2015・16・17年度内外経済見通し...(2015年初=100) (年/月) 65 70 75 80 85 90...

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Copyright Mizuho Research Institute Ltd. All Rights Reserved. 2015・16・17年度 内外経済見通し ~新興国減速に止まらず世界連鎖不況のリスクも~ 2016.2.16

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  • Copyright Mizuho Research Institute Ltd. All Rights Reserved.

    2015・16・17年度 内外経済見通し

    ~新興国減速に止まらず世界連鎖不況のリスクも~

    2016.2.16

  • 見通しのポイント

    1

    ○ 新興国経済の減速が先進国にも波及し、世界経済の見通しを大幅に下方修正

    ○ 原油安や中国を中心とした新興国経済の減速が世界経済や金融セクターへの不安につなが

    り、金融市場の混乱などを通じ企業や家計のマインドを委縮

    ○ 原油価格は低位推移、中国は緩やかな減速が続き、一段の下振れリスクに警戒

    ○ 世界的バランスシート調整の第3局面である新興国の債務問題から、金融市場の不安定性な

    どを通じて第4局面の世界連鎖不況に至るリスクも

    ○ 世界経済の下振れリスクが意識される中、米国は利上げ先送り、日欧は追加緩和へ 。G20に

    よる財政拡大を中心とした政策協調の可能性も

    ○ 日本経済は徐々に持ち直すが、下振れリスクに脆弱。海外経済の減速による景気下振れリス

    クが意識され、消費税増税が再度見送られることも

    ○ 物価が再びマイナスとなる中、日銀の追加緩和は政府と一体となった対応が重要

  • 《 構 成 》

    2

    Ⅰ.全体概要 P 3

    Ⅱ.海外経済 P 33

    (1)米国経済 P 34

    (2)ユーロ圏経済 P 41

    (3)アジア経済 P 46

    Ⅲ.日本経済 P 54

    Ⅳ.金融市場 P 68

  • Ⅰ.全体概要

    3

    ~世界経済に下振れリスク、金融収縮の連鎖に留意~

  • 全体概要 ~ 新興国の減速が先進国にも波及し、世界連鎖不況リスク

    4

    ○ 2016年の世界経済成長率(みずほ総合研究所予測対象の国・地域加重平均ベース)は、

    +3.1%と2年連続で低下(2014年:3.5%、2015年:3.2%)。2017年は先進国の持ち直しや資

    源国の悪化に歯止めが掛かることによって世界経済全体でも持ち直し

    ○ 米国はドル高や新興国経済減速の影響から景気の勢い鈍化、景気や雇用の下振れを背景

    に2016年内の利上げは見送り。ユーロ圏は低成長と低インフレが続き、ECBは追加緩和へ。

    日本も下振れリスクには脆弱で、日銀は更なる追加緩和

    ○ 新興国は当面減速基調。中国の景気実感は実質成長率が示すよりも弱い。その他新興国の

    回復テンポは弱く、ロシアやブラジルは2年連続マイナス成長

    ○ 新興国経済の減速が先進国にも波及しつつある中、リスクシナリオである世界連鎖不況に陥

    る可能性も。更なる新興国の減速や原油安が金融市場の一段の混乱や信用不安につなが

    るリスクに警戒

    ○ 個別の実体経済問題がクレジット市場を通じ金融セクターに波及、連鎖不安になるリスク内包

  • 世界経済は減速基調、持ち直しは2017年以降に

    5

    ◯ 予測対象地域計の成長率は、2015年に続いて2016年も減速し、持ち直しは2017年以降に後ずれ

    ‧ 2016年は、日米欧、アジア、オーストラリア、ブラジル、ロシアを下方修正し、世界全体では大幅な下方修正

    ‧ 2017年は、新興国の回復力は鈍いものの、先進国の持ち直しや資源国の悪化に歯止めが掛かり、世界全体でも持ち直し

    【 世界経済見通し総括表 】

    (注)予測対象地域計はIMFによる2013年GDPシェア(PPP)により計算。(資料)IMF、各国統計より、みずほ総合研究所作成

    (前年比、%) (前年比、%) (%ポイント)

    暦年 2013年 2014年 2015年 2016年 2017年 2015年 2016年 2015年 2016年

    (実績) (実績) (予測) (予測) (予測)

    予測対象地域計 3.3 3.5 3.2 3.1 3.6 3.3 3.6 ▲ 0.1 ▲ 0.5

    日米ユーロ圏 0.8 1.5 1.8 1.4 1.7 1.8 1.9 - ▲ 0.5

    米国 1.5 2.4 2.4 1.8 2.3 2.4 2.5 - ▲ 0.7

    ユーロ圏 ▲ 0.3 0.9 1.5 1.2 1.4 1.5 1.4 - ▲ 0.2

    日本 1.4 ▲ 0.0 0.4 0.5 0.6 0.6 1.0 ▲ 0.2 ▲ 0.5

    アジア 6.4 6.3 6.1 6.0 6.0 6.2 6.1 ▲ 0.1 ▲ 0.1

    中国 7.7 7.3 6.9 6.6 6.5 7.0 6.7 ▲ 0.1 ▲ 0.1

    NIEs 2.9 3.4 2.0 1.9 2.1 2.0 2.4 - ▲ 0.5

    ASEAN5 5.1 4.6 4.7 4.4 4.5 4.6 4.4 0.1 -

    インド 6.3 7.0 7.3 7.6 7.5 7.4 7.7 ▲ 0.1 ▲ 0.1

    オーストラリア 2.0 2.6 2.3 2.5 2.5 2.3 2.6 - ▲ 0.1

    ブラジル 3.0 0.1 ▲ 3.8 ▲ 3.5 0.0 ▲ 3.7 ▲ 2.5 ▲ 0.1 ▲ 1.0

    ロシア 1.3 0.7 ▲ 3.7 ▲ 3.3 0.5 ▲ 4.1 ▲ 0.4 0.4 ▲ 2.9

    日本(年度) 2.0 ▲ 1.0 0.7 0.9 0.3 1.0 1.5 ▲ 0.3 ▲ 0.6

    原油価格(WTI,$/bbl) 98 93 49 29 30 49 52 - ▲ 23

    (12月予測) (12月予測からの修正幅)

  • (1)新興国不安と世界経済の下振れリスク~ 新興国減速が先進国にも波及

    6

    ◯ 中国を中心とした新興国の減速が先進国にも波及し、世界経済全体が減速基調に

    ‧ 新興国の景況感低迷が続く中、先進国の景況感指数も低下傾向

    ‧ IMFは2016年1月の世界経済見通しで、2015年10月に続いて先進国、新興国とも2016年の成長率見通しを下方修正

    【 先進国・新興国の合成PMI 】 【 IMF世界経済見通しの推移 】

    (資料) Markitより、みずほ総合研究所作成 (資料)IMF “World Economic Outlook Update(January 2016)”より、みずほ総合研究所作成

    48

    50

    52

    54

    56

    58

    2013 14 15 16

    世界 先進国 新興国

    (Pt)

    拡張

    景気

    縮小

    (年)

    1.5

    2.0

    2.5

    3.0

    3.5

    4.0

    4.5

    5.0

    5.5

    14/10 15/01 15/04 15/07 15/10 16/01

    2015年予測 2016年予測

    新興国

    世界

    先進国

    (年/月)

    (%)

  • 年明け以降、中国不安・原油安に加え米国減速で金融市場が大混乱

    7

    【 新興国不安の波及経路 】

    (資料)みずほ総合研究所作成

    ◯ 金融市場のリスクオフモードの背景に、新興国の減速が世界経済全体の下押しにつながることへの警戒感

  • バランスシート調整が新興国に移行する中、世界連鎖不況の台頭

    8

    ◯ 当面新興国不安は拭えないが、最も警戒すべきなのは、新興国の減速が先進国にも波及し、世界連鎖不況に陥るリスク

    ‧ 世界経済は金融危機以降長期のバランスシート調整下にあり、新興国が債務調整下にある第3局面

    ―――バランスシート調整下にある新興国は、中国経済の減速や資源価格の下落などを通じて景気が下振れしやすい

    【 世界経済のバランスシート調整の変遷 】

    (資料) みずほ総合研究所作成

  • ハイイールド債の価格下落が進行、投資適格債への連鎖リスクにも警戒が必要

    9

    ◯ 社債市場では、ハイイールド債を中心とした価格下落が進行

    ‧ 投資適格級社債については底堅さを維持しているが、一部でスプレッド拡大の兆しも見られ、警戒が必要

    ‧ ハイイールド社債を業種別に見ると、エネルギー社債の下落が顕著。素材、ユーティリティ(電力等)など一部の業種がこ

    れにつられて価格が下落しつつある状況

    【 業種別ハイイールド債価格指数(ドル建て) 】【 社債価格指数の推移(ドル建て) 】

    (資料)Bloombergより、みずほ総合研究所作成 (資料)Bloomberg より、みずほ総合研究所作成

    92

    94

    96

    98

    100

    102

    104

    106

    15/01 15/04 15/07 15/10 16/01

    投資適格債

    ハイイールド債

    (2015年初=100)

    (年/月)

    65

    70

    75

    80

    85

    90

    95

    100

    105

    110

    115

    15/01 15/04 15/07 15/10 16/01

    (2015年初=100)

    (年/月)

    金融

    テクノロジー

    消費財ヘルスケア

    工業

    エネルギー

    通信

    ユーティリティ

    素材

  • 新興国債権の毀損が先進国を含めた金融システム不安につながる連鎖リスクも

    10

    ◯ 最大借入国である中国向け与信比率が高いのは米英。ブラジル・アルゼンチン・トルコ向けの最大与信国はスペイン

    ◯ ASEAN向けは日本、ロシア向けはフランスが各々最大の与信国

    (注) 1. 最終リスクベース。主要国(24カ国)から新興国向けのクロスボーダー与信(除く、新興国自国向け与信)。2. ASEANはベトナム、タイ、フィリピン、マレーシア、インドネシアの5カ国。

    (資料) BIS“International Banking Statistics”より、みずほ総合研究所作成

    スペイン34%

    米国

    21%

    イギリス15%

    日本10%

    フランス

    6%

    その他14%

    ブラジル

    352 bn$

    米国30%

    イギリス27%

    日本12%

    ドイツ8%

    フランス6%

    その他17%

    インド

    253 bn$

    日本30%

    イギリス18%台湾

    11%トルコ3%

    フランス3%

    その他35%

    ASEAN473 bn$

    イギリス23%

    米国12%

    台湾

    10%日本9%

    フランス

    6%

    その他40%

    中国

    733 bn$

    フランス

    21%

    イタリア15%

    米国12%

    オースト

    リア

    10%

    日本9%

    その他33%

    ロシア

    120 bn$

    【 主要新興国・国際借入残高(15年9月末時点) 】

    スペイン32%

    フランス13%

    ギリシャ11%

    イギリス10%

    米国8%

    その他26%

    トルコ

    258 bn$

    イギリス

    67%

    米国12%

    日本7%

    フランス5%

    ドイツ3%

    その他6%

    南アフリカ

    104 bn$

    スペイン55%米国

    17%

    イギリス16%

    オランダ4%

    ドイツ

    3%その他

    5%

    アルゼンチン

    38 bn$

  • 欧銀のデレバレッジと経営問題の背景にある規制対応・不良債権問題からの波及リスク

    11

    ◯ 金融規制対応や中堅・中小銀行の不良債権問題が、ユーロ圏で銀行貸出が伸び悩む「供給側」の理由

    ‧ 今後、規制に絡んだ貸出圧縮は限定的とみられるも、南欧における不良債権問題の解決には時間がかかるとみられる

    ――― 中小企業の中には、資金を十分に獲得できず正常な企業活動の足かせとなっているところも

    【 金融規制に係るユーロ圏銀行の対応 】

    (注)1.金融規制に関連して、「リスク資産・貸出を増加させた」と回答した銀行の割合から「減少させた」と回答した銀行の割合を差し引いた。

    2.2016H1は銀行の見通し。それ以外は実績値。(資料) ECBより、みずほ総合研究所作成

    【 ユーロ圏銀行の不良債権比率と資産・貸出動向 】

    (注) 2014年のECB包括審査の対象行(130行)のうち、2014年・15年の不良債権比率が公表されている64行が上記図表の対象。調査時点は2015Q3で、未公表の場合には2014年暦年。縦軸(不良債権比率、貸出残高)は各分位での中央値。

