アジアの自動車の色彩動向 - siam square付近) バンコック市郊外...

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21 塗料の研究 No.148 Sept. 2007 アジアの自動車の色彩動向 (第2報) CD 研究所 中畑顯雅 Akimasa Nakahata CD 研究所 第 1 研究部 藤枝 宗 Tsukasa Fujieda Asian Automotive Color Trends and Color Popularity (No.2) 1. はじめに 中国、タイ、インドをはじめとして、アジア圏における自動 車生産は近年ますます増加し、都市部を中心にモータリゼー ションが加速している。弊社の塗料ユーザーである日本の 自動車メーカーは相次いでこれらの国に進出し、自動車の現 地生産が増加しているが、それらの色彩開発においてもア ジア地域に向けた色彩提案、あるいは現地での新色提案の 重要性が増加しつつある。 各国の自動車外板塗色の設定は、日本で設計された塗色 の流用色が多いとはいえ、車の車型や車格も異なり、自動車 の使われ方や背景となる歴史・文化も異なるため、国によって その 色彩動向は異なっている。 自動車の 色彩分布とその 推移、すなわち流行色とそのトレンド(カラーポピュラリティ) については欧米や日本では統計的な情報を入手可能である が、アジア圏ではそのような情報が手に入らない。 そこで、弊社では2000年以降、継続的にアジア各国の自 動車の色彩動向の調査(定点観測)を実施しており、前報 1) おいて2001~2002年の動向を報告したが、本報告はその アップデートで2005~2006年の色彩動向について、この5 年間の変化に着目して報告する。 2. 調査方法 アジア各国における自動車の色彩の市場 調査は2000年にスタートし、各国の首都ま たは大都市とその近郊において定点観測を 実施している。調査方法は、交通量の多い 道路を選び、そこを通過する車のうち、バス、 タクシー、トラック等の商用車を除いて無作 為に選択した乗用車1000台以上について、 目視で車型・車格別に外板色をカウントし集 計するというものである。また、同時にデジタ ルカメラを用いて数百台の車の写真を撮影 しておき、色彩分布に従ってその写真を1台 =1%になるように貼り付けることによって 図1 のように調査結果を可視化する。このよ CD 研究所 第 1 研究部 前田賢司 Kenji Maeda うにすることによって、色彩分布の比率だけではなく、車型・ 車格や色調などの特徴を把握することが出来るように工夫 している。 調査地点と調査実施年をそれぞれ表1、図2 に示す。この ような現地調査はモーターショーでの調査や色彩提案等 の海外活動の際にCD研究所の複数のデザイナーまたは研 究員によって実施されているが、国際情勢等の影響もあり 必ずしも毎年実施できているわけではない。たとえば2002 ~2003年はSARSの影響やインド・パキスタン紛争などのた 図1 色彩動向の調査方法と可視化の方法(韓国の事例) 2007年4月 韓国での調査事例(ソウル近郊 安養市) 色 相 合 計 white silver gray black red blue green beige brown yellow gold orange purple 631 391 47 354 43 94 57 27 7 2 13 1 4 1671 259 345 28 102 6 29 34 19 30 0 8 0 1 861 55 20 2 4 46 15 8 0 2 4 18 2 2 178 945 756 77 460 95 138 99 46 39 6 39 3 7 2710 37.8% 23.4% 2.8% 21.2% 2.6% 5.6% 3.4% 1.6% 0.4% 0.1% 0.8% 0.1% 0.2% 100% 30.1% 40.1% 3.3% 11.8% 0.7% 3.4% 3.9% 2.2% 3.5% 0.0% 0.9% 0.0% 0.1% 100% 30.9% 11.2% 1.1% 2.2% 25.8% 8.4% 4.5% 0.0% 1.1% 2.2% 10.1% 1.1% 1.1% 100% 34.9% 27.9% 2.8% 17.0% 3.5% 5.1% 3.7% 1.7% 1.4% 0.2% 1.4% 0.1% 0.3% 100% セダン SUV 台 数 コンパクト 合計 セダン SUV 比 率 コンパクト 全体 White 34.9% Silver 27.9% Gray 2.8% Black 17.0% Red 3.5% Orange 0.1% Beige 1.7% Green 3.7% Blue 5.1% Purple 0.3% Brown 1.4% Yellow 0.2% Gold 1.4% POPULARITY 0% 20% 40% 60% 80% 100% 調査台数:2710台 韓国街頭自動車ボディーカラー調査('07 Apr. at Anyang) KANSAI PAINT CO.,LTD.

