2006 jaep hirumda_sympo_tomida

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教室という文脈の中でとらえる説明活動の機能

富田 英司(九州大学)

共同研究:高垣マユミ・田原裕登志(鎌倉女子大学)

研究の前提となる「現代日本社会像」

• 企業・組織における人材の流動化– 共有時間の短縮化– 成員の立場の違い– 成員の国籍・文化の違い

• 知識基盤化社会– 常に新しいアイデアでの商業展開・行政が必要

• 社会の成熟・高齢化による市民社会化– 市民自身による自治・福祉・教育・治安・陪審

→ 「みんなが話せたらOK」ではない

例)・派遣社員の増大・業務のグローバル化・外国人労働者の流入・大学認証評価の国際化

従来の説明研究(教育心理学)の特徴

• 静的 / 非生成的• 一回限り• 実験室的 / 面接室的(プロトコル)を対

– 自己説明を通じての推論やモニタリングの指標としての説明( Chi & Bassok, 1987 )

– 活動の特徴や状態を分類( Mercer, 1996 )– よいマニュアルの作成のための研究– 科学的説明能力の指標としての説明

例)3つの会話タイプ( Mercer, 1996 )論戦型会話Disputational Talk

意見の相違と個別の意志決定が特徴的。知識資源を互いに提供したり,相手を建設的に批判したりすることがほとんどみられない。また,主張とそれへの反対という著しく短いやりとりが見られる。

累積型会話CumulativeTalk

相手が言ったことに対して賛意を表明するが,無批判的である。会話は共通の知識を事実の蓄積によって構成することを目的としたものである。反復と確証と精緻化がよく見られる。

探索型会話ExploratoryTalk

互いに対して批判的ではあるが,建設的である。互いに挑戦的な意見を出すが,意見には理由や根拠,代替仮説が伴う。上の2つに比べて,他者が分かるようにはっきりと意見が説明され,会話における推論の過程がはっきりと分かる。

• 動的 / 生成的– 説明はそれ自体が新しい理解・知

識を生み出すためのアリーナ

• 反復的– 知識構成のプロセスは一度きりの

説明の中ではみられない

• 教室的談話を対象– 教室での説明は,マルチパーティかつ間テキスト的(多声的)

話し合いを中心とした授業のデザインに必要な説明研究

  分析の視点:本発表の扱う「説明」とは• 相互交流による理解の進展過程としての説明          個人の考え          班での議論          教室の議論

• 相互交流を支える児童の説明能力

主張主張データデータ

保証保証

• 「足場作り」としての教師の説明

今回のプレゼンの目標

• ディスカッサントとして未熟な参加者による教室での議論はどのように成立しているか?– 議論はどのように促進されているか?– 議論の困難さは何が作りだしているのか?– そして,教育実践への示唆は?

• 教師の働きかけはどのように役立っているか– 議論のためには,理論と根拠の区別が必要– 小学校低・中学年には,議論構造の理解は困難– そこで教師の「足場作り」が重要

• 研究の前提:「話せたらOK」ではない– グローバル社会の市民として必須のコミュニケーション・スキルを身に付けてほしい

研究対象

小学4年生   27名(男9名,女 18名)

• 教師:理科専任T教諭(教師歴5年)

