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ポートフォリオ理論とは 確率と期待値 分散と標準偏差 共分散と相関係数 期待効用 ポートフォリオ理論入門1 基礎ファイナンス 山嵜 法政大学大学院 経営学研究科 1 / 40

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ポートフォリオ理論とは 確率と期待値 分散と標準偏差 共分散と相関係数 期待効用

ポートフォリオ理論入門1基礎ファイナンス

山嵜 輝

法政大学大学院経営学研究科

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ポートフォリオ理論とは 確率と期待値 分散と標準偏差 共分散と相関係数 期待効用

内容

1 ポートフォリオ理論とは

2 確率と期待値

3 分散と標準偏差

4 共分散と相関係数

5 期待効用

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ポートフォリオ理論とは 確率と期待値 分散と標準偏差 共分散と相関係数 期待効用

ポートフォリオ理論とは

1 ポートフォリオ理論とは

2 確率と期待値

3 分散と標準偏差

4 共分散と相関係数

5 期待効用

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ポートフォリオ理論とは 確率と期待値 分散と標準偏差 共分散と相関係数 期待効用

現代ポートフォリオ理論

問題

ある投資家が 1年間の資金運用を考えており、手持ちの資金で以下の金融資産の購入(証券投資)を検討

危険資産:1年後の収益率は不確実(例:株式)

安全資産:1年後のリターンは確定的(例:定期預金、短期国債)

金融資産は 1つだけではなく、複数購入することが可能

⇒証券投資では、リスクとリターンはトレードオフなのが常であるが...

ポートフォリオ理論の目的

保有銘柄の上手な組み合わせ(ポートフォリオ)によって、

同じ期待収益率であれば、リスクの最も小さい資金運用を実現

同じリスクであれば、期待収益率が最も大きい資金運用を実現

『1つのかごにすべての卵を盛ってはいけない』⇒分散投資の重要性を論証

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ポートフォリオ理論とは 確率と期待値 分散と標準偏差 共分散と相関係数 期待効用

ポートフォリオ理論の功績

H. Markowitz (1952)の平均・分散アプローチ

Markowitzは金融資産の収益率の期待値(平均)、及び標準偏差(分散)に着目

金融資産、及びそのポートフォリオの収益率の標準偏差をリスクと定義

投資家が期待効用を最大化する投資行動をとると仮定

⇒最適なポートフォリオは効率的フロンティア上にある

W. Sharpe (1964)の CAPM(Capital Asset Pricing Model)

Sharpeは平均・分散アプローチの枠組みで市場均衡理論を展開

すべての投資家が合理的かつ最適な投資行動をとると仮定

すべての危険資産の時価総額比を市場ポートフォリオと定義

⇒合理的な投資家は市場ポートフォリオと安全資産のみを保有⇒すべての金融商品の期待収益率は証券市場線上にある

Markowitzと Sharpeは 1990年にノーベル経済学賞を受賞5 / 40

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ポートフォリオ理論とは 確率と期待値 分散と標準偏差 共分散と相関係数 期待効用

効率的市場仮説

E. Fama (1970)の効率的市場仮説(Efficient Market Hypothesis; EMH)

金融市場が効率的であるとは、その市場にある全ての金融資産価格が利用可能な全ての情報を常に完全に反映していることをいう

Famaは金融市場の効率性を 3つの段階に分類

Weak Form・・・過去の金融資産価格から未来の価格を予測できない

Semi-Strong Form・・・新しく公開された情報は瞬時に金融資産価格に反映

Strong Form・・・金融資産価格には非公開情報を含むすべての情報が反映

⇒効率的市場仮説はあくまでも「仮説」である

Famaは 2013年にノーベル経済学賞を受賞

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ポートフォリオ理論とは 確率と期待値 分散と標準偏差 共分散と相関係数 期待効用

確率と期待値

1 ポートフォリオ理論とは

2 確率と期待値

3 分散と標準偏差

4 共分散と相関係数

5 期待効用

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ポートフォリオ理論とは 確率と期待値 分散と標準偏差 共分散と相関係数 期待効用

確率を議論する場

標本空間とは?