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Page 1: アジアの自動車の色彩動向 - Siam Square付近) バンコック市郊外 クアラルンプール近郊 (Petaling Jaya) デリー(Indian Gate付近) ムンバイ(Marine

21 塗料の研究 No.148 Sept. 2007

色 

アジアの自動車の色彩動向(第2報)

CD 研究所

中畑顯雅AkimasaNakahata

CD 研究所第 1研究部藤枝 宗TsukasaFujieda

Asian Automotive Color Trends and Color Popularity (No.2)

1. はじめに

 中国、タイ、インドをはじめとして、アジア圏における自動

車生産は近年ますます増加し、都市部を中心にモータリゼー

ションが加速している。弊社の塗料ユーザーである日本の

自動車メーカーは相次いでこれらの国に進出し、自動車の現

地生産が増加しているが、それらの色彩開発においてもア

ジア地域に向けた色彩提案、あるいは現地での新色提案の

重要性が増加しつつある。

 各国の自動車外板塗色の設定は、日本で設計された塗色

の流用色が多いとはいえ、車の車型や車格も異なり、自動車

の使われ方や背景となる歴史・文化も異なるため、国によって

その色彩動向は異なっている。自動車の色彩分布とその

推移、すなわち流行色とそのトレンド(カラーポピュラリティ)

については欧米や日本では統計的な情報を入手可能である

が、アジア圏ではそのような情報が手に入らない。

 そこで、弊社では2000年以降、継続的にアジア各国の自

動車の色彩動向の調査(定点観測)を実施しており、前報1)に

おいて2001~2002年の動向を報告したが、本報告はその

アップデートで2005~2006年の色彩動向について、この5

年間の変化に着目して報告する。

2. 調査方法

 アジア各国における自動車の色彩の市場

調査は2000年にスタートし、各国の首都ま

たは大都市とその近郊において定点観測を

実施している。調査方法は、交通量の多い

道路を選び、そこを通過する車のうち、バス、

タクシー、トラック等の商用車を除いて無作

為に選択した乗用車1000台以上について、

目視で車型・車格別に外板色をカウントし集

計するというものである。また、同時にデジタ

ルカメラを用いて数百台の車の写真を撮影

しておき、色彩分布に従ってその写真を1台

=1%になるように貼り付けることによって

図1のように調査結果を可視化する。このよ

CD 研究所第 1研究部前田賢司KenjiMaeda

うにすることによって、色彩分布の比率だけではなく、車型・

車格や色調などの特徴を把握することが出来るように工夫

している。

 調査地点と調査実施年をそれぞれ表1、図2に示す。この

ような現地調査はモーターショーでの調査や色彩提案等

の海外活動の際にCD研究所の複数のデザイナーまたは研

究員によって実施されているが、国際情勢等の影響もあり

必ずしも毎年実施できているわけではない。たとえば2002

~2003年はSARSの影響やインド・パキスタン紛争などのた

図1 色彩動向の調査方法と可視化の方法(韓国の事例)

2007年4月 韓国での調査事例(ソウル近郊 安養市)

