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ヘ-1 . 吸収,分布,代謝,排泄に関する資料 総括 表へ-1.吸収,分布,代謝,排泄に関する試験一覧表 1.動物における検討 試験項目 動物種 またはヒト 被験物質 投与 経路 投与量 資料 番号 血液・血漿中濃度 マウス 14 C-臭化チオトロピウム a) 静脈内 10 mg/kg へ-10 経口 10 mg/kg ♂,♀ 臭化チオトロピウム 静脈内 10 mg/kg へ-15 経口 10 mg/kg ラット 14 C-臭化チオトロピウム 気管内 10 mg/kg へ-11 14 C-臭化チオトロピウム 静脈内 10 mg/kg へ-12 ♂,♀ 14 C-臭化チオトロピウム 経口 10 mg/kg ♂,♀ 臭化チオトロピウム 気管内 10 mg/kg へ-16 静脈内 10 mg/kg 経口 10 mg/kg ウサギ 14 C-臭化チオトロピウム 静脈内 1 mg/kg へ-13 経口 1 mg/kg 臭化チオトロピウム 静脈内 1 mg/kg へ-17 経口 1 mg/kg イヌ ♂,♀ 14 C-臭化チオトロピウム 静脈内 0.1 mg/kg へ-14 経口 1 mg/kg ♂,♀ 臭化チオトロピウム 静脈内 0.1 mg/kg へ-18 単回投与 経口 1 mg/kg 反復投与 ラット ♂,♀ 臭化チオトロピウム 吸入 (エロゾル ) 102575 μg/kg/(24 ヵ月) ニ-25 ラット ♂,♀ 臭化チオトロピウム 吸入 (エロゾル ) 102575 μg/kg/(24 ヵ月) ニ-25 用量相関性 ラット 臭化チオトロピウム 静脈内 515602501000 μg/kg へ-19 ラット 14 C-臭化チオトロピウム 気管内 8.75 mg/kg へ-20 静脈内 8.75 mg/kg 全身オートラジオ グラフィー 有色ラット 14 C-臭化チオトロピウム 静脈内 10 mg/kg へ-21 ラット 14 C-臭化チオトロピウム 気管内 10 mg/kg へ-11 組織内濃度 14 C-臭化チオトロピウム 静脈内 10 mg/kg へ-22 ラット 14 C-臭化チオトロピウム 静脈内 10 mg/kg へ-23 胎盤・胎児への移 (妊娠 12 日および 18 日目) ラット 14 C-臭化チオトロピウム in vitro 2 μg/mL へ-24 ヒト 14 C-臭化チオトロピウム in vitro 2 μg/mL ラット 14 C-臭化チオトロピウム 気管内 10 mg/kg へ-12 ウサギ 14 C-臭化チオトロピウム 静脈内 1 mg/kg 経口 1 mg/kg へ-13 血球への移行 イヌ ♂,♀ 14 C-臭化チオトロピウム 静脈内 0.1 mg/kg へ-14 マウス 14 C-臭化チオトロピウム in vitro 1.8 ng/mL へ-25 ラット 14 C-臭化チオトロピウム in vitro 1.89.045.0 ng/mL ウサギ 14 C-臭化チオトロピウム in vitro 1.8 ng/mL イヌ 14 C-臭化チオトロピウム in vitro 1.8 ng/mL 血漿蛋白質との結 ヒト 14 C-臭化チオトロピウム in vitro 1.8 ng/mL ヒト 3 H-チオトロピウム in vitro 1050300 pg/mL へ-26 a) acid 標識体を投与,その他の試験では,alcohol 標識体を投与

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Page 1: 1 投与 - 医薬品医療機器総合機構 › drugs › 2004 › P200400020 › 53035300_216… · ヘ-4 1.動物における成績 14c-臭化チオトロピウム水和物(以下,14c-臭化チオトロピウム)または臭化チオトロピウム水和物

ヘ-1

へ. 吸収,分布,代謝,排泄に関する資料 総括

表へ-1.吸収,分布,代謝,排泄に関する試験一覧表 1.動物における検討

試験項目 動物種 またはヒト 性 被験物質 投与

経路投与量 資料

番号

血液・血漿中濃度 マウス ♀ 14C-臭化チオトロピウム a) 静脈内 10 mg/kg へ-10 経口 10 mg/kg ♂,♀ 臭化チオトロピウム 静脈内 10 mg/kg へ-15 経口 10 mg/kg ラット ♂ 14C-臭化チオトロピウム 気管内 10 mg/kg へ-11 ♂ 14C-臭化チオトロピウム 静脈内 10 mg/kg へ-12 ♂,♀ 14C-臭化チオトロピウム 経口 10 mg/kg ♂,♀ 臭化チオトロピウム 気管内 10 mg/kg へ-16 静脈内 10 mg/kg 経口 10 mg/kg ウサギ ♀ 14C-臭化チオトロピウム 静脈内 1 mg/kg へ-13 経口 1 mg/kg ♀ 臭化チオトロピウム 静脈内 1 mg/kg へ-17 経口 1 mg/kg イヌ ♂,♀ 14C-臭化チオトロピウム 静脈内 0.1 mg/kg へ-14 経口 1 mg/kg ♂,♀ 臭化チオトロピウム 静脈内 0.1 mg/kg へ-18

単回投与 経口 1 mg/kg 反復投与 ラット ♂,♀ 臭化チオトロピウム 吸入

(エロゾル)10,25,75 µg/kg/日 (24 ヵ月)

ニ-25

ラット ♂,♀ 臭化チオトロピウム 吸入

(エロゾル)10,25,75 µg/kg/日 (24 ヵ月)

ニ-25

用量相関性

ラット ♂ 臭化チオトロピウム 静脈内 5,15,60,250, 1000 µg/kg

へ-19

ラット ♂ 14C-臭化チオトロピウム 気管内 8.75 mg/kg へ-20 静脈内 8.75 mg/kg

全身オートラジオ

グラフィー 有色ラット ♂ 14C-臭化チオトロピウム 静脈内 10 mg/kg へ-21ラット ♂ 14C-臭化チオトロピウム 気管内 10 mg/kg へ-11組織内濃度

♂ 14C-臭化チオトロピウム 静脈内 10 mg/kg へ-22ラット ♀ 14C-臭化チオトロピウム 静脈内 10 mg/kg へ-23胎盤・胎児への移

行 (妊娠 12 日および 18 日目) ラット - 14C-臭化チオトロピウム in vitro 2 µg/mL へ-24ヒト - 14C-臭化チオトロピウム in vitro 2 µg/mL ラット ♂ 14C-臭化チオトロピウム 気管内 10 mg/kg へ-12ウサギ ♀ 14C-臭化チオトロピウム 静脈内 1 mg/kg

経口 1 mg/kg へ-13

血球への移行

イヌ ♂,♀ 14C-臭化チオトロピウム 静脈内 0.1 mg/kg へ-14マウス - 14C-臭化チオトロピウム in vitro 1.8 ng/mL へ-25ラット - 14C-臭化チオトロピウム in vitro 1.8,9.0,45.0 ng/mL ウサギ - 14C-臭化チオトロピウム in vitro 1.8 ng/mL イヌ - 14C-臭化チオトロピウム in vitro 1.8 ng/mL

血漿蛋白質との結

ヒト - 14C-臭化チオトロピウム in vitro 1.8 ng/mL

ヒト - 3H-チオトロピウム in vitro 10,50,300 pg/mL へ-26a) acid 標識体を投与,その他の試験では,alcohol 標識体を投与

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ヘ-2

表ヘ-1.吸収,分布,代謝,排泄に関する試験一覧表(続き)

試験項目 動物種 またはヒト 性 被験物質 投与

経路投与量 資料

番号

♂ 14C-臭化チオトロピウム 静脈内 10 mg/kg へ-10♀ 14C-臭化チオトロピウム a) 気管内 15 mg/kg

マウス (血漿,尿, 胆汁) 静脈内 10 mg/kg

♂ 14C-臭化チオトロピウム 気管内 10 mg/kg へ-12 静脈内 10 mg/kg

♂ 14C-臭化チオトロピウム a) 気管内 10 mg/kg

ラット (血漿,尿,

糞,胆汁,肺

ホモジネート) 静脈内 10 mg/kg ♀ 14C-臭化チオトロピウム 静脈内 1 mg/kg へ-13♀ 14C-臭化チオトロピウム a) 静脈内 2.145 mg/匹

ウサギ (血漿,尿,糞,

胆汁) ♂,♀ 14C-臭化チオトロピウム 静脈内 0.1 mg/kg へ-14

in vivo での代謝

イヌ (血漿,尿,糞)

- 14C-臭化チオトロピウム in vitro 10 µM へ-27マウス,ラッ

ト,イヌ,ヒ

ト(肝ミクロソーム) 14C-臭化チオトロピウム a) in vitro 10 µM

in vitro での代謝

マウス,ラッ

ト,ウサギ,

イヌ,ヒト (血漿)

- 14C-臭化チオトロピウム in vitro 1,10 µM へ-28

ラット (尿,胆汁)

♂ 14C-臭化チオトロピウム a) 静脈内 10 mg/kg へ-12

- 14C-臭化チオトロピウム in vitro 100 µM へ-27

代謝経路

ラット (肝ミクロソーム, 肝ホモジネート)

14C-臭化チオトロピウム a) in vitro 100 µM

肝薬物代謝酵素に

対する影響 ラット

♂ 臭化チオトロピウム 静脈内 10 mg/kg/日 (5 日間)

へ-29

♂,♀ 14C-臭化チオトロピウム 静脈内 10 mg/kg へ-15マウス

経口 10 mg/kg ♂,♀ 14C-臭化チオトロピウム 気管内 10 mg/kg へ-24ラット 静脈内 10 mg/kg

♂ 14C-臭化チオトロピウム 経口 10 mg/kg へ-12♀ 14C-臭化チオトロピウム 静脈内 1 mg/kg へ-17ウサギ

経口 1 mg/kg ♂,♀ 14C-臭化チオトロピウム 静脈内 0.1 mg/kg へ-14

尿糞中排泄

イヌ

経口 1 mg/kg ラット ♂ 14C-臭化チオトロピウム 静脈内 10 mg/kg へ-12胆汁中排泄および

腸肝循環 ♂ 14C-臭化チオトロピウム b) 十二指

腸内

4 mL/kg へ-24

乳汁への移行 ラット ♀ 14C-臭化チオトロピウム 静脈内 10 mg/kg へ-30 (出産後 13~14 日目) (乳汁中代謝パターン) ラット ♀ 14C-臭化チオトロピウム 静脈内 10 mg/kg へ-31

(出産後 11~13 日目) ラット ♂,♀ 臭化チオトロピウム 静脈内 10 mg/kg へ-24

腎排泄機構の検討 イヌ ♀ 臭化チオトロピウム 静脈内 25 µg/kg 投与後

156.25 µg/kg/hr (6 時間)

へ-32

a) acid 標識体を投与,その他の試験では,alcohol 標識体を投与 b) 14C-臭化チオトロピウム 10 mg/kg を静脈内投与後 2 時間まで採取したドナーラットの胆汁

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ヘ-3

表ヘ-1.吸収,分布,代謝,排泄に関する試験一覧表(続き) 2.ヒトにおける検討

試験項目 被験物質 投与 経路 投与量 資料

番号

チオトロピウムカプセル 吸入 c) 108 mcg ト-7 チオトロピウム溶液 静脈内 14.4 mcg チオトロピウム溶液 経口 64 mcg チオトロピウムカプセル 吸入 d) 35.2,70.4,141,282 mcg ト-1 チオトロピウム溶液 静脈内 2.4,4.8,9.6,14.4 mcg ト-5

単回投与試験

チオトロピウム溶液 経口 8,16,32,64 mcg ト-4 チオトロピウムカプセル 吸入 d)

70.4,141 mcg/回/日 (7 日間)

ト-2

血漿中濃度

反復投与試験

チオトロピウムカプセル

吸入 d) 8.8,17.6,35.2 mcg/回/日 (14 日間)

ト-3

生物学的利用率 チオトロピウムカプセル 吸入 c) 108 mcg ト-7 チオトロピウム溶液 静脈内 14.4 mcg チオトロピウム溶液 経口 64 mcg

(吸収性,Caco-2 細胞) 14C-臭化チオトロピウム in vitro 5~100 µM ヘ-33血球への移行 チオトロピウム溶液 静脈内 14.4 mcg ト-10

チオトロピウムカプセル 吸入 d) 35.2,70.4,141,282 mcg ト-1 チオトロピウム溶液 静脈内 2.4,4.8,9.6,14.4 mcg ト-5

尿中排泄

単回投与試験

チオトロピウム溶液 経口 8,16,32,64 mcg ト-4 チオトロピウムカプセル 吸入 d) 70.4,141 mcg/回/日

(7 日間) ト-2

健康成人における検討 (

外国人)

反復投与試験

チオトロピウムカプセル

吸入 d) 8.8,17.6,35.2 mcg/回/日 (14 日間)

ト-3

代謝 (ヒト肝ミクロソーム) 臭化チオトロピウム in vitro 0.01,0.1,1 µM ヘ-34単回投与試験 チオトロピウムカプセル 吸入 d) 8.8,17.6,35.2,70.4 mcg ト-11血漿中濃度

(外国人) 反復投与試験 チオトロピウムカプセル 吸入 c) 18 mcg/回/日 (1 年間) ト-14単回投与試験 チオトロピウムカプセル 吸入 d) 8.8,17.6,35.2,70.4 mcg ト-11尿中排泄

(外国人) 反復投与試験 チオトロピウムカプセル 吸入 c) 18 mcg/回/日 (1 年間) ト-14チオトロピウムカプセル 吸入 c) 18 mcg/回/日 (1 年間) ト-14腎機能低下者における薬物動態

(外国人) チオトロピウム溶液 静脈内 4.8 mcg ト-9 加齢による薬物動態への影響 (外国人)

チオトロピウムカプセル 吸入 c) 18 mcg/回/日 (2 週間) ト-8

肺機能の低下による薬物動態へ

の影響(外国人) チオトロピウムカプセル 吸入 c) 18 mcg/回/日 (1 年間) ト-14

日本人の COPD 患者における検討

尿中排泄 チオトロピウムカプセル 吸入 c) 9,18,36 mcg ト-12

薬物相互作用(外国人) シメチジン チオトロピウム溶液 静脈内 14.4 mcg ト-10

慢性閉塞性肺疾患 (C

OPD

)

患者における検討

ラニチジン チオトロピウム溶液 静脈内 14.4 mcg ト-10c) ハンディヘラー d) FO2

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ヘ-4

1.動物における成績 14C-臭化チオトロピウム水和物(以下,14C-臭化チオトロピウム)または臭化チオトロピウム水和物

(以下,臭化チオトロピウム)の動物における吸収,分布,代謝,排泄について検討した。また,投与量

および定量値は,特に記載のない限り臭化チオトロピウム換算値として示した。 吸収 ラットに臭化チオトロピウム 10 mg/kg を気管内投与したときの血漿中未変化体濃度は,投与後 5 分

で最高血漿中未変化体濃度に到達し,その後 6~8 時間の消失半減期で減衰した。気管内投与後の血漿

中未変化体濃度推移は,静脈内投与後の推移とほぼ同様であった。また,血漿中未変化体濃度推移に

雌雄差はみられなかった。 ラットに臭化チオトロピウムを反復吸入投与したとき,蓄積性はないものと考えられた。また,血

漿中未変化体濃度は,投与量の増加に伴って直線的に増加することが示された。 ラットに気管内投与後の尿中排泄率から求めた吸収率は,約 76%であった。 ラットにおける経口投与時の生物学的利用率は,1%以下であった。 分布 ラットに 14C-臭化チオトロピウムを気管内投与したとき,投与後 15 分には肺,肝臓および腎臓で

高い放射能が認められたが,これらの臓器での放射能濃度の減衰は,血漿からの減衰と同様に推移し

た。肺には投与後 24 時間でも投与量の約 0.6%が存在した。また,特定組織への蓄積性はないものと

考えられた。静脈内投与した場合,肝臓,腎臓および消化管内への分布が観察された。脳への放射能

の移行性は低かった。有色ラットに 14C-臭化チオトロピウムを静脈内投与したとき,メラニン含有組

織(皮膚および眼)への移行性が認められたが,投与後 24 時間ではそれらの組織に放射能は認められず,

残留性はないものと考えられた。 妊娠 12 日目および 18 日目のラットに 14C-臭化チオトロピウムを静脈内投与したとき,胎児への放

射能の移行は認められたが,その後母獣の血漿中放射能濃度と同様に減衰し,胎児への蓄積性はない

ものと考えられた。 ラット,ウサギおよびイヌにおける本薬の血球への移行性は低いものと推察された。 マウス,ラット,ウサギおよびイヌにおける血漿蛋白結合率は,いずれも約 20%であった。ヒトに

おける血漿蛋白結合率は,約 65~73%であった。 代謝 In vivo 試験における代謝パターンには動物種差は認められず,ラットに気管内投与したときの肺ホ

モジネート,血液および尿中には主に未変化体が検出された。血液中には,未変化体の他に主代謝物

である Ba 338 BR がわずかに検出された。尿中には未変化体の他に主代謝物である Ba 338 BR とわず

かにグルタチオン抱合体類が検出された。 各種動物およびヒト肝ミクロソームを用いた in vitro 試験より,本薬はラットおよびマウスで速やか

に代謝されたが,ヒトおよびイヌではほとんど代謝されなかった。主代謝物である Ba 338 BR の生成

には,エステル結合の加水分解によるものと,チオフェン環の酸化を経た後にエステル結合が加水分

解されて生成される 2 とおりの代謝経路があると考えられた。エステル結合の加水分解はエステラー

ゼに触媒されず,非酵素的に加水分解されることが示唆された。チオフェン環の酸化は CYP により触

媒されると考えられた。 ラットに反復静脈内投与した場合,酵素誘導は認められなかった。 排泄 雌雄ラットに 14C-臭化チオトロピウムを気管内投与したときの尿中および糞中排泄率は,それぞれ

約 40~46%および約 54~60%であった。尿糞中排泄率に,雌雄差はみられなかった。 ラットに静脈内投与後の胆汁中排泄率は,約 42%であった。また,ラットにおける腸肝循環は低い

ものと推察された。 出産後 13~14 日目の授乳中ラットに 14C-臭化チオトロピウムを静脈内投与したとき,乳汁中への

放射能の移行が認められたが,母獣の血漿中放射能濃度と同様に減衰し,乳汁中の放射能の残留性は

低いものと考えられた。 ラットの腎クリアランス値は,糸球体ろ過速度より約 3 倍大きいことから,能動輸送による尿細管

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ヘ-5

分泌が関与していることが推察された。イヌの腎クリアランス値と糸球体ろ過速度はほぼ同じであっ

たことから,能動輸送による尿細管分泌がほとんど関与しないことが推察された。 2.ヒトにおける成績 ヒトにおける検討では,投与量および定量値は全てチオトロピウム換算値として示した。 健康成人における検討(外国人) 健康成人男子にチオトロピウムカプセル 35.2,70.4,141 および 282 mcg を単回吸入投与(吸入器具:

FO2)後の血漿中未変化体濃度は,ほとんどが定量下限未満であった。また,投与後 8 時間までの尿中

未変化体排泄率(Ae0-8 hr)は,投与量の 2.35~4.83%であった。

健康成人男子にチオトロピウム溶液 2.4,4.8,9.6 および 14.4 mcg を静脈内持続投与した結果,血漿

中未変化体濃度の消失は速く,投与終了後 5 分以内に最大値の約 30~50%の値を示した。また,投与

後 24 時間までの尿中未変化体排泄率(Ae0-24 hr)は,39.3~54.3%であった。 健康成人男子にチオトロピウム溶液 8,16,32 および 64 mcg を単回経口投与後の血漿中未変化体濃

