総説 着底漁業が脆弱な海洋生態系(vme)に及ぼす影響の評価と …

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2019 公益社団法人日本水産学会/The Japanese Society of Fisheries Science Tel81 95 819 2806Emailm.kiyotanagasaki-u.ac.jp Nippon Suisan Gakkaishi 85(6), 562 574 (2019) DOI: 10.2331/suisan.18 00057 着底漁業が脆弱な海洋生態系(VME)に及ぼす影響の評価と管理 2018 12 21 日受付,2019 8 30 日受理,2019 10 25 J STAGE 早期公開) 長崎大学大学院水産・環境科学総合研究科 Issues, assessment and management of bottom ˆshing impacts on vulnerable marine ecosystems (VMEs) MASASHI KIYOTA Graduate School of Fisheries and Environmental Sciences, Nagasaki University, Bunkyo-machi, Nagasaki 852 8521, Japan Some species of deep-sea cold-water corals and sponges provide complex habitats for other species and com- prise unique ecosystems. Such ecosystems are considered as vulnerable marine ecosystems (VMEs) since they are easily damaged by anthropogenic disturbances and require a long time for recovery. The destructive impacts of high-seas bottom ˆsheries on deep-sea VMEs have led to heated debate in the United Nations General Assembly, and ˆsheries management bodies are required to avoid the signiˆcant adverse impacts (SAIs) of bottom ˆshing on VMEs in their areas of competency. Accordingly, ˆshing nations and regional ˆsheries management organizations introduced measures for the conservation and management of VMEs by distinguishing existing ˆshing areas and unˆshed areas, closing the unˆshed areas to commercial ˆshing operations, and introducing VME encounter pro- tocols and VME closures. Such frameworks to assess and manage the impacts of bottom ˆshing on sea‰oor habitats are necessary in Japan for ensuring the conservation of marine biodiversity and the sustainability of ˆsh- eries. キーワードカイメン,深海漁業,生態系アプローチ,生態系影響評価,着底トロール,冷水性サンゴ 国連で合意された持続可能な開発目標(SDGs, sus- tainable development goals)の目標 14 や我が国の海洋 基本計画,水産基本計画を引き合いに出すまでもなく, 水産業の持続可能な発展は国内外における喫緊の課題で ある。漁業管理の経緯を振り返ると,まずは単一資源利 用の効率化を目的として最大持続生産量(MSY, maxi- mum sustainable yield)を基準とする管理が進められて きた。1990 年前後から混獲投棄や捕食被食関係を 通じた間接作用などを含めた海洋生態系に及ぼす漁業の 影響が海外では注目されるようになり,生態系の構造や 機能を保全しながら持続可能な利用を目指す生態系アプ ローチ(EAF, ecosystem approach to ˆsheries)や生態 系をベースとした漁業管理(EBFM, ecosystem-based ˆsheries management)などの管理概念が台頭してき た。 1,2) その中でも,着底漁業と脆弱な海洋生態系 VME, vulnerable marine ecosystem)の問題は,公海 着底漁業を全面操業停止にするべきか否か大きな国際論 議を呼び,その後の展開が世界的に注目されている。一 方,これまで日本国内では,VME と着底漁業の問題が 注目されることは少なく,世界的な議論に対する関心も 低かった。しかし後述するように,我が国漁船も公海底 魚漁業を行い漁獲物が国内に流通していること,日本周 辺にも深海生態系を保護するための保護区が設置される こと,水産物の持続可能性評価の観点から我が国周辺漁

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2019 公益社団法人日本水産学会/The Japanese Society of Fisheries Science

Tel81958192806.Emailm.kiyota@nagasaki-u.ac.jp

Nippon Suisan Gakkaishi 85(6), 562574 (2019) DOI: 10.2331/suisan.1800057

総 説

着底漁業が脆弱な海洋生態系(VME)に及ぼす影響の評価と管理

清 田 雅 史

(2018 年 12 月 21 日受付,2019 年 8 月 30 日受理,2019 年 10 月 25 日 JSTAGE 早期公開)

長崎大学大学院水産・環境科学総合研究科

Issues, assessment and management of bottom ˆshing impacts on

vulnerable marine ecosystems (VMEs)

MASASHI KIYOTA

Graduate School of Fisheries and Environmental Sciences, Nagasaki University, Bunkyo-machi, Nagasaki 852

8521, Japan

Some species of deep-sea cold-water corals and sponges provide complex habitats for other species and com-

prise unique ecosystems. Such ecosystems are considered as vulnerable marine ecosystems (VMEs) since they are

easily damaged by anthropogenic disturbances and require a long time for recovery. The destructive impacts of

high-seas bottom ˆsheries on deep-sea VMEs have led to heated debate in the United Nations General Assembly,

and ˆsheries management bodies are required to avoid the signiˆcant adverse impacts (SAIs) of bottom ˆshing on

VMEs in their areas of competency. Accordingly, ˆshing nations and regional ˆsheries management organizations

introduced measures for the conservation and management of VMEs by distinguishing existing ˆshing areas and

unˆshed areas, closing the unˆshed areas to commercial ˆshing operations, and introducing VME encounter pro-

tocols and VME closures. Such frameworks to assess and manage the impacts of bottom ˆshing on sea‰oor

habitats are necessary in Japan for ensuring the conservation of marine biodiversity and the sustainability of ˆsh-

eries.

キーワードカイメン,深海漁業,生態系アプローチ,生態系影響評価,着底トロール,冷水性サンゴ

国連で合意された持続可能な開発目標(SDGs, sus-

tainable development goals)の目標 14 や我が国の海洋

基本計画,水産基本計画を引き合いに出すまでもなく,

水産業の持続可能な発展は国内外における喫緊の課題で

ある。漁業管理の経緯を振り返ると,まずは単一資源利

用の効率化を目的として最大持続生産量(MSY, maxi-

mum sustainable yield)を基準とする管理が進められて

きた。1990 年前後から混獲投棄や捕食被食関係を

通じた間接作用などを含めた海洋生態系に及ぼす漁業の

影響が海外では注目されるようになり,生態系の構造や

機能を保全しながら持続可能な利用を目指す生態系アプ

ローチ(EAF, ecosystem approach to ˆsheries)や生態

系をベースとした漁業管理(EBFM, ecosystem-based

ˆsheries management)などの管理概念が台頭してき

た。1,2) その中でも,着底漁業と脆弱な海洋生態系

(VME, vulnerable marine ecosystem)の問題は,公海

着底漁業を全面操業停止にするべきか否か大きな国際論

議を呼び,その後の展開が世界的に注目されている。一

方,これまで日本国内では,VME と着底漁業の問題が

注目されることは少なく,世界的な議論に対する関心も

低かった。しかし後述するように,我が国漁船も公海底

魚漁業を行い漁獲物が国内に流通していること,日本周

辺にも深海生態系を保護するための保護区が設置される

こと,水産物の持続可能性評価の観点から我が国周辺漁

563

Fig. 1 Colonies of cold-water corals observed in the

North Atlantic Ocean. Upper: Reef of Lophelia stone

coral; Lower: Alcyonacean coral colonies growing on

dead Lophelia (photos courtesy of the MAREANO

mapping programme, IMR, Norway).