色 相

合 計

white silver gray black red blue green beige brown yellow gold orange purple

631 391 47 354 43 94 57 27 7 2 13 1 4

1671

259 345 28 102 6 29 34 19 30 0 8 0 1

861

55 20 2 4 46 15 8 0 2 4 18 2 2 178

945 756 77 460 95 138 99 46 39 6 39 3 7

2710

37.8% 23.4% 2.8% 21.2% 2.6% 5.6% 3.4% 1.6% 0.4% 0.1% 0.8% 0.1% 0.2% 100%

30.1% 40.1% 3.3% 11.8% 0.7% 3.4% 3.9% 2.2% 3.5% 0.0% 0.9% 0.0% 0.1% 100%

30.9% 11.2% 1.1% 2.2% 25.8% 8.4% 4.5% 0.0% 1.1% 2.2% 10.1% 1.1% 1.1% 100%

34.9% 27.9% 2.8% 17.0% 3.5% 5.1% 3.7% 1.7% 1.4% 0.2% 1.4% 0.1% 0.3% 100%

セダン SUV台 数 コンパクト 合計 セダン SUV

比 率 コンパクト 全体

White 34.9%

Silver 27.9%

Gray 2.8%

Black 17.0%

Red 3.5%

Orange 0.1%

Beige 1.7%

Green 3.7%

Blue 5.1%

Purple 0.3%

Brown 1.4%

Yellow 0.2%

Gold 1.4%

POPULARITY

0% 20% 40% 60% 80% 100%

調査台数:2710台

韓国街頭自動車ボディーカラー調査('07 Apr. at Anyang)

KANSAI PAINT CO.,LTD.

Page 2: アジアの自動車の色彩動向 - Siam Square付近) バンコック市郊外 クアラルンプール近郊 (Petaling Jaya) デリー(Indian Gate付近) ムンバイ(Marine

22塗料の研究 No.148 Sept. 2007

色 

め、いくつかの国の調査を断念せざるを得なかった。しかし

ながら、過去5年間あまりの調査データを解析することによ

り、各国の自動車の色彩動向とその変化傾向を読みとるこ

とができるようになった。

3. 調査結果の概要

 個々の国の特徴について述べる前

に、全体傾向について述べる。

 図3は2001年から2002年にかけ

てのアジア各国の自動車色彩分布の

調査結果をグラフにしたものであり、

図4は2005年から2006年にかけて

の調査結果をグラフにしたものであ

る。これによって、国別のカラーポピュ

ラリティの特徴の比較と、この4~5

年間の色彩動向の変化の特徴を把握

することができる。

 まず注目されることは、日・米・欧の

先進国のトレンドと同様に、レッド、ブルー、グリーン等の有

彩色が減少し、ホワイト、シルバー、グレー、ブラックなどから

なる無彩色の増加がほぼ共通して認められることである。

 特にシルバーおよびブラックの増加傾向が顕著であり、

タイやマレーシア等の暑い国でも先進国同様ブラックが増

加傾向にあることに驚かされる。ホワイトの増減傾向は国に

よって異なるが、日本と韓国では増加傾向が認められ、ホワ

イトパールが牽引役になっている。

 有彩色では、レッドおよびグリーンで減少傾向が共通して

いる。特にグリーンに関しては、台湾やマレーシアなどで、

ターコイズ系のグリーン塗色が減少し、いずれの国において

もブルーの比率がグリーンを上回るようになったことが注目

される。

 ベージュ系のライトカラーは、先進国においては、日・欧で

は比率が低いが、米国ではベーシックカラーとして一定比率

を占める色であるという特徴がある。しかし、アジア諸国で

は国によって傾向が最も異なる色であり、タイではベーシック

カラーとして定着しており、インドおよびインドネシアでもそ

の傾向が認められるが、その他の国ではベーシックカラーと

して定着したとはいえないと考えている。

アジアの自動車の色彩動向(第2報)

表1 色彩動向を調査した国と地域、および調査実施年

2000定点観測地 調 査 国 2001 2002 2003 2004 2005 2006 2007

タイ

マレーシア

インド インドネシア 台湾 中国 韓国 日本(比較調査) ドイツ(比較調査)

バンコック市内  (Siam Square付近) バンコック市郊外 クアラルンプール近郊  (Petaling Jaya)  デリー(Indian Gate付近) ムンバイ(Marine Drive) プネ ジャカルタ 台北 北京(玉府井他) 上海(浦東、准海中路) 広州(東駅) ソウル近郊(安養市) 東京 フランクフルト

○ ○

○ ○ ○ ○ ○ ○ ○

○ ○

○ ○ ○ ○ ○

 

○ ○ ○ ○ ○

○ ○

○ ○ ○ ○ ○ ○ ○

○ ○

○ ○ ○   ○ ○ ○

○ ○

○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○

○ ○ ○ ○

日本:東京(青山)

韓国:ソウル近郊(安養)

インドネシア:ジャカルタ

マレーシア:クアラルンプール近郊 (PETALING JAYA)

