酸と塩基・代謝概要 + h 2 o ch3coo –+ h 3 o+ または単に ch3cooh ch3coo–+ h+ ah + h...
TRANSCRIPT
酸・塩基の定義酸 Acid・塩基 Base
アレニウスの定義 Svante August Arrhenius(スウェーデン)1880年頃
酸:H+を与える塩基:OH-を与える 一般性に欠ける(弱酸・弱塩基を表わすのに難点)
ブレンステッド,ローリーの定義 1920年頃Johannes Nicolaus Brønsted (1879-1947)(デンマーク)Thomas Martin Lowry (1874-1936)(英)
酸:H+を与える塩基:H+を受け取る より一般的,生化学系(弱酸・弱塩基)
生体内の反応の多くに酸・塩基反応が関わっている。またアミノ酸や核酸は酸や塩基の性質を示す。
酸・塩基
酸:H+を与える (AHまたはHAと表わす)塩基:H+を受け取る(Bと表わす)
AH + B A– + BH+
可逆反応,平衡状態:正反応と逆反能の両者が等しく、外見上変化がない状態
AH:酸 Acid
B:塩基 Base
A–:共役塩基 Conjugate base
BH+:共役酸 Conjugate acid
水溶液中の酸
HCl + H2O Cl– + H3O+K
HCl Cl– + H+または単に
CH3COOH + H2O CH3COO– + H3O+
CH3COOH CH3COO– + H+または単に
AH + H2O A– + H3O+K
K :平衡定数
H3O+は水溶液中のH+の存在状態
K =[A–] [H3O+]
[AH] [H2O][ ]は濃度を示す
平衡定数
pHとpKa
AH A− + H+
Ka
Ka =[A−] [H+]
[AH]
pH = − log10 [H+](定義)
pKa = − log10 Ka (定義)
Ka:この平衡式の平衡定数酸解離定数,単にKと表すこともある
強酸のpKaは小さい値をとることに注意
Y=log[H]1 10
-1 Y=-log[H]10
[H]
[H]
弱酸HAのイオン化の平衡定数(水を省略した式より導く)を酸解離定数といい、Kaとあらわす。
ヘンダーソン・ハッセルバルヒの式Henderson-Hasselbalch equation
pKa = − log10
[A−] [H+]
[AH]
= –log [H+] − log[A−]
[AH]
= pH − log[A−]
[AH] pH = pKa + log
[A–]
[AH]
AH A− + H+
Ka
Ka =[A−] [H+]
[AH]
酸と塩基,pHとpKa
pH = pKa + log [A–]
[AH]
ヘンダーソン・ハッセルバルヒの式Henderson-Hasselbalch equation
酸・塩基平衡のもっとも基本的な式
[AH] = [A–] (酸HAが50%解離)のとき
pKa = pH
pKa:酸が50%解離するpHの値pH がpKaに等しい時,酸は50%解離する
pH – pKa = log [A–]
[AH]
pH > pKa の時 [AH] < [A-](解離型優先)
pH = pKa の時 [AH] = [A-](50%解離)
pH < pKa の時 [AH] > [A-](非解離型優先)
ヘンダーソン・ハッセルバルヒの臨床的意義
重炭酸イオン緩衝系:
生体内では重炭酸イオン緩衝系が働いている(緩衝とはpHの変化に抵抗する力のこと)。そのため血液のpHは極めて狭い範囲(7.35-7.45)に維持されている。
H+ + HCO3- H2CO3 H2O + CO2
pH = pKa + log [HCO3
–]
[H2CO3] = 6.1 + log
0.3paCO2
[HCO3-]
37度でpKa=6.1。[H2CO3]は動脈血中の二酸化炭素分圧paCO2に比例し、
[H2CO3]=0.3paCO2の関係がある。したがって
ヘンダーソン・ハッセルバルヒの臨床的意義
pH = pKa + log [HCO3
–]
[H2CO3] = 6.1 + log
0.3pCO2
[HCO3-]
腎不全(代謝性アシドーシス)①腎臓に障害があり、体内に酸(H+)がたまる(アシデミア=酸性、pHが低下する)。②重炭酸イオンはH+と反応し、消費され低下する(緩衝応答)。③さらに脳の呼吸中枢がpHの変動を感知し、肺で換気がたかまり、paCO2が低下する(呼吸性代償)。④その結果、pHの低下が改善する。
採血で測定
pH = 6.1 + log0.3paCO2
[HCO3-]
H+ + HCO3- H2CO3 H2O + CO2
① ②
~ ③④
肺疾患(呼吸性アシドーシス)①肺に障害があり、炭酸ガス(pCO2)がたまる。②pCO2が上昇するので、プロトンが生成される方向に動く(H+が増加し、pHが低下する)。③腎臓でHCO3の吸収の増加がおきる。その結果、血中HCO3が増加する。④その結果、低下していたpHが上昇する(代償過程)。
pH = 6.1 + log0.3paCO2
[HCO3-]
H+ + HCO3- H2CO3 H2O + CO2
①
② ~ ③
④
ヘンダーソン・ハッセルバルヒの具体例
pH = pKa + log [HCO3
–]
[H2CO3] = 6.1 + log
0.3paCO2
[HCO3-]
[HCO3-]正常値 24mEq/LpaCO2正常値 40mmHg
pH正常値 7.35-7.45
ある患者さんの検査結果
pH=7.3, PaCO2 =25 mmHg, HCO3- =12 mEq/l
この患者さんの病態は?