    (資料) Bloombergより、みずほ総合研究所作成

    ▲ 35

    ▲ 30

    ▲ 25

    ▲ 20

    ▲ 15

    ▲ 10

    ▲ 5

    0

    5

    10

    H1 H2 H1 H2 H1 H2 H1 H2 H1

    2012 13 14 15 16

    リスク資産

    うち、平均的リスクの貸出

    うち、相対的にリスクの高い貸出

    (DI、%pt)

    増加

    ←→

    減少

    (半期)

    (年)

    ▲ 4

    ▲ 2

    0

    2

    4

    第I分位 第Ⅱ分位 第Ⅲ分位 第Ⅳ分位 第Ⅴ分位

    ほぼ全てが伊、西、ギリシャ、キプロス、アイルランドの銀行

    不良債権比率が低い ← → 不良債権比率が高い

    (貸出残高、前年比%)

    0

    5

    10

    15

    20

    第I分位 第Ⅱ分位 第Ⅲ分位 第Ⅳ分位 第Ⅴ分位

    中堅・中小行で

    不良債権比率が高い

    資産残高が少ない ← → 資産残高が多い

    (不良債権比率、%)資産残高別の不良債権比率

    不良債権比率別の貸出動向

  • (2)原油価格~ 供給過剰を背景に軟調な展開

    12

    ◯ 原油相場はWTI原油が一時20ドル台まで下落

    ‧ 供給過剰を背景に下落トレンドの続く原油相場は、2016年初の世界同時株安を受けて一段安の展開

    ‧ 新興国経済の減速を背景にした株と原油の値下がりが、さらに新興国の減速懸念を強める株安・原油安のスパイラル

    ◯ 原油の供給過剰は、生産調整の遅れから2016年中も続く可能性が高い

    ‧ 米国の原油生産は増産に歯止めがかかったものの、依然高水準を維持

    ‧ OPECに至っては超過供給が続く中でも増産傾向にあり、さらに経済制裁を解除されたイランが今後増産する見通し

    【 原油相場と需給バランス 】 【 原油生産の推移 】

    (資料)EIAより、みずほ総合研究所作成 (資料)OPEC、EIAより、みずほ総合研究所作成

    ▲2.0

    ▲1.5

    ▲1.0

    ▲0.5

    0.0

    0.5

    1.0

    1.5

    2.0

    2.5

    3.0

    3.5

    4.0

    20

    30

    40

    50

    60

    70

    80

    90

    100

    110

    120

    130

    140

    150

    12 13 14 15 16

    原油の在庫変動(右目盛)

    WTI(左目盛)

    ブレント ( 〃 )

    (ドル/バレル)

    (年)

    (100万バレル/日)

    2012

    OPEC

    (左目盛)

    サウジアラビア

    (右目盛)

    米国

    (右目盛)

    旧ソ連

    (右目盛)

    2

    4

    6

    8

    10

    12

    14

    16

    18

    18

    20

    22

    24

    26

    28

    30

    32

    34

    03 04 05 06 07 08 09 10 11 12 13 14 15 16 17 18

    (100万バレル/日)

    (年)

    (100万バレル/日)

    2003

  • 原油:生産調整の鍵を握る米国とイラン

    13

    ◯ 米国とイランを睨んで減産に踏み出せないサウジアラビア

    ‧ サウジアラビアは米国の減産を促す意図から高水準の原油生産を維持

    ‧ 原油輸出の再開で影響力を増すイランへの対抗もサウジアラビアが減産できない大きな要因

    ◯ 米国では足元で増産に歯止め。今後は徐々に減産に

    ‧ 需給の緩みを示す高水準の米原油在庫

    ‧ ただし、米国では原油掘削の減少が続いており、原油生産はピークアウトへ

    【 米国の原油在庫 】 【 米国の原油掘削と原油生産 】

    (資料)Bloombergより、みずほ総合研究所作成 (資料)EIAより、みずほ総合研究所作成

    300

    350

    400

    450

    500

    550

    1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12

    2014年

    2015年

    2016年

    (100万バレル)

    (月)

    2009年~2014年の

    原油在庫レンジ0

    200

    400

    600

    800

    1,000

    1,200

    1,400

    1,600

    1,800

    6

    7

    8

    9

    10

    13 14 15 16

    (100万バレル/日)

    (年)

    (稼働数)

    米国の原油掘削装置稼働数(右目盛)

    米国の原油生産(左目盛)

    2013

  • 原油:米国の減産効果を減殺するイランの輸出再開。2016年は30ドル相場が続く見通し

    14

    ◯ 米国産原油のピークアウトを受け、原油相場は底打ちへ

    ‧ 2016年の原油相場は、引き続き新興国懸念による原油相場の下押しが頻発するリスクを抱えながらの軟調な展開

    ‧ しかし、米国では原油生産の過剰度合いが需要対比で徐々に弱まるものと予想

    ◯ 底打ち後も、2016年は30ドル台での推移を予想

    ‧ イランの増産が米国の減産効果を減殺するため、持ち直しのペースは緩慢。新興国懸念も上値が重い一因に

    ‧ ただし、一部の産油国が模索する協調減産が実現すれば、持ち直しテンポがペースアップする可能性もあり留意が必要

    【 原油相場の見通し 】 【 米国とイランの原油生産 】

    (資料)Bloombergより、みずほ総合研究所作成 (注)EIAによる米国産原油の生産予想をベースにしたシミュレーション(資料)EIA、IEAより、みずほ総合研究所作成

    0.0

    0.5

    1.0

    1.5

    2.0

    2.5

    3.0

    13 14 15 16

    イラン

    米国

    2013年1月以降の変化

    (100万バレル/日)

    (年)2013

    実績 予測

    10

    20

    30

    40

    50

    60

    70

    80

    90

    100

    110

    120

    130

    10 11 12 13 14 15 16 17 18

    (ドル/バレル)

    (年)

    予想レンジ

    24ドル~38ドル

    2010

  • 0102030405060708090100110120130140150160

    90 95 00 05 10 15

    ブレント

    WTI

    (ドル/バレル)

    (年)1990 2000

    原油:スーパーサイクルの終焉、原油安経済に

    15

    ◯ 原油相場は2000年代半ば以降のスーパーサイクルが終焉

    ‧ スーパーサイクルの根底には、急速な工業化・都市化を実現した中国に象徴される新興国の高成長

    ‧ 高いエネルギーコストを負担しても、資源需要を拡大させた新興国が資源高を牽引

    ◯ 商品相場の下落は、資源輸入国に恩恵をもたらす一方、原油高・資源高に対応した経済・金融構造にはリスク要因に

    ‧ 経済成長がペースダウンしていた新興国で、原油急落後に通貨安が加速したのは、80~90年代と類似する面がある

    (資料)Bloombergより、みずほ総合研究所作成

    【 原油相場の長期推移 】

    新興国ブーム

  • 原油:中東の財政悪化によるオイルマネーの縮小がグローバルマネーにも影響

    16

    ◯ 原油安に伴う産油国の財政赤字拡大・外貨準備減に留意。財政赤字穴埋めのためオイルマネーが縮小の可能性

    ‧ 原油収入の減少により、産油国の財政赤字が拡大。政府歳出削減は成長率の鈍化要因に

    ――― 特に、サウジアラビア・バーレーン・オマーンは財政赤字がGDP比2桁まで拡大

    ‧ 昨年半ば以降の原油安を境にしてSWFの資産残高は減少傾向。オイルマネーの縮小は金融市場が弱含む一因に

    【 中東諸国の財政赤字 】

    (注) 赤字表記は、GDP比2桁の財政赤字。(資料) IMFより、みずほ総合研究所作成

    【 石油ガス関連SWFの資産残高 】

    (注)2014/6との比較。(資料)Sovereign Wealth Fund Instituteより、みずほ総合研究所作成

    ▲800

    ▲600

    ▲400

    ▲200

    0

    200

    400

    14/9 14/12 15/3 15/6 15/9 15/12

    その他

    石油ガス関連

    SWFの資産残高

    (億ドル)

    (年/月)

    年 2012 2013 2014 2015 2016

    サウジアラビア 12.0 5.8 ▲ 3.4 ▲ 21.6 ▲ 19.4

    UAE 10.9 10.4 5.0 ▲ 5.5 ▲ 4.0

    バーレーン ▲ 3.2 ▲ 4.3 ▲ 5.7 ▲ 14.2 ▲ 13.9

    オマーン 4.7 3.2 ▲ 1.5 ▲ 17.7 ▲ 20.0

    カタール 14.2 20.7 14.7 4.5 ▲ 1.5

    クウェート 34.7 34.0 26.3 1.3 0.1

    イラン ▲ 0.3 ▲ 0.9 ▲ 1.1 ▲ 2.9 ▲ 1.6

    (GDP比、%)

  • (3)各国動向~ 中国:GDP成長率は実質では小幅減速だが、名目と実質の逆転続く

    17

    ◯ 10~12月期の実質GDP成長率は前年比+6.8%と、小幅な減速にとどまるも(7~9月期は同+6.9%)、名目GDP成長率

    は実質GDP成長率を2四半期連続で下回り、10~12月期には同+6.0%にまで低下(7~9月期は同+6.2%)

    ◯ なかでも、第2次産業の名目GDP成長率の低下が顕著で、10~12月期には同+0.2%まで成長率が低下

    ‧ 資源価格の下落、国内の過剰在庫や過剰生産能力に起因する生産者物価の大幅な下落が、第2次産業の名目GDP成

    長率の低迷の主因

    【 中国のGDP成長率(名目・実質比較) 】

    (資料) 中国国家統計局、CEIC Dataより、みずほ総合研究所作成

    【 中国の物価上昇率 】

    (資料)中国国家統計局、海関総署より、みずほ総合研究所作成

    ▲ 16

    ▲ 14

    ▲ 12

    ▲ 10

    ▲ 8

    ▲ 6

    ▲ 4

    ▲ 2

    0

    2

    4

    6

    2012 13 14 15 (年)

    CPI

    PPI

    輸入価格指数

    (前年比、%)

    0

    2

    4

    6

    8

    10

    12

    14

    2012 13 14 15

    実質GDP(全体)

    名目GDP(全体)

    名目GDP(第2次産業)

    (前年比、%)

    (年)

    逆転

  • 中国:人民元安進行の背景

    18

    ◯ 対ドル人民元レートは、2015年末より元安が進行。2016年入り後、元安ペースが加速

    ‧ 1月初旬に基準値が前日参照値よりも元安に設定されたこと等が、当局による元安容認と捉えられ、大幅な元安が進行

    ◯ オフショア人民元市場で売りが広がり、オンショア相場とのかい離が広がるなど、市場における元安期待が高まった

    ‧ ①中国の内外需の弱さをうけた、元安誘導による輸出てこ入れの観測の高まり、②米中金利差縮小、③元安容認と捉え

    られる中国当局の為替政策、などがこれまでの元安期待を形成してきた要因

    【 対ドル人民元レート(CNY、CNH) 】 【 これまでの元安期待の背景 】

    (注) 直近は2月5日。CNY=オンショア人民元相場。CNH=香港オフショア人民元相場。(資料) Bloombergより、みずほ総合研究所作成 (資料) みずほ総合研究所作成

    元安誘導による輸出てこ入れ観測

    米中金利差縮小

    対ドルでの元安容認姿勢の現れ?

