流動層内の粒子流動特性に及ぼす気流脈動の影響 · anderson とjackson(8)...

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流動層内の粒子流動特性に及ぼす気流脈動の影響 Effect of Pulsating Gas Injection on Granular Flow in Gas-Solid Fluidized Beds Atsushi MIYOSHI, Toshihiro KAWAGUCHI, Toshitsugu TANAKA and Yutaka TSUJI We performed two-dimensional DEM simulation to investigate the effcts of pulsating gas injection on the flows in dense gas-solid fluidized bed. Geldart D particles were assumed as the solid particles. The effects of the mean gas velocity, the frequncy and the amplitude of the gas injestion were examined. To evaluate the effects quantitatively, we analyzed the transport properties of the predicted granular flows, such as granular convection energy or fluctuating energy of particles. The present simulation showed that the pulsation pro- motes the granular convection for moderate pulsation frequencies and the predicted flow properties saturated for the variation of the pulsation frequencies in the high frequency region. We proposed an equation to esti- mate the relaxation time scale of the beds for the fluctuation of gas velocity based on Ergun’s equation. The estimated relaxation time scale agreed well with the predicted saturation frequency of the bed. Key Words: Numerical Simulation, Fluidized Bed, Discrete Element Method, Pulsating Gas Injection 1. 1. 1. 1. 1. 緒 から い, つり い, 易に る.こ よう れる. が活 いられるほか, 体 するこ するこ から, ,ゴミ いられている. する ある. する ガス って する. す一 ,そ において スラッギングを引き こす 囲を する る.また, において , ガス にチャネルが されて,ガスが けるチャネリング り, い.一 するために ,より ガス る.こうした エネル ギー っている. するために, え した する れてきている.こ タイプ ており,これま によって されるこ されている (1) .また, Köksal Vural (2) において ガスに し, および によって変 するこ している.しかし,これま する ,一 いっ てられてお り, 態に する われ てい ある. に対する する して, する.これ 体を れた する より 大きく った ころ に対 する あり, に から されて いる (3) .また Pak Behringer (4) を大きくする に, されるよう するこ している.こ ように, アナロジー から が, によって変 する えられ,さらに いた 待される. これら Discrete Element MethodDEM(5) する ミュレーションによって えられている.DEM ラグランジアン ある.こ ため, あった DEM によって らかにされるように り, せる らかに ってきた. する DEM によるシミュレー ションを して されており, Lan Rosato (6) シミュレーションによって, らかにし, する っている.また, (7) めて DEM した. 2000 6 19 員,大 大学大学院 565-0871 2-1 E-mail: [email protected] B 67 654 (2001-2) Osaka University, Dept. of Machanophysics Engineering Yamada-Oka, 2-1, Suita-shi, Osaka, 565-0871, Japan 42

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流動層内の粒子流動特性に及ぼす気流脈動の影響

三好淳之*1,川口寿裕*1,田中敏嗣*1,辻 裕*1

Effect of Pulsating Gas Injection on Granular Flow in Gas-Solid Fluidized Beds

Atsushi MIYOSHI, Toshihiro KAWAGUCHI, Toshitsugu TANAKA and Yutaka TSUJI

We performed two-dimensional DEM simulation to investigate the effcts of pulsating gas injection on theflows in dense gas-solid fluidized bed. Geldart D particles were assumed as the solid particles. The effects ofthe mean gas velocity, the frequncy and the amplitude of the gas injestion were examined. To evaluate theeffects quantitatively, we analyzed the transport properties of the predicted granular flows, such as granularconvection energy or fluctuating energy of particles. The present simulation showed that the pulsation pro-motes the granular convection for moderate pulsation frequencies and the predicted flow properties saturatedfor the variation of the pulsation frequencies in the high frequency region. We proposed an equation to esti-mate the relaxation time scale of the beds for the fluctuation of gas velocity based on Ergun’s equation. Theestimated relaxation time scale agreed well with the predicted saturation frequency of the bed.

