2013 年度 卒業論文 ―静荷重方式、死荷重方式、応...

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1 2013 年度 卒業論文 造林木の樹幹ヤング率の非破壊評価法の比較 ―静荷重方式、死荷重方式、応力波伝播速度試験 森林科学科 (学生番号:34100162日置 絵里香 北海道大学 農学部

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2013 年度 卒業論文

造林木の樹幹ヤング率の非破壊評価法の比較

―静荷重方式、死荷重方式、応力波伝播速度試験

森林科学科

(学生番号:34100162)

日置 絵里香

北海道大学 農学部

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目次 頁

第1章 諸論 3

1.1背景

1.2目的

第2章 材料と実験方法 4

2.1材料と試験地

2.2実験方法

2.2.1立木曲げ試験

2.2.1.1樹皮厚に対する影響の検討

2.2.1.2断面仮定の検討

2.2.2応力波伝播速度試験

2.2.3丸太材の縦振動試験

2.2.4無欠点小試体の曲げ破壊試験

第3章 結果と考察 11

3.1 樹皮厚影響の検討

3.2 断面仮定の検討

3.3各種試験の結果

3.4 各種非破壊評価法と丸太の動的ヤング率の比較

3.5 各種非破壊評価法と無欠点小試体の曲げヤング率の比較

3.6 各種非破壊評価法と無欠点小試験体の動的ヤング率の比較

第4章 結論 17

第5章 謝辞 19

第6章 参考文献 19

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第 1 章 諸論

1.1 背景

検定林の調査の際には、遺伝・環境要因が材質に及ぼす影響といった情報を調べるために、

生立木を傷つけずに材質を評価する、樹幹ヤング率の非破壊評価法が利用されている。非

破壊評価法のひとつに、立木曲げ試験がある。この試験は、樹幹に曲げモーメントを発生

させることでヤング率を算出するもので、従来は、ヤング率の算出の際に体重載荷時のた

わみを利用していたが、試験機器の技術進歩により荷重たわみ関係内の弾性域を利用する

ことができるようになった。立木曲げ試験のうち、従来の手法を死荷重方式、新しい手法

を静荷重方式という。

現在、検定林の材質評価に用いられている非破壊評価法には、ファコップを用いた応力波

伝播速度試験などがある。新しく提案された立木曲げ試験の静荷重方式は、他の非破壊評

価法との比較がまだ行われておらず、その精度や特性について分かっていない。

1.2 目的

本研究では、立木曲げ試験の静荷重方式の精度を調査し、更に各非破壊評価法の得失を検

討することを目的として、立木曲げ試験や応力波伝播速度試験によって評価した立木状態

のヤング率と、丸太材や無欠点小試験体で評価したヤング率の相関を見た。

立木曲げ試験では、樹幹断面をどのように仮定するかによって精度に差が生じるかどうか、

また、樹皮厚の影響についても検討し、より簡易で高精度な試験方法を模索する。

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第2章 材料と実験方法

2.1 材料と試験地

供試木は、以下に示した。一般民有林のトドマツとカラマツである(表1)。

トドマツ(10 本):41 年生、砂川1の沢 24―49 林班、平均樹高 16.8m、平均胸高直径 18.2cm

カラマツ(7 本):30 年生、新十津川 89-7 林小班、平均樹高 14.8m、平均胸高直径 19.2cm

カラマツ(3 本):29 年生、新十津川 89-26 林小班、平均樹高 12.4m、平均胸高直径 14.2cm

樹種 番号 樹齢 樹高[m]樹皮厚[mm]

南北半径[mm]

東西半径[mm]

胸高半径[mm]

高さ180㎝の樹幹半径[mm]

辺材含水率 心材含水率丸太密度[g/cm3]

