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台頭する再生可能エネルギーが 支配する時代への備え Value from Flexibility

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  • 台頭する再生可能エネルギーが支配する時代への備え~ Value from Flexibility ~

  • 目次エグゼクティブサマリー

    5つの知見

    バッテリーと革新的な商業最適化モデルが新たな収益の源泉を生み出し、送配電系統の安定性と安全性を向上させる

    産業用及び家庭用需要に対し、再生可能エネルギー、自家発電からの供給が徐々に増加している

    新規参入企業が新たなアプローチでエネルギー需給を管理し、エネルギー市場に創造的破壊をもたらし始めた

    多くのプレーヤーがフレキシブルに管理するために多種多様な試験運用を行っている

    フレキシビリティ管理モデルは、地域特性を考慮した多様な姿へ進化を続けている

    0308

    既存事業への影響21補足資料:企業プロフィール27

    02

  • エグゼクティブサマリー

    需要ポイント

    再生可能エネルギーの需給が増えるにつれ送配電系統は不安定化する、という考えが一般化しています。その理由として、従来の電力の供給曲線が安定しているのに対し、風力や太陽光による自然エネルギーによる電力は気候条件などの影響を受けることが挙げられます。また、分散型発電の増加、特に屋上設置型太陽光発電が地域限定型の送配電系統の不安定性をさらに増長させると考えられています。太陽光発電による電力量の増減に伴い、分散型エネルギー源から送配電系統へ余剰電力を逆流させることが可能な、双方向のフローに対応するインフラの整備が必要となります。

    アクセンチュアは本レポートにおいて、再生可能エネルギーの不安定性を低減するための新たなアプローチが、電力システムをフレキシブルに管理することへの現状の期待に応え、さらに一層フレキシブルに管理できる可能性について考察します。

    フレキシビリティとは、電力の変動性と不安定性を管理して需要と供給をバランスさせる送配電系統の能力を指します。フレキシブルに管理するためには、「潜在的フレキシビリティ(タリフ)」、「ネットワークフレキシビリティ(スマートグリッド)」、「フレキシビリティサービス(蓄電、デマンドレスポンス、ジェネレーション)」の大きく3つの方法があります。本レポートでは、既存のフレキシビリティを活用して送配電系統にフレキシビリティサービスを提供するための、斬新なアプローチ事例を取り上げます。各アプローチは次の各ポイントにおけるエネルギー需給の不安定性に着目しています。

    Behind-the-Meter(需要家サイド)ストレージ、デマンドレスポンス(DR)、スマートチャージなどのツールを活用することで、消費者から送配電系統に投入される再生可能エネルギーの量を最小化します。

    配電ポイント電力のプーリングやバッテリーを利用して送配電系統へ到達する前に電力需要を制御します。具体的には、独立した、もしくは特定のエリアでの需給管理(マイクログリッド、コミュニティ規模電力の貯蔵、コミュニティブロックチェーン、バーチャル発電所)の活用により、送配電系統への依存を減らし、再生可能エネルギーとメイングリッドにおける双方向のフローを最小化します。

    送電ポイント電力供給を円滑に行うために、風力や太陽光などによる各発電所は送配電系統への接続やストレージの調達を個別に行い、送配電系統では発電フリートの集約や発電コミットメントのプールなどの管理を行います。

    供給ポイントスタンドアロン型バッテリー、風力や太陽光発電一体型バッテリー、太陽光発電を管理するスマートインバータ、V2G(車両からグリッドへの電力給供)、再生可能エネルギーから生成される水素エネルギーなど、様々なストレージソリューションを利用して送配電系統をバックアップします。

    03

  • 新たなエネルギー管理ソリューションにおける新しいビジネスモデルとアプローチを追求するプレーヤーは様々です。既存のUtility事業者だけでなく、電気自動車(EV)のバッテリーを電力ストレージとして提供するBMWやMercedes、Teslaなどの自動車メーカーも含まれます。さらに、グリッドスケールバッテリーに25億ポンドを投資し、送配電系統の管理を支援する石油商社や(1)、需要家と供給者の直接的な連携を目的としたアイランディングを推進Vitol、DER(分散型エネルギー資源)を集約するストレージなどのシェアードサービスモデルを提供する新興企業などの企業や団体が加わります。新しい多様なアプローチとビジネスモデルにより、電力の購入と売電のシステム、リソース管理、送配電系統のアンシラリーサービス、電力のローカルバックアップサービス、需要家と供給者の連携、付加サービスなど、新たな仕組みやサービスが創出され、電力市場には様々な収益の源泉が生み出されています。

    本レポートでは、市場における数百の事例の中から、アクセンチュアが厳選した35事例を検証し、エネルギー市場の事業構造とその潮流としてどのような変革が起きているかを明らかにしていきます。

    進化を続けるエネルギー市場における電力事業者は、市場全体の動きを注視する必要があります。複数の試験事業を実施してコンセプトやテクノロジーを検証し、「追求すべき収益の源泉は何か」「成長戦略のカギとなる投資は何か」を理解する必要があります。また、新たなアプローチには新しいケイパビリティが必要となります。自らの強みを磨くとともに、最適なビジネスパートナーを選び、協働することが重要になります。電力企業、T&D(発電/送配電)企業、電力小売事業者は、戦略の策定にあたって次の重要な成功要因を十分に考慮しなければなりません。

    バッテリーと革新的な商業向け最適化モデルが収益の源泉を生み出し、送配電系統の安定性と安全性を向上させる。

    産業用及び家庭用需要に対し、再生可能エネルギー、自家発電からの供給が徐々に増加している。

    新規参入企業が新たなアプローチでエネルギー需給を管理し、エネルギー市場に創造的破壊をもたらし始めた。

    多くの事業者がフレキシブルに管理するために多種多様な試験運用を行っている。

    フレキシビリティ管理モデルは、地域特性を考慮した多様な姿へ進化を続けている。

    市場全体の動向をトラッキングする

    選択した収益の源泉にフォーカスする

    空中戦になるような成果に結びつかない内容と、想定される成果を確認する試験運用とを区別することが重要

    消費者のトレンドと購買行動の動向に寄り添い耳を傾ける

    パートナーシップとアライアンスにより協働体制を整える

    アクセンチュアによる調査の結果、次の5つの重要な知見が明らかになりました。

    01020304

    05

    04

  • テクノロジーの進化に伴うストレージ価格の低下や最新のデジタルソリューションにより、厳密な電力需給管理の実現や需要家と供給者の連携の効率化など、いくつかの分野で再生可能エネルギーがグリッドパリティに近づきつつあります。これらの新しい動きは従来の送配電系統運用に大きな変革を求めます。例えば、従来の送電網における安定性の管理では化石燃料によるバックアップ体制が重視されていきましたが、新たな送配電系統ではバリューチェーン全体のフレキシブルな需給管理が重要になります。

    先述のフレキシビリティ調達における3つの手法に加え、本レポートでは、既存のフレキシビリティをもとに送配電系統にフレキシビリティサービスを提供するという斬新なアプローチを取り上げます(図1参照)。例えば、再生可能エネルギー発電ではデジタル技術を利用することにより複数の発電所からの電力の貯蔵と最適化すること、商用規模の太陽光や風力エネルギーを一元管理することを可能にします。このアプローチは、再生可能エネルギーの供給を安定させ、再生可能エネルギー発電装置によるアンシラリーサービスの提供を可能にします。地域の配電管理業者は消費者と協力して、Behind-the-Meter(需要家サイド)ストレージ、需要管理、集約された負荷の制御、発電所の個別管理手法を確立し、受電端における送配電系統の不安定性を制御できるようになります。

    はじめに

    図1: フレキシビリティ、コントロールポイント、進化するエネルギーシステム

    凡例

    不安定性を低減

    不安定性を増加

    不安定性の低下と増加の両方の影響をもたらす

    出典:アクセンチュアによる分析

    ストレージ+商用規模の太陽光 オフグリッドLNG

    �(液化天然ガス)ストレージ+商用規模の風力 近隣地域における

    ブロックチェーンの活用

    マイクログリッド

    コミュニティストレージ

    バッテリーのみ

    その他の商用ストレージ(水素、圧縮空気、熱、新水素エネルギーなど)

    Behind-the-Meter(需要家サイド)ストレージ、デマンドレスポンス(DR)、車両から送配電系統への電力供給(V2G)、分散型エネルギーの集約、屋根上(ルーフトップ)太陽光発電

    化石燃料によるバックアップ

    独立した、もしくは特定のエリアでの需給管理、および負荷集約

    商用規模の太陽光のみ

    商用規模の風力のみ

    商用規模の太陽光とスマートインバータ

    グリッドスケールストレージ

    再生可能エネルギー システムの最適化

    Behind-the-Meter(需要家サイド)

