: 土木学会論文集f vol.65 no.2,128-147, 2009.4 施工 …...5フェロー会員...

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施工過程を考慮したシールドトンネル覆工の 応力計算方法 矢萩 秀一 1 ・入江 健二 2 ・大門 信之 3 ・中村 兵次 4 ・鈴木 久尚 5 1 フェロー会員 東京地下鉄(株)専務取締役(〒110-0015 東京都台東区上野3-19-62 正会員 東京地下鉄(株)建設部長(〒110-0015 東京都台東区上野3-19-63 フェロー会員 メトロ開発(株)代表取締役社長(〒103-0001 東京都中央区日本橋小伝馬町11-94 フェロー会員 パシフィックコンサルタンツ(株)常務取締役(〒206-8550 東京都多摩市関戸1-7-5E-mail:[email protected] 5 フェロー会員 パシフィックコンサルタンツ(株)トンネル部長(〒163-0730 東京都新宿区西新宿2-7-1E-mail:[email protected] シールドトンネルの覆工の設計では,設計用荷重として従来から緩み土圧や全土被り荷重が用いられて いるが,設計用荷重を施工過程を無視し一義的に設定することは合理的ではない.このため,覆工の設計 では地盤性状やトンネル断面形状の他に施工過程を考慮した覆工設計用荷重の設定が合理的であると考え られるが,その設定方法は確立された方法がなかった.本論文ではシールドトンネル覆工の合理的な応力 計算法として,覆工をはり部材,トンネルの周辺地盤を面要素でモデル化し,施工過程(セグメント組立 て時および急曲線施工時を除く)を考慮して応力を求める方法を提案する.そして提案した方法を砂質土 地盤,粘性土地盤およびシールド掘進に伴う地盤応力の変化により圧密が生じる軟弱粘性土地盤でのシー ルド工事現場へ適用した結果について述べる. Key Words : design load, load during construction, shield segment, finite element method, in-situ measurements 1.はじめに シールドトンネル覆工の設計における覆工応力の 計算には,覆工をはり部材,地盤の抵抗を分布ばね でそれぞれモデル化した構造モデルに,土圧,水圧 および覆工自重を荷重として作用させる方法が従来 から用いられている 1) .そして,この場合の土圧と しては,覆工天端の鉛直方向土圧を全土被り厚さに 相当する土圧か Terzaghi の方法に代表される緩み土 圧とし,水平方向土圧は,この鉛直方向土圧と覆工 天端からの深さに応じた土の重量との和に土圧係数 を乗じたものとしている 2) 従来からの考え方は,(1) 覆工の挙動は施工状況 の影響を受けるにもかかわらず,覆工が完成した後 に荷重が作用することとしていること,(2) 連続体 と考えられる地盤の抵抗を互いに独立した分布ばね で代表させていること,(3) その地盤ばねの決定で は地盤の変形特性を表現する変形係数を用いていな いこと,およびトンネルの大きさが考慮されていな いこと,(4) 覆工の変形との関係で定義されるべき 土圧を変形に関係なく一義的に与えていること, (5) とくに土被りの深い場合には緩み土圧が用いら れているが,シールド掘進に伴う地盤の変形が小さ い最近のシールド工法では,現実に作用している土 圧より小さな値を与える可能性が大きいこと,(6) 裏込め材が高い圧力で注入された後にその場で固化 することを考慮していないことなどの,基本的な問 題点を含んだものである. こうした問題点のうちのテールシール圧(前記問 題点の(1)の一部)と裏込め注入圧(前記問題点の(6)) の影響に関しては,現場実測や模型実験が行われて いる.有泉らは,模型実験と現場計測結果から,テ ールシール通過時には大きなテールシール圧が作用 するが,テール離脱後は裏込め注入圧に置き換わる ことを明らかにした 3) .また,太田らは,軟弱粘性 土地盤,硬質粘性土地盤,および砂質土地盤での現 場計測の結果,裏込め注入圧の影響は完成後に残留 するので無視できないことを示した 4) 9

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施工過程を考慮したシールドトンネル覆工の 応力計算方法

矢萩 秀一1・入江 健二2・大門 信之3・中村 兵次4・鈴木 久尚5

1フェロー会員 東京地下鉄(株)専務取締役(〒110-0015 東京都台東区上野3-19-6) 2正会員 東京地下鉄(株)建設部長(〒110-0015 東京都台東区上野3-19-6)

3フェロー会員 メトロ開発(株)代表取締役社長(〒103-0001 東京都中央区日本橋小伝馬町11-9) 4フェロー会員 パシフィックコンサルタンツ(株)常務取締役(〒206-8550 東京都多摩市関戸1-7-5)

E-mail:[email protected] 5フェロー会員 パシフィックコンサルタンツ(株)トンネル部長(〒163-0730 東京都新宿区西新宿2-7-1)

E-mail:[email protected]

シールドトンネルの覆工の設計では,設計用荷重として従来から緩み土圧や全土被り荷重が用いられて

いるが,設計用荷重を施工過程を無視し一義的に設定することは合理的ではない.このため,覆工の設計

では地盤性状やトンネル断面形状の他に施工過程を考慮した覆工設計用荷重の設定が合理的であると考え

られるが,その設定方法は確立された方法がなかった.本論文ではシールドトンネル覆工の合理的な応力

計算法として,覆工をはり部材,トンネルの周辺地盤を面要素でモデル化し,施工過程(セグメント組立

て時および急曲線施工時を除く)を考慮して応力を求める方法を提案する.そして提案した方法を砂質土

地盤,粘性土地盤およびシールド掘進に伴う地盤応力の変化により圧密が生じる軟弱粘性土地盤でのシー

ルド工事現場へ適用した結果について述べる.

Key Words : design load, load during construction, shield segment, finite element method, in-situ measurements

1.はじめに シールドトンネル覆工の設計における覆工応力の

計算には,覆工をはり部材,地盤の抵抗を分布ばね

でそれぞれモデル化した構造モデルに,土圧,水圧

および覆工自重を荷重として作用させる方法が従来

から用いられている 1).そして,この場合の土圧と

しては,覆工天端の鉛直方向土圧を全土被り厚さに

相当する土圧か Terzaghi の方法に代表される緩み土

圧とし,水平方向土圧は,この鉛直方向土圧と覆工

天端からの深さに応じた土の重量との和に土圧係数

を乗じたものとしている 2). 従来からの考え方は,(1)覆工の挙動は施工状況

の影響を受けるにもかかわらず,覆工が完成した後

に荷重が作用することとしていること,(2)連続体

と考えられる地盤の抵抗を互いに独立した分布ばね

で代表させていること,(3)その地盤ばねの決定で

は地盤の変形特性を表現する変形係数を用いていな

いこと,およびトンネルの大きさが考慮されていな

いこと,(4)覆工の変形との関係で定義されるべき

土圧を変形に関係なく一義的に与えていること,

(5)とくに土被りの深い場合には緩み土圧が用いら

れているが,シールド掘進に伴う地盤の変形が小さ

い最近のシールド工法では,現実に作用している土

圧より小さな値を与える可能性が大きいこと,(6)裏込め材が高い圧力で注入された後にその場で固化

することを考慮していないことなどの,基本的な問

題点を含んだものである. こうした問題点のうちのテールシール圧(前記問

題点の(1)の一部)と裏込め注入圧(前記問題点の(6))の影響に関しては,現場実測や模型実験が行われて

いる.有泉らは,模型実験と現場計測結果から,テ

ールシール通過時には大きなテールシール圧が作用

するが,テール離脱後は裏込め注入圧に置き換わる

ことを明らかにした 3).また,太田らは,軟弱粘性

土地盤,硬質粘性土地盤,および砂質土地盤での現

場計測の結果,裏込め注入圧の影響は完成後に残留

するので無視できないことを示した 4).

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土木学会論文集F Vol.65 No.2,128-147, 2009.4
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著者らは覆工の設計法を合理的なものとすること

が必要であると考え,上記の問題点を合理的に解決

するための手法として,覆工をはり部材,シールド

トンネルの周辺地盤を面要素でモデル化し,施工過

程を考慮して計算を進めて覆工の応力を求める方法

を考案した 5)~10).そして,この方法の妥当性を検

証するために,この方法により計算される覆工の応

力と現場実測値とを比較したところ,この計算法が

妥当であることがわかった. 本論文は,圧密を生じない地盤,およびシールド

掘進に伴う地盤応力の変化により圧密を生じる地盤

を対象として,上述した新しい覆工応力の計算法に

ついて記すものである.なお,セグメント組立て時

および急曲線施工時に発生する応力は扱わない. 2.シールドトンネル覆工の応力および変形の

発生機構に関する考察 施工過程を考慮した覆工応力の計算法を検討する

にあたり,最初にシールド掘進時の現場実測値を分

析し,その後,施工の各段階でのシールドトンネル

覆工の挙動を一般論として考察する.

(1) 参考とする現場の概要

少し複雑な断面をしているが,地下鉄南北線白金

台駅の工事で得られた現場実測値について考察する. このシールド駅は,図-1に示すように,相対式ホ

ームを有する3径間の断面で,セグメントはダクタ

イル鋳鉄製セグメント(コルゲートタイプ),セグメ

ント幅は1200mm,中央径間のセグメントの桁高は

350mm,側径間の桁高は280mmである11),12).

