第2章 strength of materialskinosita/lecture/zairyourikigaku/...塑性(plasticity)...

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- 1 - 第2章 材料力学(Strength of Materials) この章では,機械・構造物などの強度を評価し,安全・最適・高性能な効率 の良い設計が行えるようになるため,その基礎事項について学習する。 2.1 材料力学が取り扱う範囲 1)弾性(Elasticity) 荷重をかけると材料は変形するが, それを取り除くと変形も除去され, 完全に元の状態に戻る性質。 反対語 塑性(Plasticity) 荷重(応力)が過大になると,荷重 を除去しても変形が残留する性質。 2)均質 材料の性質が場所によって変 化せず,一様であること 3)等方 材料が方向によって性質が変 化しないこと。圧延工程など。 4)連続 材料の内部に空洞や欠陥がな いこと。鋳物など。 2.1 荷重の種類 2.2 荷重(Load)と応力(Stress) ここでは,荷重と応力について学ぶ。 2.2.1 荷重(Load)の種類 1)引張荷重(Tensile Load正にとります。( 0 P 2)圧縮荷重(Compressive Load) 負にとります。( 0 P 3)せん断荷重(Shearing Load) 2.2.2 応力(Stress)の種類 1)引張応力(Tensile Stress) 垂直荷重という。 垂直応力という。 引張荷重P 引張応力σ 断面積A 引張荷重P 断面積A 圧縮応力σ 圧縮荷重P 圧縮荷重P せん断応力τ 断面積A せん断荷重P せん断荷重P

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Page 1: 第2章 Strength of Materialskinosita/lecture/zairyourikigaku/...塑性(Plasticity) 荷重(応力)が過大になると,荷重 を除去しても変形が残留する性質。

- 1 -

第2章 材料力学(Strength of Materials)

この章では,機械・構造物などの強度を評価し,安全・最適・高性能な効率

の良い設計が行えるようになるため,その基礎事項について学習する。

2.1 材料力学が取り扱う範囲

1)弾性(Elasticity)

荷重をかけると材料は変形するが,

それを取り除くと変形も除去され,

完全に元の状態に戻る性質。

反対語

塑性(Plasticity)

荷重(応力)が過大になると,荷重

を除去しても変形が残留する性質。

2)均質

材料の性質が場所によって変

化せず,一様であること

3)等方

材料が方向によって性質が変

化しないこと。圧延工程など。

4)連続

材料の内部に空洞や欠陥がな

いこと。鋳物など。

図 2.1 荷重の種類

2.2 荷重(Load)と応力(Stress)

ここでは,荷重と応力について学ぶ。

2.2.1 荷重(Load)の種類

1)引張荷重(Tensile Load)

正にとります。( 0P )

2)圧縮荷重(Compressive Load)

負にとります。( 0P )

3)せん断荷重(Shearing Load)

2.2.2 応力(Stress)の種類

1)引張応力(Tensile Stress)

垂直荷重という。

垂直応力という。

引張荷重P

引張応力σ

断面積A

引張荷重P

断面積A

圧縮応力σ

圧縮荷重P

圧縮荷重P

せん断応力τ

断面積A せん断荷重P

せん断荷重P

Page 2: 第2章 Strength of Materialskinosita/lecture/zairyourikigaku/...塑性(Plasticity) 荷重(応力)が過大になると,荷重 を除去しても変形が残留する性質。

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正になります。( 0 )

2)圧縮応力(Compressive Stress)

負になります。( 0 )

3)せん断応力(Shearing Stress)

2.2.3 引張・圧縮応力の求め方

引張・圧縮応力

荷重に垂直な断面積

引張または圧縮荷重 (2.1)

すなわち,応力は

A

P )(Pa または )/( 2mkgf (2.2)

ここで, P :荷重 )(N or )(kgf ,

A:断面積 )( 2m or )( 2cm or )( 2mm

2.2.4 せん断応力の求め方

面積せん断荷重に平行な断

せん断荷重=

A

P (2.3)

