医療現場における「チーム医療」の認識 -アンケー...

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岡山大学医学部保健学科紀要,13:25-36,2002 BullFacHealthS ° i,OkayamaUnivMedSch (原 著) 医療現場における 「チーム医療」の認識 -アンケー ト調査結果か ら一 三井明美1),島田明美1),谷口直子1),中村純子1),西川絵里1), 田中大策1),森田雄一1),凪 幸世1),長谷川益美1),中桐義忠 チーム医療 に対 して高い関心が寄せ られていることか ら,チーム医療 として認識 される 具体的な事柄や各職種 に対する認識,その利点や職種間の認識の違いなどを明 らかにする 目的で,岡山県内の病院の看護師,診療放射線技師,臨床検査技師,計652 名 に対 してア ンケー ト調査 を行 った。有効 回答者数470 名で,その内訳は看護師207 名,診療放射線技師 91 名,臨床検査技師172 名であった。 結果はチーム医療 と認識 される具体的な事柄については,異業種間カンファレンスが チーム医療 を促進する事柄 として認識 されているが,整備 ・実施 されていないことが うか がえた。各職種 に対する認識については,職種別 ・経験年数別にみても,医師,看護師, 理学 ・作業療法士はチーム医療のメンバーとして認識 されている割合が高かった。また, 経験年数別では,10-14 年の人までは統計上ややばらつ きがみられるが,経験年数15 年以 上の人はあ らゆる職種 をチーム医療 のメ ンバ ーであると考 え,その重要性 を認識 している ことがわかった。チーム医療 の利点 については, どの職種 も共通 して 「患者 中心の医療」 と考えている割合が高かった。 キーワー ド :チーム医療,アンケー ト調査,カンファレンス 岡山大学保健学科では,1 年生と3 年次編人生を 対象 に 「チーム医療演習」 とい う講義が開講 されて いる。 これは将来,看護師,保健師,助産師,診療 放射線技師,お よび臨床検査技師を目指す学生が少 人数のチームに分かれ,1 つのテーマを決め,その テーマに関する問題点や課題を見つけだし,その解 決に必要な知識 と情報 を自主的に集めて整理 して, お互いに議論 し解決方法を考える授業である。 筆者 らは編入生グループであったため, 自らの実 習経験や臨床経験 を通 してテーマを考えた ところ, この講義のタイ トルである 「チーム医療 とは」 とい うテーマに決 まった。多 くの話 し合 いや議論の中で, お互いの存在は知っていても,実際にどんな仕事を しているのか, どんな思いで医療 に携 わっているの かなど,細かなところでの理解ができていないこと に気づいた。更に,臨床現場では,それぞれ自分た 岡山大学医学部保健学科 1)岡山大学医学部保健学科学生 ちの職種 はどの ように他職種 に関わっているのか, 他職種か らどのように認識 されているのか,チーム 医療 とは どんな ものかなどの疑問が出て きた。 その疑 問について,まず文献検索 を行 った ところ, 医学中央雑誌でチーム医療に関する論文は,1987 には34 編であったが,10 年後の1997 年には280 編, 1999 年には450 編 と急激 に増加 している とい う報告 があった1)。 この報告か ら,今 日の医療 の中でチー ム医療 に対 して非常 に高い関心が寄せ られ, またそ の必要性や重要性が注 目されていることがわかった。 しか し,チーム医療 は重要 とい う共通の認識 はあ り なが ら,実際 にその実践 にあたっては難 しい と嘆 く 声 もあることが文献検索でわかった。 そこで今 回,筆者 らは臨床の現場での現況 を知 る ことを目的に,岡山県下 8 施設にチーム医療につい てのアンケー トを行 った。その結果 を集計 し,チー ム医療 と認識す る具体的な事項や他職種 に対す る認 -25-

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岡山大学医学部保健学科紀要,13:25-36,2002

BullFacHealthS°i,OkayamaUnivMedSch

(原 著)