• 単元:『水のすがたとゆくえ』 全7コマ   「水が水蒸気や氷になる様子を観察し,温度と水

の変化との関係などを調べ,水の状態変化についての考えを持つようにする。」

• 活動:水の入ったフラスコを熱するとどうして口に汗がつくのか説明するモデルを班で考える。

• 班:1班~6班のうち,4班がフォーカル・グループ

3 4 52

単元の構造

全体議論教師主導

講義

班 議 論

班 議 論

講義

班 議 論全体議論教師主導

班 議 論

全体議論児童中心

講義

班 議 論

講義

班 議 論

講義

全体議論教師主導

班 議 論

班 議 論

講義

実験実演実験実演

実験実演実験実演

考えを紹介しあう

班で考えを絞る

各班の考えを紹介

新しい発問

ビーカーにも水滴がつくのを実演

泡の正体について議論

おさらい+

各班の考えを紹介

液体から気体が発生するのを見せる

もう一度図を書く

各班の考えを紹介

まとめ

前回までの確認プランの呈示

プランの呈示

実験・議論をふまえて再検討

全体議論教師主導

全体議論児童中心

各班の考えを紹介

互いに質疑応答

講義

全体議論教師主導

前回までの確認

各班の考えを紹介

科学的な考え方を紹介

互いの班の考えを戦わせる

泡の正体を解明

マクロな授業進展プロセス

1.説明の曖昧さへの気づき– 質問に答えられないことから考えの不十分さに気づく。– 考えの自明性が消え,議論の必要性が生じる。

2. 論点の整理

3. 班内での話し合い

4. 教室全体への展開

1.説明の曖昧さへの気づきセッション2 4班

44 s3  [水が ] 乾き、空気中に気体となって見えなくなるが,上側は下より冷たいから

      気体から液体に戻る。45 s14 分かんない。46 s19 みんな気体ってなにって言うよ。( s19 は s3 と同じ意見)47 s3  だから、空気とか二酸化炭素とか。48 s14 じゃあ、空気って何 ?49 s19 今言ったようなもので、温められると、水の、水分…。わかんない。

126 s19   s14 と似たような意見さ、誰か出てくれる。似てない所はあるけどね、私は

ただね、 [水や空気が ] 膨らむんじゃなくて、温められてるのが、上がる。127 s14 水が膨らむの ?  え ?128 s19 えっと、水が温められて、ボコボコ…。129 s14 空気だから、泡の時のだけでしょ ?130 s3  空気は最初から [ 水の ]中にある ?131 s14 空気も入った、水,水,水が、 [フラスコの ]中に入ってる。132 s19 なんか、空気と水が合わさって…。133 s14 ここに空気と水があって、空気が泡になるわけ。空気と水が上に上がって       いって…。上がってって…。そしたら、も~分かんない。

マクロな授業進展プロセス

1. 説明の曖昧さへの気づき

2.論点の整理– 班内で,自発的に論点が整理される。   → しかし,班の議論ではそれが活かされない。– 教師が班での議論を活かして,発問を発展させる。

3. 班内での話し合い

4. 教室全体への展開

2.論点の整理①(児童によるもの)

4班 セッション2

84 s19   じゃあ、もう一回さ、その…。85 s14   回るのはいい。水が上がると思うかそれとも空気が上がるのか。86 s19  ね、みんなさ、これをさ、簡単に説明したらどう?簡単に。簡単に 説明したらどう?まとめて。それが一番速い。 s3 がいいと思う人             s21 がいいと思う人…。 s3 がいい /87 s4     みんな手挙げねーじゃん。88 s19   一人絶対一回挙げて。 s4 がいい人。 s3 がいいと思う人。90 s19  s14 がいい人。91 s21  s4 がいい人手挙げて。はい。92 s4     じゃあ、 s19 は手挙げないの ?93 s19   そういえばそうだな。94 s4     そういえばそうだなじゃないよ。じゃあ、もう一回順番つくる?

論点がまとめられたが

無視。同じ方略に固執する。

方略の不適切さは自覚している

2.論点の整理②(教師によるもの)

セッション2 全体274  T ・・・で、この班(4班のこと)が、さらに考えてくれ

たのは、今までみんなぎゅうぎゅうしてるからって言ったじゃん、ここ。じゃなくて、ここは、たまたまくっつくんだよね ? この班は、たまたまなんだって・・・

302  T 今までのグループとちょっと違うのわかる? この泡がどうかは、まず話おいておいて、今までのグループと違うのは、そもそもこの4班は空気のことあんまり気にしてません。他のグループは、空気と水、空気と水っていうじゃない? この4班は、まぁ、湯気かどうかは別としても、見えない湯気。つまり、これ、水なんだよね、ここにいた。この水がーこのまま上にいったんだよ。で、この4班は、その見えない部分のことを湯気っていうふうに表現してくれました・・・

