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株式会社 日立製作所 SOAは今、全体最適を目指す SOAは今、全体最適を目指す 特集 HITACHI Open Middleware World 短期間で実現する 実践! SOAセミナー HITACHI Open Middleware World 短期間で実現する 実践! SOAセミナー 2007 September 41 vol. http://www.hitachi.co.jp/soft/magazine/

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株式会社 日立製作所

SOAは今、全体最適を目指すSOAは今、全体最適を目指す特集

HITACHI Open Middleware World短期間で実現する 実践! SOAセミナーHITACHI Open Middleware World短期間で実現する 実践! SOAセミナー

2007 September41vol.

http://www.hitachi.co.jp/soft/magazine/

COVER STORYハムスターにまつわるうんちく

Open Middleware Reportvol.41[September/2007]

株式会社日立製作所 ソフトウェア事業部 販売企画センタ

TEL:03-5471-2592

本カタログは環境に配慮し、植物性大豆油インキを使用しております。

発行日◎2007年9月1日

発行(編集/制作/印刷)

02 Open Middleware Report|vol.41

不許複製All Rights Reserved. Copyright c 2007, Hitachi, Ltd.

Contents

SOAは今、全体最適を目指す3

*Eclipseは,開発ツールプロバイダのオープンコミュニティであるEclipse Foundation, Inc.により構築された開発ツール統合のためのオープンプラットフォームです。 *IBMは,米国における米国International Business Machines Corp.の登録商標です。 *Java 及びすべてのJava関連の商標及びロゴは,米国及びその他の国における米国Sun Microsystems, Inc.の商標または登録商標です。 *MCFrameは東洋ビジネスエンジニアリング株式会社が開発した製品、登録商標です。 *Microsoftは,米国およびその他の国における米国Microsoft Corp.の登録商標です。Microsoft Excel,Microsoft Wordは,米国Microsoft Corp.の商品名称です。 *MyEclipseは、米国Genuitec社の商品名称です。 *Oracleは,米国Oracle Corporation及びその子会社,関連会社の登録商標です。 *R/3は,SAP AGのドイツ及びその他の国における登録商標または商標です。 *SuperStreamはエス・エス・ジェイ株式会社の登録商標です。 *Yahoo!,Yahoo!ロゴマークは,米国Yahoo! Inc.の登録商標または商標です。また,ヤフー株式会社はこれらに関する権利を保有しています。 *その他記載の会社名、製品名は、それぞれの会社の商標もしくは登録商標です。

http://www.hitachi.co.jp/soft/magazine/

2007 Septembervol.41

14 HITACHI Open Middleware World短期間で実現する 実践! SOAセミナー開催

20Product ReviewuCosminexus Portal Frameworkの新機能スマートナビゲーション

22 CASE STUDYピジョン株式会社

26 HITACHI SPECIAL INTERVIEW株式会社インテック

Coffee BreakOpen Middleware Report スタッフ便り24

http://www.hitachi.co.jp/soft/

◉特集

 こんにちは! OMR編集部員のイブキです。 “超・癒し系”動物の赤ちゃんシリーズ第2弾はハムスターです! ハムスターの赤ちゃんって、本当は肌色のツルっとしたやつでは…? という疑問はありますが、小さくて可愛ければOK! ということで、41号をお届けします!

ハムスターは独りが大好き

 一般的に「ハムスター」といえば、表紙のネズミを想像しますよね。 でも、ハムスターと一口に言っても、実はたくさんの種類がいるのです。ゴールデンハムスター(表紙はコレ)、ジャンガリアン、キャンベル、ロボロフスキー、チャイニーズ…。 うかつに「ハムスター」と括ってはいけません。(実際はハムスターと括りますが)なんと彼らはみんな“別の動物”なんです。ライオンとゾウが結婚できないように、ゴールデンとジャンガリアンは結婚できません。どれもみんなネズミじゃん! と甘く見てはいけないのです。 そしてヤツラは独りが大好き。 縄張り意識が強く、複数同居させると死に至るほどのケンカをします。 表紙のハムたちも、仲良く見えて実は飴玉をめぐって骨肉の争いをしているのかも…。

Open Middleware Reportでは「PARTNER'S Voice」のコーナーを新設しました。これまでお届けしていた技術動向、製品情報などに加え、テーマに沿ったパートナー企業の取り組みなどをご紹介してまいります。詳しくはP25をご覧ください。

Information

第1部 提   言 使い捨てのITから生き永らえるITへ第2部 処 方 箋 指南書に学ぶアーキテクチャ設計の勘所第3部 製品・技術 Cosminexusで作る全体最適なシステム

PARTNER's Voiceパートナーの声25SOAとWebテクノロジーによるソリューションを提供するSIベンダーに聞く株式会社日立システムアンドサービス

[お詫び]Open Middleware Report Vol.40(P6)の記載に一部誤りがありました。注釈1・2がそれぞれ逆に記載されておりました。読者の皆様にご迷惑をおかけしたことをお詫び申し上げます。

使い捨てのITから生き永らえるITへ提言

指南書に学ぶアーキテクチャ設計の勘所処方箋

Cosminexusで作る全体最適なシステム製品・技術

SOAの真の目的は,IT資産に含まれる優れた業務ロジックを全社で活用することにある。その実現に向け,日立製作所は統合システム構築基盤「Cosminexus」で製品を強化するとともに,「リファレンスアーキテクチャ」などでSOAの設計・構築ノウハウを提供開始した。

特 集

コ ズ ミ ネ ク サ ス

vol.41|Open Middleware Report 03

SOAは今,全体最適を目指す

特集

04 Open Middleware Report|vol.41

SOAは今,全体最適を目指す

特集

 ビジネスの変化に即応し,強い業務プロセスを構築するためには,IT資産(プログラムなど)をいかに上手に活用するかがポイントになる。そのために,SOA(サービス指向アーキテクチャ)の考え方,技術は必要不可欠なものだ。 しかし,SOAが単にシステムを「つなぐ」「再利用する」だけのものと考えているなら,本当の意味でIT資産を有効活用することにはならないだろう。今,求められているのは,「IT資産に含まれる,固有の“優れた業務ロジック”を全社レベルで活用する」という全体最適の視点である。上流の全体設計から個別の実装までこの視点を一貫して持ち続けられるか否かで,業務プロセスやアプリケーションのパフォーマンスに大きな差が生まれる。

使われないIT資産は3〜7割にも

 残念なことに,多くの企業では,IT

資産の利用効率が非常に低い状態に陥っている。これまでに次々と新しいシステムを導入してきたものの,システム構成が複雑になり,自社がどんなシステムを持っているのかさえ正確に把握できていないケースもある。 その結果,企業で利用されなくなったITの「不稼働資産」が増えている。実際に資産解析サービスやリエンジニアリング・サービスなどを通して分かったことだが,IT資産の約3割は不稼働資産になっている。ひどい企業では7割にも達する。 そもそもITは,人・組織と一緒になって仕事を分担している存在だ。経営者は,人・組織などの人的資源に対して,熱心に活性化や改善を重ねてきた。これと同じように,IT資産にも活性化や改善を重ねていくべきである。実は,世界に通用する元気な日本企業は,どこも自社のシステムを非常に大

事にしており,改善を積み重ねている。 これを多くの企業が実践できればいいのだが,実際にはそうではない。システムが複雑化しすぎて手に負えなくなったり,パフォーマンスが悪いと判断されたりすれば,すぐにパッケージ・ソフトを導入しようとする傾向がある。システムを「作っては捨てる」という行為を繰り返しているのだ。

強い企業のシステムは“改善”を蓄積

 実際にこんな例がある。1990年代にERPパッケージ・ブームがあったころ,製造業A社がホスト・システムをやめてERPパッケージを導入した。 だが,ERPパッケージを導入してすぐに,問題が生じた。製造業は“改善”が命なのに,パッケージを入れた途端,これがピタリと止まってしまったのだ。 変数の桁を増やす,画面のレイアウトを少し変える,というだけで200万円くらいの修正費用がかかり,バージョンアップには2億円かかるとパッケージ・ベンダーに言われたという。このため,おいそれとシステムを改善できなくなってしまった。結局A社は3年でERPパッケージの利用を諦めた。

長年利用されてきたシステムには,改善を積み重ねてきた“優れた業務ロジック”が多数存在する。これらの強みを的確に抽出し,全社レベルで活用しながら更なる改善を重ねれば,一層強いシステムを作り出せる。その基盤となるのは紛れもなくSOAだ。業務モデリングの段階から全体最適を目指せば,ロングライフな「サービス」を定義できる。

使い捨てのITから生き永らえるITへ

提言

SOAは“強さ”を育てる基盤優れた部分の抽出・再構成がカギ

     日立コンサルティング 取締役 玉樹 正人(たまき まさと)氏1979年,日立製作所入社。産業流通分野のシステム・エンジニアとなる。1987年にコンサルティング業務の立ち上げ部門に参加。1990年にコンサルティング部門が事業所(後のビジネスソリューション事業部)として独立し,業務コンサルティングおよび関連メソドロジの開発に従事する。ITコンサルティング部門責任者を経て2004年にビジネスソリューション事業部の事業部長に就任。2006年から日立コンサルティングの取締役となる

著者紹介著者紹介

vol.41|Open Middleware Report 05

SOAは今,全体最適を目指す

特集

 たまたま以前のホスト・システムのリソースをテープで保存していたため,A社はそこからシステム仕様を解析し,SOA的な発想でシステムの再構築に踏み切った。ERPパッケージと比べて,そこには現場の工夫や改善がぎっしりと詰め込まれていた。 そして,改善を重ねた“優れた業務ロジック”を,SOA的なシステム設計により全社で活用することができた。ここに来てようやく,A社のシステムは強さを取り戻すことができた。 この例から分かるように,情報システムの強みは,長年利用してきたシステムの中にあることが多い。それらをパッケージ・ソフトで安易に置き換えてしまうと,企業は強さを失ってしまう可能性がある。 解決策は,既存システムから強いところを取り出し,全体最適の観点から他のシステムでも応用できるようにすること(図1)。一般にレガシー・マイグレーションは,プラットフォームをオープン化することに主眼を置く傾向にあるが,本当は優れた業務ロジックを抽出して,使いやすい形にまとめ直すことが重要なのである。ここにSOAの考え方や技術が必要不可欠であり,上流工程から一貫して全体最適を目指すことが求められている。 日本の製造業のトップ企業は,現場の工夫を詰め込んだ業務ロジックを決して手放したりせず,ずっと改善を続けている。パッケージ・ソフトを導入したとしても,それとIT資産の強いところをうまく組み合わせ,より高い成果が出るように最適化している。

モデリングの巧緻が問われる

 さて,実際にSOAシステムを構築す

るときには,どのような点に注意すべきだろうか。その最大のポイントは業務モデリングである。 これがうまくできれば,システム設計時に,サービスやインタフェースを簡単にマッピングできる。また,業務に変化が起こったとき,あるいは変化を起こそうとしたとき,どこを変えたらそうなるかが容易に識別できるようになる。 うまくモデリングするには,まず業務の「基本」と「バリエーション」を峻別することが必要である。いくら経営環境が大きく変化しているとはいえ,業務の「基本」をころころ変えることはまずない。そこで,変化しやすい部分(バリエーション)を基本部分から切り離す。こうしておけば,10年以上経ってもシステムは外部の変化に耐えて生き残れる。これは,いくつもの実例が証明している。 ただ,業務の本質を見抜く洞察力がないと,変化に強いモデルは作成できない。職人技とも言われる領域であり,この状況は昔から変わっていない。 「業務の基本は変化しない」という前提に立てば,業界ごとにリファレンス・モデルを作れる可能性はある。か