    元安期待の高まり

    ▲ 3

    ▲ 2

    ▲ 1

    0

    1

    2

    3

    4

    5

    6

    76.0

    6.1

    6.2

    6.3

    6.4

    6.5

    6.6

    6.7

    6.8

    6.9

    7.013/01 13/07 14/01 14/07 15/01 15/07 16/01

    CNY

    CNH

    (元/ドル)

    元高

    元安

    (年/月)

    かい離率(右目盛)

    ※マイナスはCNHがCNYに

    比べて元安であることを示す

    (%)

    中国の内需・外需の弱さ

    中国の金融緩和&米国の利上げ期待

    中国金融当局の為替レート運営

  • 中国:人民元安のメリットとデメリット

    19

    ◯ 中国にとっての人民元安のメリットは、輸出促進効果と、そこから波及する内需押し上げ効果

    ‧ ただし、過剰投資を抱えているため、輸出から投資への波及効果は限定的

    ◯ 一方、元安のデメリットは多様で、政治的にも看過しづらいものが多い

    ‧ 元安による輸入インフレや外貨建て債務の返済負担増などのデメリットは比較的軽微で済むとみられるが、貿易摩擦の

    再燃、新興国経済悪化による輸出環境悪化などが懸念材料

    ‧ 中国が議長国を務めるG20やSDR通貨入りを控える2016年秋は、政治的配慮から大幅元安の回避が模索されやすい

    【 人民元安のメリットとデメリット 】

    (資料) みずほ総合研究所作成

    考えられる影響 影響の大小 左記評価の理由

    メリット 輸出促進効果とそれによる内需押し上げ効果

    △国内の過剰資本ストック圧力が大きく、輸出による投資や生産の押し上げ効果が低下しているため

    デメリット輸入インフレ △ 原油など資源価格の下落幅が大きく、輸入インフレは起こりにくい環境

    外貨建て債務の返済負担増加 △外貨建て債務の規模は対GDP比5%程度と小さく、外貨準備高の短期対外債務比は約6倍(2014年末)と高水準

    新興国の通貨下落・資本流出による輸出環境悪化

    ○人民元安をきっかけに新興国経済が悪化。新興国(※)向け輸出は中国の輸出の約35%を占め、影響大 ※IMFの基準による

    貿易摩擦の再燃 ○2016年9月のG20では中国が議長国に。「元安が貿易摩擦を生んでいる」との国際的な批判を回避しようとする可能性大

    人民元国際化に不利 ○2016年10月から、SDR通貨への人民元の組み入れ開始。行き過ぎた元安やレートの不安定性は、人民元国際化に不利

  • 中国:大規模な資本流出が続いた場合、介入による為替安定には限界

    20

    ◯ 大規模な資本流出が続いた場合、介入による為替安定には限界あり。外貨準備高の適正水準維持の必要があるため

    ‧ IMF(2015)の基準で計算すると、中国の外貨準備高の適正水準は2015年7~9月期時点で約1.6兆~2.7兆ドル

    ――― 資本規制が緩和されているほど、適正な外貨準備の規模も増加

    ‧ 2015年12月レベルの大幅な外貨準備減少(0.1兆ドル)が毎月続くと、8カ月~1年半で外貨準備が適正水準を割ることに

    ◯ 為替介入に加えて、一時的な外貨管理厳格化等によって資本流出の加速を防ぎ、大幅な元安を回避する可能性も

    ‧ ただし、規制強化への警戒感から、かえって資本流出が加速するリスクもあるため要注意

    【 外貨準備高 】 【 左記推計根拠 】

    (資料)IMF , Assessing Reserve Adequacy- Specific Proposals, April 2015より、みずほ総合研究所作成

    (注) 輸出額は2014年10月~2015年9月の合計額。M2、外貨建て短期対外債務、その他債務は2015年9月末の残高。外貨建て短期対外債務は2015年から入手できないため、短期対外債務額×対外債務全体に占める外貨建て債務の割合で算出。

    (資料) IMF , Assessing Reserve Adequacy- Specific Proposals, April 2015、中国海関総署、中国人民銀行、国家外貨管理局より、みずほ総合研究所作成

    ①金額(兆ドル)

    ②割合(%)

    ①×②(兆ドル)

    対応する資本流出リスク

    輸出額 2.3 10 0.23外需減少、貿易ショックによる外貨獲得力低下リスク

    M2 21.4 5~101.07~2.14

    国内資本の逃避リスク

    外貨建て短期対外債務

    0.54 30 0.16 債務の借り換えリスク

    その他債務 0.8 20 0.16 債券・株式の流出リスク

    合計 1.6~2.7

    3.5

    2.7

    1.6

    0.0

    0.5

    1.0

    1.5

    2.0

    2.5

    3.0

    3.5

    4.0

    4.5

    2011 12 13 14 15

    実際の外貨準備高

    適正な外貨準備高水準①(資本規制なし)

    適正な外貨準備高水準②(資本規制あり)

    (兆ドル)

    為替介入の余地は

    約0.8兆~1.9兆ドル

    (年)

  • 中国:資本流出加速による株価下落リスクにも要注意

    21

    ◯ 株価下落を起点としたシステミックリスクの可能性は低減

    ‧ 株式担保融資を利用している企業などが株価下落により株式の強制処分を迫られ、株価が一段安となる可能性も指摘さ

    れているが、株式担保融資の推定残高は7,000億元(対GDP比1.0%)と小規模

    ‧ 信用取引残高もピーク(2015年6月18日)対比6割減の約9,000億元にまで縮小(2月1日時点、対GDP比1.3%)

    ◯ ただし、元安期待を背景とした資本流出懸念の高まり、政策期待の剥落などにより、株価が一段と下がり、消費者マインド

    に一定の悪影響を与える恐れはあり

    【 人民元対ドルレートと上海総合指数 】

    (注)直近は2月5日。(資料)CEIC Dataより、みずほ総合研究所作成

    【 中国株式市場の信用取引残高 】

    (注)上海・深圳市場合計。直近は2月4日。(資料)CEIC Dataより、みずほ総合研究所作成

    6.15

    6.25

    6.35

    6.45

    6.55

    6.6515/01 15/03 15/05 15/07 15/09 15/11 16/01

    CNY

    (年/月)

    (元/ドル)

    元高

    元安

    第1次人民元ショック

    第2次人民元ショック

    2,300

    2,800

    3,300

    3,800

    4,300

    4,800

    5,300

    15/01 15/03 15/05 15/07 15/09 15/11 16/01

    上海総合指数

    (年/月)

    (1990年12月19日=100)

    0.0

    0.5

    1.0

    1.5

    2.0

    2.5

    3.0

    3.5

    4.0

    4.5

    5.0

    0

    5,000

    10,000

    15,000

    20,000

    25,000

    15/01 15/04 15/07 15/10 16/01

    信用取引残高(左目盛)

    対時価総額比率(右目盛)

    (億元) (%)

    (年/月)

  • その他新興国:新興国リスクに対する市場の見方はさらに悪化

    22

    ◯ 2015年末時点で特にリスクが高いと指摘した「懸念4カ国」「次の5カ国」を含め、その後も新興国のCDSプレミアムは上昇

    ‧ 「懸念4カ国」の一つであるベネズエラでは、輸出の9割を占める原油の価格下落を受け、デフォルト懸念が一層強まる

    ――― 資源価格下落の影響を受けやすいメキシコやロシアなど資源国のCDSプレミアムも上昇傾向

    ‧ 既に、ナイジェリアは世銀・アフリカ開銀に資金支援要請も

    【 新興国のリスク評価(2015年末時点) 】 【 新興国のCDSプレミアム変化 】

    総合評価 景気判断 インフレ率 経常収支 政治・ 外貨準備 債務負担 中国減速 政策余地国内情勢 の影響

    ベネズエラ D D D C D D - - C

    アルゼンチン D D D B C D - D C

    トルコ D C C D C D C D B

    ブラジル D D D D C B C C D

    インドネシア C C C C C C B D C

    ロシア C D D A B B C D B

    南アフリカ C D A D B D A C C

    マレーシア C C A A C D B D C

    ベトナム C B B C B D - - C

    メキシコ B B A C B B B D C

    タイ B C B A C B B D B

    中国 B C B A B B C - B

    台湾 B D B A C A - - B

    韓国 B C B A B A B C B

    フィリピン B B B A B B - C B

    インド B B A B B A A B C

    (資料)各国統計、IMF、世界銀行、CEICより、みずほ総合研究所作成

    (注) 2015年末以降のソブリン債・5年物CDSプレミアムの変化。ただし、インドはState Bank of IndiaのCDSプレミアム。※※は左図におけるD評価、※は同C評価の国。

    (資料)Datastreamより、みずほ総合研究所作成

    n/a 台湾

    ブラジル ※※

    マレーシア ※

    ベトナム ※

    インド

    韓国

    インドネシア ※

    フィリピン

    南アフリカ ※

    トルコ ※※

    タイ

    中国

    ロシア ※

    メキシコ

    0 10 20 30 40 50 60 70 (bp)

    n/a アルゼンチン ※※

  • その他新興国:新興国からの資金流出リスクが強まる

    23

    ◯ 2016年に入り新興国通貨が一段安の展開

    ‧ 年初の世界同時株安を受けて、新興国通貨はドルに対して下落

    ‧ これまでに通貨防衛のドル買い介入で各国の外貨準備は減少してきたが、一部の国ではさらに減少

    ‧ 特に通貨安が進んだ中南米では、一部の国が利上げを実施

    ◯ 直近で米利上げペース後退観測から新興国通貨の下落圧力はいったん落ち着いたが、リスクオフモードは続く状況

    ‧ 多くの新興国で対ドルレートが落ち着いたなか、引き続き中南米では資金流出が進み為替相場は下落

    【 新興国通貨の対ドル騰落率 】 【 新興国の外貨準備 】

    (注)※※は前頁左図におけるD評価、※は同C評価の国。(資料)Bloombergより、みずほ総合研究所作成

    (注)※※は前頁左図におけるD評価、※は同C評価の国。(資料)Bloombergより、みずほ総合研究所作成

    アルゼンチン ※※

    メキシコ

    ロシア ※

    南アフリカ ※

    インド

    韓国

    フィリピン

    台湾

    トルコ ※※

    中国

    ブラジル ※※

    ベネズエラ ※※

    インドネシア ※

    タイ

    ベトナム ※

    マレーシア ※

    ▲8 ▲6 ▲4 ▲2 0 2 4 6

    1/31→2/12年末→1/31

    (%)