度は,ほとんどが定量下限未満であった。また,投与後 24 時間までの尿中未変化体排泄率(Ae0-24 hr)は,

いずれの投与量においても投与量の 1%以下であった。 健康成人男子にチオトロピウムカプセル 70.4 および 141 mcg を 1 日 1 回 7 日間反復吸入投与(吸入器

具:FO2)後の血漿中未変化体濃度は,いずれの投与量においても吸入直後に最も高い値を示し,その

後速やかに消失して 2 時間後には C5 min の約 20~30%まで減少した。また,投与後 8 時間までの尿中未

変化体排泄率(Ae0-8 hr)は,投与 1 日目では 1.99~2.92%,投与後 7 日目では 5.57~5.82%であった。

健康成人男子にチオトロピウムカプセル 8.8,17.6および 35.2 mcgを 1日 1回 14日間反復吸入投与(吸入器具:FO2)後の血漿中未変化体濃度は,いずれの投与量においても吸入直後に最も高い値を示した。

8.8 および 17.6 mcg では投与後 1 時間には定量下限未満を示した。また,投与後 8 時間までの尿中未変

化体排泄率(Ae0-8 hr)は,投与 1 日目では 1.87~2.60%,投与後 14 日目では 5.13~6.83%であった。 尿中未変化体排泄速度から求めた消失半減期は約 6~8 日であった。 健康成人男子にチオトロピウムカプセル 108 mcg を吸入投与(吸入器具:ハンディヘラー)およびチオ

トロピウム溶液 14.4 mcgを静脈内持続投与したときの総尿中未変化体排泄率(Ae0-∞)は,それぞれ 14.4%および 73.6%を示した。また,チオトロピウム溶液 64 mcg を経口投与したときの投与後 96 時間まで

の尿中未変化体排泄率(Ae0-96 hr)は,1.60%を示した。これらの値から求めた吸入投与時の生物学的利用

率は,19.5%であり,経口投与では,2.6%であった。また,本薬の吸収性および P-糖蛋白質の関与に

ついて Caco-2 培養細胞を用いて検討した結果,低い膜透過性を示し,経口投与後の吸収性が低いこ

とおよび P-糖蛋白質がほとんど関与しないことが推察された。 血球への移行および代謝 ヒトにおける本薬の血球への移行性は低いものと推察された。 肝ミクロソームを用いた in vitro 試験において,本薬のヒトでの代謝はラットおよびマウスと比較し

て非常に遅く,ほとんどが非酵素的加水分解であると考えられた。また,静脈内投与後の尿中にほと

んどが未変化体として排泄(投与量の約 74%)された。以上のことから,ヒトでの本薬の代謝はごくわ

ずかであることが推察された。 本薬は CYP の各分子種(CYP1A1/1A2,2B6,2C9,2C19,2D6,2E1,3A)の代謝活性に対して影響を

及ぼさなかった。

慢性閉塞性肺疾患(COPD)患者における検討(外国人) COPD 患者にチオトロピウムカプセル 8.8,17.6,35.2 および 70.4 mcg を単回吸入投与(吸入器具:FO2)したとき,投与後 5 分における血漿中未変化体濃度(C5 min)は,8.8 および 17.6 mcg 投与群では半数以上

が定量下限未満を示した。35.2 および 70.4 mcg 投与群の C5 min値は,それぞれ 14.7 pg/mL および 33.5

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ヘ-6

pg/mL を示した。また,投与後 8 時間までの尿中未変化体排泄率(Ae0-8 hr)は 1.44~2.83%であった。こ

れらの血漿中未変化体濃度および尿中未変化体排泄率は,健康成人男子に単回吸入投与した場合とほ

ぼ同じ値であった。 COPD 患者にチオトロピウムカプセル 18 mcg を 1 日 1 回 1 年間反復吸入投与試験(吸入器具:ハンデ

ィヘラー)において,投与後 50 日および 92 日目の血漿中未変化体濃度(C5 min 値および C2 hr値)は,男性

と比較して女性の方が約 10~40%の高い値を示したが,体重の違いによって生じたものと推察された。

投与後 50 日,92 日および 175 日目の投与後 24 時間までの尿中未変化体排泄率(Ae0-24 hr)は,男性では

7.12~7.57%,女性では 6.19~7.01%であった。 本薬の薬物動態には明確な性差はないものと推察された。 男女共に投与日数に関わらず血漿中未変化体濃度および尿中未変化体排泄率がほぼ同じ値を示した

ことから,長期投与による蓄積性はないものと考えられた。 腎機能低下者における薬物動態(外国人) COPD 患者にチオトロピウムカプセル 18 mcg を 1 日 1 回 1 年間反復吸入投与試験(吸入器具:ハンデ

ィヘラー)において,血漿中未変化体濃度(C5 min値および C2 hr値)および投与後 24 時間までの尿中未変

化体排泄率(Ae0-24 hr)をクレアチニンクリアランス(CLCR)値(30~50 mL/min,50~80 mL/min および 80 mL/min 以上)別に分けて比較検討した。 投与後 92 日目の C5 min 値および C2 hr値は,CLCR値の低下に伴って CLCR値が 80 mL/min 以上の患者

の約 1.3~2.6 倍高い値を示した。 投与後 50 日,92 日および 175 日目の尿中未変化体排泄率(Ae0-24 hr)は,CLCR値が 80 mL/min 以上の患

者と比べて,CLCR値が 30~50 mL/min の患者では約 20~50%の低下がみられたが,CLCR値が 50~80 mL/min の患者では大きな影響を受けなかった。 腎機能が軽度(CLCR値:50~80 mL/min),中等度(CLCR値:30~50 mL/min),高度(CLCR値:30 mL/min未満)に低下した患者および健康成人(CLCR値:80 mL/min 以上)に,チオトロピウム溶液 4.8 mcg を単回

静脈内持続投与したときの,Cmaxおよび AUC0-4 hr値は,腎機能の低下に伴ってそれぞれ約 1.4~1.5 倍

および約 1.4~1.9 倍増加した。また,尿中未変化体排泄率(Ae0-∞)は,腎機能の低下に伴って約 1~38%低下した。 本薬の体内動態は腎機能の低下によって影響を受けることが示唆されたが,血漿中未変化体濃度の

増加に伴う有害事象の発生はみられなかった。なお,血漿蛋白結合率は,腎機能の低下による影響を

受けなかった。 加齢による薬物動態への影響(外国人) COPD 患者の高齢者(平均 74 歳)および非高齢者(平均 53 歳)にチオトロピウムカプセル 18 mcg を 1 日

1 回 2 週間反復吸入投与(吸入器具:ハンディヘラー)したとき,血漿中未変化体濃度は,高齢者の方が

高く推移した。投与後 14 日目の C5 min 値は,高齢者の方が約 60%高い値を示した。一方,投与後 4 時

間までの尿中未変化体排泄率(Ae0-4 hr)は,高齢者の方が約 30%低い値であった。 本薬の体内動態は加齢によって影響を受けたが,安全性に対して臨床的に問題となる影響はみられ

なかった。 肺機能の低下による薬物動態への影響(外国人) COPD 患者にチオトロピウムカプセル 18 mcg を 1 日 1 回 1 年間反復吸入投与試験(吸入器具:ハンデ

ィヘラー)において,投与後 50 日の C5 min値および C2 hr値ならびに投与後 24 時間までの尿中未変化体

排泄率(Ae0-24 hr)の FEV1.0 値(0.80 L 未満,0.80~1.25 L,1.25~1.50 L および 1.50 L 以上)別の比較を行

った。 肺機能の低下(FEV1.0 値の低下)によって,C5 min 値および C2 hr値ならびに Ae0-24 hrにそれぞれ違いは

みられなかった。 本薬の体内動態は,肺機能の低下による影響を受けないものと推察された。

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ヘ-7

日本人の COPD 患者における検討

日本人の COPD 患者にチオトロピウムカプセル 9,18 および 36 mcg を単回吸入投与(吸入器具:ハ

ンディヘラー)したとき,投与後 8 時間および 24 時間までの尿中未変化体排泄率(Ae0-8 hrおよび Ae0-24 hr)はそれぞれ 2.2~4.2%および 3.7~6.7%であった。 日本人と外国人の COPD 患者にそれぞれ単回吸入投与後 8 時間までの尿中未変化体排泄率(Ae0-8 hr)を比較した結果,大きな違いはみられなかった。 薬物相互作用(外国人) 推奨用量の 18 mcg を吸入投与後の定常状態における血漿中未変化体濃度は約 0.02~0.05 nM と低い

ことならびに in vitro 試験におけるチトクローム P450 代謝酵素の阻害試験より,CYP 1A1,1A2,2B6,2C9,2C19,2D6,2E1 および 3A に対して 1 µM の濃度においても阻害反応はみられなかったことから,

チオトロピウムは CYP 関与の薬物相互作用を惹起する可能性は低いと考えられた。 健康成人においてチオトロピウム溶液 14.4 mcg を単回静脈内持続投与時にシメチジン(400 mg)の併

用投与により,チオトロピウムの Cmaxの変化はみられなかったが,AUC0-4 hrは約 20%増加した。投与

後 4 時間までの尿中未変化体排泄率(Ae0-4 hr)は,併用投与による違いはみられなかったが,腎クリアラ

ンス(CLR)は約 20%減少した。しかし,クレアチニンクリアランス値よりも腎クリアランス値が高いこ

とから,チオトロピウムの尿細管分泌への影響は小さいことが推察された。このことから,シメチジ

ンはチオトロピウムの薬物動態に対してわずかに影響を及ぼしたが,尿中排泄において臨床上問題と

なるような薬物相互作用を起こす可能性は低いものと考えられた。 健康成人においてチオトロピウム溶液 14.4 mcg を単回静脈内持続投与時にラニチジン(300 mg)の併

用投与により,チオトロピウムの Cmaxは約 13%減少したが,AUC0-4 hrの変化はみられなかった。投与

後 4 時間までの尿中未変化体排泄率(Ae0-4 hr)および腎クリアランス(CLR)は,併用投与による変化はみら

れなかった。このことから,チオトロピウムの薬物動態に対するラニチジンの影響は小さく,尿中排

泄における薬物相互作用を起こさないものと考えられた。

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ヘ-8

1 被験物質およびその定量法·····················································································添付資料 へ-1~9 1.1 標識化合物 ···········································································································添付資料 ヘ-1~5 1.1.1 被験物質 ···········································································································添付資料 ヘ-1~5 14C-臭化チオトロピウムおよび 3H-チオトロピウムは,ドイツ ベーリンガーインゲルハイム社(現ドイツ ベーリンガーインゲルハイムファルマ社)で合成および精製された。 14C-臭化チオトロピウムは,N-メチル基(alcohol 標識体)またはグリコール酸(acid 標識体)に放射能

標識したものを試験に用いた(図へ-1)。それぞれの比放射能および放射化学的純度を表へ-2に示した。 3H-チオトロピウムの構造式および標識位置ならびに比放射能および放射化学的純度をそれぞれ図

へ-2および表へ-3に示した。

N

OH

C

COH

O

S

S

O

CH3H3Ca)

b)

b)

Br

図へ-1.14C-臭化チオトロピウムにおける 14C の標識位置 a) N-メチル基標識(alcohol 標識体),b) グリコール酸標識(acid 標識体)

表へ-2.14C-臭化チオトロピウムの比放射能および放射化学的純度 標識位置 バッチ番号 比放射能 放射化学的純度 用いた試験の添付資料番号

Ⅰ 650 kBq/mg > 99% ヘ-10,12 ~14,20,25DE 3/233 1.88 MBq/mg > 97% ヘ-11,15,17,21~24,27,28,30,31,33

Ⅱ 1900 kBq/mg > 99% ヘ-10,12,13Br 1114/35 2.014 MBq/mg 99.5% ヘ-27

N-メチル基

(alcohol標識体)

グリコール酸(acid標識体)

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ヘ-9

N

OH

C

COH

O

S

S

O

CH3T3C

図へ-2.3H-チオトロピウムにおける 3H の標識位置 T:トリチウム(3H)を表す。

表へ-3.3H-チオトロピウムの比放射能および放射化学的純度 バッチ番号 比放射能 放射化学的純度 用いた試験の添付資料番号

Ks 452/24 7428 MBq/mg 97.9% ヘ-26

1.1.2 定量法 放射能の測定は,試料調製後,液体シンチレーションカウンターを用いて行った。放射能濃度は,

臭化チオトロピウム換算値として示した。 1.1.3 代謝物 代謝物の分離測定は,HPLC-放射能検出により行った。また,代謝物の同定には,高速液体クロマ

トグラフィー-質量分析法(LC-MS/MS)を用いた。 1.2 非標識化合物 ·······································································································添付資料 ヘ-6~9 1.2.1 被験物質 試験に用いた臭化チオトロピウムは,ドイツ ベーリンガーインゲルハイム社(現ドイツ ベーリン

ガーインゲルハイムファルマ社)で合成した。 1.2.2 定量法 ···············································································································添付資料 ヘ-6~9 ラット,ウサギ,イヌおよびヒトにおける血漿中および尿中の未変化体の定量は,

あるいは を用いて行った。各動物およびヒトにおける血漿および尿中未変化体の定量下限を表へ-4お

よび表へ-5に示した。動物における未変化体濃度は臭化チオトロピウム換算値として示し,ヒトの場

合はチオトロピウム換算値として示した。 ヒト血漿中の安定性については,少なくとも室温で 24 時間,-20℃で 2 週間安定であった。また,

ヒト尿中の安定性については,少なくとも室温で 24 時間,-20℃で 10 日間安定であった。なお,ヒ

ト血漿中および尿中の試料は,3 回までの凍結融解の繰り返しに安定であった。

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ヘ-10

表へ-4.各動物における血漿および尿中未変化体の定量下限

測定法 動物種 試料定量下限( )

用いた試験の

添付資料番号

マウス 血漿 ヘ-15 ヘ-16,19

血漿 ニ-25 ラット

尿 ヘ-24 ウサギ 血漿 ヘ-17

ヘ-18 血漿

イヌ

尿 ヘ-32

定量下限は,臭化チオトロピウム換算値として示した。

表へ-5.ヒトにおける血漿および尿中未変化体の定量下限

測定法 試料 定量下限( )

用いた試験の 添付資料番号

血漿 ト-1

尿 ト-1~3 血漿 ト-2,3

ト-4,5,7,9,10,14血漿

ト-8,11 ト-3~5,7~11,14

尿

ト-12 定量下限は,チオトロピウム換算値として示した。

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ヘ-11

2 動物における成績 動物試験における投与量および定量値は,特に記載のない限り臭化チオトロピウム換算値として示

した。

2.1 吸 収 ···························································································· 添付資料ニ-25,ヘ-10~19,24 2.1.1 血液・血漿中濃度 ·············································································添付資料ニ-25,ヘ-10~18 2.1.1.1 単回投与 ······································································································添付資料ヘ-10~18 2.1.1.1.1 血液・血漿中放射能濃度 ··········································································添付資料ヘ-10~14 マウス,ラット,ウサギおよびイヌに 14C-臭化チオトロピウムを単回投与後の血液中あるいは血漿

中放射能濃度の薬物動態パラメータ値を表へ-6に示した。

表へ-6.各種動物における 14C-臭化チオトロピウム単回投与後の血液・血漿中放射能濃度の 薬物動態パラメータ値(平均値±S.D.)

投与量 添付資料

(mg/kg) 番号

静脈内a) 10 ♀ 1/時点

経口a) 10 ♀ 1/時点

気管内b) 10 ♂ 4 13.631 ±7.969c) 11.389 ±2.613c) 19.4 ±1.4e) ヘ-11

静脈内b) 10 ♂ 5 6.80 ±2.43 7.39 ±1.29 7.6 ±0.8f)

10 ♂ 4 0.0165 ±0.0046 0.4250 ±0.1493 19.5 ±4.3g)

10 ♀ 4 0.0186 ±0.0043 0.6102 ±0.2853 25.1 ±17.0g)

静脈内b) 1 ♀ 2

経口b) 1 ♀ 2

静脈内b) 0.1 ♂+♀ 2+2 0.1232 ±0.0220 0.1368 ±0.0237 10.4 ±2.4h)

経口b) 1 ♂+♀ 2+2 0.0273 ±0.0053 0.4218 ±0.0677

Cmax

(µg eq./mL)

5.59

AUC0-∞

(µg eq.·hr/mL) (hr)

イヌ

経口b)

ヘ-14

ヘ-1310.9h)1.978

0.0164

動物種 投与経路 性 例数

マウス

ウサギ

12.290.74

1.25250.1474 -

11.47

ラットヘ-12

t1/2

5.86d)

ヘ-102.9d)

ラットの静脈内および経口投与は血液中放射能濃度を示し,気管内投与は血漿中放射能濃度を示す。 マウス,ウサギおよびイヌは全て血漿中放射能濃度を示す。 ウサギの薬物動態パラメータ値は,平均値のみを示す。 静脈内投与後の Cmax 値は,最初の採血時点での値を示す。 a) acid 標識体を投与,b) alcohol 標識体を投与,c) オリジナルデータから算出した臭化チオトロピウム換算値を用

いて計算した値,d) 3~8 時間から算出,e) 8~72 時間から算出,f) 4~24 時間から算出,g) 32~72 時間から算出,

h) 6~24 時間から算出,-:算出せず

雌のマウスに 14C-臭化チオトロピウム 10 mg/kg を単回静脈内投与したときの血漿中放射能の t1/2は

5.86 時間,血漿中放射能濃度-時間曲線下面積(AUC0-∞)は 11.47 µg eq.·hr/mL であった。10 mg/kg を単

回経口投与した場合,血漿中放射能は投与後5分で最高血漿中放射能濃度(Cmax:0.74 µg eq./mL)を示し,

その後 2.9 時間の半減期(t1/2)で消失した(表へ-6)。 雄のラットに 14C-臭化チオトロピウム 10 mg/kg を単回気管内投与後の吸収は速く,投与後 5 分で

Cmax (13.631 µg eq./mL)に達し,その後 19.4 時間の半減期(t1/2)で消失し,72 時間後には 0.014 µg eq./mLまで減衰した(表へ-6および図へ-3)。 雄のラットに 14C-臭化チオトロピウム 10 mg/kg を単回静脈内投与したとき,投与後 5 分に 6.80 µg eq./mL を示し,AUC0-∞は 7.39 µg eq.·hr/mL であった。また,t1/2は 7.6 時間であった(表へ-6および図へ

-3)。 雄雌のラットに単回経口投与したときの血液中放射能濃度は,雄で投与後 6 時間(中央値)に Cmax (0.0165 µg eq./mL)に達し,雌で投与後 16 時間(中央値)に Cmax (0.0186 µg eq./mL)に達した。半減期は雄

で 19.5 時間,雌で 25.1 時間であった(表へ-6および図へ-3)。

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ヘ-12

時間 (hr)

0 12 24 36 48 60 72

血漿中放射能濃度

(µg

eq./m

L)

0.0001

0.001

0.01

0.1

1

10 気管内投与 (♂,n=4)

時間 (hr)

0 12 24 36 48 60 72

血液中放射能濃度

(µg

eq./m

L)

0.0001

0.001

0.01

0.1

1

10静脈内投与(♂,n=5)

経口投与(♂,n=4)

経口投与(♀,n=4)

図へ-3.ラットに 14C-臭化チオトロピウム 10 mg/kg を単回気管内投与後の血漿中放射能濃度推移

(左図)ならびに単回静脈内および経口投与後の血液中放射能濃度推移(右図) (平均値±S.D.) (気管内投与後の血漿中放射能濃度は,オリジナルデータから臭化チオトロピウム換算値を計算した。 また,静脈内および経口投与後の濃度推移は,オリジナルデータから作成)

雌のウサギに 14C-臭化チオトロピウム 1 mg/kg を単回静脈内投与したときの血漿中放射能濃度は,

投与後 10 分に 1.2525 µg eq./mL を示し,半減期は 10.9 時間であった。また,1 mg/kg を単回経口投与

したときの血漿中放射能濃度は,投与後 1 時間に 0.0164 µg eq./mL に達した(表へ-6)。

雄雌のイヌに 14C-臭化チオトロピウム 0.1 mg/kgを単回静脈内投与したときの血漿中放射能濃度は,

投与後 5 分で 0.1232 µg eq./mL を示し,半減期は 10.4 時間であった。また,1 mg/kg を単回経口投与し

たときの血漿中放射能濃度は,投与後 6 時間で 0.0273 µg eq./mL に達した(図へ-4および表へ-6)。

時間 (hr)

0 6 12 18 24

血漿中

放射能濃度

(µg

eq./m

L)

0.0001

0.001

0.01

0.1

静脈内投与経口投与

図へ-4.雌雄イヌに 14C-臭化チオトロピウムを単回経口投与(1 mg/kg)および単回静脈内投与 (0.1 mg/kg)後の血漿中放射能濃度推移(平均値±S.D.,各群 n=4) (オリジナルデータから作成)

マウス,ラット,ウサギおよびイヌに 14C-臭化チオトロピウムを経口投与したとき,ラット,ウサ

ギおよびイヌでは,消化管からの吸収は緩やかであったが,マウスでは他の動物種と比較して速やか

な吸収を示した。経口投与後の AUC0-∞値を静脈内投与時の場合と比較すると,ラットおよびウサギで

はいずれも 7.5%以下であったが,マウスおよびイヌではそれぞれ 49%および 31%であり,いずれの

動物種でも低い値であったことから,本薬の消化管からの吸収は低いことが推察された。

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ヘ-13

2.1.1.1.2 血漿中未変化体濃度 ················································································ 添付資料ヘ-15~18 マウス,ラット,ウサギおよびイヌに臭化チオトロピウムを単回投与後の血漿中未変化体濃度の薬

物動態パラメータ値を表へ-7に示した。

表へ-7.各種動物における臭化チオトロピウム単回投与後の血漿中未変化体濃度の薬物動態 パラメータ値(平均値±S.D.)