Key Words: Numerical Simulation, Fluidized Bed, Discrete Element Method, Pulsating Gas Injection

1 . 1 . 1 . 1 . 1 . 緒  言緒  言緒  言緒  言緒  言

 容器内の粒子層の底部から気流を吹き込むと,気流速度の上昇に伴い,粒子層に働く流体力が重力とつり合い,容易に流動可能な状態となる.このような装置は流動層と呼ばれる.流動層では,熱物質輸送が活発となり粒子の混合・撹拌に用いられるほか,固体粒子が浮遊することで固気間の接触面積が向上することから,流動層装置は触媒反応装置や石炭燃焼炉,ゴミ焼却炉などに用いられている. 粒子の流動特性は,流動層の操作条件を決定する上で重要な要素である.粗大粒子群の流動化では,層内部に発生する気泡は,流動化ガス速度の上昇に伴って成長する.気泡は流動層内部の粒子循環を促す一方で,その過剰な成長は小型流動層装置においてはスラッギングを引き起こすなど,操作条件範囲を制約する要因となる.また,付着性粒子群の流動化においては,低ガス流速で層内にチャネルが形成されて,ガスが吹き抜けるチャネリング状態となり,粒子群の一様な流動化を達成できない.一様な流動化を達成するためには,より高速の流動化ガス速度が必要となる.こうした流動化状態の不均質性は流体の注入エネルギー効率の低下や,触媒反応過程や燃焼過程で重要となる固気間接触効率の低下の原因ともなっている. 付着性粒子の不均質流動化を改善するために,例えば気流への脈動付加を利用した流動化技術に関する研究が行われてきている.このタイプの流動層は脈動流動層と呼ばれており,これまでにも脈動流動層によって付着性粒子の流動特性が改善されることが報告されている(1).また,Köksal

とVural(2)は,付着性を持たない粗大粒子の流動化において

流動化ガスに脈動を付加し,気泡径および気泡上昇速度と脈動周波数の関係を調べ,気泡径が脈動周波数によって変化することを示している.しかし,これまでの脈動流動層に関する研究は,一様流動化の達成や気泡径の変化といった流動層の巨視的な流動状態の変化に焦点が当てられており,層内部の流動状態に関する詳細な力学的考察は行われていないのが現状である. 一方,粒子層に対する振動付加効果に関する研究対象として,粉体振動層が存在する.これは,粉粒体を入れた容器に鉛直方向の振動を付加すると,振動加速度が重力加速度よりも大きくなったところで粉粒体層内部に対流が発生する現象であり,主に物理的見地からの研究対象とされている (3).また PakとBehringer(4)は,振幅を大きくすると粉体層内部に,流動層で観測されるような気泡が発生することを報告している.このように,脈動流動層を粉体振動層とのアナロジーの観点から見ると,流動層内部の粒子流動構造や力学的特性が,気流への脈動付加の影響によって変化する可能性が十分に考えられ,さらに脈動を用いた流動制御への発展が期待される. これらの近年の粉粒体現象の研究は,離散要素法(Discrete Element Method,DEM)(5)を主流とする粒子シミュレーションによって支えられている.DEMの最大の利点は,個々の粒子のラグランジアン的な追跡が可能である点である.このため,従来では観測が困難であった粉粒体層内部の挙動がDEMによって明らかにされるようになり,粉粒体層が見せる流動構造が明らかになってきた.前述の粉体振動層に関する研究も DEMによるシミュレーションを主として展開されており,中でも LanとRosato(6)

は3次元数値シミュレーションによって,粉体振動層内部の3次元的な流動構造を明らかにし,層内部の粒子速度場,応力分布に関する解析を行っている.また,川口ら (7)は,流動層の流動解析に初めて D E M を適用した.彼らは

 * 原稿受付 2000年 6月 19日 *1 正員,大阪大学大学院工学研究科(〒 565-0871 吹田市山田丘 2-1).E-mail: [email protected]

日本機械学会論文集 B編67巻 654号 (2001-2)

Osaka University, Dept. of Machanophysics Engineering

Yamada-Oka, 2-1, Suita-shi, Osaka, 565-0871, Japan

342

Andersonと Jackson(8)が導いた局所相平均量に関する二相流の運動方程式とDEMをカップリングすることによって,粒子 -流体間の相互作用力を考慮するモデルを開発した.このモデルは流動パターンの一致だけでなく,圧力損失などの定量的な予測も可能にしている.また,彼らは準3次元的な計算による噴流層の流動解析 (9)や,完全な3次元モデルの計算も行っている (10).またMikamiら (11)は,DEMにおける粒子間相互作用力に付着力を考慮して,付着性粒子群の流動化のシミュレーションを行っている. 本論文では,DEMを用いた川口ら (7)と同様のモデルにより,2次元脈動流動層の流動解析を行い,気流に脈動を付加することによる流動層内部の粒子流動特性への影響について調べた.ここでは脈動を付加しない場合に気泡が発生しない条件と気泡が発生する条件を基準として,気流脈動を付加した場合の影響を調べた.そして層膨張の時間変化,粒子流動の空間分布特性,粒子運動の脈動周波数応答に関する解析を行った.また,脈動周波数に対する応答性から,粒子層の緩和時間スケールについての考察を行った.

