1. - 東京大学 物性研究所 · 2013-04-11 · 1....

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1. における 1. 1 が、 100 mJ mol 1 K 2 える し、 に、 、アクチノイド にそ が多く られる。 する がほぼ された 1970 から、 さきがけ して、f まっている。そ CeAl 3 において が、 1000 大きく、1 J mol 1 K 2 されたこ まる Andres et al. (1975)。そ 1979 CeCu 2 Si 2 され、そ った がクーパーペアを しているこ された。こ った Steglich et al. (1979)。また、 から、 f づけられる して い、“大き ”フェルミ しているこ が確 され、 いう するように る。 (た UPt 3 Taillefer and Lonzarich (1988) ) 1980 において、Ce,U につ がる してきた。 に、1990 において それ がこれら する して され てきたが、 を育 すいこ 、また、エネルギースケール がひくいこ から、そ してきた (1998); f (1998); Stewart (2001); ¯ Onuki et al. (2004); v. L¨ohneysen et al. (2007); Monthoux et al. (2007); Gegenwart et al. (2008)ここ についてそ みを した ちに、 について れる。そ 、これま

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Page 1: 1. - 東京大学 物性研究所 · 2013-04-11 · 1. 金属間化合物における強相関電子系:重い 電子系 1. 1 は じ め に 重い電子系とは、低温での電子の有効質量の指標となる電子比熱係数が、100

1. 金属間化合物における強相関電子系:重い電子系

1. 1 は じ め に

重い電子系とは、低温での電子の有効質量の指標となる電子比熱係数が、100 mJ mol−1

K−2 を超える金属を指し、特に、希土類や、アクチノイド元素を含む金属間化合物にその

代表例が多く知られる。歴史的には、金属中の磁性不純物に関する近藤効果の全容がほぼ

解明された 1970 年代の後半から、重い電子系のさきがけとして、f 電子が周期的に並ん

だ重い電子系の研究が始まっている。その草分け的な研究は、CeAl3 において電子比熱係

数が、銅などの貴金属に比べて 1000倍以上も大きく、1 J mol−1 K−2 にも及ぶことが発

見されたことに始まる Andres et al. (1975)。その後、1979年に CeCu2Si2 の超伝導が発

見され、その超伝導が重い質量を持った準粒子がクーパーペアを形成していることが強く

示唆された。この発見は強相関電子系での異方的超伝導の研究の幕開けとなった Steglich

et al. (1979)。また、量子振動の測定から、f 電子が実際に重い有効質量に特徴づけられる

準粒子として遍歴的に振る舞い、“大きな”フェルミ面を構成していることが確認され、重

い電子という言葉が定着するようになる。 (たとえば UPt 3 では文献 Taillefer and

Lonzarich (1988)参照のこと) その後、1980年以降において、Ce,U系での重い電子超

伝導の研究は、銅酸化物高温超伝導体や、有機化合物、近年の鉄系超伝導の研究につながる

重要な概念を次々と輩出してきた。特に、1990年以降においては、磁気量子臨界点とそれ

らの近傍の異常金属と超伝導がこれらの強相関電子系に共通する現象として広く注目され

てきたが、重い電子系は得に純良な単結晶を育成しやすいこと、また、エネルギースケール

がひくいことから、その研究の恰好の典型例を提供してきた上田和夫 大貫惇睦 (1998);

f 電子系の物理の最近の発展 (1998); Stewart (2001); Onuki et al. (2004); v. Lohneysen

et al. (2007); Monthoux et al. (2007); Gegenwart et al. (2008)。

ここでは、重い電子系と量子臨界性についてその従来までの理解の枠組みを簡単に紹介

したのちに、重い電子系の合成法について触れる。その後、これまで集中的な研究がなさ

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2 1. 金属間化合物における強相関電子系:重い電子系

CeIn3

図 1.1 CeIn3 の圧力-温度相図。反強磁性転移温度が圧力とともに抑えられ、その結果現れる量子臨界点近傍で超伝導が出現する。

れその多彩な特徴が明らかになってきた反強磁性スピン揺らぎによる量子臨界性について

典型例をもとに概説する。一方で、近年、この枠組みに収まらない新しいタイプの重い電

子現象、量子臨界現象が世界的に活発に研究されるようになってきている。そのいくつか

の例を主に東京大学物性研究所で発見されたものの中から紹介し、今後の展望について議

論したい。

1. 2 量子臨界現象、スピン揺らぎ、フェルミ液体、異常金属

高温超伝導、有機導体、さらに本節の主役である重い電子系化合物は、総じてその局在

的な電子の持つ強い斥力相互作用がその物性に大きく影響することから、強相関電子系と

呼ばれる。これまでの研究から、この強相関電子系において、異方的な超伝導や異常金属

状態が、共通して反強磁性の 2次転移点が絶対零度になる点、すなわち、反強磁性の量子

臨界点の近傍で現れることが明らかになっている。量子臨界点近傍においては、磁気相関

時間、相関長が発散的な傾向を示す。それゆえに、臨界現象を調べるためには試料の純度

が本質的に重要となる。また、量子臨界点に物質を制御するためには、系のコントロール

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1. 2 量子臨界現象、スピン揺らぎ、フェルミ液体、異常金属 3

磁気秩序 フェルミ液体

TK∿ exp(-1/J

cfD

c(ε

F))

TRKKY

∿ Jcf

2Dc (ε

F)

T

JcfD(εF)量子臨界点

図 1.2 ドニアック相図

が大事となる。このような系統的研究を行うにあたり、重い電子系はその純良な単結晶と

比較的低いエネルギースケールを持つ恰好の対象であり、さまざまな典型例を輩出してき

た。特に注目されてきたのは Ce系をベースとした重い電子系化合物であるが、そのなか

でもその研究の初期に明確な形で量子臨界現象を示したのが、CeIn3 の圧力下の実験であ

る。図 1.1に示すように、加圧下では反強磁性の転移温度が 12 Kから急激に減少してい

る。その転移点が消えたところで超伝導が発現する。さらに、この量子臨界点近傍におい

て、電気抵抗の温度依存性が T 1.2 乗則を示す異常な金属状態が支配的となる。

通常の金属状態は、フェルミ液体状態と呼ばれる準粒子がよく定義できた状態であると

考えられている。この状態はフェルミガス状態での、裸の電子に相互作用を断熱的に加え

ていった状態につながっており、低温での物性は、たとえば、磁化率、比熱係数は低温で

一定値に、電気抵抗は T 2 に比例する。(表 1.1参照)

