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総務省統計局 吉田敦史、佐藤朋彦 平成19年就業構造基本調査データによる 育児と就業に関する分析について 2010年度統計関連学会連合大会

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総務省統計局 吉田敦史、佐藤朋彦

平成19年就業構造基本調査データによる育児と就業に関する分析について

2010年度統計関連学会連合大会

2

1.研究の背景2.集計の概要3.集計データの特徴4.育児女性の就業・離職状態5.今後の課題

目次

※本稿は、個人の見解をまとめたものであり、総務省の公式見解を示すものではありません。

少子高齢化社会が進展する中で、

結婚や出産・子育て期を迎える男女、

とりわけ女性が就業しつつ同時に、

結婚や出産・子育てをしやすい環境の

整備が求められている。

3

1.研究の背景

就業(就職及び離職の状況、就業抑制要因など)と結婚、出産、子育て、介護等との関係をより詳しく分析する観点から、関係する統計調査において、必要な事項の追加等について検討する。

公的統計の整備に関する基本的な計画(平成21年3月13日閣議決定)において、

とされている。

そこで、就業構造基本調査データから、就業と出産及び子育てとの関係が把握できるか否かを検討

4

1.研究の背景

第1子出生夫婦に関する就業状態等の特徴とその変化

(2009第61回日本人口学会報告藤澤、佐藤)

など

5

就業構造基本調査を用いた「女性の就業と出産の関係」を分析した統計局での研究例

1.研究の背景

育児期間における女性の就業割合等を把握

6

2.概要

本発表では、

「平成19年就業構造基本調査」の個票データを用いて

「育児期間にある女性の就業状態」を集計

就業構造基本調査は、

一般には労働経済学的な分析に利用

就業と出産の双方の情報が利用可能

7

世帯内にχ歳の子どもがいることをχ年前の出生記録とみなして集計(同居児法)

集計の視点を変えることによって、人口学・社会学的な集計に活用が可能

2.概要

8

<育児と就業に係る女性のおもな就業パターン>

出 産

就 業

就 業

離 職

離 職

就 業

就 業

調査時点

就業継続(育休中の者も含む)

出産を機にいったん離職後、就業した者

出産を機に離職中

引き続き就業

◇結 婚

2.概要

9

本発表では、同一世帯内に6歳未満の子どもがいる20~44歳の女性を育児期の女性とし、

- 育児をしながら働く女性の割合

- 育児のために離職した女性の割合(離職率)

育児期の女性の就業・不就業等の状況を明らかにする。

2.概要

など

目的

我が国の就業構造や就業異動の実態、

就業に関する希望など把握するための調査

周期

1956年(第1回)から82年(第10回)までは3年ごと

82年以降は5年ごとの実施。直近は2007年

規模

15歳以上の約100万人、約45万世帯

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3.集計データ:就業構造基本調査

2007年の就業構造基本調査の個票データから、次の条件をすべて満たすデータを抜出する。

(1) 20~44歳の女性

(2) 同一世帯内に0~5歳の子どもがいる

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3.集計データ:選定条件

20~44歳の女性 158,172

育児期の女性 39,935

育児期の女性以外 118,237

標本数

12

6歳未満の子どもの人数階級別女性数1人 2人 3人 4人 5人 6人

3,582,600 1,333,500 109,800 3,600 100 200

図表1 就業構造基本調査における子どもの人数別女性数

3,582,600 2,667,000 329,400 14,400 500 1,200

2007年就業構造基本調査における6歳未満の子どもの推計値は、6,595,100人

子どもの数:

3.集計データ:信頼性

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◇ 人口動態統計の6歳未満の子どもの数とほぼ同数

20~44歳女性と同居する6歳未満の子ども【2007年就業構造基本調査による推計】 6,595,100人

2001~2007年までの出生数(乳児死亡数を除く) 【人口動態統計】 6,634,600人

両統計の差(差率) ▲39,500人(▲0.6%)

図表2 就業構造基本調査と人口動態統計による6歳未満の子どもの数の比較

3.集計データ:信頼性

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図表3 就業状態、6歳未満の子どもの有無・人数別女性人口

◇ 2007年就業構造基本調査で、育児をしている(6歳未満の子どもがいる)女性は、500万人超と推計

20~44歳女性人口

6歳未満の子どもなし

6歳未満の子どもあり

6歳未満の子どもの人数階級別女性数

1人 2人 3人以上

合計 20,700 15,671 5,030 3,583 1,334 114

有業 14,063 11,899 2,164 1,615 506 44

無業 6,637 3,772 2,866 1,968 828 70

(単位:千人)

