2009 50 年司法試験【租税法】 〕〔第2問 (配点: …watax/0712-02resume.pdf-1-2009...

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-1- 年司法試験【租税法 〔第2問 (配点: 点) 2009 50 テーマ:退職慰労金の所得区分 不相当に高額な部分の損金不算入 〔第2問 (配点:50) Aは、B株式会社(内国法人。以下「B社」という )の常勤の取締役を20数年間 務め、平成20年3月期決算に係る定時株主総会の終結をもって取締役副社長としての 任期を満了したが、同株主総会において非常勤の監査役に選任され、その後は監査役 としての職務に専念している。AがB社の取締役に就任した当時、同社は倒産寸前の 苦境に陥っていたが、Aは長年かけて同社の経営の再建に尽力し株式上場の立役者と なった。このことは社内外を問わず衆目の一致するところである。 前記株主総会では、Aは引き続き役員を務めることになったが、これを機にAに役 員退職慰労金支給規程に従って退職慰労金を支給することが決議された。その決議を 受けて、B社の取締役会では、役員退職慰労金支給規程の定める基準に従ってAに対 する退職慰労金の額を1億3000万円とする旨の提案がなされた。これに対して、審議 の冒頭で 「Aの我が社への貢献は高く評価するが、それでも上場して間もない我が 社の資産、収益等の現状からみて高額すぎるのではないか 」との強硬な反対意見が 出され、これに同調する者もいたが、途中から 「もっともな御意見ではあるが、上 場会社としてそれなりの配慮があってもよいのではないか 」との賛成意見が優勢に なり、結局、原案どおり承認された。決定された退職慰労金の内訳及び内容は以下の とおりである。 標準退職慰労金7000万円 この金額は、役員退職慰労金支給規程の定める基準に従い、役位別の最終報酬 月額に役位ごとの在任期間の年数及び役位別の役位係数を乗じて算出したもので ある。 功労加算金2000万円 この金額は、役員退職慰労金支給規程の定める基準に従い 「在任中特に功績 が著しかったと認められる役員」に対して標準退職慰労金の金額の30%を超えな い範囲で支給することができるものとされている功労加算金について、算出した ものである。 特別功労加算金4000万円 この金額は、役員退職慰労金支給規程の定める基準に従い 「当社の創業を主 導し推進した役員、強力な戦略の成功をもたらした役員、当社の苦境を脱し盛業 に導いた役員、その他当社に大いなる貢献をなし、その功績が顕著であったと認 められる役員」に対して功労加算金の金額の倍額を超えない範囲で支給すること ができるものとされている特別功労加算金について、算出したものである。 特別功労加算金については、金銭で支給することにした標準退職慰労金及び功 労加算金とは異なり、B社所有の帳簿価額4000万円の甲土地を支給することにし た。 B社は、Aに対する退職慰労金(以下「本件退職慰労金」という )の支給に当た って、1億3000万円について、損金処理をする一方、所得税を源泉徴収した。なお、 甲土地の支給時の時価は1億円であった。

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年司法試験【租税法 〔第2問 (配点: 点)2009 50】 〕

テーマ:退職慰労金の所得区分

不相当に高額な部分の損金不算入

〔第2問 (配点:50)〕

Aは、B株式会社(内国法人。以下「B社」という )の常勤の取締役を20数年間。

務め、平成20年3月期決算に係る定時株主総会の終結をもって取締役副社長としての

任期を満了したが、同株主総会において非常勤の監査役に選任され、その後は監査役

としての職務に専念している。AがB社の取締役に就任した当時、同社は倒産寸前の

苦境に陥っていたが、Aは長年かけて同社の経営の再建に尽力し株式上場の立役者と

なった。このことは社内外を問わず衆目の一致するところである。

前記株主総会では、Aは引き続き役員を務めることになったが、これを機にAに役

員退職慰労金支給規程に従って退職慰労金を支給することが決議された。その決議を

受けて、B社の取締役会では、役員退職慰労金支給規程の定める基準に従ってAに対

する退職慰労金の額を1億3000万円とする旨の提案がなされた。これに対して、審議

の冒頭で 「Aの我が社への貢献は高く評価するが、それでも上場して間もない我が、

社の資産、収益等の現状からみて高額すぎるのではないか 」との強硬な反対意見が。

出され、これに同調する者もいたが、途中から 「もっともな御意見ではあるが、上、

場会社としてそれなりの配慮があってもよいのではないか 」との賛成意見が優勢に。

なり、結局、原案どおり承認された。決定された退職慰労金の内訳及び内容は以下の

とおりである。

① 標準退職慰労金7000万円

この金額は、役員退職慰労金支給規程の定める基準に従い、役位別の最終報酬

月額に役位ごとの在任期間の年数及び役位別の役位係数を乗じて算出したもので

ある。

② 功労加算金2000万円

この金額は、役員退職慰労金支給規程の定める基準に従い 「在任中特に功績、

が著しかったと認められる役員」に対して標準退職慰労金の金額の30%を超えな

い範囲で支給することができるものとされている功労加算金について、算出した

ものである。

③ 特別功労加算金4000万円

この金額は、役員退職慰労金支給規程の定める基準に従い 「当社の創業を主、

導し推進した役員、強力な戦略の成功をもたらした役員、当社の苦境を脱し盛業

に導いた役員、その他当社に大いなる貢献をなし、その功績が顕著であったと認

められる役員」に対して功労加算金の金額の倍額を超えない範囲で支給すること

ができるものとされている特別功労加算金について、算出したものである。

特別功労加算金については、金銭で支給することにした標準退職慰労金及び功

労加算金とは異なり、B社所有の帳簿価額4000万円の甲土地を支給することにし

た。

B社は、Aに対する退職慰労金(以下「本件退職慰労金」という )の支給に当た。

って、1億3000万円について、損金処理をする一方、所得税を源泉徴収した。なお、

甲土地の支給時の時価は1億円であった。

47 118 51 10 6 37 7 971①【5年退職金事件】第1審:東京地裁)昭 (行ウ) 号、昭和 ・ ・ 判決(民集 巻 号頁 、審訴審:東京高裁昭 (行コ) 号、昭和 年・ ・ 判決(民集 巻 号 頁 、上告審:) )51 74 53 3 28 37 7 971最高裁二小昭 年(行ツ)第 号、昭和 ・ ・ 判決(民集 巻 号 頁)53 72 58 9 9 37 7 962

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以上の事案について、以下の設問に答えなさい。ただし、取締役に対する損害賠償

請求の可能性及びそれに伴う課税問題を検討する必要はない。

〔設問〕

1.本件退職慰労金に係る所得の種類及び収入金額が所得税の課税上どうなるかにつ

、 、 。いて 所得税法における課税の趣旨にも触れながら 条文を摘示しつつ論じなさい

2.本件退職慰労金の支給に係るB社の法人税の課税関係がどうなるかについて、条

文を摘示しつつ論じなさい。

【解説】

一.所得税法における退職所得の課税関係

1 「退職」の3要件.

