの味噌煮などを備えておくと、他の素

材と組み合わせて使うことができる。

・ 果物の缶詰はやわらかく、食べやすい。

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乾 物 ・ 海苔、鰹節、切干大根、干しひじき、大豆、小豆、きな粉等のよう

な乾物は、賞味期限が長いので無駄なく利用できる。

真 空

パック

・ ご飯等 備えておくと便利である。

レトルト ・ お粥、スパゲッテーソース、カレー等、多くの食品がある。使用さ

れている食材の大きさや、硬さ、味付けの状況を確認して用いる。

保存の

きく

野菜・芋類

・ 白菜、にんじん、大根、たまねぎ、じゃがいも、里芋等は比較的長

く保存でき、いろいろな献立に用いることができる。

市販惣菜

・ 硬さ、味付けの状況を確認して切り目を入れたり、他の食材とあわ

せてうす味にするなど、必要に応じ一手間かけると食べやすくなる。

・ ひじきの煮物などは、ご飯に混ぜてひじきご飯にしたり、豆腐とと

もに、ひじき入り白和えにするとまとまりがよくなり食べやすくな

る。

・ 刺身が噛みにくい場合は、さらに薄くそぎ切りにする。また、飲み

込みにくい場合には、油と調味料で漬け込んだり、包丁でたたいて

から山芋をかけるとのどごしがよくなる。

★ (例)インスタントラーメンの活用

(4)間食・デザートで楽しく

区分 内 容

間 食

デザート

・ 病気ではないけれど食欲がでない、気分がすぐれない、食事がおい

しく感じられない等で十分な食事ができない時、おやつなら食べら

れる場合がある。

・ 少量でエネルギーやたんぱく質・ビタミン類が補給できる。

・ 果物やゼリー、プリンのように食べやすく、食欲の出るものを選ぶ。

ひと口大に切る 2cm幅のざく切り

うすめの短冊切り

洗っておくさっとゆでて3cm長さに洗っておく

野菜たっぷりラーメンの作り方

②お湯2カップ半にスープを入れて煮る。

③材料がやわらかくなったら、ラーメンを入れて煮る。

材料

インスタントラーメン 1個

きゃべつ 1枚

にんじん 小 1/3本

もやし 1/3袋

青菜 1/4わ

豚肉 40g

器に入れて青菜を盛り付けできあがり

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(1)カルシウムを多く含む食品

(2)鉄を多く含む食品

しじみ

凍り豆腐

レバー 大豆

丸干し

春菊

そば

干しひじき

納豆

ほうれん草

しじみ

凍り豆腐

レバー 大豆

丸干し

春菊

そば

干しひじき

納豆

ほうれん草

普通牛乳

凍り豆腐

木綿豆腐わかさぎ

丸干し

小松菜

さくらえび

干しひじき

いりごま

しらす

5 栄養・調理の豆知識

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(3)計量カップ・スプーン

(4)食品の目安量

スライスハム1枚(20g) 鶏卵 1個(50g) あじ中 1匹(正味 60g) かにかまぼこ小1本(15g)

ちくわ 1本(100g) かまぼこ1本(150g) ささ身 1本(40g) 木綿豆腐1丁(400g)

納豆1パック(45g) 厚揚げ1枚(200g) 高野豆腐1枚(16g) ピーマン1個(30g)

きゅうり1本(100g) 大根1本(1kg) みかん中 1個(正味 80g) バナナ中 1本(100g)

じゃが芋中 1個(130g) さつま芋中 1本(180g) ロールパン1個(30g) ゆでうどん1玉(230g)

カップ 大さじ 小さじ

200cc 15cc 5cc

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(5)野菜の分類

緑黄色野菜:120g以上緑黄色野菜:120g以上その他の野菜:230g以上

きのこ類

その他の野菜:230g以上

きのこ類

1日に食べたい野菜の量は350g以上、 1食あたりでは約120gです。

量を知る簡単な方法として、目安量を自分の手のひらで量る

ことができます。1食に食べたい野菜の量(120g)は・・・

加熱した野菜なら

片手に山盛り1杯

生の野菜なら

両手に山盛り1杯

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(6)食品の切り方

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