つてはそう考えて,業界ごとにモデルを作る運動をしたことがある。 しかし,業務モデルに限って言えば,リファレンス・モデルの実用性は期待するほど高くないのではないか。例えば製造業の営業プロセスをモデル化する場合,「販売計画→引合→受注→売上」とモデリングすれば汎用性は高いが,現場ではいろいろと裏技的な工夫が行われている。これが長年の間に,こんな簡単なモデルでさえ,その境目を崩していってしまう。 重要なのは“理解の作り込み”である。SOAに適した業務モデルを作成するには,現場の責任者と一緒になって,業務の本質を見極めるための議論が欠かせない。「あぁ,そうだよね」という気付きがモデルのあちこちにちりばめられていないと,業務の本質を見極めたモデルにはならず,生き残れない。 SOAの実践はまず業務への深い理解がないと始まらない。技術基盤の重要さもさることながら,優れた業務ロジックを抽出し,そこに継続的な改善を加えていくことが,IT資産の強化,ひいては企業の競争力アップにつながる。SOAはそのための「場」でもある。

IT資産 優れた業務ロジック

Aシステム 不稼働資産

不稼働資産

“強み”を抽出・再構成 SOA基盤(ESBなど)

更なる改善

更なる改善

不稼働資産

Bシステム

Cシステム

全体最適なSOAシステム

ESB:エンタープライズ・サービス・バス

SOAでIT資産に内在する“強み”を活用図1

06 Open Middleware Report|vol.41

SOAは今,全体最適を目指す

特集

—日立製作所は,SOAベースの統合システム構築基盤「Cosminexus」の新バージョンに合わせて,SOAシステムの構築ノウハウを体系化し,提供を始めました。ITベンダーとして,そこまで踏み込む狙いは。 ITベンダーの役割は,ユーザー企業が立案した戦略の実行プロセスをいかにシステムに実装するかということです。従来は基盤製品の提供にとどまっていましたが,今後はそこから外へ踏み出すべき時期だと感じています。 最近,経営スピードを高める業務プロセス改革のニーズが高まっており,業務の効率化などを実現するため,部門横断的なシステムの構築が増えてきています。これを受けて,複数のシステムを横串で刺して,連携動作させる実装がよく採られていると思います。 しかし,もともと個別最適をしてきたシステム同士をつなげるには,開発や運用の面でどうしても余計な工数が生じてしまいます。また,IT資産全体の最適化を考慮せずに開発を行ってしまうと,将来多大なメンテナンス・コストがかかってしまうだけではなく,変化に即応することができず,結果的

にビジネスの足を引っ張ることになりかねません。こうした背景のため,業務プロセスの改革に向けたIT資産の再構築においては,システムの全体最適化を前提として取り組む必要があると感じるわけです。 問題は,全体最適なシステムを構築するにはノウハウが必要なことです。全体最適なシステムは,個々の製品の機能だけで実現できるものではありません。求められる要件に対して最適なアーキテクチャを採用し,それに最適な製品群を選択して効率よく組み合わせる,実装段階までを通して考えなければなりません。 そこで,当社の構築ノウハウを体系化した「リファレンスアーキテクチャ」

「適用ガイド」というドキュメントをユーザー企業やSIパートナーの皆様に提供し,システムの設計・構築のお手伝いをしようと考えたわけです。 これらのドキュメントは,ユーザー企業と一緒にSOAベースのシステムを構築した際の経験に基づいています。構築の現場では,実装上の課題にいくつも直面しましたが,それらへの対処法を踏まえて知見を整理しています。

—具体的に,どのような課題に直面したのですか。 SOAの考え方が広まり始めたころ,よく受けた相談というか誤解は,サービスの呼び出しやフローを制御する業務プロセス記述言語「BPEL(Business Process Execution Language)」に関することでした。多くのユーザー企業は,BPELを使えばどんな業務プロセスも記述できると考えていました。 しかし,BPELではうまく記述できないプロセスが結構あります。例えば,ある業務プロセスの途中でタスクを前工程に差し戻すとか,1度は承認して次工程に進んだタスクを引き戻すなどの処理です。人間系の業務処理としては当たり前のことですが,ストレートスルー型のプロセスを想定したBPELで記述しようとすると,かなり煩雑になってしまいます。BPELの記述が煩雑になれば,変更にも手間がかかり柔軟性や拡張性が低下してしまいます。 上記のような業務処理は,無理してBPELを使おうとせず,ワークフロー管理ソフトをベースに設計したほうがいいのです。要は適材適所なのですが,BPELで統一することにこだわり,実

SOA(サービス指向アーキテクチャ)に基づくシステム構築を容易にするため,日立製作所はこれまでのSOAシステム構築経験から得た設計・構築ノウハウを体系化し,「リファレンスアーキテクチャ」「適用ガイド」として提供し始めた。これらの狙いと効果を,同社ネットワークソフトウェア本部 林 重年担当本部長に聞いた。

指南書に学ぶアーキテクチャ設計の勘所

処方箋

失敗しないノウハウを体系化SOA設計工程を30〜50%短縮

vol.41|Open Middleware Report 07

SOAは今,全体最適を目指す

特集

現したい業務課題に適したシステム・パターンを見出すのに結構な時間がかかることもありました。 もう1つ,ユーザー企業がよく直面する課題として,データレイヤーの統合があります。データベースを統合できると運用も楽になるでしょうが,アプリケーションへの影響も大きく,実現には時間がかかります。 しかし,業務課題を伺うと,データレイヤーでの統合ではなく,アプリケーションをプロセスのレイヤーで統合する方が効率的だったりします。場合によっては,ユーザー・インタフェース(画面)のレイヤーで統合した方が,利用者の効率も改善され,メリットが大きいこともありました。

—こうした課題の解決例が「リファレンスアーキテクチャ」なのですね。 そうです。「リファレンスアーキテクチャ」は,ユーザーの課題や要件に対してベストプラクティスとなるような,SOAベースの“システム・パターン”を定義したものです。 例えば『部門業務はシステム化されているが,エンドユーザーは複数部門のシステムを同時に利用している。その際,使い分けの手間や作業ミスが発生している』という課題があったとしましょう。リファレンスアーキテクチャでは,解決したいこと,やりたいことを起点に,適切なアーキテクチャを選び出せるようにしています。この例ではシステム間で高度な連携処理が不要なため,「ワンストップサービス」と呼ぶパターンを推奨しています。複数システムの画面部分だけを連携させ,画面上でデータを自動的に受け渡せるアーキテクチャです。

 このアーキテクチャで必要となるミド ル ウ エ ア 群 も,

「フロントエンド」「サービス」「サービス統合」などのレイヤーごとに示しています。 実はシステム設計の現場では,前述のような結論を導き出すまでに数カ月を要したりすることもありました。リファレンスアーキテクチャは,設計者に選択可能なパターンを示すことで,システム設計工程を30〜50%短縮できるとみています。リファレンスアーキテクチャは,(1)プロセス統合,(2)インタフェース統合,

(3)情報統合,(4)サービス構築という4分野について,現時点で約25パターンを用意しました。これからも順次拡充していく考えです。

—アーキテクチャを決めた後の設計作業はどうするのですか。 リファレンスアーキテクチャのシステム・パターンごとに,「適用ガイド」を用意しています。詳細な設計ノウハウはこちらを参照してもらうことになります。適用ガイドには主に2種類の解説が含まれます。 1つはSOAの設計に関するもので,システム・パターンに基づくシステム設計の解説をはじめ,「サイジング・性能設計」「運用・信頼性設計」といっ

た設計ガイドを用意しました。サイジングについては,必要なCPU数やメモリー・サイズなどを自動的に算出できる見積もりシートも提供しています。 もう1つは「環境セットアップ」「アプリケーション開発手順」「トラブルシューティング」など構築段階のノウハウ解説です。無用な試行錯誤を減らし,開発生産性を高められるでしょう。 リファレンスアーキテクチャと適用ガイドは,ともに(1)アプリケーションをより速く開発すること,(2)各種サービスを柔軟に組み合わせられること,(3)システム全体を統合運用すること——を共通の目標としています。同時リリースする統合システム構築基盤Cosminexusとの組み合わせで,失敗のリスクが小さく,効率的なシステム構築ができると期待しています。

日立製作所 ソフトウェア事業部 ネットワークソフトウェア本部 担当本部長 林 重年 氏

08 Open Middleware Report|vol.41

SOAは今,全体最適を目指す

特集

 SOAに今,全体最適の視点が求められている。これまでSOAは,EAIの延長と見られがちだった。そこでは,乱立したシステムを「いかに連携させるか」がゴール。しかし,システムはつながったが,帳票印刷など機能の重複が多い,運用はシステムごとにバラバラ,といった問題があった。 日立のSOAは,全体最適の観点から

サービスを切り出し,それを共有するシステムの構築を目指す。その実現に向 け て,統 合 シ ス テ ム 構 築 基 盤

「Cosminexus」として基盤製品を強化するとともに,「リファレンスアーキテクチャ」と「適用ガイド」を提供開始した。リファレンスアーキテクチャと適用ガイドには,日立製作所が手掛けたシステム構築のノウハウが詰まっ

ている。製品とノウハウの両面から,全体最適なSOAを推進する体制が整った(図1)。 全体最適を実現するためのコンセプトは三つある。(1)システム全体で開発スピードを上げる「Rapidな開発」,

(2)作ったシステムを柔軟につなぐ「Pluggableな構築」,(3)つないだシステムをうまく運用する「Collabora-

 全体最適なSOAの実現に向け,「Cosminexus」で基盤製品を強化。「リファレンスアーキテクチャ」と「適用ガイド」によりノウハウを提供開始した。システム構築のコンセプトは,「Rapidな開発」「Pluggableな構築」「Collaborativeな運用」。このコンセプトに沿って,システム統合とシステム構築のアプローチで,設計・構築を支援する。

プロセス統合基盤

インタフェース統合基盤

Rapidな開発 Collaborativeな運用

Pluggableな構築

業務システム

既存業務システム

帳票印刷 情報統合基盤

ワークフローシステム

パッケージシステム

オープンなツールと 体系化された

ドキュメントによる サービス開発

オープンなツールや最新のサーバー技術を活用したシステム全体の

統合運用

各種サービスを柔軟に組み合わせるシステム構築

運用統合

リファレンスアーキテクチャ

適用ガイド

統合システム構築基盤「Cosminexus」で全体最適なSOAを目指す「Rapidな開発」「Pluggableな構築」「Collaborativeな運用」という三つのコンセプトを掲げ,全体最適なSOAを目指す。統合システム構築基盤「Cosminexus」として基盤製品を強化するとともに,「リファレンスアーキテクチャ」と「適用ガイド」でノウハウを提供し,システムの設計/構築を支援する

