ac21 · 2012-10-23 · 第5回ac21総会の報告 5 ifpu2012サマースクール...

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1 本年 6 月に、AC21(国際学術コンソーシアム)は設立10周年を迎えました。 2002年に本学で開催された国際フォーラムにおいて、世界の教育・研究・産業組 織による国際的な学術ネットワーク構築を目的として設立されて以来、現在では AC21のメンバー大学は10カ国20大学にのぼり、 2 年毎の国際フォーラムや学生世 界フォーラムの開催、国際共同研究の推進、国際産学官連携プロジェクトの実施な ど、活動の幅を広げてきました。国際的な規模のコンソーシアムを本学が主導し、 活動を充実させてこられましたのは、AC21メンバー大学やパートナー企業、政府 機関など関係者のご支援とご協力の賜物と心より感謝申し上げます。 この10年を振り返ってみますと、我々を取り巻く環境は大きく変化しています。 急速に進むグローバリゼーションがもたらす正負両方の影響が表面化するにつれ、 地球規模の課題への人々の意識も高くなってきました。負の影響としては、貧困・ 環境問題の深刻化や重症急性呼吸器症候群(SARS)などのような感染症の流行な どが一例として挙げられますが、こうした問題は、もはや国際的な連携なしに解決 するのは不可能でしょう。知の拠点であり、日本の基幹大学・総合研究大学である 本学にとって、我々が直面する様々な課題に対する我々なりの解決の糸口を提示す るとともに、こうした課題に果敢に取り組む人材の育成が最も重要な使命であると 私は考えております。特に、資源の少ない日本にとっては次世代を担う人材の育成 が肝要であり、国際的な視野を持ち、世界を舞台に活躍し、本学の学術憲章でもあ る、未来を切り拓く「勇気ある知識人」を育てるためにも、大学の国際化の促進、 国際的な大学間の連携の推進は急務です。 本年 6 月12日(火)から14日(木)にかけて、オーストラリア アデレード大学 において開催された第 6 回 AC21国際フォーラムでは、「国際化がもたらす利益を 最大限に活用する」をメインテーマに、世界各国の AC21メンバー大学の学長、副 学長をはじめとする大学関係者や学生、政府機関関係者らが参加し、活発な議論が 繰り広げられました。同フォーラムでは、記念すべき AC21設立10周年を祝うとと もに、これまでの10年間の活動を振り返り、今後の AC21の活動の展望やメンバー 大学間の連携強化を図る具体的な方法について、メンバー大学間で有意義な意見交 換も行われました。 AC21の新たな活動として、来年 5 月末から 6 月初旬にかけては、チュラロンコ ン大学・カセサート大学・本学が共催校となり、「AC21国際スクーリング」がバン コクで開催されます。本スクーリングでは、メンバー大学のみならず、産業界から も基調講演者・講師を招聘予定で、政府機関関係者にもご協力いただく予定となっ 巻 頭 言 AC21設立10周年を迎えて 名古屋大学総長 濵口 道成 AC21 2012 10 15 日 No 12 Contents 巻頭言 AC21設立10周年を迎えて 名古屋大学総長 濵口 道成 1 第 6 回 AC21国際フォーラム を開催 アデレード大学 Pro Vice-Chancellor (International) Kent Anderson 2 法学研究科教授 松浦 好治 3 国際開発研究科講師 浅川 晃広 4 第10回 AC 21運営委員会・ 第 5 回 AC 21総会の報告 5 IFPU 2012サマースクール 参加学生の報告 7 APAIE 2012参加報告 9 2012年度 NAFSA 年次大会 参加報告 10 2012年 AC21スペシャル・ プロジェクト・ファンド 採択結果について 10 メンバー大学紹介 同済大学 11 ノースカロライナ州立大学 12 AC21推進室より 13 AC21推進室活動記録 14 イベント・カレンダー 14 AC21メンバー 14

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Page 1: AC21 · 2012-10-23 · 第5回ac21総会の報告 5 ifpu2012サマースクール 参加学生の報告 7 apaie 2012参加報告 9 2012年度nafsa年次大会 参加報告 10 2012年ac21スペシャル・

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 本年 6 月に、AC21(国際学術コンソーシアム)は設立10周年を迎えました。2002年に本学で開催された国際フォーラムにおいて、世界の教育・研究・産業組織による国際的な学術ネットワーク構築を目的として設立されて以来、現在ではAC21のメンバー大学は10カ国20大学にのぼり、 2 年毎の国際フォーラムや学生世界フォーラムの開催、国際共同研究の推進、国際産学官連携プロジェクトの実施など、活動の幅を広げてきました。国際的な規模のコンソーシアムを本学が主導し、活動を充実させてこられましたのは、AC21メンバー大学やパートナー企業、政府機関など関係者のご支援とご協力の賜物と心より感謝申し上げます。 この10年を振り返ってみますと、我々を取り巻く環境は大きく変化しています。急速に進むグローバリゼーションがもたらす正負両方の影響が表面化するにつれ、地球規模の課題への人々の意識も高くなってきました。負の影響としては、貧困・環境問題の深刻化や重症急性呼吸器症候群(SARS)などのような感染症の流行などが一例として挙げられますが、こうした問題は、もはや国際的な連携なしに解決するのは不可能でしょう。知の拠点であり、日本の基幹大学・総合研究大学である本学にとって、我々が直面する様々な課題に対する我々なりの解決の糸口を提示するとともに、こうした課題に果敢に取り組む人材の育成が最も重要な使命であると私は考えております。特に、資源の少ない日本にとっては次世代を担う人材の育成が肝要であり、国際的な視野を持ち、世界を舞台に活躍し、本学の学術憲章でもある、未来を切り拓く「勇気ある知識人」を育てるためにも、大学の国際化の促進、国際的な大学間の連携の推進は急務です。 本年 6 月12日(火)から14日(木)にかけて、オーストラリア アデレード大学において開催された第 6 回 AC21国際フォーラムでは、「国際化がもたらす利益を最大限に活用する」をメインテーマに、世界各国の AC21メンバー大学の学長、副学長をはじめとする大学関係者や学生、政府機関関係者らが参加し、活発な議論が繰り広げられました。同フォーラムでは、記念すべき AC21設立10周年を祝うとともに、これまでの10年間の活動を振り返り、今後の AC21の活動の展望やメンバー大学間の連携強化を図る具体的な方法について、メンバー大学間で有意義な意見交換も行われました。 AC21の新たな活動として、来年 5 月末から 6 月初旬にかけては、チュラロンコン大学・カセサート大学・本学が共催校となり、「AC21国際スクーリング」がバンコクで開催されます。本スクーリングでは、メンバー大学のみならず、産業界からも基調講演者・講師を招聘予定で、政府機関関係者にもご協力いただく予定となっ