    ストレージ

    グリッドプラットフォーム

    05

  • 再生可能エネルギーの普及により化石燃料を必要としなくなることで、今後は蓄電用ストレージの価格相場がエネルギー市場の流れを大きく変えるトリガーとなると考えられています。異常気象などの影響による電力供給停止時のバックアップとして、蓄電池の需要は増加しています。現在、蓄電池で運用中または運用予定の電力は世界で約177GWあります。この大部分(96%)が揚水発電(2)によるもので、電気化学(バッテリー)ストレージは約1.7GWとストレージ全体の1%未満にすぎません。しかし、このセグメントは成長を続けており、2017年末には電気化学ストレージが全ストレージプロジェクトにおいて約55%(1,287件のうち705件)を占めています。その他の主要なストレージテクノロジーには、集光型太陽熱発電などの蓄熱(約3.3GW)、圧縮空気など電気機械(約1.6GW)があります。また、電気化学ストレージのセグメント内でも、リチウムイオンやレドックスフロー、ナトリウム硫黄(NaS)など、異なるタイプのバッテリー化学が研究・開発されています。

    バッテリーと他のストレージの大きな違いの一つに、蓄電可能な規模が挙げられます。運用中の蓄電施設や運用予定の蓄電プロジェクトのほとんどが10~30MWのバッテリー規模で、これまでは、カリフォルニア州サンディエゴにあるSDG&Eの30MWが世界最大の蓄電施設でした(3)。2017年にTeslaがその3倍規模となる100MWの蓄電施設を、Neoenが建設したオーストラリアの風力発電地帯に隣接する地域にわずか100日間ほどで建設し稼働を開始しています(4)が、100MW規模でも他のストレージ技術に比較すると大きくありません。例えば、圧縮空気や蓄熱は既に数百MW、現在はまだ設備は少ないものの水電解による水素エネルギーでは、電気を貯蔵可能な水素に変化させることにより、GW規模になると予想されます。

    現在のバッテリーに最適なアプリケーションには、(1)送配電系統の周波数調整、(2)需要予測精度の向上支援、(3)出力電力の周波数の安定性、(4)ピークカットORピークシフト、(5)クイックスタート、(6)エネルギー裁定取引(低価格時に電力を購入して蓄積し、高価格時に売却する)、(7)バックアップ容量の7点が求められます。こうしたアプリケーションへのバッテリー提供では、Behind-the-Meter(需要サイド)とFront-of-Meter(供給サイド)のストレージ、商用規模の統合型太陽光+ストレージ/風力+ストレージ、グリッドスケールバッテリーの各分野で、リチウムイオン電池が事実上の勝者となっています。しかし、最大級のリチウムイオン電池施設でも100MWであり、冬季や夏季の電力ピークを乗り切るためには十分ではありません。この需給ギャップを解消するために、他のストレージテクノロジーの研究が今後ますます進むと考えられます。

    図2: 運用中または運用予定のストレージ(揚水発電を除く)

    グローバルでのプロジェクト導入の推移

    凡例

    電気化学 水素ストレージ 蓄熱

    電気機械

    出典:米国エネルギー省グローバルエネルギーストレージデータベース

    0.0

    1978

    1982

    1987

    1991

    1996

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    Rate

    d po

    wer

    (GW

    )

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    battery storage facilities and projects under construction are in the 10 to 30 MW range. The largest operational battery storage was the San Diego Gas and Electric (SDG&E) 30 MW battery in San Diego County, California.( 3 ) Tesla has now increased the size of the largest battery threefold, building a 100 MW facility within a 100-day period next to a wind farm Neoen is building in Australia.( 4 ) However, even 100 MW is not that significant compared to other storage technologies. For example, compressed air and thermal storage are already in the hundreds of MW and, even though current units are small, electrolysis to hydrogen could be in the GW as it turns electricity into storable hydrogen.

    The applications that currently make the most sense for batteries are (1) grid frequency regulation, (2) supporting forecast accuracy improvement, (3) power quality, (4) peak shaving, (5) quick start, (6) energy arbitrage (buying electricity when prices are low; storing, and using when prices are high), and (7) back-up capacity. In providing these applications with batteries, lithium-ion batteries are emerging as the de-facto winner for behind-the-meter storage and in-front-of-meter, integrated utility-scale solar+storage or wind+storage, and grid-scale batteries. However, even the largest lithium-ion battery installation at 100 MW is not large enough to manage either cold winter peaks or hot summer peaks. This gap will continue to drive research in other storage technologies.

    補足記事:ストレージとバッテリー入門

    06

  • 例えば、電気分解により電気をガスに変化させる水素ストレージは大きく取り上げられる機会はまだ少ないものの、ドイツの電力ガスプラントでは、風力発電の余剰電力を再生可能な水素に変えて地域の天然ガスパイプラインに供給するための実証事業で2.4MWの出力を計測するなど(5)、複数の試験運用に取り組んでいます 。天然ガスやバイオマス、石炭に代わり季節のピーク需要に対応できる再生可能電力のストレージソリューションの明確なモデルはまだありません。季節のピーク需要を満たすバイオマスや水素をいち早く獲得しているメーカーもありますが、必要とされる再生可能資源としては規模が不足しています。世界的な再生可能エネルギー利用率100%への期待が、今後の蓄電ストレージテクノロジーを発展させる推進力となるでしょう。

    送配電系統の安定性の向上と短期的なバックアップストレージとしてのバッテリー利用という観点から見ると、需要と供給の両サイドで多様な運用モデルが登場しています。試験運用または実際に導入されているバッテリーや運用モデルには、太陽光発電や風力発電を一元化して送配電系統運用を支援する30MWバッテリー、地域規模の送配電系統を支援する小規模バッテリー(2~4MW)、集約システムの一部である家庭用バッテリー(10~20kWh)、自転車用バッテリー(約20kWh)などがあります。それぞれの運用モデルは、運用規模、使用目的や活用事例、必要なバッテリー管理システムやアプリケーションなどが異なっており単純に価格や価値を比較することは難しいのですが、図3では活用方法と採用バッテリーテクノロジーの組み合わせを比較しています。

    蓄電ストレージは徐々に大規模な再生可能エネルギーによる発電システムの一部となりつつあります。現時点では、送配電系統サービスや短期的なバックアップの収益の源泉としてはリチウムイオン電池が優勢です。季節のピーク需要を解決する再生可能エネルギーのための大規模なストレージソリューションは存在していません。バイオマスや水素以外でGW規模のストレージが必要な場合には、現状においてはこれまで同様、石油や天然ガス、石炭などの化石燃料が最も商用に適したバックアップです。化石燃料から再生可能エネルギーへの代替ニーズの今後の高まりが、電気からガスにシフトした大規模利用の潜在性を持つストレージソリューション技術の進化を促進します。

    出典:"Can a flow battery steal the throne from TEP’s 4.5-cent solar-plus-storage PPA?" ,GTM Research(2017年7月) https://www.greentechmedia.com 、"Yarmouth power plant installs giant battery in first project of its kind in New England,", PANAPRESS- Pan African News Agency(2016年12月19日)Factiva, Inc.著作権所有、"Vitol company, VPI Immingham, invests in UK energy storage," Vitolプレスリリース(2017年2月28日)http://www.vitol.com、 "Pacific Gas and Electric Company EPIC Final Report,”, PG&E Report(2016年9月)https://www.pge.com、"ComEd conducting Illinois’ first community energy storage pilot," ,ComEdプレスリリース(2017年3月)https://www.comed.com、"SolarCity and PG&E collaborate on distributed energy resource projects,”, SolarCityプレスリリース(2016年7月)http:// www.solarci-ty.com、"New York’s Con Ed is building a virtual power plant from Sunverge energy storage and SunPower PV,", GTM Research(2016年6月)https://www.greentechmedia.com、"Tesla and SolarCity build a solar-battery microgrid in American Samoa—a sign of things to come?" ,GTM Research(2016年11月)https://www.greentechmedia.com、"BMW i ChargeForward: PG&E’s electric vehicle smart charging pilot,", PG&E company report,(2017年10月)http://www.pgecurrents.com、 "Japan’s HEPCO, SEI kick o� 15-MW battery system verification," ,SeeNews(2016年1月),Factiva, Inc.著作権所有 ※アクセンチュア分析

    For example, hydrogen storage (electricity to gas via electrolysis) is negligible today, but there are pilots such as the Hydrogenics’ 2.4 MW power-to-gas plant in Germany that converts excess wind power to renewable hydrogen and feeds it into the local natural gas pipeline.( 5 ) It is still uncertain whether any storage solution for renewable electricity can really compete with fuels such as natural gas, biomass, or coal to supply seasonal peaks. Some markets have access to biomass or hydro to meet the seasonal demand peaks, but most lack these renewable resources at the scale needed. The aspiration for a 100 percent renewables world will continue to drive storage technology development.

    With respect to using batteries to improve grid reliability and for short-term back-up capacity, diverse

    and operating models being piloted and installed range from 30 MW batteries integrated with solar or wind to support the grid operator, to smaller batteries (2 to 4 MW) that can support distribution grids in local markets, to in-home batteries as part of aggregated systems (10 to 20 kWh), to vehicle batteries

    compares use-case and battery-technology combinations.

