0.00 4.20 2.90 1.30 4.96 1.90 4.20 0.00 4.20 2.60 2.80 6 ...€¦ · ②...

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報告様式 9 科学研究実践活動のまとめ 1. タイトル 「花いっぱい運動」で配る最短経路を探る -巡回セールスマン問題より- 2. 背景・目的 西脇北高校で行われている「花いっぱい運動」というボランティア活動は、西脇市内のいくつかの施設 に花を配りに行き、地域の方々と交流するというものである。すべての施設をまわって学校に戻ってくる 最短の経路を見つける問題は巡回セールスマン問題といわれるが、コンピュータソフトの Excel を用いて この問題の解決を試み、花いっぱい運動における最短の巡回路を見つける。 3. 方法 次の問題を考える。 花いっぱい運動において①西脇北高校を出発し、②津万保育園、③重春幼稚園、④西脇こども 園、⑤比延幼稚園、⑥日野保育園の5箇所をまわり、再び①西脇北高校に最短で戻ってくるに は、この5箇所をどの順番でまわればよいか。ただし、各施設間の道路に沿った距離と地図は 以下のようになっている。 (この行列の各成分を と書くことにする。) 日本へそ公園駅 ■比延駅 新西脇駅■ 津万保育園 重春幼稚園 比延 幼稚園 西脇こども園 西脇北高 日野保育園 整理番号 SG150083 活動番号 A-003 距離(km) 1 西脇北 2津万保育園 3重春幼稚園 4西脇こども園 5比延幼稚園 6日野保育園 1西脇北 0.00 4.20 2.90 1.30 4.96 1.90 2津万保育園 4.20 0.00 4.20 2.60 2.80 6.50 3重春幼稚園 2.90 4.20 0.00 2.30 4.10 4.20 4西脇こども園 1.30 2.60 2.30 0.00 3.10 3.10 5比延幼稚園 4.96 2.80 4.10 3.10 0.00 6.30 6日野保育園 1.90 6.50 4.20 3.10 6.30 0.00

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Page 1: 0.00 4.20 2.90 1.30 4.96 1.90 4.20 0.00 4.20 2.60 2.80 6 ...€¦ · ② 巡回セールスマン問題の最適解を求める方法の一つに蟻コロニーの最適化という手法がある。

報告様式9

科学研究実践活動のまとめ

1. タイトル

「花いっぱい運動」で配る最短経路を探る -巡回セールスマン問題より-

2. 背景・目的

西脇北高校で行われている「花いっぱい運動」というボランティア活動は、西脇市内のいくつかの施設

に花を配りに行き、地域の方々と交流するというものである。すべての施設をまわって学校に戻ってくる

最短の経路を見つける問題は巡回セールスマン問題といわれるが、コンピュータソフトのExcelを用いて

この問題の解決を試み、花いっぱい運動における最短の巡回路を見つける。

3. 方法

次の問題を考える。

問 花いっぱい運動において①西脇北高校を出発し、②津万保育園、③重春幼稚園、④西脇こども

園、⑤比延幼稚園、⑥日野保育園の5箇所をまわり、再び①西脇北高校に最短で戻ってくるに

は、この5箇所をどの順番でまわればよいか。ただし、各施設間の道路に沿った距離と地図は

以下のようになっている。

(この行列の各成分を と書くことにする。)

日本へそ公園駅 ■

■比延駅

新西脇駅■

津万保育園

重春幼稚園

比延 幼稚園 西脇こども園

西脇北高

日野保育園

整理番号 SG150083

活動番号 A-003

距離(km) 1西脇北 2津万保育園 3重春幼稚園 4西脇こども園 5比延幼稚園 6日野保育園

1西脇北 0.00 4.20 2.90 1.30 4.96 1.90

2津万保育園 4.20 0.00 4.20 2.60 2.80 6.50

3重春幼稚園 2.90 4.20 0.00 2.30 4.10 4.20

4西脇こども園 1.30 2.60 2.30 0.00 3.10 3.10

5比延幼稚園 4.96 2.80 4.10 3.10 0.00 6.30

6日野保育園 1.90 6.50 4.20 3.10 6.30 0.00

Page 2: 0.00 4.20 2.90 1.30 4.96 1.90 4.20 0.00 4.20 2.60 2.80 6 ...€¦ · ② 巡回セールスマン問題の最適解を求める方法の一つに蟻コロニーの最適化という手法がある。

学校を基点に5つの施設をまわり、再び学校に戻る経路は 602/!5 通りあり、これをすべて調べ挙

げるには大変な労力が必要となる。我々はコンピュータを用いて最短経路を求める方法をとった。 (ア)まず、隣接行列と呼ばれるものを説明する。隣接行列とは、巡回路を表す行列であり、例えば以

下の隣接行列は①→③→⑤→⑥→④→②→①という巡回路を表す。

さて、一般の隣接行列の各成分を と書くことにする。

(イ)隣接行列の条件を考慮し、問を数式化すると以下の線形計画問題の形にすることができる。

目的関数 を最小にする。

制約条件

ただし、この条件だけでは①→①や①→②→①といった部分巡回路が出てきてしまうが、部分巡回

路を禁止する制約式は数が多すぎるため、出てきた答えの中に部分巡回路が存在すればそれを禁止す

る制約式を付加して、再び解くということを繰り返すことにした。 (ウ)問題は線形計画問題であるので理論的には解くことができるが、実際には変数が多く手計算で解

くのは困難である。そこで、今回はExcelのソルバー機能というものを使いこの問題を解く。

4. 結果 (1) まず、(イ)で述べた制約条件のみでプログラムをまわすと以下の行列が表示された。

つまり①→①, ②→②, ③→③, ④→④, ⑤→⑤, ⑥→⑥という自己ループが表示されてしまう。

これを禁止するために

という6本の制約条件を付加して、再びプログラムをまわす。

(2) すると、以下の行列が表示される。

つまり①→⑥→①, ②→⑤→②, ③→④→③という部分巡回路が出てくる。まず①→⑥→①とい

う巡回路を禁止するために

という制約条件を付加して、再びプログラムをまわす。

Page 3: 0.00 4.20 2.90 1.30 4.96 1.90 4.20 0.00 4.20 2.60 2.80 6 ...€¦ · ② 巡回セールスマン問題の最適解を求める方法の一つに蟻コロニーの最適化という手法がある。

