1.海運市況11 Ⅱ.海運経営 1.海運市況...
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Ⅱ.海運経営
1 .海運市況
●2012 年の不定期船市況は、中国向けを中心としたばら積み貨物の海上荷動きの増加がみられたものの、大量の新造船が竣工したため供給過剰となり、各船社による減速航海や解撤の前倒し等にも関わらず、市況が低迷した。●2012 年のタンカー市況は、欧米によるイラン産原油の禁輸措置の動きが広がり、船腹需給が一時引き締まったが、新造船の供給圧力などから市況が低迷した。
注)① 出所:BDI(The Baltic Exchange)およびWS(中東/極東)は、トランプデータサービス集積資料による。 ② BDI(Baltic Dry Index):乾貨物の海上輸送運賃指数(総合指数、1985 年 1 月を基準(= 1,000)) The Baltic Exchange が毎営業日に、ドライマーケットの成約情報を 1985 年以来、一定の基準で継続発表している指数
であり、乾貨物運賃の変動推移を示している。 ③ WS(World Scale Rate)は VLCC(24 万 D/W)、積地は中東/揚地は極東。
600
00
100
200
300
500
400
85 86 87 88 89 90 91 92 93 94 95 96 97 98 99 00 01 02 03 04 05 06 07 08 10 11 1209 (年)
'
WS(PG/FE)
2,000
4,000
10,000
12,000
8,000
6,000
BDI(Baltic Dry Index)
WS
BDI
プラザ合意85
イラン・イラク戦争停戦'88
イラクのクウ
ト侵攻'90
湾岸戦争'91
円一時80円台突破'95
アジア通貨危機'97
米国同時多発テロ'01
イラク戦争'03
��������'08
WS
BDI
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Ⅱ.海運経営
2 .日本商船隊の運賃収入の推移
●2012 年の日本商船隊の運賃収入は、全体では対前年比 570 億円(2.3%)増の 2兆 4,910億円となった。
トン当り運賃の年間平均
年年間平均 1990 1995 2000 2001 2002 2003 2004 2005 2006 2007 2008 2009 2010 2011 2012
油 類(千円/トン) 1.6 1.3 1.3 1.4 1.2 1.4 1.5 1.6 1.9 1.9 2.2 1.6 1.2 1.5 1.5乾貨物(千円/トン) 4.4 2.8 2.6 2.7 2.8 2.8 3.5 3.9 4.7 6.2 4.4 2.8 3.5 2.9 2.9
全 体(千円/トン) 3.4 2.3 2.2 2.3 2.3 2.4 2.6 2.8 3.3 4.1 3.8 2.5 3.0 2.5 2.6
注)① 国土交通省「海事レポート」各年版による。 ② 2012 年の数値は暫定値である。
2,024
1,682
341
2009
2,418
2,182
237
2,434
2,056
378
2,491
2,129
362
2010 2011 2012
3,291
2,771
520
2008
0
1,000
2,000
3,000
4,000
1985 1990 1995 2000 2001 2002 2003 2004
2,556
2,037
1,605
2,102
1,675
1,274
454362 331
1,598 1,619 1,585
1,286 1,303 1,305
312 316 280
2,033
1,661
371
2005 2006
2,210
1,839
372
1,828
1,489
339
運賃収入(10億円) トン当り運賃の
年間平均(千円/トン)
乾貨物µ
油 類µ
全 体
トン当り運賃の年間平均推移
乾貨物運賃収入
油類運賃収入
運賃収入合計µ
0
1
2
3
4
5
6
7
8
9
10
11
2,597
2,200
397
2007 (年)
3,398
2,944
454
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Ⅱ.海運経営
3 .外航海運企業の損益状況