1 41 15.6 6.0 119.5 118.0 111.9 109.4 - - 0.782 41 14.9 4.5 79.8 76.0 74.3 72.7 - - 0.613 41 17.8 5.5 111.0 96.0 99.5 97.2 - - 0.594 41 17.8 5.5 116.5 111.5 108.9 106.4 - - 0.665 41 14.1 3.5 59.3 58.0 55.9 54.0 - - 0.706 41 20.3 4.5 102.5 104.5 99.7 96.1 - - 0.607 41 17.1 5.0 88.0 84.5 82.1 80.8 - - 0.708 41 17.7 4.5 90.8 87.0 85.7 85.1 - - 0.579 41 17.3 5.5 107.0 102.5 99.2 95.2 - - 0.5810 41 15.0 5.0 97.5 96.5 92.9 92.4 - - 0.72

1 30 12.4 7.0 94.0 104.5 92.2 91.7 0.53 0.32 0.81

2 30 12.2 4.5 87.0 97.5 88.6 85.9 0.50 0.29 0.723 30 15.2 10.0 109.5 110.0 99.8 97.1 0.51 0.31 0.794 30 16.5 9.0 96.5 104.5 92.5 91.3 0.48 0.29 0.735 30 15.0 6.0 95.5 93.0 92.0 90.1 0.51 0.27 0.816 30 16.2 7.0 100.0 105.5 99.0 94.4 0.53 0.29 0.767 30 16.1 8.0 114.0 113.0 106.3 104.4 0.46 0.30 0.758 29 13.1 6.0 76.0 75.0 69.8 66.4 0.49 0.29 0.749 29 13.4 6.5 89.0 88.0 83.6 84.9 0.53 0.27 0.7410 29 10.8 5.0 66.0 63.5 59.5 59.0 0.53 0.29 0.79

トドマツ

カラマツ

図2 カラマツの試験地

表1 供試木の概要

図1 トドマツの試験地

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2.2 実験方法

2.2.1 立木曲げ試験

木製レバーは、樹幹に巻いたベルトとロープから吊り下げ、添え板を付けた一端が地上 180

㎝付近で樹幹に沿うように取り付けた。このとき、地面に対して木製レバーが水平になる

ようにターンバックルで調節した。木製レバーの長さ 800 ㎜に穴を開け、荷重をかけられ

るように結び目をつけたロープを通した。このロープに実験者が体重をかけることで、木

製レバーの取り付け部から地面までの樹幹に一様な曲げモーメントが生じる。

矢高測定器は、木製レバーと反対側の地上高 80-160 ㎝区間で上下の突起を樹皮にあてが

い、滑り落ちないようにひもで樹幹に縛り付けた。矢高測定器の中央に差し込んである矢

高ゲージで、モーメント負荷時の曲げ変位を測定した。

試験は直交2方向で試験を行い、その平均値を用いた。

図3 試験器具

(a)木製レバー

(b)矢高測定器

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立木曲げ試験は、①静荷重方式と、従来の方法である②死荷重方式の 2 種類を行った。