    図3: バッテリー運用モデルの比較

    活用事例 企業 テクノロジー 容量(kW/kWh) 公表費用と価格商用規模の太陽光発電とストレージを統合した給電負荷コントロールが可能な(dispatchable)PV

    Tucson Electric Power.Built by NextEra リチウムイオン

    100MW太陽光プラントに対し30MW/120MWh

    PPA 4.5セント/kWh太陽光+ストレージ.太陽光US$0.03/kWh(助成金を除くと$0.09)

    2MW/14MWhのフル導入費用は約$1,100万、または$783/kWh, $5,500/kw

    車載用バッテリー利用のため追加料金はなし、最大$900をBMWに支払う

    n/a

    14 kWhあたり$6,200、約$443/kWh

    家庭のシステム利用料金負担なし

    家庭のシステム利用料金負担なし

    n/a

    n/a

    n/a16.2MW

    2バッテリーを組み合わせた容量が50MW

    2MW/14MWhと4MW

    25kWh

    150世帯/- kWh(1世帯あたり)

    300世帯/合計1.8MW/1.8MWの太陽光で4MWh

    i3は22kWhバッテリー、New i3は33kWh

    15MWまたは60MWh

    14kWh

    リチウムイオン

    リチウムイオン

    リチウムイオン

    ナトリウム硫黄(NaS)

    リチウムイオン

    リチウムイオン

    リチウムイオン

    リチウムイオン

    フロー電池

    Vitol(イギリス)

    ComEd

    PG&E and SolarCity

    Tesla

    BMWとPG&E

    HEPCOと住友電気工業

    Con Edison, SunPowerand Sunverge energybattery system

    PG&E

    NextEra Energy, Maine(Wyman oil plant)

    送配電系統接合型のグリッドスケールバッテリー

    送配電系統接合型のグリッドスケールバッテリー

    送配電系統接合型バッテリーの市場参入と信頼性機能

    停電時バックアップとなる地域独立型蓄電設備

    Behind-the-Meter(需要家サイド)、集約DER(スマートインバータ、ルーフトップ太陽光発電用蓄電池)

    Behind-the-Meter(需要家サイド)、集約型DER(バッテリー付き太陽光発電システム)

    Behind-the-Meter(需要家サイド)、ルーフトップのソーラーパネルと組み合わせが可能な外壁(パワーウォール)の配置

    V2G(BMWのチャージマネジメントによる車両からグリッドへの電力供給)

    レドックスフローバッテリー

    補足記事:ストレージとバッテリー入門

    07

  • アクセンチュアの調査では、市場における数百の事例から35事例を厳選し、エネルギー市場で現在何が起きているのかを明らかにしました。米国で最も低コストで成功を収めた太陽光+ストレージのプロジェクトや、再生可能エネルギー発電所のポートフォリオをバランスさせ、ストレージを利用することなく送配電系統の付帯サービスを提供する公共事業者など、幅広い事例を取り上げています。また、地域集約に向けて特化した大規模なグリッドスケールストレージに投資した場合と、Front-of-Meter(供給サイド)におけるDERと需要の管理を強化した場合の対比や、需要を集約してオフグリッド供給に投資している様々な領域の組織について検証しています。アクセンチュアの分析結果では5つの知見が明らかになりました。

    送配電の負荷と電気特性を管理するための送配電事業者向けの 規 制 と ア ン シ ラリーサービスの確立。

    電力エネルギーを、余剰時や価格下落時に収集し、不足時や価格高騰時に売却または利用できる。

    再生可能エネルギーの不足時や障害などによる送配電サービスの停止時に、バックアップとして保管している電力エネルギーを配電する。

    デ ジ タ ル グ リ ッ ド(DG)にストレージを追加し、電力需要が低い時期の送配電への過剰な電力出力を防ぐ。

    送配電への過剰投資を回避する。

    5つの知見

    蓄電用ストレージは、次のような新たな収益の源泉を生み出す可能性を秘めています。

    送配電サービス: エネルギー裁定取引: バックアップ供給: 蓄電容量: 送配電の補強:

    01 バッテリーと革新的な商業向け最適化モデルが収益の源泉を生み出し、送配電系統の安定性と安全性を向上させる。

    08

  • 不安定性、価格決定方法、規制、送配電系統の制約、DERシェアについては地域や州ごとに状況が異なります。図4で引用した5つの例は、ストレージに関わる最適な商業化モデルの役割と潜在的な収益の源泉についての異なる事例を示しています。

    PG&EとCAISOの事例では、周波数調整が試験用バッテリーアプリケーションにおける最大の収益の源泉でした。NextEra Energyもまた、当初の重要領域として周波数調整を挙げています(6)。Vitolと他各社が参加したNational Grid(英国)の高速周波数応答サービスの入札もまた、周波数調整という市場価値に注目していました(7)。

    バッテリーは周波数調整に非常に適した性質を持ちます。発電機が数分間に1MWまたは2~10MWの速度で発電するのに対し、バッテリーは数秒間に1~10MWの発電が可能です。National Gridが入札を実施した高速周波数応答要件の対応速度にはバッテリーのこの特性が適しています(8)。カリフォルニア州のPG&Eの実証事業では主要な市場ダイナミクスの鍵となる要素が短期的な周波数調整にあるとされ、市場における大容量バッテリーのニーズが低いことが明らかになりました(9)。これは、将来的には最先端バッテリーシステム30分の稼働で、現在のシステムが7時間稼動するのと同等の周波数調整機能とその性能を提供できる可能性を示しています。

    ただし、市場から要求される性能要件は限られます。そのため、もしストレージがその要求レベルを満たすことができれば、運転予備力の豊富な発電所を維持するためコストを割く必要はなくなり、その価値は急速に縮小すると考えられます。現在市場価値が最も高いとされる周波数調整であっても、大量の高性能ストレージの登場により市場価値が下落する可能性があることを意味します。市場における商用バッテリーの物量コントロールは可能だったとしても、家庭用や車載用バッテリーなどを含めたストレージの総量を管理することは困難です。これらのバッテリーも集約して送配電サービスとして提供することが可能です。

    一つのシステムに再生可能エネルギーとストレージを組み込むことが、商用規模のBehind-the-Meter(需要家サイド)の市場展開におけるスタンダードになりつつあります。商用規模の地域発電では、発電装置側から送電網ネットワークに対して、周波数や電力、ピークカットORピークシフト、バックアップ、などのサービスが提供される可能性もあります。First SolarやNextEra Energyをはじめとする米国の太陽光発電デベロッパーの多くが、太陽光発電所開発の標準仕様としてストレージを提供しています(10)。

    図4: 経済性からみるバッテリーの比較

    商用バッテリー(2MW、4MW)の市場参入。最初のアセットとしてCAISO(California ISO)市場へ参入し、給電システムとサービスの提供を開始。

    ・CAISO 1日前市場・CAISOリアルタイム市場・周波数調整・スピニングリザーブ

    ・国内のエネルギーコストの削減・ピークバランス・電力特性

    ・1日前市場・リアルタイムエネルギー

    ・高速周波数応答(EFR)・2020年に向けたストレージ容量の市場オークション

    ・周波数調整・ピークカットORピークシフト、安定化、平準化

    カリフォルニア州

    カリフォルニア州

    ニューイングランド

    イギリス

    イギリスグリッドシェアプラットフォーム:太陽光発電と低価格電力を蓄積できるスマートバッテリーにより、蓄電ストレージの容量を確保してグリッド向けにサービスを提供する。スマートバッテリー保有者への支払いサービスも行う。

    充電管理:デマンドレスポンス(DR)時には、約100台のBMW i3車両の充電を遅延させ、BMWグループがEVバッテリーを再利用して製品開発した据置型の中古バッテリーを利用して、1時間あたり100kWのグリッドリソースを提供できる。

    カンブリアのクリエーターとケント州グラッセンベリーに建設された大規模なグリッドスケールバッテリーが送配電サービスを提供

    (2施設合計50MW)。

    メイン州に建設された大規模なグリッドスケールバッテリーにより、送配電サービスと冬季の電力バックアップを提供(16.2MW)。

    企業 役割 市場 収益の源泉

    PG&EとCAISO

    NextEra EnergyとISO New England

    PG&EとBMW

    VitolとNational Grid

    Moixa

    出典:“Pacific Gas and Electric Company EPIC Final Report,", PG&E Report(2016年9月)https://www.pge.com、 " "Yarmouth power plant installs giant battery in first project of its kind in New England," ,PANA-PRESS- Pan African News Agency(2016年12月19日)Factiva, Inc.著作権所有、 "Vitol company, VPI Immingham, invests in UK energy storage,",Vitolプレスリリース(2017年2月28日)http://www.vitol.com、"Falling costs, new revenues fuel Britain's big battery boom,", Reuters(2017年5月)Factiva, Inc.著作権所有、 "Distributed (home) energy storage and aggregated grid services,”,Moixa company presentation(2016年10月)http://www.energy.ox.ac.uk;、"BMW i ChargeForward: PG&E’s electric vehicle smart charging pilot",PG&E company report(2017年10月)http://www.pgecurrents.com ※アクセンチュア分析