比延駅

日本へそ公園駅

新西脇駅

西脇北高

(3) すると、以下の行列が表示される。

つまり①→④→③→⑥→①, ②→⑤→② という巡回路が表示される。よって②→⑤→②という

部分巡回路を禁止するために

という制約条件を付加して、再びプログラムをまわす。

(4) すると、以下の行列が表示される。

つまり①→⑥→③→⑤→②→④→①という巡回路が表示され、これが最短経路となる。

5. 考察

地図や2.②の表からは最短距離とその経路を予想することが容易ではないが、ソルバー機能を使う

ことによって、最短経路の厳密解を求めることができた。

6. 結論 ①→⑥→③→⑤→②→④→① が最短経路であり、この経路を通った距離は16.9kmである。

以上のように、Excelを用いて最短のルートを見つけ出すことができた。このような最短ルート

の探索は、地図上の位置情報のみからは予想することが難しく、上記の方法で最短ルートを見つけ

る方法は有効であると思われる。

また、船舶の航海路の最適化についても研究が進んでいることを知り、外的なファクターが入っ

てきたときに、どのように巡回路を最適化するかについても学び、研究したい。

Page 4: 0.00 4.20 2.90 1.30 4.96 1.90 4.20 0.00 4.20 2.60 2.80 6 ...€¦ · ② 巡回セールスマン問題の最適解を求める方法の一つに蟻コロニーの最適化という手法がある。

〈今後の展望〉 ① 花いっぱい運動は全部で16か所を回る活動なので、巡回する場所を増やしてソルバー機能を試してみ

た。しかし14か所までは解くことができたが、それ以上の変数となると別の解決方法を探す必要がある。

② 巡回セールスマン問題の最適解を求める方法の一つに蟻コロニーの最適化という手法がある。

この方法でも解が導き出せるのか調べていきたい。

※ なお、本研究は、数学分野の研究においてA-005〈トリックを見抜け -ハマーシャッフルによる

手品の研究- 〉と並行して研究継続したが、その後大きく進展させることは、現在(平成30年

2月)のところできていないが、平成30年度以降も可能な限り継続する。

7. 謝辞

本研究において、指導して頂いた県立西脇北高等学校の大内先生、吉野先生、岡田先生、藤原先生に

感謝いたします。

8. 参考文献等

山本 芳嗣・ 久保 幹雄 (1997) 『巡回セールスマン問題への招待』

(シリーズ「現代人の数理」) 朝倉書店

9. 成果発表実績

中高生の科学研究実践活動推進プログラム成果発表会(連絡協議会)平成28年9月 25日(日)

平成28年度日本学生科学賞兵庫県コンクール出品

第8回サイエンスフェアin兵庫 ポスター発表

10.大学等研究者(講師)の指導の状況

サイエンスフェアにおける発表において、大阪大学山口教授並びに神戸大学伊藤教授に指導、助言をい

ただいた。

Page 5: 0.00 4.20 2.90 1.30 4.96 1.90 4.20 0.00 4.20 2.60 2.80 6 ...€¦ · ② 巡回セールスマン問題の最適解を求める方法の一つに蟻コロニーの最適化という手法がある。

報告様式9

科学研究実践活動のまとめ

1. タイトル

魚が棲まない池の謎に迫る -郷土史の研究が示唆する科学の視点- (A-001の発展型)

2. 背景・目的 -郷土史調査による鉱山の存在から-

西脇市の北に隣接する多可町中区の北端に牧野大池がある。牧野大池は、昭和8年(1933年)に潅漑目

的で建設された堤長200m、堤高5~16mの中心コア型アースダムによるダム湖で、湖畔のキャンプ場に

は夏のシーズンに多くの人が訪れる。深い青緑色の水を湛える牧野大池には、地図上で確認できる5本

程度の河川が流入しているが、地域住民の間では魚が棲まない池として知られている。実際に、池水面

の目視調査では、アメンボ等の水生昆虫は確認できることもあるが、魚影を見ることはない。これはど

の季節においても同じである。

本研究は、牧野大池に魚類が生息できない(またはしにくい)原因を、地域の言い伝えや付近の歴史的

な遺産等の研究成果を加えて、池水に溶存する物質(イオン等)の観点で明らかにするとともに、その物

質の由来を追究し、水生生物の生存できる環境への改善の手段を提言することを目的とする。

多可町を含む兵庫県中央部は、国内でも有数の産銅地帯であり、明延~生野~多可に連なる鉱床区は

県内屈指の産銅地域である。多可町の鉱山も北部の加美区から中央部の中区にかけて広範囲に分布〈主

要鉱山として記載されたもの(多可郡史)だけで18ヶ所あるが、現在はすべて廃止〉し、その中枢が

中区北部にそびえる妙見山(標高692m)麓の牧野金掘鉱山や入角鉱山の諸鉱山である。妙見山麓の鉱山

は、古い地図によると牧野大池に近い場所に位置していた(現在、鉱山の坑道はすべて埋められており、

現地調査でもその確実な位置を視認できない)と考えられることから次の仮説を立てた。

仮説:牧野大池に魚類が生息しないのは、牧野大池周辺の廃止鉱山から流出する重金属イオン等が原因

である。原因となる重金属イオンは、牧野大池の最も近くに位置していたと考えられる牧野金堀鉱山

及び入角鉱山から産出記録のある鉱物から推察して、Fe、Cu、Zn、Pb、Asのうちのいずれかである。

なお、各鉱山から産出した記録のある主な鉱物はTable1 の通りである。

Table1 牧野金堀鉱山と入角鉱山から産出した記録のある鉱物

牧野金堀鉱山 妙見山北部 1752年開坑。 主に銅、鉛、亜鉛鉱床

黄銅鉱 CuFeS2 黄鉄鉱 FeS2 方鉛鉱 PbS 鉄閃亜鉛鉱 (Zn,Fe)S

入角鉱山 妙見山東麓 延宝年間(1680年前後)以前に開坑 主に銅、鉛、亜鉛鉱床

黄銅鉱 CuFeS2 閃亜鉛鉱 ZnS 方鉛鉱 PbS 黄鉄鉱 FeS2 古い地図に記された位置からその影響が最も大きいと考える二つの鉱山の歴史は古く、牧野金堀鉱山