投与量 添付資料

(mg/kg) 番号

10 ♂ 5/時点10 ♀ 5/時点10 ♂ 5 5290 ±2159 2027 ±1057 7.8 ±4.7b)

10 ♀ 5 5980 ±1353 2872 ±1148 5.8 ±0.6b)

10 ♂ 5 7963 ±2460 1717 ±189.9 8.2 ±3.2b) 8.0 ±3.710 ♀ 5 10570 ±1758 1962 ±332.7 6.4 ±1.4b) 3.4 ±1.010 ♂ 5 3.140 ±1.295 13.53 ±10.8610 ♀ 5 2.163 ±0.798 12.70 ±11.88

ウサギ 静脈内 1 ♀ 3 1310 ±535.4 329.1 ±118.5 2.5 ±0.7c) 1.3 ±0.5 ヘ-17

静脈内 0.1 ♂+♀ 2+2 152.9 ±47.79 49.94 ±6.68 2.3 ±0.7d) 2.0 ±0.7

経口 1 ♂+♀ 2+1 4.467 ±2.930 31.44 ±13.05

マウス

動物種

ラット

イヌ

ヘ-16

ヘ-18

投与経路 性 例数

ヘ-151221

気管内

静脈内

経口

7690静脈内

t1/2

(hr)

10.4a)

9.5a)

Vss

(L/kg)9.854.80

AUC0-∞

(ng·hr/mL)801.5

Cmax

(ng/mL)4343

マウスの薬物動態パラメータ値は,平均値のみを示す。 静脈内投与後の Cmax 値は,最初の採血時点での値を示す。

a) 6~24 時間から算出,b) 8~24 時間から算出,c) 2~8 時間から算出,d) 4~8 時間から算出,-:算出せず 雌雄マウスに臭化チオトロピウム 10 mg/kg を単回静脈内投与後の Cmaxおよび AUC0-∞は,雄でそれ

ぞれ 4343 ng/mLおよび 801.5 ng·hr/mLであった。一方,雌ではそれぞれ 7690 ng/mLおよび 1221 ng·hr/mLを示した。投与直後の消失は雌雄ともに速く,投与後 40 分で Cmaxの 1%以下まで減少した。Cmax以降

の血漿中未変化体濃度に明らかな雌雄差はみられず,消失半減期は,雌雄とも約 10 時間であった(表へ

-7)。雌雄マウスに臭化チオトロピウム 10mg/kg を単回経口投与後の血漿中未変化体濃度は,投与後

40 分以内に雌雄とも約 360 pg/mL にしか達せず,1 時間以降はほとんど定量下限( pg/mL)未満であ

った。このため,薬物動態パラメータ値の算出は行わなかった。 雌雄ラットにおいて臭化チオトロピウム 10 mg/kg を単回気管内投与後の吸収は速く,投与後 5 分で

Cmax (♂ 5290 ng/mL,♀ 5980 ng/mL)を示し,消失半減期は雄で約 8 時間,雌で約 6 時間であった(表へ-7)。気管内投与後の血漿中未変化体濃度の推移は,静脈内投与後の推移とほぼ同様であった(図へ

-5)。単回経口投与後の場合,投与後 30 分で Cmax (♂ 3.140 ng/mL,♀ 2.163 ng/mL)を示した(表へ-

7)。なお,ラットにおいて血漿中未変化体濃度推移に雌雄差はみられなかった。 気管内投与後の AUC0-∞値は,静脈内投与時の場合と比較して高い値を示した(表ヘ-7)。本試験では,

AUC0-∞値は,投与後 0 分値に投与後 5 分の値を用いて計算された。静脈内投与の場合,血漿中未変化

体濃度は速やかに減少することから,実際の投与後 0 分値は投与後 5 分値よりも高い値を示すと考え

られる。このため,静脈内投与後の AUC 0-∞値が過小評価されたために生じたものと推察された。 なお,投与後 0 分値に投与後 5 分の値を用いた場合と外挿した値を用いた場合の AUC0-∞値を比較し

た結果を表ヘ-8 に示した。投与後 0 分値に外挿した値を用いた場合,静脈内投与後の AUC0-∞値は,

気管内投与後の値(♂ 2027 ng·hr/mL,♀ 2872 ng·hr/mL)よりも高い値あるいはほぼ同じ値を示した。

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ヘ-14

表へ-8.投与後 0 分値に投与後 5 分の値を用いた場合と外挿した値を用いた 場合の AUC0-∞値の比較(平均値±S.D.,n=5)

♂ 1717 ± 189.9 2364 ± 385.7♀ 1962 ± 332.7 2854 ± 296.1

投与後0分値に外挿した値を

用いた場合のAUC0-∞ (ng·hr/mL)

静脈内

投与経路 性投与後0分値に投与後5分の値を

用いた場合のAUC0-∞ (ng·hr/mL)

(オリジナルデータから算出。)

時間 (hr)

0 2 4 6 8

血漿中未変化体濃度

(ng/

mL)

0.01

0.1

1

10

100

1000

10000静脈内投与(♂)静脈内投与(♀)

気管内投与(♂) 気管内投与(♀)

経口投与(♂)

経口投与(♀)

図へ-5.雌雄ラットに臭化チオトロピウムを 10 mg/kg 単回投与したときの血漿中未変化体濃度推移 (平均値±S.D.,各群 n=5) (血漿中未変化体濃度は,オリジナルデータから臭化チオトロピウム換算値を計算した。)

雌のウサギに臭化チオトロピウム 1 mg/kg を単回静脈内投与後の Cmax および AUC0-∞は,それぞれ

1310 ng/mL および 329.1 ng·hr/mL を示し,消失半減期は 2.5 時間であった(表へ-7)。雌のウサギに臭化

チオトロピウム 1 mg/kg を単回経口投与後の血漿中未変化体濃度は,全ての採血時点で定量下限 (62.5 pg/mL)未満であったため,薬物動態パラメータ値の算出は行わなかった。 雌雄イヌに臭化チオトロピウム 0.1 mg/kg を単回静脈内投与したとき,消失半減期は 2.3 時間,AUC0-∞

は 49.94 ng·hr/mL であった。また,1 mg/kg を単回経口投与したとき,投与後 2 時間で Cmax 4.467 ng/mLに達した。マウスやラットと比較して tmaxは遅く,2 時間であった(図へ-6および表へ-7)。なお,イ

ヌにおいて血漿中未変化体濃度推移に雌雄差はみられなかった。

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ヘ-15

時間 (hr)

0 4 8 12 16 20 24

血漿中未変化体濃度

(ng/

mL)

0.1

1

10

100 静脈内投与 (♀)静脈内投与 (♂) 経口投与 (♀)

経口投与 (♂)

図へ-6. イヌに臭化チオトロピウムを 0.1 mg/kg 単回静脈内投与および 1 mg/kg 単回経口投与した

ときの個々の血漿中未変化体濃度推移 (血漿中未変化体濃度は,オリジナルデータから臭化チオトロピウム換算値を計算した。)

マウス,ラット,ウサギおよびイヌに臭化チオトロピウムを静脈内投与後の消失半減期(t1/2)を比較す

ると,算出時点の違いがあるもののマウスおよびラットでは約 6~10 時間,ウサギおよびイヌでは約 2~3 時間であった。いずれの動物種においても,血漿からの本薬の消失が速いものと推察された。また,

マウス,ラットおよびイヌにおいて,血漿中未変化体濃度推移および薬物動態パラメータに雌雄間で

大きな違いがなかったことから,本薬の雌雄差はないものと推察された。 ラットにおいて,静脈内および気管内投与後の血漿中未変化体濃度推移がほぼ同じであったことか

ら,気管内投与後に肺から吸収された薬物は静脈内投与後と同じ挙動を示すものと推察された。

2.1.1.2 反復投与 ··············································································································添付資料ニ-25 臭化チオトロピウムをエロゾル化し,雌雄ラットに 10,25 および 75 µg/kg/日の設定投与量で 1 日 1回,24 ヵ月にわたり反復吸入投与したときの,12 ヵ月および 23 ヵ月目の投与後 15 分における血漿中

未変化体濃度を表へ-9に示した(ニ-37 頁,5.1 ラットがん原性試験(エロゾル吸入投与)の項参照)。 各投与量における血漿中未変化体濃度に雌雄差はみられなかった。投与量 10 および 25 µg/kg/日にお

いて,12 ヵ月目と 23 ヵ月目の血漿中未変化体濃度の大きな違いはみられなかったが,75 µg/kg/日の 23ヵ月目の血漿中未変化体濃度は 12 ヵ月目よりも約 1.2~1.4 倍高い値を示した。これは,採血時間の違

いに起因すると考えられた。すなわち,12 ヵ月目の採血時間の平均が 27.7 分(♂:29 分,♀:26.4 分)であるのに対して 23 ヵ月の場合は 19.9 分(♂:21 分,♀:18.8 分)と 12 ヵ月目の採血時間よりも有意

に(p<0.05)早い時間に採血したために高い値を示したものと考えられた。 投与量 10,25 および 75µg/kg/日のいずれの投与量においても,23 ヵ月まで本薬の顕著な蓄積性はな

いものと考えられた。

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ヘ-16

表へ-9.雌雄ラットに臭化チオトロピウム 10,25 および 75 µg/kg/日を反復吸入投与したときの 12 ヵ月および 23 ヵ月目における血漿中未変化体濃度(平均値±S.D.,各群 n=5)

設定投与量

(µg/kg/日)

176.6a) 166.0 ±76.8(23分) (15 ~ 22分)

182.0 ±75.5b) 155.5 ±40.4(18 ~ 22分) (17 ~ 26分)

240.7 ±49.8 275.5 ±97.9(17 ~ 25分) (16 ~ 28分)

239.0 ±97.7 273.9 ±73.3(22 ~ 30分) (16 ~ 25分)

825.7 ±247.3 1133.4 ±174.9(25 ~ 32分) (13 ~ 25分)

865.1 ±152.3 1065.8 ±111.3(19 ~ 31分) (14 ~ 24分)

10

75♂

25♂

血漿中未変化体濃度(pg/mL)

12ヵ月目 23ヵ月目性

a) n=1,b) n=3 (オリジナルデータから平均値±S.D.を算出した。採血予定時間は 投与後 15 分であるが,実際の採血時間範囲を表中括弧内に示す。)

2.1.2 用量相関性 ································································································ 添付資料ニ-25,へ-19 ラットに臭化チオトロピウムを反復吸入投与したとき,投与後 15 分における血漿中未変化体濃度と

投与量との相関性ならびに単回静脈内投与後の未変化体のCmaxおよびAUC0-∞と投与量との相関性を評

価した。 臭化チオトロピウムをエロゾル化し,雌雄ラットに 10,25 および 75 µg/kg/日で 1 日 1 回,24 ヵ月に

わたり反復吸入投与した(ニ-37 頁,5.1 ラットがん原性試験(エロゾル吸入投与)の項参照)ときの,投

与後 12 ヵ月目の血漿中未変化体濃度(投与後 15 分)と投与量との相関性を図へ-7に示した。 投与量の増加(10~75 µg/kg/日)に伴い,投与後 15 分の血漿中未変化体濃度はほぼ直線的に増加する

ことが示された。

投与量 (µg/kg/日)

0 10 25 75

血漿中未変化体濃度

(pg/

mL)

0

200

400

600

800

1000

1200

1400

Y = 8.61X1.06 r = 0.915

図へ-7.雌雄ラットに臭化チオトロピウム 10,25 および 75 µg/kg/日で反復吸入投与したときの 12 ヵ月目の投与後 15 分における個々の血漿中未変化体濃度と投与量との相関性 (オリジナルデータから作成)

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ヘ-17

雄ラットに臭化チオトロピウム 5,15,60,250 および 1000 µg/kg を単回静脈内投与後の未変化体の

Cmaxおよび AUC0-∞と投与量との関係を図へ-8に示した。 投与量の増加(5~1000 µg/kg)に伴い,未変化体の Cmaxおよび AUC0-∞は直線的に増加することが示さ

れた。

投与量 (µg/kg)

0 200 400 600 800 1000A

UC

0-∞

(ng·

hr/m

L)

0

20

40

60

80

100

120

140

160

投与量 (µg/kg)

0 200 400 600 800 1000

Cm

ax (n

g/m

L)

0

100

200

300

400

500

600

700

800

図へ-8.雄ラットに臭化チオトロピウム 5,15,60,250 および 1000 µg/kg を単回静脈内投与した

ときの未変化体の Cmaxおよび AUC0-∞と投与量との相関性(平均値±S.D.,n=4) 2.1.3 吸収率および生物学的利用率 ····························································添付資料へ-12,14~18,24 14C-臭化チオトロピウムをラットに単回気管内および静脈内投与後の尿中排泄率(ヘ-31頁,表へ-

18参照)から求めた気管内投与時の吸収率は,約 76%(♂:73%,♀:79%)と高い値を示した。 また,マウス,ラット,ウサギおよびイヌに単回静脈内および経口投与後の尿中排泄率から求めた

経口投与時の吸収率は,マウスで約 19%(♂:18%,♀:19%),ラットで約 6%,ウサギで約 11%,

イヌで約 46%であった。イヌにおける吸収率は,他の動物種と比較して高い値を示した。 マウス,ラット,ウサギおよびイヌに単回静脈内および経口投与したときの AUC0-∞値(ヘ-13頁,表

へ-7参照)から求めた経口投与時の生物学的利用率は,ラットでは 1%以下で,マウスおよびウサギで

は血漿中未変化体濃度が定量下限未満のため AUC0-∞値が求められないことから,非常に低い値である

と推察された。一方,イヌにおける生物学的利用率は,6.3%と他の動物種よりも高かった。

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ヘ-18

2.2 分 布 ····································································································添付資料へ-11~14,20~26 2.2.1 全身オートラジオグラフィー ········································································· 添付資料へ-20,21 雄のアルビノラットに 14C-臭化チオトロピウム 8.75 mg/kg を単回気管内投与後 2 および 24 時間な

らびに静脈内投与後 10 分,2 時間および 24 時間の全身オートラジオグラムを作製し,放射能の全身分

布を検討した。 気管内投与後 2 時間では,肺,肝臓,腎臓に高い放射能が認められ,肺への移行性が高いことが示

された(図へ-9)。投与後 24 時間でも肺にはかなりの放射能が認められた。肺以外の組織への放射能分

布は,静脈内投与後の放射能分布パターンと非常に類似した。 静脈内投与後 10 分では,全身に広く分布し,肝臓,腎臓および腸管内容物で高い放射能がみられた

(図へ-10)。投与後 2 時間では,肝臓,腎臓の放射能はかなり消失し,腸管内において高い放射能がみ

られた。放射能は時間と共に消失し,投与後 24 時間では,肝臓,腎臓および腸管内のみに放射能がみ

られた。 気管内投与および静脈内投与ともに,脳への放射能の移行は認められなかった。

投与後 2 時間 胃

腸管内容物 腎臓 肝臓 肺 脳

投与後 24 時間 胃

腸管内容物 腎臓 肝臓 肺 脳 図へ-9.雄アルビノラットに 14C-臭化チオトロピウム 8.75 mg/kg 単回気管内投与後 2 時間および

24 時間の全身オートラジオグラム (白色部位は放射能の存在を示す。)

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ヘ-19

投与後 10 分 腸管内容物

腸管内容物 腎臓 肝臓 肺 脳

投与後 2 時間

腸管内容物 腎臓 肝臓 肺 脳

投与後 24 時間

腸管内容物 腎臓 肝臓 肺 脳 図へ-10. 雄アルビノラットに 14C-臭化チオトロピウム 8.75 mg/kg 単回静脈内投与後 10 分,2 時

間および 24 時間の全身オートラジオグラム (白色部位は放射能の存在を示す。)

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ヘ-20

雄の有色ラットに 14C-臭化チオトロピウム 10 mg/kg を単回静脈内投与し,メラニン含有組織への

分布を検討した(図へ-11)。 静脈内投与後 15 分では,肝臓,腎臓,胃および小腸内容物に高い放射能が認められた。また,メラ

ニン含有組織(皮膚および眼)への放射能の移行がわずかに認められた。投与後 24 時間では,肝臓,腎

臓および胃内容物の放射能は消失し,大腸内容物において高い放射能がみられた。また,メラニン含

有組織に放射能は認められなかった。このことから,チオトロピウムおよびその代謝物がメラニン含

有組織に残留しないものと考えられた。 投与後 15 分 腎臓 脾臓 胃 肺 褐色脂肪 皮膚 網膜

大腸 小腸 膵臓 肝臓 血液 投与後 24 時間 腎臓

大腸 胃 肝臓 図へ-11.雄有色ラットに 14C-臭化チオトロピウム 10 mg/kg 単回静脈内投与後 15 分および 24 時間

の全身オートラジオグラム (黒化部位は放射能の存在を示す。)