図 2.2 引張,せん断応力

2.2.5 応力を求める際の,断面積のとり方

1)引張応力・圧縮応力(垂直応力)の時:荷重に垂直な断面積 Aをとること。

2)せん断応力 を求める時の面積は

図 2.2 に示されるリベットの場合,せん断荷重 P が働いている。せん断応力

τは, AP において,せん断荷重を受けるリベットの断面積 A は,

4/2dA

となる.このように,せん断応力τを求めるときの断面積 A はせん断荷重 P

に平行な断面積をとること。

一方,図のボルトはねじ部に引張荷重,ボルト頭部にせん断荷重が働く。

このときのボルト頭部におけるせん断面積 Aは,

dHA

となる.このことは,大切,明確に理解できたかな。例題(ボルト,リベット)

などで解説。

----------------------------------------------------------------------

○各種応力の計算問題

引張荷重P

ボルト断面積A

高さH

直径d

4

2d

せん断断面積A

π dH

せん断断面積A

4

2d荷重P

荷重P

Page 3: 第2章 Strength of Materialskinosita/lecture/zairyourikigaku/...塑性(Plasticity) 荷重(応力)が過大になると,荷重 を除去しても変形が残留する性質。

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1.断面積 100mm2の材料に 1800N の引張荷重が働くとき,断面に生じる応力

はどれほどか。 (解答:18(N/mm2)または 18MPa))

2.直径 14mmの軟鋼試験片で引張試験を行った。引張荷重が 65kN のときに

生じた引張応力はいくらか。 (解答:422(MPa))

3.図のような直径 20mmのリベット

に 8.8kN のせん断荷重が作用し

ている。リベットに生じているせ

ん断応力はいくらか。

(解答:28(MPa)

4.3kN の圧縮荷重を受ける部品を中

実丸棒の鋼で作りたい。鋼の丸棒に作用する圧縮応力を 90MPa 以下にする

には,部品の直径は最小いくら以上であればよいか。(解答:6.51(mm))

5.問題3.に示したリベット継手に 9.4kN の引張荷重が作用するとき,直径

10mmのリベット1本に生ずるせん断応力を40MPa以下とするにはリベッ

トの本数は何本以上必要か。 (解答:3本以上)

6.右図のような中空円筒を 2枚

の板ではさみ,100kN の力で

圧縮するとき,円筒に生じる

圧縮応力を 70MPa 以下にとど

めるには,円筒の外径d2は

いくら以上にすればよいか。た

だし,円筒の内径d1 は 20mm

とする。 (解答:47.1(mm))

----------------------------------------------------------------------

2.3 ひずみ(Strain)

定義:単位長さあたりの変形量(変位)

2.3.1 縦ひずみ(Longitudinal Strain)

引張または圧縮ひずみは次のように定義される。すなわち,

=元寸法材料の変形前長手方向

寸法変形後寸法-変形前元「無次元」 (2.4)

せん断断面積A

4

2d荷重P

荷重P

荷重P

2d剛体壁面 剛体壁面

荷重P mmd 201

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0LL

L-L

0

0 (2.5)

(a)引張ひずみ(Tensile Strain)

この場合,ひずみは正になります。( 0 )

(b)圧縮ひずみ(Compressive Strain)

この場合,ひずみは負になります。( 0 )

図 2.3 縦ひずみ(引張ひずみ,圧縮ひずみ)

図 2.4 せん断ひずみ

2.3.2 せん断ひずみ(Shearing Strain)

図 2.4 にせん断変形を例示する。せん断ひずみ は次式で定義される。

≒==せん断変形元寸法

せん断変位

s tanL

≒0

s tanL

)(rad (2.6)

ここで,せん断角度 が小さいとき,せん断変位 S は半径 0L の円弧の長さと近

似することができるから, 0LS と表せる。したがって,せん断ひずみは

圧縮荷重P

変形後

変形前

L0

L 縮みλ

L

L0 伸びλ

引張荷重P

変形後

変形前

せん断荷重P

せん断荷重P

せん断変位

断面積A

0L

s

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≒0

0

0 L

L

L

S

となる。

----------------------------------------------------------------------

☆復習:ラジアン(rad)とは

ラジアン=円の半径

円弧上の長さ,単位:「無次元」

円周は r2 ,円弧1周(360°)は,

22

r

r)(rad となる。

----------------------------------------------------------------------

☆2.3.2 せん断ひずみ(今日の演習問題)

1.せん断ひずみ について,ひずみ角度 が小さいとき, tan ≒ となること

を証明せよ。

解答:(上記の回答以外に以下の回答でも良い)

cossintan である。ここで, ≒0のとき,つぎの近似が成り立つ。

.......

