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.形態検査の意義 1.血液細胞の同定 1)形態検査 2)自動血球計数装置の解析 3)免疫学検査 4)機能的検査 5)染色体・遺伝子検査

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Ⅰ.形態検査の意義

1.血液細胞の同定

1)形態検査

2)自動血球計数装置の解析

3)免疫学検査

4)機能的検査

5)染色体・遺伝子検査

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ヒトの染色体

ヒト細胞には、遺伝情報の中枢としての 核(nucleus)がある。 核は 核膜に包まれ、内部に 核質がある。核質の大半は デオキシリボ核酸(deoxyribonucleic acid;DNA)と ヒストンなどの核タンパクとの複合体である 染色質(chromatin;クロマチン)からなる。 染色質はネットワーク状の構造をしているが、細胞が分裂するときに一定数の糸状構造となり、染色体(chromosome)として認められるようになる。1個の細胞の核には46の染色体がある。そのうち22対は男女にて共通で常染色体とよばれ、1から22番までの番号で表記される。対をなす染色体を相同染色体といい、父親と母親からそれぞれ1つずつを受け継いでいる。 残り2本の染色体は女性ではXX、男性ではXYという染色体で、性染色体とよばれる。 DNAに含まれる多くの遺伝子はタンパク質を合成する指令を出して遺伝情報を発現し同時に細胞の複製に際しては遺伝情報を複製して子孫の細胞に伝達していく。

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スーパーソレノイド

30nmクロマチン線維(ソレノイド)

ヌクレオソーム ヒストン

染色体

DNA

染色体の高次構造モデル

染色体の中には、DNAがタンパク質のヒストンに巻きつくように結合して ヌクレオソームの基本構造となり、規則的に折りたたまれて フィラメントを形成し、高次によじれてクロマチン線維となる。これがさらに巻いて ソレノイドとなり、もう一度まいて スーパーソレノイドとなって超凝縮して、これが顕微鏡で染色体として観察される。1個の細胞に含まれるDNAの長さは約1.5mで、これが一定の規則性をもって幾重にも折り重ねられて核に存在し、重要な遺伝情報を格納していることになる。DNAのなかには塩基でつながった遺伝子構造があり、これはmRNAに翻訳され、それをもとにしてタンパク質が生成され遺伝情報が発現される。 

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染色体の複製と分離

細胞は人間が成長するとともに数を増やし、機能を果たすとアポトーシスを起こし

死滅し、新しい細胞が絶えず補充されている。さらに子孫を増やすために生殖細

胞を増やしている。細胞は生命を維持するために、遺伝情報を複製、分配しなが

ら次世代の細胞へと伝わっていく。これは細胞周期のプロセスによっておこなわ

れる細胞分裂によって行われ、それには体細胞で行われる体細胞分裂と生殖細

胞で行われる減数分裂とがある。

細胞周期には、DNA合成を行う間期と、細胞分裂を行う有糸分裂期(M期)に分

かれる。間期は、DNA合成準備期(G1期)、DNA合成期(S期)、細胞分裂準備

期(G2期)からなる。

G1期にはRNAやタンパク質の合成とDNA複製のための準備が行われる。

細胞のDNA量をC値で表現すると、体細胞のDNA量は分裂前は2Cで、複製後

は4Cとなっている。減数分裂によってできる配偶子のDNA量は1Cである。

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体細胞分裂

1. 間期 (interphase)  分裂してできた細胞が合成や細胞成分を増やし次の分裂までの細胞分裂の準備を  行う時期である。 DNAが複製され、ミトコンドリア、リボソーム、中心小体な どの細胞  小器官が形成され、細胞分裂に必要なエネルギーが蓄積される。

2. 分裂前期 (prophase)  糸状のクロマチンが染色体として凝縮し始め、次第に太く短くなる。染色体の構成成分  は間期のうちに2倍になっており、それぞれの染色体は縦に裂けた2つのコピーとし  て観察され、この2本組の構造を姉妹染色体(sister chromatid)とよぶ。  中心小体は両極に分離し、紡錘糸が形成され、核膜は次第に消失する。

