はじめに 基本コンセプト -...

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昨年1月号のCR結合2A3シングルパワーアンプを全 段直結に改造,本轍まできるだけ高いゲインを得るた めと,スクリーングリッドに負帰還を戻すために初段 は6BL8の5極部を,またドライブ段は6BL8の3檀 那を使ってカソードフォロワー構成とした.長期的な 安定動作を目指すには,出力管が充分温まってから B電圧が徐々に高くなるようにするため,ダンパー管 6G-K17を使ってディレイ回路を構成し,タイムラグ をとった加工は多少必要だが追加部品も少なく, 改造費はかからないので気軽に挑戦できる. はじめに 2013年1月号で紹介した2A3 シングルパワーアンプは 今や恒 例になった,MJ執筆者4人によ るアンプの競作のときに使用した eCA7シングルパワーアンプを. できる限りパーツを再利用して改 造したものです. これは1台分の費用にわずか のパーツ代を加算すれば アンプ 作りを2回楽しむことができるよ うにと考え,いわばアフターフォ ローということで発表したのです. 今回のアンプは その2A3シ ングルアンプを,自分なりに充分 納得でぎ 決定版と自負できるよ うに,グレードアップバージョン とでも呼べる形にした全段直結ア ンプです. 直結のため,カップ)ングコン デンサーによる音質の影響を受け ませんので 素直な音の出方は本 機の最大の特徴です.読者諸兄の 参考になれ!辞いです. 2014/2 75 ∴∴ 面上 続隔離轡菓園音音盤詫言邁/ 「∴ ∴ ∴∴宇宙 ∴富 :∴ 十二雷撃 ∴∴ /享 葵賀「 一、」〇一 ∴∴ 基本コンセプト 回路を設計する際,次の点を基 本コンセプトにしました. (1)できるだけパーツの再利用を 図ること 特にトランス類とシ ャシーは前作のものをそのまま 使用する. これはコストをあまりかけな [表1]真空管の定格 いようにするために必要なことで すし,またシャシーの孔あけ加工 も,最小限に済ますことができま す.また,シャシーに多少キズが あっても再塗装すれば 新品と同 様の外観にすることができるはず です. ¢)前回の回路構成は 初段が 12AX7AによるSRPPで 籍繊纏隊轡酸類/務鰯鰯繊磯鰯嫁 饗幾懲繊葱綴霧 )/務義務 電力増幅用 3極管 中耳双3提督シャープか トオフ高周波用複合管 半減傍熟ダンパー管 Ef〔∨〕×If〔A〕 2.5×2.5 6.3×0.43 6.3×1.2 Ep 〔∨〕 300 5 250 3 250 島2 〔∨〕 175 Pp 〔W〕 15 1.7 1.5 6.0 P82 〔W〕 0.5 Ik 〔mA〕 14 14 175 〔Mの 0.05(F) 0.5(C) 0.5(F) 匂,k 〔∨〕 + 100 一十100 -200(DC・‘書く120V) 一・900 Ep 〔∨〕 250 5 170 3 100 (整浦管としての 逆耐圧=1230V) 島2 〔∨〕 170 島1 〔∨〕 -45 -2 -2 〔mA〕 60 10 14 gm 〔mSi 5.25 6.2 5.0 〔kの 0.8 400 42 47(侮1・胞 ) 20 PoUT〔W〕 3.5(位=2.5kO)

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Page 1: はじめに 基本コンセプト - TOK2...昨年1月号のCR結合2A3シングルパワーアンプを全 段直結に改造,本轍まできるだけ高いゲインを得るた

昨年1月号のCR結合2A3シングルパワーアンプを全

段直結に改造,本轍まできるだけ高いゲインを得るた

めと,スクリーングリッドに負帰還を戻すために初段

は6BL8の5極部を,またドライブ段は6BL8の3檀

那を使ってカソードフォロワー構成とした.長期的な

安定動作を目指すには,出力管が充分温まってから

B電圧が徐々に高くなるようにするため,ダンパー管

6G-K17を使ってディレイ回路を構成し,タイムラグ

をとった加工は多少必要だが追加部品も少なく,

改造費はかからないので気軽に挑戦できる.

はじめに

2013年1月号で紹介した2A3

シングルパワーアンプは 今や恒

例になった,MJ執筆者4人によ

るアンプの競作のときに使用した

eCA7シングルパワーアンプを.

できる限りパーツを再利用して改

造したものです.

これは1台分の費用にわずか

のパーツ代を加算すれば アンプ

作りを2回楽しむことができるよ

うにと考え,いわばアフターフォ

ローということで発表したのです.

今回のアンプは その2A3シ

ングルアンプを,自分なりに充分

納得でぎ 決定版と自負できるよ

うに,グレードアップバージョン

とでも呼べる形にした全段直結ア

ンプです.

直結のため,カップ)ングコン

デンサーによる音質の影響を受け

ませんので 素直な音の出方は本

機の最大の特徴です.読者諸兄の

参考になれ!辞いです.

