2013 年度(後期) - 在宅医療の調査研究を助成【公...

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2013 年度(後期) 在宅看取りにおける各職種の立場か ら感じた連携の取り方について」 申請者:鵜澤龍一 提出日:平成 26 年 8 月 27 日

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2013年度(後期)

「在宅看取りにおける各職種の立場か

ら感じた連携の取り方について」

申請者:鵜澤龍一

提出日:平成 26年 8月 27日

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TEL:047-495-9559 e-mail:[email protected]<受付時間>月曜~金曜/12:00~15:00

主催/公益社団法人船橋地域福祉・介護・医療推進機構  後援/船橋市、一般社団法人船橋市医師会、船橋南部在宅療養研究会

お問合せ/公益社団法人船橋地域福祉・介護・医療推進機構船橋市湊町2-5-1 アイカワビル5F

公益財団法人在宅医療助成勇美記念財団の助成による

在宅看取りにおける各職種の立場から感じた

連携の取り方について

在宅看取りにおける各職種の立場から感じた

連携の取り方について

セミナーハウス クロスウェーブ船橋船橋市本町2-9-3TEL:047-436-0111

講演・シンポジウム/講堂 福祉塾/中研修室

講師

永島 徳人 先生■経歴2003.3  東京慈恵会医科大学 医学部卒業2003.4~ 東京慈恵会医科大学 附属病院初期研修医2005.4~ 東京慈恵会医科大学 泌尿器科 助手2007.4~ 医療法人社団 誠馨会 セコメディック病院    泌尿器科 医員2010.4~ あおぞら診療所新松戸2012.7~ つばさ在宅クリニック 院長2013.3~ 医療法人社団白羽会 理事長

コーディネーター

シンポジスト

■土居 良康 氏<土居内科医院 副院長>

コメンテーター

■永島 徳人 氏<つばさ在宅クリニック 院長>

7平成26年

入場無料

26土

<つばさ在宅クリニック 院長>

14:00~15:3013:30開場

会場

裏面の申込書にて事前にお申し込みください■矢走 誠 氏<矢走クリニック 院長>

■佐藤 十美 氏

 <セコム船橋訪問看護ステーション 訪問看護認定看護師>

■増田 宏幸 氏

 <板倉訪問クリニック在宅介護支援事業所 所長 ケアマネジャー>

■在宅看取りの経験者<一般市民>

生活習慣病・メンタル・子育て・認知症・後見制度・介護・歯科など市民の皆様のさまざまな

疑問に専門家がお答えする「船橋福祉塾」が6月よりスタートしました。

同時開催

予約不要相談無料16:00 ~ 17:00

この日の相談内容は…「在宅看取り」 について

上記講演・シンポジウム終了後

船橋福祉塾悩み・疑問を専門家に相談!

平成26年度船橋市市民公益活動公募型支援事業

調

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お申込み方法について

[email protected]

お申込み期限

お申込み書

7月18日(金)

※氏名・電話番号・所属を記入し、件名に「申込み」と入れて送信ください。

※ご記入いただいた個人情報は、本講座に関する連絡等に利用させていただく場合がございます。 その他の目的に使用したり、第3者に提供することはございません。

e-mail、FAX のどちらでもお申込みいただけます。

※以下の申込書に必要事項を記入し、送信ください。

該当するものを〇で囲んでください。

定員

200名

■e-mailでお申込みの場合

■FAXでお申込みの場合

『在宅看取りにおける各職種の立場から感じた連携の取り方について』 講演 ・ シンポジウム

電話番号

所属

電話番号

所属

氏名ふりがな

氏名ふりがな

福祉・介護・医療関係 左記以外

福祉・介護・医療関係 左記以外

所属機関名(                  )

所属機関名(                  )

該当するものを〇で囲んでください。

公益社団法人船橋地域福祉・介護・医療推進機構FAX 送信先:047-495-9555

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公益財団法人在宅医療助成勇美記念財団の助成による

在宅看取りにおける各職種の立場から感じた連携の取り方について

司会 公益社団法人船橋地域福祉・介護・医療推進機構

理事 鵜澤 龍一

1、主催者挨拶 公益社団法人船橋地域福祉・介護・医療推進機構

代表理事 菅谷 和夫

2、来賓挨拶 船橋市長代理 健康福祉局局長 山口 高志氏

一般社団法人船橋市医師会会長 玉元 弘次氏

3、シンポジウム

(1)基調講演 [講師]

永島 徳人先生 つばさ在宅クリニック 院長

(2)シンポジウム [コーディネーター]

土居 良康先生 土居内科医院 副院長

[シンポジスト]

矢走 誠先生 矢走クリニック 院長

佐藤 十美氏 セコム船橋訪問看護ステーション

訪問看護認定看護師

増田 宏幸氏 板倉訪問クリニック居宅介護支援センター

ケアマネジャー

在宅看取りの経験者 A氏

在宅看取りの経験者 B氏

[コメンテーター]

