19a0828ra-1 「入門講義テキスト 民法 第1分冊」 テキスト …19a0828ra-1 - 1 -...

24
19A0828RA-1 - 1 - 「入門講義テキスト 民法 第1分冊」 テキストの記載の訂正について

Upload: others

Post on 28-Jan-2021

3 views

Category:

Documents


0 download

TRANSCRIPT

  • 19A0828RA-1

    - 1 -

    「入門講義テキスト 民法 第1分冊」 テキストの記載の訂正について

    平素,伊藤塾をご利用いただき,誠にありがとうございます。 「入門講義テキスト 民法 第1分冊」(1A1948B0021)について,下記のとおり記載を訂正させて頂きます。 該当箇所を変更の上,ご利用くださいますようお願いいたします。 2019.08.28 伊藤塾 司法試験科 記 頁・項目 旧 新 23(§2-15)頁 8 取消権行使の効果 ⑴ 行為の遡及的無効(121条) →互いに不当利得返還義務を負う。 ⑴ 行為の遡及的無効(121条) →互いに原状回復義務を負う(121条の2第1項)。 75(§6-19)頁 2 詐欺による意思表示の要件 ② それにより錯誤に陥ること ・要素の錯誤に限らない。 ・通常は動機の錯誤であるが、内容の錯誤であってもよい。 ② それにより錯誤に陥ること ・重要な錯誤に限らない。 ・通常は動機の錯誤であるが、表示の錯誤であってもよい。 103(§7-15)頁 問05 代理人が相手方を詐欺した場合、代理人は96条2項の「第三者」に当たり、本人が善意なら相手方は取り消すことができないのではないか。 代理人が相手方を詐欺した場合、代理人は96条2項の「第三者」に当たり、本人が善意無過失なら相手方は取り消すことができないのではないか。 第1部 総則 末尾 要件事実(錯誤) 「3 Yが主張すべき事実」及び「5 XYの主張のまとめ」の記述を一部変更しました。差替えページ(19A0828RA-2)を添付いたします。テキストと差し替えてご利用ください。 181(§11-17)頁 パワーポイント №91 最下段 C主張→Cの負け C主張→Cの勝ち 252、253、255(§15-4、15-5、15-7)頁 「2⑵⒝ 効果」,「2⑶⒟ 効果」,「2⑸⒟ 効果」の各項目内の記述を変更しました。差替えページ(19A0828RA-3)を添付いたします。テキストと差し替えてご利用ください。

  • - 2 -

    258(§15-10)頁 5 選択債権 【不能原因と選択権者(後発的不能の場合 ○は特定、×は不特定】の表の下の「*」の記述 * 選択権を有しない当事者の過失による場合には、特定しない。 * 選択権を有する者の過失による場合のみ、特定する。 275(§16-17)頁 【債務不履行責任と不法行為責任との比較】の表 左欄2段目 故意過失の立証責任 免責事由/故意過失の立証責任 303(§17-23)頁 5 法定解除権の発生 ⑴ 催告解除の要件(541条) ⒜ 催告全部解除の要件 「ⅳ」の項目の下 以下の記述を挿入する。 ⅴ 債権者の帰責事由に基づくものでないこと(543条) 305(§17-25)頁 5 法定解除権の発生 ⑵ 無催告解除の要件 ⒜ 無催告全部解除(542条1項) 及び ⒝ 無催告一部解除(542条2項) 各項目の末尾 以下の記述を挿入する。 ・いずれの場合も、債権者の帰責事由に基づくものでないこと(543条)を要する。 316(§17-36)頁 1 目的物の種類・品質・数量に関する契約不適合 ⑵ 趣旨 項目末尾に記述を追加しました。差替えページ(19A0828RA-4)を添付いたします。テキストと差し替えてご利用ください。 325、326(§17-45、17-46)頁 「4⑵ 契約に対する第三者の地位」項目末尾の「e.g.」の記述を差替えました(325頁)。また、「1⑶⒜ 弁済提供の効果」の項目内の記述を一部削除しました(326頁)。差替えページ(19A0828RA-5)を添付いたします。テキストと差し替えてご利用ください。 334(§18-4)頁 3 譲渡制限の意思表示(466条2項括弧書)~譲渡制限特約 ⑵ 違反の効果 ⒝ 例外 ・預貯金債権に譲渡制限特約が付されている場合、同特約に違反した譲渡は無効である(物権的効力 466条の5第1項)。 ・預貯金債権に譲渡制限特約が付されている場合、同特約について悪意又は重過失ある譲受人に対しては無効である(物権的効力 466条の5第1項)。

  • - 3 -

    347(§18-17)頁 問03 理由① 抗弁放棄の意思表示の前に利害関係に入った第三者は、抵当権の消滅につき正当な利益を有する者であり、自分のあずかり知らない債務者の承諾によって不利益を被る理由はない。 抗弁放棄の意思表示の前に利害関係に入った第三者は、抵当権の消滅につき正当な利益を有する者であり、自分のあずかり知らない債務者の抗弁放棄の意思表示によって不利益を被る理由はない。 348(§18-18)頁 2 例外―抗弁放棄の意思表示 ⑵ 抗弁放棄の意思表示と抵当権の復活 ⒞ 譲受人と物上保証人との関係 及び ⑶ 抗弁放棄の意思表示と保証債務の復活