563着底漁業が VME に及ぼす影響

業が海底生態系に及ぼす影響についても情報が必要であ

ることから,VME をめぐる世界的な論点や問題解決の

ための技術的なアプローチを整理しておくことは有益と

思われる。そこで本稿では,国連や地域漁業管理機関

(RFMO, regional ˆshery management organization)に

おける VME 論議の内容と対策の進行状況を紹介し,我

が国周辺水域への応用について考察する。また,VME

問題を例として,生態系をベースとした漁業管理をめぐ

る重要な論点についても紹介する。これら議論は,持続

可能な漁業の確立に向けて我が国独自の管理枠組みを構

築する上で参考になるであろう。

1. 着底漁業の深海への進出

1960 年代後半より大陸棚漁場での漁獲が伸び悩んで

いた着底漁業が,水深 200 m から 2000 m に及ぶ陸棚斜

面や海山などの深海漁場へ進出し始めた。3) 漁船の大型

化や漁労機械の高性能化,および国連海洋法条約に沿っ

た各国排他的経済水域の導入が着底漁業の公海域への進

出に拍車をかけた。4) 例えば,北大西洋ではシロダラ

Coryphaenoides rupestris , ブ ル ー リ ン グ Molva dyp-

terygia,カラスガレイ Reinhardtius hippoglossoides など

を対象としたトロール漁業(着底,離底どちらも含む),

底はえ縄漁業が陸棚斜面や海嶺で行われるようになっ

た。5) 南大洋のニュージーランド周辺の海山では,オレ

ンジラフィー Hoplostethus atlanticus を専獲する着底ト

ロール漁業が 1980 年頃から急速に拡大した。6) 北太平

洋の天皇海山列は,1967 年に旧ソ連によって底魚漁場

として開発され,我が国漁船も 1969 年からクサカリツ

ボダイ Pentaceros wheeleri やキンメダイ Beryx splendens

を対象とした着底トロール操業や底刺し網操業を開始し

た。7) しかし,深海漁場では資源管理,生態系保全に関

して浅海漁場とは異なる 2 つの問題に直面することと

なる。

第一の問題は魚類資源の乱獲である。南大洋のオレン

ジラフィーは乱獲の代表事例として有名であり,8) 開発

当初の 1980 年代にはニュージーランド水域で年間 45

万トン漁獲されていたものが,1990 年代に漁獲量が急

速に低下し,資源量は 1/6 程度に減少したと考えられ

ている。9) 天皇海山のクサカリツボダイはさらに顕著

で,開発初期の 1970 年代初頭には年間漁獲量が 10 万

トンを超えていたが,1977 年以降は 2000 トン程度ま

で急落した。10) 北大西洋でもオレンジラフィーやシロダ

ラ等の資源が低水準に落ち込んでいる。5,11) 深海着底漁

業の対象となる魚類資源が乱獲に陥りやすい理由とし

て,寿命が長く自然死亡率が低く,成長成熟が遅いと

いった特徴が挙げられている。12) しかし一口に深海魚と

言っても生活史や再生産特性は種によって異なってい

る。確かにオレンジラフィーは成熟 2040 年,寿命

100 年以上と著しく低成長晩熟型であるが,8,13,14) クサ

カリツボダイは仔魚期から未成魚期まで表層で 23 年

過ごし,その後着底してすぐに成熟する。クサカリツボ

ダイの場合,加入変動が極端に大きく,着底後の集群性

が高く,産卵前の未成魚の魚価が高いために着底直後に

漁獲圧が集中することが,資源の枯渇を招いている。10)