医療現場における 「チーム医療」の認識

-アンケー ト調査結果から一

三井明美1),島田明美1),谷口直子1),中村純子1),西川絵里1),

田中大策1),森田雄一1),凪 幸世1),長谷川益美1),中桐義忠

要 旨

チーム医療に対して高い関心が寄せられていることから,チーム医療として認識される

具体的な事柄や各職種に対する認識,その利点や職種間の認識の違いなどを明らかにする

目的で,岡山県内の病院の看護師,診療放射線技師,臨床検査技師,計652名に対してア

ンケート調査を行った。有効回答者数470名で,その内訳は看護師207名,診療放射線技師

91名,臨床検査技師172名であった。

結果はチーム医療と認識される具体的な事柄については,異業種間カンファレンスが

チーム医療を促進する事柄として認識されているが,整備 ・実施されていないことがうか

がえた。各職種に対する認識については,職種別 ・経験年数別にみても,医師,看護師,

理学 ・作業療法士はチーム医療のメンバーとして認識されている割合が高かった。また,

経験年数別では,10-14年の人までは統計上ややばらつきがみられるが,経験年数15年以

上の人はあらゆる職種をチーム医療のメンバーであると考え,その重要性を認識している

ことがわかった。チーム医療の利点については,どの職種も共通して 「患者中心の医療」

と考えている割合が高かった。

キーワード:チーム医療,アンケート調査,カンファレンス

緒 看

岡山大学保健学科では,1年生と3年次編人生を

対象に 「チーム医療演習」という講義が開講されて

いる。これは将来,看護師,保健師,助産師,診療

放射線技師,および臨床検査技師を目指す学生が少

人数のチームに分かれ, 1つのテーマを決め,その

テーマに関する問題点や課題を見つけだし,その解

決に必要な知識と情報を自主的に集めて整理して,

お互いに議論し解決方法を考える授業である。

筆者らは編入生グループであったため,自らの実

習経験や臨床経験を通してテーマを考えたところ,

この講義のタイトルである 「チーム医療とは」とい

うテーマに決まった。多くの話し合いや議論の中で,

お互いの存在は知っていても,実際にどんな仕事を

しているのか,どんな思いで医療に携わっているの

かなど,細かなところでの理解ができていないこと

に気づいた。更に,臨床現場では,それぞれ自分た

岡山大学医学部保健学科

1)岡山大学医学部保健学科学生

ちの職種はどのように他職種に関わっているのか,

他職種からどのように認識されているのか,チーム

医療とはどんなものかなどの疑問が出てきた。

その疑問について,まず文献検索を行ったところ,

医学中央雑誌でチーム医療に関する論文は,1987年

には34編であったが,10年後の1997年には280編,

1999年には450編と急激に増加 しているという報告

があった1)。この報告から,今日の医療の中でチー

ム医療に対して非常に高い関心が寄せられ,またそ

の必要性や重要性が注目されていることがわかった。

しかし,チーム医療は重要という共通の認識はあり

ながら,実際にその実践にあたっては難しいと嘆く

声もあることが文献検索でわかった。

そこで今回,筆者らは臨床の現場での現況を知る

ことを目的に,岡山県下8施設にチーム医療につい

てのアンケートを行った。その結果を集計し,チー

ム医療と認識する具体的な事項や他職種に対する認

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三井 明美他

識,チーム医療の利点や職種間の認識の違いなどを

考察して,その課題についての示唆を得ることがで

きたので報告する。

対象及 び方法

1.対象

アンケート対象者は岡山県内の特定機能病院,也

域支援病院を含め,計8施設の看護師,診療放射線

技師,臨床検査技師で総計652名とした。今回の研

究メンバーの構成が岡山大学保健学科の看護学専攻,

放射線技術科学専攻,検査技術科学専攻の学生であ

り,アンケート作成の都合上,対象を上記3職種に

絞った。

2.方法

自作のアンケート用紙を作成し,対象 8施設に配

布した。回答者の人選は各施設の看護師長,診療故

射線技師長,臨床検査技師長に委ねた。質問内容は

対象者の背景因子からはじまり,全部で9項目で構

成し,うち2項目は自由回答とした。なお,回答は

無記名とした。下記に質問の全容を記載する。

間1.あなたの職種と経験年数をご記入 ください

間2.「チーム医療という言葉を聞いたことがあり

ますか」

選択肢 :

①はい (問3以下へ) ②いいえ (間9へ)

間3.「どのようなことをチーム医療と思いますか」

選択肢 :

①同業種カンファレンス

②異業種カンファレンス

③カルテの共有 (電子カルテ等含む)

④院内報 (メール含む) ⑤合同勉強会

⑥親睦会 ⑦その他 ( )

間4.「チーム医療を行うメンバーはどの業種だと

思われますか」

選択肢 :

①医師 (彰看護婦 ・士

③理学 ・作業療法士 ④放射線技師

⑤検査技師 ⑥栄養士 (む薬剤師

⑧その他 ( )

間5.「チーム医療を展開した場合,臨床において

どのような利点がありますか」

選択肢 :

(丑患者中心の医療 ②患者との距離の縮小

(参医療過誤防止

④より細かい患者情報の共有

⑤コ・メディカル間のコミュニケーションが

円滑になる

⑥その他 ( )

間6.「あなたの職場でチーム医療は行われている

と思われますか」

選択肢 :

①はい ②いいえ (間7以下へ)

間7.「あなたの職場で 『チーム医療』を促進する

要因として整備できていないと思われる事柄は

何ですか」

選択肢 :間3に同じ

間8.間7の答に対して,あなたはどうしてそう思

われたのかを自由に記入して下さい

間9.間2の回答が 「いいえ」の方,あなたが 『チー

ム医療』という言葉から受けるイメージを自由

に記入して下さい

回答データの分析はSPSS統計ソフトを用いて

データ解析を行った。看護師,診療放射線技師,紘

床検査技師の3職種に分けた。また,加納川らの文

献を参考に経験年数を0年,1-2年,3-4年,

5-9年,10-14年,15-19年,20年以上に分けた2)0

その上でそれぞれの項目についてx2 検定を行った。

自由回答はすべてをまとめて参考資料とした。

3.言葉の定義

同業種間カンファレンス :

看護師なら看護師の間,医師なら医師の間とい

うように同じ職種間で行われるカンファレンスの

ことをいう。

異業種間カンファレンス :