311  T ・・・このあと、ちょっと時間があるので、話し合いをしたいと思います。いい ? 空気と水が混じって、上に上がってぶつかったものなのか、そもそも、水だけのものなのか、もしくは、空気だけのものなのか、グループの中でまず、話し合ってみようか。ね。グループの中でもしかしたら、違うって意見が出るかもしれない。ね。OK ?出てきた泡は、空気なのか、水なのか、もしくは、空気と水が混ざったものなのか、少し話しておきましょう。どうぞ。

班で整理された論点を踏まえての発問

違いを明確化

マクロな授業進展プロセス

1. 説明の曖昧さへの気づき

2. 論点の整理

3.班内での話し合い– 発問に促され,班の議論も「水」派と「空気」派に分かれる– しかし,適切な意思決定方略を用いていない   →「説明(主張)の繰り返し」,「相手の批判」,「多数

決」– 教師による足場作り

4. 教室全体への展開

3.班内での話し合い①

班内での意見の相違( 4班 セッション2 )316 s14上に行ったら丸くなるでしょ?

空気に近いけど、水みたいなのになる。

317 s3 [ 上に上がって行くものは ] 水。318 s14水だけだと上がんなくない?

泡の正体は「水+空気」説が採用される(4班 セッション2)138 s4 誰が一番いいの?139 s19 s4さん。140/1 s4/s21 せいのドン。142 s4 じゃあ、 s14ね。143 s14何だっていいし、もう。144 s21じゃあ、どうする ?145 s14そうね~、うずまき書いていい?146 s4 いいよ。

多数決

3.班内での話し合い②班内でみられた典型的な意思決定過程(4班 セッション3)

77 s19   (略)水の中に水分子がいて、そういうの…。78 s3  水分子?79 s19 水分子。80 s3  水分子って何?81 s19 そういうものがあって、水分が、大っ嫌いだから…。82 s3  どうして?83 s4    [ 説明に困っている s19 を見て s3 に対して ] いいの。84 s19 空気の…。水分みたいなのが…。85 s3    [ 空気の水分は ] 空気 ?86 s4  いいの。 s3[ の番 ]だよね ?87 s3    水が温めると、(略)分かれて…、ちっちゃいから、軽いでしょ。だから、上に行く。88 s14 それで?89 s3    浮いて、張り付く。90 s14 どうやって浮くの?91 s3    弾む。92 s14 どうして弾むの?93 s3    知らない。 (中略)98 s14 いっせいの。 ( 掛け声をかけ、その後、誰の意見が良いか選ぶ )(中略)

101 s19 OK。( s14 に向かって)じゃあ、あなたが描いて。

議論を踏まえない多数決

公平さに欠ける

・相手の説明の不十分さを指摘

・積極的な論証は見られない

今度は,泡の正体は「水+空気」説が採用される

3.班内での話し合い③

重要な気づきを支援する教師の働きかけ( 4班 セッション3)

118T 聞いとくけど、この中 ( フラスコの真ん中辺り )はどうだった?

ここが重要なんだよ。ここが?になるんだよ。見えないんだから。

119 s14[フラスコの真ん中辺りには ] 何がある ?

120 s4 あのさ、軽いから [分かれた水が ] 浮くとかさっき言ってたじゃん。

121 s3 そうそうそう。

122T これ、 (PCの水色の丸を指して ) 水そのもの ?

123 s3     [ 水が ]こまかくなったもの。

124T なるほどね。でもさ、そしたらさ、アルコールの実験のやつ。

あれ、もうちょっとヒントにしてみて。

マクロな授業進展プロセス

1. 説明の曖昧さへの気づき

2. 論点の整理

3. 班内での話し合い

4.教室全体への展開– 論争の焦点を再度,明確にする– 議論と実験結果を踏まえて議論するように方向付ける

• 「水」派と「空気」派に分かれるが議論にならない• 方略:「主張を繰り返す」「批判的質問(消極 的論争)」

4.教室全体への展開①

議論の焦点を再度明確化(全体 セッション4)154 T さっき、 s1君が、 s24さんも言ってくれた、フラスコの下部は

温かいけれど、フラスコの上側は冷やされると [ 水 ]に戻るんだよ。ま、確かにね。温めて、こっちになったんだから、冷やされれば戻るのはなんとなく納得がいきます。ただ、これは空気が運んだわけではないんだよね。水、そのものが変化したよ。え~と気球と一緒。どこが?どういう点で気球と一緒なのかな?

