1.物質に関する基本的事項2002/02/18  · 生産量 (t) 490,566 442,950 393,092 442,067...

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1 本物質は、第 3 次とりまとめにおいて、環境リスク初期評価結果を公表しているが、環境実 測データ及び生態毒性の新たな知見を踏まえ、再度評価を行った。 1.物質に関する基本的事項 (1)分子式・分子量・構造式 物質名:メタクリル酸メチル (別の呼称:メチルメタクリレート、2-メチルプロペン酸メチル、MMACAS 番号:80-62-6 化審法官報公示整理番号:2-1036 化管法政令番号:1-420 RTECS 番号:OZ5075000 分子式:C 5 H 8 O 2 分子量:100.12 換算係数:1ppm=4.09mg/m 3 (気体、25) 構造式: H 3 C H 2 C O O CH 3 (2)物理化学的性状 本物質は無色透明の液体であり、特徴的な臭気がある 1) 融点 -47.552) -483) , -504) 沸点 100.62) 100.53) 1014) 密度 0.9377 g/cm 3 (25) 2) 蒸気圧 38.3 mmHg (=5.10×10 3 Pa) (25) 2) 38.4 mmHg (=5.1×10 3 Pa) (25) 3) 28 mmHg (=3.73×10 3 Pa) (20) 4) 40 mmHg (=5.3×10 3 Pa) (26) 4) 分配係数(1-オクタノール/水) (logKow) 1.38 2) , 3), 5) 1.38(20) 4) 解離定数(pKa水溶性(水溶解度) 1.50×10 4 mg/L (25) 3) 1.565×10 4 mg/L (20) 6) (3)環境運命に関する基礎的事項 メタクリル酸メチルの分解性及び濃縮性は次のとおりである。 生物分解性 好気的分解(分解性の良好な物質 7) 分解率:BOD 94.3%TOC()*%GC()*%UV-VIS()*%(試験期間:2 週間、 被験物質濃度:100 mg/L、活性汚泥濃度:30 mg/L8) (備考:*直接定量において(水+被験物質)系、(汚泥+被験物質)系ともに、揮 散、加水分解、及び微生物による分解等の反応が同時に起こったため、クーロメー ターの 14 日後の残留量が少なく分解度の計算値は示さなかった。 8) [18]メタクリル酸メチル

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  • 18 メタクリル酸メチル

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    本物質は、第 3 次とりまとめにおいて、環境リスク初期評価結果を公表しているが、環境実測データ及び生態毒性の新たな知見を踏まえ、再度評価を行った。

    1.物質に関する基本的事項

    (1)分子式・分子量・構造式

    物質名:メタクリル酸メチル (別の呼称:メチルメタクリレート、2-メチルプロペン酸メチル、MMA) CAS 番号:80-62-6 化審法官報公示整理番号:2-1036 化管法政令番号:1-420 RTECS 番号:OZ5075000 分子式:C5H8O2 分子量:100.12 換算係数:1ppm=4.09mg/m3(気体、25℃) 構造式:

    H3C

    H2C O

    O CH3

    (2)物理化学的性状

    本物質は無色透明の液体であり、特徴的な臭気がある1)。 融点 -47.55℃2)、-48℃3), -50℃4)

    沸点 100.6℃2) 、100.5℃3) 、101℃4)

    密度 0.9377 g/cm3 (25℃) 2)

    蒸気圧

    38.3 mmHg (=5.10×103 Pa) (25℃) 2) 、 38.4 mmHg (=5.1×103 Pa) (25℃) 3)、 28 mmHg (=3.73×103 Pa) (20℃) 4)、 40 mmHg (=5.3×103 Pa) (26℃) 4)

    分配係数(1-オクタノール/水)(logKow) 1.382) , 3), 5) 、1.38(20℃) 4)

    解離定数(pKa)

    水溶性(水溶解度) 1.50×104 mg/L (25℃) 3) 、1.565×104 mg/L (20℃)6)

    (3)環境運命に関する基礎的事項

    メタクリル酸メチルの分解性及び濃縮性は次のとおりである。

    生物分解性

    好気的分解(分解性の良好な物質7))

    分解率:BOD 94.3%、TOC(-)*%、GC(-)*%、UV-VIS(-)*%(試験期間:2 週間、被験物質濃度:100 mg/L、活性汚泥濃度:30 mg/L)8)

    (備考:*直接定量において(水+被験物質)系、(汚泥+被験物質)系ともに、揮散、加水分解、及び微生物による分解等の反応が同時に起こったため、クーロメー

    ターの 14 日後の残留量が少なく分解度の計算値は示さなかった。8))

    [18]メタクリル酸メチル

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    化学分解性 OH ラジカルとの反応性(大気中)

    反応速度定数:(2.6±0.5)×10-11cm3/(分子・sec)(25℃、測定値)9) 半減期:2.5~25 時間(反応速度定数を 2.6×10-11cm3/(分子・sec)、OH ラジカル濃度を

    3×106~3×105分子/cm3 10)と仮定して計算) オゾンとの反応性(大気中)

    反応速度定数:5.6~>34 時間(オゾン濃度を 3×1012~5×1011分子/cm3 10)と仮定して計算) 加水分解性 半減期:4 年(25℃、pH 7)12) 生物濃縮性 生物濃縮係数(BCF):3.8 (BCFWIN13)により計算)

    土壌吸着性 土壌吸着係数(KOC):95 14)

    (4)製造輸入量及び用途

    ① 生産量・輸入量等

    本物質の化審法に基づき公表された製造・輸入数量(ただし、製造数量は出荷量を意味し、

    同一事業者内での自家消費分を含んでいない値。)は、平成 21 年度が 410,796 t15)であり、平成 22 年度では 300,000 t16)である。ただし、平成 22 年度製造・輸入数量の届出要領は、平成21 年度までとは異なっている。

    「化学物質の製造・輸入量に関する実態調査」によると本物質の製造(出荷)及び輸入量

    は平成 13 年度、平成 16 年度及び平成 19 年度ともに 100,000~1,000,000 t 未満である17),18),19)。 本物質の化学物質排出把握管理促進法(化管法)における製造・輸入量区分は 100t 以上で

    ある20)。OECD に報告している本物質の生産量は、100,000~1,000,000 t/年未満、輸入量は1,000~10,000 t/年未満である。

    メタクリル酸エステル(モノマー)の国内生産量の推移を表 1.1 に示した21)。

    表 1.1 メタクリル酸エステル(モノマー)の国内生産量の推移

    平成(年) 14 年 15 年 16 年 17 年 18 年

    生産量 (t) 442,399 465,555 464,590 494,418 466,748

    平成(年) 19 年 20 年 21 年 22 年 23 年

    生産量 (t) 490,566 442,950 393,092 442,067 462,591

    ② 用 途

    本物質の主な用途は合成樹脂の原料であり、メタクリル樹脂をはじめ、塗料樹脂や透明

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    ABS 樹脂などの原料のほか、樹脂改質剤の原料、紙のコーティング剤、繊維加工剤、接着剤として使われている。そのほか、ポリメタクリル酸メチルシート (水族館の水槽用などの大型プラスチックガラス)の製造などに使用されている1)。

    (5)環境施策上の位置付け

    本物質は化学物質排出把握管理促進法第一種指定化学物質(政令番号:420)に指定されている。また、本物質は有害大気汚染物質に該当する可能性がある物質に選定されている。

    本物質は、旧化学物質審査規制法(平成 15 年改正法)において第二種監視化学物質(通し番号:1048)に指定されていた。

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    2.ばく露評価

    環境リスクの初期評価のため、わが国の一般的な国民の健康や水生生物の生存・生育を確保

    する観点から、実測データをもとに基本的には化学物質の環境からのばく露を中心に評価する

    こととし、データの信頼性を確認した上で安全側に立った評価の観点から原則として最大濃度

    により評価を行っている。

    (1)環境中への排出量

    本物質は化学物質排出把握管理促進法(化管法)の第一種指定化学物質である。同法に基づ

    き公表された、平成 22 年度の届出排出量1)、届出外排出量対象業種・非対象業種・家庭・移動体2),3)から集計した排出量等を表 2.1 に示す。なお、届出外排出量家庭・移動体の推計はなされていなかった。

    表 2.1 化管法に基づく排出量及び移動量(PRTR データ)の集計結果(平成 22 年度)

    大気 公共用水域 土壌 埋立 下水道 廃棄物移動 対象業種 非対象業種 家庭 移動体

    全排出・移動量 413,160 22,934 0 0 165 602,425 29,222 7,145 - - 436,093 36,367 472,460

    メタクリル酸メチル

    業種等別排出量(割合) 413,160 22,934 0 0 165 602,425 29,221 7,145 0 0

    242,205 22,934 0 0 165 534,013 255 届出 届出外

    (58.6%) (100%) (100%) (88.6%) (0.9%) 92% 8%

    90,162 0 0 0 0 10,657

    (21.8%) (1.8%)