確率論の基礎概念は試行(trial)であり、試行とは前もって結果の決まっていない現象の観察や実験のこと

ただし、確率論では、起こり得る結果の全体は前もって分かっているとし、この結果全体の集合のことを標本空間(sample space)という

1つ 1つの結果を根元事象(elementary event)とよぶ

根元事象の集まり、すなわち標本空間の部分集合を事象(event)とよぶ

(サイコロの例)サイコロを 1回振ったときのサイコロの目を考える

標本空間は {1,2,3,4,5,6}で 1,2,3,4,5,6の 6つが根元事象

1の目が出る事象は {1}、3の目が出る事象は {3}

2の目が出ない事象は {1,3,4,5,6}、4か 6の目が出る事象は {4,6}

奇数の目が出る事象は {1,3,5}、偶数の目が出る事象は {2,4,6}8 / 40

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ポートフォリオ理論とは 確率と期待値 分散と標準偏差 共分散と相関係数 期待効用

確率

確率とは?

確率とは、対象となる事象の起こりやすさを表す数値

事象 A が起こる確率を p(A)と書くことにする

確率 p は以下の性質を満たす

1. p(標本空間) = 1

2. どんな事象 A に対しても 0 ≤ p(A)≤ 1

3. 互いに排反な 2つの事象 A と B に対して p(A ∪B) = p(A)+p(B)

(サイコロの例)サイコロを 1回振ったときのサイコロの目を考える

標本空間 {1,2,3,4,5,6}の目が出る確率は 1

奇数の目が出る確率は p({1,3,5}) = 36 = 1

2

4か 6の目が出る確率は p({4,6}) = 26 = 1

3または事象 {4}と {6}が排反事象なので p({4})+p({6}) = 1

6 + 16 = 1

3

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ポートフォリオ理論とは 確率と期待値 分散と標準偏差 共分散と相関係数 期待効用

確率変数

確率変数とは?

確率的な試行をしたとき、得られた結果に対して得点をつけることがよくある。さきほどの用語でいうと、根元事象に対して数値を対応させるのである。

この根元事象に対して数値を与えるルールを確率変数という。このルールのことを数学の言葉では関数というので、『確率変数とは、根元事象に数値を与える関数である』といえる。

(サイコロの例)サイコロを 1回振ったとき、奇数なら 1、偶数なら 0となるルール X を課す

この得点は X(1) = X(3) = X(5) = 1、X(2) = X(4) = X(6) = 0

試行前には X、試行後の得点結果には xn,(n = 1,2, . . . ,6)と記すことが多い

この例だと、x1 = x3 = x5 = 1、x2 = x4 = x6 = 0

得点のルール(確率変数)はいろいろ設定できる

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ポートフォリオ理論とは 確率と期待値 分散と標準偏差 共分散と相関係数 期待効用

経験確率

経験確率とは?

偏りのないコインの裏が出る確率は 1/2と事前にわかっているが、「1年後の株式収益率は何%か」といった確率などは事前にはわからない。

このようなとき、過去の N 個のデータ x1,x2, . . . ,xN を集め、これらがそれぞれ均等の確率 1/N で実現したと考える。この確率 1/N をデータ x1,x2, . . . ,xNの経験確率とよぶことにする。

(証券収益率による例)過去 5年の証券 Aの 1年毎の収益率は 9%,−5%,7%,−3%,7%であった。

証券 Aの収益率が −5%になる経験確率は 15

証券 Aの収益率が 7%になる経験確率は 15 + 1

5 = 25

証券 Aの収益率がプラスになる経験確率は 15 + 1

5 + 15 = 3

5

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期待値

期待値とは?

確率的な試行をしたとき、平均的に期待される得点のことを期待値という。数学の言葉でいうと、期待値とは、確率変数 X の平均的に期待される値であり、E[X ]と書き、次式で計算される。

E[X ] := x1p1 +x2p2 + · · ·+xNpN

ここで、xn,(n = 1, . . . ,N)は確率変数の N 個の結果(得点)、pn,(n = 1, . . . ,N)は得点 xn が出る確率

(サイコロの例)サイコロを 1回振ったとき、奇数なら 1、偶数なら 0となる確率変数 X の期待値は?