所得税法 条は、退職所得の意義につき、次のとおり規定している 「退職所得とは、30 。

退職手当、一時恩給その他の退職により一時に受ける給与及びこれらの性質を有する給与

(以下この条において「退職手当等」という )に係る所得をいう (所法 ① 。すな。 。」 )30

わち 「退職により一時に受ける給与」と「これらの性質を有する給与」を退職手当等と、

。 、 、 、よんでいる なお 所得税法 条は 退職手当等とみなす一時金について規定しており31

使用者から直接に支給されるものではないが、過去の雇用関係ないし勤務関係を前提とし

て退職時に支給される一定のものをみなし退職所得として取り扱っている。

ところで、一般に「退職」とは、民法上の雇用関係の終了というよりは、当該法人との

間で勤務関係が終了することを意味し、実際に当該法人から離脱することを前提としてい

る。したがって、その「退職」により一時に受ける給与とこれらの性質を有する給与が、

退職手当等となのである。そこで、最高裁は、昭和 年 月 判決民集 巻7号962頁の58 9 9 37

【5年退職事件】 で、退職手当等となるための要件につき、次のとおり判示した。①

「ある金員が、右規定にいう『退職手当、一時恩給その他の退職により一時に受ける給

与』にあたるというためには、それが、( )退職すなわち勤務関係の終了という事実によ1

ってはじめて給付されること、( )従来の継続的な勤務に対する報償ないしその間の労務2

の対価の一部の後払の性質を有すること、( )一時金として支払われること、との要件を3

- 3 -

備えることが必要であり、また、右規定にいう『これらの性質を有する給与』にあたると

いうためには、それが、形式的には右の各要件のすべてを備えていなくても、実質的にみ

てこれらの要件の要求するところに適合し、課税上、右『退職により一時に受ける給与』

と同一に取り扱うことを相当とするものであることを必要とすると解すべきである 」。

2.役員の職務分掌変更等の場合と「退職」の事実

一般従業員の場合と異なり、役員の場合は当該法人を離脱せず、委任関係における役員

の地位も失っていないが、職務分掌の変更等によりその地位又は職務の内容が激変し、実

質的に退職したものと同様の事情にあると認められる場合がある。そのような事情にある

ときは、これも「退職」があったものとみなして、その際に支給される金員を退職給与と

して損金算入を認めることも相当であると考えられる。

そこで、どのような場合が実質的に退職したと同様の事情にあたるかといった一つの解

釈基準を示したものに、次の法人税基本通達9-2- がある。同様に所得税法上、当23

該金員の所得区分に関する通達として所得税基本通達 -2( )がある。30 3

(役員の分掌変更等の場合の退職給与)

「9-2- 法人が分掌変更又は改選による再任等に際しその役員に対し退職給与と23

して支給した給与については、その支給が、例えば次に掲げるような事実があったこ

とによるものなど、その分掌変更等によりその役員としての地位又は職務の内容が激

変し、実質的に退職したと同様の事情にあると認められることによるものである場合

には、これを退職給与として取り扱うことができる。

( ) 常勤役員が非常勤役員(常時勤務していないものであっても代表権を有する者1

及び代表権は有しないが実質的にその法人の経営上主要な地位を占めていると認め

られる者を除く )になったこと。。

( ) 取締役が監査役(監査役でありながら実質的にその法人の経営上主要な地位を2

占めていると認められる者及びその法人の株主等で令第 条第1項第4号《使用71

人兼務役員とされない役員》に掲げる要件のすべてを満たしている者を除く )に。

なったこと。

( ) 分掌変更等の後における報酬が激減(おおむね %以上の減少)したこと 」3 50 。

なお、この取扱いはあくまで国税庁が定める通達であり、通達の解釈上、上記( )~( )1 3

の場合はあくまで例示として示されているに留まり、実質的な退職のための必要条件でも

16 34 18 10 18② 第1審:京都地裁平成 年(行ウ)第 号、平成 年2月 日判決、控訴審:大阪高裁平成年(行コ)第 号、平成 年 月 日判決、上告審:最高裁三小平成19年(行ツ)第37号、平22 18 10 25成 年 月 日(上告棄却、上告不受理)19 3 13

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なければ十分条件でもないことに注意しなければならない。あくまで、その退職の有無の

本質は、地位又は職務の内容の激変に求められるのである。

3.退職所得軽減課税の趣旨

退職所得の金額について、所得税法 条2項は 「退職所得の金額は、その年中の退職30 、

。」手当等の収入金額から退職所得控除額を控除した残額の2分の1に相当する金額とする

と定めている。すなわち、課税標準となる金額は2分の1に圧縮され、さらに分離課税と

なる軽減措置が講ぜられている(所法 ③ 。22 )