    29,900 0 0 0 0 1,700

    (7.2%) (0.3%)

    27,618

    (94.5%)

    17,000 0 0 0 0 1,149

    (4.1%) (0.2%)

    8,367 0 0 0 0 3,454 82

    (2.0%) (0.6%) (0.3%)

    7,347 0 0 0 0 39,270

    (1.8%) (6.5%)

    5,800 0 0 0 0 617 194

    (1.4%) (0.1%) (0.7%)

    3,850 0 0 0 0 0 731

    (0.9%) (2.5%)

    3,730 0 0 0 0 4,510

    (0.9%) (0.7%)

    2,331 0 0 0 0 3,464

    (0.6%) (0.6%)

    1,290 0 0 0 0 1,290

    (0.3%) (0.2%)

    821 0 0 0 0 1,820 21

    (0.2%) (0.3%) (0.07%)

    178

    (0.6%)

    0 0 0 0 0 110 133

    (0.02%) (0.5%)

    130 0 0 0 0 270

    (0.03%) (0.04%)

    110 0 0 0 0 42

    (0.03%) (0.007%)

    110 0 0 0 0 0

    (0.03%)

    9

    (0.03%)

    4 0 0 0 0 0

    (0.0009%)

    4 0 0 0 0 59

    (0.0009%) (0.010%)

    7,145

    (100%)

    届出 届出外  (国による推計) 総排出量  (kg/年)

    排出量  (kg/年) 移動量  (kg/年) 排出量  (kg/年) 届出

    排出量

    届出外

    排出量合計

    医療用機械器具

    ・医療用品製造業

    総排出量の構成比(%)

    化学工業

    プラスチック製品

    製造業

    倉庫業

    ゴム製品製造業

    木材・木製品製造業

    電気機械器具製造業

    家具・装備品製造業

    一般機械器具製造業

    その他の製造業

    窯業・土石製品

    製造業

    出版・印刷・同関連

    産業

    輸送用機械器具

    製造業

    下水道業

    精密機械器具製造業

    パルプ・紙・紙加工品

    製造業

    非鉄金属製造業

    鉄鋼業

    高等教育機関

    計量証明業

    金属製品製造業

    接着剤

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    本物質の平成 22 年度における環境中への総排出量は、約 470 t となり、そのうち届出排出量は約 440 t で全体の 92%であった。届出排出量のうち約 410 t が大気、約 23 t が公共用水域へ排出されるとしており、大気への排出量が多い。この他に下水道への移動量が約 0.17 t、廃棄物への移動量が 600 t であった。届出排出量の主な排出源は、大気への排出が多い業種は化学工業(59%)、プラスチック製品製造業(22%)であり、公共用水域への排出は化学工業のみであった。 表2.1に示したようにPRTRデータでは、届出排出量は媒体別に報告されているが、届出外排

    出量の推定は媒体別には行われていないため、届出外排出量対象業種の媒体別配分は届出排出

    量の割合をもとに、届出外排出量非対象業種・家庭の媒体別配分は「平成 22 年度 PRTR 届出外排出量の推計方法等の詳細」3)をもとに行った。届出排出量と届出外排出量を媒体別に合計した

    ものを表 2.2 に示す。

    表 2.2 環境中への推定排出量

    推定排出量(kg) 大 気 水 域 土 壌

    447,837 24,623

    0

    (2)媒体別分配割合の予測

    本物質の環境中の媒体別分配割合を、表 2.1 に示した環境中への排出量を基に USES3.0 をベースに日本固有のパラメータを組み込んだ Mackay-Type Level III 多媒体モデル4)を用いて予測した。予測の対象地域は、平成22年度に環境中及び公共用水域への排出量が最大であった広島県(大気への排出量約 43 t、公共用水域への排出量 22 t)及び大気への排出量が最大であった新潟県(大気への排出量約 52 t、公共用水域への排出量 0.012 t)とした。予測結果を表 2.3 に示す。

    表 2.3 媒体別分配割合の予測結果

    媒 体

    分配割合(%) 上段:排出量が最大の媒体、下段:予測の対象地域

    環境中 大 気 公共用水域

    広島県 新潟県 広島県

    大 気 16.2 91.6 16.2

    水 域 83.2 6.8 83.2

    土 壌 0.3 1.5 0.3

    底 質 0.3 0.0 0.3 注:数値は環境中で各媒体別に最終的に分配される割合を質量比として示したもの

    (3)各媒体中の存在量の概要

    本物質の環境中等の濃度について情報の整理を行った。媒体ごとにデータの信頼性が確認さ

    れた調査例のうち、より広範囲の地域で調査が実施されたものを抽出した結果を表 2.4 に示す。

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    表 2.4 各媒体中の存在状況

    媒体 幾何 平均値 a)

    算術 平均値

    最小値 最大値 a)検出

    下限値 b)検出率 調査地域 測定年度 文献

    一般環境大気 µg/m3 0.19 0.2 0.11 0.3 -c) 7/7 全国 2010 5) 0.008 0.008 0.007 0.009 0.0035 3/3 川崎市 2009 6) 0.23 0.23 0.17 0.28 0.0035 3/3 川崎市 2007 6)

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    行った(表 2.5)。化学物質の人による一日ばく露量の算出に際しては、人の一日の呼吸量、飲水量及び食事量をそれぞれ 15 m3、2 L 及び 2,000 g と仮定し、体重を 50 kg と仮定している。

    表 2.5 各媒体中の濃度と一日ばく露量 媒 体 濃 度 一 日 ば く 露 量 大 気

    一般環境大気 0.19 µg/m3程度(2010) (限られた地域で0.23 µg/m3の報告がある(2007))

    0.057 µg/kg/day 程度(限られた地域で0.069 µg/kg/day の報告がある)

    室内空気 0.08 µg/m3程度(2004)(算術平均値) 0.024 µg/kg/day 程度

    水 質

    飲料水 データは得られなかった データは得られなかった 地下水 データは得られなかった データは得られなかった

    均 公共用水域・淡水 概ね 0.008 µg/L 未満 (2006) 概ね 0.00032 µg/kg/day 未満

    食 物 過去のデータではあるが 0.1µg/g 未満程度(2001)

    過去のデータではあるが4µg/kg/day未満程度

    土 壌 データは得られなかった データは得られなかった

    大 気

    一般環境大気 0.3 µg/m3 程度(2010) (限られた地域で0.28 µg/m3の報告がある(2007))

    0.09 µg/kg/day 程度(限られた地域で0.084 µg/kg/day の報告がある)

    室内空気 2 µg/m3程度(2004) 0.6 µg/kg/day 程度

    水 質

    大 飲料水 データは得られなかった データは得られなかった 地下水 データは得られなかった データは得られなかった

    値 公共用水域・淡水 概ね 0.008 µg/L 未満 (2006) 概ね 0.00032 µg/kg/day 未満

    食 物 過去のデータではあるが 0.1µg/g 未満程度(2001)

    過去のデータではあるが4µg/kg/day未満程度

    土 壌 データは得られなかった データは得られなかった

    人の一日ばく露量の集計結果を表 2.6 に示す。 吸入ばく露の予測最大ばく露濃度は一般環境大気のデータから 0.3 µg/m3程度となった。限ら

    れた地域を調査対象とした一般環境大気の調査において、最大 0.28 µg/m3 の検出が報告されている。また、室内空気の予測最大ばく露濃度は 2 µg/m3 程度となった。一方、化管法に基づく平成 22 年度の大気への届出排出量をもとに、プルーム・パフモデル19)を用いて推定した大気中濃度の年平均値は、最大で 9.6 µg/m3となった。

    経口ばく露の予測最大ばく露量は、公共用水域淡水のデータから算定すると概ね 0.00032 µg/kg/day 未満となった。なお、公共用水域淡水と過去のデータではあるが食物のデータから算定した予測最大ばく露量は、4 µg/kg/day 未満程度となった。一方、化管法に基づく平成 22 年度の公共用水域淡水への届出排出量を全国河道構造データベース20)の平水流量で除し、希釈のみ

    を考慮した河川中濃度を推定すると、最大で 0.17 μg/Lとなった。推定した河川中濃度を用いて経口ばく露量を算出すると 0.0068 µg/kg/day となった。

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    表 2.6 人の一日ばく露量

    媒 体 平均ばく露量(μg/kg/day) 予測最大ばく露量(μg/kg/day)

    大 気 一般環境大気 0.057(限られた地域で 0.069) 0.09(限られた地域で 0.084)

    室内空気 0.024(算術平均値) 0.6

    飲料水

    水 質 地下水

    公共用水域・淡水 0.00032 0.00032

    食 物 (過去のデータではあるが 4) (過去のデータではあるが 4)

    土 壌

    経口ばく露量合計 0.00032 0.00032

    参考値 1 4.00032 4.00032

    総ばく露量 0.057+0.00032 0.09+0.00032

    参考値 1 0.057+4.00032 0.09+4.00032 注:1) アンダーラインを付した値は、ばく露量が「検出(定量)下限値未満」とされたものであることを示す