さきほどのとおり、x1 = x3 = x5 = 1、x2 = x4 = x6 = 0

一方、確率は p1 = p2 = p3 = p4 = p5 = p6 = 16

したがって、

E[X ] = 1× 16+0× 1

6+1× 1

6+0× 1

6+1× 1

6+0× 1

6=

12

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ポートフォリオ理論とは 確率と期待値 分散と標準偏差 共分散と相関係数 期待効用

平均値

平均値

確率変数 X の過去の実現データ x1,x2, . . . ,xN とこれらの経験確率 1/N を用いると、その期待値は次式となる

E[X ] = x11N+x2

1N+ · · ·+xN

1N

=x1 +x2 + · · ·+xN

N

これを一般には平均値という。

(証券収益率による例)過去 5年の証券 Aの 1年毎の収益率は 9%,−5%,7%,−3%,7%であった。

証券 Aの収益率の平均値は

9%+(−5%)+7%+(−3%)+7%5

= 3%

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ポートフォリオ理論とは 確率と期待値 分散と標準偏差 共分散と相関係数 期待効用

分散と標準偏差

1 ポートフォリオ理論とは

2 確率と期待値

3 分散と標準偏差

4 共分散と相関係数

5 期待効用

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ポートフォリオ理論とは 確率と期待値 分散と標準偏差 共分散と相関係数 期待効用

分散

分散とは?

分散とは、確率的な試行をしたときの確率変数の散らばり度合いを表す統計量であり、確率変数 X の分散を Var[X ]と書き、次式で定義する。

Var[X ] := E[(X −µ)2] = (x1 −µ)2p1 +(x2 −µ)2p2 + · · ·+(xN −µ)2pN

ここで、µ := E[X ]と置いた。また、分散の定義より Var[X ]≥ 0である。

(サイコロの例)サイコロを 1回振ったとき、奇数なら 1、偶数なら 0となる確率変数 X の分散は?

さきほどのとおり、µ = E[X ] = 12

したがって、

Var[X ] = (1− 12)2 × 1

6+(0− 1

2)2 × 1

6+(1− 1

2)2 × 1

6

+(0− 12)2 × 1

6+(1− 1

2)2 × 1

6+(0− 1

2)2 × 1

6=

14= 0.25

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ポートフォリオ理論とは 確率と期待値 分散と標準偏差 共分散と相関係数 期待効用

標準偏差

標準偏差とは?

標準偏差とは、確率的な試行をしたときの確率変数の標準化された散らばり度合いを表す統計量であり、確率変数 X の標準偏差を σX と書き、次式で定義する。

σX :=√

Var[X ] =√E[(X −µ)2]

上式右辺の期待値の中を二乗したので、期待値の外で平方根をとって標準化したものが標準偏差である。また、標準偏差の定義より σX ≥ 0である。

(サイコロの例)サイコロを 1回振ったとき、奇数なら 1、偶数なら 0となる確率変数 X の標準偏差は?

さきほどのとおり、Var[X ] = 14

したがって、

σX =

√14=

12= 0.5

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ポートフォリオ理論とは 確率と期待値 分散と標準偏差 共分散と相関係数 期待効用

経験的な分散・標準偏差

経験的な分散と標準偏差

確率変数 X の過去の実現データ x1,x2, . . . ,xN とこれらの経験確率 1/N を用いると、その分散と標準偏差は次式となる

Var[X ] = (x1 −µ)2 1N

+(x2 −µ)2 1N

+ · · ·+(xN −µ)2 1N

=(x1 −µ)2 +(x2 −µ)2 + · · ·+(xN −µ)2

N

σX =

√(x1 −µ)2 +(x2 −µ)2 + · · ·+(xN −µ)2

N

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ポートフォリオ理論とは 確率と期待値 分散と標準偏差 共分散と相関係数 期待効用

例題

期待値、分散、標準偏差

コインを 1回投げたとき、次の確率変数の下で期待値、分散、標準偏差をそれぞれ求めよ

1 表が出たら X(表) = 1、裏が出たら X(裏) =−1となる確率変数

2 表が出たら X(表) = 10、裏が出たら X(裏) =−10となる確率変数

(解答)

1

2

分散と標準偏差が「確率変数の散らばりの程度」であることを確認しよう!

