パプアニューギニアにおける言語教育 ·...

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はじめに 昨年度,国際協力事業団(JICA)・ソニー開 発パートナー事業でパプアニューギニア国(以 下,PNGとする)を訪問する機会があり,教 育制度と言語教育の現状を視察することができ た。同国には約500の言語が存在しているため, 部族間のコミュニケーションをはかり,国全体 をまとめるための公用語としての英語を習得す ることが国家目標となっている。そのため,前 期初等教育(9-11才児)においては,各部族 の土着語(vernacular,以下,コミュニティー 語とする)に加えて,公用語である英語も同時 に学ばせる二言語併用教育( Bilingual Education,以下,バイリンガル教育とする) が行われている。つまり,家庭やコミュニティ ーではコミュニティー語で生活しており,学校 ではコミュニティー語を基盤とした英語を習得 する授業が行われている。生徒にとっては,コ ミュニティー語は国語(母語)であるため,コ ミュニティー内で生活するためには欠くことの できない言語であり最も重視されているが,同 時にコミュニティー間でのコミュニケーション の手段としての英語(外国語)も習得する必要 がある。そのためPNGでは,国語力としての 確固たる基盤があってこそ,外国語を学べると いう思想のもとに,コミュニティー語を基盤と した言語教育がなされている。 パプアニューギニアにおける言語教育 吉田 信介 パプアニューギニアでは,前期初等教育の段階から各部族のvernacular(土着語)に加えて,公用 語である英語も同時に学ばせる二言語併用教育を行っている。そこでは,国語力としての確固たる基 盤があってこそ外国語を学べるという思想のもとに,vernacularを基盤とした言語教育がなされてい る。これは文部科学省の「『英語が使える日本人』の育成のための戦略構想の策定について」―英語 力・国語力増進プラン―で指摘されているような,「英語力のみならずあわせて,国語力の涵養も図 る」ことを目標としている我が国の言語教育に多くの示唆を与えるものである。具体的には,言語は 経験から学ぶものであるとするDO-TALK-RECORD法,オーラルコミュニケーションの能力と読み書 きの能力を同時に養成するBIG BOOKS法,実際の社会的文脈において言語体験をすることによりコ ミュニケーションスキルを学ぶとするWHOLE LANGUAGE法,大きなテーマを設定し,学習活動が 動機付け,関連性,および適切な方法をもって行われる統合的テーマ法の4つのアプローチが実践さ れ,成果をあげており,我が国の英語教育にも十分摘要できることが判明した。 キーワード:パプアニューギニア,二言語併用教育,言語教育,教育改革,多言語社会 *立命館大学産業社会学部教授 2005年3月 143 『立命館産業社会論集』 第40巻第4号 〔研究ノート〕

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Page 1: パプアニューギニアにおける言語教育 · ぞれ国内の共通語として使われている。(Ethno-logue 2005

はじめに

昨年度,国際協力事業団(JICA)・ソニー開

発パートナー事業でパプアニューギニア国(以

下,PNGとする)を訪問する機会があり,教

育制度と言語教育の現状を視察することができ

た。同国には約500の言語が存在しているため,

部族間のコミュニケーションをはかり,国全体

をまとめるための公用語としての英語を習得す

ることが国家目標となっている。そのため,前

期初等教育(9-11才児)においては,各部族

の土着語(vernacular,以下,コミュニティー

語とする)に加えて,公用語である英語も同時

に学ばせる二言語併用教育(B i l i n g u a l

Education,以下,バイリンガル教育とする)