永島 徳人先生 つばさ在宅クリニック 院長

5、閉会挨拶 公益社団法人船橋地域福祉・介護・医療推進機構

主催:公益社団法人船橋地域福祉・介護・医療推進機構

後援:船橋市・一般社団法人船橋市医師会・船橋南部在宅療養研究会

基調講演 講師 永島 徳人 先生

■経歴

2003.3 東京慈恵会医科大学 医学部卒業

2003.4~ 東京慈恵会医科大学 附属病院初期研修医

2005.4~ 東京慈恵会医科大学 泌尿器科 助手

2007.4~ 医療法人社団 誠馨会 セコメディック病院

泌尿器科 医員

2010.4~ あおぞら診療所新松戸

2012.7~ つばさ在宅クリニック 院長

2013.3~ 医療法人社団白羽会 理事長

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在宅看取りにおける

多職種での連携の取り方

つばさ在宅クリニック 院長 永島 徳人

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当院の紹介

つばさ在宅

クリニック

総勢33名

医師:16名 看護師:10名

医療事務:7名

2011年7月開業の

在宅療養支援診療所

◎安心感を感じてもらう診療

◎患者様・ご家族の思いに

寄り添う診療

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当院の在宅看取り数

死亡患者数 平成23年度 平成24年度 平成25年度 平成26年度

自宅 26名 86名 102名 71名

施設 1名 8名 20名 8名

病院 14名 36名 69名 40名

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平成24年死亡患者分類 (場所/がん・非がん患者)

28.2%

65.6

%

6.1% 22%

6%

52%

14%

3% 3%

自宅

病院・診療所

施設

当院

75% 18%

4%

その他

3%

26%

49.3%

3.4%

14.3%

0.4%

4.1%

0.2%

2.5%

病院・診療所

自宅

施設

がん患者 非癌患者

船橋市 平成24年千葉県衛生統計年報(人口動態調査)

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平成24年度 船橋市自宅死亡の病名分類

平成24年千葉県衛生統計年報(人口動態調査)

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終末期患者を家で支えるためには

病状説明 現在の病状、今後の病状変化 点滴の希望、急変時の対応

症状コントロール 常備薬

介護体制

多職種で連携をとりチームで支えることが大事

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在宅療養を支える関係機関

病院

急性期入院

レスパイト入院

福祉用具レンタル

通所介護・訪問介護

通所リハビリ

訪問リハビリ

ショートステイ

在宅療養支援診療所

居宅介護支援事業所

訪問看護

ステーション

薬局 歯科診療所

市役所

患者

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後悔のない看取りにつなげるために

どのような最期を迎えたいか

痛みや苦しみはとって欲しい

穏やかで静かな最期を迎えたい。延命はしたくない。

死を目前にどのように生きたいか

納得した最期を迎えるために残された時間で何をしたいか

食べておきたいもの、行っておきたい場所、伝えておきたい言葉 etc.

本人が人生の最後に自分らしい日々を送り、家族がその最期に十分かかわれた時、<良い看取りだった>と感じることができます。

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診療レポート

毎回診療の度に

訪問看護・CM・訪問薬局に

FAXで情報提供しています。

●●●●●●

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末期がん患者の在宅看取り

患者: 73歳 女性 病名: 盲腸癌末期、悪性リンパ腫、肺転移、癌性腹膜炎、腸閉塞 社会背景: 夫と二人暮らし ADL: 寝たきりの状態(C2) 介護保険: 要介護4 現病歴: 平成19年6月 悪性リンパ腫と診断。その後化学療法施行し、寛解 平成24年6月 血便精査にて盲腸癌と診断 7月27日 腹腔鏡下回盲部切除術施行 平成25年1月30日 PETにて左肺野、盲腸、右頚部、左肋骨に集積認めた。 2月28日 精査にて悪性リンパ腫の再発と診断 3月19日 悪性リンパ腫に対して化学療法2コース施行 5月30日 食欲不振・血便精査にて盲腸癌再発と診断 輸血・点滴治療にて状態改善したが化学療法の適応はないと判断さ れました。 6月24日 退院

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家に帰ってきて

本人 「今まで抗がん剤をやってきたが治療は全て終わったと言われた。 リンパ腫になってから7年ずっと戦ってきたから覚悟は出来ている。 とにかく家に帰りたかった。帰ってきて良かった。」 夫 「最初は家に帰らないって、おれには何もできないから、迷惑かけるだけ だからって言うんだよ。介護は頼めるって聞いてやっと帰ってこれました。」

⇒自宅に帰ってきた喜びは大きかったが 退院指導や環境調整、これからの病状変化や予後について 全く説明されていない状況でした。

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初診時身体所見

右下腹部痛と腹部膨満感

エコー上著明な小腸拡張認めており

癌性腹膜炎から腸閉塞を起こしている状態

入院中はIVHから高カロリー輸液を点滴していた。

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導入した在宅サービス

当院訪問診療・訪問看護 居宅介護支援事業所 訪問薬局

今まで全て本人管理であった。夫は管理できない。 服薬カレンダー導入。

訪問介護 (毎日60分) 清潔ケア(清拭・陰部洗浄・おむつ交換・口腔ケア)