    09

  • いくつかの市場では、送配電系統のサポート機能を持つバッテリーへの移行を助成する規制や市場構造の変化が進んでいます。例えば、英国National Gridにおける高速周波数応答サービスの入札では、事前認可を受けた64サイトのうち61サイトがバッテリーソリューションを提供していました。入札の結果、電力市場への新規参入企業であるLow CarbonとVitolがNational Gridにバッテリーを利用したサービスを提供することになりました。また、ウェールズ地方で最大の風力発電所にバッテリーを追加する予定のVattenfall、EDF Renewablesのコンバインドサイクル発電(CCGT)や、のバイオマス燃料プラントなどへバッテリーを提供しているケース(E.ON)も同様です(11)。カリフォルニア州では、NGR(Non-Generation Resource)市場が、バッテリーなどの制限付きエネルギーストレージ資源(LESRs)向けに創出されました。バッテリーは、NGR市場モデルでは卸電力市場に直接参入できます。充電率(SOC)が1日前入札のパラメータとなり、バッテリーが市場資産かつ流通資産であるという前提のもとで入札が行われます (12) 。バッテリーの直接参入認可という電力市場の規制改訂により、新たに市場参入しアグリゲーターとしての役割を果たす新興企業の増加が予想されます。

    重視すべき点として、現実的にはいずれの市場においても送配電サービスの市場規模はそれほど大きくなく、GWではなくMW単位の需要にすぎない点が挙げられます。フレキシブルな管理を目的とした多種多様の新興モデルが、裁定取引や送配電サービス、小規模バックアップアクティビティなどの同じ収益の源泉で競合することになります。しかし、再生可能エネルギーが発電ポートフォリオ上で大きな割合を占めるようになるにしたがって、系統の慣性力測定技術(synthetic inertia)のような新たなシステム規模のサービスを含むアンシラリーサービス需要の拡大が予想されます。風力ポートフォリオ(ストレージの有無を問わない)を持つ発電機は送配電サービスやフレキシビリティを最適化して提供することができます。送配電に依存しない独立した、もしくは特定のエリアでの需給管理が地域的な需要の集約と供給を創出して、コミュニティや工業団地、市街、その他あらゆる「アイランド」の需給バランスを制御し、送配電系統に要求する需要量を削減することで、結果的に送配電系統の不安定性が低下します。需要ポイントにおいては、Behind-the-Meterにおけるストレージと需要管理、管理充電によって送配電系統から調達する電力やインタラクションを削減し、地域における小規模バックアップを実現することで、送配電系統サービスやエネルギー裁定取引における低価格時の充電と高価格時の放電を可能にします。今後、予想されている通りの速さで輸送手段の電気化が進められた場合には、家庭用バッテリーよりも大きい車載用バッテリーでの送配電サービスの提供が開始されることになります。

    電力市場の構造は、送配電サービスや短期的なバックアップを提供しうるバッテリーに適応しつつあります。また、新規参入企業の増加とバッテリー容量の拡大が進むとともに、送配電サービスの収益の源泉における競争は激化すると考えられます。市場におけるサービスに必要なバックアップ容量の総量はMWかGW単位ですが、市場によっては、家庭用、車載用バッテリーを利用することで、送配電サービスのバックアップにおける必要量が提供可能となります。バッテリーは送配電の投資形態にも変化をもたらし、送配電系統の補強という選択肢を低価格で提供することができます。電力の需要または供給ポイントにおけるフレキシビリティ管理や送配電系統への依存を低減する取り組みは、複数の事業者が同じ収益の源泉で競合するためスタンドアロンバッテリーの存続に影響を与えることも考えられます。

    まとめ

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  • 現在の市場ではプロシューマ―(電力を消費するだけでなく生産する消費者)や自家発電に加え、大量の再生可能エネルギーの購入をコミットできる大企業を含む消費者グループの存在が大きくなってきています。米国では連邦政府が2017年7月にパリ協定から離脱したにもかかわらず、いくつかの大企業が再生可能エネルギーへのコミットメントの継続を表明しています(13)。図5は市場の規模と成長を示しています。

    新しいタイプの消費者の出現によって市場の変革が進んでいます。電力販売契約(PPA)による独立系発電事業者(IPP)からの再生可能エネルギー購入や分散型エネルギー(DER)の自社構築、また電力の貯蔵設備を自社に導入する、消費者が既存の発電事業者に取って替わる状況が進んでいます。例えば、Amazonでは米国内の配送センターへの大規模な屋根上太陽光システムの導入を実施しており、2017年末までに15カ所、41MWhの発電容量の導入を進めています。また、最近ではテキサス州に253MWの風力発電所の建設計画を発表しています(14)。

    02 産業用及び家庭用需要に対し、再生可能エネルギー、自家発電からの供給が徐々に増加している。

    図5: 企業による再生可能エネルギーの購入

    出典:Bloomberg New Energy Finance

    米国、欧州、メキシコにおける、企業による再生可能エネルギーの累積購入量-2017年3月

    凡例

    風力

    バイオマスおよび廃棄物

    太陽光

    0MW 500 1000 1500 2000 2500 3000

    Google*

    *Googleの総量には、チリの80MWプロジェクトを含む

    Amazon

    米国国防総省

    Microsoft

    Wal-Mart Stores

    Facebook

    Dow Chemical

    Equinix

    IKEA Group

    Kaiser Permanente

    米国一般調達局

    Switch SuperNAP

    Procter & Gamble

    Mars

    Apple

    11

  • エネルギー削減の目的で自家発電を行う一般世帯もプロシューマ―となります。地方の発電所は、既存電力事業者やスタートアップ企業により運用・サービス化されておりピーク時負荷を制御することで送配電ネットワークやシステムの負荷を低減します。イギリスのコーンウォール州の電力市場では、Centricaが、各家庭にマイクロCHP(小型熱電併給システム)を設置し、電力需要ピーク時にはマイクロCHPを利用させることで各家庭の光熱費削減を図るための実証事業を行いました(15)。需要ピーク時にはマイクロCHPが自身の発電量を自動的に増やして送配電系統の負荷を緩和します。また各家庭は売電による収益によって光熱費の削減を実現できます。

    自家発電電力の自主管理と売電による収益によってからの独立を求めて、これまでの概念とは異なる、現在は小規模ですが成長を続けている組織や団体も存在します。多くの場合、最優先の課題はエネルギーの安全性で、特に異常気象が多い地帯では深刻です。次に供給されるエネルギーミックスの管理とコスト削減が挙げられます。自家発電による電力の自主管理要望から生じたトレンドの一つが独立した、もしくは特定のエリアでの需給管理の増加です。発電所の個別管理の最も一般的な例として軍によるマイクログリッドの活用が挙げられます。ただし、送電系統から独立した発電所を個別に管理することの多様性は更に増加しています。

    サムセー島輸入石油や石炭に代わる電力源として10年以内の再生可能エネルギー利用率100%の実現と再生可能エネルギー資源の純輸出を目指して改革を続けているデンマークの島である。島内は風力発電で電力をまかない、バイオマスボイラーによる熱を利用している(16)。

    カリフォルニア大学サンディエゴ校世界最先端のマイクログリッドの一つを考案し、大学内で利用される電力の92%を自家発電している。その結果、全量供給を受ける場合と比較すると、年間で$800万の電力コスト削減を実現。マイクログリッドには廃水処理施設を備えた2.8MWの燃料電池と、30MWのCHP、2.3MWの太陽光発電設備が含まれる(17)。

    Titan LNGTitan LNGはISOタンク経由で北西ヨーロッパの産業顧客に対して、マイクロCHP施設への電力提供または直接利用を目的とするLNG(液化天然ガス)を供給している。またオフグリッドの産業顧客に向けて、地域限定型の小規模再ガス化装置の提供と管理も行っている(18)。

    Grid-Friends欧州のリサーチプロジェクトで、アムステルダムとボローニャの2つの地域限定型のでスマートグリッドプラットフォームをテストし、メカニズムの調整を行っている。地域コミュニティによるマイクログリッドの管理、燃料自給の最大化、シェアードストレージやフレキシブルアセットを活用した価値最大化を実践し、その実現方法の実証試験を行っている(19)。

    電力市場の変革を加速させる3つの主要グループを示しました。

    · 大企業は自社消費エネルギーの一部を自家発電でまかなう傾向にある。さらに、PPAや再生可能エネルギーの利用目標を公に示し、再生可能エネルギー市場を牽引する存在になりつつある。