3. 分裂中期 (metaphase)  核膜が消失し、染色体は着糸点(動原体)を介して紡錘糸に結合する。染色体は最も  太く短くなり、細胞の赤道面上に配列するため、染色体検査の対象とすることができる。

4. 分裂後期 (anaphase)  染色体は染色分体として分離し、紡錘糸に引っ張られながら両極へ移動する。

5. 分裂終期 (telophase)  染色体が両極に分かれ、再び線維状になってクロマチンを形成する。  核膜が再形成され、細胞質が収縮して2個の娘細胞になる。

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 G1 期 : DNA合成の準備期         6~12時間 

 S  期 : DNAの合成期          6~8時間  

 G2 期 : 分裂の準備期          3~4時間  

 M 期 : 有糸分裂期 (染色体観察)

         1時間      G0 期 :  再活性期 (休止期)

        DNAの損傷をチェック S期

G2期

M期

G0期

G1期

細胞周期

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減数分裂

体細胞には相同染色体がそれぞれ2コピーあり、染色体の総数は2倍性 (diploid)とよび、2nと表現する。体細胞分裂では、分裂後の娘細胞も2nである。 これに対し、生殖細胞(配偶子)が形成される際には、分裂によって半数性(1倍体:haploid)すなわちn個の染色体をもつ細胞が形成されるため、これを減数分裂という。減数分裂には第一分裂と第二分裂の2回の分裂が起こり、n個の染色体を有する4個の細胞に分かれる。 1. 第一分裂  DNA量が倍加した相同染色体が並行に対合し、互いに接触して遺伝形質の部分 的な交換がおこる(交叉)。やがて相同染色体のそれぞれが紡錘糸によって両極 へ移動し、2個の娘細胞が形成される。この分裂では、体細胞分裂と異なって相 同染色体が2つに分かれるので染色体数はnと半減する。

2. 第二分裂  染色体が縦に分かれた染色体が紡錘糸によって両極へ移動し、2個の配偶子が つくられる。

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染色体の検査法

染色体検査にて染色体を観察するには分裂中期の細胞が必要であり、生体の組織細胞を 適切な条件で培養し、分裂増殖させた上で標本を作製(展開)する。 通常は、末梢血液中のリンパ球を3日間(約72時間)培養を行い染色標本を作成する。 細胞分裂が活発な組織(骨髄、精巣、胎盤絨毛など)では培養は行わず直接に標本を作製 してもよいが、良質な染色標本を得るには一昼夜以内の短期培養を行うことが多い。 広義の染色体検査法としては以下のものがある。

Ⅰ.分染法  1) G-分染法:各染色体の同定、異常の解析を行うためにタンパク分解酵素とギムザ染色   液を使用してバンドを表出する方法である。標本は半永久的保存となり最も普及している。  2) Q-分染法:各染色体の同定、異常の解析を行うためにアクリジン系蛍光色素のキナクリン   マスタード(quinacrine mustard;QM)を用いてバンドを検出する方法である。   前処理の必要がなく、染色体の形態も失われないため、分染法のなかでも最も安定した   標本づくりができる長所がある。 Ⅱ.FISH法 (fluorescent in situ hybridization;FISH)  in situ hybridization法とは、核酸プローブを用いて染色体上の遺伝とハイブリダイズし、染 色体上の遺伝子の局在を知る方法である。 FISH法はDNA hybridizationの概念を染色体DNAの解析に応用したもので、標的とする DNA断片の染色体における局在を蛍光色素で検出する方法である。 染色体や間期核上における標的DNA分子を蛍光シグナルとして検出することができ、従来 の染色体検査を補うものとして臨床検査に応用されている。

Memo

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ハーベスト処理 低張処理(0.075M KCl) カルノア固定 (酢酸1:3メタノール)

先天性疾患 造血器腫瘍

末梢血(リンパ球) 骨髄・リンパ節・その他

標本作製 (37℃:3~5日 dry)