シールド掘進後に建て込む中柱は鋼製で,施工中

はすべてのセグメントリングに対して設置される.

また,地盤条件は図-2に示したように良好な洪積

層で,土被りは中央径間で約21m,地下水位は中央

径間の天端の上方約4.6mに存在する.この地盤に三

連型泥水式シールド機を用いて3径間の構造を一挙

に構築するものである.

(2) 現場計測結果の分析

この現場で得られた測定値を図-3に示したが,主

として全体的な挙動を表すと思われる中柱の軸力に

着目して分析すると以下のようになる. a) No.18リング推進時~No.19リング推進直前

No.18リングの推進直後に2600kNを計測するが2時間後には500kNを下回って一定値となる.推進直

後に2600kNとなったのは,No.18リングの推進と同

時に裏込め注入が行われたことによるものであり,

その後,軸力が減少するのは周辺地盤の間隙水圧の

減少に伴って裏込め材の圧力が減少したことによる

と考えられる.土圧計の計測値があまり大きくなっ

ていないのは,テールシールの部分では,裏込め材

が土圧計に直接に接触するのではなく,裏込め材よ

り剛性の大きいテールシールを介して間接的に土圧

計に接していることによると思われる.なお,テー

ルシール圧の影響を受けるNo.19リング推進直前の

値が400kN程度あることから,テールシール圧のセ

グメントリング応力への影響は小さいことがわかる. b) No.19リング推進時~No.23リング推進直前

新たなリングの推進に伴って軸力は大きくなり 2時間程度で減少して一定値となることは a)と同様

であるが,シールドテールからの距離が大きくなる

のに伴って軸力の変化は小さくなって,最大値は小

さくなり最小値は大きくなっている.最大値が減少

図-1 三連型シールドトンネル構造一般図

図-2 地質縦断図

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しているのは測定リングがシールド機から離れてい

くことが主な原因であり,最小値が No.18 リングの

場合より徐々に大きくなっているのは,セグメント

リングに作用する土圧が大きくなっていることを想

像させる(土圧の測定値からもその傾向は確認でき

る).

c) No.23リング推進時以降

新たなリングの推進に伴う軸力の増減は小さくな

り,一定値に収束しつつある.すなわち,シールド

テールから 4 リング(約 5m)程度離れると,裏込め

注入圧の影響は小さくなり土圧が定常的に作用する

ようになるといえる.この場合の一定値は 1800kN程度であり,鉛直方向の等分布荷重に換算すると

230kN/m2に相当する.

(3) セグメント組立て時の覆工の挙動に関する考

セグメント組立て時には,セグメント自重や組立

て時に作用する一時的な力により,局部的に大きな

応力が発生することがある.これらの応力は必ず発

生するものではなく,また,テールボイド部で解消

されるとも考えられるので,ここでは扱わないこと

とする.ただし,本論文では扱わないが施工中の安

全性の検討は無視できるものではない.

(4) テールシール部での覆工の挙動に関する考察

テールシールは,掘進時にテールボイドに注入す

る裏込め材や地下水がシールドテール部へ流入する

ことを防止することを目的として設置するものであ

るから,テールシールとセグメント表面との接触圧

力は非常に高いものである.

しかし,有泉らの研究3)および(2)に記述した現

場計測からわかるように,テールシール部を離脱後

は裏込め注入圧に置き換わると想定できるから,完

成後の覆工応力には,この部分のセグメントリング

の挙動は考慮する必要がないと考える.

内数字は掘進リング番号

図-3 現場計測結果(No.18 リング)

(d) 中柱軸力経時変化図 (c) セグメント軸力経時変化図

(a) 土圧経時変化図 (b) セグメント曲げモーメント経時変化図

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(5) テールボイド部での覆工と地盤の挙動に関す

る考察

テールボイド部のセグメントリングと地盤の挙動

は,完成後のセグメントリングの応力を考えるうえ

で重要であることから,少し詳しく分析することに

する(図-4参照).

a) セグメントリングの変形に対する拘束

セグメントリングがテールシールからテールボイ

ド部へ押し出されると,セグメントリングの外周面

は裏込め材で満たされることになる.テールボイド

部での裏込め材は固化していないので,圧力として

作用するものの,セグメントリングの半径方向の変

形に対する抵抗は非常に小さいと考えられる.

b) 裏込め材の圧力

シールド掘進と同時に裏込め注入を行なうとセグ

メントリングには高い圧力が作用し,トンネル周辺

地盤では間隙水圧が高まる.シールドトンネルが透

水層に接して築造されると,間隙水の移動により,

この高い圧力は比較的短時間で消散し,地盤の間隙

水圧に近い値(現場計測結果では地盤の間隙水圧よ

り10kN/m2程度大きかった)で定常状態となると考

えられる.

c) セグメントリングの安定

裏込め材の単位体積重量は水の単位体積重量より

大きく,したがってセグメントリングの浮力も大き

いことから,自重が作用してもセグメントリングは

上向きに押されることになる.そしてこの部分は前

述のように地盤の拘束がないことから,他に拘束が

ないとするとセグメントリングは安定しないで上方

の地盤に押し付けられることになる.しかし,実際

にはリング間継手を通して,前後のセグメントリン

グから安定に必要な力が供給されるために,セグメ

ントリングが浮き上がることはない.すなわち,こ

の部分のセグメントリングは,前後のセグメントリ

ングにより支えられていると考えられる.

d) 変形防止工の影響

変形防止工の有無により,セグメントリングに発

生する応力は変化すると考えられるから,変形防止

工を設置する場合には,構造モデルに変形防止工を

組み込む必要がある.

e) 周辺地盤の挙動

シールド機周辺の地盤はシールド機により支持さ

れているから,後述するテールボイド部の影響がな

いとすると,シールド掘進前の地盤応力と大幅に異

なることはないと考えられる.

ところがテールボイド部では,掘削により地盤の

初期応力が解放され,シールド機により掘削された

面(以下「掘削面」と呼ぶ)にはテールボイドを満た

している裏込め材の圧力が作用することになり,周

辺地盤の応力は掘削前の応力状態とは異なるものと

なる(図-4(a)参照).

裏込め材の圧力が周辺地盤の間隙水圧に近い値と

なることは,掘削面に作用する圧力もこの程度であ

ることを意味する.すなわち,図-4(a)において裏

込め材の圧力PGFの値が半径方向の初期応力Ponより

相当に小さいことを意味する.テールボイド周辺地

盤はこれに応じて応力が変化するが,テールボイド

の延長が短いことからPonとPGFの差は,テールボイ

ド部の前後(前部はシールド機,後部は地盤密着部)

へ多く流れると考えられる(図-4(b)参照).

(a) 掘削による影響 (b) トンネル軸方向への力の流れ

図-4 テールボイド部における覆工と地盤の挙動

Pon :半径方向の初期応力

Pos :周方向の初期応力

PGF :裏込め材の圧力

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(6) 地盤密着部での覆工と地盤の挙動に関する考

テールボイド部と地盤密着部との境界を定義する

ことは難しいが,その後の掘進時において地盤に作

用する追加応力を,大きなひずみを発生しないで伝

達できる状態となった時点とするべきであると考え

る.最近広く用いられている可塑性材料を用いた裏

込め材では,一軸圧縮強度が地盤応力程度

(500kN/m2)以上となるのには注入後1時間程が必要

とされているから13),テールボイド部の延長は1リング幅と考えることができる.

地盤密着部でのセグメントリングの応力が,完成

後の応力であると考えられることから,この部分の

考察も重要である.なお,覆工の応力計算法は,荷

重増分法を用いることになるので,ここでは前の段

階(テールボイド部)からの変化について考察する.

a) セグメントリングの変形に対する拘束

地盤密着部では,裏込め材の固化が完了していて,

セグメントリングと地盤との間隔はほとんど変化し

ないと考えられることから,セグメントリングの変

形に対する拘束は十分な状態である.すなわち,セ

グメントリングは地盤の変形に近似した変形をする

と考えてよい.

b) 裏込め材の圧力

地盤密着部では,裏込め材の圧力が消散し,周辺

地盤の地下水圧が作用する.荷重の変化量としては,

テールボイド部での裏込め材の圧力から,周辺地盤

の地下水圧までの変化分が対象となる.

c) テールボイド部のセグメントリングからの反力

テールボイド部でのセグメントリングが安定を保

つために,リング間継手を通してトンネル軸方向に

伝達される力は,この地盤密着部から地盤へ伝達さ

れる.すなわち,地盤密着部のセグメントリングは,

上向きの荷重を受け,地盤にその力を伝達する.

d) 変形防止工撤去の影響

地盤密着部では,変形防止工を撤去する.このこ

とは荷重増分の考え方からすると,変形防止工に作

用していた荷重と値が同じで向きを反対とする力を

セグメントリングに作用させることを意味する.

e) 周辺地盤からの荷重

テールボイド部で解放された地盤応力のうち,ト

ンネル周辺地盤を通してトンネル軸方向に再分配さ

れた地盤応力が,セグメントリングに荷重として作

用する(この部分の考え方は付録を参照いただきた

い).

f) 地表面上の荷重

シールドトンネル完成後に,地表面荷重が載荷さ

れると,セグメントリングには追加応力が発生する.

g) 圧密の影響

軟弱粘性土地盤においては,シールド掘進に伴い

周辺地盤の応力変化により圧密が生じ,セグメント

リングには応力が発生する.また,自然地盤におい

てもシールドトンネル完成後の地下水位の変動(低

下)や地表面上の追加荷重により地盤の有効応力が

増加し,圧密することによりセグメントリングには

追加の応力が発生する.

h) セグメントリングと地盤との相互作用

地盤密着部ではa)で述べたようにセグメントリン

グと地盤とは固化した裏込め材を介して密着してい

るから,セグメントリングがb)~g)に示した荷重を

受けて変形すると,セグメントリングは地盤から拘

束力を受けるとともに地盤は変形する.すなわち,

セグメントリングと地盤とは相互に作用しあってい

る状態である.