    2) ( )内の数字は、ばく露量合計の算出に用いていない 3) 総ばく露量は、吸入ばく露として一般環境大気を用いて算定したものである 4) 参考値 1 は、過去のデータを用いた場合を示す

    (5)水生生物に対するばく露の推定(水質に係る予測環境中濃度:PEC)

    本物質の水生生物に対するばく露の推定の観点から、水質中濃度を表 2.7 のように整理した。水質について安全側の評価値として予測環境中濃度(PEC)を設定すると、公共用水域の淡水域、海水域ともに概ね 0.008 µg/L 未満となった。

    化管法に基づく平成 22 年度の公共用水域淡水への届出排出量を全国河道構造データベース20)

    の平水流量で除し、希釈のみを考慮した河川中濃度を推定すると、最大で 0.17 μg/L となった。

    表 2.7 公共用水域濃度

    水 域 平 均 最 大 値

    淡 水 概ね 0.008 µg/L 未満 (2006) 概ね 0.008 µg/L 未満 (2006)

    海 水 概ね 0.008 µg/L 未満 (2006) 概ね 0.008 µg/L 未満 (2006)

    注:淡水は、河川河口域を含む

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    3.健康リスクの初期評価

    健康リスクの初期評価として、ヒトに対する化学物質の影響についてのリスク評価を行った。

    (1)体内動態、代謝

    本物質は消化管、肺、皮膚から速やかに血中に吸収されて代謝を受ける。 14C でラベルした本物質をラットに 5.7 mg/kg 強制経口投与または静脈内投与した結果、2

    時間以内に放射活性の 65%が CO2として呼気中に排泄され、10 日間でそれぞれ呼気中に 88、84%、尿中に 4.7、6.6%、糞中に 2.7、1.7%が排泄され、未変化体での呼気中への排泄は 0.1、0.7%、体内残留は 4.1、6.6%で、そのほとんどが肝臓及び脂肪組織にあった。120 mg/kg に増量して強制経口投与した場合もほぼ同様であったが、未変化体の排泄は 0.1%から 1.4%へと増加した 1) 。また、本物質をラットに強制経口投与した結果、5 分後には分解産物であるメタクリル酸が血中に現れ、10~15 分後にピーク濃度に達した後、1 時間後には極めて低濃度となり、数時間後には検出できなくなった 2) 。

    ラットに本物質 400 mg/m3を 1、2、3、4 時間吸入させた結果、血液、肺、脳における本物質の濃度はばく露時間と無関係にほぼ一定で、それぞれ 11 mg/100 mL、21 µg/g、25 µg/g であった 3) 。

    ラットの尾 12 cm2に本物質を貼り付けてばく露させたところ、3 時間で 0.78 g が吸収されたという報告があり 4) 、ラットへの腹腔内投与では、24 時間で放射活性の 80%が CO2として呼気中に、7~14%が尿中に排泄され、組織での残留は約 3%であった 5) 。

    ヒトでは、本物質を主成分とする骨セメントを用いた関節形成術での観察例が報告されて

    おり、骨セメント挿入の 5 分後には血中に本物質及びメタクリル酸が有意な量でみられたが、メタクリル酸の濃度変化は本物質よりも遅れる傾向にあった 6) 。膝関節形成術では、止血帯開放の 2~10 分後に静脈血中の本物質濃度がピークを示し、半減期は 47~55 分であったという報告 7) がある一方、股関節全置換術では、本物質の血中最高濃度は 30~60 秒後にみられ、3、6 分後には既に検出されなくなり、初期半減期は 0.3 分、後期半減期は 3 分であったという報告もある 8) 。

    本物質はカルボキシエステラーゼにより加水分解されてメタクリル酸になり 9) 、エステル

    化を受けて CoA エステル、さらにヒドロキシル化されてβ-ヒドロキシイソ酪酸となり、CoAによる酸化とエステル化を受け、メチルマロニル CoA を経てサクシニル CoA に変化し、クエン酸回路に入って CO2と水に代謝される 1,5) 。また、加水分解で生じたメタノールからのホルムアルデヒド生成がラットの肝ミクロソームを用いた実験で観察されている 10) 。

    尿中代謝物として、ラットでメチルマロン酸、メタクリル酸、コハク酸、メチルマロン酸

    セミアルデヒド、β-ヒドロキシイソ酪酸 1,5) 、メルカプツール酸 9) などが、ヒトではメチルマロン酸 5) 、メタノール 11) が確認されている。

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    10

    (2)一般毒性及び生殖・発生毒性

    ① 急性毒性 12)

    表 3.1 急性毒性

    動物種 経路 致死量、中毒量等 ラット 経口 LD50 7,872 mg/kg マウス 経口 LD50 3,625 mg/kg

    モルモット 経口 LD50 5,954 mg/kg ウサギ 経口 LD50 8,700 mg/kg イヌ 経口 LD50 4,725 mg/kg ウサギ 経皮 LD50 > 5,000 mg/kg ラット 吸入 LC50 78,000 mg/m3 (4hr) マウス 吸入 LC50 18,500 mg/m3 (2hr)

    モルモット 吸入 LCLo 19,000 mg/m3 (5hr) ウサギ 吸入 LCLo 17,500 mg/m3 (4.5hr) イヌ 吸入 LCLo 41,200 mg/m3 (3hr)

    注:( )内の時間はばく露時間を示す。

    本物質は眼、皮膚、気道を刺激し、皮膚に付くと発赤、眼に入ると発赤、痛みを生じる。

    吸入すると咳、咽頭痛、頭痛、嗜眠、息切れ、意識喪失を生じ、経口摂取すると吐き気、嘔

    吐を催す。皮膚が感作されることもある 13) 。ヒトの LCLo として 60 mg/m3 あるいは 510 mg/m3という報告がある 12) 。また、250 mg/m3で粘膜刺激症状が、50~100 mg/m3の 20~90分ばく露でめまい、眠気、意識障害が起こったという報告もある 14) 。

    ② 中・長期毒性

    ア)Wistar ラット雌雄各 25 匹を 1 群とし、0、0.5、5、140 mg/kg/day を 2 年間飲水投与した結果、140 mg/kg/day 群で一時的な摂餌量の減少、飲水量の有意な減少を認め、実験初期には体重増加の有意な抑制を認めたが、雌で 3 週目、雄で 6 週目までに対照群と同等のレベルにまで回復した。また、140 mg/kg/day 群の雌で腎臓相対重量の有意な増加を認めたが、すべての群で血液、尿、組織の各検査結果に影響はなかった 15) 。この結果から、NOAELを 5 mg/kg/day とする。

    イ)ビ-グル犬雌雄各 2 匹を 1 群とし、0、10、100、1,470 ppm の濃度で餌に混ぜて 2 年間投与した結果、いずれの群でも体重、臓器重量、血液、尿、組織の各検査で影響を認めなか

    った 15) 。 ウ)Wistar ラット雄 30 匹を 1 群とし、0、500 mg/kg/day を 21 日間強制経口投与した結果、500

    mg/kg/day 群で 3 匹が死亡し、自発運動及び学習能力の低下、攻撃性の増加がみられ、脳橋から延髄、海馬にかけて生体アミン量の増加、大脳皮質及び線条体でのノルアドレナリン

    の増加、線条体でのドーパミンの減少、視床下部でのセロトニンの増加がみられた 16) 。 エ)Fischer 344 ラット雌雄 70 匹を 1 群とし、0、102、409、1,620 mg/m3を 2 年間(6 時間/日、

    5 日/週)吸入させた結果、生残率、臨床所見、臓器重量、血液、臨床化学成分及び尿の各検査で影響を認めなかったものの、1,620 mg/m3群の雌で 52 週以降に間欠的な体重の有意な減少がみられた。また、409 mg/m3以上の群の雌雄で鼻腔の嗅部に用量に依存した嗅上皮

  • 18 メタクリル酸メチル

    11

    及びその下部組織(嗅腺を含む)の変性及び萎縮、基底細胞の過形成、呼吸上皮のような

    線毛を持った上皮の出現、粘膜及び粘膜下組織の炎症を認め、1,620 mg/m3群の鼻腔の呼吸上皮で粘膜下の腺及び杯状細胞の過形成、粘膜及び粘膜下組織の炎症を認めた 17)。この結

    果から、NOAEL を 102 mg/m3 (ばく露状況で補正:18 mg/m3)とする。 オ)Fischer 344/N ラット及び B6C3F1マウス雌雄各 50 匹を 1 群とし、雄ラット及びマウスに

    0、2,040、4,030 mg/m3、雌ラットに 0、1,020、2,040 mg/m3を 2 年間(6 時間/日、5 日/週)吸入させた結果、生残率に影響はなかったが、2,040 mg/m3群の雌ラット及び 4,030 mg/m3