    各項目内の 承諾 との記載 債務者の抗弁放棄の意思表示 359、360(§19-1、19-2)頁 「1 理論的立場からの分類」の⑵の記述を削除しました(359頁)。また、「【注意点】」末尾の記述を一部変更しました(359頁)。差替えページ(19A0828RA-6)を添付いたします。テキストと差し替えてご利用ください。 363(§19-5)頁 2 弁済の提供 ⑶ 弁済の提供の内容 ⒞ 口頭の提供すら不要な場合 ・更に解除したいときには、なお催告が必要 左記の記述を削除する。 386(§19-28)頁 2 要件 ⑷ 相殺の禁止 ① 当事者が相殺禁止の特約をしたとき(505条2項) ・ただし、相殺禁止の特約は、これを知らない善意無重過失の第三者(e.g.相殺禁止特約付債権の譲受人・債務引受人)に対抗することができない(同項)。 下線部の記述を削除する。 同上 パワーポイント №148 吹き出し内の記述 Cが善意の場合、 Cが善意無重過失の場合、 391(§19-33)頁 【511条についてのまとめ】 フローチャートを全面的に修正しました。差替えページ(19A0828RA-7)を添付いたします。テキストと差し替えてご利用ください。

    以上

  • - 4 -

    【MEMO】

  • 伊 藤 塾

    i

    要件事実(錯誤) はじめに 民法を含めた実体法は、いかなる要件(法律要件)を満たせばいかなる効果(法律効果)が発生するのかということを体系化したものである。そして、実際の裁判で原告・被告間の権利・法律関係が争われるとき、原告・被告が求める法律効果が認められるか否かは、その法律要件に該当する具体的事実が認められるか否かによって判断されることになる。そのような一定の法律効果を発生させる法律要件に該当する具体的事実を一般に要件事実という。もっとも、実際の裁判において、原告・被告はいかなる事実を主張・立証するべきかは、法律の規定から必ずしも明らかであるというわけではない。この点について体系化した理論が要件事実論である。 詳しくは要件事実論の講座で学習することになるが、ここでは、以下の事例をもとに、要件事実の考え方をイメージしてほしい。 1 事例 Yは、Xに対して、自己が所有する甲土地を売った。Yは、「代金1億円で売る。」と言うつもりだったが、「代金1000万円で売る。」と言い間違えた。Xは、「それでよい。買った。」と言った。Xは、Y宅に1000万円を持参して甲土地の引渡しを求めたが、Yは引渡しを拒んでいる。そこで、Xは、Yを被告として甲土地の引渡しを求める訴えを提起した。 YX

    「Yは、Xに対し、甲土地を引き渡せ」 甲土地 2 Xが主張すべき事実 ⑴ 売買の要件事実 第555条(売買) 売買は、当事者の一方がある財産権を相手方に移転することを約し、相手方がこれに対してその代金を支払うことを約することによって、その効力を生ずる。 ① 555条が規定するように、売買契約は、ある財産権(目的物)を相手方に移転し、相手方はその代金を支払うという契約なので、売買契約の成立を主張するためには、売買契約の本質的要素である目的物と代金を明示することが必要である。 ② 売買契約が成立すれば、買主は目的物の引渡請求権を取得するので、買主が目的物の引渡しを求める場合には、売買契約の成立を主張・立証すれば足りる。仮に、目的物の引渡しに条件が付いていたとしても、それは被告が抗弁として主張すべきことであって、原告が主張する必要はないとされている。 ⑵ 要件事実の具体例 Xは、平成○○年○月○日、Yから、甲土地を代金1000万円で買った。

    入門講義テキスト民法 差替レジュメ 19A0828RA-2

  • 伊 藤 塾

    ii

    3 Yが主張すべき事実 ⑴ 錯誤取消しの要件事実 第95条(錯誤) ① 意思表示は、次に掲げる錯誤に基づくものであって、その錯誤が法律行為の目的及び取引上の社会通念に照らして重要なものであるときは、取り消すことができる。 一 意思表示に対応する意思を欠く錯誤 二 表意者が法律行為の基礎とした事情についてのその認識が真実に反する錯誤 ② (略) ③ 錯誤が表意者の重大な過失によるものであった場合には、次に掲げる場合を除き、第1項の規定による意思表示の取消しをすることができない。 一 相手方が表意者に錯誤があることを知り、又は重大な過失によって知らなかったとき。 二 相手方が表意者と同一の錯誤に陥っていたとき。 ④ (略) ① 95条1項柱書では、同項各号に掲げる「錯誤」があったときに意思表示を取り消すことができると規定している。このために、錯誤取消しの主張をするためには、Yは、意思表示に錯誤があったことを主張・立証することが必要である。本事例では、同項1号の「意思表示に対応する意思を欠く錯誤」として、1億円を1000万円と言い間違えたことを主張・立証することとなる。 ② 95条1項柱書には、錯誤が「法律行為の目的及び取引上の社会通念に照らして重要なもの」であることが規定されている。そこで、①に加えて、①が重要な錯誤であることを主張・立証する必要がある。もっとも、通常は、①に該当する具体的事実の主張により、②の該当性も明らかになる。本事例においても、1億円を1000万円とい間違えたことを主張することで、②も主張したことになる。 ③ また、取消権は形成権なので、形成権が行使された事実を主張・立証すべきであり、取消しの意思表示をしたことを主張・立証することが必要である。 ⑵ 要件事実の具体例 XY間の売買契約を締結する際、Yは、「代金1000万円」と表示したが、真意は「代金1億円」であり、表示は単なる言い間違いであって、YはXに対し取消しの意思表示をした。 4 Xの再抗弁について ⑴ 95条3項柱書の要件事実 Yの錯誤取消しの主張に対して、Xは、Yに重過失があるので、Yは錯誤取消しを主張することができないと反論することが考えられる(95条3項柱書)。 95条3項柱書には「重大な過失によるものであった場合」と規定されているが、「重大な過失」の有無の判断は法律問題であり、裁判所の判断にゆだねられる。このため、原告は、表意者に重過失があると裁判所が評価する根拠となる具体的な事実を主張・立証することになる。 ⑵ 要件事実の具体例 Yの重過失を基礎付ける具体的な事実