3.圧密を考えない場合の覆工の応力計算法の

提案

(1) 基本的な考え方

施工過程を考慮した覆工応力の計算法は,前節で

記した事柄を可能な限り計算に反映できる方法とす

る.

こうした観点から前節を吟味すると,問題を複雑

にしている原因はテールボイド部であることに気が

つく.そして,この部分では横断方向ばかりでなく

トンネル軸方向にも応力が流れるので,周辺地盤も

セグメントリングも,三次元的な扱いが必要である

ことがわかる.

しかし,施工に伴って構造系と荷重が変化するこ

と,シールドトンネルはセグメントリングごとに区

切られていてトンネル軸方向への力の伝達は円滑に

行なわれないことなどを考慮すると,セグメントリ

ングと周辺地盤の全体を三次元でモデル化すること

は難しいと認識せざるをえない.

そこで本論文では,二次元モデルで対応すること

とし,計算モデルを地盤も覆工もトンネル軸に垂直

な面として,このモデルに適切な工夫を施して,ト

ンネル軸方向の影響を加味することにする.

セグメント組立て時の応力は一時的なものである

と考えられること,前章で示した考察により,テー

ルシール部に対しては特別の配慮をする必要がない

と考えられることから,ここではとりあげないこと

にする.すなわち,テールボイド部と地盤密着部だ

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けを対象と考えることにする.なお,テールボイド

部では,セグメントリングと周辺地盤とは分離して

いるので,計算でも分離して扱うこととし,地盤密

着部では両者を一つのモデルの中に組み込んで扱う

ことにする.

後述するように,テールボイド部の覆工の応力の

計算は骨組みモデルを用いる.また,テールボイド

部周辺地盤の応力と,地盤密着部の覆工と周辺地盤

の応力計算は有限要素法モデルを用いる5)~10)

構造系が施工とともに変化するので,図-5に示し

たように,施工段階ごとの荷重増分法により計算す

る.すなわち,STEP-2においてテールボイド部周

辺地盤モデルで地中応力の一部を解放するとともに

STEP-2’でセグメントリングに裏込め材の圧力を作

用させる.STEP-3では地盤密着部(完成直後)にお

いて,セグメントリングに作用している地盤応力の

変化分と変形防止工の撤去の影響を作用させ, STEP-4で覆工完成後の長期の荷重としての上載荷

重および地下水位の変動を考える.

(2) 掘削前の地盤応力[STEP-1]

a) 構造モデル

掘削前の地盤応力の計算は,トンネル軸に垂直な

断面を対象として,二次元の有限要素法を用いて行

なう.

モデルの大きさは,シールドトンネルの下端から

モデルの下端までの距離を1.0~1.5D(Dはトンネル

直径)以上とし,トンネルの側面からモデルの側面

までの距離は,シールドトンネルの下端からモデル

の下端までの距離あるいは地表面からシールド中心

までの距離のそれぞれ3倍のうち大きな値以上とす

る.初期状態の計算ではシールドトンネルは施工さ

れていないから,図-6において,シールドトンネル

部分は地盤のままとする. 側面の境界は水平方向を固定とし,鉛直方向には

スライドできるものとする.上面は地表面と一致さ

せて自由とし,下面の境界は水平も鉛直も固定とす

る.

地盤要素は,平面ひずみ状態と弾性を仮定する.

【 掘削前 】

【STEP-1】 【STEP-2】 【STEP-4】

記号の説明

Ks : トンネル軸方向のせん断ばね

【STEP-2'】 PX0,PY0 : 初期応力による節点力

PXG1,PYG1 : 初期地盤応力による節点力

PXGW,PYGW : 間隙水圧による節点力

PXG2,PYG2 : 掘削面に設置した節点に作用させる荷重

PXG3,PYG3 : 掘削面に設置した節点に作用させる荷重

PXGF,PYGF : 裏込め材の圧力による節点力

PXPF,PYPF : 地盤ばねの反力

PYSF : 変形防止工による反力

α : 応力解放率

骨組みモデル

FEMモデル

セグメントリングへの裏込め材の圧力の導入

 変形防止工反力    PYSF ばね反力

{PXPF,PYPF}T

変形防止工の撤去

PX0=PXG1+PXGW

PY0=PYG1+PYGW

初期応力場の作成

PXG2=α[(PXG1+PXGW)-PXGF]

PYG2=α[(PYG1+PYGW)-PYGF]

裏込め材の圧力の消散

PXG3=(1-α)[(PXG1+PXGW)-PXGF]

PYG3=(1-α)[(PYG1+PYGW)-PYGF]

【 地盤密着部 】【 テールボイド部 】

地表面載荷重圧密荷重

地盤密着部での応力解放 テールボイド部

の応力解放

【STEP-3】

トンネル軸方向に伝達される力

掘削前の状態 テールボイドで裏込め材が固結した状態テールボイドに裏込め材の圧力が作用している状態

【 完成後長期 】

トンネル完成後に長期荷重を受けた状態

KS

PXGF

PYGF

裏込め注入圧

図-5 セグメントリングの応力算定ステップ(文献 5)~10)に加筆)

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平面ひずみ状態を仮定するのは,現実の地盤の挙

動が平面応力状態よりは平面ひずみ状態に近いと考

えたからである.また弾性を仮定したのは,最近の

施工では,裏込め材の早期注入(同時あるいは即時)

の採用などにより,周辺地盤の応力解放が少なく,

ほとんどの領域が施工後にも弾性のままで存続する

と考えられることによる. 弾性体の計算では,ヤング係数とポアソン比を設

定する必要があるが,このうちヤング係数は表-1に

示した方法により設定することが多い. ポアソン比については,水平方向の応力を適切に

発生させることを考える必要があることから次式に

より求める.

0

0

K1K+

=ν (1)

ここに,ν:ポアソン比

0K :静止土圧係数(粘性土地盤では静止

側圧係数 0K )

静止土圧係数は土質力学の知見により定めるが,

後述するように以降の計算で砂質土地盤では有効応

力解析を,粘性土地盤では全応力解析をすることか

ら,砂質土地盤では静止土圧係数を用い,粘性土地

盤では静止側圧係数を用いる.砂質土地盤の静止土

圧係数は式(2a)によることが一般的である 14).粘性

土地盤の静止側圧係数の値は,飽和度や圧密の程度

により異なるが,地下水位が地表面近くに存在する

正規圧密粘性土地盤では式(2b)を用いてもよい.

砂質土地盤 φ−= sin1K 0 (2a)

粘性土地盤 8.0K 0 = 程度 (2b)

ここに, 0K :静止側圧係数

φ:土の内部摩擦角

b) 荷 重

初期応力計算では,荷重として各要素の自重を与

える.この場合,砂質土層では,地下水位より上方

の部分に対して湿潤単位体積重量を,地下水位より

下方の部分に対して水中単位体積重量を与える.

粘性土地層には湿潤単位体積重量を与えるととも

に,当該粘性土層の上面と下面に,隣接する砂質土

層の間隙水圧を,上面では下向き,下面では上向き

に作用させる.

c) 地盤の応力

この計算結果から得られる地盤応力(σx1,σy1,

τxy1)は,砂質土層では有効応力,また粘性土層では

全応力である.

この計算結果からシールド機により掘削される面

(掘削面)での解放力(PXG1, PYG1)が求められる.

(3) テールボイド部周辺地盤の応力[STEP-2]

a) 計算の目的

ここで提案する計算法によって得られる値が妥当

であるための条件は,施工の各段階で地盤が弾性体

であることであるから,この条件を満足しているこ

とを確認するために周辺地盤の応力も計算する.

b) 構造モデル

テールボイド部周辺地盤の応力の計算では,初期

応力の計算で用いた構造モデルに,シールドトンネ

ルの掘削に伴う開口を設けて,引き続いて用いる

(図-6).

有限要素法の計算に用いる変形係数は表-1に示す

値を用い,ポアソン比は掘削前の地盤応力の計算で

設定した値を用いる.なお,飽和粘性土地盤は非圧

縮性であることからν=0.48程度とする. c) 荷 重

テールボイド部での増分荷重に対する計算では,

掘削面に設置した節点に以下の荷重を作用させる.

PXG2=α[(PXG1+PXGW)-PXGF] (3a)

PYG2=α[(PYG1+PYGW)-PYGF] (3b)

ここに,PXG2,PYG2:掘削面に設置した節点に作用

させる荷重(X方向とY方向)

PXG1, PYG1:初期地盤応力による節点力

PXGF, PYGF:裏込め材の圧力による節点力

PXGW, PYGW:間隙水圧による節点力

図-6 解析モデル([STEP-1], [STEP-2])

表-1 ヤング係数の算定方法

土 質 変形係数 E(kN/m2)

砂質土 15) 2800N (N:N 値)

粘性土 16) 210c (c:粘着力)

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α:テールボイド部での地盤応力の解放率

式(3)ではいずれの力も地盤側を掘削側へ引っ張

る力を正とする.