4.育児女性の就業・離職状態4-1 働きながら育児をする女性の割合

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20~44歳女性人口 6歳未満の

子どもあり

合計 20,700 5,030うち有配偶 11,105 4,787

有業者 14,063 2,164

うち有配偶 6,328 1,979無業者 6,637 2,866

うち有配偶 4,778 2,808

図表4 就業状態、6歳未満の子どもの有無、配偶関係別女性人口(単位:千人)

4-1 働きながら育児をする女性の割合

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総数①うち6歳未満の子どもあり②

②/①

20~44歳女性の有配偶人口

11,105 4,787

うち有業者 6,328 1,979 31.3

図表5 就業状態、6歳未満の子どもの有無別有配偶女性人口及び割合

◇ 20~44歳の有業者の有配偶の女性で、働きながら育児をしている割合は 31%

(単位:千人、%)

4-1 働きながら育児をする女性の割合

17

20~44歳女性人口 6歳未満の

子どもあり

合計 20,700 5,030

うち有配偶 11,105 4,787有業者 14,063 2,164

うち有配偶 6,328 1,979無業者 6,637 2,866

うち有配偶 4,778 2,808

図表4 就業状態、6歳未満の子どもの有無、配偶関係別女性人口(再掲)(単位:千人)

4-2 育児を理由とする離職率

前職の有無、離職理由別に集計

18

総数 前職あり 前職なし離職理由

育児のため 結婚のため 左記以外

総数 4,787 3,782 1,567 1,198 1,018 1,005

有業者 1,979 1,144 353 261 531 835

無業者 2,808 2,638 1,214 937 487 170

図表6 就業状態、前職の有無、離職の理由別6歳未満の子あり有配偶女性人口

◇ 就業していた、20~44歳の女性のうち、「育児のため」に離職した割合(離職率)は 34%

◇ さらに「結婚」による離職も加えると 60%

(単位:千人)

1,567千人 (4,787千人 - 170千人) = 33.9%

4-2 育児を理由とする離職率

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「4-2育児を理由とする離職率」についての問題点

● 離職の時期の期限がない

● 6歳未満の子ども以外の子どもの存在が不明

→ 出産を期に離職したのか否か不明

→ 6歳以上の子どもの存在が理由となって離職しているかもしれない

① 子どもは6歳未満のみ

② 離職時期が7年未満

育児と離職についてより正確に集計するために

の条件を満たす女性を集計。(標本数:20,661)

20

図表7 就業状態、前職の有無、離職期間、離職理由別有配偶女性人口(20~44歳、6歳未満の子どものみ)

◇ 就業していた、子どもが6歳未満のみの女性のうち、7年未満の間(2000年10月~07年9月) の、

「育児のため」の離職率は 35%

(単位:千人)

4-3 育児を理由とする離職率(子どもは6歳未満のみの女性)

6歳未満の子どものみをもつ女性人口

前職あり 前職なしうち離職期間

7年未満 うち離職理由育児のため

総数 2,836 2,282 2,081 951 550

有業 1,024 565 540 157 457

無業 1,811 1,717 1,541 795 93

951千人 (2,836千人 - 93千人) = 34.7%

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6歳未満の子どものみをもつ女性人口

育児のため 結婚のため その他 左記以外

総数 2,258 965 700 222 371うち離職期間7年未満 2,081 951 583 203 343

図表8 就業状態、離職期間、離職理由別離職女性(20~44歳、6歳未満の子どものみ)

注.離職理由が「その他」とは、調査票上の回答肢が「その他」を指す。

◇ 7年未満の間に離職した女性のうち、離職理由が「育児」の割合は 46%

(単位:千人)

◇ さらに、「結婚」による離職も加えると 72%

4-4 離職者に占める育児理由の割合(子どもは6歳未満のみの女性)

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子どもの年齢と離職期間から、子どもの出生と母親の直近の離職との関係をみることができる。

参考.3歳の第1子のみを持つ女性の直近の離職期間との関係

:妊娠期間及び子どもが0歳の期間

直近の離職期間

総数 1年未満

1~2年未満

2~3年未満

3~4年未満

4~5年未満

5~6年未満

6~7年未満

7年以上

女性人口

188.9 32.9 16.2 13.0 40.6 42.5 16.1 9.5 18.2

割合 100.0 17.4 8.6 6.9 21.5 22.5 8.5 5.0 9.6

(単位:千人,%)