    通貨高通貨安

    ベトナム※ n/a ベネズエラ ※※

    マレーシア ※

    アルゼンチン ※※

    インドネシア ※

    メキシコ

    中国

    南アフリカ ※トルコ ※※

    ロシア ※

    ブラジル ※※

    タイ

    韓国

    台湾

    フィリピン

    インド

    ▲40 ▲30 ▲20 ▲10 0 10 20

    2015/10末以降2014/12末→2015/10末

    (%)

  • 0.0

    0.5

    1.0

    1.5

    2.0

    2015 2016 2017

    (前年比%)

    米国:2016年は物価に加え景気・雇用の下振れが顕在化。利上げの環境整わず

    24

    ◯ 2016年は新興国の減速、原油安、ドル高の影響が国内経済に拡大。利上げの環境整わず、様子見が続く公算

    ‧ すでに1月FOMCでは、景気・雇用に関するリスク判断を示せない状況に。国際金融市場の不安定化が背景に

    ‧ 海外ショックに加え、欧米金融システムへの不安も高まる中、輸出や設備投資の悪化が持続し、雇用に波及

    ‧ 雇用減速と低インフレの中、2016年は利上げの環境が整わず、金融政策は様子見となる公算大

    (資料) 米国労働省より、みずほ総合研究所作成

    【 非農業部門雇用者数の推移 】 【 インフレ率の推移 】

    予測

    (資料) 米国商務省より、みずほ総合研究所作成(年・四半期) (年・四半期)

    コア(点線)

    ヘッドライン

    0

    50

    100

    150

    200

    250

    300

    2015 2016 2017

    (千人) 予測

  • 米国:輸出、設備投資の悪化で、2016年見通し大幅下方修正

    25

    ◯ ドル高・新興国経済の減速による輸出、設備投資への下押しは2016年いっぱい続く見通し

    ‧ 設備投資の弱さはシェール関連以外にも幅広く広がる見込み

    ‧ 暦年成長率が2%を割り込むのは2013年(前年比+1.5%)以来(みずほ総合研究所予測値:同+1.8%)

    【 実質輸出(左)と実質設備投資(右)の予測 】

    (資料)米国商務省より、みずほ総合研究所作成

    【 実質GDP成長率の予測 】

    (資料)米国商務省より、みずほ総合研究所作成

    ▲ 8

    ▲ 6

    ▲ 4

    ▲ 2

    0

    2

    4

    6

    8

    10

    12

    1 2 3 4 1 2 3 4 1 2 3 4 1 2 3 4

    2014 2015 2016 2017

    (年/四半期)

    予測

    (前期比年率、%)

    ▲ 8

    ▲ 6

    ▲ 4

    ▲ 2

    0

    2

    4

    6

    8

    10

    12

    1 2 3 4 1 2 3 4 1 2 3 4 1 2 3 4

    2014 2015 2016 2017

    予測

    (前期比年率、%)

    (年/四半期)

    0.6

    3.9

    2.0

    0.7

    1.61.9 2.0 2.2 2.2 2.4

    2.5 2.4

    ▲ 3

    ▲ 2

    ▲ 1

    0

    1

    2

    3

    4

    5

    1 2 3 4 1 2 3 4 1 2 3 4

    2015 2016 2017

    純輸出 政府支出 在庫投資

    設備投資 住宅投資 個人消費

    GDP

    (年/四半期)

    (前期比年率、%)

    予測

  • 米国:景気拡張期間は前回を超える長さになり景気後退不安も

    26

    ◯ 途切れ途切れながら、前回の73カ月を超えた景気拡張期間

    ‧ 景気拡張期の長さに加えて気がかりなのは、過去の拡張局面に比べた場合の成長率の低さ

    【 米国の実質GDP成長率の推移 】

    (注)網掛けは景気後退期。(資料)米国商務省、NBERより、みずほ総合研究所作成

    ▲10

    ▲8

    ▲6

    ▲4

    ▲2

    0

    2

    4

    6

    8

    10

    12

    1980 85 90 95 2000 05 10 15

    (前期比年率%)

    92カ月 120カ月 73カ月今年2月で

    80カ月目

    (年)

  • ユーロ圏:ECBは3月に追加緩和を実施する公算大

    27

    ◯ ECBは3月にも預金金利引き下げと、QE購入額の増額を実施すると予想

    ‧ 1月の政策理事会では、3月に金融政策の方針を「再検討」することを明言し、先行きの追加緩和を強く示唆

    ――― 預金金利は▲0.4%へ引き下げ、購入金額は700億ユーロ/月へ増額すると予想

    ‧ ECBが重視する中期期待インフレ率(5年先スタート5年物)は、1.4%台にまで低下

    ――― QE導入を決定した2015年初を下回る推移に

    【 ECBの政策金利と資産残高の見通し】 【 期待インフレ率の推移 】

    (注)インフレスワップ・フォワードレートを用いた推計値。「T年後スタートN年物」とは、T年後からN年間の平均インフレ率の市場参加者の予測値を示す。

    (資料)Bloombergより、みずほ総合研究所作成

    (資料)ECB、Eurostatより、みずほ総合研究所作成

    0.0

    0.2

    0.4

    0.6

    0.8

    1.0

    1.2

    1.4

    1.6

    1.8

    2.0

    0.0

    0.5

    1.0

    1.5

    2.0

    2.5

    3.0

    3.5

    4.0

    4.5

    5.0

    2011 12 13 14 15 16 17 18 19 20

    ECB資産残高

    コアCPI(前年比、右目盛)

    (兆ユーロ)

    (見通し)

    (年)

    (前年比、%)

    QE増額

    テーパリング

    開始

    0.0

    0.5

    1.0

    1.5

    2.0

    2.5

    5年後スタート 5年物 1年後スタート 1年物

    2年後スタート 1年物 4年後スタート 1年物

    (%)

    (年/月)

  • 日本:マイナス金利導入、当座預金を三層に分け、金融機関収益への影響軽減を企図

    28

    ◯ 日銀は、1月の金融政策決定会合(1/28・29)でマイナス金利政策の導入を決定

    ◯ 金融機関の収益悪化を回避するため、マイナス金利が課される部分を超過準備の一部に限定する階層構造を採用

    ‧ 既存の超過準備(基礎残高:下図①)に対応する部分は+0.1%を付利し、新たに超過準備として積まれる部分(政策金利

    残高:下図③)を▲0.1%に引き下げ。マイナス金利部分を限定的とすることで超過準備全体から得られる付利をプラスの

    水準に維持する仕組み

    【 当座預金の三層構造と政策金利残高見通し 】 【 業態別日銀当座預金残高(2015年12月) 】

    (資料) 日本銀行より、みずほ総合研究所作成(注) 準備預金制度適用先。付利:付利0.1%での利息収入(資料) 日本銀行より、みずほ総合研究所作成

    基礎残高(2015年超過準備平残)(210兆円:+0.1%)

    マクロ加算残高(所要準備+貸出支援基金等)(40兆円:0%)

    政策金利残高(10~30兆円:▲0.1%)

    日銀当座預金残高

    (年間80兆円ペースで増加)

    2016年2月見込み 2016年末

    250兆円

    10兆円

    マクロ加算残高増加分(0%)

    (兆円)

    準備預金残高

    所要準備額

    超過準備額

    付利

    都市銀行 98.2 3.8 94.4 0.09

    地方銀行 19.0 1.7 17.2 0.02

    第二地銀 4.5 0.2 4.3 0.00

    外国銀行 21.6 0.0 21.5 0.02

    信託銀行 18.1 0.5 17.6 0.02

  • 日本:追加緩和策は政府と一体の姿勢、現環境のマイナス金利依存も限界

    29

    ◯ 民間投資家の担保需要等による国債保有ニーズを踏まえると、日銀の国債買入れは2018年以降困難となる可能性。量

    の拡大に限界がある中、「量」と「金利」政策の両立は徐々に困難となると予想

    ◯ 中国・新興国経済の日本経済に与える影響や政府の消費増税判断をにらみ、年前半に追加緩和が行われる可能性

    ‧ 追加緩和策は、政府との一体の対応姿勢に。昨年12月の量的緩和補完措置を踏まえ、ETF、REIT買入れ増額も選択肢

    ‧ 米国の減速で世界に支えが不在(浮き輪がない)のなかでのマイナス金利依存は、通貨戦争スパイラル不安も

    【 日銀以外の民間投資家の国債保有残高 】

    (注)日銀の国債買入れは年間80兆円増額ペースで想定。国債発行額は2016年度計画ベース。

    (資料) みずほ総合研究所作成

    【 当面の政治・経済日程 】

    (資料) みずほ総合研究所作成

    日付 主なイベント

    3/10 欧:ECB政策理事会

    3/14・15 日:金融政策決定会合

    3/15・16 米:FOMC

    4/1 日:日銀短観(3月調査)

    4/21 欧:ECB政策理事会

    4/26・27 米:FOMC

    4/27・28 日:金融政策決定会合(展望レポート)

    5/26 G7首脳会議(日本・伊勢志摩)

    6/2 OPEC総会

    6/2 欧:ECB政策理事会

    6/14・15 米:FOMC

    6/15・16 日:金融政策決定会合

    7/1 日:日銀短観(6月調査)

    7/21 欧:ECB政策理事会

    7/26・27 米:FOMC

    7/28・29 日:金融政策決定会合(展望レポート)

    7(月内) 参議院選挙

    0

    100

    200

    300

    400

    500

    600

    2015 16 17 18 19 20

    全体

    残存10年以下

    (年)

    (兆円)

    残存1年超

    5年以下

    推計担保需要

  • 世界の金利「水没」、米国浮き輪低下で世界通貨戦争の不安

    30

    ◯ 欧州と日本のマイナス金利による通貨切り下げに加えて、中国の人民元切り下げ不安

    ‧ 新興国の浮き輪は沈没、2016年に米国の浮き輪は浮力低下で世界中に歯止めなき通貨戦争不安

    ‧ 米国の浮力低下で、マイナス金利による代替運用手段の喪失とキャッシュ化による信用収縮スパイラル不安も

    【 世界の金利水没マップ 】

    1年 2年 3年 4年 5年 6年 7年 8年 9年 10年 11年 12年 13年 14年 15年 20年 30年 40年

    スイス -0.83 -0.97 -0.96 -0.85 -0 .76 -0 .65 -0 .58 -0 .44 -0 .34 -0 .28 -0.24 -0.20 -0.14 -0.08 -0 .02 0.11 0.28 0.31

    日本 -0.17 -0.14 -0.14 -0.14 -0 .12 -0 .12 -0 .10 -0 .06 0.01 0.09 0.15 0.21 0.27 0.33 0.39 0.82 1.16 1.30

    ドイツ -0.51 -0.52 -0.47 -0.41 -0 .31 -0 .26 -0 .16 -0 .05 0.11 0.24 0.27 0.31 0.35 0.38 0.42 0.68 0.93

    オランダ -0.44 -0.49 -0.43 -0.38 -0 .30 -0 .17 -0 .06 0.10 0.22 0.38 0.42 0.45 0.49 0.52 0.56 0.92 1.08