図1

Cosminexusで作る全体最適なシステム

製品・技術

製品強化に加えノウハウを提供「統合」「構築」を手厚くサポート

vol.41|Open Middleware Report 09

SOAは今,全体最適を目指す

特集

tiveな運用」——である。このコンセプトで,「APサーバーだけでなく,HiRDBやEURなどを巻き込み,JP1とも連携しながらミドルウエアの足並みをそろえて機能強化していることがCosminexusの特徴である」(日立製作所 ソフトウェア事業部 ネットワークソフトウェア本部 第2ネットワークソフト設計部 担当部長 小林 敦氏)。 では,どうやって全体最適なシステムを作っていくのか。その指針となるのが,「システム統合」と「システム構築」のアプローチである。 今回,こうした考え方に沿って製品体系を再整理し,素早く始めるポイントソリューションから,大きく描くトータルソリューションまで多様なニーズに応える製品としてCosminex-usは進化した(図2)。 システム統合,システム構築の順番に,強化点を詳しく見ていこう。

 これまでSOAは,BPELやWebサービスといった技術面が先行し,バラバラなシステムをつなぐことに重きが置かれていました。しかしSOAの本当の目的は,変化に強いシステムを作ることです。それを実現するには,全体最適でシステムを考えなければなりません。個別最適では,顧客マスターのように似て非なるものが散在しがちです。これでは変化に強いとは言えません。 全体最適で作るには,会社全体を見回して,共通で整備するインフラを考えなければなりません。かつて銀行システムを構築する際に,将来,顧客サービスを提供するチャネルや販売する金融商品が増えることを想定して,システム共通のメッセージ連携基盤を整備しビジネスの変化に容易に対応できるシステムを実現しました。

 こうした全体最適な考え方は,都市計画に似ていると思います。大昔,何も社会インフラが整備されていない家で暮らしていた頃に比べると,道路や水道という共通的な社会インフラを整備した上に家を建てて生活することで,人々は効率的に活動できるように変わるのです。� (談)

小林 敦氏日立製作所ソフトウェア事業部ネットワークソフトウェア本部第 2 ネットワークソフト設計部担当部長

都市計画のように全体最適を図る

インタフェース統合 uCosminexus Portal Framework

情報統合 uCosminexusInformation Federator

uCosminexusInformation Replicator

DataStage/QualityStage

プロセス統合

uCosminexus Service Architect uCosminexus Service Platform

統合運用管理

パートナーソリューション/パッケージ

統合サービスプラットフォーム

BladeSymphony

Cosminexus

JP1

uCosminexusApplication Server

Open TP1

開発コミュニティMyEclipse

オンライン 帳票印刷

電子フォームワークフロー

ワークフロー

オープンバッチ

文書管理

uCosminexusBatch Job

Execution Server

リファレンスアーキテクチャ

適用ガイド

サイジング性能設計

運用・信頼性設計ガイド

環境構築ガイド

アプリケーション開発ガイド

トラブルシュート解説

EUR

Log Report Suite

DocumentBroker

HiRDB

SOAを支えるCosminexusの製品体系インタフェースやプロセス,情報を統合する「システム統合」と,オンラインやバッチなどの「システム構築」の二つの柱から成る。「Rapidな開発」「Pluggableな構築」「Collaborativeな運用」の実現に向けて,「HiRDB」や「EUR」などを含め足並みをそろえて製品を強化している

図2

10 Open Middleware Report|vol.41

SOAは今,全体最適を目指す

特集

システム統合 システム統合は,(1)インタフェース統合,(2)プロセス統合,(3)情報統合の三つのパターンがある。それぞれのパターンに対して,「Rapidな開発」「Pluggableな構築」「Collaborativeな運用」というコンセプトに裏打ちされた強化が施されている。また,これらパターンに沿った方式設計やサイジングの作業を,「リファレンスアーキテクチャ」「適用ガイド」が支援する。 インタフェース統合の目的は,既存サービスをフロント・レイヤーで統合し,快適なユーザー・インタフェースを提供することにある。 この統合を支える基盤が「uCos-minexus Portal Framework」である。今回,スマートナビゲーションと呼ぶ機能を加え,ユーザーが行う操作をこれまで以上にうまくガイドできるようになった。例えば,勤怠管理と旅費精

算のシステムが個別にあるとき,ユーザーは勤怠管理システムで出退勤データを入力した後に,旅費精算システムにログオンして同じようなデータを入力する必要がある(図3上)。 スマートナビゲーション機能は,画面に表示している情報を右クリックするだけで,関連するサービスを立ち上げるメニューを表示し利用者の操作の流れを誘導する。先のケースに適用した場合,勤怠管理システムの画面から右クリックで旅費精算システムの画面が起動される。さらに,勤怠管理システムで入力したデータを旅費精算システムの画面に引き渡すようなことも可能だ。右クリックで起動したいサービスや引き渡したいデータ項目は,あらかじめサーバー側のuCosminexus Portal Frameworkに定義しておく仕組みである。

SAP R/3,Oracle EBS連携を強化

 プロセス統合の機能は,「uCos-

minexus Serv ice P lat form」 と「uCosminexus Service Architect」の二つの製品が担う。前者は,BPEL

(Business Process Execution Lan-guage)に準拠した,ビジネスプロセス管理とサービス連携の機能を備える。後者は,ビジネスプロセスやデータ変換といったプロセス統合に必要な各種定義を,開発ツール「Eclipse」のプラグインとして提供する。 ここでの機能強化点は大きく二つ。まず,上流設計支援ツールを連携可能にし,ビジネスプロセス開発の生産性を向上した。具体的には,ビジネスプロセス・モデリング・ツール「ARIS(開発はIDS Sheer)」などで設計したBPELの定義をuCosminexus Service Architectに取り込み,ビジネスプロセスを実装する作業につなげられるようにした。 もう一つは,外部サービスを連携するためのアダプタを拡充した。今回追加したのは,SAP R/3とOracle EBS

①勤怠管理画面から右クリック! ワンタッチ・ワンストップでデータ連携も可能!

関連するサービスの起動メニューを表示

勤怠管理システム ①お気に入りから起動 ②旅費精算システムにログイン ③データ再入力

出張日と出張先など勤怠管理システムのデータを自動で取り込み起動

従来

スマートナビゲーション

・ 操作が多いな。・ 勤怠管理システムで 入力したデータ ばかりだな……。

スマートナビゲーションでユーザーの操作性を向上任意のWeb画面上で右クリックによって,必要なアプリケーションを立ち上げられる。画面間でデータを引き渡すことで,データ入力の手間も削減できる

図3

vol.41|Open Middleware Report 11

SOAは今,全体最適を目指す

特集

用のアダプタ。両サービスとuCos-minexus Service Platformとの連携が容易になった。さらに,メインフレームとの連携も強化。日立560/20やIBM 3270といったホスト系のデータストリームや,MQ(Message Queu-ing)による連携を可能にした。 マスターデータを効率よく管理する

 情報統合の目的は,品質の高いデータを迅速に各種サービスに提供すること。今回,力を入れたポイントの一つが,顧客や商品などを管理する「マスターデータ」の統合である。システムの生い立ちが違うなどの理由で,本社,営業所,コールセンターで個別のマスターデータを抱えているような例は少なくない。こうしたケースでは,マスターデータ間で「データの不整合が起きる」「データ項目が一致しない」といった問題が発生しがちだ。マスターデータを統合して運用することで,データのメンテナンスに必要なコストを削減できる。 データを統合するには,「DataSt-age」と呼ぶツールを使い,統合マスターを新たに作成する。この統合マスターと,既存のマスターは双方向でデータが自動的に同期される。ただし,統合はツールを入れただけで実現できるわけではない。「統合に当たっては,事前の現状分析をきちんと行う必要がある。そのために,マスターの運用状態やデータのバラツキ具合を調べる,データ品質テクニカルサービスを用意している」(小林氏)。 

現場の設計/構築ノウハウを提供

 システムには様々な要件が寄せられる。要件に応じて,どのようなサービ

スを統合・構築すればよいのか――その羅針盤となるのが「リファレンスアーキテクチャ」と「適用ガイド」である。そこには,SOAのアーキテクチャに沿って開発するための, 設計および構築の指針が示されている。 リファレンスアーキテクチャには,Cosminexusが実現する「インタフェース統合」「プロセス統合」「情報統合」

「サービス構築」という四つの階層における,様々なシステムの形態が定義してある。 システム構築に携わるエンジニアは,まずリファレンスアーキテクチャを使って「システムの現状や,課題,やりたいこと」などを整理する。この作業により,実現すべきシステム形態が見えてくる。次に,そのシステム形態に応じた適用ガイドを用いることで,構築がスムーズに進められる。 両ガイドは,同社のSI部隊のノウハウや,製品へのフィードバックを集めて作成するもの。プロセス統合編をはじめに,各種のシステム形態に対応したガイドを整備していく計画である。

帳票

JP1/AJS2:JP1/Automatic Job       Management System 2EUR:End-User Reporting   (帳票システム構築支援)

uCosminexus Batch Job

Execution Server

uCosminexus Batch Job Accelerator

JP1/ AJS2

ジョブ起動 メモリー

帳票サーバー

データ

EUR

EURアダプタ

ジョブ終了

COBOL2002 業務AP

HiRDB

ジョブ起動時にメモリーにDBをロードし,高速アクセスを実現

バッチ処理をオープン環境で実現「uCosminexus�Batch�Job�Execution�Server」を使えば,メンフレーム上のJCLと同等のイメージでバッチ処理が組める。「uCosminexus�Batch�Job�Accelerator」は,メモリー上でデータを操作することで,バッチ処理の高速化を図る

図4

システム構築 システム構築では,(1)オープンバッチ,(2)オンライン,(3)ワークフロー,

(4)データベース,の四つにシステムのタイプを整理。各システムを効率的に構築できるように,製品を機能強化し,サービスの拡充を図った。 オープンバッチは,メインフレームで培ったノウハウを生かして,バッチの開発,運用環境を強化した(図4)。 複数のプログラムを連携するバッチ処理(ジョブ)を作るとき,従来のオープンシステムではプログラム間のデータのやり取りなどを,シェルスクリプトなどで記述する必要があった。一方,メインフレームではJCL(Job Control Language,ジョブ制御言語)が使えるので,こうした処理が簡単に実現できる。「今回のオープンバッチの強化は,JCLを使う手軽さでジョブを組み,運用できることを目標にした」(日立製作所 ソフトウェア事業部 企画本部 計画部 主任技師 恒川 正浩氏)。

12 Open Middleware Report|vol.41

SOAは今,全体最適を目指す

特集

 オープンバッチの中心となる製品は「uCosminexus Batch Job Execution Server(BJEX)」である。BJEXを使

えば,「ジョブの開始」「アプリケーションの実行」「ジョブの終了」という一連の制御を,XMLを使って簡単に定義

できる。ジョブの中では,一時ファイルを設け,あるステップから次のステップにデータを引き渡すことが可能。こうしたファイルの作成や削除はBJEXが行うため,バッチ処理の構築が容易になる。 また,BJEXはジョブの実行結果を一元管理するスプールを提供する。アプリケーションから出力された帳票データは,帳票作成機能「EUR」を使い,拠点などに配信することで,帳票運用が効率化できる。 ジョブのスケジューリング機能は,

「JP1/Automatic Job Management System 2(JP1/AJS2)」が提供する。JP1/AJS2の画面からは,ジョブ・ログなどが参照できる。また,バッチ処理を高速化する製品「uCosminexus Batch Job Accelerator」の提供も計画されている。uCosminexus Batch Job Acceleratorは,BJEXと連携し,ディスク上のデータをバッチ開始前にHiRDBのメモリーに読み込み,バッチ処理が完了した後に結果データをディ

CALFHM 1.0, seqnum=1, msgid=KDJE54112-I, date=2007-04-13T18:50:12.424+09:00, progid=Cosminexus, compid=CCC, pid=3028, ocp:host=j2eehost, ctgry=StartStop, result=Occurrence, subj:euid=guest,obj=auditlog, op=Start, msg=”guest executed the command (cjstartsvauditlog).”