深海着底漁業の第 2 の問題は,本稿のテーマである

着底漁具が海底の生態系に与える影響である。かつて深

海の生物相は貧弱であろうと予想されていたが,科学調

査および海底ケーブル敷設や鉱物資源開発等に関連した

海底観察が進むにつれて,深海底には多様な生物が生息

することが明らかになった。15,16) 底生生物の中でも刺胞

動物門花虫綱のサンゴ類,ヒドロ虫綱のヒドロサンゴ類

が深海にも生息し,大型の群体が集まって林状の群生や

巨大なサンゴ礁(リーフ)を形成することが分かってき

た(Fig. 1)。17,18) これら深海のサンゴ類やヒドロサンゴ

類は,褐虫藻と共生し光合成により栄養を得ることで比

較的速く成長する温暖な熱帯水域の造礁サンゴ類とは異

なり,低水温の深海で有機懸濁物を栄養として生活する

ため冷水性サンゴ類と呼ばれる。19) 海山や急斜面や渓谷

は,流れが強いため砂泥が堆積しにくく固着するための

岩盤が露出し,さらに有機懸濁物を利用しやすいため,

冷水性サンゴ類にとって好適な生息場所となっている。

564564 清田

また,水域によってはカイメン類が複雑な構造の集合体

を形成することもある。20) これら固着性底生生物が作る

構造体は,他の生物が摂餌や繁殖,養育を行う重要な生

息場所(ハビタット,habitat)を提供し,全体として

固有の生態系を形成している。1921) ノルウェー沿岸の水

深 200400 m の陸棚縁辺域では花虫綱 Lophelia 属イシ

サンゴ類の大きなリーフが多数発見されるとともに,着

底トロールや底はえ縄,底刺し網によって破壊された痕

跡も確認された。22) 豪州タスマニア沖の調査でも,オレ

ンジラフィーを対象とした着底トロールが頻繁に行われ

た海山ではイシサンゴ類のリーフとそれに関連した生物

群集が失われており,露出した岩盤上にトロール痕が観

察された。23) 深海底は自然撹乱が少なく長期的に安定し

た環境にあるが,冷水性サンゴ類等の底生生物が作る構

造体と生態系は物理的撹乱が加わると破壊されやすく,

その成長の遅さから一旦破壊されると回復するのに極め

て長い時間を要する。冷水性サンゴ類には,ポリプと呼

ばれる個虫が単体で暮らす種と群体を形成する種があ

る。ポリプの寿命は 20 年程度であるが,群体の寿命は

一般的には 100200 年,19) ツノサンゴ類の中には 2000

年以上生存する群体もあると言われる。24,25) 深海のカイ

メン類も大型の群体は 200 年以上生存すると考えられ

る。26) 成長が遅く寿命が長く,一旦ダメージを受けた後

の回復力が低い点で,冷水性サンゴ類等が構築するハビ

タットとそこに生息する生物群集は VME として注目を

集めた。27,28) 環境保護団体は,深海着底漁業は VME に

重大な悪影響を与え生物多様性を低下させる破壊的行為

であると訴え,その停止を求めるキャンペーンを国連を

主な舞台として繰り広げた。

2. 国連総会における議論

19891991 年の国連総会決議2931)によって大規模公

海流し網漁業を操業停止(モラトリアム)に追い込んだ

経験から,32) 環境保護団体は深海保全連合を結成し,こ

の問題を一気に国連総会へ上程した。高度回遊性魚類や

排他的経済水域と公海にまたがって回遊するストラドリ

ングストック(straddling stock)を対象とした公海漁

業については,国連海洋法条約や公海漁業協定が国際的

な管理を求めていたが,公海着底漁業については対策が

遅れ RFMO が設立されていない水域も多かったことか

ら,国連総会を通じて関係漁業国や非漁業国に問題をア

ピールする目的があったと考えられる。

まず 2002 年の国連総会において,33) 壊れやすい生態

系(fragile ecosystems)の生物多様性損失を止めるた

めに,破壊的な漁業活動の停止と海洋保護区のネット

ワーク設置の必要性が指摘され,VME の保護に関する

事務総長報告が求められた。翌年の事務総長報告では,

まず『VME とはその物理的特徴,構成生物の活動と相

互関係,人間活動の影響,周辺環境の特性により撹乱や

損傷,破壊による影響を特に受けやすい生態系である』

という定義が示された。34) この定義は VME を深海生態

系に限定するものではなく,マングローブ,藻場,サン

ゴ礁,海山,熱水噴出孔,極域の生物群集なども例に含

まれていた。VME にかかわる問題として,漁業による

脅威,乱獲と破壊的漁業活動(深海に限定しない),陸

上活動による汚染,海底開発廃棄物投棄,地球温暖化

などが列挙され,エビ養殖によるマングローブ破壊,サ

ンゴ礁漁業,海山のトロール漁業などが改善を要する具

体的案件として例示された。さらに管理枠組みの強化が

必要であると指摘し,具体的手段として海洋保護区

(MPA, marine protected area)の設置まで提案するか

なり踏み込んだ内容であった。

事務総長による問題提起を受け,海と海洋法に関する

国連の非公式協議プロセス(UNICPOLOS, United Na-

tions Open-ended Informal Consultative Process on Oce-

ans and the Law of the Sea)でこの問題が取り上げられ

ることになった。この会合は政府や政府間機関の協力が

なされるべき特定の海洋関連事項に焦点を当てて専門家

パネリストの報告を受け,国連総会で検討すべき問題を

提案するもので,各国代表以外に政府間機関や非政府機

関の関係者も出席する。35) これまでに違法無報告無規制

(IUU, Illegal, Unreported and Unregulated)漁業,海

洋汚染,はえ縄漁業混獲,海洋酸性化,航海の安全,海

洋ゴミ,マイクロプラスチック,気候変動などが問題と

して取り上げられている。2003 年の UNICPOLOS では,

VME の保護がテーマとなったが,そこでは深海底より

も浅海サンゴ礁やマングローブ,藻場に注目し,MPA

の設置が対策として示唆された。36) 続く 2004 年の

UNICPOLOS では深海着底漁業と冷水性サンゴ類が議

論の中心になり,環境保護団体のパネリストが深海ト

ロール漁業は非選択的,破壊的で管理されていないこと

を強調してモラトリアムを提案した。37) 各国代表による

議論では RFMO の役割について見解が分かれ,モラト

リアム提案については合意に至らず,この問題に適切に

対処するために国連食糧農業機関(FAO, Food and

Agriculture Organization of the United Nations)が率先

して活動する必要があることが確認された。さらに

MPA の設置,深海底(鉱物資源)開発,公海遺伝資源

への公平なアクセスなど,後の国家管轄権外区域におけ

る生物多様性(BBNJ, biodiversity beyond national

jurisdiction)につながる論点もここで浮上した。

2004 年の国連総会では,コスタリカが公海深海ト

ロール漁業モラトリアム提案を行ったが合意には至ら

ず,海山,熱水噴出孔,冷水性サンゴ類へ悪影響を及ぼ

す破壊的な操業を停止するための予防的措置を採ること

を各国に求め,既存 RFMO は深海底の VME へ悪影響

565565着底漁業が VME に及ぼす影響

を及ぼす破壊的漁業を管理するための保存管理措置を早

急に導入すること,RFMO が存在しない水域について

は新しい管理機関設立に向けて関係国が協力することを

決議した。38) 同じ問題は翌 2005 年の UNICPOLOS で

も取り上げられ,環境保護団体からのパネリストが深海

トロール漁業に反対する発表を行い,モラトリアムを再

提案したものの,前述の 2004 年国連勧告の進捗状況を

確認しつつ速やかに暫定措置を導入する方向へ議論は向

かい,MPA 提案に対しても意見が分かれた。39)

2006 年の国連総会では,既存の RFMO は 2008 年 12

月末までに深海着底漁業の VME に対する重大な悪影響

を防止するための保存管理措置を採択し実行すること,

一方新しい RFMO の設立に取り組む国は,2007 年 12

月までに暫定措置を導入することが決議された。40) さら

に,深海着底漁業による VME への影響を評価し,悪影

響が認められた漁業は停止すること,深海底の VME を

特定し VME と魚類資源の持続可能性に悪影響を及ぼす

漁業を特定すること,管理措置が整うまでは海山,熱水

噴出孔,冷水性サンゴなど VME が存在する場所での操

業を停止しその海域を閉鎖することを求め,FAO がこ

れら対策に先導的な役割を果たすよう要請した。

これら一連の国連総会決議を受け,FAO は専門家会

合を開いて公海域の深海漁業を管理するための国際ガイ

ドライン(International Guidelines for the Management

of Deep-sea Fisheries in the High Seas,以下本稿では

FAO ガイドラインと略称する)を 2008 年に発表し

た。41) その指導の下,既存の RFMO は公海着底漁業の

管理を強化するための措置を矢継ぎ早に導入し,

RFMO が存在しない公海域で着底漁業を行なっている

各国は,暫定的な措置の導入と管理機関設置のための協

議に着手した。例えば北太平洋では 2006 年に日韓露米

が北西太平洋(主に天皇海山列)の公海着底漁業と底魚

資源を管理するための RFMO 設立に向けた政府間交渉

を開始し,2008 年に各国が影響評価文書を提出した上

で,科学オブザーバーの乗船,北緯 45 度以北および

1500 m 以深の操業禁止,漁船数の現状凍結,1112 月

の操業停止,CH 海山と光孝海山南東部の暫定閉鎖な

どを定めた暫定保存管理措置に合意して管理をスタート

させた。その後対象水域をカナダ西岸沖海山を含む北太

平洋全域に拡大し,サンマ Cololabis saira やアカイカ

Ommastrephes baartrami などの表中層性魚類まで管理

対象に含めることにも合意して 2015 年に北太平洋漁業

委員会(NPFC, North Paciˆc Fisheries Commission)

が発足し,事務局が品川の東京海洋大学に設置され

た。42) 同様に南太平洋漁業管理機関(SPRFMO, South

Paciˆc Regional Fisheries Management Organization)