福祉用具レンタル事業所 エアマット、介護用ベッド、点滴棒の導入

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初診時家族指導

病院からの退院指導をしっかり受けていなかった。

① 高カロリー輸液点滴指導(輸液開通方法、ポンプアラーム対応)

② 尿道カテーテルの尿破棄と尿量測定方法

③ 介護指導(清拭、おむつ交換など)

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在宅療養の経過①

6月25日:緊急訪問看護 朝、夫より連絡あり。前日夕方より5~6回のコーヒー残渣様嘔吐認め、朝起きてみたら意識消失しているとのことであった。訪問時意識消失しており、BP106/50、SpO2 89%、血糖値69であった。脱水と軽度の低血糖に対し補液点滴・ブドウ糖点滴施行した。 1時間ほどで意識レベルも回復した。 6月26日:訪問診療 コーヒー残渣様嘔吐・黒色便持続しており、苦痛が続いている状態でした。癌性腹膜炎からの腸閉塞に対してサンドスタチン持続皮下注射開始した。また内服困難なためオキシコンチンはフェントステープへ変更した。夫へ病状説明を施行した。

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病状・予後説明

本人・夫ともに病院では今までの病状経過は聞いていたが 予後については聞いていなかった。

当院も病院より予後は1~2年程度と聞いていました。 この数日の状態を見て厳しいことは認識している様子であった。 大腸癌再発より貧血の進行と腸閉塞を起こしている状態 ⇒急変の可能性。予後は週単位。 ⇒夫は本人が自宅にいたいとの希望があるため、自宅で看ていく覚悟はできていると話をされた。病院より細かく看てもらっている気がすると話され、長男は夫に任せるとのことだった。 ⇒本人は家にいたい。これ以上の延命治療はしたくない

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在宅療養の経過② 在宅療養期間24日間

訪問診療8回、訪問看護16回

サンドスタチン使用後より嘔吐回数減少し、経口摂取も少しできるようになった。 下血は続き、病状は進行していたが大好きなメロン・ハム・牛乳などを食べ、良い時間を過ごされていた。食べたい気持ちが強いため、嘔吐に気をつけながら何を食べてもよいと伝えた。 7月15日より尿量減少し、傾眠傾向となり、 7月17日13時42分自宅にて御永眠された。

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連携がうまく行った点

家事も点滴も介護も全くできなかった

病状経過や予後も知らなかった

覚悟を決めて点滴、オムツ交換、座薬、食事介助・・・全てにわたって出来るようになった

多職種の連携により

夫に対して厳しい口調だった患者さんが

最期には本当によくやってくれて夢見たいと感謝の言葉に変わった

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連携がうまくいかなかった点

①初回導入前の情報として退院2週間前に作成された 診療情報提供書だけだった

i. 高カロリー輸液点滴・腸閉塞の情報がなかった ii. 予後についても1~2年と聞いていた

② 退院指導がしっかりされていなかった

病院との連携がうまくいってれば、 退院後数日間苦しまなくてすんだ

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退院前カンファレンス

診療情報提供書に記載されている状態と退院時の状態は違うことがある

日々変化する患者さんの状態を実際目で見ることは大切

退院前に退院後のサービス計画をしっかり立てることができると自宅に帰ってきた時にスムーズであり、家族も安心することができる。

退院時に入れるべき福祉用具の選定をするときに訪問看護師または往診医のアドバイスがあったほうが最適なものを導入することができる。

医療デバイス(吸引・吸入・Ba・点滴・酸素)の使用方法や介護指導をしっかり家族に指導できているか確認することができる。

退院前カンファレンスや病棟訪問することで

CM・MSW・病棟看護師・家族へ退院に向けての指導調整することができ 退院日からしっかりした介護計画を立てることができる。

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まとめ

各々の立場から支え、密な多職種連携をとることは 患者さんや御家族が安心して

自宅で終末期を送るために必要である

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患 者 様 Aさん(57歳・女性) Bさん(68歳・女性)

病 名 卵巣癌 左上顎歯肉癌

退 院 時 の 状 態

・なんとか自分で歩ける ・アイスクリームをちょっと食べる ・栄養は点滴で ・おなかの痛みと張りがきつい ・鼻から管を入れてある状態

・普通に歩行 ・流動食 ・口内炎が酷い ・疼痛コントロール不良

主 介 護 者 様 夫(58歳) 娘(42歳)

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1

勇美記念財団助成事業報告書

「在宅看取りにおける各職種の立場から感じた連携の取り方について」

平成 26 年 7 月 26 日(土)

午後 2 時~3 時 30 分

セミナーハウス クロス・ウエーブ船橋

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2

プログラム

公益財団法人在宅医療助成勇美記念財団の助成による

在宅看取りにおける各職種の立場から感じた連携の取り方について

司会 公益社団法人船橋地域福祉・介護・医療推進機構

理事 鵜澤 龍一

1、主催者挨拶 公益社団法人船橋地域福祉・介護・医療推進機構

代表理事 菅谷 和夫

2、来賓挨拶 船橋市健康福祉局局長 山口 高志氏

一般社団法人船橋市医師会会長 玉元 弘次氏

3、シンポジウム

(1)基調講演 [講師]