看護師,医師,診療放射線技師,臨床検査技師

など複数の職種間で行われるカンファレンスのこ

とをいう。

結 果

1.回収率

稔配布数652部に対して,有効回答者数470名で回

答率72,1%であった。職種別内訳は看護師207名

(44.0%),診療放射線技師91名 (19.4%),臨床検

査技師172名 (36.6%)であった。

2.経験年数平均

回答者の経験年数平均は看護師13.0±9.4,診療

放射線技師14.7±10.5,臨床検査技師17.1±9.6で,

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医療現場における 「チーム医療」の認識

全体の平均は14.8±9.6であった。

3.質問内容と結果

「チーム医療 という言葉を聞いたことがあ ります

か」の質問に 「はい」と回答 した者は,504人中503

人で,臨床の場にこの言葉が行 き届いていることが

わかった。

続いて,質問に対する回答を職種別 と経験年数別

に分けて分析すると,「どのようなことをチーム医

療 と思いますか」の質問に,どの職種においても最

も高い割合を示 した項員は 「異業種間カンファレン

ス」で,その割合は90%を超えてお り,臨床検査技

師においては96.5%であった (図 1,表 1)。図 2

及び表 2は経験年数別に集計 した結果であるが,特

%

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9

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5

4

3

2

[

看護師 診療放射線技師 臨床検査技師職種

図1 どのような事柄をチーム医療と考えるか

表 1 どのような事柄をチーム医療と考えるか

星同業種カンファレンス

因異業種カンファレンス

■カルテの共有

日院内朝

□合同勉強会

□親睦会

職種(回答者総数) 同業種カンファレンス 異業種カンファレンス カルテの共有 院内報 合同勉強会 親睦会

看護師 176 217 197 86 187 38

(240) 73.3% 90.4% 82.1%「 35.8% 77.4% 15.8%

診療放射線技師 51 **55.4% 87 * 47 ** 35 64 15(92) 94.6% 51.1% 「 38.0% 69.9%「 16.3%

臨床検査技師 113 166 :92.8%J .. 71 146 ** 31(172) 65.7% 96.5% 41.3% 84.9% 18.0%

*pく0.05 **pく0.01

120

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X\ 十+ノ --汰 - 二

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\ ′/′、コ鑑ノ′

//X一、-~\̀ // ノー、-、<p〆

1\ >患⊂一一---,汁/′′一-× ---Nr-.-.ウ く~ .∴ 」● \

+ 同業種間カンファレンス+ 異業種間カンファレンス益 カルテの共有× 院内朝

一うト合同勉強会+ 菓晃睦会

0 1-2 3-4 5-9 10.-1415-1920-

経験年数

図2 どのような事柄をチーム医療と考えるか

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三井 明美他

筆すべきは経験年数の上昇と共に合同勉強会と院内

報の割合が高くなっていることである。

次に,「チーム医療を行うメンバーはどの職種だ

と思われますか」の質問に,看護師は診療放射線技

師及び臨床検査技師に対して70%台の回答を示した

以外は他のどの職種に対しても90%台の割合を示し

た。診療放射線技師は,栄養士及び薬剤師以外の職

種に対して90%台の割合を示し,臨床検査技師はど

の職種に対しても90%台の割合を示した。特徴的な

ことは,どの職種においても自分自身の職種をチー

ム医療のメンバーであると考えていることである

(図3,表 3)。これを経験年数別に集計すると,

表2 どのような事柄をチーム医療と考えるか

経験年数 同業種力ン 異業種力ン カルテの共 院内報 合 同 勉 強 親睦会

(回答者総数) フアレンス フアレンス 育 一ゝコ=

0年 5 7 5 3 6 1

(7) 71.4% 100.0% 71.4% 42.9% 85.7% 14.3%

1-2年 27 3 29 9 27 10

(40) 67.5% 95.0% 72.5% 22.5% 67.5% 25.0%

3-4年 32 38 33 12 27 3

(41) 78.0% 92.7% 80.5% 29.3% 65.9% 7.3%

5-9年 64 84 55 30 66 12

(86) 74.4% 97.7% 64.0% 34,9% 76.7% 14.0%

10-14年 42 62 50 25 53 ll

(67) 62.7% 92.5% 74.6% 37.3% 79.1% 16.4%

15-19年 44 65 50 35 60 17

(68) 64.7% 95.5% 73.5% 51.5% 88.2% 25.0%

20年以上 104 148 118 67 131 26

(161) 64.6% 91.9% 73.3% 41,6% 81,4% 16.1%

図3 チーム医療を行うメンバーはどの職種と考えるか

表3 チーム医療を行うメンバーはどの職種と考えるか

職種(回答者総数) 医師 看蔑師 理学.作業療法士 診療放射線技師 臨床検査技師 栄養士 薬剤師

看護師 237 239 233 174 176 216 217

(240) 98.8% 99.6% 97.1% 72.5% 73.3% 90.0% 90.4%

診療放射 線技師(92) 89 89 辛 85 87 ** * 85 ** 辛 72 ** 76 * *96.7%「 96.7% 92.4% 94.6% 92.4% 78.3% 82.6%

臨床検査技師(172) 172 * 172 * 167 170 辛 170 辛 163 ** 167 **

*pく0.05 **pく0.01

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医療現場における 「チーム医療」の認識

図4及び表4に示すように,診療放射線技師,臨床 士,介護福祉士,看護助手,事務職などであった。

検査技師及び栄養士を選んだ割合が,経験 3-4年 次に,「チーム医療を展開した場合,臨床におい

で特に低 くなっている。また,「その他」の項目の てどのような利点がありますか」の質問に,どの職

自由回答としてあがった職種は,ケースワーカー, 種においても比較的高い割合を示した回答は 「患者

ソーシャルワーカー,ケアマネージャー,臨床心理 中心の医療」であったo逆にどの職種においても比

120

100

80

oTLo60

40

20

0

領 一-----m ---------.-Ji;/一Y一一 ~ーlh----.---三 雲 ≡.