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ヘ-21

2.2.2 組織内濃度 ······································································································ 添付資料へ-11,22 雄ラットに 14C-臭化チオトロピウム 10 mg/kg を単回気管内投与し,投与後 15 分,4,24,48 およ

び 72 時間の組織内放射能濃度を測定した(表へ-10)。 気管および肺における放射能濃度は,最初の試料採取時点である投与後 15 分が最高値(気管:約 100 µg eq./g,肺:約 420 µg eq./g)を示した。肺の放射能濃度は,全ての観察時点において消化管を除く他の

組織よりも高く,投与後 24 時間でも約 11 µg eq./g を示し,投与放射能の約 0.6%が残存した。消化管

以外では,肝臓,腎臓および膵臓で比較的高い放射能濃度が観察された。これら組織における投与後

24 時間後の体内総残存量は,投与量の 1%未満であった。投与後 24 時間から 72 時間の放射能濃度か

ら求めた消失半減期は,血中あるいは血漿の消失半減期(それぞれ約 44 時間および 29 時間)と比較して

全ての組織において同等かあるいは短かった(17.1~33.5 時間)。このことから,組織からの放射能の消

失は,血液とほぼ同様に推移することが示され,特定組織への蓄積性はないものと考えられた。 表へ-10.雄ラットに 14C-臭化チオトロピウム 10 mg/kg を単回気管内投与後の組織内放射能濃度

(平均値±S.D.,n=4)

半減期a)

臓器・組織 15 分 4 時間 24 時間 48 時間 72 時間 (hr)

全血 1.443 ±0.500 0.113 ±0.037 0.030 ±0.004 0.020 ±0.003 0.014 ±0.003 43.7

血漿 2.455 ±0.844 0.143 ±0.036 0.032 ±0.004 0.017 ±0.001 0.010 ±0.001 28.6

脳 0.543 ±0.138 0.072 ±0.012 0.027 ±0.003 0.016 ±0.004 0.010 ±0.001 33.5

心臓 3.376 ±0.607 0.948 ±0.276 0.270 ±0.032 0.116 ±0.005 0.078 ±0.017 26.8

甲状腺 16.078 ±4.804 0.898 ±0.204 0.182 ±0.020 0.083 ±0.015 0.056 ±0.006 28.2

気管 99.879 ±15.880 6.706 ±1.763 1.352 ±0.232 0.423 ±0.046 0.243 ±0.054 19.4

肺 419.445 ±60.888 63.598 ±20.910 11.088 ±1.898 3.386 ±0.671 1.585 ±0.489 17.1

胸腺 7.693 ±1.303 0.937 ±0.230 0.140 ±0.025 0.048 ±0.006 0.029 ±0.006 21.1

唾液腺 2.166 ±0.420 1.135 ±0.268 0.178 ±0.020 0.072 ±0.014 0.045 ±0.011 24.2

肝臓 18.662 ±3.046 7.563 ±1.042 1.398 ±0.273 0.644 ±0.100 0.394 ±0.057 26.3

腎臓 33.526 ±6.679 5.409 ±1.579 1.532 ±0.079 0.725 ±0.109 0.469 ±0.087 28.1

脾臓 1.228 ±0.292 0.557 ±0.166 0.229 ±0.028 0.121 ±0.039 0.051 ±0.006 22.2

膵臓 7.211 ±0.854 3.271 ±0.693 0.697 ±0.109 0.347 ±0.054 0.239 ±0.019 31.1

副腎 1.988 ±0.365 0.487 ±0.139 0.182 ±0.021 0.083 ±0.019 0.050 ±0.009 25.8

褐色脂肪 1.522 ±0.363 0.747 ±0.419 0.312 ±0.058 0.132 ±0.014 0.065 ±0.014 21.2

脂肪組織 0.661 ±0.207 0.279 ±0.062 0.105 ±0.008 0.046 ±0.012 0.029 ±0.005 25.9

骨格筋 0.475 ± 0.108 0.093 ± 0.010 0.040 ± 0.003 0.019 ± 0.003 0.010 ± 0.001 24.0

精巣 0.660 ± 0.186 0.374 ± 0.094 0.114 ± 0.025 0.045 ± 0.002 0.024 ± 0.005 21.4

胃 183.165 ± 57.867 61.341 ± 31.941 8.130 ± 1.721 1.488 ± 0.339 0.486 ± 0.186 -

小腸 19.295 ± 6.626 110.055 ± 15.364 11.167 ± 3.854 2.662 ± 0.509 1.054 ± 0.379 -

大腸 4.524 ± 0.835 15.129 ± 7.670 116.713 ± 18.674 34.150 ± 6.335 12.176 ± 2.104 -

放射能濃度 (µg eq./g または µg eq./mL)注)

注:放射能濃度は,チオトロピウム換算値で示した。 胃,小腸および大腸は,内容物を含む。 a) 24~72 時間から算出,-:算出せず

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ヘ-22

雄ラットに 14C-臭化チオトロピウム 10 mg/kg を単回静脈内投与し,投与後 15 分,4,24,48 およ

び 72 時間後の組織内放射能濃度を測定した(表へ-11)。 消化管を除くいずれの組織の放射能濃度も,最初の試料採取時点である投与後 15 分に最も高い値を

示し,その後血液中放射能濃度の減衰と同様に推移した。腎臓および肝臓への移行が多く認められ,

投与後 15 分では,それぞれ血漿中放射能濃度の 23 倍および 16 倍の値を示したが,血漿中放射能と同

様に消失半減期約 30 時間で消失した。脳への放射能の移行は少なかった。投与後 24 時間から 72 時間

の放射能濃度から求めた各組織の消失半減期は,ほとんどの組織において血漿の消失半減期(約 26 時

間)の 2 倍以下であった。一方,血漿の消失半減期と比較して,長い半減期を示す組織(脾臓,精巣,甲

状腺および骨格筋)があったが,それらの組織の放射能濃度は 72 時間後には他のほとんどの組織と同程

度まで減衰した。このことから,本薬は特定組織への蓄積性はないものと考えられた。 表へ-11.雄ラットに 14C-臭化チオトロピウム 10 mg/kg を単回静脈内投与後の組織内放射能濃度

(平均値±S.D.,n=4) 半減期b)

臓器・組織 15 分 4 時間 24 時間 48 時間 72 時間 (hr)

全血 1190.70 ±147.95 161.37 ±16.05 25.33 ±2.08 10.16 ±2.05 6.97 ±0.91 25.8

血漿 2050.19 ±305.56 117.03 ±16.12 22.65 ±1.00 12.33 ±2.55 7.47 ±1.17 30.0

脳 98.72 ±10.88 40.52 ±10.16 6.94 ±8.02 N.D. 11.89 ±0.88 -

脳下垂体 1413.26 ±141.64 819.60 ±172.19 123.54 ±84.89 N.D. 69.52 ±51.53 -

眼球 634.90 ±116.17 100.72 ±10.80 25.33 ±5.29 14.60 ±1.88 10.81 ±1.02 39.1

唾液腺 3380.85 ±620.51 1872.84 ±205.14 192.08 ±23.69 46.42 ±8.25 26.68 ±1.98 16.9

甲状腺 1310.36 ±83.56 540.70 ±176.18 174.21 ±48.89 116.63 ±18.44 94.95 ±23.95 54.8

気管 2492.17 ±361.89 418.23 ±109.65 75.97 ±19.81 36.63 ±2.68 18.09 ±13.03 23.2

胸腺 1915.72 ±494.76 1245.02 ±188.07 95.03 ±31.32 27.16 ±3.93 18.37 ±1.78 20.2

心臓 1202.44 ±81.62 675.85 ±173.15 330.53 ±59.02 149.11 ±34.57 64.09 ±5.28 20.3

肺 2442.84 ±138.85 691.71 ±116.63 105.53 ±17.92 45.18 ±6.17 26.77 ±2.82 24.3

膵臓 4553.22 ±359.80 2353.39 ±897.67 351.56 ±121.64 106.65 ±24.71 30.40 ±9.41 13.6

脾臓 989.16 ±84.10 196.54 ±23.43 61.42 ±7.48 38.43 ±4.42 31.47 ±3.97 49.8

副腎 1232.77 ±123.65 570.59 ±99.08 171.75 ±45.94 92.17 ±10.84 46.04 ±4.49 25.3

腎臓 47198.03 ±10848.23 3157.73 ±885.99 750.65 ±197.27 393.17 ±127.25 312.84 ±122.38 38.0

肝臓 32279.40 ±4080.07 6150.07 ±396.24 1280.24 ±75.85 776.82 ±124.82 447.30 ±45.03 31.6

前立腺 2993.56 ±2733.04 344.85 ±7.94a) 105.51 ±48.73 43.41 ±15.45 17.46 ±2.71 18.5

精巣 622.11 ±118.28 77.55 ±11.73 34.05 ±9.29 23.95 ±2.11 18.42 ±2.53 54.2

精巣上体 1105.87 ±143.37 192.08 ±23.54 51.04 ±9.26 31.08 ±6.38 19.99 ±0.81 35.5

脂肪組織 738.40 ±319.28 127.22 ±37.17 21.92 ±21.05 8.68 ±10.53 4.87 ±3.64 22.1

骨格筋 357.66 ±61.66 66.78 ±5.07 43.37 ±5.59 40.09 ±6.24 27.16 ±2.26 71.1

褐色脂肪 3343.97 ±727.43 2979.39 ±1364.83 535.73 ±276.30 82.94 ±36.91 16.89 ±12.75 9.6

胃 30354.06 ±29688.75 6013.31 ±5002.18 1455.74 ±1260.81 2378.82 ±1578.01 223.13 ±223.33 -

小腸 61603.30 ±13352.43 25671.94 ±5963.16 575.84 ±227.08 2327.32 ±2696.88 190.19 ±56.86 -

大腸 2223.09 ±513.74 91328.60 ±21323.64 75944.27 ±9174.88 9562.05 ±5578.70 1396.63 ±531.32 -

放射能濃度 (ng eq./g またはng eq./mL)注)

注:放射能濃度は,チオトロピウム換算値で示した。 胃,小腸および大腸は,内容物を含む。 a) n=3,b) 24~72 時間から算出,N.D.:定量下限未満,-:算出せず

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ヘ-23

2.2.3 胎盤・胎児への移行 ·······························································································添付資料へ-23 妊娠 12 日および 18 日目の雌ラットに 14C-臭化チオトロピウム 10 mg/kg を単回静脈内投与し,胎

盤通過性について検討した。 妊娠 12 日目のラットに静脈内投与したとき,羊水,胎盤および胎児中に放射能が認められ,羊水で

は 1 時間後に最高濃度に達した。羊水および胎児中放射能濃度は,全ての時間において母獣血漿中放

射能濃度よりも低い値であった。胎盤中放射能濃度は,投与後 15 分および 1 時間において母獣血漿中

放射能濃度よりも低い値であったが,投与後 4 時間では高い値を示し,投与後 24 時間ではほぼ同じ値

を示した(表へ-12)。

表へ-12.妊娠 12 日目の雌ラットに 14C-臭化チオトロピウム 10 mg/kg を単回静脈内投与後の 組織内放射能濃度(平均値±S.D.)

半減期c)

15 分 1 時間 4 時間 24 時間 (hr)

全血a) 1592.60 ±440.62 803.07 ±121.39 259.76 ±13.77 64.78 ±10.38 10.0

血漿a) 2275.85 ±618.33 1000.90 ±130.16 260.63 ±26.13 85.32 ±17.22 12.4

肝臓a) 19472.30 ±5149.19 11035.22 ±1386.66 4956.50 ±808.95 1464.72 ±149.40 11.4

腎臓a) 27991.90 ±10577.94 12883.32 ±1677.85 3054.69 ±184.89 826.68 ±99.82 10.6

肺a) 2171.00 ±582.65 1607.84 ±82.36 730.95 ±52.71 168.82 ±40.84 9.5

心臓a) 1199.62 ±110.59 1086.56 ±102.35 770.17 ±112.52 452.04 ±21.46 26.0

胎盤b) 1326.81 ±338.61 772.72 ±99.11 326.33 ±61.79 89.86 ±13.33 10.7

羊水b) 63.31 ±16.74 94.44 ±39.52 21.90 ±12.05 8.29 ±5.06 14.3

胎児全身b) 109.01 ±74.60 64.45 ±52.41 12.15 ±5.71 -N.D.

母獣

臓器・組織

放射能濃度 (ng eq. / g または ng eq./mL)注)

注:放射能濃度は,チオトロピウム換算値で示した。 a) n=3,b) n=6,c) 4~24 時間から算出,N.D.:定量下限未満,-:算出せず

妊娠 18 日目のラットに静脈内投与したとき,母獣血漿中放射能濃度と比較して羊水および胎児組織

中放射能濃度(全身,肝臓,腎臓,肺および心臓)は全ての時点において低かった。投与後 24 時間にお

いて,胎児の腎臓,肺および心臓中放射能濃度は定量下限未満を示した。胎盤中放射能濃度は,母獣

血漿中放射能濃度と比較して高い値かほぼ同等の値を示したが,放射能の消失は母獣血漿とほぼ同様

であった(表へ-13)。

表へ-13.妊娠 18 日目の雌ラットに 14C-臭化チオトロピウム 10 mg/kg を単回静脈内投与後の 組織内放射能濃度(平均値±S.D.)

半減期e)

15 分 1 時間 4 時間 24 時間 (hr)

全血a) 2107.41 ±534.85 803.42 ±44.55 277.84 ±15.81 36.96 ±6.50 6.9

血漿a) 2879.03 ±790.02 973.33 ±23.33 234.19 ±14.26 29.68 ±10.18 6.7

肝臓a) 30097.50 ±4805.27 12281.41 ±1069.38 5524.87 ±211.63 1338.47 ±252.20 9.8

腎臓a) 52636.58 ±25169.63 13211.24 ±2032.24 4006.67 ±955.08 953.53 ±235.63 9.7

肺a) 3455.36 ±463.23 2201.96 ±302.71 1027.67 ±243.55 242.22 ±43.82 9.6

心臓a) 1819.54 ±145.27 1400.08 ±234.00 1169.33 ±366.56 605.34 ±80.23 21.1

胎盤b) 4916.58 ±2169.76 963.25 ±121.05 441.16 ±80.35 92.06 ±15.45 8.8

羊水b) 31.42 ±8.56 46.50 ±28.41 28.24 ±9.91 10.48 ±2.83 14.0

肝臓c) 310.55 ±51.38 322.91 ±68.93 135.76 ±16.37 22.35 ±4.22 7.7

腎臓c) 204.34 ±34.74 187.27 ±46.30 150.54 ±39.79 -

肺c) 84.18 ±10.41 63.45 ±6.17 44.27 ±6.86 -

心臓c) 126.25 ±67.06 120.48 ±92.17d) 53.02 ±59.94 -

全身c) 133.97 ±17.36 95.80 ±11.14 54.83 ±6.80 13.37 ±6.76 9.8

N.D.

母獣

胎児

臓器・組織

N.D.

N.D.

放射能濃度 (ng eq. / g または ng eq./mL)注)

注:放射能濃度は,チオトロピウム換算値で示した。 a) n=3,b) n=12,c) n=6,d) n=5,e) 4~24 時間から算出,N.D.:定量下限未満,-:算出せず

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ヘ-24

放射能の胎盤・胎児への移行性が認められたが,胎児組織中放射能濃度は全ての時点において母獣

の血漿中放射能濃度よりも低く,母獣の血漿と同様に速やかに減衰したことから,本薬は胎児への蓄

積性はないものと考えられた。

2.2.4 血球への移行 ····················································································添付資料へ-12,13,14,24 2.2.4.1 in vitro 試験 ···········································································································添付資料ヘ-24 In vitro 試験における血球移行性をラットおよびヒトについて検討した。ラットおよびヒトの血液に14C-臭化チオトロピウムを 2 µg/mL になるように添加し,37℃で 30 分,2 および 6 時間インキュベー

ション後の血漿中放射能濃度に対する血球中放射能濃度の比を求めた(表へ-14)。

表へ-14.In vitro 試験でのラットおよびヒトにおける 14C-臭化チオトロピウムの 血漿中放射能濃度に対する血球中放射能濃度の比(平均値,n=2)

時間 ラット ヒト

30 分 0.053 0.004

2 時間 0.111 0.020

6 時間 0.332 0.065 ラットでは,30 分,2 時間および 6 時間の血漿中放射能濃度に対する血球中放射能濃度の比は,そ

れぞれ 0.053,0.111 および 0.332 を示した。また,ヒトでは,30 分,2 時間および 6 時間で,それぞれ

0.004,0.020 および 0.065 であった。以上のことより,本薬の血球への移行性は低いものと推察された。

2.2.4.2 in vivo 試験 ····························································································添付資料へ-12,13,14 ラット,ウサギおよびイヌに 14C-臭化チオトロピウムを単回投与後の血球移行性を検討した(表へ

-15)。 表へ-15.ラット,ウサギおよびイヌにおける 14C-臭化チオトロピウム単回投与後の血漿中放射能

濃度に対する血球中放射能濃度の比(平均値) 投与量

(mg/kg) 5 分 15 分 30 分 1 時間 2 時間 4 時間 6 時間 8 時間 24 時間

ラット 気管内 10 2 0.034 0.031 0.027 0.080 0.250 0.502 - - - へ-12

静脈内 2 - 0.02 0.09 0.15a) 0.14 0.43 0.50 0.68 1.13

経口 2 - - 0.19a) 0.04a) 1.49a) - 0.29 0.51 0.43

イヌ 静脈内 0.1 4 0.11c) 0.16b) 0.12b) 0.12b) 0.06a) - - - - へ-14

動物種 投与経路 例数添付資料番号

血球中放射能濃度 / 血漿中放射能濃度

1ウサギ へ-13

a) n=1,b) n=2,c)n=3,-:算出せず (オリジナルデータから平均値を算出) 雄ラットに 14C-臭化チオトロピウムを単回気管内投与したとき,血漿中放射能濃度に対する血球中

放射能濃度の比は投与後 5 分から 4 時間において 0.027~0.502 であった。 雌ウサギに 14C-臭化チオトロピウムを単回静脈内投与したとき,血漿中放射能濃度に対する血球中

放射能濃度の比は投与後 15 分から 24 時間において 0.02~1.13 であった。また,単回経口投与したと

き,血漿中放射能濃度に対する血球中放射能濃度の比は投与後 30 分から 24 時間において 0.04~1.49であった。投与経路の違いによって,血球移行性に差異はみられなかった。 雌雄イヌに 14C-臭化チオトロピウムを単回静脈内投与したとき,血漿中放射能濃度に対する血球中

放射能濃度の比は投与後 5 分から 2 時間において 0.06~0.16 であった。 In vitro および in vivo 試験の結果から,本薬の血球への移行性は低いものと推察された。

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ヘ-25

2.2.5 血漿蛋白質との結合 ······················································································· 添付資料へ-25,26 マウス,ラット,ウサギ,イヌおよびヒトの血漿に 14C-臭化チオトロピウムを濃度 1.8~45.0 ng/mLとなるように添加し,平衡透析法(37℃,3 時間)により血漿蛋白結合率を検討した(表へ-16)。 いずれの動物種においても約 20%の結合率であった。また,ラットにおいて添加濃度が上昇しても

血漿蛋白結合率の変動はみられなかった。ヒトでは他の動物種よりも高い値を示し,65.3%であった。 臭化チオトロピウムの代謝物である Ba 338 BR の血漿蛋白結合率をウサギおよびヒトで検討した結