7!-

!1

sin 7

5+

3cos

sintan

3

(2.7)

----------------------------------------------------------------------

2.3.3 横 ひ ず み (Lateral

Strain)

横ひずみは以下のように定

義される。図 2.5 に横ひず

みの概念を示す。すなわち,

横ひずみとは,荷重が作用

している長手方向に垂直な

縦方向の単位長さ当たりの

変形量と定義される。つまり, 図 2.5 よこひずみの定義

横ひずみ =変形前の横方向元寸法

変形前横方向元寸法変形後横方向寸法 - (2.8)

dd

dd

- (引張時 0 ,圧縮時 0 となる) (2.9)

ここで,

d :変形後の横方向寸法, d :変形前横方向元寸法

さて,ラジアンの単位って何だっ

たかな?

LL0 伸びλ

引張荷重P

変形後

変形前

d

d'

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: d - d ;横方向変形量

☆重要:したがって,圧縮・引張り時ともに!

0 (2.10)

2.3.4 体積ひずみ (Volumetric Strain)

体積ひずみの概念を図 2.6 に示す。体積ひずみは次式で定義される。

体積ひずみV

=元の体積

体積変化量 vv (2.11)

ここで,V :元の体積, v :体積変化量 )m( 3

図 2.6 体積ひずみの概念図

----------------------------------------------------------------------

☆2.3 ひずみの演習問題

1.長さ 2mの棒材が圧縮荷重を受けて 0.0002 の縦ひずみを生じた。縮み(変

形量)は何mmか。 (解答:0.4(mm))

2.引張り荷重を受け材料の伸びが 0.6mm,縦ひずみが 0.0003 であるとき,

変形前の元寸法はいくらか。 (解答:2000(mm))

3.直径 30mmの丸棒に引張り荷重を作用させたところ,直径が 0.0042mm縮

んだ.横ひずみはいくらか。 (解答:-0.00014)

4.長さ L0の丸棒を圧縮したところ,長さが 200mm,縦ひずみが-0.005 にな

った。変形前の元寸法は何 mm か。 (解答:201(mm))

----------------------------------------------------------------------

2.4 フックの法則と弾性係数

2.4.1 フックの法則(Hooke’s Law)

最初にフックの法則に関係する重要な用語を以下に示す。

弾性(Eelasticity) :荷重を取り除くと元に戻る性質

弾性限度(Elastic Limit) :弾性が保たれる限界の応力の値

体積V-△V体積V

圧力P

圧力P+△P

加圧

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比例限度(Limit of Proportionality) :荷重と変形量が比例する限界

塑性(Plasticity) :荷重を取り除いても変形が残留する

性質

塑性変形(Plastic Deformation) :塑性を伴なった変形

2.4.2 引張・圧縮応力とひずみの関係

一般的に伸びは∝A

PL0 と考えられるから,両辺を材料の長さ 0L で割ると

0L

A

P (2.9)

ところで,応力 はA

P ひずみεは

0L

で定義されるから,式(2.9)は

応力 E (2.10)

となる。この比例係数 E を縦弾性係数(ヤング率)という。なお,E の単位は )(Pa

または )/( 2mkgf である。

式(2.10)から,応力 はひずみ 比例

し , 比 例 定 数 E を 縦 弾 性 係 数

(Modulus of Longitudinal

Elasticity)またはヤング率

(Young’s Modulus)という。

☆それでは,フックのバネの実験か

ら材料力学におけるフックの法則を

導こう。ここで,材料にかかってい

る荷重を P ,断面積を A,伸び変位

を,応力を とする。

KP ; AP (2.11)

かつ,伸び変位 0L より, 図 2.7 フックの法則(バネと材料)

0LKKAP から,

A

LK 0 (2.12)

となる。さらに,式(2.12)において, A,K , 0L は一定であるから,比例定

x

荷重(力)F

伸びλ

荷重P

0Lバネ定数

K

断面積A

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として E を導入し,A

KLE 0 とおけば,

E (2.10)

という既出のフックの法則が導かれる。

☆ヤング率の意味[確認]

1)応力―ひずみ線図における傾きを表す。

2)応力 はひずみ 比例しその比例定数

(弾性の範囲に限定されるから注意)