  • 伊 藤 塾

    iii

    5 XYの主張のまとめ 〔〔〔〔ブロック・ダイヤグラムブロック・ダイヤグラムブロック・ダイヤグラムブロック・ダイヤグラム〕〕〕〕 Kg E1 R Y→X 売買 平成○○年○月○日 甲土地 代金1000万円 ○ カ 意思表示に錯誤があること Yは代金1000万円と表示したが、真意は代金1億円であった さ Y重過失 重過失の評価根拠事実 ⅰ…… ⅱ…… キ カが法律行為の目的及び取引上の社会通念に照らして重要なものであること Yは1億円でなら甲土地を売ってもよいと考えていた

    ク 取消しの意思表示をしたこと YはXに対し取消しの意思表示をした ○ は 自白、△ は 不知、× は 否認、顕 は顕著な事実を表す。

    原告X 被告Y XとYは、甲土地の売買契約 を締結した。 意思表示に重要な錯誤があり、取消しの意思表示をした。 重過失の評価根拠事実

  • 伊 藤 塾

    iv

    【MEMO】

  • 第15章 債権法序説 伊 藤 塾 〈債権法の全体像〉

    251 §15-3

    5 物権と債権の異同 物 権 債 権 共通点 ともに財産権であり、不可侵性を有する 相違点 絶対性 物権はすべての人に対して主張できる(絶対性) 債権は債務者のみに対する権利である(相対性) 権利の併存 同一物の上に同一内容の複数の物権は存在できない(排他性) →公示の要請 同一内容の債権が複数成立することは可能(排他性なし) 優 劣 物権は債権に優先する* 債権は物権に劣後する 物に対する支配の態様 主体と客体(物)の間に何らの仲介者を必要としない(直接性) 債務者を通じて客体(物)を間接的に支配する(間接性) * 現れ ① 「売買は賃貸借を破る」(賃貸物の新所有者には、賃借権を対抗できない。)の原則(ただし、不動産賃貸借については修正あり 民法605条、605条の2、借地借家法10条、31条参照) ② 担保物権を有する者は、一般債権者に優先する。

    入門講義テキスト民法 差替レジュメ 19A0828RA-3

  • 第15章 債権法序説 〈債権の目的〉 伊 藤 塾

    252 §15-4

    15-2 債権の目的 1 給付の内容に着目した債権の分類 ・これらの分類は強制履行の方法等に影響を与える。 不作為債務 作為債務 特定物債権 行為債務 非金銭債権 種類物債権 (不特定物債権)

    金銭債権 引渡債務 (与える債務) (なす債務) (なす債務) 2 特定物債権と種類物債権 ⑴ 概説 ・与える債務(引渡債務)を内容とする債権のうち、非金銭債権(金銭債権以外のもの)は特定物債権と種類物債権(不特定物債権)に分類される。 ・目的物が特定物の場合と不特定物の場合とで、民法は異なる取扱いをしている。 ⑵ 特定物債権 ⒜ 定義 ・特定物:具体的な取引において当事者が個性に着目した物 e.g.中古車、不動産、美術品 ・特定物債権:特定物の引渡しを給付の内容とする債権 ⒝ 効果 ① 特定物の引渡義務を負う者は引渡しをすべき時まで「善良な管理者の注意」をもって保存しなければならない(善管注意義務 400条)。 ・善管注意義務:社会において一般人につきその職業や地位に応じて、取引上要求される程度の注意義務 ・「善良な管理者の注意」かは、「契約その他の債権の発生原因及び取引上の社会通念に照らして」定まるところ、これは契約その他の債権の発生原因をめぐる一切の事情を考慮して、取引通念をも勘案することを意味する。 ・この注意義務は、「自己の財産に対するのと同一の注意」(659条)、「自己のためにするのと同一の注意」(827条)よりもやや重い。 ・債務者が履行遅滞にあるときは、注意義務が加重され、不可抗力についても責任を負う。 ・債務者が物を提供しても債権者が受け取らない(受領遅滞 413条)ときは、注意義務が軽減され、自己の財産に対するのと同一の注意となる(同条1項)。 ② 契約内容に適合した物を引き渡す義務を負う(契約適合物引渡義務)。 ・引き渡した物に契約不適合があれば、債権者は追完請求(修補請求)、代金減額請求、損害賠償請求、解除ができる(562条、563条、564条)。 ・代物請求はできない。 ③ その物が滅失した場合、履行不能となり、債務不履行(415条、542条)、危険負担(536条)の問題となる。 ④ 特約のない限り、契約時に所有権が移転する(176条参照)。

  • 第15章 債権法序説 伊 藤 塾 〈債権の目的〉

    253 §15-5

    ⒞ 履行の場所 ・特定物の引渡場所は、特約のない限り、債権発生当時その物が存在した場所である(取立債務 484条1項前段)。 【注意義務のまとめ】 注意義務 善管注意義務 自己の財産における のと同一の注意義務 分 類

    ① 特定物の引渡義務を負う者(400条) ・特定物売買の売主 ・特定物の使用借人 ・特定物の賃借人 ・特定物の有償受寄者 ② 留置権者(298条1項) ③ 質権者(350条・298条1項) ④ 受任者(644条) ⑤ 事務管理者(解釈) ⑥ 後見人(869条・644条) ⑦ 後見監督人(852条・644条) ⑧ 遺言執行者(1012条2項・644条) ⑨ 保佐人(876条の5第2項・644条) ⑩ 補助人(876条の10第1項・644条)

