近病図131研修 kojima ss
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2013/09/28 1近畿病院図書室協議会第 131 回研修会2013/09/28
K S L
診療ガイドライン作成支援に必要な知識・スキル・学び方
小嶋 智美 [KOJIMA, Satomi]
近畿病院図書室協議会第 131 回研修会@大阪ハイテクノロジー専門学校
2013/09/28
2013/09/28 3近畿病院図書室協議会第 131 回研修会近畿病院図書室協議会第 131 回研修会 3
K
CPG とはInstitute of Medicine ( IOM, 米国医学研究所)の定義から
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KIOM の定義 [1990]1)
「特定の医療状況で医療従事者と患者・介護者の意思決定を支援するために系統的に作成された文書」
1) 『 Clinical Practice Guidelines : Directions for a New Program http://www.nap.edu/catalog.php?record_id=1626
根底にあるのは EBM の実践
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KEBM の構成要素 1)
1)Haynes RB. et al. Evid Based Med 2002;7:36-38. http://bmj-ebm.highwire.org/content/7/2/36.full
研究成果 患者の価値観
患者の病態・環境
専門技能
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KCPG 作成では
EBM 実践の5 step
1. 患者の問題点を抽出
2. 解決のための情報を探す
3. 集めた情報を吟味する
4. 3 . を適用するか考える
5. 1 〜 4 を評価する
クリニカルクエスチョン作成
文献検索
スクリーニング批判的吟味
統合
推奨度決定
客観的評価[ 外部・ツール ]
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KCPG の位置づけ
• 適切な診療を行うための「道しるべ」
– 判断材料のひとつとして用いられる• だからこそ系統的な手法で作成すべき
– これまでの標準的診療を否定しない• 「推奨」強制力は無い
– 従わなかったから、と責められることはない• 一番に考えるのは目の前の患者のこと
– 専門職として備えておくべきエビデンス:知識を力に
2013/09/28 9近畿病院図書室協議会第 131 回研修会
K
エビデンスとなる
システマティック・レビューと
他の選択肢となるケアの
益と害の評価によって得られる
最適な患者ケアの推奨を含む文書
『 Clinical Practice Guidelines : We can trust 』http://www.iom.edu/Reports/2011/Clinical-Practice-Guidelines-We-Can-Trust.aspx
作成手法の明確化
IOM の新定義 [2011] 1)
患者へのアウトカムの妥当性を考慮
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Kポイント
• 患者アウトカムに対する推奨
• エビデンス総体– 個別の研究成果の評価から統合へ• システマティックレビュー• 代替的なケアとなる選択肢も提示
• 益と害の双方を評価– 害には負担や費用の側面も含む
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K作り手の構成例
• 対象疾患の専門家– 作成委員長:作成の統括– 作成者:各章の執筆– リエゾン委員:他ガイドラインとの整合性を検討
• 方法論の専門家:エビデンスの収集/評価
• 患者代表
• ガイドライン評価の専門家
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Kex. 小児特発性ネフローゼ症候群
• 作成母体:日本小児腎臓病学会• 作成委員会 [2012-2013]– 委員長: 1名– 薬物療法担当委員: 10名– 一般療法担当委員:9名– ライブラリアン: 2名– 患者代表: 2名
• 査読委員– 内部 2名、外部 1名
作成委員会の一員文献検索担当とは書かれていない
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K作成のプロセスから :→EBM 実践の 5step
1. クリニカルクエスチョン (CQ) 作成
2. 文献検索
3. 情報の吟味
4. 推奨度の決定
5. 評価
エビデンスの収集
エビデンスの評価
ガイドラインの質
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K質の評価から
• 検索=エビデンスの土台を作る作業
• AGREE II 1)
–CPG の世界的評価基準• Minds でも採用
1) Appraisal of Guidelines for Research & Evaluation. http://www.agreetrust.org/
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KAGREE II :評価領域
1.対象と目的2.利害関係者の参加3.作成の厳密さ4.提示の明確さ5.適用の可能性6.編集の独立性
7. 系統的な文献検索
8. 文献の選択基準
9. エビデンスの評価
10.推奨決定のプロセス
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Kそのほか:直接聞いてみた
• CPG をテーマにした分科会 [JMLA 総会 2013]
Q 「ライブラリアンにしてほしいことを教えて ! 」
A2: CPG 作成担当者は…「(究極のお願いは)原稿を書いてもらうこと」診療+執筆で多忙→検索以外のサポート
A1: CPG 作成の専門家は…「何ができるか、もっと話してほしい」
CPG 作成の一員としての積極性
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SCPG-WG :概要
• JMLA受託事業委員会の下部組織
• 組織と主業務:文献検索を中心とする–委員• 文献検索作業+ 検索式と文献リストの提出
–リーダー• 委員+他委員サポート+作成委員会とのやりと
り–委員長• 運営統括+リーダー+委員
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S委員:作業全体の流れ
対象疾患担当のクリニカルクエスチョン( CQ )既知文献 ※ある場合
予備検索検索戦略→検索式の決定検索作業・文献リスト提出再検索
最終検索式の確定原稿提出
下調べ
検索
清書
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S実際の検索作業で
• 下調べの大切さ–対象疾患–担当する CQ
2012/11/06 21
疾患・CQ
検索戦略を立てるための背景的知識が必要
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SCQ の確 認
• CQが届いたら–用語や関連文献の調査→検索語収集• 用語の調査、予備検索
–不 明な点は作成者に 聞く •既知文献も挙げてもらう
• CQ は PICO(PECO) の形に整理でき
る 22
CAUTION!