このように退職所得について軽減措置がとられていることにつき、先に掲げた【5年退

職金事件】で最高裁は、次のとおり判示している。

「 退職所得について、所得税の課税上、他の給与所得と異なる優遇措置が講ぜられてい

るのは、一般に、退職手当等の名義で退職を原因として一時に支給される金員は、その内

容において、退職者が長期間特定の事業所等におて勤務してきたことに対する報償及び右

期間中の就労に対する対価の一部分の累積たる性質をもつとともに、その機能において、

、 、受給者の退職後の生活を保障し 多くの場合いわゆる老後の生活の糧となるものであって

他の一般の給与所得と同様に一率に累進税率による課税の対象とし、一時に高額の所得税

を課することとしたのでは、公正を欠き、かつ社会政策的にも妥当でない結果を生ずるこ

とになることから、かかる結果を避ける趣旨に出たものと解される」

4.判決例における検討

②高阪染工場事件

→ 渡辺充「高阪染工場事件~分掌変更と退職の事実~」税務事例(財経PDF資料

詳報社) № [ ]1~ 頁Vol.39 4 2007.4 9

5.本設問への当てはめ

(1) 単なる所得分類に基づく回答

- 5 -

設問1は、本件退職慰労金に係る所得区分が問題となっている。本問の事実関係からす

ると、Aは、B社の取締役副社長から、非常勤の監査役に選任され、その後は非常勤監査

役として職務を行っている。すると、B社は上場会社で閉鎖的な同族会社ではなく、Aは

一般的にB社に対する実質的な経営上の主要な地位を占めているとは考えられないので、

法人税基本通達9-2-23に例示する実質的な退職があったものと推認できる。

したがって、最高裁が示す退職手当の3要件を原則的に満たす本件退職慰労金は、勤務

関係の継続を前提とした所得税法 条の給与所得(賞与)ではなく、分離課税により課28

税が軽減される退職所得として取り扱われることが原則となる。

( ) 特別功労加算金4,000万円について2

本問では、Aに対する特別功労加算金としてB社所有の帳簿価額4,000万円の甲土地を

支給することにしている。ただし、甲土地の時価は1億円であるので、所得税法36条2項

に従い 退職手当として 収入すべき金額 は 当該甲土地を取得した時における価額 時、 「 」 、 (

価)となるので、収入金額の修正が行われる。

二.法人税法における退職慰労金の課税関係

1.不相当に高額な部分の損金不算入

法人税法 条は、役員給与の損金不算入について規定しているが、退職給与について34

は第2項で、不相当に高額な部分の金額として政令で定める金額は、損金の額に算入しな

いと定めている。このように不相当に高額な部分の金額をを損金不算入とする理由は、従

来の法人税法(平成 年度改正以前のもの)が、役員給与を「定期の給与」と「臨時の18

給与」に区分し、臨時の給与で退職給与以外のものはすべて「賞与」として取扱い、その

賞与は本来利益処分によって行われるべき性格のもので、損金不算入とする旨定められて

いた。したがって、退職給与についても、同様な趣旨から、相当額を上回る部分は、いわ

ゆる“お手盛り”であり、隠れたる利益処分となるところから、その損金性が否定されて

きたのである。

なお、平成 年度の税制改正前により、企業会計、会社法が、役員賞与を利益処分に18

よって支給することを制度として廃止したため、賞与は報酬と同様に、定款又は株主総会

の決議によって職務執行上の対価として位置づけられたので、法人税法もこれに対応した

制度の構築を図った。

そこで、定期・臨時といった従来の思考は残しながらも ( )定期同額給与 ( )事、 、a b

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前確定届出給与 ( )利益連動給与については、それぞれ一定の要件を定めて損金算入、 c

とし、これら以外の役員給与は原則として損金不算入としたのである(法 ① 。なお、34 )

退職給与については、従来と同様、不相当に高額な部分の金額の損金不算入制度を残置し

た(ただし、損金経理要件は削除した 。)

次に、不相当に高額が否かの判断基準として、法人税法施行令 条2号は 「内国法人70 、

が各事業年度においてその退職した役員に対して支給した退職給与の額が、当該役員のそ

の内国法人の業務に従事した期間、その退職の事情、その内国法人と同種の事業を営む法

人でその事業規模が類似するものの役員に対する退職給与の支給の状況等に照らし、その

退職した役員に対する退職給与として相当であると認められる金額を超える場合における

その超える部分の金額」と規定している。すなわち、この規定振りから明らかなように、

法人税法は役員退職給与の「相当額 「不相当額」について、形式的な金額基準を定め」、

ておらず、実質基準により判断するものとしている。ただし、実質基準につては具体的な

定めがないところから、納税者と税務当局の争いは絶えないところであるが、実務では、

退 職 給 与 の 額 を 、 ( ) 平 均 功 績 倍 率 法 、 ( ) 最 高 功 績 倍 率 法 、 ( ) 1 年1 2 3

当 た り 平 均 額 法 で 計 算 す る こ と が 一 般 に 認 め ら れ て お り 、 判 決 例 も こ れ

を 是 認 し て い る 。 し た が っ て 、 こ れ ら の 方 法 に よ り そ 支 給 し た 金 員 の 合

理 性 を 証 明 で き れ ば 、 当 該 金 員 は 法 人 税 法 上 、 相 当 額 と 推 認 す る こ と が

可 能 と な る 。

3 つ の 方 法 は 、 具 体 的 に 次 の と お り で あ る 。

( ) 平均功績倍率法1

平均功績倍率法とは、類似法人を選定した上で その役員の「最終月額報酬×勤、

続年数×平均功績倍率」=退職給与相当額とする方法である。

( ) 最高功績倍率法2

最高功績倍率法とは、( )の算式中、平均功績倍率を類似法人の最高功績倍率と1

する方法である。

( ) 1年当たり平均額法3

1年当たり平均額法とは 「類似法人の退職役員の勤続年数1年当たりの平均退、

職給与の額×その役員の勤続年数=退職給与相当額」とする方法である。

、 、なお 功 績 倍 率 に つ い て は 各 法 人 に お い て 通 常 内 規 に よ り 定 め ら れ て お り

③ 札幌地裁昭 (行ウ)第 号、昭和 ・ ・ 判決(税務訴訟資料 号 頁)54 9 58 5 27 130 541④ 第1審:東京地裁平4(行ウ) 号、平成6・ ・ 判決(税務訴訟資料 号 頁 、控訴審:83 11 29 206 449 )

東京高裁平6(行コ) 号、平成8・3・ 判決(税務訴訟資料 号 頁 、上告審:最高裁平217 26 215 1114 )8(行ツ) 号、平成 ・6・ 日二小法廷判決(税務訴訟資料 号 頁)138 10 12 232 600