や南インド洋漁業協定(SIOFA, South Indian Ocean

Fisheries Agreement)も相次いで発足し,大西洋の中

部,南西部および太平洋中東部,インド洋北東部を除く

公海底魚漁場の大部分が,RFMO により管理されるよ

うになった(Fig. 2, Table 1)。43) 大西洋の中西部と中東

部にはそれぞれ中西部太平洋漁業委員会(WECAF,

Western Central Atlantic Fishery Commission)と中東

部大西洋漁業委員会(CECAF, Fishery Committee for

the Eastern Central Atlantic)が存在するが,法的拘束

力を持たない助言機関に留まっている。

このように,2003 年の事務総長報告の段階から,国

連における論調は破壊的漁業の停止と VME の保護に大

きく傾いていたが,RFMO と漁業国が自らの問題とし

て論点を整理し,VME 保全を RFMO の管理目標の中

に取り入れることで,公海着底漁業のモラトリアムを当

面回避することができた。既存および新設された

RFMO は,FAO のガイドラインに沿って後述するよう

な調査や管理を行なっている。しかし,深海に関する情

報は不足しており,管理手順は確立されておらず,予防

的アプローチを掲げながら試行が続けられている。これ

ら RFMO は公海着底漁業レビューを求めた国連総会決

議に従って,44) 着底漁業の漁獲対象魚種の資源管理と

VME の保全について定期的に国連へ進捗を報告し点検

を受けている。国連レビューは,各 RFMO からの報告

を受け,管理体制強化や管理措置導入の進捗を確認する

段階に留まっており,対策が十分であるか否かの判断は

今後の議論に委ねられている。

3. 着底漁業における VME 保全のための措置

深海着底漁業における VME 保全対策の基本となる

FAO ガイドラインの目的は,41) 1)生物資源の持続可能

な利用と,2)深海の VME に関する悪影響の防止と生

物多様性の保護,を実践するための国や RFMO の活動

を支援することである。VME を特定するための基準や

例,悪影響の定義,管理に必要な調査やデータを示し,

科学に基づいた保存管理措置の導入および監視とモニタ

リングによる遂行を求め,透明性,情報公開,予防的ア

プローチの重要性を唱っているが,あえて具体的な数値

基準等は示さず概念的な記述に留まっている箇所が多

い。各管理体は,所轄水域の漁業と物理環境と生物相の

特徴に応じて FAO ガイドラインを解釈し,評価と管理

を実践している。そのような取り組みの手順を以下に紹

介する。

既存漁場と未操業域の特定 多くの管理体が最初に実

施したのは,所轄水域において今まで着底漁業が行われ

てきた場所(既存漁場,existing ˆshing area)と行わ

れていない場所(未操業域,unˆshed area)を識別する

ことである。後者の海底には VME が手つかずの状態で

残っている可能性が高い。未操業域を識別したら,残存

する VME を破壊するリスクを最小化するため,商業操

566

Fig. 2 Diagrammatic map showing the competence areas of regional bottom ˆsheries management bodies. Those bodies whose

competence areas are delineated by dotted lines were established after UNGA Resolution 61/108 in 2006.40) NEAFC: North

East Atlantic Fisheries Commission; SEAFO: South East Atlantic Fisheries Organization; GFCM: General Fisheries Commis-

sion for the Mediterranean; CCAMLR: Commission for the Conservation of Antarctic Marine Living Resources; SIOFA:

Southern Indian Ocean Fisheries Agreement; NPFC; North Paciˆc Fisheries Commission; SPRFMO; South Paciˆc Regional

Fisheries Management Organization, NAFO: North Atlantic Fisheries Organization; NAFO: North Atlantic Fisheries Organiza-

tion.

Table 1 Establishment year, major types of ˆsheries, main target species and number of VME closures (as of September 2019) for

each regional bottom ˆsheries management body summarized from the FAO VME database and the literature11,43,58)

RegionManagement

bodyEstablishment

yearMajor bottomˆsheries Main target species

No. of VMEclosures

Northwest Atlantic NAFO 1979 trawl, longline northern shrimp, Greenland halibut, redˆsh,skate

21

Northeast Atlantic NEAFC 1959 longline, trawl,gillnet

Greenland halibut, grenadier, ling, tusk,orange roughy, dogˆsh, redˆsh, hake,monkˆsh, deep-sea red crab

13

Southeast Atlantic SEAFO 2003 trawl, longline,pot

alfonsino, orange roughy, toothˆsh, deep-seared crab

12

Mediterranean GFCM 1949 trawl, gillnet,longline

hake, shrimp 5

South Indian SIOFA 2012 trawl, longline orange roughy, alfonsino, oreo, armorhead,butterˆsh, deepwater snapper, toothˆsh

5

North Paciˆc NPFC 2015 trawl, longline,gillnet

armorhead, alfonsino, oleo, rockˆsh, sableˆsh 2

South Paciˆc SPRFMO 2012 trawl, longline orange roughy, alfonsino, butterˆsh, oreo ―

Antarctic CCAMLR 1982 longline toothˆsh 131

Japanese ˆshing ‰eets are engaged.

566 清田

業は基本的に禁止され,別途定めた開発操業プロトコル

(EFP, Exploratory Fishing Protocol)に沿った開発操業

のみが認められる。RFMO は通常の商業操業を既存漁

場内に限定し,そこに残存する VME に悪影響を及ぼす

リスクを抑えるためのルール(後述する遭遇プロトコル

や海底調査に基づく操業禁止区域の設置)を導入し,遵

守させることによって,VME への悪影響回避と操業の

継続を両立させている。

既存漁場を特定する方法としては,操業位置データを

地理情報システム(GIS, geographic information system)

上で処理してマッピングを行う方法が一般的である。細

かい位置情報が残っていない開発初期の操業に関して

は,粗い緯経度グリッド単位や海山単位で操業の有無を

判断することもある。4547) 特定された既存漁場はしばし

ばフットプリント(footprint)と呼ばれる。ただし,フッ

トプリントの語は,既存漁場以外にいくつかの異なる意

味で用いられるため,非常に紛らわしい。例えば南極海

の海洋生物資源の保存に関する委員会(CCAMLR,

Commission for the Conservation of Antarctic Marine

Living Resources)の新規開発操業申請等では,人間活

動が自然環境に与える負荷を土地面積で表すエコロジカ

ルフットプリントに類似した意味から,48) 1 回もしく

567

Table 2 Examples of potential VME species groups and topographic features speciˆed by the FAO international guidelines for the

management of deep-sea ˆsheries in the high seas41)

Examples of species groups,

communities and habitats

―Certain cold-water corals and hydroids (e.g. reef builders and coral forest)

―Some types of sponge-dominated communities

―Communities composed of dense emergent fauna where large sessile protozoans (xenophyophores) and

invertebrates (e.g., hydroids and bryozoans) form important structural components of the habitat

―Seep and vent communities comprised of endemic species

Examples of topographical

features potentially support-

ing VMEs

―Submerged edges and slopes

―Summits and ‰anks of seamounts, guyots, banks knolls and hills

―Canyons and trenches

―Hydrothermal vents

―Cold seeps

567着底漁業が VME に及ぼす影響

は複数回の操業で漁具が影響を及ぼす海底面積を表す。

一方 NPFC の年次報告書では,漁獲量や操業隻数を含

む過去の操業活動の集約表のことをフットプリントと呼

んでいる。関連文書を参照する際には注意が必要である。

VME の特定 VME 管理の次のステップは着底漁業

の既存漁場や未操業域に存在する(可能性のある)