    スウェーデン -0.50 -0.61 -0.53 -0.44 -0 .14 -0 .01 0.12 0.29 0.40 0.50 0.58 0.66 0.73 0.81 0.89 1.27

    オーストリア -0.40 -0.45 -0.40 -0.30 -0 .25 -0 .11 0.08 0.23 0.39 0.56 0.59 0.62 0.64 0.67 0.70 0.91 1.33

    フィンランド -0.47 -0.47 -0.41 -0.32 -0 .18 -0 .11 0.06 0.18 0.33 0.57 0.66 0.76 0.85 0.94 1.04 1.08 1.18

    フランス -0.41 -0.42 -0.34 -0.26 -0 .15 -0 .03 0.11 0.23 0.44 0.62 0.72 0.83 0.94 1.05 1.15 1.30 1.61

    デンマーク -0.26 -0.24 -0.15 -0.07 0.02 0.09 0.17 0.25 0.42 0.58 0.61 0.63 0.65 0.68 0.70 0.82 1.05

    アイルランド -0.18 -0.24 -0.11 0.00 0.08 0.27 0.46 0.69 0.88 1.00 1.07 1.15 1.22 1.29 1.36 1.55 1.93

    カナダ 0.44 0.44 0.44 0.48 0.60 0.62 0.77 0.91 1.02 1.13 1.21 1.29 1.36 1.44 1.52 1.91 1.93

    ノルウェー 0.54 0.60 0.60 0.59 0.73 0.87 1.00 1.12 1.21 1.32

    英国 0.38 0.37 0.47 0.56 0.79 0.89 1.07 1.21 1.33 1.43 1.51 1.59 1.66 1.74 1.82 2.06 2.29 2.14

    イタリア 0.00 0.06 0.14 0.35 0.55 0.83 1.02 1.18 1.48 1.60 1.69 1.78 1.86 1.95 2.04 2.34 2.74

    スペイン 0.00 0.05 0.14 0.36 0.63 0.93 1.18 1.34 1.58 1.70 1.80 1.90 2.00 2.10 2.20 2.43 2.89

    米国 0.48 0.71 0.90 1.06 1.21 1.36 1.50 1.58 1.67 1.75 1.79 1.83 1.88 1.92 1.96 2.18 2.60

    ポルトガル 0.02 1.09 1.64 2.19 2.43 2.65 2.87 3.37 3.37 3.54 3.61 3.69 3.76 3.84 3.92 4.08 4.23

    中国 2.45 2.50 2.62 2.75 2.89 2.89 2.88 2.88 2.88 2.89 2.94 2.99 3.05 3.10 3.15

    インド 7.26 7.25 7.39 7.52 7.68 7.81 7.87 7.86 7.81 7.75 8.03 8.08 8.06 8.09 8.12 8.26 8.28

    ロシア 9.76 10.17 10.20 10.24 10.27 10.25 10.22 10.20 10.17 10.15 10.13 10.12 10.11 10.10 10.08 10.05

    トルコ 10.69 10.87 10.70 10.67 10.63 10.60 10.56 10.59 10.47 10.54ギリシャ 14.52 11.65 8.78 9.20 9.62 10.05 10.47 10.89 11.32 11.15 10.99 10.82 10.66 10.49 9.99

     0%未満 0%以上0.5%未満 0.5%以上1.0%未満 1.0%超

    (注)2016年2月15日の値(資料)Bloombergより、みずほ総合研究所作成

  • 連鎖不況の歯止めはなにか:G20は政策協調による財政拡大を促す可能性

    31

    ◯ 新興国経済の悪化や金融市場の不安定化が世界経済に悪影響を与えるとの懸念から、G20で政策協調の可能性も

    ‧ 経常黒字国や財政余力のある国を中心に財政拡大が促されることも

    【 G20の経常収支(対GDP比)比較 】 【 G20の政府債務残高(対GDP比)比較 】

    (注) データは2015年見込み。(資料) IMFより、みずほ総合研究所作成

    (注) データは2015年見込み。(資料) IMFより、みずほ総合研究所作成

    ▲ 6

    ▲ 4

    ▲ 2

    0

    2

    4

    6

    8

    10

    ドイツ

    韓国ロシア

    中国日本EUイタリア

    フランス

    インド

    アルゼンチン

    インドネシア

    メキシコ

    米国カナダ

    サウジアラビア

    オーストラリア

    ブラジル

    南アフリカ

    トルコ

    英国

    (%)

    0

    50

    100

    150

    200

    250

    300

    サウジアラビア

    ロシア

    インドネシア

    トルコ

    オーストラリア

    韓国中国南アフリカ

    メキシコ

    アルゼンチン

    インド

    ブラジル

    ドイツ

    EU英国カナダ

    フランス

    米国イタリア

    日本

    (%)

  • 世界連鎖不況の歯止めはなにか、今こそ日本は国際貢献に向けた成長戦略強化を

    32

    ○ 米金利低下で世界に「浮き輪」不在のなか、マイナス金利政策は通貨戦争の不安に

    ・ マイナス金利下で代替運用手段が乏しいなか、現金化が進めば信用収縮スパイラル懸念も

    <世界連鎖不況への不安に歯止めをかけるため、求められる対応>

    ① 不安の震源である、中国の人民元切り下げ不安と米国利上げ不安の除去

    ・ 中国は、資本規制も含め人民元切り下げ回避と景気重視の表明

    ・ 米国は、利上げ停止と景気重視姿勢の表明

    ② 景気底入れのための世界各国の協調姿勢

    ・ G20、G7での景気底上げ姿勢の明示

    ③ 金融による近隣窮乏化策だけに依存しない各国の内需拡大策

    ・各国の財政拡大、成長戦略の明示

    ④ 日本は国際貢献の観点からも、政府と一体での金融緩和策、景気対策、消費税先送りも選択肢

  • Ⅱ.海外経済

    33

    ~米欧とも景気の勢い鈍化、中国は減速基調~

  • (1)米国経済 ~景気の勢いが鈍化。年内利上げ見送り

    34

    ○ 2015年10~12月期のGDP成長率は前期比年率+0.7%と減速。外需の悪化、設備投資の減少、

    在庫投資の縮小が成長率を下押し。個人消費は拡大テンポが鈍化したが、記録的な暖冬によ

    る暖房需要の減少など一時的な要因が大

    ○ 先行きについては、景気拡大のけん引役が個人消費になるとのシナリオを維持。しかし、ドル

    高・新興国経済の減速による輸出、設備投資への下押しが続くほか、製造業を中心に在庫調

    整圧力が当面残る見込み。今年の成長率は前年から減速し、2016年は前年比+1.8%、2017

    年は同+2.3%と予想

    ○ 海外経済・金融情勢の不安定化により、米国景気・物価への下押し圧力が続くなかで、年内利

    上げ見送りに

  • 米国:2016年前半の米国景気は減速感続き、その後の持ち直しも緩やか

    35

    ◯ 2016年の成長率を前年比+2.5%(12月予測)から+1.8%に下方修正、2017年を+2.3%と予想

    ‧ 下方修正の主因は、①ドル高・新興国経済の減速による外需の悪化が長引くとみられること、②企業の投資スタンスに慎

    重さが出てくるとみられること

    ‧ リスクは新興国経済の一段の下振れと金融市場不安定化の長期化

    【 短期見通し総括表 】

    (注)網掛けは予測値。(資料)米国商務省、米国労働省より、みずほ総合研究所作成

    2014 2015 2016 2017 2015 2016 2017

    暦年 1~3 4~6 7~9 10~12 1~3 4~6 7~9 10~12 1~3 4~6 7~9 10~12

    実質GDP 前期比年率、% 2.4 2.4 1.8 2.3 0.6 3.9 2.0 0.7 1.6 1.9 2.0 2.2 2.2 2.4 2.5 2.4

    個人消費 前期比年率、% 2.7 3.1 2.3 2.2 1.8 3.6 3.0 2.2 2.4 1.8 2.0 2.3 2.3 2.3 2.0 2.0

    住宅投資 前期比年率、% 1.8 8.7 6.4 4.7 10.1 9.3 8.2 8.1 4.0 6.5 5.0 6.5 4.0 4.0 4.0 4.0

    設備投資 前期比年率、% 6.2 2.9 ▲ 1.1 1.7 1.6 4.1 2.6 ▲ 1.8 ▲ 2.5 ▲ 2.4 ▲ 1.6 ▲ 0.2 2.5 3.0 5.0 5.0

    在庫投資 前期比年率寄与度、%Pt 0.1 0.2 0.1 ▲ 0.0 0.9 0.0 ▲ 0.7 ▲ 0.5 ▲ 0.2 0.4 0.2 0.0 ▲ 0.2 0.0 0.0 0.0

    政府支出 前期比年率、% ▲ 0.6 0.8 2.8 2.6 ▲ 0.1 2.6 1.8 0.7 3.5 3.8 3.8 3.5 2.0 2.0 2.0 2.0

    純輸出 前期比年率寄与度、%Pt ▲ 0.2 ▲ 0.7 ▲ 0.2 ▲ 0.0 ▲ 1.9 0.2 ▲ 0.3 ▲ 0.5 ▲ 0.3 ▲ 0.3 ▲ 0.1 ▲ 0.2 ▲ 0.0 ▲ 0.0 ▲ 0.0 ▲ 0.0

    輸出 前期比年率、% 3.4 1.1 ▲ 2.0 0.8 ▲ 6.0 5.1 0.7 ▲ 2.5 ▲ 4.1 ▲ 3.3 ▲ 1.8 ▲ 0.8 2.0 2.2 2.4 2.2

    輸入 前期比年率、% 3.8 5.0 0.2 1.1 7.1 3.0 2.3 1.1 ▲ 1.5 ▲ 0.5 ▲ 0.4 0.4 1.7 1.9 2.0 2.1

    失業率 % 6.2 5.3 5.1 5.0 5.6 5.4 5.2 5.0 5.0 5.1 5.1 5.1 5.1 5.0 4.9 4.8

    非農業部門雇用者数 1か月当たり、千人 251 228 192 220 190 251 192 279 166 181 210 210 220 220 220 220

    個人消費支出デフレーター 前年比、% 1.4 0.3 0.5 1.6 0.2 0.3 0.3 0.4 0.6 0.3 0.3 0.6 1.3 1.6 1.7 1.7

    食品・エネルギーを除くコア 前年比、% 1.5 1.3 1.3 1.6 1.3 1.3 1.3 1.4 1.4 1.3 1.3 1.4 1.4 1.5 1.6 1.7

  • 米国:10~12月期GDP成長率は減速したが、個人消費は底堅い

    36

    ◯ 10~12月期実質GDP成長率は前期比年率+0.7%と、2四半期連続で減速

    ‧ 外需の悪化、在庫投資の縮小がマイナス寄与となったほか、設備投資が2012年以来の前期比マイナスに

    ‧ 個人消費は拡大テンポが鈍化。暖房需要が減少したこと、自動車消費が3四半期ぶりに減少したことが主な理由

    ――― 外食や娯楽などサービス消費は底堅い伸びを維持

    【 実質GDP成長率 】

    (資料)米国商務省より、みずほ総合研究所作成

    【 実質個人消費の内訳 】

    (資料)米国商務省より、みずほ総合研究所作成

    ▲ 1.0

    0.0

    1.0

    2.0

    3.0

    4.0

    5.0

    1 2 3 4 1 2 3 4

    2014 2015

    (前期比年率、%)