2.5 せん断応力とせん断ひずみの関係

応力 E と同様にして,せん断応力 とせん断ひずみ の関係は,

G (2.13)

ここで比例定数G を横弾性係数(Modulus of Rigidity)という。

2.5.1 せん断応力とせん断ひずみの解説

図 2.8 に示すように断面積 Aの材料にせん断加重 P が働き, s だけ変位した

とき,荷重 P と変位 s は比例するという,フックの法則から,

sKP (2.14)

せん断応力 と荷重 P の関係

は,

AP (2.15)

さらに,せん断ひずみ と変位

s の関係から(図 2.6 参照)

0Ls

したがって,せん断応力 は, 図 2.8 せん断ひずみ

A

LK

A

P 0

(2.16)

ここで,改めて,A

LKG 0

とおけば,

G (2.13)

という関係式が得られる。比例定数G はh横弾性係数(Modulus of Rigidity)と

ロバートフックはバネの実験からバネに

加える力 P とバネの伸び変位λの間に

P=kλの線形関係が成立ことを示した。k

はバネ定数で「N/m」の単位を持つ。

せん断荷重P

せん断荷重P

せん断変位

断面積A

0L

s

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いう。

○ 横弾性係数G に関する重要な関係式のまとめ

ss A

PL

L

A

P

G

0

0

;G

L

AG

PLs

00 ;

GA

P

G

AP

GL

s

0

(2.17)

2.6 ポアソン比(Poisson’s Ratio)とポアソン数(Poisson’s Number)

ポアソン比 =|縦ひずみ

横ひずみ|=

m

1=|

|=|

0L

d

|=|

d

L

0

| (2.18)

ここでm :ポアソン数とよぶ。なおポアソン比は(0.2< <0.4)位の値をと

る。それでは,ここで,ポアソン比について,まとめておこう。

☆ポアソン比のまとめ

m

1|

軸方向元寸法)軸方向変化量、 0 :L:(0

L

, ( 0 ,引張り, 0 ,圧縮)

方向元寸法)横方向変化量、d:横:(

d

,( 0 ,引張り, 0 ,圧縮)

(重要)

表 2.1 金属材料の弾性係数数・ポアソン比・降伏点・引張強さ

材 料 縦弾性係数

E(Gpa)

横弾性係数

G(Gpa)

ポアソン比

ν

降伏点

「Mpa]

引張強さ

「Mpa]

一般構造用鋼(SS400) 206 80 0.29 235以上 402以上

軟鋼(S20C) 192 79.4 0.30 245以上 402以上

硬鋼(S50C) 206 79.4 0.30 363以上 608以上

バネ鋼(SUP3) 206 83 0.24 1080以上

ニッケル・クロム鋼(SNC236) 204 588以上 736以上

ステンレス鋼(SUS304) 197 73.7 0.34 206以上 520以上

ねずみ鋳鉄(FC200) 98 37.2 196以上

7/3黄銅(C2600H) 110 41.4 0.33 395以上 472以上

純アルミニューム 69 27 0.28 95(耐力) 110以上

ポアソン比のまとめ。

何かのときに有効利

用してください。

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(AL100-H18) 以上

超ジュラルミン

(A2024-T4) 74 29 0.22

32(耐力)

以上 422以上

純チタン 106 44.5 0.19 275以上 390以上

---------------------------------------------------------------------

☆第 2 章 2.5~2.6 応力・ひずみ,ヤング率,ポアソン比など総合演習問題

1.上の表 2.1 を使って応力―ひずみ線図上に硬鋼,鋳鉄,純アルミニューム

の線を入れてみなさい。

2.断面が一辺 4cmの正方形で長さが 10cmの軟鋼製角棒が圧縮荷重を受け

て,0.056cm縮んだ。このとき断面積はいくらとなるか。ただしポアソン

比は 0.28 とする。 (解答:16.05(cm2))

3.直径 18mm,長さ 2.5mの軟鋼製丸棒を天井に溶接し,下端に 24000Nの

荷重を加えた。このとき,棒の伸びλ,棒に生じる応力σを求めよ。ただ

し,丸棒の縦弾性係数(ヤング率)は 206GPa とする。

解答:λ=0.1145(cm),σ=94.314(MPa))