-◆-.医師

- 看護師

一女 理学・作業

x 診療放射線技師

.一一米一臨床検査技師

.● 栄泰士

十 薬剤師

1-2 3′-4 5-9 10-14 15-19 20′-

経験年数

図4 チーム医療を行うメンバーをどの職種と考えるか

表4 チーム医療を行うメンバーはどの職種と考えるか

経験年数 医師 看護師 理学 .作業 診 療 放 射 臨床検査 栄養士 薬剤師

(回答者総数) 療法士 線技師 技師

0年 7 7 7 6 6 7 7

(7) 100.0% 100.0% 100.0% 85.7% 85.7% 100.0% 100.0%

1-2年 39 40 37 32 34 36 37

(40) 97.5% 100.0% 92.5% 80.0% 85.0% 90.0% 92.5%

3-4年 41 41 40 30 28 32 33

(41) 100.0% 100.0% 97.6% 73.2% 68.3% 78.0% 80.5%

5-9年 85 85 81 71 72 71 72

(86) 98.8% 98.8% 94.2% 82.6% 83.7% 82.6% 83.7%

10-14年 67 67 67 66 66 64 66

(67) 100.0% 100.0% 100.0% 98.5% 98.5% 95.5% 98.5%

15-19年 68 68 67 64 62 66 66

(68) 100.0% 100.0% 98.5% 94.1% 91.2% 97.1% 97.1%

20年以上 159 159 154 143 142 149 151

(ー61) 98.8% 98.8% 95.7% 88.8% 88.2% 92.5% 93.8%%0

0

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0

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6

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4

3

2

11

看護師 診療放射線技師 臨床検査技師職種

E3患者中心の医療

圏患者との距離の縮小

■医療過誤防止

E3より細かい患者

情報の共有

ロコメディカル間のコミュニケーションが

円滑になる

図5 チーム医療を展開した場合,臨床においてどのような利点があると考えるか

- 29-

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三井 明美他

校的低い割合を示した回答は「患者との距離の縮小」 を経験年数別に集計したものであるが,低い割合を

であり,看護師,診療放射線技師においては50%以 示した「医療過誤防止」「より細かい患者情報の共有」

下であった (図5,表5)。図6,表6はこの結果 「患者との距離の縮小」が経験年数の上昇と共に高

表5 チーム医療を展開した場合,臨床においてどのような利点があると考えるか

職種 患者中心の 患者との距離の 医療過誤防止 より細かい患者 コメディカル間のコミュニケーション

(回答者総敬) 医療 縮小 情報の共有 が円滑になる

看護師 226 112 146 218 160

(240) 94.2%「 46.7% 60.8% 90.8% 66.7%

診療放射線 75 **辛 33 * 58 * 62 * 57技師 81.5% 67.4%(92) 35.9%「 63.0%「 62.0%「

臨床検査 150 101 * 136 * 150 * 148 **

*pく0.05 **pく0.01

120

100

80

oTLo60

40

20

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一一●一患者中心の医療

--患者との距離の縮小

-血-医療過誤防止

耕一より細かい患者情報の共有

.-.粁-.コメディカル問のコミュニケーション

0 1-2 3-4 5-9 10-1415-19 20-

経験年数

図6 チーム医療を展開した場合,臨床においてどのような利点が考えられるか

表6 チーム医療を展開した場合,臨床においてどのような利点が考えられるか

経験年数 患者 中心 の 患者との距離 医療過 誤 防 より細かい患 コメディカル

(回答者総数) 医療 a)縮小 止 者情 報 の共育 間のコミュニケーションが円滑になる

0年 7 2 4 4 5

(7) 100.0% 28.6% 57.1% 57.1% 71.4%

1-2年 34 15 26 29 27

(40) 85,0% 37.5% 65.0% 72.5% 67_5%

3-4年 34 17 19 37 25

(41) 82.9% 41.5% 46.3% 90.2% 61.0%

5-9年 82 38 53 72 58

(86) 95.3% 44.2% 61.6% 83.7% 67.4%

10-14年 60 34 48 57 49

(67) 89.6% 50.7% 71.6% 85.1% 73.1%

15-19年 58 43 52 64 54

(68) 85.3% 63.2% 76.5% 94.1% 79.4%

20年以上 145 84 119 138 126

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医療現場における 「チーム医療」の認識

い割合を示 している。

最後に,「あなたの職場でチーム医療は行われて

いるかの質問に,「いいえ」 と回答 した者は504人中

243人で48.2%の割合であった。更に,「いいえ」 と

回答 した者を対象にした 「あなたの職場でチーム医

療を促進する要因として整備できていないと思われ

る事柄はなんですか」の質問に,どの職種において

も高い割合を示 した項馴 ま「異業種カンファレンス」

であ り,逆に低い割合を示 した項 目は 「同業種カン

ファレンス」,「院内報」及び 「親睦会」であった (図

7,表 7)。経験年数別集計では,経験 0年の新人

スタッフにおいて特異的な傾向を示 した (図8,衣

8)0

%

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%