永島 徳人先生 つばさ在宅クリニック 院長

(2)シンポジウム

[コーディネーター]

土居 良康先生 土居内科医院 副院長

[シンポジスト]

矢走 誠先生 矢走クリニック 院長

佐藤 十美氏 セコム船橋訪問看護ステーション

訪問看護認定看護師

増田 宏幸氏 板倉訪問クリニック居宅介護支援セ

ンター ケアマネジャー

在宅看取りの経験者 A様

在宅看取りの経験者 B様

[コメンテーター]

永島 徳人先生 つばさ在宅クリニック 院長

4、閉会挨拶 公益社団法人船橋地域福祉・介護・医療推進機構

主催:公益社団法人船橋地域福祉・介護・医療推進機構

後援:船橋市・一般社団法人船橋市医師会・船橋南部在宅療養研究会

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3

【基調講演】

永島医師の所属する、つばさ在宅クリニックは年間 1 万件以上の訪問診療・往診を行

っており、船橋市でも有数の実績を持ち在宅医療・看取りの経験は極めて豊富である。

今回は、永島医師の関わった症例を呈示されて、永島医師がご自分でお感じになった

在宅介護における多職種連携の方法、重要性等について講演された。

スライドを使用しての講演であったが、以下に在宅医療における連携の在り方につい

て概略を記す。

73 歳女性の末期がん患者を症例として呈示された。この患者さんは、7 年間もがん

を患い、もう家に帰ることはないと思っていたが、介護を頼めるということで退院、帰

宅することとなった。すでに終末期であり、医療、看護等々の各職種の支援が必要な状

態であったが、永島先生の指示で十分な連携が取れて、必要な支援をすべて導入するこ

とができた。病院から帰宅後、約 3 週間でご本人の希望どおり自宅で永眠された。退院

後の各職種との連携はうまくいったが、退院して自宅に戻られる際に病院との連携がう

まく取れていなかったことで、在宅看取りへの移行がスムーズにいかなかったというお

話があった。終末期の患者さんの病態は時々刻々変化するので、それに即応するような

対応が必要であることを強調された。

質問 1:各職種の連携が必要だというのはわかりますが、実際にはとれていなくて今回

のご講演は問題提起と受け止めてよいでしょうか?

回答 1:船橋市でも、実は在宅看取りの実践がまだまだ少ないのが現状です。連携がう

まくとれている所とそうでない所があります。看護師さんなど、事業所が違う

と連携が特に難しいです。今まではなかなか連携がとれていなかったのですが、

船橋でも徐々にできつつあります。現状では、連携の方法として電話での連絡

も頻繁に使っています。

質問 2:システム作りが必要ではないでしょうか?

回答 2:ひまわりネットワーク等のシステムは徐々にできつつあります。しかし、各職

種の方が、連携が必要だと感じることが重要です。患者さんの症状は日々変化

するので、システムは重要ですが、やはり電話でのリアルタイムな現状説明が

重要です。

質問 3:先生がスライド 3 枚目で示された看取りの件数は、一旦先生のクリニックで対

応されて、そこから病院に搬送されて亡くなったケースもあるのでしょうか?

回答 3:当院を受診される方は、必ずしも在宅の看取りを希望される方ばかりではあり

ません。その他にも、認知症や脳梗塞で寝たきりになって入院が必要で、その

ままそこで亡くなってしまった場合なども含めてという意味です。

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質問 4:病院で訪問リハビリの仕事をしていますが、在宅でリハビリにどういうことを

期待されておられますか? また、病院でも入院患者さんのベッド上でのリハ

ビリ等に関わっていければよいと思うのですが。

回答 4:当院のがん患者さんの平均在院日数は 1か月前後なので、ほとんど終末期です。

ご本人に意欲があれば積極的に行えばよいでしょうが、負担になるようであれ

ば無理にする必要ではないのではないかと思います。病院で行う場合でも看護

師さん等と連携を取りながらやればよいと思います。

参加者のコメント:私は永島先生の患者ですが、船橋市では在宅看取りの勉強会を 3

年以上前からやっていることをご紹介したいと思います。

【シンポジウム】

土居医師がコーディネーターとして、各シンポジストを紹介し、その後進行方法につ

いて説明。

在宅看取りを経験されたAさんのご主人、Bさんの娘さんから、それぞれご自分が、

在宅看取りに至るまでに良かったと感じた点、良くなかったと感じた点についての思い

を語って頂き、それに対して各職種のシンポジストの方々が、より良い看取りのために

どのように連携を取るべきか、連携とは斯くあるべし等々の発言をするという形で進行

すると会場に説明した。

最後にコメンテーターの永島医師がそれらの意見をまとめる形で発言して終了した。

1. Aさんの例(スライドAさん参照)

1-1.満足した点について

土居コーディネーター:Aさんの例について概略を説明します(スライド参照につき省

略)。ではAさんのご主人、在宅で看取れてよかった点をお話しください。

Aさんの夫:妻が大学病院から退院したいという意志があり退院させましたが、退院前

に地元の受け入れ医師・看護師・薬剤師の3者でカンファレンスを開いてくれました。

バックアップがあって私も心強かったです。この 3 つがそろっていないと退院できない

と妻にも話しました。訪問してくれるお医者さん、訪問してくれる看護師さん、薬を届

けてくれる薬剤師さん、この人たちがいたからこそ自宅で看取りができたと思います。

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在宅看取りは私には大変だったですが、自分にとっても妻にとってもすごく充実してい