なお,地盤応力は砂質土地盤では有効応力とする.

粘性土地盤は全応力解析によることにしたので,式

(3)の間隙水圧による節点力の項は,pXGW= pYGW =0 とする.

式(3)に含まれている「テールボイド部での地盤

応力の解放率」は,シールド掘進前の状態で掘削面

の内側に発生している地盤応力の全体量を,便宜上,

テールボイド部で解放する応力と,地盤密着部で解

放する応力に按分するために導入した値であり,そ

の値の決定方法の詳細は付録を参照願いたい.なお,

裏込めを同時注入する場合では,この値は小さく,

α = 0.2程度である.

d) 地盤の応力

テールボイド部周辺地盤の応力は次式により求め

られる.

⎪⎭

⎪⎬

⎪⎩

⎪⎨

τΔ

σΔσΔ

+⎪⎭

⎪⎬

⎪⎩

⎪⎨

τ

σσ

=⎪⎭

⎪⎬

⎪⎩

⎪⎨

τ

σσ

2xy

2y

2x

1xy

1y

1x

2xy

2y

2x

(4)

ここに,σx2, σy2, τxy2:テールボイド部周辺地盤の応

σx1, σy1, τxy1:初期応力

Δσx2, Δσy2, Δτxy2 :シールド掘進に伴うテ

ールボイド部周辺地盤の応力の増分

(4) テールボイド部の覆工応力[STEP-2’]

a) 構造モデル

テールボイド部での覆工応力を計算するための構

造モデルとして,図-7に示す骨組みモデルを採用す

る.すなわち,力がトンネル軸方向へも伝達される

ことを表現するためのせん断ばね(以下「トンネル

軸方向せん断ばね」と呼ぶ)と変形防止工を,セグ

メントリングに取り付けた構造モデルとする.

セグメントリングは,弾性のはりを節点で折り曲

げたものとするが,応力の重ね合わせを容易とする

ために,節点は地盤密着部での地盤モデルの節点配

置に合わせる.曲げ剛性はセグメント継手の存在を

考慮して低減することも考えられるが1),曲げ剛性

を低減するとセグメントリングに発生する応力も小

さく計算されること,とくに円形の場合ではテール

ボイドで発生する曲げモーメントは比較的小さく,

曲げ剛性が低下する傾向が小さいことなどから,低

減しない値を用いることも考えられる.

トンネル軸方向せん断ばねの値は,リング間継手

のせん断ばねとせん断変形をするセグメントが直列

に配置された状態を想定して決定するが,セグメン

トのせん断剛性は大きいので,実用上はリング間継

手のせん断ばねだけが対象となる.ここで問題とな

るのは,トンネル軸方向のどの範囲までのリング間

継手を対象とするかということである.これは,施

工のスピードと裏込め材の固化の程度との関係で決

定されるべきものであり,2.(6)で示した裏込め材

の強度発現時間を考慮して決める.

リング間継手のせん断ばねの値は,リング間継手

の構造により異なると考えられるので,正確には実

験によりこの値を求めることが必要である.なお,

既往の文献17)に報告されているせん断ばねの値を

表-2に示した.

なお,上記の説明ではトンネル軸方向せん断ばね

を,テールボイド部のセグメントリングの安定の観

点から記述したが,トンネル軸方向ばねは方向性を

もたないと考えて,トンネル軸方向せん断ばねを半

径方向と接線方向に有効となるように配置する(図-

図-7 テールボイド部の構造モデル

表-2 継手部のせん断ばね定数の例(1 ヶ所あたり)

(文献 17)に加筆)

継手部のばね

構造案 定数本体構造

せん断ばね定数

KS (kN/m)

メタル構造方式 メタル構造 1.0×104 鉄筋コンクリート構造

長ボルト方式 合成構造

1.5×104

鉄筋コンクリート構造 金具継手方式

合成構造 1.0×105

鉄筋コンクリート構造 コッター方式

合成構造 1.0×105

嵌合方式 合成構造 G・b・h/L G:せん断弾性係数,b:解析モデルのはりの高さ,h:桁高 L:リング間継手をはさむ 2 リングの中心距離

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7).

変形防止工は,セグメントリングと剛結すること

はないから,構造モデルではピン結合とし,セグメ

ントリングが組みあがった状態で隙間なく設置する

と仮定する.

b) 荷 重

テールボイド部のセグメントリングに作用する荷

重は,セグメントリングの自重とセグメントリング

に作用する裏込め材の圧力である.

前述のように,裏込め材の圧力は注入後の時間の

経過とともに変化するが,完成後の覆工応力を求め

るためには,注入直後の値ではなく,定常状態とな

った値を用いる必要がある.この値は,2.(5)b)の

考察から,周辺地盤の間隙水圧より少し(10 kN/m2

程度)大きな値とする.

(5) 地盤密着部の覆工応力と周辺地盤応力[STEP-

3]

a) 構造モデル

地盤密着部の覆工の応力と周辺地盤の応力の計算

では,テールボイド部周辺地盤の応力計算で用いた

構造モデル(図-6)に図-8に示すセグメントリングお

よびセグメントリングと掘削面との間に固化した裏

込め材を挿入した構造モデルを用いる.

セグメントリングははり部材とし,本章(4)a)で

定義したテールボイド部の構造モデル(図-7)のセグ

メントリング部分だけを組み込む.トンネル軸方向

に荷重を伝達させるために取り付けたばねと変形防

止工は組み込まない.

セグメントリングと掘削面との間に挿入する固化

した裏込め材は,弾性の面部材とする.この部材の

ヤング係数とポアソン比は,実験により決定する必

要がある.変形係数については既往の試験結果 18)

から経過時間 168 時間で 175MN/m2という値が得ら

れており,これをもとに 150MN/m2 とし,ポアソン

比については,セメントペーストに相当するものと

し 0.25 とする 19)ことも考えられる.

b) 荷 重

この段階での荷重の変化(増加・減少する)は以下

のものである(図-8参照).

・地盤応力の解放

・裏込め材の圧力の消散

・間隙水圧の作用

・変形防止工反力の除去

・トンネル軸方向に荷重を伝達させるために取り

付けたばね反力の作用

以下では,上記の各荷重について説明する.

[地盤応力の解放]

シールド掘進前の状態で掘削面の内側に発生して

いる地盤応力の全体量のうち,テールボイド部で解

放した応力を除いた応力を解放する.解放力の作用

位置は掘削面に設置した節点とする.

PXG3=(1-α)[(PXG1+PXGW)-PXGF] (5a)

PYG3=(1-α)[(PYG1+PYGW)-PYGF] (5b)

図-8 地盤密着部の解析モデルと荷重

地盤密着部の解析モデル

(セグメントリングと裏込め材) (a) 地盤応力の解放 (b) 裏込め材の圧力の消散

(c) 間隙水圧の作用 (d) 変形防止工反力の除去 (e) ばね反力の作用

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ここに,PXG3, PYG3:掘削面に設置した節点に作用

させる荷重(X方向とY方向)

[裏込め材の圧力の消散]

テールボイド部では,掘削面を境として内側から

裏込め材の圧力が,そして外側からは間隙水圧と掘

進前の値とは異なる地盤応力が作用している.この

状態で裏込め材が固化するとともに,それまで保持

していた圧力が消散すると考えられる.

裏込め材の圧力が消散することは,地盤からみる

と掘削面を押し付けていた力が消散することであり,

覆工からみるとセグメントリングを押し付けていた

力が消散することと考えることができる.

この現象を計算に組み込むために,図-8に示すよ

うに,裏込め材を押しつぶす方向に,互いに値が等

しく向きが反対の力(PXGF,PYGF)を作用させる.

[間隙水圧]

裏込め材の圧力が消散すると同時に間隙水圧

(PXGW,PYGW)がセグメントリングに作用する.

[変形防止工反力の除去]

地盤密着部では,変形防止工が撤去されるので,

セグメントリングは変形防止工の反力を失うことに

なる.このことを計算に組み込むために,図-8に示

すように,テールボイド部の覆工応力の計算を行う

ことにより得られる変形防止工の反力を,値が同じ

で方向が反対となるように(セグメントリングを押

しつぶす方向に)作用させる.力の作用位置は,セ

グメントリングの変形防止工が設置されていた位置

とする.

[トンネル軸方向に荷重を伝達させるために取り付

けたばねの反力の作用]

テールボイド部の覆工の応力計算において,トン

ネル軸方向に荷重を伝達させるために設置したばね

の反力が,地盤密着部に作用する.このばね反力は,

テールボイド部が長いと大きな値となると考えられ

るが,大きなばね反力を受けるのはテールボイドに

隣接した限られた範囲であり,定常状態となる場所

では,この力がテールボイド部での安定条件を満足

させるために必要な力であることを考えると,テー

ルボイド1リング分の安定に要する力が,定常状態

となったリングに作用すると考えることができる.

このような考え方に基づいて,図-8に示すように

ばね反力を載荷する.この力は覆工をトンネル軸方

向に伝わるものであるから,力の作用位置はセグメ

ントリングとする.

c) 覆工の応力

地盤密着部の覆工応力は,テールボイド部の覆工

の応力に,地盤密着部の計算で得られた覆工応力の

増分を加えることにより得られる.