トリプシン処理***

Giemsa (G-band)

46,XY

分 析

核型決定

72時間 24-48時間

PHA*添加

CO2ガス培養37℃ コルセミド**処理  

*phytohemagglutinin **分裂阻害剤 ***蛋白分解酵素

分裂中期

G分染色法の手技 細胞培養  RPM1640培養液+  10%ウシ胎児血清FCS

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G-banding : trypsin G-banding

A群 B群

E群 D群

C群

F群 G群

A  3 B 2 C 8+X D 3 E 3 F 2 G 2+Y

群 対

染色体の位置と名称

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G-banding

A群 B群

C群

G群

A  3 B 2 C 8+X D 3 E 3 F 2 G 2+Y

群 対

核型の並べ方のコツ! かくがた

D群

F群

E群

Memo

阿南の昔の経験から述べます。 A群は一番大きく、短腕と長腕の長さが等しい。B群はA群に比べ少し小さくて長腕が長い。C群は特徴が少なく、他の群を分析した後に行うが大きい順番に 並べる。D群は短腕にサテライトがみられ、それを小さくしたものがG群になる。 E群はXの形をとり、それを小さくしたものがF群になる。Xは不明で一応C群に あてはめ、C群を決定した後に残ったものがXになる。YはG群の大きさであり G群が決定した後にYとして判定する。

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分類と命名法

特有な染色体の数と形態を図式的に示したものを 核型(かくがた:karyotype) という。染色体およびその部位を細かく同定するには多くは分染法が行われる。 これは染色体の縦軸方向に沿って濃淡または明暗の横縞模様を検出したり、 特定の部位を染め分けるものであるが、この方法により、染色体の部位が 短腕(p)、長腕(q)、領域番号、バンド番号によって区別される。

ヒト染色体地図

1. 遺伝子マッピング (gene mapping)  染色体上に配列している遺伝子の位置(遺伝子座:gene locus)と配列順序  ならびに遺伝子座相互間の距離を直線上に図式化したものを 染色体地図  (chromosome map)あるいは遺伝子地図(gene map)という。  遺伝子座を決定することを遺伝子マッピングという。  遺伝子マッピングは、細胞融合法を中心とした細胞遺伝学、染色体分染法、  遺伝子工学などの技術を使って行われている。 2. 核型進化 (karyotypic evolution) 核型進化は、染色体の形態的類似性と遺伝子マッピングによる遺伝子構成  の相同性から解析されている。  たとえば、類人猿の染色体形態はヒト染色体と98~99%は一致し、遺伝子座 のレベルでもその構成と配列順序は基本的には同じである。

Memo

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cen : セントロメア  p :短腕    q : 長腕 sc : 染色分体 ter : テロメア s : 付随体  h : 二次狭窄 ct : 姉妹染色分体  

cen

ter

ter

p

q

s h h

ct sc

分裂中期染色体の名称(分染法)

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An International System for Human Cytogenetic Nomenclature

国際規約(ISCN)による決めごと

国際規約(ISCN)によって約束ごとが整理されている。

 ①各染色体番号とそのバンドパターン

 ②核型記載の順序

  (総数、性、数的異常、構造異常)

 ③減少や過剰は前に+、‐を表記する

 ④クローン性(数的、構造異常)

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ISCNによる核型の表記法

46,XX,t(9;22)(q34;q11.2)[20]

染色体総本数 , 性染色体の内訳 異常の内訳 , 分析細胞数

48,XY,+X,-3,add(3)(p10),t(9;22)(q34;q11.2), i(17)(q10),+r[20]

(その他) +, ‐ は染色体の前に 

  染色体番号順

  アルファベット順 

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�����del(deletion)欠失

染色体に切断が起き、染色体の一部が失われる

2 3

1

4 5 6 7

2 3

1

4 5

6 7

p

q

C

欠失

p

q

資料提供:生田幹博(福岡大学病院検査部)

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�����inv(inversion)逆位 染色体内で2ヶ所の切断が起き、回転して再結合する