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ポートフォリオ理論とは 確率と期待値 分散と標準偏差 共分散と相関係数 期待効用

例題

平均値、経験的な分散・標準偏差

証券 Aと証券 Bの収益率の過去の実績が以下のとき、証券 Aと証券 Bそれぞれの収益率の平均値、分散、標準偏差を求めよ

1 過去 3年の証券 Aの 1年毎の収益率は −1%,2%,5%であった

2 過去 3年の証券 Bの 1年毎の収益率は −5%,2%,9%であった

(解答)

1

2

A社と B社の分散と標準偏差の違いに注目しよう!

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ポートフォリオ理論とは 確率と期待値 分散と標準偏差 共分散と相関係数 期待効用

期待値、分散、標準偏差の性質

性質

期待値、分散、標準偏差は以下の性質を持つ

性質 1 E[aX +b] = aE[X ]+b

性質 2 Var[X ] = E[X2]−E[X ]2

性質 3 Var[aX +b] = a2Var[X ]

性質 4 σ2X = Var[X ]

性質 5 σaX+b = |a|σX

ただし、X は確率変数、a と b は定数とする

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ポートフォリオ理論とは 確率と期待値 分散と標準偏差 共分散と相関係数 期待効用

例題

期待値、分散、標準偏差の性質

1 確率変数 X の期待値が 3のとき、確率変数 −2X +3の期待値を求めよ

2 確率変数 X の期待値が 5、分散が 3のとき、確率変数 X2の期待値を求めよ

3 確率変数 X の分散が 4のとき、確率変数 −3X +1の分散を求めよ

4 確率変数 X の標準偏差が 2のとき、確率変数 −3X +1の標準偏差を求めよ

(解答)

1

2

3

4

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ポートフォリオ理論とは 確率と期待値 分散と標準偏差 共分散と相関係数 期待効用

共分散と相関係数

1 ポートフォリオ理論とは

2 確率と期待値

3 分散と標準偏差

4 共分散と相関係数

5 期待効用

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ポートフォリオ理論とは 確率と期待値 分散と標準偏差 共分散と相関係数 期待効用

2つのコインを投げたとき(独立)

Figure:例1:2つのコインを同時に投げたときの確率(独立)

表 裏 小計

表 1/4 1/4 1/2

裏 1/4 1/4 1/2

小計 1/2 1/2

コイン A

コイン B

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ポートフォリオ理論とは 確率と期待値 分散と標準偏差 共分散と相関係数 期待効用

2つのコインを投げたとき(正の相関)

Figure:例2:2つのコインを同時に投げたときの確率(正の相関)

表 裏 小計

表 3/8 1/8 1/2

裏 1/8 3/8 1/2

小計 1/2 1/2

コイン A

コイン B

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ポートフォリオ理論とは 確率と期待値 分散と標準偏差 共分散と相関係数 期待効用

2つのコインを投げたとき(負の相関)

Figure:例3:2つのコインを同時に投げたときの確率(負の相関)

表 裏 小計

表 1/8 3/8 1/2

裏 3/8 1/8 1/2

小計 1/2 1/2

コイン A

コイン B

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ポートフォリオ理論とは 確率と期待値 分散と標準偏差 共分散と相関係数 期待効用

共分散

共分散とは?

共分散とは、2つの確率変数 X と Y の連動性を表す統計量であり、確率変数 Xと Y の共分散を Cov[X ,Y ]、もしくは σXY と書き、次式で定義する。

Cov[X ,Y ] = σXY := E[(X −µX )(Y −µY )]

= (x1 −µX )(y1 −µY )p11 +(x2 −µX )(y1 −µY )p21 + · · ·+(xN −µX )(y1 −µY )pN1

+ (x1 −µX )(y2 −µY )p12 +(x2 −µX )(y2 −µY )p22 + · · ·+(xN −µX )(y2 −µY )pN2

+ · · ·+ (x1 −µX )(yM −µY )p12 +(x2 −µX )(yM −µY )p22 + · · ·+(xN −µX )(yM −µY )pNM

ここで、pnm は X = xn かつ Y = ym(ただし、1 ≤ n ≤ N かつ 1 ≤ m ≤ M)となる確率であり、µX := E[X ]、µY := E[Y ]と置いた