テーブル名 SQL文 アプリケーション情報

192.168.XX.XXX/1234/0x0…Table1

… … …

INSERT…

システムの起動・停止

システムの定義情報の更新

アプリケーションの定義情報の更新

アプリケーションの入れ替え

コマンド実行時に操作履歴をログに出力

L/B:ロード・バランサ

エンドユーザー 監査者

システム管理者 HiRDBの監査証跡で,アプリケーションのユーザー情報とのマッチングが可能

L/B Webサーバー

J2EEサーバー

Webサーバー

J2EEサーバーL/B

アプリケーション・サーバー 監査ログ

監査ログ

JP1/NETM/Audit - Manager[監査ログ管理サーバー]

操作履歴の確認

監査証跡でコンプライアンス強化を支援管理者がアプリケーション・サーバーに対して行った操作履歴を監査ログとして記録。またDB監査証跡連携により,アプリケーションの操作情報をHiRDBに記録できる

図5

 オープンバッチの強化は,現場のエンジニアの悩みに応えたものです。これまではシェルスクリプトを駆使するなど,相当な苦労を強いられていました。また,業務アプリケーション以外にも運用面での作り込みも多いことが課題でした。だから,オンラインはオープン系に移行したがバッチはメインフレームに残す,というケースがあったのです。しかし全体最適なSOAを考えたとき,バッチはそのままというわけにはいきません。バッチも統合対象となるサービス形態の一つなのです。 オープンバッチの強化では,既に多くのノウハウが蓄積されているメインフレームの手法を踏襲したいと考えました。JCLの使い勝手を目指したのです。オープンでやるからといって,新たな開

発手法を覚えるのでは現場の苦労が多いからです。一時ファイルやスプールなど,バッチ処理の構築を支える基盤製品を提供することが今回の狙いです。ジョブ管理を担うJP1/AJS2など,技術や製品を組み合わせてはじめて,“メインフレーム並み”が実現できました。 (談)

恒川 正浩氏日立製作所ソフトウェア事業部 企画本部 計画部主任技師

メインフレーム並みのバッチ処理を実現

vol.41|Open Middleware Report 13

SOAは今,全体最適を目指す

特集

スクに書き込む。バッチ処理中のデータ操作はメモリー中で完結し,ディスクへのI/Oが発生しないのでバッチ処理の高速化が見込める。

管理者の動きをログに残す

 オンライン基盤の強化は大きく三つある。まず,オープンソースの開発ツール「Eclipse」向けのプラグイン・スイート「MyEclipse」の日本語版を提供する。これを利用することで,開発環境を素早く,かつ標準化して整えることができる。 次に,「各種パラメータの移行」を支援する機能を加えた。テストが完了したシステムを本番環境に移行させる際,テスト環境のパラメータをエクスポートし,本番環境にインポートできるようにした。移行対象となるパラメータは,JavaVMにおけるヒープサイズや,APサーバーの各種パラメータ

(同時実行スレッド数や多重度,タイムアウト値など)である。テスト環境のチューニング済みパラメータをその

まま持って行くことで,“きちんと動く”本番環境が手早く構築できる。 三つ目は,コンプライアンス強化を支援する機能の提供である。2008年の日本版SOX法の適用をにらみ,システム管理者の操作内容をトレースできるようにした(図5)。具体的には,管理者がAPサーバーを操作した事象を監査ログとして記録に残す。ログの収集や管理は,「JP1/NETM/Audit-Manager」が行う。また,HiRDBのDB監査証跡機能と組み合わせることで,アプリケーションのユーザー情報とDBの監査ログがマッチングでき,誰がどのデータにアクセスしたか追跡しやすくなる。

データベースの改ざんを防止

 最後に,ワークフロー機能とデータベース基盤の強化に触れる。 ワークフロー機能では,実業務に即した機能強化が施されている。まず,案件に対する「引き戻し」「差し戻し」

「トレイの共有」や,承認者の「代行指

定」といった,より複雑な業務モデルに対応した。 また,業務データベースとワークフロー・データベースの更新を1コミットで行えるようにした。業務とワークフローを厳密に同期することで,両者のステータスが食い違うようなことが防げる。この機能は,従来は単独サーバーとして稼働していたワークフロー機能を,APサーバー上で稼働するように変更することで実現した。 データベース基盤の主な強化点は,

「XML対応」と「改ざん防止機能の提供」である(図6)。 XML対応は,新たにデータ・タイプに「XMLタイプ」を設け,XMLデータをHiRDBに格納できるようにした。これにより,データ種類を意識しない横断的な検索が可能になる。改ざん防止機能の提供では,WORM(Write Once Read Many)表を新たにサポートした。WORM表で指定したデータは,どのようなユーザーも更新や削除ができない。

(2)改ざん防止機能WORM(Write Once Read Many)表により,全ユーザーの更新・削除操作を禁止できる

Cosminexus

改ざん防止機能データの改ざん

RDB

XML

クラッカなど

発注システム

Webシステム

基幹システム

基幹データ

(1)XML対応XMLデータの格納を可能にし,データ種類を意識しない検索が可能に

発注伝票

(XML)

NETWORK

データベースの柔軟性・信頼性を向上HiRDBを機能強化し,新たに「XMLタイプ」のデータを格納できるようにした。また,改ざん防止機能を備え,データの更新・削除操作を禁止できる

図6

協力 日立製作所 ソフトウェア事業部 http://www.cosminexus.com/P3〜P13は「日経SYSTEMS」2007年7月号掲載

14 Open Middleware Report|vol.41

HITACHI Open Middleware World

注目を浴びるSOA実践

既存または新規開発のソフトウェアを機能としてサービス化し、それを相互連携させることで柔軟なビジネスプロセスの実行環境を作り上げるシステム構築手法であるSOA(Service-Oriented Architecture=サービス指向アーキテクチャ)。そのSOAが注目されてから数年が経過し、いよいよ本格的な実践のフェーズに突入したと言われている。今回の「短期間で実現する 実践!SOAセミナー」では、そうしたSOAによるシステム構築に取り組んだ企業が直面した課題や解決策とともに、日立が提供するコンサルティングとソリューション、ミドルウェアが幅広く紹介された。セミナーの冒頭では、株式会社日

立製作所 ソフトウェア事業部 事業部

長の中村孝男が挨拶に登壇した。中村は市場ニーズの変化、経営環境のグローバル化、コンプライアンス関連法規の整備など、日々多様化する企業を取り巻く環境の変化を解説し、このような状況で企業がさらに発展していくには、環境の変化に応じてビジネス戦略を具体化するITシステムを素早く、柔軟に構築することが求められると述べた。また中村は、その解決方法としてSOAが注目されている状況に触れ、「日立製作所は、さまざまなシステム構築経験を長年SIerとして蓄積しています。SOAベースのシステムを構築するための製品群、経験を通じて培ったノウハウを全体最適システム開発のための羅針盤として提供し、効率的な開発手法をお客さまに提案します」とSOAに対する日立の取り組みを語った。

各セッションでは事例を中心に解説

続くセッションでは、株式会社日立コンサルティング マネージングディレクター 樋野匡利氏が登壇。「組織の継続的発展を実現する情報システムを目指して」と題し、SOAによる継続的に発展するシステム構築を実現するために、SOAへの疑問や課題に対する解決のアプローチについて、ソリューション事例とともに紹介した(詳細は16ページを参照)。次に、株式会社日立製作所 ソフトウェア事業部 先端情報システム研究開発部 主管技師、田坂光伸が講演。サービス構築やサービス統合の多様な形態への適用、多様なシステムパターンの理解、段階的なシステムの刷新に対する解決のアプローチなど、SOAによるシステム構築のノウハウを解説した(詳細は17ページを参照)。続いて、株式会社日立製作所 ソフトウェア事業部 第1ネットワークソフト設計部 主任技師 吉村誠が、個別の課題解決にSOAを適用するための段階的なシステム最適化の4つのパターンについて、ローン仮審査作業によるデモを交えながら紹介した(詳細は18ページを参照)。最後に、野村證券のローン案件管

理システムの構築に携わった株式会社日立コンサルティング テクニカル

短期間で実現する 実践! SOA セミナー開催2007年7月4日、株式会社日立製作所 日立大森第二別館において「短期間で実現する 実践! SOAセミナー」が開催された。セミナー当日は、企業のIT部門の実務者や管理者、SIベンダー各社の担当者など、120名あまりの参加者がセミナーやデモの説明に熱心に耳を傾けていた。

vol.41|Open Middleware Report 15

A セミナー開催

ディレクター 勝瑞雅也氏が実際の構築事例を紹介。従来の証券業務と法令も管理体系も異なり、業務フローが複雑だったローン案件管理システム基盤について、コンプライアンスの遵守、作業効率の向上、担当部署間の情報共有、業務拡張への対応などの導入効果をいかに実現し、業務プロセスを最適化したか、具体的なシステム構築の手法について解説した。

展示コーナーでSOAを体感

セミナー会場に隣接した展示コーナーには8つのブースと相談コーナーが設けられ、SOAによる段階的システム刷新を支える4つのシステムパターンを実現する日立オープンミドルウェア製品のデモと製品機能の説明が行われた。「インタフェース統合」「対話ワークフロー」「イベント駆動」「ワンストップサービス」という段階的なシ

ステム刷新のパターンを用意する統合システム構築基盤「Cosminexus」では、経費申請業務を例とした対話ワークフローの例を紹介。また、従来の帳票イメージを再現し、エントリ業務のWeb化を支援する電子フォームシステム「EUR Form」では、帳票入力したデータをデータベースに格納する報告書登録のデモが行われた。このほか、ユーザーが操作する業務と関連するサービスをメニューとして表示する新機能「スマートナビゲーション」を搭載したポータル構築基盤「uCosminexus Portal Framework」、アクセス制御や版管理、全文検索機能を備えた文書管理基盤「DocumentBroker」、信頼性の高いシステム運用と業務の自動化を実現する統合システム運用管理「JP1」、メインフレームのノウハウを活用したオープン環境向けのバッチジョブ実行基盤「uCosminexus Batch JobExecution Server」、ビジュアルな開発環境を提供するデータ統合のための情