    · 住宅プロシューマ―はエネルギーコストの削減やバックアップを必要としており、サプライヤーが提供する電力ソリューションにはおおむね満足している。

    · エネルギーコスト、安全性、使用する燃料を自分たちで選択し管理することを目指して、送配電系統から独立した自己充足の最大化に最大の関心を持つ消費者グループが存在しており成長傾向にある。

    まとめ

    12

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  • 新興企業は今後も継続して電力市場に創造的破壊をもたらし、従来のバリューチェーンを変革することが予測されます(図6参照)。セクション2で考察した自家発電の出現と再生可能エネルギー市場の傾向は、この創造的破壊を推進する原動力の一つです。新規参入企業はこのトレンドに対応し、新たに出現した住宅および産業消費者、プロシューマ―向けにカスタマイズした製品やサービスを開発しています。これらの製品やサービスには、消費者が使用するエネルギータイプのコントロールやエネルギーの購入元の選択を可能にするものや、自家発電と売電を実現するものなどがあります。

    これらのエネルギー市場への参入はデジタルテクノロジーの進化により実現化されています。データ共有における透明性を確保するだけでなく、中間業者を除外することでより迅速かつ効率的な取引が可能になります。その結果、消費者は電力コストを削減することができます。

    産業プロシューマ―の存在は、スタートアップや他市場のプレーヤーが大規模なエネルギーユーザーに代わり負荷管理を支援する、新たなビジネスチャンスを生み出します。多くの場合、より積極的に消費者の消費を管理することではなく、エネルギーコストの削減効果が目的となっています。

    03 新規参入企業が新たなアプローチでエネルギー需給を管理し、エネルギー市場に創造的破壊をもたらし始めた

    図6: 新規参入企業

    出典:各企業ウェブサイト、アクセンチュアによる分析

    タイプ 詳細 市場セグメント企業(例)

    Vandebron

    SolarChange

    LO3 EnergyとConsenSys

    Piclo

    Moixa

    消費者-再生可能エネルギー生産者

    ピアツーピアプラットフォーム

    住宅

    小規模および中規模ビジネス(SME)

    住宅

    住宅

    住宅

    Vandebronはオランダに本社を置くスタートアップ企業で、電力ブローカーとして、デジタル市場を介した消費者と地域の再生可能エネルギー生産者の直接取引を実現します。消費者は固定費を支払ってオンライン市場にアクセスします。中間業者を排除することで、再生可能エネルギー生産者側はエネルギー資源を平均10%ほど高い価格で売却することができます

    Moixaは家庭にスマートバッテリーや太陽光パネルなどと、バッテリーを組み合わせて提供しています。バッテリーはバーチャル発電 所に集 約され 、Moixaのプラットフォーム「Gridshare」で管 理されます。顧客はGridshareのスキームに参画することも可能です。住宅消費者のスマートバッテリーに蓄積された余剰電力のグリッドへの売却や、住宅消費者への支払いなどもGridshareで行われます。

    SolarChangはブロックチェーン技術を基盤とするネットワークプラットフォームで、太陽光エネルギーの利用状況を統括、モニタリングし、インセンティブを提示します。太陽光パネル所有者は「SolarCoin(ソーラーコイン)」と呼ばれる仮想通貨(暗号通貨)やピアツーピアの支払いネットワークを利用でき、太陽光エネルギーによる発電量に応じて獲得できるSolarCoinを、オンライン取引所を通じて製品やサービスの購入に充てることができます。SolarCoinは日常通貨に換金することも可能です。

    TransActive Gridは、LO3 EnergyとConsenSysとのジョイントベンチャーで、近隣の分散型エネルギー生産者と消費者をつなぎ、エネルギーの直接取引を実現しています。最も有名な事例として、ブルックリンのマイクログリッドプロジェクトがあります。TransActive Gridのマーケットはブロックチェーン技術で構築されており、屋根上太陽光パネルが生成したエネルギー電子の数をカウントしてブロックチェーンに書き込みます。ブロックチェーン技術はデータの改ざんが事実上不可能なため、TransActive Gridのシステムには中央集権的なグリッドコントローラーは存在しません。また、ブロックチェーンによる取引では請求損失やインフラストラクチャの損失、会計上の損失などは生じません。

    PicloはOpen Utility(ロンドンに本社を置くソフトウェア開発スタートアップ企業)が開始したオンラインプラットフォームで、地域の再生可能エネルギー事業者とのピアツーピア取引のビジネス基盤となります。企業と事業者がPicloのサービスを提供する電力小売事業者と契約すると、小売事業者はPicloが管理するエネルギーのマッチングサーバーにメーター情報を送ります。Picloのアカウントダッシュボードはマッチングされたエネルギー情報を表示し、企業側はエネルギーミックスをカスタマイズできるようになります。Picloは小売事業者を排除せず、また低価格によるサービス提供を行いません。その代わり、ビジネスエネルギーのサプライチェーン全体を可視化しコントロールを可能にしています。

    13

  • Endeco Technologiesはこのトレンドに対応して新興してきたアグリゲーター企業で、大規模なエネルギーユーザーと送配電事業者との中間的な役割で、自社のテクノロジープラットフォームを利用したバーチャル発電所を提供しています(20)。

    住宅プロシューマ―もまた、新興企業に対してビジネスチャンスを生み出します。例えば、Moixaはスマートストレージやスマート太陽光+ストレージ製品における主要な価値命題として、高価格時の送配電系統の需要の削減による料金の引き下げを掲げています。同社のプロジェクトの一つである、Project ERIC(Energy Resources for Integrated Communities)(21)において、Moixaは82世帯と1つの小学校に2kWhのスマートバッテリーを、地域のコミュニティセンターに8kWhのバッテリースタックを設置しました。これらのバッテリーは家屋に取り付けられた200kWp(キロワットピーク)の太陽光発電(PV)パネルや、学校に追加設置された100kWpの太陽光電力装置に接続され、バーチャルなスマートエネルギーの独立した地域送配電系統を形成しています。

    モノの電化も市場に新たな参入者を呼び込みます。特に輸送機関のEV化の推進は、最大の創造的破壊をもたらすものと想定されています。過去数年間で電気自動車(EV)技術は劇的な成長を遂げ、政府機関やOEMによる強力なコミットメントを背景に、現在もその勢いはとどまる気配がありません。BNEFの予測によると、EVは2040年までに欧州で13%、米国で12%の電力需要を占めるようになると考えられています(22)。これは既存の電力バリューチェーンに多大な影響をもたらします。DNO(配電事業者)はEVの充電が自社ネットワークに与える負荷への対処という課題を抱える一方で、需給バランスを支援する数千もの分散型ストレージユニットの提供という潜在的なビジネスチャンスを手にすることになります。電気自動車にエネルギー管理システムがバンドルされるようになると、電力供給事業者はOEMがより製品サイドで展開されるという脅威に直面することになります。具体例として、BMWがオランダとドイツで実施したデジタル充電サービスの実証事業が挙げられます(23)。このサービスでは、電気自動車が電力の価格相場を把握し、価格が下がったタイミングで自動的かつ自発的に充電できるようになります。また、サービスと顧客が契約している屋根上太陽光発電を組み合わせることで、天気予報を基にした発電予測や最適な充電計画を提供することも可能です。従来はエネルギー関連企業の専門領域だったエネルギー管理サービスの市場に、自動車メーカーが付加価値のあるサービスとともに参入し始めているのです。

    エネルギー生産

    収益の源泉

    図7: 事業者がターゲットとするビジネスチャンスの概要

    出典:アクセンチュアによる分析

    プレーヤーのランドスケープ

    発電事業者

    小売事業者

    送電および配電企業

    独立系発電事業者(IPP)

    石油会社

    トレーダー

    スタートアップ企業

    自動車メーカー

    コミュニティ

    C&I(商業・産業)顧客/プロシューマ―

    住宅顧客/プロシューマ―

    多対多

    ・ 電力がもたらす利益・ 新規PPA(電力購入契約)顧客・ アンバランスなコストの削減

    C&I(商業・産業)顧客/プロシューマー・ 電力および付加サービスがも

    たらす利益・ 追加生産およびストレージア

    セットの利用

    プラットフォーム/P2P(ピアツーピア)・ 購入者と売却者をつなぐこと

    による利益・ 追加生産およびストレージア

    セットの利用・付加サービスがもたらす利益

    送配電サービス、ストレージ、 フレキシビリティ・ 送配電系統の周波数調整・ 電力特性・ ピークカットORピークシフト・ クイックスタート・ エネルギー裁定取引・ 短周期(分または時間)のバック