    (年/四半期)

    電力・ガス等

    (暖冬の影響)

    自動車

    (頭打ち傾向)

    その他

    (サービスを中心に

    底堅い伸び)

    3.0

    3.8

    ▲0.9

    4.6 4.3

    2.1

    0.6

    3.9

    2.0

    0.7

    ▲ 4.0

    ▲ 2.0

    0.0

    2.0

    4.0

    6.0

    8.0

    3 4 1 2 3 4 1 2 3 4

    2013 2014 2015

    純輸出 政府支出 在庫投資

    設備投資 住宅投資 個人消費

    GDP

    (年/四半期)

    (前期比年率、%)

    外需、在庫、設備が

    マイナス寄与

  • 米国:海外部門の弱さが深刻化

    37

    ◯ 新興国経済の減速とドル高による下押し圧力が強まる

    ‧ 地域別輸出をみると、ウェイトが大きいカナダや中南米向けを中心に、幅広い地域の輸出が不調

    ――― 資源輸出国であるカナダ・中南米ではストック調整のもとで、固定資産投資が大幅に減少

    ‧ 輸出需要の低迷に加え、ドル高に伴う輸出採算の悪化、為替差損の発生が収益を押し下げ

    【 海外収益・為替レート・海外の景気動向 】

    (注)海外の景気動向はCPB 「World Trade Monitor」の生産指数(米国除く)。海外収益は4四半期後方平均値。

    (資料)FRB、米国商務省、CPBより、みずほ総合研究所作成

    【 地域別輸出額 】

    (注)カッコは2015年の輸出ウェイト。(資料)米国商務省より、みずほ総合研究所作成

    ▲ 7

    ▲ 6

    ▲ 5

    ▲ 4

    ▲ 3

    ▲ 2

    ▲ 1

    0

    1

    2

    3

    14/06 14/09 14/12 15/03 15/06 15/09 15/12

    その他(12%)

    EU(18%)

    他のアジア主要国(18%)

    中国(8%)

    北中南米(45%)

    名目計

    実質計

    (3カ月移動平均、3カ月前比%)

    (年/月)

    ▲ 12

    ▲ 10

    ▲ 8

    ▲ 6

    ▲ 4

    ▲ 2

    0

    2

    4

    6

    8

    10

    12▲ 12

    ▲ 10

    ▲ 8

    ▲ 6

    ▲ 4

    ▲ 2

    0

    2

    4

    6

    8

    10

    12

    2010 11 12 13 14 15

    海外収益

    海外の景気動向

    実質実効為替レート(右目盛)

    ドル高+欧州債務危機

    ドル高+新興国減速

    (前年比、%)

    (年)

    (前年比、%)

    ドル高

  • 米国:企業収益悪化が設備投資の抑制を通じて、景気を下押し

    38

    ◯ 企業収益、設備投資いずれも下向きの動き

    ‧ 企業収益(税引き前利益)は、7~9月期に前年比マイナスに転化。海外収益だけでなく、国内収益も減少

    ‧ 10~12月期の設備投資は大幅に失速。リグや掘削機械等の減少が続いたことに加え、機械関連投資の落ち込みが顕著。

    建設投資や知的財産も小幅な増加にとどまる

    【 設備投資の内訳 】【 企業収益の内訳 】

    (注)税引き前利益。在庫評価調整、資本減耗調整後。(資料)米国商務省より、みずほ総合研究所作成

    (注)建設投資は鉱業関連投資、機械関連投資は鉱業・石油関連の機械投資を除く。(資料)米国商務省より、みずほ総合研究所作成

    ▲ 8

    ▲ 6

    ▲ 4

    ▲ 2

    0

    2

    4

    6

    8

    1 2 3 4 1 2 3 4 1 2 3 4

    2013 2014 2015

    海外 金融 非金融

    (年/四半期)

    (前年比、%)

    ▲ 8

    ▲ 6

    ▲ 4

    ▲ 2

    0

    2

    4

    6

    8

    10

    12

    1 2 3 4 1 2 3 4 1 2 3 4

    2013 2014 2015

    建設投資

    リグ、掘削機械等

    機械関連投資

    知的財産

    (年/四半期)

    (前期比年率、%)

    エネルギー

    以外の

    投資も不調

  • 米国:企業収益を経由した投資の抑制は、幅広い分野に広がりつつある

    39

    ◯ 最近はシェール関連以外でも、企業収益・設備投資の弱含みが鮮明に

    ‧ 国内収益の減速は、国内における企業活動の停滞を示唆。貿易に直接関わらない部分でも、間接的な悪影響

    【 国内・非金融業の収益(業種別) 】

    (注)税引き前利益。在庫評価益調整後。国内・非金融業の収益計に対する寄与度。(資料)米国商務省より、みずほ総合研究所作成

    【 建設投資(左)と機械関連投資(右) 】

    (資料)米国商務省より、みずほ総合研究所作成

    ▲ 2.0

    ▲ 1.5

    ▲ 1.0

    ▲ 0.5

    0.0

    0.5

    1.0

    1.5

    2.0

    2.5

    輸送機械

    卸売

    コンピュータ・電子製品

    小売

    情報

    運輸

    飲食料品・たばこ

    その他耐久財

    その他非耐久財

    加工金属

    電気機械

    機械

    化学

    公益

    石油・石炭製品

    15Q2

    15Q3

    (前年比寄与度、%Pt)

    20

    40

    60

    80

    100

    120

    140

    160

    180

    1 2 3 4 1 2 3 4 1 2 3 4

    2013 2014 2015

    商業・ヘルスケア

    工場

    電力・情報通信

    鉱業

    その他

    (2013年1~3月期=100)

    (年/四半期)

    60

    70

    80

    90

    100

    110

    120

    130

    140

    1 2 3 4 1 2 3 4 1 2 3 4

    2013 2014 2015

    情報処理設備

    産業設備

    輸送機械

    その他

    (2013年1~3月期=100)

    (年/四半期)

  • 米国:景気後退にまで陥る可能性はまだ低い

    40

    ◯ FSI(金融ストレス指数、※)と企業業況を用いたモデルによれば、4月の景気後退確率は1割強との試算も可能

    ‧ 2016年以降、景気後退確率が高まっているものの、水準は低い(※)FSIとは株式市場、インターバンク市場、クレジット・債券市場などを代表する16の金融指標を合成したもの。FSIの上昇は、金融市場の安定性が低下し、金融市

    場におけるストレスが増大していることを示す。

    (注)シャドウは景気後退期。(資料) クリーブランド連銀、フィラデルフィア連銀より、みずほ総合研究所作成

    【 景気後退確率モデルの説明変数 】【 景気後退確率 】

    (注)1.FSI(Financial Stress Index)、フィラデルフィア連銀製造業景況指数を用いて、景気後退確率を推計。各変数の景気後退に対する先行期間を踏まえ、3カ月先の確率を推計するモデルとした。McFaddenの決定係数は0.56。

    2.シャドウは景気後退期。(資料) NBER、クリーブランド連銀、フィラデルフィア連銀より、みずほ総合研究所作成

    0

    0.1

    0.2

    0.3

    0.4

    0.5

    0.6

    0.7

    0.8

    0.9

    1

    1992 1994 1996 1998 2000 2002 2004 2006 2008 2010 2012 2014 2016

    (%)

    100

    90

    80

    70

    60

    50

    40

    30

    20

    10

    (年)

    ▲10

    ▲9

    ▲8

    ▲7

    ▲6

    ▲5

    ▲4

    ▲3

    ▲2

    ▲1

    0

    1

    2

    3

    4

    ▲50

    ▲25

    0

    25

    50

    75

    100

    125

    150

    1992 1994 1996 1998 2000 2002 2004 2006 2008 2010 2012 2014 2016

    Financial Stress Index(右目盛)

    フィラデルフィア連銀景況指数(左目盛)

    (年)

  • (2)ユーロ圏経済 ~ 低成長と低インフレが続く

    41

    ○ 2016年・17年のユーロ圏実質GDP成長率は、各+1.2%、+1.4%。基調としては、緩やかな景気回復が持続

    ○ 2016年の成長率は減速。雇用改善や油価下落を背景に個人消費の持ち直しが続くも、新興国景気の弱さから輸出が低調となり、設備投資が力強さを欠く。2017年の成長率は加速。世界経済の持ち直しに伴い輸出が徐々に回復するなか、設備投資も改善。ただし、金融市場の混乱などに伴う下振れリスクが残る

    ○ 2016・17年のユーロ圏インフレ率は、各0.0%、+1.0%。景気の弱さや油価低迷を背景に低インフレが続き、ECBが目安とする2%には到達しない。低インフレが期待インフレ率の低下を通じ、更なるディスインフレ圧力となることがリスク

    ○ 2016年1月の政策理事会で、ECBは追加緩和を示唆。低インフレが続く中、ECBは3月に追加利下げやQEの規模拡大を含む追加緩和を打ち出す

  • ユーロ圏:2016年の成長率は減速。インフレ率は当面ゼロ近傍で推移

    42

    ◯ ユーロ圏実質GDP成長率は、2016年に+1.2%、2017年に+1.4%

    ‧ 2016年は前回見通しから下方修正。政府支出が上振れるも、不透明感の高まりに伴い投資が下振れ

    ‧ 2017年は、2016年から小幅加速。雇用拡大を背景に、消費主導の景気回復が持続

    ‧ インフレ率は、2016年を通じてゼロ近傍で推移。その後は上昇するも緩慢なペースに止まる

    【 ユーロ圏短期見通し総括表 】

    (注) 網掛けは予測値。(資料) Eurostatより、みずほ総合研究所作成

    2014 2015 2016 2017

    暦年 1~3 4~6 7~9 10~12 1~3 4~6 7~9 10~12 1~3 4~6 7~9 10~12

    実質GDP 前期比、% 0.9 1.5 1.2 1.4 0.5 0.4 0.3 0.3 0.3 0.2 0.2 0.4 0.4 0.4 0.4 0.4

    内需 前期比、% 0.9 1.5 1.5 1.5 0.7 0.0 0.6 0.4 0.6 0.1 0.2 0.4 0.4 0.5 0.4 0.4

    個人消費 前期比、% 0.8 1.6 1.3 1.3 0.5 0.3 0.4 0.2 0.4 0.4 0.3 0.3 0.3 0.3 0.4 0.4

    総固定資本形成 前期比、% 1.3 2.2 0.6 1.4 1.5 0.1 ▲ 0.0 0.3 0.2 0.1 0.1 0.3 0.4 0.5 0.4 0.5

    政府消費 前期比、% 0.8 1.5 1.7 0.9 0.5 0.3 0.6 0.5 0.5 0.4 0.3 0.2 0.2 0.2 0.2 0.2

    在庫投資 前期比寄与度、%Pt 0.0 ▲ 0.2 0.1 0.2 0.1 ▲ 0.2 0.2 0.1 0.2 ▲ 0.2 ▲ 0.1 0.1 0.1 0.1 0.1 0.0

    外需 前期比寄与度、%Pt ▲ 0.0 0.0 ▲ 0.1 0.1 ▲ 0.2 0.4 ▲ 0.3 ▲ 0.1 ▲ 0.2 0.1 0.1 0.1 ▲ 0.0 ▲ 0.0 ▲ 0.0 0.0