インド:ムンバイ/デリー

中国:北京/上海/広州

タイ:バンコック近郊

台湾:台北

図2  色彩動向の定点観測の実施国と地域

● ● ●

100%

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White

Silver

Gray

Black

Red

Orange

'01-Japan

Yellow

Gold

Beige

Brown

Green

Blue

Purple

'01-Thailand

'01-Malaysia

'01-India/Delhi

'01-India/Mumbai

'02-Korea

'01-Taiwan

'02-Indonesia

'03-China/

Shanghai

100%

90

80

70

60

50

40

30

20

10

0

White

Silver

Gray

Black

Red

Orange

'06-Japan

Yellow

Gold

Beige

Brown

Green

Blue

Purple

'06-Thailand

'06-Malaysia

'06-India/Delhi

'06-India/Mumbai

'06-Korea

'05-Taiwan

'05-Indonesia

'06-China/

Shanghai

Page 3: アジアの自動車の色彩動向 - Siam Square付近) バンコック市郊外 クアラルンプール近郊 (Petaling Jaya) デリー(Indian Gate付近) ムンバイ(Marine

23 塗料の研究 No.148 Sept. 2007

色 

4. 各国の特徴

 4.1 タ イ

 図5はタイの首都バンコック市街の様子

である。この国の車の特徴は、小型車(日本

における軽自動車)が少なく、セダンとピッ

クアップが多いことである。そのピックアッ

プも荷台が架装され、あたかもSUV同様

の外観のものが多い。数が多いタクシー

は非常に派手な2トーンまたは3トーンカ

ラーであることも特徴のひとつである。

 図6は2006年のカラーポピュラリティ

であり、図7は過去6年間の色彩傾向の推

移である。タイでは、商用車のイメージが強

いホワイトは乗用車では年々減少し1割以

下となった。一方シルバーとベージュ系色

が二大ベーシックカラーとして定着してい

アジアの自動車の色彩動向(第2報)

図6 タイの2006年自動車カラーポピュラリティ

White 5.1%

Silver 29.0%

Gray 10.2%

Black 11.9%

Red 4.0%

Beige 16.1%

Green 4.5%

Blue 10.9%

Bluegreen 0.8%

Purple 2.3%

Brown 2.2%

Yellow 0.2%

Gold 2.9%

POPULARITY

0% 20% 40% 60% 80% 100%

調査台数:1137台

タイ街頭自動車ボディーカラー調査('06 Jun. at Bangkok)

KANSAI PAINT CO.,LTD.

図5 タイ(バンコック市街)

0

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40

50

60

70

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100%

2002 2003 2004 2005 2006年 2001

図7 タイの自動車カラーポピュラリティの経年変化

Passenger cars, n=700

Compact cars, n=43

RV/SUV cars, n=243

Pick up cars, n=151

0

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100

150

200whitesilvergrayblackbeigeyellowgoldorangebrownred-sred-ml-bluem-blued-bluebluegreenl-greenm-greend-greenpurple