が行われている。つまり,家庭やコミュニティ

ーではコミュニティー語で生活しており,学校

ではコミュニティー語を基盤とした英語を習得

する授業が行われている。生徒にとっては,コ

ミュニティー語は国語(母語)であるため,コ

ミュニティー内で生活するためには欠くことの

できない言語であり最も重視されているが,同

時にコミュニティー間でのコミュニケーション

の手段としての英語(外国語)も習得する必要

がある。そのためPNGでは,国語力としての

確固たる基盤があってこそ,外国語を学べると

いう思想のもとに,コミュニティー語を基盤と

した言語教育がなされている。

パプアニューギニアにおける言語教育

吉田 信介*

パプアニューギニアでは,前期初等教育の段階から各部族のvernacular(土着語)に加えて,公用

語である英語も同時に学ばせる二言語併用教育を行っている。そこでは,国語力としての確固たる基

盤があってこそ外国語を学べるという思想のもとに,vernacularを基盤とした言語教育がなされてい

る。これは文部科学省の「『英語が使える日本人』の育成のための戦略構想の策定について」―英語

力・国語力増進プラン―で指摘されているような,「英語力のみならずあわせて,国語力の涵養も図

る」ことを目標としている我が国の言語教育に多くの示唆を与えるものである。具体的には,言語は

経験から学ぶものであるとするDO-TALK-RECORD法,オーラルコミュニケーションの能力と読み書

きの能力を同時に養成するBIG BOOKS法,実際の社会的文脈において言語体験をすることによりコ

ミュニケーションスキルを学ぶとするWHOLE LANGUAGE法,大きなテーマを設定し,学習活動が

動機付け,関連性,および適切な方法をもって行われる統合的テーマ法の4つのアプローチが実践さ

れ,成果をあげており,我が国の英語教育にも十分摘要できることが判明した。

キーワード:パプアニューギニア,二言語併用教育,言語教育,教育改革,多言語社会

*立命館大学産業社会学部教授

2005年3月   143『立命館産業社会論集』第40巻第4号

〔研究ノート〕

Page 2: パプアニューギニアにおける言語教育 · ぞれ国内の共通語として使われている。(Ethno-logue 2005

本稿では,最初,PNGの全般的状況と教育

事情について述べ,次に,教育改革およびそれ

に対する各国の援助とJICAプロジェクトを紹

介する。そして,本稿の核心部分である移行型

バイリンガル教育とそれが実施されている前期

初等教育について述べ,そこでの学習目標・学

習観・教授法について詳述する。さらに,効果

的な授業を行うための生徒中心の授業運営法と

教室のレイアウトを紹介し,最後に,PNGの

言語教育から得られた知見をもとに,日本の英

語教育への示唆を述べる。

1. PNGの現況と教育事情

(1)国勢

a)全般的データ

面積は46.2万平方kmで日本の約1.25倍,人口

は570万人,首都はPort Moresbyで人口20万人,

人種はメラネシア人(Melanesian)で公用語は

英語である。宗教はキリスト教徒が多数を占め

るが,祖先崇拝等伝統的信仰も存在する。通貨

はKINAキナ(1K=0.30米ドル)が流通している。

b)歴史

1884年のドイツ保護領以来,イギリス領,オ

ーストラリア領と列国の植民地を経て,第二次

大戦中は日本軍が進駐したが,戦後オーストラ

リアを施政権者とする国連の信託統治地域とな

り,1975年に独立した。

c)政治・経済

政体は立憲君主制で,元首はエリザベス二世

女王,首相は議会により選出される。700以上

の部族が存在し,国家よりも分散孤立型社会構

造(Wan Tok System)を形成している。経済

はオーストラリア資本が握るが,商業セクター

は中国系が中心である。主要産業は金,原油,

椰子油,珈琲,木材であり,一人当りの年間所

得は$530で,日本$31,106の約60分の1であ

る。道路網が整備されておらず,飛行機で野菜

を運ぶと10倍の値がつく。

d)社会状況

人口増加率は2.5%と高く,地方から職を求

めて首都へ流入し,同一部族(Wan Tok)ごと

にセトルメント(Settlement)を形成する。近

代的土地所有制がなく慣習的土地制度(Custo-

mary Land)をとっているため,境界線をめぐ

っての争いが部族間の戦争に発展する。ハイラ

ンドに麻薬の原料となる植物が自生しており,

銃器と交換されている。都市部では,出身部族

犯罪集団(Rascal)による強盗が多発している

が,財産犯のため無抵抗で金品を差し出せば解

放される。国土全体がマラリアの高度汚染地域

(海抜1500m以下)で,国民の一割が感染し,

その内一割が死亡している。

e)言語

固有の文化は700以上,同一の部族内で使わ

れるコミュニティー語は500以上存在する。そ

のため,部族間のコミュニケーションはピジン

語(Tok Pisin)や モツ語(Hiri Motu)で行わ

れる。英語の母語話者が12万人,ピジン語の使

用者が国民の約半数の280万人と言われている。

ピジン語は,外部からきた貿易商人などと現地

人によって異言語間の意思疎通のために自然に

作られた混成語で,パプアニューギニアとソロ

モン諸島では英語と現地の言語が融合し,それ

ぞれ国内の共通語として使われている。(Ethno-

logue 2005)

f)観光

自然に恵まれ,熱帯の高山への登山客が世界

中から集まり,あらゆるマリンスポーツのメッ

カであるが,一方で,旧日本軍戦死者の遺族に

立命館産業社会論集(第40巻第4号)144

Page 3: パプアニューギニアにおける言語教育 · ぞれ国内の共通語として使われている。(Ethno-logue 2005

よる遺骨収集団が毎年のように訪問する土地で

もある。

(2)教育事情

1人当たりのGNPでは中所得国にランクさ

れているものの,教育面では遅れており,教育

関連施設の整備や教育システムの改善が叫ばれ

ている。特に,女性への平等な権利の保障や社

会参加のためには教育が不可欠という認識のも

と,政府も,教育政策を一番重要な課題として

挙げている。そのため,1995年の教育改革では,

「全ての国民に質の高い教育機会を提供するこ

と」および「教育システムを改善する」という

二大目標を掲げている。具体的には,全児童に

3年間の初等前教育と,6年間の初等教育,合わ

せて9年間の基礎教育を修了させ,中等教育へ

の進学率を50%以上にするという目標が立てら

れている(Department of Education 2002b:

p.3)。

2.教育改革と各国の援助

(1)教育目標

PNGでは,従来の教育への反省から,①よ

り多くの子供たちを学校へ通わせて,そこに定

着させ,②より質が高く,生活に密着したカリ

キュラムのもとで,③費用効果の高い教育を行

うことが検討された。その結果,1995年に実施

された教育改革では,憲法や政策で謳われてい

る国家建設に必要な価値観が反映されたものと

なっており,国民が教育を通して獲得すべきも

の と し て 次 の 7 項 目 が 示 さ れ て い る

(Department of Education 2002b:p.8)。

1)Integral Human Development「他者との協

同による統合的な人間発達」

2)Equality and Participation「すべての国民

の平等と国政へ参加する権利」

3)National Sovereignty and Self-Reliance「政

治的経済的独立と主体的国家体制の確立」

4)Natural Resources and Environment「天然

資源の有効利用と環境保護」

5)Papua New Guinea Ways「パプアニューギ

ニアの伝統と独自性の尊重」

6)Rights「表現・結社・個人の自由など,国

民としての基本的人権」

7)Responsibilities「憲法遵守,国家資源の保

護,納税など,国民としての責務」

(2)新教育制度

1995年の教育改革以来,新しい教育制度のも

とで,基礎教育(Basic Education)が9年間,

中等教育(Secondary Education)が4年間,

それぞれ実施されており,その後,高等教育

(University & College)が続く。1998年の調査

では,基礎教育と中等教育を合わせた就学率は

55.8%で,高等教育は9.2%であった。

基礎教育は,最初の3年間の初等前教育

(Elementary Education),および次の6年間の

初等教育(Primary Education)に分かれる。

初等前教育(就学前生,1年生,2年生の3学

年=6-8才)では,コミュニティー語を用い

て,コミュニティー中心のカリキュラムのもと

で,統合的な人間形成が行われる。次の段階で

ある初等教育のうち,前半3年間の前期初等教

育(3,4,5年生=9-11才)では,引き続

きコミュニティー語での教育が行われ,徐々に

英語に切り替えられ,後期初等教育(6,7,

8年生=12-14才)に至ると,ほぼ全部が英語

での授業になる。ここでは,コミュニティーで

生きるためのコミュニケーション能力や科学の

145パプアニューギニアにおける言語教育(吉田信介)

Page 4: パプアニューギニアにおける言語教育 · ぞれ国内の共通語として使われている。(Ethno-logue 2005

知識や算数などのスキルを身につけさせ,全人

間的な教育が行われる。そして,従来のアカデ

ミズム重視教育を反省し,90%の子どもは卒業

後村で生活をするというPNGの現状と実生活

に即した自己開発(Personal Development)型

授業(エイズ教育などを含む)が取り入れられ

ている。

中等教育(Secondary Education)は,前期

中等教育(Lower Secondary=15-16才)と 後

期中等教育(Upper Secondary=17-18才)が

2年ずつ行われる。前期中等教育には,さまざ

まな職業訓練学校(vocational school)や技術

学校(technical school)が含まれ,後期中等教

育は,技術専門学校(technical college)での

就業前技術訓練(PETT=Pre-employment

Technical Training )が行われる。ここでは,

自己の文化を深く理解すると同時に他者にも理

解を示すこと,国土の資源を活用するための技

術を身につけること,さまざまな場面での問題

解決能力を習得すること,英語のみならず他の

外国語も習得すること,社会の問題を理解し,

解決できる能力をつけること,スムーズなコミ

ュニケーションができる能力を養うこと,市民

としての教養と人格形成を行うことなどが目標

としてあげられている。

高等教育については,全国に6箇所ある大学

(教員養成大学を含む)でさまざまな分野の教

育・研究が行われている(Department of

Education 1999b:pp.8-19)。

(3)各国の援助プロジェクト

教育改革の目標達成のため,世界銀行との共

同による教育開発,オーストラリアの支援によ

る初等教育や教師養成,ドイツGTZによる職業

訓練のパイロット訓練など,先進国による多く

のプロジェクトが実施されているが,日本もさ

まざまな形でこの改革に貢献している。

(4)国際協力事業団(JICA)・ソニー開発パ

ートナー事業

筆者は,初等・中等教育における教育改革事

業の一部として行われたJICAおよびソニー株

式会社による開発パートナー事業「パプアニュ

ーギニア国ライブ授業放送を利用した遠隔地教

育(第2年次)」に遠隔地教育専門家(パイロ

ット教師研修セミナー担当)として参加する機

会を得た(事業期間:2002年6月より2004年5

月まで;筆者の参加期間:2003年8月12日より

立命館産業社会論集(第40巻第4号)146

図1 PNGの教育制度(Department of Education 1999b:p.12)

Page 5: パプアニューギニアにおける言語教育 · ぞれ国内の共通語として使われている。(Ethno-logue 2005

30日まで)。

このプロジェクトでは,新しく追加されたカ

リキュラムを実施する際に障害となるさまざま

な問題点,すなわち,①中等教育修了後,研修

のみにより教師としての資格を取得できるた

め,教師の質が低いこと,②遠隔地,僻地での

教育が困難であること,③教材が不足している

こと等を克服するための方策として,テレビ放

送が活用された。その理由は,①PNG全土に

教育の機会を与えること,②均質な教育を行え

ること,③高いレベルの教育が可能であること,

④学習効率の向上が見込めることであった。

具体的には,首都ポートモレスビーでモデル

教師により行われる新カリキュラムのモデル授

業をVTR録画し,それを遠隔地のパイロット学

校へ配信することにより,パイロット教師と生

徒がTV画像を観ながら,同時進行で授業を行

うという方法がとられた。

2年間の事業で,①専門科目を履修していな

い教師にとっては,長期にわたりモデル授業を

視聴することで,専門教科の知識と指導法を同

時に学ぶことができたこと,②生徒にとっては,

教科書や教材が不足している学校でも,TV画

面を通じて提供された学習効果の高い授業を受

けることが可能となったこと,しかしながら,

③ライブ番組の場合,教師教育の観点からは,

番組内では適切な教師向けの指導や指示ができ

ず,教師教育支援の視聴覚教材をTV番組での

配信やVTR教材での配布が望まれることがそれ

ぞれ判明した。(Yoshida S. and Seta, C. 2004:

pp.1-11;SONY Corporation 2004)

3.PNGでの言語教育

(1)移行型バイリンガル教育 (Transitional

Bilingual Education)

一連の教育改革のうち,1999年に文部大臣通

達(Department of Education 2002a:pp.9-10)

により,全学校における言語教育の指針が示さ

れた。それによると,前期初等教育においては,

生徒が属するコミュニティーの言語,文化,精

神,労働を基盤に学習活動が開始なされなけれ

ばならないとしている。つまり,それまでの初

等前教育においては,個々のコミュニティー語,

またはピジン語で学習活動を行ってきた生徒

が,初等教育に進んだ途端に公用語である英語

(通常,教室で英語を習得するには最低5年か

かると言われている)での教育を受けた場合,

苦痛や混乱を伴い,教育的にも効果が低いと考

えられる。そこで,それまでの間,積極的にコ

ミュニティー語を使用し,徐々に英語も導入し

ていくという移行型バイリンガル教育が採用さ

れることになった。

つまり,初等前教育においては,最初の2年

間(就学前生,1年生)は全てコミュニティー

語で教育が行われるが,最後の1年間(2年生)

は,口頭での英語が導入される。内容は,簡単

な質問,やさしい物語,ラジオ番組などに単発

的に回答させるものである。

前期初等教育においては,最初の1年間(3

年生)は引き続き主にコミュニティー語で授業

が行わるが,次の1年(4年生)の終わりには

英語が積極的に使用され,授業時間の40%がコ

ミュニティー語に減少する。さらにそれが5年

生では30%と減少する。この時点でのコミュニ

ティー語は,主に自由作文やディスカッション

でのみ使用されることになる。

147パプアニューギニアにおける言語教育(吉田信介)

Page 6: パプアニューギニアにおける言語教育 · ぞれ国内の共通語として使われている。(Ethno-logue 2005

このように,授業での英語使用の割合は徐々

に増えていくが,並行してコミュニティー語の

運用能力も維持し続けることも重要な目標とし

てあげられている。(Department of Education

2002a:pp.1-28)

(2)前期初等教育

移行型二カ国語教育がおこなわれる前期初等

教育の言語教育の目標は,コミュニケーション

能力,思考力,自己開発の養成にある。(Depart-

ment of Education 1998:pp.5-9)

A)コミュニケーション能力(Communication)

コミュニケーション能力については,コミュ

ニティー語と英語のそれぞれについて,次のよ

うな目標が掲げられている:

1)コミュニティー語:4技能を通じて,生徒

の情緒的・知的レベルに合った社会的場面にお

いて,効果的なコミュニケーションができる:

・Listening:放送,会話,ディベートなどの

幅広い場面で,批判的に聞き取ることができる。

・Speaking:さまざまな文脈や目的で,説得,

説明,物語り,アナウンスなどの技法を用いて

効果的に伝えることができる。

・Reading:さまざまな目的で書かれたものを

読んで理解することができる。

・Writing:形式に則り,論旨の通った広範囲

の内容のものを自力で書くことができる。

2)英語:4技能を通じて,限られた社会的場

面において,機能的なコミュニケーションがで

きる:

・Listening:限られた場面で,聞き取ること

ができる。

・Speaking:物語り,発問,意思表示などの機

能的な表現をすることができる。

・Reading:易しく書かれたものを限られた目

的で読んで理解することができる。

・Writing:形式に則り,論旨の通った単純な

内容のものを自力で書くことができる。

B)思考力(Thinking Skills)

同時に養成される思考力についても,コミュ

ニティー語と英語のそれぞれについて,次のよ

うな目標が掲げられている:

1)コミュニティー語:生徒の情緒的・知的レ

ベルに合った問題解決能力,創造的言語活動,

豊富な知識を身につけることができる。

2)英語:カリキュラムの大部分を理解して身

につけた上で,問題解決や創造的言語活動を部

分的に行うことができる。

C)自己開発(Personal Development)

さらに,PNGでの教育の特色である統合的

な人間発達( Integral Human Development)

も盛り込まれている。ここでは,次の三つの目

標がある:

1)文化(Culture)

言語は文化にとって必要欠くべからざるもの

であり,他の文化や言語との相違を理解すべき

である。

2)社会的文脈(Social Context)

言語は社会的場面によって使い分けなければ

ならない。

3)自尊心(Self-esteem)