た時間だったと思っています。

土居コーディネーター:シンポジストの皆さんにそれぞれの立場から感じたコメントを

していただきたいと思います。まず、退院時のカンファレンスをどのようにすすめるべ

きか、増田さんいかがでしょうか?

増田CM:最近は、退院前の医療機関のカンファレンスに参加させてもらう機会が増え

て来てはいますが、退院する週だとか、1週間前だとかに急に云われることが多いので、

対応が難しいです。できれば入院している医療機関の看護師さんやMSWさんと顔を合

わせて、今後についてのカンファレンスをなるべく早くに開いていただければよいと考

えています。

土居コーディネーター:では、実際にその後退院されてからの、在宅での看護について

の観点から佐藤さんはいかがでしょうか?

佐藤看護師:退院に際して病院に出向いて退院調整のカンファレンスをしますが、それ

は利用者の方が家でどんな人たちとどのような形で療養していくのかイメージできる

場でもあります。またサービスを提供する側からすれば、どのような方法で利用者様を

サポートできるかという方向性を呈示する場でもあると思います。そのためにはなるべ

く時間の調整をしてカンファレンスに参加すること。参加依頼がない場合もありますが、

そういうときはこちらから積極的に出向くようにしています。

土居コーディネーター:方向性を確認するのは大変重要なことだと思いますが、全員参

加はなかなか難しいですね。私もなかなか時間的制約等で参加できないことがあります

が、佐藤さんのような熱心な訪問看護師さんから情報をもらって、カンファレンスと同

時ではなくても情報を共有して在宅療養に結び付けるということ、連携を密にすること

が非常に重要であると思います。これからもぜひ頑張ってください。

矢走医師:私は精神科医ですが、父親を在宅で看取った経験があるので、どちらかとい

えばAさん、Bさんの側と感じていますが、医師として発言させてもらいますと、退院

前のカンファレンスといっても、医者は紙の情報ばかりが多くて、実ははっきり言って、

患者さんを見るまでは全く分からないと思います。それで、初めて見てびっくりするの

が普通です。医者は医者同士で病状を伝える、看護師さんは看護師さん同士病状を伝え

る、例えばヘルパーさんたちでも、まず各職種間の連携が必要で、その上でみんなが情

報を持ち寄って、ケアのプランを共有することが重要であると思うし、そうならなけれ

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ばいけないと思います。ただそれにはすごく手間暇がかかりますね。それが今後の課題

ではないかと思っています。

土居コーディネーター:ありがとうございます。問題はたくさんありますが、医師など

関係職種は病院側でも在宅でケアする側でも積極的に退院時前カンファレンスを行え

る体制を作っていくことが重要ですね。

1-2.不満、不十分だった点について

土居コーディネーター:在宅看取りでもう少しこうして欲しかったとか、これからよく

するにはどうすべきか等、厳しい意見もあるかもしれませんが、ご意見を頂きたいと思

います。まずAさんから。

Aさんの夫:がん患者一人ひとり症状が違うわけで、素人なのでそれにあった療養スタ

イルがわからなかったです。そういう話が知りたかったと思います。それがわかれば、

あの時期にはあんなことをしてあげられたのに、と思っています。専門分野からのコー

ディネートとは別に、患者側に立った視点からのコーディネートをしてくれる人がいれ

ばもっとよかったと思います。

土居コーディネーター:個々の患者さんに合わせて、患者さんの病状から、こうなった

から今度はこういうことが起きますよとか、いついつくらいにこういうことが起こりま

すよという情報が欲しかったという意味かなと思いますが、まずは病院から在宅に移行

するときにそういったことを連携でどのように伝えるのか増田さんからお話をお願い

します。

増田CM:病院のCMなので、カンファレンスとかを通じて、自分が知りえたご本人の

気持ちやご家族の思いを、連携先の看護師さんたちに情報として入れて、つなぐという

役割をしています。

佐藤看護師:ご利用者に起こる状況がわかるので、それをご本人やご家族にお伝えして、

次に何が起こるのかを予測して対策をたてるのが訪問看護の役割だと思います。次に起

こることがわかるからこそ、今しかできないご本人の好きなこと、したいことを一緒に

考えていくのが本来の支援の在り方だと思いますが、次に起こることが悪い状況であっ

たときになかなかそれを伝えにくい。バシッと言えなかったり、やんわりになったり、

言うのをためらったりしてしまう面もあります。そこを話さないと次のケアに進んでい

けないということもあるので、やはりそこははっきりと言って、患者様やご家族と一緒

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に考えていかなければいけないと思います。その辺がまだまだ、自分は力不足であると