    ① 弁済提供後の売主(413 条1項) ② 無償の受寄者(659条) ③ 親権者(827条) ④ 相続人(918条1項本文) ⑤ 限定承認者(926条1項) ⑥ 相続放棄者(940条1項) ⑶ 種類物債権・不特定物債権 ⒜ 定義 ・種類物:1つの物としては個性を持たず、商品としての規格や銘柄と数量を指示するだけで取引できる物(e.g.米、ビール) ・種類+数量→種類物 種類物+品質→不特定物 ・種類物債権(種類債権):種類物の給付を目的とする債権 ・不特定物債権:不特定物の給付を目的とする債権 ⒝ 債務者の給付義務 ・債権の目的物を指示するのに種類のみをもってした場合(e.g.米50キログラム)で、品質について当事者の意思が明らかでない場合には、債務者は中等の品質の物を給付する義務を負う(401条1項)。 ⒞ 種類物債権と不特定物債権 ・種類物の給付を目的とする債権の場合、品質については当事者の意思が明らかでなくても、401条1項により自動的に決まるので、種類物と不特定物はほぼ同義になる。よって、種類物債権と不特定物債権を区別する意義はほとんどない。 ⒟ 効果 ① 善管注意義務(400条)違反の問題は生じない。 ② 特定(401条2項 後述⑸)するまで、債権者は代物請求ができ、債務者は調達義務を負う(562条1項、567条1項参照)。 ③ その物が市場からすべて滅失するなど例外的な場合を除いて、履行不能にはならず、危険負担の問題は生じない(ただし、当事者双方の帰責性なく市場からすべて滅失した場合は536条1項の適用がある。)。 ④ 契約時に所有権は移転しない。 ⒠ 履行の場所 ・特約のない限り、債権者の現在の住所である(持参債務 484条1項後段)。

  • 第15章 債権法序説 〈債権の目的〉 伊 藤 塾

    254 §15-6

    ⒡ 限定種類物債権(制限種類物債権) ・限定種類物債権:種類物債権のうち、種類物につき更に一定の範囲の制限を加えた物の給付を目的とする債権 e.g.甲倉庫内の米、乙工場のため..池に保管されているタール ・通常の種類物債権との違い ① 債務者は、限定された範囲を超えてほかから調達する必要はない。 ② 限定された範囲の種類物がすべて滅失した場合は、履行不能となる。したがって、通常の種類物債権に比して、危険負担の問題が生じやすい。 ③ 限定された範囲内の種類物に中等の品質の物がなければ、範囲外の種類物から中等の品質の物を調達する義務はない。 ⑷ 特定物・不特定物と代替物・不代替物の違い ・特定物か不特定物かは、取引の当事者が物の個性に着目したか否か、すなわち取引の当事者の主観によって区別される。これに対し、物の客観的な性質上、代替がきくか否かという観点からの区別として、代替物・不代替物という概念がある。 ⑸ 種類物債権の特定 ⒜ 定義 ・特定:種類物債権の目的が特定の物に定まること ⒝ 趣旨 ① 種類物債権は、同種の物が市場に存在する限り債務者は無限の調達義務を負い、履行不能とはならない。これは債務者の責任を不当に重くする。そこで、一定の時期を標準とし、それ以後はある特定の物を目的として扱い、調達義務にある程度の限定を設ける。 ② 物理的に給付すべき物を確定する。 ⒞ 要件(401条2項) ① 債務者が、物の給付をするのに必要な行為を完了すること、又は、 ② 債権者の同意を得てその給付すべき物を指定すること 問01:「給付をするのに必要な行為を完了し」(401条2項前段)とは、具体的にはどのようなことを意味しているか。 結論:履行の場所で債権者が受け取ろうと思えば受け取れる状態に物を置いた場合をいう(通説)。具体的には、 ① 持参債務(目的物を債権者の住所において引き渡すべき債務)では、目的物を債権者の住所において提供すること(現実の提供) ② 取立債務(債務者の住所において引き渡すべき債務)では、債務者が目的物を分離し、引渡しの準備を整えて、これを債権者に通知すること ③ 送付債務(債権者又は債務者の住所以外の第三地において引き渡すべき債務)では、債務者が第三地において履行することを義務とするとき(第三地が履行地であるとき)は持参債務と異なるところはないが、債務者が債権者の要請により好意で第三地において引き渡す場合には第三地に向けて発送すること 補足:① 必ずしも、上記のように、定型的に決定されるものではない。個々の契約内容から、特定に結び付けられた効果を発生させるに値するような行為が、債務者によって行われたかどうかが、判断の指針となる。

  • 第15章 債権法序説 伊 藤 塾 〈債権の目的〉

    255 §15-7

    ② 瑕疵ある物を債権者が受け取ろうと思えば受け取れる状態に置いても「給付をするのに必要な行為を完了し」たとはいえないので、特定しない。それで特定しては債権者に酷であるし、債務者はするべきことをしたとはいえないからである(不特定物については弁済提供の効果も生じない。)。 ⒟ 効果 ① 善管注意義務の発生(400条) ② 種類債権の目的が特定の物に定まる(401条2項) ・特定後に契約不適合が生じた場合、債権者は債務者に対して、代物請求をすることができない。それ以外の追完請求は行うことができる(562条、563条)。 ③ 滅失すれば履行不能となり、債務不履行、危険負担の問題となる。 ④ 所有権の移転(176条参照) 〈重要判例〉 ★種類債権の特定(最判昭30.10.18)百選ⅡⅡⅡⅡ(第8版)[1] 【事案】Xは、昭和21年2月に、Yから漁業用タールを買い受けることを約した。その受渡しの方法は、Xが必要の都度その引渡しを申し出て、Yが引渡場所を指定し、Xが容器を当該場所に持ち込んで受領することとした。そして、昭和22年1月末日までにXが全部引き取ることを定め、Xは契約とともに手付金をYに交付した。このタールは、Yが訴外B社から買い受けてXに転売したものであり、B社の製鉄所構内のため..池に貯蔵されていた。Yは約旨に従って引渡場所をXに通知し、昭和21年8月頃までに全量の4分の1を引き渡したが、Xはタールの品質が悪いことを理由にしてしばらくの間、引取りに行かなかった。Yは、タールの引渡作業に必要な人夫を配置するなど引渡しの準備をしていたが、同年10月頃これを引き揚げてしまった。その後、同年冬頃、B社の労働組合員がタールをほかに処分してしまい、タールは滅失するに至った。そこで、Xは、昭和24年11月15日に、Yに対し、内容証明郵便をもってYのタール引渡しの不履行を理由に残余部分につき契約を解除する意思表示をし、本訴に及んだ。この裁判では、ため..池に保管されていたタールの売買契約において、種類債権の特定の有無が問題となった。 【判旨】漁業用タールの売買において、受渡しの方法を、まず買主が必要の都度引渡方を申し出て、これに対して売主が引渡場所を指定し、次いで買主が容器をその場所に持ち込み、タールを受領する旨約定した場合に、売主が引渡場所を指定し、タールの引渡作業に必要な人夫を配置するなど引渡しの準備をしたからといって、売主は「物の給付をするのに必要な行為を完了し」(401条2項前段)たことにはならない。