果,それぞれ 0.6%および 2.4%を示した。 表へ-16.各種動物およびヒトにおける 14C-臭化チオトロピウムの血漿蛋白結合率(平均値,n=3)

濃度 結合率

(ng/mL) (%)

マウス 1.8 21.7

1.8 19.7

9.0 19.2

45.0 19.8

ウサギ 1.8 15.5

イヌ 1.8 21.0

ヒト 1.8 65.3

動物種

ラット

推奨用量(チオトロピウム換算値として 18 mcg)で得られる投与後 5 分の血漿中未変化体濃度(約 20 pg/mL:ヘ-42頁,表へ-30参照)よりも非常に高い濃度で試験を行ったため,推奨用量で得られる血

漿中未変化体濃度範囲で血漿蛋白結合率を限外ろ過法を用いて検討した。 ヒト血漿に 3H-チオトロピウムを濃度 10,50 および 300 pg/mL(チオトロピウム換算値)となるよう

に添加し,限外ろ過法により求めた血漿蛋白結合率は,それぞれ 73.0,71.4 および 71.8%(平均値,n=6)を示し,濃度に依らずほぼ一定であった。 動物(約 20%)とヒト(約 65~73%)で血漿蛋白結合率に違いがみられた。本薬の動物における血漿蛋白

結合率はヒトと比較して低く,動物では生体内で遊離型の薬物が多く存在することが考えられる。な

お,毒性試験において,投与後の主な所見は薬理効果の延長と考えられる作用がみられた(ニ-1 頁,

総括の項参照)。

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ヘ-26

2.3 代謝·······························································································添付資料へ-10,12~14,27~29 標識部位の異なる 2 種類の 14C-臭化チオトロピウム(alcohol 標識体および acid 標識体)を用いて動物

(マウス,ラット,ウサギおよびイヌ)における代謝を検討した。 2.3.1 in vivo での代謝 ·················································································添付資料へー10,12,13,14 マウス,ラット,ウサギおよびイヌに単回気管内あるいは静脈内投与後の血漿,尿,胆汁,糞およ

び肺ホモジネート中放射能を HPLC-放射能検出器で分離し,各種動物における本薬の代謝について検

討した。 マウス,ウサギおよびイヌの各マトリックス中の代謝パターンは,ラットと大きな差異は認められ

なかったため,ラットの結果(表へ-17)について下記に述べた。 2.3.1.1 肺ホモジネートおよび血漿中代謝物 ラットに気管内投与後の肺には,標識位置の差異に関わらず,未変化体のみが検出された。acid 標

識体を気管内投与後 5 分の血漿中においても,未変化体のみが検出された。Alcohol 標識体を気管内投

与後 5 分および 30 分の血漿中においては,未変化体とわずかに Ba 338 BR が検出された(図へ-12)。血漿中にみられる Ba 338 BR は非酵素的に加水分解されて生成された。 投与後 5 分 投与後 30 分

未変化体

Ba 338 BR

未変化体

Ba 338 BR

保持時間(分) 保持時間(分) 図へ-12.ラットに 14C-臭化チオトロピウム(alcohol 標識体)を気管内投与後 5 分および 30 分の

血漿中代謝物パターン 2.3.1.2 尿中代謝物 ラットに alcohol標識体を気管内投与後 4時間までの尿中には,未変化体(57%)および主代謝物Ba 338 BR(34%)が検出された。 ラットに静脈内投与後の尿中には,主に未変化体が検出された。放射標識部位の差異から,alcohol標識体投与では主代謝物 Ba 338 BR (P1)とグルタチオン抱合体類(P2)が検出され,acid 標識体投与では

P2,極性代謝物(P4~P7)が検出された。 2.3.1.3 胆汁および糞中代謝物 ラットに静脈内投与後の胆汁および糞中には,alcohol 標識体投与では主代謝物 Ba 338 BR (P1)とグ

ルタチオン抱合体類(P2)が検出され,acid 標識体投与ではグルタチオン抱合体類(P2),P4 および P7 が

検出された。

Am

plitu

de /

1000

Am

plitu

de /

1000

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ヘ-27

表へ-17.ラットにおける血漿,尿,胆汁,糞および肺ホモジネート中の分離されたピークの割合

P0 P1 P2 P4 P5 P6 P7(未変化体) (Ba 338 BR)

尿 0~4時間 72 23 5 - - - -

10 糞 0~48時間 - 56 44 - - - -

胆汁 0~1時間 - 26 74 - - - -

尿 0~24時間 37 - 5 17 29 6 610 糞 0~48時間 - - 78 6 - - 16

胆汁 0~1時間 - - 67 33 - - -

尿 0~4時間 57 34 9 - - - -

10 5分 100 - - - - - -

4時間 100 - - - - - -

血漿 5分 100 - - - - - -

10 5分 100 - - - - - -

24時間 100 - - - - - -

投与経路投与量

(mg/kg) 試料

へ-12

ピークの割合 (%)

気管内b)肺

ホモジネート

静脈内a)

静脈内b)

気管内a)肺

ホモジネート

採取時間添付資料

番号

a) alcohol 標識体を投与,b) acid 標識体を投与,-:検出されず, - :標識位置の違いのため検出できない P3:マウスの経口投与時のみにわずかに検出されたので,表中には示さなかった(構造は未推定)。

2.3.2 in vitro での代謝······························································································· 添付資料へ-27,28 In vitro 代謝試験より,本薬の代謝には,非酵素的な分解および 3 種の酵素的な代謝(チオフェン環の

酸化,グルタチオン抱合およびチオフェン環の水酸化)の関与が示唆された。ラット,マウス,イヌお

よびヒトの肝ミクロソームでの未変化体の減衰を検討したところ,イヌおよびヒトではほとんど代謝

されなかったのに対し,ラットおよびマウスでは速やかに代謝された(図へ-13)。ヒトおよびイヌでの

代謝は非酵素的なものであるが,ラットおよびマウスでは酵素的な代謝がその大部分を占めると考え

られた。

インキュベーション時間 (min)

0 30 60 90 120

臭化チオトロピウム

の残存率

(%)

0

20

40

60

80

100

マウス肝ミクロソームラット肝ミクロソームイヌ肝ミクロソームヒト肝ミクロソーム

図へ-13.マウス,ラット,イヌおよびヒト肝ミクロソームによる 臭化チオトロピウムの代謝 (オリジナルデータから作成)

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ヘ-28

2.3.2.1 主代謝物 Ba 338 BR(P1)の生成 ラットにおける Ba 338 BR の生成に関与する代謝酵素について検討した。NADPH 非存在下において

ラット肝ミクロソームおよびS9でBa 338 BRはわずかに生成した。一方,NADPH存在下でのBa 338 BRの生成は,NADPH 非存在下と比べて約 9~14 倍大きかった(図へ-14)。

Ba

338

BRおよびその他の代謝物の生成率

(%)

0

10

20

30

40

50

Ba 338 BRその他の代謝物

TRIS

S9

(- NA

DPH)

S9(+

NAD

PH)

ラット肝ミクロソーム

(+ N

ADPH

)ラット肝ミクロソーム

(+

SKF5

25A,

NAD

PH)

ラット肝ミクロソーム

(- NA

DPH)

図へ-14.ラット肝ミクロソームおよび S9 における Ba 338 BR およびその他の代謝物の生成 (平均値,n=2)

このことから,主代謝物である Ba 338 BR の生成には 2 とおりの経路があると考えられた。NADPH非存在下の Ba 338 BR の生成は,各種エステラーゼ阻害剤により阻害を受けなかったことから,エス

テラーゼが関与しない非酵素的分解によるものと考えられた。また,NADPH 存在下でみられる NADPH依存的 Ba 338 BR の生成は,SKF525A により阻害を受けたことから,CYP の関与が示唆された。この

生成反応で臭化チオトロピウムのエステル結合部分が加水分解された場合は,Ba 338 BRと等量のBIIH 27 SEが生成されると推察されたが,その存在が確認されなかったことから,このCYP関与のBa 338 BRの生成反応は 1 段階の加水分解反応ではなく,CYP が関与するチオフェン環の酸化を経た後に分子内

のエステル結合が開裂し,Ba 338 BR が生成するものと考えられた。ヒトでのこのチオフェン環の酸化

には,発現系ミクロソームを用いた in vitro 試験結果から,CYP2D6 および CYP3A4 の関与が示唆され

た。 2.3.2.2 その他の代謝物の生成 チオフェン環の酸化を経て Ba 338 BR 生成に至る代謝過程において,Ba 338 BR 以外に複数種の代謝

物が同時に生成された。これらの生成は Ba 338 BR 生成に伴って生じており NADPH 依存的に進行し,

SKF525A により阻害をうけたことから,CYP の関与が示唆された。

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ヘ-29

2.3.3 代謝経路 ········································································································· 添付資料へ-12,27 ラットにおける臭化チオトロピウムの推定代謝経路を図へ-15に示した。また,中間体を経て生成

される推定代謝物を図へ-16に示した。 臭化チオトロピウムの主代謝物は Ba 338 BR であり,エステル結合の非酵素的加水分解および CYPの触媒するチオフェン環の酸化を経て生成されると考えられた。その他の代謝物あるいはグルタチオ

ン抱合体類は臭化チオトロピウムのチオフェン環が酸化された中間体を経て生成されると考えられた。

チオフェン環の水酸化

グルタチオン抱合等

エステル結合の開裂

P0:チオトロピウム

チオフェン環の酸化

(チトクローム P450)

非酵素的加水分解

N

OH

C

COH

O

S

S

O

CH3H3C

中間体

主に P2

+ グルタチオン抱合代謝物 + 極性代謝物

                (P4~P7)

P1:Ba 338 BR

N

HOH

O

CH3H3CBr-

P1:Ba 338 BR  BIIH 27 SE

OHC

COH

O

S

S

血漿中

N

OH

C

COH

O

S

S

O

CH3H3C

O

N

HOH

O

CH3H3CBr-

図へ-15.ラットにおける臭化チオトロピウムの推定代謝経路 P0~P2 および P4~P7:HPLC-放射能検出器で分離されたピーク番号(ヘ-27 頁,表へ-17参照) (オリジナルデータから作成)

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ヘ-30

R

OC

COH

O

S

SHO

HO

R

OC

COH

O

S

S

HO

G S

R

OC

COH

O

S

S

HO

G S

R

OC

COH

O

S

S

HO

G S

HO

OH

SC

OH

HHOOCSC

OH

OSC

OH

HHOOCOH

P5,P6,P7P4

P2

N

OH

C

COH

O

S

S

O

CH3H3C

G S

=R+

R

OC

CO

O

S

R

OC

CO

O

SG S

図へ-16.中間体を経て生成される推定代謝物 P2,P4~P7:HPLC-放射能検出器で分離されたピーク番号(ヘ-27 頁,表へ-17参照),G:グルタチオン抱合 (オリジナルデータから作成)

2.3.4 肝薬物代謝酵素に対する影響 ·················································································添付資料へ-29 雄ラットに臭化チオトロピウム 10 mg/kg を 1 日 1 回 5 日間反復静脈内投与後の肝臓重量,肝ミクロ

ソームの蛋白質含量,チトクローム P450 含量,P450 代謝活性に変化がみられなかったことから,臭

化チオトロピウムによる酵素誘導はないと考えられた。

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ヘ-31

2.4 排 泄 ············································································添付資料へ-12,14,15,17,24,30~32 2.4.1 尿糞中排泄 ················································································ 添付資料へ-12,14,15,17,24 雌雄ラットに 14C-臭化チオトロピウム 10 mg/kg 単回気管内投与後の 120 時間までの放射能の尿中

および糞中排泄率は,それぞれ投与放射能の約 40~46%および約 54~60%であった(表へ-18および図

へ-17)。 雌雄ラットに 14C-臭化チオトロピウム 10 mg/kg 単回静脈内投与後の 120 時間までの放射能の尿中

および糞中排泄率は,それぞれ投与放射能の約 55~58%および約 45~46%であった(表へ-18)。

表へ-18.各種動物における 14C-臭化チオトロピウム単回投与後の尿糞中排泄率 (% of dose,平均値±S.D.)

投与量 回収率

(mg/kg) 尿中 糞中 (% of dose)

♂ 15 0 - 96 時間 79.1 ±0.5 20.1 ±5.2 104.6 ±4.5

♀ 15 0 - 96 時間 67.7 ±2.6 32.1 ±2.1 99.9 ±2.9

♂ 15 0 - 96 時間 13.9 ±1.1 94.8 ±3.0 108.8 ±2.1

♀ 15 0 - 96 時間 12.6 ±2.9 94.6 ±4.2 107.2 ±2.1

♂ 4 0 - 120 時間 39.6 ±6.9 59.5 ±5.3 99.2 ±1.9

♀ 3 0 - 120 時間 46.0 ±5.6 54.1 ±14.8 100.4 ±11.7

♂ 4 0 - 120 時間 54.6 ±3.6 45.7 ±3.7 100.3 ±3.5

♀ 4 0 - 120 時間 58.4 ±8.7 44.7 ±5.3 103.3 ±5.3

経口 10 ♂ 5 0 - 96 時間 3.5 ±0.9 95.4 ±0.7 98.9 ±1.5 ヘ-12

静脈内 1 ♀ 2 0 - 192 時間 55.8 ±6.6 41.7 ±5.2 97.4 ±1.4

経口 1 ♀ 3 0 -168 時間 6.2 ±1.5 101.5 ±8.8 107.7 ±10.1

静脈内 0.1 ♂+♀ 2+2 0 - 216 時間 74.5 ±4.9 26.1 ±10.6 100.7 ±7.2

経口 1 ♂+♀ 2+2 0 - 168 時間 34.5 ±13.0 61.5 ±16.0 96.0 ±3.1

動物種 投与経路 性 例数

気管内

静脈内

へ-14

添付資料番号

ヘ-15

へ-17

へ-24

採取時間排泄率 (% of dose)

ラット

ウサギ

イヌ

10

10

10

10

マウス

静脈内

経口

時間 (hr)

0 24 48 72 96 120

累積排泄率 (%

of d

ose)

0

20

40

60

80

100

120尿中排泄 (♂)

糞中排泄 (♂)

合計 (♂)

尿中排泄 (♀)

糞中排泄 (♀)

合計 (♀)

図へ-17.雌雄ラットに 14C-臭化チオトロピウム 10 mg/kg を単回気管内投与したときの 尿糞中累積排泄率(平均値±S.D.,♂:n=4,♀:n=3)

ラットおよびウサギに静脈内投与後の尿中排泄率はそれぞれ約 55~58%および約 56%を示したが,

マウスおよびイヌではそれぞれ約 68~79%および約 75%と高かった。マウス,ラットおよびウサギに

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ヘ-32

経口投与後の糞中排泄率は,それぞれ約 95%,約 95%および約 102%を示し,尿中排泄率はそれぞれ

約 13~14%,約 4%および約 6%であった。経口投与後の尿中排泄率が静脈内投与後の尿中排泄率と比

較して低かったことから,ほとんど消化管から吸収されないものと推察された。一方,イヌでは,尿

中排泄率が他の動物よりも若干高く約 35%を示した。 マウスおよびラットにおいて,雌雄差はみられなかった。 2.4.2 胆汁中排泄および腸肝循環 ··············································································添付資料ヘ-12,24 胆管カニューレを施した雄ラットに,14C-臭化チオトロピウム 10 mg/kg を単回静脈内投与後 8 時間

までの胆汁中排泄率は,投与量の約 42%であった。胆汁への排泄は速く,投与 1 時間で 8 時間までの

総排泄率の約 80%が排泄された。 胆管カニューレを施した雄ラットに,14C-臭化チオトロピウム 10mg/kg を単回静脈内投与後 2 時間

までに排泄された胆汁を,胆管カニューレを施した別の雄ラットの十二指腸内に投与したときの投与

後 6 時間までの胆汁中排泄率は,投与した胆汁放射能の約 0.5%であった。このことから,ラットにお

ける腸肝循環は低いことが推察された。 2.4.3 乳汁への移行 ····································································································添付資料へ-30,31 出産後 13~14 日目の授乳中ラットに 14C-臭化チオトロピウムを 10 mg/kg 単回静脈内投与後の乳汁

中放射能濃度は,投与後 30 分では血漿中放射能濃度より低く,その後徐々に上昇して投与後 3.5 時間

に最高濃度となった(図へ-18)。

時間 (hr)

0 2 4 8 24 48

放射能濃度

(ng

eq./m

L)

10

100

1000

血漿乳汁

図へ-18.授乳中ラットに 14C-臭化チオトロピウム 10 mg/kg を単回静脈内投与したときの 乳汁中および母獣血漿中放射能濃度推移(平均値±S.D.,n=4) (血漿および乳汁中放射能濃度は,チオトロピウム換算値として示した。)

乳汁中放射能濃度は,投与後 1 時間から 48 時間にかけて血漿中放射能濃度よりも高い値を示し,乳

汁中への放射能の移行が認められた。乳汁中放射能は,血漿中放射能濃度の低下と共に減衰した。投

与後8時間から48時間の放射能濃度から求めた血漿からの消失半減期は,17.1±1.6時間(平均値±S.D.,n=4)を示し,乳汁からの消失半減期は 19.5±5.1 時間(平均値±S.D.,n=4)とほぼ同様の値を示した。ま

た,投与後 48 時間までに乳汁を介して乳児へ移行した放射能の量は,投与量の約 0.1%であると推察

された。 乳汁中および血漿中放射能の消失半減期がほぼ同じであったことから,乳汁中の放射能の残留性は

低く,移行量も非常に少量であるため,乳児への影響は少ないものと考えられた。 また,授乳中ラットに 14C-臭化チオトロピウム 10 mg/kg を単回静脈内投与後の乳汁を TLC により

分析した結果,未変化体,Ba 338 BR および少なくとも 3 種類の未知代謝物が検出された。

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ヘ-33

2.4.4 腎排泄機構の検討 ··························································································· 添付資料ヘ-24,32 ラットおよびイヌにおいて臭化チオトロピウムの腎クリアランスおよび糸球体ろ過速度を比較し,

腎排泄時の能動輸送による尿細管分泌の関与について検討した。 雌雄ラットに臭化チオトロピウム 10 mg/kg を単回静脈内投与後の腎クリアランス(CLR)は,雄で 25.0±5.4 mL/min/kg (平均値±S.D.,n=4),雌で 31.3±1.9 mL/min/kg (平均値±S.D.,n=4)を示した。これら

の値は,ラットの糸球体ろ過速度(約 9.4 mL/min/kg1))よりも約 3 倍大きいことから,腎排泄において能

動輸送による尿細管分泌が関与していることが推察された。 雌のイヌに臭化チオトロピウムを 6 時間にわたり 156.25 µg/kg/hr 静脈内持続投与(投与前に 25 µg/kgを単回静脈内投与)後の腎クリアランス(CLR)は,3.6±1.9 mL/min/kg (平均値±S.D.,n=4)を示した。同

じイヌを用いて 14C-イヌリンを 40 µg/kg/hr で単回静脈内持続投与(6 時間)後の糸球体ろ過速度を求め

た結果,3.2±1.6 mL/min/kg (平均値±S.D.,n=4)であった。イヌにおいては,腎排泄において能動輸送

による尿細管分泌がほとんど関与しなことが推察された。 1. Harvey, A.M. et al. Comparison of creatinine and inulin clearances in male and female rats, Am. J. Physiol.