感じます。

土居コーディネーター:状況を見ながらきちんと伝えることが大事ですね。言葉を選ん

でケアを先に進めるように情報の伝達をしなければいけないし、これからは訪問看護師

さんの役割は益々大きくなると思います。頑張ってください。

矢走医師:残酷な言い方かもしれませんが、在宅看取りの患者さんは自宅で亡くなるの

が前提で話が進んでいる。僕は自分の父を在宅で看取りましたが、本人の希望通りやり

たいことは全部やらせました。点滴も嫌だというのでやりませんでした。家族として、

やりたいことは全部やらせました。それじゃ、医者としてそれを患者さんに全部やれる

かというとちょっと難しいかなという気もします。精神科医は、患者さんには一生治ら

ないよと言うし、一生薬を飲み続けるんだね、と言える。精神科は治療のタイムスパン

が長くて在宅医療と感覚が違います。精神科は在宅医療と違ってフォローが効く。在宅

医療は一瞬一瞬が勝負でフォローが効かないので、ターミナルを診る先生は苦しいんだ

ろうと思います。その辺が永島先生と僕との感覚の違いだと思うのです。

土居コーディネーター:タイムスパンがどのくらいあるかということでも、情報の伝え

方は難しいと思います。でもやはり必要ななことですね。

2-1.Bさんの例(スライドBさん参照)

2-1.満足した点について

土居コーディネーター:Bさんの例について概略を説明(スライド参照につき省略)。

では、Bさんの娘さんに伺います。在宅で看取れてよかった点などはいかがでしょう

か?

Bさんの娘:私は母を看取りました。慣れ親しんだ自宅で過ごせたことは、本人にも私

にも父にも非常に満足ができるかけがえのない時間でした。母は痛みが強く痛みのコン

トロールが難しかったです。後半の方は医療用モルヒネを使っていて、持続皮下注射用

の針が6本入っていましたが、もっと注射量が増えることになり、そうなると針の数が

もっと増えるので、それよりは埋め込み型のポートというものを作ってほしかったので

す。船橋市内のありとあらゆる病院に病状の説明をして電話をかけてみましたが、みん

な断られて途方に暮れておりました。そんなところに、板倉病院の梶原院長先生が快く

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ポートをつくることを引き受けてくれたのですが、このことがすごく嬉しかったです。

とにかく安堵感が強かったです。

土居コーディネーター:患者さんの安心感ということに関して、増田さんのお立場で何

かコメントはいかがでしょうか?

増田CM:私は介護福祉系なので医療の面はよくわからないのですが、CMとして地域

の資源、情報を得ておいて患者様にその情報を提供して安心感を持っていただけたらよ

いかと思っています。

土居コーディネーター:佐藤さんは看護師として如何でしょうか?

佐藤看護師:安心感ということを聞いていて、今回のようにどこにその相談を持ってい

けばよかったかわからないというのは問題だと思います。もっとわかりやすいシステム

が必要です。先生方の間で情報伝達が途切れたり、医療保険の制約もあったり難しいと

思いますし、その先生の方針に左右される面も大きいです。先生方にはその患者様の人

生を豊かにするという視点を持っていて欲しいと感じます。

土居コーディネーター:看護師さんとか医者とか、立場でいろいろ考え方の違いがある

と思いますが、患者さんやご家族の方が安心できるようなサービスを提供できるように

というのが皆さん共通した思いです。矢走先生は医師としてどう思われますか?

矢走医師:連携の話ですが、病院の医師がなぜポートをつくらなかったのか不思議なく

らいですね。たとえば永島先生が事前にカンファレンスに行ったならば、それならぼく

がここでポートを作りますと言ってしまうかもしれない。要は、そのくらい熱心でなけ

れば在宅なんかやれないのではないでしょうか。医者側が家族に苦労をかけない医療を

考えていかなければならないと思います。患者さんを泣かせてはいかんですよ。

土居コーディネーター:まったくそのとりですね。現実にご家族が泣くようなことが起

きたわけです。今後この船橋市の中ではそのようなことが起こらないように、きちんと

情報を伝えていくような体制を作らなければいけないと思いますね。

2-2.不満・不十分だった点について

土居コーディネーター:ではBさんからどうぞ。

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Bさんの娘:母はがんが見つかってから亡くなるまでの経過が早く短かったです。手術

して下さったお医者さんには感謝しているが、短期間で再発を3回繰り返し、そのたび

に弱っていきました。母は 68 歳でまだ若かったので治療を勧められました。再発のた

びに違う治療を受けました。でも本当にその治療が、効果があるのかどうかわからなか

ったです。これから母がいつどうなっていくのか、残されている時間はどのくらいかと

訊ねても、そのお医者さんはそういったことは言えませんとはっきり仰いました。治療

を続けたいのは本人や家族じゃなくて、本当は先生なんじゃないの? と言ってやりた

くなりました。自分の親を診ているつもりで、そういう話をして欲しかったと憤りを感

じています。

土居コーディネーター:私も医者なので、そのお気持ちは真摯に受け止めたいと思いま

す。実際そういう医師は多いんじゃないかと思います。これから先も在宅に限らずその

ようなご家族の気持ちをケアできるようにするにはどうしたらよいか、在宅の看護師さ

んとして、看取りを考えた上で、今のご意見について佐藤さん如何ですか?