図8 タイの車格別カラーポピュラリティ

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24塗料の研究 No.148 Sept. 2007

色 

る。そしてシルバーにはピュアなシルバーのほかにブルーイッ

シュシルバー、ベージュ系色には比較的イエローイッシュなも

のからライトブラウンに近い色まで広いバリエーションが認

められる。タクシー色が高彩度色であることもあって、ビビッ

ドカラーは乗用車では嫌われ、レッド、ブルー、グリーンは

ディープ系の色調が多い。2004年以降、それまでは低かっ

たブラックの比率がリッターカークラスの小型車、高級車、

SUVを問わず高くなっていることが注目される。

 図8は2006年の調査結果に基づく車格別の色傾向のグ

ラフである。2000年以前にはソリッド色が多かったピック

アップは、その利用形態のSUV的傾向が強まるに連れて次

第に乗用車同様の塗色が適用されるようになり、現在ではほ

とんど差がなくなってきた。

 4.2 マレーシア

 マレーシアの車は、国民車として位置

づけられるプロトン(主にセダン)とプロ

デュア(小型車)の二大メーカーの車の比

率が高いが、近年トヨタ、ホンダ、現代、起

亜をはじめとする他メーカーの車の比率

が上昇傾向にある。

 首都近郊では高速道路も含めて道路

網がよく発達している(図9)。隣国タイ

と比較して、バスやタクシー、オートバイ

は少ない印象で、モータリゼーションが

進んでいる印象を受ける。

 マレーシアでの調査は、首都近郊の

PETALING JAYA地区の、クアラルンプ

ールと近郊都市を結ぶ幹線道路で継続

的に調査している。図10は2006年のカ

ラーポピュラリティであり、図11は過去

6年間の色彩動向の推移である。

 マレーシアは、他のアジア諸国と比較して無彩色化の傾向

は小さく、最もカラフルな印象を受ける。ホワイトは緩やかな

減少傾向にあるが、レッド(主にソリッドカラー)とグレーが

過去6年間ほとんど変化がなく10%程度の比率を占めてい

るのはマレーシアの特徴である。小型車や女性ドライバー

も多く、有彩色比率が高いとはいえ、カジュアルなイメージの

高彩度塗色はそれほど多いとはいえないようであり、また日

本におけるニュアンスカラーのような複雑な質感の色はまだ

浸透していない。

アジアの自動車の色彩動向(第2報)

図10 マレーシアの2006年自動車カラーポピュラリティ

White 7.9%

Silver 21.1%

Gray 9.4%

Black 10.7%

Red 12.3%

Beige 7.3%

Green 10.2%

Blue 12.4%

Purple 1.3%

Brown 1.4%

Orange 1.0%

Yellow 1.2%

Gold 3.8%

POPULARITY

0% 20% 40% 60% 80% 100%

調査台数:2437台

マレーシア街頭自動車ボディーカラー調査('06 Jun. at Kuala Lumpur)

KANSAI PAINT CO.,LTD.

0

10

20

30

40

50

60

70

80

90

100%

2002 2003 2004 2005 2006年 2001

図11 マレーシアの自動車カラーポピュラリティの経年変化 図9 マレーシア(クアラルンプール近郊)

Page 5: アジアの自動車の色彩動向 - Siam Square付近) バンコック市郊外 クアラルンプール近郊 (Petaling Jaya) デリー(Indian Gate付近) ムンバイ(Marine

25 塗料の研究 No.148 Sept. 2007

色 

4.4 中 国

 広大な国土面積を有し、多くの自動車メーカーがしのぎを

削る中国では、一都市では全体傾向を代表するとはいえない

ので、上海を代表地区とし、比較として北京(図15)と広州を

継続的に調査している。また将来動向を探るためにモーター

ショー(図16)の色彩も継続的に調査している。

 2006年の北京、上海、広州のカラーポピュラリティを図17、

図18、図19に示す、図20は上記3都市の

比較である。

 圧倒的に乗用車は黒、商用車は白、タク

シーは赤という2000年当時の北京の印象

からみれば、中国の色彩動向は大きく変化

しつつある。北京、上海ともに圧倒的な比

率であったブラックは緩やかに減少傾向

にあるが、公用車やオーナークラスの車に加えて、車の購買

層が拡大することによって色の多様化が進行しているからで

はないかと考えられる。ホワイトも減少しつつあるが、それに

代わって増加している色がシルバーであり、まだ比率的には

20%程度であり、なお増加傾向にある。上海では有彩色が

やや増加傾向にあるとはいえ、まだ比率的には高くはない。

 4.3 インドネシア

 インドネシア(図12)では必ずしも継続的な定点観測がで

きていないが、2000年、2002年および2005年の調査デー

タがある。図13は2005年のカラーポピュラリティであり、 図

14に過去の調査結果との比較を示す。

 SUV車が多いというのがこの国の特徴であるが、他国同

様、シルバーが近年最も増加が著しい色であり、ベージュ系

色もこれに伴って増加傾向にある。ホワイトはほとんどポ

ピュラリティがない。ブラックが増加傾向にあるが、有彩色も

グリーン系を中心に非常にダークな色調のものが多い。これ

に対してレッドは比較的高彩度のソリッドカラーが目立ち、

ブルーも比較的高彩度の色が増加しつつある。

アジアの自動車の色彩動向(第2報)

0

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2002 2003 2004 2005年 2000 2001

図14 インドネシアの自動車カラーポピュラリティの経年変化

図12 インドネシア(ジャカルタ) 図15 中国(北京)

図13 インドネシアの2005年自動車カラーポピュラリティ

White 2.0%

Silver 29.0%

Gray 4.9%

Black 25.7%

Red 6.0%

Beige 9.8%

Yellow 0.6%

Gold 0.7%

Green 6.9%

Bluegreen 0.3%

Blue 13.5%

Purple 0.2%

Brown 1.0%

POPULARITY

0% 20% 40% 60% 80% 100%

調査台数:860台

インドネシア街頭自動車ボディーカラー調査('05 Apr. at Jakarta)

KANSAI PAINT CO.,LTD.