2 . 2 . 2 . 2 . 2 . 計算方法計算方法計算方法計算方法計算方法

     2.1 2.1 2.1 2.1 2.1 流体の運動流体の運動流体の運動流体の運動流体の運動  AndersonとJackson(8)は任意点において定義される速度,圧力などで記述された流体運動の基礎式を,各相に対して空間的に局所平均化することによって,局所相平均量に対する基礎式を導いた.局所平均化の空間スケールは粒子のスケールよりも十分大きく,また流れのマクロなスケール(気泡径や粒子対流構造の大きさ)よりは十分小さく取られる.流体に対する連続の式,および運動方程式に対してこのような局所相平均の操作を行い,粘性およびレイノルズ応力を無視すると,以下の空隙率を含む連続の式と運動方程式が導かれる.

 ∂ε∂

∂ε∂t

u

xj

j

+ = 0 (1)

 ∂∂

ε ∂∂

ε ερ

∂∂t

ux

u up

xFi

ji j

f ipi( ) ( )+ = − + (2)

ここに,p, ui(i=1,2,3), ε およびρ

fはそれぞれ圧力,x

i方向

の流体速度成分,空隙率および流体密度である.式(2)における右辺最終項Fpiは粒子-流体間の相互作用を表し,以下の相関式で与えた.

 F v upif

pi i= −βρ

( )(3)

ここでvpiは粒子速度成分であり,流体抵抗係数βは次式か

ら与えられる.

 β

µ εε

ε ε

µ ε ε ε=

− − +[ ] ≤

− >

( )( ) . Re ( . )

( )Re ( . ).

1150 1 1 75 0 8

34

10 8

2

22 7

d

Cd

p

Dp

(4)

 CD =+ ≤

>

24 1 0 15 1000

0 43 1000

0 687( . Re ) / Re (Re )

. (Re )

.

(5)

 Re =−v uP g pdρ ε

µ (6)

ただし,dpは粒子径,µは粘性係数である.式 (4)における空隙率の小さな領域に対するものは,充填層に対するErgun式 (12)である.空隙率の大きい領域に対する低Re領域での流体抵抗係数は,SchillerとNauman(13)の抵抗則に対してWenとYu(14)による空隙率補正を行った式を用いた. 式 (1)(2)の解法にはSIMPLE法 (15)を用い,各時間ステップにおける流体運動を計算した.

 2 . 2 2 . 2 2 . 2 2 . 2 2 . 2 粒子の運動粒子の運動粒子の運動粒子の運動粒子の運動          粒子に作用する力として,重力,

流体抵抗力FDi,粒子間および粒子-壁面間接触力 FCiを考

慮した.FDiは式(2)の右辺最終項の反作用力と圧力勾配によ

る力との和で与えた.

 FF p

xVDi

pi

ip=

−−

1 ε

∂∂ (7)

ここにVpは粒子1個の体積である.各粒子に作用するFCi

はCundallとStrackによって提案されたDEM(5)を用い,バネ-ダッシュポットモデルによって与えた.粒子の運動はNewtonの運動方程式を数値積分することによって,個々の粒子の運動を追跡した.

3 . 3 . 3 . 3 . 3 . 計算条件の決定計算条件の決定計算条件の決定計算条件の決定計算条件の決定

 3.1 3.1 3.1 3.1 3.1 境界条件境界条件境界条件境界条件境界条件  計算領域の概要を図1に示す.気流は底部全体から一様に流入する.粒子の形状は3次元的な球を仮定しているが,粒子および流体の運動は2次元的で奥行方向の運動は考えない.空隙率の計算に関しては,粒子直径と同じ奥行きの領域を仮定した.また壁面による粒子運動の拘束を除去するために水平方向の粒子および流体の運動に関して,周期境界条件を適用した.また上方の境界条件は自由流出条件とした.