●2012 年度の外航海運企業大手 3社の業績(単体ベース)について、営業収益は、2兆9,440 億円と 2,257 億円(対前年度比 8.3%増)の増収、また営業費用については、3兆 22 億円と 1,092 億円(同 3.8%増)の増加となった。経常利益については、▲ 24 億円と赤字幅は 1,291 億円(同 98.1%減)縮小した。●2012 年度の業績は、市況の低迷、燃料油価格の高止まり等により全体的に厳しい事業環境となったものの、下半期以降は米国経済の緩やかな回復や新興国の経済成長に伴う海上荷動きの回復が見られ、また、各社運航コスト削減を実施した結果、前年同期比で増収となり、赤字幅は全体的に縮小した。
注)① 国土交通省「海事レポート」各年版による。 ② 1998(平成 10)年 10 月 1 日に日本郵船と昭和海運が合併したため、対象会社が 5社から 4社(日本郵船、大阪商船三井船
舶、 川崎汽船、ナビックスライン)に変更になった。 ③ 1999(平成 11)年 4月 1日に大阪商船三井船舶とナビックスラインが合併したため、対象会社が 4社から 3社(日本郵船、
商船三井、川崎汽船)に変更になった。
3,069
2,001
-681
-24
-1,315
60
80
100
120
140
160
180
200
220
240
260
280
290
400
0
800
1,200
1,600
2,000
2,400
2,800
3,200
3,600
4,000
4,400
4,800
236
-13-268
12447
111
323 358453 468
735
1,190
814882
1,890
3,391
2,717
2,134
4,547
-1,000
-1,500
(円/US$) (億円)
対USドル円相場の推移
海運大手の損益状況推移(経常損益)
2008 2010
2009 2011 2012(年度)
1985 1986 1987
1992 1993 1994 1995 1996 1997 1998 1999 2000 2001 2002 2003 2004 2005 2006 2007
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Ⅱ.海運経営
4 .外航海運企業の財務内容
●外航海運企業大手 3社の 2013 年 3 月期の財務内容(連結ベース)は、自己資本比率が29.1%(対前年比 2.1 ポイント減)、負債比率が 70.9%(同 2.1 ポイント悪化)、剰余金対資本金比率が 397.9%(同 6.4 ポイント増)および総資産利益率(ROA)が 0.3%(前年度比 2.4 ポイント増)となった。
注)① 外航海運企業大手 3社については有価証券報告書による。 ② 全産業については主要 10 業種の上位 3~5社の有価証券報告書による。
大手外航海運企業の貸借対照表
0
10
20
30
40
50
(%)
(%)
0
20
40
60
80
100
純資産
負債純資産
負債
負債純資産
68.8 6770.9
29.1
66.6
33.431.2 33
(%)
0
100
200
300
400
海運業 全産業
海運業 全産業
海運業 全産業
剰余金対資本金比率= ×100
負債比率= ×100
自己資本比率= ×100
(純資産-(資本金+資本準備金))
資本金
391.5 389397.9
449
(%)
総資本利益率(ROA)= ×100経常利益(または包括利益)
(前期負債純資産+当期負債純資産)÷2
-2.1
0.3 1.13.6
0
5
- 5
10
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海運業 全産業 2011 2012 (年度)
凡例
500
(金額単位:億円)
区 分2011 年(3社) 2012 年(3社)
金額(億)構成比(%)金額(億)構成比(%)
資
産
の
部
流動資産 12,089 23.5 16,035 27.8 固定資産 39,255 76.4 41,712 72.2 ・有形固定資産 30,988 60.3 32,534 56.3 船舶 20,652 40.2 22,862 39.6 建設仮勘定 4,305 8.4 3,293 5.7 その他 6,031 11.7 6,379 11.0 ・無形固定資産 645 1.3 678 1.2 ・投資・その他資産 7,622 14.8 8,500 14.7 繰延資産 7 0.0 6 0.0
資 産 合 計 51,350 100.0 57,754 100.0
負
債
の
部
流動負債 9,997 19.5 11,416 19.8 固定負債 25,350 49.4 29,537 51.1 ・社債 4,670 9.1 5,076 8.8 ・長期借入金 16,692 32.5 19,890 34.4 ・負債性引当金 498 1.0 479 0.8 ・その他 3,489 6.8 4,090 7.1