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0

0

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7

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5

4

3

2

看護師 診療放射線技師 臨床横査技師職種

Ej同業種間カンファレンス

EiB異業種間カンファレンス

■カルテの共有

Ej院内軸

□合同勉強会

E]親睦会

図7 チーム医療を促進する要因として整備できていないと思われる事柄は何か

表7 チーム医療を促進する要因として整備できていないと思われる事柄は何か

職種(回答者総敬) 同業種間カンファレンス 異業種間カンファレンス カルテの共有 院内報 合同勉強会 親睦会

看護師 17 97 28 19 52 21

(110) 15.5% 88.2% 25.5% 17.3% 47.3% 19.1%

診療放射線技師(51) 5 46 17 * 6 25 * 59.8% 90.2% 33.3㌃1 ll.7% 49.0% 9.8%

臨床検査技師(82) 14 75 45 15 54 1420.6% 91.5% 54.9 18.3% 65二9% 17.1%

*pく0.05 **pく0.01

120

100

80

0冒60

40

20

0

\ \ヽ \ /へ

∵ 一 十

\ //礼/ .一塊

,準二→ \\\ // 山 一~、、-、磁 / /\潜/

/ 一. 〉 ▲ /L

p\ -7.I-/ \繁/// -

→一一一異業種間カンファレンス「友一-カルテの共有「姥一一一一一院内報一斗ト合同勉強会一一一一一〇一親睦会

0 1-2 3-4 5-9 10.-1415-19 20-経験年数

図8 チーム医療を促進する要因として整備できていないと思われる事柄は

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三井 明美他

表8 チーム医療を促進する要因として整備できていないと思われる事柄は

経験年数 同業種力ン 異業種力ン カルテの共 院内報 合 同 勉 強 親睦会

(回答者総数) フアレンス フアレンス 育 A=

0年 0 4 0 0 3 0(4) 0.0% 100.0% 0.0% 0.0% 75.0% 0.0%

1-2年 4 18 8 4 8 4

(21) 19.0% 85.7% 38.1% 19.0% 38.1% 19.4%

3-4年 2 ll 6 1 5 2

(14) 14.3% 78.6% 42.9% 7.1% 35.7% 14.3%

5-9年 7 38 ll 8 23 6

(38) 18.4% 100.0% 29.0% 21.1% 60.5% 15.8%

10-14年 7 28 14 4 17 5

(34) 20.6% 82.4% 41.2% ll.8% 50.0% 14.7%

15-19年 4 29 12 7 19 8

(34) ll.8% 85.3% 35.3% 20.6% 55.9% 23.5%

20年以上 12 72 34 13 46 13

(79) 15.2% 91.1% 43.0% 16.5% 58.2% 16.5%

考 察

以上の結果から考察すると,看護師は自分自身を

チーム医療のメンバーとして考えている割合が高い

が,同業種カンファレンスをチーム医療と考える割

合が低 く,異業種カンファレンスをそれと考えてい

る割合が高い。診療放射線技師,臨床検査技師につ

いても数倍に有意差はあるが,この傾向は同様であ

る。細田は 「患者に関わるすべての医療人が専門職

として対等な立場に立ち,互いに協力しながら治療

に当たっていると実感したとき,チーム医療ができ

たと表現しているようだ」といい,また 「チーム医

療とは専門的な知識や技術を有する複数の医療従事

者同士が,対等な立場にあるという認識を持った上

で,実現される協同的な行為と定義することができ

よう」1)と述べている。看護師は1人の患者につい

て複数の人がチームを組んで,24時間交替制で医療

に当たる。したがって,同業種間のチームワークは

業務を行っていく上で当然のことで,基本にあるも

のととらえており,その上で他職種とのカンファレ

ンスによって,共に患者に対して統一された認識を

持ち医療を行っていくことがチーム医療と捉えてい

るのではないかと考えられる。一方,診療放射線技

師,臨床検査技師は患者に関わる時間はその検査あ

るいは治療の時のみであり,また通常は1人の患者

に対し,複数のスタッフが協同で業務を行うことは

稀である。したがって,同業種間カンファレンスは

単に情報交換や自己研鐙の場と考え,異業種間カン

ファレンスは検査または治療を行う上での患者情報

の取得と専門的知識に基づいた検査結果や情報提供

の場であると考えているのではないかと考えられる。

次に,「チーム医療を行うメンバーはどの職種と

思いますか」の間に,看護師は医師,理学 ・作業療

法士,栄養士,薬剤師をチーム医療を行うメンバー

と捉えている割合が高い。これは,これらの職種が

診療放射線技師や臨床検査技師の業務内容に比べ,

患者のケア ・治療に直接関わる機会が多いからでは

ないかと考えられる。また,その他のコメントにク

ラーク,ケアマネジャー,ケースワーカー,メディ

カルソーシャルワーカー,地域社会事業部があり,

病院内だけでなく社会と患者をつなぐ役割を持つ専

門職もメンバーと考えている。診療放射線技師は医

柿,看護師,理学 ・作業療法士,臨床検査技師,薬

剤師をメンバーと考え,栄養士をメンバーと考える

割合が低い。臨床検査技師は設問の選択肢に上げた

すべての職種をチーム医療のメンバーと考えている。

他職種が看護師をチーム医療のメンバーであると回

答した割合が高いことは,チーム医療を行う上での

看護師への期待と表現してもよいのではないかと考

えられる。近揮らは医療チームの連携を生み出す看

護婦の技術として,「自分が望む行動を相手が実際

に行うよう仕向ける。患者の希望を他職種につなげ

るよう橋渡しをする,予測される事態に対して事前