①静荷重方式

静荷重方式では、木製レバーの先にロードセルを取り付けて実験した(図3)。

ロードセルと矢高測定器を小型のデータロガー(共和電業製 EDX-10A)に接続し、荷重

と曲げ変位を5Hz で連続的に測定した。この時、ノートパソコンで常にこのような荷重

変位のグラフを見られる状態で実験を行った。

計算には、弾性域であるグラフの直線部分を使った。

図 3 静荷重方式の実験風景

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②死荷重方式

実験者が樹幹に完全にぶら下がり、実験者の体重載荷によって樹幹に曲げモーメントを

負荷した(図4)。その際に、矢高測定器によって樹幹の曲げ変位を記録した。

荷重は、実験者の体重を測定することで記録した。

図4 死荷重方式の実験風景

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ヤング率の算出には、以下の式を用いた。

I

LWsE

8

2

高さ 180 ㎝の樹幹半径は、コンベックスによって測定した。

樹皮厚や胸高半径の測定方法、I の算出方法については、以下で説明する。

2.2.1.1 樹皮厚の影響

樹皮厚は、高さ 120 ㎝で 4 半径方向から、目盛を刻んだドライバーを用いて測定し、その

平均値を用いる。樹皮厚を無視した樹幹半径から算出したヤング率と、樹皮厚を差し引い

た樹幹半径から算出したヤング率をそれぞれ算出し、その比と胸高半径の関係を見る。

2.2.1.2 断面仮定の影響

2 種類の断面仮定で行った試験結果を比較し、立木曲げ試験の精度に差が生じるか検討する。

(1)断面を円と仮定して、コンベックスで測定した胸高周囲長から胸高半径を算出した。

4

4rI

、 4

2

2 r

LWsE

π

(2)断面を楕円と仮定して、立木曲げ試験を行う直交 2 方向の胸高直径を、輪尺で測定した。

4

2

3

1 rrI

、 23

1

2

2 rr

LWsE

π

s:曲げ変位を測定する区間長

L:高さ 180 ㎝の樹幹半径+木製レバー長さ

I:断面 2 次モーメント

W:荷重

δ:曲げ変位

s:曲げ変位を測定する区間長

L:高さ 180 ㎝の樹幹半径+木製レバー長さ

r:胸高半径

W:荷重

δ:曲げ変位

s:曲げ変位を測定する区間長

L:高さ 180 ㎝の樹幹半径+木製レバー長さ

r1:立木を曲げた方向の胸高半径

r2:r1に直交する胸高半径

W:荷重

δ:曲げ変位

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2.2.2 応力波伝播速度試験

立木の樹幹の高さ 70-170cm に、応力波伝播時間測定機器(ファコップ)の2つのセンサ

ーを打ち込んだ。ハンマーでセンサーを打撃し、応力波を発生させ、センサーで応力波の

伝播時間を測定した。センサー間距離をカリパスで実測し、そこから応力波の伝播速度を

測定した(図5)。センサー間には節などの欠点を含まないように実験を行った。

本試験では、以下の式から各供試木の比ヤング率を算出した。

2VE

ρ:応力波伝播経路の密度、

V:応力波伝播速度

図5 応力波伝播速度試験の実験風景

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2.2.3 丸太材の縦振動試験

立木状態で非破壊試験を行った後、伐採して高さ 70-170cm の丸太材について縦振動試験を

行った(図6)。その後、カラマツは含水率も測定した。

2.2.4 無欠点小試体の曲げ破壊試験

丸太材の元口から 30-70cm の辺材部から、20×20mm2断面の無欠点小試験体を 4 個程度

採取した。気乾状態まで乾燥後、曲げ破壊試験を行った(図7)。

図6 高さ 70-170cm の丸太材

図7 無欠点小試体の曲げ破壊試験の実験風景

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第3章 結果と考察

3.1 樹皮厚の影響の検討

樹皮厚を無視して計算したヤング率と、胸高半径などから樹皮厚を差し引いた値を用いた

ヤング率をそれぞれ算出した。2つのヤング率の比が、各供試木の胸高半径との関係に関

わらず一定の値をとるならば、樹皮厚は無視することができる。

試験機器の故障により、立木曲げ試験の結果はトドマツ 3本の結果を抜くこととする。

A:樹皮厚を無視したもの、B:樹皮厚を差し引いたもの

・少なくとも本研究で用いた供試木に関しては、どちらの断面仮定でも樹皮厚の影響と胸

高半径に相関は見られなかった。したがって、以下、結果にはより簡易な計算で算出でき

る樹皮厚を無視して計算したヤング率を用いることにした。

A B A/B A B A/B A B A/B A B A/B4 11.62 14.78 0.79 9.46 12.08 0.78 11.76 14.29 0.82 9.63 11.70 0.825 12.80 15.50 0.83 13.11 15.87 0.83 11.96 15.27 0.78 12.24 15.63 0.786 13.35 14.00 0.95 12.75 13.33 0.96 12.24 14.60 0.84 11.67 13.91 0.847 16.73 21.05 0.79 12.83 16.26 0.79 15.79 19.97 0.79 12.26 15.51 0.798 12.41 15.25 0.81 12.62 15.49 0.81 11.62 14.22 0.82 11.79 14.43 0.829 8.58 11.31 0.76 7.87 10.34 0.76 9.07 11.26 0.81 8.29 10.29 0.8110 10.55 11.90 0.89 10.56 11.90 0.89 9.45 11.61 0.81 9.44 11.61 0.81