巻 頭 言

AC21設立10周年を迎えて名古屋大学総長

濵口 道成

AC212012 年 10 月 15 日 No 12

Contents巻頭言

AC21設立10周年を迎えて名古屋大学総長 濵口 道成

1

第 6 回 AC21国際フォーラムを開催

アデレード大学 Pro Vice-Chancellor (International) Kent Anderson

2

法学研究科教授 松浦 好治 3

国際開発研究科講師 浅川 晃広 4

第10回 AC 21運営委員会・第 5 回 AC 21総会の報告 5

IFPU 2012サマースクール 参加学生の報告 7

APAIE 2012参加報告 9

2012年度 NAFSA 年次大会参加報告 10

2012年 AC21スペシャル・プロジェクト・ファンド 採択結果について

10

メンバー大学紹介

同済大学 11

ノースカロライナ州立大学 12

AC21推進室より 13

AC21推進室活動記録 14

イベント・カレンダー 14

AC21メンバー 14

Page 2: AC21 · 2012-10-23 · 第5回ac21総会の報告 5 ifpu2012サマースクール 参加学生の報告 7 apaie 2012参加報告 9 2012年度nafsa年次大会 参加報告 10 2012年ac21スペシャル・

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ており、このような産学官連携による新たな試みをぜひ成功させたいと思います。また、来年10月には、 2年に 1 回開催されている学生世界フォーラムを、中国 同済大学の主催で実施予定です。 AC21が提供する様々な機会を通して、メンバー大学・パートナー企業・政府間の一層の連携強化とグロー

バル人材育成の促進が図られ、ひいては持続可能な社会の実現につながることを願ってやみません。 AC21の活動が一層充実し、多くの人々にとって有意なものとなるよう、みなさまのご支援・ご協力をお願いいたします。

第 6 回 AC21国際フォーラムを開催

 南オーストラリア州に位置するアデレード大学は、2012年 6 月12-14日 に第 6 回 AC21国際フォーラム を 開 催 し ま し た。15のAC21メンバー大学から役員、教職員を始めとする130人の代表が参加しました。フォーラムのテーマは、「Maximising the Benefits of Internationalisation」で、クリストファー・エバンズ オーストラリア高等教育・技能・科学・研究担当大臣、張秀琴 中国教育部国際協力交流司司長、クリスティアン・ボーデ ドイツ学術交流会前事務総長、国際大学ランキングの専門家であるサイモン・マーギンソン メルボルン大学教授、そして前国防大臣であるロバート・ヒル アデレード大学総長による基調講演が行われました。上記の 5 氏による発表は、下記のウェブサイトからもダウンロードできます。(http://www.adelaide.edu.au/ac21conference/post-conference/presentations/) 示唆に富む一貫して高い水準の基調講演、パネルディスカッション、様々な発表、AC21メンバー間協力に対しての多くの提案があったフォーラムは、大成功に終わりました。フォーラム開催中には、中国との連携、大学ランキングの展望についてのセッションや、今年 AC21設立10周年を迎えるにあたり、AC21の過去を振り返り、AC21の将来的な役割と活動について話し合うセッションの場も設けら れ ま し た。「Global Research Priorities/Capacity

Building」、「Industry Partnerships」、「Intercultural Competence」、「Encouraging Student Mobility」、

「Enhancing AC21 Partnership」の 5 つのサブテーマに沿って、個人もしくはグループによる20のパラレルセッションも行われました。今回のフォーラムの新しい要素として、今回参加している AC21メンバー大学のトップによるプレジデントクラブスペシャルセッションが、開催されました。 フォーラム終了後、AC21運営委員会、AC21総会が開催され、同時に専門的なセッション、本学ウェイトキャンパス(南半球最大の農学研究施設)ツアーが行われました。 今回のフォーラムは、AC21メンバー間の関係強化のみならず、連携促進の一助となりました。これは、フォーラムのセッションを通じてだけでなく、ウェルカムカクテルレセプションや夕食会の様なイベントへのたくさんの方々の参加を通じても達成されました。 今回新たに浮かび上がってきた課題によって、過去10年間の成功を、将来的に特別な付加価値のあるコンソーシアムの活動へと導きました。それぞれのパートナーにはそれぞれの優先順位があるため、ある特定のプロジェクトを前進させるための実際の方法として、サブグループの活用が推奨され、下記の様な提案が例として出されました。a. 自動車工学に関する研究協力b. 農学及び食糧安全保障に関する研究協力c. ベンチマーキング及び専門職員の交流d. 二大学間又はサブグループ間をベースとする学生

の流動性・学生交換e. AC21が集合体としての強みを出せる分野におけ

る、大学院生を対象とした AC21短期コース 今回の AC21総会では、AC21国際スクーリングを2013年 5 月31日~ 6 月 4 日にバンコクで開催するという名古屋大学からの提案が承認されました。また、

「Sustainable Mobility and the City of the Future」をテーマに、2013年10月に同済大学で開催される学生世界フォーラムの準備状況と、2014年 3 月にステレンボッシュ大学で開催される次回の AC21国際フォーラムについての発表が行われました。また、2015年に

開催大学から

アデレード大学Pro Vice-Chancellor (International)

Kent Anderson

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Academic Consortium 21

No. 12AC21

は、ストラスブール大学で学生世界フォーラムが開催されることが決定しています。2016年の国際フォーラムと2017年の学生世界フォーラムに関して、開催を希

望するメンバー大学は今年度末までに立候補することになっています。 (原文英語)