に他職種に働きかけ道を付ける,他職種が役割を担

うべき仕事の機会が生じたとき他職種に出番を知ら

せるという,相手を動かしたり,相手に委ねるとい

う他職種に対して意図的に働きかけることを (手配

する),また他職種の求めに応じて適切に情報を提

供する,他職種のニー ドを察して手助けをする,ロ

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医療現場における 「チーム医療」の認識

スがないように他職種の行為を買って出るという医

療活動が円滑に展開できるようにという看護婦の主

体的な行為を看護婦の (補佐する技術)3)」として

述べている。今回の調査でも,患者に対して最も関

わりの多い看護師に意図的且つ主体的に他職種に関

わる役目が期待されていることが推測できる。また,

調査では3職種によって他職種に対する認識の違い

はあるが,自分自身の職種については,そのメンバー

であると認識している割合が高いことから,3職種

ともそれぞれに医療チームの一員としての認識を持

って仕事に従事していることがわかった。

次に,「チーム医療を展開した場合,臨床におい

てどのような利点があると思いますか」の間に,3

職種とも 「患者中心の医療となる」という答が高い

比率を示した。特に看護師では他職種に比べ,有意

の差を示して高い借となった。また,「患者との距

離の縮小」という答は,3職種とも低い値を示した。

これはチーム医療が患者との距離を縮めるものでな

く,実現できているかどうかは別にして,チーム医

療本来の目的を確実に認識している結果であると推

測できる。また,「より細かい患者情報の共有」と

答えた割合が看護師と臨床検査技師に高い値を示し

ている。看護師では,例えば検査や治療で患者が他

の部署に行くような場合,病棟の看護師がみること

のできない患者の様子を,そこで関わった他職種の

者が病棟へ伝えるというような意識を持つことがで

きると考えているのではないかと思われる。臨床検

査技師の場合は,生理検査以外は患者と揺すること

は少なく,検体を扱うことがほとんどであり,患者

情報の共有は必要不可欠な事項と考えられる。診療

放射線技師は放射線治療に携わる者は別にして,画

像診断を放射線科医に委ねている現状では,画像情

報の取得にそれほど細かい患者情報は必要ないと考

えているのではないかと推察できる。 アンケート対

象者の中に放射線治療に携わる技師が少ないために

低い値となったことも考えられる。また,「医療過

誤防止」と答えた比率が下位に位置したことは筆者

らの予想をはずれた結果であった。近揮らは医療

チームの連携を良くするために,看護師が用いてい

る技術についての分析を行った結果,「看護婦は常

に個々の患者について心身の状態や患者を取り巻く

状況を把握しており,絶えず今後の見通しを持ちな

がら,患者の安全性が脅かされていないか,患者が

何を望んでいるか,あるいは医療行為に伴う苦痛を

体験していないかということに対して敏感に察知し,

患者の利益を守るために積極的に他職種に働きかけ

ている。その働きかけは,1つには他職種からの指

示や治療方針に関する危害を未然に防ぐという意味

がある」3)と述べている。このことはチーム医療の

なかで,患者のあらゆる不利益を回避することを前

提に,看護師が他職種に働きかけていることを明ら

かにしており,その働きかけやお互いのチェック機

能が働 くことにより,防止される医療過誤も多く存

在すると考えられる。しかし,今回の調査では臨床

においてはチーム医療を展開することで,医療過誤

防止につながるという考えが少ないことが伺われた。

これは,実際に医療過誤に遭遇する機会が少なく,

その要因が当事者またはその職種にあるという考え

方が強いのではないかと考えられる。

最後に,「あなたの職場でチーム医療を促進する

要因として整備できていないと思われる事柄は何で

すか」の間に,3職種とも異業種間カンファレンス

と答えた割合が群を抜いて高い。臓器移植などのよ

うに1患者に対してチームを組んで医療に当たる場

合を除いて異職種が集まって医療計画を立てること

は,通常は行われていないことが伺える。間3で異

業種カンファレンスをチーム医療だとする割合が高

いことから,理想と現実のギャップを感じる。筑後

らの研究で,看護の実態について 「ルーティンや医

師の指示業務が多い。理想のケアをするには時間が

足 りないと答える看護婦が多い」4)ことが指摘され

ている。同様に筆者らの調査においても 「医師から

看護婦-の一方的な指示,状況報告が多い」という

コメントが多く見られた。また,小橋らの報告でも,

看護婦以外の他職種を含めたチームカンファレンス

の運営上の問題点として,「多忙な業務のなかでチー

ムメンバーが同時に集まるので,時間の調節が難し

い」5)ことが上げられている。筆者らの調査のなか

でも 「日常業務に追われ,看護婦間でのカンファレ

ンスすらとれない」 「時間を決めて他職種と集まっ

ても内容あるカンファレンスをすることができな

い」などのコメントが見られた。

経験年数別集計を総合的に考察すると,チーム医

療を行うメンバーについて,経験年数3-4年の人

では,診療放射線技師,臨床検査技師,栄養士,薬

剤師をチーム医療のメンバーと認識する割合が低く,

9年日までは認識にばらつきがみられるが,10年目

以降の人は,アンケー ト項目に挙げた全ての職種を

高い割合でチーム医療のメンバーであると認識して

いる。加納川らが看護師において 「3-5年目が経

過し,一応の手順やマニュアルの修得を終える頃に

なると,患者ケアの複雑性 ・多様性という現実に直

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三井 明美他

面し,今までの自分の知識 ・能力では対処できない

ことに不安を覚え,また日々の自分の実践やケアに

不満足感や疑問を抱くようになる」と述べている。

また,「5-10年は自分の技術や専門性は何である

のかを問い続ける試行錯誤の時期である2)」と述べ

ている。本研究では看護師に限定していないが,経