例題1酢酸のpKaは4.8である。0.1M酢酸と0.2M酢酸イオンのpHはいくらか(log2=0.3)
例題2pH4, 5, 6, 7においてpK値が6の酸の共役塩基と酸の比率はいくらか
例題3pH7の2倍の水素イオン濃度の溶液のpHはいくらか(log2=0.3)
アミノ酸 Amino acid
CO2−
+H3N
R
HC
アミノ基(塩基)Amino group (base)
カルボキシル基(酸)Carboxyl group (acid)
α水素 α-Hydrogen
側鎖 Side chain
両性電解質 Ampholyte, amphoteric electrolyte水溶液中で酸,塩基の両方の性質を示す
α炭素 α-Carbon
生理的なpH (pH7.4)ではカルボキシル基はCOO-として、アミノ基はNH3+として存在している。
アミノ酸の電荷とpH
中性pH
C+ H 3 N
C H 3
H
C O 2 H
低pH(酸性pH)
CH 2 N
C H 3
H
C O 2-
高pH(塩基性pH)
アラニン
正味の電荷+1
正味の電荷0
正味の電荷–1
C O 2-C+ H 3 N
C H 3
H
酸性の溶液ではカルボキシル基はCOOHでアミノ基はNH3+である。アルカリの溶液ではカルボキシル基はCOO-でアミノ基はNH2である。
pKa=2.4 pKa=9.9
アミノ酸のpKa値
アミノ酸 α-COOH α-NH3+
アラニン 2.3 9.9 -
アルギニン 1.8 9.0 12.5
アスパラギン 2.1 8.8 -
アスパラギン酸 2.0 9.9 3.9
システイン 1.9 10.8 8.3
グルタミン 2.2 9.1 -
グルタミン酸 2.1 9.5 4.2
グリシン 2.3 9.8 -
ヒスチジン 1.8 9.3 6.0
イソロイシン 2.3 9.8 -
ほぼ2 ほぼ9
側鎖の解離(電離)
酸 塩基 pKa (pK)アミノ酸側鎖
アスパラギン酸グルタミン酸
C O O H C O O - + H + 3.9/4.2
リシン N H 3+ N H 2 + H + 10.0
12.0アルギニン N H C
N H 2 +
N H 2
N H C
N H
N H 2
+ H +
C+ H 3 N
H
C O O -
C H 2
C O O -
アスパラギン酸
pK1 2.0
pK2 3.9
pK3 9.9
低pH 中性pH 高pH
側鎖Rに解離基がある場合
+1 -1 -2
正味の電荷
0
+H3N C
H
COOH
CH2
COOH
+H3N C
H
COO-
CH2
COOH
+H3N C
H
COO-
CH2
COO-
H2N C
H
COO-
CH2
COO-
K1 K2 K3
アミノ酸のイオン化状態
C+ H 3 N
H
( C H 2 ) 4
C O O H
N H 3+
C+ H 3 N
H
( C H 2 ) 4
C O O -
N H 3+
C
H
( C H 2 ) 4
C O O -H 2 N
N H 2
リシン
低pH 中性pH 高pH
正味の電荷 +2 +1 -1
中性領域でのアミノ酸の電荷
pKa1=2.2, pKa2=9.2, pKa3=10.8
pKa1 pKa2, 3
自由エネルギー
ΔG≠
ΔG
反応軸 Reaction Coordinate
ΔG:反応の自由エネルギー変化ΔG≠:活性化自由エネルギー
2H2 + O2 H2O
反応の自由エネルギー変化と活性化自由エネルギー
ギブス自由エネルギー Gibbs free energy:G
ΔG < 0:過程は自発的に進む(自然におきる反応は負の値)
分子構造が固有のものとして持っている内部エネルギーに相当
2H2 + O2
2H2O
水素がもえて水ができる
GΔG≠
ΔG
A + B
C + D
反応軸 Reaction Coordinate
ΔG:反応の自由エネルギー変化ΔG≠:活性化自由エネルギー
A + B C + D 遷移状態(活性化状態)
遷移状態(活性化状態) A•••B
反応の自由エネルギー変化と活性化自由エネルギー
ギブス自由エネルギー Gibbs free energy:G
ΔG < 0:過程は自発的に進むΔG = 0 :系は平衡状態にある(過程は止まっている)
反応速度に関与する
反応の自発性をきめる
分子構造が固有のものとして持っている内部エネルギーに相当
G
ΔG≠
ΔG
A + B
C + D
反応軸 Reaction Coordinate
ΔG:反応の自由エネルギー変化ΔG≠:活性化自由エネルギー
遷移状態(活性化状態)
酵素存在下
ΔG≠
酵素は ΔG を変えない,ΔG≠を変える.反応速度はΔG に依存しない,ΔG≠に依存する.