1. 2. 1 ドニアック相図。近藤カップリング Jcf を横軸にとり、近藤効果のスケール TK

と RKKY相互作用のスケール TRKKY の競合を示す。

重い電子系の基底状態の系統的な変化を理解するうえでひとつの基礎となるのがドニ

アック相図である。そもそも、f 電子系には二つの拮抗するエネルギースケールが存在す

る。ひとつは、伝導電子を介した、局在した f 電子のスピン間に現れる RKKY 相互作

用でスピンを局在させる性質をもつ。もう一つが、近藤効果である。これは比較的局在性

の強い f電子の磁気双極子モーメントが伝導電子と (cf)混成することによって遮蔽され、

遍歴的な性質を持つ現象のことをいう。これらのエネルギースケールは近藤カップリン

グ Jcf に対して、それぞれ、近藤温度が TK ∼ exp(−1/Dc(EF)Jcf), RKKY 相互作用が

TRKKY ∼Jcf2Dc(EF)の関係にある。これらを模式的に示したのが図 1.2のドニアック相

図である。この相図からわかるように、Jcf の小さな領域においては、RKKY相互作用が

支配的になり、局在モーメントによる反強磁性状態が現れるのに対して、J の大きな領域

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4 1. 金属間化合物における強相関電子系:重い電子系

においては、近藤効果のため局在モーメントが抑制される。それゆえ、磁気秩序が抑えら

れ、かわりにフェルミ液体が安定化する。このフェルミ液体状態がまさに重い有効質量を

持った準粒子で特徴づけられる‘‘重い電子状態”である。また、この磁性の変化ととも

に、フェルミ面の性質も変化する。すなわち、Jcf が小さく局在モーメントがよく定義でき

るところにおいては、f 電子はフェルミ面の形成には関与せず、伝導電子のみによるため、

フェルミ面は小さい。一方で、Jcf が大きく f 電子が強い近藤効果のために遍歴的になる

場合、f 電子はフェルミ面を形成し、その分フェルミ面は大きくなる。それでは、フェル

ミ面の変化はどこで起こるのかが大変興味深いが、近年それが量子臨界点で起こるのでは

ないかという提案がある。この点についてはのちに議論する。

1. 2. 2 磁気量子臨界点近傍の異常金属

量子臨界点近傍での非フェルミ液体性は、これまで実験的には図 1.2で赤色で示した量

子臨界領域に現れることが知られてきた。その振る舞いの理論的な取り扱いには、弱結合

からのアプローチと強結合からのアプローチの2種類が知られている。

まず、弱結合からのアプローチとして、Hertz、Millisにより発展された繰り込み群の方法

と、守谷らによるスピンの揺らぎの間のモード結合理論(self-consistent renormalization

(SCR) theory)がある。これらの理論による低温での非フェルミ液体的な振る舞いは一致

している。それら物理量の温度依存性は臨界揺らぎのタイプと次元性 dによる。揺らぎの

タイプは主に強磁性か反強磁性かによって決まる動的臨界指数 z による。この動的臨界指

数は、スピンの揺らぎの特性エネルギースケール ℏω が長距離秩序の特性波数 Qからのず

れを表す波数 q とどのようなべきでスケールされるかを表す。守谷らによるモード結合理

論によると、動的磁化率 χ(Q+ q, ω)は

χ(Q+ q, ω) =χ(0)Q

η +Aq2 − iCω/qz−2, (1.1)

と表わされる。ここで、χ(0)(Q+ q, ω)は準粒子の自由磁化率であり、その q, ω 依存性か

ら、強磁性 (Q = 0)の場合は z = 3、反強磁性 (Q = 0) の場合は z = 2である。ここで

重要なのは、どの場合においても、絶対零度では準粒子は定義できるためにフェルミ液体

であるということである。低温で比熱が発散する2次元の反強磁性、あるいは、強磁性の

場合でも、低エネルギーの極限で準粒子はかろうじて定義できる。この理論により期待さ

れる各物理量の量子臨界現象の低温極限での温度依存性を表 1.1 に示す。参考のために、

フェルミ液体の場合の振る舞いも載せた。

重い電子系の物質は基本的には3次元物質である。それゆえに、一般には、スピンの励

起は3次元的であることが期待される。しかし、以下にいくつかの例を挙げて説明するよ

うに、多くの物質が反強磁性の相関を持ちながら低温で比熱の発散を伴う非フェルミ液体

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1. 2 量子臨界現象、スピン揺らぎ、フェルミ液体、異常金属 5

表 1.1 スピンの揺らぎの間のモード結合理論(self-consistent renormalization (SCR)

theory) により期待される各物理量の量子臨界現象の低温極限での温度依存性。c は定数を示す。フェルミ液体の場合も最後に記す。

   強磁性 (Q = 0),      反強磁性 (Q = 0), フェルミ液体

2次元 3次元 2次元 3次元 2、3次元

ρ T4/3 T5/3 T T3/2 T2

C/T T−1/3 − lnT − lnT c0 − c1T1/2 c

1/χ(Q) −T lnT T4/3 T T3/2 c0 + c1T2

1/T1T χ(Q)3/2 χ(Q) χ(Q) χ(Q)1/2 c

図 1.3 基底状態の相図。 横軸 K は混成効果の増大に対応し、縦軸は低次元系やフラストレーション等による量子揺らぎの増加に対応する。Coleman and Nev-