    群の雄ラット、2,040 mg/m3以上の群のマウスで体重増加の抑制を認めた。また、1,020 mg/m3

    以上の群の雌ラット及び 2,040 mg/m3以上の群の雄ラットの鼻腔で炎症、嗅上皮の変性(萎縮及び上皮化生)に有意な発生率の増加を認め、2,040 mg/m3以上の群の雄ラットで肺胞マクロファージの増加、2,040 mg/m3群の雌ラットで肺に限局性あるいは多病巣性の線維増生の発生率に有意な増加を認めた。マウスでは、2,040 mg/m3 以上の群の雌雄の鼻腔で炎症、上皮の過形成、鼻粘膜の細胞質封入体、嗅上皮の変性の発生率に有意な増加を認め、4,030 mg/m3群の雄の肺で間質性炎症の発生率に有意な増加を認めた 18,19) 。この結果から、LOAELをラットで 1,020 mg/m3(ばく露状況で補正:180 mg/m3)、マウスで 2,040 mg/m3(ばく露状況で補正:360 mg/m3)とする。

    カ)Lakeview Golden ハムスター雌雄各 56 匹を 1 群とし、0、101、410、1,630 mg/m3を 78 週間(6 時間/日、5 日/週)吸入させた結果、1,630 mg/m3群の雌雄で体重の有意な減少、死亡率の増加を認めたが、臨床症状、血液及び組織検査等に影響はなかった 17) 。この結果から、

    NOAEL を 410 mg/m3(ばく露状況で補正:73 mg/m3)とする。

    ③ 生殖・発生毒性

    ア)Sprague-Dawley ラット雌 22~27 匹を 1 群とし、0、110,000 mg/m3 を妊娠 6 日目から 15日目まで吸入(約 1 時間/日)させた結果、約 20%の母ラットが死亡し、胎仔では早期死亡、体重及び頭尾長の減少に有意差を認め、骨化遅延、血腫の発生率にも増加がみられた 20) 。

    この結果から、LOAEL は 110,000 mg/m3(ばく露状況で補正:4,580 mg/m3)であった。 イ)CD-BR ラット雌 27 匹を 1 群とし、0、410、1,250、4,820、8,300 mg/m3を妊娠 6 日目から

    15 日目まで吸入(6 時間/日)させた結果、410 mg/m3以上の群で母ラットの体重増加の抑制、摂餌量の減少がみられたが、410 及び 1,250 mg/m3群での体重増加の抑制は一過性のものであった。一方、生殖・発生に関連したパラメータ(子宮重量、黄体数、着床部位、吸

    収胚、胎仔数、胎児の体重、性比、外表及び内臓系、骨格系の奇形・変異)には影響を認

    めなかった 21) 。この結果から、NOAEL を 8,300 mg/m3(ばく露状況で補正:2,080 mg/m3)とする。

    ウ)CD-1 マウス雌 18~33 匹を 1 群とし、0、475、1,640 mg/m3を妊娠 4 日目から 13 日目まで吸入(3 時間/日を 2 回/日、間に 1 時間休止)させた結果、母マウスではばく露に関連した影響を認めなかった。また、475 mg/m3以上の群で生存胎仔の体重に有意な減少を認めたが、その変化に用量依存性はなく、胎仔の生存率、外表及び内臓系、骨格系の奇形の発生

    率にも影響はなかった 22) 。この結果から、NOAEL を 1,640 mg/m3(ばく露状況で補正:410 mg/m3)とする。

    エ)CD-1 マウス雄 16 匹を 1 群とし、0、410、4,100、36,900 mg/m3を 5 日間吸入(6 時間/日)

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    12

    吸入させながら、同系統の未ばく露の雌と 8 週間交尾させた結果、雄の受精能力、出生仔の生存率、着床後胚損失率に影響を認めず、突然変異誘発性もなかった 23) 。この結果から、

    NOAEL を 36,900 mg/m3(ばく露状況で補正:9,230 mg/m3)とする。 オ)母ラットへの 0.01 mg/m3のばく露で、子宮内死亡、血管症状を伴った胎仔の増加、機能

    未熟な新生仔発生率に増加を認めたという報告 24) があるが、抄録のみの報告であり、また、

    他の実験結果と比べて著しく低い値であるため、信頼性は低いものと考えられる。

    ④ ヒトへの影響

    ア)本物質による皮膚障害は産業現場ではもちろんのこと、歯科補綴治療時にもみられる。

    ボランティア 50 人を対象に実施した本物質の 48 時間パッチテストでは、その 1/3 に軽度の局所刺激がみられ、10 日間の反復テストでは 10 人が感作された。また、本物質を 5%含んだ補綴に用いる溶液の 48 時間パッチテストでは、約半数が感作された 14) 。

    イ)自動車工場でアクリル樹脂溶液を取り扱う作業に従事していた労働者 25人のうち 7 人で、指及び手背部に丘疹や小水疱を伴う接触皮膚炎が起こったという報告がある 14) 。

    ウ)ボタン製造工場で 80 人の労働者(大部分が女性)の健診の結果、高血圧、萎縮性鼻炎、結膜炎、自律神経障害の所見が高い比率でみられたという報告があり、本物質のばく露濃

    度は最高で 800~950 mg/m3であった。なお、血液及び尿検査で異常はなかった 14) 。 エ)本物質を取り扱う二つの工場(37~130 mg/m3で平均 76 mg/m3 と 49~160 mg/m3で平均

    89.6 mg/m3)で本物質のばく露を 5 年以上 10 年未満の受けた労働者 8 人、10 年以上のばく露を受けた労働者 32 人(うち、非喫煙者 13 人、元喫煙者 11 人、喫煙者 16 人)と対照群45 人を対象に実施した肺機能調査では、慢性咳の発生率は対照群では 1%であったが、ばく露群では 20%であった。また、勤務前の肺活量測定値には両群で差はなかったが、勤務中の測定では 9 つのパラメータのうち 2 つ(MEF50及び MEF50/MEF)がばく露群で有意に低下した。これらの結果には喫煙習慣を調整した後でも有意な差がみられ、咳の発生率と

    軽度の気道閉塞の増加には本物質のばく露との関連があった 25) 。 オ)ドイツのポリメタクリル酸メチル版製造工場で本物質のばく露を受けていた男性労働者

    211 人(平均勤続年数 8.8 年)、対照群 55 人を対象に実施した疫学調査では、本物質の労働環境濃度は作業内容によって 12.3~41 mg/m3(8 時間時間加重平均の幾何平均値)、41~82 mg/m3、82~123 mg/m3、123~164 mg/m3に分けられ、各濃度区分に該当する労働者はそれぞれ 7、128、20、56 人であった。調査は問診票(関連生活様式、作業内容、鼻・咽喉・呼吸器系・皮膚・喘息を含むアレルギー反応などの既往症)及び鼻腔の肉眼的検査によっ

    て実施したが、いずれのばく露群でもばく露に関連した呼吸器系への影響や皮膚感作はみ

    られなかった。なお、眼及び上気道の刺激が報告されたが、それらは一過性で、410 mg/m3

    以上に短時間ばく露された時に限られていた 26) 。 カ)本物質に 3 ヶ月から 26 年間吸入ばく露された労働者で、用量依存的に神経衰弱、喉頭炎

    及び低血圧の発生率が増加したという報告がある 27) 。また、頭痛、眩暈、神経過敏、集中

    力散漫、記憶力の低下というような不特定の症状が吸入あるいは経皮によるばく露を受け

    た労働者で報告されている 28,29) 。 キ)1976 年から 1985 年の間に本物質のばく露を受けた女性労働者のコホート調査では、合

    計 502 例の妊娠を対象にした分析の結果、10 mg/m3未満あるいは未ばく露の労働環境で働

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    13

    いていた女性と比べて、20 mg/m3以上の労働環境にあった女性で早期流産の発生率に有意な増加が認められた。合計 319 例の分娩を対象にした分析では、より高濃度となる労働環境にあった妊婦で後期流産及び妊娠中の合併症の発生率に増加がみられ、新生児データの

    分析では、バックグランドデータと比べて、10 mg/m3未満の労働環境にあった女性で仮死、先天性奇形、死産の発生率に増加がみられた 30) 。また、本物質及び塩化ビニルにばく露さ

    れた男女の労働者で性障害(詳細不明)を認めたという報告 31) もあるが、どちらも詳細な

    ばく露状況は報告されていない。

    (3)発がん性

    ① 主要な機関による発がん性の評価

    国際的に主要な機関による本物質の発がん性の評価については、表 3.2 に示すとおりである。

    表 3.2 主要な機関による対象物質の発がん性評価一覧

    機 関(年) 分 類

    WHO IARC(1994 年) 3 ヒトに対する発がん性については分類できない。 EU EU - 評価されていない。

    USA EPA(1998 年) E ヒトに対して発がん性がないという証拠がある。 ACGIH(2000 年) A4 ヒトに対する発がん性物質として分類できない。 NTP - 評価されていない。