自己の言語を尊重すると同時に,他者の言語

をも習得することで達成感を得る。

(3)学習観

上記の目標を達成するために,教育手法とし

て,意味のある状況下で,問題解決能力,意思

決定能力,創造力,および想像力を養成する発

見学習的手法(Discovery Learning)が取り入

れられている。すなわち,言語というものは現

立命館産業社会論集(第40巻第4号)148

Page 7: パプアニューギニアにおける言語教育 · ぞれ国内の共通語として使われている。(Ethno-logue 2005

実世界を投影し,生徒の実際の生活に密着した

経験や必要性に合わせて学ぶものであり,規則

としてではなく伝達手段として習得していくも

のであるととらえている。さらに,人間には,

聞いたものの20%を,見て聞いたものの40%を,

そして,自ら発見したものの80%を記憶する習

性があるため,この手法を積極的に取り入れる

必要があるとしている。

(4)教室活動

実際の教室においては,一つのテーマを設定

して,生徒中心の学習活動を行わせることによ

り,話すこと(talking),聞くこと(listening),

読むこと(reading),書くこと(writing)を統

合的に学ばせているが,クラスサイズ,教材の

整備状況,地域文化の特性,生徒の興味関心と

経験,教師の能力と関心によって,さまざまな

アプローチが試みられている。次に,それらの

うちの代表的なものを四点(アプローチ1,2,

3,4)あげて紹介する。(Department of Edu-

cation 2002a:Module2:pp.6-31)

(5)アプローチ

_ア_プ_ロ_ー_チ_-_1

①「する-話す-記録する」

(DO-TALK-RECORD法=以下,DTR法とす

る)

この方法は,次の三つの過程を経て行われる:

<する(DO)>

・言語は経験から学ぶものである。

・言語接触は相互作用の経験の一つである。

・伝統的学習法では,教師が「これはこうする」

で始めるが,DTR法では「これはどうやれば

良いでしょう」という問いかけから始まる。

<話す(TALK)>

・「クラス活動で何をしてきたか」について話

させ,その際「5W1H法」で問いかける。

・同時に,新しい語彙を習得していく。

<記録する(RECORD)>

・情報をどのように記録するかを生徒に考えさ

せる。

・そのことにより生徒の意志決定能力を育てる。

②DTR法による学習ステップ

具体的な学習段階は次の五つである:

第一段階:学習目的を示す(板書,口頭)

第二段階:活動開始前の「話す」

・生徒と活動内容について計画する。

・話題について生徒が持っている知識を話す。

・何を発見し,行い,学ぶかを話し合う。

・英語の新語彙をコミュニティー語で紹介する。

・記録の方法について話し合う。

・話題について生徒が何を学びたいかを話し合

う。

第三段階:「する」

・実物をクラスへ持ち込んだり,校外へ見学に

出かけたりする。

・活動中の生徒全員,ペア,グループを教師が

補助する。

・適宜設問して解答させたり,他の活動方法を

見つけさせたりする。

第四段階:活動開始後の「話す」

・発見したことを話す。

・5W1Hの質問をする。

・生徒の意見を尋ねる。

・関連した活動について話し合う。

第五段階:記憶のための「記録」

・個人,ペア,グループによる作画

・文章,物語,歌,詩の作成

・他の芸術活動の推奨

③実践例 <身長比較活動>

149パプアニューギニアにおける言語教育(吉田信介)

Page 8: パプアニューギニアにおける言語教育 · ぞれ国内の共通語として使われている。(Ethno-logue 2005

教室での実践例を次に示す:

・「する」

グループの中で身長が高いものから低いもの

へ順番に並ぶ。

・「話す」

身長を比較するのに必要な英語表現を列挙さ

せる:

・Who is the tallest in your group?

・Who is the shortest?

・Who is the second tallest/shortest?

・Who is middle height?

・Are any people the same height? etc.

・「記録する」

全生徒に帯紙を与え,それぞれの身長と同じ

長さに切らせて,氏名とグループ内での比較結

果(the tallestやthe shortest)を記入させる。

それらをグループごとに大きな紙に貼り付け

て,教室の後ろに掲示する。

_ア_プ_ロ_ー_チ_-_2

①BIG BOOKS法

これは,オーラルコミュニケーションの能力

と,読み書きの能力を養成するための方法で,

話題,筆者の考え方,言語形態,文法,語彙が

全て新出であるテキスト(書籍)を教材として

選び,クラスでの学習活動に用いる。学習活動

は次の三つからなる:

・読書前の活動

生徒との対話をつうじて物語の話題を紹介す

る。

・読み

教師が豊かな表情をこめて音読する。

・読書後の活動

活動を指示する。

②実践例 <郵便局に関するテキスト>

未知の題材を使って,クラスを四つのグルー

プに分けて活動させる:

・グループ1

対象:Phonicsの知識のない生徒

活動:本文に出てくる“stamps”と同じ「st-

音」で始まる単語を,古い新聞記事で見つけさ

せる。

・グループ2

対象:ある程度読み書きの能力があり,個別

作業が可能な生徒

活動:郵便局で使われている言語表現を用い

て,直前に行ったビーチに関する情報を作文さ

せる。例えば,We go to the Post Office to...と

いう表現をWe go to the beach to...と利用する。

・グループ3

対象:読解力を習得し始め,さらにその発展

が期待できる生徒

活動:教師が,本文と同じ内容で異なった表

現を用いたCloze Testを作成し,解答させる。

例:We go to the Post Office to buy( ).