報資産管理基盤「DataStage」などの製品が展示され、参加者の注目を集めていた。

株式会社日立製作所ソフトウェア事業部事業部長

中村 孝男Takao Nakamura

株式会社日立コンサルティングマネージングディレクター

樋野 匡利 氏Tadatoshi Hino

株式会社日立製作所先端情報システム研究開発部主管技師

田坂 光伸Mitsunobu Tasaka

株式会社日立コンサルティングテクニカルディレクター

勝瑞 雅也 氏Masaya Shouzui

株式会社日立製作所ソフトウェア事業部第1ネットワークソフト設計部主任技師

吉村 誠Makoto Yoshimura

OMR

16 Open Middleware Report|vol.41

HITACHI Open Middleware World

導入が本格化するSOA

企業のIT担当者の中では、システム構築の新しい手法としてのSOAはすでに認知が進んでおり、導入を検討している企業もかなりの数に上るだろう。このような状況をもとに、株式会

社日立コンサルティング マネージングディレクター 樋野匡利氏は、まもなくSOAの導入が本格化するだろうと予測する。その理由として、各ベンダーが自社の製品やソリューションを積極的にSOAに対応させている動きや、SOAを導入した成功事例が増えて具体的な導入効果も現れてきたこと、そして既存システムとの親和性の高さを挙げている。「SOAは言葉としては新しいもの

ですが、“モジュール化”“コンポーネント化”といったオブジェクト指向の開発方法論は従来から続いており、SOAはその延長線上にあるものです」(樋野氏)SOAを取り入れたシステムでは、

業務プロセスはビジネスの変化に応じてサービスを入れ替え、場合によって外部のサービスを積極的に活用する。つまり、システムを「作る」のではく「組み合わせて使う」時代になると、樋野氏は将来像を描く。

SOA・成功へのアプローチ

ところが、こうしたSOA時代が予見されるものの、いまだにSOA全盛とは言い難いのが実状だ。樋野氏によると、SOAが有効であることは理解されているが、実践段階になると多くの疑問があるからだという。「SOAでは、すでに稼働している

システムを利用します。しかしそのためには、どのように移行するか示さなければなりません。また、システム設計についての手順や方法論が明確でありません。SOAは変化多様性があっても、システム構築後の変化に対応するにはどうすればよいのかという課題もあります」(樋野氏)これらの課題に対し、

樋野氏は解決するためのアプローチを提示する。現行システムからの移行という課題に対しては、

既存システムの強みと変えるべき点を整理することが大事だという。その中から強みの部分を残し、新しい要件で強化すべき部分を開発するという方法が既存システムからSOAに移行する方法として最もふさわしいという。日立コンサルティングでも、「作らない開発」というコンセプトで、既存システムの強みを生かすソリューションを提供している。SOAシステムの設計や構築の進め

方については、クイックスタートによるアプローチが有効だという。クイックスタートは、現状の課題に的を絞り、それをSOAで解決することから着手しようというもの。それを段階的に拡張し、最終的に業務プロセス全体の最適化を実現するというアプローチだ。一方、全体の業務、アーキテクチ

ャ、データの分析を行ってSOAに標準化するエンタープライズ視点のアプローチもある。これは時間がかかるものの、新しく開発したシステム基盤は変化の多様性が向上し、運用コストの低減が期待できるという。システム構築後の変化への対応で

は、ビジネスとともにシステムを継続的に成長させることが必須だ。そのためにはシステムを評価、改善するプロセスをきちんと維持していくことが大切になる、と樋野氏はSOA導入のポイントを語った。

SOA成功に向けて――システム設計の方法論日立グループ全体のコンサルティング機能を担う企業として2006年4月に発足した株式会社日立コンサルティングは、SOAを積極的に推進し、実際に導入した事例を豊富に持っている。同社のマネージングディレクター 樋野匡利氏がSOAの動向、およびSOAを実現するためのアプローチについて解説した。

樋野 匡利 氏Tadatoshi Hino

株式会社日立コンサルティングマネージングディレクター

SOAシステム設計・2つのアプローチSOAシステムの設計、構築はどう進めればよいのか?

○個別の課題をポイントソリューションで解決することから着手○段階的拡張により、全体の業務プロセス最適化を実現

○個別課題を早期解決。短期的プロジェクトの繰り返しにより、 全体としての最適化を達成

○サービスのワンストップ化、提携業務フローの自動化、等

○全社レベルの業務、アーキテクチャ、データを分析、標準化し、 業務とITが一体となった経営変化に強いサービス基盤を実現

○業務設計やITの標準化作業に時間がかかるが、 サービス基盤導入後の効果(変化即応性向上、TCOの削減等)が期待される

○地域情報プラットフォーム、業務改革との連動、等

目 的

特 徴

適用例

目 的

特 徴

適用例

● SOAクイックスタート・アプローチ

● エンタープライズ・アプローチ

OMR

vol.41|Open Middleware Report 17

業務プロセス改革が課題

現在の情報システムでは、個別システムの整備は進んでいるものの、それらを連携させる業務(業務プロセス)が適切にシステム化されていないことが課題である。業務プロセスのビジネスニーズに最適なシステム化、あるいはビジネス変化に即応したシステム改修の実現が大きな課題になっているのだ。日立では、こうした課題を解決するためのシステム構築の考え方がSOA(Service Oriented Architecture )だと考えている。しかし、その考え方に沿って、システム構築を実践するには、多様なサービス統合の形態、サービス構築の形態に適用しなければならない。サービス統合の形態としては、

業務プロセスに沿った統合に加え、インタフェースや情報の統合が不可欠になる。田坂は、この問題について次のように解説する。「人的作業が多く業務プロセスが

非効率な場合、既存システムをサービス化し、それらを組み合わせることにより、業務プロセスのワンストップ化、自動化を実現し、効率化を図ることができます。しかし、情報システム全体を見ると、それだけでは不十分です。複数システムのユーザインタフェースを1つの画面に統合したり、マスタデータなど情報を適切に統合した上で既存システムにデータを供給する必要があります」だが、全面的な改修を一度に行う

ことは設計難易度やリスクが高い。開発期間も長期化して効果が出るまでに時間がかかってしまう。そのために必要なアプローチが、段階的なシステム最適化だ。「現行システム

を活用しながら業務プロセスのシステム化、あるいは新規システムの追加、現行システムの変化・刷新など、優先的な課題から着手して、段階的に拡張していくことが必要です。これにより、効果を早期に創出するとともにコスト・時間を最適化し、導入リスクも低減できるのです」(田坂)

段階的なシステム最適化への実践的アプローチSOAは、既存システムを活用して、情報システムを最適化するために有効だと期待されている。続いて株式会社日立製作所 ソフトウェア事業部 先端情報システム研究開発部主管技師 田坂光伸が、SOAに基づいたシステム構築の実践における課題と日立が考える解決策、および、その中心となる段階的なシステム最適化の考え方を紹介した。

田坂 光伸Mitsunobu Tasaka

株式会社日立製作所 ソフトウェア事業部先端情報システム研究開発部 主管技師

SOA実践における課題と解決指針

❶ 多様なサービス統合・構築形態への適用

○1人の作業者が複数業務を担当。複数のシステムUIを別々に起動するため非効率○業務間を繋ぐ業務プロセスが非効率 複数システムを個別に使用したり、人的判断不要なのに人手で連携○業務プロセスを通じて参照されるマスタデータの整合性確保が課題

課  題

○作業者の担当業務に合わせて、システムUIを1つの画面に統合する○既存システムを組み合わせて、業務プロセスのワンストップ化・自動化を実現する○マスタを統合し、既存システムへのデータ供給を実現

解決指針

❷ 段階的なシステム最適化

○全体最適なシステムへの全面更改は、設計難易度が高く、 リスク(費用・業務移行等)も大きい○開発期間が長期化し、効果がでるまで時間がかかる

課  題

○現行システムを活用しながら、業務プロセスのシステム化、 新規システムの追加、現行システムの変更・刷新などを段階的に実施○段階的な移行で、効果を早期に創出し、かつ、コスト・時間を最適化(導入リスクを低減)○ゴールとなる情報システムアーキテクチャも、段階的に見直して最適化していく

解決指針

OMR

システム構築ノウハウを提供

これまで述べてきたように、多様なサービス統合形態の最適な組合せ、および段階的な最適化を迅速に実現するためには、システムの生産性と拡張性が不可欠である。また、統合したシステムの運用性の確保が併せて重要になる。「日立は、統合システム構築基盤

製品『Cosminexus』において、基盤製品技術に加えて、システム設計ガイドラインとして『リファレンスアーキテクチャ』『適用ガイド』を提供しています。これらは日立のシステム構築ノウハウを体系化したもので、お客さまが直面する課題に応じたシステムパターンを定義しており、システム設計を効率化することができます。また、複数のシステムパターンを

組み合わせることで、段階的なシステム最適化を実践できます。このように、Cosminexusを、生産性、拡張性、運用性の向上をもたらすトータルなシステム構築基盤として提供しています」(田坂)日立ではこのように、顧客のシス

テム最適化を促進するため、今後もソリューションを提供していく。

18 Open Middleware Report|vol.41

HITACHI Open Middleware World

SOAをすぐに実践できるパターンを提供

SOAは本来、全体最適化した統合システムを構築することが望ましいが、情報システムを全面的に刷新するには、手間やコストがかかるだけでなく、リスクを伴うという課題がある。そこで日立では、情報システムをSOAへと全面改修するのではなく、個別の課題解決にSOAを適用するアプローチを推奨している。それを実現するために、まずは段階的なシステム最適化のための「インタフェース統合パターン」「対話ワークフローパターン」「ビジネスプロセス自動化パターン」「ワンストップサービスパターン」という4つのシステムパターンを用意している。

①インタフェース統合パターンインタフェース統合パターンとは、業務を実施する入力ミスをなくし、オペレータの作業効率を向上させる効果を狙うものだ。入力ミスは、業

務が煩雑で手作業が多い場合に発生しがちであり、発生すると業務効率を悪化させ、顧客へのサービス低下につながることもある。こうした入力ミスの発生原因を分析してみると、ある業務を行った画面の表示内容を次の業務に渡すことができず、コピー&ペーストや再度手入力を行って業務を連携させているケースが非常に多い。そうした際に有効なのが、フロントでデータ連携を実現するインタフェース統合パターンである。

②対話ワークフローパターン対話ワークフローパターンは、人

と人との業務の流れがルール化されていないという課題を解決するものだ。例えば、帳票を作成して承認者に回覧していたり、部署間の連携を紙ベースの印刷物で行っていたり、あるいはシステム化されているもののファイル転送を手作業で行うといったことが少なくない。そうした業務に対し、きちんと業務の流れをルール化し、ワークフローシステムを構築することが解決策となる。日立が提案する対話ワークフローパターンは、現行の帳票イメージをそのままワークフロー化できるため、新た

段階的なシステム最適化のための4つのシステムパターン段階的なシステム最適化を実現するために、日立では4つのシステムパターンを用意している。日立製作所ソフトウェア事業部 第1ネットワークソフト設計部 主任技師、吉村誠のセッションでは、製品のデモンストレーションを交えながら、これらの新しいシステムパターンを紹介した。