    日本 日本産業衛生学会 - 評価されていない。 ドイツ DFG - 評価されていない。

    ② 発がん性の知見

    ○ 遺伝子傷害性に関する知見

    in vitro 試験系では、ネズミチフス菌で遺伝子突然変異 32,33) 、ヒトリンパ球で姉妹染色分体交換 34) を誘発しなかったが、マウスリンパ腫細胞(L5178Y)で遺伝子突然変異、染色体異常及び小核 35) 、チャイニーズ卵巣細胞(CHO)で染色体異常及び姉妹染色分体交換 36)

    を誘発した。 in vivo 試験系では、ラット骨髄細胞で小核及び染色体異常を誘発したが 37) 、マウス骨髄

    細胞で小核を誘発しなかった 33) 。

    ○ 実験動物に関する発がん性の知見

    Wistar ラット雌雄各 25 匹を 1 群とし、0、6、60、2,000 mg/L(5 ヶ月目から 6、60 mg/Lを 7、70 mg/L に増加)の濃度で飲水に添加し、2 年間投与した結果、投与に関連した腫瘍の増加はみられなかった 15) 。

    Fischer 344 ラット雌雄 70 匹を 1 群とし、0、102、409、1,620 mg/m3を 2 年間(6 時間/日、5 日/週)吸入させた結果、ばく露に関連した腫瘍の増加はみられなかった。また、Lakeview Golden ハムスター雌雄各 56 匹を 1 群とし、0、101、410、1,630 mg/m3を 78 週間(6 時間/

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    日、5 日/週)吸入させた結果、ばく露に関連した腫瘍の増加はみられなかった 17) 。 Fischer 344/N ラット雌雄各 50 匹を 1 群とし、雄に 0、2,050、4,100 mg/m3を、雌に 0、1,025、

    2,050 mg/m3を 102 週間(6 時間/日、5 日/週)吸入させた結果、雌の 2,050 mg/m3群で単核性白血病の発生率に有意な増加を認めたが、その発生率は過去に同系統のラットでみられ

    た自然発生率の範囲に収まるものであった 18,19) 。B6C3F1マウス雌雄各 50 匹を 1 群とし、0、2,050、4,100 mg/m3を 102 週間(6 時間/日、5 日/週)吸入させた結果、ばく露に関連した腫瘍の増加はみられなかった 18,19)。

    ○ ヒトに関する発がん性の知見

    米国の本物質製造工場及びアクリル繊維工場で操業開始年(1951 年及び 1957 年)から1974 年の間に雇用された男性労働者 2,671 人(白人 2,473 人、非白人 198 人)を対象として1983 年末まで観察した疫学調査では、本物質のばく露群(累積ばく露量 0.1 ppm・年以上)及び対照群(累積ばく露量 0.1 ppm・年未満)について喫煙歴、工場、初ばく露からの経過期間、人種で調整し、米国人口から求めた標準化死亡比(SMR)を推定した結果、ばく露群(28,021 人・年)では全死因による死亡が 114 人、SMR 0.67(統計検定は実施されたが、信頼区間の報告はない)で、SMR の有意な低下を認めた。また、がんによる死亡は 35 人、SMR 1.04(同)で、SMR は増加したが、有意差を認めなかった。消化器系のがんによる死亡は 6 人(期待値 8.1 人)で、うち 1 人は大腸がん(期待値 2.6 人)であった。また、本物質の累積ばく露量を 0、0~0.19、0.20~2.0、2.0 以上 ppm・年のカテゴリーに分け、がんによる死亡との関連を調べたが、累積ばく露量に依存した死亡率の上昇は認めなかった。な

    お、労働者は本物質以外にもアクリル酸エチルを含む複数の化学物質のばく露を受けてお

    り、1960~1983 年の両工場での 8 時間荷重平均濃度は 1.0 ppm 未満、ピーク値は本物質製造工場で 7.8 ppm、アクリル繊維工場で 11.5 ppm であった 38)。 米国のアクリル酸エチル製造工場で 1933~1945 年に雇用された 3,934 人(コホートⅠ)

    及び 1946~1982 年に雇用された 6,548 人(コホートⅡ)、アクリルシート製造工場で 1943~1982 年に雇用された 3,381 人(コホートⅢ)の男性労働者(白人)を対象とし、1986 年末まで観察した疫学調査では、本物質とアクリル酸エチルの同時ばく露があり、その他に

    も二塩化エチレン、塩化メチレンなどのばく露もあったが、本物質が最も広範に使用され

    た化学物質であった。米国白人男性人口から SMR を求めた結果、コホートⅠで結腸がんのSMR に有意な増加(死亡 38 人、SMR 1.50:95%信頼区間 1.06~2.05)がみられ、コホートⅠのなかではばく露量の最も多い群で結腸がんの SMR に大きな増加を認めたが、SMR とばく露後の経過年数との関連性は認められなかった。また、コホートⅠでは直腸がんでも

    SMR の増加(SMR1.92;95%信頼区間 0.92~3.40)がみられた。なお、コホートⅡでは結腸がん、直腸がんの SMR 増加はみられず、コホートⅢでは結腸がんの SMR に増加がみられたが有意差はなく、直腸がんの SMR には増加がみられなかった 39, 40) 。 イギリスのメタクリル酸メチル重合体シート製造工場で1949~1988年に製造部門に従事

    した 1,887 人、配送部門に従事した 291 人の男性労働者を対象とした疫学調査では、1995年末までに製造部門の 575 人(悪性腫瘍 166 人)、配送部門の 47 人(悪性腫瘍 18 人)が死亡していたが、イングランド及びウェールズの男性人口から求めた SMR には有意な増加は

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    15

    みられず、むしろ、製造部門では全死因、心疾患の SMR が有意に低かった。なお、製造部門での平均ばく露期間は 7.6 年、平均ばく露濃度は 13.2 ppm(8 時間加重平均濃度)であった。また、同種の別工場で 1949~1970 年に製造部門に従事した男性労働者 2,146 人の調査では、1995 年末までに 700 人(悪性腫瘍 223 人)が死亡しており、全死因、呼吸器疾患(がんを除く)の SMR は有意に低かったが、喉頭がんの SMR は 2.9(95%CI: 1.06~6.3)、呼吸器がんの SMR 1.23(95%CI: 1.00~1.48)と有意に高かった。しかし、結腸がんや直腸がん、胃がんの SMRに有意な増加はみられず、食道がんでは死亡 0人で SMRは有意に低かった。喉頭がんや呼吸器がんの SMR 増加には短期間の雇用(6 ヶ月未満)であった労働者の寄与が大きかったため、本物質ばく露との関連はないと考えられ、結腸がんや直腸がんについ

    ても本物質ばく露との関連はないと考えられた 41) 。

    (4)健康リスクの評価

    ① 評価に用いる指標の設定

    非発がん影響については一般毒性及び生殖・発生毒性に関する知見が得られているが、発

    がん性については十分な知見が得られず、ヒトに対する発がん性の有無については判断でき

    ない。このため、閾値の存在を前提とする有害性について、非発がん影響に関する知見に基

    づき無毒性量等を設定することとする。 経口ばく露については、中・長期毒性ア)のラットの試験から得られた NOAEL 5

    mg/kg/day(腎臓相対重量の増加)が信頼性のある最も低用量の知見であると判断し、これを無毒性量等として設定する。 吸入ばく露については、中・長期毒性エ)のラットの試験から得られた NOAEL 102 mg/m3

    (嗅上皮の変性及び萎縮、基底細胞の過形成など)をばく露状況で補正した 18 mg/m3が信頼性のある最も低濃度の知見であると判断し、これを無毒性量等として設定する。

    ② 健康リスクの初期評価結果

    表 3.3 経口ばく露による健康リスク(MOE の算定)

    ばく露経路・媒体 平均ばく露量 予測最大ばく露量 無毒性量等 MOE

    経口 飲料水 - -

    5 mg/kg/day ラット -

    公共用水

    域・淡水 概ね 0.00032µg/kg/day

    未満 概ね 0.00032µg/kg/day

    未満 1,600,000 超

    経口ばく露については、公共用水域・淡水を摂取すると仮定した場合、平均ばく露量、予

    測最大ばく露量はともに概ね 0.00032 µg/kg/day未満であった。無毒性量等 5 mg/kg/dayと予測最大ばく露量から、動物実験結果より設定された知見であるために 10 で除して求めた MOE(Margin of Exposure)は 1,600,000 超となる。なお、過去のデータではあるが、食物のデータとして報告(2001 年)のあった値を用いて経口ばく露量を推定すると最大ばく露量は 4 µg/kg/day 未満程度であったが、参考としてこれから MOE を算出すると 130 超となる。また、化管法に基づく平成 22 年度の公共用水域・淡水への届出排出量をもとに推定した高排出事業所の排出先河川中濃度から算出した最大ばく露量は 0.0068 µg/kg/day であったが、それか

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    16

    詳細な評価を行う候補と考えられる。

    現時点では作業は必要ないと考えられる。

    情報収集に努める必要があると考えられる。

    MOE=10 MOE=100[ 判定基準 ]