idomskyy (2010) より転載。

性を示す。上記の SCR理論によれば3次元の反強磁性量子臨界点において比熱は低温で

定数に近づことになるため、これらの実験結果は説明できない。そこで、強結合からのア

プローチによってこれらの現象を説明しようという試みがなされている。そのなかの一つ

が、近藤ブレークダウンというシナリオである。このシナリオを提唱する理論は複数のも

のが知られているが、共通して重い電子を形成しているバンドにおいて繰り込み因子 Z が

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6 1. 金属間化合物における強相関電子系:重い電子系

ゼロになるという部分的なモット転移に対応する。すなわち、量子臨界点を境にして f電

子が局在し、フェルミ面の大きさのジャンプが起こる。このようなフェルミ面がジャンプ

する場合は、準粒子が定義できないことが理論的に議論されている。局在する f 電子は通

常、基底状態では反強磁性が期待されるが、この場合は量子臨界点の形は上図の相図 1.2

と同じ形になる。理論的には、Siらが提唱する局所量子臨界現象もその一つである。一方

で、f 電子間に幾何学的なフラストレーション等の理由により量子揺らぎが強く働く場合

には、基底状態で f モーメントは磁気的に秩序しないという可能性もありうる。その場合

は、量子臨界点を境として重い電子状態からスピン液体という互いに非磁性の状態間に量

子相転移が存在する。この際の転移を特徴づけるものは、フェルミ面のトポロジーの変化

である。このような可能性を概念的に示した相図が 1.3である。

1. 3 金属間化合物の合成法

重い電子系化合物は、一般に金属間化合物として知られる。その金属間化合物を合成する

にあたり、いくつかの方法がよく用いられる。それらについて、ここでは簡単に概説する。

1. 3. 1 フラックス法

フラックス法とは、フラックスと呼ばれる100Cより十分に高い融点を持つ溶媒を用

いた溶液成長法のことである。育成法の原理は、溶媒内での目的物質の過飽和状態からの

析出をお用いることにより行われる。金属間化合物のみならず、酸化物、カルコゲン化合

物、プニクタイト化合物の合成に用いられる。育成は金属間化合物であれば、かならず、

試料空間の雰囲気が重要となる。最も簡便に真空、あるいは、不活性ガスの雰囲気を実現

するのは、石英管に封じ切るのが簡便である。石英の融点は1550Cであるが、石英管

自身は、その強度と反応性から通常、使用される温度は1200Cまでである。石英管を

使う場合はボックス炉が便利であるが、それ以上の温度では、管状炉を用いて、雰囲気制

御を行って結晶成長を行う。また、0.1C以下の精度で温度の制御ができる温度コント

ローラを用いること、また、炉内の温度の分布をあらかじめ早くしておくことが重要とな

る。るつぼは、アルミナるつぼが汎用で最もよくつかわれているが、反応性によっては、

炭素るつぼ、白金るつぼ等が用いられる場合も多い。結晶育成において、最も決め手とな

るのは、溶媒であるフラックス選びである。これについては、目的に合わせて選ばないと

いけないため、特に新物質においては試行錯誤が必要な場合もある。また、純度の高い結

晶育成を目指す際は、できるだけ、自己フラックスと呼ばれる、目的結晶の成分の一部を

溶媒として使用することにより、結晶に対するフラックスによる汚染がより防げる。また、

フラックスはできるだけ、低融点のものを選ぶことで、化合物の蒸発、反応を避けられる。

また、フラックスの除去が簡便なものを選ぶというのも一つの指標である。フラックス法

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1. 3 金属間化合物の合成法 7

には徐冷法、溶媒蒸発法、温度差法などがあるが、金属間化合物の育成には、徐冷法が最

もよく利用される。これは、文字通り、過飽和にした溶液を徐冷して、結晶を析出させる

方法である。重要なパラメタとしては、最高温度での保持時間、冷却速度、育成終了温度

がある。これらの決定には析出開始温度、溶媒固化温度をあらかじめ把握しておくことが

必要となる。最後に、結晶の取り出しに際しては、フラックスの除去が必要となる。その

方法には、1)化学的に溶媒を酸、アルカリで溶解する方法、2)溶媒を融点以上に保持し

ておいて、溶媒をるつぼから流しだす方法、3)機械的に溶媒を取り除く方法がある。得

に、2)については、石英管に封じ切られている試料の場合は、遠心分離機を用いて、溶

媒のみを石英ウール等を用いて分離するという方法が便利である。

1. 3. 2 融 液 成 長 法

一致溶融型の単結晶の育成には、融液成長法がしばしば用いられる。凝固による一次相

転移を用いる融液成長には、潜熱を取り除くための熱管理と、結晶成長の駆動力である固

液平衡温度の融点からのずれ、すなわち、過冷却度∆T の制御が必要となる。以下に説明

するすべてにおいて、実際には結晶成長が起こる固液界面の制御が必要となるが、実際そ

れを決めている要素として熱勾配・輻射による熱伝導と固化潜熱がある。さらには、熱勾

配が大きいと、融液内の物質対流も重要になる。融液成長の代表例としては、(a)引き上

げ法、(b)ブリッジマン法、(c)浮遊帯域法が知られている。以下では合金で特によく用

いられる(a)と(b)についてを順に説明する。

a. 引き上げ法

これは最も一般に用いられる融液成長法であり、工業的にも使用される。溶融方法が高

周波加熱法とアーク放電による加熱法があり、それぞれ、るつぼ(金属、炭素等)、銅のハー

スから融液を、種結晶を用いて結晶化しながら引き上げるものである。高周波加熱、アー

ク溶解ともに、融液の直上が融点になるように出力の調整をする必要がある。融液と種結

晶を接触させ、その先端から凝固することでできる結晶を回転させながら引き上げる。こ

の場合の凝固にともなう潜熱は結晶自身を通じる熱伝導、あるいは、輻射により取り除か

れる。ここではアーク溶解を用いた方法での融解を用いた引き上げ法の手順を示す。まず

は、化合物をアーク融解によりボタン状にする。この際、原料から作成する場合には、混

合のために数回裏返して試料を均質にする。その後、引き上げシャフトに対して、このボ

タン状の試料が中心に位置するようにセットする。また、種結晶がある場合には引き上げ

シャフトにセットする。良質な結晶を得るためには、ネッキングという手法が用いられる。

これは温度を少し上げることで結晶を細くし、その後、良質な部分のみを太らせるという

ものである。引き上げシャフトにセットしたものが多結晶であればひとつの単結晶グレイ

ンを優先的に選ぶことができる。それが単結晶であれば、ネッキングによりサブグレイン、