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た と え ば 社 長 倍 、 専 務 取 締 役 倍 常 務 取 締 役 倍 な ど と い う 例3 . 0 2 . 5 2 . 0、

が 比 較 的 多くみられる。

しかし、内規があるとってもこれは法人により任意に設定できるものであり、その

取扱いを巡り税務当局との争いも多いところである。有名なものに、創業者社長の退

職給与につき功績倍率を 倍としたところ、不相当に高額であるとして否認された1 8 . 2

【日詰工業事件】 がある。なお、この判決例では役員退職給与の算定自体につき 「平均③

功績倍率法 「1年当たり平均額法」をオーソライズしたものとして注目される。」、

2.東京山手青果事件 ~役員退職給与の現物支給~

本問では、特別功労加算金4,000万円の支払いにつき、B社所有の帳簿価額4,000万円の

甲土地を支給することとしている。ただし、甲土地の時価は1億円であった。そこで、こ

の問題につき 【東京山手青果事件】 でその争点を整理する。、④

( ) 事実関係1

原告T社は、昭和 年 月、代表取締役であったFから同人所有の東京都杉並区所在51 1

の土地 ㎡(以下「本件土地」という )及び地上建物(以下「本件建物」という )128.12 。 。

を買い受け、これを所有していたが、昭和 年 月 日、Fの代表取締役退任に伴い、62 2 28

2,659 6,659同人に対し、退職慰労金の一部として、本件土地建物を帳簿価額である合計 万

円(本件土地が 万円、本件建物が 万 円)をもって現物支給した。2,500 159 6,659

そこで、原告は、本件土地を現物支給したことによる譲渡利益の額を 円とする確定申0

2 957 7,158告をしたが、被告税務署長より、本件譲渡時における本件土地の時価は 億 万

円が相当であるから、本件土地の譲渡価額は少なくとも 億 万 円を下るもので1 6,053 4,360

はなく、帳簿価額 万円との差額 億 万 円は原告の所得金額の計算上、益2,500 1 3,553 4,360

金に算入される。なお、本件土地の譲渡価額のうち帳簿価額を超える 億 万 円1 3,553 4,360

は、Fに対する退職慰労金の支給として、原告の所得の計算上、減算すべきであるが、原

告が本件事業年度の確定した決算において役員退職給与として損金経理をした金額は

万円であって、これを超える 億 万 円については、法人税法 条(筆者8,000 1 3,553 4,360 36

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注:旧法による条文番号。以下同じ)に定める損金経理がされていないから、原告の本件

事業年度における損金に算入されないとする更正処分を受けた。

、 、 、これに対して原告は 仮に 原告に 億 万 円の本件譲渡益が生じたとしても1 3,553 4,360

原告は、その譲渡益に相当する退職慰労金をFに支給したものであるから、当該金額は原

告の所得金額の計算上、損金に算入されるべきものであると主張する。すなわち、法人税

法 条が「役員に対して支給する退職給与の額のうち、当該事業年度において損金経理36

をしなかった金額」は損金の額に算入しないとしている趣旨は、法人が役員に支給する退

職給与の額のうち、損金経理により、法人が報酬として損金計上する意思を明らかにした

金額のみを損金に算入しうるとしたものであるところ、本件譲渡は、本件土地建物を現物

で報酬としてFに支給したものであるから、たとえ原告が帳簿価額を支給額とする損金経

理をしたとしても、本件土地の時価相当額をFへの報酬として支給しこれを損金計上する

意思が明らかにされているといえる。したがって、 億 万 円の本件譲渡益の額1 3,553 4,360

は、損金経理がされたものとして損金に算入されるべきである。

( ) 争点2

本件の争点は、退職給与を現物により支給した場合は、当該現物の時価により退職給与

の額が算定され、時価と帳簿価額との差額が発生する場合に、当該差額が損金経理されて

いない場合は、損金経理されていない部分の金額は、損金不算入となるかどうかという点

である。

( ) 判決の要旨3

第1審東京地裁は、本件譲渡益相当額の退職慰労金の損金不算入について、次のとおり

判示し、納税者敗訴の判決を下した。

「 法人税法 条にいう損金経理とは、法人がその確定した決算において費用又は損失36

として経理することをいうものであって(法人税法 条 号 、確定した決算において損2 26 )

金の額に算入されていない金額はここにいう損金経理をしたものとはいえないから、原告

が主張するように、本件土地を帳簿価額で現物支給したことにより、本件土地の時価と帳

簿価額との差額に相当する金額についてまで損金経理が行われたものと解することができ

ないことは明らかである。したがって、本件譲渡益の額を損金に算入すべきであるとする

原告の主張は失当である 」。

第1審判決を不服とした原告は控訴したが、控訴審で東京高裁は、次のとおり退職給与

に功労報酬的な賞与的性格を含む点を指摘し、第1審判決を支持した。

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「 法人税法は、法人の役員に対する退職給与について、それが報酬の後払い的性格のほ