負 債 合 計 35,347 68.8 40,952 70.9
純資産の部
資本金 2,748 5.4 2,852 4.9 ・資本準備金 2,500 4.9 2,604 4.5 その他 10,756 20.9 11,346 19.6
純資産計 16,003 31.2 16,802 29.1
負 債 純 資 産 51,350 100.0 57,754 100.0
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Ⅱ.海運経営
5 .対米ドルレート為替相場の推移
●外航海運は収入の多くがドル建のため、その業績は自国通貨の対米ドルレート為替相場に大きく左右される。●各国通貨の対米ドルレートの変動を指数で見ると、1980 年を 100 とした場合、2012 年の日本円は 35.2 と半分以下になっている。つまり、円換算した運賃水準が 1/3 近くまで目減りしたことになる。
対米ドルレートの推移 1980 年= 100(年平均指数)
各国通貨の対米ドルレートと 1980 年を 100 とした場合の指数
国 名 通 貨1980 年 2012 年
対米ドルレート 指 数 対米ドルレート 指 数日 本 円 226.74 100.0 79.82 35.2英 国 ポンド 0.43 100.0 0.63 146.75ドイツ ユーロ 0.93 100.0 0.78 83.63韓 国 ウォン 607.43 100.0 1,124.23 185.08
注)① 1995 年までは、IMF「International Financial Statistics」による。 1996 年以降は日本船主協会調べ。 ② ユーロは 1998 年までドイツマルク。
1980 1985 1990 1995 2000
(指数)
240µ
220µ
200µ
180µ
160µ
140µ
120µ
100µ
80µ
60µ
40
ウォン
(プラザ合意)
ポンド
ユーロ(マルク)
円
2005 2010 2012(年)
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Ⅱ.海運経営
6 .外航海運のドル建て比率と他産業の海外売上比率の比較
●わが国外航海運の全売上高に占めるドル建て金額の比率は 82.2%であり、他産業と比較して為替レートの影響を非常に受けやすい収支構造となっている。
外航海運企業のドル建て比率と他産業の海外売上比率との比較
外航海運企業のドル建て比率
注)① 外航海運業は、国土交通省「海事レポート」平成 25 年版による。 他産業は主要各社の有価証券報告書により作成。(2012 年度の数値) ② 海外売上比率=(海外売上高÷連結売上高)× 100 とした。 ③ 外航海運業はドル建て収入分。ただし、CAF等によりカバーされている分等は除く。
(単位:%)
年 度 2000 2001 2002 2003 2004 2005 2006 2007 2008 2009 2010 2011 2012
営業収益 76.1 77.5 79.3 78.6 80.3 84.1 86.7 87.1 88.5 81.9 84.4 83.1 82.2
営業費用 69.7 70.3 72.1 69.2 70.7 70.6 76.5 78.0 74.9 67.4 70.2 71.1 71.6
注)外航海運企業は大手 3社
(%)0 10 20 30 40 50 60 70 80 90 100
外航海運
自動車
精密機械
タイヤ・ゴム
家電
造船重機
繊維
化学
電気機械
鉄鋼
78.2
57.9
64.8
57.6
49.6
43.8
40.1
36.1
36
82.2
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Ⅱ.海運経営
7 .アジア/北米航路及び日本/アジア航路におけるコンテナ輸送の現状
●アジアから北米向けの荷動き量は 2010 年に急速な回復を見せたが、2011 年に入ると米国の景気回復が鈍化し、2012 年の荷動き量も前年比 1.8%増の微増にとどまっている。2013 年 1-6 月の累計では、前年同期比 2.0%増の 663.2 万 TEUとなっている。●2011 年のアジア域内のおける日本発着コンテナ荷動き量は前年比でほぼ横ばいとなった。中国および韓国に対しては前年比増を記録したが、インドネシアを除くASEAN諸国に対しては横ばいもしくは減少となった。
アジア発北米向けコンテナ貨物荷動き
アジア域内における日本発着コンテナ荷動量推移