佐藤看護師:病院の医師から十分な説明を受けずに在宅に移行する方は少なくないです。

そういう場合、在宅でサポートしようとしても治療への期待があったり、未告知であっ

たりで、こちらとしても、なかなか話ができなかったり、話が前に進まなくて困ること

はあります。ただ自分たちご家族が心残りであったりということはあると思います。

矢走医師:希望を持っているのは主治医も家族も同じだと思います。患者も家族も自分

だけは助かると思っているところがあります。医者はそこで治療関係を築いて希望を持

って治療をするのです。医者もまた希望にすがりつきたい。そういう気持ちがどこかに

あるのです。でも現実にある程度進行してくると自分たちの技術や知識に限界を感じた

り、現実に何ら治療方法がない段階まで至った時、医者の方が無力感を感じているので

はないでしょうか。そのことを患者さんや家族に告白することは辛い体験だと思います。

家族としては怒りを感じたり、病気になったことに対してその段階では怒りを感じたり

しますが、そこから進んでいくと段々に本人も家族も死を受け入れるようになってきま

す。在宅ではいつそうなるのかはわからないが、それが一般的な医者と家族の関係では

ないかなという気がしています。同じ医師として、医者の方も悔しかったろうなと思っ

てます。

土居コーディネーター:ありがとうございます。確かに治療の継続については思うとこ

ろもありますが、医者も、できるだけ自分の親あるいは子供を看取るつもりで診療する、

患者さんの家族と接していく、というところが根本であって、病院であれ在宅であれ一

番大切なことであると思います。ここまで、Aさん、Bさんの例を通じてシンポジスト

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の皆様からご意見をいただいてきましたが、基調講演をされた永島先生、ここまでの流

れで、在宅のスぺシャリストとして本日の総括としてのコメントをお願いしたいと思い

ます。

3.コメンテーター(永島医師)発言

難しい問題で、今後とも改善しないととけない所は多々あると思いますが、基本的に

はよりよい在宅看取り、最後によかったなあと思えるような在宅看取りを実践していく

ためにはやはり多職種連携が欠かせないと思います。在宅医は退院前のカンファレンス

から始まって、患者さんやご家族が不安を抱かないようにちゃんと病状説明して、これ

からの病気の進行について今後どうなるという説明をしておく。また同時に症状コント

ロールもしっかりやっていかなくてはなりません。良い話ではないので、なかなか口に

しずらい部分もあるのですが、説明のメリット、デメリットをよく考えて行います。デ

メリットとして不安になったり、うつになったりする場合もありますが、メリットとし

て、最後にやり残したことはないかとか最後の時間を家族と共有するとかの思いを引き

出すことができます。そういったところで、最後の人生の残りを本当に自分らしく過ご

して家族も十分関わることができるようになります。告知されていなかったりするとな

かなか病気のことに触れられなかったりする場合もあるので、多職種の連携を取りなが

ら説明をきちんとしておけば、病気に対して,死に対して家族も関わることができて家

族も安心することを日々の診療で実感しているところです。

在宅サービスはまだ完全のシステムではなく、在宅看取りを実践していく上で、誰か

が負担を感じたりとか、頑張っていたりとか決して楽に行くわけではありませんが、今

後よりよい在宅看取りを実践していくためにもまずは我々スタッフが在宅看取りにつ

いて理解をして、より良い連携をしていくことが大切であると思います。そしてそれを

病院のスタッフの人たちに広めていって、それから地域の人々に広めて、自宅でいい最

後が遅れるよ、在宅サービスってこういうのがあるんだよ、ということを広めていけば、

患者さんが本当に希望し納得して最期を迎えるという社会が自然とできてくると思い

ます。まだまだ連携ということは不十分ですが、これを機に皆様が密に連携を図ってい

くことがより良い在宅看取りにつながるのではないかと思っています。

土居コーディネーター:どうもありがとうございました。これにてシンポジウムを終わ

りにさせていただきますが、フロアの方から2つだけご質問またはコメントをお受けし

たいと思います。

4.フロアからのコメント

永谷医師のコメント:3月まで板倉病院にいて、今は山梨で在宅医療をやっている永

谷と申します。今日は久しぶりによいお話を聞かせていただきありがとうございました。

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今回の話の内容は大きく分けると3つに分けられると思います。一つは連携の問題、一