⎪⎭

⎪⎬

⎪⎩

⎪⎨

ΔΔ

Δ

+⎪⎭

⎪⎬

⎪⎩

⎪⎨

⎧=

⎪⎭

⎪⎬

⎪⎩

⎪⎨

3

3

3

2

2

2

3

3

3

NSM

NSM

NSM

(6)

ここに,M3,S3,N3:地盤密着部の覆工応力(曲げ

モーメント,せん断力,軸力)

M2,S2,N2:テールボイド部の覆工応力

ΔM3,ΔS3,ΔN3:地盤密着部の覆工応力の

増分

d) 地盤の応力

地盤密着部での周辺地盤の応力は次式により求め

られる.

x3 x3x2

y3 y2 y3

xy3 xy2 xy3

σ Δσσσ = σ + Δσ

τ τ Δτ

⎧ ⎫ ⎧ ⎫ ⎧ ⎫⎪ ⎪ ⎪ ⎪ ⎪ ⎪⎪ ⎪ ⎪ ⎪ ⎪ ⎪⎨ ⎬ ⎨ ⎬ ⎨ ⎬⎪ ⎪ ⎪ ⎪ ⎪ ⎪⎪ ⎪ ⎪ ⎪ ⎪ ⎪⎩ ⎭ ⎩ ⎭ ⎩ ⎭

(7)

ここに,σx3,σx3,τxy3:地盤密着部での周辺地盤の

応力

Δσx3,Δσx3,Δτxy3:地盤密着部での周辺地

盤の応力の増分

(6) 完成後長期の覆工応力[STEP-4]

地盤密着部の応力状態は,施工が完了した状態の

応力である.通常は,この応力状態が継続すること

になるが,何らかの理由により,周辺地盤が変形し

たり,あるいは地盤中の間隙水圧が変化するような

ことがあると,覆工の応力は変化する.

地盤が変形する要因としては,粘性土地盤の圧密,

地震の影響,新たな荷重の作用,および地下水位の

変動などである.このうち,粘性土地盤の圧密と地

震の影響については,特別な配慮が必要であること

から除外する.すなわち,ここでは新たな荷重の作

用,および砂質土層の地下水位の変動を対象とする.

a) 構造モデル

地盤密着部の構造モデルを用い,必要に応じて,

地盤の形状と物質常数を変更する.

b) 荷 重

[地表面への新たな荷重の載荷]

地盤変形を生じさせる地表面荷重としては,地表

面への盛土,新たに建設される大規模構造物などが

考えられるが,これらを設置することにより新たに

地盤に作用する荷重を入力する(図-9(a)参照).

[砂質土層の地下水位の変動]

地下水位の変動には上昇と低下があるが,最初に,

シールドントンネル完成時より地下水位が上昇した

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状態を考える.地下水位が上昇すると,セグメント

リングに作用する水圧が上昇するとともに,セグメ

ントリングに作用している有効土圧が減少する.前

者の計算での対応は,図-9(b)に示すように,セグ

メントリングに水圧の増加分を作用させることでよ

い.後者は,土圧そのものを減少させるのではなく,

図-9(b)に示すように,地下水位が上昇した範囲の

地層の単位体積重量を,水中重量に変更することで

よい(単位体積重量の差分を上向きに作用させる).

地下水位が低下した状態の計算は,上昇した状態

と反対に,セグメントリングに水圧の減少分を作用

させ,地下水位が低下した範囲の地層の単位体積重

量の差分を下向きに作用させる(図-9(c)).

c) 覆工応力

完成後長期の覆工応力は,地盤密着部の覆工応力

に,完成後長期の計算で得られた覆工応力の増分を

加えることにより得られる.

⎪⎭

⎪⎬

⎪⎩

⎪⎨

ΔΔΔ

+⎪⎭

⎪⎬

⎪⎩

⎪⎨

⎧=

⎪⎭

⎪⎬

⎪⎩

⎪⎨

4

4

4

3

3

3

4

4

4

NSM

NSM

NSM

(8)

ここに,M4,S4,N4:完成後長期の覆工の応力(曲

げモーメント,せん断力,軸力)

M3,S3,N3:地盤密着部の覆工の応力

ΔM4,ΔS4,ΔN4:完成後長期の覆工の応力

の増分

4.圧密を考えない場合の覆工応力計算法の検

上記のシールドトンネル覆工の応力計算法による

計算値と,現場で実測された値を比較することによ

り,提案した計算法の妥当性を検証する.検証の対

象とした現場は,いずれも洪積層にシールドトンネ

ルを構築するものである.

(1) 円形トンネル(A現場)

a) 現場の概要20),21)

地下鉄の複線シールドトンネルで,計測地点の構

造はダクタイル鋳鉄製(コルゲートタイプ)で,トン

ネル外径9,800mm,セグメント幅1,000mm,セグメ

ント桁高350mmである.

トンネルを掘進する地層は,N値50程度の東京層

砂質土が主体であるが,計測地点ではトンネル天端

部にN値8程度の東京層粘性土が堆積している.計

測地点の土被りは約19mで,砂質土層の地下水圧は

トンネル中心位置で約120kN/m2であった.

施工は泥水式シールド工法により行なわれた.

b) 計算の条件

提案した計算法によりセグメントリングの応力を

計算するが,その際の入力値を表-3に示すように設

定した.すなわち,セグメントリングの剛性は継手

効率を100%,テールボイド部での解放率を付録を

参考にして21%,裏込め材の圧力は掘進終了後の土

圧計の計測値をもとに地下水圧より若干高い値とし,

シールド中心において150 kN/m2とした.

なお,比較できる実測値がシールドトンネルの完

成直後までの値であることから,計算は地盤密着部

(STEP-3)までとし,完成後長期の計算は省略した.

解析モデルを図-10に示す.

c) 計算結果と現場実測値の比較

まず,計算で仮定している「周辺地盤は弾性体と

する」ことが満足されているかをみるために,計算

により得られたセグメントリング周辺地盤の応力状

態の照査を行い,結果を図-11に示した.この図は,

計算により得られた周辺地盤の応力の Mohr-Coulombの破壊規準に対する比の値を示したもので

あるが,この図から周辺地盤応力は, Mohr-Coulombの破壊規準に比較して相当の余裕があり,

当初に仮定したように,周辺地盤は弾性体であるこ

(a) 地表面荷重の載荷 (b) 地下水位の上昇 (c) 地下水位の低下

図-9 完成後の荷重載荷および地下水の変動

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とが確認された.

図-12に,実測値,本提案による計算値,および

従来から広く用いられている慣用計算法1) による計

算値を合わして示した.これによると,軸力につい

ては,本提案による計算値,慣用計算法による計算

値,および実測値は,ほぼ一致しているといえる.

曲げモーメントについては,本提案による計算値

と慣用計算法による計算値は分布形状が異なってお

り,本提案による計算値は実測値と近似しているこ

とがわかる.

正の最大曲げモーメントと負の最大曲げモーメン

トについて,実測値,本提案による計算値,および

慣用計算法による計算値を比較して図-13に示した.

この図から,本提案による計算値は実測値に近似し

ているのに対して,慣用計算法は実測値のほぼ2倍の値を与えることがわかる.

(2) 三連型駅シールドトンネル(B現場)

a) 現場の概要11)

この現場は,シールドトンネル覆工の応力および

変形の発生機構を考える際に参考にした現場であり,

2.(1)に記述したのでここでは省略する.

b) 計算の条件

この現場でも,計算に用いる入力値を表-4に示す

ように設定した.すなわち,セグメントリングの剛

性は継手効率を100%,テールボイド部での解放率

を21%とし,裏込め材の圧力は,シールドテール脱

出後の土圧計の計測値をもとにシールド中心値で

150 kN/m2とした.

解析モデルを図-14に示す.

c) 計算結果と現場実測値の比較

周辺地盤が弾性であることの確認を図-15に示し

たが,全域で弾性であることがわかる.

次に,計算により得られたセグメントリングの応

力と現場実測値とを比較して図-16に示したが,軸

力と曲げモーメントとも計算値と実測値はほぼ等し

い値となっていることがわかる.

(3) まとめ

以上の2現場に対して,提案した計算方法による

計算値と実測値との比較をしたところ,いずれの現

場でも計算値と実測値とは良い一致を示していて,

ここで提案した覆工応力の計算法が現場での現象を

よく説明しているといえる.また,円形断面を有す

るA現場を対象として,従来から広く用いられてい

る慣用計算法による計算を行ったが,結果は実測値

と離れた値となった.良好な砂質土地盤では,提案

表-3 現場の計算に用いる諸数値(A 現場)

本提案に用いる諸条件

セグメ

ント

セグメントの種類 :ダクタイル 解析モデル :はり要素 弾性係数 :1.7×105MN/m2 断面積 :2.941×10-2m2

(奥行き 1.0m) 断面二次モーメント:4.834×10-4m4

(奥行き 1.0m) 自 重 :4.50kN/m

(奥行き 1.0m)

裏込め

解析モデル:面要素 変形係数 : 150 MN/m2 ポアソン比: 0.25 密度 : 1.2g/cm3

水圧 トンネル中心位置:120 kN/m2

地盤

解析モデル:面要素

地盤定数 :下表参照

γt E ν c φ(kN/m3) (MN/m2) (kN/m2) (deg)

埋土 Fs 14.0 14 0.40 0 20ローム Tml 14.0 20 0.45 50 0粘性土To-c1 16.0 20 注) 100 0礫質土 Ag 18.0 40 0.30 0 30砂質土To-s1 20.0 60 0.30 0 35粘性土To-c2 16.0 40 注) 150 0砂質土To-s2 20.0 140 0.30 50 42礫質土 To-g 20.0 140 0.30 50 42

土質

注) 粘性土地盤のポアソン比は,STEP-1 で

0.44 とし,STEP-2 以降は 0.48 とする.