は宝暦2年(1752年)開坑の記録があり、入角鉱山は延宝年間(1673~1681年)以前の開坑が伝えられ

ている。入角鉱山は、周辺地域の墓石等の調査からも、宝暦年間(1751~1764年)以前にすでに採掘が行

われていたことが知られている。多可郡の鉱山全般については、安土桃山期(16世紀)に遡る例があり、

さらに中区の多可寺遺跡の鋳銅工房址は奈良時代(8世紀後半)のもので、我が国最古の梵鐘鋳造遺跡

として知られている。近辺には、「鍛冶屋」「金屋」、「吹屋址」、「金吹屋」等の地名が残り、同鉱山に附

属した吹屋村であったと考える。これら鉱山の閉山時期は不明であるが、明治後半から大正にかけて

も採掘記録がある。妙見山周辺鉱山では、入角鉱山が最も遅い時期まで採掘が行われていたようである。

整理番号 SG150083

活動番号 A-004

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345

342

528

421

192

305 中

前年度以前の研究

本研究は、試料となる池水等に溶存するイオン濃度の安定性や、段階的に広がるフィールドワークの範囲等

の問題から単年度では調査研究の完結が困難であるため、平成24年度の先行調査後、主に平成27年度

からその調査対象となるイオンの種類や調査地点(採水ポイント)を増やしながら発展的に行った。本

報告における「得られた結果(測定値)」については、平成28年以前の結果はそれを明記する。考察及

び結論等については、本年度独自のものである。

3. 方法

(1) 調査採水地域・採水ポイント

兵庫県中央部に位置する多可町中区(Figure1-A)の北部に牧野大池が位置する。Figure1-Bは牧野大池周

辺の拡大図(国土地理院電子地形図25000)である。Figure1-Cは牧野大池のダム(堤防)付近の外観を

示す。Figure1-Dは Figure1-Bの→の向きから妙見山を眺めたものである。大海山麓付近に牧野大池がある。

Figure2 と Table2で示す採水ポイントで水を採取した。

多可町中区

妙見山

牧野大池

Figure1-A 多可町中区の位置 Figure1-B 牧野大池の位置 Figure1-C 牧野大池ダム付近 Figure1-D 妙見山遠景

Table2 採水ポイント一覧 関連河川 採水ポイントの状況

河川

流入口

付近池水

流入口

以外池水

流入河川1 ㉑①② ⑤ 流入河川2 ③④ ⑦ 流入河川3 ⑧ ⑨ 流入河川4 ⑰ ⑬ 流入河川5 ⑲ ⑱ 河川6 ⑳ 河川流入口

以外の池水

(池北)⑥ (池西)⑩⑪ (池東)⑫⑬

流出河川 ⑭⑮ 河川・池水以外の水 ⑯

同一河川について複数のポイントがある場合、左の

番号が上流。⑯は、山中の溜水。河川6は地図上に

ない河川で、牧野大池への流入は確認できなかった。

Figure2 採水ポイントの位置

345

342

528

421

192

305 中

④ ③

⑤ ⑥ ⑦

⑬ ⑨ ⑰ ⑱

⑲ ⑯

流入河川1

流入河川2

流入河川3

流入河川5

⑩ ⑫

流出河川

名称(思い出川)

河川6 地形図に記

載なし

流入河川4

Page 7: 0.00 4.20 2.90 1.30 4.96 1.90 4.20 0.00 4.20 2.60 2.80 6 ...€¦ · ② 巡回セールスマン問題の最適解を求める方法の一つに蟻コロニーの最適化という手法がある。

(2) 採水の方法

Figure3に示す密封可能なボトルを用いて採水した。

ア 河川水〈以下に示す河川はFigure2に示す河川に一致する〉

A 流入河川

河川1~河川5及び河川6は、すべて水深がほぼ50cm以

下の渓流である。いずれのポイントでも河川中央の定常的

に流れがある場所で、水深の約20%の深度で採水した。

なお、河川6については、周辺の斜面が険しく、牧野大池 Figure3 採水に用いたボトル ポリエチレン製

に流入しているかどうかを確認できなかった。

B 流出河川〈調査したすべての河川中、この川のみ「思い出川」の名前がある〉

いずれのポイントでも右岸と左岸で採水して、その等量を混合してサンプルとした。

イ 池水 いずれのポイントでも、水深約30cmで採水を行った。

Figure4-A 採水ポイント②付近 Figure4-B 採水ポイント④付近 Figure4-C 採水ポイント⑦付近 Figure4-D 採水ポイント⑪付近

(3) 採水した日時等 -降水・水温の影響を考慮-

降雨後に採水した場合、重金属イオン等の濃度が増水により一時的に希釈されることが予想されるた

め、降雨の少ない期間を経過した後の休日の午前に採水した。また、イオン濃度は水温の影響も考えら

れるので、その時刻の気温が採水当日の日平均気温に比較的近い午前8時頃〈気象庁:過去気象データ

から推測〉に採水を開始した。水温変化は気温変化より穏やかで、気温同様に水温の日平均に近い温度

が 8時頃であると思われる。採水日時・気温・水温・降水量〈気温・水温は採水開始から終了までの最

低温度と最高温度(その場で温度計で測定)を Table3,4に示す。

Table3 採水日時と気象条件〈平成 28 年〉 〈日平均温度℃と降水量は気象庁 HP より 最近接アメダス観測地点(西脇)データ〉

採水日 採水時刻 気温℃〈日平均℃〉 採水水温 ℃ 採水前 81h の総降水量(期間)〈当月平均降水/日〉

5 月 8 日 8:00~10:00 17.2~21.3〈16.2〉 19.0~20.0 5.0mm (5/5, 0 時 ~ 5/8, 9 時) 〈5.3mm/日〉

7 月 3 日 8:00~10:00 27.1~28.7〈26.7〉 25.5~27.2 0.0mm (6/30, 0 時 ~ 7/3,9 時) 〈6.4mm/日〉

9 月 4 日 8:00~10:00 26.7~29.5〈26.8〉 26.2~28.1 1.5mm (9/1 ,0 時 ~ 9/4, 9 時) 〈5.5mm/日〉

Table4 採水日時と気象条件〈平成 29 年〉 〈日平均温度℃と降水量は気象庁 HP より 最近接アメダス観測地点(西脇)データ〉

採水日 採水時刻 気温℃〈日平均℃〉 採水水温 ℃ 採水前 81h の総降水量(期間)〈当月平均降水/日〉

4 月 16 日 8:00~10:00 14.6~18.6〈16.3〉 16.0~17.6 3.5mm (4/13, 0 時 ~ 4/16, 9 時)〈4.8mm/日〉

6 月 11 日 8:00~10:00 17.6~21.8〈18.9〉 19.8~20.2 2.0mm (6/8, 0 時 ~ 6/11,9 時) 〈5.5mm/日〉

9 月 2 日 8:00~10:00 20.3~24.4〈23.8〉 22.5~23.7 2.5mm (8/30 ,0 時 ~ 9/2, 9 時) 〈-mm/日〉

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(4) イオン濃度測定の方法

パックテスト(共立理化学研究所)を用いた。試薬が封入されたチュ

ーブ内での化学反応により発色させた試料水と標準色との目視によ

る比較で行った。ただし、Pb2+とAs(Ⅲ)については、客観的精度を

高めるために可視分光光度計の機能を備えたデジタルパックテストを用いた。また、濃度が低く通常の

パックテストの手法で検出困難なものは、パックテストズームを用いた。これはチューブ内の反応物を

メンブランフィルターに捕集濃縮して分析するものである。使用したパックテストの型式を Table5にま

とめる。

Table5 使用したパックテストの種類

分析

イオン

パックテストの系式

主試薬 比色

方法

測定範囲

mg/L(ppm)

Fe3+ 型式KR-Fe(D) バソフェナントロリン比色法 バソフェナントロリン 目視 0.05~2

Cu2+ 型式ZM-Cu バソクプロイン発色/膜濃縮比色法 バソクプロイン 目視 0.02~0.5

Zn2+ 型式WAK-Zn(D) 5-Br-PAPS比色法 5-Br-PAPS 2-(5-ブロモ-2-ピ

リジルアゾ)-5-(N-プロピル-N-ス

ルホプロピルアミノ)フェノール

目視 0~2

Pb2+ 高選択性分子認識ゲル(MetaSEP AnaLig)を用

いた鉛の分離、濃縮とPAR比色法

PAR 4-(2-ビピリジルアゾ)