・グループ4

対象:校外活動に参加でき,ある程度の書く

力が身についた生徒

活動:実際に郵便局を訪問して,局員の仕事

を観察した後,その内容を作文する。

_ア_プ_ロ_ー_チ_-_3

①WHOLE LANGUAGE法

この方法では,実際の社会的文脈において言

語体験をすることにより,コミュニケーション

スキルを学ぶ。具体的には,人々との交流,事

物の描写,交渉,情報の共有,娯楽,広告,指

示などにおける言語表現を,実地体験しながら

学ぶものである。学習活動は,次の六つの言語

習得の原理に基づき実施される:

立命館産業社会論集(第40巻第4号)150

Page 9: パプアニューギニアにおける言語教育 · ぞれ国内の共通語として使われている。(Ethno-logue 2005

1)生徒は,目標言語に浸る(immersed)こ

とで学ぶ。

・具体的には,グループ活動,ペア活動,掲示

物,写真,書籍,ポスター,単語表などを利用

する。

2)生徒は,目標言語が全体(whole)として,

または自然なものとして示された時に学ぶ。

・4技能は別々ではなく統合的に学習する。

3)生徒は,課題が意味を持つ(meaningful)

ときに学ぶ。

・学習は,生徒が必要とし,興味を持つものを

開始点とする。

4)生徒は,モデル(手本)から学ぶ。

・教師は手本を示して,説明しなければならない。

5)生徒は,学習に積極的に関与した時に学ぶ。

・クラスで生徒は作家となり,評論家となる。

6)生徒は,テキスト(書籍)全体を学習する

ことで,言語能力が向上する。

・一冊のテキストを読み,内容にもとづく学習

活動により,スペル,正書法,phonicsを学ぶ。

②実践例 <冒険物語>

次は,「冒険」についての物語を学習する際

に,Whole Language法を教室で活用する場合

の教師と生徒の応答例である:

・教師:(今までに非日常的な体験をしたこと

があるか尋ねる)

“Have you ever had an unusual experience? Tell

us about your experience.”

・生徒:(5H1Hで体験を発表)

・教師:(そのような体験を英語で何というか

尋ねる)

“Would anyone know the word for unusual

experience?”

・生徒:

“adventure”

・教師:(冒険について書かれたテキストの紹

介をする)

“Today, we are going to read about an adventure

story. You will find out what makes this story an

adventure.”

・教師:(表情豊かにテキスト “Midnight

Adventure” を音読)

・教師:(生徒が記憶している事項を自由に列

挙させる)

“What can you remember about the story?”

・生徒:(重要な部分のみ再現し,教師が板書)

・教師:(執筆の意図,想定読者,キーワード

を述べさせる)

“Why do you think the writer wrote this?”

“Who did he write it for?”

“What are the important words in this text?”

・生徒:(自由に発言し,教師が板書)

・教師:(テキスト中の未知語を列挙させる)

“What are some words which you are not

familiar with?”

・生徒:(未知語のスペルを述べ,教師が板書)

・教師:(それらを品詞分類させる)

“Let’s group them into parts of speech.”

・生徒:(品詞分類し,教師が板書)

・教師:(重要な動詞を列挙させ,時制の区別・

理由を述べさせる)

“Pick out five important verbs from the story.”

“What tense are these verbs in? Why?”

・生徒:(自由に発言し,教師が板書)

・教師:(テキストに習い,各自に冒険談を執

筆させる)

“Let’s write our own stories like this one.”

_ア_プ_ロ_ー_チ_-_4

①統合的テーマ法

151パプアニューギニアにおける言語教育(吉田信介)

Page 10: パプアニューギニアにおける言語教育 · ぞれ国内の共通語として使われている。(Ethno-logue 2005

この方法の特徴として次の四点があげられる:

1)複数の下位テーマからなる比較的大きなテ

ーマが設定される。

2)学習活動が動機付け,関連性,適切な方法

をもって行われる。

3)年間カリキュラムを複数のユニットに分割

し,それぞれのユニットについて,一から四週

間にわたって継続学習される。

4)さまざまな科目(語学を含む)を横断的に

網羅したコンテントベースのカリキュラムが設

計される。

②方法

次の13のステップを経て,授業準備が行われる:

ステップ1:適切なテーマを選ぶ。

ステップ2:ブレインストームで概念地図

(Concept Map)を作製する。

ステップ3:扱われる科目名と内容を決定する

(Theme Web)。

ステップ4:内容を有機的に結びつけるストー

リーを構築する。

ステップ5:各科目で扱う内容の目標を明確に

する。

ステップ6:各科目での学習結果の評価方法を

作成する。

ステップ7:学習達成に生徒が必要とする知

識,スキル,学習態度を列挙する。

ステップ8:学習活動の手順を作成し,内容の

提示,実施,展開,成果の提示方法を示す。

ステップ9:科目別活動とその評価方法を統合

化する。

ステップ10:準備に必要な知識の供給源および

学習活動後に予想される成果を決定する。

立命館産業社会論集(第40巻第4号)152

図2 テーマ「川」でのステップ3 (Theme Web)(Department of Education 2002a:p.58)