VME を特定することである。深海は情報が限られ,ど

こにどのような VME が存在するか特定しにくいため,

管理の対象を後追いで定義することが少なくない。

端的に表現すると,VME とは人為撹乱によって破壊

されやすく回復しにくい特徴をもつ生物群集とハビタッ

トのことであるが,具体的な定義は与えられていない

(VME は狭義には深海底の脆弱な生態系を指し,広義

には浅海のサンゴ礁や藻場やマングローブなども含む

が,本稿ではこれ以降特記しない限り前者の意味で

VME の語を用いる)。FAO ガイドラインでは,『脆弱

性は個体群,群集もしくはハビタットの撹乱による影響

の受けやすさと,回復にかかる時間に関係し,それは生

態系の生物学的,構造的な特性と関連する』と概念的な

定義に留まっている。41) さらに,VME の特徴として以

下の要素1)固有性や希少性,2)ハビタットの機能

的な重要性,3)壊れやすさ,4)回復を困難にする構

成種の生活史特性,5)構造の複雑性,を挙げた上で,

具体例として Table 2 に挙げた生物群集や地形特性を示

している。

FAO ガイドラインにおける VME 定義の特筆すべき

特徴は,『脆弱性は脅威を及ぼす特定の要因に対して評

価しなければならない』と明記されている点である。農

業水産業をめぐる問題を解決し食料安全保障を推進す

るのが FAO の立場であり,壊れやすい生物が深海のど

こかに存在するだけでは評価対象とならず,それを脅か

す人間活動と組み合わせて評価し,管理しようとする姿

勢が良く表れている。

この点で対照的なのが生物多様性条約(CBD, Con-

vention of Biological Diversity)の下で進められている

生態学的生物学的に重要な海域(EBSA, Ecologically

or Biologically Signiˆcant Area)である。49) 生物多様性

保全を主眼とし,1)唯一性希少性,2)種の生活史

における特別な重要性,3)脆弱性不安定性感受

性低回復力,4)生物学的生産性,5)生物学的多様

性,6)自然性のいずれかを有する水域を科学的知見に

基づき EBSA として抽出する。基準 1)2)3)は VME と

も重複しているが,脅威が存在しなくても評価対象とな

る点が異なっている。前述した国連の議論の中で,生物

多様性保全のための MPA 設置が課題として挙げられた

が,それを推進する役割を主に担っているのが CBD

で,第 10 回締約国会議では愛知目標の一つに海洋の 10

を保護地域等として保全することことが掲げられ

た。50) この目標を達成するためのツールとして,専門家

が科学的観点から重要と思われる水域を抽出するのが

EBSA である。51) EBSA は脅威や利用保全のニーズと

いった社会的側面とは関係なく抽出され,国や RFMO

などの管理体が MPA を立案する叩き台として検討を促

すものである。しばしば同じ水域で VME と EBSA の

検討が並行して進められることがあるが,両者の定義や

方向性の違いを区別して議論する必要がある。

多くの RFMO では FAO ガイドラインに示された定

義や例を参考にしながら,水域ごとの生物地理学的な特

徴や,利用可能な情報,保全管理の必要性を考慮して,

発見された生物群集が VME に相当するかどうか個別に

判断している。FAO ガイドラインは公海域の着底漁業

を対象としているため,海底の生物群集とハビタットを

念頭に置いて VME の定義と例を与えているが,着底漁

業を管理する北西大西洋漁業機関(NAFO, Northwest

Atlantic Fisheries Organization)において,海生哺乳類

の重要な摂餌場所や育児場所となる表中層の生態系をも

VME と見なす科学議論がなされたこともあった。そも

そも 2002 年の国連事務総長報告では深海の冷水性サン

ゴ類や,海山,熱水噴出孔だけでなく,浅海のサンゴ礁

や藻場やマングローブも含む広い概念であったため,33)

568568 清田

必要に応じてこのような拡大解釈がなされることもあ

る。さらに本来 VME は,脆弱性と機能的重要性を有す

る固有希少な生物群集とそのハビタットを示す言葉で

あるが,議論の局面によっては冷水性サンゴ類やカイメ

ン類のような VME 指標生物(後述)自体を VME と呼

んだり,特定された VME を守るための保護区域を

VME と呼んだりすることがある。VME の定義が曖昧

で人や場面によって異なった意味で使われることも,

VME に関する議論や合意形成を難しくする一因となっ

ている。

VME 指標生物の選定 各RFMO では,所轄水域に

存在する(可能性の高い)VME の重要な構成要素となっ

ている生物,もしくは VME の存在を検出する上で役立

つ生物を VME 指標生物として選定し,モニタリングや

管理ルールに組み込んでいる。例えば北東大西洋漁業委

員会(NEAFC, North East Atlantic Fisheries Commis-

sion)のように海底調査が幅広く行なわれている水域で

は,1)冷水性サンゴ類のリーフ,2)冷水性サンゴ類

の群生,3)深海性カイメン類の群生,4)ウミエラ類

の群生,5)棲管性イソギンチャク類の群生,6)砂泥

底の表在性生物群集,7)コケムシ類の群生を VME に

相当する生物群集として挙げている。さらに 2)の具体

例の一つとして岩盤底のヤギ類ツノサンゴ類群生が示

さ れ て お り , そ の 指 標 生 物 と し て ホ ン ヤ ギ 科

(Chrysogorgiidae),オオキンヤギ科(Primnoidae),ハ

ウチワツノサンゴ科(Schizopathidae)などを指定して

いる。52) NEAFC では生物群集以外に VME が存在する

可能性の高い海底地形(隔離された海山,海丘,急斜

面,渓谷など)も VME の要素(VME element)とし

て挙げ,保全管理上注意すべき地点として検討してい

る。このように本来は対象水域ごとに VME に相当する

生物群集を調査によって把握し,それを代表する VME

指標生物や地形要素を選定して管理に役立てるのが合理

的なアプローチである。しかし,NPFC や SIOFA のよ

うに新しく発足した RFMO では,とりあえず暫定措置

として他水域を参考にしながら VME 指標生物を選定

し,その後調査やモニタリングを行うことによって水域

固有の VME を特定して VME 指標生物のリストを改訂

している。当初利用できる情報を最大限に活用して予防

的な措置を導入し,それを実際に施行することによって

情報が蓄積されたら管理目標や管理手順を見直し改善を

図る予防的かつ順応的なアプローチが,VME 保全にお

いては有効とされている。53)