レゾルシノール

デジタル

パックテスト

0~1

As(Ⅲ) 型式SPK-As(D) APDCによる膜分離濃縮

/モリブデン青比色法

モリブデン酸アンモニウム

硫酸スズ

デジタル

パックテスト

0.01~1

(5) 濃度測定の工夫

パックテストは標準色を用いた目視による比色分析(Figure5)である。

測定結果の精度を向上させ、信頼性を増すために次の工夫をした。

ただし、Pb2+とAs(Ⅲ)の分析では、デジタルパックテスト(可視

分光光度計の機能を備え、発色をデジタルで数値化する測定器)を

使用したため、次のアは考慮していない。

ア 実験室的環境

A 化学実験室 : 白カーテンを閉め、蛍光灯をすべて点灯。 Figure5 目視による比色の様子

〈目視による比色の客観性を増すため明るさ一定〉

B 天候:天候の安定した晴天時の午前11:30~14:00に分析。

〈実験室の明るさと室温維持〉

イ 測定の回数等

A 誤操作防止:測定値の誤りを防止するため試料毎に3回測定。平均値ではなく、3回とも同色に

発色した場合にその数値を読む。発色が異なった場合は、操作をやり直す。

B 比色の確認:目視による比色は、2人以上で行う。

ウ 亜鉛パックテスト

主試薬である 5-Br-PAPS は Zn2+以外に、Cu2+, Fe3+, Ni2+, Co3+などとも反応しやすい。そのためZn2+の

分析では、共存する他のイオン等の影響の有無を確認するため、各試料水に一旦測定した濃度の2

倍濃度になるように標準試料(ZnSO4)水溶液を添加する。添加後に再度パックテストを行い、測

定値が通常のパックテストの場合の2倍程度になることを確認する。

今回の確認実験では、パックテストの結果に共存する他イオンの影響は見られなかった。

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4. 結果

(1) 測定値

分析の結果を Table6にまとめる。平成 24 年度と平成 27 年度の測定値は、各年度の 12 月に採水した水

を試料とした。平成 28年と平成 29年度の測定値は、Table3と Table4に示すように各年度とも 3回の採水

を行い、それぞれの試料についてその都度測定を行った。その場合、測定値の月ごとの変化の一定の傾向

は見られなかったが、測定値が異なる場合、より多く現れた数値を結果として採用した。また、月ごとに

すべての値が異なる場合、その中央の値を採用した。

Table6 測定値 単位 ppm(mg/L) 〈BK1:イオン交換水,BK2:実験室水道水 -:採水なし〉 pHはすべて 6.6~7.2 の範囲 採水ポイント BK1・2 ① ② ③ ④ ⑤ ⑥ ⑦ ⑧ ⑨ ⑩

Fe3+

H24 0 - - - - - - - - - -

H27 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0

H28 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0

H29 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0

Cu2+ H24 0 - - - - - - - - - 0.3

H27 0 0.02 0.02 0 0 0.02 0.02 0.02 0.02 0.05 0.2

H28 0 0.02 0.02 0 0 0.05 0.05 0.02 0.02 0.05 0.3

H29 0 0.05 0.02 0 0 0.02 0.05 0.05 0.02 0.05 0.2

Zn2+ H27 0 0.1 0.1 0 0 0.1 0.05 0.05 0.5 0.5 0.5

H28 0 0.2 0.2 0 0 0.05 0.1 0.05 1 0.5 0.5

H29 0 0.2 0.2 0 0 0.1 0.1 0.1 0.5 0.5 0.5

Pb2+ H28 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0.05

H29 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0.06

As(Ⅲ) H29 0 0 0.009 0 0 0 0 0 0 0 0

採水ポイント ⑪ ⑫ ⑬ ⑭ ⑮ ⑯ ⑰ ⑱ ⑲ ⑳ ㉑

Fe3+ H24 0 - - 0 0 - - - - - -

H27 0 0 0 0 0 - - - - - -

H28 0 0 0 0 0 - - - - - -

H29 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0

Cu2+ H24 0.1 - - 0.02 0.02 - - - - - -

H27 0.1 0.1 0.05 0.02 0.02 - - - - - -

H28 0.1 0.05 0.02 0.02 0.02 - - - - - -

H29 0.1 0.1 0.02 0.02 0.02 0.02 0.02 0.02 0 0.02 0.02

Zn2+ H27 0.1 0.2 0.1 0.1 0.05 - - - - - -

H28 0.2 0.1 0.1 0.1 0.05 - - - - - -

H29 0.2 0.1 0.1 0.05 0.05 0 0.05 0.1 0 0.05 0.5

Pb2+ H28 0.04 0.05 0.03 0 0 - - - - - -

H29 0.05 0.03 0.03 0 0 0 0 0 0 0 0

As(Ⅲ) H29 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0

Fe3+はすべての時期及び採水ポイントで検出されない/Pb2+とAs(Ⅲ)は目視比色でなく、機器による

Cu2+ の測定段階 0.02・0.05・0.1・0.2・0.3・0.5 Zn2+ の測定段階 0.05・0.1・0.2・0.5・1・

2以上

Page 10: 0.00 4.20 2.90 1.30 4.96 1.90 4.20 0.00 4.20 2.60 2.80 6 ...€¦ · ② 巡回セールスマン問題の最適解を求める方法の一つに蟻コロニーの最適化という手法がある。

(2) イオン分布 Cu2+ 〈平成29年度測定値〉

Figure6 Cu2+のイオン分布 ○:河川水 □:池水 ×:検出されない 図中に示すように、○、□はそれぞれ大きさで濃度の濃淡を表す。

ア 流入河川 北からの流入河川2と東からの流入河川5からは全く検出されない。また、他

の流入河川についても検出されるポイントはあるが、低濃度である。

イ 池水 池西部の採水ポイント⑩が最大である。その近くのポイントも比較的高濃度を

示し、その対岸の池東部では低濃度である。

ウ 流出河川 流出口にあたる池水中の採水ポイント⑪では、比較的高い値であるが、河川中

の採水ポイントでは、濃度が低下する。

342

528

421

192

305 中

㉑①② 河川 1 検出せず

⑳ 河川 6 検出せず

③④ 河川 2 検出せず

⑤⑥⑦⑱ 池水 検出せず

⑲ 河川 5 検出せず

⑰ 河川 4 検出せず

⑬ 池水 0.03mg/L

⑯ 溜水 検出せず

⑨ 池水 検出せず

⑫ 池水 0.03mg/L

⑭⑮ 流出河川 検出せず

⑩ 池水 0.06mg/L

⑧ 河川 1 検出せず ⑪ 池水 0.05mg/L

㉑ 河川 1 0.02mg/L

① 河川 1 0.05mg/L

⑳ 河川 6 0.02mg/L

② 河川 1 0.02mg/L ③④ 河川 2 検出せず

⑥ 池水 0.05mg/L ⑤ 池水 0.02mg/L

⑯ 溜水 0.02mg/L ⑲ 河川 5 検出せず

⑦ 池水 0.05mg/L ⑰ 河川 4 0.02mg/L

⑬⑱ 池水 0.02mg/L

Page 11: 0.00 4.20 2.90 1.30 4.96 1.90 4.20 0.00 4.20 2.60 2.80 6 ...€¦ · ② 巡回セールスマン問題の最適解を求める方法の一つに蟻コロニーの最適化という手法がある。