2014/2 75

∴∴ 面 上/

続隔離轡菓園音音盤詫言邁/ 「∴∴ ∴∴宇宙 ∴富

:∴ 十 二雷撃 ∴∴

\薮 /享 葵賀「

一、」〇一∴ ∴

基本コンセプト

回路を設計する際,次の点を基

本コンセプトにしました.

(1)できるだけパーツの再利用を

図ること 特にトランス類とシ

ャシーは前作のものをそのまま

使用する.

これはコストをあまりかけな

[表1]真空管の定格

いようにするために必要なことで

すし,またシャシーの孔あけ加工

も,最小限に済ますことができま

す.また,シャシーに多少キズが

あっても再塗装すれば 新品と同

様の外観にすることができるはず

です.

¢)前回の回路構成は 初段が

12AX7AによるSRPPで 必

籍 繊 纏 隊 轡 酸 類 /務鰯鰯 繊磯鰯嫁 饗幾懲繊 葱綴霧 )/務義務

種  別 電力増幅用3 極管 中耳双3提督シャープか トオフ高周波用複合管 半減傍熟ダンパー管

E f 〔∨〕×If 〔A〕 2 .5 ×2 .5 6.3 ×0 .43 6.3 ×1.2

Ep  〔∨〕 30 0

5

25 0

3

25 0

島 2 〔∨〕 17 5

P p  〔W 〕 15 1.7 1.5 6.0

P 82 〔W 〕 0 .5

Ik  〔m A 〕 14 1 4 17 5

缶 〔M の 0.0 5 (F)0.5 (C )

詰 ∴ 0.5 (F)

匂,k  〔∨〕 + 100 一十10 0- 20 0 (D C ・‘書く 12 0 V ) 一・90 0

E p  〔∨〕 2 50

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(整浦管としての逆耐圧=1230V)

島 2 〔∨〕 17 0

島 1 〔∨〕 -45 -2 -2

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句  〔kの 0.8 4 0 0

耳 42 4 7 (侮1・胞 ) 2 0

P o U T 〔W 〕 3.5 (位 =2.5kO)

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6BL8(P)   68し8 (丁) 110V 2A3    i。MF-,。WS

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ワンポイントシャシーアース  電源スイッチ

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6G-K17 68し

2

[図 1]2 A 3 シングルパワーアン

回路図と真空管ピン接続

尉 GlP響 ㌍ 王 ‡V 汗

園 認匪音感

[写真1]左から今回使用した出力管2A3(ソヴテック)と半波傍熟ダンパー管6G-K17(東芝)

要なゲインを稼ぎ2A3はCR

結合でドライブした

今回は単一電源による全段直結

方式なので必然的にB電源電圧

は高くなりますし.またまったく

の無調整とはなりませんが前作

のアンプを完成させることができ

た方は ある程度アンプ作りのノ

ウハウを会得できていると思いま

76

すので本桟も完成までこぎ着け

ることができるでしょう.

使用真空管

使用した真空管を表1に示しま

す.2A3は前回使用したソヴテ

ック製をそのまま使用しました

初期の2A3は知人宅で一度見

たことがありますが1枚プレー

トで フィラメントの折り返し数

が非常に多かったことを思い出し

ます.その後,1枚プレートから

2枚プレートに変更されて,われ

われが目にする2A3の形になっ

たと聞きます.

ソヴテックの2A3は1枚プレ

ートですが 旧タイプとは異なる

ので 新しく設計されたものと思

います.外観からはプレート損失

が大きそうに思えますが ビンテ

ージ真空管でも差し替えができる

ように,ここではマニュアルにあ

る動作例に対して,さらに余裕を

残した内輪な使い方を目指します.

初段とドライブ段には,中〃3

極とシャープカットオフ5極管が

同一グローブに封入された‘BL8

を使用しました.

使用するシャシーは,前段管

用の取り付け孔が2本分しかあり

ませんが 複合管を使用すれば

問題ありません.若干定数を変更

する必要はあるかもしれませんが

eU8.6GH8なども同様に使用

できるはずです.

本棟は できるだけ高いゲイン

を得るためとスクl)-ンダ)ッド

に負帰還を戻すので 初段には5

極管を使用する必要があります.

また出力管と初段の間に,入力

インピーダンスが高く,出力イン

ピーダンスの低いカソードフォロ

ワーをバッファーとして入れるこ

とにより.初段への負荷をできる

だけ軽く,また出力管は強力にド

ライブするようにして音質の向上

を図ります.

さらにカソードフォロワー直

MJ

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2A3シングルパワーアンプ

の基軸性です.純容量負荷でも

発振はしませんし,方形波応答波

形は安定しているので 特に問題

はないでしょう.