かに功労報酬的なもの、つまり賞与的性格をも併有する点に鑑み、損金経理により報酬の

後払いであることを要件に退職金の損金控除性を認めている。したがって、役員退職給与

、 、の支給にあたり 法人の確定決算において損金経理を行わない経理方法によった場合には

法人自らが労務に対する対価でなく賞与的性格のものという認識を表示し損金性を否定し

たものとして、その役員退職給与を損金に算入することはできない。本件のように退職役

員に退職慰労金の一部として現金に代えて土地を現物で支給し、その土地の時価より低い

価額を退職給与として損金経理した場合において、控訴人が本件土地の時価の一部の金額

を損金経理したという事実は、控訴人の意思表示としては、当該金額を限度として退任役

員の労務の対価として認識したというにとどまり、本件土地の時価と退職給与として経理

した金額の差額についての控訴人の意思表示はされていないというべきである。そして、

役員退職給与の支給は、退職役員の功労に対する報償的なもの(賞与的性格)をも併有し

ているから、確定決算において損金の額に算入されていない土地の譲渡益相当額は、損金

経理の要件を欠いており、その損金性を認めることはできない 」。

控訴審を不服とした納税者はさらに上告したが、最高裁も原審を支持し、納税者敗訴が

確定した。

( ) 東京山手青果事件から得られた結論4

、 、 、東京山手青果事件は 平成 年度の税制改正前の事件で 役員退職給与の支給につき18

損金経理要件が付されていた時代の事件である。すなわち、旧法人税法 条は 「内国法36 、

人が各事業年度においてその退職した役員に対して支給する退職給与の額のうち、当該事

業年度において損金経理をしなかった金額及び損金経理をした金額で不相当に高額な部分

の金額として政令で定める金額は、その内国法人の各事業年度の所得の金額の計算上、損

金の額に算入しない 」と定め、損金経理要件を付していたのである。。

したがって、現物で退職給与を支給した場合は、その現物の時価により退職給与の額が

算定され、帳簿価額との差額につき、損金経理をしていない場合は、自動的に損金不算入

となることが本件によって確認された。

ただし、学説としては、時価との差額につき、①損金不算入説(本件判決と同旨 、②)

限定的損金算入説(納税者が時価評価につき相当の努力をしてもなお帳簿価額との差額が

発生した場合、納税者の損金経理の意思を是認して損金算入を認める説 、③損金算入説)

(帳簿価額と時価との差額については損金経理をしたものとみなして損金算入とする説)

⑤ 産労総合研究所「 年役員報酬の実態に関する調査 ( 年4月)2006 2007」

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の3説があり、筆者は②の限定的損金算入説を支持する。すなわち、特に土地の時価評価

については税法に一定の形式的な評価基準がなく、いわゆる「客観的交換価値説」は流動

的な要素によって変動する要因を含んでおり、唯一絶対的な時価の算定は困難な場合が多

い。そこで、納税者が時価を認識し当該価額をもって退職給与の損金経理を行っている場

合は、あまりにも形式的な処理にすぎると考えるのである。

なお、平成 年度の税制改正により、損金経理要件は廃止されたので、結論として、18

現物が時価評価された後の金額で、相当額か不相当額かが判定されることとなった。

3.本設問への当てはめ

本問では、B社はAに対し、① 標準退職慰労金7,000万円、②功労加算金2,000万円、

③特別功労加算金4,000万円の合計1億3,000万円を支給している。ただし、③の4,000万

円については、土地が時価評価されるので、時価との差額6,000万円が追加され、法人税

法上の支給額は、1億9,000万円となる。

ところで、役員退職給与の支給額の相当・不相当の判断は、総額1億9,000万円に対し

て行われる。そして、相当・不相当の判断は、AがB社の業務に従事した期間、その退職

の事情、B社と同種の事業を営む法人でその事業規模が類似するものの役員に対する退職

給与の支給の状況等を総合的に判断して決定される。

したがって、本問の資料からだけでは最終的な判断はできないところであるが、その判

断の方向性を示すと、次のとおりである。

いま、解答にあたり、仮定としてAの勤続年数は 年、最終月額報酬は年報 万円23 2,600

と仮定して 万円、功績倍率は副社長で 倍とする。⑤ 216 2.5

すると、平均功績倍率法の算式に当てはめると 「最終月額報酬( 万円)×勤続、 2 1 6

年数( 年)×平均功績倍率( 」=退職給与相当額(1億 万円)となる。2 3 2 . 5 2 , 4 2 0)

この1億 万円が一つのガイドラインとなり、これをもって相当額と判断する。2 , 4 2 0

なお、問題に指示された①標準退職慰労金7,000万円、②功労加算金2,000万円、③特別

功労加算金4,000万円(時価評価前)の合計額は、くしくも1億3,000万円となっており、

時価評価の点を除けば、B社が念頭においていた相当額も当該金額と一致する。ただし、

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上記のとおり、あくまで③の特別功労金は時価評価となるので、B社が支給した総額1

億9,000万円のうち、1億 万円を超える部分の金額は、不相当に高額な部分の金2 , 4 2 0

額となり、 万円が損金不算入となる。6 , 5 8 0

なお、問題に指示された①標準退職慰労金7,000万円、②功労加算金2,000万円、③特

別功労加算金4,000万円については、本来法人税法上は個別に判断する要素ではないが、

次のとおり判断することも可能である。

①の標準退職慰労金7,000万円は、役員退職慰労金支給規程の定める基準に従い、役位

別の最終報酬月額に役位ごとの在任期間の年数及び役位別の役位係数を乗じて算出したも

のである。しがたって、この計算方式は、基本的に平均功績倍率法によるものであるか

ら是認される。

② 功労加算金2,000万円は、役員退職慰労金支給規程の定める基準に従い 「在任中特、

に功績が著しかったと認められる役員」に対して標準退職慰労金の金額の30%を超えない

範囲で支給することができるものとされている功労加算金である。この功労加算金は、い

わゆる平均功績倍率法の計算のうち、特に貢献度の高い役員につき、通常の功績倍率をさ

らに高めるものであるが、税務の実際からすると、同業他社比較基準により功績倍率は同

業他社の平均をとることを基本とするので、否認される可能性は高い。この点は注意すべ

きである。

③ 特別功労加算金4,000万円は、1億円と修正されるが、その支給の根拠は、B社の役

員退職慰労金支給規程の定める基準に従い 「当社の創業を主導し推進した役員、強力な、

戦略の成功をもたらした役員、当社の苦境を脱し盛業に導いた役員、その他当社に大いな

る貢献をなし、その功績が顕著であったと認められる役員」に対して功労加算金の金額の

倍額を超えない範囲で支給することができるものとされている特別功労加算金である。金

額が上記のとおり1億円に修正されるが、支給の根拠が極めて恣意的であり、合理性を持

たないものとして否認される可能性が高いと考える。

4.法人税法と所得税法の整合性の確保

所得税法は、各種所得の担税力に配慮した課税を行うべく、その所得を 種類に区分10

し、それぞれの課税方式を定めている。この場合、退職慰労金の支給が 「退職所得」か、

「給与所得」かの二者択一の区別の問題は存するが、退職慰労金として支給された金額の

多寡、換言すると、退職所得として課税の軽減を受けるべき適正額の判定をすることは、

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両者の区分において問題とされていない。すなわち、法人税法 条2項の取扱いのよう34