    アップ容量

    住宅顧客/プロシューマ―・ 電力および付加サービスがもた

    らす利益・ 追加生産およびストレージアセ

    ットの利用

    送配電系統運用(スマートグリッドおよびストレージを含む)・ 管理アセットへのリターン・ 送配電系統整備への投資の回避・ 強化―電力需要が低い期間のダ

    ンピングの回避

    14

  • 電力事業者は、従来のバリューチェーン全体が崩壊する状況に直面し、新たな対応方法を模索しています。その結果、新しいパートナーシップと投資による製品やサービスが生まれています。例えば、E.ONはGoogleと提携して「Sunroof」と呼ばれる、建築物の潜在的な太陽光発電容量を算出する施設をドイツに展開しています。サービスのプラットフォームにはGoogle Earth/Google Mapと機械学習を活用し、住宅の潜在的な太陽光発電容量をより正確に算出して太陽光発電システムの導入計画を作成しています(24)。また、ENGIEは少し異なるアプローチをとっており、ベンチャーキャピタルファンドからENGIE New Venturesを経由して、新たなエネルギースタートアップ企業に6,500万ユーロ以上の投資を行っています(25)。この投資により、エネルギー移行を牽引するという同社のビジョンを強化するとともに、スタートアップ企業が行った新興テクノロジーやビジネスモデルの試験運用による知見を獲得や提携ビジネスを展開することもできるようになります。アイルランドのESBもNovusmodusという類似したベンチャーキャピタルを持っており、Endeco Technologiesなど様々なエネルギースタートアップ企業に投資しています(26)。

    新規参入者と既存事業者の双方が、再生可能エネルギー発電による利益から広範なシステムサービスまで、一連の新たな市場を獲得するため、様々な事業や提携モデルを模索しています(図7参照)。それらの相対的な成功は、未来の事業者の展望を形作り、既存の電力バリューチェーンに大きなインパクトをもたらすでしょう。

    デジタル化により登場したスタートアップ企業が電力市場に参入して、成長するプロシューマ―市場から価値を引き出しながら、より付加価値のあるエネルギー管理サービスを提供しています。消費電力における再生可能エネルギーの割合を増加させることに意欲的な産業プロシューマ―の存在が既存電力事業者の市場シェアを縮小しています。また、輸送機関の電化により、自動車メーカーが電力市場における小売と送配電サービスの提供を開始しています。こうしたプレーヤーの出現が、既存の電力市場を崩壊させつつあります。対して、電力事業者は新たな商品やサービスを投入するとともに新たなパートナーシップや投資を行うことでビジネスモデルの変革を試みています。変革の過程では投資先の選定に注意を払い、真に成長する可能性がある市場とまだテストが必要な市場を判別する必要があります。

    まとめ

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  • 従来の集約型電力は、発電、T&D(発電および送配電)、小売/消費者の大きく3つの事業に分けることができ、3つの事業すべてがフレキシビリティソリューションを追求しています。一般的に、既存電力事業者も新規参入企業も一つのモデルに集中するのではなく、複数のモデルに投資して試験運用を実施しています。例えば、TeslaとSolarCityも商用発電やマイクログリッド、Behind-the-Meter(需要家サイド)などの事業に積極的です。図8は事業者による複数モデルへの対応と、モデル間の境界が曖昧になりつつある状況を示しています。

    Con EdisonはBehind-the-Meter(需要家サイド)モデルに積極的で、家庭需要をバッテリー管理から切り離した新たなコンセプト「Ahead-of-Meter Storage(メーターの前のストレージ)」(27)の試験運用を実施し、商用規模の太陽光および風力発電に投資しています。TeslaとSolarCityは家庭向けに太陽光発電とバッテリーを組み合わせた蓄電装置「Powerwall」を提供し、マイクログリッドを構築しています(28)。また、商用規模の太陽光発電とストレージソリューションの開発にも着手しています。ScottishPowerは英国最大の再生可能エネルギー発電事業者ですが、Moixaと提携し、50台の家庭用スマートバッテリーを設置して送配電系統の接続を行っています(29)。米国最大の風力発電事業者のNextEra Energyは、Behind-the-Meter(需要家サイド)(カリフォルニア州)やスタンドアロンバッテリー(メイン州)、商用規模の太陽光発電とストレージ(アリゾナ州ツーソン)などのバッテリーエネルギーストレージシステムの供給に莫大な投資を行っています。また、世界最大の風力発電事業者であるEDF Energy Renewablesは、英国のノッティンガムシャーにある自社のコンバインドサイクル発電所における49MWのバッテリー貯蔵施設の契約の獲得に成功(30)し、Behind-the-Meter(需要家サイド)ストレージを提供しています(31)。

    電力市場の変革を加速させる3つの主要グループを示しました。

    · 大企業は自社消費エネルギーの一部を自家発電でまかなう傾向にある。さらに、PPAや再生可能エネルギーの利用目標を公に示し、再生可能エネルギー市場を牽引する存在になりつつある。

    · 住宅プロシューマ―はエネルギーコストの削減やバックアップを必要としており、サプライヤーが提供する電力ソリューションにはおおむね満足している。

    · エネルギーコスト、安全性、使用する燃料を自分たちで選択し管理することを目指して、送配電系統から独立した自己充足の最大化に最大の関心を持つ消費者グループが存在しており成長傾向にある。

    図8: 複数モデルにおける事業者の比較

    04 多くの事業者がフレキシブルに管理するために多種多様な試験運用を行っている

    CON EDISON

    TESLA/SOLARCITY

    SCOTTISHPOWER

    VATTENFALL

    EDF ENERGY RENEWABLES

    PG&E

    企業 Behind-the-Meter(需要家サイド)

    集約された負荷の制御、または発電所の個別管理

    グリッドスケールストレージ

    商用規模の再生可能エネルギー発電+ストレージ

    商用規模の再生可能エネルギー発電

    出典:"Con Ed chases energy storage value, ", Energy Storage Report(2017年4月)、 Con Edison Development, https://coneddev.com、 "Island microgrids represent 36% of Tesla’s total storage capacity,", GTM Research(2017年5月)https://www.greentechmedia.com、"Tesla wins giant battery contract in Australia, has 100-day deadline”,Reuters News(2017年7月)Factiva, Inc.著作権所有、"Moixa's brief-case sized smart batteries in Big-6 utility pilots,”, RealWire(2016年6月)Factiva, Inc.著作権所有※企業ウェブサイト、アクセンチュアによる分析

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  • 一見しただけでは、あまりに多くの事業が存在するため、構想段階の試験運用と明確な戦略の実装を区別することは困難です。様々な市場が相対的に未成熟であることを理解したうえで、既存企業や新規参入企業は実験と学習を繰り返しながら革新を続けています。電力事業者の多くが複数の事業に投資し、大きな賭けに出る前に成長分野のテクノロジーやサービスを見極めようとしています。現時点においても、エネルギーシステムのフレームワークは大きく変化しており、今後も進化が続くと予想されます。

    レガシーとなる既存の設備やDER規模、エネルギーの安全性に関する課題や地域プロシューマ―の動向や規模などによって投資と活動のバランスは異なるため、市場ごとに状況は変わってきます。様々な変動要因が存在する中で、すべてに共通する2つのテーマがあることがわかりました。

    商用規模の再生可能エネルギーとストレージ大規模な発電所は、ストレージと再生可能エネルギーを組み合わせることで利益を最大化し、送配電系統のフレキシビリティを向上することが可能です。風力発電所に隣接した商用ストレージや太陽光発電+ストレージソリューションなどは一般的なモデルになりつつあります。

    小規模バッテリー集約型家庭用スマートバッテリーや複数サイトで共有される商用バッテリー、あるいはV2G(車両から送配電系統への電力供給)で利用される車載用バッテリーなど、小規模バッテリーは送配電系統のフレキシビリティの向上に重要な役割を果たすと考えられます。

    風力や太陽光発電事業者は、デジタルテクノロジーにより最適化された発電所ごとの発電容量や太陽光発電向けスマートインバータと大規模ストレージを組み合わせることで、商用規模の再生可能エネルギーの効率的な送配電を実現しようと模索しています。一方、需要家サイドの動向は、住宅向けや産業向けなど複数の電力需要プロファイルの存在や、EVの成長や集約する場所や手法の多様性などの影響で予測が難しい状況です。

    まとめ

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  • エネルギーミックスによる変動性と変化は拡大しており、すべての市場を横断できるシステムサービスの価値と重要性が高まっています。地域ごとに異なる市場の特性は、市場ごとに固有の状況を抱えており変化のスピードも異なるということを表しています。市場に多様性を生む要因として次の要素が挙げられます:レガシーインフラストラクチャ、ピーク需要(現状/予測)、商用規模の再生可能エネルギー設備容量(現状/予測)、DERの割合(現状/予測)、各リソースの性質、スマートグリッドの目指すべき姿、送配電系統投資計画、規制構造など。図9では世界各地の革新的な事例を紹介しています。