4-5 第1子と第2子の出生時期と離職の関係

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子どもが2人の場合、第1子の出生と第2子の出生と母親の直近の離職との関係をみることができる。

第1子出産 第2子出産

②第1子出産の前後1年

④第2子出産の前後1年

③第1子と第2子出産の間

①第1子出産以前

⑤第2子出産以後

図表9 直近の離職時期別有配偶女性(20~44歳、6歳未満の子どもが2人のみの場合)

有業者

10.3 30.0 7.9 60.8 70.9

(5.7) (16.7) (4.4) (33.9) (39.5)

無業者

146.2 368.2 8.6 70.2 15.4

(24.1) (60.6) (1.4) (11.5) (2.5)

※ 無業者及び有業者の単位は千人。括弧書きは構成比率(%)

直近の離職時期

24

直近の離職期間

総数1年未満

1~2年未満

2~3年未満

3~4年未満

4~5年未満

5~6年未満

6~7年未満

7年以上

子どもの年齢パターン

総数 607.8 35.8 30.6 48.0 98.4 125.7 102.6 93.3 73.4

1,5歳 35.9 0.5 2.2 1.6 0.1 1.5 8.3 12.1 9.7

1,4歳 59.5 0.8 2.6 3.2 1.2 15.7 19.4 8.9 7.7

1,3歳 69.8 1.2 2.5 1.8 23.3 27.6 7.1 3.5 2.6

1,2歳 14.6 0.0 0.5 1.7 7.9 3.3 0.3 0.7 0.2

図表10子どもの年齢、直近の離職時期別無業女性(20~44歳、6歳未満の子どもが2人のみの場合)

単位:千人

:④第2子出産の前後1年:②第1子出産の前後1年

:①第1子出産以前 :③第1子と第2子の出産の間

:⑤第2子出産以後

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年齢差第1,2子出生の合間年数

①第1子出生以前

②第1子出生前後

③第1,2子出生の間

④第2子出生前後

⑤第2子出生以後

1歳 0年 17.9 35.1 0.0 10.6 4.5

2歳 0年 55.0 159.1 0.0 21.3 6.5

3歳 1年 43.9 114.0 4.2 19.6 2.5

4歳 2年 18.6 40.6 2.7 13.4 0.5

5歳 3年 2.7 8.6 1.7 5.3 0.0

図表11直近の離職時点、子どもの年齢差別無業女性数(20~44歳、6歳未満の子どもが2人のみの場合)

単位:千人

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直近の離職時点第1子と第2子の年齢差

①第1子出生以前

②第1子出生前後

③第1,2子出生の間

④第2子出生前後

⑤第2子出生以後

1歳 26.4 51.7 0.0 15.6 6.6

2歳 22.7 65.7 0.0 8.6 2.7

3歳 23.8 61.9 2.3 10.6 1.4

4歳 24.6 53.6 3.6 17.7 0.7

5歳 14.8 47.3 9.3 29.1 0.0

図表12 直近の離職時点、子どもの年齢差別割合(20~44歳、6歳未満の子どもが2人のみの場合)

単位:%

27

直近の離職時点第1子と第2子の年齢差

①第1子出生以前

②第1子出生前後

③第1,2子出生の間

④第2子出生前後

⑤第2子出生以後

1歳 26.4 51.7 0.0 15.6 6.6

2歳 22.7 65.7 0.0 8.6 2.7

3歳 23.8 61.9 2.3 10.6 1.4

4歳 24.6 53.6 3.6 17.7 0.7

5歳 14.8 47.3 9.3 29.1 0.0

図表12 直近の離職時点、子どもの年齢差別割合(20~44歳、6歳未満の子どもが2人のみの場合)

単位:%

78.1

88.5

85.7

78.2

62.1

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図表13 子どもの年齢差別にみた、直近の離職時点別の離職無業女性の累積割合

子どもを2人持つ、就業

経験のある無業女性は、第1子の出生前後までに総じて離職している傾向がある。

29

5.今後の課題

① 第1子、第2子と離職の関係(有業者)

第2子出 産

離職

第1子出 産

離職

就業 復職

就業

離職

継続就業

復職

復職

調査時点

現状:調査時点に最も近い離職と復職のみを把握可能

複数の子どもがいる場合、

就業と離職の繰り返しを

把握可能か。

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5.今後の課題

② 世帯や個人の属性などを説明変数とする等の計量分析の手法による分析

③ 調査の企画の面からは「結婚の時期(時点)」の把握 等

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ご静聴ありがとうございました。