慣用計算法

土質条件 :土水分離,γt =18kN/m3 荷重条件 :全土被り荷重 土被り :20m 側方土圧係数 :0.4 地盤反力係数 :50MN/m3

図-10 解析モデル(A 現場)

安全率は全域で 1.0 以上である

図-11 地山安全率(A 現場)

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した計算方法は,従来から広く用いられている慣用

計算法より実測値を精度よく説明できたといえる.

5.シールド掘進に伴う圧密を考える場合の覆

工の応力計算法の提案

(1)基本的な考え方

軟弱粘性土地盤中にシールドトンネルを掘進する

場合,地盤応力が解放され,テールボイド部周辺地

盤の応力は変化する22).この地盤の応力変化量が地

盤応力の増分となり,周辺地盤に圧密を生じさせる.

シールド掘進による圧密を伴う場合の覆工応力計

算法については,3.に示した圧密を考えない場合

の覆工の応力計算法と同様に二次元モデルで対応す

ることとし,施工段階ごとの荷重増分法により計算

する.ただし,圧密現象が長時間の現象であること,

およびテールボイド部での応力解放は比較的小さい

(全解放力の20%程度)と考えられることから,図-5

に示した手順のSTEP-2を省略し,シールド掘進に

伴う地盤応力の解放をSTEP-3だけで行うことにす

る.

(1 リングあたり)

位 置 上端 下端 水平部

実測値 1000.0 1430.0 1300.0

提案方法 1087.0 1101.0 1497.0軸 力

(kN) 慣用計算法 1213.5 1434.3 1551.4

実測値 55.0 10.0 -15.0

提案方法 73.3 53.3 -40.2曲げモー

メント

(kNm) 慣用計算法 194.9 20.7 -140.4(58)

( )内数字はその発生位置の頂点からの角度

図-12 計算値と実測値の比較(A 現場)

(a) 軸力分布(kN)

(b) 曲げモーメント分布(kNm)

図-13 最大曲げモーメントの比較

図-14 解析モデル(B 現場)

安全率は全域で 1.0 以上である

図-15 地山安全率(B 現場)

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(2)掘削前の地盤応力[STEP-1]

a) 地盤の扱い方

シールド掘進に伴う圧密を考える場合には,初期

応力の計算から応力解放の影響の計算までのすべて

を有効応力解析で行う方法と,初期応力の計算を全

応力解析とし応力解放の影響の計算を有効応力解析

で行う方法の,2方法が考えられる. 本論文では,前者を採用する.このようにするこ

とにより,粘性土を砂質土と同様な扱いができる.

シールド掘進に伴う圧密を考える場合の初期応力

の計算は,圧密を考えない場合の構造モデルと荷重

の一部を下記により圧密を考慮し得るように変更し

て,3.(2)と同様に行う.

b) 構造モデル

圧密の検討では,粘性土でも土水分離として扱う

から,ポアソン比は有効応力解析に使用する値を用

いる必要があり,一般には静止土圧係数をK0=0.5として式(1)より求められるν=0.33程度を使用する.

また,変形係数は体積圧縮係数を用いて,次式で

与える23).

v

(1+ )(1 2 ) 1E =1 mν ν

ν−

⋅−

(9)

ここに,E:圧密を考える際の粘性土の変形係数

ν:ポアソン比

mv:体積圧縮係数

なお,体積圧縮係数は応力の大きさにより変化す

るので,シールド掘進後の応力状態に見合う値を用

いる必要がある.

砂質土は3.(2)a) と同様とする.

c) 荷 重

前述のように,圧密の検討では粘性土でも土水分

離として扱うから,砂質土層と同様に,間隙水圧を

表-4 現場の計算に用いる諸数値(B現場)

セグメ

ント

セグメントの種類 中央円部,側円部 :ダクタイル

柱 :スチール

解析モデル :はり要素

弾性係数 中央円部,側円部 :1.7×105MN/m2

断面積(奥行き 1.0m) 中央円 :2.088×10-2m2 側円部 :1.816×10-2m2

柱 :1.378×10-2m2

断面二次モーメント(奥行き 1.0m) 中央円部 :3.648×10-4m4

側円部 :2.136×10-4m4 柱 :2.973×10-4m4

自 重(奥行き 1.0m) 中央円部 :3.19kN/m

側円部 :3.75kN/m 柱 :1.08kN/m

裏込め

解析モデル:面要素 変形係数 : 150MN/m2 ポアソン比: 0.25 密度 : 1.2g/cm3

水 圧 トンネル中心位置:95kN/m2

地 盤

解析モデル:面要素

地盤定数 :下表参照

γt E ν c φ(kN/m3) (MN/m2) (kN/m2) (deg)

表土層 Ts 14.0 14 0.45 0 20ローム Tm1 14.0 32 注) 150 0粘性土 Lc 15.5 20 注) 100 0砂質土 Tos1 18.0 35 0.32 25 27粘性土 Toc 18.0 40 注) 190 0砂質土 Tos2 18.0 70 0.32 25 35礫質土 Tog 20.0 140 0.30 50 42粘性土 Kac 19.0 290 0.30 1400 0

土質

注) 粘性土地盤のポアソン比は,STEP-1 で

0.44 とし,STEP-2 以降は 0.48 とする.

(1 リングあたり)

位 置 上端 下端 水平部 中柱

実測値 845.0 1277.0 888.0 1682.0軸 力 (kN) 計算値 997.7 1189.8 1130.6 1697.7

実測値 125.0 62.0 -32.0 5.5曲げモー

メント

(kNm) 計算値 141.3 43.2 -44.7 0.0

図-16 計算値と実測値の比較(B 現場)

(a) 軸力分布(kN)

(b) 曲げモーメント分布(kNm)

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考慮しなければならない.粘性土層の間隙水圧は,

粘性土層の上下に存在する砂質土層の間隙水圧から

推定し,粘性土層の有効単位体積重量を次式により

求める.

wwtn a γ−γ=γ ・ (10)

ここに,γn:粘性土層の有効単位体積重量

γt:粘性土層の湿潤単位体積重量

γw:水の単位体積重量

aw:間隙水圧の勾配

(3)テールボイドの覆工応力[STEP-2′]

3.(4)と同様に行う.

(4)地盤密着部の覆工応力と周辺地盤の応力の

計算[STEP-3]

シールド掘進に伴う圧密を考える場合の地盤密着

部の覆工応力と周辺地盤の応力の計算は,圧密を考

えない場合の荷重の一部(解放応力)を下記により変

更して,3.(5)と同様に行う.

前述のように,3.で考えていたSTEP-2を省略し

て,解放応力のすべてをSTEP-3で作用させること

にしたから,次式の荷重を裏込め材の背面に作用さ

せる(図-8(a)参照).

( ) XGFXGW1XG3XG PPPP −+= (11a)

( ) YGFYGW1YG3YG PPPP −+= (11b)

覆工の応力は式(6)により求めることができる.

地盤の応力は,次式により求める.

⎪⎪⎭

⎪⎪⎬

⎪⎪⎩

⎪⎪⎨

τΔ

σΔ

σΔ

+

⎪⎪⎭

⎪⎪⎬

⎪⎪⎩

⎪⎪⎨

τ

σ

σ

=

⎪⎪⎭

⎪⎪⎬

⎪⎪⎩

⎪⎪⎨

τ

σ

σ

3

3

3

1

1

1

3

3

3

xy

y

x

xy

y

x

xy

y

x

(12)

6.シールド掘進に伴う圧密を考える場合の覆

工応力計算法の検証

上記のシールド掘進に伴う圧密を考慮したシール

ドトンネル覆工の応力計算法による計算値と,現場

で実測された値を比較することにより,提案した計

算法の妥当性を検証する.

(1)現場の概要(C現場)24)

この現場は,地下鉄の複線シールドで,構造は鉄

筋コンクリート平板型セグメント,トンネル外径は

9,400mmである.セグメント幅およびセグメント桁

高はそれぞれ1,500mm, 440mmである.計測箇所の

土被りは14mであり,地表より埋土層,上部有楽町

砂質土層が堆積し,トンネル掘削断面部は沖積層の

下部有楽粘性土層となっている.N値は0~4と軟弱

な粘性土である.この粘性土の自然含水比はほとん

どの箇所で液性限界を超えており,乱した後の強度

低下が著しい地盤である.

なお,実測値はシールド工事から8ヶ月後の値で

あり,圧密が相当程度進み定常となった状態である

と考えられる.

(2)計算の条件

圧密を取り扱うことから地盤は有効応力解析とす

るが,地下水位を地表面から-2.0m,間隙水圧の水圧

勾配は当該粘性土下方に存在する礫質土(Btg)の間

隙水圧の実測値をもとに0.7とした.