選定された VME 指標生物は,漁業や調査を通じて

VME の存在を予測し漁業による影響を推定する目的で

用いられる。具体的用途としては,1)乗船オブザー

バーによる混獲状況のモニタリングと報告,2)VME

遭遇プロトコル(後述)を用いた悪影響の回避,3)分

布モデリングを利用した VME が存在する可能性の高い

地点の予測,などがある。VME 指標生物を選定する際

には,生物学的な特徴だけでなく,人間が出現を検出す

るプロセスも考慮しなければならない。冷水性サンゴ類

は外見が類似したものが多く,専門家であっても肉眼で

は種まで同定できない分類群も少なくない。オブザー

バーによる船上識別や,水中カメラや遠隔操作型無人潜

水機(ROV),自律型無人潜水機(AUV)を用いて収

集した水中画像の分析においても識別可能となるよう

に,属や科などの上位分類群もしくは形態と生態学的機

能が類似した機能群にまとめて VME 指標種生物を定義

すること,フィールド同定ガイドなどの説明資料を充実

させて査定の一貫性を担保することが重要であり,

FAO 指導のもと対応が進められている。54)

VME 遭遇プロトコル 着底漁業の操業中に VME 指

標生物がある一定量(遭遇閾値)以上混獲された場合に,

ただちに操業を停止して一定距離以上漁船を移動させる

手順を定めたものが VME 遭遇プロトコルと呼ばれる。

VME が存在する可能性の高い地点で繰り返し操業する

ことを避け,悪影響を及ぼすリスクを抑える方法であ

る。元々これは一般的な漁業において,小型魚や非漁獲

対象種の混獲投棄を削減するために考案された管理手

法である。55) 2006 年国連総会決議においても『VME に

遭遇したら操業を停止して遭遇を報告すること』が求め

られており,40) 当初は予防的措置の中心的な役割を果た

す手段として期待され,各 RFMO に相次いで導入され

た。しかし多くの水域では,導入後何年経っても遭遇が

検出されていない。既存漁場に VME が存在しないの

か,それとも漁具が VME に遭遇しても VME 指標生物

が網に保持されて船上に揚収される確率(漁獲効率)が

低いのか判断が困難であり,操業継続と悪影響防止を両

立できる遭遇閾値を科学的根拠に基づいて設定するのは

容易ではないことがわかってきた。56) 現在遭遇プロトコ

ルは,万一漁具と VME の接触が起こった時の悪影響を

抑制する保険的な措置と位置付けられており,むしろ新

規開発操業において,手付かずの VME との遭遇を検出

し悪影響を回避する手段としての重要度が増してい

る。57)

遭遇プロトコルを構成する主な要素は,VME 指標生

物,遭遇閾値,遭遇後の移動の距離と方向(ムーブオ

ンルール),遭遇した事実を通報する手順,通報後の

管理措置(遭遇した船が移動するだけか,遭遇地点を暫

定的に閉鎖するか)である。例えば CCAMLR の底は

え縄漁業では,冷水性サンゴ類,カイメン類の他,特定

のイソギンチャク類,ウミエラ類,コケムシ類,腕足

類,貝類,ウミユリ類,ウニ類や化学合成生物群集の構

成種などを VME 指標生物と定め,その混獲量を 10

リットルのバケツ 1 杯分(バケツに入らないものは重

569569着底漁業が VME に及ぼす影響

さ 10 kg)で 1 VME 指標ユニットと定義している。は

え縄 1 セグメント(1000 針または 1200 m)あたりの

VME 指標生物の合計混獲量=10 VME 指標ユニットを

遭遇閾値に設定し,それを超えた場合には,ただちに漁

船から事務局と旗国へ遭遇を通報する。遭遇が起こった

セグメントの中間地点から半径 1 マイル以内は VME リ

スクエリアとして暫定操業禁止区域となり,その後の

科学委員会と委員会で保全措置が検討される。円形の

VME リスクエリアがそのまま操業禁止区域とされる

か,改めて緯経度範囲を指定して VME 保護区域が設定

されることが多い。5 VME 指標ユニット以上(10 未満)

の混獲が発生した場合にも即時通報が義務付けられてい

るが,その周辺の緯度 0.5 度経度 1 度のメッシュ内に

VME が存在する可能性があることを各国漁船に周知

し,注意を促す情報として利用されるだけである。58) さ

らに,改善の試みとして,ニュージーランドでは指標生

物の混獲重量や容積を測度とした遭遇閾値だけでなく,

一曳網中の指標生物の出現種類数も多様性指標として採

用し,両者の組み合わせにより遭遇を検出する方法を導

入している(SPRFMO では暫定措置として遭遇プロト

コルのうち 5 マイルの移動距離だけを定め,VME 指標

生物の選定や遭遇閾値は当面加盟国が個々に FAO ガイ

ドラインに従って設定運用することとしている)。59)