●実践例

Page 11: パプアニューギニアにおける言語教育 · ぞれ国内の共通語として使われている。(Ethno-logue 2005

ステップ11:学習活動に必要な時間を計算する。

ステップ12:学習活動時間配分表を作成する。

ステップ13:指導案にもとづき授業を行う。

4.効果的な授業を行うための方法

以上のようなアプローチを円滑に実施し,効

果的な授業を行うための方策として,次のよう

な生徒中心のグループ学習を行うことが提唱さ

れている:

(1)生徒中心の授業運営

(A Child Centered Classroom)

(Department of Education 2002a:Module3:

pp.1-48)

A)グループ学習の効用

生徒は,本来,多様な能力,才能,強さ,知

識,スキル,価値観,信条を備えている。また,

学習活動においても,さまざまな動機,経験,

背景知識,関心,必要性を持っている。そのた

め,多くの場合,生徒は小集団に分かれての学

習により成果を得ることができる。教師の側か

らも,クラス全体を概観できると同時に,教師

の補助を必要としている個々の生徒に注意を払

う時間を取ることができる。

B)グループのタイプ

目的別,科目別にさまざまなタイプのグルー

プ編成を行う必要がある:

1)等質グループ(Same ability groups)

グループメンバーの能力が一定であるため,

グループ全体が一斉に能力を上げることが可能

である。科目では,算数,語学,体育,音楽が

向く。

2)混成グループ(Mixed ability groups)

グループメンバーが多様であるため,能力の

違いを越えて異なったアイデア・知識・スキル

を共有できる。特に,未熟な学習者は,熟達し

た生徒から学び取ることができる。科目では,

コミュニティー生活や環境教育に向く。

3)社会的グループ(Social groups)

生徒間で感情的に調和のとれた雰囲気が形成

され,グループ内での競争意識を和らげること

153パプアニューギニアにおける言語教育(吉田信介)

図3 統合的テーマ法による授業手順(Department of Education 1998:p.51)

Page 12: パプアニューギニアにおける言語教育 · ぞれ国内の共通語として使われている。(Ethno-logue 2005

ができる。科目では,美術,工芸,体育,音楽

が向く。

4)無作為グループ(Random groups)

多様な能力,関心,必要性を備えたメンバー

により,一つの目標に向かってグループで学習

することにより,さまざまな成果を得ることが

できる。科目では,小集団討議,美術,工芸,

体育が向く。

C)グループ学習の方法

授業は,次の五段階にそって進められる:

1)準備段階(Preparation Stage)

・担当学年レベルのテキストを選択する。

・初見で朗読させて,読み間違いを数える。

・読み間違いの数によりグループ分けをする。

2)説明段階(Briefing Stage)

・学習課題の提示,学習方法の指示,グループ

での役割,教材説明を行う。

3)学習活動(The Activity)

・生徒はグループで共同作業を行い,教師はモ

ニターや補助,または任意グループへ参加する。

[注意1] 個人で学習が可能な,新しい概念,

スキル,知識を教授する場ではないことに留意

すべきである。

[注意2] 板書や配布物に書かれたものは,生

徒が理解できなければならない。そのためには,

既習語彙を用い,図や写真を使って,学習内容

をわかりやすく説明する必要がある。

4)結果の共有(Sharing Outcomes)

・各グループの成果である解答・企画・物語な

どは全員に紹介され,共有されなければならな

い。そのためには,成果物を教室に掲示したり,

製本したりすることも重要である。

5)感想(Reflections)

・学習活動後,教師と生徒全員で反省会を行い,

評価される点と,反省すべき点について議論する。

(2)教室のレイアウト(Ideas for arranging

your classroom)

(Department of Education 2002a:Module3:

p.11)