(3) イオン分布 Zn2+ 〈平成29年度測定値〉

Figure7 Zn2+のイオン分布 ○:河川水 □:池水 ×:検出されない 図中に示すように、○、□はそれぞれ大きさで濃度の濃淡を表す。

ア 流入河川 北からの流入河川1と東からの流入河川3の上流の濃度が高い。池水への流入

源であると考える。その他の流入河川からは検出されないか、低濃度である。

イ 池水 池西部の採水ポイント⑩が最大である。その近くの採水ポイントも高い値を示

すことは、Cu2+分布と似ている。流入河川3の流入口付近も、河川1流入口付

近と比べるとより高濃度である。

ウ 流出河川 流出口にあたる池水中の採水ポイント⑪では、比較的高い値であるが、河川中

の採水ポイントでは、低い値となる。このことも、Cu2+分布と似ている。

342

528

421

192

305 中

㉑ 河川 1 0.5mg/L

① 河川 1 0.2mg/L ⑳ 河川 6 0.05mg/L

② 河川 1 0.2mg/L ③④ 河川 2 検出せず

⑤ 池水 0.1mg/L ⑥ 池水 0.1mg/L

⑲ 河川 5 検出せず ⑯ 溜水 検出せず

⑰ 河川 4 0.05mg/L

⑬⑱ 池水 0.1mg/L

⑦ 池水 0.1mg/L

⑨ 池水 0.5mg/L

⑩ 池水 0.5mg/L

⑧ 河川 3 0.5mg/L

⑪ 池水 0.2mg/L

⑫ 池水 0.1mg/L

⑭ 流出河川 0.05mg/L

⑮ 流出河川 0.05mg/L

Page 12: 0.00 4.20 2.90 1.30 4.96 1.90 4.20 0.00 4.20 2.60 2.80 6 ...€¦ · ② 巡回セールスマン問題の最適解を求める方法の一つに蟻コロニーの最適化という手法がある。

(4) イオン分布 Pb2+ 〈平成29年度測定値〉

Figure8 Pb2+のイオン分布 ○:河川水 □:池水 ×:検出されない 図中に示すように、○、□はそれぞれ大きさで濃度の濃淡を表す。

ア 流入河川 すべての河川から検出されない。

イ 池水 池西部の採水ポイント⑩をはじめ4箇所の採水ポイントで検出された。

ウ 流出河川 検出されない。

342

528

421

192

305 中

㉑①② 河川 1 検出せず

⑳ 河川 6 検出せず

③④ 河川 2 検出せず

⑤⑥⑦⑱ 池水 検出せず

⑲ 河川 5 検出せず

⑰ 河川 4 検出せず

⑬ 池水 0.03mg/L

⑯ 溜水 検出せず

⑨ 池水 検出せず

⑫ 池水 0.03mg/L

⑭⑮ 流出河川 検出せず

⑩ 池水 0.06mg/L

⑧ 河川 1 検出せず ⑪ 池水 0.05mg/L

Page 13: 0.00 4.20 2.90 1.30 4.96 1.90 4.20 0.00 4.20 2.60 2.80 6 ...€¦ · ② 巡回セールスマン問題の最適解を求める方法の一つに蟻コロニーの最適化という手法がある。

5. 考察

(1) Cu2+の由来

ア 河川由来を否定:池水中の採水ポイント⑩のCu2+濃度が高いが、5本の流入河川から検出される

Cu2+はいずれも低濃度であるか全く検出されないために、採水ポイント⑩付近のCu2+は流入河川

由来ではない可能性が高い。少しずつ河川から流入したCu2+が、池水中で濃縮された可能性を検討

したが、牧野大池は地域の水田や田畑等の灌漑用溜池で、流入河川の水はほぼ涸れることなく牧野

大池に流入し、一定水位以下にならないように留意して定期的に放流していることを考えると、

Cu2+が流入河川由来でその後、濃縮を受けた可能性は低い。

イ 鉱山跡付近から流出の可能性:文献調査で、河川3上流付近に入角鉱山が位置していたことが判明

し、採水ポイント⑧から妙見山の方向に標高差で 50m 程登ったところに、ズリ(廃石)を見つけた

(Figure9)。おそらく、入角鉱山跡付近と思われる。しかし、採水ポイント⑧から検出されるCu2+が

低濃度であることから、やはりCu2+ の入角鉱山跡からの溶出は少なく、牧野大池のCu2+の大部

分は、直接の鉱山跡由来ではないと考える。

なお、牧野金堀鉱山は、他のイオンの分析からおそらく流入河川1の採水ポイント①のさらに上流

部にあった可能性が高いと考えられるが、入角鉱山同様にCu2+の溶出は少なく、

採水ポイント⑩の高濃度のCu2+の直接の由来ではないと考える。

ウ 池畔に埋設されたズリ等の鉱山廃棄物の可能性:以上のことから、

牧野大池内のCu2+の大部分は採水ポイント⑩付近の池畔地中や

池底に埋設されたズリが存在し、そこから溶出している可能性があ

ると考える。多可町石垣山遺跡(入角鉱山から西に数km)の発掘調

査で約2万トン余りのズリが発見された経緯もあることから、入角

鉱山や牧野金堀鉱山に由来するズリやカラミ(銅を精錬した後の不

純物)が未だ処理されずに牧野大池池畔の地下や池底に存在する可

能性を否定できないと考える。 Figure9 入角鉱山跡付近と思われる地点のズリ

(2) Zn2+の由来

Zn2+は北からの流入河川1の採水ポイント全てと西からの流入河川3の採水ポイントで濃度が高

い。特に流入河川3は前述のように入角鉱山跡近くを源流とし、流入河川1もその金属イオンの存在状

況から牧野金堀鉱山(鉱山跡は確認できなかった)近くに源流があると思われる。Zn2+は、廃止鉱

山からCu2+よりも多くの量が流出し、牧野大池に流入していると考える。

また、池水中では採水ポイント⑩とその周辺の濃度が、Zn2+が流入していると思われる河川1の

流入口付近と比べると不自然に高く、これは流入河川3からのみに由来するZn2+では説明がしにく

い。したがって、(1)ウで述べた採水ポイント⑩付近に埋設されたズリやカラミの存在を示唆してい

ると考える。

(3) Pb2+の由来

平成28年度調査(Table5)で池水に少なからずPb2+が溶存していることが判明した。しかし、当時調

査した3本の流入河川からは、Pb2+は全く検出されず、その由来を調査するために本年度は、採水ポ

イントを6地点増やした。しかし、どの流入河川からもPb2+は検出されず、池中の採水ポイント⑩と

その付近の濃度が高いことが確認された。Cu2+、Zn2+の分析結果による考察同様に、採水ポイント

⑩付近に埋設されるカラミ等が原因である可能性が否めない。

(4) Fe3+、As(Ⅲ) 由来 いずれもほぼ、検出されなかった。

Page 14: 0.00 4.20 2.90 1.30 4.96 1.90 4.20 0.00 4.20 2.60 2.80 6 ...€¦ · ② 巡回セールスマン問題の最適解を求める方法の一つに蟻コロニーの最適化という手法がある。