ニュージーランド周辺の深海漁場では,操業頻度のマッ

ピング解析より,海山海嶺域を 1)着底トロール漁業

が集中的に行われたエリア,2)中程度に行われたエリ

ア,3)軽微に行われたエリアの 3 段階に区分した上

で,着底トロール漁業に対して 3)は閉鎖,1)は通常

操業可能とし,2)での操業にこの複雑な遭遇プロトコ

ルが適用される。

VME 保護区域の設定 遭遇プロトコルによる通報や

海底調査を通じて VME の存在が検出されれば,その周

辺を VME 保護区域に指定し,着底漁業の操業を禁止す

ることによって悪影響を防止することができる。多くの

RFMO では,調査を通じて VME を発見し,周辺を保

護区域とすることが VME 保全上最も効果的なアプロー

チであると考えられている。FAO の VME データベー

ス(VME Database: http://www.fao.org/in-action/

vulnerable-marine-ecosystems/en/, FAO, Rome. 2018

年 9 月 20 日)は,オンライン GIS を使って各 RFMO

の既存漁場と VME 保護区域をマップ上に表示し,保全

管理状況を視覚的に確認することができる。その情報に

よると,2019 年 9 月現在北西太平洋と南東大西洋,南

極海には数多くの VME 保護区域が設置されている

(Table 1)。VME 保護区域の設置数の多寡は,管理機

関が VME 保全活動に取り組んできた年数や海底調査の

実施状況を反映するが,それ以外に各水域の地理特性や

漁業の歴史も関係している。例えば,NAFO 水域は長

い漁業の歴史を持つが,グランドバンクスの公海域まで

達した広大な大陸棚周辺に多様な底生生物を含んでい

る。一方 CCAMLR 水域や SEAFO(South East Atlan-

tic Fisheries Organization,南東大西洋漁業機関)水域

は漁業の歴史が比較的浅く,着底漁業の影響を受けてい

ない場所が随所に残っていると考えられる。

開発操業プロトコル 前述の過去に遡った操業位置解

析を通じて既存漁場と認定されなかった水域は,未操業

域に指定され,通常の商業操業が禁止される。未操業域

で着底漁業を行いたい場合には,開発操業プロトコルと

いう一連の手順に沿って漁期ごとに操業申請を行い,操

業する場所と期間,使用する漁具漁法,予想される

VME との遭遇リスクや万一遭遇した場合の悪影響の回

避方法について事前審査を受ける。承認されれば科学的

情報を収集する科学オブザーバーもしくは管理措置の遵

守状況を監視する遵守オブザーバーを同乗させながら慎

重に操業を行うことになる。操業終了後には報告書を

RFMO の科学委員会に提出し,操業を行った場所にお

ける VME への影響についてリスク評価を受ける。操業

中は VME 指標生物のモニターが重要であり,遭遇プロ

トコルに従って行動する(予防的アプローチに従い,開

発操業では既存漁場よりも低い遭遇閾値を設定する場合

もある)。SEAFO では,CCAMLR に類似した遭遇プ

ロトコルを用いて緯経度 1 度のグリッド単位で遭遇リ

スクを評価している。既存漁場に隣接したグリッドで 5

年の間に 2 年以上開発操業を行って VME との遭遇(遭

遇閾値を超える VME 指標生物の混獲)が起こらなけれ

ば,そのグリッドは既存漁場に変更される(既存漁場か

ら離れたグリッドでは 5 年の間に 3 年以上の開発操業

が必要)。60) SEAFO の管理水域は漁業の歴史が比較的

浅いことから,管轄水域の大部分を未操業域とし,上記

手順を踏むことで VME へ悪影響を与えるリスクを避け

ながら徐々に漁場を拡大するアプローチが採用されてい

る。

SAI 評価 上記の一連の管理措置を通じて,漁業が

その水域に存在する(可能性のある)VME に重大な悪

影響(SAI, signiˆcant adverse impact)を及ぼすリスク

を回避できているか最終的に確認する作業が SAI 評価

である。FAO ガイドラインによれば VME への SAI と

は,1)影響を受けた個体群の再生能力を弱める,2)

ハビタットの長期的な生産性を低下させる,もしくは

3)生物種やハビタットや群集タイプの多様性を長期的

に失わせる,ことによって生態系の構造や機能を損なう

ものと定義されている。SAI 評価を行い,無視できな

いリスクが検出されれば保護措置を強化するのが

RFMO や漁業国の使命である。しかし具体的な評価手

法は確立されておらず,順応的アプローチに則って地域

ごとに利用可能な情報を用いながら,影響評価と保存管

570570 清田

理措置の見直しを定期的に繰り返している。

公海着底漁業を管理する RFMO や漁業国は,2006

年の国連勧告に従って 2008 年前後に第 1 回目の予備的

なリスク評価を実施し,評価報告書を国連に提出した。

その後 RFMO の中では NAFO がいち早く 2016 年に大

型ヤギ類,ウミエラ類,カイメン類を対象とした一連の

SAI 評価を試行した。カーネル密度法や生物分布モデ

ルを用いて各 VME 指標生物の生息密度や出現確率の高

低を表すコンター図を GIS(地理情報システム)上のレ

イヤーとして作成しておき,漁業種類別の漁獲努力量の

マップを,漁具に対する感受性を加味した上で VME 指

標生物のコンター図と重ね合わせることにより,一つ一

つの緯経度メッシュ(ピクセル)を 1)低リスク,2)

高リスク,3)影響あり,の 3 段階に区分した。リスク

段階ごとの生息面積比率やバイオマス比率を算出するこ

とで,各指標生物が受ける影響のリスクや各漁業が与え

る影響の強弱を評価するものである。2016 年の試行で

は着底トロール漁業がウミエラ類に与えるリスクが比較

的高いことが示された。61)

4. 考 察

VME 保全議論の位置付け 生物生産が少ない深海底

の中で,局所的に海水の流動が大きく大型の固着生物が

集まって立体的なハビタットを形成している場所は,様

々な生物が摂餌場,繁殖場,養育場として利用する生物

多様性のホットスポットであると同時に好漁場にもな

る。問題は,このような深海のハビタット構築生物の中

に,壊れやすく成長が遅く,一度ダメージを受けると回

復するのに 100 年ないし 1000 年以上要するものがある

という点である。現代の人類が食料を生産し経済活動を

営むために,数世紀後まで悪影響を残すような生態系の

利用の仕方をして良いものだろうか国連の SDGs で

は目標 14 として海洋と海洋資源を持続可能な開発に向

けて保全し持続可能な形で利用することを掲げ,2020

年までに海洋生態系に対する重大な悪影響を避けること

としている。さらに目標 12 では持続可能な消費と生産

のパターンを確保を掲げ,人々が自然と調和のとれた持

続可能なライフスタイルを意識するために,必要な情報

を得ることも課題とされている。62) 漁業管理の目標と

ゴールを設定するためには価値判断が必要であるが,63)

VME に関しては,それを残すことによって得られる価

値と破壊することによって失われる価値を評価するため

の情報や意見が漁業関係者や水産物の消費者を含む利害

関係者間で十分共有されていない点が問題である。

VME の構成種は,宝石サンゴ類など一部を除けば直接

的な経済価値はないと現時点では考えられている。しか

し,様々な魚類が摂餌場所や繁殖場所として利用してお

り,冷水性サンゴ類の生息域では魚類の生息密度が高い

ことが確認されていることから,VME の消失はその水

域の生産力低下を招く恐れがある。21,6468) さらに,海水

ろ過作用や炭酸塩蓄積作用等の生態系機能も注目されて

おり,27,6971) 過去数百年の環境変動履歴の記録や将来有

効利用される可能性がある遺伝資源の継承といった価値

についても考慮が必要であろう。72,73)