つは家族も含めてトータルペインの緩和の問題、もうひとつはサービス提供ではなくて

終末期のホスピタリティ供給の問題であると思です。連携に関しては、「地域における

医療介護の総合確保推進法」が 6 月 17 日に成立しましたので、各地域において行政に

もしっかり頑張ってもらわなければなりません。10 万人を核として行われるので、船

橋を東西南北で4つにわると大体それぞれ 10 万人くらいの対象者がいるわけです。船

橋には行政のひまわりネットワーク、南部在宅療養研究会、船橋地域福祉・介護・医療

推進機構もあることですから、医師会も巻き込んでしっかりやって頂きたい。家族に関

してはトータルペイン、特にスピリチュアルなペインをしっかり把握して如何に答えて

あげるかが重要であると思います。もう一点のサービス提供(ホスピタリティ提供)は

終末期には、医療の面が大きくなってくるので福祉系のCMには失礼だがなかなか難し

く、やはり看護師さんが主体となっていくのがいいのではないでしょうか。日本在宅ホ

スピス協会の小笠原先生が、看護師さん主体のCMを養成しようとしています。それが

新たな組織としてできる予定になっていることをご紹介しておきます。

野口歯科医師からのコメント:在宅療養されている方のお口の中は非常に汚い場合があ

ります。生死にはあまり関係ないかもしれませんが、歯周炎になって口臭がかなり強く

なってきて、それで介護がないがしろにされるのも困ります。在宅療養する場合、特に

口腔ケアを忘れないで頂きたいと思います。

5.矢走医師の追加発言:本当はしたくないのに在宅看取りを推進するという風潮があっ

て、もしそういうご家族がいたとしたら、辛かったらばやめてください。永島先生はそ

ういった方にはかなり長い時間をかけてカウンセリングしているそうですが、でも無理

ならばやめてください。短い期間でも在宅での看取りというのは燃え尽きてしまったり、

すごいエネルギーを必要とします。無理だと思ったら弱音を吐いていいと思います。そ

このところは是非言いたいところだったので最後に言わせてもらいます。ありがとうご

ざいました。

【感 想】

去る 7 月 26 日(土)午後2時、公益財団法人在宅医療助成勇美記念財団の助成によ

る公開シンポジウム「在宅看取りにおける各職種の立場から感じた連携の取り方につい

て」を開催した。開催した当日の午後はまさに猛暑日で、また船橋市のお祭りと重なる

という条件の悪い日であった。事前申し込み者数は 100 名を超えてはいたが定員の 200

名には及ばず、果たしてどれくらいの人が参加して下さるか正直なところ不安であった。

出足が遅かったが開始時間が近づくに連れて会場フロアに人がふえてきて、最終的に

100 名を超えて安堵した次第である。今回は船橋市健康福祉局長と、船橋市医師会長を

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来賓としてお招きした。健康福祉局長からご挨拶を頂いたが、医師会長は所用のため欠

席されたのが残念であった。

シンポジウムは2部構成で、永島医師による基調講演で始まり、次いでシンポジスト

による討論に入った。本シンポジウムは在宅看取りの経験者の一般の方をシンポジスト

に入れることが助成の必須条件であった。シンポジストを専門職だけにした場合、連携

の取り方等について語りだすとかなり細かくなってしまい、往々にして現実とは乖離し

てしまうこともあるので、振り返ってみると一般の方を必ず加えるという財団の意図は

極めて意味のあることであったと、後から思った次第である。

今回のシンポジウムではお二人の在宅看取り経験者に登壇して頂き、在宅で満足した

点、不満・不十分だった点について語って頂いた。それに基づいての在宅療養での連携

の取り方についてということで討論が進んだので、一般の参加者の方もわかりやすく、

また身近な話であると感じられたと思う。アンケートでも介護で悩んでおられる方がか

なり参加されており、シンポジウムを通じて在宅療養における連携の取り方についての

理解の一助となったものと信じている。

連携の取り方というタイトルであったが、今回のシンポジウムで特に感じたのは、連

携の取り方よりも、「情報をつなぐこと」、「情報をリアルタイムで共有すること」が最

も重要なことであるということであった。情報を共有すれば、各専門職の方々はそれぞ

れの立場で自分がやるべきこと、できることは自ずと見えてくるはずである。

シンポジストの精神科医である矢走先生が、最後にコメントとして追加された言葉

「頑張らないでください。無理だと思ったら在宅はやめてください。頑張ればあとで家

族が、自分が、うつ病になったり、燃え尽きてしまうこともあるのです」という、なん

でもかんでも在宅へという、在宅介護を奨励するかのような社会の風潮に警鐘を鳴らす

言葉が極めて印象的であった。確かに在宅看取りは亡くなられる方にとっては最良の選

択肢であるかもしれないが、亡くなったあとも生き続ける家族がいるということは忘れ

てはならない。

来年またチャンスがあれば、今回と同様に一般の方も交えて少し形式を変えたスタイ

ルでシンポジウムを開催したい。

本シンポジウムは公益財団法人在宅医療助成勇美記念財団の助成によって開催された。

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