第 6 回 AC21国際フォーラムを開催

 アデレード大学で行なわれた AC 21国際フォーラムで、アデレード大学図書館長の Ray Choate 氏と共同報告を行ないました。二人とも、大学図書館は、デジタル化と国際化の流れの中で、その新しい未来像を打ち出さないといけないという考えをもっていましたので、相談の上、AC 21の政策になるようなアイデアを提出することにしました。 我々の認識では、これまでの図書館は、万一の場合に備えて必要な資料を幅広く揃えておくというコンセプトに立っていました。Choate 氏によると、欧州から遠く離れたオーストラリアでは、情報はなかなか届かない、情報が必要になってから資料を取り寄せようとしても時間と費用がばかにならないというのです。日本の事情も似通っており、私の専門領域の法学でも複数の国の法を比較するので、幅広く資料を揃えておく必要がありました。そのため、図書館は、特徴を出すというよりも、“Just-in-Case Library”になったという訳です。 電子ジャーナルは、この状況を根本から変えてしまいました。もはや、図書館に資料を置いておく必要はなくなりました。なぜなら、出版社のデータベースの中にすべての情報があるからです。理科系の情報のかなりの部分については、図書館は、一種の仲介業になっています。 そうなると、利用者も図書館も必要なときに必要な情報を提供すればよいというコンセプトで運営されるようになるでしょう。それが“Just-in-Time Library”です。自動車産業の仕事のやり方を一変させたものに似たコンセプトが図書館の領域でも育ちつつあります。 では、“Just-in-Time Library”というコンセプトの中で図書館の国際連携について新しいアイデアを出せ

ないだろうか、というのが我々の報告のポイントでした。「仮に」、アデレード大学は一切の日本語資料の購入を止め、名古屋大学はオーストラリア関係の英語資料の購入を止めるとします。同時に、相互に協定を結んで、確実に所属する情報を相手に提供する姉妹図書館になるとします。すると、アデレード大学図書館は、日本語資料を名古屋大学図書館を通じて入手利用することができ、逆もまた可能になります。 しかも、自国の情報や資料の調査については、外国の図書館は十分なことができません。姉妹図書館協定によって、相手国の情報が利用できるだけではなく、上手に選別され、まとめられた情報を相互に手に入れることが可能になるでしょう。 限られた予算は、特色を持った図書館を作るために活用することもできます。強い信頼関係が姉妹図書館の間で構築できれば、各国図書館は、多くの国の情報を多言語で共有する可能性をもつことができます。 もちろん、この種の国際協力は、簡単にはできません。共通言語を何にするか、情報交換の費用の精算をどうするのか、自国の情報調査を効率的に行なって必要な情報のパッケージを用意する専門家集団をどのように育てるか、など課題は多いです。 しかし、Choate 氏と私は、試しにやってみることが大切だという点で意見が一致しました。アデレード大学と名古屋大学との間で小規模でもいいのでパイロットプロジェクトを構想してみようというところまで話は進みました。図書館同士の大規模なプロジェクトは、すぐにはできないでしょうが、学部単位のものならやってみる価値はありそうに思われます。

“Just-in-Case Library”から“Just-in-Time Library”へ

法学研究科教授

松浦 好治

 (筆者右)

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第 6 回 AC21国際フォーラムを開催

 2012年 6 月にオーストラリア・アデレードで開催されたAC21国際フォーラムに参加しましたところ、今後の大学の国際化のあり方を考える上で、大いに参考となりました。今回の会議のテーマは「国際化の利益を最大化させる (Maximising the Benefits of Internationalisation)」で、大学の国際化を当然の前提としたうえで、その効果をいかにもたらすかということが問題意識の念頭にありました。 私は、今回の会議において、所属する国際開発研究科の事例を紹介しました。国際開発研究科は、在籍生の半数が留学生であり、本学の中のみならず、全国的に見ても、極めて国際化が進展したところです。私は、国際開発研究科の留学生担当教員として、日々、さまざまな留学生と接しているところ、そうした経験や知見をもとに、今回のフォーラムに臨みました。 報告内容は、留学生が多数を占める当研究科において、半数を占める日本人学生が、留学生と日常的に、かつ、非常に密接に接することにより、英語を含む外国語能力及び、異文化理解能力を、海外留学に行かずとも、大いに向上させることができる、というものです。事実、当研究科の日本人学生は、海外経験・留学経験があるものが多く、国際開発研究科のグローバルな環境を楽しんでいるようです。 我が国においても、昨今の我が国企業の海外展開の加速化に伴い、海外で働くことのできる、また、外国人を相手にする諸業務に従事することのできる、いわゆる「グローバル人材」がますます求められています。こうした状況の中で、大学としても、日本人学生の国際化教育が重要な課題となってきている中、在籍する留学生を有効に活用し、「グローバル人材」育成に資することが可能だと考えられます。

 こうした、国際化を、「留学生を多数受け入れる」だけの側面で捉えるのではなく、「現地学生を国際化する」という側面も含めて位置づけることが重要だといえます。このような、国際化の二つの方向性は、実のところ、オーストラリア側においても、危機意識を持って、大いに共有されていたことが、この会議での新たな発見でした。 初日の午前に、エバンズ高等教育担当大臣の講演がありましたが、まさにこのことについて、力説されていました。英語圏であるオーストラリアは、世界でも有数の留学生受け入れ大国ですが、逆に、英語圏であるがゆえに、オーストラリア人学生の第二言語習得率は低く、また、それとも密接に関連して、海外留学率も低いということです。こうしたことを念頭に、現在のオーストラリア経済は、主に中国の資源需要に支えられた「資源ブーム」の結果、良好ですが、このブームは永続するものではなく、そうであるがゆえに、中長期的な経済動向に対応すべく、国際的に活躍できる人材を育成することが、重要な課題とのことです。このことは「一方通行 (one way)」から「双方向 (two way)」の国際化の進展、という表現に集約されていました。こうした、地元オーストラリア学生の国際化という課題は、フォーラム開催中に意見交換したオーストラリア側参加者からも表明されており、「グローバル人材」育成が、先進国における共通の課題であると理解できたのは、実に新鮮な驚きでした。 このことが示すのは、とかく、我が国においては、

「大学の国際化」は、留学生のさらなる受け入れ・増加や、英語コースの設置といった文脈で語られていますが、そういった単純な方向性ではなく、まさにグローバル化する世界経済の中で、それに対応できる人材をいかに育成することができるのか、という意味において、総合的・包括的なものといえます。さしあたり、我が国においては、産業界からの強い要望がある