前述の NAFO による SAI 評価は,リスク区分が定量

的ではないといった指摘も受けているが,底魚漁業が

VME に与える影響を総合的に評価した例として先進性

が評価されている。しかしこの NAFO の解析も,着底

漁業が近年において VME 指標生物に与える影響を評価

する内容に留まっている。最近の議論では,漁業の開始

当初から現在までの累積的な影響についても評価するべ

きではないか回復途上にある比較的低密度の指標生物

生息域も保護の対象とすべきではないかといった新し

い主張も現れている。54) この主張に従えば,既存漁業内

にも過去には VME が存在した可能性や,操業禁止にす

れば VME が回復する可能性を考慮する必要が生じてく

る。VME に関する情報がほとんど存在しない状況のも

と予防的アプローチを適用すると,既存漁場での操業が

一層制限される恐れもある。陸上に例えれば,現在農業

や林業に利用されている土地を開発前の原野や原生林に

戻すべきか,といった価値判断が求められる問題である。

VME 問題はしばしば森林伐採になぞらえて論議され

る。8,74,75) 冷水性サンゴ類の中には樹木状の大型群体を

作るものも多く,原生林を切り開いて林業や農業を営む

行為と,冷水性サンゴ類にダメージを与えながら着底漁

業を行う行為のイメージを重ね合わせやすいのであろ

う。また,指標と閾値を用いて人間活動をモニターし,

最終的には保護区と利用区を配置した空間管理により利

用と保護の両立を図る手法にも類似した面がある。そも

そも生態系をベースとした管理(EBM, Ecosystem-

Based Management)は,米国共和党政策の下で MSY

理論に基づく生産効率の最大化を目標とした皆伐と植林

が長年続けられたことにより,北米西岸の老齢林が失わ

れ野生生物が絶滅の危機に瀕したことへの反発として,

環境保護団体がフクロウを原告として森林管理当局を訴

える裁判を起こし勝訴した『フクロウ戦争』が契機となっ

て誕生した。76) この問題の解決を公約に掲げた民主党ク

リントン大統領が召集した専門家集団が,林業を営む人

々の生活を森林生態系の中に持続可能な形で調和させる

ために短期集中的に検討を重ね,伐採量を従来より抑

え,保護区と利用区を配置して森林全体を総合的に管理

する計画を答申し,問題解決に貢献した。76,77) その後保

護区と利用区の効果的配置は景観生物学として大きく発

展し,ゾーニングや空間管理は保全生態学の重要なツー

ルとなっている。水産分野においても同様に,海から魚

を獲って食べる我々の暮らしを海の生態系とどのように

571571着底漁業が VME に及ぼす影響

調和させるか,という検討と価値判断が重要であろう。

そうした議論を活性化するためには,現在の人間活動が

海洋生態系に及ぼしている影響や,生態系保全管理措置

の有効性に関する科学調査を行い,その結果を広く利害

関係者に伝えて,利用と保全に関する議論を重ねる必要

があろう。海底の生物群集は一律に脆弱であるとは限ら

ず,特に嵐などの自然撹乱を定期的に受ける比較的水深

が浅い海底の生物群集は,通常経験する自然撹乱に応じ

た回復能力を備えている。8,78,79) 林業においては,台風

や洪水などがもたらす自然撹乱の程度を参考にして人為

的な伐採の強度や頻度を調節し,生態系の回復力を利用

しながら森林を利用する近自然施業の試みもなされてい

る。80) 漁業においても海底の生物群集の機能と水産有用

種を含む海域の生産力との関係,および人為的撹乱に対

する脆弱性と回復力について調査研究を行い,回復力に

応じた人為撹乱の調節,保護区やゾーニングの設定など

を通じて生物多様性を保全しながら漁場の生産性を高め

る方法を検討すべきと思われる。既にニュージーランド

では VME 指標生物の分布予測モデルと漁場の経済価値

を GIS 上で重ね合わせて損益分析を行い,利害関係者

の意見交換を経てゾーニングの立案を行う管理方策が導

入されている。82)

我が国水産業における VME 問題 我が国の水産基本

計画の精神,『水産業は,水産資源とそれを育む漁場環

境の適切な保全を行うことによって,初めて持続的に営

むことが可能であることを再認識し,より発展した段階

に踏み出していく必要がある』からも,VME の機能と

価値を検討し,保全に取り組むことに異論はないであろ

う。日本の水産業と VME との関連性について,ここで

は 3 点を挙げて論じる。

まず第一は,日本漁船も公海底魚漁業に出漁してお

り,日本市場に漁獲物が流通し消費されていることであ

る。例えば宮城県産,青森県産,ミッドウェー産として

国内市場に流通しているキンメダイ,クサカリツボダイ

やオオメマトウダイ Allocyttus folleti は,NPFC 水域の

天皇海山漁場で漁獲されている。その他 SIOFA 水域で

はキンメダイやクロマトウダイ Allocyttus niger が,

NAFO 水域ではカラスガレイやアカウオ類が,南極海

ではメロ類(Dissostichus spp.)が漁獲されている。こ

れら水域で深海着底漁業を行う漁船は VME に対する重

大な影響を回避する必要があり対策を講じながら操業し

ているが,水産物を購入する一般消費者が漁業と VME

の関係を意識する機会が全くない点は改善が必要であろ

う。

第二の点は,我が国周辺海域でも深海生態系を保全す

るための海洋保護区の導入が進められていることであ

る。深海の生物多様性を保全する目的で沖合海底自然環

境保全地域を設定できるようにするため,環境保全法の

一部改正が 2019 年 4 月に国会で採決された。この改正

を受けて,環境省が CBD EBSA の 7 つのクライテリア

を参照して抽出した沿岸域 270 箇所,沖合表層域 20 箇

所,沖合海底域 31 箇所の『生物多様性の観点から重要

度の高い海域』(生物多様性の観点から重要度の高い海

域http://www.env.go.jp/nature/biodic/kaiyo-hozen/

kaiiki/index.html,環境省,2018 年 9 月 20 日)の中か

ら,小笠原諸島周辺の沖合海底域に自然環境保全地域が

設定される見込みである。これにより我が国の排他的経

済水域の 10 を海洋保護区にする愛知目標が達成され

ることになる。沖合海底自然環境保全地域では,鉱物の

採掘探査や海底動植物の捕獲などの行為が許可制もし

くは届出制となる。規制された行為を行う場合の事前審

査や事後評価のための規定は,今後整備されることにな

る。海底鉱物資源開発や海洋エネルギー開発などの産業

分野では,国際基準を勘案した EIA(環境影響評価,

environmental impact assessment)手法の整備が進め

られている。82,83) しかし着底漁業の影響評価に関しては

日本に前例がなく,本稿で紹介した RFMO における

VME 影響評価手法が参考になるであろう。

第三の点として,東京オリンピックに向けて我が国水

産物の持続可能性評価が求められており,84) 日本周辺漁

業についてもVME を含む生態系や環境への影響評価手

法を確立し,評価結果を広く消費者に公表することが必

要と思われる。排他的経済水域のすぐ外側の深海漁場で

外国トロール漁船が操業を始めている状況もあり,85) 排

他的経済水域の内外にかかわらず海洋生態系の保全と水

産資源の持続可能な利用に関して我が国が一貫した明確

なビジョンと管理方針を持つことが大切である。その方

法論に関しては,本稿で紹介した RFMO の事例の他に

も,国内漁業全てに対して生態リスク評価(ERA, eco-

logical risk assessment)を実施している豪州の手法な

ど参考になる例は多数ある。86,87)しかし,影響評価手法

や管理手法を整備するより先に,人間活動を生態系と調

和させ生態系サービスの持続可能な利用を達成する

EBM の主旨に従い,水産物の利用が生態系に及ぼす長

期影響をどの程度まで許容できるか価値判断を伴う議論

を行って,国民全体が納得できる利用と保全の目標を設

定することが重要である。そうした議論と合意形成の基

礎となる科学的情報の集約と発信も,これからの水産科

学が果たすべき役割であろう。

謝 辞

長崎大学水産環境科学総合研究科松下吉樹氏,自然

環境研究センター東條泰大氏,池田和子氏ならびに本誌

2 名の匿名査読者の方々からは論文草稿に有益なご指摘

とコメントをいただいた。冷水性サンゴ類の写真掲載に

関してノルウェー海洋研究所の Lene Buhl-Mortensen

572572 清田

氏よりご快諾いただいた。ここに謹んでお礼申し上げる。

文 献

1) FAO. Fisheries management 2: The ecosystem approach

to ˆsheries. FAO Technical Guidelines for Responsible

Fisheries. 2003; No. 4, Suppl. 2. FAO, Rome. 112 pp.

2) Browman HI, Cury PM, Hilborn R, Jennings S, Lotze HK,

Mace PM, Murawski, S, Pauly D, Sissenwine M, Stergiou

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proaches to the management of marine resources. Mar.

Ecol. Prog. Ser. 2004; 274: 269303.

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