吉村 誠Makoto Yoshimura

株式会社日立製作所 ソフトウェア事業部第1ネットワークソフト設計部 主任技師

図1◎インタフェースを統合し、効率的にデータを連携

①勤怠管理画面から右クリック

ワンタッチ・ワンストップでデータも連携

関連するサービスの起動メニューを表示

出張日と出張先など旅費システムのデータを自動で取り込み起動

vol.41|Open Middleware Report 19

にユーザー教育を行うなどの手間は発生しない。

③ビジネスプロセス自動化パターンビジネスプロセス自動化パターン

は、あるシステムから別のシステムへのデータ連携が自動化されていない場合に、既存システムをほとんど改修することなく、システムの処理結果を別のシステムに渡す仕組みを用意するもの。具体的には、システムのイベント監視を行い、プロセス連携を実現している。

④ワンストップサービスパターンワンストップサービスパターンは、インタフェース統合パターンのようにフロントでデータ連携をするのではなく、バックエンドのシステムでデータ連携したいというニーズに応えるもの。業務が複雑で非常に時間がかかっていたり、複数のシステムにアクセスしながら業務を行っていたりするような業務課題や、複数のシステムを連携するための改修が困難だというシステム課題を解決する。

実際の適用例をデモで紹介

これらの4つのパターンを組み合わせることで、実際にどのようなSOAによるシステムを構築することができるだろうか。吉村はまず、インタフェース統合と対話型ワークフローを組み合わせて、出張旅費を清算・申請するという業務に適用する例を紹介した。

ある企業では、勤怠システムから旅費を精算しようとした場合、ブラウザの「お気に入り」から旅費精算システムのページを開き、データエントリーを行っている。このため、使用するシステムを探すのに時間がかかったり、同じ情報を別のシステムにデータエントリーしたりなど、決して効率的とは言えないシステムだった。ここにインタフェース統合パターンを適用することで、画面の表示内容を次のシステムに自動的に移すことが可能になった。右クリックをすると次の想定される業務のメニューが表示され、必要な項目を選択すると、次の画面に元の画面のデータが自動的に引き渡されるという仕組みだ(図1)。また、従来は旅費精算を行うため

に、紙に印刷して審査・承認の業務を行っていた。そのためやりとりが非効率的であり、業務の進捗管理が難しい。また、処理の途中で組織変更や人事異動があっても、追跡することが困難だった。対話型ワークフローパターンを適

用すると、現行のWordやExcelを利用した帳票がそのまま流れていくイメージでワークフローを構築することができる。ワークフローレポート機能により、承認が完了していない仕掛中の案件を集計してレポーティングすることも可能だ。次に吉村は、ビジネスプロセス自

動化とワンストップサービスの2つを組み合わせた例として、ローン仮審査作業に適用したデモを紹介した。

ある銀行では、住宅ローンの審査のために、顧客の情報を入力して本店にデータを渡し、データとして受け取った審査担当者がローン審査を受け付けて信用情報を検索し、ローン審査支援システムで借入可能額や返済プランの結果を返送するという流れで業務を行っている。しかし、この業務はシステムが接続されていないため、多くの手作業が発生して時間がかかるばかりか、入力ミスも頻発するという問題点があった。その解決策としてビジネスプロセ

ス自動化とワンストップサービスを適用した。ローン審査受付や信用情報検索などの既存のシステムを変更せず、データが渡ったというイベントを確認してビジネスプロセスを自動的に動かす仕組みだけを新たに作成した。つまり、それぞれの既存システムの情報をプロセス統合で取得する仕組みを作ったのである。これをローン審査応答サービスという新しいプロセスの中に組み込み、業務として完成させた。これにより、審査業務が自動化され、審査担当者の負担が軽減されたほか、入力してからわずかな時間で審査結果の回答が受け取れるという効果を得ることができる(図2)。日立では、これら4つのパターンとともに、SOAを実現する統合システム構築基盤「Cosminexus」やSIノウハウを生かしたガイドを提供することで、企業が抱える課題を解決するシステム構築に役立てたいと考えている。 OMR

図2◎ビジネスプロセスの自動化とワンストップサービスの適用○ファイル更新のイベントを契機に自動実行 ○システム間連携を自動化

×××支店

住宅ローン利用者

銀行窓口担当者

借入金 …期 間 …金 利 …名 前 …住 所 …年 齢 …勤務先 …年 収 …

JP1/AJS2

審査依頼情報

ローン審査受付システム(既存)

信用情報検索システム(既存)

ローン審査支援システム(既存)

ローン審査応答サービス(新規)

×××銀行 リアルタイムにメールで返信

仮審査依頼

プロセス統合

情報取得 審  査 応  答情報取得

データ入力

20 Open Middleware Report|vol.41

Product ReviewProduct Review

SOAを実現するポータルの新機能

 企業には、さまざまな業務アプリケーションが散在し、膨大な量のコンテンツがあふれている。従業員は、そうした多くのアプリケーションを用途に応じて使い分け、組み合わせながら日常の業務を行っている。しかし最近では、あまりにもコンテンツが多いために重要な情報が埋没したり、アプリケーションが異なるために無駄な操作や入力ミスが発生したりといった「IT化の弊害」が目立つようになってきた。 こうした課題の解決策として再び脚光を浴びているのが、企業情報ポータルである。これまでのポータルは、メールやファイル共有などコミュニケーションを中心とした社員の共同作業を支援する機能、業務アプリケーションを起動するためのショートカット機能を中心に運用されていた。しかし、企業システムがSOAの技術を採用し、業務プロセスを連携するサービスとして提供されつつある現在、ポータルには利用者視点から業務の生産性を向上させる役割が期待されている。  日立 の 企 業 情 報 ポ ータル 基 盤

「uCosminexus Portal Framework」

に搭載された「スマートナビゲーション」は、まさにそうしたSOAによる業務プロセス連 携を実 現する新 機 能だ。また、Web 2.0のキーワードとして注目され、複数のサービスを組み合わせて新しいサービスを作り上げるという意味の「マッシュアップ」を具現化する機能ともいえる。

関連業務を即座に実行

 スマートナビゲーションは、既存システムやインターネット上のサービスを連携させるためのメニューを表示し、利用者が必要に応じてワンタッチで起動できるようにするものだ。ある業務に関連するアプリケーションを実行したり、あるキーワードに関連する情報を検索したりなど、さまざまな用途に利用できる。  例えば、ある日のスケジュールに

「打ち合わせ」があったとしよう。打ち合わせを行うとき、どのような作業を行うだろうか。打ち合わせ資料を用意しなければならないなら、CRMシステムから顧 客 情 報を調 べておくとともに、打ち合わせに必要な関連情報をイントラネット上のWikiやナレッジベースで検索したり、インターネットの情報サイトを利用しながら資料を仕上げる

だろう。また、顧客先へ出向いて打ち合わせする場合は、場所と経路をあらかじめ調べることもあるだろう。 こうした一連の作業をいつも実行しているのにもかかわらず、通常はそれぞれを別々の画面から行っているため、効率が非常に悪い。それがスマートナビゲーションを利用すると、スケジュールの「打ち合わせ」を右クリックしただけで地図情報サービスや経路検索サービスを実行したり、CRMシステムから顧客情報を参照したり、旅費精算システムを起動したりできるメニューが表示される。つまり、今の業務に関連するサービスを即座に利用できるわけだ(図)。

導入はプログラミングレスでOK

 スマートナビゲーションが特に優れているのは、こうした仕組みを既存システムに一切手を加えることなく構築できるという点である。導入するには、ポータルサイトにサービスを連携するための呼び出し定義と、右クリックした際に表示されるメニュー定義を行うだけ。特別なプログラミングは、一切必要ない。

uCosminexus Portal Frameworkの新機能スマートナビゲーションWeb 2 .0時代という言葉もだいぶ定着してきた。新しいWebテクノロジーが注目される中、日立の企業情報ポータル基盤「uCosminexus Po r ta l Framework」が大きな進化を遂げた。同製品に搭載された「スマートナビゲーション」は、インターネット/イントラネットのさまざまなサービスをワンストップで利用可能にする便利な新機能だ。

「スマートナビゲーション」を活用することで、ポータルサイトが「仕事の入口」として活きてくる。

さまざまなサービスをマッシュアップする新しいポータルの姿

Product Review

vol.41|Open Middleware Report 21

Product Review

 SOAを実現するというだけあって、起動したサービスにデータが引き継がれるのも、スマートナビゲーションの特長だ。 例えば、前述の「打ち合わせ」から、打ち合わせ場所までの経路を調べる場合、わざわざ経路検索サービスで乗車駅と降車駅を指定することはない。会社の最寄り駅、打ち合わせ場所の最寄り駅が自動的に入力され、検索結果がすぐに表示される。こうしたデータ連携は、Webベースで開発された社内の業務アプリケーションに限らず、インターネット上のサービスでも利用できる。 また、ユーザIDが異なるシステムへのログインはもちろん、クッキー認証やプロキシー認証にも対応しているので、複数のシステムへのログイン操作に煩わされる必要もない。

Webページを自由自在に切り抜く

 スマートナビゲーションのほかにも、SOAを実現するとともにサービスをマッシュアップするという機能がある。それが「クリッピング機能」だ。 クリッピング機能は、既存システムの膨大なコンテンツの中から価値の高い情報のみを集約・表示する機能。Webベースで構築された業務アプリケーションやグループウェア、インターネット上で提供されているさまざまなサービスを構成する画面のうち、業務に必要な画面部分を切り抜き、ポータル上に表示する。これこそが、業務に利用するアプリケーションで統一した操作性を提供するSOAのインタフェース統合を実現する機能と言えるだろう。

 クリッピング機能の最大の特長は、既存のWebページの一部分を簡単にポートレット化できるという点だ。UIもそのまま引き継がれるため、操作性を習得する必要もない。 uCosminexus Portal Frameworkではこれまでにも、「Yahoo! JAPAN」が提供するニュース、株価などの企業ポータルに欠かせない約40種類のコンテンツを利 用できる「uCosminexus Portal Framework for My Yahoo! Business Edition」を用意している。 uCosminexus Portal Frameworkは、このように鮮度の高い外部の情報をポータルに取り込む機能を利用することで、SOAを実現する理想的な企業情報ポータルが構築できる。Web2.0時代のポータルとして、申し分ない機能を備えていると言えるだろう。 OMR

新機能「スマートナビゲーション」の快適インタフェース●ユーザが操作している業務と関連するサービスのメニューをワンタッチで表示●サービスへのデータ連動は自動で行い、ワンストップでサービスを利用可能

日付・出張先

顧客名

キーワード

連携データ:日付、目的、場所

○その他サービス例 ・ 天気予報サービス ・ 地図サービス ・ 宿泊予約サービス ・ 勤怠サービス 等

サービス呼び出しの例

旅費精算システム

○システムごとのログイン、データ入力など、 煩雑な操作から解放○散在するシステムを意識せず、 1つのシステムのように ワンストップでサービスを利用可能

経路検索サービス

出張先へのアクセスを知りたい

顧客情報(CRM)