4.同一寸法の鋼棒と銅棒を同一の力で引張ったところ,伸びが 3:5の比とな

った。鋼の縦弾性係数を Es=206GPa として,銅の縦弾性係数 Ecu を求め

よ。 (解答:Ecu=123.6(GPa))

5.図 2.9 に示すように,鋼(寸法の Ls の部分)と銅(寸法 Lcu の部分)を組み合

わせた丸棒に引張荷重Pを加えた時,全体の伸びを求めよ。ただし,鋼,銅

の縦弾性係数をそれぞれ,Es=206GPa,Ecu=102GPa とする。なお,各部の寸

図 2.9 段付丸棒の引張

法および荷重は,Lcu=300mm,Ls=200mm,直径 dcu=50mm,直径ds=40

mm,荷重 P=80kN とする。 (解答:λ=0.182(mm))

6.図 2.10 に示すように,内側に直径 mmA 50 の軟鋼の丸棒,外側に直径

mmB 100 の黄銅製中空円筒をはめた柱がある。これに圧縮荷重 kNP 150 を

Pcu

ds

d

sL

cuL

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加えた時,各柱に生じる応力 b , s ,

ひずみε,縮み,を求めよ。ただ

し,

縦弾性係数は黄銅および軟鋼につ

いて,黄銅 GPaEb 110 ,軟鋼

GPaEs 206 とする。また,両材

料の長さは mmL 4000 で,変形しない 図 2.10鋼と黄銅の圧縮

板(剛体といい,この場合それぞれのひずみ および縮みは等しいと考える)

に取り付けられている。(解答:σb=15.678(MPa),σs=29.361(MPa),ε=

1.425×10-4,λ=0.057(mm))

----------------------------------------------------------------------

2.7 材料の機械的性質と材料試験

2.7.1 引張試験

図 2.11 に引張試験片の概略を示す。では,引張試験片(Test Piece)および引

張り試験に関する重要な用語について説明しよう。

・標点距離(Gauge Length)----------引張試験片の基準となる長さ

図 2.11 引張試験と試験片

荷重P荷重P

黄銅

鋼υB

υA

0L

標点距離

標点距離

荷重P

断面積A

平均断面積A'

L

0L

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荷 重

伸び

荷重-伸び線図

鉄系材料

銅、アルミ材料鋳鉄、コンクリート

耐 力

公 称 応 力

ひずみ

応力-ひずみ線図

鉄系材料

銅、アルミ材料鋳鉄、コンクリート

FE

A

B

C

D

A:比例限度B:弾性限度C:上降伏点D:下降伏点E:引張り強さF:破断点

0.2%

図 2.12 荷重-伸び線図および応力-ひずみ線図

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図 2.12 に荷重-伸び線図および応力-ひずみ線図の概要を示す。

・荷重―伸び線図(Load-Elongation Diagram)

・応力―ひずみ線図(Stress-Strain Diagram)

・公称応力(Nominal Stress)---荷重を元の断面積A で割った値

公称応力―公称ひずみ線図

・真応力(True Stress)---------荷重が掛かっている時の断面積A で割っ

た値,真応力―公称ひずみ線図を参照

・公称ひずみ n (Nominal Strain)---伸びを最初の標点距離で割った値

001 L/LLn (2.19)

ただし, 0L :最初の標点距離, 1L :荷重 1P の時の標点距離(伸び量)

・公称応力―公称ひずみ線図における重要な名前(主として鉄系材料の特性)

1)比例限度(Proportional Limit)-応力とひずみ が比例し,フックの法則

が成立する限界の応力または点。

2)弾性限度(Elastic Limit)-------材料が弾性を保つための限界の応力または

点。

3)降伏点(Yield Point)-----------応力が変化することなくひずみが急激に増

加する点

上降伏点(Upper Yield Point)

下降伏点(Lower Yield Point)

4)引張り強さ or極限強さ(Tensile Strength or Ultimate Strength)

公称応力が最大となる値

5)破断点(Breaking Point)-------材料が破断する応力または点

6)加工硬化(Work Hardening)--材料に繰り返し荷重を加えることによっ

て硬化する現象

つぎに,引張り試験における重要な用語を以下に示し,間単に解説する。

・公称応力―公称ひずみ線図における重要な名前(非鉄系材料,アルミニュー

ムや銅の特性)