転移等の不完全性を取り除くことが可能となる。引き上げ速度はハースとの接触による結

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8 1. 金属間化合物における強相関電子系:重い電子系

晶試料内での温度勾配、凝固熱、結晶の熱伝導等によって決まる。合金の場合は 10 から

100 mm/hrであり、回転速度は 1から 10 rpmが普通よく使われるが、よりよい単結晶

育成のためにはできた結晶を分析して最適値を個々の化合物に対して決定してやる必要が

ある。この方法は、以下のブリッジマン法とはことなり、引き上げた結晶のるつぼとの接

触がなく、熱歪をうけないため、完全性の高い単結晶を得ることに適している。また、種

結晶を用いることで、結晶の育成方位を制御できる。ただ、銅のハースからの若干の銅の

混入は覚悟する必要がある。

b. ブリッジマン法

ブリッジマン法は融液成長法のなかでも最も簡便なものとして親しまれている。以下の

ように、単純な原理であるため、特殊な技術が不要で、幅広い材料に対して用いることが

できる。また、比較的短い時間で大きな単結晶ができる可能性があるという点でよく用い

られる。具体的には、るつぼにあらかじめ用意した化合物の多結晶体を充填ことから始ま

る。このるつぼを縦型の電気炉の中心部の融点以上に加熱・保持し、均質な融液を得たの

ちに、るつぼ全体を一定の速度(1~10 mm/hr)で下に移動していく。通常、縦型の

電気炉は、中心からほぼ双曲線上に温度勾配ができる。この勾配によりるつぼの先端から

融点以下に達することで固化が始まることになる。先端を円錐状にしたるつぼを用いるこ

とで、先端で核生成した多結晶のなかから、相対的に最も成長しやすい方位を持った結晶

が大きく育つ。この優位成長方位は結晶構造によって大きく支配され、また逆に、その優

位成長を持つ結晶の成長を促すためにるつぼは円錐の形状にする。るつぼ材料には化合物

に応じて、石英ガラス、アルミナ、白金、黒鉛等が用いられる。ブリッジマン法で気を付

けるべき点のひとつは、このるつぼの選択である。熱膨張の違いにより結晶が歪をうける

こと、また、るつぼからの汚染がありうること、さらに、るつぼに対して融液が濡れる場

合には結晶をるつぼから機械的に分離することが難しくなること等があるので注意が必要

である。

1. 4 重い電子系における量子臨界現象

1. 4. 1 Ce系重い電子化合物における反強磁性スピン揺らぎと超伝導

a. CeTIn5 と PuTIn5

2000年以降、Ce系の超伝導の研究の主流となったのが、CeTIn5系であるHegger et al.

(2000); Petrovic et al. (2001a,b)。Tは Co, Rh, Irがとることが知られている。これら

は米国のロスアラモス国立研究所とフロリダ州立大学の共同研究から発見された。通常は

Inを用いたフラックス法で作成され、RRRが 100以上の高純度な単結晶の育成が可能で

ある。超伝導転移温度は重い電子系では最高の 2.3Kに達する。構造は図 1.4に示すよう

に先に示した CeIn3 層が TIn2 層と交互に積層してできており、Ceのつくる f 軌道のネッ

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1. 4 重い電子系における量子臨界現象 9

0

1

2

3

4

?SC

SCSC

X

0.50.50.5 IrRh CoCo

AFM

T* (K

)

CeIn3

CeMIn5

Tc = 0.2 K

Tc = 2.3 K CeCoIn5 CeRhIn5 CeIrIn5 CeCoIn5

aaaa

bbbb

cccc

図 1.4 (a)CeIn3 の結晶構造。(b)CeTIn5 系の結晶構造。CeIn3 層と TIn2 層が積層した擬2次元の構造を持つ。(c)CeTIn5 の T=Co,Rh,Ir の間の混晶系の磁気相図。

トワークはより 2次元的になる。この次元性の低下が、この系の Tc の増大に対応している

と考えられる。実際、量子振動で得られたフェルミ面は図のようになる。CeTIn5 のフェ

ルミ面は f 電子が遍歴としたバンド計算結果と一致しており、2次元的であることがわか

る。また、おどろくべきことに、相図に示すように、CeTIn5 の Tを Co, Rh, Irで置換し

た系において、どの混晶系においても、超伝導が支配的に現れる。このように、CeIn3 に

比べて、系を2次元的にすることでより超伝導が安定化している。

興味深いことに、この系の超伝導現象も非フェルミ液体状態から現れる。電気抵抗は

T -linear, 比熱は低温で lnT で発散する傾向を示す。これは2次元の反強磁性の揺らぎが

おおきいことによると考えられる。また、超伝導現象は通常の BCS理論の S波とことな

り、高温超伝導体と同じ D波であること、特に、dx2−y2 の対称性を持つことがわかってい

る。発見の当初は東京大学物性研究所で測定された熱伝導の面内角度依存性の実験 Izawa

et al. (2001)から初めて実験的に提唱され、近年、同じく物性研究所での極低温での比熱

の面内角度依存性から決定的に確認されるに至っている An et al. (2010)。さらに、この

スピンシングレットの対称性を持つ超伝導は反強磁性の量子臨界点近傍で現れることを反

映して、強い常磁性効果が現れる。その顕著な効果は超伝導状態の臨界磁場での転移が一

次転移になることとして現れる。このことも東京大学物性研究所の極低温での精密磁化測

定から初めて明らかになった Tayama et al. (2002)。一方、反強磁性揺らぎと超伝導をよ

り微視的に関係づける興味深い現象も見つかってきている。たとえば、近年、非弾性中性

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10 1. 金属間化合物における強相関電子系:重い電子系

10 100 1000 100000.1

1

10

100

1000

Sr0.5

K0.5

Fe2As

2

Ca0.5

Na0.5

Fe2As

2

NpPd5Al

2 PuRhGa

5

HgBa2Ca

2Cu

3O

8+δ

Tl2Ba

2Ca

2Cu

3O

10

YBa2Cu

3O

6+x

La1.85

Sr0.15

CuO4

PuCoGa5

U6Fe

URu2Si

2

UPd2Al

3

UNi2Al

3

CeCoIn5

CeCu2Si

2

UBe13

UPt3

CeRhIn5

CeIrIn5

T

c (K

)

T0 (K)