表-5 現場の計算に用いる諸数値(C 現場)

本提案に用いる諸条件

セグメ

ント

セグメントの種類 :RC 平板型 解析モデル :はり要素 弾性係数 :3.9×104MN/m2 断面積 :0.44m2

(奥行き 1.0m) 断面二次モーメント:1,065×10-2m4

(奥行き 1.0m) 自 重 :11.44kN/m

(奥行き 1.0m)

裏込め

解析モデル:面要素 変形係数 :若材令時 10.5MN/m2 最終強度時 150 MN/m2 ポアソン比:若材令時 0.44 最終強度時 0.25 密度 : 1.2g/cm3

水 圧 地表面から-2.0m を水位とする 0.7 の水圧勾配

地 盤

解析モデル:面要素

地盤定数 :下表参照

γt E ν c φ(kN/m3) (MN/m2) (kN/m2) (deg)

砂質土 Bs 18.0 7.5 0.30 0 21砂質土 Yu-s 18.0 10 0.30 0 22粘性土 Yl-c 16.0 2.2 0.33 93 0ローム B1 17.0 36 0.44 140 0礫質土 Btg 20.0 125 0.30 0 40

土質

注)Yl-c 層の変形係数は式(9)により算出し

た. 慣用計算法

土質条件 :土水分離,γt =16.5kN/m3 荷重条件 :全土被り荷重 土被り :13.7m 側方土圧係数 :0.8 地盤反力係数 :考慮しない

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圧密完了時の予測に用いる粘性土地盤(Yl-c)の変

形係数は,ポアソン比を0.33(K0=0.5)として土質試

験結果から得られた体積圧縮係数mv = 3×10-4m2/kNをもとに式(9)から求めて2.2MN/m2とした.

計算に用いる入力値を表-5に,解析モデルを図-

17にそれぞれ示す.

(3)計算結果と現場実測値の比較

周辺地盤が弾性であることの確認を図-18に示し

たが,トンネル周辺全域で安全率は2.0以上確保さ

れており弾性であることがわかる.

図-19に,実測値,本提案による計算値,および

従来から広く用いられている慣用計算法1) による計

算値を合わして示した.これによると,上端部と水

平部の軸力は,2方法の計算値および実測値がほぼ

等しくなった.下端部の軸力は実測値との比較がで

きないが,2方法の値はほぼ等しくなった.

曲げモーメントは,本提案による計算値は実測値

とほぼ等しくなっているのに対して,慣用計算法に

よる計算値は,上端部と水平部で実測値に比較して

相当小さく,分布形状が実測値と少し異なることが

わかる.

この結果から,シールド掘進に伴って圧密を生じ

るような軟弱粘性土地盤では,覆工応力の計算に圧

密の影響を適切に考慮することが必要であり,その

方法として,慣用計算法より本提案による方法のほ

うが適していることがわかった.

7.まとめ

以上,テールボイド部と地盤密着部に着目し有限

要素法による施工過程を考慮したシールドトンネル

覆工の応力計算法に対する研究結果を示したが,以

下に結論を示す.

(1)セグメント組立て時および急曲線での施工時に

発生するものを除き,一般的な状態でのシールド

図-17 解析モデル(C 現場)

安全率は全域で 1.0 以上である

図-18 地山安全率(C 現場)

(1 リングあたり)

位 置 上端 下端 水平部

実測値 1373.0 - 2092.5

提案方法 1204.6 1681.9 1935.2軸 力

(kN) 慣用計算法 1442.9 1778.0 1699.9

実測値 352.9 - -219.6

提案方法 286.1 274.4 -290.3曲げモー

メント

(kNm) 慣用計算法 149.2 51.1 119.2(75)

( )内数字はその発生位置の頂点からの角度

図-19 計算値と実測値の比較(C 現場)

(a) 軸力分布(kN)

(b) 曲げモーメント分布(kNm)

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トンネル覆工に発生する応力の計算方法について

検討した.その結果,従来は無視されてきた施工

過程,裏込め注入圧,テールボイド部での応力解

放率を考慮するとともに,セグメントリング形状,

大きさ,曲げ剛性および地盤の変形特性などを適

切に考慮できる応力計算法を考案することができ

た.

(2)砂質土地盤を対象とした円形トンネルおよび良

好な洪積粘性土地盤を対象した異形断面(三連型

シールド)トンネルで得られた実測値と本提案に

よる計算値を比較したところ,計算値は実測値と

ほぼ等しいことが確認できた.

(3)シールド掘進に伴い圧密が生じる地盤での円形

トンネルの現場から得られた実測値と,シールド

掘進に伴う周辺地盤応力の変化による圧密に着目

した本提案による計算値を比較したところ,計算

値は実測値と近似しており,提案した計算方法の

妥当性が確認できた.

(4)従来から広く用いられてきた慣用計算法による

計算値と本提案による計算値の比較を,円形トン

ネルで行ったところ,良好な砂質土地盤において

も,シールド掘進に伴って圧密生じる軟弱な粘性

土地盤においても,本提案の方法は慣用計算法よ

り現場実測値を精度よく説明できることがわかっ

た.すなわち,慣用計算法は良好な砂質土地盤で

は過大な曲げモーメントを与え,またシールド掘

進に伴って圧密を生じる軟弱な粘性土地盤では過

小な曲げモーメントを与えるのに対して,本提案

は,良好な砂質土地盤でもシールド掘進に伴って

圧密を生じる軟弱な粘性土地盤でも,現場測定値

に近似した曲げモーメントを与えた.

以上に示したように,シールド覆工の応力計算法

として,ここで提案した解析手法は実用に供し得る

ものと考える.

なお,本提案では“裏込め材が圧力をもった状態

で固化すること”を応力解析の手順に取り入れたが,

裏込め材の圧力の影響が大きい扁平あるいは矩形に

近い断面を有するシールドトンネルの設計では,本

提案がとくに有効であると考える.

付録 テールボイド部での応力解放率の計算

(1)テールボイド部での応力解放率の定義

テールボイド部の地盤変形は,トンネル軸に垂直

な方向ばかりでなくトンネル軸方向にも発生するた

め,三次元有限要素法を用いて解析することも考え

られるが,施工過程を考える場合には実用的ではな

いため,二次元モデルにより解析することが多い.

この場合,二次元モデルによってテールボイド近傍

の三次元的挙動を近似的に考慮する工夫が必要とな

る.

本論文では,初期状態で掘削面に生じている応力

を施工過程の進行に併せ除々に解放していく方法を

用いることとし,テールボイド部での応力解放率で

表現するものとする.

付図-1に示すように,シールド掘進に伴うテール

ボイドの地盤変形を,無支持の場合とシールド機か

ら遅れて支持する場合を考える.前者の場合は無支

持であるため,解放応力の全部をシールド機後方の

掘削面の周辺地盤で負担することになり,δCなる地

盤変位が生じるものとする.一方,後者の場合はシ

ールド掘進に伴い,シールド機から少し遅れるが,

セグメントリングを設置することから,解放応力は

テールボイド部の周辺地盤とセグメントリングで負

担することになる.

簡単のために,掘削面がδLなる変位をした状態で

セグメントリングで支持された場合,掘削面がδLま

で変位するために解放した応力はテールボイド周辺

地盤だけで受けもたれ,残りの応力はセグメントリ

ングが主として受けもつと考える.

このような考え方にたって,テールボイドでの応

力解放率を次式で与える.

L

C

δα=

δ (付1)

ここに,α :テールボイド部での応力解放率

δL:トンネル軸方向断面のモデルによる掘

削面の変位量

δC:テールボイド部での解放率を100%と

した場合のトンネル軸に垂直な断面

モデルによる掘削面の変位量

なお,ここでの全解放応力は,式(付2)で定義さ

れるものとする.

(全解放応力)=(現地中応力)-(裏込め材の圧力)

(付2)

(2)シールド外面の変位量の計算

a) トンネル軸方向断面の計算モデル(付図-2)

・トンネル軸を対称軸とするトンネル軸方向

断面の軸対称モデルとする(平面ひずみ).

・高さは,シールド中心から地表面までの高さ

を想定する.

・地盤は弾性体とする.

・地盤には間隙水は存在しないものとする.

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・シールド機部分のシールド機と地盤の間に

は,オーバーカットなどによる地盤の緩み

を表現するためのばねを設置する.

・裏込め硬化部のばね定数は,セグメントリン

グの変形を表現するためのもので,セグメン

トリングの任意の鉛直荷重と天端での変位と

の関係から算出する.

b) トンネル軸方向断面に作用させる解放荷重の決

定方法

掘削面(付図-3のa-b面)での荷重と変位に着目す

る.シールド機を1リング分掘進した状態を想定す

ると,テールボイド部では,その前の状態を基準と

して,付図-3(a)に示した応力が解放される.この

解放力を付図-2に示したモデルに作用させて,付

図-3(b)に示す地盤応力と,付図-3(c)に示す地盤変

位がa-b面で発生したものとする.新規のテールボ

イドからL0 / 2(L0はセグメント幅)だけ前方の点

「1」の地盤応力は,掘削前に作用していた鉛直圧

力p0と解放力pvの影響(付図-3(d)に示した地盤応力)

の和である.ところで,解放力の影響は,シールド

機と着目点の関係で異なるが,点「1」では,それ

までの解放力の影響の総和と考えられるので,点

「1」の地盤応力は次式で与えられる.

m

1v 0 1k v1

p = p p+ η∑ (付 3)

ここに,p1v:点「1」の地盤応力

p0:掘削前に作用していた鉛直圧力

η1k:有限要素法から得られる影響係数(シ

ールド機前方)

pv :テールボイドでの解放応力

m:前方地盤の幅(シールド機部を含む)を

セグメント幅で除した値

テールボイドでの解放力は,点「1」での地盤応

力と等しくなければならないから,次式が成り立つ.