    5 10 15 問02:不特定物が特定した場合、債務者はもはや給付すべき物を他の物と取り換えることはできないのか。いわゆる変更権が認められるかが問題となる。 e.g.酒屋AがBにビール10本を売る契約を締結した場合において、倉庫内にあるビールのうちAが10本を選び、一度Bに現実に提供したが、Bがこれを受け取らなかったので、これを他の者に売却し、その後直ちに同量のビールを倉庫内に準備しておいた場合、Aは別の10本を履行の目的物とすることができるか。 結論:債権者の利益を害さない限り認められる(判例)。 理由:特定後はその物のみが履行の対象となり、任意の物に変更できないのが原則であるが、債権者が最初に特定した物を請求するについて何ら正当な利益を持たない場合にまで目的物の変更を認めないとすることは合理性を欠く。そこで、債務者に信義則(1条2項)上、変更権を認めるべきである。

  • 第15章 債権法序説 〈債権の目的〉 伊 藤 塾

    256 §15-8

    3 金銭債権 ⑴ 定義 ・金銭債権:一定額の金銭の支払を目的とする債権 ・金銭債権には、特定金銭債権(特定の金銭の引渡しを求める債権)と、金額債権(一定金額の引渡しを求める債権)とがある。 ・通常、金銭債権というときは、金額債権の意味で用いられる。 ⑵ 債務者の責任 ・金額債権の場合には、金銭の特定ということもなく金銭の滅失も考えられないので、債務者は給付義務から免れることはできず、履行不能ということはない。 ・債権者は、債務者の履行遅滞による損害を立証しなくても損害賠償の請求ができる(419条2項)。 ・債務者は、履行遅滞が不可抗力に基づくものであっても損害賠償責任を免れることはできない(419条3項)。 ・損害賠償額は、債務者が遅滞の責任を負った最初の時点における法定利率によって定まる(419条1項本文)。ただし、約定利率が法定利率を超えるときは、約定利率による(同項ただし書)。 4 利息債権 ⑴ 定義 ・利息債権:利息の支払を目的とする債権 ・利息債権は、法律行為によって生じる場合(約定利息)と、法律の規定によって生じる場合(法定利息)とがある。 ⑵ 利率 ・約定利息の利率は法律行為によって決まる(約定利率)。 ・利率の特約がない場合や法定利息の利率は、法定利率によるところ、法定利率は、改正民法施行の際の利率を年3パーセントとし、その後は、法務省令で定める基準により、3年ごとに定められる変動利率によることとなる(404条)。 ⑶ 重利(複利) ・重利:弁済期の到来した利息を元本に組み入れて元本の一部とし、これに利息を付けること。つまり、利息の利息である。 ・特約による場合(約定重利)、法律上認める場合(法定重利 405条)がある。 ⑷ 利息制限法 ⒜ 趣旨 ・利息を当事者の自由に任せると、債務者が負担しきれない債務にあえぐ結果になりかねない。そこで、法外な高利から債務者を保護するために利息制限法が制定された。 ⒝ 制限超過部分の弁済の効果 ・旧利息制限法1条2項は、制限超過部分を債務者が任意に弁済したときはその返還を請求することができないと規定していたが、後述のように、判例法理によって実質的に空文化されていた。そして、平成18年に改正された利息制限法では、旧利息制限法1条2項(及びこれを準用する旧4条2項)が削除され、平成22年6月18日に施行された。なお、「施行前になされた契約については、なお従前の例による。」(附則4項)とされている。

  • 第17章 契約総論 伊 藤 塾 〈契約終了後の関係〉

    315 §17-35

    17-6 契約終了後の関係 ・契約が終了しても、当事者の権利義務関係は、当然には終了しない(余後効)。 e.g.608条2項、654条 ・信義則上の義務を負う場合もある。 e.g.パソコンの製造中止後も、メーカーは修理用の部品を保存しておく義務を負う。 入門講義テキスト民法 差替レジュメ 19A0828RA-4