2 3

1

4 5 6 7

p

q

C

(腕内逆位) �

2

3

1

4

5 6 7

p

q

C

資料提供:生田幹博(福岡大学病院検査部)

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(腕間逆位)

�����inv(inversion)逆位 染色体内で2ヶ所の切断が起き、回転して再結合する

2 3

1

4 5 6 7

p

q

C

2 3

1

4 5

6 7

p

q

C

1 2 3 3

2

1

(腕間逆位)

逆位

資料提供:生田幹博(福岡大学病院検査部)

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t(translocation)転座 2本の染色体間で切断と再結合が起きた場合

1 2 3 4 5 6 7

A B C D E

染色体 A 染色体 B

p p

q

q

1 2 3 4 5

6 7

A B C

D E

染色体 A 染色体 B

p p

q

q

C

資料提供:生田幹博(福岡大学病院検査部)

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47,XY,+21 (Down syndrome)

45,X (Turner syndrome )

資料提供:生田幹博(福岡大学病院検査部)

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資料提供:生田幹博(福岡大学病院検査部)

46,XY,t(9;22)(q34;q11.2) BCR/ABL

慢性骨髄性白血病(CML)

BCR/ABL

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蛍光 in situ ハイブリダイゼーション Fluorescent in situ hybridization; FISH

in situ ハイブリダイゼーション

核酸プローブを蛍光色素で標識しておくと、蛍光顕微鏡下で 細胞内の遺伝子の存在を検出することである。

FISH

DNAハイブリデーションの概念を染色体DNAの解析に応用した もので、標的とするDNA断片の染色体における局在を蛍光色素で 検出する方法である。染色体や間期核上における標的DNA分子 を蛍光シグナルとして検出することができる。 利点として、由来不明の染色体を同定したり、微細な構造異常の 分析や染色体分裂像が得られにくい検体を間期核細胞で解析可能と される。

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FISHプローブによるBCR/ABLの解析

BCRとABLの融合(キメラ遺伝子) がみられる。

Ph転座陽性例 Ph転座陰性例(正常)

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FISHプローブによるPML/RARAの解析

PMLとRARAの融合(キメラ遺伝子) がみられる。

健常人 AML-M3(APL)例

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白血病と特徴的染色体異常

造血幹細胞 t(9;22)(q34;q11.2)/BCR-ABL1 CML

骨髄性前駆細胞 t(8;21)(q22;q22)/RUNX1-RUNX1T1 (AML1-ETO)

AML-M2

inv(16)(p13q22)/t(16;16)(p13;q22) CBFB-MYH11

AML-M4eo

t(9;11)(p22;q23)/MLLT3(AF9)-MLL AML-M4 or M5

前駆B細胞腫瘍 t(9;22)(q34;q11.2)/BCR-ABL1 ALL (adult)

t(v;11q23)/MLL Rearranged ALL (infant)

t(12;21)(p13;q22)/TEL-AML1(ETV6-RUNX1)* t(1;19)(q23;p13.3)/PBX-E2A

ALL (infant)

ALL

*t(8;21)(q22;q22)の8q22/AML1と12p13/TEL 2つのCTP間のsimple variant translocation

三浦偉久男:博多シンポジウム抄録.2009

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悪性リンパ腫と特徴的染色体異常

成熟B細胞腫瘍

マントル細胞リンパ腫

ろ胞性リンパ腫 t(14;18)(q32;q21.3)/BCL2-IGH

t(14;18)(q32;q21.3)/BCL2-IGH

t(3;v)(q32;q21.3)/BCL6

び慢性大細胞型B細胞性リンパ腫

t(11;18)(q21;q21.1)/API2-MALT1

バーキットリンパ腫 t(8;14)(q24;q32)/IGH-MYC

t(2;8)(p11;q24)/IGL/MYC

t(8;22)(q24;q11)/IGL-MYC

成熟T細胞腫瘍 t(2;5)(p23;q35)/NPM-ALK 未分化大細胞型リンパ腫

佐藤悦子:染色体のガイドライン.2008