    輸出 前期比、% 4.1 4.7 2.2 4.2 1.3 1.6 0.2 0.2 0.4 0.6 0.8 1.1 1.0 1.2 1.2 1.2

    輸入 前期比、% 4.5 5.0 2.8 4.5 1.9 0.9 0.9 0.4 0.9 0.4 0.7 0.9 1.2 1.4 1.4 1.4

    消費者物価指数 前年比、% 0.4 0.0 0.0 1.0 ▲ 0.3 0.2 0.1 0.2 0.2 ▲ 0.2 0.0 0.2 0.6 0.9 1.1 1.4

    食品・エネルギーを除くコア前年比、% 0.8 0.8 1.0 1.3 0.7 0.8 0.9 1.0 1.0 1.0 0.9 1.0 1.2 1.3 1.4 1.5

    2016 20172015

  • ユーロ圏:1月末にかけて緩やかな景気回復が持続

    43

    ◯ 10~12月期のユーロ園成長率は前期比+0.3%と7~9月期並みの水準に。1月も合成PMIは50超を維持

    ‧ 10~12月期は個人消費・政府支出が成長率を押し上げる一方、外需寄与度はマイナス

    ――― 主要国では、ドイツとスペインが前期並みの成長率を維持、フランスとイタリアが小幅に減速

    ‧ 雇用回復や成長に配慮した財政政策を背景に、2017年にかけてユーロ圏の緩やかな景気回復が続く

    ――― ただし、海外経済の下振れや金融市場の混乱などが、輸出・投資の重石に

    ▲0.4

    ▲0.2

    0.0

    0.2

    0.4

    0.6

    0.8

    1.0

    Q1 Q2 Q3 Q4 Q1 Q2 Q3 Q4

    2013 2014

    ユーロ圏 ドイツ フランス

    イタリア スペイン

    (前期比、%)

    (年/四半期)

    全般に前期並みの成長率

    46

    48

    50

    52

    54

    56

    58

    2014/1 15/1 16/1

    ユーロ圏 ドイツ

    フランス イタリア・スペイン

    (Pt)

    拡張↑

    景気

    ↓縮小

    (年/月)

    1月も50超

    仏PMIは50近傍だが、

    前月からは上昇

    【 ユーロ圏・主要国のGDP成長率と合成PMI 】

    (資料) Eurostat、各国統計局、Markitより、みずほ総合研究所作成

    【 ユーロ圏の構造的財政赤字 】

    成長率 PMI

    (注) 赤字幅の縮小(拡大)=財政緊縮(緩和)を表す。(資料) 欧州委員会より、みずほ総合研究所作成

    3.6

    2.1

    1.4

    1.0 1.11.3 1.4

    0.0

    0.5

    1.0

    1.5

    2.0

    2.5

    3.0

    3.5

    4.0

    2011 12 13 14 15 16 17

    (構造的財政赤字のGDP比、%)

    (年)

    構造赤字は小幅に拡大

    ⇒緩和気味の財政

  • ユーロ圏:中国のストック調整を受けやすいのはドイツの機械関連業

    44

    ◯ 中国の投資1%減少によりドイツの機械・電気製品は0.1%程度の減産に。他国・他業種と比べて影響が大

    ‧ 中国現地での生産・販売も考慮すれば、中国の投資減少による影響は更に大きくなると推察される

    ――― 独商工会議所の調査によると、機械業では中国要因で2015年の業績目標を下方修正した企業が他業種より多い

    【 中国の内需が1%減少した場合の各国製造業への影響 】

    (注) 中国の消費・投資が1%減少した場合に、独・仏・伊・西の製造業の各業種の生産額がどれだけ減少するかを求め、減少幅が大きい5製造業種を示した。

    (資料) Timmer, M. P. et. al.(2015), "An Illustrated User Guide to the World Input‒Output Database: the Case of Global Automotive Production", Review of International Economics., 23: 575‒605より、みずほ総合研究所作成

    【 各国の中国向け直接投資残高 】

    (注) 全産業は、独・仏・伊・西の対中直投残高(全産業計)が対外直投残高全体に占める割合。また、対中直投残高の大きい上位5製造業種を示した。スペインが製造業の内訳が未公表。

    (資料) Eurostatより、みずほ総合研究所作成

    0.00 0.05 0.10 0.15 0.20 0.25

    機械電気製品輸送機械金属製品化学製品

    革・靴製品電気製品

    機械化学製品繊維製品

    革・靴製品機械

    電気製品金属製品化学製品

    革・靴製品電気製品

    機械化学製品金属製品

    中国の消費が1%減少した場合

    中国の固定投資が1%減少した場合

    (各国・各業種の生産額の減少幅、%)

    ドイツ

    フランス

    イタリア

    スペイン

    0.0 1.0 2.0 3.0 4.0 5.0 6.0

    全産業自動車化学製品

    機械コンピュータ・電気製品

    金属製品

    全産業化学製品自動車

    コンピュータ・電気製品機械

    金属製品

    全産業自動車機械

    金属製品化学製品

    ゴム・プラスチック

    全産業製造業計

    (各国の対外直接投資残高に占める割合、%)

    ドイツ

    フランス

    イタリア

    スペイン

  • 0.6

    0.7

    0.8

    0.9

    1.0

    1.1

    1.2

    1.3

    1.4

    1.5

    2016/1 16/7 17/1 17/7

    (前年比、%)

    (年/月)

    みずほ総研見通し

    ①と②が強まったケース

    ①と②が強まればコア・インフレ率の上昇は2018年以降に後ずれ

    ユーロ圏:インフレ率は2016年を通じてゼロ近傍で推移

    45

    ◯ インフレ率は2016年半ばに再びマイナス圏へ。同年末にかけてもインフレ率はゼロ近傍に止まる

    ‧ 油価低迷により足元のインフレ率上昇は持続せず。他方、景気回復を背景にコア・インフレ率は緩やかに上昇

    ‧ ただし、①油価がコアに及ぼす間接的な影響が強まったり、②低インフレと期待インフレ率低下の悪循環が生じたり

    すれば、コア・インフレ率の上昇は後ずれすることに

    (資料) Eurostatより、みずほ総合研究所作成

    (注)1. コア・インフレ率、市場の期待インフレ率、賃金上昇率、名目実効為替レート、GDPギャップ、原油価格を用い、コア・インフレ率、期待インフレ率、賃金上昇率が内生的に決定されるモデルを推計。名目実効デートが今後横ばい、GDPギャップが緩やかに縮小、油価が当社の予測通りに推移するとした場合にモデルから算出されるコア・インフレ率のパスを示した。

    2.推計期間は2004/6~2015/11。月次データの存在しない系列は補完値を用いた。(資料) Eurostat、ECB、Bloombergより、みずほ総合研究所作成

    【 ユーロ圏インフレ率 】 【 ①と②が強まった場合に想定される

    コア・インフレ率のパス 】

    ▲ 4.0

    ▲ 3.5

    ▲ 3.0

    ▲ 2.5

    ▲ 2.0

    ▲ 1.5

    ▲ 1.0

    ▲ 0.5

    0.0

    ▲ 0.6

    ▲ 0.3

    0.0

    0.3

    0.6

    0.9

    1.2

    2015/1 15/4 15/7 15/10 16/1

    ユーロ圏インフレ率コア・インフレ率エネルギー・食品・アルコール・煙草(右目盛)

    (前年比、%) (前年比、%)

    (年/月)

    今後、エネルギーの下落幅は再拡大の公算大

  • (3)アジア経済 ~自律的景気回復力に欠ける

    46

    ○ 中国は2016~2017年も、深刻さを増している過剰生産能力や過剰債務の調整圧力が引き続き

    中国経済を下押し。自律的回復力の弱さを景気てこ入れの強化で補い、減速ペースを緩やか

    なものにとどめる構図。資源価格の戻りの弱さに加え、過剰生産能力の解消が漸進的にならざ

    るをえず、名目GDP成長率が実質を下回る

    ○ 2016年の中国を除くアジア経済は、前年からの減速傾向が続く。原油など資源価格の低迷長

    期化による産油国・資源国の景気停滞や米国の景気拡大テンポ鈍化から、輸出の軟調が続く

    ○ 2017年の景気も、大幅加速を見込みづらい。米国や欧州経済の加速により、輸出は前年から

    持ち直すものの、米利上げ再開などにより財政・金融政策による下支え効果は縮小へ

  • アジア:2017年まで+6%台の成長率を維持するものの、伸び率は小幅に低下へ

    47

    ◯ アジア経済は、+6%以上の経済成長は維持するものの、成長率はやや低下へ

    ‧ 中国は、過剰生産設備による資本ストック調整圧力などから、2017年にかけて緩やかな減速傾向で推移

    ‧ 輸出依存度の高いNIEsは、主要輸出先の景気回復力の弱さなどから、+2%前後の低成長が続く

    ‧ ASEAN5は、輸出の伸び悩みに加え、一部の国では資源価格低迷による悪影響もあり、+5%以下の成長にとどまる

    ‧ インドは、2016年に公務員給与の大幅引き上げなどにより加速、2017年はその効果の縮小で小幅に減速

    【 アジア経済見通し総括表 】

    (注)1.実質GDP成長率(前年比)。網掛けは予測値。網掛けなしは実績値。(注)2.平均値はIMFによる2013年GDPシェア(購買力平価ベース)により計算。(注)3.インドの伸び率は、2012年以前はIMF、2013年以降はインド統計計画実行省の値。(資料)各国統計、CEIC Data、IMFよりみずほ総合研究所作成

    (単位:%)

    2011年 2012年 2013年 2014年 2015年 2016年 2017年

    (実績) (実績) (実績) (実績) (予測) (予測) (予測)

    7.4 6.3 6.4 6.3 6.1 6.0 6.0

    中国 9.5 7.7 7.7 7.3 6.9 6.6 6.5

    NIEs 4.1 2.3 2.9 3.4 2.0 1.9 2.1

    韓 国 3.7 2.3 2.9 3.3 2.6 2.3 2.5

    台 湾 3.8 2.1 2.2 3.9 0.9 1.4 1.7

    香 港 4.8 1.7 3.1 2.5 2.3 1.9 1.8

    シンガポール 6.2 3.4 4.4 2.9 2.1 1.9 2.1

    ASEAN5 4.7 6.2 5.0 4.6 4.7 4.4 4.5

    インドネシア 6.2 6.0 5.6 5.0 4.8 4.7 4.7

    タ イ 0.8 7.2 2.7 0.8 2.8 2.5 2.7

    マレーシア 5.3 5.5 4.7 6.0 4.7 3.5 4.1

    フィリピン 3.7 6.7 7.1 6.1 5.8 6.0 5.5

    ベトナム 6.2 5.3 5.4 6.0 6.7 6.0 5.7

    インド(2011年度基準) 6.6 5.1 6.3 7.0 7.3 7.6 7.5

    アジア

  • 中国:実質ベースでの減速の主因は金融業、不動産業の減速

    48

    ◯ 需要動向を示す主要指標は、政策の下支えの力を借りる形で、いずれも小幅に持ち直し

    ‧ 固定資産投資の持ち直しはインフラ投資による下支えによるところも大きい。小売の持ち直しには、自動車減税が寄与

    ‧ 輸出の伸びのマイナス幅は縮小

    ◯ それにもかかわらず成長率が低下したのは、これらの指標では捉えにくい金融業の減速(株式取引の勢い低下)や、不動

    産業の弱含み(販売の伸び鈍化)が主因

    ◯ 1月のPMIも、製造業が50以下、非製造業が50以上で推移という構図が持続

    【 主要経済指標 】 【 業種別実質GDP成長率 】

    (資料)中国国家統計局、CEIC Dataより、みずほ総合研究所作成

    (注)1.社会消費品小売総額は小売物価指数、固定資産投資は固定資産価格指数で実質化(みずほ総合研究所推計値)。輸出は数量指数を用いて実質伸び率を推計。

    2. 2013年1~3月期の輸出は虚偽報告による水増しの可能性大。(資料)国家統計局、海関総署、CEIC Dataより、みずほ総合研究所作成

    0

    2

    4

    6

    8

    10

    12

    14

    16

    18

    20

    10 11 12 13 14 15

    第1次産業第2次産業第3次産業金融

    不動産

    (前年比、%)