「グローバル人材」育成を加速していくことであり、そして、そこにおいて、当研究科の事例のように、留学生を資源として用いることが今後ますます重要になってくると考えています。 この意味でも、相互の実践・知見・経験をこのような形で交換することができる AC21ネットワークの重要性は尚のこと、高まってくると思います。諸外国の大学と協力しつつ、世界の高等教育界が直面する、「国際化」「グローバル化」の推進に向けて、私としても、微力ながら貢献していきたいと考えています。

先進国の共通課題としての 「グローバル人材育成」

国際開発研究科講師

浅川 晃広

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Academic Consortium 21

No. 12AC21

 第 6 回 AC 21国際フォーラムの最終日である平成24年 6 月14日(木)、オーストラリアのアデレード大学において、第10回 AC 21運営委員会(毎年開催)および第 5 回 AC 21総会(隔年開催)が開催されました。 運営委員会への参加大学は、運営委員会のメンバー大学 7 大学のうち、以下の 6 大学でした。アメリカ・ノースカロライナ州立大学(Bailian Li 副学長)、オーストラリア・アデレード大学(Kent Anderson副学長)、オーストラリア・シドニー大学(Anton McLachlan国際部長)、タイ・チュラロンコン大学(Kua Wongboonsin 副学長)、ドイツ・ケムニッツ工科大学

(Katrin Schulz 事務局長補佐)、名古屋大学(渡辺理事)です。さらに加えて、以下の 4 大学がオブザーバーとして参加しました。アメリカ・ミネソタ大学(Molly Portz グローバルプログラムと戦略室主任)、中国・華中科技大学(Luo Qingming 副学長)、中国・同済大学(Li Zhenyu 国際交流・協力部長)、南アフリカ共和国・ステレンボッシュ大学(Robert Kotzé 国際部長)です。 運営委員会では、以下の 5 つの議題がとり上げられました。 1 )AC21事務局の年次活動報告、 2 )運営委員会メンバーの交代制、 3 )総会の開催頻度、 4 )AC21ポジション・ペーパーの内容、 5 )新規プロジェクト「AC21国際スクーリング」についての進捗状況報告と意見交換です。  1 )の年次活動報告では、まず最初に、APAIE (Asia-Pacifi c Association for International Education)や NAFSA: Association of International Educators などの国際学術会議において、AC21メンバー大学で合同セッションを実施したり、AC21の活動を紹介したことについて報告がありました。次に、複数のメンバー大学間の共同研究への財政的支援である AC21 Special Project Fund の採択プロジェクトや、メンバー大学訪問、AC21ニュースレターの発行、2011年決算についての報告、および2012年財政計画も提示されました。  2 )の運営委員会メンバーの交代制については、運営委員会で条件・手順・AC21規約変更等について議論し、その内容を同日開催される総会に提案すること

で合意しました。主な合意内容は以下の通り。i) 運営委員会メンバーは 7 大学からなる。ii) AC21事務局が設置されている限り、名古屋大学は運営委員会のメンバーである。iii) 他の 6 メンバー大学は、 4 年任期で交代する(更新可)。iv) 選挙は、全メンバーが一度に交代しないよう半数改選とし、 2 年に一度開催される総会で毎回行う。  3 )として、現在、隔年開催である総会を毎年開催とする提案を名古屋大学が行いました。この提案の背景には、総会が隔年開催だと、総会で合意を得るのに2 年かかることや、メンバー大学間のコミュニケーションを促進することが挙げられます。しかし、毎年開催にすることによりメンバー大学にかかる負担等を考慮し、開催頻度は現行のまま隔年開催とすることに決定しました。  4 番目に、これまでの活動成果と今後の課題についてとりまとめた AC21ポジション・ペーパー(2008-2012)の内容について意見交換が行われました。国際フォーラムおよび学生世界フォーラム開催校が運営委員会のホスト校となることや、産学連携強化を図るため、共通の関心を持つメンバー大学間でサブ・グループを形成し、企業と共同研究をする提案も出されました。 最後に、2013年 5 月31日から 6 月 4 日までの 5 日間、バンコクのチュラロンコン大学とカセサート大学で開催予定の「AC21国際スクーリング(AC21 International Graduate Summer School)」プロジェクトの進捗状況の報告と意見交換が行われました。本スクーリングは、両大学と名古屋大学が共催校となり、「Green Science and Technology for a Sustainable Future」をメインテーマに、そして「Green Mobility and Energy」と「Agricultural Sciences and Food Production」をサブテーマに設定して、主として AC21メンバー大学から選抜された研究者を基調講演者・講師に迎えて実施する AC21の新規プロジェクトです。AC21メンバー大学および開催国タイとタイ周辺諸国の AC21メンバー大学以外の大学に在籍する修士課程レベル以上の大学院の意欲ある学生を対象としています。テーマに関連する分野の最先端の学術研究に焦点をあてたプログラムを提供することで、科学技術分野の人的資源開発のみならず、国際連合アカデミック・インパクト(UNAI)に加盟する国際組織として、高等教育の一層の発展、ひいては持続可能な社会の構築に貢献することを目的としています。プロジェクトの持続性や財政的支援についても意見交換が行われました。

第10回 AC 21運営委員会・第 ₅ 回 AC 21総会の報告

AC21プロジェクトコーディネーター

井戸 綾子

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 続いて午後から開催された総会には、AC 21メンバー大学20大学のうち12大学が参加しました。参加大学は、アメリカ・ノースカロライナ州立大学、アメリカ・ミネソタ大学、インドネシア・ガジャマダ大学、オーストラリア・アデレード大学、タイ・カセサート大学、タイ・チュラロンコン大学、中国・同済大学、ドイツ・ケムニッツ工科大学、ドイツ・フライブルグ大学、名古屋大学、フランス・ストラスブール大学、南アフリカ共和国・ステレンボッシュ大学です。 総会では、AC21事務局の活動報告に続き、運営委員会メンバーの交代制について総会でも提案・承認され、次期運営委員会メンバー 7 大学(アデレード大学、ケムニッツ工科大学、上海交通大学、ステレンボッシュ大学、チュラロンコン大学、名古屋大学、ノースカロライナ州立大学)が決定しました。また、2013年に中国 同済大学で開催予定の学生世界フォーラムや、2014年に南アフリカ共和国 ステレンボッシュ大学で開催予定の国際フォーラムの準備状況について、