図6はダンピングファクター特

性です.中域での係数は4を示し

ています.まったくの無帰還では

2.5程度の係数を示すので 負帰

還により係数が高くなったことが

理由です.低端域と南端域で 係

数が低下する特陸になりました

図7は歪率特性です.決して低

歪率だとはいえませんが 歪みの

内容はほぼ2次歪みなので 耳障

りな音ではありません またソフ

トディストーション特性であるこ

とからも,歪みは目立たないとい

えます.

なお.残留ノイズはlmV程度

なので 能率の高いスピーカーを

使用しても残留ノイズはほとんど

気にならない種度だと思われます.

波形観測

写真11に100Hzの,写真12

にlkHzの,また写真13に10

kHzの方形波応答波形を示しま

す.10kHzでの応答波形に若干

の乱れがありますが これは周波

数特性で示したように,100kHz

までの間に2か所のピークがある

ことの証です.

写真14は負荷オープン時

の.写真15は8Qの負荷抵抗に

0.471jFの容量を並列接続したと

きの.そして写真16は0.47〟Fの

容量のみを負荷したときの方形波

応答波形です.いずれの場合も発

振などの兆候は見られず 安定し

た動作をしているものと考えられ

ます.いくら安価に製作したとは

いえ,しっかりしたアンプにした

いものです.

写真17は本機の最大出力4W

時の.また写真18はクリップ後

2014/2 83

[写真11]方形波応答波形(L-Ch,f=100Hz.RL=80,出力1Vms.上:入九下:出力)

[写真14]方形波応答波形(LCh,f=10kHz,負荷オープン時,上:入力,下:出力)

[写真12]方形波応答波形(L-Ch.f=1kH乙PL=

80,出力1Vrms.上:入力下:出力)

  雄 香登

/ ■/

[写真15]方形波応答波形(L・Ch.f=10kHz.80の抵抗(こ0.47〟Fの容量を並列接続 上:入力.下:出力)

[写真17]方形波応答波形(L-Ch,F=1kHz,FJL=

80,最大出力4W時.上人九下:出九)

の出力5W時のサイン波です.ク

リップとカットオフの現れ方に多

少の違いはありますが ほほ同時

に起こるので 本機の定数でよい

と思います.

試 聴

今回は前作のCR結合シングル

アンプから全段直結アンプに変更

したのですか 直結としたメl)ッ

トが充分発揮されているためか.

骨太でいてグ)アで ワイドレン

ジな音の出方です.前作のアンプ

[写真13]方形波応答波

形(L-Ch,f=10kHz,RL=80.出力1V,mS,上:入九下:出力)

[写真16]方形波応答波形(し・Ch.f=10kHz,負荷は0.47〟Fのみ,上:入力.下:出力)

/秀ヂ滅//貌

ぞ==ミ)

  )/ノ/:

[写真18]ゲノップかソトオフ波形(L-ch,f=1kHz.FiL=80,出力5W時.上:大方下:出力)

は,多少エネルギーが高域に偏っ

た感じかしましたが 本機は広い

範囲にわたって,力強いエネルギ

ー感があるようです.

ベースのピチカートはプーンと

響きますし,ハイハットには重み

も感じました

制作費はそれほどかかりません

し,加工は多少必要になるものの

気軽に挑戦できるので 前作を迫

試された方はもちろんのことです

が 新たに製作される方もぜひト

ライしてください.

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0 1 8 il量り8書W   製作醇 は75ペ_ジよ。

諾器護憲笑話請  願一一諾謹話慧藷詫誓書醍醐閥闘は 3 か 所 の 部 分 加 工 を 施 して 使 用 した .これ に よ り

低 コ ス トで の 改 造 を 可 能 に して い る.前 作 シ ャシ ー “i墾書房/■’プ ノ

に は 前 段 管 用 の 孔 が 2 本 分 しか な い の で 複 合 管                 iそ////i

議誤諾藷謙語欝謹書 「懐     ◎鉦-iが発揮され.広範囲にわたり骨太でグノアな力強い   モミ≡i=’へ‾1〈ii音が楽しめる.0.5V入力時に最大出力は4W.                   1‾‾i(i芋茎茎華甲

初段とドライブ段に6BL8の5極部と3極部を使用Z A s シ ン グ ル I t ワ 臆 ア ン プ 悟 S業um

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∴ ∴∵:∴

抱 割∴ 一∴主

シャシーは小型だがその内宮部よ全段直結でパーツが少なく.またラグ板の使用などによっ

てスペースに余裕を残す感じとなった.左約

1/2が電源部で右が増幅部.出力管2A3は

放熱対策と外観のバランスをよくするために落とし込みアダプターを使用している

\雲/

言. 撃;

∴∴∴∴ 一::∴\

l ∴ ∴∴

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i∴i/-\\;1肝

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i∴子20×40mmのLアングルにタイト製のラグを使って発熱量の多 電源部.左側の30uF/500Vのチューブラーコンは前作のものを流

いバイアス用セメント抵抗を取り付けた.手前は増幅部の配線 用.ダイオードUO7Nは新しく追加.右側のCRはヒーターバイアス用

MJ