図 1.5 高温超伝導体、重い電子系超伝導体を含むさまざまな超伝導体でのスピン揺らぎの特性エネルギースケール T0 と超伝導転移温度 Tc の関係

子回折実験による超伝導状態における非弾性散乱による共鳴ピークは、f 電子の持つ反強

磁性の揺らぎを特徴づける波数と一致していることが明らかにされた Stock et al. (2008)。

これは、フェルミ面のネスティングから来ると考えられ、その場合、ネスティングベクトル

で結ばれるフェルミ面のギャップの符合は反転することが理論的に要請される。そのため、

反強磁性の揺らぎを特徴づける波数に現れる共鳴ピークは、超伝導の波動関数が dx2−y2 の

対称性を持つ大きな証拠となる Eremin et al. (2008)。

その後、Ceを Puに置換した PuCoGa5 が 19 Kの超伝導体であることが、やはり、ロ

スアラモスのグループから報告された。Puは 5f5 の電子配列を持ち、5f軌道にホールが

一つ入っていると考えられるため、Ceの 4f1 について、電子ホールの対称性を持つとみ

る見方もある。この系においても、常磁性状態は通常のフェルミ液体からはことなる振る

舞いを見せる。最も顕著な振る舞いは NMRの測定結果から見られる。超伝導転移温度直

情まで、1/T1 は増大する振る舞いを見せる。この振る舞いから、スピンの揺らぎに関する

特徴的なエネルギースケールが T0 が見積もられるが、それと Tc を比較したのが、図 1.5

である  Curro et al. (2005)。とても興味深いことにこのスピンの揺らぎのエネルギース

ケールと超伝導の転移温度がスケールしていることがわかる。

その後、Pu系の研究は進み、現在では PuRhGa5, PuCoIn5, PuRhIn5 がそれぞれ、超

伝導体であることが知られている。CeTIn5 との違いはこれらの系が磁性を全く示さない

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1. 4 重い電子系における量子臨界現象 11

a b

図 1.6 (a) YbRh2Si2 の結晶構造 (b) c 軸方向の磁場中、および、それと垂直な面内磁場中での相図。TN と T∗ はそれぞれ反強磁性の転移温度、フェルミ液体性(電気抵抗の T2 則)の現れる温度を示す。Gegenwart et al. (2002)

ことであるが、近年、PuIn3 が反強磁性体であることが発見され、CeIn3 と Ce115との関

係と対応する事実がわかってきた。

1. 4. 2 Yb系重い電子化合物における非従来型量子臨界現象

Yb系における重い電子化合物の研究は、Ce系のそれと同様に大変長い歴史がある。得

に Yb3+(4f13)は Ce3+(4f1)との明確な電子・ホール対称性を持つことから、Ce系で見

つかったエキゾティックな超伝導と同様な超伝導が見つかるのではないかという大きな興

味から、特に1980年以降、世界的にさまざまな物質系が開発されてきた。しかし、(1)

Ce系に比べて融点が 2000度も低いことから純良な単結晶の育成が困難であること、(2) 常

圧で磁気秩序を示す Ce系の圧力実験とは対照的に、Yb系では低圧で磁気秩序を示す常磁

性物質の探索が必要であるが、近年までシステマティックな量子臨界現象の研究を困難と

してきた。しかし、2000年以降、いくつかの常圧近傍で新しい量子臨界現象を示す純良な

系が開発されてきたことで、一気に研究が進展してきた。ここでは、常圧で顕著な SCR理

論で説明できない、「非従来型」の量子臨界性を示す二つの物質 YbRh2Si2、  β-YbAlB4

に的を絞って紹介する。また、Yb系重い電子化合物における非従来型量子臨界現象のさ

らなる詳細な解説は文献中辻 知 (2012)を参照されたい。

1. 4. 3 YbRh2Si2

この系は 2000年にドイツのドレスデンのグループが量子臨界性を報告した物質である

Trovarelli et al. (2000)。重い電子系超伝導体の最初の系である CeCu2Si2、あるいは、鉄

系超伝導体の母体である BaFe2Si2 と同じ “1-2-2”系の構造を持つ。2000年以前は、化学

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12 1. 金属間化合物における強相関電子系:重い電子系

的な置換効果が量子臨界現象の研究の主流となっていたが、不純物効果が本質的な臨界現

象と干渉しその理解を難しくさせていた。その中、ab面内の磁場で 600 G, c軸方向の磁

場で 7000 G という比較的弱い磁場で、反強磁性の量子臨界現象を YbRh2Si2 の純良単結

晶を用いて実現できることが報告された Gegenwart et al. (2002)。さらに、その量子臨界

点で準粒子の質量の発散を示す異常な金属状態が現れることが示され、実験的にも理論的

にも多くの関心を集めた Gegenwart et al. (2002); Custers et al. (2003)。

量子臨界点では超伝導は現れないため、希釈冷凍機での最低温度まで、純良な単結晶を

用いた磁場中の精密測定が多角的に行われた。その結果、電気抵抗は T -linear に、比熱

は lnT に、磁化率は T−0.6 に振る舞う様子が明らかにされた Gegenwart et al. (2002);

Custers et al. (2003)。これらはすべて、フェルミ液体での有効質量が発散することに対応

する振る舞いである。さまざまな物理量の中でも最も特徴的な振る舞いを示すのが、ホー

ル抵抗である Paschen et al. (2004); Friedemann et al. (2010)。図 1.7 は近年、報告さ

れた詳細なレポートによるものであるが、これによるとこの系の最低温近傍でのホール抵

抗は通常の正常ホール効果による Friedemann et al. (2010, 2011)。また、大変、興味深

いことに、量子臨界点において、ホール係数は狭い磁場の領域で比較的に急激な変化を示

す。このことは、f電子のフェルミ面の状態になんらかの変化がおこっていることを示して

いる。その変化する磁場の幅が温度に比例して減少することが示され、低温でホール係数

がジャンプをすることが期待される。

このような準粒子の質量の発散がホール係数のジャンプとともに現れる量子臨界点は大

変、興味深い。その解釈にはいくつかの候補があるが、興味深い可能性として、ここでは

近藤ブレークダウンの可能性が考えられる。通常、フェルミ液体はかならず、それに対応

してフェルミ面が定義される。特に f電子系ではその近藤効果を通じて、f電子がフェルミ

面を形成する。それ故に、対応するフェルミ面の繰り込み因子 Zが存在する。それが量子

臨界点でフェルミ面上のすべてにおける Zが連続的に量子臨界点に向ってゼロに行くとい

うのが、近藤ブレークダウンシナリオである。この場合、f電子のフェルミ面が消失するこ

とに対応して、近藤温度もゼロになり、大きなフェルミ面から小さなフェルミ面へのジャ

ンプがおこる。(図 1.3参照)