に 「不相当に高額な部分の金額」について、退職慰労金の退職所得性が否認され、給与、

として課税されるような法規定とはなっていない点が着目される。

法人税法 条2項は 「内国法人がその役員に対して支給する給与(前項又は次項の規34 、

定の適用があるものを除く )の額のうち不相当に高額な部分の金額として政令で定める。

金額は、その内国法人の各事業年度の所得の金額の計算上、損金の額に算入しない 」。

と規定しているのみで、この規定振りからは、不相当に高額な退職慰労金の部分は、それ

が賞与に該当するから、その賞与部分について損金不算入とすると定めているわけではな

い。たとえ、もともとの立法趣旨(平成 年改正前)が、損金不算入とされた部分の利18

益処分性を認めるものであったとしても、現行法では不相当に高額な部分の金額は、法人

税法上の損金算入可能な退職給与としては不相当であるが、個人に対し退職給与が支払わ

れた点についてまで法人税法は否定し、所得税法において部分的な賞与の認定課税が行わ

れるべきことを考えていない。

以上の理由から、法人税法と所得税法の整合性の問題は、現行法上、要請されている問

題ではなく、所得税の取扱いとして、Aに対して部分的な給与所得課税は行われないもの

と考える。

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【関係条文・通達】

所得税法(退職所得)

第 条 退職所得とは、退職手当、一時恩給その他の退職により一時に受ける給与及び30これらの性質を有する給与(以下この条において「退職手当等」という )に係る所得。

をいう。

2 退職所得の金額は、その年中の退職手当等の収入金額から退職所得控除額を控除し

た残額の2分の1に相当する金額とする。

3 前項に規定する退職所得控除額は、次の各号に掲げる場合の区分に応じ当該各号に

掲げる金額とする。

一 政令で定める勤続年数(以下この項において「勤続年数」という )が 年以下。 20である場合 万円に当該勤続年数を乗じて計算した金額40

二 勤続年数が 年を超える場合 万円と 万円に当該勤続年数から 年を控20 800 70 20除した年数を乗じて計算した金額との合計額

4 次の各号に掲げる場合に該当するときは、第2項に規定する退職所得控除額は、前

項の規定にかかわらず、当該各号に掲げる金額とする。

一 その年の前年以前に他の退職手当等の支払を受けている場合で政令で定める場合

前項の規定により計算した金額から、当該他の退職手当等につき政令で定めるところ

により同項の規定に準じて計算した金額を控除した金額

二 前項及び前号の規定により計算した金額が 万円に満たない場合(次号に該当す80る場合を除く ) 万円。 80

三 障害者になったことに直接基因して退職したと認められる場合で政令で定める場

合 前項及び第1号の規定により計算した金額(当該金額が 万円に満たない場合80には、 万円)に 万円を加算した金額80 100

(退職手当等とみなす一時金)

第 条 次に掲げる一時金は、この法律の規定の適用については、前条第1項に規定す31る退職手当等とみなす。

一 国民年金法、厚生年金保険法 (昭和二十九年法律第百十五号 (第九章(厚生年)

金基金及び企業年金連合会)の規定を除く 、国家公務員共済組合法 (昭和三十三。)

)、 ( )、年法律第百二十八号 地方公務員等共済組合法 昭和三十七年法律第百五十二号

私立学校教職員共済法 (昭和二十八年法律第二百四十五号)及び独立行政法人農業

者年金基金法 (平成十四年法律第百二十七号)の規定に基づく一時金その他これら

の法律の規定による社会保険又は共済に関する制度に類する制度に基づく一時金(こ

れに類する給付を含む。第三号において同じ )で政令で定めるもの。

二 厚生年金保険法第九章の規定に基づく一時金で同法第百二十二条 (加入員)に規

定する加入員の退職に基因して支払われるもの及び石炭鉱業年金基金法 (昭和四十

二年法律第百三十五号)の規定に基づく一時金で同法第十六条第一項 (坑内員に関

する給付)又は第十八条第一項 (坑外員に関する給付)に規定する坑内員又は坑外

員の退職に基因して支払われるもの

三 確定給付企業年金法 (平成十三年法律第五十号)の規定に基づいて支給を受ける

一時金で同法第二十五条第一項 (加入者)に規定する加入者の退職により支払われ

るもの(同法第三条第一項 (確定給付企業年金の実施)に規定する確定給付企業年

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金に係る規約に基づいて拠出された掛金のうちに当該加入者の負担した金額がある場

合には、その一時金の額からその負担した金額を控除した金額に相当する部分に限

る )その他これに類する一時金として政令で定めるもの。

(課税標準)

第 条 居住者に対して課する所得税の課税標準は、総所得金額、退職所得金額及び山22林所得金額とする。

2 総所得金額は、次節(各種所得の金額の計算)の規定により計算した次に掲げる金

額の合計額(第七十条第一項若しくは第二項(純損失の繰越控除)又は第七十一条第一

項(雑損失の繰越控除)の規定の適用がある場合には、その適用後の金額)とする。

一 利子所得の金額、配当所得の金額、不動産所得の金額、事業所得の金額、給与所

得の金額、譲渡所得の金額(第三十三条第三項第一号(譲渡所得の金額の計算)に掲

げる所得に係る部分の金額に限る )及び雑所得の金額(これらの金額につき第六十。

九条(損益通算)の規定の適用がある場合には、その適用後の金額)の合計額

二 譲渡所得の金額(第三十三条第三項第二号に掲げる所得に係る部分の金額に限

る )及び一時所得の金額(これらの金額につき第六十九条の規定の適用がある場合。

には、その適用後の金額)の合計額の二分の一に相当する金額

3 退職所得金額又は山林所得金額は、それぞれ次節の規定により計算した退職所得の

金額又は山林所得の金額(これらの金額につき第六十九条から第七十一条までの規定の

適用がある場合には、その適用後の金額)とする。

(給与所得)