・耐力(Proof Stress):非鉄系材料など降伏点が明確に現れない時に,降伏

点相当の永久ひずみを生じる応力,普通,永久ひずみの 0.2%をとる。

・延性材料(Ductile Material);伸び率や絞りの大きい材料(例:アルミニュー

ム,銅など)

・伸び率; %*L

L'L100

0

0 ,絞り; %*

A

'AA100

0

0 (2.19)

Page 14: 第2章 Strength of Materialskinosita/lecture/zairyourikigaku/...塑性(Plasticity) 荷重(応力)が過大になると,荷重 を除去しても変形が残留する性質。

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ただし, 0L :破断前標点距離, L:破断後の標点距離

0A :破断前断面積, A:破断後の最小断面積

・ぜい性材料(Brittle Material);わずかの変 形で破断する,もろい材料,

例えば,(鋳鉄,コンクリート

など)

・全ひずみ,弾性ひずみ or

回復ひずみ,永久ひずみ

or塑性ひずみ。図 2.13

にこれらのひずみ関係を

図示する。

図 2.13 全ひずみ

・ヒステリシスって何?。ヒステルシスが起こる形状記憶合金などの話。

2.7.2 圧縮試験

☆延性材料(軟鋼,アルミ,銅など)

・引張り試験と同様な,比例限度,弾性限度,降伏点などが現れる。

・さらに大きな圧縮荷重を加えると,太鼓形につぶれる。引張試験における

引張強さは圧縮試験では現れない。

・圧縮強さ;圧縮荷重が急激に上昇する点の公称応力で定義する。

☆ぜい性材料(鋳鉄,石材,コンクリートなど)

・ある荷重を超えると,縦割れを生じる。

・圧縮強さは引張強さの数倍大きくなる。

2.7.3 疲れ試験

・世の中には,周期的な荷重を受ける機器が数多く存在する。

・周期的な荷重の例(エンジンルーム,航空機器,車のサスペンションなど)

・その一例として,図 2.14に示す,エンジンルームにおけるピストンの周期

荷重を紹介しましょう。

・疲れ(Fatigue):材料が周期的な繰り返し荷重を受けることによって,降

伏点以下の小さな荷重でも破壊に至る現象(ハワイの飛行機墜落,隔壁の

破壊のお話をしましょう。)

人も過酷な労働では疲れる,材料も過酷な荷重が加わると疲れる。

応力

ひずみO B C

A

OC:全ひずみ(total strain)BC:弾性ひずみ(elastic strain)OB:永久ひずみまたは塑性ひずみ(permanent set)or(plastic strain)

σ

ε

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- 15 -

・疲れ試験

・S-N 曲線(S-N Curve),(電気信号における S/N 比の話もしましょう。)

図 2.15 に S-N 曲線と疲れ試験の様子を示す。S-N 曲線における重要な用語と

その意味を以下に解説する。

図 2.14 ピストンとシリダにおける繰返し荷重

図 2.15 S-N 曲線

縦軸 S:応力(荷重の)振幅

横軸 N:荷重の繰り返し回数(対数でプロットする。)

・疲れ限度:疲れ破壊を生じることがない繰り返し応力の最大振幅で,おお

よそ 107回以上の繰り返し回数に耐えることが目安となっている。

ピストンとシリダー

周期的荷重

膨張

排気

圧力

ピストン行程

圧縮吸入

爆発

吸入孔

排気孔

標点距離

断面積A

応力振幅S

平均応力

応力

繰り返し回数 N

S(応力振幅)

Log(繰り返し回数 N)

S-N 曲線

荷重P

710

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2.7.4 衝撃試験

衝撃試験(シャルピー衝撃試験機)

の解説

図 2.16 にシャルピー衝撃

試験機の概要を模式図で示

す。

☆衝撃試験片の説明

☆衝撃値(Impact Value)

A/mgHmgH 21

ただし,衝撃用試験片の

断面積 Aは,切欠部分の

断面積をとる。(わかる

かな?)(例えば,アメ

リカ貿易センタービル

への衝撃荷重問題など)

m:振り子の質量 図 2.16 衝撃試験(シャルピの衝撃試験)

2.7.5 クリープ試験

応力を加えた材料を高温中に長時間さらすと,ひずみが時間と共に増大し,

ついには破壊に至る.この現象を,クリープ(Creep)という。

・クリープ限度(Creep Limit);10000 時間で 0.1%のひずみを生じる応力を

その温度におけるクリープ限度という.