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ポートフォリオ理論とは 確率と期待値 分散と標準偏差 共分散と相関係数 期待効用

例題

共分散

コイン Aと Bを 1回づつ投げたとき、コイン Aの確率変数を X(表) = 2、X(裏) =−2、コイン Bの確率変数を Y(表) = 2、Y(裏) =−2とする

1 コイン Aと Bの裏表の確率が例1のとき、その共分散を求めよ

2 コイン Aと Bの裏表の確率が例2のとき、その共分散を求めよ

3 コイン Aと Bの裏表の確率が例3のとき、その共分散を求めよ

(解答)

1

2

3

共分散の符号に注意しつつ、「2つの確率変数の従属の程度」であることを確認しよう!

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ポートフォリオ理論とは 確率と期待値 分散と標準偏差 共分散と相関係数 期待効用

相関係数

相関係数とは?

相関係数とは、2つの確率変数 X と Y の標準化された連動性を表す統計量であり、確率変数 X と Y の相関係数を ρXY と書き、次式で定義する。

ρXY :=Cov[X ,Y ]√

Var[X ]√

Var[Y ]=

σXY

σX σY

標準化された統計量である相関係数は必ず −1から 1の間の値をとる

−1 ≤ ρXY ≤ 1

相関係数が正(ρXY > 0)のとき正相関、相関係数が負(ρXY < 0)のとき負相関という

相関係数が 0(ρXY = 0)のとき無相関という

確率変数が独立であれば無相関であるが、逆は一般に成り立たない

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ポートフォリオ理論とは 確率と期待値 分散と標準偏差 共分散と相関係数 期待効用

例題

相関係数

コイン Aと Bを 1回づつ投げたとき、コイン Aの確率変数を X(表) = 2、X(裏) =−2、コイン Bの確率変数を Y(表) = 2、Y(裏) =−2とする

1 コイン Aと Bの裏表の確率が例1のとき、その相関係数を求めよ

2 コイン Aと Bの裏表の確率が例2のとき、その相関係数を求めよ

3 コイン Aと Bの裏表の確率が例3のとき、その相関係数を求めよ

(解答)

1

2

3

相関係数の取りうる値の範囲に注意して、無相関、正相関、負相関を確認しよう!

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ポートフォリオ理論とは 確率と期待値 分散と標準偏差 共分散と相関係数 期待効用

経験的な共分散・相関係数

経験的な共分散と相関係数

確率変数 X と Y の過去の実現値のペア (x1,y1),(x2,y2), . . . ,(xN ,yN)とこれらペアの経験確率 1/N を用いると、その共分散は次式となる

Cov[X ,Y ] = (x1 −µX )(y1 −µY )1N

+ · · ·+(xN −µX )(yN −µY )1N

=(x1 −µX )(y1 −µY )+ · · ·+(xN −µX )(yN −µY )

N

経験的な標準偏差 σX ,σY と経験的な共分散 σXY := Cov[X ,Y ]を用いて、経験的な相関係数が次式で定義できる

ρXY =σXY

σX σY

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ポートフォリオ理論とは 確率と期待値 分散と標準偏差 共分散と相関係数 期待効用

例題

経験的な共分散と相関係数

過去 3年間の証券 Aと証券 Bの収益率 RA と RB の実績が以下であった

(RA ,RB) = {(2%,−1%),(3%,5%),(4%,2%)}

1 証券 Aの収益率 RA と証券 Bの収益率 RB の共分散 Cov[RA ,RB ]を求めよ

2 証券 Aの収益率 RA と証券 Bの収益率 RB の相関係数 ρAB を求めよ

(解答)

1

2

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ポートフォリオ理論とは 確率と期待値 分散と標準偏差 共分散と相関係数 期待効用

2変数の期待値、分散、共分散の性質

性質

2つの確率変数 X と Y に対して、期待値、分散、共分散は以下の性質を持つ

性質 6 E[aX +bY ] = aE[X ]+bE[Y ]

性質 7 Var[aX +bY ] = a2Var[X ]+b2Var[Y ]+2abCov[X ,Y ]