209(4), 849-852 (1965)

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ヘ-34

3 ヒトにおける成績 ヒト試験における投与量および定量値は,全てチオトロピウム換算値として示した。 3.1 健康成人における検討(外国人) ··················································添付資料ヘ-33,ト-1~5,7,10 3.1.1 血漿中濃度 ······································································································添付資料ト-1~5,7 3.1.1.1 単回投与試験 ·························································································添付資料ト-1,4,5,7 3.1.1.1.1 吸入投与,静脈内投与および経口投与での血漿中濃度推移····························· 添付資料ト-7 健康成人男子にチオトロピウムカプセル 108 mcg を単回吸入投与(吸入器具:ハンディヘラー),チオ

トロピウム溶液 14.4 mcg を単回静脈内持続投与(15 分間)またはチオトロピウム溶液 64 mcg を単回経口

投与(各投与群:n=12)後の血漿中未変化体濃度推移を図へ-19に,薬物動態パラメータ値を表へ-19に示した。 吸入投与の場合,初回採血時点である投与後 5 分に最高値(65.4 pg/mL)を示し,その後速やかに消失

して 1 時間後には最高値の約 20%まで低下した。静脈内投与の場合は,持続投与終了時点での血漿中

未変化体濃度は 378.1 pg/mL を示し,速やかに消失して 1 時間後には最高値の約 7%まで低下した。経

口投与の場合は,ほとんどの試料で定量下限( pg/mL)未満を示した(図へ-19および表へ-19)。

時間 (hr)

0 1 2 3 4 5 6 7 8

血漿中未変化体濃度

(pg/

mL)

0

50

100

150

200

250

300

350

400

静脈内投与 (14.4 mcg)吸入投与 (108 mcg)経口投与(64 mcg)

図へ-19.健康成人男子にチオトロピウムカプセルを 108 mcg 単回吸入投与,チオトロピウム溶液 14.4 mcg単回静脈内持続投与(15分間)あるいはチオトロピウム溶液64 mcg単回経口投与

後の血漿中未変化体濃度推移 (幾何平均値,n=12) (定量下限未満を示した値は,定量下限の半分の値として幾何平均値を計算した。)

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ヘ-35

表へ-19.健康成人男子にチオトロピウムカプセルを 108 mcg 単回吸入投与,チオトロピウム溶液 14.4 mcg単回静脈内持続投与(15分間)あるいはチオトロピウム溶液64 mcg単回経口投与

後の薬物動態パラメータ値(幾何平均値) 静脈内投与 吸入投与 経口投与

(14.4 mcg) (108 mcg) (64 mcg)

378.1a) 65.4b) 4.41

(252.6 ~ 495.6,11) (34.7 ~ 162.4,11) (2.85 ~ 16.50,5)

0.25c) 2c)

(0.12 ~ 0.25, 11) (1 ~ 8,5)

185.6 92.6

(128.1 ~ 240.4,5) (60.2 ~ 128.4,11)

Cmax (pg/mL)

tmax (hr)

0.083d)

AUC0-8 hr (pg·hr/mL)

a) 持続投与終了時点,b) 最初の採血時点,c) 中央値,d) n=11,-:算出せず 表中括弧内の数値は,範囲および定量下限以上を示した例数を示す。

1) 吸入投与 ······················································································································· 添付資料ト-1 健康成人男子にチオトロピウムカプセルを 35.2,70.4,141 および 282 mcg の投与量で単回吸入投与

(吸入器具:FO2,各投与量:n=6)したとき,血漿中未変化体濃度は,141 mcg の投与量まで定量下限( ng/mL)未満であった。最高投与量の 282 mcg で,投与後 5 分に 6 例中 2 例で 0.52 ng/mL と 0.55 ng/mLの値を示した。 2) 静脈内投与·····················································································································添付資料ト-5 健康成人男子にチオトロピウム溶液を 2.4,4.8,9.6 および 14.4 mcg の投与量で単回静脈内持続投与

(15 分間,各投与量:n=6)したときの血漿中未変化体濃度推移を図へ-20に,薬物動態パラメータ値を

表へ-20に示した。 投与量 2.4,4.8,9.6 および 14.4 mcg を単回持続投与終了時点での血漿中未変化体濃度(C15min)は,そ

れぞれ 53.8,125,204 および 390 pg/mL であった。血漿中未変化体濃度の消失は速く,投与終了後 5分以内に最大値の約 30~50%の値を示し,20~30 分後には最大値の約 10%またはそれ以下であった。

AUC0-2 hr値は,2.4,4.8,9.6 および 14.4 mcg 投与量においてそれぞれ 19.9,40.0,78.2 および 158 pg·hr/mLであった。 表へ-20.健康成人男子にチオトロピウム溶液 2.4,4.8,9.6 および 14.4 mcg を単回静脈内持続投与

(15 分間)後の薬物動態パラメータ値(幾何平均値)

2.4 mcg 4.8 mcg 9.6 mcg 14.4 mcg

53.8 125 204 390

(46.6 ~ 60.3,6) (103 ~ 160,5) (131 ~ 260,6) (301 ~ 580,6)

19.9 40.0 78.2 158

(19.0 ~ 20.9,2) (39.7 ~ 40.3,2) (67.3 ~ 95.2,6) (136 ~ 222,6)

投与量

C15 min

AUC0-2 hr

(pg/mL)

(pg·hr/mL)

表中括弧内の数値は,範囲および定量下限以上を示した例数を示す。

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ヘ-36

時間 (hr)

0 1 2 3 4 5 6 7 8

血漿中未変化体濃度

(pg/

mL)

0

100

200

300

400

2.4 mcg 4.8 mcg 9.6 mcg 14.4 mcg

図へ-20.健康成人男子にチオトロピウム溶液 2.4,4.8,9.6 および 14.4 mcg を 単回静脈内持続投与(15 分間)の血漿中未変化体濃度推移 (幾何平均値,2.4,9.6 および 14.4 mcg:n=6,4.8mcg:n=5) (オリジナルデータから作成)

3) 経口投与 ························································································································添付資料ト-4 健康成人男子にチオトロピウム溶液を 8,16,32 および 64 mcg の投与量で食後に単回経口投与(8 お

よび 32 mcg:n=5,16 および 64 mcg:n=6)したときの血漿中未変化体濃度は,8 mcg および 16 mcg の

投与量では全ての試料が定量下限( pg/mL)未満であった。32 mcg および 64 mcg の投与量では,ほと

んどの試料が定量下限未満であった。 3.1.1.2 反復投与試験 ·····································································································添付資料ト-2,3 3.1.1.2.1 吸入投与 ·········································································································添付資料ト-2,3 健康成人男子にチオトロピウムカプセルを 70.4 および 141 mcg の投与量で 1 日 1 回 7 日間反復吸入

投与(吸入器具:FO2,70.4 mcg:n=11,141 mcg:n=12)したときの血漿中未変化体濃度推移および薬物

動態パラメータ値をそれぞれ図へ-21および表へ-21に示した。 また,8.8,17.6 および 35.2 mcg の投与量で 1 日 1 回 14 日間反復吸入投与(吸入器具:FO2,各投与

量:n=5)したときの薬物動態パラメータ値を表へ-22に示した。 70.4 mcg 投与では,投与 1 日目および 7 日目の C5 min値はそれぞれ 33.7 pg/mL および 64.2 pg/mL,141 mcg 投与では 108 pg/mL および 199 pg/mL であった(表へ-21)。いずれの場合も初回採血時点である 5分で最高血漿中未変化体濃度(C5 min)を示した。いずれの投与量においても,血漿中からの未変化体の消

失は,投与後 2 時間では C5 min値の約 20~30%まで減少した。 70.4 mcg 投与では,投与 1 日目および 7 日目の AUC0-2 hr値は,それぞれ 25.2 pg·hr/mL および 43.6 pg·hr/mL,141 mcg 投与では 73.9 pg·hr/mL および 86.8 pg·hr/mL であった(表へ-21)。 7 日間の反復吸入投与によって,薬物動態が大きく変化しないことが推察された。

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ヘ-37

表へ-21.健康成人男子にチオトロピウムカプセル 70.4 および 141 mcg を 1 日 1 回 7 日間 反復吸入投与したときの薬物動態パラメータ値(幾何平均値)

70.4 mcg 141 mcg33.7 108

(17.0 ~ 79.3,6) (51.6 ~ 352,8)64.2 199

(45.6 ~ 134,5) (96.9 ~ 333,6)25.2 73.9

(10.5~48.0,5) (46.6 ~ 199,6)43.6 86.8

(37.6 ~ 53.2,3) (71.5 ~ 105,2)

C5 min (pg/mL)

AUC0-2 hr (pg·hr/mL)

7

1

投与量投与日数

7

1

表中括弧内の数値は,範囲および定量下限以上を示した例数を示す。

時間 (hr)

0 1 2 144 145 146

血漿中未変化体濃度

(pg/

mL)

0

50

100

150

200

250

70.4 mcg141 mcg定量下限

1日目 7日目

図へ-21.健康成人にチオトロピウムカプセル 70.4 および 141 mcg を 1 日 1 回 7 日間 反復吸入投与したときの血漿中未変化体濃度推移 (幾何平均値,70.4 mcg:n=11,141 mcg:n=12)

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ヘ-38

8.8,17.6 および 35.2 mcg 投与群で,投与 1 日目の C5 min値はそれぞれ 11.4 pg/mL,14.8 pg/mL およ

び 13.4 pg/mL であった。投与後 14 日目の 8.8,17.6 および 35.2 mcg 投与後の C5 min値は,それぞれ 7.91 pg/mL,24.6 pg/mL および 32.3 pg/mL であった。いずれの場合も初回採血時点である 5 分で最高血漿中

未変化体濃度(C5 min)を示した。8.8 および 17.6 mcg 投与群では,投与後 1 時間には血漿中未変化体濃度

は定量下限( pg/mL)未満を示したため,AUC の算出は行わなかった(表へ-22)。 14 日間の反復吸入投与によって,吸収が遅延したり血漿からの消失が影響を受けることはないもの

と推察された。 表へ-22.健康成人男子にチオトロピウムカプセル 8.8,17.6 および 35.2 mcg を 1 日 1 回 14 日間

反復吸入投与したときの薬物動態パラメータ値(幾何平均値)

8.8 mcg 17.6 mcg 35.2 mcg

11.4a) 14.8 13.4

(5.1 ~ 29.1,4) (10.8 ~ 16.7,2)

7.91 24.6 32.3

(5.17 ~ 13.9,4) (16.8 ~ 35.9,2) (27.4 ~ 37.9,3)

32.1

(30.5 ~ 33.8,2)- -14

(pg/mL)C5 min

(pg·hr/mL)AUC0-2 hr

投与日数

投与量

1

14

a) 1 例のみ検出,-:算出せず 表中括弧内の数値は,範囲および定量下限以上を示した例数を示す。

3.1.2 生物学的利用率···························································································添付資料ヘ-33,ト-7 健康成人男子にチオトロピウムカプセル 108 mcg を単回吸入投与(吸入器具:ハンディヘラー),チオ

トロピウム溶液 14.4 mcg を単回静脈内持続投与(15 分間)またはチオトロピウム溶液 64 mcg を単回経口

投与(各投与群:n=12)後の尿中未変化体排泄率の比から生物学的利用率を求めた(表へ-23)。 吸入投与および静脈内投与した場合,未変化体の総尿中未変化体排泄率(Ae0-∞)は投与量の 14.4%およ

び 73.6%であった。また,経口投与した場合,投与後 96 時間までの尿中未変化体排泄率(Ae0-96 hr)は投

与量の 1.60%であった。これらの尿中未変化体排泄率から求めた生物学的利用率は,吸入投与では

19.5%,経口投与では 2.6%であった。 表へ-23.健康成人男子にチオトロピウムカプセルを 108 mcg 単回吸入投与,チオトロピウム溶液

14.4 mcg単回静脈内持続投与(15分間)あるいはチオトロピウム溶液64 mcg単回経口投与

後の薬物動態パラメータ値(幾何平均値) 静脈内投与 吸入投与 経口投与

(14.4 mcg) (108 mcg) (64 mcg)

61.0 8.93 1.60

(51.7 ~ 71.3,11) (7.74 ~ 9.81,6) (1.03 ~ 2.71,9)

73.6 14.4

(58.3 ~ 88.9,11) (12.7 ~ 15.4,9)

生物学的利用率 (%) 100 19.5 2.6

Ae0-96 hr (% of dose)

Ae0-∞ (% of dose)

-:算出せず 表中括弧内の数値は,範囲および定量下限以上を示した例数を示す。

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ヘ-39

Caco-2 培養細胞を用いて本薬の吸収性および P-糖蛋白質の関与について検討した。14C-臭化チ

オトロピウム(5~100 µM)の膜透過性は低く,みかけの透過係数は 4.5×10-7 cm/s であった。この値は,

ヒトで経口吸収率が 16%と報告されている 1)マンニトールの透過係数(4.0×10-7 cm/s)に近い値であっ

た。また,Caco-2 培養細胞の透過性には,方向性,濃度および温度依存性がみられなかったことから,

P-糖蛋白質がほとんど関与しないことが推察された。これらのことおよび本薬が 4 級アンモニウム化

合物であることから,本薬のヒトにおける消化管からの吸収率は低いことが推察された。 経口投与後の生物学的利用率が低いことおよび Caco-2 培養細胞を用いた吸収性の検討結果から,

吸入投与時に嚥下された薬物の消化管からの吸収性は良くないことが考えられた。また,静脈内投与

後の尿中未変化体排泄率が約 74%と高いことから,吸収された薬物は主に尿中から排泄されると考え

られた。 これらのことから,吸入投与時の吸収は主に肺からの吸収に依存し,肺から吸収された薬物は主に

尿中から排泄されると推察された。 3.1.3 血球への移行 ··········································································································添付資料ト-10 健康成人にチオトロピウム溶液 14.4 mcg を単回静脈内持続投与(15 分間,男性および女性:各 n=3)したときの血球移行性を検討した。 血漿中未変化体濃度に対する血液中未変化体濃度の比(幾何平均値)は,投与後 15 分,1,2 および 4時間で,それぞれ 0.697,0.607,0.427 および 0.692 を示した。血漿中未変化体濃度に対する血液中未

変化体濃度の比から,本薬の血球への移行性は低いものと考えられた。 3.1.4 尿中排泄 ·············································································································添付資料ト-1~5 3.1.4.1 単回投与試験 ·······························································································添付資料ト-1,4,5 3.1.4.1.1 吸入投与 ·············································································································添付資料ト-1 健康成人男子にチオトロピウムカプセルを 35.2,70.4,141 および 282 mcg の投与量で単回吸入投与

(吸入器具:FO2,各投与量:n=6)したとき,投与後 8 時間までの尿中未変化体排泄率(Ae0-8 hr)は,投与

量の 2.35~4.83%であった(表へ-24)。

表へ-24.健康成人男子にチオトロピウムカプセル 35.2,70.4,141 および 282 mcg を 単回吸入投与後の尿中未変化体排泄率(幾何平均値)

35.2 mcg 70.4 mcg 141 mcg 282 mcg

2.35 2.41 3.34 4.83

(1.10 ~ 3.75,3) (0.96 ~ 4.80,5) (2.27 ~ 5.19,5) (1.95 ~ 7.17,6)(% of dose)Ae0-8 hr

投与量

表中括弧内の数値は,範囲および定量下限以上を示した例数を示す。

1. Artursson, P. et al. Correlation between oral drug absorption in humans and apparent drug permeability

coefficients in human intestinal epithelial (Caco-2) cells, Biochem. Biophys. Res. Commun. 175(3), 880-885 (1991)

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ヘ-40

3.1.4.1.2 静脈内投与··········································································································添付資料ト-5 健康成人男子にチオトロピウム溶液を 2.4,4.8,9.6 および 14.4 mcg の投与量で単回静脈内持続投与

(15 分間,各投与量:n=6)したとき,投与後 24 時間までの尿中未変化体排泄率(Ae0-24 hr)は,2.4,4.8,9.6 および 14.4 mcg で,それぞれ 39.3%,41.9%,46.0%および 54.3%であった(表へ-25)。

表へ-25.健康成人男子にチオトロピウム溶液 2.4,4.8,9.6 および 14.4 mcg を 単回静脈内持続投与(15 分間)後の尿中未変化体排泄率(幾何平均値)

2.4 mcg 4.8 mcg 9.6 mcg 14.4 mcg39.3 41.9 46.0 54.3

(34.9 ~ 42.0,6) (32.7 ~ 46.4,4) (41.7 ~ 48.0,5) (52.9 ~ 56.8,3)

投与量

Ae0-24 hr (% of dose)

表中括弧内の数値は,範囲および定量下限以上を示した例数を示す。 3.1.4.1.3 経口投与 ·············································································································添付資料ト-4 健康成人男子にチオトロピウム溶液を 8,16,32 および 64 mcg の投与量で食後に経口投与(8 および

32 mcg:n=5,16 および 64 mcg:n=6)したとき,投与後 24 時間までの尿中未変化体排泄率(Ae0-24 hr)はいずれの投与量においても投与量の 1%以下であった(表へ-26)。 このことから,本薬の消化管からの吸収は低いことが推察された。

表へ-26.健康成人男子にチオトロピウム溶液 8,16,32 および 64 mcg を単回経口投与後の 尿中未変化体排泄率(幾何平均値)

8 mcg 16 mcg 32 mcg 64 mcg0.720 0.841 0.689 0.991

(0.452 ~ 1.02,3) (0.596 ~ 1.32,6) (0.451 ~ 1.01,4) (0.674 ~ 1.49,5)

投与量

(% of dose)Ae0-24 hr

表中括弧内の数値は,範囲および定量下限以上を示した例数を示す。

3.1.4.2 反復投与試験 ·····································································································添付資料ト-2,3 3.1.4.2.1 吸入投与 ·········································································································添付資料ト-2,3 健康成人男子にチオトロピウムカプセルを 70.4 および 141 mcg の投与量で 1 日 1 回 7 日間反復吸入

投与(吸入器具:FO2,70.4 mcg:n=11,141 mcg:n=12)したときの尿中未変化体排泄率を表へ-27に示

した。 また,8.8,17.6 および 35.2 mcg の投与量で 1 日 1 回 14 日間反復吸入投与(吸入器具:FO2,各投与

量:n=5)したときの尿中未変化体排泄率および薬物動態パラメータ値を表へ-28に示した。 70.4 および 141 mcg 投与後 8 時間までの尿中未変化体排泄率(Ae0-8 hr)は,投与 1 日目ではそれぞれ

1.99%および 2.92%を示し,投与 7 日目では 5.57%および 5.82%であった(表へ-27)。

表へ-27.健康成人男子にチオトロピウムカプセル 70.4 および 141 mcg を 1 日 1 回 7 日間 反復吸入投与後の尿中未変化体排泄率(幾何平均値)

70.4 mcg 141 mcg

1.99 2.92(1.50 ~ 4.46,7) (1.63 ~ 5.93,8)

5.57 5.82(2.54 ~ 8.21,7) (3.27 ~ 8.49,8)

投与量

Ae0-8 hr (% of dose)1

7

投与日数

表中括弧内の数値は,範囲および定量下限以上を示した例数を示す。

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ヘ-41

8.8,17.6 および 35.2 mcg 投与後 8 時間までの尿中未変化体排泄率(Ae0-8 hr)は,投与 1 日目ではそれ

ぞれ 1.87%,2.60%および 2.05%,投与 7 日目ではそれぞれ 4.70%,6.45%および 6.78%,投与 14 日

ではそれぞれ 5.13%,5.66%および 6.83%を示した。投与 7 日目と 14 日目の尿中未変化体排泄率(Ae0-8

hr)を比較すると,いずれの投与量においても大きな違いはみられなかった。尿中未変化体排泄速度か

ら求めた消失半減期は,約 6~8 日であった(表へ-28)。 表へ-28.健康成人男子にチオトロピウムカプセル 8.8,17.6 および 35.2 mcg を 1 日 1 回 14 日間