注)国土交通省海事局調べによる。
注)① PIERSデータをもとに日本海事センターがまとめた資料による。 ② 対象国は 2006 年版から従来の 12 カ国・地域(日本、韓国、台湾、中国、香港、マカオ、シンガポール、フィリピン、
マレーシア、インドネシア、タイ、ベトナム)に新たに 6カ国(カンボジア、ミャンマー、インド、パキスタン、 スリランカ、バングラディシュ)を加えた 18 カ国となったため、過去の本欄資料と数字が合わない場合がある。
0
40
50
60
70
80
10
20
30
0
10,000
12,000
2,000
4,000
6,000
14,000
16,000
8,000
(千TEU) (%)
インバランス(復航/往航)インバランス(復航/往航)
うち中国・香港出しうち日本出し
2001 2002 2003 2004 2005
7,520
9,030
9,854
11,318
4,221(56.1%)
5,388(59.7%)
6,083(61.7%)
7,393(65.3%)
12,878
8,628(67.0%)
2006
14,251
9,808(68.6%)
736(9.8%)
736(8.2%)
773(7.8%)
813
(7.2%)
873
(6.8%)
883
(6.2%)
2007
14,411
10,079(69.9%)
828
(5.7%)
2008
13,304
11,337
9,171(68.9%)
743
(5.6%)
2009
7,867(69.4%)
515(4.5%)
2010
13,093
9,061(69.2%)
603(4.6%)
2011
13,144
9,001(68.5%)
629
(4.8%) (4.9%)
20131~6月
6,632
4,465(67.3%)
312(4.7%)
2012
13,378
9,061(67.7%)
654
45
39 4037
35 34
40
46
5351% 51%50%48
*グラフ上部の数値は発着合計
*グラフ下部の数値は日本発数
日本発着(千TEU)
0
500
1,000
2,500
3,000
3,500
2009年 2010年 2011年
942982
3,115
2,981
1,027
389
215 219
415427
236
443
257
174
311383
217
566
246 277
582600
297137
78 56
101122
67 117
228
100
200
124
228273
107137
306288
130
525
242
698
300
634
299
102
231238
112
231
108
159
81
182
83
182
97
ベトナム韓国インドネシアマレーシアシンガポールタイフィリピン香港台湾中国
2,789
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Ⅱ.海運経営
8 .一船当たりの年間船員費の例
●船員費は船舶の国際競争力を左右する主要因のひとつであり、外航船舶の乗組員は日本人船員を含むさまざまな国籍の外国人船員により構成されている。
注)① 日本船主協会試算。 ここでは参考値として、船種をバルカー(ばら積み船)とし、パターンAについては、日本人 4名・東南
アジア船員 19 名の国際船舶(※)、パターンBについては全て東南アジア船員が乗船した場合について試算した。
② 1ドル= 98 円とした。(2013 年 6 月平均) ③ 日本人船員の予備員率= 49%とした。
※ 国際船舶は、以下のa~d全てに該当する日本籍船である。(海上運送法施行規則第 43 条)a.2,000 総トン以上の船舶b.船舶安全法上の航行区域が遠洋または近海であることc.専ら外航に使用されている船舶(国際航海に 100%使用されており、海上運送法、内航海運業法の事業計画により国内旅客、内航海運に使用されていないこと)
d.以下のいずれかに該当する船舶 ・近代化船(船舶職員法第 2 条第 3 項で定める基準に適合する船舶) ・ 新たなマルシップ混乗船(海外貸渡方式による平成 2 年以降承認された混乗船=船舶職員法第
20 条特例船) ・LNG船(液化天然ガス) ・ RORO船(ロールオン/ロールオフ船:トラック等が船内に自走して出入りし、荷役する方式
の船)・承認船員(外国人船舶職員)配乗船(船舶職員法第 23 条の 2第 1項の承認を受けたものが船舶職員として乗り組んでいる船舶)
パターンA パターンB
4名日本人船員+19 名外国人船員
外国人船員23 名
約 176 万ドル 約 106 万ドル