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分枝過程 1 (Galton-Watson 過程) 授業振替 (休講⽇)7⽉19⽇(⽕) 2限 (11:10-12:40) (振替⽇)7⽉12⽇(⽕)5限 (16:40-18:10) http://www.slideshare.net/ShinjiNakaoka 授業レクチャーノート 授業1つ前に事前公開予定、授業後、追加スライド挿⼊、誤植など 訂正分を再アップロード

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分枝過程

1

(Galton-Watson 過程)授業振替(休講⽇)7⽉19⽇(⽕) 2限 (11:10-12:40)(振替⽇)7⽉12⽇(⽕)5限 (16:40-18:10)

http://www.slideshare.net/ShinjiNakaoka

授業レクチャーノート

授業1つ前に事前公開予定、授業後、追加スライド挿⼊、誤植など訂正分を再アップロード

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はじめに

2参考:確率過程と数理⽣態学 藤曲哲郎著 P. 47

感染症はその⼟地で定着するか、それとも収束するか?

海外からもたらされた新興感染症がはたして⽇本で拡散するかどうかを考える。海外での感染者を第0世代とすると、数⽇後に発症すると、第1世代の感染者を⽣み出す可能性がある。第1世代は更に発症して第2世代の感染者を⽣み出す可能性がある。このようにして数⽇経過した場合、街中に感染が広まるかもしれず、⼀⽅、快復によって感染が広がらずに定着するかもしれない。

感染が拡⼤するスピード (個体数増加)はどれくらいか、もしくは、もし撲滅できた場合にはいつか、また、限りなく感染は拡⼤し続ける可能性はないか、感染が拡⼤した場合に最⼤どれくらいの感染者が⽣まれるかについて考察していく。

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はじめに

3参考:確率過程と数理⽣態学 藤曲哲郎著 P. 47

確率性を考慮しない場合 (Malthus 増殖)第0世代の個体数を x0 とし、時刻 t における個体数を x(t) とする。1個体あたり単位時間あたりの増殖率は、Malthus 増殖

ここで、b, d はそれぞれ個体群出⽣率、死亡率を表す。r=b-d とおき、上記の微分⽅程式を解くと

r>0 のとき個体数は指数関数的に増加する⼀⽅、r<0 ならば個体数は指数関数的に減少する (半減期) : 指数もしくは Malthus 増殖という

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単純分枝過程

4参考:確率過程と数理⽣態学 藤曲哲郎著 P. 47-50

第0世代の個体数を X0、第1世代の個体数を X1、…第 n 世代の個体数を Xn とする。Xn の変動を調べるため、以下の仮定を置く。

(A1) 各個体から感染する個体数の分布は、どの個体についても同じ(A2) 感染個体の移⼊、移出は考慮しない

上記の確率過程 {Xn : n=0,1,2,…} は、単純分枝 (Watson-Goldon) 過程と呼ばれる。以下、X0=1 とする。移⼊を考えないため、事象 Xn=0 が起きれば、事象 Xn+1=0 が起きる。したがって、事象 Xn=0 は n 世代までに絶滅したことを表す。したがって、絶滅時間は

いつか絶滅する事象は

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単純分枝過程

5参考:確率過程と数理⽣態学 藤曲哲郎著 P. 47-50

第0世代の個体(感染者) X0=1 から⽣まれる第1世代の個体数は X1であり、それぞれの個体から独⽴に 𝞷i(1) 個の個体が⽣じるので、第2世代の感染者数 X2 は

同様に考えて、第3世代の感染者数 X3 は

ここで仮定 (A1), (A2) より確率変数列 {𝞷i(n) : i≥1, n≥1} は独⽴であり、かつ同じ確率分布

をもつ。また、期待値と分散はそれぞれ

かつ

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平均個体数の変動

6参考:確率過程と数理⽣態学 藤曲哲郎著 P. 50-51

p0+p1=1 だと増加の可能性はないので、以下では p0+p1<1 とする。

第 n 世代の個体数の期待値 Mn=E(Xn) および分散 Vn=Var(Xn) がどのように変動するかを調べる。以下では確率⺟関数を活⽤するため、確率⺟関数について概説する。

⾮負離散確率変数 𝞷 の⺟関数

ここで は以下の条件

を満⾜する。

次項で確率⺟関数の基本的性質を紹介する。

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確率⺟関数

7参考:確率過程と数理⽣態学 藤曲哲郎著 P. 50-51

(M1) 整級数

確率⺟関数の基本的性質

は |s|≤1 で絶対収束する。

(M2) p0=f(0), pk=f(k)(0)/k! (k=1,2,…)