1. 4. 4 β-YbAlB4

β-YbAlB4 は 2008年に東京大学物性研究所を中心とした研究チームにより発見された

Yb系では初めての重い電子系超伝導体である Nakatsuji et al. (2008)。これまで重い電子

系の超伝導体はいくつかの新しい概念をもたらす重要な役割を果たしてきたが、この物質も

その例に漏れない大変興味深い性質を示す。まず第一に、この系は金属では初めて量子臨

界現象をチューニングなしに常圧、ゼロ磁場で示す物質であるMatsumoto et al. (2011)。

量子臨界現象は図 1.2のところでも示したように、量子臨界点に到達するには必ず、Jcf を

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1. 4 重い電子系における量子臨界現象 13

図 1.7 (a) YbRh2Si2 のホール係数 RH の磁場に対する変化。ホール係数は c 軸方向に印加された磁場 B1 に対するホール抵抗の線形な立ち上がりに対する傾きとして定義している。 B1 と垂直に ab 面内に印加した B2(横軸)は基底状態をコントロールする (cross field)。挿入図はホール係数の磁場 B2 に対する微分値。(b)(a) の挿入図のピークの半値幅(FWHM) の温度依存性。比較のため、磁場 B1 のみで基底状態をコントロールし、ホール係数を決定した結果(single field) と、対応する磁気抵抗の変化から得られた半値幅の温度依存性も示す。RRR の異なる 2 種類のサンプルに対して行われた実験から、サンプル依存性がないことがわかる。挿入図は、反強磁性温度 TN、ホール係数のクロスオーバスケール T∗、電気抵抗が T2 則を示す温度 TLFL の磁場依存性から得られた磁気状態図を示す。Friedemann et al. (2011)

から転載。

コントロールする磁場、圧力、あるいは、化学組成等のパラメタを調節して初めて量子臨界

点に到達できることが知られてきた。Yb系は通常、加圧下でより磁気的になることが知ら

れている。それゆえ、β-YbAlB4 は加圧下ですぐに磁気秩序を示すことが期待される。し

かし、以下に示すように、磁気秩序は現れず、その代わりにフェルミ液体相が安定化する。

次に、β-YbAlB4は量子臨界物質としては初めて強い価数揺動を持つ。そもそも、これま

での量子臨界物質はすべて価数が整数 3+とほぼみなせる近藤格子系であることが知られて

いた。たとえば、 CeCu2Si2、CeTIn5、YbRh2Si2はその典型である。一方、β-YbAlB4

は価数が整数値から大きくずれた 2.75+という値を取る価数揺動系であることが、放射光

を用いた光電子分光、X線吸収実験からわかってきた Okawa et al. (2010)。

一方、従来の価数揺動系物質は近藤温度が 200 K程度かそれ以上の物質が多く、それゆ

え、高温から磁化率はパウリ常磁性を示し、比熱係数はそれほど大きな値を示さないこと

が知られてきた。しかし、β-YbAlB4 は低温で局在モーメントを持ち、130 mJ/mol K2

以上の比熱係数を示す近藤格子系の重い電子の振る舞いを示す。

さらには、これまでの近藤格子系での量子臨界現象はすべて、磁気秩序相に隣り合わせ

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14 1. 金属間化合物における強相関電子系:重い電子系

0.5

0.4

0.3

0.2

0.1

0.0

T (

Kel

vin)

543210

B (Tesla)

Non-Fermi-Liquid Fermi Liquid 2.01.91.81.71.61.5Resistivity Exponent α

図 1.8 β-YbAlB4 の電気抵抗の温度に対するべき乗則から決定した状態図 Nakatsuji

et al. (2008)。 (挿入図)超伝導転移温度付近の電気抵抗の試料依存性。残留抵抗の低いより純良な単結晶ほど転移温度は高くなる Nakatsuji et al. (2008);

Kuga et al. (2008)。

て発現することが知られてきた。しかし、図 1.10に示す β-YbAlB4 の圧力-温度相図から

わかるように、磁気秩序は加圧下 2.5 GPa以上において初めて見られるのみで、常圧の量

子臨界現象はフェルミ液体相と隣合わせて出現する。このことは、Alサイトを Feで置換

することでも確認されている。すなわち、Alを3 % 置換した系ではフェルミ液体相が安

定化するのに対して、さらに Feを加えた 6 % 置換系では反強磁性が常圧で出現する。以

上のことから、量子臨界現象の起源はスピン揺らぎでないことが明らかである。

以上のことを踏まえて、いくつかの理論的提案がなされている。まず、第一に、混成

ギャップにノードが存在するというものである。この系の Ybの持つ結晶場は対称性から、

Jz = ±5/2から来ると考えられるが Nevidomskyy and Coleman (2009)、そのことから

導かれる現象論的な電子構造をここでは議論する。このような結晶場基底状態を仮定すれ

ば、自然に 4f 電子と伝導電子との混成は (kx ± iky)2 という形を持つ。これは極度に異方

的で、kx = ky = 0の c軸上で混成がゼロになるため、kx = ky = 0の近傍で 4f 電子のバ

ンドは、E ∼ (k4x + k4

y)という分散をもつ。仮にこのバンドの底にフェルミエネルギーが

あれば、実験的に見出された異常な量子臨界性に対応した自由エネルギーが導かれる。し

かし、この理論はミクロな起源については何も説明しない。そこで、考えられる起源は価

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1. 5 Pr 系重い電子化合物における非磁性軌道揺らぎと異常金属、超伝導 15Intensity

Binding Energy (eV)

Yb3+(4f13) Yb2+(4f14)

(a) (b)

図 1.9 (a)硬 X線光電子分光により得られた内殻 3d5/2 準位のスペクトル。Yb3+ に加えて、Yb2+ に対応するピークが得られている Okawa et al. (2010)。(b) 重い電子系超伝導体  β-YbAlB4 の比熱の温度依存性。低温での上昇には核の寄与を含む。(挿入図)ゼロ磁場において比熱は −S0/T