主催大学から報告がありました。2015年にはフランスのストラスブール大学での学生世界フォーラム開催が決定していますが、2016年国際フォーラムと2017年学生世界フォーラム主催を希望する大学も複数あり、メンバー大学の AC21の活動に対する意欲が感じられました。また、「AC21国際スクーリング」のプロジェクト案や、原則として、国際フォーラムおよび学生世界フォーラム開催校が、運営委員会のホスト校となることについても承認されました。 今年、AC21は設立10周年という一つの節目を迎えます。今回の運営委員会・総会では、今後の AC21の方向性に関する議論はもとより、提示された具体的な活動提案の実現のためにメンバー大学間で情報交換とネットワーキングを図り、パートナーシップの強化により、AC21が提供する国際的な学術ネットワークを最大限活用しようという意気込みが感じられ、新たな出発を感じさせる会議となりました。

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Academic Consortium 21

No. 12AC21

 中国の周恩来元総理が勉強された学校で知られる南開大学が、今回の IFPU2012サマースクールの主催大学でした。IFPU とは International Forum of Public Universities の略称であり、現在 4 大陸20カ国21大学が加盟しており、様々な地域との国際的な人的ネットワーク構築を目指しています。2007年10月にカナダのモントリオール大学で IFPU が設立され、今年で 5 年目を迎えます。

 2012年 6 月25日から 6 月30日までの 5 日間で、世界8 カ国(アメリカ、カナダ、モロッコ、スペイン、スイス、ハイチ、中国及び日本)から計 7 名の先生と19名の大学院生(博士後期課程)が集まり、勉強しました。 名古屋大学からは学生 2 名が参加しました。今年のサマースクールのテーマは「Financial Crisis and Economic Growth: Challenges and Strategies」であり、金融危機及びそれに対する対策について講義が行われました。また、中国を背景として、新興国の直面しているチャレンジ、開発途上国の経済発展のモ

デルなど国際経済学及び開発経済学の最前線の理論も紹介されました。授業を行う一方、参加者は経済、政治及び法律などそれぞれの観点から、国際金融及び途上国の発展にかかる問題と対応策について意見を発表し、活発に議論しました。 午前中は集中的に勉強しましたが、午後には中国文化を紹介するコースも行われました。 2 日目の午後には中国文化街に案内いただき、歴史のある人形屋など、伝統的な中国の文化を垣間見ることができました。また、船に乗って、中国天津の有名な「海河」の夜景を楽しみながら、河の両岸の綺麗な建物を見て、中国経済の発展の成果を実感しました。 3 日目の夜は、書道の授業を受け、中国の伝統的な文化を学びました。この授業は欧米の学生にとって、大変新鮮な体験なので、大好評でした。最後の日には、バスで 3 時間かけて、北京郊外にある中国文化の代表である万里長城に行きました。万里長城を登り、壁を触り、歴史感を感じながら、中国の先祖に対する畏敬の念に打たれました。私は中国人ですが、初めての万里長城の訪問の経験はいつまでも記憶に残ると思います。 最後に、自分と同じように専門家を目指している世界各国からの若手研究者と知り合い、自分達の専門についての考えを交換することができ、色々な勉強になりました。それと同時に、名古屋大学を紹介し、名大と世界をより繋げようと努力しました。すると、南開大学は名古屋大学との交流を発展させる意欲を示され、私としては日中一流の大学間で学術交流が実現すれば、大変嬉しいことだと思います。これから、卒業しても、どこにいっても、名古屋大学と世界の交流を促すために、頑張りたいと思います。

IFPU 2012サマースクール参加学生の報告①

国際開発研究科国際協力専攻 D3

潘 暁明

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 2012年 6 月25日から30日にかけて、中国天津市において IFPU サマースクールが開催されました。IFPUとは、2007年にカナダのモントリオール大学の提唱で設立された大学コンソーシアム、International Forum of Public Universities の略称です。大学院生(博士課程後期課程)を対象に開講される本サマースクールは今年で第 5 回目を迎えました。 本年度の開催校は、色とりどりの花が咲く美しい川のほとりに立つ南開大学。サマースクールの開催地としては非常に恵まれた環境にありました。夜は静寂に包まれ、昼間働かせた頭を休ませることができました。一方で木々の向こうには建設中の巨大な建物。高度な経済成長を続ける地域のシンボルを目にすることもできました。 開催地が天津市であったことは、サマースクールのテーマにも沿うものでした。今年のテーマに据えられたのは「金融危機と経済成長:挑戦と戦略(Financial Crisis and Economic Growth : Challenges and Strategies) 」。中国発展のモデルに基づき成長を続ける天津市は、経済成長の未来を考える上で最適な場所だったと言えましょう。 さて、今年度の IFPU サマースクールは、中国を含め、世界各国から集まった素晴らしい講師 7 名と19名

の学生とが参加して開講されました。講義においては、講師陣が上述のテーマに関わる基本的な側面についての解説を行いました。解説はそれぞれの国における実践例をもとに、理論的・経験的見地から為されました。討論と意見交換を行う時間も十分に確保され、加えて、学生それぞれに発表を行う機会も与えられました。 発想豊かな講師陣との出会い、そして様々な国の大学の学生と行ったグループ作業は私にとってかけがえのない財産となりました。視点の多様性や、物事への国際的なアプローチの方法に触れ、中国、EU、そして他の国々で行われている経済発展への挑戦について、より深く学ぶことができたと思います。 個人的には博士論文執筆に必要な情報も多く集めることができました。特に、現在の経済危機を理解する方法に関して新しい視点を得たことは、私の今後の論文計画にとって非常に重要なものとなったと言えます。スクール終了後、私は自身の研究仮説の見直しと、方法論の改善に取り組むことにしました。 また、大学院生という、私と同じ立場にある学生達との交流も興味深いものでした。私たちは学術的カリキュラムを比較したり、将来の計画を語ったりしました。彼らとは Facebook 上にグループを作り、志を同じくする者として今後も連絡を取り合い、学術的な経