 3.2 3.2 3.2 3.2 3.2 粒子および流体の物性粒子および流体の物性粒子および流体の物性粒子および流体の物性粒子および流体の物性  流動化させる粒子及び流動化ガスの物性を表1に示す.粒子条件はGeldart(16)による分類ではD粒子に相当する.流動化ガスは,常温における空気の物性値を仮定している.この条件において,粒子の流動化開始速度は 1.03m/sである.

 3.3 3 .3 3 .3 3 .3 3 .3 流動化条件流動化条件流動化条件流動化条件流動化条件  気流の空塔速度は次式によって与えた.

u u A f tc p0 2= + sin π (8)

ここにuc , A , fpは気流速度の平均値,脈動速度振幅,脈動

周波数である.流動化条件を表2に示す.Case Aの条件では,脈動を付加しない場合において,層内部に気泡が発生せず,ほとんど粒子循環が現れない気泡なし流動状態(no

流動層内の粒子流動特性に及ぼす気流脈動の影響 343

bubbling phase)を示す.それに対して Case Bでは,脈動を付加しない場合において,層内部に複数の気泡が発生する気泡流動化状態(multiple bubbling phase)を示す.

4 . 4 . 4 . 4 . 4 . 結果と考察結果と考察結果と考察結果と考察結果と考察

 4 . 1 4 . 1 4 . 1 4 . 1 4 . 1 計算結果の表示計算結果の表示計算結果の表示計算結果の表示計算結果の表示  粒子の時間平均的な流動パターンを観察するために,平均速度場を求めた.計算領域は一辺が0.03mの正方形のセルに分割されており(図1),セル (p,q)における瞬時の局所平均粒子速度 u

p(p,q,t)は時刻 t

において中心をセル内に持つ粒子の速度viを平均すること

によって計算される.したがって

 u vp pq ii p qp q t N( , , ) ( / )

,=

∈∑1 (9)

と定義される.ここでNpqはセル (p,q)内部に存在する粒子

数である.長時間平均の粒子速度場u p p q( , )は,up(p,q,t)の

時間平均として計算される.

 u up pt

p qt

p q t( , ) ( , , )= ∑1∆ ∆

(10)

ここで∆tは時間平均の長さである.層内部の粒子循環特性を表す状態量として,粒子対流エネルギーE

cを定義する.

 Em

N p qcp q

ppq p= ∑ ∑ 2

2u ( , ) (11)

ここでmpは粒子の質量である.

 時刻 tにおける,局所的な粒子運動のランダム成分のもつ運動エネルギ-を表す,単位体積当たりの粒子変動速度エネルギー e

f(p,q,t)は次式で定義される.

 e p q tm

N p q t Vfp

pq i pi p q

( , , ) ( , , ) /,

= −{ }∈∑2

2 2v u cell (12)

ここでVcellはセルの体積である.長時間平均の変動速度エ

ネルギーe p qf ( , )はef(p,q,t)の時間平均として次式で計算さ

れる.

 e p qt

e p q tf ft

( , ) ( , , )= ∑1∆ ∆

(13)

したがって層全体での粒子の総変動エネルギーEfは次式で

求められる.

 E e p q Vfp

fq

= ×∑ ∑ ( , ) cell (14)

 また粒子層の層膨張の時間変化の強度を表すものとして,以下の V

Hを定義する.

 Vt

H t H dtH G G

t

= −[ ]∫1∆ ∆

( ) (15)

ここにHG(t)とHGはそれぞれ以下の式で定義される層重心

高さとその時間平均値である.

 H tN

y tGp

kk

N p

( ) ( )==∑1

1(16)

 Ht

H t dtG G

t

= ∫1∆ ∆

( ) (17)

ここにNPは総粒子数,y

kは粒子 kの y座標である.表 2中

のHGIはH

Gの初期値を示す.

 本計算では,これらの諸量を流動状態が定常状態に達した後,2秒間にわたって時間平均を施すことによって求めた.