以上のように,それぞれの目的に合った有効

なアプローチと,効果的なグループ学習の方法

以外に,授業運営に大きな影響を与えるものと

して,教室のレイアウトがある。

例えば,生徒の描いた絵,工作,グループ作

業の成果物,作文などの学習成果物を教室内に

展示することにより,教室の雰囲気が快活になる。

展示方法としては,①作品をテープで壁に貼

り付ける,②教室を横断するロープに展示物を

ぶら下げる,③鎧窓に洗濯ばさみで展示する,

④衝立やラックを竹やココナツ材で製作する,

⑤教室の隅に芝生と岩と板で専用コーナーを作

り,新聞,雑誌,作文を置くと簡易読書コーナ

ーができるので,そこへ生徒が書いた作文を展

示する。多くの教師は,これらの小さな本が最

も人気の高い読み物であると指摘している。教

卓は,常にクラス全体を見渡せる場所に配置し,

教室全体は生徒が安全に行動できるようにレイ

アウトされるべきである。

5.結論

PNGという多文化多言語社会で行われてい

る言語教育を詳細に検討してきたが,そこでは,

生徒が属するコミュニティーの言語を用いた教

育を徹底して行うことにより,国語力としての

確固たる基盤を築いた上で,初めて外国語であ

る英語が学べるという思想が貫かれていた。こ

のことは,「『英語が使える日本人』の育成のた

めの戦略構想の策定について」―英語力・国語

力増進プラン―(文部科学省 2002)で指摘され

立命館産業社会論集(第40巻第4号)154

Page 13: パプアニューギニアにおける言語教育 · ぞれ国内の共通語として使われている。(Ethno-logue 2005

ているような,「日本人の多くが,英語力が十

分でないために,外国人との交流において制限

を受け,適切な評価が得られない」と同時に,

「しっかりした国語力に基づき,自らの意見を

表現する能力も十分とは言えない」ため,「英

語力のみならずあわせて,国語力の涵養も図る」

ことを目標としている我が国の言語教育に多く

の示唆を与えてくれた。

特に,コミュニティー語(日本での国語にあ

たる)を用いて,生徒が自分の情緒的・知的レ

ベルに合った問題解決能力を身につけ,創造的

言語活動を行うことにより,豊富な知識を獲得

できることを確認し,それを基盤として,英語

(日本では外国語)による問題解決能力を身に

つけさせ,創造的言語活動を行えるように徐々

に指導していく手法は大いに参考にすべきであ

ると考えられる。ただし,PNGでは英語は公

用語であり,しかも英語と現地の言語が融合し

たピジン語が広く普及しているという事情の違

いを考慮する必要がある。

また,前期初等教育で採用されている発見学

習法的手法(アプローチ1,2,3,4)は,

我が国においても総合的学習の場面において

徐々に取り入れられつつあるが,それらは日本

語によるものであり,外国語学習においては未

発達の段階である。そのため,PNGで行われ

ている方法が今後大いに参考になるものと思わ

れる。

参考文献

Department of Education(1998)“Lower Primary

Language Syllabus, Grade 3-5”, Department of

Education, PNG.

Department of Education( 1999a) “Bilingual

Education & Bridging to English”, Department of

Education, PNG.

Department of Education(1999b)“Primary Edu-

cation Handbook” Department of Education,

PNG.

Department of Education(2002a) “In-service Units

to Support the implementation of Edition 1 Lower

Primary Reform Curriculum" Study Guide, Unit

2:Bridging to English in the Lower Primary,

Department of Education, PNG.

Department of Education( 2002b) “National

Curriculum Statement-2002” Department of

Education, PNG.

Ethnologue(2005)“Languages of Papua New

Guinea” retrieved from http://www.ethnologue.

com/

文部科学省(2002)「『英語が使える日本人』の育成

のための戦略構想の策定について」retrieved

from http://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/

chousa/shotou/020/sesaku/020702.htm

SONY Corporation(2004)『テレビ授業放送を利用

した遠隔地教育(パプアニューギニア)』

Retrieved from http://www.sony.co.jp/SonyInfo/

Environment/ people/community/

Yoshida, S. and Seta, C.(2004)“JICA Partners

Project-Distance Education by Utilizing Live

Recording of Classroom”, SONY Corporation.

155パプアニューギニアにおける言語教育(吉田信介)

Page 14: パプアニューギニアにおける言語教育 · ぞれ国内の共通語として使われている。(Ethno-logue 2005

立命館産業社会論集(第40巻第4号)156

写真1 モデル授業の録画風景 写真2 パイロット教師研修セミナー

写真3 山岳地域の学校 写真4 海岸地域の学校

写真5 ライブ放送による遠隔授業(1) 写真5 ライブ放送による遠隔授業(2)

Page 15: パプアニューギニアにおける言語教育 · ぞれ国内の共通語として使われている。(Ethno-logue 2005

157パプアニューギニアにおける言語教育(吉田信介)

写真7 グループワークの発表 写真8 教室に掲示されている時間割

写真9 首都ポートモレスビーの道路 写真10 伝統的な戦闘ダンス

写真11 マーケットでの買い物 写真12 山村の住人

Page 16: パプアニューギニアにおける言語教育 · ぞれ国内の共通語として使われている。(Ethno-logue 2005

立命館産業社会論集(第40巻第4号)158

Language Education in Papua New Guinea

YOSHIDA Shinsuke*

Abstract: Language education at Lower Primary in Papua New Guinea is predominantly bilingual-

teaching and learning using two languages, vernacular and English. Both will be taught in the context

of meaningful situations, to develop a range of language and thinking skills. These skills are to assist in

problem-solving and decision-making, and resource, social and personal development, at a level of

appropriate to the age and community role of the students. Creativity and imagination will be

encouraged in both English and, to a more developed extent at this level, in vernacular. The approach

to teaching emphasizes language as a means of communication for real purposes, rather than a set of

structures and rules. The activities used in teaching are child-centered, and skills of talking, listening,

reading and writing are taught in an integrated way, based on the central experience of shared reading

related to a theme. By the end of Primary Education, the use of the first language is decreased, and is

limited to creative writing and group discussion. However, throughout the education system, first

language literacy and oracy is maintained and expanded as much as possible. Taking this language

education system as a model, we may be able to improve not only our English education but the first

language education in Japan.

Keywords: Papua New Guinea, bilingual education, vernacular, primary education

*Professor, Faculty of Social Sciences, Ritsumeikan University