    ら参考として MOE を算出すると 74,000 となる。 従って、本物質の経口ばく露による健康リスクについては、現時点では作業は必要ないと

    考えられる。

    表 3.4 吸入ばく露による健康リスク(MOE の算定)

    ばく露経路・媒体 平均ばく露濃度 予測最大ばく露濃度 無毒性量等 MOE

    吸入 環境大気 0.19 µg/m3程度 0.3 µg/m3程度

    18 mg/m3 ラット 6,000

    室内空気 0.08 µg/m3程度 2 µg/m3程度 900 吸入ばく露については、一般環境大気中の濃度についてみると、平均ばく露濃度は 0.19

    µg/m3程度、予測最大ばく露濃度は 0.3 µg/m3程度であった。無毒性量等 18 mg/m3と予測最大ばく露濃度から、動物実験結果より設定された知見であるために 10 で除して求めた MOE は6,000 となる。また、化管法に基づく平成 22 年度の大気への届出排出量をもとに推定した高排出事業所近傍の大気中濃度(年平均値)の最大値は 9.6 µg/m3であったが、参考としてこれから算出した MOE は 190 となる。

    一方、室内空気の濃度についてみると、平均ばく露濃度は 0.08 µg/m3 程度、予測最大ばく露濃度は 2 µg/m3程度であり、予測最大ばく露濃度から求めた MOE は 900 となる。

    従って、本物質の一般環境大気及び室内空気の吸入ばく露による健康リスクについては、

    現時点では作業は必要ないと考えられる。

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    17

    4.生態リスクの初期評価

    水生生物の生態リスクに関する初期評価を行った。

    (1)水生生物に対する毒性値の概要

    本物質の水生生物に対する毒性値に関する知見を収集し、その信頼性及び採用の可能性を確

    認したものを生物群(藻類、甲殻類、魚類及びその他)ごとに整理すると表 4.1 のとおりとなった。

    表 4.1 水生生物に対する毒性値の概要

    生物群 急

    毒性値

    [µg/L] 生物名 生物分類/和名

    エンドポイント

    /影響内容

    ばく露

    期間[日]

    試験の

    信頼性/ Reliability*1

    採用の

    可能性文献 No.

    藻 類 ○ 86,300*2 Pseudokirchneriella subcapitata 緑藻類 NOEC GRO(RATE) 3 A A 3)

    *3

    ○ >86,300*2 Pseudokirchneriella subcapitata 緑藻類 EC50 GRO(RATE) 3 A A 3)

    *3

    ○ 100,000 Pseudokirchneriella subcapitata 緑藻類 NOEC GRO(RATE) 4 D

    *4 / 1 C*4 5)-1

    ○ 110,000 Pseudokirchneriella subcapitata 緑藻類 NOEC GRO(RATE) 3 E C 5)-2

    ○ >110,000 Pseudokirchneriella subcapitata 緑藻類 EC50 GRO 3 E C 5)-2

    ○ 170,000 Pseudokirchneriella subcapitata 緑藻類 EC50 GRO(RATE) 4 D

    *4 C*4 5)-1

    甲殻類 ○ 3,530 Daphnia magna オオミジンコ NOEC REP 21 A A 2)

    ○ 37,000 Daphnia magna オオミジンコ NOEC REP 21 E C 5)-3

    ○ 69,000 Daphnia magna オオミジンコ EC50 IMM 2 D*4 / 1 C*4 5)-4

    ○ 83,800 Daphnia magna オオミジンコ EC50 IMM 2 A A 2)

    魚 類 ○ >79,000 Oncorhynchus mykiss ニジマス LC50 MOR 4 D*4 / 1 C*4 5)-5

    ○ 160,000*5 Pimephales promelas ファットヘッドミノー

    TLm MOR 4 (軟水)

    B B 1)-728

    ○ 191,000 Lepomis macrochirus ブルーギル LC50 MOR 4

    (流水式) A A 1)-7398

    ○ 232,200 Lepomis macrochirus ブルーギル TLm MOR 4 B B 1)-728

    ○ 259,000 Pimephales promelas ファットヘッドミノー

    LC50 MOR 4 A A 1)-3217

    ○ 277,200 Carassius auratus キンギョ TLm MOR 4 B B 1)-728

    ○ 283,000 Lepomis macrochirus ブルーギル LC50 MOR 4

    (止水式) A A 1)-7398

    ○ 316,000*5 Pimephales promelas ファットヘッドミノー

    TLm MOR 4 (硬水)

    B B 1)-728

    ○ 357,500 Lepomis macrochirus ブルーギル TLm MOR 2 B B 1)-728

    ○ 368,100 Poecilia reticulata グッピー TLm MOR 4 B B 1)-728

  • 18 メタクリル酸メチル

    18

    生物群 急

    毒性値

    [µg/L] 生物名 生物分類/和名

    エンドポイント

    /影響内容

    ばく露

    期間[日]

    試験の

    信頼性/ Reliability*1

    採用の

    可能性文献 No.

    その他 ○ 2,200,000 Tetrahymena pyriformis テトラヒメナ

    属 IGC50 POP 40時間 B B 1)-112789

    毒性値(太字):採用可能な知見として本文で言及したもの 毒性値(太字下線):PNEC 導出の根拠として採用されたもの 試験の信頼性:本初期評価における信頼性ランク

    A:試験は信頼できる、B:試験は条件付きで信頼できる、C:試験の信頼性は低い、D:信頼性の判定不可 E:信頼性は低くないと考えられるが、原著にあたって確認したものではない

    採用の可能性:PNEC 導出への採用の可能性ランク A:毒性値は採用できる、B:毒性値は条件付きで採用できる、C:毒性値は採用できない

    エンドポイント EC50 (Median Effective Concentration) : 半数影響濃度、IGC50 (Median Inhibitory Growth Concentration) : 半数増殖阻害濃度、 LC50 (Median Lethal Concentration) : 半数致死濃度、NOEC (No Observed Effect Concentration) : 無影響濃度、 TLm(Median Tolerance Limit):半数生存限界濃度

    影響内容 GRO (Growth) : 生長(植物)、IMM (Immobilization) : 遊泳阻害、MOR (Mortality) : 死亡、 POP (Population Changes):個体群の変化、REP (Reproduction) : 繁殖、再生産

    エンドポイント/影響内容の欄の( ):毒性値の算出方法 RATE:生長速度より求める方法(速度法)

    *1 「試験の信頼性」の欄に併記した数値は、メタクリル酸メチルについての EU リスク評価書(EC, 2002)が参照している

    IUCLID(2000)の Klimisch Code を示す *2 限度試験(毒性値を求めるのではなく、定められた濃度において毒性の有無を調べる試験)より得られた値 *3 文献 2)をもとに、試験時の実測濃度(幾何平均)を用いて速度法により 0-48 時間の毒性値を再計算したものを掲載 *4 原著が非公表のため、EU リスク評価書及び IUCLID の記述に基づき判定した *5 2 試験の平均値

    評価の結果、採用可能とされた知見のうち、急性毒性及び慢性毒性のそれぞれについて、生

    物群ごとに最も小さい値を予測無影響濃度(PNEC)導出のために採用した。その知見の概要は以下のとおりである。

    1) 藻類

    環境省 2)は、OECD テストガイドライン No. 201(1984)に準拠し、緑藻類 Pseudokirchneriella subcapitata(旧名 Selenastrum capricornutum)の生長阻害試験を GLP 試験として実施した。試験には密閉容器が用いられ、設定試験濃度は 0(対照区)、150 mg/L(限度試験)であった。被験物質の実測濃度は、試験開始時及び終了時に、それぞれ設定濃度の 64%及び 51%であり、毒性値の算出には実測濃度(試験開始時と終了時の幾何平均値)が用いられた 3)。被験物質ばく露

    による藻類の生長阻害は、対照区と有意差が見られなかった。速度法による 72 時間半数影響濃度(EC50)は 86,300 µg/L 超、無影響濃度(NOEC)は 86,300 µg/L とされた 3)。

    2) 甲殻類

    環境省 2)は、OECDテストガイドラインNo. 202(1984)に準拠し、オオミジンコDaphnia magnaの急性遊泳阻害試験を GLP 試験として実施した。試験は半止水式(24 時間後換水、水面をテフロンシートで被覆)で行われた。設定試験濃度は 0(対照区)、50.0、66.0、87.0、114、150 mg/L(公比 1.3)であった。試験用水には Elendt M4 培地(硬度 250mg/L、CaCO3換算)が用いられた。被験物質の実測濃度は、試験開始時及び換水前において、設定濃度の 65~76%及び 47~