 4.2 4.2 4.2 4.2 4.2 気泡なし流動状態への脈動付加気泡なし流動状態への脈動付加気泡なし流動状態への脈動付加気泡なし流動状態への脈動付加気泡なし流動状態への脈動付加  図2-4にCase

Aにおける粒子運動のスナップショットと平均流動パターンを示す.平均流動パターンにおけるベクトルは平均粒子流速を,濃淡図は変動速度エネルギーの分布を示している. f

p=0HzではすべてのH

GIの条件において,粒子循環は極

めて小さく,スナップショットが示すように粒子層の変形も小さい.f

p=2Hzでは,すべてのH

GIにおいて,脈動周波

数に同調した粒子層全体の振動が発生しており,粒子層の底部に層の振動に起因する高変動速度エネルギー領域が現れている.H

GI=0.10mでは粒子層は振動するのみで,粒子

の循環は発生していない.それに対して,HGI

=0.15, 0.20m

ではウェークを伴った気泡が発生しており,この気泡の運動によって粒子の循環が促進されている.f

p=10, 25Hzで

は,層内に発生する空隙の形状に顕著な違いは認められないが,粒子層の変形はf

p=0Hzよりも大きくなっており,平

均粒子速度場から粒子循環が発生していることがわかる.

Table 1 Conditions of solid particle and fluidization gas

particle density [kg/m3] ρp

1000

particle diameter [m] dp

4.0 10-3

fluid density [kg/m3] ρf

1.205

fluid viscosity [Pa s] µf

1.81 10-5

minimum fluidization

velocity [m/s] umf

1.03

Table 2 Fluidization conditions

Case A Case B

mean gas velocity [m/s] uc

1.25 1.50

amplitude [m/s] A 0.75 0.50

pulsation frequency [Hz] fp

0 - 25

initial height of gravity

center of beds [m] HGI

0.10, 0.15, 0.20

fluidization state

without pulsation no bubbling multiple bubbling

G

a

s

g

w

i

d

t

h

=

1

.

3

5

m

0

.

0

3

m

B

o

x

(

p

,

q

)

<

u

(

p

,

q

)

>

x

y

P

e

r

i

o

d

i

c

b

o

u

n

d

a

r

y

c

o

n

d

i

t

i

o

n

Fig.1 Calculation region and small cell to compute the locally

averaged particle velocity

流動層内の粒子流動特性に及ぼす気流脈動の影響344

Fig.2 Snapshots of particle motion, long-term particle

velocity field and distribution of fluctuating energy of

particle : Case A, HGI

=0.10m

Fig.3 Snapshots of particle motion, long-term particle

velocity field and distribution of fluctuating energy of

particle : Case A, HGI

=0.15m

fp=25Hz f

p=25Hz

fp=10Hz

fp=2Hzf

p=2Hz

fp=0Hz f

p=0Hz

fp=10Hz

5.0× 10-2

0.0 [kg m-1/s2]

5.0× 10-2

0.0 [kg m-1/s2]

5.0× 10-2

0.0 [kg m-1/s2]

5.0× 10-2

0.0 [kg m-1/s2]

5.0× 10-2

0.0 [kg m-1/s2]

5.0× 10-2

0.0 [kg m-1/s2]

5.0× 10-2

0.0 [kg m-1/s2]

5.0× 10-2

0.0 [kg m-1/s2]

流動層内の粒子流動特性に及ぼす気流脈動の影響 345

0.0001

0.001

0.01

0.1

0 5 10 15 20 25

HGI

=0.10[m]

HGI

=0.15[m]

HGI

=0.20[m]

[kg

m2 /s

2 ]

fp

Ec

[Hz]

Fig.5 Variation of (a) total particle convection energy Ec and

(b) total fluctuating enrergy Ef versus f

p : Case A

(a) (b)

また,すべてのHGIにおいて,f

p=10, 25Hzでは,平均粒子

速度場におけるベクトルの大きさや対流構造の特徴,変動速度エネルギーの分布特性はほぼ同様となる. 図5に脈動周波数に対する対流エネルギーE

cと総変動速

度エネルギーEfの変化を示す.H

GI=0.15, 0.20mにおいてE

c

は脈動を付加することによって増加しており,脈動付加による対流促進効果を表している.E

c,E

fともに f

p>10Hzの

周波数領域でほぼ一定の値となり,この周波数領域で粒子層の運動特性の応答が飽和していることを示している.H

GI=0.10mの条件では,他のH

GI条件とほぼ同様の傾向を

示すものの,Ecの値は f

p=15Hzで落ち込むなど,各周波数

毎の増減が他のHGI条件と比較して大きい.これは層高が

小さいため対流渦の発達が十分でなく,対流促進効果に影響を及ぼしたものと考えられる.図6に平均層重心位置とその変動強度 V

Hの,脈動周波数に対する変化を示す.各

周波数に対する層重心位置は,fp=0Hzでの平均層重心位置

に対する比で示している.すべてのHGIにおいて,f

p>10Hz

の領域で層膨張はほとんど脈動周波数に対して変化しなくなり,f

p=0Hzの場合よりも5%ほど大きくなっている.V

H

も同周波数領域でほぼ0となり,脈動による層の振動が発生していないことを示している.平均流動パターンもこの周波数領域で定性的にほぼ同様の構造を持っていることから,粒子層の運動特性の周波数応答は f

p>10Hzで飽和して

いると考えられる.