155 s5 えっと。水の、上に、上に上がる、あら ?156 s20 温められて…。気球は熱で…。空気が温められると、上に行くから。157 不明 水も温められると上に行くんじゃないか。158 s20 ってう意見です。159 T なるほど。気球と同じように、温めた水は上に行きたい性質が

あるんだよ。前さ、一番最初に書いた議論中で、 s14さんだよね、これ言ってくれたの。水だけだったら、上に行かないでしょって言ってくれたじゃん。みんなはそうだそうだって思ったんだけど、全く反対のこと言ってくれたのが、水は温めて、上に行くんだよ(後略)

4.教室全体への展開②

教師による議論の方向付け(全体 セッション5)

19 T (略)確認しておきたいのは、温めて [ ビニール袋を ] パンパンにしたじゃない。このパンパンにしたときに入ってるものって空気じゃないんだよね。もともと空気いなかったもん。空気じゃないんだけど膨らんだのおかしい。じゃあアルコールって考えるには、暴れたアルコールって考えるしかないよね。だよね? ということをヒントにして、前回の話し合いの続き。

4.教室全体への展開③教師のヒントのあと,何が水を上昇させたのかを議論:「水」 vs 「水+空気」 (全体 セッション5)

30  s23 …プールとか行くと、人間って空気と水があるから浮けるけど、水だけだと

空気がないから沈んじゃう。だから水も空気が混ざってるんじゃないかな。

31 T もともと、空気が混じってるってことだよね。あ、それに対しての反論ある?

32 s17 プールのことなんですけど、水だけでも、何か軽かったら、水の方が強くて、

体が軽かったら、水が [ 体を ]押し上げて浮ぶのかなって思った。

33 T うん。なるほど。空気で浮くわけじゃないよ。これ以外の反論ってある ?

(中略)

43 s19 水の中に、変な見えないものがあって(略)、それは海に人間が入ると邪魔

なものだと思って、その変な見えないものが人間を押し上げる力があるから、

空気がなくても水だけでもできると思う。

44 T  なるほど。反論が割りと出たんで、それ以外の反論聞いていきましょう。

47 s18 魚とかは水の中に混じった空気を吸ってるから、水と空気が混じったもの 。

49 s17 海とかって、塩とかがあるから、そういうので浮くんじゃない?

50 s23 川は?

52 s23 けど、 [塩が入っていない ]川でも浮ぶじゃん。

・これまでの実験やヒントを議論に 

かせていない

まとめ①:教師の働きかけについて

• 論点を明確化– 児童の気づきを増幅させる役割( cf. ZPD )– 児童の気づきや論点を維持し,ガイドする役割

• 班活動と全体議論の橋渡し– 班の間での意見の違いを明確化– その違いを踏まえて発問を展開

• 「フラスコの汗は何か」→「泡は何者か」

• 論証に必要な材料の提供と焦点化– 問題の解決に必要な証拠を実演し,この結果を利用するように方向付ける。

– 今回は,この方向付けは活かされなかった

まとめ②:児童の説明能力について• 児童は自分の考えを持ち,積極 的に主張した。しかし…

• ピア関係の重要性– ピアの言動を意識しすぎて議論が阻害されていた

• 児童は根拠を戦わせる議論ができなかった– 「多数決の濫用」:4班では7回使用– 方略としての不適切さは自覚されている– 議論の組み立て方を知らないことが原因ではないか?

• 説明力の発達段階の解明が必要– 実力行使– 偶然方略:「じゃんけん」・「順番」– 集団主義的決定:「多数決」・「雰囲気」・「権威主義的」– 論証による決定:

• 消極 的論争:なぜ相手の考えが間違っているかが中心• 積極 的論争:なぜ自分の考えが正しいかが中心

では「深く学ぶために」は?

• 各児童の気づきが単元全体の中で持つ意味を教師が理解し,それに応じて発問を展開

• 議論に用いる知識領域を明確に制限するだけでなく,議論の基本的な組み立て方を教える

• グラウンドルールとスキルの両方が重要かも– ピアに引きずられない「自己」の育成