  • 第17章 契約総論 〈有償契約の問題(担保責任)〉 伊 藤 塾

    316 §17-36

    17-7 有償契約の問題(担保責任) 1 目的物の種類・品質・数量に関する契約不適合 ⑴ 定義 ・売買契約に基づき引き渡された目的物が種類・品質・数量に関して、契約の内容に適合しないものであること ⑵ 趣旨 ・特定物売買であろうが、不特定物売買であろうが、売主は、買主に対して、売買契約に基づき、種類・品質・数量に関して契約の内容に適合した物を供与すべき義務を負う。したがって、引き渡された目的物が種類・品質・数量に関して契約不適合であるときは、債務不履行として評価される。 ・このとき、買主は、売主に対して、法的救済を求めることができる。すなわち、買主は、追完請求権、代金減額請求権、損害賠償請求権、解除権を有する。 ・追完請求権や代金減額請求権は、条文上「売買」の節に規定されているが、559条により他の有償契約にも準用されるので、交換・賃貸借等売買以外の有償契約でもこれらの責任が問題となる。 ・なお、562条は、「引渡された」と規定しているため、目的物の引渡し(買主の受領)後の場面に適用されるものである。 ・これに対して、引渡し前に目的物の契約不適合を認めた場合には、買主は受領を拒絶して、契約責任(一般債務不履行責任)を問うことができる。この場合に目的物が種類物であるときは、特定(401条)が生じないため、契約内容に適合した他の物の給付を555条に基づいて請求することができる。 ⑶ 契約不適合の種類 ⒜ 種類・品質に関する契約不適合 ・種類・品質に関する契約不適合には、物質面の欠点のみならず、心理的瑕疵、環境瑕疵(日照・景観阻害)や、法律上の制限(用途制限・建築制限)も含まれる。 〈重要判例〉 ★売買後に規制された土壌汚染と契約不適合(最判平22.6.1)百選ⅡⅡⅡⅡ(第8版)[50] 【事案】XとYは、平成3年3月、Yの所有するふっ素化合物製造工場跡地の売買契約(以下「本件売買契約」という。)を締結した。本件売買契約締結当時の取引観念上、土壌中のふっ素が有害とは認識されておらず、Xもふっ素の有害性を認識していなかった。ところが、平成13年3月、環境省によりふっ素の環境基準が告示され、また、平成15年2月、条例でふっ素の基準値が定められた。平成17年11月、本件土地に基準値を超えるふっ素が含まれていることが判明した。平成18年10月、XはYに対し、瑕疵担保責任(平成29年改正前民法570条)による損害賠償を求めて訴えを提起した。 【判旨】「売買契約の当事者間において目的物がどのような品質・性能を有することが予定されていたかについては、売買契約締結当時の取引観念をしんしゃくして判断すべき」であり、本件において、「ふっ素が土壌に含まれることに起因して人の健康に係る被害を生ずるおそれがあるとは認識されておらず、Xの担当者もそのような認識を有していなかったのであり、ふっ素が、……人の健康に係る被害を生ずるおそれがあるなどの有害物質として、法令に基づく規制の対象となったのは、本件売買契約締結後であったというのである。そして、本件売買契約の当事者間において、本件土地が備えるべき属性として、その土壌に、ふっ素が含まれていないことや、本件売買契約締結当時に有害性が認識されていたか否かにかかわらず、人の健康に係る被害を生ずるおそれのある一切の物質が含まれていないことが、特に予定されていたとみるべき事情もうかがわれない。そうすると、本件売買契約締結当時の取引観念上、……人の健康に係る被害を生ずるおそれがあるとは認識

    5 10 15

  • 第17章 契約総論 伊 藤 塾 〈有償契約の問題(担保責任)〉

    317 §17-37

    されていなかったふっ素について、本件売買契約の当事者間において、それが人の健康を損なう限度を超えて本件土地の土壌に含まれていないことが予定されていたものとみることはできず、本件土地の土壌に」基準値を超える「ふっ素が含まれていたとしても、そのことは、(注:平成29年改正前の)民法570条にいう瑕疵(現:契約不適合)には当たらない」。 20 ⒝ 数量に関する契約不適合 ・売買契約の当事者が当該契約の下で「数量」に特別の意味を与え、それを基礎として売買がされた場合(数量指示売買)に、数量が不足していて、初めて数量に関する契約不適合があったと評価される。 ・登記簿に従って地番・坪数を示しただけでは、数量を指示した売買にはならない(大判昭14.8.12)。 ⑷ 買主の救済①-追完請求権(562条) ⒜ 意義 ・引き渡された目的物が種類・品質・数量に関して契約不適合であった場合に、売主は不完全な履行をしたことになるから、買主は、売主に対して、履行の追完を請求することができる(562条1項本文)。 ⒝ 追完方法の選択権 ・買主は、売主に対して、①目的物の修補、②代替物の引渡し、③不足分の引渡しによる履行の追完を請求することができる。ここでは、追完方法(取替えか修補かなど)の選択権が買主に与えられている(562条1項本文)。 ・売主は、買主からの追完の請求に対して、買主に不相当な負担を課するものでないときは、買主が請求した方法と異なる方法による履行の追完をすることができる(562条1項ただし書)。 ⒞ 追完請求が認められない場合 ・売買目的物の契約不適合が「買主の責めに帰すべき事由」によるものである場合は、買主は売主に対して、追完請求をすることができない(562条2項)。 ⑸ 買主の救済②-代金減額請求権(563条) ⒜ 意義 ・引き渡された目的物が種類・品質・数量に関して契約不適合であった場合に、買主は、所定の要件を満たしたときに、売主に対して代金の減額を請求することができる(563条1項)。 ・代金減額請求権の行使は、相手方に対する一方的な意思表示(単独行為)で あって、形成権である。 ⒝ 要件 ・民法は、代金減額請求権が認められるための要件を、以下のように解除の場合とパラレルに構成している。 ⅰ 催告を要する場合(563条1項) ・買主は、売主に対して追完の催告(追完請求)をし、相当期間が経過しても追完がないときは、代金減額請求をすることができる。