 4.3 4.3 4.3 4.3 4.3 気泡流動化状態への脈動付加気泡流動化状態への脈動付加気泡流動化状態への脈動付加気泡流動化状態への脈動付加気泡流動化状態への脈動付加  図7-9にCase B

における粒子運動のスナップショットと平均流動パターンを示す.Case Bの気流速度条件では,脈動を与えない場合には,図からわかるように典型的な気泡流動化状態を示し

Fig.6 Variation of (a) normalized bed expansion HG/H

G(f

p=0)

and (b) its fluctuation intensity VH versus f

p : Case A

1

1.05

1.1

1.15

1.2

1.25

1.3

1.35

0 5 10 15 20 25

HGI

=0.10 [m]

HGI

=0.15 [m]

HGI

=0.20 [m]

HG

/HG(f

p=0)

[-]

fp [Hz]

(a)

0

0.0002

0.0004

0.0006

0.0008

0.001

0 5 10 15 20 25

HGI

=0.10 [m]

HGI

=0.15 [m]

HGI

=0.20 [m]

[Hz]

VH

fp

[m2 ]

(b)

Fig.4 Snapshots of particle motion, long-term particle

velocity field and distribution of fluctuating energy of

particle : Case A, HGI

=0.20m

fp=0Hz

fp=2Hz

fp=10Hz

fp=25Hz

0.001

0.01

0.1

0 5 10 15 20 25

HGI

=0.10[m]

HGI

=0.15[m]

HGI

=0.20[m]

Ef

fp

[kg

/ms2 ]

[Hz]

5.0× 10-2

0.0 [kg m-1/s2]

5.0× 10-2

0.0 [kg m-1/s2]

5.0× 10-2

0.0 [kg m-1/s2]

5.0× 10-2

0.0 [kg m-1/s2]

流動層内の粒子流動特性に及ぼす気流脈動の影響346

Fig.7 Snapshots of particle motion, long-term particle

velocity field and distribution of fluctuating energy of

particle : Case B, HGI

=0.10m

Fig.8 Snapshots of particle motion, long-term particle

velocity field and distribution of fluctuating energy of

particle : Case B, HGI

=0.15m

fp=0Hz

fp=2Hz

fp=10Hz

fp=25Hz

fp=0Hz

fp=2Hz

fp=10Hz

fp=25Hz

5.0× 10-2

0.0 [kg m-1/s2]

5.0× 10-2

0.0 [kg m-1/s2]

5.0× 10-2

0.0 [kg m-1/s2]

5.0× 10-2

0.0 [kg m-1/s2]

5.0× 10-2

0.0 [kg m-1/s2]

5.0× 10-2

0.0 [kg m-1/s2]

5.0× 10-2

0.0 [kg m-1/s2]

5.0× 10-2

0.0 [kg m-1/s2]

流動層内の粒子流動特性に及ぼす気流脈動の影響 347

Fig.10 Variation of (a) total particle convection energy Ec and

(b) total fluctuating enrergy Ef versus f

p : Case B

0.01

0.1

0 5 10 15 20 25

HGI

=0.10[m]

HGI

=0.15[m]

HGI

=0.20[m]

[kg

/ms2 ]

fp

Ef

[Hz]

(b)

0.01

0.1

1

0 5 10 15 20 25

HGI

=0.10[m]

HGI

=0.15[m]

HGI

=0.20[m]

[kg

m2 /s

2 ]

fp

Ec

[Hz]

(a)

Fig.11 Variation of (a) normalized bed expansion HG/H

G(f

p=0)

and (b) its fluctuation intensity VH versus f

p : Case B

0

0.0001

0.0002

0.0003

0.0004

0.0005

0.0006

0 5 10 15 20 25

HGI

=0.10 [m]

HGI

=0.15 [m]

HGI

=0.20 [m]

[Hz]

