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1015年後を見据えた IoTアーキテクチャの要件と展望 大岩 産業技術総合研究所 情報技術研究部門 2016-03-07 1

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  • 10~15年後を見据えたIoTアーキテクチャの要件と展望

    大岩 寛産業技術総合研究所情報技術研究部門

    2016-03-07

    1

  • IoT の趨りと興り• 1982年= 31年前

    – Carnegie-Mellon 大学でコーラの自販機を学内ネットワークでモニタ可能に

    • 1993年= 22年前– Cambridge 大学がコーヒーサーバーをインターネットで全世界に公開

    • 1999年= 16年前– MIT Auto-ID Labs の設立者が「Internet of Things」の語を提唱

    • 2012年= 3年前– 起業家が “Trillion Sensors Universe”を提唱

    • Trillion = 1,000,000,000,000 = 1兆• 「一兆センサー」

    – この辺りから急激に世間の注目を集めるように

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    (Wikimedia Commons より)

  • IoT の興り• なぜ今 IoT / CPS が盛り上がるのか?

    → いくつかの技術的・環境的背景– 通信インフラの広範な普及

    • データ源側の大幅な省力化・低コスト化– デバイス製造・センサー技術の発展

    • 実世界との接点の低コスト化– データ処理技術の大幅な発展

    • ビッグデータ解析による「膨大な無整理データ」からの新たな知見・ルール・性質の発見が可能に

    – 「使い方より先にまずデータを採る」意味が出てきた• 大規模データ処理を支える計算基盤の発展

    – クラウドによる大規模計算インフラの実用化・低コスト化

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  • 「インターネット」に「モノ」を繋げば「モノのインターネット」なのか?

    • 巷にあふれる「IoT 商品」– 電力消費量のリアルタイム監視 (スマートメーター)– サーモスタットの遠隔監視・省エネ制御– 庭のスプリンクラーの簡単遠隔操作化

    •アメリカでは重大な問題なんだそうです– 通販直結の消耗品注文ボタン

    どれも今現在の単体としてはいい製品ですが…

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  • クラウドサービス

    寂しいIoT (もどき?)のデータモデル• データ取って、クラウドで処理して、データを「返す」

    – センサーが倍になると、データの価値が倍(以下)になるモデル

    • スケールメリット皆無• 「30年前の自動販売機と変わっていない?」

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    データ データ データ データ

  • 今のIoTのボトルネック• 各IoT事業者のセンサー群が独自に閉じたインフラ設計• センサー間・事業者の横連携が

    取れないモデル• 「とりあえずクラウドへ」の

    データモデル– センサーが増えても、ボトルネックが増えるだけで規模の増大のメリットが生じない

    • 端末間通信を許さないNW設計– セキュリティ対策のためのネットワークの「引きこもり」化

    “Internet of Intranets”– 長期的な視点での情報連携の大きな障害

    Internet

    センサー群1の閉域ネットワーク センサー群2の閉域ネットワーク

    クラウド・プラットフォーム業者(Google, GE 等)

    データの囲い込み・局在化

    通信の集中ボトルネック無駄な通信

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  • 我々の目指すべき目標点は?• ただ「接続していること」に価値のある世界はつまらない。

    • インターネットの質的転換– 「接続することで新たなことができること」に価値のある世界

    – 「データを混ぜること」「流通させること」で新たな価値が生まれる世界

    • AI・ビッグデータの潮流をきちんと生かす世界

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  • 我々の目指す世界:2030年のIoTのイメージ

    • 世界中に広く分布する「共通センサーインフラ」と、そこから必要な情報を入手して作る「IoTサービス」– 一兆(Trillion Sensors)規模の巨大センサーインフラ

    • ありとあらゆるセンサーが繋がる基盤– 複数事業者の構築したインフラが密に結合するモデル

    • センサー基盤全体のインフラ化・共用化– 既存センサーへの新たな利用目的の追加– 複数事業者間の情報の自在な流通による新サービス・イノベーションの創出(規模の効用の増加)

    – IoTサービスは、今あるセンサーから必要な情報を入手し、そこに新たな価値を見いだしてユーザーに提供

    • センサーが「そこにある」ことが新たな価値創造の可能性を生む• 規模が増えれば増えるほど、市場の価値が加速的に増える世界

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  • The Internet of Things

    IoT インフラの将来像

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    インフラとしてインターネット上に広くばらまかれた

    センサー群

    必要なセンサー情報を取得し利用

    一般サービス利用者へ

    情報として提供

    効率的な商品・サービス提供移動の最適化 インフラ運営移動支援・健康介護効率的な工業生産

    センサー提供者(官・民)

    センサー提供者(官・民)

    センサー利用者(官・民)

    センサー利用者(官・民)

    動的割り当て資源管理

    セキュリティ管理

    エネルギーの効率的供給

  • Motivating Example

    • 自らデータを収集し判断する自動運転車– 行き先を指定すると経路上にあるセンサーを探索– 走行の過程で、近づいた街頭センサーや対向車と自動的に連携

    – 曲がり角の先から飛び出す子供など、車上センサーでは捕らえられない情報も動的に獲得

    – 「人間では防げない事故も、センサーがあれば大丈夫!」……くらいのことが出来ないと、IoT の存在意義が悲しい。

    • A社のカメラでは捕らえていたが、B社の車ではネットが違うのでデータが使えなかった、などでは技術者としてとても悲しい。

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  • 15年後のIoTへの技術的課題• データ量の暴力

    – データ処理の一極集中の招く問題の顕在化• 数の暴力

    – 一兆個のセンサーと、それに見合ったサービスの生むダイナミックな状況変化

    • セキュリティ・サービス管理の破綻• 大量の流れに対して、制御できる力が圧倒的に不足• 今の管理者主体のセキュリティ管理の限界

    – 今のインターネットの技術では、2030年の膨大なセンサーを捌けない。

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  • 15年後のIoTへの技術的課題• 端的に今、何ができていないか?