IFPU 2012サマースクール 参加学生の報告②

国際開発研究科国際開発専攻

Otchia Christian Samen

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 AC21事務局は、 4 月 4 日~ 6 日にバンコクで開催された APAIE2012に名古屋大学と AC21の共同ブースを出展しました。AC21事務局が APAIE にブースを出展するのは、今回で 5 回目となりました。今回もブースには多くの APAIE 参加者が訪れ、AC21の今後のイベントの宣伝を行う等、AC21の広報を幅広く行うことができました。 APAIE 会場では、AC21のメンバー大学であるケムニッツ工科大学、フライブルク大学、アデレード大学、ストラスブール大学、チュラロンコン大学、カセサート大学からの参加者と、今後の AC21の活動および発展について話し合う機会を持つことができました。また今回、名古屋大学がモデレーターをつとめ、ケムニッツ工科大学、アデレード大学、チュラロンコン大学と「Academic Consortium 21(AC21) Academia-Industry Ties: Examples from Three Global Leaders」をテーマに共同発表を行いました。APAIE での AC21メンバー間の共同発表は今回が初めてでしたが、今後もこの様な機会を積極的に増やしていく予定です。 AC21事務局は、今後も APAIE にブースを出展することにより、AC21メンバー大学だけでなく、その他の大学とも積極的に情報交換を行い、AC21のさらなる発展を目指し活動を続けて行く予定です。

APAIE 2012参加報告

験を共有することにしています。 スクールのプログラムは非常に密度の濃いものでしたが、一方で、観光や懇親会など、息抜きの機会も与えられていました。スタッフの温かい配慮によって、開講期間中に誕生日を迎えたモロッコの学生の誕生日パーティーも開かれました。 また、サポートも充実していました。学生やボランティアで構成された通訳スタッフは常に私たちの近くで、親身になって手伝ってくれました。観光に関しては、天津、そして北京を訪れました。万里の長城やオリンピックスタジアムなど、新旧の素晴らしい建造物を通して、中国の長い歴史を肌で感じることができました。そして料理。これ

は今回の滞在を語るにおいて外せませんが、ここで料理について話せば、食べられない読者の皆さんがお気の毒ですのでやめておきます。 以上のように、第 5 回 IFPU サマースクールは私にとって忘れられない経験となりました。講義はもちろん、 教授陣や学生、スタッフとの個人的なディスカッションを通して、多くのことを学び、学業の充実のために実りの多いサマースクールとなりました。そして、美しい街、魅力的な人たち、美味しい料理…! 素晴らしいヴァカンスともなりました。このような機会を与えてくださった IFPU ならびに関係者各位に深く感謝致します。

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 去る 5 月27日から 6 月 1 日にかけて、アメリカ・テキサス州ヒューストン市で、2012年度 NAFSA 年次大会が開催されました。筆者は、AC21事務局として、5 月28日から31日まで参加いたしました。 NAFSA は、150カ国以上の3,500を超える教育機関や政府機関、民間企業などに所属する約10,000人の会員からなる非営利団体で、国際教育に携わる人々の能力向上、会員同士の情報交換やネットワーキング、国際教育を促進するための政策提言などの活動を行っています。64回目となる今年の年次大会のテーマは、「Comprehensive Internationalization: Vision and Practice」で、世界中から8,500人以上の国際教育関係者が参加し、会場は人であふれかえっていました。 NAFSA 開催期間中、様々なセッションへの参加や、AC21メンバー大学を中心とした他大学のブース訪問、そして今年で 4 回目となる AC21 Working Breakfast

(AC21メンバー大学であるケムニッツ工科大学主催)にも出席しました。NAFSA に参加するためヒューストンに滞在していたメンバー校の代表者に加えて、ドイツ教育省関係者のオブザーバー参加もありました。 Working Breakfast では、まず最初に、ケムニッツ工科大学の Eberhard Alles 事務局長(Chancellor)が「産学間連携」と題したプレゼンテーションを行い、同大学の産学連携の成功事例の紹介を交えながら、企

業との緊密なネットワーク構築が成功した理由などについて述べられました。続いて、同大学の Lothar Kroll 教授からは、同大学が現在実施している、テキスタイル技術などの分野における産学連携の具体的な事例紹介がありました。 AC21設立10周年の節目となる年を迎えたこともあり、今回の Working Breakfast では、今後の AC21の活動について活発な議論が行われ、以下のような提案が出されました。

1 ) 共通のテーマに関心を持つメンバー大学でサブグループを形成の上、共同で教育・研究を促進

2 ) 学生交流の促進(全メンバー大学間での学生交流実現には時間がかかるので、まずはいくつかのメンバー大学間で始める)

 世界各地に点在する AC21メンバー20大学が一堂に会することは、容易ではありません。今回の NAFSA年次大会のような機会を積極的に活用して、メンバー大学間で交流を図り、意見交換を行う場をさらに増やす工夫が必要だと思います。

2012年度 NAFSA 年次大会参加報告

AC21プロジェクトコーディネーター

井戸 綾子

 今回で 4 回目となる AC21スペシャル・プロジェクト・ファンドは、今年は 1 月31日に締め切られ、AC21運営委員会メンバーによる審査の結果、 2 件のプロジェクトが採択されました。 採択されたプロジェクトは、カセサート大学、同済大学、上海交通大学の「Planning for Sustainable Development in Thailand」及び、華中科技大学、名

古屋大学、北京大学、南京大学、上海交通大学、同済大学の「The 1st “Green Miracle” Youth Leadership Forum」です。これらのプロジェクトについては、次号の AC21通信に報告が掲載される予定です。 AC21スペシャル・プロジェクト・ファンドについては、毎年募集を行っています。応募可能なプロジェクトは、AC21の継続的なプロジェクトに発展する可能性のある、または、AC21の発展に寄与する研究・教育・国際交流に関するプロジェクトの実施で、AC21メンバー大学が 2 カ国 3 大学以上参加する共同プロジェクトであることが条件となっています。このプロジェクト・ファンドを通じて、AC21メンバー間の交流がますます発展していくことが期待されます。

2012年 AC21スペシャル・プロジェクト・ファンド採択結果について

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メンバー大学紹介

  中 国 上 海 の 同 済 大 学 か ら、AC21メンバー及び学生の皆様にご挨拶申し上げます。第 5 回AC21学生世界フォーラムを本学で開催することを、大変誇りに思います。そこで今回、来年皆様をお迎えする本学について簡単に紹介させて頂きたいと思います。 同済大学の前身である同済徳文医学堂は、1907年に設立されました。1912年には工学堂を増設し、同済医