    イギリス - バッテリー・最小限のコストで革新的なエネルギーシステムの創出を目指しています。

    ・2025年までに石炭火力発電所を閉鎖するという政策に伴い、代替エネルギーとなる再生可能エネルギーや分散型エネルギーの可能性が拡大しています。

    ・電力ストレージ容量の拡大予測では、2020年までに現在の4GWから約6GWまで増え、変化を続ける電力市場への強力なサポートとなると見られています。

    ドイツ - 多様なストレージポートフォリオ・多様なストレージポートフォリオが最も構築されている地域の一つで、バッテリーをはるかに上回る大規模な

    ストレージテクノロジーに投資を行っています。

    ・揚水発電を除く発電が1GW以上を占めており、他テクノロジーでも48のプロジェクトが進められています。

    ・主要テクノロジーは圧縮空気とフライホイールですが、再生可能エネルギーによる水素発電の5プロジェクトを含めて、バッテリーや水素貯蔵、蓄熱を対象とする合計44プロジェクトが存在しています。

    カリフォルニア州 - DER向け市場ルール・分散型エネルギー資源の供給事業者は、500kWから10MWの集約された負荷の制御を行い、電力市場におけ

    る1日前市場や毎時の取引、アンシラリーサービス市場の要件を満たす必要があります。

    ・エネルギーストレージに関する決定によると、投資家は電力事業者に対して2020年までに1.325GWの電力の貯蔵を調達するよう求める必要があります。

    ・First Solar、CAISO、NRELは、モハーヴェ砂漠で300MWの太陽光発電所による送配電系統の周波数調整、電圧と無効電力制御、送配電系統調整サービスなどの試験を行っています。

    アリゾナ州 - 送配電系統の安定化オプション・APSの屋根上太陽光発電を住宅に設置する消費者向けインセンティブプログラム「太陽光発電パートナープロ

    グラム(Solar Partner Program)」により、1,500世帯(約10MW)を超える契約を獲得しています。またAPSは高度インバータを導入して遠隔地からの屋根上太陽光発電制御を実現し、消費者のリアルタイムの電力需要に応じた電力の増減コントロールを可能にしています。

    ・アリゾナ州は、Tucson Electric Power(TEP)の100MW太陽光発電所と$0.03/kWh(30MWストレージで$0.045)という低価格でPPA(電力購入契約)を締結したことで、ネットメータリングの算出方法を変更し、屋根上太陽光発電へのインセンティブを削減しました。

    オーストラリア - DERとバッテリーの拡大・Energy Networks Australiaは、2050年までに1,000万の世帯と小規模顧客が太陽光発電やストレージ、ス

    マートホーム、EVなどの分散型エネルギーの発電資産を保有するだろうと予測しています。

    ・消費者からエネルギー資源を直接購入するネットワークサービスビジネスと消費者インフラへの投資という2つのビジネスチャンスが生まれることが考えられます。

    ・Teslaは、オーストラリアのNeoen風力発電所に隣接して世界最大のバッテリーストレージ(100MW)を建設しサービスを稼働しています。

    図9: 各市場における革新的新興ソリューション

    05 フレキシビリティ管理モデルは、地域特性を考慮した多様な姿へと進化を続けている

    引用元:企業ウェブサイト;”Arizona Public Service is back on the grid-scale battery scene,”, GTM Research(2017年5月)https://www.greentechmedia.com、“Arizona vote puts an end to net metering for solar customers,”, GTM Research、 (2016年12月) https://www.greentechmedia.com、 “This upgrade to renewable portfolio standards could make them a lot more e�ective at grid balancing,” ,GTM Research(2016年12月) https://www.greentechmedia.com  ※アクセンチュアによる分析

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  • イギリスでは2025年までの石炭火力発電所の完全撤廃を目指しており、政府が低炭素エネルギーの使用を促進するためのインセンティブを導入しています。これにより、2025年までの再生可能エネルギーの発電容量は110GW、分散型エネルギー発電の貯蔵容量は93GWに拡大すると算出しています。また、電気ストレージの容量は2020年には現在の4GWから約6GWに増加すると見られており、電力市場の変革を後押しすることになるでしょう(32)。こうしたトレンドにより、アンシラリーサービスの価値が高まり、送配電系統の安定化を担うNational Gridは市場構造の再建を迫られることになります(33)。 National Gridは「Future of Balancing Services」レポートにおいて、革新志向のエネルギーシステムを可能な限り低価格で提供することを示しました(34)。電力市場の変革によって、大多数のエネルギー契約が二者間契約から入札サービスへと移行し、送配電系統の安定化サービス事業に参入する企業の増加と新たな技術の登場が予想されます。

    もう一つドイツの事例を見てみましょう。7.6GWのストレージと76のプロジェクトが存在し、最も多様なストレージポートフォリオを有するドイツは、バッテリーが実現可能な容量をはるかに上回る大規模なストレージテクノロジーに投資しています(35)。ドイツでは揚水発電がストレージの約86%を占めていますが、48プロジェクトで、他のテクノロジーにより1GWを超える電力が生成されています。この1GWのうち半分以上を占めるのが、RWEの「Adele(36)」 と E.ONの「 Kratwerk Huntof(37)」の2プロジェクトの圧縮空気による発電です。また大規模なフライホイールプロジェクトも存在します(38)。他にも電気機械ストレージ関連の3プロジェクト、再生可能エネルギーによる水素生成5プロジェクトを含む44のバッテリー、水素貯蔵および蓄熱関連プロジェクトが存在しています(39)。

    カリフォルニア州では、DERがCAISOとの競争に勝ち、連邦政府から新たな分散型資源提供価格の承認を獲得しています。これにより、DER供給事業者は、500kWから10MWの集約された負荷の制御を行い、1日前市場や毎時の取引、アンシラリーサービス市場の要件を満たすことが可能になりました(40)。また、直接送配電系統に接続してシステムサービスをサポートできるストレージも登場しています。カリフォルニア州ではエネルギーストレージに関する決定により、投資家は電力事業者に対して、2020年までに1.325GWのストレージを調達するよう要請しており、PG&Eは2020年までに580MWの調達要請を受けています(41)。

    設置型太陽光発電で3.3GWの容量を有するアリゾナ州は(43)、送配電系統の安全性向上のために、複数の選択肢を検証しています。APSの屋根上太陽光発電を住宅に設置する消費者向けインセンティブプログラム「太陽光発電パートナープログラム(Solar Partner Program)」では、1,500世帯(約10MW)を超える契約を獲得しました。またAPSは高度インバータを導入して遠隔地からの屋根上太陽光発電制御を実現し、消費者のリアルタイムの電力需要に応じた電力の増減コントロールを可能にしています。さらにAPSはAESバッテリー(2MW)2台を対象地域の近隣に配備し電圧コントロールも行っています(44)。アリゾナ州は米国内の低価格太陽光PPAの拠点であり、Tucson Electric Power(TEP)の100MW太陽光発電所と$0.03/kWh(30MWストレージで$0.045)のPPA(電力購入契約)を締結しています。低価格の商用規模太陽光発電を利用できる利点から、アリゾナ州はネットメータリングの算定方法を変更し、屋根上太陽光発電へのインセンティブを削減しています(45)。さらに、アリゾナ州は電力事業者に対して、バッテリーストレージ+再生可能エネルギー資源によってピーク電力需要をまかなうよう要請するクリーンピーク基準(CPS)の導入を提案するなど革新的な取り組みを行っています(46)。

    しかし、カリフォルニア州で最も興味深い取り組みはバッテリーを使用せずに送配電系統の安定性を改善するための太陽光発電の能力をテストするプロジェクトでしょう。First Solar、CAISO、 NRELは、モハーヴェ砂漠で300MWの太陽光発電所による送配電系統の周波数調整や電圧と無効電力制御、グリッドバランスサービスなどの試験とサービス化検証を実施しています(42)。

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  • オーストラリアでは、Energy Networks Australiaが2050年までに1,000万の世帯と小規模顧客が太陽光発電やストレージ、スマートホーム、EVなどの分散型エネルギーの発電資産を保有するだろうと予測しています。これにより、消費者からエネルギー資源を直接購入するネットワークサービスビジネスと消費者インフラへの投資という2つのビジネスチャンスの創出が見込まれており、2050年までには、電力ネットワークのインフラへの160億オーストラリアドルの投資を抑えて、グリッド支援サービス市場に年間25億オーストラリアドルの利益をもたらす可能性があります(47)。このビジネスチャンスを掴むため、Australian Renewable Energy Agency (ARENA)は新興スタートアップ企業のGreenSyncに45万オーストラリアドルを投資し、分散型エネルギー取引(deX)のプロジェクトを実施しています。このプロジェクトは、消費者や事業者が所有しているPVやバッテリーシステムから得られる価値を最適化して送配電系統に提供することを目的としています(48)。また、オーストラリアは、現在送配電サービスを提供する世界最大のリチウムイオン電池の拠点でもあります(49)。

    すべての市場における発展を包括的にまとめるのは不可能ですが、取り上げた事例は、各地域の特性に応じて形成される新しいモデルの多様性を示しています。共通点を一つ挙げるとしたら、ソリューション単体では市場のフレキシビリティ要件を満たすことはできず、複数のソリューションをパッチワークのようにつなぎ合わせて構築されたモデルが投入されているという点です。業界を横断して市場に参入するプレーヤーは、個々の市場の要件を正しく理解し対応していく必要があります。また、世界中で試験運用またはビジネス展開されている様々なソリューションを、グローバルな視野で捉えて検証することも重要です。