図16 北京モーターショー

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26塗料の研究 No.148 Sept. 2007

色 

アジアの自動車の色彩動向(第2報)

図17 中国(北京)の2006年自動車カラーポピュラリティ

White 16.4%

Silver 20.4%

Gray 3.7%

Black 38.9%

Red 5.5%

Yellow 0.4%

Gold 0.2%

Beige 2.5%

Brown 0.4%

Green 3.7%

Bluegreen 1.2%

Blue 6.8%

POPULARITY

0% 20% 40% 60% 80% 100%

調査台数:1198台

中国街頭自動車ボディーカラー調査('06 Nov. at Beijing)

KANSAI PAINT CO.,LTD.

図18 中国(上海)の2006年自動車カラーポピュラリティ

White 11.6%

Silver 26.0%

Gray 6.5%

Black 32.4%

Red 4.4%

Yellow 0.5%

Gold 0.7%

Beige 3.9%

Brown 0.1%

Green 2.0%

Bluegreen 0.5%

Blue 11.2%

Purple 0.4%

POPULARITY

0% 20% 40% 60% 80% 100%

調査台数:1047台

中国街頭自動車ボディーカラー調査('06 Nov. at Shanghai)

KANSAI PAINT CO.,LTD.

図19 中国(広州)の2006年自動車カラーポピュラリティ

White 15.3%

Silver 28.1%

Gray 5.5%

Black 19.8%

Red 3.1%

Yellow 0.3%

Gold 0.9%

Beige 6.9%

Brown 1.0%

Green 6.6%

Bluegreen 1.1%

Blue 11.3%

Purple 0.2%

POPULARITY

0% 20% 40% 60% 80% 100%

調査台数:1080台

中国街頭自動車ボディーカラー調査('06 Nov. at Guangzhou)

KANSAI PAINT CO.,LTD. 図20 中国の自動車カラーポピュラリティ 経年変化の北京、上海、広州比較

広 州

上 海

北 京

0

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100%

2003 2004 2005 2006年

2003 2004 2005 2006年

2003 2004 2005 2006年

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27 塗料の研究 No.148 Sept. 2007

色 

 北京の色彩動向は上海のそれに比較的近似してきた様

子があるが、これに比べてホンダ車を中心に日本車が多く、

また比較的小型の車も多い広州は色彩が豊かであり、有彩

色比率が30%を超えている。またベージュ系の色が一定

比率を占めている事にも注目される。 なお、北京モーター

ショーでの出展車の色彩分布についてみると、図21のように

日・米・欧と非常に近似しているようである。

 4.5 台 湾

 隣国台湾は、たまたま調査機会が少なく、

継続的な定点観測による自動車の色彩動

向の調査は出来ていないが、台北において

2001年と2005年に調査を実施している。

 台北ではタクシー色が高彩度のイエローであるため、一

見カラフルに見えるが(図22)、乗用車塗色は保守的な色調

が多く、また、他の国に比べてブラックの比率が非常に高い。

図23に2005年のカラーポピュラリティ、図24に2001年度と

の比較を示す。

 2001年当時、有彩色ではグリーンないしターコイズ系色の

比率が高く、ブルーは輸入車を除くと極めて少なかったが、

次第にグリーンが減少しブルー系色が定着しつつある。

アジアの自動車の色彩動向(第2報)

Auto China 2006

北京モーターショー/カラーポピュラリティ

モーターショー全体と各国メーカーの展示車のカラーポピュラリティの比較

WHITE

SILVER

GRAY

BLACK

BEIGE

YELLOW

GOLD

ORANGE

BROWN

RED/MP

TURQUOISE

BLUE

GREEN PURPLE

その他

KANSAI PAINT CO.,LTD.