  • 18 メタクリル酸メチル

    19

    55%であり、毒性値の算出には実測濃度(試験開始時と換水前の幾何平均値)が用いられた。48 時間半数影響濃度(EC50)は 83,800 µg/L であった。

    また、環境省 2)は OECD テストガイドライン No.211(1998)に準拠し、オオミジンコ Daphnia magna の繁殖試験を GLP 試験として実施した。試験は半止水式(毎日換水、水面をテフロンシートで被覆、蓋付き)で行われ、設定試験濃度は 0(対照区)、1.50、4.70、15.0、47.0、150 mg/L(公比 3.2)であった。試験用水には Elendt M4 培地(硬度 250mg/L、CaCO3換算)が用いられた。被験物質の実測濃度は、試験溶液調製時、及び換水前において、それぞれ設定濃度の 77~84%、及び 33~78%であり、毒性値の算出には実測濃度(時間加重平均値)が用いられた。繁殖阻害(累積産仔数)に関する 21 日間無影響濃度(NOEC)は、3,530 µg/L であった。

    3) 魚類

    Baily ら 1)-7398は米国 EPA の試験方法(EPA 660/3-75-009, 1975)に準拠し、ブルーギル Lepomis macrochirus の急性毒性試験を実施した。試験は流水式(6.54 倍容量換水 / 24 時間)で行われた。設定試験濃度区は対照区及び 4 濃度区以上であり、試験用水には脱塩素水道水(硬度 31.2 mg/L、 CaCO3換算)が用いられた。96 時間半数致死濃度(LC50)は、実測濃度に基づき 191,000 µg/L であった。

    4) その他 Yarbrough と Schultz1)-112789は、以前の報文(Schultz, 1997)の試験方法(TETRATOX)に従って、テトラヒメナ属 Tetrahymena pyriformis の増殖阻害試験を実施した。試験は止水式で行なわれ、緩衝作用を持った滅菌プロテオースペプトン培地が用いられた。設定試験濃度区は、対照区及び 5濃度区以上であった。40 時間半数増殖阻害濃度(IGC50)は、設定濃度に基づき 2,200,000 µg/L であった。

    (2)予測無影響濃度(PNEC)の設定

    急性毒性及び慢性毒性のそれぞれについて、上記本文で示した最小毒性値に情報量に応じた

    アセスメント係数を適用し、予測無影響濃度(PNEC)を求めた。

    急性毒性値 藻類 Pseudokirchneriella subcapitata 72 時間 EC50(生長阻害) 86,300 µg/L 超甲殻類 Daphnia magna 48 時間 EC50(遊泳阻害) 83,800 µg/L 魚類 Lepomis macrochirus 96 時間 LC50 191,000 µg/L その他 Tetrahymena pyriformis 40 時間 IGC50(増殖阻害) 2,200,000 µg/L

    アセスメント係数:100[3 生物群(藻類、甲殻類、魚類)及びその他生物について信頼できる知見が得られたため]

    これらの毒性値のうち最も小さい値(甲殻類の 83,800 µg/L)をアセスメント係数 100 で除することにより、急性毒性値に基づく PNEC 値 840 µg/L が得られた。

    慢性毒性値

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    藻類 Pseudokirchneriella subcapitata 72 時間 NOEC(生長阻害) 86,300 µg/L 甲殻類 Daphnia magna 21 日間 NOEC 3,530 µg/L

    アセスメント係数:100[2 生物群(藻類及び甲殻類)の信頼できる知見が得られたため]

    2 つの毒性値のうち小さい方(甲殻類の 3,530 µg/L)をアセスメント係数 100 で除することにより、慢性毒性値に基づく PNEC 値 35 µg/L が得られた。

    本物質の PNEC としては甲殻類の慢性毒性値から得られた 35 µg/L を採用する。

    (3)生態リスクの初期評価結果

    表 4.2 生態リスクの初期評価結果

    水 質 平均濃度 最大濃度(PEC) PNEC PEC/

    PNEC 比

    公共用水域・淡水 概ね0.008 µg/L未満 (2006) 概ね0.008 µg/L未満 (2006) 35

    µg/L

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    21

    5.引用文献等

    (1)物質に関する基本的事項

    1) 環境省(2011):化学物質ファクトシート -2011 年版-,

    (http://www.env.go.jp/chemi/communication/factsheet.html). 2) Haynes.W.M.ed. (2012): CRC Handbook of Chemistry and Physics on DVD, (Version 2012),

    CRC Press. 3) Howard, P.H., and Meylan, W.M. ed. (1997): Handbook of Physical Properties of Organic

    Chemicals, Boca Raton, New York, London, Tokyo, CRC Lewis Publishers: 80. 4) Verschueren, K. ed. (2009): Handbook of Environmental Data on Organic Chemicals, 5th Edition,

    New York, Chichester, Weinheim, Brisbane, Singapore, Toronto, John Wiley & Sons, Inc. (CD-ROM).

    5) Hansch, C. et al. (1995): Exploring QSAR Hydrophobic, Electronic, and Steric Constants, Washington DC, ACS Professional Reference Book: 14.

    6) YALKOWSKY, S.H. and HE, Y. (2003) Handbook of Aqueous Solubility Data, Boca Raton, London, New York, Washington DC, CRC Press, p.152.

    7) 通産省公報(1976.5.28) 8) 厚生労働省, 経済産業省, 環境省:化審法データベース (J-CHECK).,

    (http://www.safe.nite.go.jp/jcheck, 2012.09.13 現在).

    9) SAUNDERS, S.M., BAULCH, D.L., COOKE, K.M., PILLING, M.J., and SMURTHWAITE, P.I. (1994) Kinetics and Mechanisms of the Reactions of OH with Some Oxygenated Compounds of Importance in Tropospheric Chemistry. International Journal of Chemical Kinetics, 26: 113-30.

    10) Howard, P.H., Boethling, R.S., Jarvis, W.F., Meylan, W.M., and Michalenko, E.M. ed. (1991): Handbook of Environmental Degradation Rates, Boca Raton, London, New York, Washington DC, Lewis Publishers: xiv.

    11) U.S. Environmental Protection Agency, AOPWINTM v1.91. 12) Howard, P.H., Boethling, R.S., Jarvis, W.F., Meylan, W.M., and Michalenko, E.M. ed. (1991):

    Handbook of Environmental Degradation Rates, Boca Raton, London, New York, Washington DC, Lewis Publishers: 208-209.

    13) U.S. Environmental Protection Agency, BCFWINTM v3.01. 14) HAMILTON, J.D., REINERT, K.H., and MCLAUGHLIN, J.E. (1995) Aquatic Risk Assessment

    of Acrylates and Methacrylates in Household Consumer Products Reaching Municipal Wastewater Treatment Plants, Environ. Technol., 16: 715-727.

    15) 経済産業省(通商産業省) 化学物質の審査及び製造等の規制に関する法律(化審法)第二十三条第二項の規定に基づき、同条第一項の届出に係る製造数量及び輸入数量を合計し

    た数量として公表された値. 16) 経済産業省(2012):一般化学物質等の製造・輸入数量(22 年度実績)について,

    (http://www.meti.go.jp/policy/chemical_management/kasinhou/information/H22jisseki-matome-ver2.html, 2012.3.30 現在).

  • 18 メタクリル酸メチル

    22

    17) 経済産業省(2003):化学物質の製造・輸入量に関する実態調査(平成 13 年度実績)の確報値, (http://www.meti.go.jp/policy/chemical_management/new_page/10/2.htm, 2005.10.2 現在).

    18) 経済産業省(2007):化学物質の製造・輸入量に関する実態調査(平成 16 年度実績)の確報値,(http://www.meti.go.jp/policy/chemical_management/kasinhou/jittaichousa/kakuhou18.html, 2007.4.6 現在).

    19) 経済産業省(2009):化学物質の製造・輸入量に関する実態調査(平成 19 年度実績)の確報値, (http://www.meti.go.jp/policy/chemical_management/kasinhou/kakuhou19.html, 2009.12.28 現在).

    20) 薬事・食品衛生審議会薬事分科会化学物質安全対策部会 PRTR 対象物質調査会、化学物質審議会管理部会、中央環境審議会環境保健部会 PRTR 対象物質等専門委員会合同会合(第 4 回)(2008):参考資料 1 現行化管法対象物質の有害性・ばく露情報, (http://www.env.go.jp/council/05hoken/y056-04.html, 2008.11.6 現在).

    21) 経済産業省経済産業政策局調査統計部(編) (2006): 平成 18 年化学工業統計年報、(財)経済産業調査会;経済産業省経済産業政策局調査統計部(編) (2011): 平成 23 年化学工業統計年報、(財)経済産業調査会.

    (2)ばく露評価

    1) 経済産業省製造産業局化学物質管理課、環境省環境保健部環境安全課 (2012):平成 22年度特定化学物質の環境への排出量の把握等及び管理の改善の促進に関する法律(化学物質排出把握管理促進法)第 11 条に基づき開示する個別事業所データ.

    2) 経済産業省製造産業局化学物質管理課、環境省環境保健部環境安全課 (2012):届出外排出量の推計値の対象化学物質別集計結果 算出事項(対象業種・非対象業種・家庭・移動体)別の集計表 3-1 全国,

    (http://www.meti.go.jp/policy/chemical_management/law/prtr/h22kohyo/shukeikekka_csv.htm, 2012.10.05 現在).