∗ ln(T/T∗)(T∗ = 200

K, S0 ∼ 0.7R lnT ))) の温度依存性を示し、他の近藤格子系の量子臨界物質である CeCu6−xAux(T

∗ = 6.2 K)、YbRh2Si2(T∗ = 24 K) のデータとひとつ

のパラメータ T∗ でスケールする Matsumoto et al. (2011)。

数の臨界揺らぎである。仮にこの系の常圧の状態が価数の一次転移の量子臨界点に近けれ

ば、価数の揺らぎは臨界的に slowing downしていることになり、低温で f電子が局在し

近藤格子的に振る舞うことも、また、結晶場基底状態が Jz = ±5/2 となることも自然に

説明される。また、磁気秩序に隣接しないことも価数が広義の軌道揺らぎであることを考

えれば説明がつく。ただし、現実はさらに興味深く、β-YbAlB4 は常圧で量子臨界現象を

示すのみならず、低圧でこの振る舞いを示す量子臨界相が維持される。このことは、単純

な価数の量子臨界性のみでは説明されない。また、価数のタイムスケールや、空間的な相

関などが、この価数の臨界現象ではどのように発達するのか、実験的にも理論的も全くわ

かっておらず、この系が今後それらを解明するための一つの典型例の役割を担うことが期

待される。

1. 5 Pr系重い電子化合物における非磁性軌道揺らぎと異常金属、超伝導

電子間に働く強い斥力(電子相関)が重要な典型として知られる希土類やアクチノイド

類を含む金属間化合物は、上記のように重い電子系として研究が精力的になされ、重い電

子状態、近藤絶縁体、異方的超伝導、量子臨界現象など多岐にわたる興味深い量子現象が

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16 1. 金属間化合物における強相関電子系:重い電子系

0

5

10

15

20

25

30

2 4 6 80.00

0.010.020.030.040.050.06

Τ (

Κ)

P (GPa)

x (F

e)000000000000.00000.00000000..000000

TN

TN

TN

Tc X 10

TFL X 10

TFL X 10

(a) (b)

図 1.10 (a)  重い電子系超伝導体  β-YbAlB4 の物理的圧力として、キュービックアンビルを使って静水圧下で測定した 2 K までの電気抵抗の温度依存性 (b)Fe

を置換した系についても、同様にキュービックアンビルを用いた圧力下の抵抗測定を行い、作成した圧力、鉄の組成、温度の3つの軸による三次元相図。 Tc と TFL はそれぞれ超伝導転移温度、フェルミ液体性(電気抵抗の T2 則)の現れる温度を示す。 圧力と Fe 置換により誘起された反強磁性の転移温度TN は最大25 K にも達する Tomita et al. (2012)。

次々と見出されてきた。これらの現象を理解する上で基礎となるのが「近藤効果」である。

この近藤効果により電子の数百倍もの有効質量をもつ「重い電子」となり、時にはそれが

ペアを作り非従来型の超伝導を生み出す。このように「磁気双極子モーメント」を伝導電

子が遮蔽するという近藤効果は、これまで議論してきた重い電子系のみならず、量子ドッ

ト系などそれ以外の系でも様々な新奇な現象を生み出すことが知られており、固体物理の

基礎的・普遍的現象の一つとして広く認知されている。

一方、局在した電子には、スピンの自由度以外に軌道の自由度が存在する。この局在し

た軌道の自由度を使った「非磁性」の近藤効果はありうるのか?という自然な疑問が発生

する。すなわち、金属中にこのような自由度が存在した場合、それは伝導電子によりスク

リーンされるのか、その場合はやはりフェルミ液体状態を生みだすのか?このような疑問

に答える最も端的な例が 1987年に Coxにより提案された Cox (1987)。ここでは、立方晶

の対称性を持ったサイトに f 電子が2ついる(f2)配置での Γ3 状態を考える。この場合、

大変興味深いことに、f2 電子は結晶構造の対称性により低温で磁気双極子を持たず(非磁

性)、より高次の軌道(四極子)の自由度のみを持つ。Coxはこのような四極子モーメント

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1. 5 Pr 系重い電子化合物における非磁性軌道揺らぎと異常金属、超伝導 17

0

10

20

30

40

50

0.1 1 10 100

ρ 4f (

µΩcm

)

T (K)

T T

PrV Al

PrTi

Al

~T 2

~T 1/2

QQ

Tc

2 20

2 20

図 1.11 PrTr2Al20 (Tr =Ti, V)の電気抵抗率の 4f電子の寄与 ρ4f の温度依存性 [6]。高温では磁気双極子による近藤効果で、温度の降下とともに −lnT に比例する増大が見られる。低温の振る舞いは PrTi2Al20 では温度の 2 乗に比例するのに対し、Pr V 2Al20 では温度の 1/2 乗に比例する。この顕著な非フェルミ液体性は四極子自由度による非磁性の近藤効果を示し、その四極子秩序との競合から新しい量子臨界現象の研究を可能とする。左上にはフラックス法で育成した RRR=300 の高純度単結晶の写真を示す。三角形の面は(111)面に対応する。左下の図は立方晶 f2 の Γ3 状態の軌道(四極子)モーメントを概念的に示したもの。

を持つ非磁性結晶場基底状態が安定な場合(具体的には)に、電気四極子の自由度を使うこ

とで非磁性の近藤効果が起こりうることを理論的に指摘した。従来の近藤効果では、絶対

零度近傍で通常の金属と同じように、表 1.1で示したように、電子はフェルミ液体として

振る舞い、抵抗は温度の2乗で変化し、比熱、感受率は一定値になる。しかし、Coxの理

論ではそれとは全く異なり、抵抗は温度の 1/2乗に従い、比熱・感受率は発散し、基底状

態は大きな残留エントロピーを伴うなどの異常な金属が現れる可能性が示されている。こ

の予言を確認するために、立方晶 U, Pr化合物において世界的に数々の実験が行われてき

た。しかし、これまでに研究されてきた化合物においては、この新しい近藤効果に不可欠

な四極子自由度の縮退が、結晶の乱れのために解かれている可能性が否定できず、決定的

な結果は得られていなかった(たとえば文献 Yatskar et al. (1996); Tanida et al. (2006)