1 9.93 13.24 0.75 8.82 11.76 0.75 10.15 13.55 0.75 9.07 12.11 0.75

2 12.63 15.40 0.82 9.75 11.91 0.82 12.62 15.37 0.82 9.41 11.47 0.823 7.69 11.23 0.69 7.98 11.64 0.69 8.06 11.81 0.68 8.37 12.28 0.684 11.75 17.06 0.69 8.72 12.69 0.69 11.43 16.54 0.69 8.26 11.95 0.695 9.62 12.48 0.77 11.01 14.27 0.77 8.56 11.01 0.78 9.88 12.72 0.786 9.47 12.52 0.76 5.52 7.30 0.76 9.16 12.07 0.76 5.29 6.97 0.767 9.44 12.60 0.75 10.65 14.21 0.75 9.49 12.68 0.75 10.70 14.28 0.758 6.71 9.31 0.72 7.88 10.93 0.72 7.23 10.10 0.72 8.49 11.85 0.729 17.07 23.06 0.74 11.75 15.87 0.74 15.53 20.83 0.75 10.69 14.33 0.7510 10.57 14.51 0.73 11.52 15.82 0.73 11.01 15.17 0.73 11.95 16.47 0.73

死荷重方式 静荷重方式

トドマツ

カラマツ

樹種 番号

立木曲げ試験による樹幹ヤング率(GPa)楕円仮定 円仮定

死荷重方式 静荷重方式

図8 樹皮厚の影響と胸高半径の関係

表2 樹皮厚の影響に関する結果概要

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3.2 断面仮定の影響の検討

樹幹断面は実際には正確な円ではないため、楕円仮定のほうがより精度が高いと予想した。

・楕円仮定と円仮定で比較すると、予想に反し、相関係数に差はほとんど見られなかった。

したがって、以下、より測定方法が簡易な円仮定の値を用いることにした。

4 10.03 11.73 9.51 11.76 9.635 10.27 12.89 13.20 11.96 12.246 9.77 13.39 12.81 12.24 11.677 10.57 17.01 12.89 15.79 12.268 9.82 12.46 12.68 11.62 11.799 7.54 8.61 7.92 9.07 8.2910 7.35 10.57 10.60 9.45 9.44

1 8.79 9.89 8.74 10.15 9.07

2 8.23 12.99 10.35 12.62 9.413 8.14 7.70 7.97 8.06 8.374 8.65 11.93 9.08 11.43 8.265 9.24 9.61 10.89 8.56 9.886 7.67 9.47 5.57 9.16 5.297 9.15 9.45 10.66 9.49 10.708 7.38 6.72 7.89 7.23 8.499 8.08 17.00 11.71 15.53 10.6910 8.81 10.49 11.48 11.01 11.95

死荷重方式 静荷重方式

楕円仮定

死荷重方式 静荷重方式

円仮定立木曲げ試験による樹幹ヤング率(GPa)

樹種 番号

トドマツ

カラマツ

丸太の動的ヤング率(GPa)

図9 断面仮定の影響に関する結果 一覧

表3 断面仮定の影響に関する結果 一覧

丸太の動的ヤング率[GPa]

立木曲げ試験による樹幹ヤング率

[GP

a]

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3.3 各種試験結果

・試験機器の不具合により、トドマツ 3本は、立木曲げ試験の結果を算出できなかった。

・立木曲げ試験の結果は、縦振動試験の結果に比べてやや大きく、静荷重方式では約 1.0-1.2

倍、死荷重方式では 1.0-1.5倍の値となった。

・静荷重方式、死荷重方式、応力波伝播速度試験の結果を、丸太の動的ヤング率と無欠点

小試験体の曲げヤング率、それぞれとの相関を見た(図 10,11)。

1 9.59 9.66 3199.55 10.24 5.21 ― ―2 8.85 10.20 3669.21 13.46 5.41 ― ―3 9.44 10.57 3597.12 12.94 7.40 ― ―4 10.03 10.73 3253.60 10.59 5.25 11.76 9.635 10.27 11.20 3205.34 10.27 4.65 11.96 12.246 9.77 10.92 3110.65 9.68 4.66 12.24 11.677 10.57 11.57 3696.94 13.67 6.90 15.79 12.268 9.82 10.90 3557.13 12.65 6.05 11.62 11.799 7.54 9.27 3151.68 9.93 4.72 9.07 8.2910 7.35 9.66 3057.76 9.35 4.62 9.45 9.44