    3) 経済産業省製造産業局化学物質管理課、環境省環境保健部環境安全課 (2012):平成 22年度 PRTR 届出外排出量の推計方法の詳細. (http://www.env.go.jp/chemi/prtr/result/todokedegaiH22/syosai.html, 2012.3.13 現在).

    4) (独)国立環境研究所 (2013):平成 24 年度化学物質環境リスク初期評価等実施業務報告書.

    5) 環境省水・大気環境局大気環境課、自動車環境対策課(2012):平成 22 年度大気汚染状況について(有害大気汚染物質モニタリング調査結果報告).

    6) 梅田陽子, 小塚義昭, 佐々田丈瑠, 西村和彦, 三澤隆弘, 銭場強, 武川治 (2010) : 大気中低分子エステル類の一斉分析法及び川崎市内環境調査. 川崎市公害研究所年報. 37:24-30.

    7) 環境省環境保健部環境安全課 (2001) : 平成 11 年度化学物質環境汚染実態調査.

    8) Toshiko Tanaka-Kagawa et al. (2005): Survey of Volatile Organic Compounds found in Indoor and Outdoor Air Samples from Japan. Bull. Natl. Inst. Health Sci. 123: 27-31.

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    23

    9) 安藤正典ら (2004) : II 全国居住環境における室内空気中化学物質の実態に関する研究 i)居間と子供部屋における室内空気中化学物質に関する研究. 平成 15 年度化学物質過敏症等室内空気中化学物質に係わる疾病と総化学物質の存在量の検討と要因解明に関する

    研究. 41-51. 10) 安藤正典ら (2003) : Ⅶ. ORBO91L+ORBO101 連結捕集管を用いた溶媒抽出法および加熱

    脱離法による室内空気中化学物質の比較に関する研究. 平成 14 年度 化学物質過敏症等室内空気中化学物質に係わる疾病と総化学物質の存在量の検討と要因解明に関する研究.

    271-298. 11) 安藤正典ら (2003) :Ⅲ 改良型 ORBO91L+ORBO101 連結捕集管を用いた溶媒抽出法によ

    る室内・室外空気中化学物質の存在状況に関する研究. 平成 14 年度 化学物質過敏症等室内空気中化学物質に係わる疾病と総化学物質の存在量の検討と要因解明に関する研

    究.211-228. 12) 安藤正典ら (2003) : Ⅳ ORBO91L 単独捕集管を用いた溶媒抽出法による室内・室外空気

    中化学物質の経年変化に関する研究. 平成 14 年度 化学物質過敏症等室内空気中化学物質に係わる疾病と総化学物質の存在量の検討と要因解明に関する研究. 229-241.

    13) 安藤正典ら (2003) : Ⅵ 室内空気中化学物質の加熱脱離法による実態に関する研究. 平成 14 年度 化学物質過敏症等室内空気中化学物質に係わる疾病と総化学物質の存在量の検討と要因解明に関する研究. 257-270.

    14) (財)日本食品分析センター(2002):平成 13 年度食事からの化学物質ばく露量に関する調査報告書(環境省請負業務).

    15) 平成 23 年度東日本大震災の被災地における化学物質環境実態追跡調査結果. 16) 松山明, 山本美穂, 関昌之(2010) : 川崎市内河川及び海域におけるメタクリル酸メチルの

    環境実態調査. 川崎市公害研究所年報. 37:51-54. 17) 環境省環境保健部環境安全課(2008): 平成 18 年度化学物質環境実態調査. 18) 環境庁環境保健部保健調査室(1980):昭和 55 年版化学物質と環境. 19) 経済産業省(2012):経済産業省-低煙源工場拡散モデル (Ministry of Economy , Trade and

    Industry - Low rise Industrial Source dispersion Model) METI-LIS モデル ver.3.02. 20) 鈴木規之ら (2003):環境動態モデル用河道構造データベース. 国立環境研究所研究報告

    第 179 号 R-179 (CD)-2003.

    (3)健康リスクの初期評価

    1) Bratt, H. and D.E. Hathway (1977): Fate of methyl methacrylate in rats. Br. J. Cancer. 36: 114-119. 2) Bereznowski, Z. (1995): In vivo assessment of methyl methacrylate metabolism and toxicity. Int. J.

    Biochem. Cell. Biol. 27: 1311-1316. 3) Raje, R.R., S. Ahmad and S.H. Weisbroth (1985): Methylmethacrylate: tissue distribution and

    pulmonary damage in rats following acute inhalation. Res. Commun. Chem. Pathol. Pharmacol. 50: 151-154.

    4) Verkkala, E., R. Rajaniemi and H. Savolainen (1983): Local neurotoxicity of methylmethacrylate monomer. Toxicol. Lett. 18: 111-114.

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    5) Crout, D.H., E.J. Lloyd and J. Singh (1982): Metabolism of methyl methacrylate: evidence for metabolism by the valine pathway of catabolism in rat and in man. Xenobiotica. 12: 821-829.

    6) Crout, D.H., J.A. Corkill, M.L. James and R.S. Ling (1979): Methylmethacrylate metabolism in man. The hydrolysis of methylmethacrylate to methacrylic acid during total hip replacement. Clin. Orthop. 141: 90-95.

    7) Svartling, N., P. Pfaffli and L. Tarkkanen (1986): Blood levels and half-life of methylmethacrylate after tourniquet release during knee arthroplasty. Arch. Orthop. Trauma. Surg. 105: 36-39.

    8) Gentil, B., C. Paugam, C. Wolf, A. Lienhart and B. Augereau (1993): Methylmethacrylate plasma levels during total hip arthroplasty. Clin. Orthop. 287: 112-116.

    9) Delbressine, L.P.C., F. Seutter-Berlage and E. Seutter (1981): Identification of urinary mercapturic acids formed from acrylate, methacrylate and crotonate in the rat. Xenobiotica. 11: 241-247.

    10) Kotlovskii, Y.V., A.Y. Grishanova, V.M. Mishin and G.I. Bachmanova (1988): The role of rat liver microsomal fraction in the metabolism of methyl methacrylate to formaldehyde. Vopr. Med. Khim. 34: 14-17. (in Russian).

    11) Mizunuma, K., T. Kawai, T. Yasugi, S. Horiguchi, S. Takeda, K. Miyashita, T. Taniuchi, C.S. Moon and M. Ikeda (1993): Biological monitoring and possible health effects in workers occupationally exposed to methyl methacrylate. Int. Arch. Occup. Environ. Health. 65: 227-232.

    12) U.S. National Institute for Occupational Safety and Health. Registry of Toxic Effects of Chemical Substances (RTECS) Database. (2012.12.17 現在).

    13) IPCS (1995): Methyl methacrylate monomer, inhibited. International Chemical Safety Cards. 0300.

    14) 後藤稠, 池田正之, 原一郎編 (1994): 産業中毒便覧(増補版), 医歯薬出版.

    15) Borzelleca, J.F., P.S. Larson, G.R. Hennigar, Jr., E.G. Huf, E.M. Crawford and R.B. Smith Jr. (1964): Studies on the chronic oral toxicity of monomeric ethyl acrylate and methyl methacrylate. Toxicol. Appl. Pharmacol. 6: 29-36.

    16) Husain, R., S.P. Srivastava and P.K. Seth (1985): Methyl methacrylate induced behavioural and neurochemical changes in rats. Arch. Toxicol. 58: 33-36.

    17) Lomax, L.G., N.D. Krivanek and S.R. Frame (1997): Chronic inhalation toxicity and oncogenicity of methyl methacrylate in rats and hamsters. Food Chem. Toxicol. 35: 393-407.

    18) NTP (1986): Toxicology and Carcinogenesis Studies of Methyl Methacrylate (CAS No. 80-62-6) in F344/N Rats and B6C3F1 Mice (Inhalation Studies). TR-314.

    19) Chan, P.C., S.L. Eustis, J.E. Huff, J.K. Haseman and H. Ragan (1988): Two-year inhalation carcinogenesis studies of methyl methacrylate in rats and mice: inflammation and degeneration of nasal epithelium. Toxicology. 52: 237-252.

    20) Nicholas, C.A., W.H. Lawrence and J. Autian (1979): Embryotoxicity and fetotoxicity from maternal inhalation of methyl methacrylate monomer in rats. Toxicol. Appl. Pharmacol. 50: 451-458.

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  • 18 メタクリル酸メチル

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    22) Rohm & Haas Company (1976): Progress report on teratology studies of mice exposed to methyl methacrylate monomer vapor. EPA Document No. 86-890001405S. Fiche No. OTS0521022.

    23) Hazleton Laboratories (1979): 2-year inhalation, dominant lethal assay, evaluation of colorectal cancers at the sanford plant, mortality patterns & report on methyl methacrylate. EPA Doc. No. 86-890000315. Fiche No. OTS0519080.

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    (4)生態リスクの初期評価

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