  • 第17章 契約総論 〈有償契約の問題(担保責任)〉 伊 藤 塾

    318 §17-38

    ⅱ 催告を要しない場合(563条2項) ・以下のいずれかに該当するときは、買主は、催告なしに代金減額請求をすることができる。 ① 履行の追完が不能であるとき(1号) ② 売主が履行の追完を拒絶する意思を明確に表示したとき(2号) ③ 契約の性質又は当事者の意思表示により、特定の日時又は一定の期間内に履行をしなければ契約をした目的を達することができない場合において、売主が履行の追完をしないでその時期を経過したとき(3号) ④ ①~③の場合を除いて、買主が追完の催告をしても履行の追完を受ける見込みがないことが明らかであるとき(4号) ⒞ 代金減額請求が認められない場合 ・目的物の契約不適合が、買主の責めに帰すべき事由によるものである場合は、買主は売主に対して代金減額請求をすることができない(同条3項)。 ⑹ 買主の救済③-損害賠償請求権(564条、415条) ⒜ 損害賠償請求権の性質・内容 ・引き渡された目的物が、種類・品質・数量に関して契約不適合である場合に、買主は、415条以下の規定に従い、債務不履行を理由とする損害賠償を請求することができる。 ⒝ 要件 ・契約不適合を理由とする損害賠償の要件は、415条によって規律される(第16章第2-2節 損害賠償(415条、416条)参照)。 ⒞ 効果 ・請求の内容は、履行利益、すなわち、契約に適合した履行がされたならば買主が受けたであろう利益の賠償となる。 ・賠償範囲は、416条の範囲で決せられる。 ⑺ 買主の救済④-解除権(564条、541条、542条) ⒜ 解除の性質 ・引き渡された目的物が種類・品質・数量に関して契約不適合である場合に、買主は、所定の要件を満たしたときに、売主に対して、債務不履行を理由として売買契約を解除することができる。 ⒝ 要件 ・契約不適合を理由とする解除の要件は、541条、542条によって規律される(第17章第5節 解除 参照)。 ⑻ 期間制限(566条) ・買主が種類又は品質に関する不適合を知った時から1年以内にその旨を売主に通知しなければ、買主は上記の救済方法をとることができない(同条本文)。ただし、売主が引渡しの時に、契約不適合について悪意又は重過失であったときは、この期間制限は適用されない(同条ただし書)。 ・数量に関する不適合については、566条の期間制限の適用はなく、消滅時効の一般原則に服することになる。数量不足は外形上明白であり、履行が終了したという期待が売主に生じることは考え難く、期間制限を設けて売主を保護する必要性は乏しいからである。

  • 第17章 契約総論 伊 藤 塾 〈第三者のためにする契約(537条1項)〉

    325 §17-45

    ・第三者(受益者)は、新たな利害関係を有するに至った者ではないから、94条2項や96条3項、545条1項ただし書の「第三者」には当たらないものと解される。したがって、善意・悪意を問わず無効・取消し・解除の効果を主張されてしまう。 ⑵ 契約に対する第三者の地位 ・第三者は、契約の当事者ではない。したがって、 ① 第三者は、諾約者が債務を履行しないときでも解除権を取得せず、また、要約者の制限行為能力や諾約者の詐欺・強迫などを理由とする取消権も取得することができない。 ② 法律行為の相手方の善意・悪意、過失の有無、意思の瑕疵・不存在などの問題は、専ら要約者について考えるべきである。 e.g.諾約者が重過失に基づき錯誤に陥っていた場合に、要約者が諾約者の錯誤につき悪意であるときは、第三者が善意であっても、諾約者は取り消すことができる。 5 要約者の地位 ・原則として、要約者は、諾約者に対して、第三者に債務を履行すべきことを請求する権利を有する。 ・要約者の請求権は、第三者が受益の意思表示をする以前にも存在するので、諾約者が弁済の提供をしないときには、要約者に対して遅滞の責任を負う(判例)。 ・第三者が受益の意思表示をした後に、諾約者の債務不履行があるときは、第三者が損害賠償の請求権を有し、要約者は第三者への賠償をするよう諾約者に請求できるにとどまる。 ・要約者が諾約者に対し補償関係上の債務を負担しており、この債務と諾約者の第三者に対する債務とが対価関係に立つ場合には、諾約者は同時履行の抗弁権を有する。 ・受益の意思表示がされた後に、債務者が第三者に対する債務を履行しない場合には、 第三者の承諾を得なければ、要約者は契約を解除することができない(538条2項)。 6 諾約者の地位 ・諾約者は契約の当事者であり、ただ契約から生じる債務を第三者に対して履行する義務を負う。 ・第三者の権利行使に対しては、債務者たる諾約者はその権利を発生させた契約に起因する抗弁をもって対抗することができる(539条)。 e.g.同時履行の抗弁権、契約の無効・取消し・解除

    入門講義テキスト民法 差替レジュメ 19A0828RA-5

  • 第17章 契約総論 〈債権の効力のまとめ〉 伊 藤 塾

    326 §17-46

    17-10 債権の効力のまとめ 1 債権総合問題の処理手順 ⑴ 契約内容の確定・場合分け ⒜ 特定物か不特定物か ⒝ 取立債務か持参債務か(不明の場合は、484条1項で決する。) ⑵ 特定の有無の検討(401条2項) ⒜ 代物請求の可否に影響 ⒝ 特定の効果 ① 売主の調達義務が制限される。滅失すれば不能 ② 善管注意義務の発生(400条) ③ 所有権の移転 cf.瑕疵物では特定しないことに注意 ⑶ 弁済の提供の有無の検討(493条) ⒜ 弁済提供の効果 ① 履行遅滞責任からの解放(492条) ② 相手方の同時履行の抗弁権(533条)を奪う ③ 約定利息の不発生 ⒝ 受領遅滞の効果 ① 注意義務の軽減(413条1項) ② 増加費用の債権者負担(413条2項) ③ 履行不能に関する危険の移転(413条の2第2項) ⑷ 不能・契約不適合の確定・場合分け ⒜ 不能か契約不適合か ⒝ 債務者の帰責性の有無 ⒞ 不能・契約不適合などの競合 ⑸ 効果から考える ・担保責任追及(追完請求、代金減額請求) ・損害賠償請求 ・契約の消滅(解除、無効・取消し) ・履行拒絶(解除、無効・取消し、同時履行の抗弁権、留置権) ・明渡請求(債権的・物権的)

  • 第19章 債権の消滅 伊 藤 塾 〈序説 債権の消滅原因の分類〉

    359 §19-1

    第19章 債権の消滅 19-1 序説 債権の消滅原因の分類 1 理論的立場からの分類 ⑴ 内容実現による債権の消滅-弁済(473条以下)、代物弁済(482条)、供託(494条以下)、担保権の実行(民事執行法第3章)、強制執行(同第2章) ⑵ 内容実現不必要による債権の消滅-相殺(505条以下)、更改(513条以下)、免除(519条)、混同(520条) ⑶ 権利一般の消滅原因に基づく消滅-消滅時効の完成(166条以下)、終期の到来(135条2項)、取消し(121条)・解除(545条)・告知(617条など)・解除条件の成就(127条2項)、解除契約・免除契約・相殺契約 2 法律要件の性質による分類 ⑴ 法律行為 ⒜ 債権者の単独行為-免除 ⒝ 債務者の単独行為-相殺 ⒞ 契約-代物弁済、弁済供託、更改 ⑵ 準法律行為-弁済 ⑶ 事件-混同