験年数 5年以降の人は自分の専門性を見つめながら

その限界を認識することにより,他職種の価値を認

め,協働する必要性を兄いだすことがこの結果につ

ながったと考えられる。

次に,「臨床においてどのような利点があると思

いますか」の間に対して,項目によりばらつきはあ

るが,全体的に右上がり,すなわち経験年数が多い

ほど効果に対して肯定的な意見が多い傾向が見られ

た。特に医療過誤防止においては,3-4年以後の

伸び率が著しく,経験年数が増すにつれ医療過誤の

要因が個人だけの問題ではなく,そこに関わる多 く

の業種や組織の中にあるということが認識されてい

くと考 え られる。 この ことは柳 田が Chainof

Eventsとして,「なぜ起こったのか,その要因を洗

い出すと,事故をもたらした要因や出来事は非常に

多 く,それらは鎖状につながっています。それらが

重なって,最後の誰かがミスをすると,事故が起こ

る。たった一つだけの要因で事故が起こることは稀

で,事故を妨げなかったさまざまな要因が組織や作

業環境の中にあるから破局がもたらされる。その連

鎖を事前に一つひとつ外す対策をとっていけば,義

後にジョーカーを引く人はいなくなるという考え方

です6)」と述べていることからも考察できる。

また,「あなたの職場でチーム医療は行われてい

ると思いますか」の間に対して,経験年数でばらつ

きはあるが,全体の約半数が行われていないと答え

ている。そして,「どのような事柄をチーム医療と

思いますか」と 「あなたの職場でチーム医療を促進

する因子として整備されていないものは何ですか」

という質問に対しては,ばらつきが大きく一定の傾

向は兄い出せなかった。現在はチーム医療に対して

の認識が標準化されていく過渡期であり,何を優先

的に整備すべきかの方向性が定まっていないためと

考えられる。ただ,どの経験年数でも異業種間カン

ファレンスをチーム医療を促進する要因であると考

えていながら,整備できていないものとしている割

合が高かった。このことは,現在行なっている医療

の中で,他職種と何らかの形で関わりながら仕事を

すすめているにもかかわらず,今以上のコミュニ

ケーション,情報や意思の統一の場を求めているこ

とを示しており,その場としての異業種間カンファ

レンスによせられる期待が大きいことが伺える。ま

た,「チーム医療を展開した場合,臨床においてど

のような利点があると思いますか」の間の自由回答

として 「個々の専門家がどのような位置付けでチー

ムの中での責務を持つかといったことがもっと議論

されなければならないと考えられる」という意見が

あるように,患者の状況に応じて関わっている各職

種の位置付けは変化するため,必要とされた専門性

を尊重し,それぞれの役割を十分に果たす環境を作

るための1つの方法として異業種間カンファレンス

を選択したものと考えられる。しかし,今回の調査

から自分の仕事に追われて,他職種との交流や勉強

会にさく時間がないことや,実際に機能するカンフ

ァレンスに至っていないことが明らかとなり,職種

間1対 1の情報交換や指示の受け渡しという部分的

な交流は日常的に行われているが,有効な異業種間

カンファレンスを実現するまでには至っていないこ

とがわかった。将来の方針としてはカルテの共有に

よる患者情報の交換 (電子カルテの普及)と,お互

いの業務に対する理解を深めるため,時間を割いて

の合同勉強会の充実を期待する。そして,各職種の

専門性を生かした異業種間カンファレンスが開催で

きた時,理想とする 「患者中心の医療」が実現する

ものと考える。

ま と め

チーム医療の認識について,岡山県下8施設,舵

計652名を対象にアンケー トした結果,

1.チーム医療として認識される具体的な事柄につ

いては,異業種間カンファレンスが最も多いが,

整備 ・実施されておらず今後の課題となっている

ことがわかった。

2.チーム医療を行うメンバーに対する調査では,

職業別にみると,医師,看護師,理学 ・作業療法

士はメンバーとして認識されている割合が高い。

経験年数別では,10-14年までのグループでは同

様の傾向を示すが,それ以後のグループではあら

ゆる職種をメンバーとして認識していることがわ

かった。また,看護師,診療放射線技師,臨床検

査技師の3職種とも自分がメンバーであり,その

認識を持って仕事をしていることがわかった。

3.チーム医療の利点としては,調査の対象とした

どの職種とも共通して 「患者中心の医療」と考え

ている割合が高いことがわかった。

4.自由回答で,異業種間のコミュニケーションに

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医療現場における 「チーム医療」の認識

関わる問題が多くみられた。チーム医療が円滑に

行われるためには,同等な立場からの専門性を生

かした直接的な意見の交換が必要とされる。その

ためには,例えばアサ-テイブトレーニングのよ

うな方法で,個人のコミュニケーション能力の向

上を行っていく必要があるのではないかと考えら

れた。

結 語

チーム医療は医療の専門分化と共に必要不可欠な

医療のあり方であると考えられ,今日の医療界では

非常に高い関心が寄せられている。今回の研究で,

チーム医療として認識されている具体的な事柄や,

各職種に対する認識,各職種の考えるチーム医療の

利点等について,職種間の認識の違いが明らかにな

った。しかし,チーム医療を行う具体的な方法は模

索中であり,今後その体制の充実を図るための継続

した研究が必要である。

本研究の限界として考えられることは,今回の調

査の対象を学生の専攻に合わせた看護師,診療放射

線技師,臨床検査技師の3職種に絞ったものであり,

この結果は医療に関わるすべての職種の意見ではな

いDチーム医療全体を述べるには医療に関わるすべ

ての職種を対象とした調査が必要であり,勤務部署

や経験年数についてもより細かい調査が必要である

と考えられる。これらの課題について,今後研究を

継続して行きたいと考える。

謝 辞

本研究の実施及び論文作成にあたり,アンケー ト

にご協力いただきました施設の方々,並びにデータ