6. 結論

(1) 重金属の生物学的意義

Cuは生物にとって必須元素であり、人を対象として定められた「水道法水質基準」は、基準値が1

~5ppmと高い。これに対し、水生生物対象の「水産用水基準(淡水域)」では、0.0009ppmである。また、

Znも生物に必須元素であり、酵素反応等に関与するが、水生生物に対する影響が懸念され、「水生生

物の保全に関する環境基準(淡水域)」では、0.03ppmが設定されている。これらのことからも、水生生

物に対するCuやZnの毒性は牧野大池では無視できず、魚類の姿が見えないのは、溶存するCu2+や

Zn2+の影響は否めない。また、鉛は生物にとって毒性が高く「人の健康の保護に関する環境基準」で

0.01pm以下と定められている。水生生物の生存のために牧野大池はCu2+とZn2+及びPb2+の影響

で非常に厳しい環境である。

(2) (1)を踏まえた結論

牧野大池池水中に存在する重金属イオンのうち、水生生物に影響を与えているのはCu2+とZn2+

及びPb2+である。さらに、それらの金属イオンは廃止鉱山(入角鉱山と牧野金堀鉱山)から直接流出

しているものだけでなく、視認していないが池西部の池畔付近の

地下または池底に埋まるカラミ等の鉱山廃棄物が主な原因であ

る可能性を、本研究は強く示唆している。 牧野大池池水に溶存

するCu2+とPb2+は、廃止鉱山から流出する部分はわずかで、

大部分が池畔の地中の鉱山破棄物由来ではないかと考える。また、

Zn2+もその多くは地中の鉱山廃棄物由来であり、さらに廃止鉱

山からの流出も続いていると考える。 Figure10 鉱山廃棄物が埋設されている可能性のある西部の池畔)

(3) 研究の展望と提言

牧野大池における水生生物生存のための環境改善に向けて、特に池西部の採水ポイント⑩付近の地中

の状況調査を行い、埋設されている可能性のある鉱山廃棄物の除去と重金属イオンの流出防止工事を行

うことが肝要であると考える。より具体的な方策を、同様の環境にある池等の状況も調査しながら、魚

が棲まない他の要因が無いかを更に具体的に探ることで見出したい。 7. 謝辞

本研究において、ご指導頂いた兵庫県立西脇北高等学校 藤井 俊 主幹教諭に深くお礼申し上げます。 8. 参考文献等

(1) 水質の簡易分析製品 株式会社 共立理化学研究所 http://kyoritsu-lab.co.jp/

(2) 水環境調査の基礎 改訂版 新井正 著 2003年 古今書院

(3) 環境省HP 水土壌地盤環境保全 http://www.env.go.jp/water html

(4) 国土交通省 気象庁HP (気象データ) http://www.data.jma.go.jp/obd/stats/etrn/index.php

(5) 播磨産銅史の研究 妙見山麓遺跡調査会編 1987年

(6) 兵庫鉱業史の研究Ⅰ 妙見山麓遺跡調査会編 1994年

(7) 中町史 中町史編集委員会 平成3年8月1日

(8) 多可郡史初版及び復刻版 兵庫県多可郡 大正12年 12月 18日(復刻版 昭和60年 8月 25日) 9. 成果発表実績

(1) 第 15回高校生科学技術チャレンジ JSEC 2017 出品

(2) 第 10回サイエンスフェアin兵庫 でポスター発表(第8,9回同発表会の発展型) 10.大学等研究者(講師)の指導の状況

大阪大学大学院理学研究科 山口和也教授にテーマ設定等において指導助言を受けた。

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報告様式9

科学研究実践活動のまとめ

1. タイトル

トリックを見抜け –ハマーシャッフルによる手品の研究-

2. 背景・目的

数学の授業で先生に見せていただいた、トランプを使った手品を見て興味をもった。そこで色々な手品

を調べていくと、ハマーシャッフルというシャッフル方法があることを知った。単純な操作だが、そこに

は数学がひそんでおり様々な手品に応用されていることを知り、証明してみようと思った。

3. 方法

我々はまず、全ての手品の基本であるハマーシャッフルについて、学んだ。

このハマーシャッフルを用いた手品と、数学的帰納法を用いた証明を学んだ。

整理番号 SG150083

活動番号 A-005

Ⅰ ベビーハマー ① 4枚のカードをそろえて、一番下のカードを覚える。 ② 一番上のカードを一番下に移して、一番上になったカードを表向きにする。 ③ カードの束をカットして、上から2枚のカードをまとめて裏返す。 ④ もう一度カットしたら、また上の2枚のカードをまとめて裏返す。 ⑤ さらにカットして、上の2枚のカードをまとめて裏返す ⑥ 一番上のカードを裏返したら、束の一番下に移す ⑦ 束の一番上のカードを一番下に移したら、一番上になったカードを裏返す。 ⑧ そうすると1枚だけ逆向きのカードが!

Ⅱ ハマーのトリック ①すべて裏向きで 10 枚用意する。 ②ハマーシャッフルを好きなだけ繰り返す ③混ざったカードを 1 枚おきに裏返す。 (つまり上から 2 枚目、4 枚目、6 枚目、8 枚目、10 枚目を裏返す) ④そうすると 5 枚のカードが表向きになっている ⑤表向きのカードと裏向きのカードを交互になるように並べ替える ⑥好きなだけハマーシャッフルを繰り返す ⑦混ざったカードを 1 枚おきに裏返す(③と同じ) ⑧そうするとすべてのカードが同じ向きになる

ハマーシャッフルとは トランプのシャッフル方法の一つで 「任意の位置でカットしてから上から 2 枚をまとめて裏返す」ことである。

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これらのトリックを証明するにあたり、まずはハマーシャッフルについての定理とその証明を学んだ。

○ 定理の証明

定理を(*)とおく

〈証明〉

ⅰ)始めの状態では(*)は成り立っている。

ⅱ)ある回数ハマーシャッフルをした後、(*)が成り立っていると仮定する。

①そこから一回カットしたとき(*)は成り立つ。

②またカットで何枚のカードを移動させても(*)は成り立つ。

①,②より何回カットしても(*)は成り立つ。

次に裏返すことを考える。束の一番上にある2枚のカードという組み合わせは

(裏、裏)(裏、表)(表、裏)(表、表)

それぞれ裏返すと

(表、表)(裏、表)(表、裏)(裏、裏)