図21 北京モーターショーでの出展車色彩分布の比較

全体

中国

日本

欧州

米国

韓国

0 20 40 60 80 100%

488 vehicle

171 vehicle

90 vehicle

162 vehicle

49 vehicle

16 vehicle

図22 台湾(台北) 図23 台湾の2005年自動車カラーポピュラリティ

White 10.8%

Silver 20.6%

Gray 9.5%

Black 25.4%

Red 5.8%

Orange 0.5%

Yellow 0.1%

Gold 1.1%

Beige 5.4%

Brown 0.8%

Green 7.5%

Bluegreen 4.4%

Blue 7.8%

Purple 0.3%

POPULARITY

0% 20% 40% 60% 80% 100%

調査台数:1049台

台湾街頭自動車ボディーカラー調査('05 Feb. at Taipei)

KANSAI PAINT CO.,LTD.

Page 8: アジアの自動車の色彩動向 - Siam Square付近) バンコック市郊外 クアラルンプール近郊 (Petaling Jaya) デリー(Indian Gate付近) ムンバイ(Marine

28塗料の研究 No.148 Sept. 2007

色 

 4.6 韓 国

 韓国も日本の隣国ではあるが、日本車がほとんど走って

おらず、一方日本ではほとんど認められない、現代、起亜、双

竜、三星、大宇などの韓国国産車が大多数を占めているとい

う点で他のアジア諸国とは違った印象を受ける。また、その

色彩傾向も他国とは異なる傾向を示す。図25はソウル市街、

図26は2007年のカラーポピュラリティ、図27はその経年変

化である。図28は、近年非常に数が増えたSUV車に着目し

て、乗用車とSUV車の色彩動向を比較したグラフである。

 韓国の自動車の色彩は、タクシー色にホワイトやシルバー

が多いこともあり、他のアジア諸国と比較して最も無彩色が

多い印象をうける。この国では乗用車のホワイトに増加傾向

が認められ、日本同様ホワイトパールが増加しつつある。ま

た、シルバーにおいてもホワイトパールにおいても、ピュアな

塗色が好まれており、カラードシルバーは少ない。ブラックも

増加傾向にあるが、グレーは少ない。高彩度の有彩色は、

レッドを除けば、小型車に限定される。ビビッドなゴールドや

ライムグリーンなどの高彩度色が塗装された小型車は2002

年当時には非常に目立つ色であったが、小型車の数は増えて

おらず、しかもその小型車の色傾向もホワイトとシルバーが

増加傾向にある。

 図28に示されるように、セダンと

SUV車の色彩傾向には特徴が認め

られる。セダンでは、ホワイト(ホワイ

トパールを含む)がシルバーより多く、

またブラックも多いが、SUV車では圧

倒的にシルバーが多い。また数は少な

いながら、ブラウン系塗色がSUV車に

適用されており、有彩色が全体に少な

いこともあって新鮮な印象を受ける。

アジアの自動車の色彩動向(第2報)

図24 台湾の自動車カラーポピュラリティの経年変化

0

10

20

30

40

50

60

70

80

90

100%

20022001 2003 2004 2005 2006年

図27 韓国の自動車カラーポピュラリティの経年変化

0

10

20

30

40

50

60

70

80

90

100%

20022001 2003 2004 2005 2007年 2006

図26 韓国の2007年自動車カラーポピュラリティ

White 34.9%

Silver 27.9%

Gray 2.8%

Black 17.0%

Red 3.5%

Orange 0.1%

Yellow 0.2%

Gold 1.4%

Beige 1.7%

Brown 1.4%

Green 3.7%

Blue 5.1%

Purple 0.3%

POPULARITY

0% 20% 40% 60% 80% 100%

調査台数:2710台

韓国街頭自動車ボディーカラー調査('07 Apr. at Anyang)

KANSAI PAINT CO.,LTD.

