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1 医療現場の疑問を整理する
医療現場の疑問をリサーチ・クエスチョンにする
第1章
新人薬剤師ビート君は,経口抗菌薬トキメキサシン600mg錠の服用を開始した肺炎の患者さんの服薬指導をとおして,さまざまな臨床の疑問が浮かんできたようです。
今回はクリニカル・クエスチョン(clinical question;CQ)について学びましょう。CQとは,医療現場で感じた漠然とした疑問であり,臨床研究の出発点です。これを磨くことで解決可能なリサーチ・クエスチョンになります。
毎日,医療現場で働いていてもいざとなるとなかなかCQが思い浮かばないという悩みもあると思います。そこで,CQを思いつく視点やCQの4つのパターンについて,ビート君と一緒に勉強しましょう。
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解説
ビート君は,さまざまなクリニカル・クエスチョン(clinical question;CQ)を書き出しました。皆さんも,CQをノートに書きとめることから始めてみましょう。CQが出てこないと悩んでいるあなた,次のような視点で考えてみることをお勧めします。
患者さんの言葉や先人の意見は,CQのヒントになります。通常行っている医療行為や,あたりまえだと思っていた慣習をまっさらな目で吟味してみることも重要です。
次に,CQを整理してみましょう。「CQは無限にあるので,どう整理すればよいのかわからない」と思われる方もいるでしょう。しかし,医療者のCQは大きく以下の4つのパターンに分類できるのではないかと考えています。このようにパターン分類すれば,何を明らかにしたいのかを意識して,CQを明確にすることができます。
「病気や診療の実態を調べる」とは,病気や診療をありのままに記述することです。例えば,服薬指導が必要な患者はどれくらいいるのか,患者の服
CQ 4つのパターン
1.病気や診療の実態を調べる2.原因と結果の関連を調べる3.治療や指導の効果を調べる4.診断や評価の方法の性能を調べる
CQを思いつく視点
・患者さんの困っていることに耳を傾ける・�自分たちが医療現場で困ったり,悩んだりしていることに注目する・日常的に行っている医療行為が本当に正しいかを洗い直す・�先人達(先輩,過去の研究者)によってわかっていることを整理して,何がわかっていないかを考える
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第1章
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解説薬アドヒアランスはどれくらいか,などです。これによって医療現場の課題が明確になり,次に何を明らかにすればよいのかがわかります。「原因と結果の関連を調べる」とは,ビート君の例では「剤形と患者満足
度の関連」です。ここでは,剤形が原因,患者満足度が結果となっています。「治療や指導の効果を調べる」とは,特定の治療や指導が患者に与える影
響を調べることです。ビート君の例では「服薬指導が服薬アドヒアランスに与える効果」を調べます。「診断や評価の方法の性能を調べる」とは,特定の診断法,患者評価法が
有用かどうかを調べることです。ビート君の例では「白血球数が肺炎の改善を正確に評価できているか」を調べます。
ビート君のCQを4つのパターンに分類して整理すると以下のようになります。
4つのパターンで分類したCQ
1.病気や診療の実態を調べる・トキメキサシン600mg錠はどのような患者に使用されているか?・�トキメキサシン600mg錠服用患者の肺炎の経過はどうなっているか?
2.原因と結果の関連を調べる・抗菌薬の血中濃度が高いと,肺炎の症状の改善は早いか?・剤形と患者の満足度は関連するか?・薬の飲みやすさと服薬アドヒアランスは関連するか?
3.治療や指導の効果を調べる・�トキメキサシン600mg錠の1日1回投与は,200mg錠の1日3回投与より効くのか?・服薬指導をすることで,患者の薬の飲み忘れは減るか?
4.診断や評価の方法の性能を調べる・�白血球数で,抗菌薬が効いたかどうかを判断できるのか?
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第 1章 医療現場の疑問をリサーチ・クエスチョンにする
A〜DのCQを,下の①〜④の4つのパターンに分類してみましょう。
A.薬の飲み忘れをしている患者さんはどれくらいいる?B.薬剤師の服薬指導によって,薬の飲み忘れが減るのではないか?C.一人暮らしの患者は薬を飲み忘れやすいのではないか?D.薬剤師の問診によって,薬の副作用を精度高く検出できる?
① 病気や診療の実態を調べる② 原因と結果の関連を調べる③ 治療や指導の効果を調べる④ 診断や評価の方法の性能を調べる
(解答例はp.261)
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