⇒よって(*)は成り立つ Q.E.D

手品の証明

○ ハマーのトリックの証明

2n枚のカードを用意する。

このうち、偶数番目はn枚、奇数番目はn枚のカードがある。

この束でハマーシャッフルを任意の回数行う。

このとき偶数番目のカードのうち、A枚が表向きだとすると偶数番目の裏向きのカードはn-A枚である。

定理により奇数番目の表向きのカードA枚、裏向きのカードはn-A枚ある。

ここから偶数番目のカードのみを取り出して裏返すと

偶数番目の表向きのカードn-A枚、 裏向きのカードA枚となる。

よって、表向きのカードの枚数は n-A+A=n枚

裏向きのカードの枚数は n-A+A=n枚

表と裏の数は一致する。 Q.E.D

○ ベビーハマーの証明

②の操作で三枚のカードを同じ向きにして、一枚のカードは逆向きにする。

このとき逆向きのカードを「ハグレモノ」とよぶことにする。

カードの束の一枚目と三枚目を仲間とする。

カードの束の二枚目と四枚目を仲間とする。

②の操作の後では覚えたカードとハグレモノが仲間である。

そこからハマーシャッフルを繰り返すと

覚えたカードとハグレモノが仲間である関係が保たれる。

⑦の操作では一枚のカードとその仲間を裏返すことになる。 Q.E.D

定理 すべて裏向きの 2n 枚のカードから始めてハマーシャッフルをすると「上から数えて偶数番目のカード

のうち表向きの枚数と上から数えて奇数番目の表向きのカードの枚数は等しい」

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最後に、ロイヤル・ハマーという手品を学んだ。

4. 結果

先述の3つの手品を実践し、うまくいくことを実証した。マジックの聴衆感動させる1つの要因は、マ

ジックを演じる者が決定するのではなく、ある一人の聴衆の決定により行われる部分である。今回のマジ

ックで言うと例えば、ハマー・シャッフルを任意の回数行うところにある。ハマー・シャッフルにより保

たれる性質を論理的に見ることにより、マジックの内容を数学的に見て、説明ができるようになった。

5. 考察

普段のシャッフルとの違いに戸惑いがあったが、ハマー・シャッフルに慣れると特有のカードの動きに

気付くことができた。定理のような性質のおかげでカードの並びが保たれていることが練習していくとわ

かってきた。

6. 結論

先述したが、「ハマーシャッフルにより保たれる性質」を他にも見つけ、ハマー・シャッフルによる手品

を自分たちでも、編み出してみたいと思った。また、その証明についても行ってみたい。さらに、ハマー

シャッフルを応用した別のシャッフル方法を編み出し、手品を考えてみたいとも思った。

7. 謝辞

本研究において、指導して頂いた県立西脇北高等学校の大内先生、吉野先生、吉田先生、岡田先生に感

謝いたします。

8. 参考文献等

数学で織りなすカードマジックのからくり」, 著者 Persi Diacoins , Ron Graham,

訳者 川辺治之 共立出版

9. 成果発表実績

平成29年度 日本学生科学賞兵庫県コンクール出品

第10回サイエンスフェアin 兵庫 ポスター発表(第9回の同発表会の発展型としてポスター発表)

10.大学等研究者(講師)の指導の状況

サイエンスフェアにおける発表において、大阪大学山口教授並びに神戸大学伊藤教授に指導、助言をぃ

ただいた。

ロイヤル・ハマー ① ロイヤルストレートフラッシュを含んだ偶数枚のカードを用意する ② このカードが表むきになるようにもって、上から2枚ずつとっていき、次の操作をする

[Ⅰ] 2枚ともロイヤルストレートフラッシュのカードではないとき2枚目のカードを裏返して机に置く [Ⅱ] 2枚のうち一番上のカードだけがロイヤルストレートフラッシュのカードの時1枚目のカードを裏

返し、2枚目のカードも順序を変えずに裏返しておく [Ⅲ] 2枚目のカードだけがロイヤルストレートフラッシュのカードのとき2枚とも裏返さずにそのまま

机に置く [Ⅳ] 2枚ともロイヤルストレートフラッシュのカードのとき1枚目のカードだけを裏返し机に置く

③ [Ⅰ] ~ [Ⅳ] をカードがなくなるまで繰り返す ④ できた束を2枚ずつ取りそのままにするか裏返すか観客に聞きながらカードがなくなるまで繰り返す ⑤ 混ざった束を(左、右、左、右というように)2つの束に繰り返す ⑥ 片方の山をもう片方の裏返して重ねると、ロイヤルストレートフラッシュのカードのみが裏返っている

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報告様式9

科学研究実践活動のまとめ

1. タイトル

山田錦はなぜ酒米として優れているのか-甘酒づくりを通して2-

2. 背景・目的

多可町は酒米の代表的な品種の一つである山田錦発祥の地である。日本酒は麹菌がつくるアミラーゼ等の酵素に

よって米のデンプンが分解されることで、アルコール発酵の基質となるグルコースを得ている。米をアミラーゼなどで

糖化したものを甘酒と言い、甘酒づくりは現在でも秋祭りなどの機会に多くの家庭で行われている。本研究では、甘酒

にした際の山田錦とうるち米の糖度や食味の違いなどから、なぜ山田錦が酒米として優れているのか探っている。

3. 方法

(1)実験器具等

・恒温器 ・糖度計 ・温度計 ・炊飯器 ・乳鉢 ・乳棒 ・精密天秤 ・ニンヒドリン

・TLCシート ・展開槽 ・展開溶媒(1-ブタノール、酢酸)

(2)実験材料

・山田錦(兵庫県産) ・うるち米(兵庫県産) ・甘酒用麹

米の精米の度合いを示すために重量精米歩合を用いた。

重量精米歩合(%)=精米後の重量÷玄米重量×100

(3)糖度測定方法

1.米を研ぎ、1時間以上水に浸漬する。

2.米100gに対し水を400g加えて炊飯する。

3.炊飯後温度計で温度が65℃になったのを確認し、甘酒用麹を米100gに対し100g混ぜる。

4.密封容器に(3)の材料を入れ、60℃で15時間保温する。

5.冷却後、乳鉢で均一になるまですりつぶし、糖度計で糖度を測定する。

(4)ニンヒドリン反応によるアミノ酸およびタンパク質の検出

1.甘酒は乳鉢で均等になるまですりつぶし、水で5倍に希釈する。

2.TLCシートにそれぞれの検体を毛細管を使ってスポッティングする。

3.薄層クロマトグラフィー(展開溶媒 1-ブタノール:酢酸:水=4:2:1)によりアミノ酸を分

離する。

4.展開が終わったTLCシートを乾燥させる。

5.4に0.5%ニンヒドリン水溶液を噴霧し、ホットプレートで加熱する。

6.アミノ酸が呈色したら、加熱を止める。

整理番号 SG150083

活動番号 A-006

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4. 結果

(1)60℃で15時間保温した結果:米の粒の形状等の観察、食味

(2)糖度計での測定結果

糖度計を用いて、甘酒の糖度を測定した。甘酒全体の糖度を測定するため乳鉢で均一になるようによ

くすりつぶして測定した。サンプルの間に糖度の差はなかった。

(3)尿検査薬(尿糖)を用いたグルコースの検出

いずれの条件でもグルコースは検出された。甘みの成分にグルコースが含まれていることが明らかに

なった。

(4)ニンヒドリン反応によるアミノ酸およびタンパク質の検出

ニンヒドリン反応を用いて、甘酒の中のアミノ酸やタンパク

質を検出した。

山田錦では、精米歩合が92%のものより85%のものの方が甘

酒の中のアミノ酸やタンパク質の量が少なくなることが示唆さ

れた。(右写真)