反復吸入投与後の尿中未変化体排泄率および薬物動態パラメータ値(幾何平均値)

8.8 mcg 17.6 mcg 35.2 mcg

1.87 2.60 2.05(1.54 ~ 3.08,5) (1.33 ~ 4.64,4) (1.59 ~ 3.28,5)

4.70 6.45 6.78(3.53 ~ 5.68,5) (4.00 ~ 9.44,5) (5.35 ~ 11.2,5)

5.13 5.66 6.83(2.96 ~ 8.70,5) (3.98 ~ 7.66,5) (5.38 ~ 8.50,5)

5.8 7.7 6.0(4.2 ~ 7.5,5) (5.4 ~ 10.7,4) (5.2 ~ 8.7,5)

投与量

7

t1/2 (days)

14

Ae0-8 hr (% of dose)

1

投与日数

表中括弧内の数値は,範囲および定量下限以上を示した例数を示す。

8.8~141 mcg 投与後 8 時間までの尿中未変化体排泄率(Ae0-8 hr)を投与 1 日目および 7 日目でそれぞれ

比較した結果,1 日目の尿中未変化体排泄率は 1.99~2.92%を示し,7 日目では 4.70~6.78%であった(表へ-27および表へ-28)。それぞれの投与日数で,尿中未変化体排泄率がほぼ一定の値を示したことか

ら,8.8~141 mcg の投与量範囲で,尿中未変化体排泄量は比例的に増加するものと考えられた。 3.2 代謝····························································································································添付資料ヘ-34 ヒト肝ミクロソーム用いた in vitro 試験結果より,ヒトでの本薬の代謝はラットおよびマウスと比較

して非常に遅く,ほとんどが非酵素的な代謝であると考えられた(ヘ-27頁,2.3.2 in vitro での代謝の項

参照)。また,本薬を健康成人男子に単回静脈内投与したとき尿中に投与量の約 74%が未変化体として

排泄された(ヘ-38頁,3.1.2 生物学的利用率の項参照)。以上のことから,ヒトでの本薬の代謝はごく

わずかであり,主に腎から消失することが推察された。なお,残りの約 25%の代謝物に関する検討は

行わなかったが,エステル結合が血漿中において非酵素的に加水分解した Ba 338 BR および BIIH 27SEが生成されるものと考えられた。 本薬の CYP 代謝活性に対する影響について検討した。ヒト肝ミクロソームでのフェナセチン O-脱

アルキル化(CYP1A1,1A2),S-メフェニトイン N-脱アルキル化(CYP2B6),トルブタミド水酸化

(CYP2C9),S-メフェニトイン 4’-水酸化(CYP2C19),ブフラロール 1’-水酸化(CYP2D6),クロロゾ

キサゾン 6-水酸化(CYP2E1),ニフェジピン酸化(CYP3A)およびテストステロン 6β-水酸化(CYP3A)に対して,臭化チオトロピウム(0.01,0.1 および 1 µM)はいずれの濃度においても影響を与えなかった。

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ヘ-42

3.3 慢性閉塞性肺疾患(COPD)患者における検討(外国人)·········································添付資料ト-11,14 3.3.1 血漿中濃度 ········································································································添付資料ト-11,14 3.3.1.1 単回吸入投与試験 ································································································添付資料ト-11 COPD 患者に,チオトロピウムカプセルを 8.8,17.6,35.2 および 70.4 mcg の投与量で単回吸入投与

(吸入器具:FO2,8.8 mcg:n=11,17.6 mcg:n=7,35.2 mcg:n=8,70.4 mcg:n=9)したときの投与後 5分における血漿中未変化体濃度(C5 min)を表へ-29に示した。 8.8 および 17.6 mcg 投与では,半数以上が定量下限( pg/mL)未満を示した。35.2 および 70.4 mcg投与で,C5 min値はそれぞれ 14.7 pg/mL および 33.5 pg/mL であった。これらの値は,健康成人男子に投

与した場合(35.2 mcg 投与の C5 min値:13.4 pg/mL (ヘ-38頁,表へ-22参照),70.4 mcg 投与の C5 min 値:

33.7 pg/mL(ヘ-37頁,表へ-21参照))とほぼ同じであった。

表へ-29.COPD 患者にチオトロピウムカプセル 8.8,17.6,35.2 および 70.4 mcg を 単回吸入投与したときの投与後 5 分後の血漿中未変化体濃度(幾何平均値)

8.8 mcg 17.6 mcg 35.2 mcg 70.4 mcg

- - 14.7 33.5(8.89 ~ 9.24,2) (9.05 ~ 22.5,3) (10.3 ~ 17.1,5) (17.0 ~ 71.5,8)

投与量

C5 min (pg/mL)

-:定量下限以上を示した例数が 3 例以下のため幾何平均値を求めなかった。 表中括弧内の数値は,範囲および定量下限以上を示した例数を示す。

3.3.1.2 反復吸入投与試験 ································································································添付資料ト-14 COPD 患者に,チオトロピウムカプセル 18 mcg を 1 日 1 回 1 年間反復吸入投与(吸入器具:ハンディ

ヘラー)した試験(男性:n=75,女性:n=43)において,投与後 50 日目および 92 日目の投与後 5 分およ

び 2 時間における男女別の血漿中未変化体濃度(C5 min および C2 hr)を表へ-30に示した。

表へ-30.COPD 患者にチオトロピウムカプセル 18 mcg を 1 日 1 回反復吸入投与後 50 日目および 92 日目の血漿中未変化体濃度(幾何平均値)

16.7 18.6(4.18 ~ 54.9,54) (3.47 ~ 49.9,30)

17.6 21.4(4.28 ~ 48.0,52) (7.39 ~ 56.6,34)

7.65 10.7

(2.86 ~ 24.6,59) (5.24 ~ 32.7,37)

7.41 9.45

(2.51 ~ 23.7,64) (3.55 ~ 32.8,39)

C2 hr (pg/mL)

50 1.40

92 1.28

C5 min (pg/mL)50 1.11

92 1.22

投与日数

男性 女性 女性/男性

表中括弧内の数値は,範囲および定量下限以上を示した例数を示す。

投与後 50 日目および 92 日目における投与後 5 分の血漿中未変化体濃度(C5 min)は,男性ではそれぞれ

16.7 pg/mL および 17.6 pg/mL を示し,女性ではそれぞれ 18.6 pg/mL および 21.4 pg/mL であった。また,

C2 hr値は,男性ではそれぞれ 7.65 pg/mL および 7.41 pg/mL を示し,女性ではそれぞれ 10.7 pg/mL およ

び 9.45 pg/mL であった。女性の C5 min 値および C2 hr値は,男性に比べて約 10~40%高い値を示す傾向

がみられた。これは,体重の違いによるものと考えられた。女性の体重は 65.3 kg (中央値,n=43),男

性では 78.2 kg (中央値,n=75)であった。このことから,血漿中未変化体濃度には,明確な性差はない

ものと推察された。 C5 minおよび C2 hr値は,男女共に投与 50 日目以降ほぼ同じ値であったことから,長期間投与による

本薬の蓄積性はないものと考えられた。

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ヘ-43

3.3.2 尿中排泄 ···········································································································添付資料ト-11,14 3.3.2.1 単回吸入投与試験 ································································································添付資料ト-11 COPD 患者に,チオトロピウムカプセルを 8.8,17.6,35.2 および 70.4 mcg の投与量で単回吸入投与

(吸入器具:FO2,8.8 mcg:n=11,17.6 mcg:n=7,35.2 mcg:n=8,70.4 mcg:n=9)したときの投与後 8時間までの尿中未変化体排泄率(Ae0-8 hr)を表へ-31に示した。 投与後8時間までの尿中未変化体排泄率(Ae0-8 hr)は,1.44~2.83%であった(表へ-31)。これらの値は,

健康成人男子に吸入投与した場合(8.8,17.6 および 35.2 mcg 投与の Ae0-8 hr値:1.87~2.60%(ヘ-41頁,

表へ-28参照))とほぼ同じ値を示した。 尿中未変化体排泄率がほぼ一定であったことから,投与量の増加に伴い,尿中未変化体排泄量は比

例的に増加することが推察された。

表へ-31.COPD 患者にチオトロピウムカプセル 8.8,17.6,35.2 および 70.4 mcg を 単回吸入投与したときの尿中未変化体排泄率(幾何平均値)

8.8 mcg 17.6 mcg 35.2 mcg 70.4 mcg1.44 2.64 2.83 2.64

(0.32 ~ 3.41,7) (1.68 ~ 5.23,5) (2.28 ~ 4.13,8) (1.92 ~ 4.16,8)

投与量

Ae0-8 hr (% of dose)

表中括弧内の数値は,範囲および定量下限以上を示した例数を示す。 3.3.2.2 反復吸入投与試験 ································································································添付資料ト-14 COPD 患者に,チオトロピウムカプセル 18 mcg を 1 日 1 回 1 年間反復吸入投与(吸入器具:ハンディ

ヘラー)した試験(男性:n=75,女性:n=43)において,投与後 50 日,92 日および 175 日目の投与後 24時間までの男女別の尿中未変化体排泄率(Ae0-24 hr)を表へ-32に示した。

表へ-32.COPD 患者にチオトロピウムカプセル 18 mcg を 1 日 1 回反復吸入投与後の 尿中未変化体排泄率(幾何平均値)

7.12 7.01(3.56 ~ 17.8,60) (1.12 ~ 17.8,39)

7.29 6.19(3.59 ~ 17.7,57) (0.71 ~ 14.5,31)

7.57 6.67

(3.29 ~ 25.2,61) (1.17 ~ 16.9,40)

Ae0-24 hr (% of dose)

50 0.98

92 0.85

175 0.88

投与日数

男性 女性 女性/男性

表中括弧内の数値は,範囲および定量下限以上を示した例数示す。

投与後 50 日,92 日および 175 日の投与後 24 時間までの尿中未変化体排泄率(Ae0-24 hr)は,男性では

7.12~7.57%,女性では 6.19~7.01%であった。このことから,尿中未変化体排泄率には,明確な性差

はないものと推察された。 投与後 50 日目以降の尿中未変化体排泄率が約 6~8%とほぼ一定の値であったことから,男女共に長

期投与における本薬の蓄積性はないものと考えられた。

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ヘ-44

3.4 腎機能低下者における薬物動態(外国人) ·····························································添付資料ト-9,14 3.4.1 反復吸入投与試験 ·································································································· 添付資料ト-14 COPD 患者にチオトロピウムカプセル 18 mcg を 1 日 1 回 1 年間反復吸入投与(吸入器具:ハンディヘ

ラー)した試験(男性:n=75,女性:n=43)において,投与後 92 日目の血漿中未変化体濃度および投与後

50 日,92 日および 175 日目の尿中未変化体排泄率(Ae0-24 hr)をそれぞれクレアチニンクリアランス(CLCR)値別に 30~50 mL/min(n=8),50~80 mL/min(n=52)および 80 mL/min 以上(n=55)の 3 群に分けて比較を

行った。なお,CLCR値が 30 mL/min 未満については例数が 3 例のため,比較の対象としなかった。

表へ-33.COPD 患者にチオトロピウムカプセル 18 mcg を 1 日 1 回反復吸入投与後の クレアチニンクリアランス値別の薬物動態パラメータ値(幾何平均値)

30 ~ 50 50 ~ 80 80以上

37.1 23.7 14.3

(28.7 ~ 47.8,4) (6.23 ~ 56.6,40) (4.28 ~ 36.0,39)

10.4 9.01 7.10

(4.61 ~ 23.7,7) (4.66 ~ 25.1,44) (2.51 ~ 32.8,49)

6.47 6.41 8.20

(3.43 ~ 12.4,6) (1.12 ~ 12.7,44) (3.56 ~ 17.8,47)

4.79 7.12 7.14

(1.98 ~ 10.8,7) (3.74 ~ 14.5,38) (0.71 ~ 17.7,42)

4.23 6.81 8.52

(1.17 ~ 8.34,7) (1.79 ~ 18.3,45) (3.29 ~ 25.2,46)175

92

C5 min (pg/mL)

C2 hr (pg/mL)

Ae0-24 hr (% of dose) 92

50

CLCR (mL/min)投与日数

表中括弧内の数値は,範囲および定量下限以上を示した例数を示す。

投与後 92 日目の C5 min 値および C2 hr値は,CLCR値が 80 mL/min 以上ではそれぞれ 14.3 pg/mL および

7.10 pg/mL,CLCR値が 50~80 mL/min ではそれぞれ 23.7 pg/mL および 9.01 pg/mL,CLCR値が 30~50 mL/min ではそれぞれ 37.1 pg/mL および 10.4 pg/mL であった。クレアチニンクリアランス値の低下に伴

って,血漿中未変化体濃度の増加がみられた(表へ-33)。 投与後 50 日,92 日および 175 日目の投与後 24 時間までの尿中未変化体排泄率(Ae0-24 hr)は,CLCR値

が 80 mL/min 以上では 7.14~8.52%,CLCR値が 50~80 mL/min では 6.41~7.12%,CLCR値が 30~50 mL/min では 4.23~6.47%であった(表へ-33)。CLCR値が 50~80 mL/min の患者の尿中未変化体排泄率

は,CLCR値が 80 mL/min 以上の患者とほぼ同じか約 20%の低下であったが,CLCR値が 30~50 mL/minの患者では尿中未変化体排泄率が約 20~50%低下する傾向がみられた。 3.4.2 単回静脈内投与試験 ·································································································添付資料ト-9 腎機能が軽度(クレアチニンクリアランス(CLCR)値:50~80 mL/min,n=5),中等度(CLCR値:30~50 mL/min,n=7)および高度(CLCR値:30 mL/min 未満,n=6)に低下した患者ならびに健康成人(CLCR値:

80 mL/min 以上,n=6)に,チオトロピウム溶液 4.8 mcg を単回静脈内持続投与(15 分間)したときの血漿

中未変化体の薬物動態パラメータ値および尿中未変化体排泄率について比較を行った。 単回静脈内持続投与終了時点で,ほとんどの被験者が Cmaxを示し,健康成人では 147 pg/mL であっ

た。腎機能が軽度,中等度および高度に低下した患者の Cmax値は,それぞれ 200 pg/mL,223 pg/mL お

よび 223 pg/mL を示し,腎機能の低下に伴って Cmax値が増加した。同様に,AUC0-4hr値も腎機能の低下

に伴って増加した(表へ-34)。

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ヘ-45

表へ-34.腎機能低下患者にチオトロピウム溶液 4.8 mcg を単回静脈内持続投与(15 分間)後の 薬物動態パラメータ値(幾何平均値)

CLCR基準値 Cmax AUC0-4 hr Ae0-∞ t1/2 CLR

(mL/min) (pg/mL) (pg·hr/mL) (% of dose) (days) (mL/min)

147 55.5 60.1 4.03 435

(103 ~ 186,6) (43.2 ~ 69.4,6) (44.8 ~ 76.5,6) (3.27 ~ 5.15,6) (348 ~ 497,6)

200 77.1 59.3 5.02 246

(129 ~ 287,5) (60.9 ~ 105,5) (49.7 ~ 74.0,5) (2.41 ~ 6.80,5) (150 ~ 341,5)

223 101 39.9 3.96 124

(162 ~ 314,7) (69.4 ~ 156,7) (25.9 ~ 65.3,5) (3.21 ~ 6.82,7) (98.3 ~ 171,5)

223 108 37.4 5.95 85.7

(176 ~ 269,6) (76.3 ~ 145,6) (34.2 ~ 41.7,3) (3.46 ~ 7.55,6) (68.4 ~ 128,3)

健康成人 >80

腎機能低下患者

50 ~ 80

30 ~ 50

<30

表中括弧内の数値は,範囲および定量下限以上を示した例数を示す。 健康成人の尿中未変化体排泄率(Ae0-∞)は,60.1%であった。腎機能が軽度,中等度および高度に低下

した患者の尿中未変化体排泄率(Ae0-∞)は,それぞれ 59.3%,39.9%および 37.4%を示し,腎機能の低下

に伴って尿中未変化体排泄率が減少した。腎クリアランス(CLR)も腎機能の低下に伴って,435 mL/minから 85.7mL/min まで減少した(表へ-34)。消失半減期は,健康成人では約 4 日であるのに対して,腎

機能が低下した患者では約 4~6 日と健康成人と大きな違いはみられなかった。 COPD 患者および腎機能低下患者における薬物動態パラメータから,本薬の体内動態は腎機能の低

下によって影響を受けて,血漿中未変化体濃度の増加および尿中未変化体排泄率の低下がみられた。 なお,血漿中未変化体濃度の増加に伴う有害事象の発生はみられなかった(ト-43 頁,5.2.2 腎機能

低下者を対象とした薬物動態試験の項参照)。 3.4.3 血漿蛋白結合率への影響 ··························································································添付資料ト-9 腎機能が中等度から高度に低下した患者(n=4)の蛋白結合率を限外ろ過法で測定した結果,73.7%(平均値)であった。健康成人(n=7)では,74.7%(平均値)であった。チオトロピウムの血漿蛋白結合率は,

腎機能の低下によって影響を受けなかった。 3.5 加齢による薬物動態への影響(外国人)·········································································添付資料ト-8 COPD 患者の高齢者 (平均 74 歳,範囲 69~80 歳:n=13)と非高齢者 (平均 53 歳,範囲 45~58 歳:

n=12)にチオトロピウムカプセル 18 mcg を 1 日 1 回 2 週間反復吸入投与(吸入器具:ハンディヘラー)したときの血漿中未変化体の薬物動態パラメータ値および尿中未変化体排泄率について比較を行った。 投与後 1 日,7 日および 14 日目の血漿中未変化体濃度は,それぞれ高齢者の方が高く推移した(図へ

-22)。投与後 14 日目の高齢者および非高齢者の C5 min値は,それぞれ 15.3 pg/mL および 9.63 pg/mL を

示し,高齢者の方が高かった。また,AUC0-4 hr値は,それぞれ 26.1 pg·hr/mL および 18.2 pg·hr/mL を示

し,高齢者の方が高かった(表へ-35)。

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ヘ-46

時間 (hr)

0 1 2 3 4

血漿中未

変化

体濃

度 (p

g/m

L)

0

3

6

9

12

15

18

非高齢者高齢者定量下限

時間 (hr)

0 1 2 3 4

時間 (hr)

0 1 2 3 4

1日目 7日目 14日目

図へ-22.高齢および非高齢 COPD 患者にチオトロピウムカプセル 18 mcg を 1 日 1 回 2 週間 反復吸入投与したときの血漿中未変化体濃度推移 (幾何平均値,高齢者:n=13,非高齢者:n=12)

表へ-35.高齢および非高齢 COPD 患者にチオトロピウムカプセル 18 mcg を 1 日 1 回 2 週間 反復吸入投与したときの薬物動態パラメータ値の比較(幾何平均値)

幾何平均値 95%信頼区間 幾何平均値 95%信頼区間

C5 min (pg/mL) 7.06 3.68 ~ 13.6 (4.87) 2.71 ~ 8.74 (1.45)AUC0-4 hr (pg·hr/mL) (13.7) 10.4 ~ 18.0 (11.2) 9.34 ~ 13.4 (1.22)Ae0-4 hr (% of dose) 0.661a) 0.376 ~ 1.16 0.606 0.224 ~ 1.64 1.09