1 8.79 14.08 3619.33 13.10 6.88 10.15 9.07

2 8.23 12.12 3712.58 13.78 6.83 12.62 9.413 8.14 14.13 3072.33 9.44 4.60 8.06 8.374 8.65 13.34 3810.27 14.52 7.49 11.43 8.265 9.24 14.12 3886.25 15.10 7.81 8.56 9.886 7.67 13.03 3721.35 13.85 7.19 9.16 5.297 9.15 14.33 4119.17 16.97 8.42 9.49 10.708 7.38 11.61 3477.24 12.09 6.22 7.23 8.499 8.08 13.09 3764.39 14.17 7.38 15.53 10.6910 8.81 13.83 3538.78 12.52 6.52 11.01 11.95

番号死荷重方式による樹幹ヤング率(GPa)

静荷重方式による樹幹ヤング率(GPa)

トドマツ

カラマツ

丸太の動的ヤング率(GPa)

樹種応力波伝播速度試験によるヤング率[Gpa]

応力波伝播速度

の2乗(106m2/s2)

無欠点小試体の曲げヤング率

(GPa)

応力波伝播速度(m/s)

表 4 試験結果の概要

丸太の動的ヤング率[GPa]

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図 10 各種非破壊評価法で得られた樹幹ヤング率と丸太の動的ヤング率の比

立木曲げ試験による樹幹ヤング率

[GP

a]

丸太の動的ヤング率[GPa]

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3.4 各種非破壊評価法と丸太の動的ヤング率の比較

・立木曲げ試験による 2 種類のヤング率と、丸太の縦振動試験によるヤング率との相関係

数にはほとんど差がない。しかし、死荷重方式には、カラマツに回帰直線から大きく外れ

た値がある。死荷重方式の試験結果から外れ値を一つとると、全体の相関係数は 0.524か

ら 0.720まで上がり、静荷重方式と同程度の精度となる(図10)。従って、立木曲げ試

験はどちらも精度は同程度だが、静荷重方式の方が、より外れ値の少ない結果となったと

いえる。

・応力波伝播速度試験では、試験結果と丸太の動的ヤング係数の回帰式が異樹種間で回帰

直線が異なる傾向が見られた(図10)。この原因について、2点の仮説を立てた。第一に、

未成熟材の存在により、カラマツの心材と辺材の強度差がトドマツに比べて大きい、とい

う理由である。応力波伝播速度試験は、応力波の伝播経路となる辺材のヤング率を測る試

験だが、縦振動試験は心材も含めた丸太全体のヤング率を測る試験である。したがって、

未成熟材を含むカラマツの縦振動試験で算出された動的ヤング率が、応力波伝播速度試験

で算出したヤング率に比べて小さな値となり、トドマツの回帰直線とずれが生じたのでは

ないかと考察した。この理由の正当性については、辺材から切り出した無欠点小試験体の

曲げヤング率との相関を見れば検証できると考えられる。

第二に、本研究で用いた供試木について、カラマツに節などの欠点が極端に多かった、と

いう理由である。一般民有林から各供試木を採取したが、カラマツの方が樹幹に節や曲が

りが多かったように感じた。しかし、欠点を定量的に評価していたわけではないため、こ

の理由の正当性について検証はできない。

・立木曲げ試験と丸太の動的ヤング率の結果を比較すると、トドマツには高い相関がある

がカラマツは中程度の相関しかない(図 10)。応力波伝播速度試験に関する考察で述べた通

り、カラマツの丸太の動的ヤング率の測定に関して、精度が低いためだと考えられる。

・応力伝播速度試験では、同一樹種内であれば丸太の動的ヤング率との関係は中程度の相

関があった。

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図 11 各種非破壊評価法で得られた樹幹ヤング率と無欠点小試験体の曲げヤング率の比較