第 条 給与所得とは、俸給、給料、賃金、歳費及び賞与並びにこれらの性質を有する28給与(以下この条において「給与等」という )に係る所得をいう。。

2 給与所得の金額は、その年中の給与等の収入金額から給与所得控除額を控除した残

額とする。

3 前項に規定する給与所得控除額は、次の各号に掲げる場合の区分に応じ当該各号に

定める金額とする。

一 前項に規定する収入金額が百八十万円以下である場合 当該収入金額の百分の四

十に相当する金額(当該金額が六十五万円に満たない場合には、六十五万円)

二 前項に規定する収入金額が百八十万円を超え三百六十万円以下である場合 七十

二万円と当該収入金額から百八十万円を控除した金額の百分の三十に相当する金額と

の合計額

三 前項に規定する収入金額が三百六十万円を超え六百六十万円以下である場合 百

二十六万円と当該収入金額から三百六十万円を控除した金額の百分の二十に相当する

金額との合計額

四 前項に規定する収入金額が六百六十万円を超え千万円以下である場合 百八十六

万円と当該収入金額から六百六十万円を控除した金額の百分の十に相当する金額との

合計額

五 前項に規定する収入金額が千万円を超える場合 二百二十万円と当該収入金額か

ら千万円を控除した金額の百分の五に相当する金額との合計額

4 その年中の給与等の収入金額が六百六十万円未満である場合には、当該給与等に係

る給与所得の金額は、前二項の規定にかかわらず、当該収入金額を別表第五の給与等の

金額として、同表により当該金額に応じて求めた同表の給与所得控除後の給与等の金額

に相当する金額とする。

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(収入金額)

第 条 その年分の各種所得の金額の計算上収入金額とすべき金額又は総収入金額に算36入すべき金額は、別段の定めがあるものを除き、その年において収入すべき金額(金銭

以外の物又は権利その他経済的な利益をもつて収入する場合には、その金銭以外の物又

は権利その他経済的な利益の価額)とする。

2 前項の金銭以外の物又は権利その他経済的な利益の価額は、当該物若しくは権利を

取得し、又は当該利益を享受する時における価額とする。

3 無記名の公社債の利子、無記名株式等の剰余金の配当(第二十四条第一項(配当所

得)に規定する剰余金の配当をいう )又は無記名の貸付信託、投資信託若しくは特定。

受益証券発行信託の受益証券に係る収益の分配については、その年分の利子所得の金額

又は配当所得の金額の計算上収入金額とすべき金額は、第一項の規定にかかわらず、そ

の年において支払を受けた金額とする。

法人税法(役員給与の損金不算入)

第 条 内国法人がその役員に対して支給する給与 退職給与及び第五十四条第一項 新34 ( (

株予約権を対価とする費用の帰属事業年度の特例等)に規定する新株予約権によるもの

並びにこれら以外のもので使用人としての職務を有する役員に対して支給する当該職務

。 。)に対するもの並びに第三項の規定の適用があるものを除く 以下この項において同じ

のうち次に掲げる給与のいずれにも該当しないものの額は、その内国法人の各事業年度

の所得の金額の計算上、損金の額に算入しない。

( 「 」一 その支給時期が一月以下の一定の期間ごとである給与 次号において 定期給与

という )で当該事業年度の各支給時期における支給額が同額であるものその他これ。

に準ずるものとして政令で定める給与(次号において「定期同額給与」という )。

二 その役員の職務につき所定の時期に確定額を支給する旨の定めに基づいて支給す

る給与(定期同額給与及び利益連動給与(利益に関する指標を基礎として算定される

給与をいう。次号において同じ )を除くものとし、定期給与を支給しない役員に対。

して支給する給与(同族会社に該当しない内国法人が支給するものに限る )以外の。

給与にあつては政令で定めるところにより納税地の所轄税務署長にその定めの内容に

関する届出をしている場合における当該給与に限る )。

三 同族会社に該当しない内国法人がその業務執行役員(業務を執行する役員として

政令で定めるものをいう。以下この号において同じ )に対して支給する利益連動給。

与で次に掲げる要件を満たすもの(他の業務執行役員のすべてに対して次に掲げる要

件を満たす利益連動給与を支給する場合に限る )。

イ その算定方法が、当該事業年度の利益に関する指標(金融商品取引法第二十四条

第一項 (有価証券報告書の提出)に規定する有価証券報告書( 3)において「有(

価証券報告書」という )に記載されるものに限る )を基礎とした客観的なもの。 。

(次に掲げる要件を満たすものに限る )であること。。

(1) 確定額を限度としているものであり、かつ、他の業務執行役員に対して支給

する利益連動給与に係る算定方法と同様のものであること。

(2) 政令で定める日までに、報酬委員会(会社法第四百四条第三項 (委員会の

権限等)の報酬委員会をいい、当該内国法人の業務執行役員又は当該業務執行役

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員と政令で定める特殊の関係のある者がその委員になつているものを除く )が。

決定をしていることその他これに準ずる適正な手続として政令で定める手続を経

ていること。

(3) その内容が (2)の決定又は手続の終了の日以後遅滞なく、有価証券報告、

書に記載されていることその他財務省令で定める方法により開示されているこ

と。

ロ その他政令で定める要件

2 内国法人がその役員に対して支給する給与(前項又は次項の規定の適用があるもの

を除く )の額のうち不相当に高額な部分の金額として政令で定める金額は、その内国。

法人の各事業年度の所得の金額の計算上、損金の額に算入しない。

3 内国法人が、事実を隠ぺいし、又は仮装して経理をすることによりその役員に対し

て支給する給与の額は、その内国法人の各事業年度の所得の金額の計算上、損金の額に

算入しない。

4 前三項に規定する給与には、債務の免除による利益その他の経済的な利益を含むも

のとする。

5 第一項に規定する使用人としての職務を有する役員とは、役員(社長、理事長その

他政令で定めるものを除く )のうち、部長、課長その他法人の使用人としての職制上。

の地位を有し、かつ、常時使用人としての職務に従事するものをいう。

6 前二項に定めるもののほか、第一項から第三項までの規定の適用に関し必要な事項

は、政令で定める。

(特殊支配同族会社の役員給与の損金不算入)