顧客情報を押さえたい

辞書、Wikiブログ

キーワードを検索したい

出張旅費申請をしたい

スケジュールから出張日と出張先などのデータを取り込み、旅費精算を起動

例えば、スケジュールの「打ち合わせ」を右クリックして、サービスの起動メニューを表示

アイディア次第で広がる世界へ

22 Open Middleware Report|vol.41

女性の出産・育児をサポートするコミュニティサイト「Pigeon.Info」

育児・マタニティ用品から介護用品まで、バラエティ豊かな商品を提供するピジョン。「基礎研究に裏打ちされた高品質な商品群で、育児生活の多くをサポートできることが当社の強みです。また保育園の受託運営などの子育て支援事業や、中国・北米を中心とした海外事業も業績を伸ばしています」と北川氏は説明する。その一方、介護・予防介護などのヘルスケア事業にも30年以上前から進出し、快適で健康な生活を応援する商品やサービスを提供している。現代のビジネスにおいては、ITを利用した

サービスは欠かせない。同社でも2002年5月に、出産や育児を支援するサイト「Pigeon.Info」を開設。「外に出ることが難しい妊娠中や育児中の女性にとって、ネットはまさに最適のメディア。当社でも商品をご購入頂いたお客さまをサポートするサイトとして、Pigeon.Infoを開設しました」と山岡氏は語る。Pegion.Infoには同社の商品情報に加え、

会員同士の情報交換を支援する電子掲示板機能なども用意。月間1,500万以上のページビューを誇る人気ベビーサイトへと成長した。

会員が最初にアクセスする「ポータルサイト」への転換

しかし、運営を行っていく中ではさまざまな苦労もあったという。「出産時期は生活環境が大きく変わるタイミングだけに、他業種の企業もこの時期を狙っています。また業界内での競争も厳しく、サイトのリニューアル競争を繰り返していました」と山岡氏は振り返る。しかも、同社のネット戦略に大きな影響を及ぼす動きも生じていた。2004年頃を境に、大手ECサイトなどでベビー用品の売り上げが急速に拡大したのだ。「かつてはお客さまサポートを主な目的としてサイトを運営してきましたが、ネットが普及したこの数年でお客さまの購買行動は大きく変わりました。この変化を経験し、今後は先を見据えたサイト戦略が必要だと痛感しました」(山岡氏)。以前はサイトのリニューアルを行う場合も、どんな機能を提供するかに主眼を置いていた。他のサイトよりも優れた機能があれば、ユーザーの支持を得られると考えたのだ。とは言え機能競争をしている限りは、他社との抜本的な差異化は図れない。そこで、二つのポイントに目を付けた。一つはポータルサイトへの転換、もう一つはWeb2.0系サービスの導入である。

ピジョン株式会社(以下、ピジョン)では、コミュニティサイト「Pigeon.Info」のリニューアルを実施した。新サイトではSNSやブログ機能を追加するなど、Web2.0時代に対応した先進的なサービスを提供している。サイト構築にあたっては、ユーザーの生活と密着したポータルサイトへの転換が課題となった。そこで同社では、ヤフー株式会社(以下、ヤフー)が提供する「Yahoo!ポータルソリューション」を活用。同ソリューションには、日立のユニバーサル・アプリケーション・プラットフォーム「Cosminex

コズミネクサス

us」のポータル基盤「uCosminexuユ ー コ ズ ミ ネ ク サ ス

s Portal Framework」が採用されている。Yahoo! JAPANの豊富なコンテンツとポータルサイト構築のノウハウに加え、高い信頼性・柔軟性を備えたIT基盤を活かすことで、一歩進んだコミュニティサイトを実現している。

「uCosminexus Portal Framework」を基盤にした「Yahoo!ポータルソリューション」で顧客側に立った先進的なコミュニティサイトを実現

ポータルシステム ピジョン株式会社

C A S E S T U D Y

ピジョン株式会社マーケティング本部IT事業部チーフマネージャー山岡 貴浩氏

ピジョン株式会社マーケティング本部IT事業部IT戦略グループ笹田 昌樹氏

ピジョン株式会社経営企画本部IR・広報室北川 健二氏

vol.41|Open Middleware Report 23

「いくら機能を追加しても、既存のベビーサイトの枠組みで競争する限りは2番目、3番目にアクセスするサイトにしかなれない。しかしポータルサイトなら、会員の方 が々1番目にアクセスするサイトになれます。しかもPigeon. Infoは会員の方々の生活に密着したサイトですから、十分にお客さまのポータルサイトに成り得ると考えました」と山岡氏。そこで導入されたのが、ヤフーが提供する

「Yahoo!ポータルソリューション」であった。「当社にはベビーサイト構築のノウハウはありますが、ポータルサイトのノウハウはありません。完成度の高いサイトを創り上げるためには、この分野を牽引する企業であるヤフーのソリューションを利用するのが確実だと考えました」と山岡氏は採用理由を説明する。

Yahoo! JAPANの多彩なコンテンツとCosminexusの拡張性を評価

ヤフーと日立は企業向け基幹ポータルの分野で提携を結んでおり、Yahoo!ポータルソリューションを構成するサービス「My Yahoo!Business Edition」と「uCosminexus PortalFramework」を融合したポータルソリューションを提供している。このソリューションを利用すれば、Yahoo!

JAPANの多彩なコンテンツをサイトに組み込むことが可能になる。たとえばYahoo! JAPANのニュースや天気予報、路線検索などのコンテンツを、自社のポータル内で利用できるようになるのだ。また、uCosminexus Portal Frameworkの機能を活かすことで、他のシステムとの連携や画面のパーソナライゼーションも可能になる。「Pigeon.Infoの会員数は20万人以上にも上ります。まだまだ増大しますので、サービスの安定性や信頼性・拡張性にはかなり気を遣いました」と笹田氏は語る。今回のシステム構築は、日立グループの

日立INSソフトウェア株式会社が担当。数多くの導入実績を誇るCosminexusと日立グループのサポート力なら、こうした要求にもしっかりと応えることができた。

Web2.0型のサービスでコミュニティ機能をさらに強化

新しくなったPigeon.Infoは、2007年2月からスタート。先にも触れた通り、新Pigeon.Infoでは会員同士のコミュニケーションによってコンテンツが創り上げられるWeb 2.0型のサービスを提供している。「具体的にはSNSやブログのほか、会員の

体験などを盛り込んだ育児事典、クチコミ情報コーナー、悩み相談室など、サイトにお寄せ頂いた情報をベースとしてさまざまなコーナーを構成しています」と笹田氏は説明する。従来のようなメーカー主導ではなく、顧客側に立ったサイト作りを行うことで、コミュニティサイトとしての魅力をさらに高めているのだ。さらに、Yahoo! JAPANのIDを所有しているユーザーなら、Pigeon.Infoに表示されるYahoo! JAPANの各コンテンツの設定を、Yahoo! JAPAN IDと関連付けることも可能。また、ピジョンが配信する情報についても、会員の居住地や属性に応じて配信内容を変えるなど、きめ細かな運用が行われている。もっとも現在の状態が完成形ということではなく、今後もさまざまな改善を加えていくとのこと。「当社ではPigeon.Info以外にもショッピングサイトや子育て支援サイトなどを運営していますので、将来的にはこうしたサイト間の融合もさらに推進していきたい」と笹田氏は語る。「妊娠中や子育て中の女性にとって、ナンバーワンのサイトを目指します。そのためにもお客さまのニーズを、一つひとつ着実に具現化していきたい」と今後の抱負を語る山岡氏。Pigeon.Infoのさらなる進化を、ヤフーと日立が今後も支えていく。

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株式会社 日立製作所 ソフトウェア事業部 販売企画センタTEL.03-5471-2592 www.cosminexus.comお問い合わせ

●記載されている会社名、製品名は、それぞれの会社の商標もしくは登録商標です。

「Pigeon.Info」のシステム概要

uCosminexusPortal Framework

uCosminexusApplication Server

インターネット

ママサークル

投稿!みんなのクチコミ

ママヂエ悩み相談室

Yahoo! JAPAN IDとリンク

Yahoo! 路線探索

Pigeon.Info

My Yahoo! Business Editionサーバ

USER PROFILEピジョン株式会社www.pigeon.co.jp本  社 東京都中央区日本橋久松町4-4設  立 1957年8月資 本 金 51億9,959万円従業員数 963名(2007年1月末現在)日本を代表する総合ベビー用品メーカー。育児用品、マタニティ/女性ケア用品の製造販売のほか、介護用品事業や保育事業も行っている。赤ちゃん誕生記念育樹キャンペーンを21年にわたり実施するなど、CSR活動にも積極的に取り組んでいる。

PARTNER PROFILEヤフー株式会社www.yahoo.co.jp本  社 東京都港区六本木6-10-1

六本木ヒルズ森タワー設  立 1996年1月31日資 本 金 71億8,700万円(2007年3月31日現在)従業員数 2,331名(2007年3月31日現在)インターネットを利用した各種情報サービスのほか、ネット広告事業、イーコマース事業、会員サービス事業などを手がける。

日立INSソフトウェア株式会社www.hitachi-ins.com本  社 神奈川県横浜市西区みなとみらい2-3-3

クイーンズタワーB 25階設  立 1986年4月資 本 金 5億円従業員数 750名(2007年4月現在)Yahoo!ポータルソリューションの基盤製品やITソリューション・サービスの提供のほか、情報通信・公共・流通・金融等の業務システム構築などを手がける。

母乳育児を応援する哺乳びん「母乳実感」とおしりふき「おしりナップ 乳液タイプ」。

http://pigeon.infoユーザーごとに表示したいコンテンツを選択し、上下を入れ替える事ができる。

「日経コンピュータ」2007年6月11日号掲載

Coffee Breakコーヒーブレイク

スタッフ便りこんにちは! OMR40号のクイズはいかがでしたか?たくさんのご回答ありがとうございました。先日、 I編集長が断食道場に行ったのですが、お金を払っているのに食事が出ないなんて…!それでは今回号をお届けします!

第 2 回

 みなさまにアンケートやクイズの景品としてお渡しするのがノベルティ・グッズ。これがなかなか、手ごわいんです。ノベルティを作り続けて早7年。もう、ネタがない!! それでも悪戦苦闘、多少の遊び心も交えつつ、必死に作っているのですが…。営業 : 「この牛革のバインダーをOMR商事向けに、3個ちょうだい」私 : 「あ~これは今在庫がないので、牛革のキーケースはどうですか?」営業 : 「え~こんなのもらってうれしいかな~!?」私 : 「!!!!!」 ガーンと頭を除夜の鐘みたいに打たれたような衝撃。「(こんなのとは何事だーーー!)」と心の中で怒りつつも、次なるアイテムを考えはじめるのです…。

http://www.hitachi.co.jp/soft/magazine/皆様からの回答はアンケート終了後、Webで発表します!(匿名にて)

※前回のクイズの正解もWebで発表します。

「ノベルティな日々」

★★★Webでノベルティに関するご意見をお聞かせください!★★★「あなたが欲しいノベルティは何ですか?」素敵な回答・おもしろ回答・納得回答をお待ちしております。ノベルティとして採用された方、採用は難しいけど素敵・おもしろい回答の方に、うわさの「JP1オリジナル牛革キーケース」を差し上げます!アンケートと実益を兼ねたキャンペーンです、みなさん私を助けてください!!

回答はこちらから!