立木曲げ試験による樹幹ヤング率

[GPa]

無欠点小試験体の曲げヤング率[GPa]

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3.5 各種非破壊評価法と無欠点小試験体の曲げヤング率の比較

・立木曲げ試験による2種類のヤング率は、トドマツでは高い相関を出しているにも関わ

らずカラマツにおいて相関が大きく下がり、またそれに伴い全体の相関も下がった(図 11)。

カラマツだけが低い相関を得た原因は、上記した通りカラマツの未成熟材が原因だとも考

えられるが、その正当性は確かではない。

・応力波伝播速度試験の結果を見ると、丸太の動的ヤング率と比べて異なる樹種間での相

関が高くなった。したがって、辺材から採取した無欠点小試験体とのヤング率の相関は高

かった。先ほど述べた「未成熟材の存在により、カラマツの心材と辺材の強度差がトドマ

ツに比べて大きいために、カラマツとトドマツで、丸太の動的ヤング率との間の回帰直線

でずれが生じたのではないか」という仮説の正当性が検証された。

3.6 各種非破壊評価法と無欠点小試験体の動的ヤング率の比較

・立木曲げ試験による 2種類のヤング率は、静荷重方式と死荷重方式で、その試験結果と

無欠点小試験体の動的ヤング率の相関に差があった。静荷重方式の方が、死荷重方式に比

べてばらつきの少ない結果となった(図 12)。

・応力波伝播速度試験の結果の相関は小さい。

第4章 結論

・3 種類の非破壊評価法それぞれの精度を比較した結果、静荷重方式は、少なくとも丸太材

のヤング率を推定するには適した方法だといえる。更に、樹皮厚や断面2次モーメントの

求め方などについて、より簡易な試験方法を模索することもできた。しかし、試験に要す

る時間や機材の簡易さについては、未だ応力波伝播速度試験に優位性がある。

また、試験の精度と供試木の欠点の多さの関係など、調査をするべき課題も多く見つかっ

た。

・立木曲げ試験の静荷重方式は、死荷重方式と比べて、より外れ値の少ない結果となった。

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無欠点小試験体の動的ヤング率[GPa]

立木曲げ試験による樹幹ヤング率

[GPa]

応力波伝播速度の

2乗[m2 /s2 ]

図 12 各種非破壊評価法で得られた樹幹ヤング率と無欠点小試験体の動的ヤング率の比較

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第 5 章 謝辞

なお、本研究は科学研究費補助金(課題番号:25450237)の補助を受けて行いました。

本研究に着手するにあたって多くの示唆を賜った小泉章夫准教授、研究を進める際に様々

なアドバイスをしていただいた平井卓郎教授、澤田圭助教、そして供試材料の入手に際し

て御配慮いただいた北海道林産試験場の鳥田宏之氏に深く感謝いたします。

研究に係る各種の実験にあたって御協力いただいた木材工学研究室の皆様もありがとうご

ざいました。

第 6 章 参考文献

小泉章夫・上田恒司:モーメント負荷試験によるカラマツ立木の材質予測,日本木材学会北

海道支部講演集,第 16 号(1984).

小泉章夫・上田恒司:立木の曲げ試験による材質評価 樹幹曲げ剛性の測定,木材学会誌,

Vol.32,No.9(1986).

小泉章夫:生立木の非破壊材質試験―樹幹のヤング係数を測定する―,北方林業,Vol40,

(1988).

藤澤義武・柏木学・井上祐二郎:ファコップを用いた材質有料僕の非破壊的選抜技術,Kyushu

J.For. Res. No.56,(2003).

鳥取林試 桐林真人・川上敬介・西村臣博・森田浩也・柴田寛:測線を斜め方向にしたと

きの応力伝播時間の計測による立木の強度性能の推定について,