工大学となりました。1927年には正式に国立同済大学となり、中国の高等教育機関では最も古く有名な 7 大学のうちのひとつとされています。

 現在本学は、総合大学として 9 つの学問領域において、29研究科を擁し、82の学士プログラム、218の修士プログラム、94の博士課程後期プログラム、16のポスドクサポート機関において様々なコースを提供しています。また、22の国家重点研究所、工学研究センターを所有しており、これらの施設は、とりわけ一流のエンジニアを目指す中国全土及び世界中からの学生を魅

了し続けています。従って、本学の特徴の一つとして、社会的発展および経済成長を促進する一方、企業との密接な関係を生かし、学生に、社会とのやりとりを通じて最先端の情報を得る機会を提供しています。このため、本学の卒業生は中国全土の企業の採用担当者からの評判がとても良いのです。多くの学生は、中国の近代化を推進していく上で柱となり、多大な貢献をしています。将来を見据え、国際交流や国際協力における異なる専門分野間での連携を実施し、活動することによって、「工学の素養と、サイエンスの精神と、洗練された人間らしさと、国際的な視野」を兼ね備えるという、より総合的な教育の目標を達成するために私達は絶え間なく努力しています。 持続性を重視する大学として、本学は常に教育、科学的研究、社会奉仕、スマートキャンパスという点において持続可能な発展を目指しています。AC21メンバーとの協議の結果、第 5 回 AC21学生世界フォーラムのメインテーマは、「Sustainable Mobility and the City of the Future」に決定しました。また、 6 つのサブテーマは、New Concept Automobile, Green Energy Mobility, Green Life Style & Mobility, Public Transport, Bicycle, Policy & Others となりましたが、もちろん、世界中の若者からの創意工夫に富んだ意見は今後も大歓迎です! 学生世界フォーラムの開会式は、中国 - フィンランドセンターで行われる予定です。専門家の講義を受けるだけでなく、参加学生達は企業を訪問したり、観光として上海城市企画展示館、上海科技館、田子坊、本学の嘉定キャンパス、上海博物館を訪れたり、黄浦江ツアーに参加したりする予定です。詳しい情報に関しては、私達のウェブサイトをご覧ください。http://auto.tongji.edu.cn/ 私達は、2013年のこの重要なイベントに皆さんをお迎えできることを大変楽しみにしています!きっと、忘れられない経験になるでしょう。

第 ₅ 回 AC21学生世界フォーラムウェルカムメッセージ

同済大学Director, International Exchange

and Cooperation Offi ce

Professor Zhenyu Li

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 また、学生世界フォーラムと同時に本学で AC21運営委員会を開催することについても、大変誇りに思っています。忙しく決まり切った日々を送っていると、時々、大学の精神や大学の哲学とは一体何なのだろうか、と私達は自問します。ジョン・タプリン前アデレード大学副学長がおっしゃった様に、AC21は、これらの問いに対する答えを探す過程においてのみならず、規範や原則、価値観やルールについて合意形成を図るためにも良い機会を提供してくれると信じています。オリンピックが常に世界中を魅了し続けているのも、

これとよく似た理由に違いありません。 (原文英語)

 1887年 3 月 7 日に設立されてから、ノースカロライナ州立大学は発展し続けています。明確な目標に向かって、本学はランドグラント大学として発展しました。つまり、本学は、ノースカロライナ州全体に高等教育の門戸を開き、農業や機械科学に対する理解を深めたり、広めたりして州の変革を行いました。 本学は今なお発展し続けています。34,000人以上の学生、およそ8,000人の教職員を擁するノースカロライナ州立大学は総合大学であり、教育・研究において強いリーダーシップを発揮していることで知られています。また、科学、テクノロジー、工学、数学の分野でも世界的に認められています。アメリカのランドグラント大学の一つとして本学は、州民、国民、そして世界中の人々の生活を向上させるために、重要な役割を担っています。 メインキャンパスおよび、大学設立100周年を記念して作られたセンテニアルキャンパスに所属する研究

者達が、新しく応用可能な発見に深く関わることにより、本学は上記の重要な役割を担っているのです。有名な研究大学として本学には、学部生、大学院生、教員が所属し、知識向上、技術移転、世界が抱える数々の深刻な問題を解決するようなイノベーションを起こし、発展させていく責任があります。 本学の研究費は、年間 3 億2,500万アメリカドル以上になり、ほぼ70%の教員がスポンサーを得て研究に従事し、約2,500人の大学院生が研究助成金によって支援を受けています。本学は、企業が出資する研究費の額ではアメリカの公立大学の中で 3 位につけています(医学系大学を除く)。 ノースカロライナ協同公開講座(ノースカロライナ農業技術州立大学との共同の取り組み)では、知識が実際に生かされるように、毎年、偏りのない、研究に基づく情報を220万人以上の州民に提供しています。また、この取り組みがビジネス界へ進出した際も、温かく迎え入れられました。過去 5 年間、このグループは工学や企業経営の分野において最新技術や最善の方法を駆使し、企業が効率性、生産性、品質を高める支援をすることによって、 1 年当たり 5 億4,000万アメリカドル近くの直接利益を州に還元しました。 本学のセンテニアルキャンパスは、独特な共同研究のコミュニティーです。企業と政府関係者は、最先端の設備で最先端の研究を行う教員、ポスドク、大学院生と共同研究を行なっています。また、新規事業支援センターやノースカロライナ州立大学の研究部門としてだけでなく、130以上の企業や政府の研究パートナーの拠点としても、アメリカで最初の大学研究キャンパスとして知られています。

ノースカロライナ州立大学― 新たな発見が生まれるところ

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 常にアメリカの公立大学のトップ50にランクインし、プリンストンレビューのランキングにおいても、学生にとって最も良い大学の一つにランクインしました。本学は、学生が馴染みやすく、勉学に専念しやすい環境にあると言えます。本学の学生達は入学早々すぐに専門の勉強を始め教員と一緒に研究をしたり、インターンシップを始めたりします。学生数は多いのですが、教職員からのサポートもいつも受けることができるので、困ることはありません。また、大人数のク