VH

fp

[m2 ]

(b)

1

1.05

1.1

1.15

1.2

1.25

0 5 10 15 20 25

HGI

=0.10 [m]

HGI

=0.15 [m]

HGI

=0.20 [m]

HG/H

G(f

p=0)

fp [Hz]

[-]

(a)

ている.Hci=0.15, 0.20mでは f

p=2Hzにおいて,気泡径が

fp=0Hzの場合と比較して,大きくなっている.この気泡の上昇に伴って,層内部に大きく強い循環構造が現れていることが,平均粒子速度場から確認できる.f

p=10, 25Hzでは,

すべてのHGIにおいて,f

p=0Hzの場合との明瞭な差異は認

められない.平均流動パターンは複雑な流れ場を示している.ここには示していないが,粒子運動の時間変化を観察すると,気泡や対流渦が不規則に発生しており,得られた流れ場が時間的には不安定なものであることを確認した. 図10にCase Bでの脈動周波数に対する粒子対流エネルギーE

cと総変動速度エネルギーE

fの変化を示す.H

GI=0.15,

0.20mでは,fp=2HzにおいてE

cは最大値を取る.これはス

ナップショットで確認された大気泡の上昇に伴う循環の発生に起因している.一方,H

GI=0.10mの条件では,他のH

GI

条件と異なる傾向を示す.これはCase Aの場合と同様に層高が小さいため,対流渦の十分な発達が得られないことに起因するものと考えられる.f

p>5Hzの周波数領域では,す

べてのHGIにおいて,E

cは f

p=0Hzと比較してほぼ同程度か

若干低くなっており,平均対流エネルギーの観点からは,Case Aで見られたような脈動付加による循環促進効果は得られなかった.変動速度エネルギーE

fはすべてのH

GIにお

いて,fp>6Hzの領域でほぼ一定値となった.図 11に示す

層重心高とその変動強度 VHの脈動周波数に対する変化に

おいても,同様の傾向が確認された.つまりCase BではEf

の上昇分は,層の脈動に同期した振動運動によってもたらされたものと考えられる.f

p>6Hzの領域では,平均粒子速

度場から観測される流動パターンと変動エネルギーの分布は定性的にほぼ同様であると言える.したがって,Case B

においては fp>6Hzの領域では,粒子層の運動特性は,脈動

Fig.9 Snapshots of particle motion, long-term particle

velocity field and distribution of fluctuating energy of

particle : Case B, HGI

=0.20m

fp=0Hz

fp=2Hz

fp=10Hz

fp=25Hz

5.0× 10-2

0.0 [kg m-1/s2]

5.0× 10-2

0.0 [kg m-1/s2]

5.0× 10-2

0.0 [kg m-1/s2]

5.0× 10-2

0.0 [kg m-1/s2]

流動層内の粒子流動特性に及ぼす気流脈動の影響348

周波数に対して飽和しているものと考えられる.

     4.4 4.4 4.4 4.4 4.4 粒子層の緩和時間スケール粒子層の緩和時間スケール粒子層の緩和時間スケール粒子層の緩和時間スケール粒子層の緩和時間スケール  前述した通り,流動層内部の粒子流動特性は,高脈動周波数領域で,応答が飽和することを示し,さらに流動状態の違いによって,飽和周波数が異なることを示した.このことは,粒子層の緩和時間スケールが,粒子の条件の他に流動化状態における平均的な空隙率に依存することを示唆している.そこでErgun式を元にした,粒子層の緩和時間スケールを算定することを試みた. Ergun式による単位体積当たりに働く流体抵抗力 F(u)

を,u=umf

+∆uにおいてTaylor展開し,2次以上の項を無視し,線形化すると次式を得る.

 F u u F udF

duumf mf

umf

( ) ( )+ = +∆ ∆ (18)

ここで式 (18)右辺第1項は,umfでの流体抵抗力であり,単位体積当たりに作用する重力とつりあうので,次式を得る.

 F u u Mg A B Cu umf mf( ) ( )+ − = +∆ ∆2 (19)

ここに

  Ad

b

p b

= −13

εε ,B

db f

p

=−150 1( )ε µ

,C f= 1 75. ρ

である.ここでεbは流動化状態における空隙率で,V

Pを粒

子体積,Lを粒子層の横幅として,以下の式で概算した.