参照)。

最近、東京大学物性研究所において、四極子自由度を使った極めて強い混成効果を示す

新たな立方晶 Pr 化合物、PrTr2Al20 (Tr =Ti, V) が開発された Sakai and Nakatsuji

(2011)。この系は Pr原子を 16個の Al原子が籠状に囲む結晶構造をしており、強い cf 混

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18 1. 金属間化合物における強相関電子系:重い電子系

0

5

10

15

0 0.5 1 1.5 2 2.5

TQ

0 0

PrTi

Al2

20

Tc

ρ (µΩcm

)

T (K)

ρ = ρ + A T 2exp(-∆/T)

0.05 0.1 0.15 0.2 0.25

-10

-5

0

dc−χ (e

mu/m

ol)

Tc

T (K)

ZFC

FCac−χ' (a

rb. unit) PrTi

Al2

20

図 1.12 PrTi2Al20 の電気抵抗率の温度依存性。2 K で強軌道秩序転移による電気抵抗率の減少が、0.2 K で超伝導によるゼロ抵抗が観測される。超伝導転移直前の残留抵抗率は約 0.38 µcm と非常に小さく、サンプルの純度が極めて良いことを意味する。(左上挿入図) 交流帯磁率 (黒、左軸) と直流帯磁率 (赤、右軸) の温度依存性。完全反磁性が十分出ていることから、この超伝導が(表面など試料の一部ではなく)試料全体で起きている本質的なものであることを示す。

成が現れる(図 1.13右上)。低温での詳細な物性測定により、この系の結晶場基底状態が

非磁性で四極子自由度を持つ(Γ3 二重項)こと、また、四極子転移 (TQ = 2.0 K (Ti), 0.6

K (V))を示すことを見出した。また電気抵抗率の 4f 電子の寄与 ρ4f を見ると高温で温度

の降下とともに −lnT に比例して増大する様子が観測された(図 1.11)。これは励起状態

の磁気双極子を使った通常の近藤効果であると考えられる。一般に Pr化合物は Ceや Yb

系に比べ局在性が強いため、近藤効果を示す例は非常に珍しく、特に非磁性 Γ3 二重項を

結晶場基底状態に持つ系で近藤効果が観測されたのは今回が初めてである。さらに興味深

いことに、PrV2Al20 は低温約 20 K以下で抵抗、および、磁化率が温度の 1/2乗のべき

乗則に従うなどの異常な金属状態を示すことがわかった(図 1.11)。明確な四極子秩序を

示す純良な PrV2Al20 単結晶試料では、転移点以上で近藤効果に不可欠な四極子自由度の

縮退が保障され、乱れによるこの縮退の破れはない。まさにこの四極子自由度が支配的な

温度領域で現れるこの異常な金属状態は、その多くの物性が Coxの理論予想と一致してい

ることなどから、四極子近藤効果をその起源とする可能性が高いと考えられる。

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1. 5 Pr 系重い電子化合物における非磁性軌道揺らぎと異常金属、超伝導 19

図 1.13 PrTi2Al20 の圧力・温度相図。TSC は抵抗()、交流磁化率()および、比熱()の測定から見積もった超伝導転移温度を示す。TQ は比熱から見積もった四極子秩序温度、Tmax は電気抵抗が極大を示す温度で、Γ3 二重項の基底状態と結晶場の励起状態とのギャップエネルギーに対応する。右上の図は、PrTi2Al20 の結晶構造で Pr 原子を 16 個の Al 原子が籠状に囲む20面体を示す。

一方、PrTi2Al20 は強軌道秩序相内で超伝導を発現する (図 1.12)。超伝導転移温度

は 0.2 Kと低いものの、軌道秩序内での重い電子超伝導は初めての発見である Sakai et al.

(2012)。抵抗がゼロになることだけでなく、交流・直流磁化測定でのマイスナー効果を確

認することにより、この超伝導が確かに本質的な超伝導であることが確認されている(図

1.12)。さらに電子比熱係数、磁場に対する超伝導の壊れにくさなどから、この超伝導は重

い電子により形成されていることが分かっている。超伝導が発現する低温ではスピンの自

由度が存在しないため、軌道のゆらぎがクーパーペアの形成に関与している全く新しいタ

イプの超伝導である可能性がある。

通常、4f 電子と伝導電子との間で混成が存在する場合は大きな圧力効果が現れる。その

ことを期待して、加圧下の実験が東京大学物性研究所にて行われた。その結果、図 1.13に

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20 1. 金属間化合物における強相関電子系:重い電子系

示すように、強的軌道秩序の転移温度は6 GPa以上で急激に減少し始めることがわかっ

た Matsubayashi et al. (2012)。このような軌道秩序に対する量子臨界的な振る舞いは金

属では初めての例である。さらに、驚くべきことに、この転移温度の減少と対応する圧力

下で超伝導転移温度が増大し、8 GPaでは 1 K以上に達することがわかってきた。また、

圧力下の超伝導は磁場に対しても強靭で 6 Tの磁場下でも生き残る。超伝導転移温度の磁

場依存性から見積もった電子の有効質量は 106 m0 となり、重い電子超伝導が実現してい

ることを示す Matsubayashi et al. (2012)。このような軌道の量子臨界点近傍での重い電

子超伝導は、これまでのスピン揺らぎによる超伝導とはことなり、非磁性の軌道揺らぎが

そのクーパーペアを媒介している可能性が高い。まだ、軌道の量子臨界点には圧力は達し

ていないが、それが実現した暁にはどのような非フェルミ液体が現れるのか、また、それ

は同時に軌道を使った近藤効果が実現することを意味するのかなど、興味深い問題が数多

く存在する。

このような高濃度系の四極子近藤現象に関する研究は、実験・理論ともに未開拓であり、

今後の発展が大いに期待される。

1. 6 さ い ご に

重い電子系の物理の研究については、近年、従来型のスピンの揺らぎに支配されたドニ

アック型の相図の理解にひと段落がつき、現在は、価数や軌道などの新しい自由度の臨界

揺らぎが重要な非従来型の金属状態、超伝導の研究にその中心がシフトしつつある。ここ

でも、純良な単結晶による常圧近傍での量子臨界点の研究が可能となったことで研究が加

速度的に進んできている。強相関電子系全般にいえることであるが、新物質の役割りがこ

の分野の研究の進歩に大きな役割を果しており、それにより、今後さらに研究の多様性が

広がっていくことを期待される。

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