24 Open Middleware Report|vol.41

HITACHI Open Middleware

パートナーの声PARTNER's Voice

vol.41|Open Middleware Report 25

企業システムへのSOA適用を推進

 日立システムは、SOAによるシステム構築を2003年に開始し、すでに豊富な構築実績を持っている。同社では

「先 端 のWebテクノロジー(SOA、Web 2.0)を適用したシステム構築なら、日立システム」というブランドを確立することを目的として、2007年1月に 新しい 組 織を設 立した。そ れ が

「Webテクノロジービジネス推進センタ」である。 「Webテクノロジービジネス推進センタは、日立システムにおけるSOA、Web 2.0を適用したSI事業を推進するために作りました。最新Webテクノロジーの社内への啓蒙、実践のためのツールや技法の整備、サポートや教育体制の強化などをミッションとしています」と語るのは、同センタ長の笠松哲也氏だ。 Webテクノロジービジネス推進センタは、組織横断的にビジネスを推進する部門に所属しており、約30名のメンバーで活動している。 1月に発足した同センタでは、まずSOAを中心とした調査活動を実施。市 場 動 向や技 術 動 向、自社や競 合他社の取り組みを調査し、レポートにまとめたという。そのレポートによって導き出されたのは、今後はSOAを適用したモデルが広がっていくということだった。

 「企業システムには、必ず置き換えのタイミングがやってきますが、今後のシステム構築の最適解は間違いなくSOAです。今はどのベンダーもSOAの製品を提供し、他に選択肢はありません。ですから、社内の案件をセンタに集約し、SOAが適用できるものについては積極的に取り入れていくように支 援しています。日立システムはSIerですから、SOAについてきちんとキャッチアップできて、お客様にシステムを提供できないといけません。今のうちから先頭を走れるように取り組んでいます」(笠松氏)

Web 2.0も積極的に取り入れる

 Webテクノロジービジネス推進センタでは、SOAだけでなく、Web 2.0を企業システムに積極的に活用し始めている。現在は、ブログやSNSによって社内の体系化されていない情報を知識化したり、画面をAjaxによって記述してリッチクライアントを実現したりする取り組みが中心だという。 また、SOAとWeb 2.0との融合にも注目している。同センタ主任の大石貢司氏は、これらの関 連について、以下のように述べる。 「Web 2.0は、SOAのヒューマンアダプタと言われることもあるほど、SOAとの 親 和 性 が 高い 技 術で す。今後は、SOAによって社内システムとSaaSのような外部サービスを組み合

わせた業務プロセスを形成するなど、SOAとWeb 2.0を連携するような形になっていくでしょう」 このようにSOAとWeb 2.0の技術に取り組むセンタだが、今後は日立システムをSOA実践企業としてブランディングすべく、開発方法論を確立して社内展開する予定だ。また、日立製作所を中心としたパートナー各社との協業も推進するという。 「日立 の 統 合システム 構 築 基 盤Cosminexusは品質・性能面で安心感があります。Cosminexusとも連携し、SOA構築事例をつくっていきたいと考えています。つなぐ先の既存システムをいかにサービス化して基盤ミドルウェアにつないでいくか、既存システムとつなぐためにCosminexusが用意している各種アダプタを活用するなどして、モデルケースの創出に一緒に取り組んでいきたいですね」(笠松氏)

SOAとWebテクノロジーによるソリューションを提供するSIベンダーに聞く

株式会社日立システムアンドサービス(以下、日立システム)は、コンサルティングからシステムの設計・開発、保守・運用までのソリューションをワンストップで提供する日立グループの中核システムインテグレータだ。同社では、今後のシステム構築手法としてSOAやWeb 2.0技術に注目し、新しいSI事業に積極的に取り組んでいる。

株式会社日立システムアンドサービス株式会社日立システムアンドサービスWebテクノロジービジネス推進センタセンタ長

笠松 哲也 氏Tetsuya Kasamatsu

株式会社日立システムアンドサービスWebテクノロジービジネス推進センタ主任

大石 貢司 氏Koji Oishi

OMR

26 Open Middleware Report|vol.41

――インテックは、中堅中小企業ソリューションに強みをもつシステムインテグレータとうかがっています。滝澤 インテックは、1964年に富山で産声をあげ、地元の中堅中小企業のニーズにきめ細かく対応してきました。この積み重ねは、全国展開をするようになっても、大きな強みになっています。また、独立系システムインテグレータの立場を貫き、個別の案件ごとに最適なパートナーを選んで、お客さま本位のサービスを提供してきたことも誇りです。コンピュータの創世記から現在までを網羅していますから、メインフレームからJavaTMなどの最新技術まで、豊富な知識を持つ技術者を擁しています。中村 レガシーシステムから最新技術まで網羅しているというベースがあるからこそ、ERPパッケージを使ったレガシー・マイグレーションで先行しておられるわけですね。滝澤 中堅製造業をターゲットにしたソリューションとして、東洋ビジネスエンジニアリング株式会社(以下、東洋ビジネスエンジニアリング)の生産・販売・物流統合パッケージ「MCFram

エムシーフレーム

e」と、エス・エス・ジェイ株式会社の財務・会計パッケージ「SuperStre

スーパーストリーム

am」を組み合わせ、「基幹ソリューション」として展開しています。MCFrameはすでに30社以上へ導入し、昨年度から2期連続、2003年から数えると4回目の最優秀パートナー賞を受賞しています。製薬業界向け生産・販売・物流統合テンプレート「MCFrame/Pha

エムシーフレーム・ファーマ

rma」も、東洋ビジネスエンジニアリングと共同開発しました。一方、SuperStreamについては、100社以

上に導入し、5本の指に入るパートナーと評価されています。――特長が異なる2つのERPパッケージを「基幹ソリューション」として組み合わせて提供するねらいは何ですか。滝澤 原価低減の厳しい要求にさらされている日本の中堅製造業は、基幹システムを簡単に作り変えることはできません。特に、法改正などに次々に対応していかなければならない会計システムと、独自の作り込みが不可欠で長く使い込みたい工場のシステムは、あえて別にしておくほうが得策です。何が何でもすべてのシステムを統合しなければいけないという発想のERP製品と差別化するために、「疎結合でERPの機能を実現していくソリューション」を作り上げました。中村 日本の中堅製造業のニーズに対応してきたからこそ行き着いたソリューションということですね。

強力なワークフロー基盤を追加導入して内部統制対応を強化

中村 その「基幹ソリューション」を構成するもうひとつの要素として、日立の電子フォームワークフローを採用いただきました。滝澤 中堅製造業はいま、内部統制の強化が急務になっており、基幹システムには、各種承認処理を自動化し、処理履歴を残すことのできるワークフロー機能が求められています。ただし、システムごとに別のツールを使ってワークフローを構築していると、内部統制の基本

株式会社インテック(以下、インテック)は、ERP製品を組み合わせて中堅製造業向けに提供してきた「基幹ソリューション」に、ワークフロー基盤を追加で組み込み、内部統制を支援する機能をさらに強化した。エンタープライズレベルのシステム基盤を高い信頼性のもとに構築する製品として選んだのは、日立の電子フォームワークフローである。中堅企業のニーズをつぶさに知るインテックは、日立の電子フォームワークフローのどのような点を評価したのか、また、両社の協調関係はどのようなユーザーメリットにつながっていくのか、両社が語り合った。

株式会社 インテックHITACHI SPECIAL INTERVIEW

株式会社 インテックホールディングス取締役副社長事業企画・IR担当

滝澤 光樹こうじゅ

「基幹ソリューション」に日立の電子フォームワークフローを採用。内部統制を支援する機能をさらに強化

日立の電子フォームワークフローを採用したのは、製品の信頼性とサポート力を評価したからです。日立は、品質に対する考え方が真摯で、製品にも日立という企業にも信頼がおけると感じました。

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vol.41|Open Middleware Report 27

要件を満たすのが困難ですし、開発効率も悪い。使い勝手も煩雑になって、ユーザー企業のメリットになりません。そこで、基幹システム全体をカバーできる承認ワークフローという共通基盤を確立し、マスター変更履歴の管理から、受注・出荷・財務諸表のワークフローまで統一してこの基盤上で実現することにしました。こうしたエンタープライズレベルの運用ができ、複雑な作業や、頻繁に変更が発生する業務にも柔軟に対応できるワークフロー製品を探した結果、日立の電子フォームワークフローに行き着きました。表計算ソフトやワープロなどで作った既存の帳票を変換して、入力用の電子フォームをスピーディに作成できるのも魅力でした。中村 「基幹ソリューション」に組み込むということで、重視されたポイントは何でしょうか。滝澤 製品の信頼性とサポート力です。システムインテグレータの仕事は、システムを納品して終わりではなく、運用サポートを通じてお客さまと良い関係を作っていくことが重要です。信頼性に欠ける製品を使って納品後にトラブルが起きたりすれば、お客さまにとっても当社にとっても損失が大きい。その点、日立は品質に対する考え方が真摯で、製品にも日立という企業にも信頼がおけると感じました。中村 日立の電子フォームワークフローは、「品質、堅牢性、サポート」の3つをキーコンセプトにしているユニバーサル・アプリケーション・プラットフォーム「Cosminexu

コ ズ ミ ネ ク サ ス

s」をベースにしたソリューションですから、エンタープライズレ

ベルの基盤製品としてお使いいただけます。しかも、MCFrameやSuperStreamをはじめ、他システムと連携しやすい。起案・承認から、基幹システムや他システムとの連携まで、一連の業務としてシステム化できますから、さらなる内部統制の強化に貢献できます。

内部統制のみならずSOA展開でも深まるパートナーシップ

滝澤 「基幹ソリューション」は今後、さらに幅広いシステムとの連携を図っていかなければなりません。そこで間違いなく必要になってくるのが、既存システムを柔軟に統合できるSOA(サービス指向アーキテクチャ)です。中村 日立はちょうど、Cosminexusをベースにした「SOAクイックスタートモデル」の提供を開始したところです。Cosminexusは、システムやプロセス、インタフェース、情報などをすべて統合できますが、ここまでは他のベンダーにもできること。「SOAクイックスタートモデル」ではさらに、個別課題の解決パターンをモデル化しました。申請系業務などの対話型ワークフローからワンストップサービスまで、まずは小さく立ち上げて、全社規模のSOA基盤へと拡張できるモデルとなっています。滝澤 なるほど。今後は、Cosminexusのソリューション全体、さらには、日立の統合システム運用管理「JP1」などを含めて、日立のミドルウェア製品群を大いに活用しながら、ビジネスを一層拡大していきましょう。

中村 日本の中堅企業の方々に、競争力強化と内部統制に役立つソリューションを提供していくためにも、さらに連携を深めていきましょう。

株式会社 日立製作所ソフトウェア事業部事業部長中村 孝男

ERPと日立の電子フォームワークフローの組み合わせは、信頼性が高く変化にも強い基幹システムを、スピーディかつ低コストで構築するためのベストソリューションであると確信しています。

●Javaは、米国およびその他の国における米国Sun Microsystems, Inc.の商標または登録商標です。●その他記載されている会社名、製品名は、それぞれの会社の商標もしくは登録商標です。

お問い合わせ 株式会社 日立製作所 ソフトウェア事業部 販売企画センタTEL.03-5471-2592 www.cosminexus.com

「日経ソリューションビジネス」2007年7月30日号掲載