 εbp p

G p

N V

H d L= −1

2 (20)

α=A(B+2Cumf

)とおくと,umfから気流速度が∆u変化した場

合の運動方程式として

 Md x

dtu

dx

dt

2

2 = −α( )∆ (21)

を得る.ここでMはM=(1-ε)ρsなる粒子層の重量である.

粒子層は剛体運動すると仮定しており,流体抵抗力は粒子層-流体間の相対速度に起因する.以下,時刻 t=0における層の加速度として,

 d x

dtu

Mt

2

20=

= ×∆ α(22)

を得る.したがって,粒子層の緩和時間スケールτmfは,次式のように見積もることができる.

 ταb

M= (23)

式(23)にそれぞれCase A(HGI

=0.20m, fp=0Hz)の平均空隙率

εb=0.46,Case B(H

GI=0.20m, f

p=0Hz)の平均空隙率 ε

b=0.52,

最小流動化速度 umf

=1.03m/sを代入すると,Case Aで τb=

0.089s,Case Bでτb=0.120sを得る.本計算によって推定さ

れた飽和周波数は,Case Aでfs=10Hz(周期T

s=0.100s),Case

Bで fs=6Hz(周期T

s=0.167s)であり,粒子層の気流変動に

対する応答性に関して,式(23)で提案した粒子層の緩和時間がよい見積もりを与えることがわかる.

5 . 5 . 5 . 5 . 5 . 結  言結  言結  言結  言結  言

 本研究では,DEMを用いた2次元脈動流動層の流動解析を行い,気流に付加した脈動が及ぼす粒子流動特性への影響について調べた.本研究で得られた主要な結果を以下に示す.(1) 脈動を付加しない場合に気泡が発生しない条件では,脈動を付加することによって粒子循環特性を促進するという結果を得た.低周波数領域では対流エネルギー,粉体温度ともに上昇し,高周波数領域ではそれらはほぼ一定となった.(2) 脈動を付加しない場合に気泡流動化状態を示す条件では,周波数領域によって粒子循環特性が異なるという結果を得た.低周波数領域では,脈動を付加しない場合と比較して粒子層に発生する気泡が大きくなり,その気泡に伴う粒子循環によって対流エネルギーが増加する.それに対して高周波数領域では,粒子循環特性への脈動付加の影響はほとんど見られなかった.(3) Ergun式をもとにして,粒子層の緩和時間スケールの推算式を提案した.その結果,本計算結果について粒子層の気流変動に対する応答性に関して,よい見積もりを与えることを示した. なお,本研究は文部省科学研究補助金奨励研究 ( A )

(12750140)の援助を受けた.記して謝意を表する.

文  献文  献文  献文  献文  献

(1) 例えば,守富・森・荒木・森山, 化学工学論文集6(1980),

4-392.

(2) Köksal, M. and Vural, H., Powder Technol., 95(1998), 205.

(3) 例えば,Savage,B., J. Fluid Mech., 194(1988), 457.

(4) Pak, H.K. & Behringer, P.R., Nature, 371(15)(1994), 231.

(5) Cundall,P.A. & Strack, O.D.L.,Geotechnique, 29-1(1979), 47.

(6) Lan, Y. & Rosato, A.D., Phys. Fluid, 9(12)(1997), 3615.

(7) 川口・田中・辻 ,日本機械学会論文集 , 61-589B(1994),

3169.

(8) Anderson, T.B. & Jackson, R., I & EC Fundamentals, 6(4)

(1967), 527.

(9) 川口・坂本・田中・辻 ,日本機械学会論文集 ,64-619B

(1998), 717.

(10) 川口・福島・田中・辻 , 第 4回流動層シンポジウム講 演論文集 , (1998), 517.

(11) Mikami, T., Kamiya, H. & Horio, M., Chem. Engng. Sci.,

53-10, (1998), 1927.

(12) Ergun, S., Chem. Eng. Prog., 46-11(1952), 89.

(13) Schiller, L. & Naumann, A.Z.,Ver. Dert. Ing., 77(1933), 318.

(14) Wen, C.Y. & Yu, Y.H., Chem. Eng. Prog. Symp. Ser., 6

(1966), 100.

(15) パタンカ, S.V.(訳:水谷・香月),”コンピュ-タによる 熱移動と流れの数値解析 ”,森北出版 (1985).(16) Geldart, D., Powder Technol., 7(1973), 285.

流動層内の粒子流動特性に及ぼす気流脈動の影響 349