ひとりよがりわかったふり
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SPICO/PECO :疑問の定式 化
• P :研究対象 (Patient, Population)
• I :介入( Intervention ) or E :曝露( Exposure )
• C :対照( Comparison )
• O :アウトカム (Outcome) ※仮説
臨床場面によって強く意識するポイントが変化する
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S
「 P」
ランダム化 比較試験
コホート研究
横断研究
コホート研究症例対照研究
疑問のカテゴリ
• 病因
• 診断
• 予防
• 治療
• 予後
臨床場面に応じて分析の観点は変わる
「 E 」「 O 」
「 E 」「 O 」
「 I 」「 C 」
※各カテゴリにおける信頼性の高い研究デザイン
(http://spell.umin.jp/EBM.htm)
「 I 」「 C 」
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S診断に関する疑問の定式 化
P : 疑いのある疾患・原因不明の 症状
I : 対象となる診断法
C : I とは異なる診断法 or なし
O : 診断の正確さ( 感度 or 特異度)
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S作成支援のための条件 1)
• CPG の知識
• CPG 作成手順の理解
• EBM の知識
• 研究デザインとエビデンスレベルがわかる
• 文献を読み評価ができる
• 文献検索の知識
• ドクターにアドバイスできる自信を持つ1)山口直比古 . EBM 診療ガイドライン作成のための医学図書館員の役割 . 文献検索講習上級編 2014講義資料 .
医学研究
文献検索
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S作成委員会とのやりとり
• 会議で–診療ガイドライン作成全般–検索全般、文献の記載方法–議事進行の補助
• 会議以外で–原稿の校正–個々の担当者からの問合わせ対応
スキルに基づくコミュニケーション
コミュニケーション
2013/09/28 28近畿病院図書室協議会第 131 回研修会
S疾患・ CQ の理解に役立つツール
• 疾患に関する基本書–総説・解説、ガイドライン(旧版・関連)
• 用語辞典– ex. ライフサイエンス辞書 1)
–シソーラス• スコープノート
疾患・ CQ
2013/09/28 29近畿病院図書室協議会第 131 回研修会
S文献検索の理解に役立つツール
• 検索に関する基本書– ブール演算子 , ワイルドカード , など
• DB の操作マニュアル– 詳細検索:フィールドタグ※
• シソーラスの理解– 仕組みの理解• 構成や用語の種類
– 索引ルールの理解文献検索
2013/09/28 30近畿病院図書室協議会第 131 回研修会
Sフィールドタグ(検索タグ)
• 検索項目を指定する:ほんの一例示すもの 医中誌 PubMed
フリーワード項目指定なし
/AL [ALL]
タイトルと抄録 /TA [TIAB]
シソーラス主標目 or 主+副標目
/TH /MTH [MH] [MAJR]
シソーラス副標目
SH= [SH]
シソーラス文献タイプ
/PT /RD [PT]
2013/09/28 31近畿病院図書室協議会第 131 回研修会
S検索式を確 認できる場所
• 医中誌–検索の履歴–検索式の編集画面• 「検索式を編集」を選択
• PubMed– Search details のボックス・画面
検索結果は、検索の都度確 認すること
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S医学研究の理解に役立つツール
• EBM の方法論に関する情報資源–方法論の解説• ex. Minds > ガイドライン作成
– 『 Minds 診療ガイドライン作成の手引き』 2013年版発行予定
– 『 EBM 実践のための医学文献評価選定マニュアル』• EBM を学ぶ人のためのサイト
–研究デザイン• シソーラスの”文献タイプ”など
–医療統計• 読み解き方を知る
医学研究
2013/09/28 33近畿病院図書室協議会第 131 回研修会
Sシソーラスとは
• Thesaurus–索引、検索用の構造化された統制 語彙集 1)
受け手の主題知識を補いながら伝え手の意図をより具体的に把握し、共通する表現を用いて理解しあう
ためのツール
1)日本図書館情報学会用語辞典編集委員会編 . 図書館情報学用語辞典 . 第 3版 . 丸善 , 2007.