・材料に引張強さよりも低い,応力を高温下で加えると(例えば,18Cr-8Ni 鋼

のクリープ限度は,実験によると,(18Cr-8Ni 鋼って何?)次のようになる。

(18Cr-8Ni 鋼って何?,どこで使っている?)

温 度: 755K,811K,866K,922K

クリープ限度: 165 ,126, 79 , 37 (Mpa)

2.8 許容応力と安全率

・許容応力;材料を使用期間中,弾性を保ち,かつ,ひずみが過大にならない

ようにするために許す,応力の許容限界設計値。(なんじゃこれは?)

一般的に,許容応力の値は,降伏点応力の 1/6 位が目安となる。

・安全率(Safety Factor) f :安全率=基準強さ/許容応力で定義される。

したがって,基準強さ(応力)を S ,許容応力を a とすれば安全率 f は,

衝撃試験片

mg

1H

2H

衝撃荷重

衝撃試験片

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a

Sfσ

σ (2.20)

で与えられる。以下,下記の図 2.17 を参照して,理解すること。

応力

ひずみO

基準強さσ s(引張り強さ、降伏点応力 またはクリープ限度をとる)

σ s(for延性材料)

σ s(forぜい性材料)

許容応力σ a

σ

ε

図 2.17 許容応力と安全率

☆基準強さのとり方

1)降伏点を選ぶ場合:軟鋼,アルミニューム合金など延性材料には,降伏

点または耐力を基準強さに選ぶ。

2)極限強さを選ぶ場合:鋳鉄のようなぜい性材料には引張り強さや圧縮強

さなどの極限強さを基準強さとして選ぶ。

表 2.2 安全率 f の例(引張り強さを基準強さとした時)

材料 静荷重 繰返し荷重

衝撃荷重 片振り 両振り

鋳鉄 4 6 10 15

鋼 3 5 8 12

木材 7 10 15 20

表 2.3 鉄鋼材料の許容応力(MPa)(機械システム設計便覧より)

応力の種類 荷重の種類 軟鋼

(~0.25%C)

中硬鋼

(~0.5%C) 鋳鋼 鋳鉄

引張り A

B

88~147

59~98

117~176

78~117

59~117

39~78

29

19

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C 29~49 39~59 19~39 10

圧縮 A

B

88~147

59~98

117~176

78~117

88~147

59~98

88

59

せん断

A

B

C

70~117

47~88

23~39

94~141

62~94

31~47

47~88

31~62

16~31

29

19

10

曲げ

A

B

C

88~147

59~98

29~49

117~176

78~117

39~59

73~117

49~78

24~39

ねじり

A

B

C

59~117

39~78

19~39

88~141

58~94

29~47

47~88

31~62

16~31

荷重の種類:A;静荷重,B;片振り繰返し荷重,C;両振り繰返し荷重

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☆第 2.7~2.8 章 材料の機械的性質,安全直径,安全率などの総合演習問題

1.構造物の部材が鋼製の丸棒であり,引張荷重 kN30 を受けているとする。引

張許容応力を 290 mm/N とするとき,この丸棒の安全直径を求めよ。

(解答:20.6(mm以上))

2.引張り荷重 kN10 が作用する丸棒の安全直径を求めよ。ただし,材料の降伏

点(基準強さ)を MPa360 ,安全率を3とする。 (解答:10.3(mm以上))

3.軟鋼丸棒を安全率7で使用する。丸棒の許容応力が 28820 cm/N であれば,

直径 cm2 の丸棒を破断するにはいくら以上の荷重を加えればよいか。

(解答:1.9396×105(N))

4.最大荷重 MN.20 をクレ-ンで巻き上げるとき,破壊荷重 MN.50 のワイヤロ

ープを8本使った,安全率fはいくらか。 (Ans:f=20)

5.図 2.18のボルトに kN70 の引張り荷重を加

える。ボルトの安全直径 d とボルトの安全

高さ hを求めよ。ただし,ボルトの許容応

力を 29000 cm/N ,許容せん断応力を 28500 cm/N とする。

(解答:直径 )8.33()(147.3 mm,h cmd )

図 2.18 ボルトの強度

70kN