CLR (mL/min) (141)a) 81.4 ~ 244 (162) 62.9 ~ 417 (0.870)C5 min (pg/mL) 13.2 6.76 ~ 25.8 11.6 4.86 ~ 27.7 1.14

AUC0-4 hr (pg·hr/mL) 21.8 14.3 ~ 33.3 17.9 10.7 ~ 29.9 1.22Ae0-4 hr (% of dose) 1.42a) 0.920 ~ 2.19 1.61 0.704 ~ 3.68 0.882

CLR (mL/min) 194a) 111 ~ 340 268 136 ~ 527 0.724C5 min (pg/mL) 15.3 9.27 ~ 25.3 9.63 3.58 ~ 25.9 1.59

AUC0-4 hr (pg·hr/mL) 26.1 15.5 ~ 43.9 18.2 10.1 ~ 32.8 1.43Ae0-4 hr (% of dose) 1.42 0.713 ~ 2.83 1.97 1.05 ~ 3.68 0.721

CLR (mL/min) 163 79.9 ~ 333 326 193 ~ 550 0.500t1/2 (days) 6.5 4.98 ~ 8.48 5.5 4.18 ~ 7.29 1.18

14

7

1

高齢者 / 非高齢者比

非高齢者 (n=12)高齢者 (n=13)投与日数

a) n=12 表中括弧内の値は,定量下限を示した値を定量下限の半分の値に置き換えて計算したときの値を示す。

投与 14 日目の投与後 4 時間までの高齢者および非高齢者の尿中未変化体排泄率(Ae0-4 hr)は,それぞ

れ 1.42%および 1.97%であり,高齢者の方が低い値を示す傾向がみられた。また,腎クリアランス(CLR)はそれぞれ 163 mL/min および 326 mL/min と高齢者が低かった。しかしながら,尿中未変化体排泄速

度から求めた高齢者および非高齢者の消失半減期は,6.5 日および 5.5 日とほぼ同じ値を示した(表へ-

35)。 高齢者は非高齢者と比較して,投与後 7 日および 14 日の C5 min値および AUC0-4 hr値が約 10~60%高

い値を示し,尿中未変化体排泄率が約 10~30%低下したことから,チオトロピウムの体内動態は加齢

によって影響を受けた。しかしながら,安全性に対して臨床的に問題となる影響はみられなかった(ト-41 頁,5.2.1 高齢者 COPD 患者を対象とした薬物動態試験の項参照)。

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ヘ-47

3.6 肺機能の低下による薬物動態への影響(外国人) ························································添付資料ト-14 COPD 患者に,チオトロピウムカプセル 18 mcg を 1 日 1 回 1 年間反復吸入投与(吸入器具:ハンディ

ヘラー)した試験(男性:n=75,女性:n=43)において,投与後 50 日目の血漿中未変化体濃度および尿中

未変化体排泄率をそれぞれ FEV1.0 値別に 0.80 L 未満(n=23),0.80~1.25 L(n=49),1.25~1.50 L(n=20)および 1.50 L 以上(n=26)の 4 群に分けて比較を行った。

表へ-36.COPD 患者にチオトロピウムカプセル 18 mcg を 1 日 1 回反復吸入投与後の FEV1.0 値別の薬物動態パラメータ値(幾何平均値)

0.80未満 0.80 ~ 1.25 1.25 ~ 1.50 1.50以上16.6 18.9 16.3 15.6

(6.29 ~ 30.3,15) (3.47 ~ 54.9,38) (6.19 ~ 49.9,14) (6.44 ~ 36.8,17)

8.46 9.75 7.80 7.79

(5.25 ~ 24.6,19) (2.86 ~ 32.7,41) (3.70 ~ 17.5,16) (3.10 ~ 15.5,20)

7.75 6.66 6.49 7.71

(2.39 ~ 13.5,20) (1.12 ~ 17.8,39) (3.40 ~ 15.3,17) (3.56 ~ 17.8,23)

50

Ae0-24 hr (% of dose)

C5 min (pg/mL)

C2 hr (pg/mL)

投与日数

FEV1.0 (L)

表中括弧内の数値は,範囲および定量下限以上を示した例数を示す。

投与後 50日目のC5 min値およびC2 hr値は,FEV1.0値が 0.80 L未満では 16.6 pg/mLおよび 8.46 pg/mL,0.80~1.25 L では 18.9 pg/mL および 9.75 pg/mL,1.25~1.50 L では 16.3 pg/mL および 7.80 pg/mL,1.50 L以上では 15.6 pg/mL および 7.79 pg/mL であった(表へ-36)。肺機能の低下(FEV1.0 値の低下)によって,

C5 min値および C2 hr値にそれぞれ違いはみられなかった。 投与後 50 日目の投与後 24 時間までの尿中未変化体排泄率(Ae0-24 hr)は,FEV1.0 値が 0.80 L 未満では

7.75%,0.80~1.25 L では 6.66%,1.25~1.50 L では 6.49%,1.50 L 以上では 7.71%であった。肺機能の

低下によって,尿中未変化体排泄率に大きな違いはみられなかった。 以上のことから,チオトロピウムの体内動態は,肺機能の低下による影響を受けないものと推察さ

れた。

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ヘ-48

3.7 日本人の COPD 患者における検討 ···································································· 添付資料ト-11,12 3.7.1 尿中排泄 ·················································································································添付資料ト-12 日本人の COPD 患者にチオトロピウムカプセル 9,18 および 36 mcg を単回吸入投与(吸入器具:ハ

ンディヘラー,9 mcg:n=24,18 mcg:n=26,36 mcg:n=24)したときの投与後 24 時間までの尿中未変

化体濃度の測定を行った。また,投与後 8 時間および 24 時間までの尿中未変化体排泄率(Ae0-8 hrおよび

Ae0-24 hr)を算出した。 投与量の増加に伴い,投与後 24 時間までの累積尿中変化体排泄量は比例的に増加することが示され

た(図へ-23)。

投与量 (mcg)

9 18 36

尿中未変化体排泄量

(ng)

0

1000

2000

3000

4000

5000

図へ-23.日本人の COPD 患者にチオトロピウムカプセル 9,18 および 36 mcg を 単回吸入投与 24 時間までの個々の累積尿中未変化体排泄量 (9 mcg:n=24,18 mcg:n=26,36 mcg:n=24) (図中の実線は,尿中未変化体排泄量の算術平均値と投与量との用量相関性を示す。)

9,18 および 36 mcg の投与量における投与後 8 時間までの尿中未変化体排泄率(Ae0-8 hr)は,それぞれ

2.2%,2.7%および 4.2%を示し,投与後 24 時間までの尿中未変化体排泄率(Ae0-24 hr)は,それぞれ 3.7%,

4.3%および 6.7%であった(表へ-37)。

表へ-37.日本人の COPD 患者にチオトロピウムカプセル 9,18 および 36 mcg を 単回吸入投与後の尿中未変化体排泄率 (幾何平均値,9 mcg:n=24,18 mcg:n=26,36 mcg:n=24)

9 mcg 18 mcg 36 mcg

2.2 2.7 4.2

(0.8 ~ 5.4) (1.4 ~ 5.2) (2.3 ~ 7.5)3.7 4.3 6.7

(1.5 ~ 7.9) (2.2 ~ 8.4) (3.7 ~ 11.6)

投与量

Ae0-8 hr

Ae0-24 hr

(% of dose)

(% of dose)

表中括弧内の数値は,範囲を示す。 (オリジナルデータから幾何平均値を算出)

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ヘ-49

3.7.2 日本人と外国人の比較····················································································· 添付資料ト-11,12 本薬は,全身循環血液中の未変化体濃度による作用ではなく肺における局所作用を主体とするもの

であり,また推奨用量(チオトロピウムとして 18 mcg)前後では単回吸入投与後の血漿中未変化体濃度

は投与後 1 時間以降ではほとんどが定量下限未満を示した(ヘ-36頁,3.1.1.2.1 吸入投与の項参照)。こ

のため,日本人での血漿中未変化体濃度の測定は行わなかった。 吸入投与後に肺から吸収された薬物は主に尿中から排泄されると推察された(ヘ-38頁,3.1.2 生物学

的利用率の項参照)ことから,外国人と日本人の COPD 患者にそれぞれ単回吸入投与したときの投与後

8 時間までの尿中未変化体排泄率(Ae0-8 hr)の比較を行った。 日本人において,チオトロピウムカプセル 9,18 および 36 mcg を吸入投与(吸入器具:ハンディヘラ

ー)後 8 時間までの尿中未変化体排泄率(Ae0-8 hr)は,それぞれ 2.2%,2.7%および 4.2%であった。一方,

外国人において,チオトロピウムカプセル 8.8,17.6 および 35.2 mcg を吸入投与(吸入器具:FO2)後の

尿中未変化体排泄率(Ae0-8 hr)は,それぞれ 1.44%,2.64%および 2.83%であった(ヘ-43頁,表へ-31参照)。日本人の投与量 36 mcg では,外国人と比較して高い値を示したが,日本人の個体間変動が大きい

ことを考慮すると,日本人と外国人の尿中未変化体排泄率は類似していると考えられた(図へ-24)。

尿中未変化体排泄率

(% o

f dos

e)

0

2

4

6

8

10

― ――

日本人(9 mcg)

日本人(18 mcg)

日本人(36 mcg)

外国人(8.8 mcg)

外国人(17.6 mcg)

外国人(35.2 mcg)

個々の値(外国人)幾何平均値―

個々の値(日本人)

図へ-24.COPD 患者におけるチオトロピウムカプセルを単回吸入投与後 8 時間までの尿中未変化体

排泄率の日本人と外国人の比較 (日本人:9 mcg:n=24,18 mcg:n=26,36 mcg:n=24,オリジナルデータから幾何平均値を算出) (外国人:8.8 mcg:n=7,17.6 mcg:n=5,35.2 mcg:n=8) (オリジナルデータから作成)

3.8 薬物相互作用 ······························································································ 添付資料ヘ-34,ト-10 3.8.1 in vitro における薬物相互作用 ·················································································添付資料へ-34 チオトロピウムの推奨用量が 18 mcg と非常に少なく,吸入投与後の定常状態における血漿中未変化

体濃度も約 0.02~0.05 nM(7~21 pg/mL(チオトロピウムの分子量:392.5):ヘ-42頁,表へ-30参照)と低いことならびに in vitro 試験によるチトクローム P450 代謝酵素の阻害試験では 1 µM の濃度において

CYP 1A1,1A2,2B6,2C9,2C19,2D6,2E1 および 3A に対して阻害反応はみられなかった(ヘ-41頁,3.2 代謝の項参照)ことから,チオトロピウムは CYP 関与の薬物相互作用を惹起する可能性は低い

と考えられた。

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ヘ-50

3.8.2 尿中排泄における薬物相互作用(外国人) ································································添付資料ト-10 一般的に全身クリアランス値に比べて腎クリアランス値が高い薬物では,尿中排泄における薬物相

互作用を起こす可能性が考えられる。 本薬は塩基性薬物であることから,腎臓のカチオン輸送系が阻害されることによって,本薬の血漿

中未変化体濃度が増加することが予測される。そこで,塩基性薬物の尿細管分泌を阻害することが知

られているシメチジンを用いて本薬の尿中排泄における薬物相互作用の可能性について検討した。ま

た,シメチジンと同様に尿細管分泌を阻害する作用があり,シメチジンよりも広く胃腸管潰瘍の治療

に使用されるラニチジンを用いて検討した。 3.8.2.1 シメチジン···········································································································添付資料ト-10 健康成人(男性および女性:各 n=3,平均年齢 57 歳)にチオトロピウム溶液 14.4 mcg を単独単回静脈

内持続投与(15 分間)またはシメチジン 400 mg 錠を併用投与(1 日 3 回 5 日間投与,チオトロピウム投与

の前日から投与を開始)した時の,シメチジンによるチオトロピウムの薬物動態に対する影響について

検討した。 チオトロピウムの単独投与時の Cmaxおよび AUC0-4 hrはそれぞれ 635 pg/mL および 253 pg·hr/mL を示

し,併用投与時ではそれぞれ 664 pg/mL および 304 pg·hr/mL であった。併用投与によって Cmaxの変化

はみられなかったが,AUC0-4 hrは約 20%増加した(表へ-38および図へ-25)。なお,AUC0-4 hrの増加に

伴う有害事象の発生はみられなかった(ト-45 頁,5.2.3 シメチジンとラニチジンとの薬物相互作用の

検討の項参照)。 単独投与時の尿中未変化体排泄率(Ae0-4 hr)および腎クリアランス(CLR)はそれぞれ 34.5%および 355 mL/min を示し,併用投与時ではそれぞれ 33.0%および 277 mL/min であった(表へ-38)。併用投与によ

って尿中未変化体排泄率に違いはみられなかったが,腎クリアランス値は約 20%減少した。しかし,

併用投与時のクレアチニンクリアランス値(93.5 mL/min)よりも腎クリアランス値(277 mL/min)が高い

ことから,シメチジンの併用投与によるチオトロピウムの尿細管分泌への影響は小さいことが推察さ

れた。

表へ-38.健康成人にチオトロピウム溶液 14.4 mcg を単独静脈内持続投与およびシメチジン (400 mg)を併用投与したきのチオトロピウムの薬物動態パラメータ値の比較 (幾何平均値)

664 635(404 ~ 844,6) (549 ~ 708,6)

304 253(196 ~ 412,6) (186 ~ 379,6)

33.0 34.5(27.8 ~ 37.8,5) (27.4 ~ 40.5,5)

277 355(181 ~ 364,5) (268 ~ 437,5)

薬剤 併用 単独併用 / 単独

比90%信頼区間

シメチジン

Cmax (pg/mL) 1.05 0.80 ~ 1.37

AUC0-4 hr (pg·hr/mL)

Ae0-4 hr (% of dose) -

1.20 1.03 ~ 1.40

CLR (mL/min) - -

-:算出せず 表中括弧内の数値は,範囲および定量下限以上を示した例数を示す。

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ヘ-51

時間 (hr)

0 1 2 3 4

血漿

中未変化体濃度

(pg/

mL)

1

10

100

1000

チオトロピウム単独投与シメチジン併用投与

図へ-25.健康成人にチオトロピウム溶液 14.4 mcg を単独単回静脈内持続投与およびシメチジン (400 mg)を併用投与したときのチオトロピウムの血漿中未変化体濃度推移 (幾何平均値,各群 n=6)

以上のことから,シメチジンはチオトロピウムの薬物動態に対してわずかに影響を及ぼしたが,尿

中排泄において臨床的に問題となるような薬物相互作用を起こす可能性は低いものと考えられた。 なお,本薬を併用投与したときのシメチジンの薬物動態パラメータ値とシメチジンを単独投与して

得られた値(文献値 1,2))とを比較した結果,チオトロピウムはシメチジンの体内動態へ影響を及ぼさな

いものと推察された(表へ-39)。

表へ-39.シメチジンの薬物動態パラメータ値の比較(算術平均値) 投与量 Cmax, ss AUCss t1/2

(mg) (µg/mL) (µg·hr/mL) (hr)400 1日3回 2.1 (20) 8.81 (24) 2.3 (13)

4001) 1日2回 1.8 (39) 6.62 (26) 2.0 (20)

4002) 1日2回 2.4 (30) 10.1 (16) -

用法

表中括弧内の数値は,変動係数(%C.V.)を示す。

1. Muirhead, M.R. et al. Effect of cimetidine on renal and hepatic drug elimination: studies with triamterene,

Clin. Pharamacol. Ther. 40(4), 400-407 (1986) 2. Somogyi, A. et al. Reduction of metformin renal tubular secretion by cimetidine in man, Br. J. Clin.

Pharmacol. 23(5), 545-551 (1987)

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3.8.2.2 ラニチジン···········································································································添付資料ト-10 健康成人(男性:n=8 名,女性:n=4,平均年齢 56 歳)にチオトロピウム溶液 14.4 mcg を単独単回静脈

内持続投与(15 分間)またはラニチジン 300 mg 錠を併用投与(1 日 1 回 5 日間,チオトロピウム投与の前

日から投与を開始)した時の,ラニチジンによるチオトロピウムの薬物動態に対する影響について検討

した。 チオトロピウムの単独投与時の Cmaxおよび AUC0-4 hrはそれぞれ 683 pg/mL および 256 pg·hr/mL を示

し,併用投与時ではそれぞれ 596 pg/mL および 254 pg·hr/mL であった。併用投与によって Cmaxは約 13%減少したが,AUC0-4 hrの変化はみられなかった(表へ-40および図へ-26)。 単独投与時の尿中未変化体排泄率(Ae0-4 hr)および腎クリアランス(CLR)はそれぞれ 36.1%および 342 mL/min を示し,併用投与時ではそれぞれ 36.3%および 343 mL/min であった。併用投与によって尿中

未変化体排泄率および腎クリアランス値の変化はみられなかった(表へ-40)。

表へ-40.健康成人にチオトロピウム溶液 14.4 mcg を単独静脈内持続投与およびラニチジン (300 mg)を併用投与したきのチオトロピウムの薬物動態パラメータ値の比較 (幾何平均値)

596 683(405 ~ 842,12) (568 ~ 905,12)

254 256(186 ~ 373,12) (201 ~ 335,12)

36.3 36.1(31.3 ~ 44.7,11) (29.7 ~ 43.8,11)

343 342(212 ~ 562,11) (215 ~ 522,11)

薬剤 併用 単独併用 / 単独

比90%信頼区間

ラニチジン

Cmax (pg/mL)

Ae0-4 hr (% of dose)

0.87 0.73 ~ 1.04

AUC0-4 hr (pg·hr/mL) 0.99 0.90 ~ 1.08

- -

CLR (mL/min) - -

-:算出せず 表中括弧内の数値は,範囲および定量下限以上を示した例数を示す。

時間 (hr)

0 1 2 3 4

血漿

中未変化体濃度

(pg/

mL)

1

10

100

1000

チオトロピウム単独投与 ラニチジン併用投与

図へ-26.健康成人にチオトロピウム溶液 14.4 mcg を単独静脈内持続投与およびラニチジン (300 mg)を併用投与したときのチオトロピウムの血漿中未変化体濃度推移 (幾何平均値,各群 n=12)

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ヘ-53

以上のことから,チオトロピウムの薬物動態に対するラニチジンの影響は小さく,尿中排泄におけ

る薬物相互作用を起こさないものと考えられた。 なお,本薬を併用投与したときのラニチジンの薬物動態パラメータ値とラニチジンを単独投与して

得られた値(文献値 1))とを比較した結果,チオトロピウムはラニチジンの体内動態へ影響を及ぼさない

ものと推察された(表へ-41)。

表へ-41.ラニチジンの薬物動態パラメータ値の比較(算術平均値) 投与量 Cmax, ss AUCss t1/2

(mg) (ng/mL) (ng·hr/mL) (hr)300 1日1回 778 (34) 3520 (30) 2.8 (29)

1501) 1日2回 472 (35) 2298 (29) 2.8 (18)

用法

表中括弧内の数値は,変動係数(%C.V.)を示す。

1. Murihead, M. et al. Pharmacokinetic drug interactions between triamterene and ranitidine in humans:

alternations in renal and hepatic clearances and gastrointestinal absorption, J. Pharmacol. Exp. Ther. 244(2), 734-739 (1988)