性質 7’ σ2aX+bY = a2σ2

X +b2σ2Y +2abσXY

性質 8 Cov[X ,Y ] = E[XY ]−E[X ]E[Y ]

さらに、確率変数 X と Y が独立であるとき以下の性質を持つ

性質 9 E[XY ] = E[X ]E[Y ]

性質 10 Cov[X ,Y ] = 0 ⇒ ρXY = 0

ただし、a と b は定数とする

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ポートフォリオ理論とは 確率と期待値 分散と標準偏差 共分散と相関係数 期待効用

例題

2変数の期待値、分散、共分散の性質

1 確率変数 X の期待値が 3、確率変数 Y の期待値が 4のとき、確率変数−2X +Y +3の期待値を求めよ

2 確率変数 X の分散が 3、確率変数 Y の分散が 4、X と Y の共分散が −2のとき、確率変数 −2X +Y の分散を求めよ

3 確率変数 X と Y が独立であり、確率変数 X の分散が 3、確率変数 Y の分散が 4のとき、確率変数 −2X +Y の分散を求めよ

(解答)

1

2

3

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期待効用

1 ポートフォリオ理論とは

2 確率と期待値

3 分散と標準偏差

4 共分散と相関係数

5 期待効用

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効用関数

効用関数とは?

効用とは、「投資家の消費や投資結果によって得られる満足度」のことで、投資結果 x に関する効用を表現する関数を効用関数といい、U(x)と書くことにする

Figure:リスク回避的な投資家の効用関数

効用 U(x)

投資結果 x

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期待効用

期待効用とは?

期待効用とは、「投資家の満足度の期待値」のことで、不確実な投資結果 X を確率変数とすると期待効用は E[U(X)]である

期待効用は「投資結果の期待値の満足度 U(E[X ])」ではない

安全資産と危険資産の期待効用の比較

下図の安全資産、証券 A、証券 Bをそれぞれ 100円で購入したときの期待効用を考えてみよう

Figure: 100円で購入した 3つの証券

安全資産 証券A 証券B105円 確率50% 185円 確率50% 195円

現時点 1年後 現時点 1年後 現時点 1年後確率50% 25円 確率50% 15円

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3つの証券の期待値、標準偏差、期待効用

安全資産:

期待値 E[Xf ] = 105 円

標準偏差 σf = 0 円

期待効用 E[U(Xf )] = U(105)

証券 A:

期待値 E[XA ] = 185×0.5+25×0.5 = 105 円

標準偏差 σA =√

(185−105)2 ×0.5+(25−105)2 ×0.5 = 80 円

期待効用 E[U(XA )] = U(185)×0.5+U(25)×0.5 = [U(185)+U(25)]/2

証券 B:

期待値 E[XB ] = 195×0.5+15×0.5 = 105 円

標準偏差 σB =√

(195−105)2 ×0.5+(15−105)2 ×0.5 = 90 円

期待効用 E[U(XB)] = U(195)×0.5+U(15)×0.5 = [U(195)+U(15)]/2

H. Markowitz (1952)は証券価格もしくは収益率の標準偏差をリスクと定義

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証券Aの期待効用

Figure:安全資産の効用と証券 Aの期待効用

効用 U(x)

投資結果 x

U(105円)

U(185円)

U(25円)

105円25円 185円x

U(x)

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証券Bの期待効用

Figure:安全資産の効用と証券 Bの期待効用

効用 U(x)

投資結果 x

U(105円)

U(195円)

U(15円)

105円15円 195円x

U(x)

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効用関数と期待効用の要点

効用関数:▶ 効用関数は投資家の満足度を表す関数

▶ 通常、効用関数は増加かつ凹関数であり、この形状の効用関数を持つ投資家をリスク回避的という

期待効用:▶ 投資結果の不確実性を考慮したとき、「投資家の満足度の期待値」のことを期待効用という

▶ 証券の不確実性であるリスクは証券価格もしくは収益率の標準偏差で定義される

▶ 2つの証券価格(収益率)の期待値が等しいとき、その標準偏差が大きい証券ほど期待効用は低い

期待効用最大化:▶ 合理的な金融市場では、投資家は自身の期待効用を最大化するように行動する(期待効用最大化の原則)

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