    まとめ

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  • 凡例

    不安定性を低下

    不安定性を増加

    不安定性の低下と増加の両方の影響をもたらす

    図10: 選定事業者による活動例

    出典:アクセンチュアによる分析

    既存事業者への影響

    • UCSD • Grid-Friends• Samsø Island

    • ComEd Community Storage

    • Titan LNG

    • LO3

    • Tesla/Neoen• Vattenfall • NextEra Energy

    • Tuscon Electric/NextEra Energy• First Solar • NextEra Energy

    • Hydrogenics • E.ON • RWE • Max Boegl

    Wind AG• ENGIE

    • Vitol • NextEra Energy • SDG&E • Hepco and Sumitomo • PG&E

    • EDF

    • First Solar/NREL

    • ScottishPower Renewables

    • Arizona Public Service• PG&E • Con Edison • BMW• Tesla/SolarCity • Mercedes • EDF Energy Renewables

    プラットフォーム事業者

    • Google and E.ON • Endeco/ESB

    ストレージ+商用規模の太陽光

    ストレージ+ 商用規模の風力

    近隣地域におけるブロックチェーンの活用

    マイクログリッド

    コミュニティストレージ

    Behind-the-Meter(需要家サイド)ストレージ、デマンドレスポンス(DR)、車両からグリッドへの電力供給(V2G)、集約型DER、ルーフトップ太陽光発電

    バッテリーのみ

    その他の商用ストレージ(水素、圧縮空気、熱、

    新水素エネルギーなど)

    化石燃料によるバックアップ

    商用規模の太陽光のみ

    商用規模の風力のみ

    商用規模の太陽光とスマートインバータ

    独立した、もしくは 特定のエリアでの 需給管理、および負荷集約

    グリッドスケール ストレージ

    再生可能エネルギー システムの最適化

    Behind-the-Meter(需要家サイド)

    ストレージ

    グリッドプラットフォーム

    市場の動きはとても早く、バリューチェーンの全領域に多種多様なモデルとプレーヤーが存在して、各市場には数えきれないほどのイノベーションが出現しています。図10はこのレポートで取り上げた35のプレーヤーおよび事例の全体像を示したものです。

    市場の特性は、構造と変化のスピードに影響します。テクノロジーや運用モデルの進化は継続する一方で、市場に参入した新興企業は市場の変化を加速させ、現行のバリューチェーンに創造的破壊をもたらします。性質の異なる市場から学ぶことに価値はありません。電力事業者は電力市場にコミットして学び続けるための革新的な手法を探していかねばなりません。

    オフグリッドLNG(液化天然ガス)

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  • イギリス - バッテリー・最小限のコストで革新的なエネルギーシステムの創出を目指しています。

    ・2025年までに石炭火力発電所を閉鎖するという政策に伴い、代替エネルギーとなる再生可能エネルギーや分散型エネルギーの可能性が拡大しています。

    ・電力ストレージ容量の拡大予測では、2020年までに現在の4GWから約6GWまで増え、変化を続ける電力市場への強力なサポートとなると見られています。

    ドイツ - 多様なストレージポートフォリオ・多様なストレージポートフォリオが最も構築されている地域の一つで、バッテリーをはるかに上回る大規模な

    ストレージテクノロジーに投資を行っています。

    ・揚水発電を除く発電が1GW以上を占めており、他テクノロジーでも48のプロジェクトが進められています。

    ・主要テクノロジーは圧縮空気とフライホイールですが、再生可能エネルギーによる水素発電の5プロジェクトを含めて、バッテリーや水素貯蔵、蓄熱を対象とする合計44プロジェクトが存在しています。

    カリフォルニア州 - DER向け市場ルール・分散型エネルギー資源の供給事業者は、500kWから10MWの集約された負荷の制御を行い、電力市場におけ

    る1日前市場や毎時の取引、アンシラリーサービス市場の要件を満たす必要があります。

    ・エネルギーストレージに関する決定によると、投資家は電力事業者に対して2020年までに1.325GWの電力の貯蔵を調達するよう求める必要があります。

    ・First Solar、CAISO、NRELは、モハーヴェ砂漠で300MWの太陽光発電所による送配電系統の周波数調整、電圧と無効電力制御、送配電系統調整サービスなどの試験を行っています。

    アリゾナ州 - 送配電系統の安定化オプション・APSの屋根上太陽光発電を住宅に設置する消費者向けインセンティブプログラム「太陽光発電パートナープロ

    グラム(Solar Partner Program)」により、1,500世帯(約10MW)を超える契約を獲得しています。またAPSは高度インバータを導入して遠隔地からの屋根上太陽光発電制御を実現し、消費者のリアルタイムの電力需要に応じた電力の増減コントロールを可能にしています。

    ・アリゾナ州は、Tucson Electric Power(TEP)の100MW太陽光発電所と$0.03/kWh(30MWストレージで$0.045)という低価格でPPA(電力購入契約)を締結したことで、ネットメータリングの算出方法を変更し、屋根上太陽光発電へのインセンティブを削減しました。

    オーストラリア - DERとバッテリーの拡大・Energy Networks Australiaは、2050年までに1,000万の世帯と小規模顧客が太陽光発電やストレージ、ス

    マートホーム、EVなどの分散型エネルギーの発電資産を保有するだろうと予測しています。

    ・消費者からエネルギー資源を直接購入するネットワークサービスビジネスと消費者インフラへの投資という2つのビジネスチャンスが生まれることが考えられます。

    ・Teslaは、オーストラリアのNeoen風力発電所に隣接して世界最大のバッテリーストレージ(100MW)を建設しサービスを稼働しています。

    すべてのプレーヤーが考慮する必要がある重要な要素はそれほど多くはありません。迅速な変化を前提にして市場全体の動きをトラッキングすること。実施する試験運用は目的とする価値プールで実現可能なものであること。大きな賭けとなる投資と試験運用によるニーズを明確に区別すること。市場変化の最大の要因である消費者に寄り添うこと。そして最後が、パートナーシップやアライアンスによって協働体制を整えることが重要になります。どのような企業であっても、新たな市場において単独で成功する可能性はゼロに近いでしょう。

    ・フレキシビリティのポイントはどこか?・プレーヤーは誰で、プレーヤー同士の相互作用はどれくらいあるか?・影響するテクノロジー、エンジニアリング、デジタルは何か?進化のスピード

    はどれくらいか?・他者のビジネスチャンスを封じて自身が成長できる領域はどこか?

    ・どのビジネスモデルがどの市場で成長しているか?・ビジネスチャンスを目的にするか、またその理由は何か?・ポートフォリオ、ケイパビリティ、投資が一致しているか?

    ・戦略の実現に必要な投資は何か、どの試験運用(コンセプト、テクノロジー、運用モデル)が拡張性の高い事業モデルとなり得るか、ということを正しく判断できているか?

    ・大きな投資と試験運用における目的やリソース(工数、ターゲット、人材の配置など)を明確に区別して実行しているか?

    ・市場の変化のスピードは、一般世帯の消費者と産業消費者が望む変化のスピードに影響される。

    ・消費者の生活においてデジタル化による変化や破壊がもたらされた領域の運用モデルを模倣する。

    ・プロシューマ―は多くの再生可能エネルギーを要求する。・コミュニティによってコントロールする。

    ・市場の動きは早く、多くの新規参入企業は、競合にもパートナーにも、そして顧客にもなり得る。

    ・より商用の顧客中心型のケイパビリティと新しいテクノロジーを評価するためのケイパビリティが必要になる。

    ・誰と何のために事業連携または、コラボレーションするのか?試験運用以降のパートナーシップを考慮しているか?

    電力市場におけるすべてのプレーヤーに対する推奨事項に加え、再生可能エネルギー発電事業者、電力ネットワーク運用者、小売事業者にはそれぞれ個別の命題が存在します。

    市場全体の動向をトラッキングする

    図11: 事業者が考慮すべき重要項目

    出典:アクセンチュアによる分析

    選択した収益の源泉にフォーカスする

    空中戦になるような成果に結びつかない内容と、想定される成果を確認する試験運用とを区別することが重要

    消費者のトレンドと購買行動の動向に寄り添い耳を傾ける

    パートナーシップとアライアンスにより協働体制を整える

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  • 新たなエネルギーシステムの再生可能エネルギー発電事業者にとって本レポートにおける最も重要な考察は、新たな市場にどのようなサービスや事業モデルでアプローチするか、蓄電ストレージ技術への投資判断の2点です。これまで再生可能エネルギーのエネルギーマネジメントでは、不安定化コストを最小化し、送配電契約を獲得することに重点が置かれてきました。しかし、一部の市場では既に再生可能エネルギーの機能要件はスマートインバータやバッテリー投資にまで拡大して