検索担当者 索引担当者同じ表現で共有
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SMeSH を例に
• Medical Subject Headings– PubMed等、多くの医学系 DB の索引に使用–索引に関する情報はすべて無料で Web公開
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SMeSHが見られるサイト
• MeSH Database– Entrez の中にある検索用シソーラス• PubMed への検索式追加機能あり
• MeSH Browser–MeSH本体:索引作業に用いられる• MeSH DB にはない情報がある
• おまけ : 医学用語シソーラス–MeSH の表現形で用語が検索できる
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SMeSH の構成:用語の種類
• 主標目–対象となる文献の主題を表す
• 副標目–対象となる主題の特定の視点を表す
• 補足語–物質名やプロトコル(治療計画)主標目を補足するもの
• Publication Type–文献の特性を表す→ 研究デザイン
2013/09/28 40近畿病院図書室協議会第 131 回研修会
PubMed の書誌構造 [2]
「 Publication Type 」
「 MeSH Terms 」主標目 /副標目
「 Substances 」補足語
2013/09/28 41近畿病院図書室協議会第 131 回研修会
S疾患・ CQ の理解に
• 対象となる用語の情報–表現形:索引語に用いられている形–同義語・類義語–定義や索引の範囲
• 他の用語との関係–カテゴリ–階層–参照
疾患・ CQ
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SMeSH Browser:主標目の例
Scope Note :用語の定義Annotation :索引時の注意Allowable Qualifiers :付与できる副標目Entry term :同義語See Also: をも見よPrevious Indexing: 前索引語History Note:来歴
2013/09/28 43近畿病院図書室協議会第 131 回研修会
S適切な文献検索のために
• シソーラスは検索に必要不可欠な知識– CQ の場面に応じた検索を可能にする• 研究デザイン・疫学用語• 副標目
• シソーラス原理主義は ×–系統的な文献検索のために• 検索結果を必ず見る• MeSH とフリーワードの活用
– Entry term 、前索引語
文献検索
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S医学研究の理解に
• EBM に関する用語の理解–疫学的手法• 主標目のカテゴリ [E][N] など
– [E] 分析,診断,治療技術と機器– [N] 保健医療
–研究デザイン• Publication Type
医学研究
2013/09/28 45近畿病院図書室協議会第 131 回研修会
S治療の CQ に用いる MeSH の例• 副標目 [SH]
therapy (治療)Therapeutic use (治療的利用)
• 主標目 [MH]
Treatment Outcome[MH] (治療成績)Placebos[MH] (プラセボ)
• Publication Type[PT]Clinical Trial (臨床試験)
Controlled Clinical Trial (比較臨床試験)Multicenter Study (多施設研究)Randomized Controlled Trial (ランダム化 比較試験)
2013/09/28 48近畿病院図書室協議会第 131 回研修会
Lインプット:みんなで
• 各種研修会への参加–医学図書館関連 今日もそうですね
• JMLA では– 文献検索講習 [初・中・上 ] など 今年度の中級は 11/8@
九州– EBMセミナー
–医学従事者向け• Minds :診療ガイドライン作成ワークショップ
• 仲間で企画する–シソーラスの勉強会など
2013/09/28 49近畿病院図書室協議会第 131 回研修会
Lインプット:ひとりで
• 日常的に学べる環境を作る–メールマガジン、 SNS–新聞の医療・健康面記事を見て主題分析→検索、元論文を見てみる
• EBM の手法による CPG に目を通す–Minds > CQ Finder 1 )
–職場で1) Minds. CQ Finder. http://minds.jcqhc.or.jp/CQFinder/
2013/09/28 50近畿病院図書室協議会第 131 回研修会
Lアウトプット
• 実践する – CPG-WG– 日常業務で• 代行検索、レファレンス
– 自身の研究活動で
• 伝える– 職場研修(看護研究)の講師として– 勉強会で発表する
2013/09/28 51近畿病院図書室協議会第 131 回研修会
LCPG-WG の益と害
• 益…実務経験とスキル向上が同時に–豊富な受注実績(何度も経験できる)–リーダーによる検索指導• 文献検索講習上級編への優先参加• 作業に比例して JHIP のポイントが加算
• 害…とにかくハード–日常業務(生活?)との兼ね合い• 締切、再検索、事前準備のための勉強…
得られるものは大きいが…
2013/09/28 53近畿病院図書室協議会第 131 回研修会
ライブラリアンは
• 方法論の専門家である–エビデンスの収集と評価
• 3つの観点からスキル向上–疾患・ CQ ; 医学研究 ; 文献検索• シソーラスの理解と活用
• インプットとアウトプット–習得と実践を重ねる
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