処理及び文章作成にご助力下さいました安藤布紀子,

小野美穂両氏に心より感謝申し上げます。また,ご

指導いただきました岡山大学医学部保健学科,安酸

史子先生,樋口まち子先生に深謝いたします。

引 用 文 献

1)細田満和子 :病院における医療従事者の組織認識一「チーム医療」の理念と現実-.現代社会理論研究,10:253-265,2000.

2)加納川栄子,中野綾美,宮田留理,畦地博子,梶本市子,

中西純子,梶原和歌,宮井千恵,野鴫佐由美 :「織りな

す心の看護」におけるキャリアディベロップメントの

特徴.高知女子大学紀要,48:45-57,1999.

3)近揮範子,大川貴子,青本さとみ :「医療チームの連携」

を生み出す看護婦の技術.看護研究,29(1):59-70,1996.

4)筑後幸恵,長吉孝子,渡追竹美 :看護職の専門性に関

埼玉県立大短大部紀要,2:97-105,2000.

5)小橋信子,竹内修子,坂田かつ子他 :チーム医療の充

実をめざしたカンファレンスに対す るチームメンバー

の意識調査より.看護実践の科学 :24-29,2000.6)柳田邦男 :医療における安全管理のあり方.看護,53

(6):67-75,2001.

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Bull Fac Health Sci, Okayama Univ Med Sch 13 : 25-36, 2002

(Original article)

Recognition of the "team medical-care" in medical field.

Akemi MITSUP), Akemi SHIMADAl), Naoko TANIGUCHIll, Junko NAKAMURAl),

Eri NISHIKAWAll, Daisaku TANAKAl), Yuichi MORITAl), Sachiyo NAGP),

Masumi HASEGAWAl) and Yoshitada NAKAGIRI

Abstract

Recently, the "team medical-care" has been received increasing attention in

medical field. Therefore we have to develop a clear understanding of "team

medical-care".

The purpose of this study is to investigate things regarded as "team medical­

care" by co-medical, recognition of other category of license, the advantages of

"team medical-care" and recognition against the "team medical-care" by different

category of license.

Total 652 nurses, clinical radiological technologists and clinical laboratory technolo­

gists who are working at 8 hospitals in Okayama prefecture were examined by us­

ing questionnaire and 470 members (72.1%) responded to it. They were nurses 207

(44.0%), clinical radiological technologists 91 (19.4%), clinical laboratory technologists

172 (36.6%).

Majority of respondents recognized that the medical conference consisted of dif­

ferent category of license promoted the "team medical-care", and ninety percent of

participants prompted more frequent medical conference. In both by category of

license and years of experience, they regarded doctor, nurse, physical therapist and

occupational therapist as the menber of the "team medical-care" at high rate. The

respondences which have over 15 years of experience regarded all category of

license as the menber of the "team medical-care", while the respondences which

have less than 10 to 14 years of experience showed disperision of the recongnition.

The advantages of "team medical-care" were highly perceived as "patient-centered

medical care" by all category of license.

Key Words: team medical-care, questionnaire, medical conference

Faculty of Health Sciences, Okayama University Medical School1) Student of Faculty of Health Sciences, Okayama University Medical School

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