    (年)

    ▲4

    ▲2

    0

    2

    4

    6

    8

    10

    ▲10

    ▲5

    0

    5

    10

    15

    20

    25

    2012 13 14 15

    実質GDP成長率(右目盛)社会消費品小売総額(左目盛)固定資産投資(左目盛)輸出(左目盛)

    (前年比、%) (前年比、%)

    (年)

  • 中国:自律的回復力が弱い中、景気てこ入れ強化で経済の軟着陸を図る展開が持続

    49

    ◯ 自律的回復力の弱さを景気てこ入れの強化で補い、緩やかな減速にとどめざるを得ない構図が2017年にかけて持続

    ‧ 深刻さを増している過剰生産能力や過剰債務の調整圧力が引き続き経済の減速要因に

    ‧ 消費は、生産能力過剰業種の雇用調整が重しとなるも、労働需給のタイトな状況や不動産販売の下支え策などにより緩

    やかな減速傾向にとどまる。一方、輸出は回復に向かうも内需の減速を打ち消すだけの力強さを持たない

    ‧ 自律的回復力を欠く中、「2016~20年の年平均成長率+6.5%以上」という数値目標を達成するため、財政政策を中心とし

    た景気のてこ入れが強化される見込み

    (資料)財政部、CEIC Dataより、みずほ総合研究所作成

    (注)1.中国の企業経営者を対象としたアンケート調査。直近の調査対象期間は2015年8~9月。2.網掛けは、2015年調査での「非常に深刻」の回答率が2014年調査より上昇した業種。

    (資料)中国企業家調査系統(2014、2015)より、みずほ総合研究所作成

    【 生産能力過剰問題の深刻度に関するアンケート調査 】 【 財政支出 】

    非常に深刻

    やや深刻

    問題なし

    非常に深刻

    +やや深刻

    16 .1 58 .6 25 .3 74 .7 2014年 15.5 58.5 26.0 74.0 2013年 12.8 58.3 28.9 71.1 2012年 12.8 54.3 32.9 67.1 鉱 業 33 .3 52 .4 14 .3 85 .7 製 造 業 19 .8 60 .3 19 .9 80 .1 非金属鉱物製品 31.1 63.1 5.8 94.2 非鉄金属冶金・圧延加工 30.8 50.0 19.2 80.8 鉄鋼冶金・圧延加工 28.6 64.3 7.1 92.9 鉄道・船舶・航空宇宙・その他輸送機器 25.0 41.7 33.3 66.7 化学繊維 25.0 62.5 12.5 87.5 自動車 23.0 68.8 8.2 91.8 産業機械 22.7 54.6 22.7 77.3 一般機械 22.4 65.1 12.5 87.5 コンピュータ・通信・その他電子機器 21.6 58.8 19.6 80.4 アパレル・服飾 20.5 61.3 18.2 81.8 製紙・紙製品 19.0 66.7 14.3 85.7 電機・電器 18.8 61.2 20.0 80.0 化学原料・同製品 18.8 62.4 18.8 81.2 金属製品 18.3 63.4 18.3 81.7 紡織 18.1 69.5 12.4 87.6 ゴム・プラスチック製品 17.1 62.2 20.7 79.3 食品・酒・飲料 16.0 53.4 30.6 69.4 精密機器・計器 8.8 44.1 47.1 52.9 医薬 5.4 62.2 32.4 67.6

    全 産 業(2015年)

    (単位:%)

    ▲ 5

    0

    5

    10

    15

    20

    25

    30

    35

    40

    2012 13 14 15

    (前年比、%)

    (年)

  • 1,500

    2,000

    2,500

    3,000

    3,500

    4,000

    4,500

    5,000

    7

    8

    9

    10

    11

    12

    13

    14

    12/01 12/07 13/01 13/07 14/01 14/07 15/01 15/07 16/01

    社会消費品小売総額(左目盛)

    上海総合指数(右目盛)

    (前年比、%) (1990年12月19日=100)

    (月/日)0

    20

    40

    60

    80

    100

    2010 11 12 13 14

    現金

    預金

    保険

    理財商品

    信託

    株式

    リスク資産

    その他

    (%)

    (年末)

    50

    ◯ 家計の金融資産に占める株式のシェアは未だ小さく、株価の変動が家計に与える資産効果の影響は限定的

    ‧ 2014年末時点の家計金融資産に占める株式のシェアは8%と小さい。米国は34%(2015年9月末)、ユーロ圏は17%

    (2015年6月末)、日本は10%(2015年9月末)と、他国のシェアと比較しても中国のシェアは低水準

    ‧ 株価の急騰・急落時でも、株価と小売の動きが相反することは少なくない。足元は雇用・所得の底堅さが消費を下支え

    ◯ 中国の経済規模からみても株式市場の規模は比較的小さく、株価の変動が経済に与える影響は限定的

    ‧ 中国の株式時価総額の対GDP比は52%と、米国(146%)、日本(90%)と比べても低い(2014年末)

    中国:株価の急落が消費等に与える影響は限定的

    【 中国の家計金融資産の内訳 】

    (資料)中国社会科学院「中国国家資産負債表2015」より、みずほ総合研究所作成

    【 上海総合指数、小売伸び率 】

    (注)社会消費品小売総額は実質ベース。1、2月はいずれも1~2月の累計値。(資料) 中国国家統計局、Bloomberg、CEIC Dataより、みずほ総合研究所作成

  • 中国:2016年以降、景気下支え強化とともに、サプライサイドの構造改革を進める方針

    51

    ◯ 2016年の経済政策方針を定める中央経済工作会議(2015年12月18~21日開催)は、景気下支え強化の姿勢を明確化

    ‧ 今年以降「積極的財政政策をより力強く、穏健的金融政策はより柔軟に」する方針。必要に応じた財政赤字拡大にも言及

    ◯ 景気対策への依存による弊害も意識し、「サプライサイドの構造改革」の推進により持続的成長を目指すことも強調

    ‧ 過剰生産能力の解消とともに、新たな財・サービスの供給拡大を促し、需要の充足・喚起を図る構え

    ◯ 過剰生産能力の急速な解消は金融不安を招く可能性があるため、漸進的に進めざるをえない。資源価格の急速な回復も

    期待薄。鉱工業分野におけるデフレからの早期脱却は見込みにくい

    【 2016年の「5つの任務」 】 【 産業別の生産実績と生産能力淘汰目標 】

    (資料) 中国政府網 「中央経済工作会議在北京挙行習近平李克強作重要講話」(2015年12月21日)より、みずほ総合研究所作成

    任務 主要な政策方針

    1 過剰生産能力の解消

    ・破産手続きの市場化、破産処理に関する審理の迅速化・不良資産処理、失業者の再就職支援などに対する財政・税制面の支援・できるだけ合併・再編で対応し、破産・清算を少なくする

    2 企業のコスト軽減 ・行政手続きコスト、税負担、社会保険料、財務コスト、電力料金、物流コスト等の引き下げ

    3 不動産在庫の解消・都市化や戸籍改革を通じた、農民工を中心とした住宅需要の拡大・住宅賃貸市場の発展

    4 有効供給の拡大 ・需要の充足や喚起を図れる新産業、技術、製品の育成・企業の技術向上・設備更新の支援

    5 金融リスクの防止・解消 ・法に則ったデフォルトの処理・地方政府債務リスクの解消

    (注) 鉄鋼の生産能力は、中国鋼鉄工業協会による。石炭の生産能力は、国家発展改革委員会の連維良主任による。生産量は国家統計局による。過剰生産能力=(生産能力)-(生産量)。稼働率=生産量÷生産能力。

    (資料) 国務院、中国鋼鉄工業協会、国家発展改革委員会、国家統計局、各種報道より、みずほ総合研究所作成

    鉄鋼 石炭

    生産能力 12億トン 57億トン

    生産量 8億トン 37億トン

    過剰生産能力 4億トン 20億トン

    稼働率 67% 65%

    今後の淘汰目標

    2016年から5年間で

    1~1.5億トン(生産能力の約8~13%)

    2016年から3~5年間で5億トン以上(生産能力の約9%以上)

  • 93

    95

    97

    99

    101

    103

    105

    107

    12/01 12/07 13/01 13/07 14/01 14/07 15/01 15/07

    (2013/1=100)

    (年/月)

    中国を除くアジア:10~12月期の景気は、自律的回復力に欠ける

    52

    ◯ 2015年10~12月期の中国を除くアジアの景気は、輸出の持ち直しテンポの弱さなどから、自律的回復力に欠ける

    ‧ シンガポールなど成長率が加速した国もあるが、公需による下支えが一定程度、寄与

    ――― 台湾、シンガポール、インドネシア、フィリピンなどでは、公共投資などの政策効果が発現

    ――― ベトナムの10~12月期の成長率は前期から加速も、統計のクセなどを考慮すると、実態は減速したと評価

    ‧ 輸出は、実質ベースでみれば、持ち直しつつあるものの、そのテンポは緩やかにとどまった

    ――― 米国向けや産油国・資源国向けの輸出が弱含んだ

    【 実質GDP成長率 】 【 NIEs・ASEAN4の実質輸出 】

    (資料)各国統計、CEIC Dataより、みずほ総合研究所作成(注)1. みずほ総合研究所による季節調整値の後方3カ月移動平均値。

    2. ASEAN4はインドネシア、タイ、マレーシア、フィリピン。(資料) 各国統計、CPB、CEIC Dataより、みずほ総合研究所作成

    (前期比年率、%)

    1~3 4~6 7~9 10~12 1~3 4~6 7~9 10~12

    韓国 4.4 2.0 3.2 1.1 3.3 1.3 5.3 2.3

    台湾 0.8 6.7 5.1 0.9 1.9 ▲ 4.5 ▲ 1.2 3.2

    香港 2.6 ▲ 0.0 5.9 1.0 3.0 1.7 3.5 N.A.

    シンガポール 1.8 ▲ 0.5 2.6 4.9 3.5 ▲ 2.8 1.7 5.7

    タイ ▲ 2.3 2.9 3.5 3.7 2.0 1.7 4.0 3.2

    マレーシア 5.5 6.7 3.3 7.3 4.7 4.5 2.6 N.A.

    フィリピン 8.5 6.9 3.4 7.2 3.5 8.0 5.7 8.2

    (前年比、%)

    インドネシア 5.1 5.0 5.0 5.0 4.7 4.7 4.7 5.0

    ベトナム 5.1 5.3 6.1 7.0 6.1 6.5 6.8 7.0

    インド 5.8 7.5 8.3 6.6 6.7 7.6 7.7 7.3

    20152014