第 条 内国法人である特殊支配同族会社(同族会社の業務主宰役員(法人の業務を主35宰している役員をいい、個人に限る。以下この項において同じ )及び当該業務主宰役。

員と特殊の関係のある者として政令で定める者(以下この項において「業務主宰役員関

連者」という )がその同族会社の発行済株式又は出資(その同族会社が有する自己の。

株式又は出資を除く )の総数又は総額の百分の九十以上に相当する数又は金額の株式。

又は出資を有する場合その他政令で定める場合における当該同族会社(当該業務主宰役

員及び常務に従事する業務主宰役員関連者の総数が常務に従事する役員の総数の半数を

超えるものに限る )をいう。以下この条において同じ )が当該特殊支配同族会社の。 。

業務主宰役員に対して支給する給与(債務の免除による利益その他の経済的な利益を含

むものとし、退職給与を除く )の額(前条の規定により損金の額に算入されない金額。

。) 、を除く のうち当該給与の額を基礎として政令で定めるところにより計算した金額は

当該特殊支配同族会社の各事業年度の所得の金額の計算上、損金の額に算入しない。

2 前項の特殊支配同族会社の基準所得金額(当該事業年度開始の日前三年以内に開始

した各事業年度又は各連結事業年度の所得の金額若しくは欠損金額又は第八十一条の十

八第一項(連結法人税の個別帰属額の計算)に規定する個別所得金額若しくは個別欠損

金額を基礎として政令で定めるところにより計算した金額をいう )が政令で定める金。

額以下である事業年度その他政令で定める事業年度については、前項の規定は、適用し

ない。

、 、3 第一項の場合において 内国法人が特殊支配同族会社に該当するかどうかの判定は

当該内国法人の当該事業年度終了の時の現況による。

4 前二項に定めるもののほか、第一項の規定の適用に関し必要な事項は、政令で定め

る。

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(過大な使用人給与の損金不算入)

第 条 内国法人がその役員と政令で定める特殊の関係のある使用人に対して支給する36給与(債務の免除による利益その他の経済的な利益を含む )の額のうち不相当に高額。

な部分の金額として政令で定める金額は、その内国法人の各事業年度の所得の金額の計

算上、損金の額に算入しない。

法人税法施行令(過大な役員給与の額)

第 条 法第 条第2項 (役員給与の損金不算入)に規定する政令で定める金額は、70 34次に掲げる金額の合計額とする。

一 次に掲げる金額のうちいずれか多い金額

34 2イ 内国法人が各事業年度においてその役員に対して支給した給与(法第 条第

、 。 。)項に規定する給与のうち 退職給与以外のものをいう 以下この号において同じ

の額(第3号に掲げる金額に相当する金額を除く )が、当該役員の職務の内容、。

その内国法人の収益及びその使用人に対する給与の支給の状況、その内国法人と同

種の事業を営む法人でその事業規模が類似するものの役員に対する給与の支給の状

況等に照らし、当該役員の職務に対する対価として相当であると認められる金額を

( 、超える場合におけるその超える部分の金額 その役員の数が二以上である場合には

これらの役員に係る当該超える部分の金額の合計額)

ロ 定款の規定又は株主総会、社員総会若しくはこれらに準ずるものの決議により役

員に対する給与として支給することができる金銭の額の限度額若しくは算定方法又

は金銭以外の資産 ロにおいて 支給対象資産 という の内容 ロにおいて 限( 「 」 。) ( 「

度額等」という )を定めている内国法人が、各事業年度においてその役員(当該。

限度額等が定められた給与の支給の対象となるものに限る。ロにおいて同じ )に。

対して支給した給与の額(法第 条第 項 に規定する使用人としての職務を有す34 5る役員(第三号において「使用人兼務役員」という )に対して支給する給与のう。

ちその使用人としての職務に対するものを含めないで当該限度額等を定めている内

国法人については、当該事業年度において当該職務に対する給与として支給した金

額(同号に掲げる金額に相当する金額を除く )のうち、その内国法人の他の使用。

人に対する給与の支給の状況等に照らし、当該職務に対する給与として相当である

と認められる金額を除く )の合計額が当該事業年度に係る当該限度額及び当該算。

定方法により算定された金額並びに当該支給対象資産(当該事業年度に支給された

ものに限る )の支給の時における価額に相当する金額の合計額を超える場合にお。

けるその超える部分の金額(同号に掲げる金額がある場合には、当該超える部分の

金額から同号に掲げる金額に相当する金額を控除した金額)

二 内国法人が各事業年度においてその退職した役員に対して支給した退職給与の額

が、当該役員のその内国法人の業務に従事した期間、その退職の事情、その内国法人

と同種の事業を営む法人でその事業規模が類似するものの役員に対する退職給与の支

給の状況等に照らし、その退職した役員に対する退職給与として相当であると認めら

れる金額を超える場合におけるその超える部分の金額

三 使用人兼務役員の使用人としての職務に対する賞与で、他の使用人に対する賞与

の支給時期と異なる時期に支給したものの額

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法人税法基本通達(役員の分掌変更等の場合の退職給与)

9-2- 法人が分掌変更又は改選による再任等に際しその役員に対し退職給与とし23て支給した給与については、その支給が、例えば次に掲げるような事実があったことに

よるものなど、その分掌変更等によりその役員としての地位又は職務の内容が激変し、

実質的に退職したと同様の事情にあると認められることによるものである場合には、こ

れを退職給与として取り扱うことができる。

( ) 常勤役員が非常勤役員(常時勤務していないものであっても代表権を有する者及1び代表権は有しないが実質的にその法人の経営上主要な地位を占めていると認められ

る者を除く )になったこと。。

( ) 取締役が監査役(監査役でありながら実質的にその法人の経営上主要な地位を占2めていると認められる者及びその法人の株主等で令第 条第1項第4号《使用人兼71務役員とされない役員》に掲げる要件のすべてを満たしている者を除く )になった。

こと。

( ) 分掌変更等の後における報酬が激減(おおむね %以上の減少)したこと。3 50