ラスは、常に少人数のディスカッション部門や研究室と組み合わせられています。 世界中からの学生や教員は、ローリーを故郷と呼んでおり、それは全く不思議な事ではありません。ローリーは、ノースカロライナ州の州都であり、最近、アメリカで最も住みやすい都市としてランクインされました。本学のキャンパスは、フォーチュン500にランクインする研究会社や製薬会社が位置するリサーチトライアングル地域に囲まれています。 (原文英語)

 学問に国境はない、とよくいわれます。数学を専門とする私もいくつか海外の研究者たちと共同でプロジェクトを進めていますが、この分野の性格上、プロジェクトといってもごくごく小規模のものです。多くの場合、特定の個人と一対一で、特定の問題について議論する。黒板を長時間占拠して、立ったり座ったりしながら、ああでもない、こうでもないと計算や論証を続けていくわけです。ただし、こういった時間をとることのできる機会は、非常に限られています。日本国内の共同研究者であれば比較的頻繁に会えるのですが、海外、とくに欧米となるとそうも行きません。多くて年に 2 、 3 回といったところでしょう。講義その他の合間をぬって、補講・時差ボケの苦労を省みず、何とか海外の共同研究者に会いに行きます。ときには電子メール、チャット、スカイプといった通信手段を駆使しながら議論を重ね、 1 つの共同論文を仕上げるのに 3 年も 4 年もかけるのが普通です。 ちなみに電子メールやチャットといった通信手段は、論文を執筆したり校正したりする段階以外ではあまり役にたたない、というのが私の印象です。これらの道具は「ことば」を伝えることには長けていますが、極度に抽象化された数学的概念や、複雑な数式の意味を伝えるのには適さないようです。(単にわれわれに、言語化する努力が足りないだけかもしれませんが…。)そのためわれわれ研究者の間には、実際に会ってその場で議論する、というプロセスをとても大事にする気風があります。「ことば」だけでは伝わらない、「図」だけではあいまいすぎる。そういう限界を常に意識しているからです。われわれ人間には、「ことば」にで

きないさまざまな感覚があります。そのような感覚は、思考を文章化する過程で失われてしまうのです。しかし実際に人と会って話を聞くうちに、「ことば」にならなかった何かがじわじわと伝わってきます。論文に書けないような卑近なたとえ話を聞いて、一気に本質がつかめることもあります。また、場と時間を共有し続けることで、お互いの思考パターンも近似できるようになってきます。 こういった状況は数学に限らず、理論系かつ小規模・少人数の共同研究であれば、大同小異なのではないでしょうか。研究費の多くは交通費や人件費につぎ込み、必要な場所に必要な人物を送り込む。またはワークショップを開いて人を集め、情報が交錯する場を提供する。学問に国境はない。ないがゆえにわれわれは、研究上の必要があれば、多大なコストをかけてでも(政治的な意味での)国境を越えるのであります。 さてここまでは研究者個人レベルでのはなしでしたが、いまひとつ視点を大きく転じることにしましょう。ひとつの思考実験として、以上のはなしを AC21 をはじめとした大学間の国際連携に、ざっくりと適用してみるのです。 わが AC21は、共通の理念と目標を掲げる大学間の連携組織であります。私はすぐに、航空会社のアライアンスを思い出してしまうのですが、AC21には「コードシェア便」のような実務レベルでの連携を強化するかわりに、大学を運営する上でのアイディア・現状認識・問題意識など、情報面での共有作業が活動のベースにあるようです。これは大学という巨大な有機体たちが、お互いの「思考」活動を伝達しあう、そのような場にも見えますね。そこでも「ことば」を媒体としたコミュニケーションが担当者レベルで行われているわけですが、文章化する過程で失われていく、感覚的な情報も少なからずあるに違いありません。それは一体何なのか、どのくらい価値があるのか、どうすればそのような情報の損失を減らせるのか、考えてみるのはなかなかよい練習問題だと思われるのです。

AC21推進室より多元数理科学研究科

准教授・AC21推進室員

川平 友規

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イベント・カレンダー

2013.5-6 第 1 回 AC21国際スクーリング (於チュラロンコン大学・カセサート大学)2013.10 第 5 回 AC21学生世界フォーラム(於同済大学)2013.10 第11回 AC21運営委員会(於同済大学)2014.3 第 7 回 AC21国際フォーラム(於ステレンボッシュ大学)2014.3 第12回 AC21運営委員会(於ステレンボッシュ大学)2014.3 第 6 回 AC21総会(於ステレンボッシュ大学)2015.[TBA] 第 6 回 AC21学生世界フォーラム(於ストラスブール大学)2015.[TBA] 第13回 AC21運営委員会(TBA)

AC21メンバー

アデレード大学 *(オーストラリア)ガジャマダ大学(インドネシア)カセサート大学(タイ)華中科技大学(中国)吉林大学(中国)ケムニッツ工科大学 *(ドイツ)シドニー大学(オーストラリア)上海交通大学 *(中国)ステレンボッシュ大学 *(南アフリカ)ストラスブール大学(フランス)チュラロンコン大学 *(タイ)同済大学(中国)東北大学(中国)名古屋大学 *南京大学(中国)ノースカロライナ州立大学 *(アメリカ)フライブルグ大学(ドイツ)北京大学(中国)ミネソタ大学(アメリカ)ラオス国立大学(ラオス)

*はAC21運営委員会メンバー

2012.4.4-6 APAIE 2012参加2012.4.20 第105回 AC21推進室会議2012.5.17 第106回 AC21推進室会議2012.5.28-31 NAFSA 年次大会参加2012.6.6 第107回 AC21推進室会議2012.6.12-14 第 6 回 AC21国際フォーラム

2012.6.25-30 IFPU 2012サマースクール参加2012.7.19-20 チュラロンコン大学・カセサート

大学訪問2012.7.27 第108回 AC21推進室会議2012.9.20 第109回 AC21推進室会議

AC21推進室活動記録(2012年4月~2012年9月)

No. 12AC212012年10月15日編集 ・ 発行  国際学術コンソーシアム(AC21)

推進室〒464-8601 名古屋市千種区不老町名古屋大学TEL 052-789-5684e-mail [email protected] http://www.ac21.org