    入門講義テキスト民法 差替レジュメ 19A0828RA-6

  • 第19章 債権の消滅 〈弁済(473条以下)〉 伊 藤 塾

    360 §19-2

    19-2 弁済(473条以下) 1 弁済 ⑴ 定義 ・弁済:債務者がその内容である給付を実現して債権者の利益を充足させる行為 e.g.借金を支払う、売買の目的物を引き渡す ⑵ 性質 ・準法律行為 ・弁済意思を必要とせず、単に客観的に債務の内容に適した給付行為があればよい(通説)。 ⑶ 方法 ・弁済の方法は、目的物・時期・場所等についてそれぞれ具体的に決定されることになるが、民法は以下のような補充規定(解釈規定)を置き、その基準を示している。 ⒜ 弁済の目的物 (ア) 特定物の引渡し ・債権の目的が特定物の引渡しである場合には、「契約その他の債権の発生原因及び取引上の社会通念に照らしてその引渡しをすべき時の品質を定めることができない」ときを除いて、契約内容に適合しない物を給付しても弁済があったとはいえず、債務不履行・担保責任の問題となる(483条、562条以下)。一般に「品質を定めることができない」ことはほとんど想定できないから、特定物に瑕疵があった場合には、その物は弁済の目的物とは認められない。 (イ) 他人の物の引渡し ・弁済の効力は生じず、弁済した物が債権者のものになることもない。 ・弁済者は、更に別の有効な弁済をしなければその物を取り戻すことができない(475条)。 【注意点】 ・不特定物の引渡しを目的とする債権についてのみ適用される。 ・債権者が弁済として受けた物を善意で消費し又は譲渡したときには、その弁済は有効となる(476条前段)。 ・債権者が即時取得又は時効取得すれば弁済が有効となり、475条は適用されない。 ・真の所有者が債権者に対して不法行為に基づく損害賠償請求又は不当利得返還請求をして、債権者がこれに応じたときは、改めて弁済者に求償できる(476条後段)。

  • 第19章 債権の消滅 伊 藤 塾 〈相殺(505条以下)〉

    391 §19-33

    他方、無制限説の立場からもかかる約款・契約は有益である。すなわち、無制限説によっても、本来自働債権の弁済期が到来しなければ相殺適状にならないところ、かかる約款・契約があることで直ちに自働債権の弁済期が到来し、素早く相殺ができるようになる。 【511条についてのまとめ】 ①自働債権取得が先 ②「差押え前の原因」に 基づいて生じていない 相殺不可

    ②差押えが先

    自働債権の弁済期を待たずに直ちに相殺可 自働債権の 弁済期到来後、 相殺可 *期限の利益喪失約款あり

    1 自働債権の取得時と差押え時の先後を比較 2 自働債権が「差押え前の原因」に基づいて生じたものか ①「差押え前の原因」に 基づいて生じた

    相殺不可 ②他人から取得された ものである 3 自働債権が差押え後に他人から取得されたものか ①他人から取得された ものでない

    入門講義テキスト民法 差替レジュメ 19A0828RA-7

  • 第19章 債権の消滅 〈相殺(505条以下)〉 伊 藤 塾

    392 §19-34

    ⑵ 債権譲渡と相殺 ・債権譲渡の対抗要件を具備する前に、債務者が債権者に対し反対債権を取得していた場合、債務者は、相殺をもって債権の譲受人に対抗できる(469条1項)。 e.g.AがBに対する債権をCに譲渡し、その通知をする前に、BがAに対して反対債権を取得していた場合、BはCからの支払請求に対して、相殺をもって対抗できる。 153 譲渡人A ∵債権譲渡通知前に既にαを取得していた以上、Bの相殺への期待を保護債務者B

    譲受人Cα β②債権譲渡・通知①取得 債権譲渡と相殺相殺可

    ・債権譲渡の対抗要件具備後に債務者が債権者に対して反対債権を取得した場合であっても、当該反対債権が、 ① 対抗要件具備時より前の原因に基づいて生じた債権 あるいは、 ② 譲渡の対象となった債権の発生原因である契約に基づいて生じた債権 であるときは、相殺をもって譲受人に対抗することができる(469条2項本文)。 ・②の適用場面として想定されているのは、未だ契約が成立しておらず、将来債権が譲渡された後に契約が成立するような取引関係が見込まれる当事者間での一方の債権が譲渡された場合である。 ・①②に該当する場合であっても、債権譲渡の対抗要件具備後に債務者が他人の債権を取得したものであるときは、相殺は認められない(同項ただし書)。 4 方法 ・当事者の一方から相手方に対する意思表示によってなされる(506条1項前段)。 ・相殺の意思表示には、条件又は期限を付けることはできない(同項後段)。相殺のような単独行為に条件を付けることは法律関係を混乱させ、相手方の相殺権を害するなど相手方に不利益を与えるからである。また、期限を付けることは、相殺が遡及効を有するために無意味だからである。 5 効果 ⑴ 債権の消滅 ・双方の債権は、その対当額において消滅する(505条1項本文)。 ⑵ 相殺の充当 ・対立関係にある複数の債権債務について相殺の意思表示がなされた場合、充当に関する当事者の合意がなければ、相殺適状となった時期の順序に従って、相殺の効力が生じる(512条1項)。

    19A0828RA-1(テキスト訂正案内文 入門民法第1分冊)19A0828RA-2(要件事実(錯誤))19A0828RA-3(特定の効果について)19A0828RA-4(担保責任)19A0828RA-5(さんため)19A0828RA-6(弁済等)19A0828RA-7(511条チャート)