反応の自由エネルギー変化と活性化自由エネルギー
ΔG≠が小さいほど(活性化エネルギーが低いほど)反応速度は速い.
ヘキソキナーゼ Hexokinase
O H
OH
H
OH
OH H
H
HO
H
CH2OH
1
23
4
5
6
O H
OH
H
OH
OH H
H
HO
H
CH2OPO32-
グルコースGlucose
グルコース6-リン酸Glucose 6-phosphate
解糖系の最初の反応
+ Pi
解糖系の一番最初のステップでグルコースはグルコース6リン酸になる
G
ΔG≠
ΔG
反応軸 Reaction Coordinate
ΔG:反応の自由エネルギー変化ΔG≠:活性化自由エネルギー
反応の自由エネルギー変化と活性化自由エネルギー
ギブス自由エネルギー Gibbs free energy:G
ΔG < 0:過程は自発的に進むΔG >0 :グルコースはグルコース6リン酸にはすすまない
Pi + グルコース グルコース 6-リン酸 + H2O
Pi +
グルコース
グルコース 6-リン酸 + H2O
+13.8
アデノシン三リン酸 Adenosine triphosphate ATP
CH2
HO OH
N
N
N
N
NH2
O
O P
O
O
O
P
O
O O-
- P
O
O
O- -
呼吸などの異化作用の過程で放出された遊離エネルギーを化学エネルギーとして蓄えた有機リン酸化合物。ATPは細胞のエネルギー通貨
反応の自由エネルギー変化
∆G > 0 の反応をおこさせるには:∆G < 0 の反応と組み合わせ、全体として ΔG < 0 となるようにする(共役)
例 ∆Go' (kJ・mol–1)
Pi + グルコース グルコース 6-リン酸 + H2O +13.8
ATP + グルコース ADP + グルコース 6-リン酸 -16.7
ATP + H2O ADP + Pi -30.5
化学的に共役した一連の反応の全ギブスエネルギー反応は個々の過程のギブスエネルギー変化の総和に等しい
GΔG
反応軸 Reaction Coordinate
ΔG:反応の自由エネルギー変化
反応の自由エネルギー変化と活性化自由エネルギー
ギブス自由エネルギー Gibbs free energy:G
ΔG < 0:過程は自発的に進む
ATP + Pi + グルコース グルコース 6-リン酸 + ADP
Pi + ATP
グルコース
グルコース 6-リン酸 + ADP
-16.7
本日のまとめ
pKaは酸や塩基の相対的な強さをしめす。
ヘンダーソンハッセルバルヒの式を導くことができる。
血液の酸性・アルカリ性の病態が把握できる。
アミノ酸の電荷はpHにより異なる。
ギブス自由エネルギーが負の値のときのみ、その反応は自発的に進行する。
1. 塩基はH+を受け取るものである 「 」
2. pHがpKaに等しいとき酸は50%解離する 「 」
3. pKa=logKaである 「 」
4. 弱酸のpKaは小さい値をとる 「 」
5. アミノ酸は水溶液中で酸としても塩基としても働く 「 」
6. アミノ酸のカルボキシル基のpKaはおよそ9である 「 」
7. アスパラギン酸は中性で+1の電荷をもつ 「 」
8. ギブスの自由エネルギー変化が正の値の場合のみその反応は
自発的にすすむ 「 」
9. 酵素は活性化自由エネルギーを増加させる働きをもつ 「 」
10. ATPを利用することで熱力学的に不利な反応も生体内でおこりえる 「 」
理解の確認のために