1v vp p= (付 4)

上記の 2 つの式から見掛けの解放力は次式により

求められることになる.

0v m

1k1

pp1

=⎛ ⎞− η⎜ ⎟

⎝ ⎠∑

(付 5)

付図-1 施工法による周辺地盤の変形

付図-3 縦断方向の荷重と変位

付図-2 軸方向断面の計算モデル

(a) 無支持の場合

(b) シールド機から遅れて支持する場合

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c) トンネル軸方向断面モデルによる掘削面の変位

量(δL)の算出

応力解放率を 100%としたトンネル軸に垂直な断

面の解析によるシールド機外面での地盤変位量と比

較すべき,トンネル軸方向断面での掘削面の変位量

は,裏込め非硬化部の最後の値と考えられる.

トンネル軸方向断面の計算モデルでの裏込め非硬

化部の掘削面の変位量は,付図-3(e)に示したよう

に,付図-3(c)の各部分の変位量を前方からテール

ボイドの最後部まで積分して次式により得られる.

0 0n nm m

1k v 3k v v 1k 3k1 1 1 1

p p p⎛ ⎞

δ = δ = ρ + ρ = ρ + ρ⎜ ⎟⎝ ⎠

∑ ∑ ∑ ∑L 2

(付 6) ここに,δL:トンネル軸方向断面のモデルによる掘

削面の変位量

δ2:テールボイド部の掘削面の変位量 ρ1k:有限要素法から得られる影響係(シー

ルド機前方) n0:テールボイド区間のセグメント幅で除

した値

(3)テールボイド部での応力解放率の計算

上記に示した算出方法に基づき,掘削前に作用し

ていた鉛直圧力をp0=360kN/m2とし,トンネル縦断

方向の変位累加を付表-1,2に示す条件で計算したと

ころ,付図-4に示す結果となった.

付図-4に示す不支持区間の長さ1m,2m,3mおよび

4mの変位累加をもとに,任意の位置での変位量

(δL)は,シールド機後端からの距離(不支持区

間)の関数として次式で近似させることができた.

0.38750.1965x

14.4692xδ Li −−+−

= (付 7)

ここに,δLi:シールド機後端から不支持区間xのときの最大沈下量(mm)

x:不支持区間の長さ(m)

一方,テールボイド部での解放率を100%とした

場合の無支持の変位量(δC)は,平面ひずみとした

軸対対象モデルを用い付表-2に示す地盤条件をもと

に算定した結果,40.33mmを得た.

ここで,式(付7)に用いる不支持区間の長さは

1.5mとするが,この値を採用する理由は次による.

すなわち,最近の裏込め注入においては,1リング

掘進後の先行リングの裏込め材は,相当程度固結し

地山強度以上の強度が発現しており,テールボイド

長は1リング程度であると考えられるからである.

セグメント幅をx=1.5mとしてテールボイド部で

の変位量を式(付7)により求めると8.36mmとなる.

この値と無支保の場合の軸対象変位量(40.33mm)

をもとに,式(付1)により応力解放率(δL/δC)を求

めるとα=0.21となった.

参考文献

1) 土木学会:トンネル標準示方書[シールド工法]・

同解説,pp.75-81, 2006.7.

2) 土木学会:トンネル標準示方書[シールド工法]・

同解説,pp.42-45, 2006.7.

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ド洞道に働く施工時荷重に関する分析,土木学会ト

ンネル工学論文・報告集, 第9巻,pp.271-276, 1999.11.

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セグメントに作用する土・水圧および応力の計算結

果,土木学会トンネル工学論文・報告集, 第7巻,

pp.405-410, 1997.11.

5) 鈴木久尚,中村兵次:円形シールドトンネル覆工の

設計方法に関する基礎的研究(その1),第56回土木

学会年次学術講演会講演概要集, 第III部門, pp.208-209,

2001.10.

付表-1 対象とするトンネルとシールド機の概要

トンネル掘削外径 φ10.02m シールド機長 9.0m セグメント外径 φ9.8m セグメント幅 1.0m

付表-2 入力物性値

解析モデル 有限要素法(シールド中心を対称軸とする軸対称モデル)

土被り (m) 20 単位体積重量 (kN/m3) 18 変形係数 (kN/m2) 62,500

地盤条件

ポアソン比 0.4 裏込め材の変形係数 (MN/m2) 10.5 不支持区間の長さ (m) 1,2,3および4シールドのばね定数 (kN/m2) ∞ セグメントのばね定数 (kN/m2) 46,000

付図-4 軸対称モデルの変位累加曲線

※不支持区間の長さを示す

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6) 鈴木久尚,山本秀樹,中村兵次:円形シールドトン

ネル覆工の設計方法に関する基礎的研究(その2),

第56回土木学会年次学術講演会講演概要集, 第III部門,

pp.210-211, 2001.10.

7) 鈴木久尚,木谷努,山本秀樹,中村兵次:円形シー

ルドトンネル覆工の設計方法に関する基礎的研究

(その3),第56回土木学会年次学術講演会講演概要

集, 第 III部門, pp.212-213, 2001.10.

8) 鈴木久尚,江崎雅章,山本秀樹,中村兵次:円形シ

ールドトンネル覆工の設計方法に関する基礎的研究

(その4),第56回土木学会年次学術講演会講演概要

集, 第III部門, pp.214-215, 2001.10.

9) 鈴木久尚,柏村孝彰,中村兵次:円形シールドトン

ネル覆工の設計方法に関する基礎的研究(その5),

第56回土木学会年次学術講演会講演概要集, 第III部門,

pp.216-217, 2001.10.

10) 鈴木久尚,岩松親博,中村兵次:円形シールドトン

ネル覆工の設計方法に関する基礎的研究(その6),

第56回土木学会年次学術講演会講演概要集, 第III部門,

pp.218-219, 2001.10.

11) 大門信之,矢萩秀一,大石敬司,小松幸雄:半径の

異なる三連型シールドトンネルの計測結果と考察,

土木学会トンネル工学研究論文・報告集, 第10巻,

pp.281-286, 2000.11.

12) 大門信之:円形シールドトンネルに用いる覆工の設

計用荷重に関する研究,2000.2.

13) シールドトンネルの掘進管理連載講座小委員会:シ

ールドトンネルの掘進管理(6),トンネルと地下,

Vol.28, No.11, pp.79-86, 1997.

14) 土木学会:トンネル標準示方書[開削工法]・同解

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15) 日本道路協会:道路橋示方書・同解説,IV下部構造

編,pp.256, 2002.

16) 中山隆,中村信義,中島信:泥水式シールド掘進に

伴う硬質地盤の変形解析について,土木学会論文集,

No.397/VI-9, 1988.9.

17) (財)先端建設技術センター編:内水圧が作用する

トンネル覆工構造設計の手引き,pp.86, 1999.

18) 佐藤豊:硬質地盤におけるシールドトンネル施工の

周辺地盤に与える影響に関する研究, 2004.2.

19) 岩崎訓明:コンクリートの特性,pp.106, 1975.

20) 財団法人鉄道総合技術研究所:シールドトンネル現

地計測作業,1994.3.

21) 小山幸則,岡野法之,清水満,藤木育雄,米島賢

二:洪積地盤におけるシールドトンネルの現地計測

結果と考察,土木学会トンネル工学研究論文・報告

集, 第5巻,pp.385-390, 1995.11.

22) 森麟,赤木寛一:シールド工事に伴う軟弱粘性土地

盤の乱れに基づく圧密沈下,トンネルと地下,

Vol.11, No.8, pp.33-43, 1980.8.

23) 土質工学会:土質工学ハンドブック,pp.161, 1982.

24) 大門信之,藤木育雄,末富祐二:軟弱地盤における

偏心多軸式大断面泥土圧式シールドの施工と地盤変

状計測,土木学会トンネル工学研究論文・報告集, 第

11巻,pp.281-286, 2001.11.

(2007. 11. 9 受付)

SHIELD TUNNEL LINING MEMBER FORCES CALCULATION METHOD BY TAKING INTO ACCOUNT THE SHIELD EXCAVATION PROCESS

Shuichi YAHAGI, Kenji IRIE, Nobuyuki OOKADO,

Hyoji NAKAMURA and Hisanao SUZUKI

Shield tunnel lining design has conventionally used, as design loads, the loosening pressure and total overburden load. However, it is not sufficient to set up design loads unequivocally without regard to the interactions between the shield tunnel and the ground. Although it may be more rational to set up lining design loads with due consideration for ground characteristics and tunnel sectional shape as well as the shield excavation process, no method has been established to determine these loads. This paper proposes a rational sectional force calculation method for shield tunnel lining ;a segment ring sectional force determination method with due consideration for the excavation process by modeling the lining with wire and the shield tunnel surrounding ground with plane elements.