    – 情報の流れの制御が、サービスの変化に追いつけない• セキュリティや通信の制御は管理者主体

    – 新しいサービスを追加するには-管理者を呼んできて通信設定を書き換えるか、-最初から誰とでも通信できるようにしておくか、しかない

    • 通信インフラが通信を最適化できない– 瞬発的通信も、長期間通信も、同じ仕組みでしか扱えていない– 貧弱なセキュリティ対策が通信の自由度・効率を制限する

    • 悪者の影響を軽減できない– DoS攻撃など小電力デバイスには特に脅威になる

    ★アーキテクチャレベルの再設計が必要• 「Webインフラとしてのインターネット」の延長上には無い• 15年後のためには、今から取り組まないと間に合わない

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  • 我々の取り組む技術• サービスの情報に基づくインターネット制御の自動化・広域連携化– インフラがサービスを時々刻々と把握

    •サービス連携の状況からこれから起こる情報の流れを把握

    •通信制御やセキュリティ設定の自動化– サービスの情報から「今後起こる通信」を計算– 先回りしてネットワークの挙動を動的に制御– ネットワーク間で制御を分担・連携

    → これまでの固定ポリシーや feed-back 型の制御では実現できないサービスインフラを実現する

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  • 工場・インフラのネットワーク (Industry 4.0)街中の様々なセンサーネットワーク

    今のインターネットのセキュリティ機構

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    固定的な設定の「城塞型イントラ」

    ・通信を一方向に(↑方向)制限・中からやられると崩壊

    ほぼ無法地帯の広域インフラ

    城塞国家モデル

    クラウドへ一方向の強制された情報の流れ

    →: データの流れ

  • 広域・分散管理のネットワーク

    工場・インフラのネットワーク (Industry 4.0)街中の様々なセンサーネットワーク

    GW GW

    GW

    GW

    GWGW

    GW

    GW

    GW GW

    セキュリティ制御の連携

    目指す技術の方向性

    センサー・エッジ間の直接通信・連携

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    サービス毎に適した自由なデータの流れ 情報の流れの「メタ情報」の流通

    動的設定のゲートウェイ

    ↑ NWコントローラ↑

    インフラ全体での状況把握・分散管理

    GWGW

    →: データの流れ→: サービス情報の流れ

  • 我々の取り組む技術• この技術で実現すること

    – サービスの要求に応じた最適化された通信インフラを提供

    • サービス毎の特性に応じた帯域や接続性の提供– 現状の固定設定以上のセキュリティ

    • サービス変化に自動的にセキュリティ設定が追従• デバイスの特性に応じた最適なセキュリティ保護

    – 小電力デバイスなどに合わせて保護や暗号化を自動設定– サービス毎の専用通信路の自動的提供なども可能

    • 不正通信の検知と抑圧– DoS攻撃や感染端末の影響を軽減・局在化

    – 現状より柔軟で確実な状況モニタリング• 起こるべき通信をインフラが常時把握

    → 状況を的確に把握して管理者にフィードバック

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  • 研究の内容とスケジュール感• 主な課題

    – インフラ制御に注目したサービス連携機構– サービスとネットワーク側の要求の摺り合わせ– 大規模・大容量インフラでの細粒度通信制御– 複数管理者・事業者間での制御の連携・調停

    • 想定スケジュール– 2030年の実用化を目指す

    • 2018~19年までに最初の実証実装– 部分的にも利用可能な形で徐々に技術展開

    • サービス連携プラットフォームとの連携• 広域環境への普及には5~8年は必要

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  • 他に考えるべきこと• 常に変化し続けるIoT世界から必要な情報を見つける仕組み– 全世界規模の「センサーのカタログ」– データ形式・手続きの統一化・柔軟さも重要

    • センサーなどのソフトウェア自体の強化– ソフトウェア検査(関西センター)・ソフトウェア検証(つくば)

    • プライバシーの保護– IoTの生む機微なデータを自動で流通させるため、

    • プライバシーそのものを AI が判断できる技術• プライバシーが漏れない計算(暗号)技術

    などが必要に

    産総研自身の研究や外部連携などで取り組んでいきます18

  • まとめ(今後の抱負)• 「ただ情報機器をインターネットに繋ぐ」だけでは IoT の価値は増大しない。

    • 複数の情報があれば、組み合わせることが新たな価値を生む、という考え方を技術で現実化したい。

    • サービス連携からセキュリティまでを俯瞰した新しい IoT インフラを提案– 今より柔軟で安全な環境を

    2030年までに提供することが目標– 一兆センサーのスケール感を技術で後押ししたい

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