(M3)

(M4) 0≤s≤1 で f(s) は下に凸

(M5) 𝛏 と 𝛈 が独⽴確率変数ならば、

が成⽴する。

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平均個体数の変動

8参考:確率過程と数理⽣態学 藤曲哲郎著 P. 50-51

X0=1 の場合をまず考える。すると

とおく。

条件付き期待値の基本的な性質、および確率変数の独⽴性、ならびに分枝過程の仮定 (A2) より、以下の式変形が成⽴する。

であり、

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平均個体数の変動

9参考:確率過程と数理⽣態学 藤曲哲郎著 P. 50-51

(続き)

したがって、上記の漸化式を繰り返し⽤いることで次を得る。

X0=ℓ の場合は、X0=1 とした ℓ 個の独⽴な家系樹を加えたものと確率分布が同じと考えられるため

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平均個体数の変動

10参考:確率過程と数理⽣態学 藤曲哲郎著 P. 52-53

の両辺を微分すると

s=1 とおくと

X0=1 ならば、Mn=mn、 X0=ℓ ならば Mn=mnℓ (n=0,1,2,…) となる。

分枝過程 は m>1 のとき超臨界 (supercritical)、m<1 のとき未(亜)臨界 (subcritical)、m=1 のとき臨界的 (critical)と呼ぶ。超臨界の場合、平均個体数はべき乗で増加、亜臨界の場合はべき乗で減少する。

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分散の挙動

11参考:確率過程と数理⽣態学 藤曲哲郎著 P. 52-53

Vn=Var(Xn) を計算する。

が成⽴するので、

したがって

ここで、確率⺟関数を2回微分すると

となるので、X0=1 の場合は

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分散の挙動

12参考:確率過程と数理⽣態学 藤曲哲郎著 P. 52-53

(続き) とおく。

V0=0 として上記の漸化式を解くと

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分散の挙動

13参考:確率過程と数理⽣態学 藤曲哲郎著 P. 52-53

(続き)

・・

したがって、Vn は

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絶滅確率

14参考:確率過程と数理⽣態学 藤曲哲郎著 P. 54-59

絶滅確率

n 世代では絶滅していない確率

ここで であるから

したがって、n 世代までに絶滅している確率 qn は

であるから、連続性より

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絶滅確率

15参考:確率過程と数理⽣態学 藤曲哲郎著 P. 54-59

X0=1 の場合、⺟関数の性質より

が成⽴する。したがって、s=0 とおくことで

f(s) は 0≤s≤1 で連続であるから、n→∞ のとき

p0+p1<1 のとき f(s) は 0≤s≤1 で下にに凸であるから、絶滅確率 q は、⽅程式 s=f(s) (0≤s≤1) での最⼩解である。s=1 も解の⼀つであるが、最⼩解になるとは限らない。1個体から⽣まれて成⻑する平均交代数 m は m=fʼ(1) であるから、平均は関数 f(s) のグラフの s=1 における接線の傾きを表す。

定理 (絶滅確率)絶滅確率 q は、⽅程式 s=f(s) (0≤s≤1) での最⼩解であり、q<1 であるための必要⼗分条件は、m>1 である。m=1 のとき第 n 世代の平均交代数 Mn は定数であるが、q=1 であることに注意。

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絶滅確率:具体例

16参考:確率過程と数理⽣態学 藤曲哲郎著 P. 54-59

⼦供数分布が幾何分布である場合、以下で⽰すように⺟関数の具体型が求まる。

{pk: k=0,1,2,…}: 離散確率分布とする。幾何分布 (shift) は

ここで、0<a=1-b<1 でなければならない。確率⺟関数は

確率⺟関数は、s の⼀次分数式となる。⼀次分数式の合成関数はまた⼀次分数式になるので、a≠b のとき、n=1,2,… に対して

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絶滅確率:具体例

17参考:確率過程と数理⽣態学 藤曲哲郎著 P. 54-59

(続き) したがって絶滅確率 q は

の n→∞ の極限として得られ、

特に a=b=1/2 のときは m=1 であり、確率⺟関数は

n が⼤きいとき

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絶滅確率:定理

18参考:確率過程と数理⽣態学 藤曲哲郎著 P. 54-59

定理 (幾何分布の絶滅確率)

m<1 のとき

(続き) したがって、n が⼤きいとき

と仮定する。このとき

m<1 のとき、数世代後にはほとんど絶滅していることになる。また

であるから、m<1 ならば E(T)<∞ であるが、m=1 のとき E(T)=∞ である。

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Memo

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