図25 韓国(ソウル市街)

Page 9: アジアの自動車の色彩動向 - Siam Square付近) バンコック市郊外 クアラルンプール近郊 (Petaling Jaya) デリー(Indian Gate付近) ムンバイ(Marine

29 塗料の研究 No.148 Sept. 2007

色 

 4.7 インド

 インドの車は、高級車として位置づけられるセダンと、数に

おいて多数を占める小型車、およびインドの国産自動車メー

カーから主に供給されるSUV車が主な車型である。

 インドも国土が広く、地域によって色彩動向が異なるので、

デリー(図29)とムンバイ(図30)で継続的に調査を実施して

いる。2006年のそれぞれのカラーポピュラリティを図31、図

32に、経年変化の比較を図33に示す。

 インドの自動車塗色は、設定色は比較的短命であるが、市

場の自動車には古い車が多いこともあって、非常に色彩が

多様でカラフルな印象を受ける。それでも、2000年当時は

50%近くあった有彩色比率がここ5年間で大きく低下し、無

彩色比率が大きく上昇した。特にシルバーメタリックの増加

が著しい。ホワイトは全体的には低下傾向にあるが、高級車

(セダン)ではホワイトパールの影響もあって僅かながら上昇

傾向が認められる。一方、世界的なトレンドであるブラック

は多少増加傾向にあると見ることもできるが、まだそれほど

多くはない。

 無彩色化の傾向にあるとはいいながら、なおインドの印象

はカラフルである。例えば2006年のインド市場では、シル

バーメタリックの範疇に、ピュアシルバーの他に、ブルー、グ

リーン、レッド、イエロー系のカラードシルバーがある。この傾

向は、非常にピュアなシルバーが支配的な韓国と対照的であ

る。また有彩色はディープ系の塗色が少なく、明度が高いも

のが多いのも特徴である。ベージュ・ゴールド系色はやや減

少傾向にあるが、イエロー系のカラードシルバー(シャンパン

シルバー)とともにベーシックカラーとして定着している様子

である。

アジアの自動車の色彩動向(第2報)

図28 韓国の車格別カラーポピュラリティの比較

Sedan SUV

78% 59% 22% 41% 34%66%

0

10

20

30

40

50

60

70

80

90

100%

0

10

20

30

40

50

60

70

80

90

100%

20022001 2003 2004 2005 2006 2007年 20022001 2003 2004 2005 2006 2007年

図29 インド(デリー)

図30 インド(ムンバイ)

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30塗料の研究 No.148 Sept. 2007

色 

5. おわりに

 現在では、インターネットなどの情報ツールの発達により

世界の先進トレンドはどこでも容易に入手することができ

る。そのためか、2000年当時と比較してアジア各国の自動

車の色彩動向は、シルバー、ブラックなどの無彩色が大幅に

増加するなど、先進国に近似してきた。しかしながら、詳細に

調べると、それでもアジア各国はそれぞれ色彩動向に特徴を

持っているといえる。

 今後も定点調査により、色彩動向の継続的な調査を続け

ていくと共に、アジア以外の日本車市場にも着目して調査範

囲を拡大して行きたい。

 最後に、本報告はCD研究所第1研究部のデザイナーを

中心に多くのメンバーが分担して実施し、それをまとめたも

のである。調査実施者は前田賢司、藤枝宗、原田修、倉持竜

生、遊馬知里、山田正樹、小松美保(現自動車塗料本部)、藤

田則男、中畑顯雅であることを付記する。

参考文献

1) 中畑顯雅:塗料の研究、140,2-15

  (2003)

アジアの自動車の色彩動向(第2報)

White 29.2%

Silver 30.7%

Gray 6.7%

Black 6.5%

Red 5.0%

Yellow 0.1%

Orange 0.2%

Gold 1.3%

Beige 8.4%

Brown 0.7%

Green 4.0%

Blue 6.6%

Purple 0.7%

POPULARITY

0% 20% 40% 60% 80% 100%

調査台数:2149台

インド街頭自動車ボディーカラー調査('06 Dec. at Delhi)

KANSAI PAINT CO.,LTD.

White 24.2%

Silver 37.5%

Gray 5.0%

Black 10.5%

Red 6.1%

Yellow 0.3%

Orange 0.4%

Gold 1.8%

Brown 0.5%

Beige 4.0%

Green 3.1%

Blue 5.9%

POPULARITY

0% 20% 40% 60% 80% 100%

調査台数:1533台

インド街頭自動車ボディーカラー調査('06 Dec. at Mumbai)

KANSAI PAINT CO.,LTD.

 

Delhi

0

10

20

30

40

50

60

70

80

90

100%

20022001 2003 2004 2005 2006年

Mumbai

0

10

20

30

40

50

60

70

80

90

100%

20022001 2003 2004 2005 2006年

図33 インドの自動車カラーポピュラリティの経年変化と都市間比較