5. 考察

山田錦とうるち米で甘酒にした際に顕著に見られた差は、食味の違いである。食味の評価は、食品の官

能評価法に準じて、評価用紙を用い行った。その結果、うるち米は後味を強く感じるのに対し、山田錦の

甘酒では清涼感のある甘みを感じ、後味をほとんど感じないという評価になった。糖度は糖度計で測定して

おり、検体の間でほとんど差は見られなかった。糖度計で測定した糖度は液体中の固形分の割合を表すので、米の加

水の割合がどの検体でも同じなので、差が出なかったと考えられる。

酒の後味の原因と考えられる米粒のタンパク質は、最外部層より6%内部に入った層に最も多く15.5%

も含まれており、さらに内部層に入ると約30%層までは急激な減少が認められること 1)が知られている。

うるち米 山田錦 85% 山田錦 92%

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また山田錦の特徴として、酒造適性で負の因子となるタンパク質(グルテリン)が中心部の分布が少な

いこと 2)が示されている。そのため、精米することで米粒の外部層に多く分布しているグルテリンを効率

的に取り除くことができると考えられる。

実験では、精米歩合を変えて山田錦の甘酒をつくったところ、精米歩合が大きいほど後味を感じなくな

った。そのため、食味の違いは、米に含まれるデンプンの割合よりも、アミノ酸やタンパク質の影響が大

きいのではないかと考え、ニンヒドリン反応を用いて、アミノ酸とタンパク質の検出を行った。その結果、

精米歩合が大きいほどタンパク質やアミノ酸の割合が減少することが示唆された。ただ、家庭用の精米器

では85%以上に精米歩合を低くすることができないため、この仮説を明らかにするためにはサンプルの入

手方法を検討する必要がある。

今後、甘酒の味の違いは米のタンパク質やグルテリンが分解されて生成したグルタミン酸の量の違いで

あるのかを確かめるために、薄層クロマトグラフィーによるグルタミン酸の検出および甘酒に含まれるタ

ンパク質とアミノ酸の定量を行うことを計画している。

6. 結論

山田錦で作った甘酒は、うるち米で作った甘酒より後味がさわやかである。それは、山田錦の方がより

多く米を研磨することができるために、タンパク質やアミノ酸の割合が低くなるからだと考えられる。

7. 謝辞

本研究において、指導していただいた県立西脇北高等学校の梅村裕子教諭に感謝いたします。

8. 参考文献等

1)布浦,光永,井戸:食物学会誌・第27号,42(1972)

2)増村ら:平成25年度 京都府立大学地域貢献型特別研究(ACTR)成果 A31

9. 成果発表実績

平成29年度日本学生科学賞兵庫県コンクール出品(平成28年度同コンクールの発展型として出品)

第10回サイエンスフェアin兵庫(第8,9回における同発表会の発展型としてポスター発表)

10.大学等研究者(講師)の指導の状況

関西学院大学理工学部山田英俊教授にグルコースの定量化について助言をいただいた。

※ 本研究はA-002の研究の発展型である。

Page 21: 0.00 4.20 2.90 1.30 4.96 1.90 4.20 0.00 4.20 2.60 2.80 6 ...€¦ · ② 巡回セールスマン問題の最適解を求める方法の一つに蟻コロニーの最適化という手法がある。

報告様式9

科学研究実践活動のまとめ

1. タイトル

熱濃硫酸が作用したp-ニトロアニリンの爆発的変化の仕組み 2. 背景・目的

p-ニトロアニリンは芳香族ニトロ化合物で強い甘味がある。太平洋戦争末期の混乱期に砂糖の代用品

として間違って使用されたこともある。水生生物への強い毒性があり、管理には注意を要する。

本物質を濃硫酸と混合して加熱すると爆発的に反応し、数千倍もの体積に膨れあがる。その様子は、非

常に特異であり他に例を見ない。その反応メカニズムは生成物に対する考え方が文献等により一定の見

解をもたないことを知り、生成物の同定及びその反応メカニズムの検討を行うこととした

3. 方法〈p-ニトロアニリンの脱水反応〉

(1) 100mL程度のビーカーでp-ニトロアニリン7gと濃硫酸6mLをかき混ぜて黄褐色のペースト状にする。

(2) (1)のビーカーを三脚・金網上に置いて、ガスバーナーの炎で穏やかに加熱する。

(3) (2)のペーストが黒く変色したら、離れてビーカー内容物の変化を観察する。

4. 結果

スクロース(ショ糖)等は濃硫酸の強い脱水作

用により、炭素Cになることはよく知られている。

この場合もスクロース同様にp-ニトロアニリン

の濃硫酸により脱水等が起こり、右の写真のよう

な生成物が爆発的に生成する。

生成物は、炭素の単体を多く含むと思われるが、

この場合の反応容器であるビーカーと同じ太さの

棒状になる。 p-ニトロアニリンと濃硫酸の反応生成物 5. 考察

このような生成物が生じるのは、反応に伴って大きな発熱があることが大きな要因であると考える。砂

糖水(スクロース)の飽和水溶液に濃硫酸を入れると、激しい溶解熱で水が沸騰し、スクロースの脱水に

よって生じた固体炭素Cを含んだ水が沸騰して水蒸気が発生する。そのため体積が急激に増加する。

P-ニトロアニリンの場合は水を生じる源が化合物内の水素と酸素しかないので、あまり湯気が発生しな

い。そのとき、水分は水蒸気となって大気中に逃げていくので、最後は黒い棒はスポンジのように水蒸気

等が抜けたところはスカスカの穴があいている状態になる。 6. 結論

反応時には、白煙がキノコ雲のように発生し、その雲が徐々に実験室の下に降りてくる。重い成分を含

んだ煙であり、その中には硫黄酸化物や硫酸ミストを含むと思われる。発生する水蒸気が少ないため硫黄

を含んだ物質が爆発の原動力であると考えるが、生成物が単なる炭素だけでなく、p-ニトロアニリンの縮

合重合生成物を含む可能性も否めない。今後の検討が必要である。 7. 謝辞 本研究において、ご指導頂いた兵庫県立西脇北高等学校 藤井俊主幹教諭にお礼申し上げます。 8. 参考文献等 実験による化学への招待 日本化学会 訳編 丸善株式会社 1987

Chemical Demonstraitions Lee R.Summerlin James L.Ealy Jr.

9. 成果発表実績 なし

10.大学等研究者(講師)の指導の状況 大阪大学大学院理学研究科 山口和也教授に生成物の可能性につ

いて指導助言を受けた。

整理番号 SG150083

活動番号 A-007